法令・告示・通達
大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準について
環管大177・環管自75
[改定]
平成19年3月29日 環水大大発第070329002号・環水大土発第070329002号
地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号)の施行(平成12年4月1日)により、機関委任事務は廃止され、都道府県及び市町村の事務は自治事務又は法定受託事務に区分された。このうち法定受託事務については、地方自治法(昭和22年法律第67号)第245条の9第1項及び第3項の規定により、都道府県又は市町村が処理するに当たりよるべき基準(以下「処理基準」という。)を国が定めることができるとされている。
大気汚染防止法(昭和45年法律第18号。以下「法」という。)に規定する地方公共団体が処理すべき事務のうち、法定受託事務である常時監視に関する事務(法第22条)については、別紙のとおり処理基準が定められたので通知する。
当該事務を行うに当たっては、別紙記載事項を遵守し、従来同様円滑かつ適切な実施に万全を期されるようお願いする。
(別紙)
大気汚染防止法第22条の規定に基づく大気の汚染の状況の常時監視に関する事務の処理基準
目次
- Ⅰ 大気汚染状況の常時監視の目的
- Ⅱ 窒素酸化物、浮遊粒子状物質等に係る常時監視
- 1.測定対象
- 2.測定局の数及び配置
- (1)測定局数
- (2)測定局の配置
- (3)測定局の見直し
- 3.測定頻度
- 4.試料採取口の高さ
- 5.測定方法
- 6.測定値の取扱い及び評価
- (1)評価の対象としない測定値等
- (2)常時監視結果の評価
- 7.保守管理
- 8.結果の報告
- Ⅲ 有害大気汚染物質に係る常時監視
- 1.測定対象
- 2.測定地点の数及び選定
- (1)測定地点数
- (2)測定地点の選定
- (3)測定地点の見直し
- (4)既存の測定局の活用
- 3.測定頻度等
- 4.試料採取口の高さ
- 5.測定方法
- 6.測定値の取扱い及び評価
- (1)評価の対象としない測定値
- (2)年平均値の算出
- (3)異常値の取扱い
- 7.精度管理
- 8.結果の報告
Ⅰ 大気汚染状況の常時監視の目的
都道府県等において継続的に大気汚染に係る測定を実施することにより、地域における大気汚染状況、発生源の状況及び高濃度地域の把握、汚染防止対策の効果の把握等を行うとともに、全国的な汚染動向、汚染に係る経年変化等を把握し、もって大気汚染防止対策の基礎資料とすることを目的とする。
Ⅱ 窒素酸化物、浮遊粒子状物質等に係る常時監視
1.測定対象
主として、窒素酸化物、粒子状物質その他の大気汚染防止法に基づく規制がなされている物質に関して大気汚染状況を把握するため、環境基準が設定されている以下に掲げる物質について測定を実施する。
二酸化硫黄
一酸化炭素
浮遊粒子状物質
光化学オキシダント
二酸化窒素
また、浮遊粒子状物質及び光化学オキシダントについての大気汚染状況を適切に評価するため、その生成の原因となる非メタン炭化水素についても測定を実施する。
ただし、これらの物質の一部のみを測定項目として選定する測定局にあっては、当該測定局周辺における発生源からの排出の状況、各物質の環境濃度の状況その他の当該測定局及び当該地域に係る実状を踏まえ、各物質の測定の必要性及び優先度合いを十分考慮し、測定項目を選定するものとする。
さらに、上記に掲げる物質についての大気汚染状況を適切に評価するため、一酸化窒素並びに風向及び風速等の気象要素についても測定を実施するよう努めるものとする。
2.測定局の数及び配置
(1)測定局数
上記1.の測定対象に係る大気汚染状況を常時監視するための測定設備が設置されている施設を測定局という。都道府県は、政令市と協議の上、当該都道府県における測定項目ごとの望ましい測定局数の水準を決定するものとする。望ましい測定局数の水準は、以下のアに規定する全国的視点から必要な測定局数に、以下のイに規定する地域的視点から必要な測定局数を加えて算定する。
注)望ましい測定局数の水準は、大気汚染による人の健康の保護及び生活環境の保全の見地から定めるものであることから、車道局など、人が通常生活していない地域又は場所に配置され、環境基準の達成状況の判断に使用されない測定局の数は含まないものとする。また、地域全体の大気汚染状況を把握するための数を示すものであることから、以下のような特殊な目的を有する測定局の数も含まないものとする。
