土壌制度小委員会(第5回)議事次第・配付資料
開催日時
令和7年5月19日(月) 10:00~12:00
開催方式
WEB会議システム併用(YouTubeによるライブ配信)
議題
今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点
資料一覧
資料1 中央環境審議会水環境・土壌農薬部会土壌制度小委員会委員名簿
資料2 今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点②
資料2 今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点②
議事録
(長谷川土壌汚染対策係長)
それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境・土壌農薬部会土壌制度小委員会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、ご多忙のところ、ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の小委員会は、委員総数20名のうち、過半数の17名がご出席で、足立委員、佐藤委員、光成委員がご欠席の予定です。定足数の要件を満たし、小委員会として成立しておりますことをご報告いたします。
なお、委員の交代がございますので、ご報告いたします。資料1の委員名簿をお手元にご用意ください。
金見拓委員の後任として矢野明子委員、西井裕子委員の後任として吉田光方子委員にそれぞれご就任いただいております。
また、WEBを併用した開催でございまして、YouTubeの環境省環境管理課公式動画チャンネルで同時配信をしております。
それでは、議事に入ります前に本日の配付資料を確認いたします。
資料1としまして、本小委員会の委員名簿、資料2としまして、今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点②を配付させていただいております。
また、委員の皆様のお手元には、参考資料として土壌汚染対策法の概要、法令の条文、さらに第1回小委員会で使用した現状と主な課題に関する資料をお配りしております。会議の中で必要に応じご参照ください。
こちらの参考資料におきましては、次回以降も使用いたしますので、会議が終わりましたら、机の上に残してご退出されますようお願いいたします。
何か不足等ございましたら、事務局までお知らせください。
なお、これらの資料及び本小委員会は運営規則等に基づき公開とさせていただきます。
それでは、これより議事に移りたいと思います。大塚委員長に議事進行をお願いいたします。
(大塚委員長)
それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、今後の土壌汚染対策の在り方に関する論点です。この議題は、複数回に分けて審議しておりますが、今回はその2回目でございます。
事務局から資料2の説明をお願いいたします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
それでは、資料2のご用意をお願いします。
前回、第4回から複数回に分けて、今後の土壌汚染対策の在り方に関する論点を議題としまして、これまでにいただいたご意見などを踏まえて個別論点をお示しし、それぞれの論点に対して課題や方向性の整理を進めております。今回はその2回目です。
1ページ、お願いします。こちらは目次でございまして、論点は、制度全体にわたるものから、運用やガイドラインのレベルで対応するものまで多数ございますが、審議会では、制度全体や法令の規定に直接影響するような論点を優先的に取り上げて、順次審議を進めております。
本日審議する論点は、目次のとおりでございます。前回と同様に、今回も論点に対する方向性の審議までに留め、具体的な制度の細部までは必ずしも盛り込んでおりません。本日は、まずは論点に対する方向性をご承諾いただいて、それを受けて、制度の具体化の検討を進めていきたいと考えております。
2ページをお願いします。1つ目の論点は、調査費用の汚染原因者への求償についてです。
まず、現行制度ですが、土対法には、要措置区域における汚染の除去等の措置に要した費用は、土地の所有者等は汚染原因者に請求することができる規定がございます。請求できる措置費用の範囲は、法第8条第1項に指示措置に係る汚染除去等計画の作成及び変更並びに指示措置に要する費用の額の限度において、と定められています。これに対して、土壌汚染状況調査に要した費用の方は、汚染原因者に請求することを認める規定はございません。調査費用を汚染原因者に請求するには、民法上の責任を明らかにして損害賠償を求める必要がございます。
なお、措置の請求に対しては、請求権の消滅時効の規定も定められておりまして、当該実施措置を講じ、かつ、その行為をした者を知った時から3年間行使しないとき、または、当該実施措置を講じた時から20年を経過したときに時効となります。「当該実施措置を講じ」は、措置の着手時ではなく、措置が概ね完了した時点を指します。従って、汚染原因行為が消滅時効の起算点とはなっていないため、汚染原因行為から長期間が経過しても、そのことのみにより消滅時効にかかることはないという考え方がございます。
3ページ、お願いします。土対法制定において、調査の実施主体を土地の所有者等が原則としたことの関連情報として、調査に伴うコストなどの負担は、汚染の除去等に比べてはるかに少ないと考えられるという側面がございます。
このことを踏まえて、今般、調査費用の汚染原因者への求償を検討するに当たって、土地の所有者等における調査の負担が増大している旨をこのページでお示ししています。法に基づく土壌汚染状況調査を実施する件数が年々増加しているのみならず、土地の所有者等ごとに見ても、一定規模以上の土地の形質変更時の調査義務の新設により、土壌汚染状況調査を同一の土地の所有者等が複数回実施する場合も生じています。
また、この棒グラフから読み取れるものとは異なりますが、土地の所有者と汚染原因者が異なる場合も多く、例えば調査の結果、要措置区域に指定された場合、その4分の1程度は汚染原因者が判明しており、汚染原因者に対して汚染除去等計画の提出の指示が出されております。
4ページ、お願いします。法に基づく土壌汚染状況調査の件数のうち、多くは区域指定に至らなかった場合や形質変更時要届出区域に指定された場合であり、これらは汚染の除去等の措置は不要です。こうした場合は、調査と措置のうち、調査のみの負担が土地の所有者等にかかることになります。加えて、要措置区域となった場合においても、都道府県知事等により示される指示措置は7割程度が地下水の水質の測定です。指示措置は、土壌汚染の状態に応じて、講ずべき措置の内容が示されるものですが、地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合であって、当該土壌汚染に起因する地下水汚染が生じていないときには、地下水の水質の測定を指示措置とするものとされています。
5ページ、お願いします。このページでは、土地の所有者等に対する土壌汚染状況調査の負担を示す一環として調査費用と措置費用を試算し、両者を比較した結果を示します。
措置費用は、地下水の水質の測定を行う場合を試算しました。この考え方は、指示措置の多くは地下水の水質の測定であり、措置費用は、法において指示措置に要する費用の額の限度において請求できると定められていることによります。
図のように、特定施設を有する工場のモデルを想定して、土対法関係事業者に対するヒアリング等を参考に試算したところ、土地の所有者等が負担する費用については、措置費用の方が桁違いに高額というような状況はなく、措置費用と調査費用は同規模であることが読み取れます。
6ページをお願いします。これらの施行状況から、課題として、土壌汚染状況調査に係るコスト負担が増えていること、また、汚染の除去等の措置が必要な場合も、多くの場合の指示措置は「地下水の水質の測定」であり、土地の所有者等が負担する調査費用が措置費用と同規模となっている場合が多いことを掲げています。
併せて、法律上の観点からの課題として、土対法に求償をできる規定がない現状で調査費用を汚染原因者に請求するには、故意・過失や違法性のあることを原告側が証明した上で民法上の責任から損害賠償を求める必要があり、土地の所有者等には負担が大きい旨を掲げています。
7ページをお願いします。そこで論点としては、6ページにある検討会提言も踏まえまして、特定有害物質による汚染が当該土地の所有者等以外の者の行為によるものであるときは、その行為をした者に対し、法に基づき実施する土壌汚染状況調査に要した費用を請求することを可能としてはどうか、としました。
論点に対する方向性においては、aとして、法に基づいて土壌汚染状況調査を行った場合であって、①当該土地の土壌汚染が判明し、②当該汚染が当該土地の所有者等以外の者の行為によるものであり、さらに、③その者の行為が原因で土壌汚染状況調査が必要になったことが明らかな場合には、その者に対し、当該汚染の状況の把握のために要した土壌汚染状況調査の費用を請求することができる規定としてはどうか、としました。
それぞれの趣旨を簡潔に補足しますと、①は原因者負担原則から、土壌が汚染されている場合に求償できる、と整理するのはどうかという趣旨です。②は前提として、求償の相手方となる汚染原因者が特定されている場合に求償できる、と整理するのはどうかという趣旨です。③は、土壌汚染状況調査は汚染の有無が判明していない段階において、土地の所有者等の責任として行われるものですが、汚染のおそれがあるため調査実施の必要性があるという因果関係がある場合には求償できる、と整理するのはどうかという考え方となります。
併せて、当該整理に従いますと、要措置区域となった場合に限らず、形質変更時要届出区域になった場合も調査費用を請求できることになります。
また、bとして、調査費用の請求権は、現行の措置費用の請求に係る消滅時効の規定を参考に、一定の期間で時効によって消滅する規定とすべきではないか、と掲げております。
8ページをお願いします。このページからは論点2「健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱について」を取り扱います。
まず、現行制度において、自然由来の汚染であっても形質変更時要届出区域(自然由来特例区域)に指定され、法第12条届出(形質変更時要届出区域内における土地の形質変更の届出)、また、法第16条届出(汚染土壌の搬出時の届出)の対象となります。
自然由来等基準不適合土壌に関する過去の答申や施行通知においては、平成20年答申には、自然的原因により有害物質が含まれる土壌については、人為的な搬出以降の行為を法の対象とするとの考え方が示されております。
一方、施行通知においては「自然由来の有害物質が含まれる汚染された土壌を法の対象とする」とされ、現行の区域指定制度により管理をしているところです。
結果として、自然由来の汚染において形質変更時要届出区域に指定されたときには、法第16条に基づく搬出規制のみならず、法第12条に基づく形質変更に係る規定もかかっており、元の平成20年答申以上の規制が掛かっていることになります。
9ページ、お願いします。こちらは自然由来の土壌汚染状況調査の方法を示しています。試料採取等を行う区画は、自然由来の汚染の特徴を踏まえて、900m格子毎の両端としていることや、30m格子毎の調査を行うこともできることを示しています。
続けて、10ページから12ページにわたって、土壌制度小委員会(第2回及び第3回)におけるヒアリングで得られた意見をお示ししておりますところ、自然由来等基準不適合土壌を土対法に基づき規制することに伴う課題など、多くのご意見をいただいております。
13ページ、お願いします。検討会提言では、自然由来等土壌については、形質変更に伴い土壌の搬出が行われる場合には、現行制度と同様の枠組みは維持しつつ、従来の区域指定(形質変更時要届出区域への指定)を行う制度の対象からは除外することを検討すべき旨が盛り込まれていました。
14ページ、お願いします。そこで、論点としては、自然由来の汚染は、これまでに自然由来特例区域等の制度が設けられてきたが、地質的に同質な状態で広く存在する自然由来の汚染であるという趣旨を踏まえた制度に見直してはどうか、としました。
論点に対する方向性において、aとして、自然由来の土壌汚染については、要措置区域及び形質変更時要届出区域としない制度とすべきではないか、としました。その趣旨は、平成20年答申においては、自然由来汚染は搬出以降の行為を法対象とすべきとされていましたが、現行法では土地の形質変更も対象となっているため、自然由来の汚染がある土地を法第12条届出の対象外へ改めてはどうかというものです。
また、現行の区域指定制度によらず、自然由来土地については、自然由来による土壌溶出量基準不適合の場合のみとし、土壌含有量基準不適合及び第二溶出量基準不適合の場合は適用されないものとしてはどうか、としました。
併せて、自然由来土地における搬出時の規制は、自然由来等土壌利用施設への搬出、区域間移動等、現行法の自然由来汚染土壌に係る搬出規制と同様の特例を設けてはどうか、としました。
なお、自然由来土地を土対法における仕組みに組み入れる方法としては、台帳の調製により区域指定しない管理をする、または、新しい区域指定制度による管理とするといった方法が考えられますが、引き続き検討を行うものとしております。
また、bとして、自然由来と判定するために必要な試料採取等調査方法についても、より合理的な調査方法を検討すべきではないか、としました。例えば、今までの900m格子の敷地の両端での調査と30m格子毎の調査に加えて、その間の面積、例えば90m格子毎での調査も可能としてはどうか、と掲げております。
続けて、15ページ、お願いします。ここからは論点3-①「飛び地間移動の要件について」を取り扱います。
飛び地間移動は、同一の土壌汚染状況調査の結果に基づき指定された複数の要措置区域等の間において、土地の形質変更に自ら使用し、または、他人に使用させるために汚染土壌を搬出できる仕組みです。
飛び地間移動の条件としては、要措置区域同士または形質変更時要届出区域同士の場合に汚染土壌を使用できることに加えて、一の調査の結果、すなわち、同一調査の結果に基づき区域指定となった範囲に限定しております。
また、飛び地間移動による人の健康に係る被害が生ずるおそれがないようにするため、一律、移動後の土壌が帯水層に接しないようにすることとされています。
16ページ、お願いします。土壌制度小委員会におけるヒアリングでは、同一調査の結果に基づき指定された区域間の移動しか認めていないことに伴う不具合に対する意見をいただいております。
17ページ、お願いします。検討会提言においては、現行の飛び地間移動等の特例制度については、要件の合理化等の見直しを検討すべき旨が盛り込まれておりました。
そこで、論点としては、飛び地間移動は移動可能な範囲を見直してはどうか、としました。
また、管理票は、前回の審議会でも議論しましたが、汚染土壌を要措置区域等外に搬出する際に交付し、汚染土壌が適正に運搬・処理されていることを事後的に確認することにより、汚染土壌の搬出に伴う汚染の拡散防止を図る仕組みです。管理票は、敷地内であっても要措置区域等外に搬出する場合には交付する仕組みになっておりますが、飛び地間移動に当たって、同一敷地内の移動にもかかわらず、管理票の対象になっていることを見直してはどうか、としました。
18ページをお願いします。論点に対する方向性のaとして、飛び地間移動は、要措置区域同士または形質変更時要届出区域同士の同一敷地内であれば、「一の調査の結果」に限らず、移動可能としてはどうか、としました。ただし、現行法と同様に、要措置区域と形質変更時要届出区域をまたがる飛び地間移動は不可としてはどうか、としました。
左側の図において、現行制度では、同一調査により指定を受けた要措置区域であるピンク色同士の汚染土壌の移動はできますが、ピンク色から橙色の区域への移動は、同じ敷地内の要措置区域同士であるにもかかわらず、調査契機が異なることから汚染土壌の移動ができないところ、ピンク色から橙色の区域へ汚染土壌を移動できるように見直してはどうか、というものです。
併せて、管理票に関しては、汚染土壌が汚染土壌処理施設へ搬出され、適切に処理されているかを事後的に確認する仕組みであり、飛び地間移動の際、同一敷地内の移動を管理票によっては管理できないことから、同一敷地内での移動を追跡できるように、トレサビリティ管理として、移動先の位置や汚染状態等の記録を実施させることとしてはどうか、としました。
19ページ、お願いします。19ページからは、論点3-②「仮置きの要件について」を取り扱います。この論点と次にご説明する論点3-③「期限を区切らない同一敷地内の移動について」の2点は法律事項ではございませんが、敷地内における汚染土壌のリスク管理、汚染拡散防止の観点からは、論点3-①の飛び地間移動と共通する部分がございますので、審議会で方向性をご審議いただきたい次第です。
まず、仮置きの現行制度について、工事の過程で汚染土壌を敷地内に一時的に仮置きする際の具体的な規定がございません。仮置きに関しては、「搬出」の定義として、汚染土壌を人為的に移動することにより、要措置区域等の境界線を越えること、また、要措置区域等に隣接する土地においては、積み替えも含めた一時保管ができること、さらに、特定有害物質の除去等の後に汚染土壌を埋め戻す場合には、「搬出」には該当しないといった規定があるのみとなっています。
左側の図で、仮にピンク色の要措置区域の工事をする際、汚染土壌を当該要措置区域に隣接しない敷地内で仮置きをし、仮置き後に場外に搬出する、元の要措置区域に埋め戻す、または、敷地内の他の要措置区域に移動させる等が考えられますが、これらを行うことができる等の具体的な規定が定められていないという状況です。
併せて、仮置きする場所における養生方法に関する規定や、仮置きする場所を区域指定により管理するべきかについても、具体的な規定はございません。
20ページ、お願いします。土壌制度小委員会におけるヒアリングでは、汚染土壌の仮置きに際して、敷地の効率的運用や自由度の観点等から意見をいただいております。
21ページ、お願いします。そこで、論点としては、現行の制度では明確な規定が無いため、同一敷地内の移動として汚染土壌の仮置きの取扱について明確にしてはどうか、としました。
論点に対する方向性において、aとして、汚染土壌の仮置きは、同一敷地内であれば、汚染土壌の搬出とみなさず移動が行えることとしてはどうか、としました。
bとして、仮置きの方法を数点示しておりますが、まず、仮置きに伴う汚染土壌のリスク管理を適正に行うべく、法第7条または法第12条に規定されている、要措置区域または形質変更時要届出区域における自治体への届出の記載内容に、仮置きする場所、養生方法、仮置き期間等を含めてはどうか、としました。
併せて、汚染土壌をいずれ他の場所に移動するという仮置きの趣旨を踏まえ、盛土に限定することや、養生方法が仮置きの趣旨を超えて過剰にならないよう目安を示すこと、さらに、仮置き後に飛び地間移動等を含む搬出、区域内移動、元の区域への埋め戻しをできることを明確にしてはどうかとしました。
22ページをお願いします。こちらは論点3-③「期限を区切らない同一敷地内の移動について」でございます。事業者によっては、工事の過程で発生した汚染土壌を敷地内の特定の区域に集め、期限を区切らずにまとめて管理する場合がございますが、汚染土壌を集めた区域は、区域指定をして管理するのか等、工事の過程で敷地内に期限を区切らず汚染土壌を移動することについて、規定がございません。
23ページ、お願いします。そこで、論点として、先ほどご説明した仮置きと併せて、同一敷地内における汚染土壌の長期的に「期限を区切らない同一敷地内の移動」についても具体的に規定してはどうか、としました。
