法令・告示・通達
自然海浜保全地区制度の運用について
環水規108号
環境庁水質保全局長から知事あて
瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律(昭和53年法律第68号)の施行については、昭和54年7月9日付け環水規第99号をもつて環境事務次官名により通達したところであるが、同法による改正後の瀬戸内海環境保全特別措置法(以下「法」という。)第12条の6及び第12条の7の規定に関しては、下記事項に留意の上、別添の標準条例を参考として速やかに条例を制定し、その適正な運用を図られたい。
記
1 自然海浜保全地区の指定について
(1) 自然海浜保全地区の指定要件
- ア 自然海浜保全地区の指定要件は、法第12条の6に定めるとおりであるが、具体的には次によるものとする。
- (ア) 対象となる地域
法第2条第1項に規定する瀬戸内海の海浜地及びこれに面する海面であること。 - (イ) 地域の状況
- a 潮間帯(高潮時の水際線と低潮時の水際線の間にある帯状の部分をいう。)の全ての部分又は大半の部分において、砂浜、泥浜、岩礁等の自然の状態が維持されていること。
- b 潮間帯に接する海浜地及び海面のうち当該地域の利用の状況に応じて必要とされる範囲において、aと同様の状態が維持されていること。
- (ウ) 利用の状況
海水浴、潮干狩等のレクリエーシヨンの場として不特定多数の者による反復的かつ継続的利用が行われており、利用の見通し、土地利用の将来計画等からみて将来にわたつてその利用の場に供されることが適当と認められること。 - (エ) 到達路の確保
将来にわたつて当該地域への通常の手段による到達路が確保されていること。
- (ア) 対象となる地域
- イ 自然海浜保全地区における地域の状況、利用の状況、到達路の確保等の指定要件に係る事項について経年的なは握を行い、指定要件に係る事項の全部又は一部が変化した場合には、地区の拡張、解除等必要な区域の見直しを行うものとする。
(2) 自然海浜保全地区の区域の設定
- ア 自然海浜保全地区の区域の設定の基本的考え方は、次のとおりとする。
- (ア) 海水浴、潮干狩等の利用現況に基づき、これらの利用に供されている区域を基本とすること。
- (イ) 利用状況の推移、後背地における人口、土地利用等社会条件の変化等から予想される将来の利用状況に配慮すること。
- (ウ) 好適な利用を保持するうえで一体として保全することが適当な地域を必要に応じて含めるものとすること。
- イ 自然海浜保全地区の区域は、陸域においては次に掲げる線のうち適切なものを用いて設定するものとし、海域においては、陸域に準じ見通し線等により設定するものとする。
- (ア) 護岸、道路等人工構築物の設置されている線
- (イ) 農用地、住宅地との境界等土地利用状況の変化する線
- (ウ) 地形界、植生界による線
- (エ) 土地所有別境界による線
- (オ) 他の法律、条例に基づく地域、地区等の境界による線
- (カ) その他見通し線等
- ウ 自然海浜保全地区の区域の設定に当たつては、標準条例第5条第2項各号に掲げる区域を含まないものとするほか、同項各号に掲げる区域として指定される予定が明らかである地域、船舶が通常航行し又は停泊する水域等を避けるものとする。
(3) 指定に当たつての調整等
- ア 自然海浜保全地区の指定又は区域の拡張をしようとするときは、自然海浜保全地区制度担当部局は、あらかじめ、港湾担当部局、農林水産担当部局、都市計画担当部局、海岸担当部局、自然保護担当部局、商工担当部局等府県の関係部局と連絡調整を行うとともに、関係市町村と協議するものとする。
- イ 国有林野について自然海浜保全地区の指定又は区域の拡張をしようとするときは、あらかじめ当該国有林野を管轄する営林署と連絡調整するものとする。
- ウ 港湾法(昭和25年法律第218号)第2条第3項に規定する港湾区域、同条第4項に規定する臨港地区又は同法第37条第1項に規定する港湾隣接地域について自然海浜保全地区の指定又は区域の拡張をしようとする場合であつて港湾管理者が関係市町村以外である場合には、港湾管理者と協議するものとする。
- エ 港則法(昭和23年法律第174号)第2条に規定する港の区域又は海上交通安全法(昭和47年法律第115号)第30条第1項第1号に規定する航路の周辺の海域について自然海浜保全地区の指定又は区域の拡張をしようとするときは、当該海域を管轄する管区海上保安本部の長と連絡調整するものとし、これら海域以外の海域について自然海浜保全地区の指定又は区域の拡張をしようとするときは、その旨を当該海域を管轄する管区海上保安本部の長に通知するものとする。
2 行為の届出について
(1) 届出対象行為
