法令・告示・通達
感染性廃棄物の適正処理について
環廃産発040316001
(各都道府県知事・各保健所設置市市長あて環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部長通知)
感染性廃棄物の処理については、平成四年八月一三日付け衛環第二三四号厚生省水道環境部長通知「感染性廃棄物の適正処理について」の別添報告書別紙二「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」に基づいて行われるよう御指導いただいてきたところであるが、その後、廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び産業廃棄物の処理に係る特定施設の整備の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成一二年法律第一〇五号)及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成一五年法律第九三号)の内容を反映する必要が生ずるとともに、「規制改革についての見解」(平成一二年一二月行政改革推進本部規制改革委員会(現内閣府総合規制改革会議))において感染性廃棄物を客観的に判断できるものとすることを検討するよう求められていた。
これらに対応するため、感染性廃棄物処理対策検討会を設置して同マニュアルの改正の検討を進めてきたところ、今般、別添のとおりまとめられた。
貴職におかれては、下記の事項及び改正された同マニュアル(以下「改正マニュアル」という。)を関係者に周知し、感染性廃棄物の適正な処理の確保に努められたい。
なお、上記の平成四年八月一三日付け衛環第二三四号厚生省水道環境部長通知及び同日付け衛環第二三五号厚生省水道環境部環境整備課長通知「感染性廃棄物の適正処理について」は廃止する。
記
一 医療関係機関等の感染性廃棄物の排出事業者に関する事項
- (一) 医療関係機関等の感染性廃棄物の排出事業者(以下「排出事業者」という。)は、感染性廃棄物の処理に当たっては、改正マニュアルに基づき適正に行うものであること。
- (二) 排出事業者は、感染性廃棄物を自らの焼却施設等により処理することができる場合には自ら処理し、焼却施設等の稼働が困難な場合や焼却施設等を有していない場合には、適正な処理業者、感染性廃棄物の処理施設を有している市町村等に委託すること。
- (三) 排出事業者は、改正マニュアルに基づき感染性廃棄物の取扱い等に関する統一的な内部規程を作成し、その内容が現場で確実に行われるよう施設内の関係者に周知徹底すること。
- (四) 感染性廃棄物の処理を処理業者に委託する場合は、処理業者に関する情報収集に努め、処理業者と打合せを十分に行った上で実施すること。
- (五) 排出事業者は、感染性廃棄物とそれ以外の廃棄物の分別を徹底し、感染性廃棄物にあっては従来から使用されてきた「バイオハザードマーク」を表示するとともに、非感染性廃棄物にあってはその旨表示することを推奨するものであること。
- (六) 感染性廃棄物を委託する場合、処理業者にあらかじめ種類、数量、性状等を通知する等の委託基準を遵守すること。
- (七) 医療関係機関等は、特別管理産業廃棄物である感染性廃棄物の処理を委託する際には、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付、確認等の義務を確実に履行すること。
二 市町村に関する事項
- (一) 市町村は一般廃棄物の処理に責任を有するとともに、地域の保健衛生の確保・向上の観点から、地域の実情を踏まえ、感染性廃棄物の適正な処理の実施に協力すること。特に診療所等の小規模施設から排出される非感染性となる処理を経た廃棄物については、その処理に協力すること。このため、都道府県との連絡を密にするとともに、排出事業者、郡市医師会等の関係団体及び市町村廃棄物部局が協議する場を設けること。
- (二) 感染性廃棄物の排出及び処理の状況の把握に努め、排出事業者と処理業者から必要な情報の収集、整理を行うとともに、これらの者が相互に必要な情報を提供しあえるよう、必要な措置を講ずること。
- (三) 感染性一般廃棄物の処理については、排出事業者や郡市医師会等の関係団体から事情を十分に聴取し、一般廃棄物処理計画の中に位置付け、その処理の推進を図ること。
- (四) 市町村が感染性廃棄物の処理を行う場合には、感染性廃棄物の排出場所、排出方法等、排出事業者が留意すべき事項を指示するとともに、一般廃棄物の処理に関する事業に従事する職員に対し、医療行為に伴って生ずる廃棄物の全てが感染性廃棄物ではないこと、医療関係機関等から生ずる廃棄物の中には医療行為とは関係のないものがあること、また、感染症の予防を図る上で必要な知識その他について、知識の普及に努めること。
三 都道府県に関する事項
- (一) 感染性廃棄物の適正な処理を確保するため、都道府県医師会等の関係団体及び市町村と十分に協議しつつ、廃棄物処理計画の中に感染性廃棄物の処理について記載するとともに、必要に応じて排出事業者、郡市医師会等の関係団体、処理業者及び市町村が協議する場を保健所単位で設けること。また、廃棄物処理センターの設置に当たっては、当該地域の感染性廃棄物の処理状況を踏まえ、その処理を推進できるよう配慮すること。
- (二) 改正マニュアル、関係法令等の関係者への普及・啓発に努めるとともに、優良な処理業者の育成に努めること。
- (三) 感染性廃棄物の排出及び処理の状況の把握に努め、排出事業者と処理業者から必要な情報の収集、整理を行うとともに、これらの者が相互に必要な情報を提供しあえるよう、必要な措置を講ずること。
- (四) 感染性廃棄物については、都道府県の区域を越えて広域的かつ効率的に処理が行われていることに配慮しつつ、適正な処理の推進に当たること。
- (五) 廃棄物主管部局は、医務主管部局はもとより、結核・感染症主管部局とも十分に連携を図りつつ、排出事業者及び処理業者を指導する等により、適正な処理の推進に当たること。
別表
廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル
感染性廃棄物処理対策検討会
目次
- 第1章 総則
- 1.1 目的
- 1.2 用語の定義
- 1.3 適用範囲
- 1.4 感染性廃棄物の判断基準
- 第2章 廃棄物処理に関する一般的事項
- 2.1 廃棄物の処理方法
- 2.2 廃棄物の処理体制
- 第3章 医療関係機関等における感染性廃棄物の管理
- 3.1 感染性廃棄物の管理体制
- 3.2 感染性廃棄物の管理に関する基本的事項
- (1) 処理計画の作成
- (2) 管理規程の作成
- (3) 処理状況の帳簿記載及び保存
- 第4章 医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理
- 4.1 分別
- 4.2 施設内における移動
- 4.3 施設内における保管
- 4.4 梱包
- 4.5 表示
- 4.6 施設内処理
- 第5章 感染性廃棄物の処理の委託
- 5.1 委託契約
- 5.2 再委託の基準
- 5.3 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付等
- 5.4 排出事業者の責任
- 第6章 感染性廃棄物の収集運搬及び保管
- 6.1 収集運搬及び保管
- 6.2 運搬車両等
- 第7章 廃棄物処分業者が行う感染性廃棄物の処分
- (参考1.1)紙おむつについて
- (参考1.2)
- (1) 輸液点滴セットについて
- (2) 透析等回路について
- (参考2.1)ウイルス肝炎感染対策ガイドライン―医療機関内―(抜粋)
- (参考2.2)HIV医療機関内感染予防対策指針(抜粋)
- (参考2.3)HIV母子感染予防のガイドライン(抜粋)
- (参考3)滅菌又は消毒に当たって留意すべき事項
- (参考4)一類感染症、二類感染症及び三類感染症の消毒・滅菌に関する手引きについて(抜粋)
- (参考5)感染性廃棄物の処理において有効であることの確認方法について
- 感染性廃棄物処理対策検討会委員名簿
第1章 総則
1.1 目的
本マニュアルは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「法」という。)により特別管理廃棄物に指定された、感染性廃棄物(人が感染し、又は感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着している廃棄物又はこれらのおそれのある廃棄物をいう。以下同じ。)について、その適正な処理を確保するために必要で、かつ、具体的な手順等を、法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(昭和46年政令第300号。以下「令」という。)、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(昭和46年厚生省令第35号。以下「規則」という。)等に従い、具体的に解説することにより、感染性廃棄物の適正な処理を確保し、もって生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。
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【解説】
本マニュアルは、法に基づいて感染性廃棄物を適正に処理するために必要な、保管、収集運搬及び処分に関する手順を記述したものである。なお、今後、感染性廃棄物について新しい知見が集積された段階で、必要に応じて適宜、見直すこととする。
1.2 用語の定義
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【解説】
- 1 令における「感染性廃棄物」(広義の「感染性廃棄物」。令別表第1の4の項の下欄参照。)は、医療行為等により廃棄物となった脱脂綿、ガーゼ、包帯、ギブス、紙おむつ、注射針、注射筒、輸液点滴セット、体温計、試験管等の検査器具、有機溶剤、血液、臓器・組織等のうち、人が感染し、若しくは感染するおそれのある病原体が含まれ、若しくは付着し、又はこれらのおそれのあるものである。本マニュアルでは、そのうち、特に医療関係機関等から発生するものを「感染性廃棄物」(狭義の「感染性廃棄物」)と称することとする。感染性廃棄物は、特別管理廃棄物の一種であり、具体的には、「1.4 感染性廃棄物の判断基準」により判断されるものである。
- 2 一般廃棄物は、産業廃棄物以外の廃棄物であり、医療関係機関等からは紙くず、包帯、脱脂綿等が発生するがこれらのうち感染性廃棄物であるものを感染性一般廃棄物という。
- 3 産業廃棄物は、法で6種類、令で14種類の廃棄物が定められており、医療関係機関等からは血液(廃アルカリ又は汚泥)、注射針(金属くず)、レントゲン定着液(廃酸)等が発生するが、これらのうち感染性廃棄物であるものを感染性産業廃棄物という。
- 4 特別管理一般廃棄物は、令で8種類(感染性一般廃棄物を含む。)の廃棄物が定められている。
- 5 特別管理産業廃棄物は、令で58種類(感染性産業廃棄物を含む。)の廃棄物が定められている。
1.3 適用範囲
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【解説】
- 1 医療関係機関等から排出される廃棄物には、医療行為等に伴って発生する廃棄物と医療行為等以外の事業活動により排出される非感染性廃棄物があり、前者は更に感染性廃棄物と非感染性廃棄物とに区分される。本マニュアルが適用されるのは感染性廃棄物である。
- 2 発生時点において感染性廃棄物であっても、焼却等の処理により感染力が失われたものは通常の廃棄物であり、感染性一般廃棄物を処理したものは、いわゆる事業系一般廃棄物、感染性産業廃棄物を処理したものは産業廃棄物として、それぞれ処理することとなる。
- 3 感染性廃棄物のうち、医療法(昭和23年法律第205号)、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号。以下「感染症法」という。)、結核予防法(昭和26年法律第96号)、薬事法(昭和35年法律第145号)、家畜伝染病予防法(昭和26年法律第166号)等によって規制される廃棄物については、本マニュアルのほか、当該法令に基づいて取り扱うこととなる。
- 4 本マニュアルの対象となる者は、感染性廃棄物の処理に関わっているすべての者であり、医療関係機関等のほか、医療関係機関内で感染性廃棄物を取り扱う清掃業者、感染性廃棄物の処理の委託を受けた収集運搬業者、処分業者、感染性廃棄物の処理をその事務として行う市町村、都道府県等である。
1.4 感染性廃棄物の判断基準
感染性廃棄物の具体的な判断に当たっては、1、2又は3によるものとする。
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【解説】
- 1 感染性廃棄物の該否の判断は、廃棄物の「形状」、「排出場所」又は「感染症の種類」から客観的に判断することを基本とする。
- 2 血液製剤については、それ自体には感染性がないことから感染性廃棄物ではないが、外見上血液と見分けがつかない輸血用血液製剤(全血製剤、血液成分製剤)等は血液等に該当するものとする。
- 3 感染症病床とは感染症法により入院措置が講ぜられる一類、二類感染症、指定感染症及び新感染症の患者に係る病床をいう。
- 4 感染症病床等のうち、検査室とは採血を行う室、透析室及び微生物や病理学等に関する臨床検査室(検体検査を行う室)等をいう。
- 5 感染症法の四類及び五類感染症の治療又は検査等から排出される感染性廃棄物としては以下のものが挙げられる。
- (1) 医療器材...注射針、メス、ガラス製器材(試験管、シャーレ、アンプル、バイアル等)
- (2) ディスポーザブル製品...ピンセット、注射器、カテーテル類、透析等回路、輸液点滴セット、手袋、血液バッグ、リネン類等
- (3) 衛生材料...ガーゼ、脱脂綿等
- (4) その他...紙おむつ(感染症の種類等により感染性廃棄物とする。具体的には参考1.1参照のこと。)、標本(検体標本)等
- 6 医療器材としての注射針、メス、ガラス製品(破損したもの)等については、メカニカルハザードについて十分に配慮する必要があるため、感染性廃棄物と同等の取扱いとする。
また、鋭利なものについては、未使用のもの、血液が付着していないもの又は消毒等により感染性を失わせたものであっても、感染性廃棄物と同等の取扱いとする。 - 7 透析等回路(ダイアライザー、チューブ等)については、これらに含まれている血液等が分離されず一体的に処分されていることから、感染性廃棄物に該当する。また、輸液点滴セット(バックを除く。)については、血液等が付着している針が分離されず一体的に処分されていることから、感染性廃棄物に該当する。(参考1.2参照)
