中央環境審議会 水環境・土壌農薬部会 総量削減専門委員会(第10次)(第4回)議事録
議事次第
1.開会
2.議題
(1)水質総量削減制度に係る取組の実施状況について
(関係団体からのヒアリング)
(2)その他
3.閉会
2.議題
(1)水質総量削減制度に係る取組の実施状況について
(関係団体からのヒアリング)
(2)その他
3.閉会
資料一覧
- 資料1 総量削減専門委員会委員名簿
- 資料2 日化協における水質総量削減への取り組み及び今後の課題と要望(一般社団法人 日本化学工業協会)
- 資料3 鉄鋼業における総量削減への取組み(一般社団法人 日本鉄鋼連盟)
- 資料4 製紙業界における水質総量削減への取組みについて(日本製紙連合会)
- 資料5 東京都における総量削減の現状と課題(東京都)
- 資料6 千葉県における汚濁負荷対策等の取組状況について(千葉県)
- 資料7 愛知県における水質総量削減の現状と課題(愛知県)
- 資料8 きれいで豊かな海に向けた三重県の現状と課題(三重県)
- 参考資料 総量削減専門委員会におけるヒアリングの予定
議事録
午前9時30分 開会
【西川室長】 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会水環境・土壌農薬部会第4回総量削減専門委員会を開会いたします。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、WEB会議システムによる開催としております。委員の皆様におかれましては、発言時以外はカメラをオフ、マイクはミュートにしていただきますようお願いいたします。
御発言を希望される場合は挙手ボタンをクリックして、発言を終えられましたらボタンを再度クリックし、挙手を解除いただければ幸いでございます。
会議中に音声が聞き取りにくいなどのトラブルがございましたら、事務局まで、お電話またはWEB会議のチャット機能にてお知らせいただければ幸いです。
なお、本日の会議は中央環境審議会の運営方針に基づき公開としておりまして、YouTubeの環境省海洋環境課公式動画チャンネルでライブ配信を行ってございます。
本日の委員の出席状況でございます。委員17名中、三浦委員、東委員、横田委員、今現在、山口委員は入っておりませんが、以外の13名に御出席をいただいてございます。定足数の要件を満たしており、専門委員会として成立をしておりますことを御報告いたします。
山口先生につきましては、部分参加の可能性があるということでお聞きしてございます。
続きまして、今回の議題1でヒアリングに御対応いただく関係団体の方々をヒアリング順に御紹介いたします。
一般社団法人日本化学工業協会、環境安全部の柳谷部長です。
【柳谷部長】 柳谷です。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
続きまして、一般社団法人日本鉄鋼連盟、土壌・水質分科会の木森主査、同じく、一般社団法人日本鉄鋼連盟、鉄鋼スラグ海域利用促進ワーキンググループの赤司委員でございます。
【木森主査】 よろしくお願いいたします。
【赤司委員】 お願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いします。
続きまして、日本製紙連合会、王子ホールディングス株式会社、グループ安全環境本部の小川環境管理部長です。
【小川環境管理部長】 よろしくお願いいたします。
【西川室長】 東京都環境局自然環境部水環境課の大久保課長です。
【大久保課長】 大久保でございます。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
千葉県環境生活部水質保全課の佐久間副課長です。
【佐久間副課長】 佐久間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
愛知県環境局環境政策部水大気環境課の戸田課長と農業水産局水産課の日比野課長補佐でございます。
【戸田課長】 戸田です。よろしくお願いいたします。
【日比野課長補佐】 日比野です。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 ありがとうございます。
三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課の松本課長です。
【松本課長】 松本でございます。よろしくお願いします。
【西川室長】 ありがとうございます。
次に、事務局を御紹介させていただきます。順不同で名前のみ呼ばせていただきます。
水・大気環境局長の松本、海洋環境課長の水谷、私、4月に着任いたしました海洋環境課海域環境管理室長の西川でございます。同じく海域環境対策推進官の工藤、室長補佐の森川、環境管理課補佐の亀井となってございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の資料につきまして、議事次第のとおり、確認をさせていただきます。
資料1が委員名簿、資料2~8までがヒアリング資料ということで、各団体から御提出をいただいたものとなってございます。
参考資料に、前々回お示ししました本委員会でのヒアリングの予定をつけさせていただいております。もし不足等がございましたら、事務局までチャット機能等でお知らせいただければと思います。
それでは、これより議事に移りたいと思います。
古米委員長、よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 承知いたしました。
皆様、おはようございます。委員の皆様、また、関係団体の皆様、御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
それでは、早速、議事に入らせていただきます。
限られた時間の中での円滑な議事の進行に御協力をお願いしたいと存じます。
まず1番目、水質総量削減制度に係る取組の実施状況についてということで、関係団体から発表していただきますが、発表時間は10分程度として、関連するヒアリング対象ごとにまとめて質疑応答するという形で進めたいと思います。
発表の際に、10分経過時、1鈴でお知らせし、10分経過しても御発表が終わらない場合は、ペースを上げていただく等、お声がけさせていただく場合がありますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事進行に御協力いただきますようお願いしたいと思います。
最初に、日本化学工業協会、日本鉄鋼連盟、日本製紙連合会について御説明をお願いしたいと思います。3件続けて御説明いただいた後にまとめて質疑応答を行います。
まず資料2について、日本化学工業協会より御説明をお願いしたいと思います。
【柳谷部長】 日本化学工業協会の柳谷と申します。よろしくお願いいたします。
私からは、日化協の水質総量削減の取組と課題と要望として御説明いたします。
2ページをお願いいたします。今回、産業界への御要望がありましたヒアリング項目のうち、2番、6番、9番~13番について御報告申し上げます。
3ページをお願いいたします。今回の御説明の内容ですが、簡単に化学工業について御説明した後、総量削減の取組と、それから課題、要望について御説明いたします。
4ページをお願いいたします。初めに、化学工業の出荷額について御説明申し上げます。プラスチック製品、ゴム製品も含めた広義の意味での化学工業の出荷額は、年間約51兆円ということで、自動車産業に次ぐ規模の産業でございます。
5ページをお願いいたします。これら企業のうち日化協に所属している会社は、企業会員として181社、主に大手の化学メーカーで構成されております。そのほか、石油化学工業協会などの団体会員が77団体で、計258会員で構成されております。その中でも、環境保全に関する取組を行う部署として、環境安全委員会の下部組織に環境部会というものがありまして、ここで会員企業のうち41企業、団体としては13団体が参加して情報共有や意見交換などを行っております。
6ページをお願いいたします。次に、今まで化学工業が行ってきた総量削減の取組について、1~7で説明いたします。
7ページをお願いいたします。まず(1)これまでの取組ということで、排水処理の全体像について、簡単に御説明申し上げます。化学工業の各社は、これまでに活性汚泥を主体にした排水処理システムを導入しております。特に高負荷な排水については、前処理として湿式酸化や液中燃焼、後処理としてMBRなどの膜処理を導入すること、それから監視システムによる運転管理の強化によって汚濁物質の排出量を大幅に削減してきました。また、法規制などを遵守し、さらに厳しい自主管理基準を設けて、負荷削減に取り組んでまいりました。
8ページをお願いいたします。その結果が、こちらの表とグラフになります。COD、全窒素、全りん共に継続的に削減をしていき、それを維持しているということがお分かりになると思います。
9ページをお願いいたします。一方で、排水処理に関わる課題ということで、まず1番目としまして、大きいのは活性汚泥処理施設の老朽化に伴う保全費用の増加というものが挙げられます。また、それに伴って、新増設や更新に伴い多額な費用がかかっているという実態がございます。
2番目としまして、運転管理です。安定的に排水を排出するために、更なる前処理や後処理設備の増強、それから、③番に挙げましたような常時監視の計器を導入するというようなことに取り組んでおります。また、昨今、②番に挙げたような処理に伴うエネルギーの削減やGHGの削減というものが求められております。
10ページをお願いいたします。こちらが水質環境設備に関係する投資額になります。各社、年間1億~2億円程度の設備投資を水質関係にかけております。また、その額は物価高ということも相まって、増加傾向にあることがお分かりになると思います。
11ページをお願いいたします。次に、近年取り組んでいます栄養塩管理の取組について御紹介いたします。兵庫県に立地する一部の日化協の会員企業において、兵庫県からの要請に応じて、窒素分の上昇という栄養塩管理の協力を実施しております。しかし残念ながら、次の理由から、協力自体が限定的なものになっているというような実態がございます。
理由の1番目としまして、窒素分のみを意図的に上昇させるということが技術的になかなか困難だということが挙げられます。具体的には、ポツの一つ目のところで、窒素やりんの濃度を上げようとすると、プロセス上、どうしてもCODやSSも上昇してしまい、なかなか窒素分のみを上げるということが難しいという実態です。また二つ目としまして、亜硝酸塩で窒素を上げようとすると、CODの測定原理上、亜硝酸でCODが上昇してしまい、窒素分を上げられないという問題が挙げられております。
理由の2番目としまして、活性汚泥、こちらは御存じのとおり、急激な運転変更は難しいということが挙げられております。活性汚泥は微生物叢の維持やバランスが重要でして、これが急激な運転変動や、栄養塩である窒素やりんの濃度が変動すると、バランスが崩れてバルキング等を起こし、処理能力の復旧には数か月かかるということがありますので、なかなか運転を変動させるというのが難しい実態です。
12ページをお願いいたします。そのほかということで、環境保全活動について御紹介をさせていただきます。各社、独自に取組を行っておりまして、主に陸域での活動として、工場周辺などの清掃活動や森づくりの活動、それから、自社製品の生分解性プラスチックを漁業者に提供するなどの活動をしております。また、行政主体の取組への協力というところでは、先ほど申し上げたような栄養塩管理や情報提供などを行っております。
13ページをお願いいたします。これまでのまとめになります。各社、これまで適切な排水処理の導入や、監視システムの強化、また自主管理の基準を設けて、負荷削減に継続的に取り組んできております。また、最近では栄養塩管理の協力を行っていますが、その取組には技術的、設備的な課題があるというところでございます。5番目としましては、設備の老朽化等によって保全投資額が上昇しているということ、6番目としましては、清掃活動等、環境保全活動に今後とも参画し、継続していくというところでございます。
14ページをお願いいたします。これが最後になります。こちらは要望です。これまできれいな海への貢献ということで、我々化学工業では、COD、全窒素、全りんなどの低減に取り組んでまいりました。今後については、豊かな海へ向けた湾灘ごとの管理ということで、実行可能な合理的な対応をお願いしたいと考えております。1番と2番がありますが、特に1番の①番、さきにお話しましたとおり、窒素やりんを上げるとCODまで上がってしまうという現状がございますので、実態に合わせた基準の設定をお願いしたいということと、また、きれいな海と豊かな海の両立ということで、環境負荷の削減と栄養塩管理は相対するところがございますが、対象となる生物の生育ステージによる栄養塩需給量の解析などをすることによって、できるだけコンパクトなエリアでこの栄養塩管理をすることで、環境負荷の削減と栄養塩管理の両立というものができるのではないかと考えており、そのような合理的な仕組みづくりというものをお願いしたいと考えております。最後に2番につきましては、排水処理設備の老朽化もですし、今後、先進的な技術を導入していくというところも含めて、技術的、経済的な配慮というものをお願いしたいと考えております。
日化協からは以上になります。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
続いて、資料3について、日本鉄鋼連盟より御説明をお願いしたいと思います。
【木森主査】 日本鉄鋼連盟の木森です。
前半は鉄鋼業における総量削減の取組について御説明し、後半は説明者を交代して、藻場造成とブルーカーボンへの取組について御説明いたします。
2ページをお願いいたします。まずは、鉄鋼の生産工程を簡単に御説明いたします。左上からスタートします。主原料として鉄鉱石、石炭がありまして、それぞれ焼結炉、コークス炉で処理した後、高炉で溶融還元し、転炉や電気炉で精錬を行い、それを固めて鋼片となります。その後、鋼片を加熱炉で加熱しまして、線材、厚板、薄板、パイプなどに加工しております。
水に関して言いますと、生産工程では非常に高温のものを取り扱いますので、設備の冷却や鋼材の冷却に多くの水を使用しております。左側に数字を書いておりますが、粗鋼1t当たり約115tの淡水を使用しておりますが、その80%が一度使用した水を循環して使用する水になっておりまして、水の使用量削減、排水量削減に努めております。
3ページをお願いいたします。次に、COD、窒素の発生源と対策について御説明いたします。石炭を蒸し焼きにするコークス炉で発生するガスは製鉄所内で燃料として使用しますが、ガスを冷却した後の排水には、フェノールなどのCOD源や、アンモニアが含まれております。そのため、アンモニアストリッピングで排水からアンモニアを除去し、さらに活性汚泥処理でフェノール、窒素を除去しております。事業所によりましては、より高度な処理として、活性炭吸着などを追加で実施しているところもございます。
また、圧延工程では、油を含んだ水、含油排水が発生しますため、加圧浮上処理で油の除去を行っていますが、その後に生物処理などを追加して実施しているところもございます。
また、製品の表面を酸で洗う工程がございますが、硝酸を使う場合には、窒素の負荷が大きくなります。そのため、廃酸回収を行い再利用を行うなど、負荷量を減らす取組を行っております。
なお、りんについては、特に発生源となるものはございません。
4ページをお願いします。COD削減の対応内容を示しております。COD対策は活性汚泥処理がベースとなりますが、特に第6次以降は、含油排水の2次処理設備の導入などのほか、CODの測定器を設置し処理を安定化させるなどの対策を実施しております。また、製鉄所には多くの従業員がおりますので、浄化槽など、生活排水への対策も実施しております。
5ページをお願いします。このグラフは三つの海域における鉄鋼業のCODの負荷量の推移を表しておりますが、負荷量が減ってきたということが分かると思います。
6ページをお願いします。ここからは窒素負荷量の削減・管理の取組事例となります。コークス炉排水の処理でアンモニア分を除去するためのアルカリストリッピング設備の増強や、硝酸を使用する酸洗ラインにおいて、廃酸回収装置を設置したり、窒素分の処理を安定化させる対策を実施しております。
7ページをお願いします。このグラフは、三つの海域において、鉄鋼業の窒素負荷量の推移を示しております。概ねですが、負荷量の低減傾向が現れていると思っております。
8ページをお願いします。このページは、内訳として、東京湾におけるCODと窒素の負荷量の推移を表しております。
9ページをお願いします。続きまして、伊勢湾の負荷量の推移となります。
10ページをお願いいたします。こちらは、瀬戸内海のCOD、窒素負荷量の推移を示したものになります。
11ページをお願いいたします。鉄鋼業の意見を述べさせていただきます。
鉄鋼業は、8次までの総量規制への対応として、設備投資、管理強化を進めまして、9次でも、引き続き、汚濁負荷量の排出抑制に努めてきております。また、この後、御説明する鉄鋼スラグの活用により、港湾・藻場の環境改善にも貢献しております。
第10次総量規制を検討するに当たりましては、藻場・干潟・深堀修復や栄養塩類の適切な管理等も含めた閉鎖性海域の水質改善をより効率的に実施する方策について、科学的知見を充実した上で、陸域からの汚濁負荷量の低減に偏重することなく、総合的・継続的な対策・支援を検討していただきたいと考えております。
続きまして、鉄鋼スラグ製品の活用について御説明いたします。
【赤司委員】 それでは、説明者を交代し、赤司より鉄鋼製品を活用した藻場造成とブルーカーボンへの取組みについて御説明させていただきます。
13ページをお願いします。まず沿岸域における藻場の重要性です。すでに皆様御存じのことですので簡単にいきます。藻場の沿岸域に、昆布やワカメなど、様々な海藻類が生えていることによりまして、当然、そこに生息するウニやアワビなどのような生物生息の場というところもありますが、大型類の魚類が産卵したり、育ったりする海のゆりかごと言われる場所や、場合によっては、レジャーの場というところにも、様々な用途で重要な場と今なっております。
14ページをお願いします。これに対しまして、この海藻の藻場は、古くは1900年頃から徐々に藻場がなくなってきて、一般的に磯焼けと言われる現象がどんどん広がってきていて、近年でも広がってきている状況でございます。
15ページをお願いします。これに対しまして、磯焼けの海藻が生えなくなる原因と対策です。様々な要因がありますが、一番左に一次要因、環境変化ということが書いてございます。幾つかありますが、主なものを挙げますと、まずはりん、窒素などの栄養塩が不足してきています。海草が生えるためには鉄分も必要だと言われています。また最近、地球温暖化と言われていますが、海水温の上昇というところです。それから、これだけではないと思いますが、海洋工事による流れ場の変化で、よく漁業者さんがおっしゃるのは、昔は天然の磯場があって海藻が生えていたが、そこに砂が流入してきて磯場を覆い尽くしてしまい、着生の場がなくなって生えなくなったということであったり、アマモだと、逆に砂が流出して、安定した砂場が確保できなくなり生えなくなったなどです。様々な海底の変化、流れ場の変化ということも要因になっています。
16ページをお願いします。これに対して、二次要因、直接原因です。対策として、まずは本日御紹介するものが二つありますが、一つ目が栄養塩の供給ということになります。
17ページをお願いします。まずは藻場造成、海の肥料です。皆さん、『森は海の恋人』であったり、森に木を植えると海が豊かになるというのを聞かれたことがあるかもしれません。もともとそのような栄養分、特に鉄分は山の土の中にあったものが、落ち葉が腐った腐食物質などと一緒になって腐植酸鉄となり、川を伝って海に流れ、海藻に行き渡っていたということです。それがなかなか自然現象でできなくなったので人工的に作ってあげましょうということで、鉄分を含有している鉄鋼スラグと森の中の落ち葉の腐植土、ホームセンターなどに売っている腐葉土ですが、これを混ぜ合わせて海に入れることで海藻を生やしてあげるという取組を、現在、全国で行っております。
18ページをお願いします。一つの代表事例で、最近、そのような海藻がCO2を吸収することをブルーカーボンと呼んでおりますが、最近の事例としましては、北海道の増毛町の増毛漁業協同組合さんと日本製鉄が共同で、このような藻場造成の取組を実施しまして、2022年にJブルークレジットの認証、5年間で49.5t、年間約10tの認証をいただいています。
19ページをお願いします。次に、流れ場の変化に対する対策として、岩場の基質材として、鉄鋼スラグで作った人工的な基質材を入れるという取組でございます。
20ページをお願いします。次はJFEさんの取組です。藻場礁としてのマリンブロックということで、鉄鋼スラグ、製鋼スラグと、排ガス(CO2)を原料として固めたスラグ炭酸化の固化体や、粗い粒度のスラグ剤を石材床として入れているマリンストーンなどを入れて藻場を構築するという取組をしてございます。
21ページをお願いします。その事例としまして、山口県の岩国市で、JFEスチールさん、漁協さん、高専さんで藻場造成を実施し、5年間で79.6tのCO2のJブルークレジットの認証を受けているというものでございます。
以上になります。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは続いて、資料4について、日本製紙連合会より御説明をお願いしたいと思います。
【小川環境管理部長】 製紙連合会の小川と申します。所属は王子ホールディングスです。
それでは製紙連合会から、製紙業界における水質総量削減への取組について御説明します。よろしくお願いいたします。
2ページをお願いします。本日の説明内容ですが、ここに掲載した1番~5番を中心に説明させていただきたいと思っております。
3ページをお願いします。初めに、製紙業界の現状を簡単に御紹介させていただきます。このグラフは、紙、板紙の生産量の推移を示したものです。現在、紙・パルプ産業は、電子化や少子化といった構造的な要因により、新聞や印刷情報用紙を中心に、需要が大幅に減少しているのが分かっていただけると思います。生産量は、2000年のピーク時に対しまして、現在では30%程度減少しています。その一方で、近年、気候変動対策や循環型社会サーキュラーエコノミーなど、持続可能な社会の実現に向けた取組が世界的に加速しております。
私たち製紙産業は、紙、板紙の原料となる木材を供給する森林を自ら植え、育て、使い、再び植えるという、持続可能な循環利用を行いつつ、CO2の吸収源、生物多様性の保全、水源涵養の恩恵を与えてくれている森林を維持、拡大することで、気候変動対策に貢献するだけではなく、森のリサイクル、紙のリサイクル、水のリサイクルを通じて、循環型社会の実現に高く貢献している産業だと思っております。今後ますます社会に欠かせないエッセンシャル産業として、持続可能な社会の実現へ貢献していきたいと考えています。
4ページをお願いします。まず製紙業界の排水の特徴ですが、生産に際して、非常に大量の水を使用しております。その水のほとんどが工程水であり、排水処理が必要な高濃度の有機物を含んだ排水となっております。その一方で、有害物質は非常に少ない排水となっております。結果として、全産業の中でも非常に多くのCODを排出している業種の一つでありますが、活性汚泥処理を中心に、加圧浮上、凝集沈殿処理等を組み合わせまして、発生した排水は全量処理して放流しております。
5ページをお願いします。このスライドでは、排水の簡易的な循環フローと、放流水の負荷について御紹介したいと思います。詳細なフローにつきましては、参考資料の最後のページに添付されておりますので、後ほど御確認いただければと思います。製造工程で使われる大量の水資源は、一部は蒸発などして失われますが、排水処理により浄化し、取水した90%以上を、再度、河川や海域に戻すことでリサイクル、負荷削減の取組を行っております。工程内の水についても、浄化を行い、処理済回収水として前工程に戻すことで再利用して、取水量の抑制に努めています。また、放流水の排水負荷につきましては、規制値よりも厳しい自主管理値を運用して管理しております。その結果、規制値並みの濃度で排出した場合と比較しまして、BODでは80%、CODは51%、SSは81%減ということで、大幅な排水の浄化を達成しています。このデータは当業界の1社の事例を紹介させていただきました。
6ページをお願いします。このスライドからは、3海域における過去からのCODの排出状況、実績値の推移について御紹介します。このグラフは、環境省の集計データを活用させていただきました。緑の棒グラフが排出負荷量、オレンジの点線のグラフが削減率となっております。閉鎖性3海域合計の排出量は、規制導入の1979年との対比では、直近の2022年で約61%削減となっております。削減傾向は現在も維持できていると感じております。絶対量の差はありますが、傾向は3海域とも同様で、削減傾向が見てとれると思います。しかしながら、削減対策はもうやり尽くした感がありまして、私たちでは現状レベルから悪化させないという取組を続けているのが現状になります。
7ページをお願いします。続きまして、窒素、りんについて、CODと同様なグラフを作成しております。製紙工場では、原料である木材、もしくは薬品等由来の窒素、りん成分もございますが、メインは排水処理における活性汚泥の栄養剤として窒素、りんを使用していることだと考えております。良好な生物処理が維持できる範囲内で添加量を削減しまして、生物処理工程後の残窒素、残りんを把握することで、1999年対比、窒素は57%、りんは51%の削減をしてきております。
8ページをお願いします。続きまして、海域ごとの窒素、りんの排出量の推移です。上段に窒素、下段がりんになります。少々凸凹もございますが、減少傾向につきましては、3海域とも同様な結果です。当業界の瀬戸内海に放流している某事業所におきましては、周辺海域の調査において、窒素不足が確認されました。その対策としまして、下水道局の緩和措置と、陸域からの主要リソースである製紙工場起源の窒素について、水質と生物生産性(植物プランクトン)の両面から、現在、評価手法の研究に協力させていただいていると聞いております。
9ページをお願いします。閉鎖性海域に排水する紙パルプ事業所のうち、ここでは東京湾からA工場、伊勢湾からB工場、瀬戸内海からC工場を選定しまして、過去からの投資費用や投資案件について取りまとめを行いました。まず東京湾のA工場ですが、1994年に首都圏から発生する古紙を原料とする、古紙、パルプ主体の工場等に変化しました。総量規制導入以降、CODは最大負荷時の1988年から直近までに85%削減しており、水質改善設備は約26億円を投資しております。最近10年間では約2億円を使いまして、前段クロフター(加圧浮上設備)を新設しまして、そのほか検知器類の更新、老朽化工事などを実施しております。排水処理にかかるランニングコストは、年間2.3億円と聞いております。続いてB、C工場ですが、こちらはパルプから紙まで生産する大型の一貫工場になります。B工場では、総量規制導入以降、順次、発生源対策と排水処理設備の増強を行っております。CODは最大負荷時の1988年から直近まで58%削減し、設備には152億円を投資してきました。2000年にクラフトパルプのECF化を実施しております。ここ最近では大きな投資は行っておらず、老朽化対策や検知器類の更新等を行っています。排水処理にかかるランニングコストは年間9億円と聞いておりまして、この費用につきましては、環境改善費用の約3割と聞いております。続いてC工場は、総量規制導入時に31.5t/日のCODを排出しておりましたが、クラフトパルプへの切替えを進め、90年以降、設備の更新を、順次、行っております。また、2004年からは、B工場同様、パルプのECF化を行いました。C工場の場合、CODは69%の削減となっておりまして、設備投資は335億円となっています。最近10年間では1億円程度の投資により、老朽化対策、高速凝集沈殿処理の設置、検知器類の更新を行っています。排水処理にかかるランニングコストは年間10億円と聞いています。
10ページをお願いします。製紙産業は、これまで説明させていただきましたように、工場によって差はありますが、COD、窒素、りん共に大幅に削減し、その努力を継続しています。規制値の遵守はもちろんですが、規制値の内側に自主管理値を設け、日々、工程管理を行い、削減実績となっております。現状設備を最大限有効に活用して、老朽化対策を徹底することで、規制値の遵守と排水負荷の削減を達成、維持していきます。私たちは、第9次より提唱されております、規制値ありきではない排水の適正管理という考え方に賛同しております。今後、民間企業においても、栄養塩類の緩和策が、その方法を含め、前向きに検討されることを期待しています。
11ページをお願いします。ここからは製紙業界の環境への取組事例を幾つか紹介していきます。まずは森林保全の取組についてです。製紙メーカーは「木を使うものには木を植える義務がある」という考えの下、過去からも、これからも森林の育成に携わっていきます。健全に管理された森林は、CO2吸収、生物多様性保全、水源涵養、レクリエーションの提供等、様々な恩恵をもたらしてくれます。
12ページをお願いします。弊社王子グループの国内社有林、約19万haの多面的機能について、経済価値を試算した一例になります。こちらは、林野庁の「森林の公益的機能の評価額について」という発表の手法に基づき試算しました。その結果、年間で5,500億円もの経済効果があることが分かりました。
13ページをお願いします。現在、北海道の猿払村で、北海道大学と共同で森林の価値の評価を行っているところです。
14ページをお願いします。続きまして、海洋プラスチックごみ問題の対応です。ここに一例で紹介するプラスチックから紙への代替を中心に、環境配慮型パッケージやリサイクルシステムを提案し、プラスチックごみの問題への貢献を図っております。
15ページをお願いします。国内では、3年前に施行されましたプラスチック資源循環促進法に基づき、新たな独自目標を立てて取り組んでおります。一つは、埋立てや熱回収をせず単純焼却をする再資源化できていない廃プラスチックを2030年度までにゼロにしていきます。また、環境配慮型パッケージを2030年度までに5,000t以上販売するという目標を掲げて取り組んでおります。
