法令・告示・通達
PCB等を焼却処分する場合における排ガス中のPCBの暫定排出許容限界について
環大企141号
(各都道府県知事あて環境庁大気保全局長通達)
塩素化ビフエニール(以下「PCB」という。)による環境汚染は、近年世界的に注目されているが、わが国においてもPCBの生産および輸入が中止され、さらにすでに感圧複写紙などの開放系でのPCBの使用はすべて中止され、回収がつとに進められているところである。また大型コンデンサー、トランスなどで使用が限定的に認められている閉鎖系でのPCBも使用後すべて回収されることとなつている。
したがつて、この回収されたPCB等(PCBおよびPCBを含有する物をいう。以下同じ。)の保管時における事故等を考えると、これをより安全に処理することは、現在の課題となつている。
PCBの処理の方法としては、焼却熱分解、紫外線分解、微生物分解、埋没等があるが、現段階においてPCBを分解消滅させる方法としては、焼却熱分解による方法が最も効果的と考えられている。しかしながら、これを不用意に行なうことは、大気汚染等を招来する恐れがあるので、関係機関においてPCBの安全な焼却技術の開発がすすめられているところである。
以上のような現状にかんがみ当局においては、かねてから専門学者によるPCB対策検討委員会を設けPCB等の焼却に伴う大気中へのPCBの排出に関し、現在までに得られた知見にもとづき安全性の確保に立脚した排出許容限界の検討を願つてきたが、この程別添Ⅰのとおり提案を得た。ついては、今後、当分の間、PCBを分解消滅させるため焼却する場合には、当該焼却に伴い排出される排ガス中のPCBが左記一の排出許容限界をこえて排出されることがないよう、左記二および三の事項に十分留意のうえ関係者に厳重なご指導をお願いしたい。
なお、今回排ガス中のPCBの排出許容限界を定めた趣旨は、回収したPCBを可能な限り分解消滅させることにあり、PCBが分解しないような焼却炉による焼却を認めるものではなく、また液状のPCBについては、その九九・九九%以下を分解処理できる焼却技術がすでに開発されているが、感圧複写紙等の焼却処理については通商産業省公害資源研究所において現在研究開発が進められている状況にあることを念のため申しそえる。
おつて本件については、関係各省庁をもつて構成するPCB汚染対策推進会議において了承済みである。
記
- 一 PCB排出許容限界
- PCB等の焼却施設から排出される燃焼排ガス中に含まれるPCBの量は、次の要件をみたすこと。
- (一) 排ガス中に含まれるPCBの量は、いかなる場合においても0.25mg/m3(液状のPCB等の焼却施設にあつては0.15mg/m3)をこえないこと。
- (二) 排ガス中に含まれるPCBの量は、平均して0.15mg/m3(液状のPCB等の焼却施設にあつては0.10mg/m3)をこえないこと。
- 二 測定方法
-
- (一) PCBの測定は、別添Ⅱの気相PCB測定要領によるものとする。
- (二) 一の(二)の平均値は、四八時間につき三回の測定を行ない、その測定値の平均をもつて算出することを原則とする。
- 三 留意事項
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- (一) 新たにPCB等の焼却を行なう場合には、事前に当該PCB等の焼却施設のPCBの分解能力、PCBの排出濃度、周辺環境濃度等について十分に調査確認すること。
- (二) PCB等の焼却を行なうに際しては、PCB等の焼却施設の排出口における排出ガスのPCBおよび当該施設周辺の環境大気中のPCBの監視測定を十分に行なうとともに、PCB等の焼却施設の維持管理の監視、指導を徹底すること。
- (三) 一の排出許容限界は、環境大気中のPCBの濃度が最悪の場合でも0.0005mg/m3をこえないものとして設定されているので、PCB等の焼却施設周辺の環境大気中のPCBの監視測定の結果万一上記濃度をこえるおそれのある場合には、当該施設において一の排出許容限界が守られている場合であつても、直ちにPCB等の焼却を中止させる等の措置を講ずること。
- (一) 新たにPCB等の焼却を行なう場合には、事前に当該PCB等の焼却施設のPCBの分解能力、PCBの排出濃度、周辺環境濃度等について十分に調査確認すること。
別表
〔略〕