法令・告示・通達
大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令及び大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令の施行について
環大規289号
環境庁大気保全局長から各都道府県知事・各政令市市長あて
大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令(昭和56年政令第215号)が昭和56年6月2日付けをもつて、大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和56年総理府令第46号)が昭和56年9月30日付けをもつて、それぞれ制定、公布され、いずれも公布の日から施行された。
本改正は、二酸化窒素に係る大気汚染の防止に寄せる国民の期待等にこたえるため、窒素酸化物に係る総量規制を導入することとし、法令上の所要の整備を図つたものである。
貴職におかれても、窒素酸化物に係る総量規制制度の厳正かつ実効性のある施行について万全を期するため、下記の事項に十分御留意の上、格段の御協力を願いたく通達する。
記
第1 改正の内容
1 大気汚染防止法施行令の一部を改正する政令の内容
- (1) 大気汚染防止法(昭和43年法律第97号。以下「法」という。)第5条の2第1項の指定ばい煙として新たに窒素酸化物を指定したこと。(大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号。以下「令」という。)第7条の2)
- (2) 窒素酸化物に係る法第5条の2第1項の指定地域(以下「指定地域」という。)として令別表第3第33号に掲げる区域、同表第35号に掲げる区域及び同表第58号に掲げる区域を指定したこと。(令第7条の3及び別表第3の3)
- (3) 窒素酸化物に係る指定ばい煙総量削減計画は、窒素酸化物に係る大気環境基準の昭和60年3月における確保を目途としてその達成の期間を定めるものとしたこと。(令第7条の4)
- (4) 公布の日から施行することとしたこと。
(附則)
2 大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令の内容
- (1) 窒素酸化物に係る特定工場等の規模に関する基準を定めたこと。(大気汚染防止法施行規則(昭和46年厚生省・通商産業省令第1号。以下「規則」という。)第7条の2)
- (2) 窒素酸化物に係る総量規制基準について定めたこと。(規則第7条の4)
- (3) 窒素酸化物に係る総量規制基準を適用する場合における窒素酸化物の量の測定方法を定めたこと。(規則第7条の5)
- (4) 窒素酸化物に係る特定工場等についてのばい煙量等の測定について定めたこと。(規則第15条)
- (5) ばい煙発生施設の設置等の届出の様式を改めたこと。(規則様式第1別紙2)
- (6) 公布の日から施行することとしたこと。
(附則)
第2 環境基準の確保と窒素酸化物に係る総量規制について
1 地域指定の考え方
今回、地域指定を行つた令別表第3の3に掲げる地域は、工場又は事業場が集合している地域であつて、昭和53年7月環境庁告示第38号第2の1に規定する「1時間値の1日平均値が0.06ppmを超える地域」について、昭和54年度に実施した窒素酸化物に係る大気汚染予測に関する調査結果を踏まえ、
- (1) 現在の窒素酸化物に係る排出規制状態等のまま推移した場合に、二酸化窒素に係る環境基準(以下「環境基準」という。)が昭和60年までに確保されるかの見通し
- (2) 昭和60年において予測される環境濃度についての工場又は事業場による寄与の見通し及び昭和60年までの工場又は事業場に対する削減対策の必要性
- (3) 昭和60年までに実施すべき工場又は事業場に対する対策としての総量規制による削減対策の適切性
等に関し総合的に検討を行い、昭和60年までに環境基準を確保するため総量規制を導入することにより所要の削減対策を実施することが特に緊要であると認められた地域であること。
