法令・告示・通達
小規模飛行場環境保全暫定指針について
環大企342号
環境庁大気保全局長から都道府県知事政令指定都市市長あて
近年、航空需要の増大及び質的変化により、ヘリコプターを中心とする小型機による地域航空交通の伸長は著しいものがあり、これら小型機の離着陸のため、ヘリポート等の小規模飛行場の設置の気運も全国的に高まつている。
これら小規模飛行場の大部分は離着陸回数が少なく、航空機騒音に係る環境基準(昭和48年12月27日環境庁告示第154号。以下「環境基準」という。)の適用対象とならない。また、これら小規模飛行場は、閣議決定(昭和59年8月28日)に基づく環境影響評価の実施対象となつていないため、この観点からの測定評価方法も定まつていない。しかしながら、前述の動向にかんがみ、小規模飛行場に係る騒音問題の発生の未然防止に十分配慮していく必要があることから、騒音影響を測定評価する統一的な指針が求められている。
本指針は、このような状況にかんがみ、環境基準の適用されない小規模飛行場のうち、当面、対処の必要なものについて、小規模飛行場周辺の環境の保全を図るため、航空機騒音評価方法、指針値等を定めたものである。
貴職におかれては、このような暫定指針の設定の趣旨にかんがみ、指針値の達成のための施策の実施に関し、格段の御配意を願いたく通知する。
小規模飛行場環境保全暫定指針
1 目的等
近年、航空需要の増大及び質的変化により、ヘリコプターを中心とする小型機による地域航空交通の伸長は著しいものがあり、これら小型機の離着陸のため、ヘリポート等の小規模飛行場の設置の気運も全国的に高まつている。
これら小規模飛行場の大部分は離着陸回数が少なく、航空機騒音に係る環境基準(昭和48年12月27日環境庁告示第154号。以下「環境基準」という。)の適用対象とならない。また、これら小規模飛行場は、閣議決定(昭和59年8月28日)に基づく環境影響評価の実施対象となつていないため、この観点からの測定評価方法も定まつていない。しかしながら、前述の動向にかんがみ、小規模飛行場に係る騒音問題の発生の未然防止に十分配慮していく必要があることから、騒音影響を測定評価する統一的な指針が求められている。
本指針は、このような状況にかんがみ、環境基準の適用されない小規模飛行場のうち、当面、対処の必要なものについて、航空機騒音評価方法、指針値等を設定することにより、小規模飛行場周辺の環境の保全を図ることを目的とする。
2 適用対象
- (1) 本指針は、飛行場及び反復継続使用される場外離着陸場のうち1日当たりの離着陸回数が10回以下のもの(以下「小規模飛行場」という。)に適用する。ここでいう「離着陸回数」とは、年間平均離着陸回数とし、季節変動が大きく短期的には1日当たり10回を超える飛行場及び場外離着陸場についても、年間平均で1日当たり10回以下であれば本指針の適用対象とする。
- (2) 離島にある小規模飛行場は適用対象としない。
- (3) 本指針の目的等にかんがみ、例えば、警察、消防、自衛隊等専用の小規模飛行場、あるいは災害派遣、航空救難等の緊急的な運航については、本指針は適用されない。
3 測定評価対象
本指針は、航空機の運用に伴つて、航空機から発生する飛行騒音及び地上騒音を合わせた騒音(以下「航空機騒音」という。)について測定評価の対象とする。
4 測定評価量
航空機騒音の測定評価量は、時間帯補正等価騒音レベルとする。時間帯補正等価騒音レベルは、①により定義される単発騒音暴露レベルを用いて等価騒音レベルを算出し、これに②の定義により時間帯補正を加えて求める。
① 単発騒音暴露レベル(LAE)
単発騒音暴露レベルは単発的に発生する騒音の1回ごとにA特性で重み付けられたエネルギーと等しいエネルギーを持つ継続時間1秒の定常音の騒音レベルのことで、次式によつて定義される。
ここで、TO :規準化時間(1秒)
PA(t):A特性音圧
PO :基準音圧(20μPa)
② 時間帯補正等価騒音レベル(Lden)
時間帯補正等価騒音レベルは、騒音を評価する場所で1日(0~24時)の間の観測される騒音のうち、対象とする航空機騒音の単発騒音暴露レベルを環境基準に準じて時間帯別に補正した後にエネルギー加算し、観測時間(1日=86,400秒)で平均してレベル表示した値である。
ここで、 i:各時間帯で観測標本のi番目
LAE,di:7:00~19:00の時間帯におけるi番目のLAE
LAE,ei:19:00~22:00の時間帯におけるi番目のLAE
LAE,ni:22:00~7:00の時間帯におけるi番目のLAE
TO :規準化時間(1秒)
T :観測時間(86,400秒)
5 指針値
指針値は、環境基準値との整合性を確保することを主眼として次のように設定する。
(1) 指針値
指針値は、次表とする。
種別
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指針値
