法令・告示・通達
揮発性有機化合物濃度の測定法
環境省告示61号
大気汚染防止法施行規則(昭和四十六年厚生省/通商産業省令第一号)第十五条の二及び第十五条の三第一号の規定に基づき、揮発性有機化合物濃度の測定法を次のように定め、平成十八年四月一日から適用する。
大気汚染防止法施行規則(以下「規則」という。)第十五条の二及び第十五条の三第一号に規定する揮発性有機化合物濃度の測定法は、別表第一に掲げる測定法により測定した排出ガス中の気体である有機化合物(以下「揮発性有機化合物」という。)の濃度から、別表第二及び別表第三に掲げる測定法により測定した大気汚染防止法施行令(昭和四十三年政令第三百二十九号)第二条の二に規定する揮発性有機化合物から除く物質(以下「除外物質」という。)の濃度を差し引く方法とする。ただし、次に掲げる場合にあっては、除外物質の濃度を測定し、揮発性有機化合物の濃度から差し引く必要はないものとする。
- 一 揮発性有機化合物排出施設において除外物質を使用し、又は発生させていない場合
- 二 別表第一に掲げる測定法により測定した揮発性有機化合物の濃度が規則第十五条の二に規定する排出基準の値を超えない場合
別表第1
揮発性有機化合物の濃度の測定法
第1 測定法の種類
1 揮発性有機化合物の濃度の測定法としては、以下の2種類のものがある。
- (1) 直接測定:分析計の測定範囲を超えない濃度の試料の場合に用いる。排出ガスを採取した捕集バッグから、直接分析計に導入する。
- (2) 希釈測定:分析計の測定範囲を超える濃度の試料の場合に用いる。排出ガスを採取した捕集バッグから、排出ガスの一部をシリンジを用いて採取し、一定量の高純度空気の入った捕集バッグに注入し、分析計の測定範囲内の濃度になるよう希釈して、分析計に導入する。
2 揮発性有機化合物の濃度の測定には、以下の2種類のいずれかの分析計を用いる。
- (1) 触媒酸化―非分散形赤外線分析計(以下「NDIR」という。)
揮発性有機化合物を加熱した触媒で二酸化炭素に酸化し、その濃度を赤外線の吸収強度から測定する分析計であって、別紙に掲げる構成のもの。ただし、燃焼過程を経たガスを含む排出ガス中の揮発性有機化合物の測定には用いないこと。 - (2) 水素炎イオン化形分析計(以下「FID」という。)
水素炎に試料を加えたときに生じるイオン電流を測定して、揮発性有機化合物の濃度を測定する分析計(加熱形水素炎イオン化形分析計を含む。)。
第2 装置
1 試料採取装置
下図に掲げる構成のものであって、次の条件を具備しているものとする。
- (1) 試料採取管は、排出ガスの温度及び流速に対して十分な耐熱性及び機械的強度を持ち、試料中の揮発性有機化合物の吸着及び変質が生じないものとする。
- (2) フィルターは、ダスト及びミストの除去率がよく、圧力損失の少ないものであって、揮発性有機化合物の吸着及び変質が生じないものとする。
- (3) 導管は、内径4~25㎜程度であって、揮発性有機化合物の吸着及び変質が生じないものとする。導管の長さは、なるべく短くする。
- (4) ドレンポットは、捕集バッグ内に試料中の水分が凝縮しないよう冷却除湿を行うもので、必要に応じて用いることとする。
- (5) 捕集バッグは、ふっ素樹脂フィルム製若しくはポリエステル樹脂フィルム製で、揮発性有機化合物の吸着、透過及び変質が生じないもの又は同等以上の性能を有するものとし、容量は20l以上のものとする。捕集バッグは、再使用しないこととする。
- (6) 吸引用気密容器は、容器内の捕集バッグが外部から見え、気密が保たれる構造のものとする。
- (7) 流量調整バルブは、0.5~5l/分の流量の制御ができるもので、揮発性有機化合物の吸着及び変質が生じないものとする。
- (8) 吸引ポンプは、防爆上の必要がある場合は、手動ポンプ又は防爆型電動ポンプを用いることとする。
- (9) 流量計は、流量0.5~5l/分の計測が可能なものとする。
図試料採取装置の構成AダクトBCDEFGHA試料採取管BフィルターCドレンポットD捕集バッグE吸引用気密容器F流量調整バルブG吸引ポンプH流量計
