法令・告示・通達

湖沼水質保全特別措置法の施行について

公布日:昭和60年07月31日
環水管174号

(各都道府県知事あて環境庁水質保全局長通達)

 標記の件については、昭和六〇年七月三一日付け環水管一七三号をもつて環境事務次官名により通達したところであるが、同通達において別途通達することとされた事項については、左記により運用することとされたい。

一 指定湖沼の指定の申出について

  湖沼水質保全特別措置法(以下「法」という。)第三条第一項の規定に基づき内閣総理大臣に対し指定湖沼の指定について申し出るに当たつては、次の資料を添付することとされたい。

  1.  ① 当該湖沼の水質の状況、水の利用状況等からみて特に総合的な施策を必要とする理由
  2.  ② 法第三条第四項に基づく関係市町村長の意見書の写し
  3.  ③ 当該湖沼の集水域の範囲等を示す地図
  4.  ④ その他当該湖沼の水質保全に関する既存計画の概要等参考となるべき事項

二 湖沼水質保全計画の策定について

  湖沼水質保全計画の策定については、湖沼水質保全基本方針(以下「基本方針」という。)及び環境事務次官通達によるほか、指定湖沼・指定地域の実情を踏まえつつ、次に定めるところによられたい。

 (一) 湖沼の水質保全に関する方針

   計画の期間を定めるとともに、法第七条第一項の水質項目に関し、計画期間内において実施可能な対策を踏まえた目標を掲げるものとする。

 (二) 湖沼の水質保全に資する事業

  ① 下水道、し尿処理施設等の整備

    下水道の整備に関しては、処理人口をもつて整備目標を示すとともに、原則として計画策定時において事業採択がなされている下水道(高度処理施設を含む。)について必要な事項を記述するものとする。
    し尿処理施設等の整備に関しては、原則として整備目標はし尿単独処理施設についてはし尿処理量、地域し尿処理施設及び農業集落排水施設については処理人口により示すとともに、計画策定時において整備可能と見込まれる施設について必要な事項を記述するものとする。なお、農業集落排水施設については、地方公共団体又は土地改良区の設置するもののほか、農業協同組合等の設置するものが考えられるので、その整備の促進についても配慮されたい。

  ② しゆんせつその他の浄化対策

    しゆんせつ、ばつ気、導水、水草除去等の浄化対策に関し、指定湖沼、流入河川等の状況に応じつつ、計画策定時点において実施が見込まれる具体的な対策の推進方針を記述するものとする。

 (三) 湖沼の水質保全のための規制その他の措置

  ① 工場・事業場排水対策

    排水規制、新増設に係る汚濁負荷量の規制等の規制措置及び規制対象外事業場に係る指導等の措置について、それぞれ推進方針を記述するものとする。なお、新増設に係る汚濁負荷量の規制基準の設定等については、三に示すところによられたい。

  ② 家庭排水対策

    浄化槽の設置・管理の適正化、生活雑排水の適正処理の促進その他各家庭に対する指導等の措置について、それぞれ推進方針を記述するものとする。

  ③ 畜産業及び魚類養殖に係る汚濁負荷対策

    排水規制、管理に関する規制、指導等の措置について、それぞれ推進方針を記述するものとする。なお、管理に関する規制基準の設定等については、四に示すところによられたい。

  ④ その他の汚濁負荷対策

    その他の面源負荷のうち、農地からの流出負荷に関しては、その実態把握に努めつつ、実施可能な営農上の措置について、推進方針を記述するものとする。なお、農地から流出する汚濁負荷については、農地が浄化能をもつほか、地形、土壌、降雨等の諸条件によつても変動するものであることにかんがみ、その実態の科学的な把握に努められたい。
    また、市街地等から降雨等に伴い流出する汚濁負荷に関しても実態把握に努めつつ小水路、宅地等の清掃等の実施に関する地域住民その他の関係者に対する啓発等の措置についての推進方針を記述するものとする。

  ⑤ 緑地の保全その他湖辺の自然環境の保護

    指定湖沼の水質保全に資する観点から合理的な範囲で定めることとし、既存の都市計画等関連する諸計画との整合を図るとともに、具体的な措置についてはその種類及びおおむねの位置等を記述するものとする。

三 湖沼特定事業場に係る汚濁負荷量の規制について

 (一) 化学的酸素要求量に係る規制基準の基本式

   湖沼水質保全特別措置法施行規則(以下「規則」という。)第二条第一項においては、化学的酸素要求量に係る法第七条第一項の規制基準の基本となる算式が次のように示された。
  1号式(新設事業場の場合)
   L=a・Qb×10-3
  2号式(既設事業場の場合)
   L={a・Qb-1・(Q-Q0)+C・Q0}×10-3
   この式において、Lは排出が許容される汚濁負荷量(kg/日)、Qは排出水の量(m3/日)、Q0は規制基準の適用の際における排出水の量(m3/日)、aは都道府県知事が水質汚濁防止法に基づく排水基準を勘案して定める定数、bは0.8以上1.0未満の範囲内で、都道府県知事が湖沼特定事業場の規模別の分布の状況等を勘案して定める定数、Cは排出水に適用される水質汚濁防止法に基づく排水基準(mg/l)をそれぞれ表わす。
   新設事業場に係る一号式は、水質汚濁防止法に基づく一定の濃度規制たる排水基準による規制の実施を前提として、排出水量に応じこれが大となるほど濃度に換算した場合の許容限度が厳しくなるような規制基準の式として定められたものである。
   また、既設事業場に係る二号式は、規制基準の適用の際の排出水量に対しては水質汚濁防止法の排水基準に適合する負荷量を許容するとともに、規制基準の適用の日以後において増加することとなつた排出水の量に対しては一号式と同等の許容限度を設定する趣旨から定められたものである。