届出対象行為は、標準条例第6条第1項第1号から第3号までに掲げる行為のほか、必要があると認めるときは、同項第4号に基づき規則で自然海浜保全地区の保全及び適正な利用に支障を及ぼすおそれがある行為を定めうることとしており、府県の実態に応じて必要な行為を定めるものとする。
(2) 届出の適用除外となる行為
標準条例第6条第4項各号に掲げる行為については、同条第1項の届出及び同条第2項の通知の規定は適用しないこととしているが、同条第4項に関しては次の事項に留意されたい。
- ア 第4号の「その他自然海浜保全地区の保全及び適正な利用に資する行為」としては、自然公園に関する公園事業、原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域に関する保全事業、海岸環境整備事業等の施行に係る行為があること。
- イ 第5号の規則で定める行為としては、自然公園法(昭和32年法律第161号)第20条第1項に規定する普通地域及び自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第28条第1項に規定する普通地区における適用除外行為に準じて定めること。ただし、これら地区の適用除外行為については、一定規模以下の行為に限られている場合があるが、自然海浜保全地区についても規模を限つて適用除外行為を定める必要が生じた場合には、これら地区と自然海浜保全地区の性格及び規模の相違に配慮し、適切に定めること。
(3) 通知をもつて届出に代える法人
標準条例第6条第2項の規則で定める法人としては、公社、公団、事業団、港務局等特別の法律により設立された法人であつて国の機関及び地方公共団体と同様に通知をもつて届出に代えることが適当なものを定めるものとする。
(4) 他法令に基づく許可等の手続との調整
- ア 標準条例第6条第3項の規定は、自然海浜保全地区内における行為の届出又は通知と他法令に基づく許可申請等との手続の重複を避けるため、知事に対して他法令に基づく許可申請等があつたときは、届出又は通知があつたものとみなすこととしたものであるので、他法令に基づく許可等の担当部局と密接な連絡を保ち、自然海浜保全地区内における行為について十分なは握がなされるよう措置するものとする。
- イ 標準条例第6条第3項第9号の規則で定める許可等としては、次に掲げるものを定めるものとする。
- (ア) 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年法律第32号)第8条ノ8第5項の規定による許可
- (イ) 都市公園法(昭和31年法律第79号)第6条第1項又は第3項の規定による許可及び同法第9条の規定による協議
- (ウ) 自然公園法第17条第3項、第18条第3項又は第18条の2第3項の規定による許可、同法第20条第1項の規定による届出、同法第40条第1項の規定による協議及び同条第2項の規定による通知
- (エ) 自然公園法第42条第1項の規定に基づき定められた条例の規定による許可、届出、協議及び通知で(ウ)に相当するもの
- (オ) 都市計画法(昭和43年法律第100号)第53条第1項の規定による許可(都市計画施設(公園又は緑地に限る。)の区域内における建築物の建築に係るものに限る。)及び該当許可について同条第2項の規定において準用する同法第42条第2項の規定による協議
- (カ) 都市計画法第58条第1項の規定に基づき定められた条例の規定による許可、協議及び通知
- (キ) 自然環境保全法第25条第4項又は第27条第3項の規定による許可、同法第28条第1項の規定による届出並びに同法第30条の規定において準用する同法第21条の規定による協議及び通知
- (ク) 自然環境保全法第48条第1項の規定に基づき定められた条例の規定による許可、届出、協議及び通知で(キ)に相当するもの
- (ケ) 都市緑地保全法(昭和48年法律第72号)第5条第1項の規定による許可及び同条第8項の規定による協議
3 勧告等について
(1) 勧告又は助言
- ア 標準条例第7条第1項に規定する勧告又は助言は、当該自然海浜保全地区の保全及び適正な利用の確保を図ることを目的として行われるものであるので、当該地区の利用の実態を踏まえ、その行為が当該地区の保全及び適正な利用に支障を及ぼすか否かを判断し、必要があると認められる場合において勧告又は助言を行うことができるものである。
- イ 勧告又は助言の内容は、将来にわたつて当該地区を保全し、適正な利用を確保するために必要な限度における届出に係る行為の中止又は変更、代替措置の実施等である。
- ウ 勧告又は助言を行おうとする場合において、当該勧告又は助言が船舶の交通の安全、海上災害の防止その他海上保安業務に関するものであるときは、あらかじめ当該勧告又は助言に係る海域を管轄する管区海上保安本部の長と連絡調整するものとする。
(2) 意見
標準条例第7条第2項に規定する意見については、(1)のア及びイに準じて取り扱うものとする。
