法令・告示・通達

大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について

公布日:昭和46年08月19日
環大企3号

環境事務次官から各都道府県知事・政令市長あて

 大気汚染防止法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)は、第64回国会において成立し、昭和45年12月25日法律第134号をもつて公布され、本年6月24日から施行された(大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(昭和46年政令第190号))。これに伴つて、本年6月17日大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令が政令第191号をもつて、同年6月22日大気汚染防止法施行規則が厚生省・通商産業省令第1号をもつて、燃料使用に関する基準が厚生省・通商産業省告示第1号をもつて、同年6月23日大気汚染防止法第21条第1項の規定に基づく自動車排出ガスによる大気汚染の限度を定める命令が総理府・厚生省令第2号をもつて、自動車排出ガスの量の許容限度を定める等の件が運輸省告示第221号をもつて公布され、同年6月24日から、それぞれ施行された。これらの法令の施行に伴い、大気汚染防止法の規定に基づく指定地域に係る排出基準(昭和43年厚生省・通商産業省告示第2号)および自動車排出ガスの量の許容限度(昭和45年運輸省告示第195号)は、廃止された。
 本改正法は、最近において大気の汚染が広域化、多様化している現状にかんがみ、大気の汚染の早急な改善とその防止対策の徹底を期するため、公害対策基本法その他の関係法令の改正とあいまつて、改正法による改正前の大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「旧法」という。)に基づく諸施策の大幅な拡充強化を図る趣旨から制定されたものである。
 このような改正法の制定の趣旨にかんがみ、国民の健康で文化的な生活を確保することはもちろん、国民の大気汚染防止対策に寄せる強い期待にこたえるためにも、改正法による改正後の大気汚染防止法(以下「法」という。)の厳正かつ実効性のある施行について、下記の事項に十分ご留意のうえ格段のご協力を願いたく、命により通達する。
 なお、旧法は厚生省、通商産業省および運輸省において所管されてきたが、このたび環境庁設置法が制定され、法の施行は7月1日より、環境庁において一元的に行なわれることとなつたので、今後は環境庁との緊密な連携のもとに、大気汚染防止対策の推進にあたられたい。
 おつて、昭和43年12月27日厚生省環第834号、43企第6812号、自動第1389号の貴職あて通知「大気汚染防止法の施行について」は、廃止する。

第1 主要な拡充強化事項

  改正法により、新たに拡充強化された事項のうち主要なものは、第1に旧法の目的規定における「生活環境の保全と産業の健全な発展との調和が図られるようにするものとする」旨の規定を削除したこと、第2に旧法の指定地域制度を廃止し、全国のすべての地域に規制を及ぼすこととしたこと、第3に大気汚染の原因となるものとして規制の対象とする物質および施設の範囲を拡大したこと、第4に排出基準に適合しないばい煙の排出に対し、直罰主義を導入する等違反に対する措置を強化したこと、第5に燃料使用量の季節的増加によりいおう酸化物による著しい大気の汚染が生ずるおそれのある地域に燃料使用に関する規制を導入したこと、第6に緊急時の措置を強化したこと、第7に地域の実情に応じた公害防止の総合的対策を行なえるよう都道府県の権限を強化したことである。

第2 目的規定の改正に関する事項

  旧法における目的規定は経済優先という誤解を生じがちであつたので、本法では産業との調和条項を削除し、積極的に国民の健康と生活環境を保全するという観点から、大気汚染の防止を図ることを明らかにしており、貴職におかれても人の健康と生活環境の保全の見地から、大気汚染防止の施策の推進に一層配意されたい。
  なお、本法に用いられる生活環境の定義は、公害対策基本法第2条第2項の定義と同一であるので運用上留意されたい。

第3 ばい煙の排出の規制に関する事項

 1 ばい煙の範囲拡大

   旧法においてばい煙は、いおう酸化物およびばいじんのみであつたが、今回ばい煙として規制する物質の範囲を拡大し、カドミウム、塩素、弗化水素、鉛、窒素酸化物等の有害物質を加えた。
   なお、大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号。以下「令」という。)第1条で定められた有害物質は、とりあえず法の例示物質を中心として特定されたものであり、有害物質として常時規制する必要がある物質については今後、逐次追加することとしている。

