法令・告示・通達

「農薬取締法第三条第一項第四号から第七号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件の一部を改正する件」について

公布日:平成18年08月03日
環水土発第060803001号

(環境省水・大気環境局長から農林水産省消費安全局長あて)

 「農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件の一部を改正する件」(平成17年環境省告示第83号。以下「改正告示」という。)は、平成17年8月3日に公布され、本日、施行されたところである。これにより、本日申請された農薬から改正告示が適用されることとなる。
 改正告示は、農薬登録段階でのリスク管理措置である、農薬取締法(昭和23年法律第82号)第3条第2項の規定に基づき環境大臣が定める基準のうち、土壌残留に係るもの及び水質汚濁に係るものを、国際的な動向等を踏まえて見直したものである。
 貴職におかれては、改正告示に基づき、独立行政法人農薬検査所において適切な検査が実施されるよう御指導いただくとともに、水質汚濁に係る農薬毎の登録保留基準値の設定・評価に必要な試験成績の提供につき御協力方宜しくお願いする。併せて、本通知の関係団体等への周知方宜しくお願いする。

第1 背景

  第2次環境基本計画(平成12年12月22日閣議決定)では、「将来にわたって持続可能な社会を構築していくためには、一方で生活や経済活動において用いられる化学物質の有用性を基盤としながら、他方でそれらの有害性による悪影響が生じないようにすることが必要」としている。
  また、化学物質対策に関する国際的な取組である「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下「POPs条約」という。)では、難分解性・高蓄積性等の性質を持つ物質は人体や環境への悪影響を及ぼすおそれがあるとして、各締約国が協調して規制していくこととされている。
  このことを踏まえ、環境省では、農薬の環境中における残留性及び生物濃縮性についての評価の在り方について検討を行い、土壌残留及び水質汚濁に係る登録保留基準を改正したものである。

第2 登録保留基準改正の基本的考え方

  農薬の土壌残留により汚染された農作物による人畜への被害防止及び水質汚濁による人畜への被害防止の観点から、より注意深く登録段階での評価を行う必要があるため、以下の見直し等を行った。

  1. (1)土壌残留に係る登録保留基準については、国際的に合意されたPOPs条約を重視し、農薬の残留性の基準を見直すこととした。また土壌中半減期の試験法をほ場試験とするとともに、後作物残留性に関する判断基準を改めることとした。さらに、土壌に残留した農薬による作物の汚染についての例外規定の明確化を図った。
  2. (2)水質汚濁に係る登録保留基準については、国際的にも生物濃縮性の観点が重視され具体的なクライテリアが明確になってきたことを踏まえ、従来の飲料水経由の農薬摂取に加え、魚類に濃縮された農薬の摂取による人畜への悪影響についても考慮していくこととした。

第3 登録保留基準改正の内容等

 1.土壌残留に係る登録保留基準の改正について

  1.   ① 農薬取締法第3条第1項第5号に掲げる、「その使用に係る農地等の土壌の汚染が生じ、かつ、その汚染により汚染される農作物等の利用が原因となって人畜に被害が生ずるおそれがあるとき」の判断は、当該農作物が食品衛生法に基づく食品規格又は人の健康を損なうおそれのない量として厚生労働大臣が定める量を満たすかどうかに着目して行うこととし、食品規格等を満たさない場合は登録を保留することとした。
  2.   ② 土壌中で当該農薬が残留しやすいか否かの判断は、土壌中半減期が180日以上かどうかに着目して行うこととした。
  3.   ③ 土壌中半減期については、ほ場試験により算出することとした。

2.水質汚濁に係る登録保留基準の改正について

(1)評価手法等
  1.   ① 水田使用農薬の他、畑や果樹のみで使用される農薬についても評価対象とした。
  2.   ② 一定の環境モデルのもとで農薬を散布し、公共用水域に流出又は飛散した場合の公共用水域中での当該農薬の水質汚濁予測濃度(Predicted Environmental Concentration。以下「水濁PEC」という。)と、登録保留基準値とを比較することによりリスク評価を行うこととした。
  3.   ③ 水濁PECの算定は、試験及び評価のコストの効率化を図るため、段階制を採用した。なお、既登録農薬については、水濁PECに代えてモニタリング調査の結果を活用できることとした。
  4.   ④ リスク評価の結果、水濁PECが登録保留基準値を上回る場合には登録を保留することとした。
(2)登録保留基準値の設定方法

   登録保留基準値は、当該農薬の生物濃縮係数により次の場合に分けて設定することとした。

  1.   ① 生物濃縮係数が5000未満の場合
        1日あたりの飲料水量(2L)を摂取した場合に、それが人1人あたりのADI(一日許容摂取量)の10%となる濃度を登録保留基準値とすることとした。
  2.   ② 生物濃縮係数が5000以上の場合
        1日あたりの飲料水に加え、魚類から摂取する量を合算した値が人1人あたりのADIの15%となる濃度を登録保留基準値とする。なお、魚類における濃度については、内水面漁業・養殖業由来のものは河川水中濃度がそのまま濃縮されるものとし、海面漁業・養殖業由来のものは海洋に流出した時点で5倍に希釈された上で濃縮されるものとして算定することとした。
(3)登録後のリスク管理

   登録後においても、環境モニタリングの結果等を踏まえ、必要に応じて、適切なリスク管理措置を講ずることとした。