法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づく窒素酸化物の排出基準の改正について

公布日:昭和58年09月07日
環大規285号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・政令市市長あて
 大気汚染防止法施行規則等の一部を改正する総理府令(昭和58年総理府令第25号。以下「改正府令」という。)は、昭和58年9月7日付けをもつて公布され、同月10日から施行されることとなつた。
 今回の改正は、二酸化窒素による大気汚染の防止を図るため、ばい煙発生施設のうち固体燃焼ボイラー等から排出される窒素酸化物の排出規制の強化等を目的とするものであるが、その背景、改正の内容及び留意すべき事項は次のとおりであるので、御了知のうえ、改正府令の施行に遺憾なきを期されたい。

第1 今回の改正の背景等

  固定発生源に対する全国一律の窒素酸化物の排出規制については、昭和48年8月の第1次規制以降、昭和50年12月の第2次規制、昭和52年6月の第3次規制、昭和54年8月の第4次規制と4次にわたり排出基準の強化及び対象施設の拡大を行つてきたところである。
  今回の改正は、(ⅰ) 近年、エネルギー情勢の変化に伴つて窒素酸化物の発生率が高い石炭等の固体燃料への燃料転換等が進みつつあり、今後更に進むことが見込まれること、(ⅱ) 石炭等の固体燃焼ボイラーに対する現行の窒素酸化物の排出基準は、石油利用が一般的であつた時期に定められたこともあつて液体燃焼ボイラーに比して緩い基準となつていること、(ⅲ) 現行の固体燃焼ボイラーの排出基準が設定された当時と比べて窒素酸化物対策に係る技術が進歩していること等の事情変化を背景として実施したものであり、これと併せて、現行基準設定当時の実情から同種の施設と比べて特例的な基準値が定められていたもので、現在の排出実態等からみて特例扱いをする必要のなくなつたものについて、特例の廃止等の整理を行つた。
  今回改正された固体燃焼ボイラーに係る排出基準による規制の水準は、大気汚染防止法(以下「法」という。)第3条に基づく全国一律の施設単位の排出基準であることから、窒素酸化物を排出するばい煙発生施設として最低限確保すべき値として設定しており、基本的には、低NOx燃焼技術の採用により達成される水準としたものである。
  なお、石炭の利用拡大のすう勢を見通した固体燃焼ボイラーに対する窒素酸化物の排出基準の強化は、当面、今回の改正をもつて終了するものとする。

第2 改正の内容

 1 固体燃焼ボイラーの排出基準の改正

   固体燃焼ボイラーに係る法第3条第1項の規定による窒素酸化物の排出基準を次表のように強化した(大気汚染防止法施行規則(以下「規則」という。)別表第3の2の改正)。

現行基準値
改正基準値
一律400ppm
排出ガス量
70万Nm3/h以上
200ppm
排出ガス量
4万Nm3/h以上
70万Nm3/h未満
250ppm
排出ガス量
4万Nm3/h未満
300ppm


   この場合、新設の施設に対しては、技術の進展に伴いより厳しい基準を設定して極力窒素酸化物排出量の伸びを抑制しておくためできる限り低NOx燃焼技術の最先端を適用するという考え方で排出基準を設定した。なお、改正後の別表第3の2に掲げる排出ガス量が70万Nm3/h以上の大規模の固体燃焼ボイラーに係る排出基準値である200ppmという値は、昭和60年9月以降運転開始が予定されている新設大型ボイラーの1年間の運転実績を評価した上で確認されることが期待される技術レベルに対応した値である。

 2 特例の廃止等

   昭和54年8月の第4次規制当時の実情から、同種の施設と比べて特例的な基準値が定められていたもので、現在、その排出実態等により、特例扱いをする必要のなくなつたものについて、次の(1)から(4)まで及び(6)については、特例の廃止、(5)及び(7)については排出基準の改正を行つた。

