法令・告示・通達
「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」について
環水土12号
環境庁水質保全局土壌農薬課長から都道府県知事・政令指定都市長・中核市長あて
土壌中のダイオキシン類に係る調査手法については、「「ダイオキシン類に係る土壌調査暫定マニュアル」の送付について(通知)」(平成10年1月30日付け環水土第17号土壌農薬課長通知。以下「暫定マニュアル」という。)により対応をお願いしてきたところであるが、ダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。以下「法」という。)の公布を受け、「ダイオキシン類対策特別措置法の施行について」平成12年1月12日付け企画調整局長・大気保全局長・水質保全局長連名通知により通知し、土壌環境基準の測定方法に関する詳細については別途通知することとしたところであり、また、「ダイオキシン類に関する土壌の常時監視に係る調査測定について」平成12年1月14日付け環水土第11号水質保全局長通知(以下「常時監視通知」という。)により通知し、常時監視に係る調査測定の方法に関する詳細については別途通知することとしたところである。これらの通知を受けて、今般、暫定マニュアルを改定し、「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」を別添のとおり取りまとめたので通知する。
主な改正点は下記のとおりであるので、今後、土壌中のダイオキシン類に係る調査測定を実施する場合には、適切な運用をお願いする。
なお、今後、科学的知見の集積等に伴い、必要に応じ本マニュアルの改定があり得るものである。
記
1. 主な改正点
- (1) 名称を「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」としたこと。
- (2) 常時監視通知にあわせて、調査の分類と考え方を示したこと。
- (3) コプラナーPCBsの分析方法を追加したこと。
- (4) 試料採取及び分析法については、原則として本マニュアルによることとし、新たな分析方法の採用は削除したこと。
(別添)
第Ⅰ章 概論
はじめに
本マニュアルは、「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁及び土壌の汚染に係る環境基準について」(平成11年環境庁告示第68号。以下「告示」という。)により土壌の汚染に係る環境基準(以下「環境基準」という。)及びその測定方法が示されたことを踏まえ、土壌中のダイオキシン類について調査測定を実施する場合に活用されるよう、既応の知見や実地調査結果等を踏まえ、調査の進め方(調査測定を行う地点の選定の考え方)と、試料採取及び分析の技術的手法を示したものである。
ダイオキシン類に係る土壌の調査は、まず土壌中のダイオキシン類の概況を地域概況調査により把握し、調査の結果を環境基準に照らして評価し、その結果に応じてさらに必要な調査を実施する。地域概況調査は、調査の目的に応じて、一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査及び対象地状況把握調査に分類できる。いずれの場合も、あらかじめ、土地利用状況等を資料等により調査したうえで土壌の調査地点を選定する。なお、調査地点の選定に当たっては、対象地及びその周辺地の状況、汚染の程度や広がり、影響の態様等に応じて本マニュアルに示す以外の適当な方法を用いてもよい。
具体的に土壌の調査地点が選定されれば、試料を採取し、分析を行うことにより、土壌中のダイオキシン類の測定を行う。
土壌中ダイオキシン類の調査測定に当たっては、地域や対象地の状況に応じて、これら一連の作業について本マニュアルを基にあらかじめ調査計画を策定し、実施することが望ましい。
また、今後、科学的知見の集積等によって、必要に応じ本マニュアルの改定があり得るものである。
1. 対象物質
本マニュアルでは、土壌中のダイオキシン類、すなわちポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)及びコプラナーPCB(コプラナーPCBs)を対象物質とする。
2. 用語・略語の定義
2.1 調査の分類
本マニュアルでは、「ダイオキシン類に係る土壌の常時監視について」(平成12年1月14日付け環水土第11号環境庁水質保全局長通知)に基づき、土壌中のダイオキシン類の調査を、目的に応じて、次のように分類する。
- (1) 地域概況調査:土壌中のダイオキシン類の概況を把握するためまず実施する調査。一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査、対象地状況把握調査に分類される。
- ア 一般環境把握調査:一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、特定の発生源の影響をあらかじめ想定せずに実施する調査。
- イ 発生源周辺状況把握調査:ダイオキシン類を発生し排出する施設が、一般環境の土壌に及ぼす影響を把握するため、発生源の周辺において実施する調査。
- ウ 対象地状況把握調査:既存資料等の調査によりダイオキシン類による汚染のおそれが示唆される対象地における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、実施する調査。
- (2) 調査指標確認調査:地域概況調査の結果、告示別表備考3に示す250pg―TEQ/g(以下「調査指標値」という。)以上の地点が判明した場合、その周辺における土壌中のダイオキシン類濃度を把握するため実施する調査。
- (3) 範囲確定調査:(1)又は(2)の調査結果、告示に定める土壌の環境基準値を超える地点が判明した場合、環境基準を超える土壌の範囲及び深度を確定するため実施する調査。
- (4) 対策効果確認調査:汚染の除去等の対策を実施した場合、その効果を確認するため実施する調査。
- (5) 継続モニタリング調査:調査指標値以上の地点について、土壌中のダイオキシン類濃度の推移を把握するため、3~5年の期間をおいた後に実施する調査。
2.2 分析に係る用語、略語
- ダイオキシン類:PCDDs、PCDFs及びコプラナーPCBsを合わせた総称。
- 異性体:異性の関係にある化合物。ここでは、同一の化学式を持ち、塩素の置換位置が異なる化合物を指す。(Isomer)
- 同族体:塩素の置換だけを異にする一群の化合物の系列を指す。ここでは、塩素の置換数だけを異にする一群の化合物で、4~8塩化物を指す。(CongenerまたはHomelogue)
- PCDDs:ポリ塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Polychlorinated dibenzo―p―dioxins)
- PCDFs:ポリ塩化ジベンゾフラン(Polychlorinated dibenzofurans)
- TCDDs:四塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Tetrachlorodibenzo―p―dioxins)
- PeCDDs:五塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Pentachlorodibenzo―p―dioxins)
- HxCDDs:六塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Hexachlorodibenzo―p―dioxins)
- HpCDDs:七塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Heptachlorodibenzo―p―dioxins)
- OCDD:八塩化ジベンゾ―パラ―ジオキシン(Octachlorodibenzo―p―dioxin)
- TeCDFs:四塩化ジベンゾフラン(Tetrachlorodibenzofurans)
- PeCDFs:五塩化ジベンゾフラン(Pentachlorodibenzofurans)
- HxCDFs:六塩化ジベンゾフラン(Hexachlorodibenzofurans)
- HpCDFs:七塩化ジベンゾフラン(Heptachlorodibenzofurans)
- OCDF:八塩化ジベンゾフラン(Octachlorodibenzofuran)
- PCBs:ポリ塩化ビフェニル(Polychlorinated biphenyls)
- CBs:塩化ビフェニル(chlorinated biphenyls)
- Co―PCBs:コプラナーPCBs(coplaner PCBs)。共平面構造型塩化ビフェニル。ここでは塩化ビフェニルのオルト位に塩素が配位していないか、または1つあるいは2つ配位している化合物の内、14種を規定する。
- TeCB:四塩化ビフェニル(tetrachlorobiphenyl)