なお、環境庁としては、今後も(1)、(2)及び(3)の観点からの検討を踏まえ、窒素酸化物に係る総量規制の導入が必要であると認められる地域については、関係地方公共団体の意見を聴し、地域指定を行う考えであること。
2 環境基準の確保について
- (1) 窒素酸化物に係る総量規制は、昭和60年3月における環境基準の確保を目途として行われるものであり、地域指定が1の考え方に基づいて行われたことにかんがみ、具体的には、一般公衆が通常生活していない地域又は場所を除くすべての地域又は場所における二酸化窒素に係る大気環境濃度が、昭和60年3月までに二酸化窒素の1時間値の1日平均値0.06ppmを確保する濃度となることを目途としなければならないこと。
- (2) 窒素酸化物については、その発生源が多岐にわたつており、その排出と大気の汚染との関係が複雑であるので、環境基準を確保するためには、昭和53年7月環境庁告示第38号第2の3にもあるように、「個別発生源に対する排出規制のほか、各種の施策を総合的かつ有効適切に講ずる」ことが重要であることから、各種の観点から総合的に検討を行い、当該地域の大気汚染の状況等に照らし、有効適切な施策を講ずることが必要であること。
- (3) 窒素酸化物に係る総量規制は、上記の施策のうち、環境基準の確保を目途として一定規模以上の工場又は事業場に対して行う窒素酸化物の排出総量の規制として位置づけられるものであるが、その具体化に当たつては、地域の大気汚染の実情を十分に勘案して、既に実施され又は今後見通される規制の効果・動向、技術的対応可能性、各種の対策の実施の見通し等を十分に踏まえた上で、総量規制が環境基準の確保の上で有効適切なものであるとともに、各種の施策の見通し等の上でも均衡のとれたものとすることが重要であること。
- (4) 今回地域指定を行つた地域以外の地域においても、今後とも、当該地域における二酸化窒素の大気環境濃度の推移の状況、環境基準の維持達成のために実施すべき有効適切な対策の方途等について十分に検討を行うとともに、環境庁と密接な連絡調整を図られたいこと。
第3 窒素酸化物に係る総量規制基準に関する事項
1 特定工場等について
- (1) 窒素酸化物に係る特定工場等(以下「特定工場等」という。)の規模については、総量規制の効果的な実施に資するため、当該地域において工場又は事業場から排出される窒素酸化物の総量の相当部分(少なくとも80%以上)に対して総量規制基準が適用されるように定められたいこと。
- (2) 特定工場等の規模は、工場又は事業場に設置されているすべての窒素酸化物に係るばい煙発生施設において使用される原燃料の量を、ばい煙発生施設の種類に応じた窒素酸化物の排出特性等を勘案して重油の量に換算したものにより定めることとされたこと。(規則第7条の2第2項)
なお、総量規制の効果的な実施のためには、工場又は事業場が特定工場等に該当するか否かの要件は、ばい煙発生施設の種類によつて原燃料の使用量当たりの窒素酸化物の排出量に差異が認められることを踏まえた上で、当該工場又は事業場から排出される窒素酸化物の排出量の多寡の実態を適切に反映するものでなければならないことから、ばい煙発生施設の種類に応じた窒素酸化物の排出特性等を勘案して重油の量に換算することとされたものであること。
また、ここで「窒素酸化物に係るばい煙発生施設」とは、令別表第1の1の項から15の項まで、18の項、19の項に掲げる施設のうち光ニトロソ化法によるカプロラクタムの製造の用に供し、又は亜硝酸ナトリウムを用いてニトロソ化反応若しくはジアゾ化反応を行う工程に供する塩化水素反応施設及び塩化水素吸収施設、21の項に掲げる施設のうち焼成炉及び溶解炉、23の項に掲げる施設のうち乾燥炉及び焼成炉並びに24の項から28の項までのばい煙発生施設をいうものであること。 (3) 特定工場等の規模の決定に用いられる規則第7条の2第3項の規定に基づく原燃料の量の重油の量への換算方法については、昭和56年9月環境庁告示第82号をもつて告示されたところであり、その概要は次のとおりであること。
