法令・告示・通達
水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について
環水管189号
[改定]
平成9年3月13日 環水管81号
環境庁水質保全局長から都道府県知事・政令市長あて
標記については、平成元年9月14日付け環水管第188号をもって環境事務次官名により通達したところであるが、同通達において別途通達することとされている事項及びその他の事項については、下記により運用することとされたい。
記
Ⅰ 地下水の水質の監視測定について
- 1 水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号。以下「法」という。)第16条第1項に規定する地下水の水質の測定に関する計画(以下「地下水質測定計画」という。)に定める測定すべき事項、測定の地点及び方法等については、別紙地下水質調査方法によることを基本とする。
- 2 地下水質測定計画を作成したときは、当職あてすみやかに通知されたい。年度途中においてこれを変更した場合も同様とする。
なお、地下水質測定計画の作成に当たっては、本法担当部局は、河川担当部局等関係部局と十分協議されたい。 - 3 地下水質測定計画に従って行われた地下水の水質の測定の結果については、原則として1年に1回、別途通知する様式により当職あて通知されたい。
なお、測定結果の数値の取扱い方法及び報告方法は次によることとする。
(1) 数値の取扱い方法について
ア 環境基準項目
地下水の水質汚濁に係る環境基準について(平成9年3月環境庁告示第10号)別表の項目の欄に掲げる項目(以下「環境基準項目」という。)については、以下の取扱い方法によること。
(ア) 報告下限値
「水質汚濁防止法施行規則第6条の2に基づき環境庁長官が定める検定方法」(平成元年環境庁告示第39号。以下「告示」という。)別表の備考の欄に掲げる値を報告下限値とする。
報告下限値は、以下の項目については右欄に掲げる桁数の範囲内で設定する。単位はmg/1とする。項目桁数カドミウム小数点以下4桁鉛小数点以下4桁六価クロム小数点以下4桁砒素小数点以下4桁ジクロロメタン小数点以下4桁四塩化炭素小数点以下4桁1,2-ジクロロエタン小数点以下4桁1,1-ジクロロエチレン小数点以下4桁シス-1,2-ジクロロエチレン小数点以下4桁1,1,1-トリクロロエタン小数点以下4桁1,1,2-トリクロロエタン小数点以下4桁トリクロロエチレン小数点以下4桁テトラクロロエチレン小数点以下4桁1,3-ジクロロプロペン小数点以下4桁チウラム小数点以下4桁シマジン小数点以下4桁チオベンカルブ小数点以下4桁ベンゼン小数点以下4桁セレン小数点以下4桁
また、以下の項目については各項目について右欄に掲げる値とする。項目報告下限値全シアン0.1mg/1総水銀0.0005mg/1アルキル水銀0.0005mg/1PCB0.0005mg/1
(イ) 有効数字等
報告下限値未満の数値については、「報告下限値未満」(記載例「<0.05」)とする。
桁数については、有効数字を2桁とし、3桁目以下を切り捨てる。また、報告下限値の桁を下回る桁については切り捨てる。イ その他の項目
環境基準項目以外の項目については、各都道府県において定められた数値の取扱い方法(下限値及び有効桁数を含む。)によること。
(2) 報告方法について
年間の水質測定結果については、各年度ごとにまとめ、翌年度の別途通知する日までに1部提出すること。
なお、高濃度の汚染が検出された場合等重要な問題については、年間の水質測定結果の報告とは別に、個別に速やかに報告されたい。 - 4 法第17条の地下水の水質の汚濁の状況の公表に当たっては、次の点に留意されたい。
(1) 公表の時期
地下水の水質の測定結果の公表は、公共用水域と同様、年間の最終の測定が終了した後少なくとも3ケ月以内に行うことを基本とする。
(2) 公表の内容
ア 測定地点
測定地点については、関係者の正当な利益の保護との関連も考慮し、地下水の水質の汚濁の状況が把握できる範囲で、例えば大字単位での表示等概ねの位置が明らかとなるよう公表する。
イ 測定値
地下水の水質の汚濁の状況が把握できる範囲で公表内容を定めることとする。なお、必要に応じ井戸の諸元についての基本的な情報(深さ、飲用の有無)を含めて公表する。
ウ 評価
「地下水の水質汚濁に係る環境基準の取扱いについて(平成9年3月13日付け環水管第80号、環境庁水質保全局長通達)」の記の2によるものとする。
- 5 環境基準項目による汚染が発見された場合には、速やかに衛生部局に連絡することとされたい。
Ⅱ その他
1 排水規制との関係
有害物質使用特定施設からの汚水等を河川区域内に排出する場合は、法第12条の3の規定ではなく、法第12条の規定が適用されることとなる。この場合、排水基準の遵守の徹底を図り、有害物質を含む特定地下浸透水の地下への浸透が禁止されることに伴い、有害物質の公共用水域への排出を安易に増加させることのないよう指導されたい。
2 下水道担当部局との連携
