ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

事例紹介

ここから本文です。

建物概要

新築
事例6
瑞浪市立瑞浪北中学校岐阜県瑞浪市

瑞浪市立瑞浪北中学校の写真

新築校としては全国初の「スーパーエコスクール」で、地形や風土を活かした省エネ技術、再エネによる創エネ技術、環境教育による省エネ活動によってZEB化を達成

ZEBの分類
Nearly ZEB

(BESTによる試算では『ZEB』達成)

  • 都道府県(地域区分):岐阜県(5)
  • 新築/既築:新築
  • 延床面積:8,090.07㎡
  • 建物用途:学校等
  • 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):50% / 77%
瑞浪市立瑞浪北中学校の写真

新築のスーパーエコスクールでZEB化を達成

 岐阜県瑞浪市の瑞浪北中学校は瑞浪市内公立中学校の統合再編によって新築された中学校で、2019年4月に新築校としては初めて開校した「スーパーエコスクール※」です。

 本中学校の特徴として、高効率機器(高効率空調、LED照明等)、外皮断熱技術を導入するだけでなく、瑞浪の地形・風土を活かす最適な形状で校舎を配置し、光、風、熱、創エネルギーをうまく組み合わせて活用していることが挙げられます。南向きの山の斜面に沿って高さを低く抑えた分棟配置の校舎は周辺環境に溶け込み、森からの風を換気に積極的に活かす設計となっています。また、普通教室はすべて最上階に配置することで、教室からは市街地への眺望が開かれており、多くの自然光を教室に採り込んでいます。

 また、学校施設におけるZEB化の先導的な事例として、環境教育の観点から生徒の自発的な省エネ行動を促す設計がされていることも特徴です。

※文部科学省による「スーパーエコスクール実証事業」(公立学校施設で年間のエネルギー消費量を実質上ゼロとするゼロエネルギー化を推進する実証事業)で認証された学校。2021年11月現在、全国で7校で実施。

岐阜県 瑞浪北中学校 外観の写真
岐阜県 瑞浪北中学校 外観

 

ZEB化のポイント(導入されている主要なZEB化技術等)

自然採光・調光照明設備による照明エネルギーの削減

 一般に、小中高校では照明に使われるエネルギー消費量が最も多く、ZEBの実現にはその削減が重要です。本中学校では、太陽光を有効活用する設計手法、省エネ技術が導入されています。

 最上階の普通教室は南北両面から自然の光が射し込む設計になっており、また中間階の特別教室は室内に自然光を多く採り込むライトシェルフを設置しています。この自然採光と、LED照明、明るさセンサによる照明制御を組み合わせることによって、照明エネルギーの削減を可能としています。

普通教室の南北-両面採光の写真
普通教室の南北-両面採光

 

最適な校舎配置による換気・冷房エネルギーの削減

 周囲の地形を考慮しながら校舎の配置パターンによる風の流れの違いをシミュレーションした結果を踏まえ、最適な形状で校舎を配置しています。採り込まれた風はクールウォームトレンチ(地下溝)を通り、夏季には冷えた空気を、冬季には暖かい空気を各教室まで送り込まれる仕組みになっています。

 校舎の中央に配置された階段ホールは南北に長く連続させる断面形状に設計し、最上部で排気する仕組みをつくることで、暖かい空気を上昇させる重力換気を行い、校舎内の自然換気を促しています。これは、陶磁器産業を中心に発展してきた瑞浪市の文化遺産である登り窯がモチーフにされています。

登り窯型の自然換気の画像
登り窯型の自然換気

 

太陽集熱・外皮断熱による暖房エネルギーの削減

 暖房エネルギーを削減する為に、教室や体育館には多くの技術が導入されています。
 太陽光からの熱エネルギーを活用する為に、鋼板製の太陽集熱パネルが教室の腰壁や体育館の屋根に設置されています。暖められた空気をファンで室内に送ることによって、冬には暖房として有効利用することができます。
 また、断熱性能の高い外皮(屋根・外壁の断熱強化、Low-Eペアガラス)による外部熱負荷の抑制や高効率空調の導入もなされています。

 

自然エネルギー活用によるウェルネスと省エネの両立

 普通教室の後ろの壁にはロッカーと自然換気、空調設備を一体化した「クールウォームロッカー」を設置しています。ロッカーの上部には涼風温風吹出スリットがあり、スリットからはクールウォームトレンチを通った涼風と太陽集熱による温風が吹き出されます。
 このように、自然のエネルギーを活かして省エネと快適な環境の創出を両立しています。

クールウォームロッカーの写真
クールウォームロッカー

 

再生可能エネルギーによる創エネルギー技術の導入

 創エネルギーとして太陽光発電120kW、風力発電1.0kW、ペレットストーブ3.0kWが導入されています。風力発電は瑞浪特有の季節風が活かされており、ペレットストーブは岐阜県産の木材ペレットが燃料として活用されています。

 発電した電力の一部については蓄電池に蓄電することによって、ピークカット利用や災害時対応を可能としています。

 

「感じる化」による環境教育の推進

 環境・省エネ意識を無理なく浸透させることを意図した、五感で感じる環境教育システム「環境学習プラットフォーム」が設計に反映されていることも特徴です。
 各教室にある「エコモニター」では、温湿度や消費電力などの情報の「見える化」によって生徒自身が省エネ行動を起こすことができます。素材の異なる断熱材に触れることで温度を体感する「触れる化」、中庭植栽のそよぎを感じる「聴こえる化」等、視覚だけでなく、五感全てに訴えかけるコンテンツが生徒の身近な場所に設置されており、環境・省エネ意識が自然と育まれる工夫がされています。

生徒の五感を活かした「感じる化」の写真
生徒の五感を活かした「感じる化」
エコモニターの写真
エコモニター
ページ先頭へ