法令・告示・通達
土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針運用基準について
環水企30・環水土12
環境庁水質保全局企画課地下水・地盤環境室長・土壌農薬課長から都道府県水質汚濁防止法政令市環境担当部局長あて
土壌汚染及びそれに密接な関連を有する地下水汚染については、「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針」を本日付け環水企第29号・環水土第11号環境庁水質保全局長通知をもって送付しているところであるが、同指針の細目を示した「土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針運用基準」を別添のとおり取りまとめたので、送付する。
ついては、貴職におかれては、事業者、土地所有者(地方自治体が自ら所有する場合を含む。以下「事業者等」という。)に対して本運用基準の周知に努めるとともに、本運用基準を参考に、現地の実情を勘案した上で、事業者等に対する指導等を行い、また必要に応じ土壌・地下水汚染に係る調査の実施に努める等適切な対応をお願いする。
なお、今後、科学的知見の集積等に伴い、必要に応じ本運用基準の改定があり得るものである。
また、国が管理する土地の管理者である国の機関には別途通知していることを申し添える。
(参考)
土壌・地下水汚染に係る調査・対策指針の概要
第1章 総論
1.1 目的及び位置づけ
この指針は、土壌・地下水の汚染に係る調査又は対策が必要であると考えられる土地(以下「対象地」という。)において、調査又は対策を実施する場合に参考として活用されるよう、一般的な技術的手法を示し、もって土壌・地下水の環境の保全に資することを目的とする。
1.2 適用
本指針は、「土壌の汚染に係る環境基準について」(平成3年8月23日環境庁告示第46号。以下「土壌環境基準」という。)のうち検液中濃度に係る項目(以下「溶出基準項目」という。)及び「地下水の水質汚濁に係る環境基準について」(平成9年3月13日環境庁告示第10号。以下「地下水環境基準」という。)の全項目に係る土壌・地下水の調査及び対策に適用する。
1.3 調査・対策の進め方
土壌・地下水の調査・対策の進め方は、契機、目的及び主体によって考え方や手法が異なる。本指針では、次のように場合分けし、それぞれの場合に応じた手法を示している。
調査・対策の契機による場合分け(参考)
①地下水汚染契機型
(契機) 水質汚濁防止法の常時監視等による地下水汚染の判明
(汚染) 汚染井戸が存在
(目的) 地下水汚染源の究明及び対策の実施
(主体) 都道府県等又は都道府県等の指導等を受けた事業者等
(対応) まず、関係地域を設定し、地下水汚染源推定を実施
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②現況把握型
(契機) 事業活動の状況からみて汚染のおそれがある場合に、事業場の移転、跡地の再利用等の土地改変の機会等に実施
(汚染) 対象地内の汚染の有無は未知
(目的) 土壌・地下水の汚染の状況(有無)の把握
(主体) 公有地等管理者又は事業者等
(対応) 基本的に対象地全体について対象地概況調査を実施
汚染が判明した場合には都道府県等に連絡、所要の対策を実施
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③汚染発見型
(契機) 対象地内の土壌・地下水汚染の発見
(汚染) 土壌又は地下水汚染が存在
(目的) 汚染原因の究明及び対策の実施
(主体) 汚染を発見した公有地等管理者又は事業者等
(対応) 汚染を発見した旨を都道府県等に連絡
発見した汚染の周辺を重点的に調査
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第2章 貴金属等に係る調査・対策
2.1 調査
2.1.1 貴金属等に係る調査の進め方
貴金属等については、環境基準の不適合がもっぱら自然的原因による場合があること、一般に土壌中の移動性は小さいが対象地の状況等や共存する物質によっては汚染が広がるおそれがあること等に十分留意しつつ、①地下水汚染契機型、②現況把握型及び③汚染発見型のそれぞれについて、①の場合は地下水汚染源推定調査を経た上で、②及び③の場合は地下水汚染源推定調査を経ずに、対象地資料等調査、対象地概況調査及び対象地詳細調査の順に調査を進める。
また、対象地概況調査又は対象地詳細調査の結果土壌・地下水汚染が判明した場合には、状況に応じて適切な応急対策を講ずる
2.1.2 地下水汚染源推定調査
地下水汚染契機型の調査の場合には、都道府県等は、汚染源を推定するため地下水汚染源推定調査を行う。
