法令・告示・通達

臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法

公布日:平成7年09月13日
環境庁告示63号

[改定]
平成8年2月22日 環境庁告示7号
平成11年3月12日 環境庁告示18号
平成12年6月15日 環境庁告示35号
平成28年8月19日 環境省告示79号

 悪臭防止法施行規則第一条の臭気指数及び同規則第六条の二の臭気排出強度の算定の方法は、別表のとおりとする。



附則

 平成二十八年八月十九日から適用する。



別表

     (平8環庁告7・平11環庁告18・平12環庁告35・平28環省告79・一部改正)

   臭気指数及び臭気排出強度の算定の方法

第1 パネル

   パネル(嗅〈きゆう〉覚を用いて臭気の有無を判定する者をいう。以下同じ。)には、1の基準臭液を用いた2のパネルの選定方法により、判定試験(パネルが嗅〈きゆう〉覚を用いてにおい袋又はフラスコ中の臭気の有無を判定する試験をいう。以下同じ。)に適した嗅〈きゆう〉覚を有すると認められた者を充てるものとする。

 1 基準臭液

   次の5種類とする。
     
 
β-フェニルエチルアルコール
10-4.0
 
メチルシクロペンテノロン
10-4.5
イソ吉草酸
10-5.0
γ-ウンデカラクトン
10-4.5
スカトール
10-5.0
     
   (注) 右欄は無臭の流動パラフィンに対する重量比を表す。

 2 パネルの選定方法

  1.   (1) 1~5までの番号を記入した試験紙(長さ約14cm、幅約7mmのもの。以下「におい紙」という。)5枚を1組として、2枚のにおい紙には基準臭液(1種類)を、3枚には無臭の流動パラフィンを、各におい紙の先端1cmまで浸す。
  2.   (2) この5枚1組のにおい紙を被験者(18歳以上の者に限る。)に渡し、その中から嗅〈きゆう〉覚を用いて基準臭液によりにおいを付けた2枚のにおい紙を選ばせる。
  3.   (3) 5種類の基準臭液について(1)及び(2)の手順を行い、そのすべてについて正しく回答した者を又は、5種類の基準臭液のうち1種類のみ間違えた場合は、間違えた基準臭液について2度再検査を行い2度とも正しく選んだ者を判定試験に適した嗅〈きゆう〉覚を有するものと認めるものとする。
  4.   (4) パネルは、上記(1)から(3)の方法による検査を、5年以内(40歳以上は3年以内)の期間ごとに受験し、判定試験に適した嗅〈きゆう〉覚を保持していることを確認することを要するものとする。

第2 装置及び器具

   装置及び器具は、次に掲げるとおりとする。

 1 試料採取装置及び器具

  (1) 環境試料用試料採取装置

    次のアからエまでのいずれかに掲げる装置とする。
  •    ア 気密性を有するガラス製の試料採取容器であって、ふっ素樹脂製バルブ及びガラスのすり合わせを有し、容量が10l程度のもの
  •    イ 試料採取用吸引瓶の内側に試料採取用袋を接続した装置であって、次の要件を具備しているもの
    •     (ア) 試料ガス採取用吸引器は、内側の試料採取袋が視認でき気密性を有する構造のもので、容量が10l程度のものであること。
    •     (イ) 試料採取袋は、無臭性のものであって臭気の吸着が少ないポリエステル(化合物名 ポリエチレンテレフタレー卜)フィルム製又はこれと同等以上の保存性能を有する材質によるものであり、内容積が10l程度で、かつ、試料ガス採取用吸引器の形状にあったものであること。
  •    ウ 試料採取用ポンプを経て試料採取袋に試料を採取できる装置であって、次の要件を具備しているもの
    •     (ア) 試料採取用ポンプは、20l/min以上の大気を吸引できる能力を有し、無臭性のもので、臭気の吸着の少ないものであること。
    •     (イ) 試料採取袋は、第2の1の(1)のイの(イ)に定める材質のもので、内容積が10l程度のものであること。
  •    エ 吸引用ポンプを有する吸引ケースの内側に試料採取袋を接続した装置であって、次の要件を具備しているもの
    •     (ア) 吸引ケースは、内側の試料採取袋が視認でき、密閉できる構造のものであること。
    •     (イ) 吸引用ポンプは、20l/min以上の大気を吸引できる能力を有するものであること。
    •     (ウ) 試料採取袋は、第2の1の(1)のイの(イ)に定める材質のもので、内容積が10l程度のものであること。