16ページをお願いします。最後になりますが、環境への取組事例としまして、これまでも実施しておりました原料確保、森林育成のための植林活動、森林の健全な管理のための間伐作業を継続しています。また、CSR活動としましては、船を使っての海洋清掃活動、陸でも海岸、河川周辺の清掃を継続しております。これらの活動により、地域と共生し、豊かな水環境を守る取組を継続していきます。
これで製紙連合会からの報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問をお受けしたいと思います。挙手マークを押していただければと思います。いかがでしょうか。
田中先生、お願いいたします。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございます。それぞれの業界で取り組まれている内容は、非常によく分かりました。
それぞれの業界ごとに、処理について、幾つか御質問します。
まず、日化協からいただいた情報で、いろんな取組をしてきていますが、結局、老朽化や場所がないということで、なかなかレベルアップが難しいということでした。先ほど御説明いただいた中に、おそらく標準的には入っていないと思いますが、MBRの話が出ていました。MBRというのは、まさに今、既存の施設の更新スペースをうまく有効に使い、さらに処理レベルを上げるということが可能な技術として非常に期待されていますが、実際に今、化学工業協会の中ではどの程度そういうものが入っているのでしょうか。
もしあまり普及していないとなると、先ほど言われていた最後のほうの排水処理施設への技術的、経済的な配慮ということに、どのような配慮が求められようとしているのかということについて、コメントがいただければ有り難いです。
それから日本鉄鋼連盟です。ここも非常に興味深い話が出てきました。私はよく知らなかったのですが、CODの対策の中でオゾンや活性炭を使われてるケースがあると言われていたのですが、一体どれぐらいの割合、導入している例があるのかということが1点目です。
2点目は、地球環境の問題で、今、鉄鋼の特に製鉄のプロセスをグリーン化といいますか、GX化で、水素を使ったりというような新しい技術開発をされていると思いますが、そういうことを考えていったときに、そのような技術がもし導入されたとすると、CODや窒素の排出負荷については、今後どのような影響が出てくるかということについて教えていただきたいという点です。
最後に、紙パルプ、日本製紙連合会です。ここも非常に興味深かったです。確かにこの処理が有機物中心に処理するので、活性汚泥を使う場合に、当然、栄養が足りないので、N、Pを多分添加されているのだろうと思います。そうすると、先ほど言われた中で十分理解できなかったのが、緩和ということを言われていたのですが、これは例えば栄養塩の増加運転が求められたときに、結局、添加する費用を増やすのか、それともCODの緩和そのものをやってほしいという意味なのか、もしCODの緩和をやるとすると、N、Pについては増加はあまり期待できないと考えたらいいのか、このポイントをそれぞれの方からお聞きしたいです。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、日化協、鉄鋼、製紙の順番で御回答をお願いいたします。
【柳谷部長】 日化協、柳谷でございます。
MBRについて、実際のところはそれほど普及しているものではないと考えます。理由としましては、そもそもMBR自体が高価だということ、それから管理がそれなりにかかるということで、ランニングコスト等も含めると、なかなか普及するものではないのかなと考えております。そういう意味でも、先進技術でもありますので、その辺りの導入に関しては、補助金等や固定資産税の減免など、そのようなところでバックアップをしていただければ、こういうものも導入されていくのではないかと考えます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、鉄鋼連盟、いかがでしょうか。
【木森主査】 鉄鋼連盟の木森です。
まず活性炭吸着、オゾン処理の普及率についてです。申し訳ありませんが、導入している事業所があるというのは把握していますが、普及率までは把握していないという状況でございます。
次にGX、脱炭素の影響についてです。コークス炉について、還元剤としてのコークスの使用量が減ることになれば、コークス炉から発生する安水も減りますので、この安水に起因するCODや、窒素の排出量については減っていくということが想定されます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、製紙連合会ですね。
【小川環境管理部長】 製紙連合会からです。
先ほど日化協の方からの報告にもありましたが、やはり民間企業における栄養塩類のコントロールというのは非常に難しいのではないかと我々も感じております。メインの窒素源、りん源は活性汚泥の栄養というように我々は理解していますので、おっしゃるように、窒素、りんを上げようと思うと、栄養剤の過添加となりCODやSSも必然的に上がるのかなと考えておりますので、その辺りをどのような方法でコントロールするのがよいのかという方法論も含めて、今後、民間企業へフィードバックしていただきたいというのが我々の期待です。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございます。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございました。
【古米委員長】 それでは、珠坪委員、古川委員、三宮委員、小川委員の順番で、まず珠坪委員よりお願いいたします。
【珠坪専門委員】 御説明ありがとうございました。
日化協さん、日本製紙連合さんにお伺いします。日化協さんは、実際にその工場によって状況は違うと思いますが、なかなか季別運転をしっかり行うのが技術的には難しいというお話があった一方、製紙連合さんは、積極的に手法等がある程度検討されれば、栄養塩管理を行いたいというような御発言があったと思います。
恐らくこのような栄養塩管理は、水処理に人員がどの程度割けているかというところが重要かと思いますが、それぞれ日化協さんと日本製紙連合さんに、現在、こういった排水処理施設に十分な人員が割けているかどうか、その辺りの状況を伺えればと思います。
よろしくお願いします。
【古米委員長】 では、続けて、古川委員、お願いします。
【古川専門委員】 委員長、ありがとうございます。古川からは、一つコメントをさせていただきたいと思います。
日本化学工業協会様、日本鉄鋼連盟様、日本製紙連合協会様の御説明がありましたように、産業界は総量削減対策に最大限取り組んでいます。各業界で排水処理設備の更新や保全投資も同じ状況であり、日本化学工業協会では投資額も近年増加しているという御説明でした。また、これから追加対応によるGHG排出増加という、トレードオフが困難な課題にも取り組んでいます。このような状況下、栄養塩管理にも協力している事実もございますし、同時に森づくり、藻場、干潟の造成などを通じても、産業界は水環境の改善に貢献しています。
しかしながら、このような取組をする中でも、産業界の陸域からの負荷削減は共通して大きな課題であると考えております。陸域からの負荷削減やその他の要因が環境基準に与える効果などについては、これまで各方面で鋭意御検討いただいているところではございますが、引き続き科学的検証への御尽力をお願いいたします。実効的な対応には、この科学的検証を基に仕組みや運用の合理化について議論していくことが最も重要であると考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 コメント、ありがとうございました。
三宮委員、どうぞ。
【三宮専門委員】 国総研の三宮でございます。御説明ありがとうございました。
私からは、まず日本化学工業会さんにお伺いします。季節別運転、栄養塩類の管理、これに関して取り組まれている企業さんもおられるとを伺いました。どの地域で取り組まれているのか、また、どのぐらいの企業さんが取り組まれているのか、そこをお聞かせいただきたいと思いました。
それから、日本鉄鋼連盟さん。こちらはまだどちらかというと、引き続き、汚濁負荷物質の発生抑制という取組が中心だと感じたのですが、自治体の管理計画に基づく海域への計画的な窒素供給も書かれていました。これは栄養塩類の供給に関する自治体からの要望があるのかなと思いましたが、それに対してはどれぐらい応えられている企業さんがあるのか、お聞かせいただけたらと思いました。
以上でございます。
【古米委員長】 続いて、小川委員、どうぞ。
【小川専門委員】 どうも御説明ありがとうございます。
化学工業の資料のうち、スライド8ページを見せていただきますと、COD、TN、それからTPは低濃度に維持しているということです。ただ、表を見ますと、排出量の原単位が100万円当たりの排出量と示されているのですが、通常、原単位といった場合には、排水量当たりなどの形式で評価すると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、それぞれの団体から、御質問に対する御回答をお願いしたいと思います。
まず日化協からお願いします。
【柳谷部長】 それでは、日化協からまず季節別の運転についてです。化学の場合、業種がかなり多様でして、そのような栄養塩管理をできる企業とできない企業というのが、かなり多種多様だと認識しております。例えば肥料工場のようなところは比較的このようなことに協力的かと考えております。
また、古川委員からの陸域への負荷削減に関してということです。当然、負荷削減をやらないというわけでもなく、継続的に負荷削減はしていきながら、豊かな海ときれいな海の両立というようなところで、栄養塩管理等、協力できるところは協力していきたいと考えております。
それから、三宮委員からありました季節別の栄養塩管理についてです。化学業界、日化協の会員の中でアンケートを取ったところによりますと、主に兵庫県でそのような対応を取っているということで、瀬戸内海のところで対応しているのかなと。そのほかにも三重県など、動きはあるようですが、現状、兵庫県のところで把握している限りでは、3社が対応していると聞いております。
また、小川委員の8ページの原単位のお話です。我々は通常、金額ベースでの原単位をずっと統計として取っておりましたので、排水量を原単位とした負荷量は、今のところ、把握していないという状況でございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、鉄鋼連盟からお願いいたします。
【木森主査】 鉄鋼連盟の木森です。
三宮委員から御質問のありました、自治体の管理計画に基づく窒素供給への対応、どれくらい対応しているかということですが、瀬戸内海にある一つの事業所で対応しております。
【古米委員長】 三宮委員の、自治体のそういった動向に対して、鉄鋼で対応されている企業があるかどうか、という御質問はいかがでしょう、三宮委員。
【三宮専門委員】 御回答、ありがとうございました。
季節別運転に関する自治体からの要望が瀬戸内海であり、今のところ御対応いただいているところが1社あるということでよろしいですね。
【木森主査】 はい、そのとおりです。
【三宮専門委員】 分かりました。ありがとうございました。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、大野委員、お願いしたいと思いますが、簡単に、端的にお願いできればと思います。
【大野専門委員】 はい、分かりました。
日化協様にお聞きします。先ほどの排出原単位で、100万円当たりの処理できる排出量ということで8ページに記載があります。第7次からずっと見ていきますと、どんどん下がっていますが、これは恐らく保全費用の増加ということで、老朽化への対応や新増設のコストアップというところで下がっているのだと思います。今後、さらに原単位が下がっていく傾向にあるのか。つまり業界として、この排水処理の負荷というのはもっと上がっていく傾向にあるのか、それとも、もうこれ以上は上がらないのかといったところを一つお伺いしたいと思います。
もう一つです。次は日本鉄鋼連盟様です。パワーポイントの6ページに、第5次、第6次にアルカリストリッピング法を導入され、確実に5次、6次で窒素が下がっているというデータをお示しいただいていますが、9ページの伊勢湾の結果を見ますと、この5次など全窒素が上がっていたり、それ以降あまり下がっていないような傾向があります。東京湾や瀬戸内海は下がっていますが、この原因みたいなものが分かればお教えいただければと思います。
以上でございます。
【古米委員長】 いかがでしょうか。日化協と、それから、原単位の今後の傾向です。
【柳谷部長】 今後の傾向についてです。実際、今、下げる方向ではなるべく努力はしているのですが、今後、設備の更新、新しい活性汚泥処理設備を建てるなど、そういうことになってきますと、規模にもよりますが、20億円~30億円というお金がかかってくる場合もございますので、そういう場合、この原単位というのはかなり上がってくる可能性はあると認識しております。
【大野専門委員】 すみません。この原単位の見方ですが、100万円当たりで処理できるCODの量という意味ではないのでしょうか。これが下がるということは、処理できる量が少なくなるという意味だと私は思ったのですが。
【古米委員長】 排出源単位ですので、その製品を作るためにどれだけその排出量があったという値ですが。
【大野専門委員】 すみません。では、勘違いでした。
【古米委員長】 それでは、鉄鋼連盟から、9ページの伊勢湾でTNが増加しているところについて、いかがでしょうか。
【木森主査】 日本鉄鋼連盟です。規制以前のデータは1999年のデータを載せていますが、ちょうどこの年に、伊勢湾にある一つの事業所で生産量が落ちていたという状況がありましたので、そういった影響が出ているのではないかと考えております。
【古米委員長】 よろしいでしょうか。
【大野専門委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【古米委員長】 それでは、この3件についてを終了させていただいて、次に移らせていただきます。
次は、東京湾の関係都県として、東京都、千葉県から御説明をお願いしたいと思います。
先ほどと同じように、2件続けて説明して、その後、質疑となります。
まず資料5について、東京都より御説明をお願いします。
【大久保課長】 東京都環境局自然環境部の大久保と申します。
私からは、東京都における総量削減の現状と課題について御説明をさせていただきます。
2ページをお願いします。事前にいただいておりますヒアリング項目について、御覧の5点に整理して、本日、御説明をさせていただきます。
3ページをお願いします。最初に、総量削減指導による汚濁負荷量の推移についての御説明です。
4ページをお願いいたします。東京都における負荷量削減の全体像でございます。第1次総量削減方針、1979年頃の東京都内からの東京湾への負荷量は、BODで日量約290t、CODで日量約210tでございましたが、2022年には、それぞれ約29t、約42tに削減をしております。また、全窒素、全りんにつきましても、資料記載のとおり、削減が達成されているような状況でございます。また、令和5年度末時点での汚水処理の人口普及率が99.9%となっておりまして、大幅な負荷量削減が図られてきている状況でございます。
5ページをお願いします。こちらは、東京都以外を含めた東京湾への1日当たりのCODの負荷量についての推移でございます。第1次総量削減で約480tから150tまで削減をしておりまして、このうち東京都の負荷量につきましては、約80tから約46tに削減をされている状況でございます。
6ページをお願いします。こちらは全窒素、全りんでございますが、こちらも御覧のとおり、削減傾向の推移が続いている状況でございます。
7ページをお願いします。東京都における事業場指導の状況についてでございます。他の自治体様と同様と思われますが、立入検査等を行い、規制基準の遵守を求めるとともに、基準超過に対する指導を行っております。また、一般家庭等における生活排水対策の普及や啓発活動も行っております。
8ページをお願いいたします。次に、東京湾の現況について御説明をいたします。
9ページをお願いいたします。こちらは東京湾の流域をスライド左側に示したものでございます。一部地域を除きまして、ほぼ全域が総量規制指定地域となってございます。スライドの右側につきましては、東京都内湾の水質測定地点を示したものでございます。
10ページをお願いいたします。こちらは東京湾の水質の経年変化でございますが、近年、横ばいの傾向にございます。全窒素については1L当たり1mg程度、全りんにつきましては0.09mg前後で推移しておりまして、環境基準値前後の値となってございます。
11ページをお願いします。東京都内湾の赤潮の発生状況についてです。依然としまして夏季の赤潮発生状況に大きな変化が見られないという状況でして、経年的に言いますと、発生回数としては年間15~20回程度、発生日数としては70~90日程度で推移しているという状況でございます。
12ページをお願いします。赤潮の発生規模を長期変化で見てみますと、閉鎖性の高い東京港内で部分的に発生する回数が増加傾向にある一方で、内湾で広く発生します赤潮については、発生回数が減少しているということが見てとれるグラフになってございます。
13ページをお願いします。こちらは、全窒素、全りんの比を見たものでございまして、レッドフィールド比よりも高い値、近年は10~11程度で推移をしております。このことから、りん制限寄りの推移と考えております。
14ページをお願いいたします。東京都内湾の水生生物の生息状況についてです。都の環境局では、昭和61年から水生生物調査を継続的に実施しております。グラフは水深25m程度の地点での成魚調査の経年変化でございます。折れ線グラフが底層DO、棒グラフが魚類の出現個体数を示しておりまして、夏季は底層DOが2mg/L以下の貧酸素状態になることが多く、回復が不十分な秋季を含めまして、魚類がほとんど採集されないような状況が、長期的に続いているという状況でございます。
15ページをお願いします。こちらは、底生生物の状況を示したものでございます。左側の春季に比べまして、夏季は出現種数が少なくなる傾向にございますが、特に水深が11m程度の内湾部におきましては、夏季にほとんど生物が確認できない状況になっています。一方で、浅海部、河口部、干潟部につきましては、その減少度合いが少ないことが見てとれるかと思います。
16ページをお願いします。こちらは生物種類数の底層DOの季節変動を、先ほどの地点で見たものでございます。9月の調査では、下層の溶存酸素量が低く、生物種類数が激減する状況になっております。9月の写真では、貧酸素耐性の高いホンビノスガイ以外は、いずれも死骸や骨という状況でございます。貧酸素水塊の解消から一定程度経過した2月の調査では、再び多くの種類が確認されてございます。毎年このようなサイクルを繰り返していることから、生物の生息域の確保としては課題が残っているような状況です。
17ページをお願いします。こちらは、東京湾の底層DOの平面分布についての長期的推移を示したものでございます。赤色で示す貧酸素域は、2000年~2010年頃にかけて、湾奥部の東側で縮小する傾向が認められたのですが、その後、同じ海域では再び拡大傾向がございます。この原因としましては、表層水温の上昇などにより、成層構造が強まって、表層のDOが下層に供給されにくくなったことや、プランクトン、バクテリア等の生物活性の変化などが考えられると思っております。こちらに関しましては、東京都の環境科学研究所において調査研究を行っているところでございます。
18ページをお願いします。続きまして、赤潮の発生と貧酸素水塊の発生状況をお示ししたものでございます。6月~10月までの間には、赤色で示すように、底層に厚い貧酸素水塊が形成されていることが確認できるかと思います。
19ページをお願いします。東京湾では、流入する河川の感潮域においても、夏季を中心に魚類のへい死が発生してございます。こちらは、貧酸素水塊が遡上することに加えまして、降雨による底泥の巻き上げなどの要因が重なって、水生生物の生息域としては適さない酸素濃度となる現象が、現在も引き続き見られているという状況にございます。
20ページをお願いします。次からは、海岸整備等による生物生息域の創出・多様な主体との連携についてでございます。
21ページをお願いします。東京都内湾の水面利用の状況についてです。漁業権につきましては、昭和37年に内水面漁業以外の内湾漁業権が廃止されてございます。自由漁業からの水揚げ量については、資料に記載のとおりとなっております。漁業以外の産業利用として特徴的なものとしては、物流施設としての利用がございます。また、お台場海浜公園や葛西海浜公園など、臨海部に多くの海浜公園が整備されている状況でございます。
22ページをお願いします。生物の生息環境の保全・再生の取組としましては、既存の海浜・浅場を活用しまして、多様な生物生息環境のネットワーク形成をすることを目指しております。また、水生生物に配慮した護岸構造にすることなど、生物の生息環境の保全に努めているところでございます。写真の右下の葛西海浜公園の干潟は、ラムサール条約湿地にも登録されているところでございます。
23ページをお願いします。こちらは、底質の改善に寄与する汚泥浚渫事業についてでございます。昭和47年から、資料でお示ししているこちらの範囲で浚渫を実施しています。
24ページをお願いします。次に、情報発信、普及・啓発の取組です。都で実施しております、水質検査の実測値や基準超過の状況などを一覧できるような資料を掲載しているほか、25ページにございますように、赤潮の発生状況や、九都県市で連携して調査を行うなど、普及啓発の取組も行っているところでございます。
26ページにございますのは多様な主体との連携です。東京湾大感謝祭への出展や、広域会議への参画なども行っております。
27ページをお願いします。こちらは下水処理の高度化、合流改善の取組についてです。
28ページをお願いします。東京都におきましては、下水処理水の水質改善のために、高度処理・準高度処理施設の導入を進めております。標準活性汚泥法と比較した準高度処理施設及び高度処理の特徴については、御覧のとおりとなっております。
29ページと30ページが、区部と多摩地域の高度処理化の状況を示したものでして、どちらの地域におきましても、着実に取組を進めている状況でございます。
31ページをお願いします。こちらは合流式下水道の改善対策でございます。下水道法施行令の雨天時放流水質基準の達成に必要な貯留施設等の整備につきましては、令和5年度末に完了したという状況です。中長期的な目標としての貯留量につきましては、280万㎥となってございます。
最後に、取組を進めるに当たっての課題でございます。
33ページをお願いします。大きく3点まとめております。
一つ目は、負荷量の削減に対する水質改善の応答性についてです。ここまで御説明しましたとおり、負荷量の削減というのは進んできてはいますが、やはり他の閉鎖性水域と経年的に比較しますと、COD、窒素、りんは依然として高い濃度レベルにあると認識しております。東京湾の水質、赤潮の発生状況に関してはまだ改善途上のフェーズにあると思っておりまして、負荷量削減と水質改善の応答性を含めまして、継続的な把握が必要と考えてございます。
2点目は、雨天時放流水の対策と負荷量の関係についてです。合流式下水道の改善が推進されることで、雨天時放流回数が減少しているということで、負荷量は着実に削減されているところではありますが、現状の総量削減制度では、その効果が直接は反映できないという状況で、見かけ上はこの下水処理水が増えてしまいますので、負荷量の増として算定されるということがございます。こういったことから、合流改善の効果を適切に評価できるような手法が必要であるという認識を持っております。
3点目としましては、底層DOの環境基準と総量削減の関係についてです。新たに底層DOの環境基準が導入されております。生物の生息の指標としては、直接的に評価できるものであるのですが、総量削減との関係がなかなか見えづらいとも感じております。そのため、底層DOの環境基準達成に向けた取組がこれから強く求められると思いますが、水域の水質モニタリングと汚濁負荷の削減に関して、こちらは長期的に把握をしていくことが必要だろうという認識を持ってございます。
駆け足ではございましたが、御説明は以上です。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、資料6について、千葉県からお願いいたします。
【佐久間副課長】 千葉県環境生活部水質保全課の佐久間でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、千葉県における汚濁負荷対策の取組状況について説明させていただきます。
本県では、令和4年10月に策定しました第9次の計画により、各種施策に取り組んでいるところでございます。
2ページを御覧ください。千葉県の東京湾における水質の現状を御説明いたします。ここでは、東京湾における水域類型と環境基準値をお示ししております。この辺りは皆様、御承知いただいていると思いますので、詳細の説明は省略させていただきます。
3ページ目を御覧ください。千葉県における環境基準達成状況の推移を御説明いたします。まずCODについて、左側のグラフが東京湾の環境基準達成率の推移となります。環境基準の達成率は40%~60%の間で推移しており、ほぼ横ばいの状況でございます。右側のグラフは水域ごとの75%値を示したものでございます。上から、A類型、B類型、C類型となっております。C類型では、全ての水域で環境基準を達成しておりますが、A類型、B類型では環境基準を超える地点が多くなっております。いずれの類型においても、経年的に見て、ほぼ横ばいで推移しているような状況でございます。
4ページ目を御覧ください。全窒素について御説明いたします。左側のグラフに示すとおり、東京湾の環境基準の達成率は年々上昇しており、近年では100%を維持しております。右側は年平均値のグラフでございますが、長期的な傾向としては、Ⅱ類型、Ⅲ類型、Ⅳ類型のいずれにおきましても、低下傾向となっております。
5ページ目を御覧ください。全りんについての環境基準達成率の状況を御説明します。令和元年以降は100%が続いておりましたが、令和5年度は1か所で環境基準が未達成となったというところでございます。右側のグラフは年平均値の推移となっております。こちらは長期的には低下傾向でございますが、近年は横ばいになっているような状況でございます。
6ページ目を御覧ください。こちらは赤潮・青潮の発生状況でございます。赤潮の発生状況は上段のグラフとなります。赤潮は、年間を通じて、船舶による海域調査により把握をしております。令和5年度の状況は、延べ52日間調査しまして、そのうち17日で赤潮が確認されたということで、割合は33%となっております。その下が青潮の発生状況になります。青潮は港湾関係課や漁業関係課、臨海部に位置する市町村環境保全担当課から情報を収集しております。過去から継続して発生しており、令和5年度は、4回、青潮の発生を確認している状況でございます。
7ページ目を御覧ください。東京湾に流入する汚濁負荷量の推移を御説明させていただきます。千葉県では、総量削減計画を策定し、工場排水の総量規制や下水道整備等、各種施策を進めてきたところでございます。その結果、東京湾に流入するCOD、窒素含有量、りん含有量、いずれの指定項目も、グラフの一番左側にあります昭和59年度と比較しまして、5割程度削減しているような状況でございます。三つに色分けしているどのカテゴリも、負荷量の削減が進んでおります。特に負荷量の大半を占める白色の部分の生活排水系の削減が大きいのですが、近年の削減量は微減という形で推移しているところでございます。
以上が水質の現状になります。
8ページ目を御覧ください。次に、現在の第9次総量削減計画に係る取組を御説明いたします。まず生活排水対策です。県では千葉県全県域汚水適正処理構想を策定し、下水道や集落排水、合併処理浄化槽等の各汚水処理施設の整備を推進しております。下水道については、東京湾に流入する流域下水道は2か所あり、そのうちの一つである江戸川左岸流域下水道では、県北西部の東京湾流域にある8市からの汚水を処理しております。この地区の下水量の増加に対応するため、既存の終末処理場に加え、新たに江戸川第一終末処理場の整備を行っており、第1系列が令和3年3月から供用を開始し、現在は水処理施設の増設を進めているところでございます。江戸川第一終末処理場や花見川第二終末処理場などにおいては、東京湾における窒素やりん等に起因した富栄養化による水質汚濁を防止するため、これらを効率的に除去する高度処理を行っているところでございます。
9ページ目を御覧ください。浄化槽について御説明いたします。県では、昭和62年度から、国・市町村と協調して、合併処理浄化槽設置促進事業を開始いたしました。その後も、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換時の撤去費の上乗せ補助や、転換時の補助対象を宅内配管工事費に追加したほか、閉鎖性水域の流域において窒素除去能力の高いN10型の設置に対する上乗せ補助を新設するなど、補助制度を拡充してまいりました。また、浄化槽の適切な維持管理を行っていただくため、浄化槽設置者への啓発も継続して行っております。特に千葉県は、浄化槽の法定検査受検率が低いという課題があることから、近年は法定検査を受検していない者に対する指導にも力を入れているところでございます。
10ページを御覧ください。産業排水対策についての御説明でございます。東京湾に流入する指定地域内の総量規制対象事業場に対し、法に基づく定期的な立入検査を実施し、基準の適合状況の確認や指導等を行っております。また、本県では、企業、県、地元市の三者間で環境の保全に関する協定を締結しまして、法令よりも厳しい排出水の濃度や負荷量の基準を設定しております。この協定は、大規模な工場群が立地してコンビナートを構成する千葉市から富津市に至る東京湾沿岸部を対象地域とし、一定規模以上の工場を対象としております。これらの取組の結果、協定工場から排出されるそれぞれの負荷量については、グラフに示すとおり、順調に削減が進み、昨今は横ばいの状況となっております。
11ページを御覧ください。その他の発生源対策をまとめております。農地に由来する汚濁負荷量の削減を図るため、緑肥の活用を推進しています。また、畜産排水対策としては、家畜排せつ物の適正処理や堆肥の有効活用を推進しております。具体的には、処理施設整備の経費の補助をするとともに、県内の畜産農家が生産する家畜ふん堆肥の情報をホームページに掲載し、閲覧できるようにすることで利用する人とのマッチングをしております。さらに、養殖漁場の改善として、養殖場の環境が良好に保たれているか調査し、適正な給餌、適正密度での飼育などの技術的指導を行っている状況でございます。