2 分析計
- (1) 測定範囲
分析計が測定できる濃度の範囲は、10~5,000vol ppmC(炭素数が1の揮発性有機化合物の容量に換算(以下単に「炭素換算」という。)した容量比百万分率のことをいう。以下同じ。)とする。 - (2) 分析計の作動性能
分析計の作動性能は、試料導入部から校正ガスを導入した場合に、1,000vol ppmC又はその付近の濃度において、表―1又は表―2に掲げる基準値を満たさなければならない。
表―1 NDIRの作動性能の基準値
項目
|
作動性能の基準値
|
---|---|
ゼロドリフト
|
最大目盛値の±2%以内/24時間(注1)
|
スパンドリフト
|
最大目盛値の±2%以内/24時間(注2)
|
繰返し性
|
最大目盛値の±2%以内(注2)
|
指示誤差
|
最大目盛値の±2%以内(注2)
|
90%応答時間
|
120秒以下(注2)
|
感度
|
トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、2―プロパノール、ジクロロメタン及びクロロベンゼンに対して90%以上(注3)
|
無機体炭素の影響
|
最大目盛値の±6%以内(注4)
|
- 注)1.ゼロガスとして、高純度空気又は高純度窒素(不純物として含まれる揮発性有機化合物、一酸化炭素及び二酸化炭素の許容濃度は1vol ppmCとする。以下同じ。)を用いた場合の値
- 2.日本工業規格(以下「JIS」という。)K 0007(標準物質―標準ガス―プロパン)に規定するプロパン標準ガスを高純度空気又は高純度窒素で薄めたものを用いた場合の値
- 3.それぞれの標準物質について、分析計で分析した値(vol ppmC)を標準物質の濃度(vol ppmC)で除して、100を乗じた値
- 4.プロパン標準ガスを1,000vol ppmC程度に、二酸化炭素を1,500vol ppmC程度にそれぞれ調製した試料で試験をした場合の値
表―2 FIDの作動性能の基準値
項目
|
作動性能の基準値
|
---|---|
ゼロドリフト
|
最大目盛値の±1%以内/8時間
|
スパンドリフト
|
最大目盛値の±1%以内/8時間
|
繰返し性
|
最大目盛値の±1%以内
|
指示誤差
|
最大目盛値の±1%以内
|
90%応答時間
|
60秒以下
|
感度
|
トルエンに対して90~105%、酢酸エチルに対して70%以上、トリクロロエチレンに対して95~110%
|
酸素干渉
|
できるだけ少ないこと
|
注)用語の定義は、表―1と同じ。
第3 試薬
1 校正ガス
NDIR及びFIDの校正ガスは、以下のとおりとする。
- (1) ゼロガスは、高純度空気又は高純度窒素とする。ただし、FIDのゼロガスは、通常空気を石英ガラス管等で加熱燃焼して炭化水素を除去したものでもよい。
- (2) スパンガスは、校正する測定レンジの最大目盛値の80~100%に相当する濃度とし、JIS K 0007(標準物質―標準ガス―プロパン)に規定するプロパン標準ガスを高純度空気又は高純度窒素で薄めたものを用いる。
2 燃料ガス
FIDの燃料ガスは、ヘリウムで薄められた40±2vol%の水素又は純水素のうち分析計に指定されたガスを用いる。いずれも不純物として含まれる揮発性有機化合物の許容濃度は1vol ppmCとする。
3 助燃ガス
FIDの助燃ガスは、高純度空気又は通常空気を石英ガラス管等で加熱燃焼して炭化水素を除去したものを用いる。不純物として含まれる揮発性有機化合物の許容濃度は0.5vol ppmCとする。
第4 測定の手順
1 試料の採取
- (1) 試料の採取位置
ダクトの試料採取位置は、JIS K 0095(排ガス試料採取方法)に規定する方法による。貯蔵施設の試料採取位置は、通気口とする。 - (2) 捕集バッグの前処理
試料採取前に、捕集バッグに少量の排出ガスを採取し、押し出す。 - (3) 試料採取回数及び時間
試料採取回数は1回とし、試料採取時間は20分とする。ただし、一工程の時間が20分に満たない場合は、一工程の時間で足りる。 - (4) 捕集バッグの運搬