 (二) 規制基準の設定及び適用に当たつての留意事項

  ア 前記一号式及び二号式による規制基準の設定に当たつては、次の点に留意されたい。
  1.    ① 規制基準は、湖沼特定事業場の規模の下限である日平均排水量の五〇立方メートルの状態でその厳しさが水質汚濁防止法に基づく排水基準(同法第三条第三項の上乗せ排水基準を含む。以下同じ。)と同等になるように設定すること。
  2.    ② 規制基準は、排出水量が大となるほど排水基準に対する削減が厳しくなるものであることにかんがみ、排出水量の規模別の事業場の分布状況及び排水基準のレベルを勘案の上、技術的・経済的な対応可能性も十分配慮してこれを設定すること。このため、必要に応じ業種その他の区分ごとに、a値及びb値を定めること。
  イ Q及びQ0の排出水量は、通常の操業状態における最大の量として、水質汚濁防止法施行規則第三条第三項第五号イに規定する排出水の最大の量をもつて適用されたい。

    なお、特に既設事業場については、規制基準の適用の際における排出水の量Q0の的確な把握に努められたい。

  ウ 二以上の工場又は事業場から排出される水の処理を行う共同排水処理場については、規則第二条第三項に規定するとおり、個々の排出事業場が自ら汚水等の処理を行い公共用水域に排出する場合と同等の規制基準を定めることとされた。この場合における排出事業場の排水量も通常の操業状態における最大の量となるが、具体的な値は湖沼特定事業場たる共同排水処理場を通じて把握されたい。
  エ 汚濁負荷量の規制基準は、水質汚濁防止法に基づく排水基準のレベルと密接な関係があることにかんがみ、上乗せ排水基準を改定する際には、これによる効果、技術的・経済的な対応可能性をも考慮の上、汚濁負荷量の規制基準を適切に見直しすることとされたい。

四 指定施設・準用指定施設に係る管理規制について

 (一) 対象施設の要件

   指定施設たる豚房、牛房及び馬房は特定施設の規模に満たない一定面積のものとして定められている(湖沼水質保全特別措置法施行令(以下「令」という。)第六条第一号)が、これの面積の算定については昭和四七年一〇月五日付け環水管第六二号本職通知によるものとする。なお、特定施設たる畜房のうち生活環境項目に関し水質汚濁防止法の排水基準の適用のないものについては、準用指定施設として指定施設と同様の規制の対象となることに留意されたい。
   指定施設たるこいの養殖施設は、網いけすの総面積が五〇〇平方メートルを超えるものとして定められている(令第六条第二号)。こいの養殖については、従来排水規制の対象になつていないが、給餌が行われることに着目して指定施設とされたものである。網いけすに係る面積要件については、一の漁場において一の経営体がこいの養殖を目的として設置する網いけすの総面積によるものとする。

 (二) 指定施設に係る届出

   指定施設については、本法に基づき、河川法第二六条の許可を受けている場合を除き、新たに届出制が設けられることとなる。これらの届出の内容等については規則第四条から第九条までに規定するとおりであるが、規則所定の届出書において別紙によることとされた事項については、別添の様式により必要な事項を把握することとされたい。

 (三) 構造及び使用の方法に関する規制基準の設定等

   法第一九条の規制基準は、規則別表(第一〇条関係)に掲げる事項について、都道府県知事が定めることとされている。これらの規制基準の設定に当たつては、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、建築基準法等関係法令の規定に基づく規制基準に抵触する内容とならないよう配慮されたい。
   また、法第二〇条の改善勧告又は改善命令を行う場合に、その内容が河川法第二六条の許可の条件に関連する等河川管理に影響を及ぼすおそれがあるものであるときは、あらかじめ河川管理者に十分連絡されたい。なお、このことは法第二四条の指導等についても同様とされたい。

五 関係機関との調整等

  •  ア 本法に基づく指定湖沼の指定の申出、湖沼水質保全計画の策定、各種規制基準の設定等に際しては、本法に定める手続きはもとより、指定湖沼に係る河川管理者、関係港湾管理者、関係漁港管理者、関係土地改良区等土地改良事業の実施主体、関係漁業団体等、都道府県の国土利用計画・土地利用基本計画担当部局、水資源・水源地域担当部局、衛生担当部局、水道担当部局、農林水産担当部局、商工担当部局、工業用水道担当部局、河川担当部局、下水道担当部局、建築担当部局、都市計画担当部局等の関係部局及び関係市町村(関係部局を含む。)と十分な協議・調整を図られたい。
  •  イ 湖沼水質保全計画に関し法第四条第四項の規定により協議を行うべき河川法第七条の河川管理者とは、指定湖沼が一級河川である場合には、同法第九条第二項の指定区間を含めて建設大臣であることに留意されたい。建設大臣への協議は、管轄の地方建設局(北海道にあつては、北海道開発局)を通じて行うこととされたい。なお、法第一五条から第二〇条までの規定の運用に当たつては、一級河川の指定区間については、河川法第九条第二項により管理の一部を委任された都道府県知事が河川管理者に当たるものとして取り扱われたい。
  •  ウ 法第二三条に規定する汚濁負荷量の総量の削減に関しては、指定湖沼に指定された湖沼の実情を踏まえて検討することとしており、関連の政令等が整備された段階で、必要な事項を通達する予定である。