・特定発生源による突発的かつ高濃度の汚染の把握
・バックグラウンド(非汚染地域)における汚染物質の濃度の把握
・健康影響、生態系への影響等の研究を主たる目的とした汚染物質の濃度の把握
ア 全国的視点から必要な測定局数の算定
① 人口及び可住地面積による算定
大気汚染物質に係る環境基準又は指針値等(以下「環境基準等」という。)は、人の健康の保護及び生活環境の保全の見地から設定されたものである。したがって、大気汚染物質の人への曝露の指標となる以下の人口基準及び可住地面積(総面積から林野面積及び湖沼面積を差し引いたもの。)基準で算定された都道府県ごとの測定局数のうち、数の少ない方を都道府県ごとの基本的な測定局数とする。- (a)人口75,000人当たり1つの測定局を設置する。
- (b)可住地面積25km2当たり1つの測定局を設置する。
- ② 環境濃度レベルに対応した測定局数の調整
都道府県の測定局のうち、過去3年間程度の間において、測定項目ごとに環境基準等の評価指標で最高値を示した測定局の当該最高値を以下のように区分し、「高」に該当する測定局を有する都道府県にあっては①で算定された数を、「中」に該当する測定局を有する都道府県にあっては①で算定された数の概ね1/2の数を、「低」に該当する測定局を有する都道府県にあっては①で算定された数の概ね1/3の数を測定項目ごとの測定局数とする。
「高」:環境基準等を未達成又は達成しているが、基準値の7割を超える。
「中」:環境基準等を達成しているが、基準値の3割を超え、かつ、7割以下。
「低」:環境基準等を達成し、かつ、基準値の3割以下。 ③ 測定項目の特性に対応した測定局数の調整
- (a)二酸化硫黄、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント及び二酸化窒素
①及び②で算定された数を測定局数とする。
ただし、自動車NOx・PM法により定めた対策地域を含む都道府県にあっては、浮遊粒子状物質及び二酸化窒素は、①及び②で算定された数の概ね4/3の数を測定局数とする。 また、光化学オキシダントの注意報が発令されていない都道府県にあっては、光化学オキシダントは、①及び②で算定された数の概ね2/3の数を測定局数とする。 - (b)一酸化炭素
移動発生源による汚染が中心であることから、①及び②で算定された数の概ね1/2の数を測定局数とする。 - (c)非メタン炭化水素
間接的な汚染物質であることから、①及び②で算定された数の概ね1/2の数を測定局数とする。
- (a)二酸化硫黄、浮遊粒子状物質、光化学オキシダント及び二酸化窒素
イ 地域的視点から必要な測定局数の算定
① 自然的状況の勘案
以下のような地形的な状況や気象的な状況等の地域固有の自然的状況を勘案し、これに対応するために必要となる測定局数を定める。- (a)地形的な状況
山地等により他の地域と分断されている地域、谷筋又は河川・湖沼等の近傍で気流が複雑な地域、海岸部で風速が大きい地域等にあっては、他の地域の大気環境と一体性がなく、一方の都市での測定結果で他方の都市の大気の状況を代表させるのは適当ではない。 - (b)気象的な状況
気温、風向、風速、日射量、季節変化等により大気環境に影響を与える。
- (a)地形的な状況
② 社会的状況の勘案
以下のような大気汚染発生源への対応、住民のニーズへの対応、規制や計画の履行状況の確認、今後の開発の予定、各種調査研究への活用等の常時監視の社会的有用性を勘案し、これに対応するために必要となる測定局数を定める。- (a)大気汚染発生源への対応
固定発生源に関しては、工場等の分布、規模及び排出口の高さ等の状況並びに近傍の風向により大気環境に影響を与える。特に、工場が密集している地域等においては、事故等の異常発生時に迅速に対処する必要があることに留意する。また、常時監視の対象物質の測定値から、当該対象物質以外の大気汚染物質の排出動向についても推測ができ、大気汚染物質全般の監視の役割をも果たしている場合がある。
移動発生源に関しては、道路の配置又は変更予定とともに、道路の構造、車種別交通量、走向速度、沿道状況等により大気環境に影響を与える。
また、中・高層ビルの密集している都市部においては、気流やビルの排熱等が大気環境に影響を与える。
- (b)住民の二一ズへの対応
測定局の配置について、地域住民との約束や要望等の社会的要請が存在する場合は、十分な合意を得る必要がある。 - (c)規制や計画の履行状況の確認
