法令・告示・通達
浮遊粒子状物質に係る測定方法の改定について
環大企277号
環境庁大気保全局長から各都道府県知事政令市市長あて
浮遊粒子状物質の環境基準に係る測定方法については、昭和56年6月17日付け大気の汚染に係る環境基準についての環境庁告示の一部を改正する環境庁告示(昭和56年環境庁告示第47号)により改定され、また、大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)第23条第1項又は第4項の緊急時の措置に係る浮遊粒子状物質の測定方法についても昭和56年6月25日付け、大気汚染防止法施行規則の一部を改正する総理府令(昭和56年総理府令第40号)により改定された。改定内容は、従来の測定方法に加えて、圧電天びん法及びベータ線吸収法の2方法を浮遊粒子状物質の環境基準に係る測定方法及び緊急時の措置に係る測定方法として採用するものである。
今後貴職におかれては、下記の事項に留意され、地域の浮遊粒子状物質による大気の汚染状態の的確なは握に努められたい。
なお、測定実務上留意する必要のある具体的な事項については、別添「浮遊粒子状物質の測定方法について」を十分に参照されたい。
記
1 改定の理由
浮遊粒子状物質の測定方法については、貴職あて当職通知「浮遊粒子状物質の測定方法について」(昭和47年6月1日環大企第88号)によつて示されているところであるが、その後、新たな測定原理に基づく自動測定機が開発され、その性能評価を行つたところ、大気汚染常時監視用として十分な性能を有する機種があることが認められたことから、その測定方法を現在の方法に追加して採用することとした。
2 改定の基本的考え方
浮遊粒子状物質の標準測定方法は、これまでどおり多段型分粒装置又はサイクロン式分粒装置を装着した濾過捕集による重量濃度測定方法(小容量法)を用いることとする。
なお、常時監視測定のためには、従来より、光散乱法により求められた測定値を、標準測定方法の測定値によつて補正して重量濃度を求めるいわゆるF値換算方式がとられているところである。
今回の改定は、これまでの技術開発の状況を踏まえ常時監視測定に当たつてF値換算を要しない方法を従来の方法に追加して採用することとした。新たに採用する測定方法の満たすべき条件は、次のとおりである。
- (1) 測定される物理量が質量と一定の関係にあること。
- (2) 1時間値の自動連続測定が可能であること。
- (3) 質量濃度の0~5mg/m3の範囲の濃度を1時間値で測定できること。
- (4) 校正用粒子を使用し、標準測定方法との同時測定によつて目盛を校正するための技術的方法が確立していること。
- (5) 複数同種測定機の同時測定による1時間値の差が一定の範囲にあること。
- (6) 校正用粒子を用いずに日常の校正ができる技術的方法が確立していること。
- (7) 大気中の浮遊粒子状物質を標準測定方法と同時に測定したときの指示誤差が一定の範囲にあること。
現段階でこの要件を満足する測定方法は圧電天びん法及びベータ線吸収法の2方法であり、この2方法を現行の測定方法に追加して採用するものである。
3 追加採用する測定方法
(1) 概要
今回追加採用する測定方法は圧電天びん法及びベータ線吸収法の2方法であるが、その概要は次のとおりであり、いずれも標準測定方法による測定値と等価な値が得られる測定方法と認められたものである。
- (ア) 圧電天びん法は、水晶発振子の振動数がその上に付着した物質の質量に比例した減少を示すことを利用したものであり、大気中の浮遊粒子状物質を静電捕集により水晶発振子の上に捕集したうえで振動数を測定し、浮遊粒子状物質の質量濃度を求めるものである。
- (イ) ベータ線吸収法は、エネルギーの低いベータ線が物質の質量に比例して吸収されることを利用したものであり、大気中の浮遊粒子状物質をろ紙上に捕集したうえでベータ線を照射し、その透過線量を測定し、浮遊粒子状物質の質量濃度を求めるものである。
(2) 校正方法等
校正方法については、校正用粒子を使用し、標準測定方法との同時測定によつて目盛を校正すること(以下「動的校正」という。)を原則とするが、今回追加採用する2方法については、校正用粒子を用いることなく独自に校正を行うこと(以下「静的校正」という。)が可能であることから、日常の校正等感度の恒常性の維持のためには、静的校正によることとする。
圧電天びん法及びベータ線吸収法に係る校正等の方法は、具体的には次のとおりである。
- ア 動的校正は、測定機の使用開始時及び定期検査修理等を行つた場合に実施する。その際、圧電天びん法にあつては、水晶発振子の質量感度を、ベータ線吸収法にあつては、マイラー膜等の等価膜の厚さを確認する。
- イ 静的校正は、動的校正時に確認された質量感度又は等価膜の厚さを利用して校正を行うものであり、原則として月1回以上実施する。
なお、静的校正は検出器以降の感度の確認を行うものであることから、採気系まで含めた自動測定機全体の性能維持のためには、必要に応じて野外における標準測定方法との同時測定を行うことが望ましい。
(3) 保守管理
保守管理担当者は、自動測定機の特性を十分に理解し、適正な保守管理に努めることが必要である。
なお、自動測定機の一般的な保守管理項目については、別添「浮遊粒子状物質の測定方法について」〔略〕の関連項目を参照されたい。
4 その他
- (1) 光散乱法による測定及び評価については、従前どおり、昭和47年6月1日付け環大企第88号当職通知にのつとり行うものとする。
- (2) 自動測定機の採用又は使用開始に当たつては、事前に個々の機器について十分な性能調査を行うなど測定値の精度確保に努められたい。