12ページ目を御覧ください。ここからは総合的な水環境の改善を図るための取組を一部紹介いたします。浦安市から千葉市地先の海域には、埋立用材として水底土砂を採取した跡が大規模な深堀部として残っております。深堀部は水深25m程度と、周辺の海底よりも著しく深く、周囲が急傾斜であるため、漁業の操業に支障が生じるなど、また夏季には水中の酸素が欠乏し、水産生物が生育できないなど、漁場としての機能の低下も起こっております。本県では、深堀部の漁場機能を回復するため、海上保安部や漁業関係者と調整を図りつつ、港湾工事等で発生した良質な水底土砂を用材として活用して、昭和56年度から深堀部の埋め戻しを行っております。また、東京湾の湾内の埋立開発等の残さい及び港湾活動に伴う廃棄物の漁業系以外の海底障害物が数多く存在し、漁業操業に支障を来していることから、漁具により障害物の撤去をするほか、大きな海底障害物の確認調査を行い、さらにその除去を行っております。
13ページ目を御覧ください。藻場・干潟の保全活動として、漁業者などが実施する活動に対して支援を行っております。例としては、アサリ等を食害するツメタガイの除去や、藻場のための食害防除網の設置、母藻の投入などがあります。この右側の写真は、除去したツメタガイを網に入れたものです。また、千葉県水産総合研究センターでは、大学やその他の研究機関と連携しながら、貧酸素水塊対策や栄養塩類等に関する研究を行っております。
14ページ目を御覧ください。情報発信として、県では、漁業者など共同で水質の観測を実施しております。その他、関係機関から情報の提供を受けながら、県ホームページで、東京湾貧酸素水塊分布予測システムにより分布状況を推定し、その画像を公開するとともに、関係機関と連携して貧酸素水塊速報を発行しています。また、啓発活動としては、県内の環境イベントである「エコメッセinちば」や「いちはら環境フェスタ」に出展し、赤潮や青潮の発生に関すること、生き物による水質浄化、東京湾のプランクトンなどについて、県民に分かりやすく理解してもらえるような活動を行っております。
最後の15ページ目に、今後の課題等を整理いたしました。近年の水質の状況として、生活産業排水対策が進み、汚濁負荷削減が進んでいるものの、横ばいの状況となっております。特に、CODの環境基準の達成率は概ね40%~60%で推移している状況にありますが、依然として赤潮・青潮の発生も見られるため、引き続き、汚濁負荷を低減する対策が必要な状況にあると認識しております。また、一部海域では栄養塩類の不足を指摘する声もございます。引き続き、慎重な検討を進めていく必要があると考えております。
千葉県からの説明は以上となります。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して、御意見、御質問をお受けしたいと思います。
皆様、いかがでしょうか。
田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございます。
東京都に1件、それから千葉県に1件、質問です。
東京都の一番最後、33ページに述べられた雨天時の放流水対策と負荷量の関係のところで、先ほどコメントされた総量規制制度の評価上の課題についてです。具体的に言うと、合流対策で、吐口から現在出ている負荷量が、総量規制では、特定施設ではないのでカウントされていない。一方で、下水処理対策したものが全て下水処理場に送られ、処理されて削減されているが、そこから出てくる負荷量については、特定施設になっているので、かなり雨天時も含めて数字が出ている。したがって、合流式の吐口から出てくる負荷量をきちんと推定してくださいと。それは、もう既に分流式の雨水については、おそらく原単位か何かで出ているのだけど、そういうことが東京都では算定が可能なので、そういう形をやってくださいという理解でいいですか、というのが1点目の質問です。
それからもう一点は、東京都の河川についても、底層、魚のへい死の問題がかなり強調されていましたが、ここの河川の底質の巻上げの由来の底質というのは、どのようなことを考えられているのでしょうか。例えば雨天時の下水道関係の排水、あるいは、あるのかどうか存じ上げませんが、廃棄物の処分場のような、雨天時の影響を受けているような陸域由来のものをイメージされているのか。それとも、東京湾の海域側での栄養塩がまだ過剰で、そこから入ってくる栄養塩で生産された藻類が蓄積している部分がかなりあるので、それ由来が多いのか。その辺りのイメージが分からなかったので、教えていただきたいという点です。
それから、千葉県は15ページ、今後の課題の四つ目のところです。説明があまり具体的になかったので、細かい点を教えてください。ノリ養殖漁場を含む一部の海域での栄養塩類不足ということが書かれていますが、一体どの辺りの水域で、何の栄養塩がどの程度不足していて、そういうことをリクエストする声がかなり地域で起こっているのかどうか、この辺について情報を下さい。
以上です。
【古米委員長】 それでは、東京都、千葉県の順番でお願いします。
【大久保課長】 御質問ありがとうございます。2件、御質問をいただきました。
1件目、雨天時放流水の対策に関してですが、課題認識としては、御指摘いただいたとおりでございます。合流式下水道から出てくる排水の算定をというよりは、現在の総量削減制度の中ではアウトカウントになっている雨天時の放流水を、しっかり汚濁負荷としてカウントして、その削減効果が見えるようにしていく必要があるのではないかというところに課題意識を持っております。
もう一件、河川の魚のへい死に関してです。原因に関しましては、様々な原因が複合的に起きているのかと思っております。御指摘のありましたような陸由来のものもございますし、この辺りは感潮域ですので、資料に記載してありますように、海域から低酸素の水塊が定期的に遡上してきますので、そういった影響もあるのではないかと考えてございます。
【田中臨時委員】 確認ですが、最初のほうに言われていたのは、合流の吐口からの負荷量が、現在、総量規制の中の負荷量として算定されていない一方で、下水処理場は、出口側はモニタリングされているので、そこからはカウントされていて、要するにもともと余分に入ってくる量がカウントできていないので、それをカウントすべきだという意見ですよね。そういう理解でいいですか。
【大久保課長】 現在、既にもう雨天時の放流水という汚濁負荷がありますが、それは今の制度の中では見えていない負荷量として存在していて、それが実際に合流改善をすると見える形に移行してきますので、その辺りの見えない動きというのが、今の色々と取組を進めていく中で、その改善効果がどうしても見えにくくなってしまっていると。
【古米委員長】 要は、下水道側は水質改善のための努力はされているが、もともとのCSOの汚濁負荷量が算定されていないので、それを削減した効果が具体的には現れないので、それをしっかりと表していきたいという御発言かと思いました。
【田中臨時委員】 ということですよね。それであれば理解します。
【大久保課長】 ありがとうございます。
【古米委員長】 それでは、千葉県、いかがでしょうか。ノリ養殖関連です。
【佐久間副課長】 千葉県でございます。
先ほどのノリ養殖場を含む一部海域の栄養塩不足の指摘ということでございますが、これにつきましては、漁業関係者からそういった声をいただいていたというところでございます。具体的に何の栄養分が足りないのかといったところまでの具体的な話というのは今確認できておりませんので、お時間をいただいて確認をさせていただきたいと思います。申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
【田中臨時委員】 場所を含めて、また。
【古米委員長】 追加でお願いしたいと。
【田中臨時委員】 はい、よろしくお願いします。
【古米委員長】 それでは、御質問を3名ずつに分けて、続けてお願いしたいと思います。まず、大久保委員、風間委員、珠坪委員の3名で御質問をお願いします。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
東京都にお伺いいたします。先ほどの田中委員の御質問とも関連するのですが、17ページで、貧酸素域の増加の原因の一つとして、海水温の上昇が考えられるのではないかとおっしゃったかと思います。そうだといたしますと、海水温の上昇の程度、日本沿岸、いろいろ格差があるようでございますが、どのぐらいの海水温の上昇が見られるのかという、もしデータがありましたら、お伺いしたいと思います。
それと併せまして、19ページ目の魚のへい死も、貝類等も含めまして、海水温上昇との関係もあり得るのかという点についてお伺いできればと思います。
【古米委員長】 風間委員、どうぞ。
【風間専門委員】 ありがとうございます。風間です。
東京都さんに、2点、お伺いいたします。
一つは、10ページです。近年、水質は横ばいということですが、CODは平成26年、2010年頃から上昇していませんでしょうか。東京湾では、2010年頃からCODの上昇が起こっていたという説があって、私も確認しているのですが。それから、全窒素も平成24年に大きく低下し、その後、横ばいではないでしょうか。この時期は、29ページの除去率の上昇と関係しているように見えるのですが、いかがでしょうか。
もう一つは、33ページの課題の部分です。多くの施策事項を短時間に挙げていただき、ありがとうございました。各施策の評価についてお伺いします。自治体の環境部署として検討された結果の苦しみを示されたことなのでしょうが、施策に対して実施した結果のモニタリングへの反映について、努力の結果の一端でも御紹介いただけないでしょうか。ここまでやったが、はっきり言えなかったというような話です。
例えば、下水道の栄養塩の除去率が上がったということですが、その時期と環境、水質の関係、それからその後の動きとして、全窒素だけではなくて、無機体窒素、有機体窒素の変化、さらに赤潮の発生状況で、規模の変化だけではなく、質的変化はなかったのか。生き物の変化は、環境との対応が一時的には把握し難いですが、何か長期的変化はなかったのでしょうか。また、浚渫した事後の水質、生物変化など、事業部署ではB/Cという費用便益分析がなされているようですが、各部署の施策効果のフォローを把握されていて、それでも環境への評価が難しいのでありましょうか。
何か、一端でも御紹介いただけないかというお願いです。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 それでは、珠坪委員、どうぞ。
【珠坪専門委員】 18ページの東京湾における貧酸素水塊の発生、特に夏から秋にかけて底層DOが低下して、無生物区が発生するという問題に関してです。先ほどその表層水温が高くなることによって鉛直混合が起きにくいという話がありました。一方、恐らく底泥による酸素消費というのは非常に大きいと考えられますが、底泥の分布状況や、底泥の酸素要求量みたいなデータの取得はされているかについて伺いたいと思います。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございます。
それでは、3名の委員の方々の御質問に対して、東京都からお願いしたいと思います。
【大久保課長】 御質問、ありがとうございます。
まず、大久保委員からの御質問です。まず、海水温についてどのくらいの上昇が見られるかデータがあるかという御質問だったかと思います。今、定量的なデータを、持ち合わせておりませんので、申し訳ございません、この場でお答えできるものがないという状況でございます。
【東京都】 東京都の水環境課から御説明します。
17ページの温度の話ですが、季節の影響等で、そういったところまでの関係は分からないといったところがございます。
風間委員から御質問がありました10ページですが、モニタリングはどれが横ばいかということがなかなか判断しづらく、また、さらに水質だけではなく、生物相への影響というのはなかなか見方が難しいなといったところが実感としてございます。
また、窒素の形態別など、専門性の高い分野ですので、引き続き、東京都環境科学研究所などと連携して解析を進めていきたいと考えております。
よろしいでしょうか。
【古米委員長】 あと、珠坪委員から、底泥の酸素消費に関して、何かデータ等をお持ちでしょうかというのは、いかがでしょうか。
【東京都】 今の御質問についても、酸素消費のスピードについて、今、環境科学研究所と基礎研究を開始したところでございます。また、総量削減の制度を達成できるように、引き続き取組を進めていきたいと考えております。
【古米委員長】 どうもありがとうございます。
委員の方々、よろしいでしょうか。
それでは、続いて、3名、黒木委員、小川委員、和木委員の順番でお願いします。
【黒木専門委員】 ありがとうございます。黒木です。
東京都様への御質問になります。貧酸素の海域が、一旦減ったものの、近年、拡大傾向にあるという中で、生物調査の結果もお示しいただいて、生息域として課題があるというようなお話でございました。海域の豊かさの指標の一つでもあるかなと思うのですが、水揚げ量については、21ページにお示しいただきました、217tという数字でございますが、これは比較するものがないので、多いか少ないかというのは分かりませんでした。例えば貧酸素の拡大に伴って減っているなど、この数字がどういうレベルなのかという点について、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【古米委員長】 小川委員、どうぞ。
【小川専門委員】 どうもありがとうございます。
東京都に御質問したいと思います。NPは低下しておりますが、赤潮の発生件数というのがほとんど変化、減少していないという、その要因として、今後さらに規制を強めていくのでしょうか、特に特定施設以外の施設に対しても規制を強化していくのでしょうか。
また、強化するに当たって、13ページにあります、NとPとのバランスの問題だと御指摘されていますので、そういうような調整も含めた形で、今後、対策を進めていくのでしょうか。
以上です。よろしくお願いします。
【古米委員長】 和木委員、どうぞ。
【和木専門委員】 農研機構の和木です。
千葉県さんに質問がございます。11ページ、その他の発生源対策ということで、農地からの負荷を削減するために対策をされているということですが、まず緑肥作物の活用につきまして、この推進は何か具体的に、ホームページでの情報提供や、もしくは何か補助のようなものを行うといった活動をされているのかどうかを知りたいと思います。
また、家畜排せつ物対策ということで、畜産農家の堆肥情報をホームページに掲載されたということですが、この活動によって、実際、堆肥の利用が促進されたかどうか、そういった手応えや、何か情報があればお教えいただきたいと思いました。
以上です。
【古米委員長】 それでは、3名の委員からの御質問に対して、まず東京都、その後、千葉県でお願いしたいと思います。
【大久保課長】 どうもありがとうございます。
黒木委員からの御質問で、21ページ、水揚げ量217tの評価の御質問をいただいたかと思います。こちらで水揚げ量の推移等のデータを持ち合わせていなくて申し訳ございません。ただ、同じスライドにありますように、東京湾に関しては、漁業権を既に廃止しておりますので、この量自体が自由漁業からの水揚げ量のみということだけ申し添えさせていただきます。
小川委員から、特定施設以外のこれからの規制強化をどう考えられているかという御質問だったかと思います。こちらについては、現時点ではそういった考え等はまだ持ってはいないという状況にございます。13ページにあります、窒素、りんとのバランスに関して、現在、りん制限が強いという状況ではありますが、このバランスに関しては、これからの削減効果を含めて、モニタリングしながら状況を見て対策を考えていく、まだその前の段階かなというような課題認識でございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、千葉県、いかがでしょうか。
【佐久間副課長】 千葉県でございます。
11ページの緑肥の関係でございます。こちらについては、ホームページ等で、研究等の状況について公表等をしているところでございます。補助金の有無につきましては、担当する部署が異なる関係で、今、確認ができない状況でございます。また、先ほどの畜産の関係でございますが、堆肥の利用促進の手応え等々、この辺りも確認させていただきたいと思いますので、改めて、別の形で、資料等で説明させていただければと思います。御容赦ください。
【古米委員長】 それでは、追加の情報提供をいただくということでお願いしたいと思います。
委員の方々、よろしいでしょうか。
(はい)
【古米委員長】 それでは、次に移らせていただきます。
続いて、伊勢湾の関係県として、愛知県、三重県からの御説明をお願いします。2件続けて御説明いただいた後、質疑です。
資料7について、愛知県よりお願いいたします。
【戸田課長】 愛知県、水大気環境課の戸田です。
2ページをお願いします。まず、私から愛知県における水質総量削減の概要、水質の現状と課題について、続きまして、当県の水産課から、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方等を検討した愛知県栄養塩管理検討会議の結果について御説明をします。
3ページをお願いします。愛知県における総量削減に係る主な施策を示しております。陸域における汚濁負荷量の削減については、法規制対象の約1,500事業所に対して排出規制を行っております。生活排水対策では、下水道整備、合併処理浄化槽設置などを促進し、2023年度で汚水処理人口普及率は93.2%、下水道普及率は81.5%となっています。また、未規制事業場等へも汚濁負荷量の削減の指導を行っております。
2の海域における環境改善事業としては、干潟・浅場・藻場の再生、覆砂、浚渫、深掘跡の埋戻し、それから、水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験を実施しております。社会実験については、後ほど検討会議の結果について御説明をいたします。
3の啓発事業については、三河湾で地域における環境再生の機運を高めるため、啓発イベント等を実施しております。
4ページをお願いします。COD、窒素、りんの水質総量削減の実績です。長期的に見ますと、汚濁負荷量の削減が進んでおります。第9次計画の目標年度である2024年度は現在集計中でございますが、2020年度~2023年度まで、1日当たり、COD70t、窒素55t、りん4.4tの削減目標量を達成している状況となっております。
5ページをお願いします。干潟・浅場の造成については、国によるシーブルー事業と、その後の県独自事業の実施によりまして、これまで約720haの造成がされております。
6ページを飛ばしまして、7ページをお願いいたします。水質等の現状と課題です。グラフは環境基準の達成率の経年変化を示しています。長期的には改善傾向ですが、最近10年間を見ますと、赤で示しました河川のBODは90%以上、それから青、緑ですが、全窒素、全りんについては100%を達成した年がある一方で、オレンジのCODについては45~64%で横ばいの状況にあります。
8ページをお願いします。伊勢湾、三河湾における水質の推移です。最近10年間では、下のグラフの全窒素、全りんの濃度は概ね横ばいですが、上のグラフのCODについては、赤の伊勢湾で上昇傾向が若干見られます。
9ページをお願いします。海域における類型指定がされた水域ごとの全窒素、全りんの濃度の推移です。上が伊勢湾、下が三河湾のそれぞれ全窒素、全りんのグラフとなっております。全ての水域で、長期的に濃度は減少傾向となっております。現状の課題として、特に右上の図で、緑色で示したⅡ類型の水域におきまして、ノリ、アサリにとって必要な栄養塩類である窒素、りんの不足が指摘されております。
10ページをお願いします。貧酸素水塊の発生状況です。伊勢湾、三河湾では、湾奥から湾奥部にかけて、毎年、夏季に貧酸素化している状況です。
11ページをお願いします。赤潮・苦潮の発生状況です。赤潮は、伊勢湾、三河湾とも湾奥で発生しやすく、苦潮は三河湾の湾奥で起こりやすい状況となっております。折れ線グラフで示す赤潮の延べ日数は、長期的には減少傾向ですが、増加傾向となっている期間もあります。青い棒グラフで示す苦潮の発生件数は、年により変動が大きい状況となっております。
【日比野課長補佐】 引き続き、愛知県栄養塩管理検討会議の結果につきまして、愛知県水産課の日比野から御説明いたします。
13ページをお願いいたします。伊勢湾、三河湾では流入負荷削減が行われまして、いま説明があったとおり、海域での窒素・りんが減少しております。本県漁業にとって、ノリ・アサリは非常に重要な漁業です。栄養塩不足はノリの品質や成長に直結し、養殖ノリの色があせてしまう色落ちや、それに伴う生産終了の早期化などが課題となっております。また、植物プランクトンは海域の生物生産を支える基盤であり、二枚貝の餌です。アサリにおいては餌の減少によってエネルギー収支のバランスが崩れ、肥満度の低下により、生き残れない状況が発生し、漁獲量が急減するといった、栄養塩を起点としたプロセスが近年の研究で明らかになっております。
14ページをお願いします。このような変化を現場で間近に見てきたのは漁業者さんです。右下にありますが、2017年に愛知県漁連から知事宛てに栄養塩管理の要望があり、その対応の一環として、下水処理場による栄養塩供給に取り組んでまいりました。特に②の水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験では、総量規制基準の改正により、窒素、りんをそれまでの基準の2倍に緩和して増加放流を実施しました。また、伊勢湾側でも、関係市の御協力により、りん濃度増加運転を実施しております。
15ページをお願いします。愛知県では、2022年から愛知県栄養塩管理検討会議を設置いたしまして、2年間の社会実験の結果の検証や、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方について、検討をしてまいりました。学識経験者をはじめ、関係部局が一堂に会して議論を重ねまして、2025年2月に報告書を公表しております。本日御説明する内容はその報告書の概要でございます。
16ページをお願いします。社会実験の結果でございます。環境モニタリングをしておりまして、中断条件に該当するような環境への悪影響は確認はされませんでした。また、漁業については、ノリの色は概ね良好であり、色落ちが軽減されたと考えられました。アサリにつきましても、漁獲量減少の原因でありました秋冬期減耗が軽減され、現存量が回復しましたが、餌の競合による肥満度の低下というのが見られまして、さらなる餌料の改善によって資源量と肥満度が高い水準で維持されることが資源回復には必要である、そのような結果となりました。
17ページをお願いします。増加運転を実際に行った下水処理場での現場の課題についても議論がございました。現場では放流水の濃度管理に苦労しており、特に現状では濃度管理を日平均濃度で運用しておりますが、これが週平均値で管理できるようになれば、負担軽減につながるといった意見もございました。これらの点は、今後の栄養塩管理を安定的かつ効果的に取り組む上でも重要であり、現場が管理しやすくなるような仕組みが望まれるところでございます。
18ページをお願いします。検討会議では、栄養塩管理の目標となる、漁業生産に必要な栄養塩濃度を検討いたしました。対象としたアサリですが、この海域の漁業において重要な資源でありますし、内湾の健全な物質循環に不可欠な水質浄化機能を担う鍵となる、この海域の漁業生産における重要種と位置づけられます。検討の詳細は時間の都合で割愛いたしますが、結果、漁業生産に必要な栄養塩濃度は、全窒素で0.4mg/L以上、全りんで0.04mg/L以上と整理されております。また、栄養塩管理の必要な時期でございますが、春や夏の生物の栄養状態、それから餌料条件というものが資源形成に関連することが最近の研究で示されてきております。例えば、近年よく言われる高水温の影響は、栄養状態が悪いと、より顕著になるといった知見もございます。近年の環境変化や水生生物の多様な生活史を考えれば、春から夏の取組も重要でありますし、生物に対する栄養塩の重要性というのは季節別に限定される理由というのは少ないということになります。
19ページをお願いします。このような議論を踏まえ、取りまとめられました栄養塩管理方策の方向性でございます。①としては、社会実験や伊勢湾側での増加放流を現計画期間では継続していくというものでございます。
その下の②ですが、栄養塩増加運転の恒常的実施とその枠組みづくりを進めていくという内容でございます。1点目は、漁場を含む海域の類型を、先ほど申し上げました漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できる類型に見直すというものでございます。また、必要な栄養塩濃度に高めていくために、当面は下水処理場を対象に実施箇所の増大と周年運転を検討して実施する点。また、総量規制基準の緩和や増加運転を考慮した削減目標量を設定していくことが不可欠であるとされております。今後は、窒素、りんを削減対象ではなく、管理の対象としていくことが重要であると考えられます。栄養塩を漁業生産につなげる取組も両輪として実施してまいります。以上の取組を進めながらモニタリングを行うことで順応的な管理とし、水質の保全と豊かな海の両立を図っていくということとしております。
以上の内容は、漁業生産の側面から検討されてきたものでございますが、漁業は古くから豊かな海の恩恵を利用して営まれる事業であります。本来持つ生物多様性や高い生物生産が前提となっております。したがって、報告書は「漁業生産に必要な」と題されてはおりますが、生き物に富んだ豊かな海を次世代に引き継ぐために必要な考え方が整理されたものであると考えております。県としましても報告書の内容を踏まえ、豊かな海に向け、関係部局が連携して取り組んでいくことが重要であると考えてございます。
【戸田課長】 最後に、21ページをお願いします。今後の総量削減の在り方につきましては、水質の保全と豊かな海の両立を目指すという観点から、海域の状況に応じた栄養塩類の順応的管理並びに栄養塩類管理を考慮した総量規制基準、目標量とすることを伊勢湾、三河湾において位置づけることが必要であると考えております。
以上で愛知県の説明を終わらせていただきます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、続いて資料8について、三重県からお願いします。
【松本課長】 三重県大気・水環境課の松本でございます。
それでは、私から、きれいで豊かな伊勢湾に向けた三重県の現状と課題というところで御説明させていただきます。
2ページ、お願いします。本日はこの1~3、4の辺りを御説明させていただきたいと思います。
まず初めに、環境基準の達成状況について説明させていただきます。
3ページ、お願いします。このグラフは、伊勢湾の三重県側の環境基準の達成状況を示したものです。河川BODについては62水域で調査しており、青線で示しておりますが、近年達成率90%以上となっております。海域については赤線で示しておりますが、近年概ね改善傾向を示しておるという状況でございます。また、海域の窒素・りんは緑色と黄色の線で、近年、全ての水域で100%を達成している状況でございます。
4ページをお願いします。続きまして、伊勢湾の「きれいさ」と「豊かさ」の現状と課題ということで、貧酸素水塊の発生状況や干潟、藻場の変化等について御説明させていただきます。
5ページ、お願いします。お示ししたグラフは平成3年度からの赤潮の発生件数ですが、近年は減少傾向となっている状況がうかがえます。
6ページ、お願いします。こちらは貧酸素水塊の発生状況として、年代別の底層DOの状況を示したものです。3mg/L以下の範囲を青の太線で囲んでいますが、年代が進むごとに範囲が拡大しており、濃度の低下している状況が分かります。
7ページ、お願いします。こちらは、1955年と2000年の状況について、干潟域についてはピンク色で示して、アマモ場については緑色で示した図となっております。干潟域については2000年までに37%まで減少しており、アマモ場については1%まで大幅に減少しているということが分かります。
8ページ、お願いします。こちらは伊勢湾の漁獲量の変化についてです。右側のグラフを御覧ください。青色の実線がアサリの漁獲量となっております。1980年の1万4,000tから、2023年には163tまで減少しております。点線の部分はイカナゴの漁獲量ですが、資源量減少により2016年から禁漁になっている状況でございます。左側は黒ノリの低品質ノリの枚数の割合を示した図で、湾奥部、湾南部共に低品質のノリの割合が増えている状況となっております。
9ページ、お願いします。この図は、主な黒ノリの漁場の年代ごとの月別平均濃度の変化を示したものです。各漁場とも水色の線で示す1980年代と比べ、全体的に低下している状況となっております。
10ページ、お願いします。以上をまとめまして3点ほどです。伊勢湾の三重県沿岸域では栄養塩類が経年的に減少しており、特に中部~南部の海域で状況が顕著ということです。詳細なデータについては参考で述べさせていただきました。また、藻場、干潟の減少や貧酸素水塊の拡大が認められる状況です。このため、海域の栄養塩類を湾内の豊かな生物生産につなげていくため、栄養塩類の管理と藻場・干潟の保全、再生を両輪で行うことが重要と考えておるところです。
11ページ、お願いします。3点目といたしまして、本県のきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けた取組というところを御説明させていただきます。
12ページ、お願いします。本県では環境基準の達成と生物生産性・生物多様性とが調和・両立したきれいで豊かな海(伊勢湾)の実現を目指し、令和4年10月に三重県第9次水質総量削減計画を策定したところです。本計画では、従来の汚濁負荷の「削減」から総合的な「水環境管理」への新たな方向性を導入し、関係機関や関係団体等と連携し、スライドに示させていただきました1~5の取組を進めているところでございます。
