法令・告示・通達
有害大気汚染物質モニタリング指針
公布日:平成9年02月12日
指針
指針
[改定]
平成10年1月19日
平成11年3月31日
有害大気汚染物質については、低濃度ではあるが多様な物質が環境大気中から検出されており、その長期曝露による健康影響が懸念されている。このため、有害大気汚染物質による健康影響の未然防止を図ることを旨として、平成八年五月に大気汚染防止法が改正され、有害大気汚染物質対策が位置づけられたところである。
このような状況を踏まえ、国においては、有害大気汚染物質の幅広い物質について全国的な大気汚染の状況を把握するためにモニタリングを実施することとしており、地方公共団体においては、物質の有害性や大気環境濃度からみて健康リスクが高いと考えられる優先取組物質について、大気汚染の状況を把握するためモニタリングを実施することが適当である。
このため、地方公共団体におけるモニタリングの詳細について以下のとおり指針を示し、有害大気汚染物質のモニタリングの実施の推進に資するものとする。
- 一 対象物質
- 地方公共団体がモニタリングを実施する対象物質は、優先取組物質のうち既に測定方法の確立している以下に掲げる物質等であって、地方公共団体における測定体制が整備されているものとする。
- アクリロニトリル
- アセトアルデヒド
- 塩化ビニルモノマー
- クロロホルム
- 酸化エチレン
- 一、二―ジクロロエタン
- ジクロロメタン
- 水銀及びその化合物
- ダイオキシン類及びコプラナPCBS
- テトラクトロロエチレン
- トリクロロエチレン
- ニッケル化合物
- ヒ素及びその化合物
- 一、三―ブタジエン
- ベリリウム及びその化合物
- ベンゼン
- ベンゾ〔a〕ピレン
- ホルムアルデヒド
- マンガン及びその化合物
- 六価クロム(当面、クロム及びその化合物を測定)
重金属及びその化合物は、個別の物質によって健康リスクが異なると思われるが、現時点では、これらを物質ごとに選択してモニタリングを実施することが不可能であるため、その全量を測定するものとする。六価クロムについては、現時点では測定が困難であるため、当面、クロムの全量を測定するものとする。 - 二 測定地点等
- モニタリングの実施に当たっては、区域の有害大気汚染物質による大気汚染の状況を適切に把握することが重要である。このため、区域を一般環境、固定発生源周辺及び沿道に地域分類し、それぞれの地域ごとに地点を選定するものとする。地点選定の考え方は、以下のとおりとする。
- 一) 一般環境
- 固定発生源等の直接の影響を受けない通常人が居住しうる地域において、人口、土地利用状況等によって地域を分類し、それぞれの地域ごとに、地点を選定するものとする。それぞれの地域ごとに地点を選定することが困難な場合には、区域内において生活する人口をより多く網羅しうる地点を優先的に選定するものとする。
一般環境においては、対象物質のすべてについてモニタリングを実施するものとする。
また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続してモニタリングを実施するものとする。 - 二) 固定発生源周辺
- 通常人が居住しうる地域のうち、固定発生源の集中する地域又は比較的大きな固定発生源が存在する地域において、固定発生源からの有害大気汚染物質の排出状況の影響を直接受けると考えられ、かつ移動発生源の直接の影響を受けないと考えられる地点を選定するものとする。地点の選定に当たっては、発生源における有害大気汚染物質の製造・使用状況、気象条件及び地理的条件を勘案して、排出等が予想される物質の濃度が高くなる地点を選定することが望ましい。
固定発生源周辺においては、周辺の固定発生源で製造・使用され、排出等がされると考えられる物質についてモニタリングを実施するものとする。
また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続してモニタリングを実施するものとする。しかし、固定発生源はそれぞれ有害大気汚染物質の製造・使用状況等が異なることが考えられるため、ある地点におけるモニタリング結果から他の地点における大気汚染の状況を推測することは難しい。このため、区域の多くの固定発生源周辺地域において、年度ごとに地域を変えてモニタリングを実施し、区域全体の大気汚染の状況を把握することも有効である。 - 三) 沿道
- 固定発生源の直接の影響を受けない通常人が居住しうる地域において、車種別交通量、走行速度、気象条件及び地理的条件を勘案して、自動車からの排出が予想される有害大気汚染物質の濃度が高くなる地点を選定するものとする。自動車の定常走行時と発進・加速時とでは、有害大気汚染物質の排出状況が異なることが考えられるため、交差点とそれ以外の沿道の両方で測定を行うことが望ましい。
