法令・告示・通達

特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法の施行について

公布日:平成6年07月14日
環水管149・環水規163

(各都道府県水質担当部局長あて水質管理課長、水質規制課長通達)

 標記の件については、平成六年七月一四日付け環水管第一四七号をもって環境事務次官より、また、環水管第一四八号をもって水質保全局長より、都道府県知事に対して通達したところであるが、その他運用において留意するべき細目について下記のとおり通達する。

 一 指定水域及び指定地域の指定の申出について

  1.   (一) 水道事業者からの要請
        水道事業者が特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法(平成六年法律第九号。以下「法」という。)第四条第二項の規定に基づき要請を行うに当たって提出を必要とされる資料は特定水道利水障害の防止のための水道水源水域の水質の保全に関する特別措置法施行規則(平成六年総理府令第二五号。以下「規則」という。)第二条各号に定める事項のとおりであるが、これらの事項のうち規則第二条第二号又は第三号に係る記載事項については、次のとおりであるので、要請を行う水道事業者に周知されたい。
    1.    ① 規則第二条第二号イの「特定項目に係る原水の汚染状態」としては、トリハロメタン生成能濃度が、同号ロの「その他水道原水の水質について参考となるべき事項」としては、必要に応じ、鉄、マンガン又はアンモニア性窒素の濃度がそれぞれ記載されるものとする。規則第二条第三号イの「政令で定める物質に係る水道水の汚染状態」としては総トリハロメタン、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン及びブロモホルムの濃度が、同号ロの「その他水道水の水質について参考となるべき事項」としては、必要に応じ残留塩素の濃度が記載されるものとする。
    2.    ② 規則第二条第三号イの総トリハロメタン、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン及びブロモホルムに係る水質データは、原則として給水栓において採水し、測定したものとする。
    3.    ③ 規則第二条第二号の水道原水の水質データについては過去五年間を目安として可能な期間、同条第三号の水道水の水質データについては原則として過去五年間のものとする。
           なお、水道事業者は、クロロホルム、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルムが水道水質基準を満たさなくなるおそれがある場合だけでなく、これら四物質の濃度の総和である総トリハロメタンが水道水質基準を満たさなくなるおそれがある場合についても要請を行うことができることに留意されたい。
  2.   (二) 法第四条第三項の規定に基づき、水道原水水質保全事業の実施の促進に関する法律(平成六年法律第八号、以下「事業促進法」という。)第四条第一項の要請は、法第四条第二項の要請とみなされることとされている。この場合において、法第四条第一項に基づき指定水域及び指定地域を指定する場合の要件と事業促進法第五条第一項又は第七条第一項に基づき「対象水道原水の水質の汚濁に相当程度関係のあると認められる区域」を定める場合の要件が異なることから、法第四条第三項の規定の適用があることが、直ちに法に基づく指定水域及び指定地域の指定の要件を満たすことを意味しないため、指定水域及び指定地域の指定の申出については、法第四条第一項の要件を満たすか否かを判断した上で、適切に行うこととされたい。
        一方、事業促進法第五条第一項又は第七条第一項に基づき定める「対象水道原水の水質の汚濁に相当程度関係のあると認められる区域」の要件は法第四条第一項に基づき指定する指定水域及び指定地域の要件と異なることから、法第四条第三項の規定の適用があることにより、法の水質保全計画の対象地域のすべてが事業促進法の都道府県計画又は河川管理者事業計画の対象地域となるとは限らないため留意されたい。
  3.   (三) 基本方針の第一の一②において、「原則として」としているのは、鉄、マンガン、アンモニア性窒素の濃度が高い場合、塩素注入方式の変更の措置が講じられないこともあるという事情を勘案したためであるので、留意されたい。
        また、同一②において、「なお、代替水源の確保の見込みがある場合には、水源の種別の変更という方策を水道水源水域の水質の汚濁の状況に応じた措置とするものであること。」とあるのは、水源の種別の変更の可否が当該水道事業者以外の要因である代替水源の存在の有無によることを踏まえ、水道水源として確保の見込みのある代替水源が存在する場合には、水道事業者がとりうる最大限の対策として水源の種別の変更の方策を講ずることが、水道水源水域の水質の汚濁の状況に応じた措置とされることとしたことを意味するので、留意されたい。