- 8 感染性廃棄物は、人に関する診療行為や医療関係の研究活動だけでなく、人畜共通感染症にり患又は感染した動物に関する診療行為や研究活動から発生することもある。
動物の血液等については、人の血液等と比較して、人に感染症を生じさせる危険性が低いことから、血液等を介して人に感染する人畜共通感染症にり患又は感染している場合を除き、感染性廃棄物として取り扱う必要はない。なお、人畜共通感染症は、り患又は感染している動物の血液等からのみ感染するわけではないことに注意が必要である。 - 9 感染性廃棄物の判断フローについては、次に示すとおりである。
第2章 廃棄物処理に関する一般的事項
2.1 廃棄物の処理方法
すべての廃棄物は、法に基づいて適正に処理しなければならない。
(参照)法第1条
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【解説】
- 1 法では、廃棄物は産業廃棄物とそれ以外の一般廃棄物に、また、産業廃棄物と一般廃棄物はそれぞれ特別管理廃棄物とそれ以外のものに区分され、各々について保管(産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を含む。)の排出事業者のみ)、収集運搬及び処分に関する基準が定められている。
- 2 法では、一般家庭の日常生活に伴って生ずる廃棄物の処理は市町村の責任で行うこととなっているが、事業活動に伴い生じた廃棄物については排出事業者が適正に処理する責務がある。
- 3 廃棄物は、次の表のとおり分類される。
- 4 医療関係機関等から排出される廃棄物は、法に規定する廃棄物の種類に応じて、次のとおり分類できる。
医療関係機関等から発生する主な廃棄物
種類
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例
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産業廃棄物
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燃え殻
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焼却灰
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汚泥
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血液(凝固したものに限る。)、検査室・実験室等の排水処理施設から発生する汚泥、その他の汚泥
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廃油
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アルコール、キシロール、クロロホルム等の有機溶剤、灯油、ガソリン等の燃料油、入院患者の給食に使った食料油、冷凍機やポンプ等の潤滑油、その他の油
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廃液
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レントゲン定着液、ホルマリン、クロム硫酸、その他の酸性の廃液
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廃アルカリ
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レントゲン現像廃液、血液検査廃液、廃血液(凝固していない状態のもの)、その他のアルカリ性の液
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廃プラスチック類
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合成樹脂製の器具、レントゲンフィルム、ビニルチューブ、その他の合成樹脂製のもの
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ゴムくず
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天然ゴムの器具類、ディスポーザブルの手袋等
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金属くず
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金属製機械器具、注射針、金属製ベッド、その他の金額製のもの
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ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず
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アンプル、ガラス製の器具、びん、その他のガラス製のもの、ギブス用石膏、陶磁器の器具、その他の陶磁器製のもの
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ばいじん
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大気汚染防止法第2条第2項のばい煙発生施設及び汚泥、廃油等の産業廃棄物の焼却施設の集じん施設で回収したもの
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一般廃棄物
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紙くず類、厨芥、繊維くず(包帯、ガーゼ、脱脂綿、リネン類)、木くず、皮革類、実験動物の死体、これらの一般廃棄物を焼却した「燃え殻」等
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5 政令で定める「特定の事業活動に伴って排出される紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物系固形不要物、動物のふん尿、動物の死体」は産業廃棄物に区分されるが、医療関係機関等の事業活動は「特定の事業活動」に該当しないため、当該機関から排出される場合は一般廃棄物に区分される。- 6 廃棄物の「処理」とは、廃棄物が発生してから最終的に処分されるまでの行為、すなわち、廃棄物の「分別」、「保管」、「収集運搬」、「再生」及び「処分」までの一連の流れの行為をいう。
また、この「処分」には、廃棄物を物理的、化学的、生物学的な方法により、無害化、安全化、安定化させるために行う「中間処理」と、実質的に埋立処分を意味する「最終処分」とがある。
2.2 廃棄物の処理体制
医療関係機関等は、医療行為等によって生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
(参照)法第3条
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【解説】
- 1 医療関係機関等は、廃棄物の排出事業者としての責務を有する。法では、事業者に係る次のような責務が一般廃棄物・産業廃棄物の区別に関係なく定められている。
- (1) 事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
- (2) 事業者は、その事業活動に伴って生じた廃棄物の再生利用を行うことによりその減量に努める。
- (3) 事業者は、このほか、廃棄物の減量その他その適正な処理の確保等に関し国及び地方公共団体の施策に協力しなければならない。
- 2 一般廃棄物及び特別管理一般廃棄物は、市町村が処理計画を策定して自ら処理する等、市町村の区域内の一般廃棄物の適正な処理に必要な措置を講ずる責務がある。市町村にあっては、感染性廃棄物を廃棄物処理計画の中に位置付け、その処理の推進を図る。しかしながら、事業活動に伴って発生する一般廃棄物及び特別管理一般廃棄物については、市町村によっては施設の処理能力の制約等により自ら処理していないところもある。したがって、医療関係機関等は、その機関等が存在する市町村が行っている処理体制について確認し、市町村が処理をしていない場合にあっては、自ら処理するか、市町村長の許可を受けている一般廃棄物処理業者に処理を委託しなければならない。
- 3 産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物は、排出事業者自らの責任で処理しなければならない。
したがって、医療関係機関等は、産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物を自ら処理するか、都道府県知事(保健所設置市にあっては市長。以下同じ。)の許可を受けた産業廃棄物処理業者に処理を委託しなければならない。なお、市町村又は都道府県が産業廃棄物の処理をその事務として行っている場合は、当該市町村又は都道府県に処理を委託することもできる。 - 4 感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物は、区分しないで収集運搬することができるので、これらを混合して特別管理産業廃棄物(感染性廃棄物)処理業者に委託することができる。また、市町村又は都道府県がこの処理を事務として行っている場合は、当該市町村又は都道府県に委託することができる。
(参照)法第14条の4第15項、規則第10条の20
第3章 医療関係機関等における感染性廃棄物の管理
3.1 感染性廃棄物の管理体制
医療関係機関等の管理者等は、施設内で生ずる感染性廃棄物を適正に処理するために、特別管理産業廃棄物管理責任者を置き、管理体制の充実を図らなければならない。
(参照)法第12条の2第6項
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【解説】
- 1 医療関係機関等の管理者等は、施設内における感染事故等を防止し、感染性廃棄物を適正に処理するために、特別管理産業廃棄物管理責任者を設置し、感染性廃棄物の取扱いに関し管理体制を整備しなければならない。ただし、管理者等自らが特別管理産業廃棄物管理責任者となることを妨げない。
(参照)法第12条の2第6項 - 2 医療関係機関等の特別管理産業廃棄物管理責任者は、必要に応じて作成された処理計画書及び管理規程に基づいて感染性廃棄物の排出、分別、梱包、中間処理等に係る具体的な実施細目を作成し、医師、看護師、清掃作業員等の関係者に周知・徹底するものとする。
感染性廃棄物の排出・分別については、医師等の医療関係機関等の従事者に加えて、患者、訪問者等も含めた対応が必要であることから、感染症病床等の患者をはじめ、関係者への周知を徹底するものとする。 - 3 感染性廃棄物に係る特別管理産業廃棄物管理責任者は、次のいずれかの者でなければならない。
- (1) 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師又は歯科衛生士
- (2) 2年以上法第20条に規定する環境衛生指導員の職にあった者
- (3) 学校教育法(昭和22年法律第26号)に基づく大学若しくは高等専門学校、旧大学令(大正7年勅令第388号)に基づく大学若しくは旧専門学校令(明治36年勅令第61号)に基づく専門学校において医学、薬学、保健学、衛生学若しくは獣医学の課程を修めて卒業した者又はこれと同等以上の知識を有すると認められる者
(参照)規則第8条の17
3.2 感染性廃棄物の管理に関する基本的事項
(1) 処理計画の作成
医療関係機関等の管理者等は、施設内で発生する感染性廃棄物の種類、発生量等を把握し、感染性廃棄物の適正な処理が行われるよう処理計画を定めるよう努めることとする。
また、市町村長から一般廃棄物の減量に関する計画の作成の指示を受けた医療関係機関等の管理者等は、当該計画を策定しなければならない。
さらに、前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上又は前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である医療関係機関等の管理者等は、廃棄物の減量その他その処理に関する計画を策定し、都道府県知事に対して提出するとともに、その翌年度には当該計画の実施状況について報告しなければならない。
(参照)法第6条の2第5項、法第12条第7項~第9項、法第12条の2第8項~第10項
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【解説】
- 1 管理者等は、医師、看護師等の意見を聴取した上で本マニュアルに基づき、施設内で発生する感染性廃棄物に該当する物を定める。
- 2 管理者等は、感染性廃棄物の種類ごとに発生施設及び発生量を今までの実績をもとに把握するものとする。
- 3 処理計画には、感染性廃棄物に関し、次の事項等を定めるものとする。ただし、感染性廃棄物を滅菌等処理し、非感染性廃棄物とする場合にあっては、感染性廃棄物の発生から滅菌等処理するまでの間について感染性廃棄物として記載することとする。なお、非感染性廃棄物となったものについては、非感染性廃棄物として処理計画を定めるものとする。
- (1) 発生状況
- (2) 分別方法
- (3) 施設内の収集運搬方法
- (4) 滅菌等の方法(施設内で処理を行う場合に限る。)
- (5) 梱包方法
- (6) 保管方法
- (7) 収集運搬業者及び処分業者の許可証、委託契約の写し(業者に委託する場合に限る。)
- (8) 緊急時の関係者への連絡体制
- 4 処理計画は必要に応じて見直すこととする。
- 5 処理計画は、冊子等の形態で編集し、施設内の関係者に配付するか又は関係者が見やすい場所に置くものとする。
- 6 診療所等で発生する感染性廃棄物は、一般に量が少ないこと、種類が限られていること、処理に関わる者が特定されていること等から、処理計画、管理規程を定める必要はないが、診療所等においても適正な管理体制の徹底を図るものとする。
- 7 また、市町村長から一般廃棄物の減量に関する計画の作成の指示を受けた医療関係機関等にあっては、当該一般廃棄物の減量に関する計画等を作成しなければならない。
(参照)法第6条の2第5項 - 8 さらに、前年度の産業廃棄物の発生量が1,000トン以上である医療関係機関等にあっては、下記基準に従って当該廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
- (1) 当該医療関係機関等において現に行っている事業の概要を記載すること。
- (2) 次に掲げる事項を定めること。
- ・計画期間
- ・産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項
- ・産業廃棄物の排出の抑制に関する事項