- ① 窒素酸化物の発生が主に原料に起因し、燃料の量と窒素酸化物の排出量との関係を適切にとらえることが困難であると認められる一定のばい煙発生施設については、当該原料の量を重油の量に換算することとし、用いられる原料の種類ごとにそれぞれの量一単位を、当該原料の量一単位の処理に伴い発生する窒素酸化物の量に相当する窒素酸化物を標準的な燃焼に伴い発生する重油の量に換算すること。
- ② ①でその原料を重油の量に換算することとされたばい煙発生施設以外の窒素酸化物に係るばい煙発生施設については、当該施設で使用される燃料の量を重油の量に換算することとし、用いられる燃料の種類ごとに、その燃料の発熱量に応じた換算方法に従つて重油の量への換算を行い、更に、窒素酸化物の排出特性に重油の標準的燃焼の場合と著しい差異が認められる施設で用いられる燃料については、特別の換算係数を乗ずること。
なお、原燃料の重油の量への換算方法に係る詳細については、別途通知することとしていること
- (4) 原燃料の量の重油の量への換算に際しての、換算すべき原燃料の種類、その換算の値等換算方法の具体的内容については、当該地域における窒素酸化物に係るばい煙発生施設の窒素酸化物の排出特性等を十分に勘案の上、都道府県知事が定められたいこと。
- (5) 特定工場等の規模は、すべての窒素酸化物に係るばい煙発生施設を定格能力で運転する場合における原燃料の使用量により定めるものとすること。
2 総量規制基準の設定について
- (1) 窒素酸化物に係る総量規制基準(以下「総量規制基準」という。)は、特定工場等に設置されているすべての窒素酸化物に係るばい煙発生施設において使用される原燃料の量を基礎として算定する方式(以下「原燃料使用量方式」という。規則第7条の4第1項第1号)又は特定工場等に設置されているすべての窒素酸化物に係るばい煙発生施設の排出ガス量にばい煙発生施設の種類ごとに定める施設係数を乗じて得た量の合計量を基礎として算定する方式(以下「基礎排出量算定方式」という。同項第2号)により、それぞれ同条第2項及び第3項に定める算式を基本とした算式により定めなければならないこと。
なお、指定地域における自然的、社会的条件により、上記の方式により難いときは、環境庁長官が別に定めるところにより、総量規制基準を定めることができることとされていること。(規則第7条の4第5項) - (2) 原燃料使用量方式は、窒素酸化物に係るばい煙発生施設において使用される原燃料の量を重油の量に換算したものが、おおむね窒素酸化物の排出量に比例するものであることに着目した方式であり、基礎排出量算定方式は、窒素酸化物の排出特性等がばい煙発生施設の種類ごとに差異を有すること及び法第3条第1項の規定に基づく窒素酸化物に係る排出基準がばい煙発生施設の種類ごとに設定されてきたという経緯があることに着目した方式であること。
いずれの方式により総量規制基準を定めるかの選択については、両方式の特色を十分に理解の上、当該地域における特定工場等に設置されている窒素酸化物に係るばい煙発生施設の種類、規模、特定工場等における窒素酸化物の排出の状況等の条件を考慮して適切な方式と認められる方式を選択されたいこと。 (3) 規則第7条の4第1項第1号に掲げる窒素酸化物の量として総量規制基準を定めるときは、次の事項に留意されたいこと。
- ① 規則第7条の4第2項第1号に掲げる式のa及びbの値は、当該地域における削減目標量を達成するよう定めるべきこと。
また、bの値は、0.80以上1.0未満の範囲内で、当該地域における特定工場等の規模別の分布の状況、規模別発生源の燃料使用量と窒素酸化物の排出量との関係の実態、各特定工場等の地上汚染寄与の状況、燃料需給の動向の見通し、窒素酸化物に係る対策技術の状況、規模別発生源の対応能力等を考慮し、合理的に定めるべきこと。 - ② 規則第7条の4第2項第1号に掲げる式のWの値は、原則としてばい煙発生施設を定格で運転する場合における原燃料の使用量とすること。ただし、当該地域における特定工場等において通常使用される原燃料の量(以下「通常の原燃料使用量」という。)と定格運転時の使用量との間に大きな差があり、定格運転時の使用量を用いることにより算定される基準値に、特定工場等間で不公平が生ずるような場合であつて、通常の原燃料使用量が明確に把握されるときは、適当な期間の実績による通常の原燃料使用量を採用することができるものとすること。
