法令・告示・通達

スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行令及びスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行規則の施行について

公布日:平成3年03月28日
環大自34号

環境庁大気保全局長から各都道府県知事あて

 スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行令(平成2年政令第371号。以下「令」という。)は平成2年12月27日に、スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律施行規則(平成3年総理府令第6号。以下「規則」という。)は平成3年3月28日に、それぞれ公布され、平成3年4月1日から施行されることとなった。
 令は、スパイクタイヤの使用の禁止を定めたスパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律(以下「法」という。)第7条において政令で定めるとされた「禁止されない道路の部分」及び「禁止されない自動車の範囲」並びに同法附則第3条において政令で定めることとされた「禁止が猶予される自動車の範囲」を定めるものである。また、規則は、令第2条第5号の規定に基づき、及び令を実施するため、禁止されない自動車のスパイクタイヤの使用に係る所要の規定を定めるものである。ついては、貴職におかれても、下記事項に留意され令及び規則の趣旨の周知徹底にご協力を願いたい。

第1 令第1条関係

 1 適用除外の考え方

   周囲の道路が一面に積雪又は凍結の状態となる状況下で孤立的・例外的に出現する積雪又は凍結の状態にない道路の部分(以下「孤立的非積雪凍結部分」という。)も文言上は法第7条の「積雪又は凍結の状態にない道路の部分」に該当する。しかし、このような孤立的非積雪凍結部分においてスパイクタイヤを使用したとしても、発生するスパイクタイヤ粉じんによる人の健康、生活環境に与える影響がほとんど無視しうることなどを勘案すれば、スパイクタイヤの使用禁止規定を孤立的非積雪凍結部分で厳格に適用することは、自動車運転者にとって過酷であるといわざるをえない。このようなことから、法第7条は積雪又は凍結の状態にない道路の部分のうち「トンネル内の道路その他の政令で定める道路の部分」でスパイクタイヤの使用規制の適用を除外し、規制の過酷性の緩和を図ることとしている。
   法の委任を受けて令第1条は、周囲の道路が積雪又は凍結の状態にある場合においても、①道路構造上常時積雪又は凍結の状態にならない、②当該道路部分において発生するスパイクタイヤ粉じんが人の健康又は生活環境に影響を及ぼすおそれがない、及び③自動車運転者がその存在を認識できる、という場所的特性を全て満たす道路の部分を立法技術的に可能な限り定型化し列記した。ただし、令第1条各号に列記した道路の部分のほかにも、局部的に設置された消雪施設の働きや、地元住民の除雪等により出現する孤立的非積雪凍結部分のように、法第7条の規定を厳格に適用することが適当でないと考えられる道路の部分があることに留意されたい。

 2 各号について

  (1) 第1号

    「トンネル」とは、山の中、地下等に存する筒状の通路の意味で規定している。したがって、人工的な基盤によって形成された筒状の通路(アンダーパス)、盛土によって他の道路より高い位置に存する道路の下を他の道路が立体交差するため盛土に設けられた筒状の通路等正確には道路法及びその関係法令上の「トンネル」には該当しないものも本号のトンネルに含まれる。

  (2) 第2号

    「橋」は渓谷、海峡等に架けられた人工的な通路であり、道路法等においても高架道路等とは別のものと整理されている。「橋の下の道路の部分」とは、橋の直下の道路の部分のことである。

  (3) 第3号

    「雪覆工」とは、道路構造令第33条第1項に規定されているものであり、いわゆるスノーシェルター、スノーシェッドのことである。
    「防砂のための施設で道路を覆う構造のもの」とは、いわゆる落石覆工のことである。

  (4) 第4号

    「道路の上空に建物が設けられている場合」とは、道路法第47条の5の規定により道路の上空に建物が存する場合のことであり、「道路と建物が一体的な構造である場合」とは、同条及び同法第47条の6等の規定により道路と建物が一体的な構造である場合のことである。