 2 ばい煙発生施設について

  (1) ばい煙発生施設の範囲の拡大

    ばい煙発生施設は、従来ばい煙を多量に発生する施設とされていたが、今回規制対象物質の拡大および最近の大気汚染の実態にかんがみ、ばい煙を発生し、排出する施設のうちその施設から排出されるばい煙が大気汚染の原因になるものに改め、その範囲を拡大した。また、ばい煙発生施設の種類を追加し、有害物質に係るばい煙発生施設については小規模の施設も対象とした。

  (2) ばい煙発生施設に係る指導等

    新たにばい煙発生施設となつたものについては、すみやかに所要の届出を行なわせるとともに、すでに設置の届出等がなされている施設についても、今回法第26条に基づき拡充された届出事項について報告徴収を行うこと等により施設の実態把握に努められたい。
    なお、ばい煙発生施設の設置または変更の場合には、事前の計画段階における指導が未然防止の見地からも重要であるので十分届出事項を審査し、所要の措置を行なうように努められたい。

 3 排出基準に関する事項

  (1) いおう酸化物

    いおう酸化物の排出基準が、全国に適用されることとなつたことに伴い、旧法の指定地域外の地域においては、とりあえず、当該地域の汚染の程度および将来の推移等を勘案して従来からの8段階の排出基準に区分して設定した。なお、大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省、通商産業省令第1号。以下「規則」という。)附則第2項により、規則第3条に規定する算式と同一の算式をとつており、かつ、規則の基準よりも厳しい数値を設定している地方公共団体の条例または規則がある場合は、当分の間、当該条例または規則による数値が適用され、従来からの規制が緩和されないよう配慮している。
    おつて、いおう酸化物の排出基準は、ばい煙発生施設の総点検を実施し、汚染状況、低いおう燃料の需給等を勘案したうえで、本年12月にその強化を行なう予定である。このため、貴職におかれては、対象工場または事業場に対する指導に際し、この旨を十分ご承知のうえ、ばい煙の処理の方法等の改善等の指導にあたられたい。

  (2) ばいじん

    ばいじんの排出基準は、従来の基準を大幅に強化するとともに、大規模のものにはより厳しい基準を設定したので、今後はばいじんによる大気汚染は著しく改善されると考えられる。なお、当該基準によつても人の健康と生活環境を保全するため不十分な地域がある場合には、都道府県は、条例によりさらに厳しい基準を設定しうるものである。

  (3) 有害物質

    有害物質の排出基準は、窒素酸化物を除いた物質について定め、いずれも人の健康と生活環境に被害を生ずるおそれのないようにその水準を設定したが、なお、地域の実情に応じ、前記(2)と同様に都道府県の条例によりより厳しい基準を設定しうるものである。

  (4) 特定有害物質

    特定有害物質は、現在未指定であるが、今後窒素酸化物を指定してその排出基準を設定することを予定している。なお、現在窒素酸化物に係る公害対策基本法に基づく環境基準について検討しているが、これとあわせて排出の実態、除去方法等を検討し、できるだけ早い機会に特定有害物質として指定し、その排出基準を設定することとしている。

 4 特別排出基準

   ばい煙に係る特別排出基準は、新たに設置されるばい煙発生施設についてのみ適用されるより厳しい排出基準であり、施設の集合地域であつて令第6条に規定する限度をこえる大気汚染を生じ、または生ずるおそれがある地域に限つて設定されるものである。令第6条は、いおう酸化物についてはいおう酸化物に係る環境基準、ばいじんについては四日市地域等に係る公害防止計画における目標値に相当する大気汚染の程度をもつて限度値と定めている。これに伴い、いおう酸化物に係る特別排出基準の適用地域が追加拡大され、ばいじんに係る特別排出基準の適用地域が新たに指定されることとなつた。特別排出基準は大気汚染の著しい地域におけるばい煙対策として重要であるので、今後とも、所定の方法により大気汚染の状況の把握およびその資料の整備に一層配慮されたい。