論点に対する方向性として、汚染土壌を集める区域を区域指定により管理することとし、法第12条または法第16条の届出の際、土地所有者の同意書を添付した上で届出を行い、届出を受けた都道府県は、移動した先の区域を区域指定する仕組みとしてはどうか、としました。
また、汚染土壌の移動先の土壌汚染の状況をあらかじめ調査し、移動先が基準に適合する、すなわち、汚染されていない場合には、搬出元の汚染の状態によらず、一律移動を可能とするとともに、移動後の汚染土壌が帯水層に接しないようにすること、移動先で土壌汚染が確認された場合には、飛び地間移動として取り扱うこととしてはどうか、としました。
併せて、飛び地間移動のときと同様の考え方ですが、同一敷地内の移動は管理票によって管理できないため、同一敷地内での移動を追跡できるように、トレサビリティ管理を実施させることとしてはどうか、としました。
24ページ、お願いします。24ページからは論点3-④「有害物質使用特定事業場における事故発生時の対応について」を取り扱います。
水質汚濁防止法において、法第14条の2に事故時の措置という規定がございます。同条第1項に基づいて、有害物質使用特定事業場で有害物質を含む水が地下に浸透する等、事故が発生した場合に応急措置を講ずるとともに、速やかに事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県に届け出ることが義務づけられています。
施行状況としては、ページ下の表の事故時の措置に関する届出件数のうち、特定施設の設置された事業場における地下水関係の事故ですので、年間10件から30件程度ございます。
25ページ、お願いします。検討会提言において、有害物質使用特定事業場の設置者から、地下水に係る水濁法上の事故の届出が都道府県知事に行われたときで、事故により生じた土壌汚染の状況の把握が必要と考えられる場合、土対法と水濁法の関係を踏まえつつ、土対法に基づき、何かしらの対応が必要かどうかという議論があり、土対法第7条第1項ただし書の規定を参考に、設置者を実施主体として汚染状況の調査を求められるようにすることを検討することが考えられる旨が盛り込まれていることを踏まえて、今般、ご審議をいただくものです。
論点に示すとおり、有害物質使用特定事業場において事故が発生した場合に、土対法における何かしらの対応が必要か検討したところ、事務局側の結論としては、新たに土対法に基づく調査の機会を設ける必要性は高くないと見ております。
この理由として、論点に対する方向性のaのとおり、特定施設の破損その他の事故により有害物質を含む水が漏えい等した場合に、水質汚濁防止法において応急の措置を講ずることが義務づけられており、必要な場合には、その措置に当該場所の土壌の除去も含まれることから、土対法に基づく調査の対象とせずとも、水質汚濁防止法に基づいて、必要に応じて土壌に関する応急的な対策がなされることを挙げております。
一方で、地下水に関する事故の情報は、土壌汚染や地下水汚染のおそれに関する地歴情報であることから、土壌汚染対策における活用を図ることとしてはどうか、としました。
具体的には、当該事故に関する情報は、公共用水域や地下水に係る常時監視の考え方、例えば地点や頻度等の方法に反映したり、土壌汚染状況調査の報告を受けた際等に、必要に応じてその結果を活用したりできることから、自治体内において情報共有とその結果の活用を図ることとしてはどうか、といたしました。
資料の説明は以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。それでは、ただいまご説明がございました論点について、論点ごとに時間を区切って審議していきたいと思います。論点の区切り方は、資料2の1ページにある目次のとおり、論点1、調査費用の汚染原因者への求償について、論点2、健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いについて、論点3、その他に区切って審議をしていきたいと思います。最後に、時間が残れば全体をまとめて審議したいと思います。
質問事項などにつきましては、事務局からまとめて回答いただきたいと思っております。ご発言の方は、ネームプレートを立てていただくようお願いします。WEB参加者の方は、挙手ボタンでお知らせください。
では、まず2ページから7ページまで、論点1、調査費用の汚染原因者への求償についてを審議します。ご発言のある方は、お知らせいただければと思います。
まず欠席の足立委員からの意見をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。
足立委員より、書面意見をいただいておりますので、会場には配付しておりますが、資料のご用意をお願いいたします。
こちら、事務局より読み上げさせていただきます。
今回論点の「1.調査費用の汚染原因者への求償について」 「3.その他」 の内容は制度・運用の改善であり一定の評価ができると認識している。
しかしながら、論点の「2.健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱について」 の方向性は、管理の方法に関する検討を示しているのみであり、事業者にとっての負担が減るのかが明確ではない。
今般の法の見直しにあたっては、脱炭素社会の実現といった新たな社会的課題に対して持続可能な土壌汚染対策とする観点もふくまれていたことから、自然由来の汚染土壌に関する対応については十分議論・検討していただきたい。
その上で、今ご審議いただく1.調査費用の汚染原因者への求償については、中小企業等も含めて求償できる規定の設置は望ましいと考える。但し、自然由来など”汚染原因者が関与していない汚染”や”もらい汚染”に関するものまで負担させることは合理的ではないと考えるため、これらについては求償範囲を予め決定するなど、別途検討が必要と考える。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。
では、中込委員、お願いします。
(中込専門委員)
鉄鋼連盟、中込でございます。本日、ご説明ありがとうございます。
本日、お示しいただいた方向性につきましては、基本的に異論はございません。
その上で調査費用の汚染原因者への求償につきまして、調査費用の請求権に関した意見を1点述べさせていただきます。
資料の7ページで提案いただいている論点の中で、調査費用の請求権に関しては、消滅時効を検討いただいておりますが、汚染原因者への責任がどこまで遡及するのかという点は整理が必要ではないかと考えております。
例えばですが、土対法や水濁法の制定以前に、法整備がなかった時代の汚染行為についても汚染原因者に対して責任を訴求するべきなのかという点。
それから、特に臨海部などにおける埋立地におきまして、浚渫土由来の汚染という可能性もございます。その埋立者に対しても、汚染原因者として費用の求償が可能なのかといった点等の懸念がございます。
今回、形質変更時要届出区域となった場合についても調査費用の請求が可能になる方向性ということで、現行の措置費用と比較して適用範囲が少なからず広がるというところを踏まえますと、過去に売却した土地における調査費用の負担を求められるケースがかなり増えるのではないかと懸念しております。場合によっては、その該当性をめぐった訴訟が増えるというようなところも懸念しております。
以上を踏まえまして、免責あるいは求償可能な範囲の限定等について、整理いただければというふうに考えてございます。以上です。
(大塚委員長)
土対法が制定以前の部分についても遡及するのは、2002年の制定のときから、そのようにしておりますが、この件との関係で、後で事務局から答えていただければと思います。
では、石巻委員、お願いします。
(石巻専門委員)
ありがとうございます。ご説明いただきました、調査費用の汚染原因者への求償について、方向性については賛成いたします。理論的には、土壌汚染の存在が相当程度に疑われる土地で調査をした結果、実際に土壌汚染の存在が確認された場合に、確認された土壌汚染の原因者に対して、調査を実施した土地所有者のほうから調査費用を請求することができるようにすることは、状態責任の限界と原因者負担原則の観点から、問題はなく、むしろ妥当であるというふうに考えております。
資料2の7ページの論点に対する方向性aのところにある、法に基づいて土壌汚染状況調査を行った場合としては、3条、4条、5条のいずれの場合も、土壌汚染の存在が相当程度に疑われる土地で、土壌汚染の存在を確認するために調査をするものと言える限りにおいては、求償の対象となる調査と考えるべきなのではないかと考えております。
また、3条、4条、5条のいずれの契機にも該当せずに、自発的に土壌汚染状況調査が行われた場合であっても、調査の結果、疑われていた土壌汚染の存在が確認され、14条1項に基づく申請により区域指定がなされた場合には、14条3項に書かれているとおり、この自発的な調査は、法に基づく土壌汚染状況調査とみなされるということになっておりますので、14条の場合も調査費用は求償の対象となると考える余地もあるのではないかと思っております。
先ほどの足立委員のご意見で、汚染原因者が関与していない汚染やもらい汚染に関するものまで負担させることは合理的ではないという部分がございましたが、これに関しましては、現行の施行規則の3条2項のところに、複数の原因者がいる場合は、汚染の寄与度を限度として責任を負うものとするという規定がございますので、調査費用の負担に関しても、同様に汚染の寄与度を限度とするといったような整理をすれば、このような懸念は無くなるのではないかと思いました。
また、8条の求償規定が、そもそも原因者ではない土地所有者が原因者に対して費用を請求することを可能にするものであるという本来の趣旨を踏まえますと、調査費用に関しても求償ができるのは、汚染に寄与をしていない土地所有者に限定されるということになるのではないかというふうにも考えました。以上です。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。寺浦委員、お願いします。
(寺浦専門委員)
ありがとうございます。私も基本的に、この案については賛成しております。過去に起こった行為についてのご懸念もあるとは思いますが、例えば8条のただし書で、その行為をした者が既に当該措置に係る費用について一定の負担をしているときは、この限りでないというような調整規定もございます。原因者と土地所有者の間で既にそのような分担がされているときには、求償されないということになっておりますので、同様にそういった規定を設けることで、バランスも取れるというふうに考えます。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。原委員、お願いします。
(原専門委員)
産総研の原と申します。
足立委員のコメントにもありましたとおり、自然由来の汚染に関してですが、論点に対する方向性のaの1、2、3において自然由来を含めた場合を想定しているのでしょうか。また自然由来を想定した場合、汚染した者が土地の所有者、離れた場所であっても自然由来の汚染を所有している者なのか、それとも行政や国が負担するものなのか、そこら辺の知見をお伺いしたいと思います。以上です。
(大塚委員長)
小林委員、どうぞ。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。
まず、調査に要する費用のほうについては、方向性としては、私も賛成しております。
一方で、先ほどのご意見にもありましたけれど、法施行前のことですとか、事業者が当時は対応が困難であったということも多々あります。現行はなかなか基金の活用は難しいですが、引き続きそういった支援の検討や、調査対策費用ができるだけ低減できるような支援を検討いただきたいと思っております。以上です。
(大塚委員長)
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ、江種委員、お願いします。
(江種専門委員)
私も、調査費用を汚染原因者に求める規定を設けること自身には賛成しております。
その上で、足立委員ほか、いろんな方から言われている、汚染原因者が関与していない部分をどこまで求めることができるのかということを疑問に思っています。例えば、先ほど自然由来とか、もらい汚染とかいった話も足立委員からありました。実際の事例がどれぐらいあるか分からないんですが、例えば、現在の地表面よりも2、3m下に旧地表面があって、その部分に昔、工場があって、そこも地歴調査で試料採取する必要があるという場合は、明らかに現在の土地の事業所を操業している汚染原因者とは違う汚染になると思います。そういった場合に関して、どこまで求めることができるのかということです。石巻委員から、施行規則を適用すれば懸念はないのではないかと意見がありましたのでいいとは思いますが、理解できるように教えていただきたく思います。現在、措置に要した費用は、汚染原因者に求めることができますが、その措置を行うときにも、場合によっては、現在の汚染原因者と異なる人によって汚染されたものも一緒に措置することがあり得ると思います。そういう事例で、どういう形で実際に汚染原因者に費用を求めたのかということも、もし御存知でしたら教えていただきたく思います。そうすれば、調査のほうでどこまで求めるかということの参考にもなると思っております。
(大塚委員長)
7条1項のただし書のところの話だと思いますけども、後でお話しいただければと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
まず、指示措置の内訳についての補足になります。指示措置で地下水質の測定が多いというのは、法が地下水調査を義務づけていないため、まず、地下水汚染の有無を確認するために地下水質の測定指示があり、この測定により汚染が確認された場合は、また別の指示措置に移るというフローがあるということを補足させていただきます。
実際には土地において地下水質の測定という措置が必ずしもゴールではなく、土壌汚染の除去のような指示措置ではない措置も講じられていることも踏まえますと、指示措置に関する求償規定の8条と、今回新しく検討されている調査に関する求償等というのは、利用の頻度や世の中のニーズのレベルが違うものであると考えており、様々な社会的影響を十分に考えていただけるような議論が進むことを期待しております。
(大塚委員長)
今の話は、求償既定の理由にならないということになるというご趣旨でしょうか。趣旨を詳しくご教示願います。
(矢野専門委員)
東京都ではそもそも土壌汚染の調査は、条例において事業者のほうが実施する義務がありますので、土地所有者ではなく、事業者が費用を負担するということ自体は賛成でございます。ただ、求償規定の影響が今の8条よりははるかに大きく及ぶのではないかというところを懸念しております。
以上です。
(大塚委員長)
分かりました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは一旦ここで区切って、事務局からご回答いただければと思います。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局よりコメントさせていただきます。
まずは、座長からもご指摘いただきました、なぜこれまで調査費用の求償の規定がなかったかの報告をさせていただきます。立法当時は、調査は汚染が存在しているかどうかが判明していない段階で、土地所有者等の責任に応じて行われるものという考え方から、民民での解決を前提に、調査費用の求償を公法上に規定することは適さないというふうに考えられておりました。併せて調査に伴う負担が土地所有者にとって過大なものにならないようにも配慮することとされていました。
一方、法施行を通して、過去の法改正により調査契機を拡大したため、法制定時の規定よりも土地所有者の調査負担が高まっているのと、調査費用についても、相当程度の負担が伴うと判明したため、公法上に調査費用の求償も規定する必要が生じたとの立場から、事務局案としてご提案をしております。
また、中込委員から、措置費用の求償の時効に関して、どこまで遡って求償されるのかというご意見がございました。こちら、現行の措置費用の求償は、民法724条の不法行為による損害賠償請求権と一定の類似性があることから、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を参考に定められています。調査費用の求償も類似性があるかは、今後、精査すべき点はあると思いますが、仮に準用する場合には、調査を講じ汚染原因者を知ったときから3年間、または、調査が講じられたときから20年間という規定になり得ます。現行でも汚染行為に対する責任の遡及は認められており、汚染行為の時期を問わず、調査から措置まで必要であって、汚染原因者に措置に要した費用を求償できることがございます。調査に要した費用も同様に、汚染行為の時期を問わず、求償できることを想定しておるところではございます。
また、足立委員からは、もらい汚染でも調査費用を求償できるのかという意見がございました。こちらは、仮に汚染原因者の特定ができて、調査費用の求償の条件を全て満たすのであれば可能であるという考え方はあるかと思います。ただ、実際には、汚染原因者の特定が難しいというケースもあるかなと思っておりまして、これが実際に適用して求償できるのかどうかというのは、個別具体的に検討・判断をされるものというふうに思います。
また、こちらの規定を定めることによって、必要に応じて範囲を拡大するハレーションがあるというご指摘が多くの委員からあったかと思います。こちら、論点に対する方向性でお示しをしたように、当該土地の土壌汚染が判明して、当該汚染が当該土地の所有者等以外の者による行為であって、さらに、その者の行為が原因で調査が必要になったことが明らかな場合を条件に考えていますが、具体的に問題がある事例が考えられるのであれば、具体的なご指摘をいただきながら検討をしてまいりたいと思っています。現行でも措置費用に関する求償できる規定がございますので、あくまで調査費用を求償できる規定を追加するのに伴うハレーションというところについて、具体的なご指摘をいただきながら精査してまいりたいと思っています。
次に、原委員から、自然由来の汚染でも調査費用を求償できるのかというご指摘ございました。こちらは、自然由来の汚染は、基本的に汚染原因者が不在と考えられることから、こちらの求償は難しいのではないかというのが事務局の考え方でございます。
また、小林委員から、例えば汚染原因者が中小企業であったり不存在な場合、また、自然由来による汚染のため調査費用の求償が困難な場合は基金による支援も含めて、何か考えられることはあるかというご意見をいただきました。現行の基金制度は、要措置区域における措置に要した費用のみが対象になっており、現行では、調査に要した費用は対象外となっております。調査に要した費用を基金の対象とするかは、基金の財源が国だけではなくて、産業界からの任意の拠出によって確保されているなどの制度設計などを踏まえますと、環境省の独断で変更することはできない仕組みであるというふうにも考えておりまして、産業界と、また関係省庁とも協議・調整も必要というふうに考えております。
以上でございます。
(鈴木環境汚染対策室長)
表現について補足させていただきます。今、基金が民間の任意というお話がありましたけど、現状、実態は、寄附をいただいていたり、調査の費用に上乗せしたり、管理票の部分で寄附をいただいているということでございます。
(大塚委員長)