- ① 規則第7条の4第2項第1号に掲げる式のa及びbの値は、当該地域における削減目標量を達成するよう定めるべきこと。
(4) 規則第7条の4第1項第2号に掲げる窒素酸化物の量として総量規制基準を定めるときは、次の事項に留意されたいこと。
- ① 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のkの値は、1.0未満の削減定数であつて、当該地域における削減目標量を達成するよう定めるべきこと。
- ② 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のlの値は、0.80以上1.0未満の範囲内で、当該地域における特定工場等の規模別の分布の状況、各特定工場等の地上汚染寄与の状況、窒素酸化物に係るばい煙発生施設ごとの規模別の窒素酸化物の排出状況、窒素酸化物に係る対策技術の状況、規模別発生源の対応能力等を考慮し、合理的に定めるべきこと。
- ③ 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のVは、温度零度、圧力1気圧の状態に換算した排出ガス量(単位 万立方メートル)であつて、排出ガス中の酸素の濃度が0パーセントの乾き排出ガス量であること。
- ④ 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のVは、原則としてばい煙発生施設を定格で運転する場合における排出ガス量とすること。この場合の運用上の留意事項は、(3)の②のただし書に準ずるものとすること。
- ⑤ 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のVの認定に当たつては、法第6条第1項又は第7条第1項の規定に基づくばい煙発生施設の設置に関する届出等を活用して求める方法、理論乾き排出ガス量を算出することにより求める方法等があるが、排出ガス量、排出ガス中の酸素濃度、排出ガス中の水分量等に関する実測値を参考にする等いくつかの方法により検討し確認する等により、適切に認定するよう努められたいこと。
- ⑥ 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式のCは、昭和56年9月環境庁告示第83号に定める方法により、都道府県知事がばい煙発生施設の種類ごとに定める施設係数であつて、③で述べた排出ガスの状態に対応する窒素酸化物に係るばい煙濃度の状態を意味するものであり、当該地域における各ばい煙発生施設の排出特性等を十分に勘案の上設定されたいこと。
なお、Cの設定方法に係る詳細については、別途通知することとしていること。 - ⑦ 規則第7条の4第2項第2号に掲げる式の(ΣCV)′で示される量は、当該地域における特定工場等の窒素酸化物の基礎排出量を意味するものであること。
ΣCVにl乗したのは、法第3条第1項の規定に基づく窒素酸化物に係る排出基準についても、多くのばい煙発生施設においてその規模に応じて排出基準が厳しく設定されている経緯等を踏まえ、ΣCVの量が増加するに従い基礎排出量の増加率がてい減するようにしたものであること。
(5) 総量規制基準の設定に当たつては、次の点にも十分配慮すること。
- ① 特定工場等ごとの地上汚染寄与の状況等についての検討を踏まえて行うこととし、特定の工場又は事業場の寄与が特に高いと認められる場合には、必要に応じ総量規制基準の設定に先立つて当該工場又は事業場の個別対策について検討すること。
- ② 各ばい煙発生施設の排出特性、対策技術等を把握し、適切に評価した上で、特定工場等間、業種間等において規制のレベルに著しい相違が生ずることがないよう配慮すること。
