法令・告示・通達

土壌汚染防止対策事業実施要領

公布日:昭和60年07月19日
60農蚕3978号

(地方農政局長・都道府県知事あて農林水産事務次官通達)

第一 目的

  農用地の土壌の重金属等による汚染に起因して、人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産され、又は農作物の生育が阻害されること等を防止するため、現地改善対策試験の実施、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律(昭和四五年法律第一三九号。以下「法」という。)第五条に基づく農用地土壌汚染対策計画の作成、阻害要因等の排除又は被害の軽減に必要な事業を行い、もつて国民の健康の保護及び生活環境の保全並びに農業の生産性の維持及び農業経営の安定に資するものとする。

第二 事業の種類及び内容

  土壌汚染防止対策事業の種類及び内容は、次のとおりとする。

 一 現地改善対策試験事業

   この事業は、都道府県知事が、原則として、農業振興地域の整備に関する法律(昭和四四年法律第五八号)第六条第一項の規定により当該都道府県知事が指定した農業振興地域内の農用地であつて、土壌に含まれる重金属類に起因して人の健康を損なうおそれがある農畜産物が生産され、若しくは農作物等の生育が阻害されると認められるものについて、その改善対策技術を確立するため、地方農政局長(北海道にあつては農林水産省農蚕園芸局長、沖縄県にあつては沖縄総合事務局長。以下同じ。)と協議のうえ地域を定め、農林水産省農蚕園芸局長が別に定めるところにより、現地試験ほ場を設置し、土壌改良、土層改良、客土、排土等の試験を行うとともに、この試験の結果を、法に基づいて行う農用地の土壌の汚染の防止及び除去並びに汚染農用地の利用の合理化に資するための基礎資料とするほか、必要に応じその概要を関係市町村等に通知し、土壌改良、肥培管理等必要な対策につき指導助言を行う事業とする。

 二 対策計画作成事業

   この事業は、都道府県知事が、毎年度、地方農政局長と協議の上、農林水産省農蚕園芸局長が別に定めるところにより、対策計画作成対象地域を選定し、「農用地の土壌の汚染防止等に関する法律の施行について」(昭和四六年六月三〇日付け46農政第三三四一号農林事務次官依命通達)の記の第四に定めるところに即して対策計画を作成する事業とする。

 三 小規模公害防除対策事業

   この事業は、次に掲げる事業(農用地以外のものとして利用する土地の造成事業を除く。)とし、それぞれの事業について受益面積がおおむね一〇ヘクタール未満であるものとする。

  1.   (一) 法第三条第一項の規定に基づき指定された農用地土壌汚染対策地域(以下「対策地域」という。)及び農用地土壌汚染対策地域に隣接する地域であつて当該農用地土壌汚染対策地域に準じて一体として事業を施行することが必要と認められる地域において実施される法第五条第二項第二号に掲げる事業
  2.   (二) 水質の汚濁等により、人の健康を損なうおそれのある農畜産物が生産され、若しくは農畜産物の生育が阻害され、又はそれらのおそれが著しいと認められる場合及び農作業の能率が低下し、労働生産性が著しく害される場合において、汚濁等を防止し、除去し、又は汚濁からの回復を図るために必要な事業
  3.   (三) カドミウム環境汚染要観察地域(カドミウムによる環境汚染暫定対策要領(昭和四四年九月一一日付け環公公第九〇九八号厚生省環境衛生局長通達)に基づき指定された地域をいう。)等の地域において、農用地の土壌汚染に起因して農業経営が著しく阻害される等(一)又は(二)に類する事態が発生した場合において、その回復を図るために必要な事業
  4.   (四) (一)から(三)までの事業と併せて行うことが技術的又は経済的に必要かつ妥当と認められるかんがい用排水、農道整備、ほ場整備(区画整理及びこれに附帯する事業をいう。)、客土等の事業

 四 カドミウム汚染米発生防止対策事業

   この事業は、次の(一)から(五)までに掲げる要件のすべてに該当する地域において、カドミウム汚染米の発生に伴い関係地域内の農家が被る農業被害を極力軽減する等の観点から、客土等の土壌汚染対策が実施されるまでの過渡的期間において、カドミウム汚染米の発生防止を目的として稲のカドミウム吸収の抑制に必要な資材(以下「カドミウム吸収抑制資材」という。)の投入及び合理的な水管理等の指導を行う事業とする。

  1.   (一) カドミウムによる土壌汚染が鉱業に起因する地域であること。
  2.   (二) カドミウムによる土壌汚染の全部又は一部が休廃止鉱山に起因する地域であること。
  3.   (三) 対策地域としての指定が行われた地域又は対策地域として指定されると認められる地域であること。
  4.   (四) カドミウムによる土壌汚染の原因者が明らかである地域等速やかな救済が可能と認められる地域以外の地域であること。
  5.   (五) 公害防除特別土地改良事業(公害防除特別土地改良事業実施要綱(昭和四七年一月一一日付け46農地D第八〇八号農林事務次官依命通達)に基づく公害防除特別土地改良事業をいう。)等の事業により客土等の工事が開始された区域でないこと。

第三 事業の実施主体

  この事業の実施主体は、第二の一、二及び四の事業にあつては都道府県とし、第二の三の事業にあつては都道府県又は市町村とする。なお、第二の一の事業を実施する場合の試験担当機関は都道府県農業試験場とする。

第四 事業計画の認定

  1.  一 都道府県知事若しくは市町村長が第二の三の事業を実施しようとするとき又は都道府県が第二の四の事業を実施しようとするときは、農林水産省農蚕園芸局長が別に定めるところにより事業計画認定申請書を作成し、都道府県知事にあつては地方農政局長に、市町村長にあつては都道府県知事に提出し、その事業計画がこの要領に照らして適当である旨の認定を受けるものとする。
  2.  二 都道府県知事は、市町村長からの申請に係る一の認定を行うときはあらかじめ地方農政局長と協議するものとする。

第五 結果のとりまとめ及び報告

  都道府県知事は、毎年度、第二の一、二及び四の事業に係る事業成績を農林水産省農蚕園芸局長が別に定めるところにより取りまとめ、地方農政局長に二部提出するものとする。

第六 国の助成

  国は、都道府県に対し、予算の範囲内において、次に掲げる経費について、別に定めるところにより補助するものとする。

 一 第二の一又は二の事業に係るもの

   都道府県が事業を実施するのに要する経費

 二 第二の三の事業に係るもの

  1.   (一) 都道府県が事業を実施するのに要する経費
  2.   (二) 市町村が事業を実施するのに要する経費につき都道府県が補助するのに必要な経費及び市町村が行う事業の実施を都道府県が指導するのに要する事務費

 三 第二の四の事業に係るもの

  1.   (一) カドミウム吸収抑制資材の購入に要する経費
  2.   (二) カドミウム吸収抑制資材の散布に要する経費
  3.   (三) 水管理等の指導に要する経費
  4.   (四) 事業の推進に要する経費

第七 その他

  この要領に定めるもののほか、この事業の実施に関し必要な事項については、農林水産省農蚕園芸局長が別に定めるところによるものとする。