13ページをお願いします。まず一つ目ですが、総量規制基準の改定といたしまして、右の二つの図にお示ししたとおり、下水道業の窒素、りんの管理運転がより柔軟に実施できるよう、それぞれの基準値が国が定めた範囲の上限になるよう見直しを行いました。これまでの負荷量実績の推移と比べると、第9次の目標量は左の図のようになるというところを示させていただきました。
14ページ、お願いします。次いで、下水処理場の栄養塩類管理運転の試行とその効果の検証についてでございます。公的機関が管理する五つの下水処理場において、令和4年から、りんの管理運転の試行を開始し、令和6年からは窒素の管理運転についても試行をしているところです。なお、志登茂川浄化センターというところがありますが、こちらは平成30年に供用開始したところでして、現在、管理運転の調査を実施しているというところでございます。なお、これらの管理運転の効果については、本県の環境生活部、農林水産部、県土整備部の3部が連携して検証し、今後の施策等にフィードバックをしていくこととしております。
15ページ、お願いします。こちらには参考として管理運転のイメージ図を示させていただきました。現在このような濃度コントロールを行うことで、日平均値が規制値を超過しない、かつ、高い値を目指す管理運転を行っているところでございます。
16ページ、お願いします。管理運転による下水処理場の放流濃度への影響について、まず、全窒素についてこの表でお示しさせていただきました。管理運転を始める前の令和3年度と比べると、令和6年度は各下水処理場において1.39倍から1.61倍と増加しており、管理運転の効果が現れているという状況になっております。
17ページ、お願いします。続いて、全りんについての管理運転による下水処理場の放流濃度への影響について示しております。りんについても管理運転を始める前の平成30年と比べると、令和6年度は各下水処理場において1.31倍から2.06倍と増加しており、管理運転の効果が現れていることが分かります。なお、参考ですが、りん放流濃度の1か月間の状況からも分かるように、かなりばらつきがある状況でございまして、安定的な管理運転を行うためには、きめ細かな運転調整を求められるという状況でございます。
18ページ、お願いします。こちらは、調査研究の推進と科学的知見の集積と活用でございます。令和4年度から栄養塩類管理運転の効果検証を行っているところでございます。まずは、令和4年度~令和5年度にかけて、一部浄化センターの周辺海域で水質やプランクトン等の調査を実施し、それらの結果を基に、令和6年度に管理運転の効果検証に係るシミュレーション解析を実施しました。今後は本シミュレーション解析を活用することにより、現在、高濃度に排水した場合の効果予測の検証などに取り組むこととしております。
19ページ、お願いします。藻場、干潟及び浅場の保全・再生等の推進でございます。伊勢・三河湾海域干潟ビジョンに基づいた計画的な干潟再生等に取り組んでおり、令和5年から松阪市地先において、アサリ稚貝の着底を促進する砕石を活用した干潟・浅場の造成工事に着手したところでございます。
20ページ、お願いします。その他といたしまして、生活排水処理対策でございます。本県では、本県が定めておる生活排水アクションプログラムに基づき進捗管理を行っているところですが、令和5年度末の整備率は89.6%となっており、引き続き関係部局や市町と連携して、整備率の向上に努めていきたいと考えております。
21ページ、お願いします。関係者との連携体制でございます。本県では、三重県きれいで豊かな海協議会というものを令和4年9月に設立しておりまして、関係部局で情報交換をしながら進捗管理を行っているところでございます。あわせて、中部地方整備局さん等で構成されておりますが、右側の伊勢湾再生推進会議で情報共有などをさせていただいて、今後の施策を進めていこうと考えているところでございます。
22ページ、お願いします。まとめでございます。
23ページ、お願いします。きれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて、まとめでございます。三重県では引き続き多様な主体と連携し、目標を共有しながらきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて取組を推進していこうと考えているところでございます。
以上でございます。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
黒木委員、どうぞ。
【黒木専門委員】
愛知県様への御質問になります。18ページ、漁業生産に必要な栄養塩濃度ということでTNで0.4mg/L、TPで0.04mg/Lという数字をお示しになりました。これは重要な数字なんだろうなと思いますが、時間の関係もあって説明を省かれたかとは思いますが、この数字をどのように導き出されたかという、その科学的根拠的なものを御説明いただきたいというのが一つです。
それから、この全窒素0.4mg/L、全りん0.04mg/Lという数字をアサリで整理されたということでしたが、例えば漁獲対象にはならないような二枚貝類や、その他の底生生物の生息にも必要なレベルが考えられるのかどうかというような点につきまして、状況証拠でもよいと思いますので、分かっていることがあればお話しいただければと思います。
【古米委員長】 愛知県、いかがでしょうか。
【日比野課長補佐】 水産課の日比野です。
こちらの漁業生産に必要な栄養塩濃度の算定の根拠というところですが、公共用水域の監視点の栄養塩濃度とアサリの漁獲量の関係から必要な濃度というのを推定したということです。三河湾の観測結果に基づくものや、あるいは全国のいろいろな地点での栄養塩とアサリ資源量の対応関係を見た研究事例など、そういった関係式から導出された研究事例を引用しまして、こういった濃度を整理させていただいたという形になっております。加えて、アサリ漁業が成り立つ水準を仮定して、また、その成立確率から濃度を算定した、こういった研究事例も引用しております。それから、こういった知見に関しましては、いずれも現地観測に基づく統計的な解析を含めた結果でございまして、仮定条件を置いたシミュレーションの結果とは異なるものですが、これまでのアサリ漁業と栄養塩濃度の関係の歴史をしっかり解析した結果だと認識しております。
一方で、その他の漁獲対象やその他の二枚貝への効果、適用できるかというところですが、これにつきましては、今後やはり栄養塩濃度と対応関係を見ていくということが非常に重要になってくるかと思います。社会実験の過程でアサリ漁獲量が一時増えている、増えたというお話をさせていただきましたが、それに対応する形で、例えば、少し専門的な話になって申し訳ないですが、シオフキガイやホトトギスガイなど、そういった干潟に普通に見られるような二枚貝、あるいはアオサなどといった藻類、そういったものもいっとき栄養塩の低下とともに、アサリの状況が悪かったときにはほとんど見られなかったものが同期して見られるようになっているという、そのような状況証拠もございますので、栄養塩との対応関係というのは、ある程度アサリと同期してくるのかなというところは現場の観測からは考えているところでございます。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、3名ずつ委員から御質問いただきたいと思います。古川委員、田中委員、西嶋委員の順番で、まず古川委員、お願いします。
【古川専門委員】 愛知県の方に質問させてください。栄養塩の運転管理は様々な部分が非常に細かいレベルで検討されているのは理解できました。運用体制整備について、皆さん確認されていると思います。
さて質問です。資料7では17ページに、総量規制基準や規制項目の運用の見直し検討の必要性と記載がございます。経済界としても、効果的で合理的な栄養塩類管理の規制が重要と考えており、「他の規制項目の運用」について念頭に置かれているものがあれば御教示いただきたいと思っております。特に19ページの漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容するものに関する見直しに相当するものだと私は理解しておりますが、もしこれ以外に念頭に置かれているものがございましたら御教示いただければと思います。
以上です。
【古米委員長】 それでは田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 三重県に二つと、愛知県二つの質問があります。
愛知県について。まず、今の古川委員の話も関係ありますが、17ページです。安定的かつ効果的な下水処理場における増加運転の話の中の、他の規制項目の検討と書いてあるのですが、具体的にはどんな法律に関わるのでしょうか。総量規制については後で述べられているので分かりますが、それは一体何なのかが分かりません。例えば、下水道法のようなものが入るのか、あるいは、下水処理場以外の事業場への働きかけみたいなものが入るのか、イメージが分からないので、具体的に御説明いただきたいのが1点です。
それから愛知県のもう一点は、18ページに栄養塩管理の必要な時期など、いろいろ書いていただきました。水産系から見た生物系だと思いますが、例えば先ほどの東京都がいろいろ調査されている底層DOの低下による漁獲対象以外の種への影響など、そういう部分についての検討、それから、それに対する栄養塩の関係、これらについての検討というのは、この検討会の中ではされていないのでしょうか。これについて何か情報を下さい。
それから三重県については、下水処理場の運転、栄養塩の管理の運転の話の方法論を教えてください。15ページのこの文章から言うと、窒素については無酸素層への循環量を管理すると書かれているので、脱窒抑制型でされているのかなと思いますが、それは硝化抑制はされずに、ここについては脱窒抑制をされているのか、この辺の確認をしたいということです。
それからもう一点は、18ページの調査研究の推進と科学的知見の集積の中で、現在どのように下水処理場からの放流水が拡散していくかの検討はされていると思いますが、今後どのようにノリや、あるいは餌生物が魚への種とか量にどのように影響したのかということについても、今後、調査、検討はどのようにされていくのか、この2点を教えてください。
以上です。
【古米委員長】 西嶋委員、どうぞ。
【西嶋臨時委員】 愛知県さんに質問がございます。
13ページにアサリの漁獲量の推移のデータを示していただいています。これを見せていただくと、2010年ぐらいまでは割と上下はあるものの、漁獲量は維持されていたのかなと思いますが、2010年代の半ばぐらいから急激に落ちているというところで、全体的な栄養塩の負荷からすると、ほかのトレンドと、このアサリのトレンドが一致していないように見えます。この2010年代の半ば過ぎに急激に落ちている原因というのは、栄養塩ももちろんあるのでしょうが、ほかにどのような原因を考えられているのか、あるいはその辺が究明できているのかどうかについて、少しお話をいただければと思います。
それと、19ページで、栄養塩管理を季節別ではなくて周年管理を目指すというお話も少しあったと思います。特にアサリの漁獲は多分、三河湾が中心だと思いますが、現在でも赤潮とか苦潮の発生がよく起こりやすい水域という説明も前半にありましたが、今後、周年での栄養塩の放出というのを考えたときに、そちらとの関係をどのように調整していくのか、この辺りのお話が聞けたらと思います。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 それでは、三人の関連する御質問もありましたので、うまくまとめて御回答いただければと思います。
それでは、愛知県、お願いします。
【日比野課長補佐】
最初のほうから御説明させていただきます。17ページ、下水処理場の安定かつ効果的な栄養塩増加運転というところです。やはり窒素とりんを上げようと思うと、ほかの水質項目、これは水濁法によるもの、あるいは、下水道法によるもの、こういった水質項目の基準値と整合が取れなくなってきてしまう、例えばBODとかそういったところもあるというような話がございました。そういった規制項目とのバランスによって、やはり現実としては、全窒素、全りんに関しては増加運転が十分に上げられない、そういった状況もあった、という報告もありました。そんな中でそういった規制項目の運用につきましても、例えば説明の中で申し上げたとおり、現在、日平均濃度というものを基準としている場合であれば、週平均濃度のようなものを基準にすると、より現場の管理がしやすくなる、そういった意見がございました。それが1点目になってございます。
その次、DOに関わる漁獲対象以外の対象種に対する検討と、DOに対する栄養塩の影響というのはどういう感じなのかという御指摘かなと思いますが、実際、栄養塩管理検討会議の中では漁獲対象種以外の検討というのはほとんど行っていないという状況でございます。
DOに対する栄養塩の影響ですが、これは、これまで実際、水産試験場でもずっと底層の溶存酸素を観測してきております。その結果を少し22ページの補足資料でもお示ししておりますが、長期的に見ると、こちらは横ばいになってきております。近年では、むしろ拡大しているような感じも見られます。窒素、りんについては半分になっているという観測結果があるにもかかわらず、こういった状況であるというところですので、基本的には窒素、りんとは対応していないということになりますが、統計的に対応関係を見てみましても、やはり水温とか密度差というものがこの変動には非常に影響しているということが分かりましたので、窒素、りんとの対応というのは現実的にはあまりないのかなという理解でおります。いずれにしてもこれを増やしていくという過程の中ではモニタリングを実施し、既存の貧酸素調査体制を維持しまして、何らかの変化あるいは悪化というものが検出されれば、そういった順応的に対処していくという方向性なのかなと考えてございます。
それから、漁獲量の推移と窒素とりんのトレンドが一致していないというところが御指摘としてございました。これは、アサリの増減は栄養塩そのものというより餌のクロロフィルに対応しているというのも一因かなと思っております。そちらのエネルギー収支のイメージで御覧いただいていると思いますが、餌はプラス要因に働くというのはまず間違いないのですが、その他の環境要因、我々が水産試験場で検討した結果、データとしては秋の水温や波浪など、そういったものはマイナスに働くということで、資源変動にはそれらの収支による関係で、リニアには対応しないのかなと考えております。長期データでは、先ほど御指摘があったように急激に減っているような感じがあるのですが、現実的にはその前段階でアサリの漁業者さんが非常に積極的な資源管理あるいは漁場管理をなされていますので、そういったところで維持されてきたという背景がありますが、その急減に関しましては、やはり閾値を下回ると資源減少が起きているという状況になっております。これはやはり環境変動に対する資源形成の頑健性というのを、活力不足というところで失ってきてしまっているということと、それから、個体のエネルギー収支を見ていただくと、生き、死にというのは二項分布を取りますので、ある閾値以下では、その環境条件が一斉に発生してるわけですので一気に個体群の縮小が起きる、資源崩壊が起きると、そういったプロセスとなるのは合理的であるのかなと考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 それでは三重県さん、お願いします。
【三重県】 三重県の篠田と申します。まず、15ページの御説明からしたいと思います。
我々の下水処理場は、嫌気槽、無酸素槽、好気槽という高度処理を採用しております。例えば、りんにつきましては、嫌気槽でりんを吐き出した以上の分を好気槽で取り込むということによって、水を流すだけで自然にりんを削減するというような方法を取っております。それに加えて、PACという凝集剤で、さらにりんを落とす措置をしておりましたが、現状、栄養塩類管理運転をするために、PACを注入する量をなるべく減らすことでりん除去を抑制するという方法を取っております。
窒素につきましては、この無酸素槽と好気槽との関係でございまして、好気槽で硝化菌を作成したものにつきまして、無酸素槽で酸素を取り込むことにより窒素を大気開放するというような反応で循環ポンプを動かしております。循環ポンプの量を減らす、要は、いわゆる硝化菌を無酸素槽へ送る量を減らすことで窒素の除去を抑制するというような運転をしております。いわゆる、先生がおっしゃったとおり、脱窒運転の抑制をしております。硝化抑制までいっておりません。硝化抑制をする場合、どうしてもBODが上昇する傾向がございます。こちらは先ほど愛知県さんに質問もされていたと思いますが、下水道法のBODにかかってくるおそれがありますので、現状は、脱窒抑制のみにしております。
三重県の羽生です。18ページのシミュレーション解析の件ですが、水産生物に対する管理運転の影響については、先ほどの愛知県さんの御報告にあったように、最近、生物にとって必要な栄養塩濃度の基準値というものが示されてきていますので、まずは基準値を上回るような状況が管理運転によって、各漁場で認められるのかどうかということを確認していきたいと考えています。実際、生物に対する影響については、県の水産研究所などが各漁場でアサリの資源量やノリの生産性を調査していますので、そういったデータと突き合わせて検討していきたいと考えています。
【古米委員長】 ありがとうございました。
愛知県さん、西嶋委員からの二つ目の御質問で、栄養塩管理を周年にした場合、アサリに効果があるということは分かるが、赤潮や青潮、他の現象に対する影響についてはどのように御検討されているのかという御質問に関してはいかがでしょうか。
【日比野課長補佐】 その点については、貧酸素の関係で御回答させていただいたつもりでした、すみません。基本的には増加運転、これまでの観測結果から見ると、窒素とりんに対してのDOの挙動というのはあまり相関がないというところです。今後、増加運転を実際に実施していくことになれば、モニタリングをしつつ、環境状況というのは適宜適切に把握をしていく、そういったことを並行していくということを考えております。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは3名、大久保委員、三宮委員、山口委員の順番で、大久保委員、お願いします。
【大久保臨時委員】 三重県に質問を2点させていただきます。
1点目は6ページで、貧酸素水塊が増加しているというお話があり、お話の時間がなかったかと思いますが、参考資料にはその原因の研究をしているというスライドがありましたので、現在までの研究成果でどのような原因が考えられているかということの成果をお伺いできればと思います。
2点目は、7ページで、藻場、干潟の減少状況について37%まで減少していますというお話があり、19ページで造成について具体的なお話がありましたが、保全に関しましてはあまり具体的なコメントがなかったと思います。行政における海岸管理、海岸工事も含めてそこでの工夫等、具体的な保全の施策についてお伺いできればと思います。
以上2点です。
【古米委員長】 三宮委員、どうぞ。
【三宮専門委員】 御説明ありがとうございました。私からは愛知県さんに2点ほどお伺いしたいと思います。
まず一つ目は、17ページです。下水処理場の施設や構造等において、栄養塩増加運転ができない施設等も想定されるとあります。運転ができない施設に関して、例えば、どのような処理法なのか、どのような施設がないからできないなどの情報があれば教えていただきたいというのが一つでございます。
それからもう一つが18ページです。水生生物の生活史に対応した春から夏も含めた取組が重要とあります。水産資源に関してはそういうこともあると思いますが、例えば、ほかの水利用など、思いつくところでは、海水浴などに配慮をするべきことはないのか、あるいは逆に、圧倒的に栄養塩が足りないという認識から、このことが必要になっているということなのか、その2点をお伺いできたらと思います。
よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 山口委員、どうぞ。
【山口専門委員】 私は愛知県に質問をさせてください。
まず13ページです。2017年から栄養塩の増加運転をされたという御説明だったと思いますが、アサリの漁獲量を見ますと2017年から非常に少なく、低いままで回復していないように見えます。これについてはどのようにお考えでしょうかというのが1点。
それから16ページに社会実験で栄養塩の増加運転をした結果として、漁業への効果というのが示されていまして、その中の二つ目です。ノリの色落ちが軽減されたということでしたが、矢作川地区のグラフを見ますと、そのようには読み取れないように思います。少なくとも平均値では悪くなっているようですし、最大値で見られているようですが、これが適切かどうかということが一つです。
それと、先ほどもう皆さんから出ていますが、栄養塩管理の必要な時期についてということで18ページ、今後、周年管理にという点についてです。ここに根拠となることが幾つか、アサリ、イカナゴ、マアナゴ、シャコということで出されています。先ほど御説明でもありましたが、アサリも栄養塩だけではないということはありますが、少なくとも下の三つ、イカナゴ、マアナゴ、シャコについては、栄養塩を増やすということと、直接的な関係について言及するのは少し難しいように思いました。それで、冬は栄養塩を直接ノリが取るので、逆に言えば過多にならなかったかもしれないのですが、春夏は水温も高いですし、ノリがない分、栄養塩が過多になるような可能性もあり、栄養塩以外のものも含めてバランスの問題でやはり赤潮プランクトンが増えたりという可能性も懸念されるのではないかと思いました。
そういう中で19ページです。漁業生産に必要な栄養塩濃度について、アサリと水質と、それから先ほどのその数種の水産資源を軸に考えられたのだと思いますが、漁業生産を考える上では、やはり三河湾の生態系の視点も必要かと思います。漁業資源以外の生物や、それから寿命の長い高次の捕食者まで、栄養塩の増加運転がどのように影響するのかという点までは、先ほどの日比野さんの御説明だとまだ考慮されていないということだったかと思います。分からない中で難しいとは思いますが、栄養塩と水産資源と、それから生態系というその関係性をいまだ定量的に評価できていないという点がやはり懸念されるところで、この辺り、内部で十分な議論がなされているのでしょうか。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは三重県、その後、愛知県ということで、まず三重県からお願いいたします。
【三重県】 三重県大気・水環境課の小林と申します。
まず、調査研究のほう、31ページ、参考資料になります。御覧ください。
伊勢湾再生連携研究事業としまして、平成24年度から三重県県内、県庁内の各部、研究機関、それから大学と連携して、様々な角度で研究を進めているところです。貧酸素水塊の原因解明につきましては、研究を進めているところですが、確定的な情報というのはまだないような状況でございます。ただ、今までの検討の中では、CODについて難分解性の有機物が寄与してきているのではないかというところです。特にプランクトンの生物相が変わってきているところによる内部生産増加によって、CODがさらに増えてきているのではないかというところです。また、伊勢湾そのものが、真ん中がくぼ地の状態になっている状況がございまして、そこへ過去からの栄養塩などが、たまってきた汚泥中でそういった部分の分解が進んできたというようなことによってそこで酸素が消費されてしまい、貧酸素水塊が増加しているのではないかという、そのような地形的な要因というところ、複合的なところを、現在、検討しているところでございます。まだ研究を続けている状況になりますので、確定という状況ではないというところを御了承ください。
それから、もう一つの取組のところですが、スライド19ページ目を御覧ください。こちらの具体的な取組のところ、今おっしゃったような部分がありますが、全体的な保全の取組としましては、先ほど御説明しましたように、浅場、干潟の造成というところで、生物の生息場を保全していこうというところに注力をしています。先ほど松阪市地先というところで、現在、保全の造成工事に着手していると御説明したところですが、これ以外にも四日市の地先や、津市の地先でも、造成を検討していくための調査を行っていて、こういった面積を増やしていくことで保全を進めていきたいと考えているところでございます。
以上になります。
【古米委員長】 造成は保全ではないのですが、既にある藻場や干潟をどう保全されているのかという活動はいかがでしょうか。
【三重県】 藻場、干潟の造成のところ、保全という観点につきましては、こちらに具体的な知見、取組を持ち合わせておりませんので、またこちらについては確認をさせていただきたいと思っております。
【古米委員長】 はい、分かりました。
それでは愛知県さん、お願いいたします。
【日比野課長補佐】 まず1点目の17ページ、下水処理場の施設や構造等においてというその中身についてです。委員、御指摘のとおりでございます。処理法や施設そのものの構造、そういったものがそもそも栄養塩増加運転に対応しづらいという御指摘があったという内容でございます。
それから、ほかの水利用への影響、あるいは合意といった部分になるのかというところにつきましても、検討会議の取りまとめについて、公表までに関係市町の農水や環境下水道各部局に説明に回らせていただきました。その際、ほとんど否定的な意見というのは聞かれず、むしろ今まで何でこういうことをやっていなかったんだ、という疑義を持たれた環境担当の方もおられました。検討会議に加わっていただいた市町の委員さんの中では、例えば海水浴場を運営する観光協会のほうでも地元の魚を食べてもらうことの経済効果に期待する声のほうが結構大きいよと、そのような声もありました。実際、水産物を起点として派生する流通、小売、加工業者さん、それから愛知県では特にノリ問屋さんからの栄養塩管理への期待というのが大きいのですが、潮干狩りの現場、そのような和気あいあいとしたアサリを探す姿、そういったことが豊かな海の象徴になってくるのかなと思いますので、基本的にはほかの水利用も含めて、ある程度の方向性というのは大丈夫かなと私は認識をしているところで、検討会議でもそういった結論になっているのかなと思っております。
それから、18ページです。2017年から管理運転をしていますが、アサリが回復していないのでは、という御指摘かと思います。こちら、実は管理運転の内容が若干違っております。2017年は11月から実施しているというものですが、実施の開始月を段階的に前倒しをしていきまして、2020年9月から実施したということになります。これは後の夏の重要性の話にも関わってきますが、16ページに2020年9月から実施したタイミングでアサリの秋冬期減耗というのがかなり軽減されてきたという現場のデータがございますので、やはりアサリにとっては夏のクロロフィル、基礎生産が高い時期にどれだけ蓄積できるかというところが重要であり、それが資源の回復に寄与したんだろうという見解でございます。
さらに、16ページ、漁業への効果の中のノリの色落ち軽減のグラフが少し疑義があるのではないかというところでございます。検討会議のこのグラフでは、最大値と地点ごとの差で、地点ごとの差の評価として検討させていただきました。最大値、これはL*値という数字を用いており、色の黒さでございます。生産期間で一番悪いところが最大値になっており、これが低くなっているので色落ちが軽減されているという理解でございます。現場では色落ちが起きると生産意欲がどんどん失われていってしまいますので、最大値は意味のあるファクターであると考えています。地点間の差というのも下水道からの供給距離の差を示していると考えておりまして、増加運転の由来の栄養塩の寄与というのがここにあったのではないかと推定をしております。
その次ですが、イカナゴなど、春夏にお示ししているような知見、栄養塩だけではないだろうという御指摘、そのとおりだと思います。この資源形成には当然、栄養塩がダイレクトに効くわけではございません。ただ、栄養塩がベースとなってそこに基礎生産があり、さらに底生生物あるいは餌資源が形成され、ひいては資源形成に貢献していく、そういったプロセスが当然あると思いますので、これを直結的に栄養塩がどうかという議論というのは、そこのプロセスをしっかりひもとかないと分からないというのは、御指摘のとおりだなと思っております。そういう意味ではこういった知見というのは現段階では定性的な部分にとどまっているのかなということではございますが、水産資源とこのような餌条件の関連をここまで明らかにしているというのはなかなかないかなと思っておりまして、こういった状況証拠をしっかり整理、精査して、次の取組の材料にしていくべきではないのかなと捉えております。ただ、定量的な解析や現場の応答はしっかりモニタリングしながら、そういったところを漁業の状況の把握を通じてしていくべきかなと思いますし、今後このような生物対象種に関しての科学的な知見の蓄積は当然引き続き進めていく必要がある、これで終わったわけではないと考えております。
それから最後の高次までの生態系の応答がどうなっているのかというところです。こちらも生態系構造、我々、水産の立場から漁獲対象種を対象として解析をしていますが、それを見るとマダイやヒラメなど外洋性の種類が増えてきているなど、そういった知見がございます。そういった中で生態系構造が変わってきて、例えば生産効率が低くなってきているとか、ヒラメが内湾に入ってくることで外海域に類似してきた生態系構造になってきている、こういったことも分かってきております。このような変化というのは、当然御指摘のとおりで栄養塩と対応する部分もありますが、水温の影響なども当然ございます。解析の中で、水温、栄養塩をどうしたら制御できるのかなど、出口につながるような検討をいたしまして、その中でできることをやっていくしかないのかなと考えております。ただ、やはり内湾が外海化していくというのは現実としてあるわけで、そういったところで内湾のこれまでの特色ある漁業あるいは生物多様性、そういった地域の漁業が魅力の低下につながるおそれがあるのではないのかといったところも、これから懸念していかなければならない材料ではないかと考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
質問された方、よろしいでしょうか。
(はい)
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に移らせていただきます。
その他ということで、事務局より何かありますでしょうか。
【西川室長】 特にございません。