- ③ 窒素酸化物対策に係る技術的対応可能性を踏まえること。
- ④ 排出が許容される窒素酸化物の量の算定は、原則として、当該特定工場等に設置されているばい煙発生施設を定格で運転する場合における原燃料使用量又は排出ガス量を用いるものであることにかんがみ、ばい煙発生施設の排出特性を把握する場合には、当該ばい煙発生施設を定格で運転する場合の排出特性を把握されたいこと。
- ⑤ 従来、特定工場等において講じられてきた又は講じられる予定の窒素酸化物対策の経緯及び当該対策の実態について尊重すること。
3 窒素酸化物に係る特別の総量規制基準の設定について
- (1) 窒素酸化物に係る特別の総量規制基準(以下「特別の総量規制基準」という。)の設定に当たつては、その制度の趣旨にかんがみ、今後の窒素酸化物に係るばい煙発生施設の新増設の見通し等を適確に把握し、また新増設のばい煙発生施設に係る窒素酸化物の対策技術の状況等を考慮して、一般の総量規制基準の設定方式に準じて定めること。なお、この場合、特定工場等に係る削減目標量は、特段の事情の変更がない限り、目標年以降も維持される必要があることから、目標年以降についても、相当程度の確実性をもつて見込まれる窒素酸化物に係るばい煙発生施設の新増設の見通しを把握しておくこと等が必要であること。
(2) 特別の総量規制基準を定めるに当たつては、次に述べる事項に留意されたいこと。
① 規則第7条の4第3項第1号に掲げる式により特別の総量規制基準を定める場合
- ア a及びbの値は、規則第7条の4第2項第1号の総量規制基準の式において用いられるa、及びbの値と同じ値であること。
- イ rの値は、0.3以上0.7以下の範囲内で、当該地域における特定工場等の設置の状況の推移、新増設施設に係る窒素酸化物の対策技術の状況等を勘案して定めること。
② 規則第7条の4第3項第2号に掲げる式により特別の総量規制基準を定める場合
- ア k及びlの値は、規則第7条の4第2項第2号の総量規制基準の式において用いられるk及びlの値と同じ値であること。
- イ Ciは、昭和56年9月環境庁告示第83号に定める方法により、都道府県知事がばい煙発生施設の種類ごとに定める施設係数であり、当該地域における特定工場等の設置の状況の推移、新増設施設に係る窒素酸化物の対策技術の状況等を勘案して定めること。
なお、Ciの設定の方法に係る詳細については、別途通知することとしていること。
- ③ 規則第7条の4第3項の「都道府県知事が定める日」としては、特別の総量規制基準の公示の日以後の日を定めること。
なお、指定地域の変更又は特定工場等の規模の変更により、特定工場等以外の工場又は事業場が新たに特定工場等になつた場合における当該特定工場等に対する特別の総量規制基準の適用については、「都道府県知事が定める日」を当該変更の行われた日以後の日に定めること。
また、「都道府県知事が定める日」において設置等の工事がされているばい煙発生施設については、既存のばい煙発生施設として取り扱うこと。
4 総量規制基準の公示及び適用について
- (1) 総量規制基準の公示に当たつては、総量規制基準の算定式のほか特定工場等の規模、原燃料使用量の換算方法、原燃料使用量又は窒素酸化物の量の認定方法、適用区域等総量規制基準の適用のために必要なすべての事項について、あわせて公示しなければならないこと。
- (2) 総量規制基準を公示する場合には、窒素酸化物に係る指定ばい煙総量削減計画(以下「計画」という。)の達成の期間、特定工場等において採られる対応措置等を考慮して、所要の期間をおいて適用期日を定めなければならないこと。
第4 窒素酸化物に係る指定ばい煙総量削減計画に関する事項
1 計画に定める事項について
計画の各事項は、次のように定められたいこと。
- (1) 計画の達成の期間は、昭和60年3月における環境基準の確保を目途として定めること。
- (2) 計画の達成の方途は、特定工場等の規模、総量規制基準の適用区域及び適用期日その他総量規制基準の設定に関する基本的内容を定めること。
2 計画の作成に当たり勘案すべき事項等