- PeCB:五塩化ビフェニル(Pentachlorobiphenyl)
- HxCB:六塩化ビフェニル(hexachlorobiphenyl)
- HpCB:七塩化ビフェニル(heptachlorobiphenyl)
- ノンオルトCBs:オルト位非塩素置換型塩化ビフェニル(non―ortho CBs)。ここでは塩化ビフェニルのオルト位に塩素が配位していない化合物の内、4種を規定する。
- モノオルトCBs:オルト位1塩素置換型塩化ビフェニル(mono―ortho CBs)。ここでは塩化ビフェニルのオルト位に塩素が1つ配位している化合物の内、8種を規定する。
- ジオルトCBs:オルト位2塩素置換型塩化ビフェニル(di―ortho CBs)。ここでは塩化ビフェニルのオルト位に塩素が2つ配位している化合物の内、2種を規定する。
- PFK:ペルフルオロケロセン(Perfluorokerosene)
- TEF:毒性等価係数(2,3,7,8―TeCDD Toxicity Equivalency Factor)
- TEQ:毒性等量(2,3,7,8―TeCDD Toxicity Equivalency Quantity)
- GS―MS:ガスクロマトグラフ質量分析計
- HRGC:高分離能ガスクロマトグラフィ(High Resolution Gas Chromatography)
または高分離能ガスクロマトグラフ(High Resolution Gas Chromatograph) - HRMS:高分解能質量分析法(High Resolution Mass Spectrometry)
または高分解能質量分析計(High Resolution Mass Spectrometer) - HRGC―HRMS:高分解能ガスクロマトグラフ質量分析法、または高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計
- SIM:選択イオン検出法(Selected Ion Monitoring)。機器によってはSIR(Selected Ion Recording)、あるいはSID(Selected Ion Deteciton)という呼称が用いられることがある。
- RRF:相対感度係数(Relative Response Factor)
- SOP:標準操作手順(Standard Operation Procedure)
- QA/QC:品質保証/品質管理(Quality Assurance/Quality Control)
- ng:ナノグラム(10億分の1g;10-9g)
- pg:ピコグラム(1兆分の1g;10-12g)
- cs:クリーンアップスパイク(Clean―up Spike)
- ss:シリンジスパイク(Syringe Spike)
- 検出下限:ブランク値ではないと識別できる最小値(分析値の標準偏差の3倍)
- 定量下限:定量値が信頼できる最小値(分析値の標準偏差の10倍)
本マニュアルにおいては、定量下限や操作ブランク値等の許容性を判断する基準として、「目標定量下限」を導入した。目標定量下限は、分析の目的等に照らして決定されるが、本マニュアルにおいては原則として、表1―1に示すとおりとした。
表1―1 ダイオキシン類の目標定量下限
PCDDs+PCDFs | Co―PCBs | |||
---|---|---|---|---|
四~五塩化物 | 六~七塩化物 | 八塩化物 | ||
目標定量下限 | 1pg/g | 2pg/g | 5pg/g | 1pg/g |
また、本マニュアルに記載されている商品名は、マニュアル使用者の便宜のために、マニュアル作成にともない行われた実証試験等に使用し、かつ、一般に入手できるものを示したものであり、これを推奨するものではない。
3. 調査の進め方
土壌中のダイオキシン類の調査の進め方は次のとおりであり、その流れを図1―1に示す。
3.1 地域概況調査
ダイオキシン類に係る土壌の調査を行う場合には、まず、地域概況調査を行う。地域概況調査は、目的に応じて、一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査及び対象地状況把握調査に分類できる。いずれの場合も、あらかじめ、土地利用状況等を資料等により調査(「資料等調査」という。)したうえで測定地点を選定する。
3.2 調査指標確認調査
地域概況調査の結果、調査指標値以上のダイオキシン類濃度を示す地点の存在が判明した場合には、まず、ダイオキシン類が蓄積した原因の推定に係る資料等調査を実施する。また、周辺の土壌中のダイオキシン類濃度が環境基準を超えるおそれがあるので、資料等調査の結果や周辺の状況に応じて土壌の追加調査を行う。必要に応じて、他の環境媒体等に係るダイオキシン類の調査を実施する。
3.3 範囲確定調査
地域概況調査又は調査指標確認調査の結果、土壌の環境基準を超える地点が判明した場合は、汚染原因を推定するとともに、環境基準を超える土壌の平面範囲及び深度を確定するため、範囲確定調査を実施する。
3.4 対策効果確認調査
環境基準を超える土壌について対策を実施した場合に、その効果を確認するため、対策効果確認調査を実施する。
3.5 継続モニタリング調査
調査指標値以上のダイオキシン類濃度を示す地点の存在が判明した場合には、必要に応じて、土壌中のダイオキシン類の濃度の推移を把握するため、3~5年の期間をおいた後に継続モニタリング調査を実施する。
4. 試料採取
土壌試料の採取は、調査地点において、原則として、表層5cmの土壌について5地点混合方式で行う。なお、範囲確定調査で深度範囲の確定を行う場合には1地点の柱状試料を採取する。
また、採取した試料の性状として、含水率、強熱減量、土性等を調査する。
図1―1 土壌中のダイオキシン類の調査の進め方
5. 分析方法
5.1 前処理方法
- 5.1.1 溶媒抽出法
- 風乾した分析用試料を16時間以上のトルエンソックスレー抽出による溶媒抽出を行う。
- 5.1.2 クリーンアップ法
- 抽出液は硫酸処理/シリカゲルカラムクロマトグラフィまたは多層シリカゲルカラムクロマトグラフィで汚染物質を取り除いた後、いずれもアルミナカラムクロマトグラフィでPCBsと分画する。GC―MS分析で妨害があり更にクリーンアップが必要な時は、活性炭埋蔵シリカゲルカラムクロマトグラフィまたは活性炭カラム高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を行う。
- (1) 硫酸処理
- 抽出液を濃縮後、ヘキサンに転溶し、濃硫酸で有機化合物の分配処理をして着色を取り除く。処理液についてシリカゲルカラムクロマトグラフィを行う。
- (2) シリカゲルカラムクロマトグラフィ
- 強極性物質や色素成分の除去のために効果的であり、硫酸処理をした溶液のカラムクリーンアップの最初の段階に使用し、芳香族系や大きな分子量のものを取り除く等、アルミナカラムクロマトグラフィを行う前段階の処理として用いる。
- (3) 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィ
- 硫酸処理/シリカゲルカラムクロマトグラフィ処理の代わりに、シリカゲルと水酸化カリウム、硫酸、硝酸銀等を被覆したシリカゲルを順次積層したカラムで着色物を除去する。特に、硫黄分の多い試料には、硝酸銀シリカゲルが有効である。アルミナカラムクロマトグラフィ用の前段階の処理である。
- (4) アルミナカラムクロマトグラフィ
- 着色物をクリーンアップした試料液を活性アルミナカラムによりPCBsとダイオキシン類に分画する。ダイオキシン類の含まれる第2画分を濃縮しそのままGC―MS分析する。
- (5) 活性炭埋蔵シリカゲルカラムクロマトグラフィ
- アルミナカラムクロマトグラフィ処理液でGC―MS分析で妨害があり更にクリーンアップが必要な時、あるいはアルミナカラムクロマトグラフィの代わりに用いる。
- (6) 活性炭カラム高速液体クロマトグラフィ(HPLC)
- アルミナカラムクロマトグラフィ処理液でGC―MS分析で妨害があり更にクリーンアップが必要な時、またはアルミナカラムクロマトグラフィの代わりに用いる。
5.2 機器分析
ダイオキシン類の同定と定量は、キャピラリーカラムを用いる高分離能ガスクロマトグラフ(HRGC)と二重収束型の高分解能質量分析計(HRMS)を用いる高分解能ガスクロマトグラフ質量分析法(HRGC―HRMS)によって行う。分解能(M/△M)は10,000以上が要求されるが、内標準物質によっては12,000が必要である。検出法としては各同族体を区分するため、選択イオン検出法(SIM法)を用いて、ロックマス方式により行う。
分析感度として2,3,7,8―TeCDD 0.2Pg以下の分析が可能であることが要求される。
6. 測定結果の表示
6.1 濃度の表示