【古米委員長】 それでは、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
議事の進行を事務局にお戻しいたします。
【西川室長】 古米委員長、ありがとうございました。
本日は御多忙のところ活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
次回は6月9日を予定しております。委員の皆様には改めて御連絡をさせていただきます。
また、議事録につきましては、事務局で作成の上、皆様の御確認を経て、環境省のホームページに掲載いたします。
以上をもちまして、第4回総量削減専門委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。
本日は、WEB会議システムによる開催としております。委員の皆様におかれましては、発言時以外はカメラをオフ、マイクはミュートにしていただきますようお願いいたします。
御発言を希望される場合は挙手ボタンをクリックして、発言を終えられましたらボタンを再度クリックし、挙手を解除いただければ幸いでございます。
会議中に音声が聞き取りにくいなどのトラブルがございましたら、事務局まで、お電話またはWEB会議のチャット機能にてお知らせいただければ幸いです。
なお、本日の会議は中央環境審議会の運営方針に基づき公開としておりまして、YouTubeの環境省海洋環境課公式動画チャンネルでライブ配信を行ってございます。
本日の委員の出席状況でございます。委員17名中、三浦委員、東委員、横田委員、今現在、山口委員は入っておりませんが、以外の13名に御出席をいただいてございます。定足数の要件を満たしており、専門委員会として成立をしておりますことを御報告いたします。
山口先生につきましては、部分参加の可能性があるということでお聞きしてございます。
続きまして、今回の議題1でヒアリングに御対応いただく関係団体の方々をヒアリング順に御紹介いたします。
一般社団法人日本化学工業協会、環境安全部の柳谷部長です。
【柳谷部長】 柳谷です。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
続きまして、一般社団法人日本鉄鋼連盟、土壌・水質分科会の木森主査、同じく、一般社団法人日本鉄鋼連盟、鉄鋼スラグ海域利用促進ワーキンググループの赤司委員でございます。
【木森主査】 よろしくお願いいたします。
【赤司委員】 お願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いします。
続きまして、日本製紙連合会、王子ホールディングス株式会社、グループ安全環境本部の小川環境管理部長です。
【小川環境管理部長】 よろしくお願いいたします。
【西川室長】 東京都環境局自然環境部水環境課の大久保課長です。
【大久保課長】 大久保でございます。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
千葉県環境生活部水質保全課の佐久間副課長です。
【佐久間副課長】 佐久間でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
【西川室長】 よろしくお願いいたします。
愛知県環境局環境政策部水大気環境課の戸田課長と農業水産局水産課の日比野課長補佐でございます。
【戸田課長】 戸田です。よろしくお願いいたします。
【日比野課長補佐】 日比野です。よろしくお願いいたします。
【西川室長】 ありがとうございます。
三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課の松本課長です。
【松本課長】 松本でございます。よろしくお願いします。
【西川室長】 ありがとうございます。
次に、事務局を御紹介させていただきます。順不同で名前のみ呼ばせていただきます。
水・大気環境局長の松本、海洋環境課長の水谷、私、4月に着任いたしました海洋環境課海域環境管理室長の西川でございます。同じく海域環境対策推進官の工藤、室長補佐の森川、環境管理課補佐の亀井となってございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、本日の資料につきまして、議事次第のとおり、確認をさせていただきます。
資料1が委員名簿、資料2~8までがヒアリング資料ということで、各団体から御提出をいただいたものとなってございます。
参考資料に、前々回お示ししました本委員会でのヒアリングの予定をつけさせていただいております。もし不足等がございましたら、事務局までチャット機能等でお知らせいただければと思います。
それでは、これより議事に移りたいと思います。
古米委員長、よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 承知いたしました。
皆様、おはようございます。委員の皆様、また、関係団体の皆様、御多忙の中、御出席いただきましてありがとうございます。
それでは、早速、議事に入らせていただきます。
限られた時間の中での円滑な議事の進行に御協力をお願いしたいと存じます。
まず1番目、水質総量削減制度に係る取組の実施状況についてということで、関係団体から発表していただきますが、発表時間は10分程度として、関連するヒアリング対象ごとにまとめて質疑応答するという形で進めたいと思います。
発表の際に、10分経過時、1鈴でお知らせし、10分経過しても御発表が終わらない場合は、ペースを上げていただく等、お声がけさせていただく場合がありますので、よろしくお願いいたします。
それでは、議事進行に御協力いただきますようお願いしたいと思います。
最初に、日本化学工業協会、日本鉄鋼連盟、日本製紙連合会について御説明をお願いしたいと思います。3件続けて御説明いただいた後にまとめて質疑応答を行います。
まず資料2について、日本化学工業協会より御説明をお願いしたいと思います。
【柳谷部長】 日本化学工業協会の柳谷と申します。よろしくお願いいたします。
私からは、日化協の水質総量削減の取組と課題と要望として御説明いたします。
2ページをお願いいたします。今回、産業界への御要望がありましたヒアリング項目のうち、2番、6番、9番~13番について御報告申し上げます。
3ページをお願いいたします。今回の御説明の内容ですが、簡単に化学工業について御説明した後、総量削減の取組と、それから課題、要望について御説明いたします。
4ページをお願いいたします。初めに、化学工業の出荷額について御説明申し上げます。プラスチック製品、ゴム製品も含めた広義の意味での化学工業の出荷額は、年間約51兆円ということで、自動車産業に次ぐ規模の産業でございます。
5ページをお願いいたします。これら企業のうち日化協に所属している会社は、企業会員として181社、主に大手の化学メーカーで構成されております。そのほか、石油化学工業協会などの団体会員が77団体で、計258会員で構成されております。その中でも、環境保全に関する取組を行う部署として、環境安全委員会の下部組織に環境部会というものがありまして、ここで会員企業のうち41企業、団体としては13団体が参加して情報共有や意見交換などを行っております。
6ページをお願いいたします。次に、今まで化学工業が行ってきた総量削減の取組について、1~7で説明いたします。
7ページをお願いいたします。まず(1)これまでの取組ということで、排水処理の全体像について、簡単に御説明申し上げます。化学工業の各社は、これまでに活性汚泥を主体にした排水処理システムを導入しております。特に高負荷な排水については、前処理として湿式酸化や液中燃焼、後処理としてMBRなどの膜処理を導入すること、それから監視システムによる運転管理の強化によって汚濁物質の排出量を大幅に削減してきました。また、法規制などを遵守し、さらに厳しい自主管理基準を設けて、負荷削減に取り組んでまいりました。
8ページをお願いいたします。その結果が、こちらの表とグラフになります。COD、全窒素、全りん共に継続的に削減をしていき、それを維持しているということがお分かりになると思います。
9ページをお願いいたします。一方で、排水処理に関わる課題ということで、まず1番目としまして、大きいのは活性汚泥処理施設の老朽化に伴う保全費用の増加というものが挙げられます。また、それに伴って、新増設や更新に伴い多額な費用がかかっているという実態がございます。
2番目としまして、運転管理です。安定的に排水を排出するために、更なる前処理や後処理設備の増強、それから、③番に挙げましたような常時監視の計器を導入するというようなことに取り組んでおります。また、昨今、②番に挙げたような処理に伴うエネルギーの削減やGHGの削減というものが求められております。
10ページをお願いいたします。こちらが水質環境設備に関係する投資額になります。各社、年間1億~2億円程度の設備投資を水質関係にかけております。また、その額は物価高ということも相まって、増加傾向にあることがお分かりになると思います。
11ページをお願いいたします。次に、近年取り組んでいます栄養塩管理の取組について御紹介いたします。兵庫県に立地する一部の日化協の会員企業において、兵庫県からの要請に応じて、窒素分の上昇という栄養塩管理の協力を実施しております。しかし残念ながら、次の理由から、協力自体が限定的なものになっているというような実態がございます。
理由の1番目としまして、窒素分のみを意図的に上昇させるということが技術的になかなか困難だということが挙げられます。具体的には、ポツの一つ目のところで、窒素やりんの濃度を上げようとすると、プロセス上、どうしてもCODやSSも上昇してしまい、なかなか窒素分のみを上げるということが難しいという実態です。また二つ目としまして、亜硝酸塩で窒素を上げようとすると、CODの測定原理上、亜硝酸でCODが上昇してしまい、窒素分を上げられないという問題が挙げられております。
理由の2番目としまして、活性汚泥、こちらは御存じのとおり、急激な運転変更は難しいということが挙げられております。活性汚泥は微生物叢の維持やバランスが重要でして、これが急激な運転変動や、栄養塩である窒素やりんの濃度が変動すると、バランスが崩れてバルキング等を起こし、処理能力の復旧には数か月かかるということがありますので、なかなか運転を変動させるというのが難しい実態です。
12ページをお願いいたします。そのほかということで、環境保全活動について御紹介をさせていただきます。各社、独自に取組を行っておりまして、主に陸域での活動として、工場周辺などの清掃活動や森づくりの活動、それから、自社製品の生分解性プラスチックを漁業者に提供するなどの活動をしております。また、行政主体の取組への協力というところでは、先ほど申し上げたような栄養塩管理や情報提供などを行っております。
13ページをお願いいたします。これまでのまとめになります。各社、これまで適切な排水処理の導入や、監視システムの強化、また自主管理の基準を設けて、負荷削減に継続的に取り組んできております。また、最近では栄養塩管理の協力を行っていますが、その取組には技術的、設備的な課題があるというところでございます。5番目としましては、設備の老朽化等によって保全投資額が上昇しているということ、6番目としましては、清掃活動等、環境保全活動に今後とも参画し、継続していくというところでございます。
14ページをお願いいたします。これが最後になります。こちらは要望です。これまできれいな海への貢献ということで、我々化学工業では、COD、全窒素、全りんなどの低減に取り組んでまいりました。今後については、豊かな海へ向けた湾灘ごとの管理ということで、実行可能な合理的な対応をお願いしたいと考えております。1番と2番がありますが、特に1番の①番、さきにお話しましたとおり、窒素やりんを上げるとCODまで上がってしまうという現状がございますので、実態に合わせた基準の設定をお願いしたいということと、また、きれいな海と豊かな海の両立ということで、環境負荷の削減と栄養塩管理は相対するところがございますが、対象となる生物の生育ステージによる栄養塩需給量の解析などをすることによって、できるだけコンパクトなエリアでこの栄養塩管理をすることで、環境負荷の削減と栄養塩管理の両立というものができるのではないかと考えており、そのような合理的な仕組みづくりというものをお願いしたいと考えております。最後に2番につきましては、排水処理設備の老朽化もですし、今後、先進的な技術を導入していくというところも含めて、技術的、経済的な配慮というものをお願いしたいと考えております。
日化協からは以上になります。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
続いて、資料3について、日本鉄鋼連盟より御説明をお願いしたいと思います。
【木森主査】 日本鉄鋼連盟の木森です。
前半は鉄鋼業における総量削減の取組について御説明し、後半は説明者を交代して、藻場造成とブルーカーボンへの取組について御説明いたします。
2ページをお願いいたします。まずは、鉄鋼の生産工程を簡単に御説明いたします。左上からスタートします。主原料として鉄鉱石、石炭がありまして、それぞれ焼結炉、コークス炉で処理した後、高炉で溶融還元し、転炉や電気炉で精錬を行い、それを固めて鋼片となります。その後、鋼片を加熱炉で加熱しまして、線材、厚板、薄板、パイプなどに加工しております。
水に関して言いますと、生産工程では非常に高温のものを取り扱いますので、設備の冷却や鋼材の冷却に多くの水を使用しております。左側に数字を書いておりますが、粗鋼1t当たり約115tの淡水を使用しておりますが、その80%が一度使用した水を循環して使用する水になっておりまして、水の使用量削減、排水量削減に努めております。
3ページをお願いいたします。次に、COD、窒素の発生源と対策について御説明いたします。石炭を蒸し焼きにするコークス炉で発生するガスは製鉄所内で燃料として使用しますが、ガスを冷却した後の排水には、フェノールなどのCOD源や、アンモニアが含まれております。そのため、アンモニアストリッピングで排水からアンモニアを除去し、さらに活性汚泥処理でフェノール、窒素を除去しております。事業所によりましては、より高度な処理として、活性炭吸着などを追加で実施しているところもございます。
また、圧延工程では、油を含んだ水、含油排水が発生しますため、加圧浮上処理で油の除去を行っていますが、その後に生物処理などを追加して実施しているところもございます。
また、製品の表面を酸で洗う工程がございますが、硝酸を使う場合には、窒素の負荷が大きくなります。そのため、廃酸回収を行い再利用を行うなど、負荷量を減らす取組を行っております。
なお、りんについては、特に発生源となるものはございません。
4ページをお願いします。COD削減の対応内容を示しております。COD対策は活性汚泥処理がベースとなりますが、特に第6次以降は、含油排水の2次処理設備の導入などのほか、CODの測定器を設置し処理を安定化させるなどの対策を実施しております。また、製鉄所には多くの従業員がおりますので、浄化槽など、生活排水への対策も実施しております。
5ページをお願いします。このグラフは三つの海域における鉄鋼業のCODの負荷量の推移を表しておりますが、負荷量が減ってきたということが分かると思います。
6ページをお願いします。ここからは窒素負荷量の削減・管理の取組事例となります。コークス炉排水の処理でアンモニア分を除去するためのアルカリストリッピング設備の増強や、硝酸を使用する酸洗ラインにおいて、廃酸回収装置を設置したり、窒素分の処理を安定化させる対策を実施しております。
7ページをお願いします。このグラフは、三つの海域において、鉄鋼業の窒素負荷量の推移を示しております。概ねですが、負荷量の低減傾向が現れていると思っております。
8ページをお願いします。このページは、内訳として、東京湾におけるCODと窒素の負荷量の推移を表しております。
9ページをお願いします。続きまして、伊勢湾の負荷量の推移となります。
10ページをお願いいたします。こちらは、瀬戸内海のCOD、窒素負荷量の推移を示したものになります。
11ページをお願いいたします。鉄鋼業の意見を述べさせていただきます。
鉄鋼業は、8次までの総量規制への対応として、設備投資、管理強化を進めまして、9次でも、引き続き、汚濁負荷量の排出抑制に努めてきております。また、この後、御説明する鉄鋼スラグの活用により、港湾・藻場の環境改善にも貢献しております。
第10次総量規制を検討するに当たりましては、藻場・干潟・深堀修復や栄養塩類の適切な管理等も含めた閉鎖性海域の水質改善をより効率的に実施する方策について、科学的知見を充実した上で、陸域からの汚濁負荷量の低減に偏重することなく、総合的・継続的な対策・支援を検討していただきたいと考えております。
続きまして、鉄鋼スラグ製品の活用について御説明いたします。
【赤司委員】 それでは、説明者を交代し、赤司より鉄鋼製品を活用した藻場造成とブルーカーボンへの取組みについて御説明させていただきます。
13ページをお願いします。まず沿岸域における藻場の重要性です。すでに皆様御存じのことですので簡単にいきます。藻場の沿岸域に、昆布やワカメなど、様々な海藻類が生えていることによりまして、当然、そこに生息するウニやアワビなどのような生物生息の場というところもありますが、大型類の魚類が産卵したり、育ったりする海のゆりかごと言われる場所や、場合によっては、レジャーの場というところにも、様々な用途で重要な場と今なっております。
14ページをお願いします。これに対しまして、この海藻の藻場は、古くは1900年頃から徐々に藻場がなくなってきて、一般的に磯焼けと言われる現象がどんどん広がってきていて、近年でも広がってきている状況でございます。
15ページをお願いします。これに対しまして、磯焼けの海藻が生えなくなる原因と対策です。様々な要因がありますが、一番左に一次要因、環境変化ということが書いてございます。幾つかありますが、主なものを挙げますと、まずはりん、窒素などの栄養塩が不足してきています。海草が生えるためには鉄分も必要だと言われています。また最近、地球温暖化と言われていますが、海水温の上昇というところです。それから、これだけではないと思いますが、海洋工事による流れ場の変化で、よく漁業者さんがおっしゃるのは、昔は天然の磯場があって海藻が生えていたが、そこに砂が流入してきて磯場を覆い尽くしてしまい、着生の場がなくなって生えなくなったということであったり、アマモだと、逆に砂が流出して、安定した砂場が確保できなくなり生えなくなったなどです。様々な海底の変化、流れ場の変化ということも要因になっています。
16ページをお願いします。これに対して、二次要因、直接原因です。対策として、まずは本日御紹介するものが二つありますが、一つ目が栄養塩の供給ということになります。
17ページをお願いします。まずは藻場造成、海の肥料です。皆さん、『森は海の恋人』であったり、森に木を植えると海が豊かになるというのを聞かれたことがあるかもしれません。もともとそのような栄養分、特に鉄分は山の土の中にあったものが、落ち葉が腐った腐食物質などと一緒になって腐植酸鉄となり、川を伝って海に流れ、海藻に行き渡っていたということです。それがなかなか自然現象でできなくなったので人工的に作ってあげましょうということで、鉄分を含有している鉄鋼スラグと森の中の落ち葉の腐植土、ホームセンターなどに売っている腐葉土ですが、これを混ぜ合わせて海に入れることで海藻を生やしてあげるという取組を、現在、全国で行っております。
18ページをお願いします。一つの代表事例で、最近、そのような海藻がCO2を吸収することをブルーカーボンと呼んでおりますが、最近の事例としましては、北海道の増毛町の増毛漁業協同組合さんと日本製鉄が共同で、このような藻場造成の取組を実施しまして、2022年にJブルークレジットの認証、5年間で49.5t、年間約10tの認証をいただいています。
19ページをお願いします。次に、流れ場の変化に対する対策として、岩場の基質材として、鉄鋼スラグで作った人工的な基質材を入れるという取組でございます。
20ページをお願いします。次はJFEさんの取組です。藻場礁としてのマリンブロックということで、鉄鋼スラグ、製鋼スラグと、排ガス(CO2)を原料として固めたスラグ炭酸化の固化体や、粗い粒度のスラグ剤を石材床として入れているマリンストーンなどを入れて藻場を構築するという取組をしてございます。
21ページをお願いします。その事例としまして、山口県の岩国市で、JFEスチールさん、漁協さん、高専さんで藻場造成を実施し、5年間で79.6tのCO2のJブルークレジットの認証を受けているというものでございます。
以上になります。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは続いて、資料4について、日本製紙連合会より御説明をお願いしたいと思います。
【小川環境管理部長】 製紙連合会の小川と申します。所属は王子ホールディングスです。
それでは製紙連合会から、製紙業界における水質総量削減への取組について御説明します。よろしくお願いいたします。
2ページをお願いします。本日の説明内容ですが、ここに掲載した1番~5番を中心に説明させていただきたいと思っております。
3ページをお願いします。初めに、製紙業界の現状を簡単に御紹介させていただきます。このグラフは、紙、板紙の生産量の推移を示したものです。現在、紙・パルプ産業は、電子化や少子化といった構造的な要因により、新聞や印刷情報用紙を中心に、需要が大幅に減少しているのが分かっていただけると思います。生産量は、2000年のピーク時に対しまして、現在では30%程度減少しています。その一方で、近年、気候変動対策や循環型社会サーキュラーエコノミーなど、持続可能な社会の実現に向けた取組が世界的に加速しております。
私たち製紙産業は、紙、板紙の原料となる木材を供給する森林を自ら植え、育て、使い、再び植えるという、持続可能な循環利用を行いつつ、CO2の吸収源、生物多様性の保全、水源涵養の恩恵を与えてくれている森林を維持、拡大することで、気候変動対策に貢献するだけではなく、森のリサイクル、紙のリサイクル、水のリサイクルを通じて、循環型社会の実現に高く貢献している産業だと思っております。今後ますます社会に欠かせないエッセンシャル産業として、持続可能な社会の実現へ貢献していきたいと考えています。
4ページをお願いします。まず製紙業界の排水の特徴ですが、生産に際して、非常に大量の水を使用しております。その水のほとんどが工程水であり、排水処理が必要な高濃度の有機物を含んだ排水となっております。その一方で、有害物質は非常に少ない排水となっております。結果として、全産業の中でも非常に多くのCODを排出している業種の一つでありますが、活性汚泥処理を中心に、加圧浮上、凝集沈殿処理等を組み合わせまして、発生した排水は全量処理して放流しております。
5ページをお願いします。このスライドでは、排水の簡易的な循環フローと、放流水の負荷について御紹介したいと思います。詳細なフローにつきましては、参考資料の最後のページに添付されておりますので、後ほど御確認いただければと思います。製造工程で使われる大量の水資源は、一部は蒸発などして失われますが、排水処理により浄化し、取水した90%以上を、再度、河川や海域に戻すことでリサイクル、負荷削減の取組を行っております。工程内の水についても、浄化を行い、処理済回収水として前工程に戻すことで再利用して、取水量の抑制に努めています。また、放流水の排水負荷につきましては、規制値よりも厳しい自主管理値を運用して管理しております。その結果、規制値並みの濃度で排出した場合と比較しまして、BODでは80%、CODは51%、SSは81%減ということで、大幅な排水の浄化を達成しています。このデータは当業界の1社の事例を紹介させていただきました。
6ページをお願いします。このスライドからは、3海域における過去からのCODの排出状況、実績値の推移について御紹介します。このグラフは、環境省の集計データを活用させていただきました。緑の棒グラフが排出負荷量、オレンジの点線のグラフが削減率となっております。閉鎖性3海域合計の排出量は、規制導入の1979年との対比では、直近の2022年で約61%削減となっております。削減傾向は現在も維持できていると感じております。絶対量の差はありますが、傾向は3海域とも同様で、削減傾向が見てとれると思います。しかしながら、削減対策はもうやり尽くした感がありまして、私たちでは現状レベルから悪化させないという取組を続けているのが現状になります。
7ページをお願いします。続きまして、窒素、りんについて、CODと同様なグラフを作成しております。製紙工場では、原料である木材、もしくは薬品等由来の窒素、りん成分もございますが、メインは排水処理における活性汚泥の栄養剤として窒素、りんを使用していることだと考えております。良好な生物処理が維持できる範囲内で添加量を削減しまして、生物処理工程後の残窒素、残りんを把握することで、1999年対比、窒素は57%、りんは51%の削減をしてきております。
8ページをお願いします。続きまして、海域ごとの窒素、りんの排出量の推移です。上段に窒素、下段がりんになります。少々凸凹もございますが、減少傾向につきましては、3海域とも同様な結果です。当業界の瀬戸内海に放流している某事業所におきましては、周辺海域の調査において、窒素不足が確認されました。その対策としまして、下水道局の緩和措置と、陸域からの主要リソースである製紙工場起源の窒素について、水質と生物生産性(植物プランクトン)の両面から、現在、評価手法の研究に協力させていただいていると聞いております。
9ページをお願いします。閉鎖性海域に排水する紙パルプ事業所のうち、ここでは東京湾からA工場、伊勢湾からB工場、瀬戸内海からC工場を選定しまして、過去からの投資費用や投資案件について取りまとめを行いました。まず東京湾のA工場ですが、1994年に首都圏から発生する古紙を原料とする、古紙、パルプ主体の工場等に変化しました。総量規制導入以降、CODは最大負荷時の1988年から直近までに85%削減しており、水質改善設備は約26億円を投資しております。最近10年間では約2億円を使いまして、前段クロフター(加圧浮上設備)を新設しまして、そのほか検知器類の更新、老朽化工事などを実施しております。排水処理にかかるランニングコストは、年間2.3億円と聞いております。続いてB、C工場ですが、こちらはパルプから紙まで生産する大型の一貫工場になります。B工場では、総量規制導入以降、順次、発生源対策と排水処理設備の増強を行っております。CODは最大負荷時の1988年から直近まで58%削減し、設備には152億円を投資してきました。2000年にクラフトパルプのECF化を実施しております。ここ最近では大きな投資は行っておらず、老朽化対策や検知器類の更新等を行っています。排水処理にかかるランニングコストは年間9億円と聞いておりまして、この費用につきましては、環境改善費用の約3割と聞いております。続いてC工場は、総量規制導入時に31.5t/日のCODを排出しておりましたが、クラフトパルプへの切替えを進め、90年以降、設備の更新を、順次、行っております。また、2004年からは、B工場同様、パルプのECF化を行いました。C工場の場合、CODは69%の削減となっておりまして、設備投資は335億円となっています。最近10年間では1億円程度の投資により、老朽化対策、高速凝集沈殿処理の設置、検知器類の更新を行っています。排水処理にかかるランニングコストは年間10億円と聞いています。
10ページをお願いします。製紙産業は、これまで説明させていただきましたように、工場によって差はありますが、COD、窒素、りん共に大幅に削減し、その努力を継続しています。規制値の遵守はもちろんですが、規制値の内側に自主管理値を設け、日々、工程管理を行い、削減実績となっております。現状設備を最大限有効に活用して、老朽化対策を徹底することで、規制値の遵守と排水負荷の削減を達成、維持していきます。私たちは、第9次より提唱されております、規制値ありきではない排水の適正管理という考え方に賛同しております。今後、民間企業においても、栄養塩類の緩和策が、その方法を含め、前向きに検討されることを期待しています。
11ページをお願いします。ここからは製紙業界の環境への取組事例を幾つか紹介していきます。まずは森林保全の取組についてです。製紙メーカーは「木を使うものには木を植える義務がある」という考えの下、過去からも、これからも森林の育成に携わっていきます。健全に管理された森林は、CO2吸収、生物多様性保全、水源涵養、レクリエーションの提供等、様々な恩恵をもたらしてくれます。
12ページをお願いします。弊社王子グループの国内社有林、約19万haの多面的機能について、経済価値を試算した一例になります。こちらは、林野庁の「森林の公益的機能の評価額について」という発表の手法に基づき試算しました。その結果、年間で5,500億円もの経済効果があることが分かりました。
13ページをお願いします。現在、北海道の猿払村で、北海道大学と共同で森林の価値の評価を行っているところです。
14ページをお願いします。続きまして、海洋プラスチックごみ問題の対応です。ここに一例で紹介するプラスチックから紙への代替を中心に、環境配慮型パッケージやリサイクルシステムを提案し、プラスチックごみの問題への貢献を図っております。
15ページをお願いします。国内では、3年前に施行されましたプラスチック資源循環促進法に基づき、新たな独自目標を立てて取り組んでおります。一つは、埋立てや熱回収をせず単純焼却をする再資源化できていない廃プラスチックを2030年度までにゼロにしていきます。また、環境配慮型パッケージを2030年度までに5,000t以上販売するという目標を掲げて取り組んでおります。
16ページをお願いします。最後になりますが、環境への取組事例としまして、これまでも実施しておりました原料確保、森林育成のための植林活動、森林の健全な管理のための間伐作業を継続しています。また、CSR活動としましては、船を使っての海洋清掃活動、陸でも海岸、河川周辺の清掃を継続しております。これらの活動により、地域と共生し、豊かな水環境を守る取組を継続していきます。
これで製紙連合会からの報告を終わります。御清聴ありがとうございました。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問をお受けしたいと思います。挙手マークを押していただければと思います。いかがでしょうか。
田中先生、お願いいたします。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございます。それぞれの業界で取り組まれている内容は、非常によく分かりました。