地下水汚染源推定調査では、関係地域における対象物質の排出状況、水文地質状況、地下水汚染の現況等を把握するための資料調査や、地下水(井戸)調査等を行い、さらに必要に応じてアンケート調査、聞き取り調査等を行う。
これらの結果から、汚染源であるおそれのある一つ又は複数の対象地を絞り込む。
2.1.3 対象地資料等調査
対象地資料等調査では、対象地に係る概況を把握するため、資料調査並びに必要に応じて聞き取り調査及び現地踏査を行う。調査は、対象物質の排出状況、水文地質状況等のうち、実施が適当なものについて行う。
調査実施契機の種類に応じた留意事項及び調査結果の評価は、次のとおりである。
- ① 地下水汚染契機型の場合は、対象地資料等調査の結果当該対象地が汚染源である可能性が小さい場合でも、対象地概況調査及び対象地詳細調査を行う。
- ② 現況把握型の場合は、対象地資料等調査の結果明らかに汚染のおそれがないと判断される場合以外は、当該対象地において対象地概況調査を行う。
- ③ 汚染発見型の場合は、汚染の原因を究明する観点から対象地資料等調査を行う。なお、地下水汚染が判明した場合で、対象地資料等調査の結果当該対象地が汚染源である可能性がない場合は、汚染源が他にあると考えられるので、都道府県等は、関係地域を設定した上で①地下水汚染契機型の地下水汚染源推定調査を行う。
2.1.4 対象地概況調査
対象地概況調査では、対象地における土壌・地下水の概況を把握するため、表層土壌の汚染状況について、また、既設井戸がある場合には地下水の汚染状況について調査を行う。
土壌・地下水の試料の測定は、それぞれ土壌環境基準及び地下水環境基準の公定法による。
ただし、引き続き対象地詳細調査を行う予定があり、汚染源である範囲を絞り込むことを目的とする場合には、試料の測定方法として適当な簡易測定法を用いてもよい。この場合、汚染の評価は相対的なものとなる。
また、対象地資料等調査の結果からみて明らかに汚染のおそれのない物質は、試料の測定の対象項目から除外してもよい。
なお、土壌の表層調査に当たって、カドミウム、鉛、砒素又は総水銀を対象項目とする場合には、含有量についても測定する。この場合、含有量の評価は含有量参考値による。
表1 含有量参考値
物質
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含有量参考値
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---|---|
カドミウム
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乾土1kgにつきカドミウムとして 9mg
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鉛
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乾土1kgにつき鉛として 600mg
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砒素
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乾土1kgにつき砒素として 50mg
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総水銀
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乾土1kgにつき水銀として 3mg
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調査実施契機の種類に応じた留意事項及び調査結果の評価は、次のとおりである。
- ① 地下水汚染契機型の場合は、対象地資料等調査の結果、対象地内であって対象物質が浸透したおそれのある場所において、重点的に土壌の表層調査を行う。対象地資料等調査で対象物質が浸透したおそれのある場所が明らかでない場合には、対象地の全域にわたり土壌の表層調査を行う。いずれの場合も、適当な簡易測定法を用いてもよい。地下水汚染契機型の場合には、原則として、引き続き対象地詳細調査を行う。
- ② 現況把握型の場合は、敷地の全域にわたり公定法による土壌の表層調査を行い、環境基準に照らして対象地における汚染の状況を評価する。表層調査で土壌環境基準に適合しない土壌汚染がみられた場合には、引き続き対象地詳細調査を行う。表層調査において土壌汚染が認められない場合であっても、既設井戸において地下水汚染がみられる場合、含有量参考値を超過する地点がある場合又は下層に土壌汚染のおそれがある場合には、対象地詳細調査を行う。なお、対象地資料等調査の結果、対象物質が浸透したおそれのある場所が概ね明らかである場合は、当該範囲について重点的に土壌の表層調査を行う。この場合、適当な簡易測定法を用いてもよい。