  (5) 第5号

    「道路、鉄道又は軌道で高架のもの」(以下「高架道路等」という。)とは、道路との平面交差を避ける等の理由により盛土以外の方法で高架化されたものをいう。なお、都市部の高架道路等には、その下に並行して道路が存する場合があり、その場合当該下の並行道路上は長距離にわたって積雪又は凍結の状態にならないが、人の健康保護及び生活環境の保全という法の目的並びに規制の過酷性の緩和という適用除外の目的を勘案して、適用除外する部分は高架道路等の立体交差する部分に限ることとしている。

第2 第2条関係

 1 適用除外の考え方

   スパイクタイヤの使用規制に伴い、冬道において自動車運転者は今後スタッドレスタイヤを代替タイヤとして使用することが想定されるが、その登坂性能等は氷盤路ではスパイクタイヤに比べて若干劣るとされている。スタッドレスタイヤでは登坂できないような急勾配の氷盤路は極めて少ないと考えられるものの、氷盤路でスタッドレスタイヤを使用する場合はスパイクタイヤを使用する場合に比べて一般的にタイヤチェーンの併用、若干のスピードダウン等が必要になる機会が増加すると想定される。したがって、極めて緊急性及び公共性の高い用務に使用される自動車、タイヤに強い負荷のかかるためスパイクタイヤでなければ業務の円滑な遂行に支障が生ずるおそれのある除雪車及びタイヤチェーンの着脱作業の困難な者が運転している自動車については、スパイクタイヤの使用規制に当たり、その用務等の特殊性に配慮する必要がある。このため法第7条ただし書では、これらの自動車を「消防用自動車、救急用自動車その他の政令で定める自動車」として定め、法第7条の規制を除外することとしている。
   法第7条ただし書の委任を受けて令第2条は、緊急性・公共性の高い用務に従事する自動車として第1号及び第3号から第5号までを、除雪車として第2号を、並びに身体上の永続的な障害によりタイヤチェーンの着脱が困難な者が運転する自動車として第6号及び第7号をそれぞれ適用除外することとしている。これらは全て、その範囲が法令によって事前に特定されているもので、かつ、適用除外要件該当性が容易に判断できるものに限られている。
   なお、令第2条各号に列記された自動車を適用除外した理由は、上述のようにスタッドレスタイヤが冬道走行の用に供することができないからではなく、したがって、適用除外自動車であっても「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律の施行について(依命通達)」(平成2年7月3日付け環大自第83号)記の第6で述べているように法第3条の規定(国民の責務)により、スパイクタイヤ粉じんを発生させないように努めるべき責務があることに留意されたい。
   また、令第2条各号に列記された自動車以外の自動車であっても、人の生命、身体又は財産に対する急迫した現在の危険を避けるために、当該状況においてやむをえずスパイクタイヤを使用することが緊急避難の法理によって認められる場合があることにも留意されたい。

 2 各号について

  (1) 第1号

    道路交通法施行令第13条第1項に規定されている自動車は、当該緊急用務を実施するために道路交通規制の特例が認められていることから、スパイクタイヤの使用規制についても適用を除外することとしている。
    同条第2項に規定されている自動車は、緊急性の高い用務に定型的に使用されるものであると公安委員会が判断したものではないものの、警察用自動車又は自衛隊用自動車で緊急自動車であるものに誘導されている状況の下では同条第1項に規定されているものと緊急性において相違がないと認められることから、これらについても適用を除外することとしている。ただし、同条第1項の自衛隊用自動車に誘導されている自衛隊用自動車で特殊な構造を有するため道路運送車両法の適用が除外されているものは、第3号で定型的に常時適用が除外されているので留意されたい。