それぞれの業界ごとに、処理について、幾つか御質問します。
まず、日化協からいただいた情報で、いろんな取組をしてきていますが、結局、老朽化や場所がないということで、なかなかレベルアップが難しいということでした。先ほど御説明いただいた中に、おそらく標準的には入っていないと思いますが、MBRの話が出ていました。MBRというのは、まさに今、既存の施設の更新スペースをうまく有効に使い、さらに処理レベルを上げるということが可能な技術として非常に期待されていますが、実際に今、化学工業協会の中ではどの程度そういうものが入っているのでしょうか。
もしあまり普及していないとなると、先ほど言われていた最後のほうの排水処理施設への技術的、経済的な配慮ということに、どのような配慮が求められようとしているのかということについて、コメントがいただければ有り難いです。
それから日本鉄鋼連盟です。ここも非常に興味深い話が出てきました。私はよく知らなかったのですが、CODの対策の中でオゾンや活性炭を使われてるケースがあると言われていたのですが、一体どれぐらいの割合、導入している例があるのかということが1点目です。
2点目は、地球環境の問題で、今、鉄鋼の特に製鉄のプロセスをグリーン化といいますか、GX化で、水素を使ったりというような新しい技術開発をされていると思いますが、そういうことを考えていったときに、そのような技術がもし導入されたとすると、CODや窒素の排出負荷については、今後どのような影響が出てくるかということについて教えていただきたいという点です。
最後に、紙パルプ、日本製紙連合会です。ここも非常に興味深かったです。確かにこの処理が有機物中心に処理するので、活性汚泥を使う場合に、当然、栄養が足りないので、N、Pを多分添加されているのだろうと思います。そうすると、先ほど言われた中で十分理解できなかったのが、緩和ということを言われていたのですが、これは例えば栄養塩の増加運転が求められたときに、結局、添加する費用を増やすのか、それともCODの緩和そのものをやってほしいという意味なのか、もしCODの緩和をやるとすると、N、Pについては増加はあまり期待できないと考えたらいいのか、このポイントをそれぞれの方からお聞きしたいです。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、日化協、鉄鋼、製紙の順番で御回答をお願いいたします。
【柳谷部長】 日化協、柳谷でございます。
MBRについて、実際のところはそれほど普及しているものではないと考えます。理由としましては、そもそもMBR自体が高価だということ、それから管理がそれなりにかかるということで、ランニングコスト等も含めると、なかなか普及するものではないのかなと考えております。そういう意味でも、先進技術でもありますので、その辺りの導入に関しては、補助金等や固定資産税の減免など、そのようなところでバックアップをしていただければ、こういうものも導入されていくのではないかと考えます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、鉄鋼連盟、いかがでしょうか。
【木森主査】 鉄鋼連盟の木森です。
まず活性炭吸着、オゾン処理の普及率についてです。申し訳ありませんが、導入している事業所があるというのは把握していますが、普及率までは把握していないという状況でございます。
次にGX、脱炭素の影響についてです。コークス炉について、還元剤としてのコークスの使用量が減ることになれば、コークス炉から発生する安水も減りますので、この安水に起因するCODや、窒素の排出量については減っていくということが想定されます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、製紙連合会ですね。
【小川環境管理部長】 製紙連合会からです。
先ほど日化協の方からの報告にもありましたが、やはり民間企業における栄養塩類のコントロールというのは非常に難しいのではないかと我々も感じております。メインの窒素源、りん源は活性汚泥の栄養というように我々は理解していますので、おっしゃるように、窒素、りんを上げようと思うと、栄養剤の過添加となりCODやSSも必然的に上がるのかなと考えておりますので、その辺りをどのような方法でコントロールするのがよいのかという方法論も含めて、今後、民間企業へフィードバックしていただきたいというのが我々の期待です。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございます。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございました。
【古米委員長】 それでは、珠坪委員、古川委員、三宮委員、小川委員の順番で、まず珠坪委員よりお願いいたします。
【珠坪専門委員】 御説明ありがとうございました。
日化協さん、日本製紙連合さんにお伺いします。日化協さんは、実際にその工場によって状況は違うと思いますが、なかなか季別運転をしっかり行うのが技術的には難しいというお話があった一方、製紙連合さんは、積極的に手法等がある程度検討されれば、栄養塩管理を行いたいというような御発言があったと思います。
恐らくこのような栄養塩管理は、水処理に人員がどの程度割けているかというところが重要かと思いますが、それぞれ日化協さんと日本製紙連合さんに、現在、こういった排水処理施設に十分な人員が割けているかどうか、その辺りの状況を伺えればと思います。
よろしくお願いします。
【古米委員長】 では、続けて、古川委員、お願いします。
【古川専門委員】 委員長、ありがとうございます。古川からは、一つコメントをさせていただきたいと思います。
日本化学工業協会様、日本鉄鋼連盟様、日本製紙連合協会様の御説明がありましたように、産業界は総量削減対策に最大限取り組んでいます。各業界で排水処理設備の更新や保全投資も同じ状況であり、日本化学工業協会では投資額も近年増加しているという御説明でした。また、これから追加対応によるGHG排出増加という、トレードオフが困難な課題にも取り組んでいます。このような状況下、栄養塩管理にも協力している事実もございますし、同時に森づくり、藻場、干潟の造成などを通じても、産業界は水環境の改善に貢献しています。
しかしながら、このような取組をする中でも、産業界の陸域からの負荷削減は共通して大きな課題であると考えております。陸域からの負荷削減やその他の要因が環境基準に与える効果などについては、これまで各方面で鋭意御検討いただいているところではございますが、引き続き科学的検証への御尽力をお願いいたします。実効的な対応には、この科学的検証を基に仕組みや運用の合理化について議論していくことが最も重要であると考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 コメント、ありがとうございました。
三宮委員、どうぞ。
【三宮専門委員】 国総研の三宮でございます。御説明ありがとうございました。
私からは、まず日本化学工業会さんにお伺いします。季節別運転、栄養塩類の管理、これに関して取り組まれている企業さんもおられるとを伺いました。どの地域で取り組まれているのか、また、どのぐらいの企業さんが取り組まれているのか、そこをお聞かせいただきたいと思いました。
それから、日本鉄鋼連盟さん。こちらはまだどちらかというと、引き続き、汚濁負荷物質の発生抑制という取組が中心だと感じたのですが、自治体の管理計画に基づく海域への計画的な窒素供給も書かれていました。これは栄養塩類の供給に関する自治体からの要望があるのかなと思いましたが、それに対してはどれぐらい応えられている企業さんがあるのか、お聞かせいただけたらと思いました。
以上でございます。
【古米委員長】 続いて、小川委員、どうぞ。
【小川専門委員】 どうも御説明ありがとうございます。
化学工業の資料のうち、スライド8ページを見せていただきますと、COD、TN、それからTPは低濃度に維持しているということです。ただ、表を見ますと、排出量の原単位が100万円当たりの排出量と示されているのですが、通常、原単位といった場合には、排水量当たりなどの形式で評価すると思うのですが、その点はいかがでしょうか。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、それぞれの団体から、御質問に対する御回答をお願いしたいと思います。
まず日化協からお願いします。
【柳谷部長】 それでは、日化協からまず季節別の運転についてです。化学の場合、業種がかなり多様でして、そのような栄養塩管理をできる企業とできない企業というのが、かなり多種多様だと認識しております。例えば肥料工場のようなところは比較的このようなことに協力的かと考えております。
また、古川委員からの陸域への負荷削減に関してということです。当然、負荷削減をやらないというわけでもなく、継続的に負荷削減はしていきながら、豊かな海ときれいな海の両立というようなところで、栄養塩管理等、協力できるところは協力していきたいと考えております。
それから、三宮委員からありました季節別の栄養塩管理についてです。化学業界、日化協の会員の中でアンケートを取ったところによりますと、主に兵庫県でそのような対応を取っているということで、瀬戸内海のところで対応しているのかなと。そのほかにも三重県など、動きはあるようですが、現状、兵庫県のところで把握している限りでは、3社が対応していると聞いております。
また、小川委員の8ページの原単位のお話です。我々は通常、金額ベースでの原単位をずっと統計として取っておりましたので、排水量を原単位とした負荷量は、今のところ、把握していないという状況でございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、鉄鋼連盟からお願いいたします。
【木森主査】 鉄鋼連盟の木森です。
三宮委員から御質問のありました、自治体の管理計画に基づく窒素供給への対応、どれくらい対応しているかということですが、瀬戸内海にある一つの事業所で対応しております。
【古米委員長】 三宮委員の、自治体のそういった動向に対して、鉄鋼で対応されている企業があるかどうか、という御質問はいかがでしょう、三宮委員。
【三宮専門委員】 御回答、ありがとうございました。
季節別運転に関する自治体からの要望が瀬戸内海であり、今のところ御対応いただいているところが1社あるということでよろしいですね。
【木森主査】 はい、そのとおりです。
【三宮専門委員】 分かりました。ありがとうございました。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、大野委員、お願いしたいと思いますが、簡単に、端的にお願いできればと思います。
【大野専門委員】 はい、分かりました。
日化協様にお聞きします。先ほどの排出原単位で、100万円当たりの処理できる排出量ということで8ページに記載があります。第7次からずっと見ていきますと、どんどん下がっていますが、これは恐らく保全費用の増加ということで、老朽化への対応や新増設のコストアップというところで下がっているのだと思います。今後、さらに原単位が下がっていく傾向にあるのか。つまり業界として、この排水処理の負荷というのはもっと上がっていく傾向にあるのか、それとも、もうこれ以上は上がらないのかといったところを一つお伺いしたいと思います。
もう一つです。次は日本鉄鋼連盟様です。パワーポイントの6ページに、第5次、第6次にアルカリストリッピング法を導入され、確実に5次、6次で窒素が下がっているというデータをお示しいただいていますが、9ページの伊勢湾の結果を見ますと、この5次など全窒素が上がっていたり、それ以降あまり下がっていないような傾向があります。東京湾や瀬戸内海は下がっていますが、この原因みたいなものが分かればお教えいただければと思います。
以上でございます。
【古米委員長】 いかがでしょうか。日化協と、それから、原単位の今後の傾向です。
【柳谷部長】 今後の傾向についてです。実際、今、下げる方向ではなるべく努力はしているのですが、今後、設備の更新、新しい活性汚泥処理設備を建てるなど、そういうことになってきますと、規模にもよりますが、20億円~30億円というお金がかかってくる場合もございますので、そういう場合、この原単位というのはかなり上がってくる可能性はあると認識しております。
【大野専門委員】 すみません。この原単位の見方ですが、100万円当たりで処理できるCODの量という意味ではないのでしょうか。これが下がるということは、処理できる量が少なくなるという意味だと私は思ったのですが。
【古米委員長】 排出源単位ですので、その製品を作るためにどれだけその排出量があったという値ですが。
【大野専門委員】 すみません。では、勘違いでした。
【古米委員長】 それでは、鉄鋼連盟から、9ページの伊勢湾でTNが増加しているところについて、いかがでしょうか。
【木森主査】 日本鉄鋼連盟です。規制以前のデータは1999年のデータを載せていますが、ちょうどこの年に、伊勢湾にある一つの事業所で生産量が落ちていたという状況がありましたので、そういった影響が出ているのではないかと考えております。
【古米委員長】 よろしいでしょうか。
【大野専門委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【古米委員長】 それでは、この3件についてを終了させていただいて、次に移らせていただきます。
次は、東京湾の関係都県として、東京都、千葉県から御説明をお願いしたいと思います。
先ほどと同じように、2件続けて説明して、その後、質疑となります。
まず資料5について、東京都より御説明をお願いします。
【大久保課長】 東京都環境局自然環境部の大久保と申します。
私からは、東京都における総量削減の現状と課題について御説明をさせていただきます。
2ページをお願いします。事前にいただいておりますヒアリング項目について、御覧の5点に整理して、本日、御説明をさせていただきます。
3ページをお願いします。最初に、総量削減指導による汚濁負荷量の推移についての御説明です。
4ページをお願いいたします。東京都における負荷量削減の全体像でございます。第1次総量削減方針、1979年頃の東京都内からの東京湾への負荷量は、BODで日量約290t、CODで日量約210tでございましたが、2022年には、それぞれ約29t、約42tに削減をしております。また、全窒素、全りんにつきましても、資料記載のとおり、削減が達成されているような状況でございます。また、令和5年度末時点での汚水処理の人口普及率が99.9%となっておりまして、大幅な負荷量削減が図られてきている状況でございます。
5ページをお願いします。こちらは、東京都以外を含めた東京湾への1日当たりのCODの負荷量についての推移でございます。第1次総量削減で約480tから150tまで削減をしておりまして、このうち東京都の負荷量につきましては、約80tから約46tに削減をされている状況でございます。
6ページをお願いします。こちらは全窒素、全りんでございますが、こちらも御覧のとおり、削減傾向の推移が続いている状況でございます。
7ページをお願いします。東京都における事業場指導の状況についてでございます。他の自治体様と同様と思われますが、立入検査等を行い、規制基準の遵守を求めるとともに、基準超過に対する指導を行っております。また、一般家庭等における生活排水対策の普及や啓発活動も行っております。
8ページをお願いいたします。次に、東京湾の現況について御説明をいたします。
9ページをお願いいたします。こちらは東京湾の流域をスライド左側に示したものでございます。一部地域を除きまして、ほぼ全域が総量規制指定地域となってございます。スライドの右側につきましては、東京都内湾の水質測定地点を示したものでございます。
10ページをお願いいたします。こちらは東京湾の水質の経年変化でございますが、近年、横ばいの傾向にございます。全窒素については1L当たり1mg程度、全りんにつきましては0.09mg前後で推移しておりまして、環境基準値前後の値となってございます。
11ページをお願いします。東京都内湾の赤潮の発生状況についてです。依然としまして夏季の赤潮発生状況に大きな変化が見られないという状況でして、経年的に言いますと、発生回数としては年間15~20回程度、発生日数としては70~90日程度で推移しているという状況でございます。
12ページをお願いします。赤潮の発生規模を長期変化で見てみますと、閉鎖性の高い東京港内で部分的に発生する回数が増加傾向にある一方で、内湾で広く発生します赤潮については、発生回数が減少しているということが見てとれるグラフになってございます。
13ページをお願いします。こちらは、全窒素、全りんの比を見たものでございまして、レッドフィールド比よりも高い値、近年は10~11程度で推移をしております。このことから、りん制限寄りの推移と考えております。
14ページをお願いいたします。東京都内湾の水生生物の生息状況についてです。都の環境局では、昭和61年から水生生物調査を継続的に実施しております。グラフは水深25m程度の地点での成魚調査の経年変化でございます。折れ線グラフが底層DO、棒グラフが魚類の出現個体数を示しておりまして、夏季は底層DOが2mg/L以下の貧酸素状態になることが多く、回復が不十分な秋季を含めまして、魚類がほとんど採集されないような状況が、長期的に続いているという状況でございます。
15ページをお願いします。こちらは、底生生物の状況を示したものでございます。左側の春季に比べまして、夏季は出現種数が少なくなる傾向にございますが、特に水深が11m程度の内湾部におきましては、夏季にほとんど生物が確認できない状況になっています。一方で、浅海部、河口部、干潟部につきましては、その減少度合いが少ないことが見てとれるかと思います。
16ページをお願いします。こちらは生物種類数の底層DOの季節変動を、先ほどの地点で見たものでございます。9月の調査では、下層の溶存酸素量が低く、生物種類数が激減する状況になっております。9月の写真では、貧酸素耐性の高いホンビノスガイ以外は、いずれも死骸や骨という状況でございます。貧酸素水塊の解消から一定程度経過した2月の調査では、再び多くの種類が確認されてございます。毎年このようなサイクルを繰り返していることから、生物の生息域の確保としては課題が残っているような状況です。
17ページをお願いします。こちらは、東京湾の底層DOの平面分布についての長期的推移を示したものでございます。赤色で示す貧酸素域は、2000年~2010年頃にかけて、湾奥部の東側で縮小する傾向が認められたのですが、その後、同じ海域では再び拡大傾向がございます。この原因としましては、表層水温の上昇などにより、成層構造が強まって、表層のDOが下層に供給されにくくなったことや、プランクトン、バクテリア等の生物活性の変化などが考えられると思っております。こちらに関しましては、東京都の環境科学研究所において調査研究を行っているところでございます。
18ページをお願いします。続きまして、赤潮の発生と貧酸素水塊の発生状況をお示ししたものでございます。6月~10月までの間には、赤色で示すように、底層に厚い貧酸素水塊が形成されていることが確認できるかと思います。
19ページをお願いします。東京湾では、流入する河川の感潮域においても、夏季を中心に魚類のへい死が発生してございます。こちらは、貧酸素水塊が遡上することに加えまして、降雨による底泥の巻き上げなどの要因が重なって、水生生物の生息域としては適さない酸素濃度となる現象が、現在も引き続き見られているという状況にございます。
20ページをお願いします。次からは、海岸整備等による生物生息域の創出・多様な主体との連携についてでございます。
21ページをお願いします。東京都内湾の水面利用の状況についてです。漁業権につきましては、昭和37年に内水面漁業以外の内湾漁業権が廃止されてございます。自由漁業からの水揚げ量については、資料に記載のとおりとなっております。漁業以外の産業利用として特徴的なものとしては、物流施設としての利用がございます。また、お台場海浜公園や葛西海浜公園など、臨海部に多くの海浜公園が整備されている状況でございます。
22ページをお願いします。生物の生息環境の保全・再生の取組としましては、既存の海浜・浅場を活用しまして、多様な生物生息環境のネットワーク形成をすることを目指しております。また、水生生物に配慮した護岸構造にすることなど、生物の生息環境の保全に努めているところでございます。写真の右下の葛西海浜公園の干潟は、ラムサール条約湿地にも登録されているところでございます。
23ページをお願いします。こちらは、底質の改善に寄与する汚泥浚渫事業についてでございます。昭和47年から、資料でお示ししているこちらの範囲で浚渫を実施しています。
24ページをお願いします。次に、情報発信、普及・啓発の取組です。都で実施しております、水質検査の実測値や基準超過の状況などを一覧できるような資料を掲載しているほか、25ページにございますように、赤潮の発生状況や、九都県市で連携して調査を行うなど、普及啓発の取組も行っているところでございます。
26ページにございますのは多様な主体との連携です。東京湾大感謝祭への出展や、広域会議への参画なども行っております。
27ページをお願いします。こちらは下水処理の高度化、合流改善の取組についてです。
28ページをお願いします。東京都におきましては、下水処理水の水質改善のために、高度処理・準高度処理施設の導入を進めております。標準活性汚泥法と比較した準高度処理施設及び高度処理の特徴については、御覧のとおりとなっております。
29ページと30ページが、区部と多摩地域の高度処理化の状況を示したものでして、どちらの地域におきましても、着実に取組を進めている状況でございます。
31ページをお願いします。こちらは合流式下水道の改善対策でございます。下水道法施行令の雨天時放流水質基準の達成に必要な貯留施設等の整備につきましては、令和5年度末に完了したという状況です。中長期的な目標としての貯留量につきましては、280万㎥となってございます。
最後に、取組を進めるに当たっての課題でございます。
33ページをお願いします。大きく3点まとめております。
一つ目は、負荷量の削減に対する水質改善の応答性についてです。ここまで御説明しましたとおり、負荷量の削減というのは進んできてはいますが、やはり他の閉鎖性水域と経年的に比較しますと、COD、窒素、りんは依然として高い濃度レベルにあると認識しております。東京湾の水質、赤潮の発生状況に関してはまだ改善途上のフェーズにあると思っておりまして、負荷量削減と水質改善の応答性を含めまして、継続的な把握が必要と考えてございます。
2点目は、雨天時放流水の対策と負荷量の関係についてです。合流式下水道の改善が推進されることで、雨天時放流回数が減少しているということで、負荷量は着実に削減されているところではありますが、現状の総量削減制度では、その効果が直接は反映できないという状況で、見かけ上はこの下水処理水が増えてしまいますので、負荷量の増として算定されるということがございます。こういったことから、合流改善の効果を適切に評価できるような手法が必要であるという認識を持っております。
3点目としましては、底層DOの環境基準と総量削減の関係についてです。新たに底層DOの環境基準が導入されております。生物の生息の指標としては、直接的に評価できるものであるのですが、総量削減との関係がなかなか見えづらいとも感じております。そのため、底層DOの環境基準達成に向けた取組がこれから強く求められると思いますが、水域の水質モニタリングと汚濁負荷の削減に関して、こちらは長期的に把握をしていくことが必要だろうという認識を持ってございます。
駆け足ではございましたが、御説明は以上です。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、資料6について、千葉県からお願いいたします。
【佐久間副課長】 千葉県環境生活部水質保全課の佐久間でございます。よろしくお願いいたします。
私からは、千葉県における汚濁負荷対策の取組状況について説明させていただきます。
本県では、令和4年10月に策定しました第9次の計画により、各種施策に取り組んでいるところでございます。
2ページを御覧ください。千葉県の東京湾における水質の現状を御説明いたします。ここでは、東京湾における水域類型と環境基準値をお示ししております。この辺りは皆様、御承知いただいていると思いますので、詳細の説明は省略させていただきます。
3ページ目を御覧ください。千葉県における環境基準達成状況の推移を御説明いたします。まずCODについて、左側のグラフが東京湾の環境基準達成率の推移となります。環境基準の達成率は40%~60%の間で推移しており、ほぼ横ばいの状況でございます。右側のグラフは水域ごとの75%値を示したものでございます。上から、A類型、B類型、C類型となっております。C類型では、全ての水域で環境基準を達成しておりますが、A類型、B類型では環境基準を超える地点が多くなっております。いずれの類型においても、経年的に見て、ほぼ横ばいで推移しているような状況でございます。
4ページ目を御覧ください。全窒素について御説明いたします。左側のグラフに示すとおり、東京湾の環境基準の達成率は年々上昇しており、近年では100%を維持しております。右側は年平均値のグラフでございますが、長期的な傾向としては、Ⅱ類型、Ⅲ類型、Ⅳ類型のいずれにおきましても、低下傾向となっております。
5ページ目を御覧ください。全りんについての環境基準達成率の状況を御説明します。令和元年以降は100%が続いておりましたが、令和5年度は1か所で環境基準が未達成となったというところでございます。右側のグラフは年平均値の推移となっております。こちらは長期的には低下傾向でございますが、近年は横ばいになっているような状況でございます。
6ページ目を御覧ください。こちらは赤潮・青潮の発生状況でございます。赤潮の発生状況は上段のグラフとなります。赤潮は、年間を通じて、船舶による海域調査により把握をしております。令和5年度の状況は、延べ52日間調査しまして、そのうち17日で赤潮が確認されたということで、割合は33%となっております。その下が青潮の発生状況になります。青潮は港湾関係課や漁業関係課、臨海部に位置する市町村環境保全担当課から情報を収集しております。過去から継続して発生しており、令和5年度は、4回、青潮の発生を確認している状況でございます。
7ページ目を御覧ください。東京湾に流入する汚濁負荷量の推移を御説明させていただきます。千葉県では、総量削減計画を策定し、工場排水の総量規制や下水道整備等、各種施策を進めてきたところでございます。その結果、東京湾に流入するCOD、窒素含有量、りん含有量、いずれの指定項目も、グラフの一番左側にあります昭和59年度と比較しまして、5割程度削減しているような状況でございます。三つに色分けしているどのカテゴリも、負荷量の削減が進んでおります。特に負荷量の大半を占める白色の部分の生活排水系の削減が大きいのですが、近年の削減量は微減という形で推移しているところでございます。
以上が水質の現状になります。
8ページ目を御覧ください。次に、現在の第9次総量削減計画に係る取組を御説明いたします。まず生活排水対策です。県では千葉県全県域汚水適正処理構想を策定し、下水道や集落排水、合併処理浄化槽等の各汚水処理施設の整備を推進しております。下水道については、東京湾に流入する流域下水道は2か所あり、そのうちの一つである江戸川左岸流域下水道では、県北西部の東京湾流域にある8市からの汚水を処理しております。この地区の下水量の増加に対応するため、既存の終末処理場に加え、新たに江戸川第一終末処理場の整備を行っており、第1系列が令和3年3月から供用を開始し、現在は水処理施設の増設を進めているところでございます。江戸川第一終末処理場や花見川第二終末処理場などにおいては、東京湾における窒素やりん等に起因した富栄養化による水質汚濁を防止するため、これらを効率的に除去する高度処理を行っているところでございます。
9ページ目を御覧ください。浄化槽について御説明いたします。県では、昭和62年度から、国・市町村と協調して、合併処理浄化槽設置促進事業を開始いたしました。その後も、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換時の撤去費の上乗せ補助や、転換時の補助対象を宅内配管工事費に追加したほか、閉鎖性水域の流域において窒素除去能力の高いN10型の設置に対する上乗せ補助を新設するなど、補助制度を拡充してまいりました。また、浄化槽の適切な維持管理を行っていただくため、浄化槽設置者への啓発も継続して行っております。特に千葉県は、浄化槽の法定検査受検率が低いという課題があることから、近年は法定検査を受検していない者に対する指導にも力を入れているところでございます。
10ページを御覧ください。産業排水対策についての御説明でございます。東京湾に流入する指定地域内の総量規制対象事業場に対し、法に基づく定期的な立入検査を実施し、基準の適合状況の確認や指導等を行っております。また、本県では、企業、県、地元市の三者間で環境の保全に関する協定を締結しまして、法令よりも厳しい排出水の濃度や負荷量の基準を設定しております。この協定は、大規模な工場群が立地してコンビナートを構成する千葉市から富津市に至る東京湾沿岸部を対象地域とし、一定規模以上の工場を対象としております。これらの取組の結果、協定工場から排出されるそれぞれの負荷量については、グラフに示すとおり、順調に削減が進み、昨今は横ばいの状況となっております。
11ページを御覧ください。その他の発生源対策をまとめております。農地に由来する汚濁負荷量の削減を図るため、緑肥の活用を推進しています。また、畜産排水対策としては、家畜排せつ物の適正処理や堆肥の有効活用を推進しております。具体的には、処理施設整備の経費の補助をするとともに、県内の畜産農家が生産する家畜ふん堆肥の情報をホームページに掲載し、閲覧できるようにすることで利用する人とのマッチングをしております。さらに、養殖漁場の改善として、養殖場の環境が良好に保たれているか調査し、適正な給餌、適正密度での飼育などの技術的指導を行っている状況でございます。
12ページ目を御覧ください。ここからは総合的な水環境の改善を図るための取組を一部紹介いたします。浦安市から千葉市地先の海域には、埋立用材として水底土砂を採取した跡が大規模な深堀部として残っております。深堀部は水深25m程度と、周辺の海底よりも著しく深く、周囲が急傾斜であるため、漁業の操業に支障が生じるなど、また夏季には水中の酸素が欠乏し、水産生物が生育できないなど、漁場としての機能の低下も起こっております。本県では、深堀部の漁場機能を回復するため、海上保安部や漁業関係者と調整を図りつつ、港湾工事等で発生した良質な水底土砂を用材として活用して、昭和56年度から深堀部の埋め戻しを行っております。また、東京湾の湾内の埋立開発等の残さい及び港湾活動に伴う廃棄物の漁業系以外の海底障害物が数多く存在し、漁業操業に支障を来していることから、漁具により障害物の撤去をするほか、大きな海底障害物の確認調査を行い、さらにその除去を行っております。