- ・産業廃棄物の分別に関する事項
- ・産業廃棄物の再生利用に関する事項
- ・産業廃棄物の処理に関する事項
- (3) 定められた様式(規則第8条の4の5に定める様式第2号の2)による書面を添付すること。
- (4) 当該年度の6月30日までに提出すること。
- (5) その計画の実施の状況を、翌年度の6月30日までに定められた様式(規則第8条の4の6に定める様式第2号の3)により報告すること。
- 9 前年度の特別管理産業廃棄物の発生量が50トン以上である医療関係機関等にあっては、下記基準に従って当該廃棄物の減量その他その処理に関する計画を作成し、都道府県知事に提出しなければならない。
- (1) 当該医療関係機関等において現に行っている事業の概要を記載すること。
- (2) 次に掲げる事項を定めること。
- ・計画期間
- ・特別管理産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項
- ・特別管理産業廃棄物の排出の抑制に関する事項
- ・特別管理産業廃棄物の分別に関する事項
- ・特別管理産業廃棄物の再生利用に関する事項
- ・特別管理産業廃棄物の処理に関する事項
- ・特別管理産業廃棄物を適正に処理するために講じようとする措置に関する事項
- (3) 定められた様式(規則第8条の17の2に定める様式第2号の4)による書面を添付すること。
- (4) 当該年度の6月30日までに提出すること。
- (5) その計画の実施の状況を、翌年度の6月30日までに定められた様式(規則第8条の17の3に定める様式第2号の5)により報告すること。
(参照)法第12条の2第8項及び第9項、規則第8条の17の2、規則第8条の17の3
- 10 8及び9によって提出、報告したものは、都道府県知事によって1年間公表される。
(参照)法第12条第9項、法第12条の2第10項
(2) 管理規程の作成
医療関係機関等の管理者等は、施設内における感染性廃棄物の取扱いについて、必要に応じて管理規程を作成するものとする。
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【解説】
- 1 管理規程には感染性廃棄物の具体的な取扱い方法、廃棄物の種類に応じた取扱い上の注意事項等を定めるものとし、管理者等は、これを施設内の関係者に周知徹底するものとする。
- 2 管理規程は、本マニュアル等の内容に従って定めるものとする。
(3) 処理状況の帳簿記載及び保存
医療関係機関等の管理者等は、感染性廃棄物の処理が適正に行われているかどうかを常に把握し、処理について帳簿を作成するとともに、一定期間保存しなければならない。
(参照)法第12条第11項、法第12条の2第12項、規則第8条の5、規則第8条の18
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【解説】
- 1 管理者等は、施設内における感染性廃棄物の分別、収集運搬、滅菌等の処理の状況を把握するとともに、必要に応じて医師、看護師等の関係者を指導するものとする。
- 2 管理者等は、感染性廃棄物の処理を業者に委託している場合にあっては、締結した契約に基づいて適正な処理が行われているかどうかを、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の管理等を通じて把握するものとする。
- 3 管理者等は、感染性廃棄物の処理の実績について、帳簿を備え、次の事項を記載し、これを1年毎に閉鎖するとともに、閉鎖後5年間保存しなければならない。
- (1) 運搬
- 1 運搬年月日
- 2 運搬方法及び運搬先ごとの運搬量
- 3 積替え又は保管を行う場合には、積替え又は保管の場所ごとの搬出量
- (2) 運搬の委託
- 1 委託年月日
- 2 受託者の氏名又は名称及び住所並びに許可番号
- 3 運搬先ごとの委託量
- (3) 処分
- 1 処分年月日
- 2 処分方法ごとの処分量
- 3 処分(埋立処分を除く。)後の廃棄物の持出先ごとの持出量
- (4) 処分の委託
- 1 委託年月日
- 2 受託者の氏名又は名称及び住所並びに許可番号
- 3 受託者ごとの委託の内容及び委託量
- 4 帳簿の作成は、産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物を生ずる事業者のみならず、一般廃棄物、産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物の収集運搬業者又は処分業者にも必要となる。
(参照)法第7条第11項、法第14条第15項、法第14条の4第16項
- (1) 運搬
第4章 医療関係機関等の施設内における感染性廃棄物の処理
4.1 分別
感染性廃棄物は他の廃棄物と分別して排出するものとする。
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【解説】
- 1 医療関係機関等から発生する廃棄物は、一般に次のように区分できる。
- (1) 感染性廃棄物
- (2) 非感染性廃棄物(医療行為等に伴って生ずる廃棄物のうち感染性廃棄物以外の廃棄物)
- (3) 上記以外の廃棄物(紙くず、厨芥等)
- 2 感染性廃棄物は、公衆衛生の保持及び病原微生物の拡散防止の徹底の観点から、より安全に配慮した取扱いを要するものであり、このため廃棄物の発生時点において他の廃棄物と分別するものとする。
ただし、感染性廃棄物と同時に生ずる他の廃棄物を感染性廃棄物と同等の取扱いをする場合は、この限りでない。 - 3 感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物の各々について別の形態、方式で処理を行う場合は、これらも必ず区分しなければならない。
- 4 感染性廃棄物は、「4.4梱包」による梱包が容易にできるよう、排出時点で次のとおり分別することが望ましい。
- (1) 液状又は泥状のものと固形状のものは分別する。
- (1) 鋭利なものは他の廃棄物と分別する。
- 5 診療所等において、分別の必要のない方法により処分する場合であって、分別の結果長期間にわたる保管が必要となる等の理由により分別排出することが困難な場合は、鋭利なものにも泥状のものにも対応する容器を用いる等安全に配慮した上で、分別排出をしなくてもよい。
- 6 なお、感染性産業廃棄物の収集運搬又は処分を行う者は、感染性一般廃棄物の収集運搬又は処分を行うことができる。
4.2 施設内における移動
感染性廃棄物の施設内における移動は、移動の途中で内容物が飛散・流出するおそれのない容器で行うものとする。
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【解説】
梱包前の感染性廃棄物は、蓋のついた容器に入れて蓋をすること等により、移動の途中で飛散・流出するおそれがないようにし、カート等により移動させるものとする。
なお、感染性廃棄物は廃棄時に直接容器に入れることが望ましいが、やむを得ず施設内で容器への移し替えを行う場合には、当該感染性廃棄物が飛散・流出しないよう十分に注意することが必要である。
4.3 施設内における保管
(参照)法第12条の2第2項、規則第8条の13
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【解説】
- 1 腐敗するおそれのある感染性廃棄物をやむを得ず長期間保管する場合は、容器に入れ密閉すること、冷蔵庫に入れること等当該感染性廃棄物が腐敗しないように必要な措置を講じなければならない。
(参照)規則第8条の13第5号 - 2 感染性廃棄物の保管は、保管施設により行い、当該感染性廃棄物の飛散・流出・地下浸透・悪臭発散が生じないようにし、汚水が生ずるおそれがある場合には公共水域及び地下水の汚染を防止するために必要な排水溝その他の設備を設けるとともに底面を不浸透性の材料で覆うことその他必要な措置を講じなければならない。
(参照)規則第8条の13第2号 - 3 保管施設には、周囲に囲いが設けられ、かつ、見やすい箇所に、次の例を参考にして取扱注意の表示を行う。表示は縦横それぞれ60cm以上とする。
(参照)規則第8条の13第1号
表示の例
注意
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- 4 スペースの関係上専用の保管施設が設けられない場合は、関係者以外がみだりに立ち入ることができない所で感染性廃棄物の保管を行うこと。
- 5 感染性廃棄物の保管場所には、ねずみが生息し、蚊、はえその他の害虫が発生しないようにしなければならない。
(参照)規則第8条の13第3号 - 6 感染性廃棄物に他の物が混入するおそれのないように仕切りを設けること等必要な措置を講ずること(ただし、感染性一般廃棄物と感染性産業廃棄物が混合している場合であって、当該感染性廃棄物以外の物が混入するおそれのない場合を除く。)。
(参照)規則第8条の13第4号
4.4 梱包
感染性廃棄物の収集運搬を行う場合は、必ず容器に収納して収集運搬することになっているため、収集運搬に先立ち、あらかじめ、次のような容器に入れて、密閉しなければならない。
(参照)令第6条の5第1項第1号、規則第1条の11
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【解説】
- 1 梱包は、「鋭利なもの」、「固形状のもの」、「液状又は泥状のもの」の3種類に区分して、次のように行うことを原則とするが、同一の処理施設で処理される場合には、必要に応じ、一括梱包することができるものとする。ただし、一括梱包する場合には、廃棄物の性状に応じた容器の材質等をあわせ持つものを使用するものとする。
- (1) 注射針、メス等の鋭利なものは、金属製、プラスチック製等で危険防止のために耐貫通性のある堅牢な容器を使用すること。
- (2) 固形状のものは、丈夫なプラスチック袋を二重にして使用するか、堅牢な容器を使用すること。
- (3) 液状又は泥状のものは、廃液等が漏洩しない密閉容器を使用すること。
- 2 容器の形状及び大きさ並びに容器を設置する場所は、発生場所や発生量、投入のしやすさを勘案して選択するものとする。
- 3 容器に入った感染性廃棄物を他の容器に移し替えることは、飛散・流出の防止の観点から好ましくない。
- 4 感染性廃棄物は、容器に入れた後密閉する。
4.5 表示
感染性廃棄物を収納した容器には、感染性廃棄物である旨及び取り扱う際に注意すべき事項を表示するものとする。
(参照)令第6条の5第1項第1号、規則第1条の10
非感染性廃棄物を収納した容器には、必要に応じて非感染性廃棄物であることの表示を行うことを推奨する。
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【解説】
- 1 関係者が感染性廃棄物であることを識別できるよう、容器にはマーク等を付けるものとする。マークは全国共通のものが望ましいため、右記のバイオハザードマークを推奨する。マークを付けない場合には、「感染性廃棄物」(感染性一般廃棄物又は感染性産業廃棄物のみが収納されている場合は、各々の名称)と明記すること。
- 2 廃棄物の取扱者に廃棄物の種類が判別できるようにするため、性状に応じてマークの色を分けることが望ましい。
- (1) 液状又は泥状のもの(血液等) 赤色
- (2) 固形状のもの(血液等が付着したガーゼ等) 橙色
- (3) 鋭利なもの(注射針等) 黄色
- 3 非感染性の廃棄物であっても、外見上感染性廃棄物との区別がつかないこと等から、感染性の廃棄物としてみなされることがある。その場合、医療関係機関等と処理業者との間の信頼関係を構築し、医療関係機関等が責任を持って非感染性廃棄物であることを明確にするために、非感染性廃棄物(感染性廃棄物を消毒処理したものや、判断基準に基づき非感染性と判断されたもの。)の容器に非感染性廃棄物であることを明記したラベル(以下「非感染性廃棄物ラベル」という。)を付けることを推奨する。非感染性廃棄物ラベルの導入により、意識して感染性、非感染性廃棄物の分別が進むことも期待される。
非感染性廃棄物ラベルの導入に当たっては、関係者間で事前に十分に調整し、導入の方法(対象とする廃棄物等)等を決めておくことが必要である。
非感染性廃棄物
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医療機関等名
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特別管理産業廃棄物営業責任者
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排出年月日
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非感染性廃棄物ラベルの例
- 4 非感染性廃棄物ラベルの仕様は、関係者間で合意したものを使用することが望ましく、ラベルの大きさ、文字は見やすいものとする。
たとえば、特別区では、大きさは縦55mm、横70mm、字体はゴシック体のものが使われており、参考となる。
4.6 施設内処理
感染性廃棄物は、原則として、医療関係機関等の施設内の焼却設備で焼却、溶融設備で溶融、滅菌装置で滅菌又は肝炎ウイルスに有効な薬剤又は加熱による方法で消毒(感染症法その他の法律に規定されている疾患にあっては、当該法律に基づく消毒)するものとする。
(参照)特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法(平成4年厚生省告示第194号)
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【解説】
- 1 医療関係機関等は、発生した感染性廃棄物を自ら処理する場合は、施設内の焼却設備で焼却、溶融設備で溶融、滅菌装置で滅菌又は肝炎ウイルスに有効な薬剤又は加熱による方法で消毒することにより、感染性を失わせなければならない。(感染性を失った処理残渣等は、非感染性廃棄物として処理できることとなる。)
一方、焼却設備、溶融設備、滅菌装置を有していない場合、消毒を行うことのできない場合、焼却設備を有しているが焼却炉の性能等から効果的な処理が期待できない場合、完全に感染性を失わせる処理が行われていない場合、周辺の生活環境の保全上焼却設備を稼働することが好ましくないと判断される場合等には、特別管理産業廃棄物処分業者等に委託して処理しなければならない。 - 2 医療関係機関等の施設内で行う処分は、次の方法により行わなければならない。(参考3参照)
- (1) 焼却設備を用いて焼却する方法
- (2) 溶融設備を用いて溶融する方法
- (3) 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)装置を用いて滅菌する方法(さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。)