  1.   (1) 令別表第1の3の項に掲げる焙〈ばい〉焼炉のうちフエロマンガンの製造の用に供するもの(大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和54年総理府令第37号。以下「54年府令」という。)附則別表第3の改正)。
  2.   (2) 令別表第1の3の項に掲げる焼結炉のうちフエロマンガンの製造の用に供するもの(ペレツト焼結炉以外のもの)(54年府令附則別表第3の改正)。
  3.   (3) 令別表第1の7の項に掲げる加熱炉のうちメタノールの製造の用に供する改質炉(54年府令附則別表第1及び附則別表第3の改正)。
  4.   (4) 令別表第1の7の項に掲げる加熱炉のうちアンモニアの製造の用に供する改質炉(54年府令附則別表第1及び附則別表第3の改正)。
  5.   (5) 令別表第1の14の項に掲げる溶解炉のうち亜鉛の精錬の用に供する亜鉛及びカドミウムの精溜〈りゆう〉炉(液化石油ガス又はコークス炉ガスを燃焼させるものに限る。)(規則別表第3の2の改正)。
  6.   (6) 令別表第1の14の項に掲げる溶解炉のうち亜鉛の精錬の用に供する回転式亜鉛滓処理炉(54年府令附則別表第3の改正)。
  7.   (7) 令別表第1の26の項に掲げる反射炉(規則別表第3の2の改正)。

 3 施行期日等

  1.   (1) 改正府令は、昭和58年9月10日から施行することとした(附則第1項)。
  2.   (2) 附則別表第2の3の項に掲げる施設及び排出ガス量が5000Nm3/h以上20万Nm3/h未満の同表の5の項に掲げる施設に係る排出基準は昭和60年9月9日まで適用しないこととした(附則第2項第2号)。
  3.   (3) 昭和58年9月10日において現に設置されている固体燃焼ボイラー(設置の工事が着手されているものを含み、(2)に掲げるものを除く。)については、改正後の排出基準は、昭和59年9月9日まで適用しないこととした(附則第2項第3号)。
  4.   (4) 昭和58年9月10日において現に設置されている固体燃焼ボイラー(設置の工事が着手されているものを含む。)等については、設置時期等に応じて別に適用すべき排出基準値を設けた(附則第3項から第8項)。
  5.   (5) 改正府令の施行の日以後設置される排出ガス量が4万Nm3/h以上10万Nm3/h未満の石炭燃焼用の散布式ストーカ型のボイラーに係る排出基準値は、当分の間、320ppmとした(附則第9項)。
  6.   (6) 新設の固体燃焼ボイラーに係る規制の水準にかんがみ、改正府令の施行の日から昭和62年3月31日までの間に設置の工事が着手される排出ガス量が4万Nm3/h以上の固体燃焼ボイラーに係る排出基準値は、300ppmとした(附則第10項)。
  7.   (7) 改正府令の施行の日から昭和59年9月9日までの間に設置の工事が着手される排出ガス量が4万Nm3/h未満の流動層燃焼方式の固体燃焼ボイラーに係る排出基準値は、360ppmとした(附則第11項)。
  8.   (8) 改正府令の施行の日以後設置の工事が着手される排出ガス量が4万Nm3/h未満の上記以外の固体燃焼ボイラーに係る排出基準値は、当分の間、350ppmとした(附則第12項)。

第3 留意すべき事項

  1.  1 改正後の排出基準は、新設施設については昭和58年9月10日から適用されるものであることから、既に法第6条の規定に基づく設置の届出が行われ現在届出事項についての審査が行われている施設等、昭和58年9月10日以降に設置の工事が行われる予定となつている施設については、審査に当たり慎重に検討を行い、改正後の排出基準の適用につき遺憾なきを期されたい。
  2.  2 昭和54年8月に定められた、排出ガス量5000Nm3/h未満の既設の小型の固体燃焼ボイラーに係る排出基準は、今回の改正においてもなお従前どおり、昭和59年8月9日まで適用しないこととしたので、当該施設に係る排出基準の適用については、留意されたい。
  3.  3 今回の規制強化は、基準値を大幅に引き下げるものであり、現状における高度の燃焼改善技術により達成し得る排出レベルとしたものであることに鑑み、地方公共団体においては、今回の改正の趣旨を踏まえ、地域の環境基準達成状況を十分に勘案しつつ、適切に対処するよう配慮されたい。
  4.  4 今回の排出基準の改正は、ばい煙発生施設のうち、固体燃焼ボイラー等8種類の施設について行つたが、今回の改正により規則別表第3の2の改正を行つた施設に係る54年府令の附則はその効力を失い、改正府令の附則で定める排出基準が適用されるものであるので、改正後の排出基準の適用に当たつては、この点に留意されたい。
  5.  5 窒素酸化物濃度の測定に際しての測定値の取扱い、試料の採取方法等については、従前どおり「大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について」(昭和46年8月25日付環大企第5号本職通達)の第4の1から4までによられたい。