常時監視は、工場等が自ら行う環境監視体制を補完し、行政が規制の遵守状況を最終的に確認する手段としての役割をも担っている。また、公害防止計画、港湾計画等各種計画において、当該計画の進捗状況を確認する手段として常時監視が積極的に位置づけられている場合がある。 - (d)今後の開発の予定
大規模な開発が予定される場合、事前に大気環境の測定を行う必要がある。 - (e)各種調査研究への活用
これまで蓄積してきた測定局のデータは、測定局周辺の健康影響調査における平均曝露量等、研究や科学的データの基礎資料としても活用され、重要な役割を担っている。特に、環境影響評価調査において、測定局のデータが活用できる場合、過去からの傾向が明らかなことから、予測評価の精度向上が図られる等、調査の効率化や質的向上に貢献している。
- (a)大気汚染発生源への対応
- ③ これまでの経緯の勘案
設置されてから相当の期間を経過し、継続して測定をしてきた測定局については、大気環境の経年変化を知る上で重要な意義を有している。また、測定局の有用性について地域住民から高い評価を得ており、測定局が地域では所与のものとして受け止められている場合も多い。このように、既存の測定局については、これまでの経緯を十分に勘案し、必要に応じて、望ましい測定局数の水準に加算することにより、存続を図ることとする。
(2)測定局の配置
(1)の規定により算定された測定局数は、都道府県ごとの望ましい測定局の総数を示したものであり、具体的に測定局をどの地点に配置するかについては、測定局数を算定した際の全国的及び地域的視点を踏まえ、各都道府県及び政令市において適切に決定する。測定局は以下の2つの種類に区分されるが、それぞれの配置についても、以下に記載する点を考慮しつつ、地域の実情に応じて決定することとする。
- ① 一般環境大気測定局
大気汚染状況を常時監視するための測定局であって、以下②による自動車排出ガス測定局以外のものを一般環境大気測定局という。一般大気環境測定局は、一定地域における大気汚染状況の継続的把握、発生源からの排出による汚染への寄与及び高濃度地域の特定、汚染防止対策の効果の把握といった、常時監視の目的が効率的に達せられるよう配置する。 - ② 自動車排出ガス測定局
自動車走行による排出物質に起因する大気汚染の考えられる交差点、道路及び道路端付近において大気汚染状況を常時監視するための測定局を自動車排出ガス測定局という。自動車排出ガス測定局は、自動車排出ガスによる大気汚染状況が効率的に監視できるよう、道路、交通量等の状況を勘案して配置する。
配置が決定された測定局については、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続して監視を実施するものとする。
(3)測定局の見直し
人口、環境濃度レベルの変化等により(1)アに規定する全国的視点から必要な測定局数の算定基礎データが変化した場合又は発生源、道路、交通量の状況等の社会的状況の変化により(1)イに規定する地域的視点から必要な測定局数の算定基礎データが変化した場合には、適宜、測定局の数及び配置について再検討を行い、必要に応じて見直しを行うこととする。
3.測定頻度
原則として、年間を通じて連続的に測定を行うものとする。
4.試料採取口の高さ
- (1)基本的考え方
試料空気の採取は、人が通常生活し、呼吸する面の高さで行うこととする。 - (2)基本的考え方を踏まえ、その具体的な高さは、二酸化硫黄、二酸化窒素、光化学オキシダント及び一酸化炭素については、地上1.5m以上10m以下、浮遊粒子状物質については地上からの土砂の巻き上げ等による影響を排除するため、地上3m以上10m以下とする。
- (3)高層集合住宅等地上10m以上の高さにおいて人が多数生活している実態がある場合であって、基本的考え方を踏まえて当該実態について十分検討した結果、(2)によることが適当ではないと考えられるときは、適宜その実態に応じ適切な高さを設定する。
- (4)用地の確保が困難な場合等やむを得ない事由により(2)及び(3)のいずれにもよることができない場合又はそれによることが適当ではないと考えられる場合は、次の要件を満たす採取口を設定するよう努めるものとする。
- ア 採取口の高さが30mを超えていないこと。かつ、
- イ 近隣の地点において(2)における採取口高さにより、連続して1月間以上並行して測定を行った場合の測定結果と比較して、1時間値の日平均値の平均の差が大気環境基準の下限値の1/10を超えていないこと。なお、四季の変化による影響を把握するため、この並行して行う測定は四季に併せて1年に4回以上行うこと。
5.測定方法
