法令・告示・通達

瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立についての規定の運用に関する基本方針について

公布日:昭和49年06月18日
環水規127号

環境事務次官から各瀬戸内海関係府県知事・各政令市長あて

 瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針については、昭和49年5月9日付けで瀬戸内海環境保全審議会会長から環境庁長官事務代理宛別添のとおり答申があつた。
 別添の「瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針について」によれば、瀬戸内海環境保全審議会としては、瀬戸内海における埋立ては、厳に抑制すべきであるとの見解であり、貴職におかれては、瀬戸内海環境保全臨時措置法の立法趣旨及びこの基本方針の趣旨を十分尊重するとともに、瀬戸内海環境保全審議会の意向を体し、瀬戸内海の環境保全に万全を期せられたい。
 なお、別紙基本方針第2項注の「沿岸漁場整備開発法」は去る5月10日に成立し、同月17日に公布施行されたので念のため申し添える。
 以上、命により通達する。

別添
    〇瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針について(答申)

昭和49年5月9日瀬環審第12号
瀬戸内海環境保全審議会
 昭和48年12月24日付け諮問第1号をもつて諮問された埋立ての規定の運用についての基本的な方針については、別紙のとおりとりまとめたので答申する。
 なお、当審議会としては、瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するため瀬戸内海環境保全臨時措置法が全会一致の議員立法として制定された経緯にもかんがみ、瀬戸内海における埋立ては厳に抑制すべきであると考えており、やむを得ず認める場合においてもこの観点にたつて別紙の基本方針が運用されるべきであると考えていることをこの際特に強調しておくものである。
 また、当審議会としては別紙の内容を具体的なものとするため引続き調査審議を行うこととしているので今後の瀬戸内海における埋立てについての免許又は承認に関する処分の状況について報告するよう要望する。

別紙
     瀬戸内海環境保全臨時措置法第13条第1項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針

 瀬戸内海がわが国のみならず、世界においても比類のない美しさを誇る景勝地として、また、国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるという特殊性を有することにかんがみ、瀬戸内海の環境保全に関する基本計画が策定されるまでの間、瀬戸内海における埋立ては、すでに悪化せる瀬戸内海の環境に影響を及ぼすものであるという認識に立ち、瀬戸内海の環境の一層の悪化を防止するため、瀬戸内海における公有水面埋立法第2条第1項の免許又は同法第42条第1項の承認にあたつては、下記事項を十分配慮すること。