 5 条例による排出基準

   都道府県は、いおう酸化物以外のばい煙について規則で定める排出基準では大気汚染防止上不十分であると認められる地域があるときは、当該排出基準にかえて適用すべきより厳しい許容限度を定める排出基準(以下「上のせ基準」という。)を、令第7条第1項に規定する排出基準の設定方式により条例で定めることができる。この場合、大気汚染に係る環境基準が定められているときには、その環境基準が維持されるため必要かつ十分な程度の許容限度を定めなければならない。
   なお、大気汚染に係る環境基準が定められないばい煙については、都道府県において適宜大気の汚染防止の目標を設定のうえ、上のせ基準を設定することとなる。
   また、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づき指定された対策地域におけるカドミウム等同法に基づく特定有害物質による農用地の土壌の汚染を防止するためには、当該物質につき大気汚染に係る環境基準が設定されている場合であつても、当該大気環境基準を基準とせずに上のせ基準を設定できることとされているので、留意されたい。
   この上のせ基準の趣旨は、地域の実情に応じたきめ細かなばい煙の規制が行われることを期待しているものであるから、貴職におかれては常時大気汚染の状況を把握し、必要な地域があればすみやかに上のせ基準を定める条例の立案等所要の措置を講ぜられたい。
   なお、いおう酸化物については、現段階においては、全国的視野から、低いおう燃料の供給計画の下に計画的に環境基準を達成していく必要があるので、上のせ基準の設定を認めないこととしているが、政府としても今後一層燃料の低いおう化を推進するとともに、地域におけるいおう酸化物対策については十分都道府県知事の意見をきくこととし、できる限り地域の実情に応じた排出基準の改訂、燃料規制地域の拡大等を図つていく考えである。
   また、都道府県が上のせ基準を定める場合には、都道府県知事は、あらかじめ法第4条第3項の規定に基づき環境庁長官に通知しなければならないこととなつているので、都道府県議会に提案する前の段階でできるだけ早い機会にその原案を添えて通知されたい。

 6 発生源の監視および排出基準違反に対する措置

   改正法は、排出基準違反に対する措置について、直罰規定の整備、改善命令等(一時使用停止命令を含む。以下同じ。)の違反の場合の罰則の強化、一時使用停止命令の発動要件の緩和等大幅に改善強化を図つた。
   この趣旨は、発生源である工場または事業場に対し強い手段で臨むことにより、大気汚染の防止に万全を期そうとするものである。

  (1) 発生源の監視について

  1.    ア 法第13条第1項の排出制限違反に対するいわゆる直罰および法第14条第1項の改善命令等の措置を適正に実施するためには、発生源に対する監視体制の整備が必要であるので、専門的知識、技術を有する担当職員の養成確保に努めるとともに、監視測定機材の整備充実を図り、発生源の監視体制を人的、物的面から充実されたい。
  2.    イ 発生源への立入検査等の監視は、適切な監視の実施計画のもとに効果的に実施されたい。この場合、管内の発生源について、最低年1回以上実施するように努め、発生源の集中している地域等については特に重点的に実施するようにされたい。
  3.    ウ 地域住民からの苦情、陳情があつた場合には、すみやかに実情を調べ、必要に応じ、法の規定に基づき、報告の徴収または立入検査を実施されたい。このため、苦情、陳情の直接の窓口となる市町村や保健所その他の関係機関と連絡を密にされたい。

  (2) 直罰および改善命令等の発動について

    直罰と改善命令等との関係は、基本的には、直罰は過去の排出基準違反に対する行政罰であり、改善命令等は継続的な排出基準違反による人の健康被害と生活環境の被害を未然に防止するための行政措置である。
    直罰の適用および改善命令等の発動にあたつては、次に述べる事項に留意し、必要にして十分な措置をとるようにされたい。

   ア 直罰規定の運用について
  1.     (ア) いわゆる直罰は、行政罰であるが、刑罰であることは変りないので、当然、憲法第31条の法律の定める手続(刑事訴訟法)に従つて運用されるものである。
  2.     (イ) 排出基準違反の事実があり、直罰の適用が必要であると思われる場合には、刑事訴訟法第241条の規定に基づき検察官または司法警察員に対して告発を行なう。
          告発を行なうにあたつては、排出基準違反の事実を適確に把握し、排出基準違反を行つた工場、事業場におけるばい煙の処理の状況、排出基準違反による被害があれば、その状況等参考となる資料を十分に整備しておくことが必要である。
          直罰規定の適切な運用を図るためには、前記の諸点に留意するほか、平素から都道府県警察、地方検察庁等と密接な連絡をとられたい。
   イ 改善命令等の運用について
  1.     (ア) 改善命令等は、排出基準違反のばい煙を継続的に排出するおそれがある場合において、人の健康または生活環境の被害が現に生じていなくとも、被害が生ずると認めるときは発動し得るものである。
  2.     (イ) 改善命令と一時使用停止命令は、改正法により選択的にまたは同時に発動し得ることになつたが、これらの、措置を行なうに当たつては被害のおそれの程度、施設改善の可能性等に応じ、適切な措置をとられたい。
          なお改善命令等の処分に従わない者がある場合においては、前記アと同様告発の手続をとられたい。