測定方法、測定機器の仕様及び構成については、「環境大気常時監視マニュアル」(平成19年3月29日環水大大発第070329001号、環水大自発第070329001号)によることとする。
6.測定値の取扱い及び評価
(1)評価の対象としない測定値等
- ア 測定局が、都市計画法(昭和43年法律第100号)の規定による工業専用地域(旧都市計画法(大正8年法律第36号)による工業専用地域を含む。)、港湾法(昭和25年法律第218号)の規定による臨港地区、道路の車道部分その他埋立地、原野、火山地帯等通常住民が生活しているとは考えられない地域、場所に設置されている場合の当該測定局における測定値
- イ 測定値が、測定器に起因する等の理由により当該地域の大気汚染状況を正しく反映していないと認められる場合における当該測定値
- ウ 1日平均値に係る1時間値の欠測が1日(24時間)のうち4時間を超える場合における当該1日平均値
(2)常時監視結果の評価
常時監視の結果は、環境基準により測定局ごとに評価することとし、以下による。
ア 短期的評価
大気汚染の状態を環境基準に照らして短期的に評価する場合は、環境基準が1時間値又は1時間値の1日平均値についての条件として定められているので、定められた方法により連続して又は随時に行った測定結果により、測定を行った日又は時間についてその評価を行う。
イ 長期的評価
大気汚染に対する施策の効果等を的確に判断するなど、年間にわたる測定結果を長期的に観察したうえで評価を行う場合は、測定時間、日における特殊事情が直接反映されること等から、次の方法により長期的評価を行う。
- ① 二酸化硫黄、一酸化炭素、浮遊粒子状物質
年間にわたる1時間値の1日平均値のうち、高い方から2%の範囲にあるもの(365日分の測定値がある場合は7日分の測定値)を除外して評価を行う。ただし、人の健康の保護を徹底する趣旨から、1日平均値につき環境基準を超える日が2日以上連続した場合は、このような取扱いは行わない。 - ② 二酸化窒素
年間にわたる1時間値の1日平均値のうち、低い方から98%に相当するもの
(1日平均値の年間98%値)で評価を行う。
7.保守管理
精度の高い測定を行うため、「環境大気常時監視マニュアル」(平成19年3月29日環水大大発第070329001号、環水大自発第07032900l号)に基づき、維持管理体制を整備し、測定機器に応じた日常点検、定期点検等の保守点検を適切に行い、その内容を記録するものとする。
8.結果の報告
法第22条第2項の規定に基づく常時監視の結果の報告については、別途環境省が指定する方法により指定する期日までに行うものとする。
Ⅲ 有害大気汚染物質に係る常時監視
1.測定対象
有害大気汚染物質のなかの優先取組物質(当該物質の有害性の程度や我が国の大気環境の状況等にかんがみ健康リスクがある程度高いと考えられる物質で、別添に掲げるものをいう。)のうち、既に測定方法の確立している物質(ダイオキシン類を除く。)で、以下に掲げるものについて、測定を実施する。
- アクリロニトリル
- アセトアルデヒド
- 塩化ビニルモノマー
- クロロホルム
- 酸化エチレン
- 1,2-ジクロロエタン
- ジクロロメタン
- 水銀及びその化合物
- テトラクロロエチレン
- トリクロロエチレン
- ニッケル化合物
- ヒ素及びその化合物
- 1,3一ブタジエン
- べリリウム及びその化合物
- ベンゼン
- ベンゾ[a]ピレン
- ホルムアルデヒド
- マンガン及びその化合物
- 六価クロム(当面、クロム及びその化合物を測定)
以上に掲げる物質のうち、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、べリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物並びに六価クロム(当面、クロム及びその化合物を測定)については、原則として粒子状の物質に限る。水銀及びその化合物については、原則としてガス状のものに限る。
ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、べリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物並びに水銀及びその化合物については、個別の物質によって健康リスクが異なると思われるが、現時点では、個別の物質ごとに選択して測定を実施することが困難であるため、それぞれの金属及びその化合物ごとに、当該金属化合物の全量又は当該金属及びその化合物の全量(金属換算値)を測定するものとする。六価クロムについては、現時点では測定が困難であるため、当面、クロム及びその化合物の全量(クロム換算値)を測定するものとする。