もらい汚染は、もともとその土地の外から汚染が流れてくるようなケースなので、汚染の流れてきた元のところの人が汚染原因者であるという整理となります。そのため、調査費用について求償するときも、流れてきた汚染原因者に対して調査費用の求償ができるかが問題であり、その土地の所有者に対して求償するわけではありません。それでは、次の論点に移りたいと思います。
次に、8ページから14ページまでですけれども、論点2、健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いについてを審議したいと思います。ご発言のある方は、お知らせいただければと思います。
古川委員、どうぞ。
(古川専門委員)
ありがとうございます。
今回、ご提示いただいた自然由来の土壌汚染要措置区域や形質変更時要届出区域としないという提案について、賛同いたします。土対法のもとで区域指定がなされることになれば、要措置区域と同じレベルの健康リスクがあると捉えられてしまうなどの風評被害の懸念があるためです。
自治体が台帳を調製する形で把握して、土壌搬出時に確実に捕捉することが管理の方法としては望ましいのではないかと考えております。
また、人為由来と自然由来の区別につきましては、明確化することが重要です。自治体ごとに運用の差が生じることがないよう、対応をご検討いただきたいと考えております。
なお、自然由来のみならず、水面埋立土壌由来の土壌汚染につきましても、制度の合理化が必要と考えております。次回で結構ですので、今回に続いて議論をお願いしたいと考えております。
以上です。
(大塚委員長)
どうぞ、川瀨委員、お願いします。
(川瀨専門委員)
ありがとうございます。名古屋市の川瀨です。
今回、自然由来の関係で、方向性を示していただいた内容につきまして、対象地の土壌汚染のおそれの把握で、自然由来の土壌汚染のおそれがあると認められた場合、自然由来の汚染調査を行って、溶出量のみの汚染で、第二溶出量基準を満たしていれば、現行の12条の届出は不要で、16条の届出だけ必要という方向性ということで理解しております。
運用する立場から考えられる課題をちょっと述べたいと思いますが、現行では、自然由来の土壌汚染のおそれがあると認められて、自然由来の汚染調査を行って汚染が確認された場合は、基本的に自然由来特例区域に指定されることになりますけれども、この自然由来特例区域に指定されるようなケースが少なく、名古屋市でも2件ぐらいしかございません。その理由としては、自然由来と認められるという条件が、データ等により地質的な連続性が認められる土地であるといった情報等を集める必要があり、既に開発行為が何回か繰り返された市街地ではそれらの情報が集められない点が、自然由来特例区域に指定されるケースが少ない理由ではないかと考えております。
今回の方向性で、新しい自然由来の制度の要件として現行の自然由来特例区域と同じような要件であれば、新しい制度の対象となる土地も少なく、見直しの成果が少なくなってしまう懸念があります。
また、現行制度の課題として、土壌汚染の把握のおそれの分類を自然由来、埋立由来、それ以外というふうに分類しておりまして、それ以外の汚染で評価されるケースが非常に多いのですが、基準を超えた範囲を一般管理区域に指定をして、12条とか16条の対象としております。それ以外の汚染として評価されている中には、事業場の取扱いによって汚染された人為由来の汚染と、取り扱っていない物質についての自然由来の汚染もあり、それらを同じ枠の中で規制しているということが課題と認識しています。名古屋市では、法の14条の規定ができる前から自主調査の結果を数多く受けていますが、その土地で特定有害物質の取扱いがなくても、市内各地でヒ素やフッ素といった物質がかなりの確率で溶出量基準を超えているという事例があります。そのような事例を踏まえて、新しい自然由来の制度では、例えば4条1項の対象となる3,000平米以上の土地の改変を行う土地で、受入先の調整のために建設残土を事前に調査し、取り扱っていない物質で自然由来程度の汚染が確認された場合、同じ自然地層とか、地質的な連続性や均一であることが認められなくとも、一定の条件で新しい自然由来の制度対象となる要件や制度の入り口を検討していただきたいと考えます。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。
矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
東京都の矢野です。
規制の緩和というところを全体的に制度として賛成いたします。
その上で、やはり従来の区域指定制度とは全く異なるものとして考えていただくということが肝心ではないかと考えております。自然由来については、搬出時のみの規制であれば、区域内の土壌をどう扱うかというよりは、立体的に当該土壌をどう扱うかというような考え方が必要になります。
人為由来で確認された汚染の中に自然由来の汚染が混在することが疑われるケースも多々ございますが、人為由来の汚染土壌を取り除けば自然由来の土地として扱うことができるか、といった制度の流れも整理していただくとともに、川瀨委員からもありましたが、今、一般管理区域として指定されている中にも自然由来ではないかと疑われるような土地もございますので、こういった区域が自然由来の土地へと転換できるような制度の流れを整理していただければと思います。
また、搬出時の土壌調査につきましても、ロットで管理するようなやり方のほうが望ましいのではないかと考えております。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
小林委員、どうぞ。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。
私も方向性については、こういった方向で自然由来について考えていくというのはいいと思います。
一方で、先ほども意見が出ましたが、14ページのタイトルや論点の、自然由来特例区域等の自然由来等という等の部分について論点に対する方向性では自然由来のものに限って整理していただいていますが、等の部分は今後しっかりと議論していく必要があると感じました。特に、水面埋立土砂由来の汚染はかなり多く、汚染の原因か分からず、基準値が自然由来レベルで超えていることが多々見受けられるかと思います。実際には、立地を考慮すると健康リスクは懸念されないような土地の場合も多々ありますので、そういった土地についても、引き続き検討が必要と思います。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。
鎌田委員、どうぞ、お願いします。
(鎌田専門委員)
処理業協会、鎌田です。今日はありがとうございます。
自然由来のリスクに関して、場外搬出を含めた汚染の拡散を防止するというところがしっかり担保がされるのであれば、非常にいい話だと思っています。
1点、懸念としては、自然由来と人為由来の区別がはっきりとはしていないものですから、人為由来の汚染を自然由来にできないか等、違う力によって調査結果が曲げられてしまい、自然由来自体の管理が変わってしまうことがないよう検討いただければと思っています。よろしくお願いします。
(大塚委員長)
重要な点だと思いますので、後でご回答いただきます。
島田委員、どうぞ。
(島田専門委員)
日建連の島田でございます。
皆様がおっしゃっているように、自然由来等というところで、等のところは、自然由来だけではなく、埋立由来もこの議論に入ってきているのかと理解をしておりましたが、必要であれば、延長線上で議論が必要なのかと思っております。
それから、先ほどの自然由来だけではなくて、人為由来だとか埋立由来が、混在しているケースもあるかと思いますが、その場合は、土壌の移動記録や、区域の変更や状態の変更などの、これまでにある管理も一つ必要なすみ分けの仕方かと思っております。
また、自然由来特例区域がありますが、この制度を使うのであれば、この特例区域自体があまり意味をなさないといいますか、逆に、特例区域は非常に管理を厳しくしないといけない面がこれよりも出てくることになりますので、廃止も含めて協議いただければと思います。
あとは、自然由来の土地利用施設があまり多くなく、自然由来汚染土壌を外に出そうとしたときに、なかなか搬出先がないために通常の汚染土壌と同じように処分しないといけないというところもありますので、自然由来等土壌を有効利用するという面と、二酸化炭素をなるべく出さないという面も含めて、自然由来等土壌利用施設の基準等も協議の内容には入ってくるのかと思います。
調査の方法で、例えば、地歴調査で自然由来の汚染のおそれがある場合は、その地歴調査の結果をもって敷地全体を自然由来の土地に認定することも考えられるのではないかと思います。その場合は、格子で指定するよりも、土地全体という大まかなくくりで指定する仕方も考えられるのではないかと思います。
以上でございます。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。
では、勝見委員、お願いします。
(勝見専門委員)
ありがとうございます。勝見です。
三つあるのですが、一つ目は、ヒアリングの意見で書いていただいているのですが、環境省のほうでまとめられているページについては、自然由来のリスクの程度といいますか、濃度レベルについての前提を少し書いていただいてはどうかと思います。土壌汚染対策法が施行されて20年以上、かつ、自然由来も法対象になって十数年たっている中で、様々なデータが取られてきて、色々なことが分かってきていると思います。特に、日本の大都市圏を中心に、海成粘土層由来の地層が問題になることが多かったということですが、その中でも、鉛、フッ素、ホウ素では基準の3倍程度以内、ヒ素では、10倍程度以内で収まっているという、土壌汚染対策法における基準は超えているけれども、濃度は低いと見られる土をどう扱うかが問われていると認識しているところです。
二つ目ですが、小林委員、それから島田委員もおっしゃったところですが、自然由来と埋立地由来をいつも一緒に議論されているようなところがあり、片方で一生懸命議論して、もう片方はそれに乗っかるような形になってしまうと良くないと思います。特性も違うところもありますので、自然由来は自然由来、埋立地由来は埋立地由来ということで、改めてきっちり見ていただく必要があると思います。
三点目、これも何人かの委員の方がおっしゃっていることですが、これまでの制度の延長ではなく、新しい制度とするご発言がございましたけれども、自然由来の現行制度の活用について、自治体によって大変苦労をされていると認識しています。どういった制度になればいいのかというイメージを持っているわけではありませんが、使いやすい制度になることが大事だと思っています。
(大塚委員長)
ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
では、足立委員のコメンㇳの紹介をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。
足立委員からの書面コメントをご紹介させていただきます。
当協会としては、自然由来等土壌を当該対象地から搬出する際に、処理等の管理を義務付けられるということであれば、開発事業者からすると、結果として開発に伴う費用負担は大きく変わらないと考える。
法の主旨である健康被害の防止、拡散防止の観点からは自然由来汚染土壌をそれ以外の汚染土壌と区別する理由がないことから、このような方向であることは理解はできるが、当協会が以前より言及してきた”自然由来の場合には、区域設定エリアの所有者が費用負担するという大枠の考え方が無くなる”あるいは”軽減される”という方向性とは異なっているという認識である。
基準の数倍程度までの汚染土については処分の方法や新たな利用の方法を示すなど、リスクに応じた対応の検討が望まれる。
以上のご意見をいただいております。
(大塚委員長)
自然由来に関して、一言申し上げておきますと、結構厳しい対応をしているということがありますが、もともとは、汚染された土地からの搬出に関して厳格に対応することによって汚染土が流通されないようにする趣旨になります。自然由来の受入れがスムーズにいくための配慮が2017年改正、あるいは2009年の通知の趣旨としてあったと思います。趣旨自体は、今でも生きているので、あまり壊していいわけではないと思いますが、それにしても、少し厳し過ぎるのではないかという問題がありますので、その辺を踏まえて、ぜひご対応いただければと思っております。
では、ご回答お願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
では、事務局より失礼いたします。
順不同になり恐縮ですが、勝見委員から、自然由来によるこれまでの取組状況というか、どれぐらい検出されているかというデータに基づいて制度設計していく必要がある旨のご意見、ご指摘をいただいたと思っております。
少しだけご紹介すると、自然由来特例区域は236件ございまして、うち、含有量基準不適合が令和7年4月末時点で24件ございます。ただし、土壌を分析して含有量基準不適合が確認されたものに限らず、調査を省略した場合も含まれているため、含有量基準不適合の自然由来汚染の件数が正確に反映されているわけではないというところです。
第二溶出量基準超過のほうは、そもそも自然由来として取り扱われておらず、要措置区域または形質変更時要届出区域に指定されるため、自然由来で第二溶出量基準不適合の件数を把握するのは難しい状況です。事業者ヒアリングなどから把握しているのは、ゼロではないものの、まずないという感触と思っております。
根拠に基づいて具体的な制度設計をしていくというご指摘かと思いますので、しっかり検討してまいりたいと思っております。
また、島田委員や勝見委員から、現行の特例の仕組みが十分活用されていないという旨のご指摘をいただいておりますが、提言書のほうでは、これらの特例については、区域指定制度自体に伴う各種負担のほうが大きい、個々の制度を活用するための手続などの煩雑さといった理由から、必ずしも十分に活用されておらず、制度の在り方について見直すべきとの指摘があると提言書で取りまとめされております。
この趣旨も踏まえ、今回ご提案する制度を具体化していったときに、複雑にならないように注意することは事務局としても認識をしているところでございます。
また、古川委員、小林委員、島田委員、勝見委員から、埋立地を今回の議論に含むのかという旨のご指摘をいただいております。自然由来と埋立由来には、汚染が広範囲に広がっていることや、特定有害物質の濃度が低く、特定の地層や同一港湾内に分布しているといった類似の特徴がございます。今回の資料では、自然由来等と表現しているところは、現行制度のご紹介をしている部分、論点に対する方向性では、自然由来に係る方向性をお示ししております。埋立地には、井戸水や飲用に供されることはまれである等の様々な特徴がございますので、自然由来と埋立由来の共通点と差異を精査した上で、改めて取扱いをご審議いただく形で準備をしているところでございます。
また、古川委員から、区域指定をする場合、しない場合のメリット、デメリットに関するご意見を頂戴したと理解しております。区域指定すると、工事をする上で土対法に基づき適正にリスク管理をする仕組みになりますが、その一方、ご指摘のとおり、土壌汚染のレッテルが貼られることにより風評被害や土地価格への影響が生じるおそれがあるという議論もあるかもしれませんので、今回資料をお見せしたように、区域指定をするか、それとも台帳のような形で管理するのか、制度の具体化するところについては引き続き検討をしてまいりたいと思っております。
足立委員また矢野委員からは、自然由来土壌を搬出するときの負担感に関してご意見をいただきました。現行の土対法には、土壌を搬出するときに認定調査の掘削後調査というものがございまして、搬出する前に土壌の汚染状況を調査するという考え方がございます。自然由来土壌を搬出する際の調査の仕組みは、この考え方に準じて具体化していくのは一案ですが、現行の認定調査の負担とその合理化を併せて精査をしていく必要があると考えております。
川瀨委員、矢野委員、鎌田委員からは、自然由来汚染の調査を汚染物質の種類や濃度などを踏まえてスクリーニングできるような柔軟な調査の考え方についてご意見をいただいたと理解しております。論点に対する方向性をお示ししているように、自然由来かどうかは調査対象区域の周辺の地歴、例えば調査対象区域に限らず地域一帯に自然由来が広がっているかなども調べながら総合的に判断するという考え方となります。その上で、自然由来等を判断する調査方法については、より合理的な調査方法を検討するという観点も重要と考えております。
具体的な提案ヒントがありましたら、その科学的、技術的な根拠を押さえながら、適用可能かを考えてまいりたいと思っております。
事務局からは以上でございます。
(大塚委員長)
よろしいでしょうか。
それでは、次に15ページから25ページまで、論点、その他まとめて審議したいと思います。ご発言のある方はお知らせいただければと思います。
古川委員、どうぞ。
(古川専門委員)
②の「仮置きの要件」に関連して一言述べさせていただきます。
大気汚染防止法上、1,000平米以上の土石の堆積場は、「一般粉じん発生施設」として届出が必要と理解しております。こうした他法令との関連性について整理いただき、届出のワンストップ化など、手続面での合理化も併せてご検討いただくようお願いいたします。
以上でございます。
(大塚委員長)
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、川瀨委員、お願いします。
(川瀨専門委員)
まず、3-①から3-③までの話ですけれども、飛び地間移動の要件とか、仮置きにつきまして、同一調査だけではなく、同一敷地内であれば可能とする方向性は賛成でございます。
③について、期限を区切らない同一敷地の移動に関しては、12条または16条の届出で移動した先の区域を自治体が区域指定することになりますが、12条や16条の届出は、主に施工者が届出される場合が多く、土地所有者とは異なることが多いため、14条申請してもらえば確実ですが、14条申請のように、区域指定の担保として12条、16条の届出書に土地所有者の同意書を添付してもらうことは必要と考えます。また、移動後の汚染土壌が期限を区切らず移動する場合、帯水層に接しないようにするということですけれども、移動先が要措置区域になる場合もあり得ると思います。そのときは維持管理の観点から、地下に汚染が広がっていないかということを確認する担保というか、例えば地下水のモニタリングなど、そのような対応を求める必要があると考えます。また、将来的に移動先の汚染土壌を除去して、区域指定を解除する場合、区域指定の解除の方法をガイドラインなどで示していく必要があると考えます。 以上です。
(大塚委員長)
ほかにいかがでしょうか。矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
今回のご提案につきまして、まず一つ目、飛び地間移動につきましては、概ねこちらの方向について賛成でございます。もともと敷地については、同一者が管理しているという理解のため、12条が提出される範囲内での同一者が管理する工事において行われることは問題ないのではないかと思います。
こちらは資料上、はっきり分かりませんでしたが、飛び地間移動は16条の対象外として12条のみで管理するという整理でよろしいでしょうか。
次に、仮置きについてです。こちらは1回の届出の範囲内という期間を示していただいておりますが、やはり数年にわたるようなケースもございますので、ある程度、30日なり、120日なり、日付の目安は示していただくのが妥当ではないかと考えております。
この中において、基準適合が確認された深度の土壌や浄化済土壌等の、汚染土壌として扱わなくてもよい土壌が、区域指定が解除されていないため制度上汚染土壌として扱わなければならないというケースもあります。このようなケースについては積極的に仮置きを認めてもよいのではないかと考えます。