- ③ 汚染発見型の場合は、汚染の平面的な広がりを把握するため、土壌・地下水汚染が発見された周辺及び対象地資料等調査の結果により対象物質が浸透したおそれのある場所において、重点的に土壌の表層調査を行う。この場合、適当な簡易測定法を用いてもよい。
2.1.5 対象地詳細調査
対象地詳細調査では、対象地概況調査により土壌の表層で汚染が判明した範囲(簡易測定の結果相対的に高濃度であることが判明した場合を含む。)及び対象物質が浸透したおそれのある範囲等において、ボーリング調査を行い、土壌(地下水が採水できる場合には地下水を含む。)について深度別に試料を採取・測定し、汚染の状況を詳細に把握する。その結果から、対策をとるべき土壌・地下水の範囲を設定する。この場合、土壌及び地下水の試料の測定は公定法による。
ただし、あらかじめ対策をとるべき範囲を絞り込む場合には、試料の測定方法として適当な簡易測定法を用いてもよい。この場合、汚染の評価は相対的なものとなる。
対策をとるべき土壌・地下水の範囲は、土壌環境基準及び地下水環境基準に適合しない土壌及び地下水とする。また、土壌について環境基準に適合していても土壌の飛散及び流出防止等の観点から必要に応じて対策を講じようとする場合には、含有量測定結果を含有量参考値に基づき評価する。
調査実施契機の種類に応じた留意事項及び調査結果の評価は、次のとおりである。
- ① 地下水汚染契機型の場合は、対象地詳細調査の結果を地下水汚染源推定調査の結果と合わせて総合的に判断し、対象地が当該関係地域における地下水汚染源であるかどうかを判定するとともに、汚染が認められた場合は対策をとるべき土壌・地下水汚染の範囲を設定する。
- ② 現況把握型の場合は、対象地概況調査で土壌・地下水汚染が認められた範囲において対象地詳細調査を行い、対策をとるべき土壌・地下水汚染の範囲を設定する。
- ③ 汚染発見型のうち、土壌汚染が判明している場合は、対策をとるべき土壌汚染の範囲を設定する。地下水汚染が判明している場合であって、地下水汚染源であるおそれのある範囲において対象地詳細調査を行い、なお土壌汚染が認められない場合は、当該対象地は地下水汚染源ではないと判断される。
2.1.6 自然的原因の取り扱い
物質の種類や資料等調査等により、土壌・地下水の環境基準の超過が自然的原因によるものと判断される場合がある。
このような場合は、専門家の助言を得て総合的に判断することが望ましい。
2.2 対策
2.2.1 対策の考え方
対策には、「応急対策」と「恒久対策」がある。
調査の結果土壌・地下水汚染が明らかになった場合には、早期に恒久対策を行うことができる場合を除き、汚染の周辺環境への影響を防止するために、応急対策を行う。
そして、汚染の程度、地形、地質、周辺地域の状況、土地利用の現状及び計画、対象地の自然的・社会的条件等を勘案し、土壌環境基準及び地下水環境基準の達成を図るため、当該汚染土壌・地下水について恒久対策を講ずる。
2.2.2 応急対策
応急対策は、人による摂取防止対策及び汚染拡散防止対策に人別できる。後者は、汚染土壌による公共用水域及び地下水の汚染防止対策、対象物質の飛散等防止対策及び汚染地下水の拡散防止対策に分類できる。応急対策の実施に当たっては、周辺地域の状況等を勘案し適切な措置を講ずる。
2.2.3 恒久対策
(1) 恒久対策の基本的な考え方
重金属等に係る汚染土壌に係る恒久対策の目的は、将来にわたって雨水等により対象物質が溶出し、それが周辺の土壌・地下水に広がらないようにすることである。当該汚染土壌から対象物質を除去(重金属等の分離又は化合物の分解)することが望ましいが、少なくとも一般環境から隔離(封じ込め)する。なお、封じ込めを行う場合には、封じ込め施設の管理を行う必要がある。
また、汚染地下水については、対象物質の除去を行う。
(2) 恒久対策の種類と選定
重金属等に係る恒久対策は、次のように分類できる。
恒久対策は、対象とする物質の移動性、他の汚染物質の共存等に留意しつつ、対象地の状況等に応じて適切な対策を選定する。
なお、土壌の原位置封じ込めを行う際に地下水が存在する場合は、封じ込められた地下水が流出・拡散しないよう必要な措置を講ずる。
また、表層の土壌で含有量参考値を超えるものについては、土壌の飛散や流出防止等の観点からの対策を行うことが望ましい。
(3) 恒久対策の目標
原位置浄化の場合は、対策範囲の汚染土壌及び汚染地下水について、土壌及び地下水の状態がいずれも環境基準を満たすことを目標とする。また、掘削除去を伴う対策の場合には、掘削除去後原位置に残された土壌が土壌環境基準を満たすことを目標とする。