沿道においては、自動車からの排出が予想されるアセトアルデヒド、一、三―ブタジエン、ベンゼン、ベンゾ〔a〕ピレン及びホルムアルデヒド等についてモニタリングを実施するものとする。
また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続してモニタリングを実施するものとする。
- 三 測定頻度等
- 長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質のモニタリングにおいては、原則として年平均濃度を求めるものとする。
有害大気汚染物質の排出等は、人の社会・経済活動に密接に関係しているため、季節変動、週内変動及び日内変動が認められる。モニタリングに当たって、これらの変動が適切に平均化されるよう、原則として月一回以上の頻度で測定を実施するものとする。その際、連続二四時間のサンプリングを実施し、日内変動を平均化するものとする。さらに、サンプリングを実施する曜日が偏らないようにし、週内変動を平均化することが望ましい。
サンプリング方法及び対象物質によっては、連続二四時間のサンプリングによると破過する場合があるが、この場合はサンプリングを数回に分けて連続して行うものとする。
なお、ダイオキシン類の測定頻度については、季節変動が平均化されるよう季節ごとに測定することが望ましいが、少なくとも夏期及び冬期に測定する必要がある。 - 四 試料採取口高さ
- サンプリングにおける試料採取口の地上高さは、粒子状でない物質については、原則として、通常人が生活しうる高さである地上一・五mから一〇mにおいて行うものとする。粒子状の物質については、地上からの土砂の巻上げ等による影響を排除するため、原則として、地上三mから一〇mの高さにおいて行うものとする。なお、高層集合住宅等地上一〇m以上の高さにおいて人が多数生活してる実態がある地域においては、その実態を勘案し、試料採取口の高さも選択するものとする。
- 五 実施計画
- 地方公共団体においては、年度を単位とする有害大気汚染物質モニタリング実施計画を作成し、計画的にモニタリングを実施するものとする。その際、都道府県と区域内の政令市は、相互に連携して効率的な実施計画を作成するものとする。
実施計画においては、以下の事項を定めるものとする。
- ① 測定地点
- ② 対象物質
- ③ 測定頻度及び測定時期
- ④ 測定方法の概要
- ⑤ 測定結果の公表方法とその時期
- ⑥ その他必要な事項
- 六 測定値の取扱い
- 一) 年平均値の算出
モニタリング結果を評価する際には、地点ごとに、測定値を算術平均した年平均値によって評価するものとする。十分な測定頻度でモニタリングを実施できなかった場合又は欠測が多く測定値の得られた季節が偏っている場合等は、結果の評価に際し留意する必要がある。
二) 異常値の取扱い
これまでの測定結果等から判断して、極端に高い若しくは低いと考えられる測定値が得られた場合又は前回の測定値と比較して極端に測定値が変動している場合には、その測定値は異常値である可能性がある。このときは、サンプリング、試料の輸送、前処理、機器分析という一連の作業に問題がないかを確認し、問題がない場合には、サンプリング時の周囲の状況に通常考えにくい事象等がなかったかを確認するものとする。以上の情報を総合的に勘案して、異常値と考えられる場合には、測定値は欠測とするものとする。
なお、異常値の可能性がある測定値が得られた場合には、可能な限り速やかに再測定を行うことが望ましい。 - 七 精度管理
- 有害大気汚染物質の測定は、サンプリング、試料の輸送、前処理、機器分析といった一連のバッチ処理によって行われることが通常であり、有効な測定を行うため、それぞれの作業及び機器の管理等を適切に実施するものとする。また、作業に係る情報等を記録し、測定が終了した後に精度管理が十分にされているかを記録によって確認できるようにするものとする。
- 八 モニタリング結果の評価及び公表
- ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンのモニタリング結果の評価方法は、平成九年二月一二日付環大企第三七号によるものとし、ダイオキシン類のモニタリング結果の評価方法は平成九年九月一二日付環大規第二二四号、環大企第三一八号により通知した大気環境指針と比較することによるものとする。
モニタリング結果の公表については、モニタリングを実施した年度の翌年度に定期的に行うものとする。なお、事業者及び事業者団体の自主管理促進に資するため、自主管理指針対象物質の製造・使用等を行っている事業者及び事業者団体からモニタリング結果を求められた場合は、これに応じるものとする。