 二 水質保全計画の策定等について

  1.   (一) 基本方針第二の一②の「人口、産業等の動向を勘案する」に当たっては、国土総合開発計画、大都市圏整備計画、水資源開発基本計画その他地域の振興又は整備に関する計画(以下「国土総合開発計画等」という。)の人口、産業等の動向を踏まえることとする。
        また、基本方針第二の一のなお書きに示されているとおり、水質保全計画の策定に当たっては、水質保全対策に関連する諸計画との整合が図られるようにすることとする。なお、水質保全対策に関連する諸計画とは、公害防止計画、湖沼水質保全計画、下水道整備五箇年計画、流域別下水道整備総合計画、公共下水道及び流域下水道の事業計画、農業集落排水整備計画、一般廃棄物処理計画及び水質保全対策に関する記述のある国土総合開発計画等等である。
  2.   (二) 水質保全計画に定める事業には、土地改良事業のうち、しゃんせつ、ばっ気、導水等により農業用用排水の水質浄化対策を行う事業及び農業集落排水事業、林業集落排水事業及び漁業集落排水施設整備事業並びに新山村振興農林漁業対策事業及び農山漁村活性化定住圏創造事業の簡易排水施設の整備事業を含めるものとし、事業促進法第二条第四項第六号に規定する事業その他の土地の取得に関する事業は含まれないこととする。
  3.   (三) 水質保全計画に定める規制措置は、特定排水基準に係る規制措置及び構造等基準に係る規制措置であり、立地規制に関する事項を含むものではないことに留意されたい。
  4.   (四) 水質保全計画の策定その他の水道水源水域の水質保全のための施策の実施に当たり、指定水域及び指定地域内に農業用用排水施設が含まれる場合は、その管理主体に対し、当該農業用用排水施設の管理者として要請される範囲を超えて責任又は負担を課すこととならないよう留意されたい。
  5.   (五) 規則第四条第三号に定める水道水の水質の測定時期その他必要な事項は、水道事業者が水道法二〇条に基づいて実施する水質検査に関する事項であるので留意されたい。
  6.   (六) 法第五条第九項に基づく報告については、水質保全計画とは別冊として提出されたい。

 三 特定施設等の設置の届出について

   法第一二条に基づく特定施設等に関する届出については、届出対象事業者に対し、幅広く分析機関の紹介等に努めること等により、届出期間内の届出が十分可能となるよう適切に指導されたい。
   また、特定施設又は水道水源特定施設となる新設のし尿浄化槽の設置の届出の受理、計画変更勧告等を行うに当たっては、し尿浄化槽が建築基準法に基づく建築確認の対象となっていること等にかんがみ、当該浄化槽に係る建築主事を置く地方公共団体の建築担当部局と連絡・調整を図られたい。

 四 法第一七条による指導、助言及び勧告について

   法第一七条による指導、助言及び勧告については、罰則等の強制力を伴う規制措置は含まれず、したがって、立地規制に関する事項は含まれるものではないこと、また、指導等に際し事業者名の公表等の強制にわたる措置をとるものではないことに留意されたい。
   また、法第一七条の指導は、し尿浄化槽の構造若しくは性能に係る指導を行うことを想定しているものではないことに留意されたい。

 五 生活排水対策について

   法第二〇条の生活排水対策の実施の推進とは、生活排水対策重点地域の指定のほか、水質汚濁防止法第一四条の三第二項の広域にわたる施策等として行う普及啓発や市町村が行う普及啓発活動の支援等による生活排水対策の実施の推進であり、下水道のほか、コミュニティプラント、農業集落排水施設、合併処理浄化槽等の施設整備、浄化槽に係る規制、住宅団地等の立地規制に関する事項を含むものではないことに留意されたい。
   また、本条の規定は水質汚濁防止法第一四条の六第一項に基づく生活排水対策重点地域の指定の要件に変更をもたらすものではない。したがって、指定地域において、必ず、水質保全計画に基づき、生活排水対策重点地域の指定等を行わなければならないことを意味するものではないが、指定地域及び指定水域の状況を勘案の上、水質汚濁防止法の要件に該当するものについては重点地域に指定を促進する等必要に応じて適切に対処されたい。