13ページ目を御覧ください。藻場・干潟の保全活動として、漁業者などが実施する活動に対して支援を行っております。例としては、アサリ等を食害するツメタガイの除去や、藻場のための食害防除網の設置、母藻の投入などがあります。この右側の写真は、除去したツメタガイを網に入れたものです。また、千葉県水産総合研究センターでは、大学やその他の研究機関と連携しながら、貧酸素水塊対策や栄養塩類等に関する研究を行っております。
14ページ目を御覧ください。情報発信として、県では、漁業者など共同で水質の観測を実施しております。その他、関係機関から情報の提供を受けながら、県ホームページで、東京湾貧酸素水塊分布予測システムにより分布状況を推定し、その画像を公開するとともに、関係機関と連携して貧酸素水塊速報を発行しています。また、啓発活動としては、県内の環境イベントである「エコメッセinちば」や「いちはら環境フェスタ」に出展し、赤潮や青潮の発生に関すること、生き物による水質浄化、東京湾のプランクトンなどについて、県民に分かりやすく理解してもらえるような活動を行っております。
最後の15ページ目に、今後の課題等を整理いたしました。近年の水質の状況として、生活産業排水対策が進み、汚濁負荷削減が進んでいるものの、横ばいの状況となっております。特に、CODの環境基準の達成率は概ね40%~60%で推移している状況にありますが、依然として赤潮・青潮の発生も見られるため、引き続き、汚濁負荷を低減する対策が必要な状況にあると認識しております。また、一部海域では栄養塩類の不足を指摘する声もございます。引き続き、慎重な検討を進めていく必要があると考えております。
千葉県からの説明は以上となります。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関して、御意見、御質問をお受けしたいと思います。
皆様、いかがでしょうか。
田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございます。
東京都に1件、それから千葉県に1件、質問です。
東京都の一番最後、33ページに述べられた雨天時の放流水対策と負荷量の関係のところで、先ほどコメントされた総量規制制度の評価上の課題についてです。具体的に言うと、合流対策で、吐口から現在出ている負荷量が、総量規制では、特定施設ではないのでカウントされていない。一方で、下水処理対策したものが全て下水処理場に送られ、処理されて削減されているが、そこから出てくる負荷量については、特定施設になっているので、かなり雨天時も含めて数字が出ている。したがって、合流式の吐口から出てくる負荷量をきちんと推定してくださいと。それは、もう既に分流式の雨水については、おそらく原単位か何かで出ているのだけど、そういうことが東京都では算定が可能なので、そういう形をやってくださいという理解でいいですか、というのが1点目の質問です。
それからもう一点は、東京都の河川についても、底層、魚のへい死の問題がかなり強調されていましたが、ここの河川の底質の巻上げの由来の底質というのは、どのようなことを考えられているのでしょうか。例えば雨天時の下水道関係の排水、あるいは、あるのかどうか存じ上げませんが、廃棄物の処分場のような、雨天時の影響を受けているような陸域由来のものをイメージされているのか。それとも、東京湾の海域側での栄養塩がまだ過剰で、そこから入ってくる栄養塩で生産された藻類が蓄積している部分がかなりあるので、それ由来が多いのか。その辺りのイメージが分からなかったので、教えていただきたいという点です。
それから、千葉県は15ページ、今後の課題の四つ目のところです。説明があまり具体的になかったので、細かい点を教えてください。ノリ養殖漁場を含む一部の海域での栄養塩類不足ということが書かれていますが、一体どの辺りの水域で、何の栄養塩がどの程度不足していて、そういうことをリクエストする声がかなり地域で起こっているのかどうか、この辺について情報を下さい。
以上です。
【古米委員長】 それでは、東京都、千葉県の順番でお願いします。
【大久保課長】 御質問ありがとうございます。2件、御質問をいただきました。
1件目、雨天時放流水の対策に関してですが、課題認識としては、御指摘いただいたとおりでございます。合流式下水道から出てくる排水の算定をというよりは、現在の総量削減制度の中ではアウトカウントになっている雨天時の放流水を、しっかり汚濁負荷としてカウントして、その削減効果が見えるようにしていく必要があるのではないかというところに課題意識を持っております。
もう一件、河川の魚のへい死に関してです。原因に関しましては、様々な原因が複合的に起きているのかと思っております。御指摘のありましたような陸由来のものもございますし、この辺りは感潮域ですので、資料に記載してありますように、海域から低酸素の水塊が定期的に遡上してきますので、そういった影響もあるのではないかと考えてございます。
【田中臨時委員】 確認ですが、最初のほうに言われていたのは、合流の吐口からの負荷量が、現在、総量規制の中の負荷量として算定されていない一方で、下水処理場は、出口側はモニタリングされているので、そこからはカウントされていて、要するにもともと余分に入ってくる量がカウントできていないので、それをカウントすべきだという意見ですよね。そういう理解でいいですか。
【大久保課長】 現在、既にもう雨天時の放流水という汚濁負荷がありますが、それは今の制度の中では見えていない負荷量として存在していて、それが実際に合流改善をすると見える形に移行してきますので、その辺りの見えない動きというのが、今の色々と取組を進めていく中で、その改善効果がどうしても見えにくくなってしまっていると。
【古米委員長】 要は、下水道側は水質改善のための努力はされているが、もともとのCSOの汚濁負荷量が算定されていないので、それを削減した効果が具体的には現れないので、それをしっかりと表していきたいという御発言かと思いました。
【田中臨時委員】 ということですよね。それであれば理解します。
【大久保課長】 ありがとうございます。
【古米委員長】 それでは、千葉県、いかがでしょうか。ノリ養殖関連です。
【佐久間副課長】 千葉県でございます。
先ほどのノリ養殖場を含む一部海域の栄養塩不足の指摘ということでございますが、これにつきましては、漁業関係者からそういった声をいただいていたというところでございます。具体的に何の栄養分が足りないのかといったところまでの具体的な話というのは今確認できておりませんので、お時間をいただいて確認をさせていただきたいと思います。申し訳ございません。よろしくお願いいたします。
【田中臨時委員】 場所を含めて、また。
【古米委員長】 追加でお願いしたいと。
【田中臨時委員】 はい、よろしくお願いします。
【古米委員長】 それでは、御質問を3名ずつに分けて、続けてお願いしたいと思います。まず、大久保委員、風間委員、珠坪委員の3名で御質問をお願いします。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
東京都にお伺いいたします。先ほどの田中委員の御質問とも関連するのですが、17ページで、貧酸素域の増加の原因の一つとして、海水温の上昇が考えられるのではないかとおっしゃったかと思います。そうだといたしますと、海水温の上昇の程度、日本沿岸、いろいろ格差があるようでございますが、どのぐらいの海水温の上昇が見られるのかという、もしデータがありましたら、お伺いしたいと思います。
それと併せまして、19ページ目の魚のへい死も、貝類等も含めまして、海水温上昇との関係もあり得るのかという点についてお伺いできればと思います。
【古米委員長】 風間委員、どうぞ。
【風間専門委員】 ありがとうございます。風間です。
東京都さんに、2点、お伺いいたします。
一つは、10ページです。近年、水質は横ばいということですが、CODは平成26年、2010年頃から上昇していませんでしょうか。東京湾では、2010年頃からCODの上昇が起こっていたという説があって、私も確認しているのですが。それから、全窒素も平成24年に大きく低下し、その後、横ばいではないでしょうか。この時期は、29ページの除去率の上昇と関係しているように見えるのですが、いかがでしょうか。
もう一つは、33ページの課題の部分です。多くの施策事項を短時間に挙げていただき、ありがとうございました。各施策の評価についてお伺いします。自治体の環境部署として検討された結果の苦しみを示されたことなのでしょうが、施策に対して実施した結果のモニタリングへの反映について、努力の結果の一端でも御紹介いただけないでしょうか。ここまでやったが、はっきり言えなかったというような話です。
例えば、下水道の栄養塩の除去率が上がったということですが、その時期と環境、水質の関係、それからその後の動きとして、全窒素だけではなくて、無機体窒素、有機体窒素の変化、さらに赤潮の発生状況で、規模の変化だけではなく、質的変化はなかったのか。生き物の変化は、環境との対応が一時的には把握し難いですが、何か長期的変化はなかったのでしょうか。また、浚渫した事後の水質、生物変化など、事業部署ではB/Cという費用便益分析がなされているようですが、各部署の施策効果のフォローを把握されていて、それでも環境への評価が難しいのでありましょうか。
何か、一端でも御紹介いただけないかというお願いです。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 それでは、珠坪委員、どうぞ。
【珠坪専門委員】 18ページの東京湾における貧酸素水塊の発生、特に夏から秋にかけて底層DOが低下して、無生物区が発生するという問題に関してです。先ほどその表層水温が高くなることによって鉛直混合が起きにくいという話がありました。一方、恐らく底泥による酸素消費というのは非常に大きいと考えられますが、底泥の分布状況や、底泥の酸素要求量みたいなデータの取得はされているかについて伺いたいと思います。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございます。
それでは、3名の委員の方々の御質問に対して、東京都からお願いしたいと思います。
【大久保課長】 御質問、ありがとうございます。
まず、大久保委員からの御質問です。まず、海水温についてどのくらいの上昇が見られるかデータがあるかという御質問だったかと思います。今、定量的なデータを、持ち合わせておりませんので、申し訳ございません、この場でお答えできるものがないという状況でございます。
【東京都】 東京都の水環境課から御説明します。
17ページの温度の話ですが、季節の影響等で、そういったところまでの関係は分からないといったところがございます。
風間委員から御質問がありました10ページですが、モニタリングはどれが横ばいかということがなかなか判断しづらく、また、さらに水質だけではなく、生物相への影響というのはなかなか見方が難しいなといったところが実感としてございます。
また、窒素の形態別など、専門性の高い分野ですので、引き続き、東京都環境科学研究所などと連携して解析を進めていきたいと考えております。
よろしいでしょうか。
【古米委員長】 あと、珠坪委員から、底泥の酸素消費に関して、何かデータ等をお持ちでしょうかというのは、いかがでしょうか。
【東京都】 今の御質問についても、酸素消費のスピードについて、今、環境科学研究所と基礎研究を開始したところでございます。また、総量削減の制度を達成できるように、引き続き取組を進めていきたいと考えております。
【古米委員長】 どうもありがとうございます。
委員の方々、よろしいでしょうか。
それでは、続いて、3名、黒木委員、小川委員、和木委員の順番でお願いします。
【黒木専門委員】 ありがとうございます。黒木です。
東京都様への御質問になります。貧酸素の海域が、一旦減ったものの、近年、拡大傾向にあるという中で、生物調査の結果もお示しいただいて、生息域として課題があるというようなお話でございました。海域の豊かさの指標の一つでもあるかなと思うのですが、水揚げ量については、21ページにお示しいただきました、217tという数字でございますが、これは比較するものがないので、多いか少ないかというのは分かりませんでした。例えば貧酸素の拡大に伴って減っているなど、この数字がどういうレベルなのかという点について、教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
【古米委員長】 小川委員、どうぞ。
【小川専門委員】 どうもありがとうございます。
東京都に御質問したいと思います。NPは低下しておりますが、赤潮の発生件数というのがほとんど変化、減少していないという、その要因として、今後さらに規制を強めていくのでしょうか、特に特定施設以外の施設に対しても規制を強化していくのでしょうか。
また、強化するに当たって、13ページにあります、NとPとのバランスの問題だと御指摘されていますので、そういうような調整も含めた形で、今後、対策を進めていくのでしょうか。
以上です。よろしくお願いします。
【古米委員長】 和木委員、どうぞ。
【和木専門委員】 農研機構の和木です。
千葉県さんに質問がございます。11ページ、その他の発生源対策ということで、農地からの負荷を削減するために対策をされているということですが、まず緑肥作物の活用につきまして、この推進は何か具体的に、ホームページでの情報提供や、もしくは何か補助のようなものを行うといった活動をされているのかどうかを知りたいと思います。
また、家畜排せつ物対策ということで、畜産農家の堆肥情報をホームページに掲載されたということですが、この活動によって、実際、堆肥の利用が促進されたかどうか、そういった手応えや、何か情報があればお教えいただきたいと思いました。
以上です。
【古米委員長】 それでは、3名の委員からの御質問に対して、まず東京都、その後、千葉県でお願いしたいと思います。
【大久保課長】 どうもありがとうございます。
黒木委員からの御質問で、21ページ、水揚げ量217tの評価の御質問をいただいたかと思います。こちらで水揚げ量の推移等のデータを持ち合わせていなくて申し訳ございません。ただ、同じスライドにありますように、東京湾に関しては、漁業権を既に廃止しておりますので、この量自体が自由漁業からの水揚げ量のみということだけ申し添えさせていただきます。
小川委員から、特定施設以外のこれからの規制強化をどう考えられているかという御質問だったかと思います。こちらについては、現時点ではそういった考え等はまだ持ってはいないという状況にございます。13ページにあります、窒素、りんとのバランスに関して、現在、りん制限が強いという状況ではありますが、このバランスに関しては、これからの削減効果を含めて、モニタリングしながら状況を見て対策を考えていく、まだその前の段階かなというような課題認識でございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、千葉県、いかがでしょうか。
【佐久間副課長】 千葉県でございます。
11ページの緑肥の関係でございます。こちらについては、ホームページ等で、研究等の状況について公表等をしているところでございます。補助金の有無につきましては、担当する部署が異なる関係で、今、確認ができない状況でございます。また、先ほどの畜産の関係でございますが、堆肥の利用促進の手応え等々、この辺りも確認させていただきたいと思いますので、改めて、別の形で、資料等で説明させていただければと思います。御容赦ください。
【古米委員長】 それでは、追加の情報提供をいただくということでお願いしたいと思います。
委員の方々、よろしいでしょうか。
(はい)
【古米委員長】 それでは、次に移らせていただきます。
続いて、伊勢湾の関係県として、愛知県、三重県からの御説明をお願いします。2件続けて御説明いただいた後、質疑です。
資料7について、愛知県よりお願いいたします。
【戸田課長】 愛知県、水大気環境課の戸田です。
2ページをお願いします。まず、私から愛知県における水質総量削減の概要、水質の現状と課題について、続きまして、当県の水産課から、漁業生産に必要な栄養塩管理の在り方等を検討した愛知県栄養塩管理検討会議の結果について御説明をします。
3ページをお願いします。愛知県における総量削減に係る主な施策を示しております。陸域における汚濁負荷量の削減については、法規制対象の約1,500事業所に対して排出規制を行っております。生活排水対策では、下水道整備、合併処理浄化槽設置などを促進し、2023年度で汚水処理人口普及率は93.2%、下水道普及率は81.5%となっています。また、未規制事業場等へも汚濁負荷量の削減の指導を行っております。
2の海域における環境改善事業としては、干潟・浅場・藻場の再生、覆砂、浚渫、深掘跡の埋戻し、それから、水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験を実施しております。社会実験については、後ほど検討会議の結果について御説明をいたします。
3の啓発事業については、三河湾で地域における環境再生の機運を高めるため、啓発イベント等を実施しております。
4ページをお願いします。COD、窒素、りんの水質総量削減の実績です。長期的に見ますと、汚濁負荷量の削減が進んでおります。第9次計画の目標年度である2024年度は現在集計中でございますが、2020年度~2023年度まで、1日当たり、COD70t、窒素55t、りん4.4tの削減目標量を達成している状況となっております。
5ページをお願いします。干潟・浅場の造成については、国によるシーブルー事業と、その後の県独自事業の実施によりまして、これまで約720haの造成がされております。
6ページを飛ばしまして、7ページをお願いいたします。水質等の現状と課題です。グラフは環境基準の達成率の経年変化を示しています。長期的には改善傾向ですが、最近10年間を見ますと、赤で示しました河川のBODは90%以上、それから青、緑ですが、全窒素、全りんについては100%を達成した年がある一方で、オレンジのCODについては45~64%で横ばいの状況にあります。
8ページをお願いします。伊勢湾、三河湾における水質の推移です。最近10年間では、下のグラフの全窒素、全りんの濃度は概ね横ばいですが、上のグラフのCODについては、赤の伊勢湾で上昇傾向が若干見られます。
9ページをお願いします。海域における類型指定がされた水域ごとの全窒素、全りんの濃度の推移です。上が伊勢湾、下が三河湾のそれぞれ全窒素、全りんのグラフとなっております。全ての水域で、長期的に濃度は減少傾向となっております。現状の課題として、特に右上の図で、緑色で示したⅡ類型の水域におきまして、ノリ、アサリにとって必要な栄養塩類である窒素、りんの不足が指摘されております。
10ページをお願いします。貧酸素水塊の発生状況です。伊勢湾、三河湾では、湾奥から湾奥部にかけて、毎年、夏季に貧酸素化している状況です。
11ページをお願いします。赤潮・苦潮の発生状況です。赤潮は、伊勢湾、三河湾とも湾奥で発生しやすく、苦潮は三河湾の湾奥で起こりやすい状況となっております。折れ線グラフで示す赤潮の延べ日数は、長期的には減少傾向ですが、増加傾向となっている期間もあります。青い棒グラフで示す苦潮の発生件数は、年により変動が大きい状況となっております。
【日比野課長補佐】 引き続き、愛知県栄養塩管理検討会議の結果につきまして、愛知県水産課の日比野から御説明いたします。
13ページをお願いいたします。伊勢湾、三河湾では流入負荷削減が行われまして、いま説明があったとおり、海域での窒素・りんが減少しております。本県漁業にとって、ノリ・アサリは非常に重要な漁業です。栄養塩不足はノリの品質や成長に直結し、養殖ノリの色があせてしまう色落ちや、それに伴う生産終了の早期化などが課題となっております。また、植物プランクトンは海域の生物生産を支える基盤であり、二枚貝の餌です。アサリにおいては餌の減少によってエネルギー収支のバランスが崩れ、肥満度の低下により、生き残れない状況が発生し、漁獲量が急減するといった、栄養塩を起点としたプロセスが近年の研究で明らかになっております。
14ページをお願いします。このような変化を現場で間近に見てきたのは漁業者さんです。右下にありますが、2017年に愛知県漁連から知事宛てに栄養塩管理の要望があり、その対応の一環として、下水処理場による栄養塩供給に取り組んでまいりました。特に②の水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験では、総量規制基準の改正により、窒素、りんをそれまでの基準の2倍に緩和して増加放流を実施しました。また、伊勢湾側でも、関係市の御協力により、りん濃度増加運転を実施しております。
15ページをお願いします。愛知県では、2022年から愛知県栄養塩管理検討会議を設置いたしまして、2年間の社会実験の結果の検証や、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理の在り方について、検討をしてまいりました。学識経験者をはじめ、関係部局が一堂に会して議論を重ねまして、2025年2月に報告書を公表しております。本日御説明する内容はその報告書の概要でございます。
16ページをお願いします。社会実験の結果でございます。環境モニタリングをしておりまして、中断条件に該当するような環境への悪影響は確認はされませんでした。また、漁業については、ノリの色は概ね良好であり、色落ちが軽減されたと考えられました。アサリにつきましても、漁獲量減少の原因でありました秋冬期減耗が軽減され、現存量が回復しましたが、餌の競合による肥満度の低下というのが見られまして、さらなる餌料の改善によって資源量と肥満度が高い水準で維持されることが資源回復には必要である、そのような結果となりました。
17ページをお願いします。増加運転を実際に行った下水処理場での現場の課題についても議論がございました。現場では放流水の濃度管理に苦労しており、特に現状では濃度管理を日平均濃度で運用しておりますが、これが週平均値で管理できるようになれば、負担軽減につながるといった意見もございました。これらの点は、今後の栄養塩管理を安定的かつ効果的に取り組む上でも重要であり、現場が管理しやすくなるような仕組みが望まれるところでございます。
18ページをお願いします。検討会議では、栄養塩管理の目標となる、漁業生産に必要な栄養塩濃度を検討いたしました。対象としたアサリですが、この海域の漁業において重要な資源でありますし、内湾の健全な物質循環に不可欠な水質浄化機能を担う鍵となる、この海域の漁業生産における重要種と位置づけられます。検討の詳細は時間の都合で割愛いたしますが、結果、漁業生産に必要な栄養塩濃度は、全窒素で0.4mg/L以上、全りんで0.04mg/L以上と整理されております。また、栄養塩管理の必要な時期でございますが、春や夏の生物の栄養状態、それから餌料条件というものが資源形成に関連することが最近の研究で示されてきております。例えば、近年よく言われる高水温の影響は、栄養状態が悪いと、より顕著になるといった知見もございます。近年の環境変化や水生生物の多様な生活史を考えれば、春から夏の取組も重要でありますし、生物に対する栄養塩の重要性というのは季節別に限定される理由というのは少ないということになります。
19ページをお願いします。このような議論を踏まえ、取りまとめられました栄養塩管理方策の方向性でございます。①としては、社会実験や伊勢湾側での増加放流を現計画期間では継続していくというものでございます。
その下の②ですが、栄養塩増加運転の恒常的実施とその枠組みづくりを進めていくという内容でございます。1点目は、漁場を含む海域の類型を、先ほど申し上げました漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できる類型に見直すというものでございます。また、必要な栄養塩濃度に高めていくために、当面は下水処理場を対象に実施箇所の増大と周年運転を検討して実施する点。また、総量規制基準の緩和や増加運転を考慮した削減目標量を設定していくことが不可欠であるとされております。今後は、窒素、りんを削減対象ではなく、管理の対象としていくことが重要であると考えられます。栄養塩を漁業生産につなげる取組も両輪として実施してまいります。以上の取組を進めながらモニタリングを行うことで順応的な管理とし、水質の保全と豊かな海の両立を図っていくということとしております。
以上の内容は、漁業生産の側面から検討されてきたものでございますが、漁業は古くから豊かな海の恩恵を利用して営まれる事業であります。本来持つ生物多様性や高い生物生産が前提となっております。したがって、報告書は「漁業生産に必要な」と題されてはおりますが、生き物に富んだ豊かな海を次世代に引き継ぐために必要な考え方が整理されたものであると考えております。県としましても報告書の内容を踏まえ、豊かな海に向け、関係部局が連携して取り組んでいくことが重要であると考えてございます。
【戸田課長】 最後に、21ページをお願いします。今後の総量削減の在り方につきましては、水質の保全と豊かな海の両立を目指すという観点から、海域の状況に応じた栄養塩類の順応的管理並びに栄養塩類管理を考慮した総量規制基準、目標量とすることを伊勢湾、三河湾において位置づけることが必要であると考えております。
以上で愛知県の説明を終わらせていただきます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、続いて資料8について、三重県からお願いします。
【松本課長】 三重県大気・水環境課の松本でございます。
それでは、私から、きれいで豊かな伊勢湾に向けた三重県の現状と課題というところで御説明させていただきます。
2ページ、お願いします。本日はこの1~3、4の辺りを御説明させていただきたいと思います。
まず初めに、環境基準の達成状況について説明させていただきます。
3ページ、お願いします。このグラフは、伊勢湾の三重県側の環境基準の達成状況を示したものです。河川BODについては62水域で調査しており、青線で示しておりますが、近年達成率90%以上となっております。海域については赤線で示しておりますが、近年概ね改善傾向を示しておるという状況でございます。また、海域の窒素・りんは緑色と黄色の線で、近年、全ての水域で100%を達成している状況でございます。
4ページをお願いします。続きまして、伊勢湾の「きれいさ」と「豊かさ」の現状と課題ということで、貧酸素水塊の発生状況や干潟、藻場の変化等について御説明させていただきます。
5ページ、お願いします。お示ししたグラフは平成3年度からの赤潮の発生件数ですが、近年は減少傾向となっている状況がうかがえます。
6ページ、お願いします。こちらは貧酸素水塊の発生状況として、年代別の底層DOの状況を示したものです。3mg/L以下の範囲を青の太線で囲んでいますが、年代が進むごとに範囲が拡大しており、濃度の低下している状況が分かります。
7ページ、お願いします。こちらは、1955年と2000年の状況について、干潟域についてはピンク色で示して、アマモ場については緑色で示した図となっております。干潟域については2000年までに37%まで減少しており、アマモ場については1%まで大幅に減少しているということが分かります。
8ページ、お願いします。こちらは伊勢湾の漁獲量の変化についてです。右側のグラフを御覧ください。青色の実線がアサリの漁獲量となっております。1980年の1万4,000tから、2023年には163tまで減少しております。点線の部分はイカナゴの漁獲量ですが、資源量減少により2016年から禁漁になっている状況でございます。左側は黒ノリの低品質ノリの枚数の割合を示した図で、湾奥部、湾南部共に低品質のノリの割合が増えている状況となっております。
9ページ、お願いします。この図は、主な黒ノリの漁場の年代ごとの月別平均濃度の変化を示したものです。各漁場とも水色の線で示す1980年代と比べ、全体的に低下している状況となっております。
10ページ、お願いします。以上をまとめまして3点ほどです。伊勢湾の三重県沿岸域では栄養塩類が経年的に減少しており、特に中部~南部の海域で状況が顕著ということです。詳細なデータについては参考で述べさせていただきました。また、藻場、干潟の減少や貧酸素水塊の拡大が認められる状況です。このため、海域の栄養塩類を湾内の豊かな生物生産につなげていくため、栄養塩類の管理と藻場・干潟の保全、再生を両輪で行うことが重要と考えておるところです。
11ページ、お願いします。3点目といたしまして、本県のきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けた取組というところを御説明させていただきます。
12ページ、お願いします。本県では環境基準の達成と生物生産性・生物多様性とが調和・両立したきれいで豊かな海(伊勢湾)の実現を目指し、令和4年10月に三重県第9次水質総量削減計画を策定したところです。本計画では、従来の汚濁負荷の「削減」から総合的な「水環境管理」への新たな方向性を導入し、関係機関や関係団体等と連携し、スライドに示させていただきました1~5の取組を進めているところでございます。
13ページをお願いします。まず一つ目ですが、総量規制基準の改定といたしまして、右の二つの図にお示ししたとおり、下水道業の窒素、りんの管理運転がより柔軟に実施できるよう、それぞれの基準値が国が定めた範囲の上限になるよう見直しを行いました。これまでの負荷量実績の推移と比べると、第9次の目標量は左の図のようになるというところを示させていただきました。
14ページ、お願いします。次いで、下水処理場の栄養塩類管理運転の試行とその効果の検証についてでございます。公的機関が管理する五つの下水処理場において、令和4年から、りんの管理運転の試行を開始し、令和6年からは窒素の管理運転についても試行をしているところです。なお、志登茂川浄化センターというところがありますが、こちらは平成30年に供用開始したところでして、現在、管理運転の調査を実施しているというところでございます。なお、これらの管理運転の効果については、本県の環境生活部、農林水産部、県土整備部の3部が連携して検証し、今後の施策等にフィードバックをしていくこととしております。