また、封じ込めについては、(4)に示すように、雨水等により対象物質が拡散しないよう、汚染土壌が適切に封じ込められることを目標とする。
(4) 汚染土壌の封じ込め
汚染土壌の封じ込めを行う場合には、原位置封じ込めの場合も掘削除去後封じ込めの場合も、当該汚染土壌が表2に定める溶出量値Ⅱ以下のもの(固型化又は不溶化を行って溶出量値Ⅱ以下となったものを含む。)は遮水工に、溶出量値Ⅱを超過するものは遮断工に封じ込める。ここで、遮水工とは、一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める命令(昭和52年総理府・厚生省令第1号)に規定する管理型最終処分場に準拠した構造を持つものであって雨水の浸入を防止したもの(この場合排水処理施設はなくてもよい。)、遮断工とは、同命令に規定する遮断型最終処分場に準拠した構造を持つものとする。
表2 溶出量値Ⅱ
項目
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溶出量値Ⅱ
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---|---|
カドミウム
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検液1Lにつき 0.3mg
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全シアン
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検液1Lにつき 1mg
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有機燐
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検液1Lにつき 1mg
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鉛
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検液1Lにつき 0.3mg
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六価クロム
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検液1Lにつき 1.5mg
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砒素
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検液1Lにつき 0.3mg
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総水銀
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検液1Lにつき 0.005mg
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アルキル水銀
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検出されないこと
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PCB
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検液1Lにつき 0.003mg
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チウラム
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検液1Lにつき 0.06mg
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シマジン
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検液1Lにつき 0.03mg
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チオベンカルブ
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検液1Lにつき 0.2mg
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セレン
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検液1Lにつき 0.3mg