 六 水道事業者の水道水の水質記録の提出の要求について

   法第二三条の「必要があると認めるとき」とは、水質保全計画の効果を調査するために必要があると認める場合、同計画を変更する必要があると認める場合であり、水道事業者の指導の観点から水質記録の提出を求めるものでないことに留意されたい。

 七 水質測定について

   法第二四条の測定計画に基づく水質測定の方法については別紙によられたい。なお測定を行うに当たって水道事業者の協力を求める場合には、当該水道事業者と十分連絡調整を図ることとされたい。

 八 関係機関との調整等

   法の運用に当たっては、河川担当部局、下水道担当部局、農林水産担当部局、厚生省所轄業務担当部局、商工担当部局、国土庁所轄業務担当部局等関係部局と十分協議を行うこととされたい。
   特に、法第四条第一項及び第八項の申出に当たっては、国土庁所轄業務担当部局と、法第五条第一項の水質保全計画の策定及び変更に当たっては、下水道担当部局、農林水産担当部局、厚生省所轄業務担当部局及び国土庁所轄業務担当部局と十分協議することとされたい。
   また、法第五条第七項(同条第一二項において準用する場合を含む。)の規定に基づき事業実施者から意見を聴こうとする場合には、都道府県の農林水産担当部局及び下水道担当部局とあらかじめ協議を整えた上で行うこととされたい。
   さらに、法第一七条に基づく指導に当たっては、特定の業種について指導を行う場合等にあってはその指導の方針について関係部局と十分連絡を行うこととされたい。

別表

 一 試薬

  1.   (一) 水
        蒸留水又はイオン交換水一~三lを三角フラスコに採り、これを激しく沸騰させて容積を三分の一程度に減じ、直ちに分析対象化合物の汚染のない場所に静置して冷却したもの(使用時に調整する。)(注一)
  2.   (二) 硫酸(一+四)又は硫酸(一+四〇)
  3.   (三) 水酸化ナトリウム(一mol/l)又は水酸化ナトリウム(〇・一mol/l)
  4.   (四) 次亜塩素酸ナトリウム溶液(二mgCl/ml)
        次亜塩素酸ナトリウム溶液を水で有効塩素約二mgCl/mlとなるように希釈したもの(使用時に塩素濃度を測定する。)(注二)
  5.   (五) トリハロメタン類標準原液(一mg/ml)
        メタノール適量を全量フラスコ一〇〇mlに採り、これにクロロホルム、ジクロロブロモメタン、クロロジブロモメタン及びブロモホルム〇・一〇〇gをそれぞれ入れ、メタノールを標線まで加えたもの(この溶液はガラスアンプルに入れ、冷暗所に保存する。保存期間は一八〇日を限度とする。)
  6.   (六) トリハロメタン類標準溶液(五〇μg/ml)
        メタノール適量を全量フラスコ一〇〇mlに採り、これにトリハロメタン類標準原液五mlを採り、メタノールを標線まで加えたもの(使用時に調製する。)
  7.   (七) 残留塩素測定に必要とされる試薬
        日本工業規格K〇一〇二の三三・一又は三三・二に定める試薬
  8.   (八) トリハロメタン測定に必要とされる試薬
        日本工業規格K〇一二五の六・一の(一)若しくは六・二の(一)に定める試薬又は昭和四六年一二月環境庁告示第五九号(水質汚濁に係る環境基準について)(以下「告示」という。)付表六の第一の一、第二の一若しくは第三の一に掲げる試薬(但し、告示付表六の試薬においては、揮発性有機化合物標準原液及び揮発性有機化合物標準溶液に代えて、(五)のトリハロメタン類標準原液及び(六)トリハロメタン類標準溶液を用いるものとする。)
    1.    (注一) 硫酸、水酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム溶液の調製及び希釈水に用いる。トリハロメタンを含まないことが確認できている場合は、蒸留水、イオン交換水等を用いてもよい。
    2.    (注二) トリハロメタンの汚染を受けていないことを確認する。汚染されている場合は、次の操作を行って調製する。
           次亜塩素酸ナトリウム溶液をろ過瓶に入れ、スターラーで撹拌しながら、ろ過瓶の上部に接続した分液漏斗から硫酸(一+四)を徐々に加え、発生した塩素ガスを水酸化ナトリウム溶液(一mol/l)に吸収させて、次亜塩素酸ナトリウム溶液を作成する。