ダイオキシン類濃度の測定結果は、PCDDs及びPCDFsの2,3,7,8―位塩素置換の各異性体の濃度及び四塩化物から八塩化物の同族体濃度、Co―PCBsの各異性体の濃度、及びこれらの総和を表示する。また1,3,6,8―TeCDD、1,3,7,9―TeCDD等の濃度についても、汚染源の推定を行う場合の参考とするため定量し、表示する。表示の様式例を表1―2に示す。
各同族体濃度及びそれらの総和は、検出された異性体の濃度で算出する。有効数字は原則として2桁で表す。濃度はpg/gで表示する。
6.2 毒性等量への換算
定量された実測濃度にダイオキシン類の毒性等価係数(TEF。表1―3に示す。)を乗じて毒性等量(TEQ)を算出し、その合計を求め、pg―TEQ/gとして表示する。
毒性等量の算出の際の定量下限未満の数値の取扱いについては、定量下限未満の数値を0として各異性体の毒性等量を算出し、それらを合計して毒性等量を算出する。
あわせて、定量下限未満検出下限以上の数値はそのままその値を用い、検出下限未満の数値は検出下限の1/2の値を用いて各異性体の毒性等量を算出し、それらを合計して求めた値を参考値として付記する。
表1―2 ダイオキシン類に係る土壌の調査測定結果表(例)
調査地点名( )
ダイオキシン類 | 濃度(pg/g) | 定量下限(pg/g) | 検出下限(pg/g) | 毒性等価係数(TEF) | 毒性等量(pg-TEQ/g) | 参考値(pg-TEQ/g) | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
PCDDs | 1,3,6,8―TeCDD | 0 | |||||
1,3,7,9―TeCDD | 0 | ||||||
2,3,7,8―TeCDD | 1 | ||||||
TeCDDs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,7,8―PeCDD | 1 | ||||||
PeCDDs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,7,8―HxCDD | 0.1 | ||||||
1,2,3,6,7,8―HxCDD | 0.1 | ||||||
1,2,3,7,8,9―HxCDD | 0.1 | ||||||
HxCDDs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,6,7,8―HpCDD | 0.01 | ||||||
HpCDDs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,6,7,8,9―OCDD | 0.0001 | ||||||
PCDDs | ― | ― | ― | ||||
PCDFs | 1,2,7,8―TeCDF | 0 | |||||
2,3,7,8―TeCDF | 0.1 | ||||||
TeCDFs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,7,8―PeCDF | 0.05 | ||||||
2,3,4,7,8―PeCDF | 0.5 | ||||||
PeCDFs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,7,8―HxCDF | 0.1 | ||||||
1,2,3,6,7,8―HxCDF | 0.1 | ||||||
1,2,3,7,8,9―HxCDF | 0.1 | ||||||
2,3,4,6,7,8―HxCDF | 0.1 | ||||||
HxCDFs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,6,7,8―HpCDF | 0.01 | ||||||
1,2,3,4,7,8,9―HpCDF | 0.01 | ||||||
HpCDFs | ― | ― | ― | ||||
1,2,3,4,6,7,8,9―OCDF | 0.0001 | ||||||
PCDFs | ― | ― | ― | ||||
PCDDs+PCDFs | ― | ― | ― | ||||
Co―PCBs | 3,3',4,4'―TeCB | 0.0001 | |||||
3,4,4',5―TeCB | 0.0001 | ||||||
3,3',4,4',5―PeCB | 0.1 | ||||||
3,3',4,4',5,5'―HxCB | 0.01 | ||||||
ノンオルトCBs | ― | ― | ― | ||||
2,3,3',4,4'―PeCB | 0.0001 | ||||||
2,3,4,4',5―PeCB | 0.0005 | ||||||
2,3',4,4',5―PeCB | 0.0001 | ||||||
2',3,4,4',5―PeCB | 0.0001 | ||||||
2,3,3',4,4',5―HxCB | 0.0005 | ||||||
2,3,3',4,4',5'―HxCB | 0.0005 | ||||||
2,3',4,4',5,5'―HxCB | 0.00001 | ||||||
2,3,3',4,4',5,5'―HpCB | 0.0001 | ||||||
モノオルトCBs | ― | ― | ― | ||||
Co―PCBs | ― | ― | ― | ||||
Total | ― | ― | ― | ― |
備考
- 1 濃度欄の括弧付きの数値は、検出下限以上定量下限未満の濃度であることを示す。
- 2 濃度欄の"ND"は、検出下限未満であることを示す。
- 3 毒性等量は定量下限未満の数値を0として毒性等量換算した値であり、参考値は定量下限未満検出下限以上の数値はそのままの値を用い、検出下限未満の数値は検出下限の1/2の値を用いて毒性等量換算した値である。
含水率( %) 試料採取深度( cm~ cm)
強熱減量( %) 試料採取方法(5地点混合・1点採取)
土性( ) 土色( )
表1―3 毒性等価係数(TEF)
PCDDs及びPCDFs
異性体 | TEF | |
---|---|---|
PCDF | 2,3,7,8―TeCDF | 0.1 |
1,2,3,7,8―PeCDF | 0.05 | |
2,3,4,7,8―PeCDF | 0.5 | |
1,2,3,4,7,8―HxCDF | 0.1 | |
1,2,3,6,7,8―HxCDF | 0.1 | |
1,2,3,7,8,9―HxCDF | 0.1 | |
2,3,4,6,7,8―HxCDF | 0.1 | |
1,2,3,4,6,7,8―HpCDF | 0.01 | |
1,2,3,4,7,8,9―HpCDF | 0.01 | |
1,2,3,4,6,7,8,9―OCDF | 0.0001 | |
その他 | 0 | |
PCDD | 2,3,7,8―TeCDD | 1 |
1,2,3,7,8―PeCDD | 1 | |
1,2,3,4,7,8―HxCDD | 0.1 | |
1,2,3,6,7,8―HxCDD | 0.1 | |
1,2,3,7,8,9―HxCDD | 0.1 | |
1,2,3,4,6,7,8―HpCDD | 0.01 | |
1,2,3,4,6,7,8,9―OCDD | 0.0001 | |
その他 | 0 |
Co―PCBs
異性体 | TEF |
---|---|
3,4,4',5―TeCB | 0.0001 |
3,3',4,4',―TeCB | 0.0001 |
3,3',4,4',5―PeCB | 0.1 |
3,3',4,4',5,5'―HxCB | 0.01 |
2',3,4,4',5―PeCB | 0.0001 |
2,3',4,4',5―PeCB | 0.0001 |
2,3,3',4,4'―PeCB | 0.0001 |
2',3,4,4',5―PeCB | 0.0005 |
2,3',4,4',5,5'―HxCB | 0.00001 |
2,3,3',4,4',5―HxCB | 0.0005 |
2,3,3',4,4',5'―HxCB | 0.0005 |
2,3,3',4,4',5,5'―HpCB | 0.0001 |
7. 精度管理の概要
調査値の信頼性を確保するためには、適切な精度管理を行う必要がある。試料採取、前処理、各種装置等の事前評価およびSOPの作成、クリーンアップ回収率の評価、2重測定における分析値との比較および操作ブランクの管理等を行う必要がある。
8. 安全管理
ダイオキシン類は非常に有害性が高いので、分析操作は全て管理区域内で行い、吸入や直接皮膚への接触を避け、かつ前処理室や分析室の換気および廃液や廃棄物の管理は十分に行う。
ダイオキシン類だけでなく、分析に使用する薬品、溶媒等は吸入や飲み込みにより分析者の健康を損なうものがあるので、取り扱いは慎重に行い、かつ実験室の十分な換気に注意する。
以下に当面の管理指針を示す。
8.1 施設
- (1) 実験室
- ① 実験室は、専用の実験室とする。
- ② 高濃度の汚染試料を取扱う実験室は、可能であれば2~3のエリアに仕切った方がよい。その場合の各エリアの役割は下記の通りである。
- ア)試料の分解、抽出、精製及び濃縮を行うエリア。
