法令・告示・通達
水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件の施行について
環水管24号
環境庁水質保全局長から各都道府県知事・各政令市長あて
水質汚濁に係る環境基準についての一部を改正する件(平成3年12月環境庁告示第78号。以下「告示」という。)の施行については、先に平成3年12月27日付け環水管第169号・環水規第361号をもって環境事務次官名により通達されたところであるが、同通達において別途通知することとされている事項については、下記により運用することとされたい。
記
1 基本的考え方について
告示により、水素イオン濃度(pH。以下「pH」という。)及び溶存酸素量(DO。以下「DO」という。)について、環境基準の維持達成状況を把握するために実施する公共用水域の水質調査に係る測定方法(以下「公定法」という。)に水質自動監視測定装置(当該水質項目について自動的に計測することができる装置であって、計測結果を自動的に記録する機能を有するもの又はその機能を有する機器と接続されているものをいい、サンプリング装置、水質自動測定機器、局舎等を含む。)による方法が追加されたところであるが、この基本的考え方は、次のとおりである。
- (1) 告示による今回の公定法の追加は、近年、水質自動監視測定装置の性能改善、維持管理技術の蓄積・向上等により測定制度の確保が図られてきており、pH及びDOについては従来からの公定法と比較してそん色のない測定であると認められたことを踏まえてなされたものである。
- (2) ただし、告示により追加された公定法は、pHについてはガラス電極を、またDOについては隔膜電極をそれぞれ用いる水質自動監視測定装置により、従来からの公定法と同程度の計測結果の得られる方法に限られている。
- (3) 従来からの公定法については、「水質調査方法」(昭和46年9月30日付け環水管第30号当職通知。以下「水質調査方法」という。)に規定している。したがって、水質自動監視測定装置による方法の場合であっても、水質調査方法を踏まえてなされることを原則とする。
2 水質自動監視測定装置の測定値収集機能について
水質調査方法では、pH、DO等生活環境の保全に係る項目の測定回数は、通年調査として「月一日以上、各一日について4回程度採水分析することを原則」としており、また、通日調査として「通年調査地点のうち、日間水質変動が大きい地点にあっては、年間2日程度は各一日につき2時間間隔で13回採水分析することとする」などとしている(水質調査方法3(1)ア(イ))。
水質自動監視測定装置による場合には連続測定であるため、年間を通じて通日調査を行って水質変動をとらえることができる反面、測定値には環境基準の適合状況を評価する上では除外すべきものが含まれることもある。このため、公定法に用いる水質自動監視測定装置としては、水質調査方法に規定されている測定回数を満たす上で最低限1時間1回の測定値の収集が可能であることを原則とするものとする。
3 水質自動監視測定装置の採水地点、採水方法等について
「水質汚濁に係る環境基準について」(昭和46年12月28日付け環境庁告示第59号。以下「環境基準告示」という。)において、環境基準の達成状況の調査は、「測定点の位置の選定、試料の採取および操作等については、水域の利水目的との関連を考慮しつつ、最も適当と考えられる方法によるものとする。」(環境基準告示第2(1))とされている。これに基づき、水質調査方法において、採水地点については、河川では利水地点等の条件を考慮し、また、湖沼及び海域では当該水域の汚濁状況を総合的に把握できることを考慮して選定することとし、いずれの水域においても「基準点」(環境基準の水域類型へのあてはめが行われた水域についてその維持達成状況を把握するための地点)を含むこととしている(水質調査方法4(1)イ、(2)イ及び(3)イ)。また、採水方法についても、河川では採水の部位は原則として水深の2割程度、湖沼では循環期には表層から、停滞期には深度別(5~10mごとを標準)に多層から、海域では原則として表層(海面下0.5m)及び中層(海面下2m)から採水することとしている(水質調査方法4(1)ウ、(2)ウ及び(3)ウ)。
したがって、公定法に用いる水質自動監視測定装置についても、水質調査方法に規定している採水地点、部位で水質を測定することを原則とする。
ただし、これによりがたい場合にあっては、水質自動監視測定装置の採水口(検出部を直接浸漬する装置の場合には測定時の検出部)直近で採水した試料と水質調査方法の規定に従って採水した試料の水質を比較する等により、両者が同質であると認められる場合に当該装置による方法を公定法として用いることができるものとする。
4 水質自動監視測定装置の精度基準について
公定法に用いる水質自動監視測定装置の測定精度は、以下に定める精度基準を満たしているものとする。