  (2) 排出口試料用試料採取装置

    試料採取用ポンプを経て試料採取袋に試料を採取できる装置又は吸引用ポンプを有する吸引ケースの内側に試料採取袋を接続した装置であって、次の要件を具備しているもの
  •     (ア) 試料採取用ポンプは、4l/min以上の試料ガスを吸引できる能力を有し、無臭性のもので、臭気の吸着の少ないものであること。
  •     (イ) 吸引ケースは、内側の試料採取袋が視認でき、密閉できる構造のものであること。
  •     (ウ) 吸引用ポンプは、4l/min以上の試料ガスを吸引できる能力を有するものであること。
  •     (エ) 試料採取袋は、第2の1の(1)のイの(イ)に定める材質のもので、内容積が3~20l程度のものであること。
  •     (オ) 排出口からの試料採取管は、ガス温度が高いときには耐熱性を有する材質のものを用いること。また、試料中の水分が多いときは、凝縮水トラップとして容量250ml程度のガス洗浄瓶を使用すること。

  (3) 排出水試料用試料採取器具

    ふっ素樹脂製パッキン付きの密栓のできるガラス瓶又は共栓ガラス瓶であって、遮光性を有し、かつ、容量が50ml~1l程度のもの

 2 判定試験用装置及び器具

  (1) 環境試料並びに排出口試料用判定試験用装置及び器具

  ア 空気注入用ポンプ
    30l/min以上の空気を供給できる能力を有するものであること。
  イ 無臭空気供給用器具
    におい袋に無臭空気を注入する際に、供給される空気及び空気注入用ポンプからのにおいを除去できるものであること。
  ウ 注射器
    ガラス製のものであること。容量が1ml以下のものである場合は、ガスタイトシリンジを用いること。なお、樹脂製の注射器であって、ガラス製の注射器又はガスタイトシリンジと同等の気密性を有し、無臭性であり注射器自身への臭気の付着が少ない材質のものも使用できること。
  エ におい袋
    無臭性のもので臭気の吸着及び透過が少ないポリエステルフィルム製又はこれと同等以上の性能を有する樹脂フィルム製で、試料の導出口として内径10mm、長さ6cmのガラス管又は無臭性のもので臭気の吸着及び透過が少ない材質の導出口を有し、内容積が3lのものであること。
  オ におい袋用鼻当て
    無臭性の樹脂製のもので、におい袋の導出口に接続し鼻を覆う構造のものであること。
  カ シリコンゴム栓
    におい袋の導出口を密栓できるものであること。

  (2) 排出水試料用判定試験用装置及び器具

  ア 無臭水製造装置
    日本工業規格K0102 に定める装置又はこれと同等以上の性能を有するものであること。
  イ 無臭水保管容器
    密栓ができるガラス容器瓶であって、その容量が2~5l程度のものであること。
  ウ 恒温水槽
    水槽内の水温を約 25 ℃に維持できるものであること。
  エ 判定試験用フラスコ
    共栓付き暗褐色透明摺りのガラス製の三角フラスコ又はこれと同等以上の性能を有するものであって、容積が300mlで、かつ、共栓口径が原則として27mmのものであること。
  オ フラスコ用鼻当て
    ふっ素樹脂製のもので、エに定めるフラスコの口に装着できるものであること。
  カ 注入用器具
    メスシリンダー、メスピペット、マイクロピペット又はこれらと同等以上の性能を有するものであって、ガラス製又は無臭性、かつ、臭気の吸着が少ない材質のものであること。
 備考 器具等の接続に用いる導管のうち、試料が通過する部分の導管については、臭気の吸着の少ないポリふっ化ビニル製又はそれと同等以上の性能を有するものを用いるものとする。

第3 測定の方法

   測定は、次の手順によって行うものとする。なお、パネルを用いて以下の測定を行う者は、第1の2に定めるパネルの選定方法により判定試験に適した嗅〈きゆう〉覚を有すると認められた者であって、臭気指数の測定に関する高度の知識及び技能を有する者であるものとする。