- (4) 乾熱滅菌装置を用いて滅菌する方法(さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。)
- (5) 消毒する方法(肝炎ウイルスに有効な薬剤又は加熱による方法とし、さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。「ウイルス肝炎感染対策ガイドライン」(参考2.1)、「一類感染症、二類感染症及び三類感染症の消毒・滅菌に関する手引きについて」(参考4)又は「感染性廃棄物の処理において有効であることの確認方法について」(参考5)参照。ただし、感染症法、結核予防法及び家畜伝染病予防法に規定する疾患に係る感染性廃棄物にあっては、当該法律に基づく消毒。)
- 3 消毒において肝炎ウイルスに効果のある方法としたのは、肝炎ウイルスの1つのB型肝炎ウイルスが最も消毒薬に対して抵抗性の強い病原微生物のひとつであることから、肝炎ウイルスに効果のある方法で消毒すれば、ほとんどすべての病原微生物は不活化されると考えられるためである。
- 4 なお、2の(1)から(5)のほか、感染性廃棄物の処分方法として適切であると認められるものについては、順次追加することとしている。
- 5 医療関係機関等において廃棄物処理施設を設置する場合は、廃棄物の種類若しくは施設の種類又は規模により都道府県知事の許可が必要となる。
第5章 感染性廃棄物の処理の委託
5.1 委託契約
医療関係機関等は、感染性廃棄物の処理を自ら行わず他人に委託する場合は、法に定める委託基準に基づき事前に委託契約を締結しなければならない。
(参照)法第12条の2第4項、令第6条の6
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【解説】
- 1 法においては、排出事業者が自らの責任において廃棄物を処理することと定められており、委託処理する場合においても排出事業者は廃棄物が処分されるまでの責任を負うため、委託をする場合には定められた基準を守らなければならない。
- 2 感染性廃棄物の運搬又は処分を委託する場合は、運搬については特別管理産業廃棄物収集運搬業者、市町村、都道府県等に、処分については特別管理産業廃棄物処分業者、市町村、都道府県等にそれぞれ委託しなければならない。
(参照)法第12条の2第3項、規則第8条の14、規則第8条の15 - 3 医療関係機関等は、感染性廃棄物の処理を特別管理産業廃棄物処理業者に委託する場合は、受託者が都道府県知事から感染性廃棄物の収集運搬又は処分の業の許可を受けた者であることを確認しなければならない。
法では、廃棄物処理業の許可権者は次のように整理されている。
取り扱う廃棄物の種類
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業の許可区分
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許可権者
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産業廃棄物
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産業廃棄物収集運搬業
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都道府県知事又は保健所設置市長
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産業廃棄物処分業
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感染性産業廃棄物
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特別管理産業廃棄物収集運搬業*
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特別管理産業廃棄物処分業*
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一般廃棄物
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一般廃棄物収集運搬業
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市町村長又は特別区長
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一般廃棄物処分業
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*感染性廃棄物の収集運搬又は処分を事業の範囲に含むものに限る。
また、委託に当たっては、業者が提出した許可証の写し等により、必ず次の事項を確認すること。
- (1) 業の区分(収集運搬業、処分業)
- (2) 取り扱うことのできる廃棄物の種類(許可品目に「感染性産業廃棄物」が含まれていること。)
- (3) 許可の条件(作業時間等)
- (4) 許可期限
- (5) 運搬の委託の場合には、業者が積替え又は保管を行うかどうか及び行う場合には積替え又は保管を行う場所の所在地、保管できる廃棄物の種類及び保管上限
- (6) 処分の委託の場合には、処理施設の種類及び処理能力
- (7) その他
(例)
A県の病院が、感染性廃棄物の焼却をB県の特別管理産業廃棄物処分業者(甲社)に、甲社の事業場までの収集運搬を特別管理産業廃棄物収集運搬業者(乙社)に、それぞれ委託しようとする場合、
- ・ 甲社が有すべき許可は、B県知事による特別管理産業廃棄物(感染性産業廃棄物を含む。)の処分業(焼却処分)の許可
- ・ 乙社が有すべき許可は、A県知事及びB県記事による特別管理産業廃棄物(感染性産業廃棄物を含む。)の収集運搬業の許可となる。
さらに、感染性廃棄物の運搬又は処分を委託するときは、委託しようとする感染性廃棄物の種類、数量、性状及び荷姿、当該感染性廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項を文書で業者に通知しなければならない。
(参照)法第12条の2第3項及び第4項、令第6条の6
- 4 医療関係機関等は、感染性廃棄物の処理を収集運搬業者又は処分業者に委託する場合は、事前に当該業者と書面により直接委託契約を結ばなければならない。当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれているとともに、受託者が他人の廃棄物の運搬又は処分若しくは再生を業として行うことができる者であって委託しようとする廃棄物の運搬又は処分若しくは再生がその事業の範囲に含まれるものであることを証する書面(例:許可証の写し)が添付されていなければならない。
- (1) 委託する感染性廃棄物の種類及び数量
- (2) 感染性廃棄物の運搬を委託するときは、運搬の最終目的地の所在地
- (3) 感染性廃棄物の処分又は再生を委託するときは、その処分又は再生の場所の所在地、その処分又は再生の方法及びその処分又は再生に係る施設の処理能力
- (4) 感染性廃棄物の最終処分を委託するときは、最終処分の場所の所在地、最終処分の方法及び最終処分に係る施設の処理能力
- (5) 委託契約の有効期間
- (6) 委託者が受託者に支払う料金
- (7) 受託者が感染性廃棄物の収集運搬業又は感染性廃棄物の処分業の許可を有する場合には、その事業の範囲
- (8) 感染性廃棄物の運搬に係る委託契約にあっては、受託者が当該委託契約に係る感染性廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管を行う場所の所在地並びに当該場所において保管できる感染性廃棄物の種類及び当該場所に係る積替えのための保管上限
- (9) 委託者の有する委託した感染性廃棄物の適正な処理のために必要な次に掲げる事項に関する情報
- ア 感染性廃棄物の性状及び荷姿に関する事項
- イ 通常の保管状況の下での腐敗、揮発等感染性廃棄物の性状の変化に関する事項
- ウ 他の廃棄物との混合等により生ずる支障に関する事項
- エ その他感染性廃棄物を取り扱う際に注意すべき事項
- (10) 委託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項
- (11) 委託契約を解除した場合の処理されない感染性廃棄物の取扱いに関する事項
- 5 医療関係機関等は、その委託契約書及び添付された書面を終了した日から5年間保存しなければならない。
(参照)規則第8条の16の4
5.2 再委託の基準
感染性廃棄物の収集運搬業者又は処分業者は、感染性廃棄物の収集運搬又は処分を他人に委託してはならない。ただし、一定の基準に従って委託する場合については、この限りではない。
(参照)法第14条の4第14項
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【解説】
- 1 感染性廃棄物の収集運搬業者又は処分業者は、感染性廃棄物の収集運搬又は処分を他人に委託してはならない。
- 2 ただし、医療関係機関等が承諾した場合に限り、再委託することができる。この場合、再委任しようとする収集運搬業者又は処分業者は、医療関係機関等に対して再委託者の氏名又は名称及び当該再委託が委託基準に適合する旨を明らかにし、医療関係機関等の書面による承諾を受けなければならない。
- 3 医療関係機関等は、再委託の承諾をしたときは、承諾書面の写しをその承諾をした日から5年間保存しなければならない。
5.3 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付等
(参照)法第12条の5
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【解説】
- 1 感染性廃棄物を適正に処理するためには、その性状等を十分把握する必要がある。このため、感染性廃棄物の処理を委託する際には、業者が取扱い方法を誤らないよう、感染性廃棄物の種類、性状等に関する情報を十分伝えることが必要である。
- 2 感染性廃棄物の処理の流れを的確に把握し、最終処分まで適正に処理されたことを、排出事業者である医療関係機関等が自ら確認するための方法としてマニフェストを交付することとされている。医療関係機関等の事業者(中間処理業者(例:感染性廃棄物の焼却業者等)を含む。)は、感染性廃棄物(感染性産業廃棄物を含む。)の処理を他人に委託する場合には、次により処理の受託者に対しマニフェストを交付する。この場合、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物をまとめて取り扱う場合には、全体についてマニフェストを使用することもできることとし、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物を区別して取り扱う場合には、感染性産業廃棄物についてのみマニフェストを使用することとする。
- (1) 当該感染性廃棄物の引渡しと同時に交付すること。
- (2) 当該感染性廃棄物の種類ごとに交付すること。
- (3) 運搬先が複数ある場合は、運搬先ごとに交付すること。
- (4) 当該感染性廃棄物の数量及び受託者の氏名又は名称がマニフェストに記載された事項と相違ないことを確認の上、交付すること。
- (5) 交付したマニフェストの控えは、運搬受託者(処分受託者がいる場合には、処分受託者)からマニフェストの写しの送付があるまでの間保管すること。
- 3 医療関係機関等の事業者(中間処理業者を含む。)がマニフェストに記載する事項及びその様式は次のとおり定められている。
- (1) 委託に係る感染性廃棄物の種類及び数量
- (2) 運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称及び住所
- (3) マニフェストの交付年月日及び交付番号
- (4) 運搬又は処分を委託した者の氏名又は名称及び住所
- (5) 感染性廃棄物を排出した事業場の名称及び所在地
- (6) マニフェストの交付を担当した者の氏名
- (7) 運搬先の事業場の名称及び所在地並びに運搬受託者が当該感染性廃棄物の積替え又は保管を行う場合には、当該積替え又は保管の場所の所在地
- (8) 当該感染性廃棄物の荷姿
- (9) 当該感染性廃棄物に係る最終処分を行う場所の所在地
- (10) 中間処理業者にあっては、交付又は回付された当該感染性廃棄物に係るマニフェストを交付した者の氏名又は名称及びマニフェストの交付番号(処分委託者が電子マニフェストを利用している場合には登録番号)
- 4 運搬受託者は、運搬を終了したときは、運搬を担当した者の氏名及び運搬を終了した年月日をマニフェストに記載し、運搬を終了した日から10日以内(電子マニフェストの場合にあっては3日以内。)に、マニフェストを交付した者に当該マニフェストの写しを送付しなければならない。この場合において、当該感染性廃棄物について処分を受託した者があるときは、当該処分を受託した者にマニフェストを回付しなければならない。
- 5 処分受託者は、処分を終了したときは、処分を担当した者の氏名及び処分を終了した年月日(当該処分が最終処分である場合にあっては、これらの事項に加えて当該最終処分を行った場所の所在地及び最終処分が終了した旨)をマニフェストに記載し、処分を終了した日から10日以内に、マニフェストを交付した医療関係機関等に当該マニフェストの写しを送付しなければならない。この場合において、当該マニフェストが運搬受託者から回付されたものであるときは、当該回付をした者にもマニフェストの写しを送付しなければならない。
- 6 処分受託者は、5の前段又は本項の規定により、当該処分に係る中間処理産業廃棄物について最終処分が終了した旨が記載された管理票の写しの送付を受けたときは、最終処分が終了した旨、当該最終処分を行った場所の所在地及び最終処分が終了した年月日を記載するとともに、2で交付された、又は4で回付されたマニフェストに係るすべての中間処理産業廃棄物について最終処分が終了したことを確認の上10日以内に、マニフェストを交付した医療関係機関等に当該マニフェストの写しを送付しなければならない。
- 7 医療関係機関等は、マニフェストの控えと処分業者から返送されるマニフェストの写しをつき合わせることにより感染性廃棄物が適正に処理されたことを確認し、それらのマニフェストを、送付を受けた日から5年間保存しなければならない。
- 8 医療関係機関等は、マニフェストの交付の日から60日以内に4、5によるマニフェストの写しの送付を受けないとき若しくはマニフェストの交付の日から180日以内に6による最終処分が終了した旨が記載されたマニフェストの写しの送付を受けないとき又は未記載や虚偽記載のあるマニフェストの送付を受けたときは、速やかに当該マニフェストに係る感染性廃棄物の運搬又は処分の状況を把握し、生活環境の保全上の支障の除去又は発生の防止のために必要な措置を講じるとともに、期間が経過した日から30日以内に、関係都道府県知事に規則様式第4号により報告しなければならない。
