法令・告示・通達

悪臭防止法施行令の一部を改正する政令の施行等について

公布日:平成1年10月13日
環大特127号

環境庁大気保全局長から都道府県知事・指定都市市長あて

 悪臭防止法施行令の一部を改正する政令(平成元年政令第277号。以下「改正政令」という。)が平成元年9月27日付けで公布され、平成2年4月1日から施行されることとなつた。
 これに伴い、悪臭防止法施行規則の一部を改正する総理府令(平成元年総理府令第50号)が、平成元年9月27日付けで、また、悪臭物質の測定の方法の一部を改正する告示(平成元年環境庁告示第47号)が、同年10月13日付けで公布され、いずれも改正政令と同様、平成2年4月1日から施行又は適用されることとなつた。
 今回の改正は、悪臭防止の充実を図るため、悪臭防止法第2条に定める悪臭物質として新たにプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸及びイソ吉草酸の4物質を追加指定したものである。
 貴職におかれては、下記の事項に留意の上、改正政令等の円滑かつ適正な運用を図られたい。
 また、本通達の趣旨を管下市町村長に周知徹底し、指導に遺憾なきを期されたい。

第1 悪臭物質の追加指定の考え方

 1 追加指定の背景

   悪臭物質については、昭和47年5月悪臭防止法の施行の際、中央公害対策審議会の第一次答申を受けてアンモニア等5物質が、また、昭和51年8月の第二次答申を受けて二硫化メチル等3物質が政令で指定されている。しかし、これら8物質の規制では悪臭苦情に十分対処しきれない実情にあり、悪臭物質の追加指定が強く望まれていたところである。
   そのため、環境庁においては、関係機関の協力を得て、悪臭公害の実態、悪臭物質の測定方法、悪臭防止技術等について調査研究を進めてきたところであるが、平成元年9月4日に中央公害対策審議会の答申を得て、これを基に政令等の改正を行い、4物質を追加指定したものである。

 2 追加指定の理由

   プロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸及びイソ吉草酸の4物質は、昭和47年の第一次答申に示された悪臭物質の指定要件、すなわち、①悪臭公害の主要な原因となつている物質であること、②大気中の濃度を測定し得るものであること、の2つの要件を満たす物質として選定したものである。
   今回の4物質の追加により、畜産事業場、化製場、でん粉製造工場等についてよりきめ細かく悪臭の排出が規制されることとなる。
   なお、今後も測定方法等に関する調査研究を進め、必要に応じ悪臭物質を追加指定し、適切な悪臭防止の措置を講じていく予定である。

第2 改正の要点

  1.  1 悪臭防止法施行令関係
       悪臭防止法第2条の政令で定める物質として、新たにプロピオン酸、ノルマル酪酸、ノルマル吉草酸及びイソ吉草酸の4物質を追加したこと。(悪臭防止法施行令第1条の改正)
  2.  2 悪臭防止法施行規則関係
       追加4物質について、工場その他の事業場の敷地境界線における規制基準の範囲を定めたこと。(悪臭防止法施行規則別表の改正)
  3.  3 悪臭物質の測定の方法の告示関係
       追加4物質について、工場その他の事業場の敷地境界線における測定方法を定めるとともに、別表をすべて縦書きから横書きに改めたこと。

第3 留意すべき事項

 1 追加4物質の主要発生源について

   追加4物質を排出するおそれのある工場その他の事業場のうち主要なものとしては、おおむね別表に掲げるものがあるので、貴職の管轄区域内におけるこれらの事業場の所在地、数、操業等の実態の把握に努められたいこと。

 2 規制基準の設定について

  1.   (1) 敷地境界線における規制基準の範囲は、規制地域の住民の大多数が悪臭による不快感をもつことがないような濃度の範囲として定められたものであること。
        すなわち、規制基準の範囲としては、調香師による嗅覚試験の結果を基礎として6段階臭気強度表示法によるものとし、その下限はそれぞれの物質について臭気強度2.5に対応する濃度とし、その上限は、地域の自然的、社会的条件により悪臭に対する順応のみられる場合があることを考慮し、臭気強度3.5に対応する濃度としたものであること。
  2.   (2) 敷地境界線における規制基準は、規制地域について、その自然的、社会的条件を考慮して、必要に応じ、当該地域を区分し、定めなければならないものとされているが、当該地域を区分する必要がある主な場合としては、当該地域のうちに主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応のみられる地域がある場合が該当すること。なお、追加4物質に関しては、「主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応のみられる地域」には、主として畜産業の用に供されている地域が含まれること。
        このような地域については、その土地利用の実態等に応じて、下表の区分に従つて区分し、規制基準は、それぞれに対応する右欄の範囲内で定めるものとすること。
        ただし、主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応のみられる地域内に存在する事業場からの悪臭により他の規制地域内の住民の生活環境がそこなわれていると認められる場合については、所要の区域を当該他の規制地域に係る規制基準を適用すべき地域として指定するものとすること。
    地域の区分
    規制基準(法第4条第1号)の範囲(単位ppm)
    主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応のみられる地域
    プロピオン酸
         0.07~0.2
    ノルマル酪酸      0.002~0.006
    ノルマル吉草酸      0.002~0.004
    イソ吉草酸      0.004~0.01
    上記(主として工業の用に供されている地域その他悪臭に対する順応のみられる地域)以外の地域
    プロピオン酸
         0.03~0.07
    ノルマル酪酸      0.001~0.002
    ノルマル吉草酸      0.0009~0.002
    イソ吉草酸      0.001~0.004

 3 悪臭物質の測定の方法について

  1.   (1) 試薬について
        ぎ酸は、不純物として被検成分を含まないものであること。
  2.   (2) 試料捕集管について
    1.    ア 水酸化ストロンチウムは、不純物として被検成分を含まないものであること。
    2.    イ アルカリビーズの調製方法については、告示に示されたいわゆる湿式法以外のものとしては、水酸化ストロンチウムを少量の水で懸濁させた後、速やかに乾燥させて微粉末とし、ガラスビーズにまぶすいわゆる乾式法が挙げられるほか、調製済みのアルカリビーズの市販品を購入しても差し支えないこと。
    3.    ウ アルカリビーズの調製は、その都度行うことが望ましく、長期間保存することは避けること。
    4.    エ 操作中は、妨害物質の混入を防ぐため、試料捕集管の開口部付近には、直接手を触れないこと。
  3.   (3) ガスクロマトグラフ分析装置について
        カスクロマトグラフのカラム充てん剤は、告示に示された黒鉛化カーボンブラック担体にFFAP及びりん酸を被覆したものと同等以上の性能を有するものを使用する場合にそれぞれのピークが十分に分離されることを確認するとともに、2―メチル酪酸と3―メチル酪酸(イソ吉草酸)のピークが十分に分離されることを確認すること。

別表

悪臭物質
主要発生源事業場
プロピオン酸
脂肪酸製造工場、染色工場、畜産事業場、化製場、でん粉製造工場等
ノルマル酪酸
畜産事業場、化製場、魚腸骨処理場、鶏糞乾燥場、畜産食料品製造工場、でん粉製造工場、し尿処理場、廃棄物処分場等
ノルマル吉草酸
イソ吉草酸