- イ)ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC―MS)による分析を行うエリア。
- ③ 共用のGC―MSを用いるときは、一定期間をダイオキシン類分析専用とするとともに、本体及び周辺の汚染のないように実験を行う。
8.2 実験室等の立入規制
- (1) 実験室への立入りは、関係者に限定する。
- (2) 実験室のドアには、関係者以外立入らないよう表示を行う。
8.3 換気システム
- (1) 実験室は、ドラフトチャンバーにより排気を行う。
- (2) 排気された空気は、活性炭フィルター等の処理装置により処理したのち排出する。
8.4 その他の設備
- (1) グローブボックス
- 多量のダイオキシン類を取扱う場合は、グローブボックス内で行う。
- (2) 紫外線ランプ
- ダイオキシン類の汚染部位を照射するために使用する。
- (3) 排気
- GC―MSに付属するすべてのポンプ排気は、ドラフトチャンバーのダクトのように活性炭フィルター等の処理装置を通じて排気する。
8.5 実験室内での業務について
- (1) 実験室内では、専用の実験衣及び靴を着用する。
- (2) 作業中は、手袋を着用する。
- (3) 液体の採取は、すべてシリンジ等を使用し、ピペットを用いて口で吸い上げてはならない。
- (4) 高濃度汚染試料を取扱う実験においては、防じんマスクを着用する。
8.6 標準物質の取り扱い
- (1) すべての標準溶液の目録を作成する。
- (2) すべての標準溶液は、二重栓式試料ビンに入れ冷蔵庫に保管する。多量の標準物質及び標準溶液は、カギのかかる保管庫に保管する。
8.7 試料の取扱い
- (1) 濃縮した抽出液は、密閉できるミニサンプルビン等に入れ冷蔵庫に保管する。
- (2) 長期間の保管が予想されるときは、褐色アンプル中に封入し、破損しないように保護したのち、冷蔵庫または冷蔵庫中で保管する。
- (3) 不必要になった試料液は、適切に処分する。
- (4) ダイオキシン類を含む試料を運搬する場合は、密閉型のプラスチックコンテナに入れて運ぶ。
8.8 実験中の事故の場合
環境試料中のダイオキシン類の分析は、取扱量が微量であることから、特段危険が高いとは考えられないが、実験中の事故等の場合は、実験室を使用する者に連絡するとともに、以下に示す対処を行う。
- (1) ダイオキシン類を含む抽出液等を実験中に浴びる等の皮膚接触が起きた時は、直ちに接触部位を石鹸で洗う。
- (2) 実験室内でこぼし事故があった場合は、汚染した部位を、水でしめらせた紙タオルで拭き、ついでその部位をアルコールまたはトルエン等の有機溶媒で拭き取る。
8.9 廃棄物の保管処分等
- (1) 危険固形廃棄物(手袋、マスク、紙タオル、活性炭フィルター等)は、専用ポリバケツに入れて保管する。
- (2) 危険液体廃棄物(分析プロセスや器具の洗浄で生じた廃溶媒並びにガスクロマトグラフ質量分析装置の廃オイル等)は、専用の密閉容器に入れて保管する。
- (3) 上記により保管した物は、適切に処分する。
- (4) 廃水は、活性炭等により適切に処理した後、排水する。
8.10 作業記録
- (1) 実験室立入者の記録をする。
- (2) 作業日報を作成し、分析従事者の作業時間等を記録する。
- (3) 標準溶液は、物質名、数量、濃度及び入手先や、供与先等を記録し、使用状況も記録する。
- (4) 廃棄物の保管状況や処理状況を記録する。
- (5) その他必要と考えられる事項を記録する。
8.11 健康診断
本マニュアルに示した分析では、有機溶媒等も使用するため、労働安全衛生法に定められた特定化学物質に係る定期的健康診断を実施すること。ダイオキシン類の影響については、血清中のトリグリセライド、コレステロール等が指標となる。
第Ⅱ章 各論
第1節 調査の進め方
土壌中のダイオキシン類の調査の進め方は次のとおりである(図1―1参照)。
1. 地域概況調査
ダイオキシン類に係る土壌の調査を行う場合には、まず、地域概況調査を行う。地域概況調査は、目的に応じて、一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査及び対象地状況把握調査に分類できる。いずれの場合も、あらかじめ、「資料等調査」を行ったうえで測定地点を選定する。
- 1.1 資料等調査
- 土壌中ダイオキシン類の調査の実施に当たっては、まず、対象地及びその周辺について、資料調査、聞き取り調査、現地調査等を必要に応じて行い、測定地点に係る概況を調査し、記録する。
調査は次の項目について実施する。- (1) 土地利用及び管理状況の履歴(人為的攪乱、客土の実施、資材施用の可能性等)
- (2) 土地の起状、想定される風の流路等の周辺状況
- (3) 土壌の種類(国土調査法に基づく土地分類調査等を参考)
- (4) 発生源近傍の場合は、発生源からの距離、発生源からの排出状況、排出経路(事故等の場合はダイオキシン類の漏出の可能性、時期、場所、漏出物質名及び漏出量 等)
- 1.2 一般環境把握調査
- 一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、特定の発生源の影響をあらかじめ想定せずに実施する調査である。
調査に当たっては、数年程度で都道府県の区域内の全市町村(政令市にあっては主要な地域)において調査が実施されるよう年次計画を立て、調査地点を選定する。また、人口や土地利用の状況等を勘案して、多数の人の健康に影響を及ぼす可能性がある地域及び汚染の可能性が高い地域を優先的に選定する。
具体的な試料採取地点は、あらかじめ資料等調査により地域全体の現在及び過去の土地利用状況、ダイオキシン類の発生源の状況等について把握し、土地の履歴等を明らかにする。
また、行政区分によらずに調査を行う場合には、調査対象となる地域を等間隔で方眼状に区分し、その各々の区画の中心付近において試料を採取する。また、区分の間隔は、対象範囲の広さや調査目的に応じて適切に設定することとする(図2―2)。
試料の採取はいずれも表層において5地点混合方式により行う(第2節参照)。
図2―2 地域の区分による一般環境把握調査の例 - 1.3 発生源周辺状況把握調査
- ダイオキシン類を発生し排出する施設が、一般環境の土壌に及ぼす影響を把握するため、発生源の周辺において実施する調査である。ここでは、大気に対する固定発生源を対象とする。
調査に当たっては、数年程度で区域内の主要な発生源が選定されるよう年次計画を立て、周辺の一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の概況が把握できるよう対象となる発生源を選定する。
それぞれの発生源に対する具体的な試料採取地点は、基本的に、気象データ等を基にシミュレーションを行い、発生源からの影響を最も受けると予想される場所(最大着地濃度発生地点)を求め、その地点及び周辺地域とする。
シミュレーションは不確実性を内包するものであることから、具体的には、以下の地点において試料採取を行うこととする(図2―3)。- (1) 発生源とシミュレーションにより求めた(注)最大着地濃度発生地点を結ぶ直線上において、以下の4地点。
- ア 最大着地濃度発生地点 A
- イ 発生源と最大着地濃度発生地点の中間地点 B
- ウ 発生源からの距離が最大着地濃度発生距離(発生源から最大着地濃度発生地点までの距離)の2倍の地点 C
- エ 発生源からの距離が最大着地濃度発生距離の3倍の地点 D
- (2) 最大着地濃度発生地点を通り、発生源を中心とする円上で、最大着地濃度発生地点の近傍の地点(2地点) E、F
- (3) 発生源及び最大着地濃度発生地点を通る直線と、この直線と発生源において直交する直線上において、発生源からの距離が最大着地濃度発生距離にある3地点 G、H、I
図2―3 発生源周辺状況把握調査における調査地点の設定- (注) 簡便的に「ごみ焼却施設周辺環境におけるダイオキシン類濃度シミュレーション調査結果」(平成9年5月環境庁ダイオキシンリスク評価検討会報告)で算出した代表的なごみ焼却施設より排出されるダイオキシン類の最大濃度発生距離(参考資料1)を参考として、年平均風向より試料採取地点を選定してもよい。
なお、農用地など、耕作等による攪拌を行い、人為的に資材等を施用する土地については、燃焼系発生源を主とする影響の調査地点とはしない。
また、山間部等でシミュレーションモデルの適用が困難な場合にあっては、人への影響を調査する目的で発生源近傍の集落等において試料採取を行う方法のほか、風向・風速等のデータを考慮し、風下方向において重点的に調査地点を選定する等により、効率的な試料採取を行う。
なお、樹木、建築物等により、大気からの降下物が遮られるおそれのある場所及び他の発生源の影響が懸念される場所は、目的とする発生源周辺の正確なモニタリングに障害があることも考えられることから、地点の設定に当たって可能な限り避ける。
- (1) 発生源とシミュレーションにより求めた(注)最大着地濃度発生地点を結ぶ直線上において、以下の4地点。