第4 燃料の使用に関する措置

  都市の中心部におけるビル暖房等に起因するいおう酸化物による大気汚染に対しては、法第3条にもとづく排出基準による規制が必ずしも有効ではないので、これに対処するため改正法により新たに燃料規制が導入された。これに伴い、規制される地域の範囲(令第9条別表第4)、規制される燃料の種類(規則第14条)および燃料使用に関する基準(昭和46年厚生省・通商産業省告示第1号)が定められた。
  これにより、都道府県知事は、当該地域に係る燃料使用基準を設定し、その基準に適合しない燃料を使用している者に対しては、その遵守につき勧告または命令により是正させることとなるが、あわせていおう酸化物の排出基準に違反している者に対しては、前記第3の6の(2)の措置をとることもできるものである。当該地域を管轄する都道府県知事にあつては、この改正の趣旨に沿つてすみやかに燃料使用基準を設定し、あらかじめ対象事業場等に周知を図ることにより、燃料規制の円滑な実施を期されたい。

第5 粉じんに関する規制

  改正法により、新たに物の破砕、選別等の機械的処理またはたい積等に伴い飛散する粉じんについて規制を行なうこととし、これに伴い粉じん発生施設に係る構造等に関する基準(規則第16条)が設定された。粉じんの規制は、新しい措置であるので、所定の届出を行なわせることにより、粉じん発生施設の実態の把握に努めるとともに、改善を必要とする施設も多いと考えられるので、事前の指導を十分行ない、粉じんの規制の円滑な実施を期されたい。

第6 自動車排出ガスに関する規制

 1 自動車排出ガスの範囲の拡大

   近年における自動車交通量の著しい増加に伴い、深刻化してきた自動車排出ガスによる大気の汚染を防止するため、旧法による自動車排出ガスの定義を改め、一酸化炭素のほかに炭化水素、鉛化合物、窒素酸化物を加え、総合的な自動車排出ガス対策を講じてゆくこととしている。なお、これらの物質に係る許容限度については、排出防止技術および測定技術の開発の状況を考慮して、当面一酸化炭素および炭化水素についてのみ設定しているが(昭和46年6月運輸省告示第221号)、今後残りの物質を含めて自動車排出ガスの許容限度の強化を計画的に推進することとしている。

 2 公安委員会に対する要請

   都道府県知事は交差点等において法第20条の規定に基づく測定を行なつた場合において自動車排出ガスによる大気の汚染が総理府令(昭和46年総理府・厚生省令第2号)で定める限度をこえていると認められるときは、法第21条第1項の規定に基づき、都道府県知事が都道府県公安委員会に対し、道路交通法(昭和35年法律第105号)の規定による措置をとるべきことを要請する制度が設けられた。これは緊急時の場合と異なり、経常的に自動車排出ガスによる大気の汚染が生じている交差点周辺等における対策であるので、道路交通法の措置も相当長期間にわたつて講ぜられるべきものである。
   したがつて、要請を行なうに当つては、この趣旨に沿つて、あらかじめ都道府県公安委員会と協議のうえ、汚染の程度、その変動状況その他必要な資料を添附するようされたい。

第7 緊急時の措置について

 1 緊急時の措置の拡充

   最近のばい煙および自動車排出ガスによる大気の汚染の深刻化に伴い、人の健康および生活環境に係る被害の発生を未然に防止するため、改正法によつて緊急時の措置について大幅な改善強化が図られた。旧法の緊急時の措置は、ばい煙に起因する大気汚染の場合に限られていたが、本法においては、ばい煙を排出する者のほか自動車排出ガスについても対象としている。
   また、気象条件の影響により大気の汚染が急激に著しくなり、人の健康または生活環境に重大な被害が生ずる事態が発生する場合には、ばい煙に起因する場合にあつてはばい煙排出者に対し必要な措置を命令し、自動車排出ガスに起因する場合にあつては道路交通法の規定による措置をとるべきことを都道府県公安委員会に要請することとしている。
   いおう酸化物、浮遊粒子状物質、一酸化炭素、二酸化窒素およびオキシダントについて、緊急時の措置を発動すべき大気汚染の程度が、法第23条第1項および第4項の場合に分けて令第11条により定められたので、これらの物質による大気汚染の状況につき常時監視測定を行ない、適正な措置をとりうる体制を早急に整備されたい。

