法令・告示・通達

ダイオキシン類対策特別措置法に基づく底質環境基準の施行について

公布日:平成14年07月22日
環水企117・環水管170

(都道府県知事・政令指定都市市長・中核市市長あて環境省環境管理局水環境部長通知)

 ダイオキシン類対策特別措置法(平成一一年法律第一〇五号。以下「法」という。)第七条の規定に基づくダイオキシン類による水底の底質の汚染に係る環境基準(以下「底質環境基準」という。)については、平成一四年七月二二日「ダイオキシン類による大気の汚染、水質の汚濁(水底の底質の汚染を含む。)及び土壌の汚染に係る環境基準について」(平成一四年環境省告示第四六号。以下「告示」という。)として告示したところである。
 法はダイオキシン類が人の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある物質であることにかんがみ、ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去等をするため、ダイオキシン類に関する施策の基本とすべき基準を定めるとともに、必要な規制及び事業に係る措置等を定めることにより、国民の健康の保護を図ることを目的とするものであり、貴職におかれては、左記事項に留意の上、底質環境基準の円滑かつ適切な施行に万全を期されるようお願いする。

第一 全体的事項

  1.  ア 法におけるダイオキシン類は、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、ポリ塩化ジベンゾーパラージオキシン(PCDD)及びコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)と定義されている(法第二条第一項)。
  2.  イ ダイオキシン類は各異性体の毒性が異なるため、二、三、七、八―四塩化ジベンゾーパラージオキシンの毒性に換算して合計した毒性等量(TEQ)により表すものとする(単位としては、「―TEQ」として表している。)。二、三、七、八―四塩化ジベンゾーパラージオキシンの毒性への換算は、測定により得られるダイオキシン類の各異性体の濃度に毒性等価係数(TEF)を乗じて合計するものとする。この際用いる毒性等価係数は、ダイオキシン類対策特別措置法施行規則(平成一一年総理府令第六七号。以下「規則」という。)
       第三条において定められているもの(規則別表第三)を用いるものとする。

第二 基本的な考え方

  底質環境基準は、我が国及び諸外国において検討され、集約された科学的知見に基づき、底質中に含まれるダイオキシン類がダイオキシン類の水への供給源(汚染源)となっていることを踏まえ、底質中の間隙水の濃度に着目して底質濃度を規定する分配平衡法と、実際にダイオキシン類に汚染された底泥を用いて水への振とう分配試験を行い、水質への影響を考慮する方法により数値を算定し、一五〇pg―TEQ/g以下とした。
  なお、底質環境基準は、汚染の進行を基準値の上限まで容認することを趣旨とするものではない。

第三 運用上の取扱い

 一 適用範囲について

   底質環境基準については、人の健康の保護という観点から見た場合、間接的に飲料水及び魚介類を経由した食物の摂取による影響を考慮する必要があることから、水質の汚濁に係る環境基準と同様、河川、湖沼及び海域を問わず、すべての公共用水域に適用することとした。

 二 測定方法について

   ダイオキシン類について、正確な測定結果を得ることは、その環境中の濃度の現状の把握のみならず、その傾向の把握、その影響の評価及び排出抑制対策の立案とその効果の評価等今後のダイオキシン類対策を推進する上で重要なことであるので、以下の事項に留意の上、適正な測定に努められたい。

  1.   ア 底質環境基準の測定は、「ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル」(平成一二年三月環境庁水質保全局水質管理課。以下「測定マニュアル」という。)に掲げる方法によることとする。
  2.   イ 毒性等量の算出の際の定量下限未満の数値の取扱いについては、法第二六条第一項の常時監視に係る測定の場合は、アによるほか、定量下限未満検出下限以上の数値はそのままその値を用い、検出下限未満のものは試料における検出下限の二分の一の値を用いて各異性体の毒性等量を算出することとする。ただし、底質環境基準を超え、対策を行うための汚染範囲確定のための調査の一環として測定を行う場合には、原因者に費用負担を求めることがあることから、定量下限未満の数値は〇として算出することとする。
  3.   ウ 測定に当たっては、精度管理を徹底し、採泥方法、試料の保存及び分析に当たっての損失あるいは汚染を防止するとともに、十分な検出能力、定量下限値及び必要な分析精度を確保されたい。