個々の測定地点における測定物質については、当該測定地点周辺における発生源からの排出の状況、各物質の環境濃度の状況等から、各物質の測定の必要性及び優先度合いを十分考慮し、測定物質を選定するものとするほか、2.(2)②イ及び③イによる。
また、風向、風速等の気象要素についても測定を実施するよう努めるものとする。
2.測定地点の数及び選定
(1)測定地点数
Ⅱの2.(1)の例による。ただし、同項のア③に規定する測定項目の特性に対応した測定地点数の調整については、同項のア①及び②で算定された数の概ね1/3の数を測定地点数とする。これは、有害大気汚染物質は、長期的な曝露が問題であり、環境基準等が年平均値で設定されているが、年平均値は、日平均値等と比べて、より広範な地域の環境状況を示すものと考えられるからである。
(2)測定地点の選定
(1)の規定により算定された測定地点数は、都道府県ごとの望ましい測定地点の総数を示したものであり、具体的に測定地点をどこに選定するかについては、測定地点数を算定した際の全国的及び地域的視点を踏まえ、各都道府県及び政令市において適切に決定する。測定地点は以下の3つの種類に区分されるが、それぞれの配置についても、以下に記載する点を考慮しつつ、地域の実情に応じて決定することとする。
- ① 一般環境
一般環境における測定地点は、固定発生源又は移動発生源からの有害大気汚染物質の排出の直接の影響を受けにくいと考えられる地点について、地域における有害大気汚染物質による大気汚染の状況の継続的把握が効果的になされるよう選定するものとする。また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続して監視を実施するものとする。 ② 固定発生源周辺
- ア 測定地点の選定
固定発生源周辺における測定地点については、移動発生源からの有害大気汚染物質の排出の直接の影響を受けにくいと考えられる地点を選定するよう努めるとともに、固定発生源における有害大気汚染物質の製造・使用状況、気象条件及び地理的条件を勘案して、排出が予想される物質の濃度が、固定発生源における他の地点と比較して相対的に高くなると考えられる地点を優先的に選定するよう努めるものとする。
また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続して監視を実施するものとする。しかし、それぞれの固定発生源によって、有害大気汚染物質の製造・使用状況等が異なることが考えられるため、ある地点における測定結果から他の地点における大気汚染の状況を推測することは難しい。このため、より多くの地点においてきめ細かく有害大気汚染物質の汚染状況を監視する必要性等の観点から、年度ごとに測定地点を変えて監視を実施することは差し支えない。 - イ 測定項目
固定発生源周辺においては、地域の固定発生源で製造・使用され、排出されると考えられる物質について測定を実施するものとする。
- ア 測定地点の選定
③ 沿道
- ア 測定地点の選定
沿道における測定地点については、交差点、道路及び道路端付近において、自動車から排出される有害大気汚染物質による大気汚染状況が効率的に監視できるよう、固定発生源からの有害大気汚染物質の排出の直接の影響を受けにくいと考えられる地点において、車種別交通量、走行速度、気象条件及び地理的条件を勘案し、自動車からの排出が予想される有害大気汚染物質の濃度が、沿道における他の地点と比較して相対的に高くなると考えられる地点を優先的に選定するよう努めるものとする。
また、経年変化が把握できるよう、原則として同一地点で継続して監視を実施するものとする。 - イ 測定項目
沿道においては、自動車からの排出が予想されるアセトアルデヒド、1,3-ブタジエン、ベンゼン、ベンゾ[a]ピレン、ホルムアルデヒド等について監視を実施するものとする。
- ア 測定地点の選定
(3)測定地点の見直し
人口、環境濃度レベルの変化等によりⅡの2.(1)アに規定する全国的視点から必要な測定地点数の算定基礎データが変化した場合又は発生源、道路、交通量の状況等の社会的状況の変化等によりⅡの2.(1)イに規定する地域的視点から必要な測定地点数の算定基礎データが変化した場合には、適宜、測定地点の数及び配置について再検討を行い、必要に応じて見直しを行うこととする。
(4)既存の測定局の活用