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(測定方法は公定法に準じる。)
2.2.4 運搬・保管
対象地の外に汚染土壌等を運搬又は保管する場合には、周辺環境に影響を与えないよう、汚染土壌・地下水の飛散及び流出を防止するための措置を講ずる。また、汚染土壌の保管に当たっては、防水シート等により雨水の浸透を防止する。
2.2.5 周辺環境保全対策
恒久対策を行う場合には、対策の実施が対象地の周辺環境に影響を与えないよう、適切な周辺環境保全対策を講ずる。
2.2.6 モニタリング
恒久対策の実施中、その周辺環境への影響を監視するため、対象地周辺の土壌、公共用水域、地下水及び大気中の対象物質並びに二次的に生成されるおそれのある物質について定期的にモニタリングを行う。モニタリングの結果周辺土壌、地下水、大気等への影響が認められる場合には、周辺環境保全対策を講ずる。
2.3 確認
2.3.1 効果の確認
恒久対策の目標を達成していることを確認する。目標が達成されていない場合は、追加的な措置を講ずる。
2.3.2 利用に関する留意事項
(1) 対策完了後の場所等の土地の利用については、次のとおりとする。
- 1) 原位置浄化又は掘削除去を行った場所
対策の実施後目標を達成していれば、当該土地の利用について、環境保全上の観点からの支障はない。
なお、表層は、土壌の飛散、流出防止等の観点から、含有量参考値を下回っていることが望ましい。 - 2) 封じ込めを行った場所
適切な維持管理のもとで、遮水又は遮断機能を損なうことのない土地の利用とする。
(2) 掘削除去した汚染土壌について処理した後の土壌としての利用については、次のとおりとする。
対象物質を分離・分解技術で処理し、処理後の土壌について公定法により測定を行い、土壌環境基準値と同等の値以下になれば、当該土壌の利用について環境保全上の観点からの支障はない。なお、性状がもはや土壌とはいえないものについては、関係法令等の定めるところにより取り扱う。
2.4 封じ込め施設の適正な管理
対策として遮水工又は遮断工に封じ込めた場合には、対策完了後も必要に応じ2.3.1と同様の確認を行い、封じ込められた汚染土壌等が一般環境から引き続き隔離されるよう、施設を適切に管理する。
2.5 記録の作成、管理
調査、対策及び対策効果の確認に係る一連の記録を作成し、都道府県等及び対策を行った公有地等管理者がこれを管理する。なお、封じ込めを行った後に公用地等管理者が代わる場合には、記録を後継者に承継する。
対策を行った事業者等においても、調査、対策及び対策効果の確認に係る一連の記録を作成、管理することが望ましい。
第3章 揮発性有機化合物に係る調査・対策
<この概要では、第2章と異なる点を示す。>
3.1 調査
3.1.1 揮発性有機化合物に係る調査の進め方
揮発性有機化合物については、揮発性が高く、液状で粘性が小さいという物理化学的性質を有するため、重金属とは異なった挙動を示し、地下水の水位の変動等様々な要因によりその影響範囲が変動するおそれがあること等に十分留意しつつ、①地下水汚染契機型、②現況把握型及び③汚染発見型のそれぞれについて、①の場合は地下水汚染源推定調査を経た上で、②及び③の場合は地下水汚染源推定調査を経ずに、対象地資料等調査、対象地概況調査及び対象地詳細調査の順に調査を進める。
また、対象地概況調査又は対象地詳細調査の結果土壌・地下水汚染が判明した場合には、状況に応じて適切な応急対策を講ずる。
3.1.2 地下水汚染源推定調査<2.1.2に同じ>
3.1.3 対象地資料等調査<3.1.3に同じ>
3.1.4 対象地概況調査
対象地概況調査では、対象地における土壌・地下水の概況を把握するため、表層土壌の汚染状況について、また、既設井戸がある場合には地下水の汚染状況について調査を行う。
揮発性有機化合物は揮発性が高いことから、まず、土壌ガス調査法等の適当な簡易測定法を用いて揮発性有機化合物の土壌中の分布を把握する。その結果、揮発性有機化合物による汚染のおそれが認められた場合には、当該調査結果をもとに調査対象範囲を絞り込み、対象地詳細調査を行う。この場合、汚染の評価は相対的なものとなる。
土壌ガス調査法等により揮発性有機化合物による汚染のおそれが認められない場合であっても、必要に応じて公定法により調査を行い、土壌環境基準及び地下水環境基準に照らして対象地における土壌・地下水の汚染の状況を確認する。
なお、対象地資料等調査の結果からみて、明らかに汚染のおそれのない物質は、試料の測定の対象項目から除外してもよい。
調査実施契機の種類に応じた留意事項及び調査結果の評価は、次のとおりである。