- 9 マニフェストの写しの送付を受けた運搬受託者は、当該写しを5年間保存しなければならない。
- 10 運搬受託者(処分受託者があるときには、処分受託者)は、マニフェストを5年間保存しなければならない。
- 11 医療関係機関等の事業者(中間処理業者を含む。)は、マニフェストの交付に代えて、環境大臣の指定を受けた情報処理センターの運営する電子マニフェストシステムを利用することにより、感染性廃棄物が適正に処理されたことを確認することができる。電子マニフェストシステムは、マニフェストの交付、保存等マニフェストに関する事務手続を簡素化するだけでなく、感染性廃棄物の処理状況の迅速な把握等に資するものであるため、積極的に利用することが望ましい。なお、財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが情報処理センターとしての指定を受けている。
- 12 なお、マニフェストの不交付、虚偽記載、虚偽マニフェストの交付、保管義務違反については、罰則(50万円以下の罰金)が科されている。
(参照)法第29条
5.4 排出事業者の責任
医療関係機関等は、委託基準やマニフェストについて法令上の義務を遵守することに加えて、感染性廃棄物が最終処分に至るまでの一連の行程における処理が不適正に行われることがないように、必要な措置を講ずるように努めなければならない。
(参照)法第12条の2第5項
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【解説】
- 1 廃棄物処理基準に適合しない廃棄物の不適正な処分(例えば不法投棄等)が行われた場合において、生活環境保全上の支障が生じ、又は生ずるおそれがあると認められるときは、一般廃棄物にあっては市町村長、産業廃棄物にあっては都道府県知事は次に掲げる者に対して、その支障の除去等の措置を講ずべきことを命ずることができる。
- (1) 処分基準に適合しない処分を行った者
- (2) 不適正処分された廃棄物の発生から処分までの行程で委託基準に違反した者
- (3) 不適正処分された廃棄物の発生から処分までの行程でマニフェストに関する義務規定に違反した者
- (4) 不適正処理を行った者に対してそれを要求、依頼、教唆〈きようさ〉、幇助〈ほうじよ〉を行った者
- 2 また、排出事業者が感染性廃棄物の発生から最終処分に至るまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるとの注意義務に違反した場合には、委託基準やマニフェストに係る義務に違反がない場合であっても、一定の要件の下に排出事業者は措置命令の対象となる。一定の要件とは、不適正処分を行った者(委託により当該処分が行われたときは、当該委託をした者)のみでは資力等の事情からみて措置命令の履行が見込めず、さらに排出事業者が処理に対し適正な処理費用を負担していないとき、不適正処分が行われていることを知り、又は知ることができたとき等、排出事業者の責務に照らしてその不適正処理について原状回復等の措置をとらせることが適当であると認められる事由がある場合とされている。
(参照)法第19条の6 - 3 したがって、医療関係機関等の排出事業者は、委託基準やマニフェストについて法令上の義務を遵守することに加えて、廃棄物が最終処分に至るまでの一連の行程における処理が不適正に行われることがないように、次のような必要な措置を講じ、状況に応じた注意義務を果たすことが必要である。
- (1) 技術的能力や経理的基礎を欠く状況に陥っている等、不適正処理を行うおそれのある産業廃棄物処理業者に委託しないこと。
- (2) 適正な処理に必要な料金を負担すること。
- (3) 不適正処理が生ずることを知った場合に委託を中止する等の状況に応じた適切な措置を講ずること。
- 4 そのため、産業廃棄物処理業者や処理料金に関する状況を把握することができるよう、都道府県、市町村、廃棄物処理関係団体等から積極的な情報収集を行い、処理を委託する前から十分に注意を払う必要がある。
図 産業廃棄物の処理(他人に委託して処理する場合)の流れ
図 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の流れ
第6章 感染性廃棄物の収集運搬及び保管
6.1 収集運搬及び保管
(参照)第6条の5第1項第1号
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【解説】
- 1 医療関係機関等(自ら感染性廃棄物を施設外に運搬する場合等)、市町村、都道府県又は収集運搬業者が感染性廃棄物を収集運搬する場合は、特別管理産業廃棄物処理基準に従って行わなければならない。
- 2 感染性廃棄物の収集運搬は、次のように行うこと。
- (1) 感染性廃棄物が飛散・流出しないようにすること。
- (2) 当該収集運搬に伴う悪臭・騒音・振動によって生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
- (3) 収集運搬のための施設を設置する場合は、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
- (4) 収集運搬の際には、感染性廃棄物の種類、取り扱う際に注意すべき事項を記載した文書を作成し携帯する、又は運搬容器に当該事項が表示されていること。
- (5) 感染性廃棄物の収集運搬を行う場合には、必ず容器に収納して収集運搬すること。容器は、密閉でき、収納しやすく、損傷しにくい構造を有するものであること。
- (6) 感染性廃棄物の運搬に当たっては、他の廃棄物と混載しないこと。
- (7) 運搬車両等については、6.2によること。
- 3 感染性廃棄物の積替えは、次のように行うこと。
- (1) 感染性廃棄物を積み替える場合には、冷蔵する、容器に入れ密閉する等腐食防止のために必要な措置を講ずるとともに、あらかじめ積替えを行った後の運搬先が定められていること、搬入された感染性廃棄物の量が、積替えの場所において適切に保管できる量を超えるものでないこと、及び搬入された感染性廃棄物が腐敗しないうちに搬出することが必要である。
- (2) 積替えの場所は、次のようにすること。
- ア 感染性廃棄物が飛散・流出・地下浸透・悪臭発散しないように必要な措置を講ずること。
- イ ねずみが生息し、蚊、はえその他の害虫が発生しないようにすること。
- ウ 周囲に囲いが設けられ、かつ、見やすい箇所に感染性廃棄物の積替えの場所であること並びに管理者の氏名又は名称及び連絡先を表示すること。
- エ 感染性廃棄物がその他の物と混合するおそれのないように、仕切りを設ける等必要な措置を講ずること。
- (3) 感染性廃棄物はその性状から、処理の経路が複雑にならないようにする必要があり、原則として、収集後、直接廃棄物焼却施設等へ運搬すること。なお、焼却施設等が遠距離にある、あるいは、収集量が少なく輸送効率が著しく悪い等の場合には、積替えを行ってもよい。
- (4) 容器に入った感染性廃棄物を他の容器に移し替えることは、飛散・流出の防止の観点から好ましくないので、原則として行わないものとする。やむを得ず他の容器に移し替える場合は、飛散・流出の防止の措置を講じるとともに、作業員の安全にも十分に配慮すること。
- 4 感染性廃棄物による作業員への事故を防止するために、作業中は保護具(ゴム手袋又はプラスチック製の手袋、保護メガネや保護マスク等)を着用することが望ましい。また、緊急時における連絡体制等を備えておくことも必要である。
6.2 運搬車両等
収集運搬する車両等は、感染性廃棄物の容器が車両等より落下し、及び悪臭が漏れるおそれのない構造を有するものとする。
(参照)令第6条の5第1項第1号
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【解説】
運搬車両等は、感染性廃棄物が飛散・流出・悪臭発散するおそれのないものでなければならない。このため、専用の運搬車両等を使用する、又は運搬車両等に仕切りを設ける等の措置を講ずる必要がある。具体的には、屋根が付いたボックスタイプのもの、又は荷台に丈夫な覆いを設ける等、また、屋根や覆いのない運搬車両等を使用する場合、容器は雨水による影響を受けないものであることが望ましい。
第7章 廃棄物処分業者が行う感染性廃棄物の処分
(参照)特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物の処分又は再生の方法として環境大臣が定める方法(平成4年厚生省告示第194号)
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【解説】
- 1 感染性廃棄物の処分業者は、最終処分を行う前に焼却等により感染性を失わせなければならない。
- 2 感染性廃棄物の処理は、次の方法により行わなければならない。
- (1) 焼却設備を用いて焼却する方法
- (2) 溶融設備を用いて溶融する方法
- (3) 高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)装置を用いて滅菌する方法(さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。)
- (4) 乾熱滅菌装置を用いて滅菌する方法(さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。)
- (5) 消毒する方法(肝炎ウイルスに有効な薬剤又は加熱による方法とし、さらに破砕する等滅菌したことを明らかにすること。「ウイルス肝炎感染対策ガイドライン」(参考2.1)又は「感染性廃棄物の処理において有効であることの確認方法について」(参考4)参照。ただし、感染症法、結核予防法及び家畜伝染病予防法に規定する疾患に係る感染性廃棄物にあっては、当該法律に基づく消毒。)
- 3 2の(3)~(5)の処理を行う場合には、滅菌又は消毒が完全に行われるように破砕することとし、感染性病原体が飛散するおそれがないように行うことのできる施設で行うこととする。また滅菌の場合には、滅菌が完全に行われるよう、滅菌時間及び滅菌温度の調節を適切に行うことができる者が行うこととし、消毒の場合には消毒を完全に行うため、必要な消毒能力のある消毒用薬剤又は加熱装置を用い、かつ、消毒用薬剤の濃度や量、加熱温度や時間の調節等の管理ができる者が行うこと。
- 4 感染性廃棄物を処理施設に投入する場合は、作業中の感染の危険性を避けるため、梱包された状態のままで行う等衛生的に行うこと。
- 5 処理に直接従事する職員が、取り扱う感染性廃棄物により感染症にり患しないよう、安全に作業を行うとともに、健康管理に留意すること。
- 6 焼却又は溶融を行う設備については、焼却又は溶融を完全に行うことのできるものを使用し、かつ、当該設備から排出される排ガスにより、生活環境の保全上支障が生じないようにしなければならない。
- 7 焼却設備のうち、法第15条第1項に規定する産業廃棄物処理施設(廃プラスチック類の焼却施設であって処理能力が100kg/日を超えるもの、汚泥の焼却施設であって処理能力が5m3/日を超えるもの又は200kg/時以上のもの等)に該当するものの構造及び維持管理は、基準を満たすものでなければならない。
- (1) 規則第12条及び第12条の2第5項に規定する焼却施設の構造に係る主な基準は以下のとおり。
- ① 自重、積載荷重、その他の荷重、地震力、温度能力に対して、構造耐力上安全であること。
- ② 産業廃棄物の処理に伴い生ずる排ガス・排水、施設において生ずる薬剤等による腐食を防止するために必要な措置が講じられていること。
- ③ 産業廃棄物の飛散・流出・悪臭発散を防止するために必要な構造のものであり、又は必要な設備が設けられていること。
- ④ 著しい騒音、振動を発生し、周囲の生活環境を損なわないものであること。
- ⑤ 施設から排水を放流する場合は、その水質を生活環境の保全上支障が生じないものとするために必要な排水処理設備が設けられていること。
- ⑥ 産業廃棄物の受入設備、処理された産業廃棄物の貯留設備は、施設の処理能力に応じ、十分な容量を有するものであること。
- ⑦ 外気と遮断された状態で、定量ずつ連続的に産業廃棄物を燃焼室に投入することができる供給装置が設けられていること。
- ⑧ 次の要件を備えた燃焼設備が設けられていること。
- ア 燃焼室において発生するガス(以下「燃焼ガス」という。)の温度が800℃以上の状態で産業廃棄物を焼却することができるものであること。
- イ 燃焼ガスが、800℃以上の温度を保ちつつ、2秒以上滞留できるものであること。
- ウ 外気と遮断されたものであること。
- エ 燃焼ガスの温度を速やかにアに掲げる温度以上にし、これを保つために必要な助燃装置が設けられていること。
- オ 燃焼に必要な量の空気を供給できる設備が設けられていること。
- ⑨ 燃焼室中の燃焼ガスの温度を連続的に測定し、記録するための装置が設けられていること。
- ⑩ 集じん器に流入する燃焼ガスの温度をおおむね200℃以下に冷却することができる冷却設備が設けられていること。
- ⑪ 集じん器に流入する燃焼ガスの温度を連続的に測定し、記録するための装置が設けられていること。
- ⑫ 施設の煙突から排出されるガスによる生活環境保全上の支障が生じないようにすることができる排ガス処理設備(ばいじんを除去する高度の機能を有するものに限る。)が設けられていること。
- ⑬ 排ガス中の一酸化炭素の濃度を連続的に測定し、記録するための装置が設けられていること。
- ⑭ ばいじんを焼却灰と分離して排出し、貯留することができる灰出し設備及び貯留設備が設けられていること。
- (2) 規則第12条の6及び第12条の7第5項に規定する焼却施設の維持管理の主な基準は以下のとおり。
- ① 受け入れる産業廃棄物の種類及び量が当該施設の処理能力に見合った適正なものとなるよう、受け入れる際に、必要な当該産業廃棄物の性状の分析又は計量を行うこと。
- ② 施設への産業廃棄物の投入は、施設の処理能力を超えないようにすること。
- ③ 産業廃棄物が施設から流出する等の異常な事態が生じたときは、直ちに運転を停止し、流出した産業廃棄物の回収その他の生活環境の保全上必要な措置を講ずること。
- ④ 施設の正常な機能を維持するため、定期的に施設の点検、機能検査を行うこと。
- ⑤ 産業廃棄物の飛散・流出・悪臭発散を防止するために必要な措置を講ずること。
- ⑥ 蚊、はえ等の発生防止に努め、構内の清潔を保持すること。
- ⑦ 著しい騒音、振動の発生により周囲の生活環境を損なわないように必要な措置を講ずること。
- ⑧ 施設から排水を放流する場合は、その水質を生活環境保全上の支障が生じないものとするとともに、定期的に放流水の水質検査を行うこと。