(1) 測定精度
水質自動監視測定装置の測定精度は、当該装置の採水口(測定装置の検出部を直接浸漬する装置にあっては測定時の検出部)直近の水について
- ① 従来からの公定法により測定した測定値
及び - ② 通常どおり採水口から採水し、又は検出部を浸漬して水質自動監視測定装置により測定した測定値
の差(②-①)、又はその差の①に対する百分率(((②-①)/①)×100。以下「誤差率(%)」という。)を用いて表わすものとする。
(2) 精度基準
精度基準は性能基準と管理基準について定めることとし、その内容は次のとおりとする。
ア 性能基準
性能基準は、水質自動監視測定装置を新たに設置又はサンプリング装置と水質自動測定機器を一括して更新(以下「新設等」という。)する場合、新設等の後最初の始動時に保持されていなければならない精度の基準とし、pHについては±0.1pH以内、また、DOについては±0.3mg/l以内とする。
ただし、性能基準は既設の水質自動監視測定装置には適用しないものとする。
イ 管理基準
管理基準は、運用中の水質自動監視測定装置について常時保持されていなければならない精度の基準とし、pHについては±0.2pH以内、また、DOについては±0.5mg/l以内又は誤差率±10%以内とする。
管理基準を満たしているか否かの確認は、年1回以上、当該水域の汚濁状況等を考慮して必要と判断する期間ごとに行うこととする。
なお、DOについては、水質自動監視測定装置ごとに当該水域の水質状況等に応じて、±0.5mg/l以内又は誤差率±10%以内のいずれを適用するのかを事前に定めておくものとする。
(3) 精度基準を満たしていない場合の取扱い
水質自動監視測定装置の測定精度が(2)の精度基準を満たしていないことが判明した場合には、次により取り扱うものとする。
ア 性能基準
新設等された水質自動監視測定装置が性能基準を満たしていない場合には、当該装置による方法を公定法として用いることはできないものとする。
イ 管理基準
運用中の水質自動監視測定装置が管理基準を満たしていない場合には、原則として管理基準を満たしていることが確認された直近の時点以降の当該装置による方法は公定法として扱うことはできないものとする。したがって、管理基準を満たしているか否かの確認の頻度についてはこのことを十分に考慮することが望ましい。
5 水質自動監視測定装置の維持管理について
水質自動監視測定装置は、その維持管理の状況が測定精度に著しい影響を及ぼす。このため、水質自動監視測定装置を公定法に用いるに際しては、十分な知識と技術を有する者によって常に適切な維持管理を行うこととする。
特に、送水管内に汚れが付着した場合等には試料の水質に変化が生じることが多いことから、送水管を中心にサンプリング装置についての定期的な点検・清掃の実施に留意するものとする。
6 水質自動監視測定装置による測定値の処理及び報告方法について
(1) 測定データの確定
水質自動監視測定装置による測定値の中には装置の誤作動等に伴う異常値が含まれているおそれもある。このため、測定データの集計に先立って、装置のデータロガー、テレメータ装置等から得られた測定値について水質自動測定機器のアナログ記録等との照合を行うことなどにより、明らかに除くべきものと判断される測定値は除外する等、環境基準適合状況の評価に用いる測定データを確定するための作業を行うものとする。
(2) 環境基準適合状況の評価用データ
pH及びDOについて、水質自動監視測定装置による測定値を環境基準適合状況の評価のために用いる場合は、基本的なデータは時間値とし、時間値から算出される日平均値により行うこととする。
時間値としては1時間に1個以上の測定値があれば有効とし、日平均値は1日(24時間)の75%以上の時間の時間値より算出されたものを有効(以下「有効日平均値」という。)とすることを原則とする。
(3) 数値の取扱い及び測定結果の報告方法
公共用水域水質測定結果の報告については、昭和46年9月20日付け環水管第24号、昭和52年4月19日付け環水規第61号、昭和56年4月9日付け環水規第33号、昭和58年12月15日付け環水規第228号及び平成元年10月19日付け環水規第281号により当職名で通知している。水質自動監視測定装置による測定値を環境基準適合状況の評価のために用いる場合には、その数値の取扱い方法及び測定結果の報告方法についても、原則としてこれらの通知に基づいて行うものとする。
ただし、昭和58年12月15日付け環水規第228号及び平成元年10月19日付け環水規第281号の別添様式3(その7)及び(その10)のpH及びDOの欄については、当該年度中の有効日平均値を検体の値とみなして記入するものとする。また、水質自動監視測定装置による測定値の最小単位は、pHについては0.1pH、DOについては0.1mg/lとする。