ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEB事例の技術情報

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建物概要

改修
事例11
むいかいち温泉 ゆ・ら・ら株式会社六日市振興

むいかいち温泉 ゆ・ら・らの写真

給湯エネルギーが多い施設で、給湯・昇温の効率化のため潜熱回収型ボイラーを導入。太陽光発電設備とリチウムイオン蓄電池設備の導入による事業継続性を確保。

ZEBの分類
ZEB Ready
  • 都道府県(地域区分):島根県(6地域)
  • 新築/既築:既存建築物
  • 竣工年:2021年
  • 延床面積:3,837㎡
  • 階数(地上/地下):地上1階/地下1階
  • 主な構造:RC造及びS造
  • 建物用途:ホテル等
  • 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):52%/52%
むいかいち温泉 ゆ・ら・らの写真

導入したZEB技術

導入したZEB技術の表

※(本施設のエネルギー使用量)/(同仕様の建物のエネルギー使用量)を示した値であり、数値が小さいほど省エネ性能が高い。

 

Low-E ペアガラスの写真
Low-E ペアガラス
高効率空調の写真
高効率空調
空調室外機の写真
空調室外機
高効率換気扇の写真
高効率換気扇
LED照明の写真
LED照明
太陽光発電設備の写真
太陽光発電設備
潜熱回収型ボイラーの写真
潜熱回収型ボイラー
リチウムイオン蓄電池の写真
リチウムイオン蓄電池

 

ZEB化検討にあたって苦労したこと/工夫したこと

【建築主様のご意見】


ZEB化の相談先の不足

課題

ゆ・ら・らは築約20年となり、空調の改修が喫緊の課題であった。改修(修繕)の国庫補助はない中で、見積は5千万円(機器の取替のみ)を超える高額なものとなっていた。懸案の空調改修にも適用される補助事業のZEB化事業を見つけたが、当該施設はガラス張りの建築物であることからZEB化が可能かどうかの判断ができなかった。また、ZEBプランナーといったZEB化に詳しい相談相手がいなかった。

解決方法

公共建築物ZEB研修会に参加し、そこで講師をしていたZEBプランナーにゆ・ら・らのZEB化について相談した。後日、そのZEBプランナーによるゆ・ら・らの簡易調査の結果、ZEB化実現の可能性があることが判明した。
さらに、WEBPROによるZEB評価を実施することで、本施設でZEB実現が可能であると確証を持つことができた。

事業費が高額

課題

ZEBの条件を満たすために、事業費の概算が2億円を超えたことから、ZEB化までしなくても良いのではないかとの意見があった

解決方法

以下について説明することで、町内の理解を得ることができた。
  • 補助金を活用することで実質負担額が大幅に低減できること。
  • 照明等の設備も数年後に更新が必要であったこと。
  • ゆ・ら・らは光熱費が高いことが課題となっており、ZEB化を実現することで光熱費の大幅な削減が見込めること。

ZEBの認知の低さ

課題

なぜZEB化するのか、ZEBとは何かなど議会での説明が難しい。

解決方法

本町では、議会等でZEBについて説明する際、細かな定義等の説明は避け、一般の方々にもわかりやすい説明を心がけた。さらに、ZEBによって得られる効果を重点的に説明した。
最近では、町内のZEBの認知度が向上し、議会でのZEBについての質問はほとんど無くなった。

【事業者様のご意見】


空調熱負荷の低減

課題

本施設の空調更新において、単に高効率設備へ更新するだけではZEB基準の達成が難しく、空調熱負荷低減によるダウンサイジングを図る必要があった。

解決方法

Low-Eペアガラス及び全熱交換器の導入に加え、換気扇のCO2濃度制御により、空調熱負荷を低減。施設全体で20%以上のダウンサイジングを実現した。

ZEB検討の手順

ステップ1

竣工図等の資料確認

竣工図等の資料にて建築物の現状確認を実施した。

 

ステップ2

現地調査

現地調査にて建築物の現状を確認した。

 

ステップ3

設備更新のニーズの整理

打合せ等にて設備更新のニーズを整理した。

 

ステップ4

導入する省エネ技術の検討

設備更新のニーズを踏まえ、導入する省エネ技術を検討した。

 

ステップ5

導入設備の能力選定

既存設備のスペック、ペアガラスの導入や全熱交換器導入による熱負荷低減を踏まえ、導入設備の能力を選定した。

 

ステップ6

再エネ設備の導入検討

設備設置場所、停電時に必要な電力需要量等を踏まえ、太陽光発電・蓄電池の能力及び設置場所を決定した。

 

ステップ7

ZEB評価

WEBPROによる一次エネルギー消費量計算(標準入力法)にZEB基準に適合するか確認した。

ZEB化実現のための施工スケジュールについて検討。

 

ZEB化実現までのスケジュール

ZEB化実現までのスケジュールの画像

「基礎情報の収集」の具体的内容

  • 省エネ投資(ZEB化改修)した場合の経済性評価(費用、投資対効果など)を実施した。
  • インターネットによるZEB化事例を調査した。(どういった改修内容か、どういった建築物で取り組まれているかなど)
  • 近隣市での事例聞き取りを行った。(ZEB化に関する国庫補助の申請等、議会への説明、発注など)
  • 先行自治体の事例を電話による聞き取りにて調査した。(ZEB化しようとした経過、ZEB化後のランニングコスト等)
  • 公共建築物ZEB研修会(R1.10)で、ZEB化についての理解を深めた。

「ZEB化実現可否の確認」の具体的内容

ZEBプランナーにもご協力いただき、導入する省エネ技術の検討を実施。その後、標準入力法によるWEBPRO入力によって、本施設でZEB化実現が可能であることを確認した。

事業実施後の運用改善状況

事業実施後の運用改善を見越して実施した工夫


BEMSの導入

事業完了後の運用改善に活用するため、BEMSを導入し、エネルギー使用量の見える化を実施した。本施設では、空調、換気、照明及び給湯のエネルギー使用量、太陽光発電量、蓄電池充放電量を10分毎に計測し、計画通りの省エネ効果が得られているか確認している。

制御技術の導入

運用改善による省エネ化を実現するため、様々な制御技術を導入した。導入した制御技術を以下に示す。

  • 給湯設備のろ過ポンプ等へのインバータ制御
  • 給湯設備の循環ポンプの温度制御、 タイマー制御
  • 厨房換気扇のタイマー制御
  • 照明設備の初期照度調光制御
  • 換気扇のCO2濃度制御

ZEBの効果

CO2削減量

140t-CO2/年(計算値)
※(ZEB改修前のCO2排出量)-(ZEB化改修後のCO2排出量)

ランニングコスト
削減額

435万円/年(計算値)

ZEB化費用

ZEB化費用:2億4,800万円
実質負担額:1億3,500万円

国庫補助金:1億1,300万円
※1 総工費には設計費も含む
※2 本事業では交付税措置も活用したが、実質負担額には含んでいない。
交付税措置も考慮した場合、町の持ち出しは5,000万円未満となる見込みである。

投資回収年数

31年
※(実質負担額)÷(ランニングコスト削減額)

ZEBによる増加費用の回収年数

11.0年
※{(実質負担額)-(標準改修費)}/{(ZEBによるランニングコスト削減額)-(標準改修によるランニングコスト削減額)}
※標準改修費:1億1,570万円、標準改修のランニングコスト削減額:259万円

その他の効果

  • 指定管理者スタッフの省エネ意識が高まることが期待できる。
  • 当施設はチップボイラも導入しており、省エネや二酸化炭素排出削減といった環境に配慮した施設としてPRしたい。
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