法令・告示・通達

大気汚染防止法に基づくいおう酸化物の排出基準の改訂等について

公布日:昭和49年03月30日
環大規60号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事・各政令市市長あて
 標記については、かねていおう酸化物の排出実態調査等につきご協力願つてきたが、昭和49年3月26日付けをもつて、標記の事項を内容とする大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(昭和49年政令第62号。以下「改正政令」という。)及び大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和49年総理府令第10号。以下「改正府令」という。)が制定公布され、いずれも昭和49年4月1日から施行されることとなつた。
 いおう酸化物の排出基準については、従来から段階的に強化を図つてきたところであるが、昨年5月に改訂強化された二酸化いおうの環境基準を維持達成するためには、なお今後とも強化を図る必要がある。今回の改訂は環境基準を昭和52年度末までに全国のすべての地域において維持達成することを目標にした第一段階の強化であり、いおう酸化物による大気の汚染を改善するうえで重要な意義をもつているので、下記の事項にご留意のうえ、法令の施行に遺憾なきを期されたい。

第1 排出基準強化の基本方針

  昭和44年2月に設定されたいおう酸化物に係る環境基準(以下「旧環境基準」という。)は昭和48年度までにほぼ維持達成できる見通しとなり、昭和48年5月にはこれを改訂強化した二酸化いおうに係る環境基準(以下「新環境基準」という。)が設定されたところである。
  今回の排出基準強化にあたつては、いおう酸化物による大気の汚染が新環境基準を上まわつている地域については、昭和52年度末までに計画的に新環境基準を達成させるため昭和49年度には現状汚染を5分の1程度新環境基準に近づけることを目標とした中間目標を達成することとし、いおう酸化物による大気の汚染が新環境基準を下まわつている地域については、大気の汚染を現状より進行させないという観点から基準の強化を図ることを基本方針とした。
  各地域における具体的な排出基準値の算定にあたつては、前回の基準改訂とほぼ同様に、地域全体に排出されるいおう酸化物の総量を一定以下に抑えることを念頭におき、各地域における大気汚染の現況(昭和47年度)並びに各都道府県知事及び札幌市等の9政令市の市長の協力を得て実施したいおう酸化物排出実態調査、燃料需要予測調査等を基にし、また、低いおう化の動向等をも勘案した。この場合、特別排出基準(大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「法」という。)第3条第3項に基づく特別の排出基準をいう。以下同じ。)が適用される地域にあつては、一般排出基準(法第3条第1項に基づく排出基準をいう。以下同じ。)及び特別排出基準により目標を達成するようにした。
  なお、前述の調査依頼にあたつては、昭和50年度を目標とした排出基準を設定することにしていたが、その後、いわゆる石油危機のため石油系燃料の需給の長期見通しが流動的であるため、とりあえず、昭和49年度を目標とする排出基準を設定したものである。

第2 改正の要点

 1 大気汚染防止法施行令関係

  (1) 法第3条第3項の政令で定める大気の汚染の限度の改正

    法第3条第3項の規定に基づき、特別排出基準が適用される地域に係る政令で定める大気の汚染の限度は、従来、旧環境基準に相当する水準に定められていたが、これを昨年5月の環境基準の改訂強化にあわせて新環境基準(長期的評価)に相当する水準に改めたこと。これにより、今後は新環境基準(長期的評価)に不適合とされる地域であつて、法第3条第3項に規定する施設集合地域と認められる地域を特別排出基準設定地域に指定することとなる。(令第6条の改正)

  (2) 政令市の追加

    法第31条の規定に基づき、都道府県知事の権限に属する事務の一部を委任する市の長として、室蘭市、秋田市及び高槻市の市長を指定したこと。(令第13条の改正)

  (3) 政令特掲地域の追加、拡大

    従来、令別表第3第21号に規定され、最もゆるやかな排出基準を設定されていた地域のうち、函館市等、小樽市、旭川市、釧路市、宮古市、土浦市等、古河市等、勝田市、高崎市の一部、川越市等、秩父市等、銚子市、野田市等、茂原市、上越市等、武生市等、岐阜市等、多治見市等、静岡市、浜松市等、一宮市等、福知山市等、西脇市等、竹原市等、高松市、松山市等、東予市等、佐世保市、八代市、水俣市及び鹿児島市の31地域については、特掲してより厳しい排出基準を適用することとし、既特掲地域のうち秋田市等、郡山市、いわき市、金沢市等、瀬戸市等及び広島市等の6地域については、区域の拡大を図つたこと。(令別表第3の改正)

  (4) 燃料規制地域の追加

    法第15条の燃料の使用に関する措置を講ずる地域として、広島市の中心地域を新たに指定したこと。(令別表第4の改正)

 2 大気汚染防止法施行規則関係

  (1) 一般排出基準の強化

    令別表第3に掲げる100の地域につき、全般的に一般排出基準を大幅に強化したこと。(大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省、通商産業省令第1号。以下「規則」という。)第3条及び別表第1の改正)