また、③の期限を区切らない移動につきましては、現在でも14条により区域指定をあらかじめ受け、そちらで対応することも可能ではないかと考えておりますので、改めて土壌汚染状況調査のルートから外れる12条、16条で区域を指定するということについては、少々懸念がございます。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございます。どうぞ、島田委員、お願いします。
(島田専門委員)
日建連の島田でございます。飛び地間移動の内容については、概ね賛成ですが、細かい話になりますけれども、同一敷地の定義が必要だと考えます。例えば、同一の所有者の土地である場合や、同一の所有者の土地であっても、公道で隔てられるような土地もありますので、そのような場合はどうするのか。そのまま持っていくわけにはいかないので、その場合は16条を届出する等の制限がつくのかもしれませんが、同一敷地の定義を明確にするべきだと考えます。
それからトレサビリティの管理をするということでありますが、一つ一つの区画で管理することもできるかと思いますが、やはりもう少し複数区域のまとまりのある区域同士の移動も併せてご協議いただければと思います。
あと、仮置きについて、仮置きは盛土に限定するという条件もあるのですが、例えば、帯水層に接しないことを条件としたような場合には、地下水に影響しないということで、そのような場合も仮置きの一つの要件に盛り込んでいただきたいと思います。
あともう一つ、期限を切らないで移動する場合について、未調査範囲へ移動する場合は調査をして判断することになっておりますが、土壌汚染状況調査では盛土の下は調査の対象外となっておりますので、ここら辺の整合といいますか、考え方が複雑になるような状況でしたら、合わせたほうがよいと思います。
以上でございます。
(大塚委員長)
同一敷地の定義が大事になってくると思うので、後でご回答ください。
ほかにはいかがでしょうか。後でまた全体についてお伺いしますが、よろしいですか。
では、小林委員どうぞ、お願いします。
(小林臨時委員)
3-①の考え方、3-②の仮置きの要件のところについてなのですけれど、基準適合の範囲で動かす場合等は、大分慎重に考えなければならないと思います。今後の調査契機のときに、次の段階で汚染のおそれがありと判断されることにならないかとか、そうならないような養生方法とか、仮置きの方法について、そこは慎重に議論していただきたいなと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
よろしいですか。では、足立委員のご意見をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
それでは事務局より足立委員の書面意見をご紹介いたします。
仮置き要件について、開発中に掘削した土壌の仮置きを認めない行政もあるため、仮置き要件を作って緩和させる点では、メリットであると考える。
以上でございます。
(大塚委員長)
よろしいでしょうか。では事務局から、ご回答をお願いいたします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
では、事務局より委員のコメントに対してご回答をいくつかさせていただきます。
古川委員から、仮置きをする場合には大気汚染防止法の規制もかかるという趣旨のご指摘をいただいております。こちら、それぞれの法律について新たな仕組みを仮に作った場合には、施行通知や事務連絡などを通じて環境省から周知するという形を取っております。大気汚染防止法も、私どもと同じ環境汚染対策室が所管をしておりますので、連携しながら、自治体にどのように周知するべきか精査していきたいと思っております。
また、川瀨委員と矢野委員から、期限を区切らない移動をするときに、区域指定するのを12条、16条ではなく、現行どおり14条でやったほうがよいのではないかという趣旨のご指摘をいただいたかと思います。こちら、事務局案では、いずれにしても12条、16条への届出があるので、14条で二度手間がかからないように、12条、16条に基づいて区域指定するという仕組みも設けるべきかという趣旨のご提案をしているのですが、いずれにせよ、ゴールとしては自治体の負担や事業者の負担を減らすという趣旨で考えておりますので、また具体的に制度を考えていくときに、ご負担感をお伺いしながら、いかにあるべきかを見極めていきたいと思っております。
また、島田委員、大塚委員長からも、同一敷地の定義に関して事務局の補足をということでございました。敷地というのは、施行通知で、工場、事業場の区域の全体を指して、建築物が設置されていた場所に限定されないという考え方をお示ししております。また、工場、事業場の敷地については、施行通知では、公道などの、工場、事業場の設置者以外の者が管理する土地によって隔てられていない一連の工場、事業場の敷地を言うと示しております。ただし、公道等に隔てられている場合でも、特定有害物質を含む液体などが流れる配管などにより設置され、一体の生産プロセスとなっているなど、特定有害物質による汚染の可能性がある場合には、隔てられた双方の土地を一の工場、事業場の敷地として取り扱うものとするという定めがございます。これらの規定に基づき、今回同一の敷地内について議論するにあたって、個別具体的に判断されていくこととなると考えております。
小林委員からは、仮置きしたところを、その後どのように扱うのかというご指摘をいただいていたかと思います。例えば、いずれ調査契機を迎えるときにはそこは汚染のおそれがありと判断され得るものなのかとか、そのような問題意識だと思いながらお聞きしておりました。事務局の案で仮置きの養生方法に関してお示しをしているのは、地歴調査のときに安全サイドに立って汚染のおそれがありと過剰に判断されないよう、取扱いを明確にする必要があるというふうに考えて、養生方法の一例をお示ししております。
また、島田委員からはトレサビリティの管理の具体的な方法に関してご意見がございましたけれども、例えば、法第7条が要措置区域、第12条が形質変更時要届出区域に係る省令事項としてトレサビリティ確保の旨を定めて、具体的な方法については、事業者の様々な創意工夫でやっているところも多いものですから、事業者の創意工夫や敷地の特徴などに応じて実施をするということで差し支えないようにする想定を現時点では考えております。また、必要に応じて、ガイドラインへの事例の掲載なども検討したいと思っております。
以上でございます。
(鈴木環境汚染対策室長)
補足をさせていただきます。
島田委員のほうから、仮置きの盛土に限定しているというところ、帯水層に接しなければよいのではないかというご意見、この辺りの詳細をまた検討させていただきたいと思います。
(大塚委員長)
私からも一言だけ申し上げます。今の敷地の定義は、工場、事業場を中心とする定義でしたが、今回、もっと広く、自然由来も含めて、考えていかなくてはいけなくて、この敷地の中に入るかどうかというのは結構大きな問題になるので、定義はもう少し厳密にしないと持たないのではないかと思いますので、どうぞご検討いただければと思います。
まだ時間がございますので、ここまでの審議を踏まえて、さらにご発言をいただければと思っております。いかがでしょうか。
どうぞ、江種委員、お願いします。
(江種専門委員)
2番の自然由来ですが、14ページの論点に関する方向性の二つ目で、自然由来土地については下記の条件を満たした場合としてはどうかというので、溶出量基準不適合のみとして、土壌含有量基準不適合は適用されないものとすると書いてあります。第二溶出量基準が不適合の場合には、もう今でも適用されてないのでいいと思いますが、この土壌含有量基準不適合の場合を省く理由が、現行土対法における土壌含有量基準の測定方法で基準を超過した場合には、含有量の全量分析した場合の自然的レベルをもう超えているから、人為的な由来の汚染が多いということがガイドラインにも書かれていると思います。それを根拠に、含有量基準を超えていれば、人為的由来の影響が強いということで省くという認識をしていましたが、先ほどの環境省からの一連の回答のところで、含有量基準が20何か所を超えて指定されているということを聞きました。土対法における含有量基準不適合の場合には、もう自然的レベルを超えているので、人為由来の汚染の可能性が高いものとするということがガイドラインには書かれていますが、確かに総合的に判断するということで、必ずしも土壌含有量基準不適合が人為的由来の汚染の可能性が高いということでもないとは思いますが、改めて土壌含有量基準不適合を除く案を出された理由を教えていただきたく思います。
(大塚委員長)
では、まとめてご回答いただくので、勝見委員から先に聞きましょうか。
(勝見専門委員)
私も江種先生がおっしゃることはそのとおりと思いますが、自然由来かどうかということと、含有量基準を適合、不適合かということは、別問題として捉えています。含有量基準不適合であっても自然由来のものはあります。冒頭申し上げたように、ほとんどの場合は濃度が低いですが、そうではないものもやはりあります。土壌汚染対策法の守備範囲ではございませんが、山のほうに行って岩石を掘れば、非常に濃度が高いものも当然出てきますので、そういったものが、自然か人為かということをぎりぎりと判別するということをここでやるのかどうかということは、少し違うと思っています。
ここでおっしゃっているのは自然由来かもしれないが、含有量基準不適合のものはリスクが高いため、新しい制度の中では外す。要するに、そのような新しい制度とするという話で、必ずしも自然由来かどうかということをぎりぎりと攻めていくということではないと思って、その点がこのまとめ方だと少し曖昧になっているということです。そうではないというご意見もあるでしょうから、そこはまた整理をいただければと思っています。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。自然由来についてぎりぎり詰めるよりも、全体的に考えていったほうがいいのではないかというご趣旨だと思いました。
袖野委員、どうぞお願いします。
(袖野専門委員)
ありがとうございます。全体について一言コメントさせていただきます。今回の説明やヒアリングでも、自治体によって運用が異なるということが問題提起されているかと思います。廃棄物の世界ですと、廃棄物の該否判断など、自治体によって大きく異なることもありますが、それはやはり地域によって状況が違うということと思います。あるものが地域によって有価物になったり、無価物になったりということがありますが、土壌の場合でもそういったことがあるのだろうかと思いました。自然由来の汚染土壌への対応は、もちろん汚染状況や土地の用途について地域ごとの判断があろうかとは思いますが、この運用については、土対法の理念や考え方に立った上での運用であるべきという点で、事例紹介などによって、自治体の運用の差が少しでも減るのではないかと思いまして、自治体向けへの情報の出し方の工夫も必要かと思いました。
もう1点。他法令との連携ということも先ほど話がございましたし、事故発生時の対応についても今回の水濁法で対応していくという方向性が示されましたが、このほかでも、例えば水循環基本法においても、自治体向けのサポート、特に地下水の流れなどの専門的な情報については、市町村レベルではなかなか難しいところもあって、そういった情報提供が行われているかと思います。自然由来の土壌汚染の状況など判断が難しいケースもあろうかと思いますので、そういった点での判断のサポート、情報提供が今後なされるといいと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。では、寺浦委員、どうぞお願いします。
(寺浦専門委員)
ありがとうございます。3-③について、先ほどご指摘もありましたが、やはり同一敷地というものの定義がどうなるかによって非常に大きなインパクトがあり得るというところは懸念しています。この3-③というのは、汚染の拡散につながるものになるかと思いますので、そういった意味で、非常に定義は重要であると考えています。定義によって、やはり同一敷地にする、しないというのを、恣意的に変更することができる部分もあります。また土地ですから、所有者がずっと一緒というわけでもなく、その後、やはり譲渡されて別の所有者、別の管理になることもあり得ますので、そういった長期間の影響も踏まえて、この点は考える必要があり、今後の検討では注意していただく必要があると思いました。
以上です。
(大塚委員長)
これは極めて法律的な話になる可能性があると私も思っております。例えば所有者を一人にする、同じにするという可能性があると思うので、今、寺浦委員がおっしゃったことは、まさにその同一敷地でないようにするために、いろいろ画策する人がどうしても出てきますという話なので、その点をしっかりと考えてくださいというご趣旨なので、ぜひよろしくお願いします。
鎌田委員、お願いします。
(鎌田専門委員)
2番目の健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いの論点に対する方向性の中で、区域指定をどうするかということと、基準不適合のものがあった場合に、場外搬出するときのみの規制とする議論が出ています。その最後のところで、自然由来土地を台帳を調製して管理を行う区域指定によらない方法とするか、新しい区域制度による管理とするか引き続き検討を行うとあったので、ここは非常にいいと思いますが、もともと現地でリスクを管理しながら使い続けるということも、やはり資源の使い方と思いますし、先ほどお話ありましたけど、脱炭素という面でいくと、不必要な活動をしないという面にもなるので、その部分も併用してご議論いただけるといいと思っております。
よろしくお願いいたします。
(大塚委員長)
ありがとうございます。よろしいでしょうか。どうぞ、小林委員。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。私も先ほど勝見委員、江種委員がおっしゃっていた14ページのところについてです。
自然由来の判断基準のところで、土壌含有量基準不適合、第二溶出量基準不適合の場合は適用されないということが、よいのかどうかをずっと考えていましたが、実際に自然由来の汚染でも含有量基準や第二溶出量基準を超えているという状況がないわけではないですし、また一方で、超えているからといって、その土地の立地によっては全く健康リスクが懸念されないような立地も多々ございます。そういう意味では一律に、この条件だったら適用されないとするのではなく、健康リスクが高いような状況であれば、少し慎重に取扱うという考え方と感じました。
あと最後の3-④ですが、事故発生時の対応について、この整理でよいと思いますが、一方で、自治体に情報共有するということで大丈夫かと少し懸念しています。自治体ごとに対応に差が出ることがないように、特に土地を所有している事業者に、放置した場合は汚染が残るかもしれない、広がるかもしれない、どんどん深刻になっていくかもしれないという情報がしっかりと周知されていくように、自治体に環境省からご指導いただければと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
ほかにはよろしいでしょうか。先ほど私が一言申し上げた部分、追加で申し上げさせていただきます。自然由来汚染や搬出との関係で、かなり厳しくやってきたわけですが、私も審議会のメンバーをしていましたけれども、特に積極的に発言していたというわけでは、必ずしもなかったと思いますが、そのときの環境省や審議会のメンバーの基本的な発想は、汚染土が流通していったら困るということと、もう一つは、汚染除去をした土地からの搬出をしようと思ったときに、その土に対する信頼が落ちてしまうと、誰も受取り手がなくなることが様々な問題を引き起こすということは、おそらく考えていたので、当時はそういう発想が結構強かったということを申し上げておきます。
ただ、あまりにも厳し過ぎるので、多くの方がご指摘いただいているように考えていかなくてはいけないわけですが、当時の趣旨はそういう趣旨で、汚染除去した土地からの搬出に関しては、誰も受取り手がなくなっても困ると思うので、そこは様々なことを考えなくてはいけない面はあるということも一言申し上げておきます。
では、様々なご質問、後から重要なご指摘も出てきてよかったと思いますけれど、どうぞご回答をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。まず、江種委員、勝見委員、小林委員から、自然由来土壌のところで、土壌含有量基準不適合の場合、これは自然由来とみなすべきかどうかというところについて、いくつかご意見をいただいたところでした。
今回、土壌含有量基準不適合については、事務局としてイメージしたところとしては、自然由来であっても、土地の形質変更によって汚染土壌が地表に露出をすると、その土地の形質変更という人為的なものに伴って、直接摂取のリスクが、人為的に生じてしまうおそれがあるため、現行の区域制度により管理すべきという安全側に立った考え方もあり得るということでこういったご提案をしていたところでございます。
ただ、先ほど実際の件数状況も含めて若干ご説明させていただきましたが、どの辺りが一番バランスのよい制度設計、判断になってくるのかというのは、今回の審議会も含めて、ゆくゆく制度の具体的なイメージをしていくに当たって、よく意識をしてまいりたいと思っているところです。
また、袖野委員から実際に運用が異なるところは自治体の判断のサポートをしっかりというご指摘をいただいております。土壌汚染対策法では、ガイドラインや通知で、かなりのボリューム感で様々情報提供をさせていただいております。そこが扱いにくいというところもあるのですが、自治体の判断に当たって有用な情報をお示しし、環境省の考え方に基づいて参考にしながら判断しましたという、地域の判断を円滑化するに当たってお役に立てればと考えています。そういった観点も含めて、今回制度の仕組みの見直しなどをしていった結果、ガイドラインを見直すという議論になった場合に、その点もよく意識をして考えていきたいと思っております。
寺浦委員からは、同一敷地の定義によっては、それを恣意的に判断して変更する人も出るのでご注意をというご指摘をいただいたと思います。これも既にこの場で議論はございましたが、敷地の定義がこのままでいいのかという目線で、もう少し精査をしていきたいと思っているところです。
鎌田委員からは、論点②の自然由来のところに関して、場外搬出のみ規制を行う点、もともと現地で適正にリスク管理をするという観点が、脱炭素の観点からも必要という点についてご指摘をいただいたところでございます。ここについては、今回の仮置きや期限を区切らない移動について、その趣旨を十分ご説明できていない部分が一部あったかもしれませんので、またゆくゆくこちらの方向性で骨子や答申をまとめていくに当たって、どういう趣旨で今回仕組みを見直すかというところの、そこの部分にこの背景も丁寧に書くような形で検討していきたいと思っております。
小林委員から事故発生時の対応で、自治体によって差がないようにとか、放置すると汚染が拡散するので、事故発生時の対応の趣旨が自治体に分かるようにいうご指摘をいただいたかと思います。水質汚濁防止法と土壌汚染対策法、同じ環境汚染対策室が担当しておりますので、そこも実際に、より伝わるような周知の仕方、事務連絡や通知でお伝えをするという方法を考えていきたいと思っております。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。では、本日の審議はこれで終了といたしまして、議事進行を事務局にお戻しいたします。