- ⑨ 施設の維持管理に関する点検、検査その他の措置の記録を作成し、3年間保存すること。
- ⑩ 燃焼室への産業廃棄物の投入は、外気と遮断した状態で、定量ずつ連続的に行うこと。
- ⑪ 燃焼室中の燃焼ガスの温度を800℃以上に保つこと。燃焼ガスの温度を連続的に測定し、記録すること。
- ⑫ 焼却灰の熱しゃく減量が10パーセント以下になるように焼却すること。
- ⑬ 運転を開始する場合には、助燃装置を作動させる等により、炉温を速やかに上昇させること。また、運転を停止する場合には、助燃装置を作動させる等により、炉温を高温に保ち、産業廃棄物を燃焼し尽くすこと。
- ⑭ 集じん器に流入する燃焼ガスの温度をおおむね200℃以下に冷却すること。集じん器に流入する燃焼ガスの温度を連続的に測定し、記録すること。
- ⑮ 冷却設備及び排ガス処理設備にたい積したばいじんを除去すること。
- ⑯ 排ガス中の一酸化炭素の濃度が100ppm以下となるように産業廃棄物を焼却すること。一酸化炭素の濃度を連続的に測定し、記録すること。
- ⑰ 排ガス中のダイオキシン類の濃度が次の表左欄に掲げる燃焼室の処理能力に応じて同表の右欄に定める濃度以下となるように産業廃棄物を焼却すること。
- (1) 規則第12条及び第12条の2第5項に規定する焼却施設の構造に係る主な基準は以下のとおり。
表 排ガス中のダイオキシン類の濃度に係る基準
燃焼室の処理能力
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平成9年12月1日以降に新設された施設
|
平成9年11月30日以前の既存施設
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---|---|---|
4トン/時以上
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0.1ng-TEQ/m3
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1ng-TEQ/m3
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2~4トン/時
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1ng-TEQ/m3
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5ng-TEQ/m3
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2トン/時未満
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5ng-TEQ/m3
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10ng-TEQ/m3
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- ⑱ 排ガス中のダイオキシン類の濃度を1年に1回以上、ばい煙量又はばい煙濃度を6ヶ月に1回以上測定し、記録するとともに、排ガスによる生活環境保全上の支障が生じないようにすること。
- 8 産業廃棄物処理施設を用いて処理を行う場合には、当該施設の維持管理に関する以下の事項について記録を作成し、作成した翌月の末日までに施設又は最寄りの事務所に3年間備え置いて、施設の維持管理について生活環境保全上の利害関係を有する者の求めに応じて閲覧させなければならない。
- (1) 処分した産業廃棄物:各月ごとの種類及び数量
- (2) 燃焼ガス温度、集じん機に流入する燃焼ガスの温度、排ガス中の一酸化炭素濃度:測定を行った位置、測定結果を得た年月日及び測定結果
- (3) 冷却設備、排ガス処理設備に堆積したばいじんの除去:除去を行った年月日
- (4) 排ガス中のダイオキシン類濃度、ばい煙量及びばい煙濃度:排ガスを採取した位置、測定結果を得た年月日及び測定結果
(参照)法第15条の2の3、規則第12条の7の2、規則第12条の7の3
- 9 7に記載した産業廃棄物処理施設に該当しない場合にあっても、感染性廃棄物を焼却する場合は、次の処理基準を遵守しなければならない。
- (1) 次の構造を有する焼却設備を用いて焼却すること。
- ① 空気取入口及び煙突の先端以外に焼却設備と外気とが接することなく、燃焼ガスの温度が800℃以上の状態で廃棄物を焼却できるものであること。
- ② 燃焼に必要な量の空気の通風が行われるものであること。
- ③ 外気と遮断された状態で、定量ずつ廃棄物を燃焼室に投入することができるものであること。
- ④ 燃焼室中の燃焼ガスの温度を測定するための装置が設けられていること。
- ⑤ 燃焼ガスの温度を保つために必要な助燃装置が設けられていること。
- (2) 焼却方法については、煙突の先端以外から燃焼ガスを排出させないこと、煙突の先端から火炎又は黒煙を排出しないこと及び煙突から焼却灰及び未燃物を飛散させないこと。
(参照)令第6条第1項第2号、令第3条第2号、規則第1条の7
- (1) 次の構造を有する焼却設備を用いて焼却すること。
- 10 処分業者は、処理実績を記録し、5年間保存しなければならない。
(参照)法第14条の4第16項 - 11 処分後の処理物はその種類に応じて定められた埋立処分方法で最終処分するものとする。処理物の種類によっては再生利用も可能であるが、感染のおそれがなく、安全性が確実に確保される方法で再生利用されることが必要である。なお、処理後の処理物のうち液状のものは、埋立処分できないので、排水処理施設で処理すること等により適正に処理すること。
(参考1.1)紙おむつについて
感染症法に規定される感染症に関し、使用後排出される紙おむつについて、感染性廃棄物の該否の別は、次の表のとおりである。
表 感染症ごとの紙おむつの取扱い
感染症法の分類
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感染症名
|
紙おむつの取扱い(※)
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備考
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---|---|---|---|
一類
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エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、重症急性呼吸器症候群(病原体がSARSコロナウイルスであるものに限る。)、痘そう、ペスト、マールブルグ熱、ラッサ熱
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○
|
|
二類
|
急性灰白髄炎、コレラ、細菌性赤痢、ジフテリア、腸チフス、パラチフス
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○
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三類
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腸管出血性大腸菌感染症
|
○
|
|
四類
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E型肝炎、A型肝炎、高病原性鳥インフルエンザ、サル痘、炭疽、ニパウイルス感染症、ボツリヌス症、レプトスピラ症
|
○
|
|
ウエストナイル熱、エキノコックス症、黄熱、オウム病、回帰熱、Q熱、狂犬病、コクシジオイデス症、腎症候性出血熱、つつが虫病、デング熱、日本紅斑熱、日本脳炎、ハンタウイルス肺症候群、Bウイルス病、ブルセラ症、発しんチフス、マラリア、野兎病、ライム病、リッサウイルス感染症、レジオネラ症
|
×
|
ただし、血液等が付着したものは、感染性廃棄物に該当する。
|
|
五類
|
アメーバ赤痢、咽頭結膜熱、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎、感染性胃腸炎、急性出血性結膜炎、クリプトスポリジウム症、クロイツフェルト・ヤコブ病、劇症型溶血性レンサ球菌感染症、ジアルジア症、水痘、手足口病、突発性発しん、梅毒、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症、バンコマイシン耐性腸球菌感染症、百日咳、風しん、ペニシリン耐性肺炎球菌感染症、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症、薬剤耐性緑膿菌感染症、流行性角結膜炎
|
○
|
|
RSウイルス感染症、インフルエンザ(高病原性鳥インフルエンザを除く。)、ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)、急性脳炎(ウエストナイル脳炎及び日本脳炎を除く。)、クラミジア肺炎(オウム病を除く。)、後天性免疫不全症候群、細菌性髄膜炎、髄膜炎菌性髄膜炎、性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、先天性風しん症候群、伝染性紅斑、破傷風、ヘルパンギーナ、マイコプラズマ肺炎、麻しん、無菌性髄膜炎、流行性耳下腺炎、淋菌感染症
|
×
|
ただし、血液等が付着したものは、感染性廃棄物に該当する。
|
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指定感染症
|
○
|
||
新感染症
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○
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(※) ○:感染性廃棄物 ×:非感染性廃棄物
(1) 輸液点滴セットについて
(2) 透析等回路について
ダイアライザー、チューブ等血液が含まれる部分については感染性廃棄物に該当する。
ウイルス肝炎感染対策ガイドライン―医療機関内―(抜粋)
(改定Ⅲ版 1995年)
(厚生省保健医療局エイズ結核感染症課監修)
Ⅵ 消毒法
- 1 加熱滅菌
流水により十分に洗浄したのち、一般に病原性微生物の消毒法として用いられている次の方法により完全に滅菌される。
- (1) オートクレーブ消毒
- (2) 乾熱滅菌
- (3) 煮沸消毒(15分以上)
- 2 薬物消毒
薬物消毒のうち、HBV及びHCVに対しての疫学的検討から有効性が確認され、また最も広く用いられているものは塩素系消毒剤である。しかし、金属材料に対しては、本剤に腐蝕作用があるので、非塩素系消毒剤を用いる。なお、消毒する対象物が蛋白質でおおわれている場合には、薬物により蛋白質が凝固し薬物の効果が不十分となりやすいので、作用時間を長くすることが必要である。いずれにしても、作用後すみやかに十分に洗浄した後に、薬物消毒することが望ましい。
- (1)
塩素系消毒剤
次亜塩素酸剤
有効塩素濃度 1,000ppm
消毒時間 1時間 - (2) 非塩素系消毒剤
- (イ) 2%グルタールアルデヒド液
- (ロ) エチレンオキシドガス
- (ハ) ホルムアルデヒド(ホルマリン)ガス
- (注) 次亜塩素酸剤の商品名は次のとおりである。
クロラックス
ピューラックス
ピューラックス10
ハイター
ミルトン - (注) 有効塩素濃度とするための希釈例は次のとおりである。
クロラックス(6%)、ピューラックスの場合、有効塩素濃度、1,000ppmを作るには、50~60倍に水で希釈する。 - (注) グルタールアルデヒド液の商品名は次のとおりである。
ステリハイド - (注) 消毒用エタノールは無効である。
- (注) 上記以外の消毒剤については、その有効性についての確実な成績はない。
- (1)
HIV医療機関内感染予防対策指針(抜粋)
(平成元年4月)
(厚生省)
7 滅菌・消毒
- (1) 一般的事項
これまでの実験によるとHIVは現在日常診療の場において用いられている消毒薬の指定濃度よりも、はるかに低い濃度でかつ短時間で不活化されることが知られてきた。
このため、日常生活においてHIVに感染することは、ほとんどないが、医療機関内では、通常の場合よりもさらに厳密な感染予防対策が求められており、HIVよりも感染力の強い病原体の混入も考えた滅菌、消毒を行う必要がある。
また、汚染物質の材質や形状、汚染状態によっては、消毒時間を長くした方が良い場合もあるので、このような観点から、WHOではHIVの不活化実験で得られた結果よりもかなり厳しい消毒条件を示している。
現在のところ、日本ではHIVより感染力価が高く、感染者の多いB型肝炎ウイルスに対する滅菌消毒に準ずるところにより、安全を期することができると考えられる。 - (2) B型肝炎ウイルスの滅菌・消毒法:略
- (3) HIVの不活化実験等に基づくデータ及びWHOが示した消毒法
HIVの不活化実験に基づくデータ
|
WHOが示した消毒法
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---|---|---|
オートクレーブ(滅菌)
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121℃、20分(藤本等)*1
|
121℃、20分
|
煮沸
|
10分(藤本等)
|
20分
|
次亜塩素酸ナトリウム
|
100ppm、30分(藤本等)
52.5ppm(Martin等)*2
|
0.5%、10分~30分
|
グルタールアルデヒト
|
2%、15分(藤本等)
|
2%、10分~30分
|
ホルマリン水
|
1%、20分、37℃(藤本等)
0.5%(Martin等)
|
5%、10分~30分
|
イソプロピルアルコール
|
50%、5分(藤本等)
35%(Martin等)
|
―
|
エタノール
|
80%、5分(藤本等)
50%(Martin等)
|
70%、10分~30分
|
紫外線(5×103J/m2)
放射線(2×105rad)
|
不活化されない(spirre等)*3
|
―
|
- *1 北里大学藤本進客員教授等が、試験管内で不活化実験を行った結果に基づき、HIVの滅菌、消毒法を示したもの。
- *2 Martin L. S. 等がHIV(105)に対し、室温21~25℃、2~10分、通常の消毒条件で行った不活化実験の結果を示したもの。
- *3 Spirre等の実験結果 Lancet、26、188~189、1985
- (4) 消毒法の実際
現場において、滅菌、消毒の方法を選択する場合は、まず、目的が滅菌なのか、消毒なのかを整理する必要がある。
その上で、汚染を広げないために最も適当な方法をその都度考え、具体的な方法を決定するとよい。
滅菌が目的である場合には、オートクレーブを使用するが、使用できない場合には条件の厳しい消毒法を行う。