(別添)
〇〇県(府)自然海浜保全地区条例
(目的)
第1条 この条例は、自然海浜保全地区の指定、自然海浜保全地区内における行為の届出等に関し必要な事項を定めることにより、自然海浜の保全及び適正な利用を図り、もつて県(府)民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(県(府)の任務)
第2条 県(府)は、自然海浜保全地区(瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年法律第110号)第12条の6に規定する自然海浜保全地区をいう。以下同じ。)について、その保全及び適正な利用がなされるように、この条例の趣旨の徹底を図り、かつ、この条例の適正な執行に努めなければならない。
(地域開発施策等における配慮)
第3条 県(府)は、地域の開発及び整備に関する施策の策定及びその実施に当たつては、自然海浜保全地区の保全及び適正な利用について配慮しなければならない。
(財産権の尊重及び他の公益との調整)
第4条 この条例の適用に当たつては、関係者の所有権その他の財産権を尊重するとともに、国土の開発及び保全その他の公益との調整に留意しなければならない。
(自然海浜保全地区の指定)
第5条 知事は、瀬戸内海(瀬戸内海環境保全特別措置法第2条第1項に規定する瀬戸内海をいう。)の海浜地及びこれに面する海面のうち次の各号に該当する区域を自然海浜保全地区として指定することができる。
- (1) 水際線付近において砂浜、岩礁その他これらに類する自然の状態が維持されているもの
- (2) 海水浴、潮干狩りその他これらに類する用に公衆に利用されており、将来にわたつてその利用が行われることが適当であると認められるもの
2 次に掲げる区域については、自然海浜保全地区を指定しないものとする。
- (1) 獣保護及狩猟ニ関スル法律(大正7年法律第32号)第8条ノ8第3項に規定する特別保護地区の区域
- (2) 森林法(昭和26年法律第249号)第25条第1項に規定する保安林同項第10号及び第11号に係るものに限る。)の区域
- (3) 都市公園法(昭和31年法律第79号)第2条第1項に規定する都市公園の区域
- (4) 自然公園法(昭和32年法律第161号)第2条第1号に規定する自然公園の区域
- (5) 河川法(昭和39年法律第167号)第6条第1項に規定する河川区域及び同法第56条第1項に規定する河川予定地の区域
- (6) 都市計画法(昭和43年法律第100号)第4条第6項に規定する都市計画施設(公園又は緑地に限る。)の区域及び同法第8条第1項第7号に規定する風致地区の区域
- (7) 自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第14条第1項に規定する原生自然環境保全地域、同法第22条第1項に規定する自然環境保全地域及び同法第45条第1項に規定する都道府県自然環境保全地域の区域
- (8) 都市緑地保全法(昭和48年法律第72号)第3条第1項に規定する緑地保全地区の区域
- 3 知事は、自然海浜保全地区を指定しようとするときは、あらかじめ、関係市町村長及び〇〇県(府)自然環境保全審議会の意見を聴かなければならない。
- 4 知事は、自然海浜保全地区を指定しようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その旨を公告し、その案を当該公告の日から2週間公衆の縦覧に供しなければならない。
- 5 前項の規定による公告があつたときは、利害関係人は、同項の縦覧期間満了の日までに、縦覧に供された案について、知事に意見書を提出することができる。
- 6 知事は、自然海浜保全地区を指定する場合には、その旨及びその区域を公報で公示しなければならない。
- 7 自然海浜保全地区の指定は、前項の規定による公示によつてその効力を生ずる。
- 8 市町村長は、当該市町村の区域において自然海浜保全地区として指定することが適当であると認められる区域があるときは、知事に対し、その旨を申し出ることができる。
- 9 第3項から前項までの規定は、自然海浜保全地区の指定の解除及び区域の変更について準用する。
(行為の届出)
第6条 自然海浜保全地区内において次の各号に掲げる行為をしようとする者は、知事に対し、規則で定めるところにより、行為の種類、場所、施行方法及び着手予定日その他規則で定める事項を届け出なければならない。
- (1) 建築物その他の工作物を新築し、改築し、又は増築すること。
- (2) 土地(海底を含む。)の形質を変更すること。
- (3) 鉱物を堀採し、又は土石を採取すること。
- (4) 前各号に掲げるもののほか、自然海浜保全地区の保全及び適正な利用に支障を及ぼすおそれがある行為で規則で定めるもの
