1. 事業概要

事業概要

地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業
(環境省R&D事業)とは

 我が国の温室効果ガス削減に係る目標としては、2030年度に46%削減、更には2050年までにカーボンニュートラル(ネット・ゼロ) 、そして長期目標として「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」における早期の脱炭素社会の実現が掲げられています。
 これらの目標を実現するためには、あらゆる分野で更なるCO2削減が可能なイノベーションを創出し、早期に社会実装することが必要不可欠です。具体的には、CO2排出削減技術の高効率化や低コスト化等のための技術的な課題を解決し、優れたCO2排出削減技術を生み出し、実社会に普及させていくことで、将来的な地球温暖化対策の強化につなげることが重要です。一方、CO2排出削減に貢献する技術開発は、開発リスクが大きく、収益性が不確実で、産業界が自ら対策強化を行うインセンティブが小さい等の理由により、民間の自主的な技術開発に委ねるだけでは必ずしも十分に進まない状況にあります。
 このため、国の政策上必要な、CO2排出量を大幅に削減する技術の開発・実証を、国が主導して推進していくことが必要不可欠です。特に、第六次環境基本計画における「循環共生型社会」の概念の下、急速に拡大しているゼロカーボンシティ宣言自治体等における先導的な技術開発の取組を支援し、各地域の特性を活かして、脱炭素かつ持続可能で強靱な活力ある地域社会を構築することが極めて重要です。
 このような背景の下、本事業は将来的な地球温暖化対策の強化につながるCO2排出削減効果の高い技術の開発・実証を強力に進め、CO2排出量の大幅な削減を実現するとともに、地域の活性化と脱炭素社会の同時達成を後押しし、脱炭素ドミノを誘引することで、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」で掲げる早期の脱炭素社会の実現、ひいては第六次環境基本計画で掲げる「循環共生型社会」の構築に貢献することを目的としています。

1.地域共創・セクター横断型テーマ枠

 脱炭素社会を実現するためには、CO2排出削減技術の高効率化や低コスト化のための技術的な課題を解決し、優れたCO2排出削減技術を生み出し、実社会に普及させていくことで、将来的な地球温暖化対策の強化につなげることが極めて重要です。また、地域のニーズや課題解決につなげるとともに、社会の脱炭素化を目指すためには、実際に利用するユーザー等の関与も含めたオープンイノベーションの視点が必要です。
 そのため、国の政策を踏まえつつ、地域社会におけるニーズ及び各セクターにおける取組について、相互に連動した課題をテーマとして設定し、様々なステークホルダーがイノベーションのパートナーとして参画する地域共創・セクター横断型の取組を実施しています。
 本取組により、脱炭素化を目指す地区のニーズに対応すべく、地域ごとの特有の課題や共通の課題を各地域の特性を活かしながら解決を図るとともに、身近なところから国民にも脱炭素化に向けた意識を醸成するべく、イノベーションの迅速な社会実装を支援することを目指します。

「気候変動×住宅・建築」

【対象となる技術開発・実証課題の例】
・更なる再エネ導入拡大のための建材一体型太陽光発電システム等の次世代太陽電池の用途開発・実用化
・ストックの省CO2改修技術や共同住宅向け技術の開発
・ヒートポンプ給湯器等の高性能化、低コスト化、寒冷地対応の促進等、高効率な省エネ機器の開発
・エネルギーの使用状況を把握し、見える化やCO2診断等のフィードバックを行うとともに、住宅・建築物の快適性や生産性を確保しつつ、機器・設備について最適な運転の支援を行うエネルギー管理システムの開発
・グリッドと協調することで電力消費を効率化し、調整力を提供することで地域の再エネ導入拡大に寄与するビル・工場等の開発

【背景】
 2050年に目指すべき住宅・建築物の姿として、ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、その導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となることを目指すこととされています。この実現の姿を見据えつつ、2030年に目指すべき住宅・建築物の姿としては、新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保されているとともに、新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入されていることを目指しています。
 しかし、新築ZEH・ZEBについての取組が一定程度進められる一方で、住宅・建築物の大半を占めるストック対策においては、各地域によっても必要な対策が異なるなど、個別の対応が必要となり、更なる技術開発が必要となっています。

「気候変動×農林水産・自然」

【対象となる技術開発・実証課題の例】
・地域ごとに異なる原料資源を用いた産業形態に対応した資源利用の効率化に係る技術開発
・地域内で利用率の低いバイオマス原料等を含む多様な資源を安定的かつ持続的に調達する技術の開発
・エネルギー効率の高い熱利用に係る技術開発
・生物模倣(バイオミミクリー)による革新的な省CO2技術の開発