- (1) 計画の作成に当たつては、窒素酸化物はその発生源が多様であること、法第3条第1項の規定に基づく排出基準や法第19条の規定に基づく自動車排出ガスの許容限度の設定等の効果の発現が今後目標年までに相当見込まれ得ること等から、今後の総量規制以外の窒素酸化物対策の見通し、特定工場等以外の窒素酸化物の発生源における窒素酸化物の排出状況の推移等については、関係者から必要が情報を入手する等により十分に検討すること。
- (2) 窒素酸化物に係る法第5条の3第1項第4号の削減目標量及び計画の達成の方途を決定するに際しては、従来のばい煙処理対策の経緯、技術的対応可能性、燃料の軽質化の状況等のエネルギー情勢等についても十分考慮されたいこと。
3 窒素酸化物に係る法第5条の3第1項第1号の総量及び同項第2号の総量の把握は、次に述べるところにより行われたいこと。
- (1) 特定工場等について
特定工場等ごとに個別調査により、季節別、時間帯別等の各時期ごとの原燃料使用量及び設備の定格能力を求め、更に窒素酸化物に係るばい煙濃度の測定値等から窒素酸化物の排出量を求めること。 (2) その他の窒素酸化物の発生源について
(1)以外の窒素酸化物の発生源としては、- ① 特定工場等以外の工場・事業場
- ② 自動車
- ③ 船舶
- ④ 航空機
- ⑤ 家庭暖房その他の人の活動によるもの
が考えられるが、これらの発生源から排出される窒素酸化物の量については、次に述べるところによりできる限り正確に把握するものとすること。
①については、特定工場等に準じて求めるほか、実態調査結果等から原燃料使用量等を求め、これに排出原単位を乗ずることにより、窒素酸化物の排出量を求めること。
②については、自動車の走行量を求め、これに排出原単位を乗ずることにより、窒素酸化物の排出量を求めること。
この場合、自動車の走行量は、道路交通量実態調査結果を活用し、又は社会指標等を用いて推計すること等により求め、排出原単位は、当該地域内の自動車の実走行モードに基づくものを求めること。
③については、港湾調査票等から船舶の入出港動向等を把握し、船舶搭載機関の稼働状況及び使用燃料の量等を求め、これに排出原単位を乗ずることにより、窒素酸化物の排出量を求めること。なお、排出量の算定の範囲は、港湾区域内とすること。
④については、地域内の空港の航空機の発着回数等を求め、これに航空機のモード等を考慮した機種別の排出原単位を乗ずることにより、窒素酸化物の排出量を求めること。
⑤については、家庭等における都市ガス、灯油等の燃料の消費量を求め、これに燃料の種類別の排出原単位を乗ずることにより、窒素酸化物の排出量を求めること。
4 窒素酸化物に係る法第5条の3第1項第3号の総量(以下「3号総量」という。)の算定に当たつては、次に述べる事項に留意されたいこと。
- (1) 目標値
3号総量は、環境基準に照らして算定されるものであり、当該地域の二酸化窒素に係る大気環境濃度が環境基準を確保する濃度となることを目途として算定するものであること。
すなわち、第2の2の(1)において述べたとおり、一般公衆が通常生活していない地域又は場所を除くすべての地域又は場所における二酸化窒素に係る大気環境濃度が、昭和60年3月までに二酸化窒素の1時間値の1日平均値0.06ppmを確保する濃度となることを目途として算定すること。
なお、この場合、3号総量の算定に当たつての目標値として二酸化窒素の年平均値を採用する場合には、環境基準の設定の基礎となつた昭和53年3月22日付け中央公害対策審議会答申「二酸化窒素の人の健康影響に係る判定条件等について」における長期暴露に係る指針に照らし、1日平均値0.06ppmに相当する年平均値は0.03ppmであることに配慮されたいこと。 - (2) 3号総量の算定
3号総量を算定するに当たつては、現状の発生源と気象に関する情報に基づき、大気汚染予測手法を用いて推定された大気の汚染状態と実測された現状の大気の汚染状態とを照合して相当程度適合していることを確認した後、目標年における発生源の状態の予測と気象条件の設定により、大気の汚染状態を予測し、その結果を踏まえて環境基準の確保を目途として3号総量を設定するものであること。