捕集バッグは、遮光して運搬する。 - (5) 保存
試料の保存は、室温・暗所で行う。 - (6) 採取から分析に供するまでの時間
捕集バッグによる試料採取後、分析までの時間は、8時間以内が望ましいが、それが困難な場合でも24時間以内とする。
2 測定
NDIR及びFIDによる揮発性有機化合物の濃度の測定は、以下により行う。
(1) ゼロ及びスパン調整
第3の1に規定するゼロガス及びスパンガスを用いて、JIS D 1030(自動車―排気ガス中の一酸化炭素,二酸化炭素,全炭化水素及び窒素酸化物の測定方法)の7.3に規定する方法に準じて、ゼロ及びスパン調整を行う。
注)スパンガスにはプロパン標準ガスを用いるので、プロパンのvol ppmの値に、3を乗じた値がvol ppmCとなる。
(2) 試料の測定
試料ガスを採取した捕集バッグを、分析計の試料導入部に直接接続し、試料ガスを分析計に吸引させ、測定し、得られた値を試料の濃度(vol ppmC)とする。
直接測定の場合の測定値が分析計の測定範囲を超えた場合には、希釈測定を行い、測定値に希釈倍率を乗じて、排出ガス中の揮発性有機化合物の濃度を求める。
備考
- 1 試料採取の時期
試料の採取は、一工程で揮発性有機化合物の排出が安定した時期とする。ただし、貯蔵タンクの試料の採取は、揮発性有機化合物の注入時期とする。 - 2 排出ガス処理装置が設置されている場合の測定
複数の吸着塔で揮発性有機化合物の吸着及び脱着を交互に行う方式の吸着装置等の排出ガス処理装置において、運転の開始時又は切り替え時等に、ごく短時間に限り高濃度の排出が生じる場合がある。このようなやむを得ない特異的な排出に係る揮発性有機化合物の濃度については、測定値から除外する。 - 3 一施設で複数の排出口を有する場合の測定
以下のいずれかの方法をとることもできる。
- (1) 施設の構造等から最高濃度の排出ガスを排出している排出口が特定できる場合は、当該排出口において測定する。
- (2) 各排出口からの揮発性有機化合物の濃度を測定し、その値を排出ガス量で加重平均する。この場合、排出ガス量の測定は、JIS Z 8808(排ガス中のダスト濃度の測定方法)に規定する方法による。なお、施設の構造等から、揮発性有機化合物の濃度を一部の排出口で代表させることができる場合には、当該排出口における揮発性有機化合物の濃度を測定すればよい。
- 4 フレアスタックにより排出ガスを処理している場合の測定
フレアスタック(グランドフレアを含む。)により排出ガスを燃焼処理している場合には、この測定法による測定が不可能であるため、揮発性有機化合物の濃度を測定する必要はない。 - 5 固定屋根式貯蔵タンクの場合の測定
固定屋根式貯蔵タンク(排出ガス処理装置を設置しているものを除く。)にあっては、災害防止のため、計算により求めた揮発性有機化合物の濃度をもって測定に代えることができる。 - 6 その他
この測定法における用語その他の事項でこの測定法に定めのないものについては、JIS K 0095(排ガス試料採取方法)、JIS D 1030(自動車―排気ガス中の一酸化炭素,二酸化炭素,全炭化水素及び窒素酸化物の測定方法)、JIS K 0151(赤外線ガス分析計)その他のJISの定めるところによる。
別紙
NDIRの構成
- 1 構成
分析計は、下図に示す試料導入部、試料前処理部及び検出部で構成する。
図分析計の構成(一例)ABCDDEE記録計試料導入部試料前処理部検出部A試料導入口B燃焼炉CハロゲンスクラバーD気液分離器Eポンプ - 2 試料導入部
試料導入口から試料導管を通じて試料前処理部に試料を導入する部分であって、捕集バッグを接続できるもの。 - 3 試料前処理部
- (1) 燃焼炉
試料ガスを、白金などの酸化触媒を充填した燃焼管に連続して通気して、揮発性有機化合物を燃焼するもの。 - (2) ハロゲンスクラバー
燃焼炉で生成するガスから、塩化水素、ふっ化水素等のハロゲン化合物を除去し、二酸化炭素を通過させるもの。 - (3) 気液分離器
試料ガス中の水分を除去する部分で、電子又は電気冷却器、凝縮管及びドレントラップで構成するもの。