- 1.4 対象地状況把握調査
- 既存資料等の調査により、過去に行われた廃棄物の野焼きや不法投棄の跡地、ダイオキシン類を発生するおそれのある事業場跡地等であること等により汚染の可能性が示唆される対象地における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため実施する調査である。
調査に当たっては、既存資料等の調査によりダイオキシン類による汚染のおそれが高い対象地を優先的に選定し、その対象地における土壌中のダイオキシン類濃度の概況が把握できるよう調査地点を選定する。
具体的な試料採取地点は、対象地の現況や資料等調査並びに必要に応じて行う聞き取り調査及び現地の状況等から、対象地内において土壌汚染のおそれのある範囲が推定できる場合にあっては、汚染のおそれのある範囲及びその周辺地域において重点的に調査地点を設定する。
汚染の可能性が示唆される対象地ではあるが、当該対象地内の汚染のおそれのある範囲が明らかでない場合には、対象地を等間隔で方眼状に区分し、その各々の区画の中心付近において5地点混合方式により試料を採取し、分析試料とする。なお、対象地状況把握調査においては、試料採取地点の設定をあらかじめ3.汚染範囲確定調査と同様に設定し、これら2つの調査を兼ねることもできる。 - 1.5 地域概況調査の結果の評価
- 一般環境把握調査、発生源周辺状況把握調査及び対象地状況把握調査の結果、環境基準を超過する汚染が判明した場合には、当該汚染判明地点を中心に、さらに詳細な資料等調査(聞き取り調査及び現地調査を含む)を行い、汚染経路等を勘案して汚染源を推定する。その際、検出されたダイオキシン類の同族体又は異性体の構成比を参考とすることができる。
汚染源が推定できた場合には、当該汚染源を踏まえた範囲確定調査を行う。汚染源が推定できなかった場合には、汚染判明地点を中心に範囲確定調査を行う。
また、調査の結果、環境基準を満たしているが、調査指標値以上のダイオキシン類の蓄積が判明した場合には、調査指標確認調査を行う。
2. 調査指標確認調査
- 1. 地域概況調査の結果、調査指標値以上のダイオキシン類濃度を示す地点の存在が判明した場合には、まず、ダイオキシン類が蓄積した原因の推定に係る資料等調査を実施する。また、周辺の土壌中のダイオキシン類濃度が環境基準を超えるおそれがあるので、資料等調査の結果や周辺の状況に応じて土壌の追加調査を行う。周辺の大気、水等に係るダイオキシン類の資料等調査(必要に応じて調査測定)を実施し、当該地域におけるダイオキシン類による環境への影響を把握する。
- 2.1 土壌の追加調査を行う場合の調査地点の選定
- 原因の推定に係る資料等調査や周辺の大気、水等に係る調査の結果、調査指標値以上の地点の周辺において環境基準を超えるおそれがある場合には、発生源の立地や周辺の土地利用の状況等を勘案して土壌の追加調査の地点を選定する。
- 2.1.1 一般環境把握調査で調査指標値を超えた場合
- 原因が推定できない場合には、調査指標値を超過していることが判明した地点を中心に、25m~50mを目安にして適当な距離をおいた4方位に試料採取地点を設定する。距離は周辺の状況により変更してよい。測定の結果、いずれか1地点以上でなお調査指標値以上のダイオキシン類の蓄積が見られる場合には、調査指標値未満となるまで等距離で試料採取地点を設定し、調査する。
原因が推定できた場合には、原因の種類に応じて、次の2.1.2に準じて試料採取地点を選定する。 - 2.1.2 発生源周辺状況把握調査又は対象地状況把握調査で調査指標値を超えた場合
- あらかじめ選定されている発生源あるいは推定されている汚染の原因に対して試料採取地点が適当であったかどうかを確認する。調査指標値以上の地点の周辺において環境基準を超えるおそれがある場合には、発生源の立地や周辺の土地利用の状況等を勘案して土壌の追加調査地点を選定する。
- 2.2 調査指標確認調査の結果の評価
- 調査指標値以上となった原因の推定や周辺の大気、水等の状況から発生源が把握できた場合には、状況に応じて所用の発生源対策等を講じる。
また、土壌の追加調査の結果、環境基準を超える地点が判明した場合には、範囲確定調査を行う。周辺の土壌で環境基準を超えるおそれがない、または土壌の追加調査の結果、環境基準を満たしている場合には継続モニタリング調査を行う。
3. 範囲確定調査
地域概況調査又は調査指標確認調査の結果、土壌の環境基準を超える地点が判明した場合は、汚染原因を推定するとともに、環境基準を超える土壌の平面範囲及び深度を確定するために実施する。
- 3.1 平面範囲の確定
-
- 3.1.1 調査地点の設定
- 環境基準を超過した地点を中心にして、対象地の現況や資料等調査並びに必要に応じて行う聞き取り調査及び現地の状況等から、環境基準を超えるおそれのある範囲が推定できる場合にあっては、汚染のおそれのある範囲及びその周辺地域において重点的に調査地点を設定する。
環境基準を超えるおそれのある範囲が明らかでない場合には、環境基準を超過した地点を含む対象地を等間隔で方眼状に区分し、その各々の区画の中心付近において5地点混合方式により試料を採取し、分析試料とする(図2―4)。
一般環境把握調査等の結果環境基準を超過した場合であって、原因が推定できない場合には、環境基準を超過していることが判明した地点を中心に、25m~50mを目安にして適当な距離をおいた4方位に試料採取地点を設定する。距離は周辺の状況により変更してよい。調査の結果、いずれか1地点以上でなお環境基準を超過する汚染が見られる場合には、環境基準を満たすまで等距離で試料採取地点を設定し、調査する。逆に、いずれの地点でも汚染が見られない場合には、必要に応じ間隔をせばめて調査を実施する。
なお、試料採取地点は概ね1,000m2につき1地点程度、1,000m2未満の場合には中心及び4方位の5地点とすることを原則とするが、区分の間隔は対象地域の広さや調査目的に応じて適切に設定する。
図2―4 汚染範囲確定調査の試料採取地点の設定例
(環境基準を超えるおそれのある範囲が明らかでない場合) - 3.1.2 調査結果の評価と平面汚染範囲の確定
- 環境基準超過地点と近接する環境基準を満たす地点とを直線で結び、その中間点より垂線を引き、各垂線の交点で結ばれた多角形を汚染範囲とする。
平面汚染範囲の確定の考え方の例を図2―5に示す。
図2―5 汚染範囲確定のための調査の例
- 3.2 深度範囲の確定
-
- 3.2.1 調査深度
- 表層土壌で環境基準を超過していることが判明した場合には、汚染の原因の推定、対策手法の選定や対策を実施すべき土壌の深度の確定に資するため、基本的に地表で最も高濃度のダイオキシン類が検出された地点において、土壌の深度別のダイオキシン類を測定する。なお、下層に汚染のおそれがあり、当該土壌を掘削するおそれがある場合等にも必要に応じて実施する。
調査の深度は、表層から5cmまでの調査に加え、5~10cm、10~15cm、15~20cmの深度で各々層別の試料の採取を行う。
また、15~20cmの深度でなお環境基準を超過している場合には、地中にダイオキシン類が意図的に排出された可能性について再度資料等調査を実施し、環境基準値以下になると予想される深度まで適当な間隔をおいて深度方向の調査を実施する。
なお、表層で汚染の見られた範囲のより多くの地点で深度調査を行えば、対策範囲をより的確に設定することができる。 - 3.2.2 調査結果の評価と深度範囲の確定
- 調査の結果、環境基準を超過する層と近接する環境基準を満たす層の中間を境界として設定する。
4. 対策効果確認調査
環境基準を超える土壌について対策を実施した場合に、その効果を確認するため、対策効果確認調査を実施する。
- 4.1 土壌の掘削除去対策を実施した場合
- ダイオキシン類による汚染土壌の対策として当該土壌の掘削除去を実施した場合には、掘削除去の取り残しがないことを確認するため、掘削除去された後の底面及び側面の土壌について、対策の範囲を勘案しつつ土壌試料を採取する。底面については、中心及び4方位の5地点を基本とし、掘削除去を実施した範囲の広さに応じて適宜試料採取地点を追加して、環境基準を満たすことを確認する。
- 4.2 土壌の原位置浄化対策を実施した場合
- ダイオキシン類による汚染土壌の対策として当該土壌の原位置浄化を実施した場合には、原位置浄化が適正に行われたことを確認するため、最も高濃度でダイオキシン類が検出されていた地点及び汚染範囲の外縁で、最も高濃度の深度及び深度範囲の最深部において試料を採取し、環境基準を満たすことを確認する。
- 4.3 覆土・植栽等による被覆対策を行った場合
- ダイオキシン類による汚染土壌の対策として覆土・植栽等による被覆対策を実施した場合には、一般環境と汚染土壌を結ぶ曝露経路が適切に遮断されていることを確認するため、当該覆土等の表面の中心及び汚染範囲の外縁で土壌試料を採取し、環境基準を満たすことを確認する。なお、アスファルト等の土壌以外の材料による被覆の場合は必要ない。