この場合、現状の発生源については、できる限り詳しい情報を入手する必要があること。なお、隣接地域の発生源による影響が無視し得ない場合には、影響を受けるおそれのある発生源について3の方法に準じ情報を得るよう努める必要があること。また、隣接地域からの求めがあつた場合には、必要な情報を提供するよう配慮すること。
また、目標年における発生源については、特定工場等に関しては、特定工場等ごとに個別の調査を実施し、発生源の将来計画を求め、その設備の定格能力、稼働条件等から窒素酸化物の排出条件を推定することとし、特定工場等以外の発生源に関しては、地域の経済、社会活動の指標の推移等を見通した上で、発生源の種類ごとに窒素酸化物の排出条件を推定すること。
なお、目標年における大気の汚染状態を推定し、その結果を踏まえて3号総量を設定するに当たつては、明らかに特定要因に基づく局地的高濃度汚染が生じている場合には適切な改善措置について検討し、また特定工場等以外の発生源についての各種の対策の見通し等を十分に考慮されたいこと。
5 窒素酸化物に係る法第5条の3第1項第4号の削減目標量の設定に当たつては、次に述べる事項に留意されたいこと。
- (1) 削減目標量は、特定工場等に対して総量規制基準を適用することにより削減を行つた後において、当該指定地域におけるすべての特定工場等に設置されているばい煙発生施設において発生し、排出口から大気中に排出されることとなる窒素酸化物の総量であること。
- (2) 削減目標量を定めるに当たつては、当該地域における特定工場等の新増設の動向を十分に把握し、新増設が行われた場合においても所要の削減が可能となるよう、合理的な総量規制基準の設定により、既設及び新増設の特定工場等から排出される窒素酸化物についてそれぞれの削減見通しをつける必要があること。
第5 その他
1 窒素酸化物に係る測定について
- (1) 総量規制基準を適用する場合における窒素酸化物の量の測定方法は、日本工業規格K0104に定める方法により測定した窒素酸化物濃度及び日本工業規格Z8808に定める方法により測定した排出ガス量から算定する方法又は環境庁長官が定める方法とされたこと。(規則第7条の5第2項)
なお、環境庁長官が定める方法については、おつて告示することとしていること。 - (2) 総量規制基準の遵守に資するため、特定工場等に設置されているばい煙発生施設における窒素酸化物に係るばい煙濃度の測定は、原則として排出ガス量が4万Nm3/h以上のばい煙発生施設については、常時行うこととされたこと。(規則第15条第5項)
なお、規則第15条第5項の環境庁長官が定めることとされている事項については、おつて、告示することとしていること。
2 届出の様式の改正について
法第6条第1項、第7条第1項及び第8条第1項の規定に基づき、規則様式第1別紙2を改め、「ばい煙発生施設の使用の方法」中の「排出ガス量(Nm3/h)」は、湿りガスと乾きガスの両者について届け出なければならないこととしたこと。
3 電気工作物等について
電気工作物又はガス工作物であるばい煙発生施設の取扱いについては、法第27条第2項から第5項までに定められているとおりであり、これらの施設に対する総量規制基準の遵守に係る指導等については、通商産業省より別途行われることとなつているが、貴職におかれても法第27条第4項に基づく通商産業大臣に対する要請及び令第12条第1項後段の規定に基づく報告徴収又は同条第2項後段の規定に基づく立入検査権限の行使に努めることにより、総量規制の実効をあげられたいこと。
4 鉱山について
鉱山保安法の適用を受ける工場等(以下「鉱山」という。)については、総量規制基準等に関する規定は適用されないが、特定工場等と同等の削減を行うよう鉱山保安法の体系で措置されることになつていること。したがつて、計画の作成に当たつては、鉱山についても特定工場等と同様の削減が行われることを見込まれたいこと。
なお、計画の作成のため必要な鉱山に関する資料は、所轄鉱山保安監督部(局)に求められたいこと。