  (2) 算定の方法の改正

    1の(1)の改正に即して、令第6条第1号の数値を算定する方法を改めたこと。これにより、1時間値の1日平均値を算定する場合は1日の有効測定時間数が20時間以上でなければならないこと等とされたこと。(規則第6条の改正)

  (3) 特別排出基準設定地域の追加、拡大

    特別排出基準設定地域として、新たに茨城県鹿島郡鹿島町等、富山市等、清水市、半田市等、岸和田市等、福山市、大竹市、徳山市等、岩国市等、丸亀市等、新居浜市等及び大分市等の12地域を追加するとともに倉敷市について設定区域を拡大したこと。(規則別表第4の改正)
    なお、規則別表第5の改正も行われているが、これは別表第4を引用しているために所要の整理を行つたものであり、ばいじんの特別排出基準の設定地域には実質的な変更はない。(規則別表第5の改正)

  (4) 特別排出基準の強化

    特別排出基準を定めるK値は、従来2.92、3.50、5.26の3ランクであつたが、これを1.17、1.75、2.34の3ランクに強化したこと。(規則第7条の改正)

 3 施行期日及び経過措置

  (1) 施行期日

    改正政令及び改正府令は、昭和49年4月1日から施行すること。(改正政令附則及び改正府令附則第1項)

  (2) 経過措置

   ア 規則附則第2項の条例等によるK値の適用関係

     規則附則第2項又は沖縄の復帰に伴う環境庁関係法令の適用の特別措置に関する総理府令(昭和47年総理府令第31号)第2条第1項の規定により、法により全国的に規制が実施された際における地方公共団体の条例若しくは規則又は沖縄の大気汚染防止法施行規則のいおう酸化物の排出基準を定めた数値が当分の間そのまま法によるK値とされた地域については、当該数値が今回の改訂後の法のK値より小さく(厳しく)なくなつた場合には、法のK値が適用され、K値よりなお小さい場合には引き続き当該数値が適用されることを明確にしたこと。(改正府令附則第2項、第3項)

   イ 新一般排出基準の適用関係

     今回の改正により強化された一般排出基準は、法第13条第1項に係る場合にあつては、昭和49年6月30日まで(ただし、焼結炉、いおう酸化物処理施設の設置工事中のばい煙発生施設等の特定のばい煙発生施設については、猶予期間を長くしている。第3の2を参照のこと。)適用を猶予することとしたこと。(改正府令附則第4項)

   ウ 新特別排出基準の適用関係

     新特別排出基準は、法第10条による設置の実施制限期間の末日の翌日が昭和49年4月1日前であるばい煙発生施設(電気工作物又はガス工作物であるばい煙発生施設については、電気事業法又はガス事業法による当該施設に係る工事計画の認可の日が4月1日前であるもの)については適用しないこととしたこと。(改正府令附則第5項)

   エ 旧特別排出基準の効力

     改正前の特別排出基準設定地域において、特別排出基準の適用をうけ、又はうけることとなる施設であつて改正府令附則第5項により新特別排出基準の適用をうけないこととされているものについては、旧特別排出基準を適用することとしたこと。(改正府令附則第6項)

   オ 旧特別排出基準と新一般排出基準との適用関係

     改正府令附則第6項又は大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和46年総理府令第59号。以下「46年改正府令」という。)附則第5項の規定により、その効力が存続することとされた旧特別排出基準の適用をうけているばい煙発生施設がある場合において、今回の改正により当該ばい煙発生施設が設置されている地域に係る新一般排出基準が、当該旧特別排出基準より厳しく(K値が小さく)なつたときは、当該ばい煙発生施設については新一般排出基準を適用すべきこととしたこと(改正府令附則第7項)

第3 排出基準の改訂に伴い留意すべき事項

  新排出基準の遵守の徹底を期するためには、ばい煙排出者において相当の努力を必要とすると考えられるので、貴職におかれても、次の事項に留意し、その指導には格段の努力を煩わしたい。