消毒が目的である場合には、汚染物の材質や形状、汚染状態によって消毒法を選択するとともに、十分な水で洗い流すことが、最も簡便で効果の高い消毒法であることも忘れてはならない。
- ① 手指等の消毒
常に清潔を保つよう心がける。感染者の血液や体液で汚染された場合、十分に水で洗浄することはHIVの濃度を下げ感染予防に役立つが、塩素系消毒剤やエタノール等*1による消毒と水による洗浄を併用することは、より有効な手段である。 - ② 口腔、眼の消毒
眼などに血液等が飛んだ時には、ポリビニルアルコールヨウ素剤による消毒と、多量の水による洗浄を行う。
ポリビニルアルコールヨウ素剤による点眼消毒剤は、精製水又は食塩水で4~8倍に希釈して使用する。
ポリエチレン製容器を使用すると効果が減少するのでポリプロピレン製容器に入れて、希釈後は冷暗所(冷蔵庫)に保管する。
口腔粘膜などへの使用は、ポリビニルピロリドンヨウ素剤がある。
ヨウ素剤の使用後、中和の必要がある場合は亜硫酸水素ナトリウム液(1~2%)を用いる。 - ③ 汚染器具の処理
容器に入れてオートクレーブで通常の操作を行えば滅菌できる。再使用する物については、器具の損傷を防ぐために水で十分洗浄した後、オートクレーブで滅菌する。
また、エチレンオキシドガス滅菌器による処理も有効である。
消毒法としては、次亜塩素酸ナトリウム液、エタノール等に一定時間漬けるか煮沸する。
グルタールアルデヒドも器具の消毒に用いるが、人体には使用できず、また、蓋つきの容器を使用するなど蒸気を吸い込まないようにする必要がある。
*1 エタノールはHIVには有効であるが、B型肝炎ウイルスの消毒には適切でない。 - ④ 室内備品等
次亜塩素酸ナトリウム液やエタノール等をガーゼや脱脂綿に十分含ませたもので清拭する。
環境の消毒用にはヨードホルム液がある。 - ⑤ リネン類
硫酸紙袋等に入れオートクレーブするか、次亜塩素酸ナトリウム液に浸す。その後、通常の方法で洗濯する。
また、エチレンオキシドガスも有効である。
さらに、汚染が激しい時には焼却する。
HIVに対する消毒法の基準については流動的なところも多々あり、今後の実態調査等の結果を踏まえ改訂されるものと考えられる。
- ① 手指等の消毒
HIV母子感染予防のガイドライン(抜粋)
(昭和63年9月)
(厚生省 HIV母子感染予防対策検討委員会)
11 HIVの消毒法
HIVに対する消毒薬やpH、放射線の影響について調べた結果は、培養したウイルスの感染については、105(105.8~104.8)のウイルス量が室温21~25℃で2~10分、通常の消毒条件でどれだけ不活化されるかというテスト結果が報告されている。
化学的消毒薬としてH2O2、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、パラホルムアルデヒド、リゾール、次亜塩素酸ナトリウム、界面活性剤NP40、トウイン20などが調べられたが、H2O2は通常の消毒に使われている量が3%であるのに0.3%で不活化されている。エチルアルコールは50%、イソプロピルアルコールは35%、パラホルムアルデヒドは0.5%、リゾールは0.5%、さらし粉は0.1%と、いずれも実際に使用されている濃度よりも低い濃度で不活化されている。NP40は1.0%濃度を使用しているが(通常は0.5%濃度)、消毒力は弱い、トウイン20は全く無効である。通常の1%処理でも2.5%に濃度をあげて使用しても効力はない。
pHはpH1以下とpH13以上、温度は56℃で10分、これは血清の存在下でウイルスが検出されなくなっている。さらし粉の時の塩素有効温度は52.5ppmである。
放射線、紫外線については、放射線2×105radgamma、紫外線5×103J/m2、照射によっては不活化されていない。
消毒薬について注意すること:HIVやHBVが血液の中に存在しているとき、血液中の蛋白質が凝固や変性をして、存在しているウイルスに消毒液が到達作用を発揮することを防げる保護剤の役割を発揮することがある。汚染後すみやかに流水で十分に洗って、これらの混在蛋白を除去してから消毒作用をすることが望ましい。今、感染力108あるウイルス0.1mlが皮膚についたとしよう。100mlの流水がかかれば、10-3に希釈される。0.1mlの水滴が残って、さらに100mlの流水が加われば10-6、さらにもう一度100mlの流水が加われば10-9となり、感染量基準以下に希釈されてしまうのである。このようなことは、流水による流水過程で極めて短時間ですむ。下水に流れたウイルスが、さらに他の人の血液中に感染を起こすに十分な量が入ることはあり得ない。
実際には十分な水洗いと、HBVの消毒滅菌にすすめられている条件で消毒、滅菌されたい。
実際我が国においては、HIVよりはるかに感染力価の高いHBVの滅菌と消毒に準ずることにより完全を期し得る。
滅菌と消毒
器機・器具などは滅菌と正しい消毒を徹底する。
● 洗い流す
使用後すみやかに流水で十分に洗う。流水がすぐに使えなければ水に浸して乾燥を防ぐ。
● 滅菌
医療機関が通常行うB型肝炎ウイルスに対する滅菌操作が行われればHIVの感染防止は確実である。
最も信頼性が高いのは加熱滅菌で、オートクレーブ・乾燥滅菌・煮沸(20分以上)などである。
● 薬物消毒
薬物消毒は、滅菌のできない場合に用いるものとして図11のような薬剤が推奨されていたが、具体性に乏しいのでHIV滅菌には表19の方法を用いることが望ましい。
(注意! B型肝炎ウイルスの消毒には、消毒用アルコールは適切でないがHIVには有効である。)
図11 従来の薬物消毒法
表19 HIVの消毒方法
|
(北里大学 藤本進客員教授)
滅菌又は消毒に当たって留意すべき事項
- 1 高圧蒸気滅菌
高圧蒸気滅菌器を使用し、121℃以上の湿熱に20分間以上作用させること。
適用範囲としては、廃血液等、血液等が付着した鋭利なもの、病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの、その他血液等が付着したもの、汚染物等が考えられる。
注)
- 1 温度計により器内の温度を確認すること。
- 2 大量の廃棄物を処分する場合は、すべての廃棄物が湿熱に十分触れない場合があるので留意すること。
- 3 容器、袋頭に廃棄物が入っている場合は、それらを開放し、湿熱に十分触れるようにすること。
- 4 腐敗しやすい廃棄物の場合、悪臭がすることがあるので留意すること。
- 5 所要時間が経過したら、加熱をやめ、排気口をわずかに開いて器内の水蒸気を徐々に出すこと。
- 6 液体の滅菌に際しては、急激に水蒸気を排出させると内容物が沸騰することがあるので注意すること。
- 2 煮沸
15分以上煮沸すること。
適用範囲としては、血液等が付着した鋭利なもの、その他血液等が付着したもの、汚染物等が考えられる。
注)
- 1 温度計により温度を確認すること。
- 2 大量の廃棄物を煮沸する場合、温度が低下することがあるので、留意すること。
- 3 この方法は、少量の廃棄物を診療等の内部で処分するのに適した方法であるが、処分業者が実施することは、安全性等の面から認められない。
- 3 乾熱滅菌
乾熱滅菌器を使用し、180℃で30分以上作用させること。
適用範囲としては、高圧蒸気滅菌と同様に考えられる。
注)
- 1 加熱し過ぎないようにすること。
- 2 乾熱によりプラスチックを溶融・固形化する処理も含まれるが、金属等の鋭利なものが含まれる場合、それらのものが突出しないよう注意すること。
- 3 設置する場合は、側壁から少なくとも5cm以上離すとともに、設置場所の近くには燃えやすいものを置かないこと。
- 4 あまり多量のものを詰め込まないこと。又、通常以外のものを一度に処理する場合は、200℃1時間以上作用させること。
- 5 急激に冷却すると、廃棄物の損傷が起こることがあるので、注意すること。
- 6 ガスを使用する場合、風等により火が消えることを防ぐこと。
- 4 化学的消毒方法
- (1) 次亜塩素酸剤
遊離塩素1,000ppm以上の水溶液中に60分間以上浸すこと。
適用範囲としては、病理廃棄物以外のものが考えられるが、ダイアライザーのように内部まで消毒することが難しいものもあるので、注意が必要である。
注)
- 1 血液等又は布類等が含まれると、終末遊離塩素濃度が極端に低下することがあるので留意すること。なお、血液等又は布類等を消毒する場合は、遊離塩素1,500~2,000ppm以上の濃度を使用すること。又、血液等が付着している場合、十分な水により洗い落とす必要がある。
- 2 使用時に調整を行い連続で使用しないこと。
- (2) グルタールアルデヒド
2%グルタールアルデヒド液に60分間以上浸すこと。
適用範囲としては、(1)と同様と考えられる。
注)
- 1 使用時に調整を行い、連続で使用しないこと。
- 2 消毒に当たっては蓋付きの容器を使用するなど、蒸気を吸い込まないように注意すること。
- (1) 次亜塩素酸剤
一類感染症、二類感染症及び三類感染症の消毒・滅菌に関する手引きについて(抜粋)
(平成11年3月31日健医感発第51号)
(厚生省保健医療局結核感染症課長通知)
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)第27条及び第29条に基づく感染症の病原体に汚染された場所等の消毒・滅菌に関する手引きが厚生科学研究費補助金新興・再興感染症研究事業において、別添のとおり作成されたので送付します。
なお、貴管下市町村及び関係機関に対する周知をお願いするとともに、その取扱いに遺漏のないよう配慮願います。
一類、二類、三類感染症の消毒・滅菌の手引き
一類、二類、三類感染症の消毒・滅菌方法のまとめ
感染症の病原体で汚染された機器・器具・環境の消毒・滅菌は、適切かつ迅速に行って、汚染拡散を防止しなければならない。
手袋、帽子、ガウン、覆布(ドレープ)、機器や患者環境の被覆材などには、可能なかぎり使い捨て製品を使用する。使用後は、専用の感染症廃棄物用容器に密閉するか、あるいはプラスチック袋に二重に密閉したうえで、外袋表面を清拭消毒して患者環境(病室等)より持ち出し、焼却処理する。
汚染した再使用器具は、ウォッシャーディスインフェクター、フラッシュイングディスインフェクター、またはその他の適切な熱水洗浄消毒器で処理するか、あるいは消毒薬に浸清処理(付着汚染物が洗浄除去しにくくなることが多い)したうえで、用手洗浄を行う。そのうえで、滅菌等の必要な処理を行った後、再使用に供する。汚染した食器、リネン類は、熱水洗浄消毒または消毒薬浸漬後、洗浄を行う。
汚染した患者環境、大型機器表面などは、血液等目に見える大きな汚染物が付着している場合は、まずこれを清拭除去したうえで(消毒薬による清拭でもよい)、適切な消毒薬を用いて清拭消毒する。清拭消毒前に、汚染微生物量を極力減少させておくことが、清拭消毒の効果を高めることになる。
消毒薬処理は、滅菌処理とは異なり、対象とする微生物の範囲が限られており、その抗菌スペクトルからはみ出る微生物が必ず存在し、条件が揃えば消毒薬溶液中
で生存増殖する微生物もある。したがって、対象微生物を考慮した適切な消毒薬の選択が必要である。
Ⅰ 一類感染症
一類感染症の消毒のポイント
消毒のポイント
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消毒法
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エボラ出血熱
マールブルグ病
クリミア・コンゴ出血熱
ラッサ熱
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厳重な消毒が必要である。患者の血液・分泌物・排泄物、およびこれらが付着した可能性のある箇所を消毒する
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ペスト
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肺ペストは飛沫感染があるが、患者に用いた器材や患者環境の消毒を行う
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血液などの汚染に対しては、0.5%(5,000ppm)、また明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500ppm)を用いる。なお、血液などの汚染に対しては、ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒も有効である。
(略)
Ⅱ 二類感染症
二類感染症の消毒のポイント
消毒のポイント
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消毒法
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急性灰白髄炎
(ポリオ)
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患者の糞便で汚染された可能性のある箇所を消毒する
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エボラと同様
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コレラ
細菌性赤痢
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患者の糞便で汚染された可能性のある箇所を消毒する
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ペストと同様
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ジフテリア
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皮膚ジフテリアなどを除き飛沫感染であるが、患者に用いた器材や患者環境を消毒する
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腸チフス
パラチフス
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患者の糞便・尿・血液で汚染された可能性のある箇所を消毒する
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血液などの汚染に対しては、0.5%(5,000ppm)、また明らかな血液汚染がない場合には0.05%(500ppm)を用いる。なお、血液などの汚染に対しては、ジクロルイソシアヌール酸ナトリウム顆粒も有効である。
(略)
感染性廃棄物の処理において有効であることの確認方法について
(平成10年12月9日衛環第97号)
(厚生省生活衛生局環境整備課長通知)
1 感染性廃棄物の処理において有効であることの確認について