- (1) 燃焼炉
- 4 検出部
第2の2(2)に規定するNDIRの作動性能の基準値その他JIS K 0151(赤外線ガス分析計)に規定する二酸化炭素に係る性能規定に適合するもの。
別表第2
除外物質(メタンに限る。)の濃度の測定法
第1 測定法の種類
メタンについては、捕集バッグを用いて採取した後、水素炎イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(以下「GC―FID」という。)により測定する。
第2 装置
1 試料採取装置
試料採取装置は、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法の第2の1に規定する試料採取装置とする。
2 分析計
排出ガス中のメタンの測定には、以下のGC―FIDを用いる。
表―1 GC―FIDの仕様
項目
|
仕様
|
---|---|
検出器
|
水素炎イオン化検出器
|
キャリアガス
|
高純度窒素
|
燃料ガス
|
水素
|
助燃ガス
|
空気又は酸素
|
カラム用管
|
内径3~5㎜、長さ1.5~3mのガラス管、ステンレス管又はふっ素樹脂管
|
カラム充填剤
|
合成ゼオライト担体(粒径170~250μm)又はこれと同等以上の分離性能を有するもの
|
第3 試薬
1 標準ガス
JIS K 0006(標準物質―標準ガス―メタン)に規定するメタン標準ガス又はJIS K 0055(ガス分析装置校正方法通則)の4に準拠する方法で調製されたメタン標準ガス。
2 検量線用ガス
高純度窒素の入った検量線用ガス瓶(JIS K 0095(排ガス試料採取方法)の6.8に規定する真空捕集瓶のことをいう。以下同じ。)に、メタン標準ガスを段階的に注入したもの。
第4 測定の手順
1 試料の採取
試料の採取方法は、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法に規定する試料採取方法による。
2 測定
(1) 分析条件の設定
GC―FIDの分析条件は、以下に示すとおりとする。
表―2 GC―FIDの分析条件
項目
|
条件
|
---|---|
カラム温度
|
常温~70℃
|
試料気化室温度
|
常温~70℃
|
キャリアガス流量
|
30~60ml/分
|
燃料ガス流量
|
30~50ml/分
|
助燃ガス流量
|
300~500ml/分
|
(2) 検量線の作成
第3の2で調整した検量線用ガスを、検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて正確にとり、GC―FIDに導入してクロマトグラムを記録する。メタン濃度とピーク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。
(3) 試料の測定
第4の1によって捕集バッグに採取した試料ガスの一定量を、捕集バッグのシリコーンゴム栓を通して気体用シリンジで正確にとり、GC―FIDに導入してクロマトグラムを記録する。試料導入量は0.1~3mlとし、あらかじめ作成した検量線の範囲内に入るよう試料の量を調整する。クロマトグラムからメタンのピーク面積(又はピーク高さ)を測定し、あらかじめ作成した検量線から試料ガス中のメタン濃度を求める。
(注) この測定法の測定範囲は1~5,000vol ppmCである。測定範囲を超える場合には、高純度窒素の入った検量線用ガス瓶に、試料ガスの一部を気体用シリンジを用いて注入し希釈して測定する。
3 濃度の算出
試料ガス中のメタンの炭素換算濃度を、次の式によって算出する。
- C=(V-Vc)/Vs×10↑3×D×F
- C:排出ガス中のメタン濃度(vol ppmC)
- V:検量線から求めた採取容器中のメタン(ガス)量(μl)
- Vc:検量線から求めた空試験用採取容器中メタン(ガス)量(μl)
- Vs:ガスクロマトグラフへのガス注入量(ml)
- D:希釈率
- F:炭素換算係数(メタンは1)
備考