  1. 1 次の各項目毎に十分配慮されたものであることを確認すること。
    1.  (1) 海域環境保全上の見地
      1.   (イ) 海面の消滅及び自然海岸線の変更による海水の自浄能力の低下がもたらす周辺海域の水質への影響の度が軽微であること。
      2.   (ロ) 埋立地からの排水(流出水・浸出水を含む。)によつて、COD汚濁負荷量の目標値をこえることにならないこと。
      3.   (ハ) 埋立てによる潮流の変化がもたらす水質の悪化の度合及び異常堆砂・異常洗掘等による隣接海岸への影響の度合が軽微であること。
      4.   (ニ) 埋立工事に伴うにごり等の周辺海域への拡散等による水質の悪化の度合を軽微にする工法がとられていること。
    2.  (2) 自然環境保全上の見地
      1.   (イ) 埋立て、埋立地の用途及び埋立工事による自然環境(生物生態系、自然景観及び文化財を含む。)への影響の度合が軽微であること。
      2.   (ロ) 埋立てそのものの海水浴場等の利用に与える影響が軽微であること。
    3.  (3) 水産資源保全上の見地
      1.   (イ) 埋立てにより消滅する海面及びその周辺海域における水産資源及びその利用に与える影響が軽微であること。
      2.   (ロ) 埋立地からの排水(流出水・浸出水を含む。)による水産資源への影響が軽微であること。
      3.   (ハ) 埋立工事に伴う汚染の拡散が、水産資源及びその利用に与える影響の度合を軽微にする工法がとられていること。特に有害水底土砂の浚渫又は封じ込めに係る埋立ての場合は埋立工事中の拡散を防止する工法がとられていること。
  2. 2 次の(1)に示す区域での埋立ては極力さけ、(2)に示す区域での埋立てはこれに準じて十分配慮すること。
    1.  (1) 
      1.   (イ) 水産資源保護法による保護水面(その周辺を含む。)
      2.   (ロ) 自然公園法による特別保護地区(その周辺を含む。)、特別地域(その周辺を含む。)及び海中公園地区
      3.   (ハ) 自然環境保全法による原生自然環境保全地域(その周辺を含む。)、特別地区(その周辺を含む。)及び海中特別地区
      4.   (ニ) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律による特別保護地区
      5.   (ホ) 文化財保護法による史跡名勝天然記念物に指定された地域(その周辺を含む。)
    2.  (2) 瀬戸内海漁業取締規則による藻場等ひき網漁業禁止区域
      •   ※注 沿岸漁場整備開発法(案)が成立した場合には、同法による育成水面は、本項に準じて取り扱うこととする。
  3. 3 次の海域については、次に示している留意事項に適合しない埋立てはできるだけさけるように配慮すること。
    海域
    留意事項
    大阪湾奥部
    (大阪府泉南郡阪南町男里川河口左岸から兵庫県神戸市須磨区妙法寺川河口右岸に至る陸岸の地先海域)
    公害防止・環境保全に資するもの、水質汚濁防止法による特定施設を設置しないもの又は汚濁負荷量の小さいもの
    播磨灘北部
    (兵庫県江井島港西防波堤灯台から岡山県玉野市沼灰山出崎突端に至る陸岸の地先海域)
    播磨灘中央部のうち香川県側
    (香川県大川郡志度町馬ケ鼻突端から香川県高松市郷東町香東川河口左岸に至る陸岸の地先海域)
    水島灘
    (岡山県倉敷市下津井ノ鼻突端から広島県阿伏兎灯台に至る陸岸の地先海域)
    燧灘のうち愛媛県側
    (愛媛県川之江市川之江町余木崎から、愛媛県越智郡波方町大角鼻突端に至る陸岸の地先海域)
    安芸灘のうち広島県側及び広島湾
    (広島県呉市仁方町戸田東重岩灯標から山口県玖珂郡大畠町瀬戸山鼻に至る陸岸の地先海域)
    •   ※1 上表の海域欄の区域は、汚濁度、滞留度及びCOD汚濁負荷流入量の総合的評価が平均をこえる区域であり(別表1参照)、その区分は別図1のとおりとする。ただし、これらの海域及びその他の海域においても、汚濁度、滞留度及びCOD汚濁負荷流入量が当該海域全体の平均的な特性と著しく異なる特性をもつ地区においては、実情に応じた配慮をすること。
    •   ※2 響灘については、滞留度指数が判明した段階で当該指数と汚濁度及びCOD汚濁負荷流入量の指数の総合評価が総合指数の平均である300をこえることになれば、上表の海域に含まれることとする。
  4. 4 面積の極めて小さい埋立て(1ha程度)については、1、2の適用に当たつて当該埋立てが小規模であることを勘案しうるものとする。

別表
  海域別状況(島嶼部を除く)

Block
海域名
COD濃度指数(A)
滞留度指数(B)
COD汚濁流入度指数(C)
総合指数(A)+(B)+(C)
総合指数301以上
備考
1
下関海峡東部
120
山口県側
8
128
 
注1
COD濃度指数COD汚濁負荷流入度指数
S47年度4回の一斉調査結果の平均値による。
福岡県側
29
149
 
2
周防灘中央部
106
93
山口県側
5
204
 
福岡県側
56
255
 
 2
滞留度指数
S47年度の一斉調査結果に基づくsimu‐lationによる。
大分県側
0
199
 
3
周防灘北部
90
99
 
104
293
 
4
周防灘南部
148
114
 
11
273
 
5
伊予灘西部
85
61
大分県側
0
146
 
愛媛県側
0
146
 
6
別府湾
128
75
 
86
289
 
 3
各指数
各要素の平均値を100とした指数
7
豊後水道
64
27
愛媛県側
4
95
 
大分県側
193
284
 
8
伊予灘東部
78
66
山口県側
0
144
 
 4
響灘は滞留度指数がないため保留
愛媛県側
59
203
 
9
安芸灘
64
82
広島県側
207
353
愛媛県側
1
147
 
10
広島湾南東部
72
99
 
 
11
広島湾
91
112
山口県側
941
1,144
広島県側
189
392
12
燧灘
95
119
広島県側
6
220
 
愛媛県側
152
366
13
備後灘
103
149
広島県側
40
292
 
香川県側
4
256
 
14
備後瀬戸
123
163
岡山県側
7
293
 
香川県側
5
291
 
15
水島灘
131
171
 
128
430
16
播磨灘中央部
119
151
兵庫県側
6
276
 
香川県側
36
306
17
播磨灘北部
132
129
兵庫県側
135
396
岡山県側
160
421
18
大阪湾口部
77
77
兵庫県側
36
190
 