(長谷川土壌汚染対策係長)
本日は、委員の皆様におかれましてはご多忙のところご出席いただき、大変活発なご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。また、冒頭配付資料に不備がございましたこと、誠に申し訳ございません。
次回以降の予定ですが、引き続き今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点に関する審議を予定しております。次回の日程、議題等は、改めてご案内させていただきます。
また、今回の議事録につきましては事務局で作成の上、委員の皆様のご確認を経て、環境省ホームページに掲載いたします。
以上をもちまして、本日の土壌制度小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。
それでは、定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境・土壌農薬部会土壌制度小委員会を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、ご多忙のところ、ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の小委員会は、委員総数20名のうち、過半数の17名がご出席で、足立委員、佐藤委員、光成委員がご欠席の予定です。定足数の要件を満たし、小委員会として成立しておりますことをご報告いたします。
なお、委員の交代がございますので、ご報告いたします。資料1の委員名簿をお手元にご用意ください。
金見拓委員の後任として矢野明子委員、西井裕子委員の後任として吉田光方子委員にそれぞれご就任いただいております。
また、WEBを併用した開催でございまして、YouTubeの環境省環境管理課公式動画チャンネルで同時配信をしております。
それでは、議事に入ります前に本日の配付資料を確認いたします。
資料1としまして、本小委員会の委員名簿、資料2としまして、今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点②を配付させていただいております。
また、委員の皆様のお手元には、参考資料として土壌汚染対策法の概要、法令の条文、さらに第1回小委員会で使用した現状と主な課題に関する資料をお配りしております。会議の中で必要に応じご参照ください。
こちらの参考資料におきましては、次回以降も使用いたしますので、会議が終わりましたら、机の上に残してご退出されますようお願いいたします。
何か不足等ございましたら、事務局までお知らせください。
なお、これらの資料及び本小委員会は運営規則等に基づき公開とさせていただきます。
それでは、これより議事に移りたいと思います。大塚委員長に議事進行をお願いいたします。
(大塚委員長)
それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題は、今後の土壌汚染対策の在り方に関する論点です。この議題は、複数回に分けて審議しておりますが、今回はその2回目でございます。
事務局から資料2の説明をお願いいたします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
それでは、資料2のご用意をお願いします。
前回、第4回から複数回に分けて、今後の土壌汚染対策の在り方に関する論点を議題としまして、これまでにいただいたご意見などを踏まえて個別論点をお示しし、それぞれの論点に対して課題や方向性の整理を進めております。今回はその2回目です。
1ページ、お願いします。こちらは目次でございまして、論点は、制度全体にわたるものから、運用やガイドラインのレベルで対応するものまで多数ございますが、審議会では、制度全体や法令の規定に直接影響するような論点を優先的に取り上げて、順次審議を進めております。
本日審議する論点は、目次のとおりでございます。前回と同様に、今回も論点に対する方向性の審議までに留め、具体的な制度の細部までは必ずしも盛り込んでおりません。本日は、まずは論点に対する方向性をご承諾いただいて、それを受けて、制度の具体化の検討を進めていきたいと考えております。
2ページをお願いします。1つ目の論点は、調査費用の汚染原因者への求償についてです。
まず、現行制度ですが、土対法には、要措置区域における汚染の除去等の措置に要した費用は、土地の所有者等は汚染原因者に請求することができる規定がございます。請求できる措置費用の範囲は、法第8条第1項に指示措置に係る汚染除去等計画の作成及び変更並びに指示措置に要する費用の額の限度において、と定められています。これに対して、土壌汚染状況調査に要した費用の方は、汚染原因者に請求することを認める規定はございません。調査費用を汚染原因者に請求するには、民法上の責任を明らかにして損害賠償を求める必要がございます。
なお、措置の請求に対しては、請求権の消滅時効の規定も定められておりまして、当該実施措置を講じ、かつ、その行為をした者を知った時から3年間行使しないとき、または、当該実施措置を講じた時から20年を経過したときに時効となります。「当該実施措置を講じ」は、措置の着手時ではなく、措置が概ね完了した時点を指します。従って、汚染原因行為が消滅時効の起算点とはなっていないため、汚染原因行為から長期間が経過しても、そのことのみにより消滅時効にかかることはないという考え方がございます。
3ページ、お願いします。土対法制定において、調査の実施主体を土地の所有者等が原則としたことの関連情報として、調査に伴うコストなどの負担は、汚染の除去等に比べてはるかに少ないと考えられるという側面がございます。
このことを踏まえて、今般、調査費用の汚染原因者への求償を検討するに当たって、土地の所有者等における調査の負担が増大している旨をこのページでお示ししています。法に基づく土壌汚染状況調査を実施する件数が年々増加しているのみならず、土地の所有者等ごとに見ても、一定規模以上の土地の形質変更時の調査義務の新設により、土壌汚染状況調査を同一の土地の所有者等が複数回実施する場合も生じています。
また、この棒グラフから読み取れるものとは異なりますが、土地の所有者と汚染原因者が異なる場合も多く、例えば調査の結果、要措置区域に指定された場合、その4分の1程度は汚染原因者が判明しており、汚染原因者に対して汚染除去等計画の提出の指示が出されております。
4ページ、お願いします。法に基づく土壌汚染状況調査の件数のうち、多くは区域指定に至らなかった場合や形質変更時要届出区域に指定された場合であり、これらは汚染の除去等の措置は不要です。こうした場合は、調査と措置のうち、調査のみの負担が土地の所有者等にかかることになります。加えて、要措置区域となった場合においても、都道府県知事等により示される指示措置は7割程度が地下水の水質の測定です。指示措置は、土壌汚染の状態に応じて、講ずべき措置の内容が示されるものですが、地下水経由の観点からの土壌汚染がある場合であって、当該土壌汚染に起因する地下水汚染が生じていないときには、地下水の水質の測定を指示措置とするものとされています。
5ページ、お願いします。このページでは、土地の所有者等に対する土壌汚染状況調査の負担を示す一環として調査費用と措置費用を試算し、両者を比較した結果を示します。
措置費用は、地下水の水質の測定を行う場合を試算しました。この考え方は、指示措置の多くは地下水の水質の測定であり、措置費用は、法において指示措置に要する費用の額の限度において請求できると定められていることによります。
図のように、特定施設を有する工場のモデルを想定して、土対法関係事業者に対するヒアリング等を参考に試算したところ、土地の所有者等が負担する費用については、措置費用の方が桁違いに高額というような状況はなく、措置費用と調査費用は同規模であることが読み取れます。
6ページをお願いします。これらの施行状況から、課題として、土壌汚染状況調査に係るコスト負担が増えていること、また、汚染の除去等の措置が必要な場合も、多くの場合の指示措置は「地下水の水質の測定」であり、土地の所有者等が負担する調査費用が措置費用と同規模となっている場合が多いことを掲げています。
併せて、法律上の観点からの課題として、土対法に求償をできる規定がない現状で調査費用を汚染原因者に請求するには、故意・過失や違法性のあることを原告側が証明した上で民法上の責任から損害賠償を求める必要があり、土地の所有者等には負担が大きい旨を掲げています。
7ページをお願いします。そこで論点としては、6ページにある検討会提言も踏まえまして、特定有害物質による汚染が当該土地の所有者等以外の者の行為によるものであるときは、その行為をした者に対し、法に基づき実施する土壌汚染状況調査に要した費用を請求することを可能としてはどうか、としました。
論点に対する方向性においては、aとして、法に基づいて土壌汚染状況調査を行った場合であって、①当該土地の土壌汚染が判明し、②当該汚染が当該土地の所有者等以外の者の行為によるものであり、さらに、③その者の行為が原因で土壌汚染状況調査が必要になったことが明らかな場合には、その者に対し、当該汚染の状況の把握のために要した土壌汚染状況調査の費用を請求することができる規定としてはどうか、としました。
それぞれの趣旨を簡潔に補足しますと、①は原因者負担原則から、土壌が汚染されている場合に求償できる、と整理するのはどうかという趣旨です。②は前提として、求償の相手方となる汚染原因者が特定されている場合に求償できる、と整理するのはどうかという趣旨です。③は、土壌汚染状況調査は汚染の有無が判明していない段階において、土地の所有者等の責任として行われるものですが、汚染のおそれがあるため調査実施の必要性があるという因果関係がある場合には求償できる、と整理するのはどうかという考え方となります。
併せて、当該整理に従いますと、要措置区域となった場合に限らず、形質変更時要届出区域になった場合も調査費用を請求できることになります。
また、bとして、調査費用の請求権は、現行の措置費用の請求に係る消滅時効の規定を参考に、一定の期間で時効によって消滅する規定とすべきではないか、と掲げております。
8ページをお願いします。このページからは論点2「健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱について」を取り扱います。
まず、現行制度において、自然由来の汚染であっても形質変更時要届出区域(自然由来特例区域)に指定され、法第12条届出(形質変更時要届出区域内における土地の形質変更の届出)、また、法第16条届出(汚染土壌の搬出時の届出)の対象となります。
自然由来等基準不適合土壌に関する過去の答申や施行通知においては、平成20年答申には、自然的原因により有害物質が含まれる土壌については、人為的な搬出以降の行為を法の対象とするとの考え方が示されております。
一方、施行通知においては「自然由来の有害物質が含まれる汚染された土壌を法の対象とする」とされ、現行の区域指定制度により管理をしているところです。
結果として、自然由来の汚染において形質変更時要届出区域に指定されたときには、法第16条に基づく搬出規制のみならず、法第12条に基づく形質変更に係る規定もかかっており、元の平成20年答申以上の規制が掛かっていることになります。
9ページ、お願いします。こちらは自然由来の土壌汚染状況調査の方法を示しています。試料採取等を行う区画は、自然由来の汚染の特徴を踏まえて、900m格子毎の両端としていることや、30m格子毎の調査を行うこともできることを示しています。
続けて、10ページから12ページにわたって、土壌制度小委員会(第2回及び第3回)におけるヒアリングで得られた意見をお示ししておりますところ、自然由来等基準不適合土壌を土対法に基づき規制することに伴う課題など、多くのご意見をいただいております。
13ページ、お願いします。検討会提言では、自然由来等土壌については、形質変更に伴い土壌の搬出が行われる場合には、現行制度と同様の枠組みは維持しつつ、従来の区域指定(形質変更時要届出区域への指定)を行う制度の対象からは除外することを検討すべき旨が盛り込まれていました。
14ページ、お願いします。そこで、論点としては、自然由来の汚染は、これまでに自然由来特例区域等の制度が設けられてきたが、地質的に同質な状態で広く存在する自然由来の汚染であるという趣旨を踏まえた制度に見直してはどうか、としました。
論点に対する方向性において、aとして、自然由来の土壌汚染については、要措置区域及び形質変更時要届出区域としない制度とすべきではないか、としました。その趣旨は、平成20年答申においては、自然由来汚染は搬出以降の行為を法対象とすべきとされていましたが、現行法では土地の形質変更も対象となっているため、自然由来の汚染がある土地を法第12条届出の対象外へ改めてはどうかというものです。
また、現行の区域指定制度によらず、自然由来土地については、自然由来による土壌溶出量基準不適合の場合のみとし、土壌含有量基準不適合及び第二溶出量基準不適合の場合は適用されないものとしてはどうか、としました。
併せて、自然由来土地における搬出時の規制は、自然由来等土壌利用施設への搬出、区域間移動等、現行法の自然由来汚染土壌に係る搬出規制と同様の特例を設けてはどうか、としました。
なお、自然由来土地を土対法における仕組みに組み入れる方法としては、台帳の調製により区域指定しない管理をする、または、新しい区域指定制度による管理とするといった方法が考えられますが、引き続き検討を行うものとしております。
また、bとして、自然由来と判定するために必要な試料採取等調査方法についても、より合理的な調査方法を検討すべきではないか、としました。例えば、今までの900m格子の敷地の両端での調査と30m格子毎の調査に加えて、その間の面積、例えば90m格子毎での調査も可能としてはどうか、と掲げております。
続けて、15ページ、お願いします。ここからは論点3-①「飛び地間移動の要件について」を取り扱います。
飛び地間移動は、同一の土壌汚染状況調査の結果に基づき指定された複数の要措置区域等の間において、土地の形質変更に自ら使用し、または、他人に使用させるために汚染土壌を搬出できる仕組みです。
飛び地間移動の条件としては、要措置区域同士または形質変更時要届出区域同士の場合に汚染土壌を使用できることに加えて、一の調査の結果、すなわち、同一調査の結果に基づき区域指定となった範囲に限定しております。
また、飛び地間移動による人の健康に係る被害が生ずるおそれがないようにするため、一律、移動後の土壌が帯水層に接しないようにすることとされています。
16ページ、お願いします。土壌制度小委員会におけるヒアリングでは、同一調査の結果に基づき指定された区域間の移動しか認めていないことに伴う不具合に対する意見をいただいております。
17ページ、お願いします。検討会提言においては、現行の飛び地間移動等の特例制度については、要件の合理化等の見直しを検討すべき旨が盛り込まれておりました。
そこで、論点としては、飛び地間移動は移動可能な範囲を見直してはどうか、としました。
また、管理票は、前回の審議会でも議論しましたが、汚染土壌を要措置区域等外に搬出する際に交付し、汚染土壌が適正に運搬・処理されていることを事後的に確認することにより、汚染土壌の搬出に伴う汚染の拡散防止を図る仕組みです。管理票は、敷地内であっても要措置区域等外に搬出する場合には交付する仕組みになっておりますが、飛び地間移動に当たって、同一敷地内の移動にもかかわらず、管理票の対象になっていることを見直してはどうか、としました。
18ページをお願いします。論点に対する方向性のaとして、飛び地間移動は、要措置区域同士または形質変更時要届出区域同士の同一敷地内であれば、「一の調査の結果」に限らず、移動可能としてはどうか、としました。ただし、現行法と同様に、要措置区域と形質変更時要届出区域をまたがる飛び地間移動は不可としてはどうか、としました。
左側の図において、現行制度では、同一調査により指定を受けた要措置区域であるピンク色同士の汚染土壌の移動はできますが、ピンク色から橙色の区域への移動は、同じ敷地内の要措置区域同士であるにもかかわらず、調査契機が異なることから汚染土壌の移動ができないところ、ピンク色から橙色の区域へ汚染土壌を移動できるように見直してはどうか、というものです。
併せて、管理票に関しては、汚染土壌が汚染土壌処理施設へ搬出され、適切に処理されているかを事後的に確認する仕組みであり、飛び地間移動の際、同一敷地内の移動を管理票によっては管理できないことから、同一敷地内での移動を追跡できるように、トレサビリティ管理として、移動先の位置や汚染状態等の記録を実施させることとしてはどうか、としました。
19ページ、お願いします。19ページからは、論点3-②「仮置きの要件について」を取り扱います。この論点と次にご説明する論点3-③「期限を区切らない同一敷地内の移動について」の2点は法律事項ではございませんが、敷地内における汚染土壌のリスク管理、汚染拡散防止の観点からは、論点3-①の飛び地間移動と共通する部分がございますので、審議会で方向性をご審議いただきたい次第です。
まず、仮置きの現行制度について、工事の過程で汚染土壌を敷地内に一時的に仮置きする際の具体的な規定がございません。仮置きに関しては、「搬出」の定義として、汚染土壌を人為的に移動することにより、要措置区域等の境界線を越えること、また、要措置区域等に隣接する土地においては、積み替えも含めた一時保管ができること、さらに、特定有害物質の除去等の後に汚染土壌を埋め戻す場合には、「搬出」には該当しないといった規定があるのみとなっています。
左側の図で、仮にピンク色の要措置区域の工事をする際、汚染土壌を当該要措置区域に隣接しない敷地内で仮置きをし、仮置き後に場外に搬出する、元の要措置区域に埋め戻す、または、敷地内の他の要措置区域に移動させる等が考えられますが、これらを行うことができる等の具体的な規定が定められていないという状況です。
併せて、仮置きする場所における養生方法に関する規定や、仮置きする場所を区域指定により管理するべきかについても、具体的な規定はございません。
20ページ、お願いします。土壌制度小委員会におけるヒアリングでは、汚染土壌の仮置きに際して、敷地の効率的運用や自由度の観点等から意見をいただいております。
21ページ、お願いします。そこで、論点としては、現行の制度では明確な規定が無いため、同一敷地内の移動として汚染土壌の仮置きの取扱について明確にしてはどうか、としました。
論点に対する方向性において、aとして、汚染土壌の仮置きは、同一敷地内であれば、汚染土壌の搬出とみなさず移動が行えることとしてはどうか、としました。
bとして、仮置きの方法を数点示しておりますが、まず、仮置きに伴う汚染土壌のリスク管理を適正に行うべく、法第7条または法第12条に規定されている、要措置区域または形質変更時要届出区域における自治体への届出の記載内容に、仮置きする場所、養生方法、仮置き期間等を含めてはどうか、としました。
併せて、汚染土壌をいずれ他の場所に移動するという仮置きの趣旨を踏まえ、盛土に限定することや、養生方法が仮置きの趣旨を超えて過剰にならないよう目安を示すこと、さらに、仮置き後に飛び地間移動等を含む搬出、区域内移動、元の区域への埋め戻しをできることを明確にしてはどうかとしました。
22ページをお願いします。こちらは論点3-③「期限を区切らない同一敷地内の移動について」でございます。事業者によっては、工事の過程で発生した汚染土壌を敷地内の特定の区域に集め、期限を区切らずにまとめて管理する場合がございますが、汚染土壌を集めた区域は、区域指定をして管理するのか等、工事の過程で敷地内に期限を区切らず汚染土壌を移動することについて、規定がございません。