- 1 大気中にはメタンが2vol ppmC程度存在することから、揮発性有機化合物排出施設においてメタンを使用し、又は発生させておらず、メタンの濃度を測定しないこととした場合であっても、別表第1に掲げる測定法により測定した揮発性有機化合物の濃度から2vol ppmCを差し引くことができるものとする。
- 2 この測定法における用語その他の事項でこの測定法に定めのないものについては、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法及びJIS K 0050(化学分析方法通則)、JIS K 0114(ガスクロマトグラフ分析通則)その他のJISの定めるところによる。
別表第3
除外物質(メタンを除く。)の濃度の測定法
第1 測定法の種類
以下の除外物質(以下単に「除外物質」という。)については、捕集バッグを用いて採取した後、水素炎イオン化検出器を用いるガスクロマトグラフ法(以下「GC―FID」という。)、電子捕獲検出器を用いるガスクロマトグラフ法(以下「GC―ECD」という。)又は質量分析器を用いるガスクロマトグラフ法(以下「GC―MS」という。)により測定する。
表―1 除外物質(メタンを除く。)
名称
|
別名
|
---|---|
クロロジフルオロメタン
|
HCFC―22
|
2―クロロ―1,1,1,2―テトラフルオロエタン
|
HCFC―124
|
1,1―ジクロロ―1―フルオロエタン
|
HCFC―141b
|
1―クロロ―1,1―ジフルオロエタン
|
HCFC―142b
|
3,3―ジクロロ―1,1,1,2,2―ペンタフルオロプロパン
|
HCFC―225ca
|
1,3―ジクロロ―1,1,2,2,3―ペンタフルオロプロパン
|
HCFC―225cb
|
1,1,1,2,3,4,4,5,5,5―デカフルオロペンタン
|
HFC―43―10mee
|
第2 装置
1 試料採取装置
試料採取装置は、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法の第2の1に規定する試料採取装置とする。
2 分析計
排出ガス中の除外物質の測定には、以下の分析計を用いる。
当該除外物質や共存する物質の特性を踏まえ、分析計を適切に選択する。
表―2 分析計の仕様
項目
|
GC―FIDの仕様
|
GC―ECDの仕様
|
GC―MSの仕様
|
---|---|---|---|
検出器
|
水素炎イオン化検出器
|
電子捕獲検出器
|
四重極方式又は二重収束方式の質量分析器(イオン化方法は、電子衝撃イオン化法によるものとする。)
|
キャリアガス
|
高純度窒素
|
同左(高純度窒素)
|
ヘリウム
(99.999vol%以上)
|
燃料ガス
|
水素
|
―
|
―
|
助燃ガス
|
空気又は酸素
|
―
|
―
|
カラム
|
内径0.25~0.32㎜、長さ25~60mの溶融シリカ製の毛管カラムであって、内壁にジフェニールを25%、ジメチルポリシロキサンを75%の割合で混合したものを膜厚0.1~3μm程度で被覆したもの又はこれと同等の分離性能を有するもの
|
同左
(内径0.25~0.32㎜、長さ25~60mの溶融シリカ製の毛管カラムであって、内壁にジフェニールを25%、ジメチルポリシロキサンを75%の割合で混合したものを膜厚0.1~3μm程度で被覆したもの又はこれと同等の分離性能を有するもの) |
同左
(内径0.25~0.32㎜、長さ25~60mの溶融シリカ製の毛管カラムであって、内壁にジフェニールを25%、ジメチルポリシロキサンを75%の割合で混合したものを膜厚0.1~3μm程度で被覆したもの又はこれと同等の分離性能を有するもの) |
カラム恒温槽
|
温度制御範囲が35~350℃であり、測定対象物質の最適分析条件の温度にできるような昇温プログラムの可能なもの
|
同左
(温度制御範囲が35~350℃であり、測定対象物質の最適分析条件の温度にできるような昇温プログラムの可能なもの) |
同左
(温度制御範囲が35~350℃であり、測定対象物質の最適分析条件の温度にできるような昇温プログラムの可能なもの) |
第3 試薬
1 標準ガス