- 4.4 結果の評価
- 環境基準を超過する土壌がなおみられる場合は、必要に応じて試料採取地点を増加し、環境基準を超過する範囲を確定した上で追加対策を行い、再度対策効果確認調査を行う。
5. 継続モニタリング調査
調査指標値以上のダイオキシン類濃度を示す地点の存在が判明した場合には、必要に応じて、土壌中のダイオキシン類の濃度の推移を把握するため、3~5年の期間をおいた後に継続モニタリング調査を実施する。
なお、複数の地点を一つの対象地と見なすことができるときは、適宜、その代表的な1地点を選定し、調査を実施することとしても差し支えない。
継続モニタリング調査の結果、土壌中の濃度が低減する傾向にあれば、調査を終了する。土壌中の濃度が横這い又は増加傾向にある場合は、その原因を資料等調査等により把握する。
第2節 試料採取
1. 試料採取
個別の調査地点における表層土壌の試料の採取は原則として次に示す5地点混合方式による。ただし、範囲確定調査で深度範囲の確定を行う場合には第1節3.2.1によるところとし、1地点の柱状試料を採取する。
- (1) 試料の採取に当たっては、既存資料等の調査により土地の履歴が明らかな場所を選定する。なお、廃棄物そのものの認められる場所からの採取は行わない。
- (2) 試料の採取に当たっては、10m四方程度の裸地で落ち葉等で覆われていない場所を選定することが望ましい。表層に落ち葉等の被覆物がある場合には、それらを除去する。やむを得ず草地等で採取する場合には、植物体の地上部を鎌等で刈り取り、除去した後、土壌を根茎を含んだ状態で採取する。
- (3) 原則として、5地点混合方式により試料採取を行う。すなわち、調査地点1地点につき、中心及び周辺の4方位の5m~10mまでの間からそれぞれ1箇所ずつ、合計5箇所(地点)で試料を採取し(図2―6参照)、これを等量混合する。
なお、調査地点の状況により、5地点混合方式の間隔が十分にとれない場合は、間隔を小さくして5箇所(地点)から採取する。
図2―6 5地点混合方式の参考例 - (4) 試料採取深度は、地域概況調査については、地表面から5cmまでの部分を採取する。(参考資料2)
なお、農用地など人為的な攪拌を伴う土地において調査する場合の試料採取深度は地表面から30cmまでの部分を採取する。 - (5) 試料採取は、原則として直径5cm程度、長さ5cm以上の柱状試料を採取し(図2―7参照)、そのうち上部(地表面)より5cmまでの部分を試料として採取する。農用地など、人為的な攪拌のある土壌については、同様に上部より30cmまでの部分を採取する。
その際、試料採取量は分析試料として必要な量、すなわち乾重で100g程度確保する(長さ5cm、直径5cm以上の柱状試料を採取すると、試料採取量は概ね150g以上となる)。
なお、砂質土壌等で柱状の採取ができない場合は、シャベル、スコップ等を用いて、所定の深さの土壌を採取する。
採取に使用する採土用具は金属製のものとし、ダイオキシン類のクロスコンタミネーション(二次汚染)に十分注意し、採取に当たっては、他地点の採取時に付着した土壌等を完全に除去する(必要に応じて洗浄を行う)。
図2―7 土壌採種の一例 - (6) 採取した土壌は、ステンレス製等でダイオキシン類が吸着しにくく、密封が可能で遮光性がある容器に収める。分析は試料採取後直ちに行う。分析を直ちに行えない場合には、冷暗所に保存し、できるだけ速やかに分析を行う。分析に用いた試料(等量混合したもの)の残りを長期保存する場合は冷凍保存する。
- (7) 採取した土壌の状況は、現地で土性の判定を行い、記録する。土性については、野外土性の判定方法(参考資料3)を参照し行う。また、土色についても、肉眼またはマンセル表色系等を用いて判定、記録することが望ましい。
- (8) 試料採取時の記録として、少なくとも下記の情報を記録し、整理・保管する。
- ① 試料採取に使用した器具の種類および状況
- ② 採取地点付近の建築物や立ち木などの有無と位置、日照等の周辺状況
- ③ 採取地点上の枯れ葉などの被覆物の有無
- ④ 採取方法、採取地点間の距離
- ⑤ 採取試料の性状(土性等)
2. 分析試料の調製
- 2.1 採取試料の風乾
- 採取した土壌は、バットなどに入れて、金属製のヘラ等でかたまりを押しつぶして砕きほぐし、秤量した後、ほこりなどが入らないようアルミホイル等で覆い、時々混ぜながら室内で数日間放置して風乾する。その後2~3日ごとに秤量して、水分の減少がなくなったことを確かめる。
- 2.2 ふるい操作
- 風乾した土壌は、中小礫、木片、植物残渣等を除き、土塊、団粒を破砕後、2mmの目のふるいを通過させる(参考資料4)。その際、ふるい上の礫等の重量についても測定し、ふるい操作の歩留りを記録する。
- 2.3 等量混合
- 5地点混合方式により採取した5つの試料の等量混合に当たっては、上記の操作により得られた試料をそれぞれ等量(重量)ずつ十分混合し、分析用の試料とする。
保存する場合は、等量混合後のものとする。 - 2.4 含水率および強熱減量
- 採取した土壌から分析試料を調製し、その分析試料の含水率および強熱減量を求め、記録する。
含水率については、試料5g以上をはかり取り、105~110℃で約2時間乾燥する。
デシケータ内で放冷後、秤量する。その重量の差から、含水率を算出する。
また、強熱減量については試料5g以上をはかり取り、600±25℃で約2時間強熱する。デシケータ内で放冷後、秤量し、その重量差から強熱減量を算出する。この分析方法は「底質調査方法」(昭和63年9月8日付環境庁水質保全局長通達)の、乾燥減量および強熱減量の測定方法に準じて行う。
第3節 分析方法
1. 試薬および材料
分析に用いる以下の試薬及び材料はブランク試験を行い、ダイオキシン類の分析に影響を及ぼす妨害成分が含まれていないことを確認してから使用する。
- (1) ヘキサン、メタノール、アセトン、トルエン、ジクロロメタン
- 残留農薬試験用または残留PCB試験用に用いるもの。分析時の濃縮倍数に応じて濃縮したもの1μLをGC―MSに注入したとき、ダイオキシン類の標準物質および内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。
- (2) ノナン、デカン、イソオクタン
- 試薬特級。分析時の濃縮倍数に応じて濃縮したもの1μLをGC―MSに注入したとき、ダイオキシン類の標準物質および内標準物質のクロマトグラムに妨害を生じないもの。
- (3) ヘキサン洗浄水
- 蒸留水をヘキサンで十分に洗浄したもの。
- (4) 硫酸
- 試薬特級または同等以上のもの。
- (5) 無水硫酸ナトリウム
- 残留農薬試験用または残留PCB試験用に用いるもの。
- (6) 水酸化カリウム、硝酸銀
- 試薬特級または同等以上のもの。
- (7) シリカゲル
- カラムクロマトグラフィ用シリカゲル(PCB分析用、粒径0.063~0.200mm、70~100mesh)(注1)をメタノール洗浄後、ビーカーに入れ、層の厚さを10mm以下にして、130℃で約18時間乾燥して活性化した後、デシケータ内で30分放冷したもの。
- (8) 2%水酸化カリウム被覆シリカゲル(以後、水酸化カリウムシリカゲルと略称)
- シリカゲルに1mol/L水酸化カリウム水溶液を2%(w/w)になるように加えロータリーエバポレータで約50℃で減圧脱水し、水分のほとんどが除去された後、80℃でさらに1時間続けて粉末状にしたもの。調製後、密閉できる試薬瓶に入れデシケータ中に保存する。
- (9) 44%および22%硫酸被覆シリカゲル(以後、硫酸シリカゲルと略称)
- シリカゲルに硫酸を44%および22%(w/w)になるように添加後、十分振とうし粉末状にしたもの。調製後、密閉できる試薬瓶に入れデシケータ中に保存する。
- (10) 10%硝酸銀被覆シリカゲル(以後、硝酸銀シリカゲルと略称)
- シリカゲル1g当たりに40%(w/w)硝酸銀(試薬特級)水溶液を0.25mL加えた後、ロータリーエバポレータで水分を完全に除去したもの。調製中は褐色フラスコを使用し、極力遮光すること。調製後、密閉できる褐色瓶に入れデシケータ中に保存する。
- (11) アルミナ
- カラムクロマトブラフィ用アルミナ(塩基性または中性、活性度1、70~230mesh)(注2)を使用する。あらかじめ活性化したものが入手できる場合は、そのまま使用してもよいが、保存期間や保存状態により活性度が著しく異なるので、カラムからの溶出条件を調べる必要がある。活性化する場合には、ビーカーに層の厚さを10mm以下にして入れ130℃で18時間乾燥、もしくは、シャーレに層の厚さを5~10mmにして入れ500~550℃で約8時間加熱処理した後、デシケータ内で室温まで放冷する。調製後密閉できる試薬瓶中に保存する。なお、使用するアルミナによる汚染がないことを調べておくこと。
- (12) 標準物質
- ダイオキシン類の同定及び定量に使用する標準物質は第3節、表2―3のものを使用する。
- (13) 標準溶液
- 市販の混合溶液を用いて検量線作成に応じてトルエンで希釈したものを用意する。