23ページ、お願いします。そこで、論点として、先ほどご説明した仮置きと併せて、同一敷地内における汚染土壌の長期的に「期限を区切らない同一敷地内の移動」についても具体的に規定してはどうか、としました。
論点に対する方向性として、汚染土壌を集める区域を区域指定により管理することとし、法第12条または法第16条の届出の際、土地所有者の同意書を添付した上で届出を行い、届出を受けた都道府県は、移動した先の区域を区域指定する仕組みとしてはどうか、としました。
また、汚染土壌の移動先の土壌汚染の状況をあらかじめ調査し、移動先が基準に適合する、すなわち、汚染されていない場合には、搬出元の汚染の状態によらず、一律移動を可能とするとともに、移動後の汚染土壌が帯水層に接しないようにすること、移動先で土壌汚染が確認された場合には、飛び地間移動として取り扱うこととしてはどうか、としました。
併せて、飛び地間移動のときと同様の考え方ですが、同一敷地内の移動は管理票によって管理できないため、同一敷地内での移動を追跡できるように、トレサビリティ管理を実施させることとしてはどうか、としました。
24ページ、お願いします。24ページからは論点3-④「有害物質使用特定事業場における事故発生時の対応について」を取り扱います。
水質汚濁防止法において、法第14条の2に事故時の措置という規定がございます。同条第1項に基づいて、有害物質使用特定事業場で有害物質を含む水が地下に浸透する等、事故が発生した場合に応急措置を講ずるとともに、速やかに事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県に届け出ることが義務づけられています。
施行状況としては、ページ下の表の事故時の措置に関する届出件数のうち、特定施設の設置された事業場における地下水関係の事故ですので、年間10件から30件程度ございます。
25ページ、お願いします。検討会提言において、有害物質使用特定事業場の設置者から、地下水に係る水濁法上の事故の届出が都道府県知事に行われたときで、事故により生じた土壌汚染の状況の把握が必要と考えられる場合、土対法と水濁法の関係を踏まえつつ、土対法に基づき、何かしらの対応が必要かどうかという議論があり、土対法第7条第1項ただし書の規定を参考に、設置者を実施主体として汚染状況の調査を求められるようにすることを検討することが考えられる旨が盛り込まれていることを踏まえて、今般、ご審議をいただくものです。
論点に示すとおり、有害物質使用特定事業場において事故が発生した場合に、土対法における何かしらの対応が必要か検討したところ、事務局側の結論としては、新たに土対法に基づく調査の機会を設ける必要性は高くないと見ております。
この理由として、論点に対する方向性のaのとおり、特定施設の破損その他の事故により有害物質を含む水が漏えい等した場合に、水質汚濁防止法において応急の措置を講ずることが義務づけられており、必要な場合には、その措置に当該場所の土壌の除去も含まれることから、土対法に基づく調査の対象とせずとも、水質汚濁防止法に基づいて、必要に応じて土壌に関する応急的な対策がなされることを挙げております。
一方で、地下水に関する事故の情報は、土壌汚染や地下水汚染のおそれに関する地歴情報であることから、土壌汚染対策における活用を図ることとしてはどうか、としました。
具体的には、当該事故に関する情報は、公共用水域や地下水に係る常時監視の考え方、例えば地点や頻度等の方法に反映したり、土壌汚染状況調査の報告を受けた際等に、必要に応じてその結果を活用したりできることから、自治体内において情報共有とその結果の活用を図ることとしてはどうか、といたしました。
資料の説明は以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。それでは、ただいまご説明がございました論点について、論点ごとに時間を区切って審議していきたいと思います。論点の区切り方は、資料2の1ページにある目次のとおり、論点1、調査費用の汚染原因者への求償について、論点2、健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いについて、論点3、その他に区切って審議をしていきたいと思います。最後に、時間が残れば全体をまとめて審議したいと思います。
質問事項などにつきましては、事務局からまとめて回答いただきたいと思っております。ご発言の方は、ネームプレートを立てていただくようお願いします。WEB参加者の方は、挙手ボタンでお知らせください。
では、まず2ページから7ページまで、論点1、調査費用の汚染原因者への求償についてを審議します。ご発言のある方は、お知らせいただければと思います。
まず欠席の足立委員からの意見をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。
足立委員より、書面意見をいただいておりますので、会場には配付しておりますが、資料のご用意をお願いいたします。
こちら、事務局より読み上げさせていただきます。
今回論点の「1.調査費用の汚染原因者への求償について」 「3.その他」 の内容は制度・運用の改善であり一定の評価ができると認識している。
しかしながら、論点の「2.健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱について」 の方向性は、管理の方法に関する検討を示しているのみであり、事業者にとっての負担が減るのかが明確ではない。
今般の法の見直しにあたっては、脱炭素社会の実現といった新たな社会的課題に対して持続可能な土壌汚染対策とする観点もふくまれていたことから、自然由来の汚染土壌に関する対応については十分議論・検討していただきたい。
その上で、今ご審議いただく1.調査費用の汚染原因者への求償については、中小企業等も含めて求償できる規定の設置は望ましいと考える。但し、自然由来など”汚染原因者が関与していない汚染”や”もらい汚染”に関するものまで負担させることは合理的ではないと考えるため、これらについては求償範囲を予め決定するなど、別途検討が必要と考える。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。
では、中込委員、お願いします。
(中込専門委員)
鉄鋼連盟、中込でございます。本日、ご説明ありがとうございます。
本日、お示しいただいた方向性につきましては、基本的に異論はございません。
その上で調査費用の汚染原因者への求償につきまして、調査費用の請求権に関した意見を1点述べさせていただきます。
資料の7ページで提案いただいている論点の中で、調査費用の請求権に関しては、消滅時効を検討いただいておりますが、汚染原因者への責任がどこまで遡及するのかという点は整理が必要ではないかと考えております。
例えばですが、土対法や水濁法の制定以前に、法整備がなかった時代の汚染行為についても汚染原因者に対して責任を訴求するべきなのかという点。
それから、特に臨海部などにおける埋立地におきまして、浚渫土由来の汚染という可能性もございます。その埋立者に対しても、汚染原因者として費用の求償が可能なのかといった点等の懸念がございます。
今回、形質変更時要届出区域となった場合についても調査費用の請求が可能になる方向性ということで、現行の措置費用と比較して適用範囲が少なからず広がるというところを踏まえますと、過去に売却した土地における調査費用の負担を求められるケースがかなり増えるのではないかと懸念しております。場合によっては、その該当性をめぐった訴訟が増えるというようなところも懸念しております。
以上を踏まえまして、免責あるいは求償可能な範囲の限定等について、整理いただければというふうに考えてございます。以上です。
(大塚委員長)
土対法が制定以前の部分についても遡及するのは、2002年の制定のときから、そのようにしておりますが、この件との関係で、後で事務局から答えていただければと思います。
では、石巻委員、お願いします。
(石巻専門委員)
ありがとうございます。ご説明いただきました、調査費用の汚染原因者への求償について、方向性については賛成いたします。理論的には、土壌汚染の存在が相当程度に疑われる土地で調査をした結果、実際に土壌汚染の存在が確認された場合に、確認された土壌汚染の原因者に対して、調査を実施した土地所有者のほうから調査費用を請求することができるようにすることは、状態責任の限界と原因者負担原則の観点から、問題はなく、むしろ妥当であるというふうに考えております。
資料2の7ページの論点に対する方向性aのところにある、法に基づいて土壌汚染状況調査を行った場合としては、3条、4条、5条のいずれの場合も、土壌汚染の存在が相当程度に疑われる土地で、土壌汚染の存在を確認するために調査をするものと言える限りにおいては、求償の対象となる調査と考えるべきなのではないかと考えております。
また、3条、4条、5条のいずれの契機にも該当せずに、自発的に土壌汚染状況調査が行われた場合であっても、調査の結果、疑われていた土壌汚染の存在が確認され、14条1項に基づく申請により区域指定がなされた場合には、14条3項に書かれているとおり、この自発的な調査は、法に基づく土壌汚染状況調査とみなされるということになっておりますので、14条の場合も調査費用は求償の対象となると考える余地もあるのではないかと思っております。
先ほどの足立委員のご意見で、汚染原因者が関与していない汚染やもらい汚染に関するものまで負担させることは合理的ではないという部分がございましたが、これに関しましては、現行の施行規則の3条2項のところに、複数の原因者がいる場合は、汚染の寄与度を限度として責任を負うものとするという規定がございますので、調査費用の負担に関しても、同様に汚染の寄与度を限度とするといったような整理をすれば、このような懸念は無くなるのではないかと思いました。
また、8条の求償規定が、そもそも原因者ではない土地所有者が原因者に対して費用を請求することを可能にするものであるという本来の趣旨を踏まえますと、調査費用に関しても求償ができるのは、汚染に寄与をしていない土地所有者に限定されるということになるのではないかというふうにも考えました。以上です。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。寺浦委員、お願いします。
(寺浦専門委員)
ありがとうございます。私も基本的に、この案については賛成しております。過去に起こった行為についてのご懸念もあるとは思いますが、例えば8条のただし書で、その行為をした者が既に当該措置に係る費用について一定の負担をしているときは、この限りでないというような調整規定もございます。原因者と土地所有者の間で既にそのような分担がされているときには、求償されないということになっておりますので、同様にそういった規定を設けることで、バランスも取れるというふうに考えます。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。原委員、お願いします。
(原専門委員)
産総研の原と申します。
足立委員のコメントにもありましたとおり、自然由来の汚染に関してですが、論点に対する方向性のaの1、2、3において自然由来を含めた場合を想定しているのでしょうか。また自然由来を想定した場合、汚染した者が土地の所有者、離れた場所であっても自然由来の汚染を所有している者なのか、それとも行政や国が負担するものなのか、そこら辺の知見をお伺いしたいと思います。以上です。
(大塚委員長)
小林委員、どうぞ。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。
まず、調査に要する費用のほうについては、方向性としては、私も賛成しております。
一方で、先ほどのご意見にもありましたけれど、法施行前のことですとか、事業者が当時は対応が困難であったということも多々あります。現行はなかなか基金の活用は難しいですが、引き続きそういった支援の検討や、調査対策費用ができるだけ低減できるような支援を検討いただきたいと思っております。以上です。
(大塚委員長)
ほかにはいかがでしょうか。
どうぞ、江種委員、お願いします。
(江種専門委員)
私も、調査費用を汚染原因者に求める規定を設けること自身には賛成しております。
その上で、足立委員ほか、いろんな方から言われている、汚染原因者が関与していない部分をどこまで求めることができるのかということを疑問に思っています。例えば、先ほど自然由来とか、もらい汚染とかいった話も足立委員からありました。実際の事例がどれぐらいあるか分からないんですが、例えば、現在の地表面よりも2、3m下に旧地表面があって、その部分に昔、工場があって、そこも地歴調査で試料採取する必要があるという場合は、明らかに現在の土地の事業所を操業している汚染原因者とは違う汚染になると思います。そういった場合に関して、どこまで求めることができるのかということです。石巻委員から、施行規則を適用すれば懸念はないのではないかと意見がありましたのでいいとは思いますが、理解できるように教えていただきたく思います。現在、措置に要した費用は、汚染原因者に求めることができますが、その措置を行うときにも、場合によっては、現在の汚染原因者と異なる人によって汚染されたものも一緒に措置することがあり得ると思います。そういう事例で、どういう形で実際に汚染原因者に費用を求めたのかということも、もし御存知でしたら教えていただきたく思います。そうすれば、調査のほうでどこまで求めるかということの参考にもなると思っております。
(大塚委員長)
7条1項のただし書のところの話だと思いますけども、後でお話しいただければと思います。
ほかにはいかがでしょうか。
矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
まず、指示措置の内訳についての補足になります。指示措置で地下水質の測定が多いというのは、法が地下水調査を義務づけていないため、まず、地下水汚染の有無を確認するために地下水質の測定指示があり、この測定により汚染が確認された場合は、また別の指示措置に移るというフローがあるということを補足させていただきます。
実際には土地において地下水質の測定という措置が必ずしもゴールではなく、土壌汚染の除去のような指示措置ではない措置も講じられていることも踏まえますと、指示措置に関する求償規定の8条と、今回新しく検討されている調査に関する求償等というのは、利用の頻度や世の中のニーズのレベルが違うものであると考えており、様々な社会的影響を十分に考えていただけるような議論が進むことを期待しております。
(大塚委員長)
今の話は、求償既定の理由にならないということになるというご趣旨でしょうか。趣旨を詳しくご教示願います。
(矢野専門委員)
東京都ではそもそも土壌汚染の調査は、条例において事業者のほうが実施する義務がありますので、土地所有者ではなく、事業者が費用を負担するということ自体は賛成でございます。ただ、求償規定の影響が今の8条よりははるかに大きく及ぶのではないかというところを懸念しております。
以上です。
(大塚委員長)
分かりました。ほかにはいかがでしょうか。
それでは一旦ここで区切って、事務局からご回答いただければと思います。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局よりコメントさせていただきます。
まずは、座長からもご指摘いただきました、なぜこれまで調査費用の求償の規定がなかったかの報告をさせていただきます。立法当時は、調査は汚染が存在しているかどうかが判明していない段階で、土地所有者等の責任に応じて行われるものという考え方から、民民での解決を前提に、調査費用の求償を公法上に規定することは適さないというふうに考えられておりました。併せて調査に伴う負担が土地所有者にとって過大なものにならないようにも配慮することとされていました。
一方、法施行を通して、過去の法改正により調査契機を拡大したため、法制定時の規定よりも土地所有者の調査負担が高まっているのと、調査費用についても、相当程度の負担が伴うと判明したため、公法上に調査費用の求償も規定する必要が生じたとの立場から、事務局案としてご提案をしております。
また、中込委員から、措置費用の求償の時効に関して、どこまで遡って求償されるのかというご意見がございました。こちら、現行の措置費用の求償は、民法724条の不法行為による損害賠償請求権と一定の類似性があることから、不法行為による損害賠償請求権の消滅時効を参考に定められています。調査費用の求償も類似性があるかは、今後、精査すべき点はあると思いますが、仮に準用する場合には、調査を講じ汚染原因者を知ったときから3年間、または、調査が講じられたときから20年間という規定になり得ます。現行でも汚染行為に対する責任の遡及は認められており、汚染行為の時期を問わず、調査から措置まで必要であって、汚染原因者に措置に要した費用を求償できることがございます。調査に要した費用も同様に、汚染行為の時期を問わず、求償できることを想定しておるところではございます。
また、足立委員からは、もらい汚染でも調査費用を求償できるのかという意見がございました。こちらは、仮に汚染原因者の特定ができて、調査費用の求償の条件を全て満たすのであれば可能であるという考え方はあるかと思います。ただ、実際には、汚染原因者の特定が難しいというケースもあるかなと思っておりまして、これが実際に適用して求償できるのかどうかというのは、個別具体的に検討・判断をされるものというふうに思います。
また、こちらの規定を定めることによって、必要に応じて範囲を拡大するハレーションがあるというご指摘が多くの委員からあったかと思います。こちら、論点に対する方向性でお示しをしたように、当該土地の土壌汚染が判明して、当該汚染が当該土地の所有者等以外の者による行為であって、さらに、その者の行為が原因で調査が必要になったことが明らかな場合を条件に考えていますが、具体的に問題がある事例が考えられるのであれば、具体的なご指摘をいただきながら検討をしてまいりたいと思っています。現行でも措置費用に関する求償できる規定がございますので、あくまで調査費用を求償できる規定を追加するのに伴うハレーションというところについて、具体的なご指摘をいただきながら精査してまいりたいと思っています。
次に、原委員から、自然由来の汚染でも調査費用を求償できるのかというご指摘ございました。こちらは、自然由来の汚染は、基本的に汚染原因者が不在と考えられることから、こちらの求償は難しいのではないかというのが事務局の考え方でございます。
また、小林委員から、例えば汚染原因者が中小企業であったり不存在な場合、また、自然由来による汚染のため調査費用の求償が困難な場合は基金による支援も含めて、何か考えられることはあるかというご意見をいただきました。現行の基金制度は、要措置区域における措置に要した費用のみが対象になっており、現行では、調査に要した費用は対象外となっております。調査に要した費用を基金の対象とするかは、基金の財源が国だけではなくて、産業界からの任意の拠出によって確保されているなどの制度設計などを踏まえますと、環境省の独断で変更することはできない仕組みであるというふうにも考えておりまして、産業界と、また関係省庁とも協議・調整も必要というふうに考えております。
以上でございます。
(鈴木環境汚染対策室長)
表現について補足させていただきます。今、基金が民間の任意というお話がありましたけど、現状、実態は、寄附をいただいていたり、調査の費用に上乗せしたり、管理票の部分で寄附をいただいているということでございます。
(大塚委員長)
もらい汚染は、もともとその土地の外から汚染が流れてくるようなケースなので、汚染の流れてきた元のところの人が汚染原因者であるという整理となります。そのため、調査費用について求償するときも、流れてきた汚染原因者に対して調査費用の求償ができるかが問題であり、その土地の所有者に対して求償するわけではありません。それでは、次の論点に移りたいと思います。