【背景】
 2030年度CO2排出削減目標や2050年カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーの導入拡大が求められていますが、農林水産省が策定した「みどりの食料システム戦略」においても、農林漁業の健全な発展に資する形で、農山漁村における再生可能エネルギーの導入を目指しています。例えば、農山漁村に豊富に存在するバイオマスは、燃焼等によりCO2を排出しても大気中のCO2濃度に影響を与えないカーボンニュートラルという特性があり、再生可能エネルギーのなかで天候に左右されにくいエネルギー源です。このような地域の未利用資源であるバイオマスを活用することは、農林水産業の活性化に貢献する等の利点があります。
 その一方で、原料の特性や収集・加工等にかかるコスト等の要因により、バイオマスの種類によっては利用が十分に進んでいないという課題があります。枝条等の林地残材はバイオマス発電等で需要が出てきていますが、利用率はまだ低い状況です。また、家畜排せつ物と下水汚泥等の組合せによるメタン発酵の促進や、もみ殻等未利用系バイオマスと木質バイオマスの混焼等の混合利用によるバイオマスの利用拡大のためには、これらの原料資源を用いた産業形態に応じた設備の最適化や発酵残渣の有効活用に係る技術開発が求められています。
 また、農林水産業の基盤となる生物多様性は、遺伝資源としての価値を有するとともに、その構造を工学応用する生物模倣(バイオミミクリー)によって高効率性能等のイノベーションの源泉となります。逆に、生物模倣によるエコプロダクトは自然の恩恵の価値に関する気づきを与え得る技術領域でもあります。自然環境への負荷を可能な限り回避し、トレードオフを技術的政策により解消する観点から、生物模倣を活用した技術開発が重要となっています。

「気候変動×地域交通」

【対象となる技術開発・実証課題の例】
・大型・長距離モビリティ(自動車、鉄道、船舶、産業機械等)のインフラを含む電動化に係る技術開発
・従来のエンジンでも使用可能な非化石燃料の製造(バイオ燃料・合成燃料等)に係る技術開発
・複数のモビリティで構成される交通システム全体のエネルギー消費量を最小化するためのプラットフォーム構築(エネルギーマネジメント、モーダルシフト等)

【背景】
 運輸部門においては、CO2排出量の大半は自動車によるものであり、既に様々な取組がなされています。一方、製品寿命が長い鉄道や航空機、船舶等の輸送手段においては、早期に省エネ化やゼロエミッション化を行わなければ、2030年度CO2排出削減目標や2050年カーボンニュートラルの達成は困難となります。
 このため、特に重点的な取組が求められる大型・長距離モビリティ(自動車、鉄道、船舶、産業機械等)や複数のモビリティで構成される交通システムを念頭に、地域の生活・経済活動を支える公共交通・物流分野における温室効果ガスの排出抑制を目的とした技術開発を行うことが必要となっています。

2. ボトムアップ型分野別技術開発・実証枠

 脱炭素社会及び「循環共生型社会」の構築の実現に向け、将来的な地球温暖化対策の強化につながり、各分野におけるCO2削減効果が相対的に大きいものの、開発リスク等の問題から、民間の自主的な取組だけでは十分に進まない技術開発・実証を支援します。

3. スタートアップ企業に対する事業促進支援枠

 スタートアップを主とした中小企業等が行う2030 年温室効果ガス削減目標の達成に向けたエネルギー起源 CO2 排出削減に資する、新しいアイデアに基づく効果的・効率的又は低コストなCO2 排出削減技術や、地域の課題解決と脱炭素化を同時に達成する方策等の実現につながる技術シーズ/アプリケーション等について、テーマ枠を設けず幅広く支援します。

※過年度事業についても上記リンク先に掲載しています。


アワード型イノベーション発掘・社会実装加速化枠

※令和7年度の公募は実施いたしません。

 大幅なCO2削減に資する技術の社会普及につなげるため、気候変動アクション環境大臣表彰(イノベーション発掘・社会実装加速化枠)において表彰された団体(当該団体が実施してきた開発・実証等の実績に基づく、環境省が目指す新たな脱炭素社会像に対する貢献度や製品化・市場創出への期待度の高いイノベーションアイデアを有する団体)を対象として、FSや技術開発・実証の実施を通して、そのアイデアの実現を目指します。

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