法令・告示・通達

ダイオキシン類の測定のための地下水の採水に係る留意事項について

公布日:平成12年04月26日
環水企第231号

(環境庁水質保全局企画課、海洋環境・廃棄物対策室長、地下水・地盤環境室長から都道府県、政令指定都市、中核市ダイオキシン類対策担当部局長あて)

 平成12年1月15日に施行されたダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号。)及びこれに基づく命令においては、地下水の測定に関して以下の規定が設けられている。

  1.  ① 国、都道府県その他の地方公共団体による調査測定(法第27条)
  2.  ② 最終処分場の設置者に対する最終処分場の地下水の水質検査の義務づけ(ダイオキシン類対策特別措置法に基づく廃棄物の最終処分場の維持管理の基準を定める命令(平成12年総理府例・厚生省令第2号)第1条第1号)
     これらの規定に基づく地下水の調査測定等のための地下水の採水については、下記のとおり行うことが望ましいため、技術的助言として通知するので、調査測定の実施又は最終処分場の設置者に対する指導に当たっての参考とされたい。

 ダイオキシン類は土壌粒子やフミン質等に吸着して水に混入する場合が多いことが知られており、水のダイオキシン類濃度はそれらの混入に大きく影響される。

 地下水の調査測定は、当該調査測定地点における地下水の汚染状況を把握するために行うものであり、これらの混入の影響を考慮し注意する必要がある。
 また、地下水の採水は、多くの場合、既存の井戸を利用することとなるが、当該井戸において通常揚水が行われていないような場合には、井戸に滞留した水の汚染状況を周辺の地下水の汚染状況とみなしてしまうおそれもある。
 このため、地下水のダイオキシン類の測定に当たっては、分析・精度管理に一層注意するのはもちろんのことであるが、特に、試料となる地下水の採水に関しては従来以上に慎重に実施することが重要である。
 また、これに関連して、地下水の汚染が判明した場合においても、当該地域の地下水そのものが汚染されているのか、井戸の特性により井戸内の水だけが汚染された結果によるものか、採水等の過程で土壌粒子の混入による汚染が生じたことによるのか等の観点を含めた原因究明も必要となってくる。
 以上のことから、地下水の採水に当たっては、JISの定めによるほか、次のことに留意することとされたい。

1.既設井戸を利用して採水を行う場合

(1) 関連データの収集について

  1.  ① 井戸の構造(井戸深度、ストレーナーの位置等)、ポンプ・配管の規格、地下水位等をできるだけ事前に把握(関連資料の入手を含む。)しておくこと。
  2.  ② ダイオキシン類の調査と同時に、pH、水温、電気伝導度、SS等(採水した水の状態を示す基本的項目)についても調査すること。

(2) 使用井戸について

  原則として、現に使用されている井戸から採水すること。また、井戸の構造等が詳細に把握できる井戸をできるだけ優先することが望ましい。長期間休止している井戸又は使用頻度が少ない井戸(以下「休止井戸等」という。)を使用する場合には、井戸内の滞留水を排除してから採水を開始すること。

(3) 採水方法について

 ① ポンプが設置されている井戸の場合
  1.    ア 現に使用されている井戸から採水する場合は、ポンプが通常使用されている状態で採水すること。その際、揚水量、ポンプ稼働後の経過時間、ポンプ稼働前のポンプ停止時間等、ポンプの稼働状況を把握しておくこと。特に、間欠的に揚水している井戸については、詳細な稼働状況を把握しておくこと。
  2.    イ 休止井戸等から採水する場合は、ポンプ稼働後の水温、pH、電気伝導度等を連続計測し、その値から判断し、揚水される水が定常状態となったことをできるだけ確認してから採水すること。その際、アと同様にポンプの稼働状況を十分に把握しておくこと。
 ② ポンプが設置されていない井戸の場合

   ポンプが設置されていない井戸で採水する場合は、採水機器(ポンプ、配管、採水器、ロープ等)を十分に洗浄し、採水時に異物等の混入がないよう十分留意すること。また、ポンプの設置、採水作業に伴い、表面土壌粒子が井戸水に混入しないよう十分注意すること。
   さらに、ポンプの使用に当たっては、適切なポンプを選定し、急激な揚水を避け、安定した状態で採水すること。

(4) 汚染原因の究明等について

  1.  ① 分析の結果、環境基準を上回るような汚染が判明した場合又はそのおそれがある場合には、井戸設置地点及びその周辺の土地利用状況(過去の状況を含む。)、井戸の構造(ストレーナーの位置等)、地下水位、近傍井戸の水質等に関する情報に基づき、その原因の究明を図ること。
  2.  ② 原因究明の過程において必要がある場合には、再調査を行うこと。再調査に当たっては、データの再現性を確認し得るような条件で行うことが望ましい。また、採水に伴う土壌粒子の混入の影響があることが懸念される場合には、表土の調査も併せて行うこと。

2.新たに井戸を設置する場合

(1) 井戸の設置場所について

    常時監視にかかる測定のため新たに井戸を設置する場合には、既存資料(地形、地質及び水理条件)から判断して、地下水への影響等を把握できる代表的な地点で地下水が確実に採取できる地点で地下水が確実に採取できる地点等を選定するよう留意すること。また、最終処分場の周縁地下水採取のために新たに井戸を設置する場合には、既存資料(地形、地質及び埋立地との位置関係)から判断して、浸出水等による地下水等への汚染の有無を判断できる代表的な地点、廃棄物が過去に埋め立てられていない地点、分析に必要な水量を確保できる地点等の条件を満足する地点を選定するよう留意すること。

(2) 井戸掘削に伴う汚染の防止について

    井戸掘削の際には、使用する器具等を事前に十分洗浄することはもちろん、表土や異物の混入等を防止するため、適切な掘削方式(無水掘り等)の選択、雨水の流入の防止、表土の除去(状況に応じ深さを決定。例;20cm~30cm程度)、適切なシーリング等の措置を講ずること。また、井戸掘削後、十分に井戸洗浄を行うこと。
   なお、後日地下水汚染が検出された際の原因究明に資するため、井戸周辺の表土及びボーリングコアを、ある程度(例;調査が終了するまで等)の期間保存しておくこと。

(3) 井戸の管理について

    井戸の管理については、井戸上部を密閉し孔内への表土や異物の混入を防止すること。

(4) 採水時の留意事項について

    その他、採水にあたっての関連データを収集、採水方法等、上記1に掲げる既存井戸の留意事項に準ずること。

3.湧水を採水する場合

(1) 採水場所について

    湧水を利用して採水する場合は、常時湧出している箇所を選定することとする。また、水質(水温、pH、電気伝導度等)、地形、地質等を踏まえ、当該湧水と周辺地下水との関連を把握しておくこと。

(2) 採水時の留意事項について

  1.  ① 採水に使用する器具類は十分洗浄したものを用い、採水時に異物等の混入がないよう十分留意すること。
  2.  ② その他、採水にあたっての関連データ収集等、上記1に掲げる事項に留意すること。