- (14) 内標準物質
- 13Cまたは37ClでラベルされたPCDDsまたはPCDFsを用いる(第3節、表2―4参照)(注3)。
- (15) 内標準溶液
- 市販の混合溶液を用いて、内標準として添加する量および検量線作成に応じてトルエン等で希釈したものを用意する。
- (注1) 市販のシリカゲルとしては、ワコーゲルS―1(和光純薬工業)がある。(備考1)
- (注2) 市販のアルミナとしてはAluminium oxide90(メルク社)がある。(備考1)
- (注3) クリーンアップスパイク、シリンジスパイクはそれぞれ別の異性体を用いる。定量用の内標準物質としてすべての化合物に対してその安定同位体標識化合物を用いることが望ましいが、少なくとも各塩素数ごとに最低1種類ずつ添加する。しかし、これらの内標準物質は、質量分析計の設定分解能によっては分析に妨害を与える場合があるので、その使用に際しては妨害しない条件を十分に検討・確認しておく。
- (備考1) ここに示す商品は、このマニュアルの使用者の便宜のために、一般に入手できるものとして掲げたが、これを推奨するものではない。これと同等以上の品質、性能のものを用いてもよい。
2 器具
分析に用いる器具はブランク試験を行い、ダイオキシン類の分析に影響を及ぼす妨害成分が含まれていないことを確認してから使用する。器具の組み立てにはグリースを使用してはならない。
- 2.1 前処理用器具
-
- (1) シリカゲルカラムクロマト管
- 内径10mm、長さ300mmのカラムクロマト管に活性化したシリカゲル3gをヘキサンで湿式充てんし、その上に無水硫酸ナトリウムを約10mm積層したもの(注4)。ヘキサンで充てん物を十分洗浄する。
- (2) 多層シリカゲルカラムクロマト管
- 図2―8のように内径15mm、長さ300mmのカラムクロマト管にシリカゲル0.9g、2%水酸化カリウムシリカゲル3g、シリカゲル0.9g、44%硫酸シリカゲル4.5g、22%硫酸シリカゲル6g、シリカゲル0.9g、10%硝酸銀シリカゲル3gおよび無水硫酸ナトリウム6gを順次充てんし、多層シリカゲルカラムを作製する(注4)(注5)(注6)。ヘキサンで充てん物を十分洗浄する。
図2―8 多層シリカゲルカラムクロマトグラフィー - (3) アルミナカラムクロマト管
- 内径10mm、長さ300mmのカラムクロマト管に活性化済みアルミナ10gをヘキサンで湿式充てんし、その上に無水硫酸ナトリウムを約10mm積層したもの(注4)。ヘキサンで充てん物を十分洗浄する。
- (4) 濃縮器
- クデルナーダニッシュ(KD)濃縮器またはロータリーエバポレータを使用する。
- 2.2 ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC―MS)
- 二重収束型の質量分析計を用いる高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(HRGC―HRMS)で、2,3,7,8―TeCDD 0.2pg以下までの分析感度を有するものを使用する。
- (1) カラム恒温槽
- 恒温槽の温度制御範囲が50~350℃であり、分析対象物質の最適分離条件の温度にできるような昇温プログラムの可能なものを使用する。
- (2) キャピラリーカラム
- 内径0.25~0.32mm、長さ25~60mの溶融シリカ製のものであって、内面にシアノプロピル系の強極性の物質をコーティングしたもの。またはこれと同等の分離性能を有するもの(注7)を使用する。
- (3) 検出器(MS)
- 二重収束型のもので分解能(M/△M)10,000以上の高分解能で分析できるものを使用する。イオン源は、温度を250~350℃に保つことができ、電子衝撃イオン化法(以後EI法と略称)が可能で、イオン化電圧が35~70V程度のものを使用する。検出法として選択イオン検出法(以後SIM法と略称)で定量できるもので、SIM法における周期を最大1秒以下にでき、ロックマス方式が可能なものを使用する。
- (4) 試料導入部
- 試料の全量を再現性良く導入できるもの(スプリットレスまたはオンカラム方式)を使用する。
- (5) キャリアーガス
- 高純度ヘリウム(純度99.999%以上)を使用する。
- (注4) カラムクロマトグラフィにおいて使用する充てん剤や溶媒の種類および量はフライアッシュ抽出液等を用いて分画試験を行って決めなければならない。
- (注5) 硝酸銀シリカゲルは、土壌試料のように硫黄(S)化合物が含まれる試料の硫黄(S)分を除去するのに有効である。
- (注6) 硫酸シリカゲルは、有機化合物が多量に含まれる試料の有機化合物を除去するのに有効である。
- (注7) 2,3,7,8―位塩素置換異性体を含む全ての異性体についてそれぞれ分離が良好で、それらの異性体のクロマトグラム上における溶出順位の判明しているカラムの使用を標準とする。様々な要因を考慮し、2種以上の極性の異なるキャピラリーカラムの併用が望ましい。SP―2331(スペルコ社製)、HP―5(HP社製)、DB―17(J&W社製)等がある。(備考1)
3. 抽出
分析試料10~50gを円筒ろ紙に入れ、16時間以上のトルエンソックスレー(注8)抽出を行う。この抽出液を定容して粗抽出液とし、その適量を分取し(注9)適正な種類及び量の内標準物質(クリーンアップスパイク)(注10)を加え、5mL程度に濃縮し、ついで窒素気流(注11)によりトルエンを除去し、約500μLにし硫酸処理等の試料とする。
別に操作ブランク試験用、2重測定用試料も同様に操作して抽出する。
- (注8) セルロース製の円筒ろ紙を使用する場合は、使用に先立ってアセトン洗浄し、さらにトルエンでソックスレー抽出器を用いて予備洗浄する。ガラスまたは石英繊維製のものを使用する場合は同様に予備洗浄するか、または400℃で数時間加熱処理を行う。抽出に用いるトルエンは残留農薬試験用または残留PCB試験用とする。
- (注9) 通常1/2量。再分析の必要な場合もあるので、一定期間粗抽出液を保存する。
- (注10) 少なくとも各塩化物ごとに1種以上の13C又は37Clでラベルされた2,3,7,8―PCDDs、PCDFsを0.5~2ng加える。
- (注11) 窒素気流による濃縮作業によって溶液が飛散しないように、また完全に乾固させないように注意する。
4. クリーンアップ
- 4.1 硫酸処理
- 4.2 シリカゲルカラム
本操作(及び4.2の操作)の代わりに4.3で記述する多層シリカゲルカラムクロマトグラフィを用いることができる。
(1) 3で調製した抽出液を分液漏斗(300mL)にヘキサンで洗い込みながら移し入れ、50~150mLとする。濃硫酸を10~20mL加え、穏やかに振とうし、静置後、硫酸層を除去する。この操作を硫酸層の着色が薄くなるまで繰り返す(注12)。
(2) ヘキサン層をヘキサン洗浄水50mLで3~4回洗浄し、ほぼ中性になったら、無水硫酸ナトリウムで脱水後、濃縮器で約3mLに濃縮する。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィの試料液とする。
(3) 操作ブランク試験用、2重測定用の抽出液も同様に操作してシリカゲルカラムクロマトグラフィの試料液とする。
(4) 必要な場合は、硫黄分除去の為に硝酸銀処理または銅チップ処理を行う。具体的には硝酸銀シリカゲル(後述)または銅チップ(塩酸処理した銅線を細かく切ったもの)をカラムにつめて、試料液を通過させる。
別表
処理量(t/日) | 焼却炉形式 | 排ガス処理方式 | 煙突 | 最大濃度発生距離(m) | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
実体高(m) | 形式 | ||||||
1200 | 全連続 | ストーカ | ボイラー | 電気集塵 | 100 | 独立 | 約900 |
バグフィルタ | 100 | 独立 | 約800 | ||||
400 | 全連続 | ストーカ | ボイラー | 電気集塵 | 59 | 独立 | 約600 |
集合 | |||||||
バグフィルタ | 59 | 独立 | |||||
水噴射 | 電気集塵 | 59 | 独立 | 約600 | |||
集合 | 約700 | ||||||
バグフィルタ | 59 | 独立 | 約600 | ||||
300 | 全連続 | 流動床 | ボイラー | 電気集塵 | 59 | 独立 | 約600 |
集合 | |||||||
バグフィルタ | 59 | 独立 | 約400 | ||||
水噴射 | 電気集塵 | 59 | 独立 | 約600 | |||
集合 | |||||||
バグフィルタ | 59 | 独立 | |||||
200 | 准連続 | ストーカ又は流動床 | 水噴射 | 電気集塵 | 59 | 独立 | 約400 |
集合 | 約600 | ||||||
バグフィルタ | 59 | 独立 | 約200 | ||||