 三 測定地点の選定について

   測定地点については、平成一二年度から、法に基づく常時監視として、水質調査と同地点を原則としつつ、水域を代表する地点等において調査が実施されているところであり、従前の調査結果を活用して測定地点を選定するものとする。これらの調査を通じて底質濃度が比較的高かった地点に関しては、その周辺において測定地点を増加させることが、また、低濃度の地点については測定地点を移動させることが考えられる。

 四 評価について

   底質環境基準の達成状況の評価については、測定結果ごとに、また、地点ごとに行うものとする。また、過去にも測定が行われた地点に関しては、当該地点における最新の測定結果をもって達成状況の評価を行うものとする。

 五 達成期間について

   底質環境基準の達成期間については、環境基準が達成されていない地点にあっては、可及的速やかに達成されるように努めるものとする。また、環境基準が現に達成されている地点又は達成された地点にあっては、その維持に努めるものとする。

 六 環境基準の見直しについて

   今般の底質環境基準は、現在得られている知見に基づき設定したものであり、今後の科学的知見の集積に伴って適宜見直しを行うことがあるものである。

第四 基準値超過時の措置について

  ダイオキシン類は人の健康に影響を及ぼす恐れがあることから、底質環境基準を超える場合には、水への溶出及び巻き上げ等を低減するための何らかの対策をとり、人への暴露量を低減する必要がある。
  対策内容の検討に当たっては、当該地点の汚染の広がりを把握する必要があり、まず、汚染範囲確定のための詳細調査を実施する必要がある。この場合、面的広がりに加え、適宜コアサンプル内の濃度等を把握することにより、垂直分布を把握する必要がある。
  面的広がりの把握に当たっては、「底質調査方法について」(昭和五〇年一〇月二八日環水管第一二〇号)に準じ、海域、湖沼においては、汚染が見つかった地点の周辺水域に二〇〇~三〇〇mメッシュで採泥地点を設定するものとし、河口部等の堆積底泥の分布状況が変化しやすい場所等においては必要に応じて地点を増加するものとする。河川及び水路においては、幅の広いときにあっては五〇mメッシュで、幅の狭いときにあっては流下方向五〇mごとに底泥の堆積しやすい場所を採泥地点とし、状況等により適宜地点を増加する。その他事項については、測定マニュアルによるものとする。汚染範囲確定は、環境基準を超過する地点と近接する環境基準を満たす地点との垂直二等分線で結ばれた多角形を汚染範囲とする。
  また、垂直分布の把握に当たっては、基本的に表面で最も高濃度のダイオキシン類が検出された地点においてコアサンプルをとることを基本とするものとし、概ね一〇cmごとに深度別のダイオキシン類を測定する。汚染範囲確定は、環境基準を超過する深度と近接する環境基準を満たす深度の垂直二等分線を境界として設定する。
  なお、汚染範囲の確定のための詳細調査範囲を絞り込む場合においては、簡易な測定法を用いることは差し支えない。
  対策手法については、現在、浚渫、現位置コンクリート固化、覆砂等が知られているが、手法の決定においては、汚染地点ごとに評価検討を行い、環境保全上支障のない手法を選択する必要がある。なお、対策実施の際に留意すべき技術的な事項については、底質の除去に係る技術指針として別途通知する。

第五 情報提供について

  詳細調査及び対策の実施に当たっては、調査及び対策の実施者が、関係地方公共団体及び地元関係者に対して当該事業に関する情報を保管・提供することが重要であるところ、貴職におかれても、適切に対応されたい。

第六 その他:公害防止計画における取扱について

  底質環境基準の設定については、各公害防止計画の基本方針の「計画の目標」における、「環境基本法第一六条に基づく環境基準等が設定されまたは改定された場合は、(略)当該環境基準等に係る部分を変更した別表(汚染物質の項目ごとの目標)をもって本計画の別表とみなす。」との記述に当たるものであり、公害防止対策事業等の実施に当たっては、関係部局とも協議の上、適切に対応されたい。