 1 試料の採取及び流量の測定

  (1) 環境試料

    第2の1の(1)の試料採取装置の種類に応じて、次のいずれかの方法により試料採取容器又は試料採取袋に試料ガスを採取する。
  •    ア 第2の1の(1)のアに掲げる装置による場合は、あらかじめ1.3kPa以下になるまでに減圧した試料採取容器のコックを開き、6秒以上30秒以内で試料を採取する方法。
  •    イ 第2の1の(1)のイに掲げる装置による場合は、試料採取用吸引瓶を用いて、6秒以上30秒以内で試料採取袋の容量に相当する量を採取する方法。
  •    ウ 第2の1の(1)のウ又はエに掲げる装置による場合は、6秒以上30秒以内で10l程度の試料を採取する方法。

  (2) 排出口試料

    第2の1の(2)の試料採取装置により、約1~3分で3~20l程度の試料を採取する方法。

  (3) 流量の測定

    排出口における排出ガスの流量(単位 温度零度、圧力一気圧における立方メートル毎秒)は、日本工業規格Z8808に定める方法により測定して得た値を秒あたりの流量に換算して得るものとする。

  (4) 排出水試料

    第2の1の(3)の試料採取器具に試料を泡立てないよう静かに採取し、気泡が残らないように満水にして直ちに密栓する。採取後、試料水は、判定試験を実施するまで0~5℃の暗所に保管する。

 2 判定試験

  (1) 判定試験の実施時期

    判定試験は、試料を採取した日又はその翌日のできる限り早い時期に行うものとする。

  (2) パネルの人数

    あらかじめ第1の2に定めるパネルの選定方法により選定された者6人以上を充てるものとする。

  (3) 判定試験の実施場所

    判定試験の実施場所は、換気装置又は換気窓を有し、試験に影響を及ぼすおそれのある臭気の存しない場所で、パネルが十分落ち着ける場所とする。

  (4) 判定試験の手順

   ア 環境試料
    3個のにおい袋に無臭空気を注入してシリコンゴム栓で封じ、そのうちの1個に、注射器を用いて採取試料を注入し、最初に判定試験を行う希釈倍数(以下「当初希釈倍数」という。(注1))になるよう調製する。調製したにおい袋(以下「付臭におい袋」という。)1個と無臭空気のみを注入したにおい袋(以下「無臭におい袋」という。)2個を1組として各パネルに渡す。各パネルは、におい袋用鼻あてを用いて3個のにおい袋のうちから採取試料が注入されていると判定するにおい袋1個を選定する(以上の操作を「におい袋選定操作」という。以下同じ。)。このにおい袋選定操作を、各パネルについて3回繰り返す。
    各パネルが行うにおい袋選定操作ごとに、正解率として、当該パネルが付臭におい袋を選定した場合にあっては1.00、無臭におい袋を選定した場合にあっては0.00を与え、全ての正解率を加算した値をパネル全員の延べ選定回数で除す。これにより平均正解率を得る。
    平均正解率が0.58未満の場合は判定試験を終了する。平均正解率が0.58以上の場合は希釈倍数を10倍して再度上記の操作を行い、判定試験を終了する。
  1.    (注1) 環境試料の当初希釈倍数は、原則10とする。ただし、希釈倍数を10倍して再度操作を行った際の平均正解率が、なお0.58以上となると見込まれる場合には、当該平均正解率が0.58未満となるよう当初希釈倍数を10以上の適切な値に決定するものとする。
   イ 排出口試料
    第3の2の(4)のアと同じ手順で当初希釈倍数(注2)に調製した付臭におい袋1個と無臭におい袋2個を1組として各パルに渡し、におい袋選定操作を行う。このにおい袋選定操作において、無臭におい袋を選定したパネルについては、におい袋選定操作を終了する。
   また、付臭におい袋を選定したパネルについては、希釈倍数をおおむね3倍してにおい袋選定操作を繰り返し、当該パネルが無臭におい袋を選定した時点で終了する。
  1.    (注2) 排出口試料の当初希釈倍数は、パネルによる臭気の有無の判定が十分に可能であり、かつ、パネルに嗅覚疲労等による影響がないよう決定するものとする。
   ウ 排出水試料
    3個の判定試験用フラスコ(以下単に「フラスコ」という。)のうちの1個に、無臭水製造装置で製造した後無臭水保管容器で保管していた無臭水(注3)を注入し、試料水(注3)を当初希釈倍数(注4)になるよう注入用器具を用いて注入し、試料水と無臭水を足した全量が100mlとなるよう調製(注5)し、フラスコを密栓する。調製した水の入ったフラスコ(以下「付臭フラスコ」という。)1個と100mlの無臭水のみを注入用器具を用いて注入し密栓したフラスコ(以下「無臭フラスコ」という。)2個を1組として各パネルに渡す。各パネルは、フラスコをそれぞれ縦に2~3回強く振とうした後、フラスコ用鼻あてを用いて3個のフラスコのうちから試料水が注入されていると判定するフラスコ1個を選定する(以上の操作を「フラスコ選定操作」という。以下同じ。)。このフラスコ選定操作において、無臭フラスコを選定したパネルについては、フラスコ選定操作を終了する。また、付臭フラスコを選定したパネルについては、希釈倍数をおおむね3倍してフラスコ選定操作を繰り返し、当該パネルが無臭フラスコを選定した時点で終了する。
  1.    (注3) 試料水及び無臭水は、恒温水槽で約25℃に保温したものを用いるものとする。また、無臭水は原則としてpHが7~8になるように調製し、使用前に無臭であることを確認すること。
  2.    (注4) 排出水試料の当初希釈倍数は、パネルによる臭気の有無の判断が十分に可能であり、かつ、パネルに嗅覚疲労等による影響がないよう決定するものとする。
  3.    (注5) 試料の調整は、試料臭気による室内汚染を防ぐため、換気の可能な場所で行うか、ドラフト又は簡易ドラフトを用いて行うものとする。