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---|---|
Ⅰ
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Lden60デシベル以下
|
Ⅱ
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Lden65デシベル以下
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種別Ⅰ:次の建物の所在する場所
- 1 病院、学校その他特に静穏の保持が必要とされる建物の所在する場所
- 2 専ら住居の用に供される地域に存する住居の所在する場所
種別Ⅱ:Ⅰ以外の場所であつて、通常の生活を保全する必要のある建物の所在する場所
(2) 深夜・早朝の騒音の低減
深夜・早朝は、特に病院及び専ら住居の用に供される地域に存する住居等の所在する場所については、さらに騒音を低減することが望ましい。
6 測定評価方法
(1) 測定方法
本指針における航空機騒音の測定方法については、対象とする小規模飛行場の運用状況、飛行状況等が多種多様であることから、細部にわたつて一律に設定することは極めて困難である。したがつて、以下の基本的原則のみを定めることとし、具体的な測定方法については、この原則を踏まえ、それぞれの小規模飛行場の状況に応じて適切な方法を採用する。
- ① 測定は、原則として、連続7日間、暗騒音よりも10デシベル以上大きな航空機騒音について計測する。なお、単発騒音暴露レベルの求め方(積分騒音計を用いる方法、騒音レベルのサンプリングによる方法)については、日本工業規格Z8731に従うものとする。
- ② 測定は屋外で行うものとし、その測定点としては、当該場所の航空機騒音を代表すると認められる地点を選定する。
- ③ 測定時期は、航空機の飛行状況及び風向き等の気象条件を考慮して、測定点における航空機騒音を代表すると認められる時期を選定する。また、飛行状況の差異が季節変動等により著しい場合には、測定点における代表的な航空機騒音を把握するため必要かつ十分な期間測定を行う。
(2) 評価方法
航空機騒音の評価は、(1)の測定方法により求められた単発騒音暴露レベルに発生時間帯を考慮した補正を行つた後、それらを用い1日ごとの時間帯補正等価騒音レベルを算出し、そのすべての値をパワー平均して行うものとする。飛行状況の差異が季節変動等により著しい場合には、季節ごと等に測定を行い、測定日ごとの時間帯補正等価騒音レベルから年間の騒音を代表する値を算出し、行うものとする。
(3) 測定機器
測定は、日本工業規格C1505に定める精密騒音計、日本工業規格C1502に定める普通騒音計又はこれらと同等以上の性能を持つ機器を用いて行う。この場合、周波数補正回路はA特性とする。
(4) 近似方法
測定機器等の都合上、(1)から(3)に定める方法で測定評価することができない場合には、単発騒音暴露レベルの算出について近似式を用いることもやむを得ないが、その場合には本指針に定める測定評価方法により算出される評価値と同等の値が得られることを十分確認した上で、用いるものとする。
7 騒音対策
本指針の適用対象となる小規模飛行場の設置に当たつては、可能な限り、地域住民の生活環境を保全する必要のある場所の近傍を避けるとともに、発生源対策を中心とする対策を講じることにより、指針値の達成を図る必要がある。
低騒音型機の導入は、ヘリコプター等小型機においては、現段階では技術的に困難な面もあると考えられるが、一方、これら小型機については飛行方法に比較的柔軟性があるという特性がある。また、本指針の適用対象となる小規模飛行場においては、敷地が狭いことから地上音が周辺地域に及ぼす影響も無視できない。このようなことから、本指針における騒音対策としては、適切な時間帯選定等の運航・運用対策が中心になると考えられる。
小規模飛行場の設置・運用に当たつては、設置管理者が、これらの対策を十分検討し、必要に応じ導入することが必要である。
8 その他
(1) 運用に当たつての配慮
本指針は、地方公共団体等に提示することにより、小規模飛行場の設置に当たつての環境保全面の指針となるものである。ただし、既設の小規模飛行場については、立地場所周辺の状況やその変化の経緯等にかんがみて、一律に本指針を適用することが困難な点もあると考えられるので、個々の小規模飛行場の事情に応じて現実的、効果的な判断を加えていく必要があることに十分配慮するものとする。
(2) 指針の見直し
本指針は、現在のところ得られる知見を基に、環境基準との整合性を考慮しつつ、取りまとめたものである。しかしながら、今後の小規模飛行場の設置・運用の動向、使用機材その他の運航の動向等について、その推移を見極めるとともに、今後の知見の進展も踏まえた所要の調査・研究を加え、必要に応じ見直すこととする。