- 2 国の機関、地方公共団体その他規則で定める法人が行う行為については、前項の届出を要しない。この場合において、その行為をしようとする者は、あらかじめ、知事に通知しなければならない。
- 3 第1項に規定する届出又は前項に規定する通知が必要な行為で次に掲げる許可等を要するものについては知事に対し当該許可、免許、認可若しくは承認の申請届出、通知又は協議があつたときは、第1項に規定する届出又は前項に規定する通知があつたものとみなす。
- (1) 公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第2条第1項の規定による免許、同法第13条ノ2(同法第42条第3項ただし書き前段の規定において準用する場合を含む。)の規定による許可及び同法第42条第1項の規定による承認
- (2) 国有財産法(昭和23年法律第73号)第18条第3項の規定による許可
- (3) 漁港法(昭和25年法律第137号)第37条第1項又は第39条第1項の規定による許可及び同法第39条第4項の規定による協議
- (4) 港湾法(昭和25年法律第218号)第37条第1項又は第56条第1項の規定による許可、同法第38条の2第1項若しくは第4項又は第56条の3第1項の規定による届出、同法第38条の2第9項又は第56条の3第3項の規定による通知及び同法第37条第3項、同法第56条第3項の規定において準用する場合を含む。)の規定による協議
- (5) 採石法(昭和25年法律第291号)第33条又は第33条の5の規定による認可
- (6) 森林法第10条の2第1項又は第34条第2項(同法第44条の規定において準用する場合を含む。)の規定による許可
- (7) 海岸法(昭和31年法律第101号)第7条第1項又は第8条第1項の規定による許可及び同法第10条第2項の規定による協議
- (8) 砂利採取法(昭和43年法律第74号)第16条又は第20条第1項の規定による認可
- (9) 前各号に掲げるもののほか、第1項に掲げる行為に係る法令の規定に基づく許可、免許、認可、承認届出、通知又は協議で規則で定めるもの
- 4 次の各号に掲げる行為については、第1項及び第2項の規定は、適用しない。
- (1) 非常災害のために必要な応急措置として行う行為又は災害復旧のために必要とする行為
- (2) 海岸法第2条第1項に規定する海岸保全施設に関する工事に係る行為
- (3) 治山治水緊急措置法(昭和35年法律第21号)第2条第1項に規定する治山事業の施行に係る行為
- (4) 港湾法第2条第5項第9号の3に規定する港湾環境整備施設の建設又は改良に関する港湾工事に係る行為、都市計画法第11条第1項に規定する都市施設(同項第2号に掲げるものに限る。)の整備に関する都市計画事業の施行に係る行為その他自然海浜保全地区の保全及び適正な利用に資する行為で規則で定めるもの
- (5) 通常の管理行為又は軽為な行為のうち自然海浜保全地区の保全及び適正な利用に支障を及ぼすおそれがないもので規則で定めるもの
- (6) 自然海浜保全地区が指定され、又はその区域が拡張された際既に着手していた行為
(勧告等)
第7条 知事は、前条第1項の規定による届出があつた場合において、自然海浜保全地区の保全及び適正な利用のために必要があると認めるときは、その届出をした者に対し、必要な勧告又は助言をすることができる。
2 知事は、前条第2項の規定による通知があつた場合において、自然海浜保全地区の保全及び適正な利用のために必要があると認めるときは、その通知をした者に対し、意見を述べることができる。
(勧告に基づき講じた措置の報告)
第8条 知事は、前条第1項の規定による勧告をした場合において、必要があると認めるときは、その勧告を受けた者に対し、その勧告に基づいて講じた措置について報告を求めることができる。
(周知のための措置)
第9条 県(府)は、自然海浜保全地区の指定があつたときは、その地区内に自然海浜保全地区である旨を表示した標識を設置する等周知のために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
(清潔の保持)
第10条 県(府)及び市町村は、自然海浜保全地区内の海水浴場、遊歩道その他の公共の場所について、当該公共の場所の管理者と協力して、その清潔を保持するよう努めるものとする。
2 何人も、ごみその他の汚物又は廃物を捨て、又は放置する等自然海浜地区を汚す行為をしてはならない。
(罰則)
第11条 第6条第1項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者は、〇〇円以下の罰金に処する。
2 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して前項の違反行為をしたときは、その法人又は人に対して同項の刑を科する。