 3 臭気指数の算出

  (1) 環境試料

    臭気指数は、次の式により算出する。
    ただし、当初希釈倍数に係る平均正解率が0.58未満の場合にあっては、臭気指数の値は、10logM未満として表示するものとする。また、次の式により算出されるYの値に一未満の端数があるときは、臭気指数の値は、これを四捨五入して得た数とする。
    Y=10logM+10(r1-0.58)/(r1-r0)
    この式において、Yは臭気指数、Mは当初希釈倍数、r1は当初希釈倍数に係る平均正解率、r0は当初希釈倍数を10倍したときの平均正解率を表すものとする。

  (2) 排出口試料

  •    ア 次の式により試料臭気の希釈倍数に係る各パネルの閾値を算出する。
         X1=(logM1i+logM0i)/2
         この式において、Xiは試料臭気の希釈倍数に係るあるパネルの閾値、M1iは当該パネルが付臭におい袋を選定した場合における当該におい袋に係る希釈倍数の値のうち最大のもの、M0iは当該パネルが無臭におい袋を選定した場合における付臭におい袋に係る希釈倍数の値を表すものとする。
  •    イ 各パネルについて算出したXiのうち最大の値と最少の値をそれぞれ一つずつ除き、当該除かれた値以外の値を加算して得た値をパネルの人数から2を減じた値で除す。
  •    ウ 次の式により算出する。
         Y=10X
         この式において、Yは臭気指数、Xは上記イにより算出された値を表すものとする。ただし、次の式により算出されるYの値に一未満の端数があるときは、臭気指数の値は、これを四捨五入して得た数とする。

  (3) 排出水試料

  •    ア 次の式により試料臭気の希釈倍数に係る各パネルの閾値を算出する。
         Xwi=(logN1i+logN0i)/2
         この式において、Xwiは試料臭気の希釈倍数に係るあるパネルの閾値、N1iは当該パネルが付臭フラスコを選定した場合における当該フラスコに係る希釈倍数の値のうち最大のもの、N0iは当該パネルが無臭フラスコを選定した場合における付臭フラスコに係る希釈倍数の値を表すものとする。
  •    イ 各パネルについて算出したXwiのうち最大の値と最小の値をそれぞれ一つずつ除き、当該除かれた値以外の値を加算して得た値をパネルの人数から2を減じた値で除す。
  •    ウ 次の式により算出する。ただし、次の式により算出されるYwの値に一未満の端数があるときは、臭気指数の値は、これを四捨五入して得た数とする。
         Yw=10Xw
         この式において、Ywは臭気指数、Xwは上記イにより算出された値を表すものとする。

 4 臭気排出強度の算出方法

  (1) 次の式により試料臭気の臭気濃度を算出する。

     C=10Y/10
    この式において、Yは前項に定める方法により算出される、臭気指数を表すものとする。

  (2) 次の式により算出する。ただし、次の式により算出されるqdの値は有効数字2桁とする。

     qd=60×C×Q0
    この式において、qdは臭気排出強度(単位 温度零度、圧力一気圧における立方メートル毎分)、Cは上記(1)により算出された値、Q0は排出ガスの流量(単位 温度零度、圧力一気圧における立方メートル毎秒)を表すものとする。