次に、8ページから14ページまでですけれども、論点2、健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いについてを審議したいと思います。ご発言のある方は、お知らせいただければと思います。
古川委員、どうぞ。
(古川専門委員)
ありがとうございます。
今回、ご提示いただいた自然由来の土壌汚染要措置区域や形質変更時要届出区域としないという提案について、賛同いたします。土対法のもとで区域指定がなされることになれば、要措置区域と同じレベルの健康リスクがあると捉えられてしまうなどの風評被害の懸念があるためです。
自治体が台帳を調製する形で把握して、土壌搬出時に確実に捕捉することが管理の方法としては望ましいのではないかと考えております。
また、人為由来と自然由来の区別につきましては、明確化することが重要です。自治体ごとに運用の差が生じることがないよう、対応をご検討いただきたいと考えております。
なお、自然由来のみならず、水面埋立土壌由来の土壌汚染につきましても、制度の合理化が必要と考えております。次回で結構ですので、今回に続いて議論をお願いしたいと考えております。
以上です。
(大塚委員長)
どうぞ、川瀨委員、お願いします。
(川瀨専門委員)
ありがとうございます。名古屋市の川瀨です。
今回、自然由来の関係で、方向性を示していただいた内容につきまして、対象地の土壌汚染のおそれの把握で、自然由来の土壌汚染のおそれがあると認められた場合、自然由来の汚染調査を行って、溶出量のみの汚染で、第二溶出量基準を満たしていれば、現行の12条の届出は不要で、16条の届出だけ必要という方向性ということで理解しております。
運用する立場から考えられる課題をちょっと述べたいと思いますが、現行では、自然由来の土壌汚染のおそれがあると認められて、自然由来の汚染調査を行って汚染が確認された場合は、基本的に自然由来特例区域に指定されることになりますけれども、この自然由来特例区域に指定されるようなケースが少なく、名古屋市でも2件ぐらいしかございません。その理由としては、自然由来と認められるという条件が、データ等により地質的な連続性が認められる土地であるといった情報等を集める必要があり、既に開発行為が何回か繰り返された市街地ではそれらの情報が集められない点が、自然由来特例区域に指定されるケースが少ない理由ではないかと考えております。
今回の方向性で、新しい自然由来の制度の要件として現行の自然由来特例区域と同じような要件であれば、新しい制度の対象となる土地も少なく、見直しの成果が少なくなってしまう懸念があります。
また、現行制度の課題として、土壌汚染の把握のおそれの分類を自然由来、埋立由来、それ以外というふうに分類しておりまして、それ以外の汚染で評価されるケースが非常に多いのですが、基準を超えた範囲を一般管理区域に指定をして、12条とか16条の対象としております。それ以外の汚染として評価されている中には、事業場の取扱いによって汚染された人為由来の汚染と、取り扱っていない物質についての自然由来の汚染もあり、それらを同じ枠の中で規制しているということが課題と認識しています。名古屋市では、法の14条の規定ができる前から自主調査の結果を数多く受けていますが、その土地で特定有害物質の取扱いがなくても、市内各地でヒ素やフッ素といった物質がかなりの確率で溶出量基準を超えているという事例があります。そのような事例を踏まえて、新しい自然由来の制度では、例えば4条1項の対象となる3,000平米以上の土地の改変を行う土地で、受入先の調整のために建設残土を事前に調査し、取り扱っていない物質で自然由来程度の汚染が確認された場合、同じ自然地層とか、地質的な連続性や均一であることが認められなくとも、一定の条件で新しい自然由来の制度対象となる要件や制度の入り口を検討していただきたいと考えます。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。
矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
東京都の矢野です。
規制の緩和というところを全体的に制度として賛成いたします。
その上で、やはり従来の区域指定制度とは全く異なるものとして考えていただくということが肝心ではないかと考えております。自然由来については、搬出時のみの規制であれば、区域内の土壌をどう扱うかというよりは、立体的に当該土壌をどう扱うかというような考え方が必要になります。
人為由来で確認された汚染の中に自然由来の汚染が混在することが疑われるケースも多々ございますが、人為由来の汚染土壌を取り除けば自然由来の土地として扱うことができるか、といった制度の流れも整理していただくとともに、川瀨委員からもありましたが、今、一般管理区域として指定されている中にも自然由来ではないかと疑われるような土地もございますので、こういった区域が自然由来の土地へと転換できるような制度の流れを整理していただければと思います。
また、搬出時の土壌調査につきましても、ロットで管理するようなやり方のほうが望ましいのではないかと考えております。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
小林委員、どうぞ。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。
私も方向性については、こういった方向で自然由来について考えていくというのはいいと思います。
一方で、先ほども意見が出ましたが、14ページのタイトルや論点の、自然由来特例区域等の自然由来等という等の部分について論点に対する方向性では自然由来のものに限って整理していただいていますが、等の部分は今後しっかりと議論していく必要があると感じました。特に、水面埋立土砂由来の汚染はかなり多く、汚染の原因か分からず、基準値が自然由来レベルで超えていることが多々見受けられるかと思います。実際には、立地を考慮すると健康リスクは懸念されないような土地の場合も多々ありますので、そういった土地についても、引き続き検討が必要と思います。
以上です。
(大塚委員長)
ありがとうございます。
鎌田委員、どうぞ、お願いします。
(鎌田専門委員)
処理業協会、鎌田です。今日はありがとうございます。
自然由来のリスクに関して、場外搬出を含めた汚染の拡散を防止するというところがしっかり担保がされるのであれば、非常にいい話だと思っています。
1点、懸念としては、自然由来と人為由来の区別がはっきりとはしていないものですから、人為由来の汚染を自然由来にできないか等、違う力によって調査結果が曲げられてしまい、自然由来自体の管理が変わってしまうことがないよう検討いただければと思っています。よろしくお願いします。
(大塚委員長)
重要な点だと思いますので、後でご回答いただきます。
島田委員、どうぞ。
(島田専門委員)
日建連の島田でございます。
皆様がおっしゃっているように、自然由来等というところで、等のところは、自然由来だけではなく、埋立由来もこの議論に入ってきているのかと理解をしておりましたが、必要であれば、延長線上で議論が必要なのかと思っております。
それから、先ほどの自然由来だけではなくて、人為由来だとか埋立由来が、混在しているケースもあるかと思いますが、その場合は、土壌の移動記録や、区域の変更や状態の変更などの、これまでにある管理も一つ必要なすみ分けの仕方かと思っております。
また、自然由来特例区域がありますが、この制度を使うのであれば、この特例区域自体があまり意味をなさないといいますか、逆に、特例区域は非常に管理を厳しくしないといけない面がこれよりも出てくることになりますので、廃止も含めて協議いただければと思います。
あとは、自然由来の土地利用施設があまり多くなく、自然由来汚染土壌を外に出そうとしたときに、なかなか搬出先がないために通常の汚染土壌と同じように処分しないといけないというところもありますので、自然由来等土壌を有効利用するという面と、二酸化炭素をなるべく出さないという面も含めて、自然由来等土壌利用施設の基準等も協議の内容には入ってくるのかと思います。
調査の方法で、例えば、地歴調査で自然由来の汚染のおそれがある場合は、その地歴調査の結果をもって敷地全体を自然由来の土地に認定することも考えられるのではないかと思います。その場合は、格子で指定するよりも、土地全体という大まかなくくりで指定する仕方も考えられるのではないかと思います。
以上でございます。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。
では、勝見委員、お願いします。
(勝見専門委員)
ありがとうございます。勝見です。
三つあるのですが、一つ目は、ヒアリングの意見で書いていただいているのですが、環境省のほうでまとめられているページについては、自然由来のリスクの程度といいますか、濃度レベルについての前提を少し書いていただいてはどうかと思います。土壌汚染対策法が施行されて20年以上、かつ、自然由来も法対象になって十数年たっている中で、様々なデータが取られてきて、色々なことが分かってきていると思います。特に、日本の大都市圏を中心に、海成粘土層由来の地層が問題になることが多かったということですが、その中でも、鉛、フッ素、ホウ素では基準の3倍程度以内、ヒ素では、10倍程度以内で収まっているという、土壌汚染対策法における基準は超えているけれども、濃度は低いと見られる土をどう扱うかが問われていると認識しているところです。
二つ目ですが、小林委員、それから島田委員もおっしゃったところですが、自然由来と埋立地由来をいつも一緒に議論されているようなところがあり、片方で一生懸命議論して、もう片方はそれに乗っかるような形になってしまうと良くないと思います。特性も違うところもありますので、自然由来は自然由来、埋立地由来は埋立地由来ということで、改めてきっちり見ていただく必要があると思います。
三点目、これも何人かの委員の方がおっしゃっていることですが、これまでの制度の延長ではなく、新しい制度とするご発言がございましたけれども、自然由来の現行制度の活用について、自治体によって大変苦労をされていると認識しています。どういった制度になればいいのかというイメージを持っているわけではありませんが、使いやすい制度になることが大事だと思っています。
(大塚委員長)
ありがとうございます。ほかにはいかがでしょうか。
では、足立委員のコメンㇳの紹介をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。
足立委員からの書面コメントをご紹介させていただきます。
当協会としては、自然由来等土壌を当該対象地から搬出する際に、処理等の管理を義務付けられるということであれば、開発事業者からすると、結果として開発に伴う費用負担は大きく変わらないと考える。
法の主旨である健康被害の防止、拡散防止の観点からは自然由来汚染土壌をそれ以外の汚染土壌と区別する理由がないことから、このような方向であることは理解はできるが、当協会が以前より言及してきた”自然由来の場合には、区域設定エリアの所有者が費用負担するという大枠の考え方が無くなる”あるいは”軽減される”という方向性とは異なっているという認識である。
基準の数倍程度までの汚染土については処分の方法や新たな利用の方法を示すなど、リスクに応じた対応の検討が望まれる。
以上のご意見をいただいております。
(大塚委員長)
自然由来に関して、一言申し上げておきますと、結構厳しい対応をしているということがありますが、もともとは、汚染された土地からの搬出に関して厳格に対応することによって汚染土が流通されないようにする趣旨になります。自然由来の受入れがスムーズにいくための配慮が2017年改正、あるいは2009年の通知の趣旨としてあったと思います。趣旨自体は、今でも生きているので、あまり壊していいわけではないと思いますが、それにしても、少し厳し過ぎるのではないかという問題がありますので、その辺を踏まえて、ぜひご対応いただければと思っております。
では、ご回答お願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
では、事務局より失礼いたします。
順不同になり恐縮ですが、勝見委員から、自然由来によるこれまでの取組状況というか、どれぐらい検出されているかというデータに基づいて制度設計していく必要がある旨のご意見、ご指摘をいただいたと思っております。
少しだけご紹介すると、自然由来特例区域は236件ございまして、うち、含有量基準不適合が令和7年4月末時点で24件ございます。ただし、土壌を分析して含有量基準不適合が確認されたものに限らず、調査を省略した場合も含まれているため、含有量基準不適合の自然由来汚染の件数が正確に反映されているわけではないというところです。
第二溶出量基準超過のほうは、そもそも自然由来として取り扱われておらず、要措置区域または形質変更時要届出区域に指定されるため、自然由来で第二溶出量基準不適合の件数を把握するのは難しい状況です。事業者ヒアリングなどから把握しているのは、ゼロではないものの、まずないという感触と思っております。
根拠に基づいて具体的な制度設計をしていくというご指摘かと思いますので、しっかり検討してまいりたいと思っております。
また、島田委員や勝見委員から、現行の特例の仕組みが十分活用されていないという旨のご指摘をいただいておりますが、提言書のほうでは、これらの特例については、区域指定制度自体に伴う各種負担のほうが大きい、個々の制度を活用するための手続などの煩雑さといった理由から、必ずしも十分に活用されておらず、制度の在り方について見直すべきとの指摘があると提言書で取りまとめされております。
この趣旨も踏まえ、今回ご提案する制度を具体化していったときに、複雑にならないように注意することは事務局としても認識をしているところでございます。
また、古川委員、小林委員、島田委員、勝見委員から、埋立地を今回の議論に含むのかという旨のご指摘をいただいております。自然由来と埋立由来には、汚染が広範囲に広がっていることや、特定有害物質の濃度が低く、特定の地層や同一港湾内に分布しているといった類似の特徴がございます。今回の資料では、自然由来等と表現しているところは、現行制度のご紹介をしている部分、論点に対する方向性では、自然由来に係る方向性をお示ししております。埋立地には、井戸水や飲用に供されることはまれである等の様々な特徴がございますので、自然由来と埋立由来の共通点と差異を精査した上で、改めて取扱いをご審議いただく形で準備をしているところでございます。
また、古川委員から、区域指定をする場合、しない場合のメリット、デメリットに関するご意見を頂戴したと理解しております。区域指定すると、工事をする上で土対法に基づき適正にリスク管理をする仕組みになりますが、その一方、ご指摘のとおり、土壌汚染のレッテルが貼られることにより風評被害や土地価格への影響が生じるおそれがあるという議論もあるかもしれませんので、今回資料をお見せしたように、区域指定をするか、それとも台帳のような形で管理するのか、制度の具体化するところについては引き続き検討をしてまいりたいと思っております。
足立委員また矢野委員からは、自然由来土壌を搬出するときの負担感に関してご意見をいただきました。現行の土対法には、土壌を搬出するときに認定調査の掘削後調査というものがございまして、搬出する前に土壌の汚染状況を調査するという考え方がございます。自然由来土壌を搬出する際の調査の仕組みは、この考え方に準じて具体化していくのは一案ですが、現行の認定調査の負担とその合理化を併せて精査をしていく必要があると考えております。
川瀨委員、矢野委員、鎌田委員からは、自然由来汚染の調査を汚染物質の種類や濃度などを踏まえてスクリーニングできるような柔軟な調査の考え方についてご意見をいただいたと理解しております。論点に対する方向性をお示ししているように、自然由来かどうかは調査対象区域の周辺の地歴、例えば調査対象区域に限らず地域一帯に自然由来が広がっているかなども調べながら総合的に判断するという考え方となります。その上で、自然由来等を判断する調査方法については、より合理的な調査方法を検討するという観点も重要と考えております。
具体的な提案ヒントがありましたら、その科学的、技術的な根拠を押さえながら、適用可能かを考えてまいりたいと思っております。
事務局からは以上でございます。
(大塚委員長)
よろしいでしょうか。
それでは、次に15ページから25ページまで、論点、その他まとめて審議したいと思います。ご発言のある方はお知らせいただければと思います。
古川委員、どうぞ。
(古川専門委員)
②の「仮置きの要件」に関連して一言述べさせていただきます。
大気汚染防止法上、1,000平米以上の土石の堆積場は、「一般粉じん発生施設」として届出が必要と理解しております。こうした他法令との関連性について整理いただき、届出のワンストップ化など、手続面での合理化も併せてご検討いただくようお願いいたします。
以上でございます。
(大塚委員長)
ほかにいかがでしょうか。どうぞ、川瀨委員、お願いします。
(川瀨専門委員)
まず、3-①から3-③までの話ですけれども、飛び地間移動の要件とか、仮置きにつきまして、同一調査だけではなく、同一敷地内であれば可能とする方向性は賛成でございます。
③について、期限を区切らない同一敷地の移動に関しては、12条または16条の届出で移動した先の区域を自治体が区域指定することになりますが、12条や16条の届出は、主に施工者が届出される場合が多く、土地所有者とは異なることが多いため、14条申請してもらえば確実ですが、14条申請のように、区域指定の担保として12条、16条の届出書に土地所有者の同意書を添付してもらうことは必要と考えます。また、移動後の汚染土壌が期限を区切らず移動する場合、帯水層に接しないようにするということですけれども、移動先が要措置区域になる場合もあり得ると思います。そのときは維持管理の観点から、地下に汚染が広がっていないかということを確認する担保というか、例えば地下水のモニタリングなど、そのような対応を求める必要があると考えます。また、将来的に移動先の汚染土壌を除去して、区域指定を解除する場合、区域指定の解除の方法をガイドラインなどで示していく必要があると考えます。 以上です。
(大塚委員長)
ほかにいかがでしょうか。矢野委員、お願いします。
(矢野専門委員)
今回のご提案につきまして、まず一つ目、飛び地間移動につきましては、概ねこちらの方向について賛成でございます。もともと敷地については、同一者が管理しているという理解のため、12条が提出される範囲内での同一者が管理する工事において行われることは問題ないのではないかと思います。
こちらは資料上、はっきり分かりませんでしたが、飛び地間移動は16条の対象外として12条のみで管理するという整理でよろしいでしょうか。
次に、仮置きについてです。こちらは1回の届出の範囲内という期間を示していただいておりますが、やはり数年にわたるようなケースもございますので、ある程度、30日なり、120日なり、日付の目安は示していただくのが妥当ではないかと考えております。
この中において、基準適合が確認された深度の土壌や浄化済土壌等の、汚染土壌として扱わなくてもよい土壌が、区域指定が解除されていないため制度上汚染土壌として扱わなければならないというケースもあります。このようなケースについては積極的に仮置きを認めてもよいのではないかと考えます。
また、③の期限を区切らない移動につきましては、現在でも14条により区域指定をあらかじめ受け、そちらで対応することも可能ではないかと考えておりますので、改めて土壌汚染状況調査のルートから外れる12条、16条で区域を指定するということについては、少々懸念がございます。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございます。どうぞ、島田委員、お願いします。