- ① 地下水汚染契機型の場合は、対象地資料等調査の結果対象地内であって対象物質が浸透したおそれのある場所において、土壌ガス調査法等により重点的に土壌の表層調査を実施する。対象地資料等調査で対象物質が浸透したおそれのある場所が明らかでない場合には、対象地の全域にわたり土壌ガス調査法等により土壌の表層調査を行う。地下水汚染契機型の場合には、原則として、引き続き対象地詳細調査を行う。
- ② 現況把握型の場合は、敷地の全域にわたり、土壌ガス調査法等による土壌の表層調査を行い、揮発性有機化合物による汚染のおそれが認められた場合には、当該調査結果をもとに調査対象範囲を絞り込み、対象地詳細調査を行う。また、必要に応じて、公定法により調査を行い環境基準に照らして対象地における汚染の状況を評価する。ただし、表層に汚染のおそれが認められない場合であっても、対象地内の既設井戸において地下水汚染が認められる場合又は下層に土壌汚染のおそれがある場合には、対象地詳細調査を行う。なお、対象地資料等調査の結果、対象物質が地下に浸透したおそれのある場所が概ね明らかである場合は、当該範囲について重点的に表層調査を行う。
- ③ 汚染発見型の場合は、汚染の平面的な広がりを把握するため、土壌・地下水汚染が発見された周辺及び対象地資料等調査の結果により対象物質が浸透したおそれのある場所において、重点的に土壌の表層調査を行う。
3.1.5 対象地詳細調査
対象地詳細調査では、対象地概況調査により表層の土壌で汚染が判明した範囲(土壌ガス調査等の結果相対的に高濃度であることが判明した場合を含む。)及び対象物質が浸透したおそれのある範囲等において、ボーリング調査を行い、土壌(地下水が採水できる場合には地下水を含む。)について深度別に試料を採取・測定し、汚染の状況を詳細に把握する。その結果から、対策をとるべき土壌・地下水の範囲を設定する。
対策をとるべき土壌・地下水の範囲は、土壌環境基準及び地下水環境基準に適合しない土壌及び地下水とする。この場合、土壌及び地下水の試料の測定は、公定法による。ただし、対策によっては、対策をとるべき範囲について概ね範囲を絞り込めばよく、この場合適当な簡易測定法を用いてもよい。
調査実施契機の種類に応じた留意事項及び調査結果の評価は、次のとおりである。
- ① 地下水汚染契機型の場合は、対象地詳細調査の結果を地下水汚染源推定調査の結果と合わせて総合的に判断し、対象地が当該関係地域における地下水汚染源であるかどうかを判定するとともに、汚染が認められた場合は対策をとるべき土壌・地下水汚染の範囲を設定する。
- ② 現況把握型の場合は、対象地概況調査で土壌・地下水汚染が認められた範囲において対象地詳細調査を行い、対策をとるべき土壌・地下水汚染の範囲を設定する。
- ③ 汚染発見型のうち土壌汚染が判明している場合は、対策をとるべき土壌汚染の範囲を設定する。地下水汚染が判明している場合であって、地下水汚染源であるおそれのある範囲において対象地詳細調査を行い、なお土壌の汚染が認められない場合は、当該対象地は地下水汚染源ではないと判断される。
3.2 対策
3.2.1 対策の考え方<2.2.1に同じ>
3.2.2 応急対策<2.2.2に概ね同じ、特に対象物質の揮散等に留意する。>
3.2.3 恒久対策
- (1) 恒久対策の基本的な考え方
揮発性有機化合物に係る汚染土壌に係る恒久対策の目的は、将来にわたって雨水等により対象物質が溶出し、それが周辺の土壌・地下水に広がらないようにすることである。
揮発性有機化合物は移動性が高いので、土壌・地下水から対象物質を除去(揮発性有機化合物の分離又は分解)する。 - (2) 恒久対策の種類と選定
揮発性有機化合物に係る恒久対策は、次のように分類できる。
恒久対策は、対象とする物質の移動性、他の汚染の共存等に留意しつつ、対象地の状況等に応じて適切な対策を選定する。 - (3) 恒久対策の目標
対策範囲の汚染土壌及び汚染地下水について、土壌及び地下水の状態がいずれも環境基準を満たすことを目標とする。また、掘削除去を伴う対策の場合には、掘削除去後原位置に残された土壌が土壌環境基準を満たすことを目標とする。
3.2.4 運搬・保管<2.2.4に概ね同じ、特に対象物質の揮散等に留意する。>
3.2.5 周辺環境保全対策<2.2.5に同じ>
3.2.6 モニタリング<2.2.6に同じ>
3.3.1 効果の確認<2.3.1に同じ>
3.3.2 利用に関する留意事項
- (1) 対策完了後の場所等の土地の利用については、次のとおりとする。
対策の実施後目標を達成していれば、当該土地の利用について、環境保全上の観点からの支障はない。 - (2) <2.3.2(2)に同じ>
3.4 記録の作成、管理
調査、対策及び対策効果の確認に係る一連の記録を作成し、都道府県等及び対策を行った公有地等管理者がこれを管理する。
対策を行った事業者等においても、調査、対策及び対策効果の確認に係る一連の記録を作成、管理することが望ましい。