JIS K 0055(ガス分析装置校正方法通則)に準拠する方法で調製された除外物質の標準ガス。
2 検量線用ガス
高純度窒素の入った検量線用ガス瓶(JIS K 0095(排ガス試料採取方法)の6.8に規定する真空捕集瓶のことをいう。以下同じ。)に、除外物質の標準ガスを段階的に注入したもの。
第4 測定の手順
1 試料の採取
試料ガスの採取方法は、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法に規定する試料の採取方法による。
2 測定
(1) GC―FID
- ア 分析条件の設定
GC―FIDの分析条件は、測定対象の除外物質のクロマトグラム上でのピークが他の除外物質その他の試料排出ガス中に共存する揮発性有機化合物と良好な分離が得られ、測定対象除外物質の保持時間が適切な範囲にあり、安定した応答が得られるように、カラム温度、試料気化室温度、キャリアガス流量などを設定する。
表―3 GC―FIDの分析条件の例
項目条件試料注入法スプリット注入法(スプリット比20:1)カラム温度昇温条件の例40℃→(5℃/分)→90℃→(20℃/分)→200℃試料気化室温度100℃キャリアガス流量1.0ml/分燃料ガス流量30~50ml/分助燃ガス流量300~500ml/分 - イ 検量線の作成
第3の2で調整した検量線用ガスを、検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて正確にとり、GC―FIDに導入してクロマトグラムを記録する。除外物質の濃度とピーク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。 - ウ 試料の測定
第4の1によって捕集バッグに採取した試料ガスの一定量を、捕集バッグのシリコーンゴム栓を通して気体用シリンジで正確にとり、GC―FIDに導入してクロマトグラムを記録する。試料導入量は0.1~0.5mlとし、あらかじめ作成した検量線の範囲内に入るよう試料の量を調整する。
クロマトグラムから除外物質のピーク面積(又はピーク高さ)を測定し、あらかじめ作成した検量線から試料ガス中の除外物質の濃度を求める。
(注) この測定法の測定範囲は表―4のとおりである。測定範囲を超える場合には、高純度窒素の入った検量線用ガス瓶に、試料ガスの一部を気体用シリンジを用いて注入し希釈して測定する。
表―4 GC―FIDの測定範囲
除外物質測定範囲(vol ppmC)HCFC―2220~1,000HCFC―12410~2,000HCFC―141b20~2,000HCFC―142b20~2,000HCFC―225ca30~3,000HCFC―225cb30~3,000HFC―43―10mee20~5,000
(2) GC―ECD
- ア 分析条件の設定
GC―ECDの分析条件は、測定対象の除外物質のクロマトグラム上でのピークが他の除外物質その他の試料排出ガス中に共存する揮発性有機化合物と良好な分離が得られ、測定対象除外物質の保持時間が適切な範囲にあり、安定した応答が得られるように、カラム温度、試料気化室温度、キャリアガス流量などを設定する。
表―5 GC―ECDの分析条件の例
項目条件試料注入法スプリット注入法(スプリット比20:1)カラム温度昇温条件の例40℃→(5℃/分)→100℃→(20℃/分)→200℃試料気化室温度100℃キャリアガス流量0.5ml/分 - イ 検量線の作成
第3の2で調整した検量線用ガスを、検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて正確にとり、GC―ECDに導入してクロマトグラムを記録する。除外物質の濃度とピーク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。 - ウ 試料の測定
第4の1によって捕集バッグに採取した試料ガスの一定量を、捕集バッグのシリコーンゴム栓を通して気体用シリンジで正確にとり、GC―ECDに導入してクロマトグラムを記録する。試料導入量は0.1~0.5mlとし、あらかじめ作成した検量線の範囲内に入るよう試料の量を調整する。