(島田専門委員)
日建連の島田でございます。飛び地間移動の内容については、概ね賛成ですが、細かい話になりますけれども、同一敷地の定義が必要だと考えます。例えば、同一の所有者の土地である場合や、同一の所有者の土地であっても、公道で隔てられるような土地もありますので、そのような場合はどうするのか。そのまま持っていくわけにはいかないので、その場合は16条を届出する等の制限がつくのかもしれませんが、同一敷地の定義を明確にするべきだと考えます。
それからトレサビリティの管理をするということでありますが、一つ一つの区画で管理することもできるかと思いますが、やはりもう少し複数区域のまとまりのある区域同士の移動も併せてご協議いただければと思います。
あと、仮置きについて、仮置きは盛土に限定するという条件もあるのですが、例えば、帯水層に接しないことを条件としたような場合には、地下水に影響しないということで、そのような場合も仮置きの一つの要件に盛り込んでいただきたいと思います。
あともう一つ、期限を切らないで移動する場合について、未調査範囲へ移動する場合は調査をして判断することになっておりますが、土壌汚染状況調査では盛土の下は調査の対象外となっておりますので、ここら辺の整合といいますか、考え方が複雑になるような状況でしたら、合わせたほうがよいと思います。
以上でございます。
(大塚委員長)
同一敷地の定義が大事になってくると思うので、後でご回答ください。
ほかにはいかがでしょうか。後でまた全体についてお伺いしますが、よろしいですか。
では、小林委員どうぞ、お願いします。
(小林臨時委員)
3-①の考え方、3-②の仮置きの要件のところについてなのですけれど、基準適合の範囲で動かす場合等は、大分慎重に考えなければならないと思います。今後の調査契機のときに、次の段階で汚染のおそれがありと判断されることにならないかとか、そうならないような養生方法とか、仮置きの方法について、そこは慎重に議論していただきたいなと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
よろしいですか。では、足立委員のご意見をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
それでは事務局より足立委員の書面意見をご紹介いたします。
仮置き要件について、開発中に掘削した土壌の仮置きを認めない行政もあるため、仮置き要件を作って緩和させる点では、メリットであると考える。
以上でございます。
(大塚委員長)
よろしいでしょうか。では事務局から、ご回答をお願いいたします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
では、事務局より委員のコメントに対してご回答をいくつかさせていただきます。
古川委員から、仮置きをする場合には大気汚染防止法の規制もかかるという趣旨のご指摘をいただいております。こちら、それぞれの法律について新たな仕組みを仮に作った場合には、施行通知や事務連絡などを通じて環境省から周知するという形を取っております。大気汚染防止法も、私どもと同じ環境汚染対策室が所管をしておりますので、連携しながら、自治体にどのように周知するべきか精査していきたいと思っております。
また、川瀨委員と矢野委員から、期限を区切らない移動をするときに、区域指定するのを12条、16条ではなく、現行どおり14条でやったほうがよいのではないかという趣旨のご指摘をいただいたかと思います。こちら、事務局案では、いずれにしても12条、16条への届出があるので、14条で二度手間がかからないように、12条、16条に基づいて区域指定するという仕組みも設けるべきかという趣旨のご提案をしているのですが、いずれにせよ、ゴールとしては自治体の負担や事業者の負担を減らすという趣旨で考えておりますので、また具体的に制度を考えていくときに、ご負担感をお伺いしながら、いかにあるべきかを見極めていきたいと思っております。
また、島田委員、大塚委員長からも、同一敷地の定義に関して事務局の補足をということでございました。敷地というのは、施行通知で、工場、事業場の区域の全体を指して、建築物が設置されていた場所に限定されないという考え方をお示ししております。また、工場、事業場の敷地については、施行通知では、公道などの、工場、事業場の設置者以外の者が管理する土地によって隔てられていない一連の工場、事業場の敷地を言うと示しております。ただし、公道等に隔てられている場合でも、特定有害物質を含む液体などが流れる配管などにより設置され、一体の生産プロセスとなっているなど、特定有害物質による汚染の可能性がある場合には、隔てられた双方の土地を一の工場、事業場の敷地として取り扱うものとするという定めがございます。これらの規定に基づき、今回同一の敷地内について議論するにあたって、個別具体的に判断されていくこととなると考えております。
小林委員からは、仮置きしたところを、その後どのように扱うのかというご指摘をいただいていたかと思います。例えば、いずれ調査契機を迎えるときにはそこは汚染のおそれがありと判断され得るものなのかとか、そのような問題意識だと思いながらお聞きしておりました。事務局の案で仮置きの養生方法に関してお示しをしているのは、地歴調査のときに安全サイドに立って汚染のおそれがありと過剰に判断されないよう、取扱いを明確にする必要があるというふうに考えて、養生方法の一例をお示ししております。
また、島田委員からはトレサビリティの管理の具体的な方法に関してご意見がございましたけれども、例えば、法第7条が要措置区域、第12条が形質変更時要届出区域に係る省令事項としてトレサビリティ確保の旨を定めて、具体的な方法については、事業者の様々な創意工夫でやっているところも多いものですから、事業者の創意工夫や敷地の特徴などに応じて実施をするということで差し支えないようにする想定を現時点では考えております。また、必要に応じて、ガイドラインへの事例の掲載なども検討したいと思っております。
以上でございます。
(鈴木環境汚染対策室長)
補足をさせていただきます。
島田委員のほうから、仮置きの盛土に限定しているというところ、帯水層に接しなければよいのではないかというご意見、この辺りの詳細をまた検討させていただきたいと思います。
(大塚委員長)
私からも一言だけ申し上げます。今の敷地の定義は、工場、事業場を中心とする定義でしたが、今回、もっと広く、自然由来も含めて、考えていかなくてはいけなくて、この敷地の中に入るかどうかというのは結構大きな問題になるので、定義はもう少し厳密にしないと持たないのではないかと思いますので、どうぞご検討いただければと思います。
まだ時間がございますので、ここまでの審議を踏まえて、さらにご発言をいただければと思っております。いかがでしょうか。
どうぞ、江種委員、お願いします。
(江種専門委員)
2番の自然由来ですが、14ページの論点に関する方向性の二つ目で、自然由来土地については下記の条件を満たした場合としてはどうかというので、溶出量基準不適合のみとして、土壌含有量基準不適合は適用されないものとすると書いてあります。第二溶出量基準が不適合の場合には、もう今でも適用されてないのでいいと思いますが、この土壌含有量基準不適合の場合を省く理由が、現行土対法における土壌含有量基準の測定方法で基準を超過した場合には、含有量の全量分析した場合の自然的レベルをもう超えているから、人為的な由来の汚染が多いということがガイドラインにも書かれていると思います。それを根拠に、含有量基準を超えていれば、人為的由来の影響が強いということで省くという認識をしていましたが、先ほどの環境省からの一連の回答のところで、含有量基準が20何か所を超えて指定されているということを聞きました。土対法における含有量基準不適合の場合には、もう自然的レベルを超えているので、人為由来の汚染の可能性が高いものとするということがガイドラインには書かれていますが、確かに総合的に判断するということで、必ずしも土壌含有量基準不適合が人為的由来の汚染の可能性が高いということでもないとは思いますが、改めて土壌含有量基準不適合を除く案を出された理由を教えていただきたく思います。
(大塚委員長)
では、まとめてご回答いただくので、勝見委員から先に聞きましょうか。
(勝見専門委員)
私も江種先生がおっしゃることはそのとおりと思いますが、自然由来かどうかということと、含有量基準を適合、不適合かということは、別問題として捉えています。含有量基準不適合であっても自然由来のものはあります。冒頭申し上げたように、ほとんどの場合は濃度が低いですが、そうではないものもやはりあります。土壌汚染対策法の守備範囲ではございませんが、山のほうに行って岩石を掘れば、非常に濃度が高いものも当然出てきますので、そういったものが、自然か人為かということをぎりぎりと判別するということをここでやるのかどうかということは、少し違うと思っています。
ここでおっしゃっているのは自然由来かもしれないが、含有量基準不適合のものはリスクが高いため、新しい制度の中では外す。要するに、そのような新しい制度とするという話で、必ずしも自然由来かどうかということをぎりぎりと攻めていくということではないと思って、その点がこのまとめ方だと少し曖昧になっているということです。そうではないというご意見もあるでしょうから、そこはまた整理をいただければと思っています。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。自然由来についてぎりぎり詰めるよりも、全体的に考えていったほうがいいのではないかというご趣旨だと思いました。
袖野委員、どうぞお願いします。
(袖野専門委員)
ありがとうございます。全体について一言コメントさせていただきます。今回の説明やヒアリングでも、自治体によって運用が異なるということが問題提起されているかと思います。廃棄物の世界ですと、廃棄物の該否判断など、自治体によって大きく異なることもありますが、それはやはり地域によって状況が違うということと思います。あるものが地域によって有価物になったり、無価物になったりということがありますが、土壌の場合でもそういったことがあるのだろうかと思いました。自然由来の汚染土壌への対応は、もちろん汚染状況や土地の用途について地域ごとの判断があろうかとは思いますが、この運用については、土対法の理念や考え方に立った上での運用であるべきという点で、事例紹介などによって、自治体の運用の差が少しでも減るのではないかと思いまして、自治体向けへの情報の出し方の工夫も必要かと思いました。
もう1点。他法令との連携ということも先ほど話がございましたし、事故発生時の対応についても今回の水濁法で対応していくという方向性が示されましたが、このほかでも、例えば水循環基本法においても、自治体向けのサポート、特に地下水の流れなどの専門的な情報については、市町村レベルではなかなか難しいところもあって、そういった情報提供が行われているかと思います。自然由来の土壌汚染の状況など判断が難しいケースもあろうかと思いますので、そういった点での判断のサポート、情報提供が今後なされるといいと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
どうもありがとうございます。では、寺浦委員、どうぞお願いします。
(寺浦専門委員)
ありがとうございます。3-③について、先ほどご指摘もありましたが、やはり同一敷地というものの定義がどうなるかによって非常に大きなインパクトがあり得るというところは懸念しています。この3-③というのは、汚染の拡散につながるものになるかと思いますので、そういった意味で、非常に定義は重要であると考えています。定義によって、やはり同一敷地にする、しないというのを、恣意的に変更することができる部分もあります。また土地ですから、所有者がずっと一緒というわけでもなく、その後、やはり譲渡されて別の所有者、別の管理になることもあり得ますので、そういった長期間の影響も踏まえて、この点は考える必要があり、今後の検討では注意していただく必要があると思いました。
以上です。
(大塚委員長)
これは極めて法律的な話になる可能性があると私も思っております。例えば所有者を一人にする、同じにするという可能性があると思うので、今、寺浦委員がおっしゃったことは、まさにその同一敷地でないようにするために、いろいろ画策する人がどうしても出てきますという話なので、その点をしっかりと考えてくださいというご趣旨なので、ぜひよろしくお願いします。
鎌田委員、お願いします。
(鎌田専門委員)
2番目の健康リスクに応じた自然由来等基準不適合土壌の取扱いの論点に対する方向性の中で、区域指定をどうするかということと、基準不適合のものがあった場合に、場外搬出するときのみの規制とする議論が出ています。その最後のところで、自然由来土地を台帳を調製して管理を行う区域指定によらない方法とするか、新しい区域制度による管理とするか引き続き検討を行うとあったので、ここは非常にいいと思いますが、もともと現地でリスクを管理しながら使い続けるということも、やはり資源の使い方と思いますし、先ほどお話ありましたけど、脱炭素という面でいくと、不必要な活動をしないという面にもなるので、その部分も併用してご議論いただけるといいと思っております。
よろしくお願いいたします。
(大塚委員長)
ありがとうございます。よろしいでしょうか。どうぞ、小林委員。
(小林臨時委員)
ありがとうございます。私も先ほど勝見委員、江種委員がおっしゃっていた14ページのところについてです。
自然由来の判断基準のところで、土壌含有量基準不適合、第二溶出量基準不適合の場合は適用されないということが、よいのかどうかをずっと考えていましたが、実際に自然由来の汚染でも含有量基準や第二溶出量基準を超えているという状況がないわけではないですし、また一方で、超えているからといって、その土地の立地によっては全く健康リスクが懸念されないような立地も多々ございます。そういう意味では一律に、この条件だったら適用されないとするのではなく、健康リスクが高いような状況であれば、少し慎重に取扱うという考え方と感じました。
あと最後の3-④ですが、事故発生時の対応について、この整理でよいと思いますが、一方で、自治体に情報共有するということで大丈夫かと少し懸念しています。自治体ごとに対応に差が出ることがないように、特に土地を所有している事業者に、放置した場合は汚染が残るかもしれない、広がるかもしれない、どんどん深刻になっていくかもしれないという情報がしっかりと周知されていくように、自治体に環境省からご指導いただければと思いました。
以上です。
(大塚委員長)
ほかにはよろしいでしょうか。先ほど私が一言申し上げた部分、追加で申し上げさせていただきます。自然由来汚染や搬出との関係で、かなり厳しくやってきたわけですが、私も審議会のメンバーをしていましたけれども、特に積極的に発言していたというわけでは、必ずしもなかったと思いますが、そのときの環境省や審議会のメンバーの基本的な発想は、汚染土が流通していったら困るということと、もう一つは、汚染除去をした土地からの搬出をしようと思ったときに、その土に対する信頼が落ちてしまうと、誰も受取り手がなくなることが様々な問題を引き起こすということは、おそらく考えていたので、当時はそういう発想が結構強かったということを申し上げておきます。
ただ、あまりにも厳し過ぎるので、多くの方がご指摘いただいているように考えていかなくてはいけないわけですが、当時の趣旨はそういう趣旨で、汚染除去した土地からの搬出に関しては、誰も受取り手がなくなっても困ると思うので、そこは様々なことを考えなくてはいけない面はあるということも一言申し上げておきます。
では、様々なご質問、後から重要なご指摘も出てきてよかったと思いますけれど、どうぞご回答をお願いします。
(金井環境汚染対策室室長補佐)
事務局より失礼いたします。まず、江種委員、勝見委員、小林委員から、自然由来土壌のところで、土壌含有量基準不適合の場合、これは自然由来とみなすべきかどうかというところについて、いくつかご意見をいただいたところでした。
今回、土壌含有量基準不適合については、事務局としてイメージしたところとしては、自然由来であっても、土地の形質変更によって汚染土壌が地表に露出をすると、その土地の形質変更という人為的なものに伴って、直接摂取のリスクが、人為的に生じてしまうおそれがあるため、現行の区域制度により管理すべきという安全側に立った考え方もあり得るということでこういったご提案をしていたところでございます。
ただ、先ほど実際の件数状況も含めて若干ご説明させていただきましたが、どの辺りが一番バランスのよい制度設計、判断になってくるのかというのは、今回の審議会も含めて、ゆくゆく制度の具体的なイメージをしていくに当たって、よく意識をしてまいりたいと思っているところです。
また、袖野委員から実際に運用が異なるところは自治体の判断のサポートをしっかりというご指摘をいただいております。土壌汚染対策法では、ガイドラインや通知で、かなりのボリューム感で様々情報提供をさせていただいております。そこが扱いにくいというところもあるのですが、自治体の判断に当たって有用な情報をお示しし、環境省の考え方に基づいて参考にしながら判断しましたという、地域の判断を円滑化するに当たってお役に立てればと考えています。そういった観点も含めて、今回制度の仕組みの見直しなどをしていった結果、ガイドラインを見直すという議論になった場合に、その点もよく意識をして考えていきたいと思っております。
寺浦委員からは、同一敷地の定義によっては、それを恣意的に判断して変更する人も出るのでご注意をというご指摘をいただいたと思います。これも既にこの場で議論はございましたが、敷地の定義がこのままでいいのかという目線で、もう少し精査をしていきたいと思っているところです。
鎌田委員からは、論点②の自然由来のところに関して、場外搬出のみ規制を行う点、もともと現地で適正にリスク管理をするという観点が、脱炭素の観点からも必要という点についてご指摘をいただいたところでございます。ここについては、今回の仮置きや期限を区切らない移動について、その趣旨を十分ご説明できていない部分が一部あったかもしれませんので、またゆくゆくこちらの方向性で骨子や答申をまとめていくに当たって、どういう趣旨で今回仕組みを見直すかというところの、そこの部分にこの背景も丁寧に書くような形で検討していきたいと思っております。
小林委員から事故発生時の対応で、自治体によって差がないようにとか、放置すると汚染が拡散するので、事故発生時の対応の趣旨が自治体に分かるようにいうご指摘をいただいたかと思います。水質汚濁防止法と土壌汚染対策法、同じ環境汚染対策室が担当しておりますので、そこも実際に、より伝わるような周知の仕方、事務連絡や通知でお伝えをするという方法を考えていきたいと思っております。
以上でございます。
(大塚委員長)
ありがとうございました。では、本日の審議はこれで終了といたしまして、議事進行を事務局にお戻しいたします。
(長谷川土壌汚染対策係長)
本日は、委員の皆様におかれましてはご多忙のところご出席いただき、大変活発なご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。また、冒頭配付資料に不備がございましたこと、誠に申し訳ございません。
次回以降の予定ですが、引き続き今後の土壌汚染対策の在り方に係る論点に関する審議を予定しております。次回の日程、議題等は、改めてご案内させていただきます。
また、今回の議事録につきましては事務局で作成の上、委員の皆様のご確認を経て、環境省ホームページに掲載いたします。
以上をもちまして、本日の土壌制度小委員会を閉会いたします。ありがとうございました。