感染性廃棄物の中間処理において感染性を失わせることの有効性は、不活化確認試験により、2に示す細菌芽胞等滅菌抵抗性の強い生物指標に対して、処理前の微生物数と比べて処理後の微生物数が確実に10-4以下に減少すること、すなわち99.99%以上減少することが必要であり、安全性を考慮して、10-6以下に減少すること、すなわち99.9999%以上減少することを確認することが望ましい。
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【解説】
感染性廃棄物の感染性を失わせることの確認においては、全ての病原性微生物種に対する不活化能力を確認することが望ましいが、用いる生物指標の有無や検査の容易さ、病原性微生物を検査に利用する危険性を考慮して、2に示す生物指標を利用することとする。10-4又は10-6の確認の方法は3に示す。
感染性廃棄物処理において問題となる代表的な病原性微生物種であるHIV、HBV及び結核菌を含めた多くの病原微生物は2に規定した生物指標と比較して滅菌抵抗性が遥かに低いため、その感染性はBacillus属細菌芽胞を10-4以下に減少させる条件下での不活化処理により完全に破壊される。ただし、Clostridium属細菌(破傷風菌・ガス壊疽菌群)および炭疽菌(Bacillus anthracis)等の芽胞形成病原細菌は2に示した生物指標と同等の滅菌抵抗性を持つ。これらの病原微生物に汚染された又は汚染された可能性のある感染性廃棄物を処理する場合は、安全性を考慮して、2に示した生物指標を10-6以下に減少させる条件下において行うことが望ましい。
なお、定期的に2に記載したBacillus属細菌芽胞等を使用して不活化の確認を行うことが望ましい。
2 代表的な生物指標
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【解説】
通例、日本薬局方及び国際標準化機構(ISO)の基準に従って、各処理機構による微生物不活化を判定するために最も適した生物指標を1種選択して使用する。例えば、加熱処理の場合、高圧蒸気滅菌に準じた処理法の生物指標としてはB. stearothermophilus芽胞を、赤外線照射処理、解放系での高周波照射処理等ではB. subtilis芽胞を使用して微生物不活化能力を判定する。ガンマ線及び電子線照射処理では、日本薬局方に従ってB. pumilus芽胞を使用して判定する他、ISO規格に準じて、生物指標を使用することなく、照射した放射線量から微生物の不活化度を理論的に求めても良い。また、酸化剤、過酸化物、アルカリ剤及び各種消毒剤等による化学処理の場合、B. subtilis芽胞を利用して不活化の確認を行う。
なお、処理前の廃棄物に存在する生菌数と種類が明らかな場合は、その微生物種の中で適用使用とする不活化機構に対して最も抵抗性を示す微生物種を生物指標とすることもできる。
また、これらの生物指標は、処理工程の有効性を証明する物理的又は化学的な監視と常に組み合わせて用いられることが適当である。生物指標の挙動は使用前の保存状態、使用方法又は暴露後の処理技術によって影響されるため、標準的な保存及び使用方法を厳守し、処理終了後直ちに回収し、標準的な方法に従って不活化確認試験に供することが重要である。
さらに、実際の感染性廃棄物の処理においては、微生物の死滅速度に影響を与える有機化合物又は液体廃棄物等が混在するため、試験に使用する生物指標の担体(微生物を負荷する容器等)にも有機化合物、無機化合物又は液体等を人工的に添加して条件の異なる数種類の試験を行うことが望ましい。生物指標菌を使用して微生物不活化試験を行う場合、指標菌を封入する容器(あるいは担体)は、やむを得ない場合を除き密封容器の使用を避けること。
(2) 適用する生物指標は市販品及び自家調製品のいずれを使用してもよい。ただし、自家調製品を使用する場合は、市販の生物指標と同等あるいはそれ以上の性能を有することを確認する。
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【解説】 2の(1)に記載したBacillus属細菌の芽胞を封入した生物指標は各種市販されている。使用する処理方法と目的に従い、最も妥当な菌種、濃度及び形態の生物指標を選択して定期的に処理方法の不活化の確認を行う。市販品の他、自家調製品を使用しても問題はないが、その場合は市販の生物指標と同じ微生物あるいはそれ以上の滅菌抵抗性を示す微生物を使用し、さらに作成した生物指標が市販品と同等あるいはそれ以上の性能を持つことを各ロット毎に確認する必要がある。
3 感染性微生物の不活化効力の確認方法
(1) 感染性微生物の不活化の指数は、処理の前後の生存指標菌数の対数の差として次式により、「log10kill」として示される。
log10kill=log10I-log10R
log10kill:感染性微生物の不活化効力
I:試料に添加した生物指標菌数(処理前の廃棄物1g当たりの集落形成単位)
R:処理後の試料から回収された生存指標菌数(処理前の廃棄物1g相当量当たりの集落形成単位)
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【解説】
処理による微生物の減数曲線は、横軸に処理時間、縦軸に微生物数の対数値をとってグラフ化すると不活化の開始初期を除きほぼ直線になるため、通例、微生物不活化の度合いは対数値(log10)として表される。例えば、初期菌数1×107個の指標菌を用い、処理後、1×101個の指標菌を回収したときの微生物の不活化の指数は本項の計算式により、6log10(あるいは単に6)となる。これは微生物数の10-6又は99.9999%の減少と同義である。また、3の(3)のように生物指標担体の完全性を維持できない処理装置で微生物不活化の定量を行うために実際の廃棄物あるいは模擬廃棄物に直接指標菌を負荷し、処理過程中に破砕処理等が施されて廃棄物の原形がなくなる場合は、廃棄物1g当たりの微生物数に換算して試験を行う。処理の前後で廃棄物の重量に差が生じる場合(例:高周波処理で水分蒸発により多少減少)は、処理前の廃棄物1gに相当する量の処理物中に残存する指標菌数を検討する。
(2) アンプルあるいは紙片等を適用する生物指標担体の完全性を維持できる処理方式の場合、適切な菌株及び菌数の生物指標を使用して感染性廃棄物の不活化効力を示すことができる。
具体的には、実際の感染性廃棄物あるいは標準的な模擬廃棄物に生物指標を挿入し、処理後、回収した生物指標菌の増殖の有無によって不活化効力を確認する。ここで、標準的な模擬廃棄物とは実際の廃棄物処理における処理対象廃棄物の性状に近似させた種類及び量の非感染性廃棄物(未使用医療用具)等であり、次のようなものが挙げられる。なお、本試験を行う場合は、可能な限り実際の使用条件に準じて試験を行うものとする。
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【解説】
アンプルあるいは紙片等の生物指標担体を設置又は挿入する場所は、各処理において不活化の効率の最も悪い位置とする。初期濃度1×106個の指標菌を含有するアンプルや紙片等の生物指標担体を被処理物と共に処理し、処理後に回収した生物指標担体を培養して指標菌の増殖が認められなかった場合、同処理の微生物不活化効力は6log10以上となる。アンプルや紙片等の担体を使用せず、指標菌を直接被処理物に負荷し、処理後に指標菌を回収して平板混釈法又は平板塗抹法等により微生物不活化判定を行ってもよい。また、処理過程に破砕工程がある装置でも、破砕工程後の実際の不活化の工程時に生物指標を導入することができる場合は、アンプルや紙片等の生物指標担体を用いて微生物不活化の確認を行ってもよい。
(注) 試験の結果においては、2の(1)に記載したBacillus属細菌等の芽胞を含む各種微生物に体する滅菌効力について検討し、1で規定された値以上の感染性微生物の不活化の効力を持つことを明らかにする。なお、当該試験結果と併せて、試験方法、計算手順等も明らかにされていることが必要である(別添1参照)。
(3) 生物指標担体の完全性を維持できない処理方式の場合、感染性廃棄物の不活化効力の確認は「対照試験」及び「本試験」の2つの試験(別添2参照)によって行う必要がある。対照試験の目的は、希釈又は物理的に捕えられて回収不能となった生物指標菌数の減少を明らかにすることである。
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【解説】
処理過程に破砕工程等があり、かつ、実際の不活化の工程時にアンプルあるいは紙片等の生物指標担体を導入できない装置等に適用する。生物指標菌は被処理物に直接負荷し、別添2に記載した方法により微生物不活化の判定を行う。
- 1 処理方法の感染性微生物の不活化効力を確認するための試験方法は、求められている不活化を担保するものであり、可能であれば既存の標準的な試験手順と一致していることが望ましい。試験の実施に当たっては、日本水道協会編「上水試験方法・解説」、日本薬学会編「衛生試験法・注解/微生物試験法」及び厚生労働省編「日本薬局方/微生物限度試験法、無菌試験法、滅菌法及び無菌操作法並びに超ろ過法」等の既に認知された標準的手順を適宜取り入れるものとする。
- 2 不活化効力の確認のための試験の実施に当たっては、使用する処理方式に応じて、次の事項を考慮して適宜試験条件を定め、その試験結果を取りまとめておくこととする。
- ① 実際に処理する廃棄物の組成
- ② 当該処理方法に不適当な廃棄物の種類
- ③ 既存装置あるいは技術に対する処理有効性の比較
- ④ 日常管理あるいは装置稼働性能試験に供する標準的な模擬廃棄物組成並びにその選定理由
- ⑤ 処理時間、温度、圧力、照射量、化学薬品濃度、pH、湿度、負荷密度、負荷体積等実際の装置稼働時の各種パラメータ条件
- ⑥ アンプルあるいは紙片等の生物指標担体が処理方式によって破損等人工的に影響され得る可能性
- ⑦ 適切な生物指標の種類、負荷量及び負荷方法
- ⑧ 生物指標の生存率(生存能力)に影響しない薬液の希釈及び中和方法
- ⑨ 微生物間の増殖競合の回避、至適培地及び培養時間の選択等に関する適切な微生物培養方法と判定方法
- 1 対照試験
- ① この試験では、試験終了時に本文1で規定した対数減少を示すのに必要な生物指標菌数が確実に回収され得る所定量の微生物負荷数を使用する。
- ② 本文3の(2)で規定した標準的な模擬廃棄物に①の微生物負荷数と同量の生物指標を添加する。
- ③ 水に浸潤又は粉砕等、不活化の工程を除く処理を行った後、試料を取り出し洗浄して、試料内の生物指標を回収する。
- ④ 回収した生物指標菌を培養し、その微生物回収を定量化する。回収された生存指標菌数は、薬剤等によって処理した廃棄物からの指標菌回収数と比較する基線量に用いられ、次式によって示される。
log10RC=log10IC-log10NR>規定値
(注) 本文1で規定した対数減少は、10-4又は10-6以下であるため、この規定値は4又は6となる。
RC:未処理の廃棄物残渣から回収した生存指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)
IC:模擬廃棄物に添加した生物指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)
NR:未処理廃棄物の残渣から回収されなかった指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)で、微生物減少を説明する係数
- 2 本試験
- ① 対照試験で使用した標準的な模擬廃棄物に対照試験と同量の生物指標を添加する。
- ② 全ての処理を行った後、試料を取り出して洗浄して、試料内の生物指標菌を回収する。
- ③ 回収した生物指標菌を培養し、微生物回収を定量化する。
- ④ 対照試験及び本試験の成績から、次式により感染性の不活化効力が算出される。
log10kill=log10IT-log10NR-log10RT
log10kill:感染性微生物の不活化効力
IT:模擬廃棄物に添加した生物指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)
log10IT=log10IC
NR:未処理廃棄物の残渣から回収されなかった生物指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)
RT:処理済廃棄物の残渣から回収された生物指標菌数(廃棄物1gあたりの集落形成単位)
感染性廃棄物処理対策検討会委員名簿
委員
(敬称略:五十音順)
氏名
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所属
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---|---|
川本黄石
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社団法人 日本歯科医師会 常務理事
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北島智子(平成13年度)
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青森県 健康福祉部長
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小松勝治
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川崎市 環境局 生活環境部 廃棄物指導課長
|
酒井伸一
|
国立環境研究所 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター長
|
杉山和良
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国立感染症研究所 バイオセーフティ管理室長
|
酢屋ユリ子
|
北里大学病院 事務部 環境整備課長
|
武田隆男
|
社団法人 日本病院会 副会長
|
谷村典孝
|
麻生鉱山株式会社 環境事業室長
|
中村定敏
|
社団法人 全日本病院協会 常任理事
|
西島英利(平成13年度)
羽生田俊(平成14年度)
|
社団法人 日本医師会 常任理事
|
◎平山直道
|
東京都立大学 名誉教授
|
廣瀬千也子
|
社団法人 日本看護協会 看護研修学校長
|
○宮入裕夫
|
東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 教授
|
宮崎元伸
|
福岡大学 医学部 衛生学教室 助教授
|
山本章博
|
日本医療機器関係団体協議会 環境問題委員長
|
山本亮
|
社団法人 日本薬剤師会 常務理事
|
和田恭則
|
麻布大学 獣医学部 教授
|
◎:座長 ○:副座長
アドバイザー
保科 定頼
|
東京慈恵会医科大学 講師
|