 2 緊急時の措置

   法第23条第1項または第4項による措置をとるにあたつては、令第11条で定めるように気象条件からみて大気の汚染の状態が継続するかどうかの判断を必要とするので、できるかぎり当該地区に係る関係気象官署の長から気象の状態およびその推移に関して情報を求めることとされたい。このため、あらかじめ当該情報の内容、連絡の方法等について協議するなど協力体制を確立しておかれたい。
   ばい煙に起因する緊急時の措置の内容については大気汚染の程度、推移、工場等でとりうる技術的限界等あらゆる条件を考慮して、事態を改善するうえで最も効果的と考えられる措置を講ずべきである。なお、今日の都市においては、各種の事業活動が住民の生活と密接に関係しているので、緊急時の措置を講ずべき施設の範囲等措置の内容の決定に当たつては、当該措置による影響についても慎重な配慮が必要である。
   道路交通法の規定による措置要請の制度の円滑な運用を図るため、事前に自動車排出ガスによる大気汚染の状況に関する資料、情報の交換等関係公安委員会と密接な連絡体制を確立されたい。とくに法第23条第4項に基づいて要請を行なう場合には、広域にわたり道路における交通に著しい影響を及ぼすおそれのある自動車の運行の禁止、制限を行なうこともあるので、緊急事態を想定して、その際における基本的な考え方、措置、手順等について、あらかじめ公安委員会と密接な連絡をしておき緊急な場合において、事態に即応した大気汚染の防止のための交通規制が速やかに実施できるように配慮されたい。
   なお、前記のほか、緊急時の措置に関し必要な事項は、別途通達する。

第8 電気工作物等の取扱い

  電気工作物またはガス工作物であるばい煙発生施設等については、届出、計画変更命令等に関する規定が適用除外とされているが、都道府県知事は地域における総合的な大気汚染防止対策を実施できるように、通商産業大臣に対して電気事業法またはガス事業法による措置をとるべきことを要請することができるとともに、当該要請に必要な報告徴収または立入検査をすることができることとした。

第9 経過措置について

 1 指定地域制が廃止され規制が全国に拡大されたことおよび規制対象施設が追加されたこと等に伴う経過措置は、法第13条第2項(第14条第2項で準用する場合を含む。)、附則第2項から第9項までに定められているほか、ばいじんの排出基準の強化、有害物質の排出基準の新設に伴う経過措置は、規則附則第3項から第6項までに定められている。

 2 とくにばいじんの排出基準については、これを全国的に適用するとともに大幅に基準改訂を行なつたが、これに対応する集じん機の供給量に限界があること等から、規則附則第3項に基づき法第13条第1項の排出制限の規定に係る場合は2年間(一部の施設については3年間)法第14条第1項の改善命令等の規定に係る場合は1年間適用しないこととする経過措置が附されている。したがつて、法第14条第1項の適用猶予期間が終了した日以降で、法第13条第1項の規定の適用猶予が認められている期間におけるばい煙排出者に対する法第14条第1項による改善命令等については、法第13条第1項の規定が適用猶予されている趣旨に留意し、慎重に行なわれたい。

 3 上記1の経過措置の適用をうけるばい煙排出者のうち、旧法に基づくすすその他の粉じんの排出基準の適用を受けていた者については従前の例によりばいじんの排出を規制することとし(規則附則第4項)、旧法の指定地域外の地域において地方公共団体の条例に基づく規制基準の適用を受けていた者については、当該条例に法第13条第2項または第14条第2項にいう相当する規定があることにより法の適用をうける場合を除き、当該条例によりばい煙の排出を規制することとなるので留意されたい。
   なお、上記の相当規定があるときは、排出基準違反に対して直ちに罰則を適用し、または、改善命令等が具体的に発動しうるようになつている条例の規定がある場合であるが、法と現行条例との間には体系的に相当の相違があると考えられるので、これが運用についてはこれら経過措置の趣旨にてらし慎重に扱われたい。

第10 事務委任について

  本年10月1日から都道府県知事の権限に属する事務の一部を委任されることとなつている市(大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令第2条および同附則)にあつては、都道府県知事からの事務の引継ぎ、その他事務執行体制の確立に努められたい。なお、都道府県においても、これが確立等につき、ご配慮願いたい。