  (2) 第2号

    除雪車はタイヤに強い負荷がかかる等の作業の特殊性から、スタッドレスタイヤでは業務の円滑性を確保することが困難であることから、適用を除外することとしている。

  (3) 第3号

    自衛隊は自衛隊法第6章に規定する緊急用務に従事することが予定されており、自衛隊法施行令第133条に規定する自動車は、当該緊急用務に従事するための特殊な構造を有しているため、自衛隊法第114条により道路運送車両法の適用が除外されている。また、自衛隊用自動車は、道路交通法施行令第13条第1項第2号に規定する自動車として公安委員会によって指定されていないものでも、緊急自動車である自衛隊用自動車に誘導されているときには、特例的に同条第2項の規定により緊急自動車になる。このように、自衛隊自動車のうち自衛隊法施行令第133条に規定するものは、実質的に道路交通法施行令第13条第1項に規定する自動車と変わらないことから、適用を除外することとしている。

  (4) 第4号

    災害対策基本法第76条は、公安委員会が緊急輸送を確保するために必要があると認めるときは、同法施行令第33条の規定によって公安委員会の確認を受けた自動車(緊急輸送車両)に限って期間及び区間を限って通行することができるとしている。同様な規定は大規模地震対策特別措置法第24条及び同法施行令第12条にもある。これらの緊急輸送車両の確認を受けた車両が災害時に走行する場合は、他の自動車にはない特別の緊急性がある場合に限られることから、適用を除外することとしている。

  (5) 第5号

    本号は、令第2条第1号、第3号及び第4号以外の自動車のうち、法第7条ただし書の趣旨からスパイクタイヤの使用規制の適用を除外するに足る緊急性及び公共性が定型的にあると認められるものを令において定めることとしたものである。
    「総理府令で定める緊急用務」は規則第2条に、「総理府令で定めるところ」は規則第3条及び第4条に、それぞれ規定されている。
    自動車の使用者を「国又は地方公共団体」に限ったのは、第1号、第3号又は第4号以外の用務で上記のような性格を有するものを定型的に実施する主体は専ら国又は地方公共団体であると判断したからである。
    「備え付け」とは、当該自動車に備え付けることで足り、外観上分かりやすく掲示することまで求めるものではない。
    規則の詳細に関する留意事項は、別途通達する。

  (6) 第6号及び第7号

    身体障害者福祉法別表第4号又は第5号に掲げる身体上の障害を有する者は、タイヤチェーンの着脱作業が困難である、又は当該作業を冬道において行うことが健康上適当ではないと考えられる。このため、当該身体上の障害を有することを身体障害者手帳によって証明することのできる者又は当該身体上の障害と同等程度の障害を有することを戦傷病者手帳によって証明することができる者が運転している自動車は適用を除外することとしている。

第3 附則関係

 1 施行期日

   令の施行期日は法第7条と同じく平成3年4月1日としている。

 2 スパイクタイヤの使用の禁止が猶予される自動車

   法附則第3条は、法制定時においてスパイクタイヤに代替するタイヤ(以下「小型スタッドレスタイヤ」という。)を装着できない自動車を「道路交通法第3条の大型自動車その他の政令で定める自動車」として定め、これらについては、法第7条本文及び第8条の規定を「政令で定める日」まで適用を猶予することとしている。
   法の委任を受けて令附則第2項では、法第7条及び第8条の猶予規定の適用を受ける自動車の範囲を定めている。車両総重量が3トン以下の自動車は、法公布の日までに供給された小型スタッドレスタイヤを適切に装着できることから、車両総重量が3トンを超える自動車について適用を猶予することとした。
   「道路交通法第3条に規定する大型自動車及び普通自動車で車両総重量が3トンを超えるもの」とは、トラックで最大積載量(自動車検査証に記載されているものをいう。)が1トンを超えるもの及びバスで乗車定員が15人を超えるものにおおむね相当する。また、道路運送車両法上は自動車に該当する貨物トレーラーも小型スタッドレスタイヤを適切に装着できないが、これらは道路交通法上は軽車両に該当するため「これらの自動車にけん引される同法第2条第1項第11号に規定する軽車両で、車両総重量が3トンを超えるもの」と規定して、適用を猶予している。
   なお、法附則第3条の「政令で定める日」については、今後令附則第2項に規定する自動車用のスタッドレスタイヤの冬道用タイヤとしての実用性に関する評価を踏まえて定めることとしている。