60 | 機械化バッチ | ストーカ | 水噴射 | 電気集塵 | 40 | 独立 | 約400 |
集合 | |||||||
20又は10 | 固定バッチ | ストーカ | 水噴射 | マルチサイクロン又は電気集塵 | 30 | 集合 | 約400 |
- (備考)
- 1 最大濃度発生距離とは、発生源を起点として、拡散計算より算出した最大着地濃度が発生する地点までの距離をいう。
- 2 本シミュレーションでは、排ガスの放出前に再加熱を行う施設を想定している。
- (出展) 「ダイオキシンリスク評価検討会報告書」ダイオキシンリスク評価検討会、平成9年5月
参考資料2 試料採取深度に関する検討
土壌中のダイオキシン類濃度の調査に当たっては、調査目的や採取地点の土地利用状況等を考慮し、適切な採取深度を設定する必要がある。
なお、本参考資料2で示している事例等は、ダイオキシン類のうち、PCDDs及びPCDFsを対象としている。
1. ダイオキシン類の土壌表層への蓄積
ダイオキシン類の土壌中への蓄積の最も典型的な例として、焼却場等に起因して大気拡散により広域的に発生する場合が想定されるが、大気経由で土壌中に蓄積するダイオキシン類は、一般には表層部分に多く存在し、米国ミシガン州及びグアムにおける調査では、全ての事例で、土壌中の全ダイオキシン類の80%以上が表層から深さ15cmまでの間に存在していた(図C)。
2. 適切な採取深度
(1) 諸外国の例
焼却施設の影響を調査しようとする場合、表層部分の土壌中ダイオキシン類濃度を測定することが重要であると考えられる。諸外国の例を見ると、地表面から5cmまでの土壌を調査していることが多い(別表2)。
(2) 我が国の調査事例
我が国における過去の調査では、同一県内の複数地域で採取深度0~2cm及び0~5cmについてダイオキシン類濃度を調査した事例がある(図D)。この事例では0~2cmの測定結果が0~5cmの測定結果より高い傾向が認められるが、調査地点によっては逆のケースもある。
両者の平均値は、それぞれ44TEQ―pg/g(0~2cm)、32TEQ―pg/g(0~5cm)であり、その差は30%程度であった。この差は、分析の精度を考慮すると、あまり大きいものではないと考えられる。
(3) 再現性・安定性
実際の試料採取に当たっては、精度管理の点から、再現性が高く、安定した採取が求められる。草地や芝地等から試料を採取する場合、植物体の存在により土壌表層が判然とせず、採取深度の測定誤差が生ずることがあるが、採取深度を浅く設定すると、採取深度に占める誤差の割合が大きくなることから、試料採取量の相対的なバラツキが大きくなり、再現性が担保されなくなることが懸念される。また、根茎の存在により、採取した柱状試料を地表面から安定的に浅い位置で切り取ることは容易ではない。
(4) 試料採取深度
以上の検討を踏まえ、一般的な土壌を調査する場合には、諸外国においても実績があり、表層付近と同程度の濃度を示すと考えられ、作業の安定性の高い、地表面から5cmまでの試料を採取することが妥当であると考えられる。
また、農耕地における採取深度は、ドイツでは地表面から30cmまでの土壌試料を採取して調査が行われており、我が国の一般的耕耘深度(耕作に伴う攪拌の範囲)及び作物の根圏等を考慮し、地表面から30cmまでの試料を採取することが妥当と考える。
国 | 場所 | サンプリングの深さ | 出典 |
---|---|---|---|
ドイツ | ・耕地、攪乱された土地(基礎調査) | 0~30cm | UBA(ドイツ環境庁,1992) |
・牧草地、攪乱されていない土地(基礎調査) | 0~10cm | ||
オランダ | ・オランダ全土に40kmの格子をかけ、交点近くで選定(バックグラウンド測定)・20年間耕作されていない耕地 | 0~5cm及び5~10cm | RIVM(オランダ国立公衆衛生環境研究所,1994) |
アメリカ | ミシガン州、インディアナ州等(土地の用途不明) | 0~30cm,30~60cm60~90cm | Brzuzy,L.P.,Hites,R.S.(1995)EnvironmentalScience&Technology29,No.8 |
ミネソタ州内、非耕作地 | 0~2.5cm(1インチ) | Reed,L.ほか(1990)Chemosphere21,No..1/2 | |
イギリス | ドンカスター州(できるだけ土壌の攪乱のない地点) | 0~5cm | Stenhouse,I.A.ほか(1990)Chemosphere21,No..4/5 |
参考資料3 野外土性の判定
土性は、粒径の異なる個々の土壌粒子の占める割合を表すものであるが、ダイオキシン類の土壌中での挙動が、土性によって影響されることも考えられることから、採取試料の土性を把握することは重要である。
正確な土性の判定に当たっては、実験室において粒径分析を行う必要があるが、現場で手ざわりや肉眼的観察によって、おおよその判定(野外土性という)を行うこともできる。
野外土性を判定するには、可塑性が最大になるように少量の水でしめらせたのち、親指と人差指の間や手のひらの上で人さし指を使ってこねて、砂の感触の程度、ねばり具合、付着の程度、またどの程度まで細く長くのばせるかなどを調べ、別表3に示した目安に従って判定する。
判定法 | 土性と略号 |
---|---|
ほとんど砂ばかり(砂85%以上)で、ねばり気を全く感じない。 | 砂土(S) |
砂の感じが強く(砂65~85%)、ねばり気はわずかしかない。 | 砂壌土(SL) |
ある程度砂を感じ(砂40~65%)、ねばり気もある。砂と粘土が同じくらいに感じられる。 | 壌土(L) |
砂はあまり感じないが、サラサラした小麦粉のような感触(シルト45%以上)がある。 | シルト質壌土(SiL) |
わずかに砂を感じるが、かなりねばる(粘土15~25%)。 | 埴壌土(CL) |
ほとんど砂を感じないで、よくねばる(粘土45%以上)。 | 重埴土(HC) |
- (参考文献) ペドロジスト懇談会編:土壌調査ハンドブック、博友社
- (参考)
野外土性の判定にはかなり熟練を要するため、粒径分析によって土性が明らかにされている数種類の標準試料(注)を携行し、これを参考にすればよい結果が得られる。
- (注)日本土壌協会編:土性練習用土壌標本(富士平工業K.K.)。
参考資料4 試料調製時のふるいのサイズ
試料調製時のふるいは、土壌試料から小石や植物体等の夾雑物を除くために重要な工程であるが、ふるいのメッシュのサイズによって試料の粒径(すなわち単位重量あたりの土壌粒子の表面積)や分析試料の歩留りが変わることから、分析結果や試料の代表性に影響することも考えられる。このため、適切なふるいのメッシュのサイズについて検討を行うことは重要であると考えられる。
一般的な土壌試料を0.5mm、1.0mmおよび2.0mmのメッシュのふるいを用いてふるい分けを行った後、試料中のPCDDs及びPCDFs濃度を分析した結果、一般的土壌では今回検討した3種類のメッシュのサイズでは、総ダイオキシン類濃度及び同族体の組成に明確な違いは見られなかった(別表4)。
ふるい分け後の試料重量を比較すると、ふるいをかける以前の試料重量を100とした場合、2.0mmメッシュでは、74%、1.0mmメッシュでは52%、0.5mmメッシュでは31%という結果が得られたことから、メッシュのサイズの小さいものでは、分析試料の歩留りが低くなり、試料の代表性が損なわれることが懸念された。
また、一般的な土壌汚染を調査する場合の指針である「土壌の汚染に係る環境基準について(平成3年8月23日環境庁告示第46号)」では、ふるいの工程で2.0mmのメッシュのふるいを採用されていることから、ダイオキシン類の調査を行う場合も、2.0mmのメッシュのふるいを採用することが妥当と考えられる。
Mesh | 0.5mm | 1.0mm | 2.0mm |
---|---|---|---|
TeCDDs | 0.9 | 0.8 | 0.8 |
PeCDDs | 1.0 | 0.8 | 1.0 |
HxCDDs | 2.9 | 2.7 | 3.2 |
HpCDDs | 8.5 | 8.2 | 8.3 |
OCDD | 78.8 | 68.9 | 76.3 |
TeCDFs | 1.4 | 1.3 | 2.2 |
PeCDFs | 1.4 | 1.4 | 1.5 |
HxCDFs | 3.3 | 3.0 | 2.7 |
HpCDFs | 4.0 | 4.2 | 2.5 |
OCDF | 1.8 | 1.6 | 1.6 |
PCDDs | 92.2 | 81.4 | 89.5 |
PCDFs | 11.9 | 11.4 | 10.5 |
PCDDs+PCDFs | 104.1 | 92.9 | 100.0 |
試料重量 | 31 | 52 | 74 |
unit:%
- 注)
- 1 表中の同族体濃度は、2.0mmメッシュのふるいを用いた試料の総ダイオキシン類濃度を100とした時の各々の相対値。
- 2 試料重量は、篩いをかける以前の試料重量を100とした時の各々の篩い後の重量の相対値。