今回の法改正による特定地下浸透水の浸透の制限の規定を遵守すべき者は、有害物質使用特定施設から水を排出する者(特定地下浸透水を浸透させる者を含む。)であり、下水道に水を排除する者を含むものであるので、本法担当部局は、下水道担当部局との連携を密にとり、改正法の円滑な施行に支障を生ずることのないよう留意されたい。
3 産業廃棄物担当部局との連携
法第5条第2項の届出を受理した場合には、本法担当部局は、産業廃棄物担当部局との連絡を密にとり、改正法及び廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)の円滑な施行に支障を生ずることのないよう留意されたい。
4 事故時の際の関係部局との連携
法第14条の2の届出を受理した場合には、関係部局とも十分連携を保って事案に対処されたい。
別紙
地下水質調査方法
1 目的
この地下水質調査方法は、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)に基づき都道府県知事等が行う、地下水の水質汚濁の状況を常時監視するための水質調査につき、準拠すべき原則的方法を示したものであり、調査の実施に当たっては、この調査方法を原則としつつ、地域の具体的な状況を考慮し、実効ある調査を行うものとする。
2 水質調査の種類
水質調査の種類は次のとおりとする。
(1) 概況調査
地域の全体的な地下水質の概況を把握するために実施する地下水の水質調査とする。地域の実情に応じ、年次計画を立てて、計画的に実施することとする。
なお、本調査の一環として、地域における一定の代表的な地点において長期的な観点から水質の経年的変化を把握することにも配慮することが望ましい。
(2) 汚染井戸周辺地区調査
概況調査等により新たに発見された汚染について、その汚染範囲を確認するために実施する地下水の水質調査とする。
(3) 定期モニタリング調査
汚染井戸周辺地区調査により確認された汚染の継続的な監視等、経年的なモニタリングとして定期的に実施する地下水の水質調査とする。
3 調査項目及び回数等
(1) 調査項目
水質調査は、地下水の水質汚濁に係る環境基準について(平成9年3月環境庁告示第10号。以下「告示」という。)の別表の項目の欄に掲げる項目(以下「環境基準項目」という。)について実施することとするが、汚染の可能性が極めて低いと考えられる場合には、適宜対象物質を減ずることができるものとする。
水質調査の際には、調査井戸の諸元についてもできるだけ把握することとする。
また、その他地下水の特性把握に必要な項目については適宜実施することとする。
(2) 回数等
ア 概況調査
年次計画を立てて実施する場合は、当該年度の対象井戸については、年1回以上実施することとする。なお、季節的な変動を考慮することが望ましい。
地下水の流動や汚染物質の使用状況を考慮して、数年後に再度調査を行うことが望ましい。
イ 汚染井戸周辺地区調査
汚染発見後、できるだけ早急に実施することとする。1地区の調査は、降雨等の影響を避け、できるだけ短期間に行うことが望ましい。
ウ 定期モニタリング調査
対象井戸について、年1回以上実施することとし、調査時期は毎年同じ時期に設定することとする。なお、季節的な変動を考慮することが望ましい。
4 調査地点
各調査ごとに、次に掲げる事項に留意して調査地点を選定することとする。なお、鉛直方向の汚染の広がりにも留意すること。
(1) 概況調査
- ① 調査全体として、地域全体の地下水の水質の概況を把握できるようにする。
- ② 工場・事業場等の立地の状況、地下水の利用の状況等を勘案し、汚染の可能性が高い地域及び汚染による利水影響が大きいと考えられる地域を重点的に調査する。
- ③ 汚染された場合、多数の人の健康に影響を与える可能性が高い井戸を優先的に選定する。
- ④ 工場・事業場等の立地の状況等から汚染の可能性が高い井戸を優先的に選定する。
(2) 汚染井戸周辺地区調査
- ① 汚染が想定される範囲全体が含まれるように調査範囲を設定する。
- ② 地下水の流向がわかっている場合には、その方向に帯状に調査する。
- ③ 飲用に供されている井戸はできるだけ調査する。
- ④ 調査範囲が広く、対象となる井戸が多い場合は、区域を分け順次調査を行う。
- ⑤ 既存の井戸を調査するのが基本であるが、大きな空白地区が生じる場合は、観測井を設置することも考慮する。
(3) 定期モニタリング調査
- ① 工場・事業場等の立地の状況、地下水の利用の状況等を勘案し、地域の地下水の水質の経年的変化を把握する上で、代表的な地点を選定する。なお、汚染地区の定期モニタリングに当たっては、汚染源近傍地点及び下流側の未汚染地点を含むことが望ましい。
- ② より効果的な監視を行うために、必要に応じて観測井を設置することも考慮する。
5 分析方法
採水試料の分析方法は、環境基準項目については、告示別表の測定方法の欄に掲げる方法による。
その他の項目について分析を行う場合は、日本工業規格、上水試験方法、下水試験方法等科学的に確立された分析方法によることとする。
なお、分析結果の記録に際しては、項目別に分析方法も付記することとする。
6 その他留意事項
地域の井戸の設置状況、地下水の利用状況、地下水の流れ等については、適宜調査を実施し、水質調査に当たって必要な状況を把握しておくことが望ましい。