15ページ、お願いします。こちらには参考として管理運転のイメージ図を示させていただきました。現在このような濃度コントロールを行うことで、日平均値が規制値を超過しない、かつ、高い値を目指す管理運転を行っているところでございます。
16ページ、お願いします。管理運転による下水処理場の放流濃度への影響について、まず、全窒素についてこの表でお示しさせていただきました。管理運転を始める前の令和3年度と比べると、令和6年度は各下水処理場において1.39倍から1.61倍と増加しており、管理運転の効果が現れているという状況になっております。
17ページ、お願いします。続いて、全りんについての管理運転による下水処理場の放流濃度への影響について示しております。りんについても管理運転を始める前の平成30年と比べると、令和6年度は各下水処理場において1.31倍から2.06倍と増加しており、管理運転の効果が現れていることが分かります。なお、参考ですが、りん放流濃度の1か月間の状況からも分かるように、かなりばらつきがある状況でございまして、安定的な管理運転を行うためには、きめ細かな運転調整を求められるという状況でございます。
18ページ、お願いします。こちらは、調査研究の推進と科学的知見の集積と活用でございます。令和4年度から栄養塩類管理運転の効果検証を行っているところでございます。まずは、令和4年度~令和5年度にかけて、一部浄化センターの周辺海域で水質やプランクトン等の調査を実施し、それらの結果を基に、令和6年度に管理運転の効果検証に係るシミュレーション解析を実施しました。今後は本シミュレーション解析を活用することにより、現在、高濃度に排水した場合の効果予測の検証などに取り組むこととしております。
19ページ、お願いします。藻場、干潟及び浅場の保全・再生等の推進でございます。伊勢・三河湾海域干潟ビジョンに基づいた計画的な干潟再生等に取り組んでおり、令和5年から松阪市地先において、アサリ稚貝の着底を促進する砕石を活用した干潟・浅場の造成工事に着手したところでございます。
20ページ、お願いします。その他といたしまして、生活排水処理対策でございます。本県では、本県が定めておる生活排水アクションプログラムに基づき進捗管理を行っているところですが、令和5年度末の整備率は89.6%となっており、引き続き関係部局や市町と連携して、整備率の向上に努めていきたいと考えております。
21ページ、お願いします。関係者との連携体制でございます。本県では、三重県きれいで豊かな海協議会というものを令和4年9月に設立しておりまして、関係部局で情報交換をしながら進捗管理を行っているところでございます。あわせて、中部地方整備局さん等で構成されておりますが、右側の伊勢湾再生推進会議で情報共有などをさせていただいて、今後の施策を進めていこうと考えているところでございます。
22ページ、お願いします。まとめでございます。
23ページ、お願いします。きれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて、まとめでございます。三重県では引き続き多様な主体と連携し、目標を共有しながらきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて取組を推進していこうと考えているところでございます。
以上でございます。
【古米委員長】 どうも御説明ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、御意見、御質問をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
黒木委員、どうぞ。
【黒木専門委員】
愛知県様への御質問になります。18ページ、漁業生産に必要な栄養塩濃度ということでTNで0.4mg/L、TPで0.04mg/Lという数字をお示しになりました。これは重要な数字なんだろうなと思いますが、時間の関係もあって説明を省かれたかとは思いますが、この数字をどのように導き出されたかという、その科学的根拠的なものを御説明いただきたいというのが一つです。
それから、この全窒素0.4mg/L、全りん0.04mg/Lという数字をアサリで整理されたということでしたが、例えば漁獲対象にはならないような二枚貝類や、その他の底生生物の生息にも必要なレベルが考えられるのかどうかというような点につきまして、状況証拠でもよいと思いますので、分かっていることがあればお話しいただければと思います。
【古米委員長】 愛知県、いかがでしょうか。
【日比野課長補佐】 水産課の日比野です。
こちらの漁業生産に必要な栄養塩濃度の算定の根拠というところですが、公共用水域の監視点の栄養塩濃度とアサリの漁獲量の関係から必要な濃度というのを推定したということです。三河湾の観測結果に基づくものや、あるいは全国のいろいろな地点での栄養塩とアサリ資源量の対応関係を見た研究事例など、そういった関係式から導出された研究事例を引用しまして、こういった濃度を整理させていただいたという形になっております。加えて、アサリ漁業が成り立つ水準を仮定して、また、その成立確率から濃度を算定した、こういった研究事例も引用しております。それから、こういった知見に関しましては、いずれも現地観測に基づく統計的な解析を含めた結果でございまして、仮定条件を置いたシミュレーションの結果とは異なるものですが、これまでのアサリ漁業と栄養塩濃度の関係の歴史をしっかり解析した結果だと認識しております。
一方で、その他の漁獲対象やその他の二枚貝への効果、適用できるかというところですが、これにつきましては、今後やはり栄養塩濃度と対応関係を見ていくということが非常に重要になってくるかと思います。社会実験の過程でアサリ漁獲量が一時増えている、増えたというお話をさせていただきましたが、それに対応する形で、例えば、少し専門的な話になって申し訳ないですが、シオフキガイやホトトギスガイなど、そういった干潟に普通に見られるような二枚貝、あるいはアオサなどといった藻類、そういったものもいっとき栄養塩の低下とともに、アサリの状況が悪かったときにはほとんど見られなかったものが同期して見られるようになっているという、そのような状況証拠もございますので、栄養塩との対応関係というのは、ある程度アサリと同期してくるのかなというところは現場の観測からは考えているところでございます。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、3名ずつ委員から御質問いただきたいと思います。古川委員、田中委員、西嶋委員の順番で、まず古川委員、お願いします。
【古川専門委員】 愛知県の方に質問させてください。栄養塩の運転管理は様々な部分が非常に細かいレベルで検討されているのは理解できました。運用体制整備について、皆さん確認されていると思います。
さて質問です。資料7では17ページに、総量規制基準や規制項目の運用の見直し検討の必要性と記載がございます。経済界としても、効果的で合理的な栄養塩類管理の規制が重要と考えており、「他の規制項目の運用」について念頭に置かれているものがあれば御教示いただきたいと思っております。特に19ページの漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容するものに関する見直しに相当するものだと私は理解しておりますが、もしこれ以外に念頭に置かれているものがございましたら御教示いただければと思います。
以上です。
【古米委員長】 それでは田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 三重県に二つと、愛知県二つの質問があります。
愛知県について。まず、今の古川委員の話も関係ありますが、17ページです。安定的かつ効果的な下水処理場における増加運転の話の中の、他の規制項目の検討と書いてあるのですが、具体的にはどんな法律に関わるのでしょうか。総量規制については後で述べられているので分かりますが、それは一体何なのかが分かりません。例えば、下水道法のようなものが入るのか、あるいは、下水処理場以外の事業場への働きかけみたいなものが入るのか、イメージが分からないので、具体的に御説明いただきたいのが1点です。
それから愛知県のもう一点は、18ページに栄養塩管理の必要な時期など、いろいろ書いていただきました。水産系から見た生物系だと思いますが、例えば先ほどの東京都がいろいろ調査されている底層DOの低下による漁獲対象以外の種への影響など、そういう部分についての検討、それから、それに対する栄養塩の関係、これらについての検討というのは、この検討会の中ではされていないのでしょうか。これについて何か情報を下さい。
それから三重県については、下水処理場の運転、栄養塩の管理の運転の話の方法論を教えてください。15ページのこの文章から言うと、窒素については無酸素層への循環量を管理すると書かれているので、脱窒抑制型でされているのかなと思いますが、それは硝化抑制はされずに、ここについては脱窒抑制をされているのか、この辺の確認をしたいということです。
それからもう一点は、18ページの調査研究の推進と科学的知見の集積の中で、現在どのように下水処理場からの放流水が拡散していくかの検討はされていると思いますが、今後どのようにノリや、あるいは餌生物が魚への種とか量にどのように影響したのかということについても、今後、調査、検討はどのようにされていくのか、この2点を教えてください。
以上です。
【古米委員長】 西嶋委員、どうぞ。
【西嶋臨時委員】 愛知県さんに質問がございます。
13ページにアサリの漁獲量の推移のデータを示していただいています。これを見せていただくと、2010年ぐらいまでは割と上下はあるものの、漁獲量は維持されていたのかなと思いますが、2010年代の半ばぐらいから急激に落ちているというところで、全体的な栄養塩の負荷からすると、ほかのトレンドと、このアサリのトレンドが一致していないように見えます。この2010年代の半ば過ぎに急激に落ちている原因というのは、栄養塩ももちろんあるのでしょうが、ほかにどのような原因を考えられているのか、あるいはその辺が究明できているのかどうかについて、少しお話をいただければと思います。
それと、19ページで、栄養塩管理を季節別ではなくて周年管理を目指すというお話も少しあったと思います。特にアサリの漁獲は多分、三河湾が中心だと思いますが、現在でも赤潮とか苦潮の発生がよく起こりやすい水域という説明も前半にありましたが、今後、周年での栄養塩の放出というのを考えたときに、そちらとの関係をどのように調整していくのか、この辺りのお話が聞けたらと思います。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 それでは、三人の関連する御質問もありましたので、うまくまとめて御回答いただければと思います。
それでは、愛知県、お願いします。
【日比野課長補佐】
最初のほうから御説明させていただきます。17ページ、下水処理場の安定かつ効果的な栄養塩増加運転というところです。やはり窒素とりんを上げようと思うと、ほかの水質項目、これは水濁法によるもの、あるいは、下水道法によるもの、こういった水質項目の基準値と整合が取れなくなってきてしまう、例えばBODとかそういったところもあるというような話がございました。そういった規制項目とのバランスによって、やはり現実としては、全窒素、全りんに関しては増加運転が十分に上げられない、そういった状況もあった、という報告もありました。そんな中でそういった規制項目の運用につきましても、例えば説明の中で申し上げたとおり、現在、日平均濃度というものを基準としている場合であれば、週平均濃度のようなものを基準にすると、より現場の管理がしやすくなる、そういった意見がございました。それが1点目になってございます。
その次、DOに関わる漁獲対象以外の対象種に対する検討と、DOに対する栄養塩の影響というのはどういう感じなのかという御指摘かなと思いますが、実際、栄養塩管理検討会議の中では漁獲対象種以外の検討というのはほとんど行っていないという状況でございます。
DOに対する栄養塩の影響ですが、これは、これまで実際、水産試験場でもずっと底層の溶存酸素を観測してきております。その結果を少し22ページの補足資料でもお示ししておりますが、長期的に見ると、こちらは横ばいになってきております。近年では、むしろ拡大しているような感じも見られます。窒素、りんについては半分になっているという観測結果があるにもかかわらず、こういった状況であるというところですので、基本的には窒素、りんとは対応していないということになりますが、統計的に対応関係を見てみましても、やはり水温とか密度差というものがこの変動には非常に影響しているということが分かりましたので、窒素、りんとの対応というのは現実的にはあまりないのかなという理解でおります。いずれにしてもこれを増やしていくという過程の中ではモニタリングを実施し、既存の貧酸素調査体制を維持しまして、何らかの変化あるいは悪化というものが検出されれば、そういった順応的に対処していくという方向性なのかなと考えてございます。
それから、漁獲量の推移と窒素とりんのトレンドが一致していないというところが御指摘としてございました。これは、アサリの増減は栄養塩そのものというより餌のクロロフィルに対応しているというのも一因かなと思っております。そちらのエネルギー収支のイメージで御覧いただいていると思いますが、餌はプラス要因に働くというのはまず間違いないのですが、その他の環境要因、我々が水産試験場で検討した結果、データとしては秋の水温や波浪など、そういったものはマイナスに働くということで、資源変動にはそれらの収支による関係で、リニアには対応しないのかなと考えております。長期データでは、先ほど御指摘があったように急激に減っているような感じがあるのですが、現実的にはその前段階でアサリの漁業者さんが非常に積極的な資源管理あるいは漁場管理をなされていますので、そういったところで維持されてきたという背景がありますが、その急減に関しましては、やはり閾値を下回ると資源減少が起きているという状況になっております。これはやはり環境変動に対する資源形成の頑健性というのを、活力不足というところで失ってきてしまっているということと、それから、個体のエネルギー収支を見ていただくと、生き、死にというのは二項分布を取りますので、ある閾値以下では、その環境条件が一斉に発生してるわけですので一気に個体群の縮小が起きる、資源崩壊が起きると、そういったプロセスとなるのは合理的であるのかなと考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 それでは三重県さん、お願いします。
【三重県】 三重県の篠田と申します。まず、15ページの御説明からしたいと思います。
我々の下水処理場は、嫌気槽、無酸素槽、好気槽という高度処理を採用しております。例えば、りんにつきましては、嫌気槽でりんを吐き出した以上の分を好気槽で取り込むということによって、水を流すだけで自然にりんを削減するというような方法を取っております。それに加えて、PACという凝集剤で、さらにりんを落とす措置をしておりましたが、現状、栄養塩類管理運転をするために、PACを注入する量をなるべく減らすことでりん除去を抑制するという方法を取っております。
窒素につきましては、この無酸素槽と好気槽との関係でございまして、好気槽で硝化菌を作成したものにつきまして、無酸素槽で酸素を取り込むことにより窒素を大気開放するというような反応で循環ポンプを動かしております。循環ポンプの量を減らす、要は、いわゆる硝化菌を無酸素槽へ送る量を減らすことで窒素の除去を抑制するというような運転をしております。いわゆる、先生がおっしゃったとおり、脱窒運転の抑制をしております。硝化抑制までいっておりません。硝化抑制をする場合、どうしてもBODが上昇する傾向がございます。こちらは先ほど愛知県さんに質問もされていたと思いますが、下水道法のBODにかかってくるおそれがありますので、現状は、脱窒抑制のみにしております。
三重県の羽生です。18ページのシミュレーション解析の件ですが、水産生物に対する管理運転の影響については、先ほどの愛知県さんの御報告にあったように、最近、生物にとって必要な栄養塩濃度の基準値というものが示されてきていますので、まずは基準値を上回るような状況が管理運転によって、各漁場で認められるのかどうかということを確認していきたいと考えています。実際、生物に対する影響については、県の水産研究所などが各漁場でアサリの資源量やノリの生産性を調査していますので、そういったデータと突き合わせて検討していきたいと考えています。
【古米委員長】 ありがとうございました。
愛知県さん、西嶋委員からの二つ目の御質問で、栄養塩管理を周年にした場合、アサリに効果があるということは分かるが、赤潮や青潮、他の現象に対する影響についてはどのように御検討されているのかという御質問に関してはいかがでしょうか。
【日比野課長補佐】 その点については、貧酸素の関係で御回答させていただいたつもりでした、すみません。基本的には増加運転、これまでの観測結果から見ると、窒素とりんに対してのDOの挙動というのはあまり相関がないというところです。今後、増加運転を実際に実施していくことになれば、モニタリングをしつつ、環境状況というのは適宜適切に把握をしていく、そういったことを並行していくということを考えております。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは3名、大久保委員、三宮委員、山口委員の順番で、大久保委員、お願いします。
【大久保臨時委員】 三重県に質問を2点させていただきます。
1点目は6ページで、貧酸素水塊が増加しているというお話があり、お話の時間がなかったかと思いますが、参考資料にはその原因の研究をしているというスライドがありましたので、現在までの研究成果でどのような原因が考えられているかということの成果をお伺いできればと思います。
2点目は、7ページで、藻場、干潟の減少状況について37%まで減少していますというお話があり、19ページで造成について具体的なお話がありましたが、保全に関しましてはあまり具体的なコメントがなかったと思います。行政における海岸管理、海岸工事も含めてそこでの工夫等、具体的な保全の施策についてお伺いできればと思います。
以上2点です。
【古米委員長】 三宮委員、どうぞ。
【三宮専門委員】 御説明ありがとうございました。私からは愛知県さんに2点ほどお伺いしたいと思います。
まず一つ目は、17ページです。下水処理場の施設や構造等において、栄養塩増加運転ができない施設等も想定されるとあります。運転ができない施設に関して、例えば、どのような処理法なのか、どのような施設がないからできないなどの情報があれば教えていただきたいというのが一つでございます。
それからもう一つが18ページです。水生生物の生活史に対応した春から夏も含めた取組が重要とあります。水産資源に関してはそういうこともあると思いますが、例えば、ほかの水利用など、思いつくところでは、海水浴などに配慮をするべきことはないのか、あるいは逆に、圧倒的に栄養塩が足りないという認識から、このことが必要になっているということなのか、その2点をお伺いできたらと思います。
よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 山口委員、どうぞ。
【山口専門委員】 私は愛知県に質問をさせてください。
まず13ページです。2017年から栄養塩の増加運転をされたという御説明だったと思いますが、アサリの漁獲量を見ますと2017年から非常に少なく、低いままで回復していないように見えます。これについてはどのようにお考えでしょうかというのが1点。
それから16ページに社会実験で栄養塩の増加運転をした結果として、漁業への効果というのが示されていまして、その中の二つ目です。ノリの色落ちが軽減されたということでしたが、矢作川地区のグラフを見ますと、そのようには読み取れないように思います。少なくとも平均値では悪くなっているようですし、最大値で見られているようですが、これが適切かどうかということが一つです。
それと、先ほどもう皆さんから出ていますが、栄養塩管理の必要な時期についてということで18ページ、今後、周年管理にという点についてです。ここに根拠となることが幾つか、アサリ、イカナゴ、マアナゴ、シャコということで出されています。先ほど御説明でもありましたが、アサリも栄養塩だけではないということはありますが、少なくとも下の三つ、イカナゴ、マアナゴ、シャコについては、栄養塩を増やすということと、直接的な関係について言及するのは少し難しいように思いました。それで、冬は栄養塩を直接ノリが取るので、逆に言えば過多にならなかったかもしれないのですが、春夏は水温も高いですし、ノリがない分、栄養塩が過多になるような可能性もあり、栄養塩以外のものも含めてバランスの問題でやはり赤潮プランクトンが増えたりという可能性も懸念されるのではないかと思いました。
そういう中で19ページです。漁業生産に必要な栄養塩濃度について、アサリと水質と、それから先ほどのその数種の水産資源を軸に考えられたのだと思いますが、漁業生産を考える上では、やはり三河湾の生態系の視点も必要かと思います。漁業資源以外の生物や、それから寿命の長い高次の捕食者まで、栄養塩の増加運転がどのように影響するのかという点までは、先ほどの日比野さんの御説明だとまだ考慮されていないということだったかと思います。分からない中で難しいとは思いますが、栄養塩と水産資源と、それから生態系というその関係性をいまだ定量的に評価できていないという点がやはり懸念されるところで、この辺り、内部で十分な議論がなされているのでしょうか。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは三重県、その後、愛知県ということで、まず三重県からお願いいたします。
【三重県】 三重県大気・水環境課の小林と申します。
まず、調査研究のほう、31ページ、参考資料になります。御覧ください。
伊勢湾再生連携研究事業としまして、平成24年度から三重県県内、県庁内の各部、研究機関、それから大学と連携して、様々な角度で研究を進めているところです。貧酸素水塊の原因解明につきましては、研究を進めているところですが、確定的な情報というのはまだないような状況でございます。ただ、今までの検討の中では、CODについて難分解性の有機物が寄与してきているのではないかというところです。特にプランクトンの生物相が変わってきているところによる内部生産増加によって、CODがさらに増えてきているのではないかというところです。また、伊勢湾そのものが、真ん中がくぼ地の状態になっている状況がございまして、そこへ過去からの栄養塩などが、たまってきた汚泥中でそういった部分の分解が進んできたというようなことによってそこで酸素が消費されてしまい、貧酸素水塊が増加しているのではないかという、そのような地形的な要因というところ、複合的なところを、現在、検討しているところでございます。まだ研究を続けている状況になりますので、確定という状況ではないというところを御了承ください。
それから、もう一つの取組のところですが、スライド19ページ目を御覧ください。こちらの具体的な取組のところ、今おっしゃったような部分がありますが、全体的な保全の取組としましては、先ほど御説明しましたように、浅場、干潟の造成というところで、生物の生息場を保全していこうというところに注力をしています。先ほど松阪市地先というところで、現在、保全の造成工事に着手していると御説明したところですが、これ以外にも四日市の地先や、津市の地先でも、造成を検討していくための調査を行っていて、こういった面積を増やしていくことで保全を進めていきたいと考えているところでございます。
以上になります。
【古米委員長】 造成は保全ではないのですが、既にある藻場や干潟をどう保全されているのかという活動はいかがでしょうか。
【三重県】 藻場、干潟の造成のところ、保全という観点につきましては、こちらに具体的な知見、取組を持ち合わせておりませんので、またこちらについては確認をさせていただきたいと思っております。
【古米委員長】 はい、分かりました。
それでは愛知県さん、お願いいたします。
【日比野課長補佐】 まず1点目の17ページ、下水処理場の施設や構造等においてというその中身についてです。委員、御指摘のとおりでございます。処理法や施設そのものの構造、そういったものがそもそも栄養塩増加運転に対応しづらいという御指摘があったという内容でございます。
それから、ほかの水利用への影響、あるいは合意といった部分になるのかというところにつきましても、検討会議の取りまとめについて、公表までに関係市町の農水や環境下水道各部局に説明に回らせていただきました。その際、ほとんど否定的な意見というのは聞かれず、むしろ今まで何でこういうことをやっていなかったんだ、という疑義を持たれた環境担当の方もおられました。検討会議に加わっていただいた市町の委員さんの中では、例えば海水浴場を運営する観光協会のほうでも地元の魚を食べてもらうことの経済効果に期待する声のほうが結構大きいよと、そのような声もありました。実際、水産物を起点として派生する流通、小売、加工業者さん、それから愛知県では特にノリ問屋さんからの栄養塩管理への期待というのが大きいのですが、潮干狩りの現場、そのような和気あいあいとしたアサリを探す姿、そういったことが豊かな海の象徴になってくるのかなと思いますので、基本的にはほかの水利用も含めて、ある程度の方向性というのは大丈夫かなと私は認識をしているところで、検討会議でもそういった結論になっているのかなと思っております。
それから、18ページです。2017年から管理運転をしていますが、アサリが回復していないのでは、という御指摘かと思います。こちら、実は管理運転の内容が若干違っております。2017年は11月から実施しているというものですが、実施の開始月を段階的に前倒しをしていきまして、2020年9月から実施したということになります。これは後の夏の重要性の話にも関わってきますが、16ページに2020年9月から実施したタイミングでアサリの秋冬期減耗というのがかなり軽減されてきたという現場のデータがございますので、やはりアサリにとっては夏のクロロフィル、基礎生産が高い時期にどれだけ蓄積できるかというところが重要であり、それが資源の回復に寄与したんだろうという見解でございます。
さらに、16ページ、漁業への効果の中のノリの色落ち軽減のグラフが少し疑義があるのではないかというところでございます。検討会議のこのグラフでは、最大値と地点ごとの差で、地点ごとの差の評価として検討させていただきました。最大値、これはL*値という数字を用いており、色の黒さでございます。生産期間で一番悪いところが最大値になっており、これが低くなっているので色落ちが軽減されているという理解でございます。現場では色落ちが起きると生産意欲がどんどん失われていってしまいますので、最大値は意味のあるファクターであると考えています。地点間の差というのも下水道からの供給距離の差を示していると考えておりまして、増加運転の由来の栄養塩の寄与というのがここにあったのではないかと推定をしております。
その次ですが、イカナゴなど、春夏にお示ししているような知見、栄養塩だけではないだろうという御指摘、そのとおりだと思います。この資源形成には当然、栄養塩がダイレクトに効くわけではございません。ただ、栄養塩がベースとなってそこに基礎生産があり、さらに底生生物あるいは餌資源が形成され、ひいては資源形成に貢献していく、そういったプロセスが当然あると思いますので、これを直結的に栄養塩がどうかという議論というのは、そこのプロセスをしっかりひもとかないと分からないというのは、御指摘のとおりだなと思っております。そういう意味ではこういった知見というのは現段階では定性的な部分にとどまっているのかなということではございますが、水産資源とこのような餌条件の関連をここまで明らかにしているというのはなかなかないかなと思っておりまして、こういった状況証拠をしっかり整理、精査して、次の取組の材料にしていくべきではないのかなと捉えております。ただ、定量的な解析や現場の応答はしっかりモニタリングしながら、そういったところを漁業の状況の把握を通じてしていくべきかなと思いますし、今後このような生物対象種に関しての科学的な知見の蓄積は当然引き続き進めていく必要がある、これで終わったわけではないと考えております。
それから最後の高次までの生態系の応答がどうなっているのかというところです。こちらも生態系構造、我々、水産の立場から漁獲対象種を対象として解析をしていますが、それを見るとマダイやヒラメなど外洋性の種類が増えてきているなど、そういった知見がございます。そういった中で生態系構造が変わってきて、例えば生産効率が低くなってきているとか、ヒラメが内湾に入ってくることで外海域に類似してきた生態系構造になってきている、こういったことも分かってきております。このような変化というのは、当然御指摘のとおりで栄養塩と対応する部分もありますが、水温の影響なども当然ございます。解析の中で、水温、栄養塩をどうしたら制御できるのかなど、出口につながるような検討をいたしまして、その中でできることをやっていくしかないのかなと考えております。ただ、やはり内湾が外海化していくというのは現実としてあるわけで、そういったところで内湾のこれまでの特色ある漁業あるいは生物多様性、そういった地域の漁業が魅力の低下につながるおそれがあるのではないのかといったところも、これから懸念していかなければならない材料ではないかと考えております。
以上でございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
質問された方、よろしいでしょうか。
(はい)
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
それでは、次に移らせていただきます。
その他ということで、事務局より何かありますでしょうか。
【西川室長】 特にございません。
【古米委員長】 それでは、本日の審議はこれで終了とさせていただきたいと思います。
議事の進行を事務局にお戻しいたします。
【西川室長】 古米委員長、ありがとうございました。
本日は御多忙のところ活発な御議論をいただき、誠にありがとうございました。
次回は6月9日を予定しております。委員の皆様には改めて御連絡をさせていただきます。
また、議事録につきましては、事務局で作成の上、皆様の御確認を経て、環境省のホームページに掲載いたします。
以上をもちまして、第4回総量削減専門委員会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。
午後0時18分 閉会