クロマトグラムから除外物質のピーク面積(又はピーク高さ)を測定し、あらかじめ作成した検量線から試料ガス中の除外物質の濃度を求める。
(注) この測定法の測定範囲は表―6のとおりである。測定範囲を超える場合には、高純度窒素の入った検量線用ガス瓶に、試料ガスの一部を気体用シリンジを用いて注入し希釈して測定する。
表―6 GC―ECDの測定範囲
除外物質測定範囲(vol ppmC)HCFC―2210~100,000HCFC―1241~5,000HCFC―141b1~10,000HCFC―142b10~100,000HCFC―225ca1~1,000HCFC―225cb1~1,000HFC―43―10mee1~5,000
(3) GC―MS
- ア 分析条件の設定
GC―MSの分析条件は、測定対象の除外物質のクロマトグラム上でのピークが他の除外物質その他の試料排出ガス中に共存する揮発性有機化合物と良好な分離が得られ、測定対象除外物質の保持時間が適切な範囲にあり、安定した応答が得られるように、カラム温度、試料気化室温度、キャリアガス流量などを設定する。
表―7 GC―MSの分析条件の例
区分項目条件ガスクロマトグラフ試料注入法スプリット注入法(スプリット比20:1)カラム温度昇温条件の例40℃→(5℃/分)→90℃→(20℃/分)→200℃試料気化室温度100℃キャリアガス流量1.0ml/分インターフェイス温度200℃質量分析器イオン源温度200℃電子加速電圧70eV - イ 検量線の作成
第3の2で調整した検量線用ガスを、検量線用ガス瓶から気体用シリンジを用いて0.1ml正確にとり、GC―MSに導入してマスクロマトグラムを記録する。除外物質の濃度とピーク面積(又はピーク高さ)との関係線を作成する。 - ウ 試料の測定
第4の1によって捕集バッグに採取した試料ガスを、気体用シリンジを用いてGC―MSに導入する。測定対象の除外物質の測定用質量数に対してマスクロマトグラムを作成し記録する。試料導入量は0.1mlとする。
マスクロマトグラムから除外物質のピーク面積(又はピーク高さ)を測定し、あらかじめ作成した検量線から試料ガス中の除外物質の濃度を求める。
表―8 測定イオンの質量数の例
除外物質測定イオンの質量数定量用確認用HCFC―225167HCFC―1246769HCFC―141b8183HCFC―142b6585HCFC―225ca8385HCFC―225cb69100HFC―43―10mee6995(注) この測定法の測定範囲は表―9のとおりである。測定範囲を超える場合には、高純度窒素の入った検量線用ガス瓶に、試料ガスの一部を気体用シリンジを用いて注入し希釈して測定する。
表―9 GC―MSの測定範囲
除外物質測定範囲(vol ppmC)HCFC―221~1,000HCFC―1241~2,000HCFC―141b1~2,000HCFC―142b1~2,000HCFC―225ca1~3,000HCFC―225cb3~3,000HFC―43―10mee2~5,000
3 濃度の算出
試料ガス中の除外物質の炭素換算濃度を、次の式によって算出する。
- C=(V―Vc)/Vs×10↑3×D×F
- C:排出ガス中の除外物質濃度(vol ppmC)
- V:検量線から求めた採取容器中の除外物質(ガス)量(μl)
- Vc:検量線から求めた空試験用採取容器中除外物質(ガス)量(μl)
- Vs:ガスクロマトグラフへのガス注入量(ml)
- D:希釈率
- F:炭素換算係数
( HCFC―22 1
HCFC―124 2
HCFC―141b 2
HCFC―142b 2
HCFC―225ca 3
HCFC―225cb 3
HFC―43―10mee 5 )
備考
この測定法における用語その他の事項でこの測定法に定めのないものについては、別表第1に掲げる揮発性有機化合物の濃度の測定法及びJIS K 0050(化学分析方法通則)、JIS K 0114(ガスクロマトグラフ分析通則)、JIS K 0123(ガスクロマトグラフ質量分析通則)その他のJISの定めるところによる。