大阪府側
0
154
 
19
大阪湾奥部
141
102
 
672
915
20
紀伊水道東部
86
49
 
132
267
 
21
紀伊水道西部
53
63
 
141
257
 
22
播磨灘南部
91
107
 
2
200
 
23
響灘
102
山口県側
0
102
 
福岡県側
141
243


 補足:響灘についてはシミュレーションの結果、滞留度係数が53となり、総合指数は山口県側が
    155、福岡県側は296となつた。

 別図1 瀬戸内海ブロック分割図
    (境界は備考による)
図:別図1 瀬戸内海ブロック分割図

ブロック番号
海域
1
下関海峡東部
2
周防灘中央部
3
周防灘北部
4
周防灘南部
5
伊予灘西部
6
別府湾
7
豊後水道
8
伊予灘頭部
9
安芸灘
10
広島湾南東部
11
広島湾
12
燧灘
13
備後灘
14
備讃瀬戸
15
水島灘
16
播磨灘中央部
17
播磨灘北部
18
大阪湾口部
19
大阪湾奥部
20
紀伊水道東部
21
紀伊水道西部
22
播磨灘南部
23
響灘


 (備考)
区分表示
(記号は別図参照)

  •   A 日の御埼―伊島南端―蒲生田岬
  •   B 潮崎―蒲生田岬
  •   C 城ケ崎―沖の島南端―生石鼻
  •   D 男里川河口左岸―/(N34゜31′00″)/(F135°15′00″) /―妙法寺川河口右岸
  •   E 唐崎鼻―松帆埼
  •   F 岡崎―孫崎
  •   G 三原川河口右岸―馬ケ鼻
  •   H 江井島港西防波堤灯台―鞍掛島北端―/(N34°41′00″)/(E134°22′00″)/ ―/(N34°31′00″)/(E134°06′00″)/―出崎
  •   I 出崎―柏島東端―香東川左岸
  •   J 西ノ鼻―沖の白石灯台―鴻石灯標―阿伏免灯台
  •   K 阿伏免灯台―三崎
  •   L 余木崎―豊島北崎―弓削島南端、弓削島伊勢ケ鼻―因島宇崎、因島梶ノ鼻―向島長礁鼻、牛ノ浦灯台から0°の線
  •   M 大角鼻―大下島南端―岡村島観音崎―御手洗港防波堤灯台、大崎下島西端―上蒲刈島黒鼻、上蒲刈島串崎から270°の線 下蒲刈島白崎―重岩灯標
  •   N 白石鼻―興居島神崎、興居島這磯鼻―中島スノ鼻 中島部屋ノ鼻―怒和島風切鼻
  •   O 怒和島風切鼻―倉橋島南端、音戸大橋の線
  •   P 怒和島草崎―情島荒神鼻、情島薬研鼻―屋代島瀬戸の鼻
  •   Q 早瀬大橋の線、西能美島大屋鼻―大黒神島牛石鼻、大黒神島鵜泊鼻―甲島北端、甲島南端―屋代鼻大崎鼻
  •   R 瀬戸山鼻―屋代鼻明神鼻
  •   S 夢氷岬―室津灯台
  •   T 黒津ノ鼻―長島現后鼻、長島東端―室津灯台
  •   U 杵崎―/(N33°52′00″)/(E131°40′00″)/ ―本山岬
  •   V 本山岬―苅田港北防波堤灯台
  •   W 長崎―城井川河口左岸
  •   X 春石鼻―岡崎
  •   Y 佐田岬―岡崎
  •   Z 高茂岬―鶴見崎
  •   a 関門橋の線
  •   b 特牛灯台―角島通瀬岬―妙見崎灯台
        瀬戸内海ブロック分割図

図:(備考) 区分表示 記号

ブロック番号
海域
1
下関海峡東部
2
周防灘中央部
3
周防灘北部
4
周防灘南部
5
伊予灘西部
6
別府湾
7
豊後水道
8
伊予灘頭部
9
安芸灘
10
広島湾南東部
11
広島湾
12
燧灘
13
備後灘
14
備讃瀬戸
15
水島灘
16
播磨灘中央部
17
播磨灘北部
18
大阪湾口部
19
大阪湾奥部
20
紀伊水道東部
21
紀伊水道西部
22
播磨灘南部
23
響灘