  1.  1 新一般排出基準は、法第13条第1項の規定に係る場合にあつては、一般のばい煙発生施設については本年6月30日まで、焼結炉等特定のばい煙発生施設についてはさらに長期間(2を参照)。適用が猶予されているが、今回の基準改訂はかねて周知させてきたこと等も考慮し、これらの期間は、新一般排出基準を遵守するための低いおう原燃料への切替、ばい煙処理施設の改善等に要する期間としては最小限になつているので、ばい煙排出者が最大限の努力を払い、新一般排出基準を遵守するよう指導されたい。
       特に、先に実施されたいおう酸化物排出実態調査等を基にし、新一般排出基準に不適合となるばい煙発生施設については、当該ばい煙排出者に対して早急にその旨を通知し、所定の期間内に所要の改善等の措置を講じさせるようにされたい。また、適用猶予となるのは法第13条第1項の規定に係る場合に限られるので、この期間内にあつても法第14条第1項(改善命令等)の規定は適用になるが、法第13条第1項の規定が適用猶予されている趣旨にかんがみ慎重に取り扱われたい。
       なお、この期間にあつても「なお、従前の例による。」(改正府令附則第4項)とされているとおり、改正前の一般排出基準に違反するばい煙排出者に対しては法第13条第1項の規定は適用になるものであること。
  2.  2 改正府令附則第4項第2号から第5号までの規定により、次の(1)~(4)のばい煙発生施設については、一般のばい煙発生施設より長期間の法第13条第1項に係る場合の適用猶予期間が設けられた。この規定は低いおう原料への切替が困難であること、航空法等により排出口の実高さが制限されていること、焼却炉用の排煙脱硫設備の開発が遅れていること、排煙脱硫設備の設置を促進することなどを考慮して定められたものである。
       この規定が適用になるばい煙発生施設は少いと思われるが、該当施設のある地域にあつては、低いおう原料への切替、排煙脱硫設備の設置工事の促進等により、それぞれの猶予期限までのなるべく早い時期に新一般排出基準を遵守できるようにばい煙排出者を指導されたい。
    1.   (1) 令別表第1の3の項に掲げる焼結炉(ベレツト焼成炉を含む。)に関しては、昭和50年3月31日まで。(航空法第49条第1項等の規定により排出口の実高さを増すことができないものに関しては、昭和51年3月31日まで。)
    2.   (2) 令別表第1の8の項に掲げる触媒再生塔に係る流動接触分解装置に投入する原料油に含まれるいおう分を除却する施設の設置の工事が本年4月1日現在行われている場合における当該触媒再生塔に関しては、当該工事が完了した日(最大限昭和50年12月31日)まで。
          ここで「工事が完了した日」というのは、当該施設が稼動し得る状態になつた日(試運転期間に属する日を除く。)をいうものであること。((3)及び(4)において同じ。)
    3.   (3) 令別表第1の8の2の項に掲げる燃焼炉に附属するいおう酸化物処理施設の設置に係る届出が本年4月1日現在なされており、本年6月1日において当該いおう酸化物処理施設の設置の工事がされている場合における当該燃焼炉に関しては、当該工事が完了した日(最大限昭和50年12月31日)まで。
          ここで「いおう酸化物処理施設」というのは、いわゆる排煙脱硫装置であつて環境庁長官の定める性能を有するものをいうが、このいおう酸化物処理施設の性能は、本年3月29日付け環境庁告示第31号により、捕集効率が80%以上であり、かつ、それの完成により新排出基準を遵守することができる性能を有するものと定められている。(別添参照(4)において同じ。)この場合の捕集効率は当該施設の設計効率によるものであること。
    4.   (4) 本年4月1日現在、ばい煙発生施設((1)及び(3)のばい煙発生施設を除く。)に附属するいおう酸化物処理施設の設置の工事がされている場合における当該ばい煙発生施設に関しては、当該工事が完了した日(最大限昭和50年3月31日)まで。
  3.  3 規則附則第2項の規定の適用のある地域で当該規定による数値が新一般排出基準のK値より小さくなつた場合には、改正府令附則第2項の規定により法に基づく規則のKの値が適用になるので、該当地域にこの点誤解のないようにばい煙排出者に周知されたい。
       また、逆に、なお当分の間、規則附則第2項の規定が適用になる地域にあつては、当該地域のK値として適用される数値を明確にし、ばい煙排出者に周知しておかれたい。
  4.  4 新特別排出基準の適用関係は第2の3の(2)のウ及びエのとおりであるが、これはすでに設置され、又は設置の工事に着手しているばい煙発生施設のほかに、法令上設置の工事をなし得る状態にあつたばい煙発生施設も含め、新特別排出基準は適用しないこととしたものである。
       したがつて、たとえば、法第10条第1項の規定により60日間設置工事の実施が制限をうけるばい煙発生施設については、昭和49年1月29日以前に法第6条第1項の届出が受理されたものであれば、新特別排出基準は適用にならないこととなる。
       なお、すでに法第6条等に基づく届出が受理されているばい煙発生施設であつて、新特別排出基準が適用になるものである場合には、新特別排出基準を遵守させるため、早急に設置計画の変更等必要な指導をされたい。
  5.  5 従来の特別排出基準と新一般排出基準の関係は、第2の3の(2)のオのとおりであるが、改正府令附則第6項又は46年改正府令附則第5項の規定により、そのばい煙発生施設に適用される特別排出基準のK値が、新一般排出基準のK値より大きく(ゆるく)なつた場合には、一般排出基準が適用されることになるので、当該ばい煙排出者に周知しておかれたい。

第4 今後の基準改訂等

  今回の基準改訂は昭和52年度までに二酸化いおうに係る環境基準の維持達成を図る目的で、昭和49年度を目標として行われたものである。
  したがつて、昭和49年度中に昭和50年度を目標とした新基準を設定することにしており、その後も段階的に基準の強化を行つて環境基準の維持達成を図つていくことにしている。
  昭和50年度を目標とした基準値の算定にあたつては、原則として今回実施したいおう酸化物排出実態調査、燃料需要量予測調査等に基づいて行うことにしており、特掲地域の増加は行わない予定であるが、工場立地の動向、原燃料消費の動向等に急激な変化が生じ、大気の汚染が著しく増加する場合にはこの限りではないので、この旨お含みおかれたい。