これまでに設置された一般環境大気測定局及び自動車排出ガス測定局を有害大気汚染物質の測定地点として活用することは、サンプリングを確実に実行し、また効率的に常時監視体制を整備する上でも有効である。このため、上記(2)に基づき、選定すべき測定地点として適正であるか判断の上、既存の測定局の中から測定地点を選択することは差し支えない。
3.測定頻度等
長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質の常時監視においては、原則として年平均濃度を求めるものとする。
有害大気汚染物質の排出等は、人の社会・経済活動に密接に関係しているため、季節変動、週内変動及び日内変動が認められる。常時監視に当たって、これらの変動が適切に平均化されるよう、原則として月1回以上の頻度で測定を実施するものとする。その際、連続24時間のサンプリングを実施し、日内変動を平均化するものとする。さらに、サンプリングを実施する曜日が偏らないようにし、週内変動を平均化することが望ましい。
サンプリング方法及び対象物質によっては、連続24時間のサンプリングによると破過する場合があるが、この場合はサンプリングを数回に分けて連続して行うものとする。
4.試料採取口の高さ
サンプリングにおける試料採取口の地上高さは、粒子状でない物質については、原則として、通常人が生活しうる高さである地上1.5mから10mにおいて行うものとする。粒子状の物質については、地上からの土砂の巻上げ等による影響を排除するため、原則として、地上3mから10mの高さにおいて行うものとする。なお、高層集合住宅等地上1Om以上の高さにおいて人が多数生活している実態がある地域においては、その実態を勘案し、試料採取口の高さを適切に設定するものとする。
5.測定方法
測定方法については、「有害大気汚染物質測定方法マニュアル」(平成9年2月12日環大規第27号、平成9年8月23日環大規第211号、平成10年3月30日環大規制第65号、平成11年3月31日環大規第88号及び平成15年12月26日環管大発第031226001号)によるものとする。
6.測定値の取扱い及び評価
(1)評価の対象としない測定値等
Ⅱの6.(1)ア及びイの例による。
(2)年平均値の算出
測定結果を評価する際には、地点ごとに、測定値を算術平均して求めた年平均値を用いるものとし、環境基準値が設定されている物質については基準値との比較によってその評価を行うものとする。測定値が検出下限値未満のときは、検出下限値の1/2として年平均値の算出に用いるものとする。十分な測定頻度で測定を実施できなかった場合又は欠測が多く測定値の得られた季節が偏っている場合等は、結果の評価に際し留意する必要がある。
(3)異常値の取扱い
これまでの測定結果等から判断して、極端に高い若しくは低いと考えられる測定値が得られた場合又は前回の測定値と比較して極端に測定値が変動している場合には、その測定値は異常値である可能性がある。このときは、サンプリング、試料の輸送、前処理、機器分析という一連の作業に問題がないかを確認し、問題がない場合には、サンプリング時の周囲の状況に通常考えにくい事象等がなかったかを確認するものとする。以上の情報を総合的に勘案して、異常値と考えられる場合には、測定値は欠測とするものとする。
なお、異常値の可能性がある測定値が得られた場合には、可能な限り速やかに再測定を行うことが望ましい。
7.精度管理
有害大気汚染物質の測定は、サンプリング、試料の輸送、前処理、機器分析といったバッチ処理によって行われることが通常であり、有効な測定を行うため、それぞれの作業及び機器の管理等を適切に実施するものとする。また、作業に係る情報等を記録し、測定が終了した後に精度管理が十分にされているかを記録によって確認できるようにするものとする。
8.結果の報告
法第22条第2項の規定に基づく常時監視の結果の報告については、別途環境省が指定する方法により指定する期日までに行うものとする。
別添 優先取組物質
- 1.アクリロニトリル
- 2.アセトアルデヒド
- 3.塩化ビニルモノマー
- 4.クロロホルム
- 5.クロロメチルメチルエーテル
- 6.酸化エチレン
- 7.1,2-ジクロロエタン
- 8.ジクロロメタン
- 9.水銀及びその化合物
- 10.タルク(アスベスト様繊維を含むもの)
- 11.ダイオキシン類
- 12.テトラクロロエチレン
- 13.トリクロロエチレン
- 14.ニッケル化合物
- 15.ヒ素及びその化合物
- 16.1,3-ブタジエン
- 17.べリリウム及びその化合物
- 18.ベンゼン
- 19.ベンゾ[a]ピレン
- 20.ホルムアルデヒド
- 21.マンガン及びその化合物
- 22.六価クロム化合物