 二 器具及び装置

  1.   (一) ビーカー
        容量が三〇〇mlのもの
  2.   (二) 細口試薬瓶又はバイアル瓶
  3.   (三) 恒温槽
  4.   (四) 残留塩素測定に必要とされる器具及び装置
        日本工業規格K〇一〇二の三三・一又は三三・二に定める器具及び装置
  5.   (五) トリハロメタン測定に必要とされる器具及び装置
        日本工業規格K〇一二五の六・一の(二)若しくは六・二の(二)に定める器具及び装置又は告示付表六の第一の二、第二の二若しくは第三の二に掲げる器具及び装置(但し、告示付表六の第三に準ずる方法を用いる場合にあっては、検出器は電子捕獲型検出器を用いる。)

 三 試験操作

  1.   (一) 水温を二〇℃に調節した試料二〇〇mlを数個のビーカーに採り、これに次亜塩素酸ナトリウム溶液をビーカーの内壁に付着しないように注意しながら、段階的に加え(注三)、次いで硫酸(一+四)若しくは硫酸(一+四〇)又は水酸化ナトリウム(一mol/l)若しくは水酸化ナトリウム(〇・一mol/l)でpH値を七・〇±〇・二に調節する(注四)。
  2.   (二) これらを細口試薬瓶一〇〇mlに移して、二〇℃に保った恒温槽に一時間静置する。
  3.   (三) これらの残留塩素を日本工業規格K〇一〇二の三三・一又は三三・二に定める方法により測定する。
  4.   (四) 方眼紙上の縦軸に残留塩素濃度を、横軸に塩素添加濃度(次亜塩素酸ナトリウム溶液の添加量)をとり、グラフを作図する。
  5.   (五) 遊離残留塩素が約一mg/l残留する塩素添加濃度を求める(注五)。
  6.   (六) 水温を二〇℃に調節した試料二〇〇mlを六個ビーカーに採る。
  7.   (七) 全てのビーカーに(五)で求めた塩素添加濃度及びその塩素添加濃度に各々一、二、三、四、五mg/lを加えた塩素添加濃度(注六)で次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加し、直ちに硫酸(一+四)若しくは硫酸(一+四〇)又は水酸化ナトリウム(一mol/l)若しくは水酸化ナトリウム(〇・一mol/l)でpH値を七・〇±〇・二に調節する(注四)。
  8.   (八) これを細口試薬瓶又はバイアル瓶に満水に採り、密栓して二〇℃の恒温槽に二四±二時間静置した後、遊離残留塩素が一~二mg/lのものを選択する(注七)。
  9.   (九) (八)で選んだ試料について、日本工業規格K〇一二五の六に定める方法又は告示付表六の第一、第二又は第三に準ずる方法によりクロロホルム、ジクロロブロモメタン、クロロジブロモメタン及びブロモホルムの濃度を求め、これらを併せてトリハロメタン生成能の濃度とする。
    1.    (注三) 汚濁の著しい試料の場合、塩素添加濃度の添加段階数をより多く、また、添加濃度をより細かくとることが必要である。
    2.    (注四) pH値の調節は速やかに行う。pH七の燐酸緩衝液を用いてもよい。
    3.    (注五) 図に示したように、塩素を消費する物質を含まない水はⅠ型、アンモニア性窒素等を含まない水ではⅡ型、アンモニア性窒素等を含む水ではⅢ型となる。Ⅰ型及びⅡ型の残留塩素はほとんど遊離残留塩素であるので、約一mg/l残留する塩素添加濃度はA、Bとする。Ⅲ型の残留塩素は不連続点以前では結合残留塩素であり、不連続点以降ではほとんど遊離残留塩素であるので、約一mg/l残留する塩素添加濃度はCとする。
    4.    (注六) 塩素注入量の多い試料等では、追加する塩素添加濃度の間隔を適宜広げて塩素を注入してもよい。その際、広げすぎると残留塩素の濃度が一~二mg/lの範囲に収まらなくなるので注意する。
    5.    (注七) 二四時間後の遊離残留塩素が一~二mg/lの範囲では、二mg/lの試薬溶液のトリハロメタンは一mg/lの一・五倍以内である場合が多い。

 備考

   この測定方法における用語の定義その他でこの測定方法に定めのない事項については、日本工業規格に定めるところによる。
図 略