法令・告示・通達

石綿に係る特定粉じんの濃度の測定法

公布日:平成1年12月27日
環境庁告示93号

 大気汚染防止法施行規則第十六条の二及び第十六条の三第一号に規定する石綿に係る特定粉じんの濃度の測定法は、別表のとおりとする。


別表

   石綿に係る特定粉じんの濃度の測定法

第1 装置、器具及び試薬

  装置、器具及び試薬は、次に掲げるとおりとする。

 1 試料の捕集のための装置及び器具

  (1) 捕集用ろ紙
    直径が47mm、平均孔径が0.8μmの円形のセルロースエステル製のろ紙
  (2) 捕集用ろ紙のホルダー
    直径47mmの円形ろ紙用のホルダーで有効ろ過面の直径が35mmとなるオープンフェイス型のもの
  (3) 吸引ポンプ及び流量計捕集用ろ紙をホルダーに装着した状態で第2の1に定める流量が得られる電動式吸引ポンプ及び流量計
  (4) 捕集用ろ紙の収納容器捕集用ろ紙を密閉して収納することができるもの

 2 石綿の計数のための装置及び器具

  (1) 顕微鏡
    倍率40倍の対物レンズ及び倍率10倍の接眼レンズを使用する光学顕微鏡(位相差顕微鏡及び生物顕微鏡としての使用が可能なものに限る。)
  (2) スライドガラス
    日本工業規格R3703に定める顕微鏡用スライドガラス(1種、標準形)
  (3) カバーガラス
    日本工業規格R3702に定める顕微鏡用カバーガラス(等級1種、厚さNo.1―S)
  (4) アイピースグレイティクル
    接眼レンズに装着することにより顕微鏡によつて観測される繊維の大きさを計測し得るもの

 3 捕集用ろ紙を透明にするための試薬及び装置

  (1) 試薬
    次のいずれかのものを用いることとする。
  1.    ア フタル酸ジメチル及びシュウ酸ジエチル
  2.    イ アセトン及びトリアセチン
  (2) 装置
    アセトン蒸気発生装置(試薬として(1)のイを用いる場合に限る。)

第2 測定の手順

  濃度の測定は、次の手順により行うものとする。

 1 試料の捕集

   ホルダーに捕集用ろ紙を装着し、原則として10l/minの流量で4時間通気して、ろ紙上に試料を捕集する。
   試料の捕集後、ろ紙をホルダーから外し、直ちに収納容器に収納する。

 2 顕微鏡標本の作製

   ろ紙を汚染するおそれのない清浄な室内において、試料を捕集したろ紙を収納容器から取り出し、二等分する。
   二等分したろ紙の一方を第1の3の(1)の試薬を用いて透明にする。透明にする方法は、次のとおりとする。
  1.   (1) 試薬としてフタル酸ジメチル及びシュウ酸ジエチルを用いる場合
        フタル酸ジメチル及びシュウ酸ジエチルを1対1の割合で混合した溶液の中に、未使用の捕集用ろ紙を0.05g/mlの割合で加えて溶解したもの1滴(0.03~0.05ml)をスライドガラスのほぼ中央に滴下し、その上に試料を捕集したろ紙を採じん面を上にして載せる。ろ紙が透明になってきたらカバーガラスを載せて固定する。
  2.   (2) 試薬としてアセトン及びトリアセチンを用いる場合
        スライドガラスの上に試料を捕集したろ紙を採じん面を上にして載せ、アセトン蒸気発生装置により発生させたアセトン蒸気を当てる。ろ紙が透明になってきたらろ紙のほぼ中央にトリアセチンを2~3滴滴下し、その上にカバーガラスを載せて固定する。

 3 石綿の計数

   位相差顕微鏡により、長さが5μm以上かつ長さと幅の比が3対1以上の繊維状物質の計数を行う。
   この場合、計数の対象とする繊維が認められた視野については、位相差顕微鏡を生物顕微鏡としたのち再度計数を行い、それぞれの計数値の差(以下「計数繊維数」という。)を求める。
   計数は、50視野について又は計数繊維製の合計が200本以上になるまで行う。

 4 石綿濃度の算出

   次式により石綿に係る特定粉じん濃度(以下「石綿濃度」という。)を算出する。
  F=((A×N)/(a×n×V))
  この式において、F、A、N、a、n及びVは、それぞれ次の値を表す。
  •   F 石綿濃度(単位 本/l)
  •   A 捕集用ろ紙の有効ろ過面の面積(単位 cm2)
  •   N 計数繊維数の合計(単位 本)
  •   a 顕微鏡の視野の面積(単位 cm2)
  •   n 計数を行った視野の数
  •   V 採気量(単位 l)

備考

  1. 1 この測定法における用語その他の事項で測定法に定めのないものについては、日本工業規格に定めるところによる。
  2. 2 次に掲げる場合にあつては、都道府県知事又は大気汚染防止法施行令(昭和43年政令第329号)第13条に規定する市の長が示すところにより、評価の対象とする石綿以外の石綿を除外して石綿濃度の評価を行うことができる。
    1.  (1) 測定の対象とする石綿に係る特定粉じん発生施設が設置されている工場又は事業場に隣接し、又は近接して当該工場又は事業場以外の石綿に係る特定粉じん発生施設が設置されている工場又は事業場がある場合。
    2.  (2) 測定の対象とする石綿に係る特定粉じん発生施設が設置されている工場又は事業場が蛇紋岩地域等測定の対象とする石綿以外の石綿の濃度が高いと認められる地域にある場合。