海底下CCS制度専門委員会(第2回)議事録

日時

令和5年11月1日(水)16:00~17:57
※ WEB会議併用

議事次第

1.開会

2.議題

(1)関係団体からのヒアリング
(2)海底下CCSに係る制度の見直しの論点について
(3)その他

3.閉会

配布資料

 資料1ー1 ヒアリング資料(日本CCS調査株式会社)
 資料1-2 ヒアリング資料(苫小牧漁業協同組合)
 資料2   海底下CCSに係る制度の見直しの論点について
 

議事録

【事務局】 定刻となりましたので、ただいまから、中央環境審議会水環境・土壌農薬部会第2回海底下CCS制度専門委員会を開催します。
 委員の皆様方には、ご多忙のところご出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日の出席状況ですが、委員総数9名のうち、9名全員の委員にご出席いただけると伺っております。
 また、本日は関係団体からのヒアリングとしまして、日本CCS調査株式会社様と苫小牧漁業協同組合様の方々にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いします。
 本日は、会場とWeb会議の併用での開催としております。また、本日の会議は、中央環境審議会の運営方針に基づき公開とさせていただいており、YouTubeの環境省海洋環境課公式動画チャンネルで同時配信をしております。
 続きまして、資料の確認をいたします。
 本日配付している資料は、資料1-1、資料1-2、資料2の3種類です。それぞれ資料の表紙の右上に資料番号を記載しておりますので、ご確認ください。
 それでは、ここからの議事進行は、大塚先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【大塚委員長】 どうぞよろしくお願いいたします。
 まず議題の1、関係団体からのヒアリングでございます。
 本日は、苫小牧の実証事業のステークホルダーの方々においでいただいております。まずは、日本CCS調査株式会社の中島社長から、ご発表をどうぞよろしくお願いいたします。10分から15分程度でお願いいたします。
【JCCS(中島)】 委員長、ありがとうございます。日本CCS調査株式会社の中島と申します。このような場で発表させていただく機会を頂戴いたしまして、誠にありがとうございます。
 本日は苫小牧でのCCS大規模実証試験について、特に法的な側面にフォーカスをしてご紹介をさせていただきたいと思っております。
 説明を私から通して行いますけれども、後ほど質疑応答の場面では、必要に応じまして、同席の取締役貯留技術部長、萩原からご回答申し上げることがございますので、あらかじめお許しをいただければと存じます。
 それでは早速でございますが、資料の2ページをご覧ください。
 弊社は2008年のG8、洞爺湖サミットにおけるCCS実証の必要性に係る合意に呼応して、同年、民間企業の出資により設立されております。
 左下のほうにお示ししておりますように、苫小牧実証以外にも受託している業務がございますけれども、国等の実証事業の推進部隊としての役割を担っております。
 3ページにつきましては、前回、環境省様でご説明されているかと存じますので、省略をさせていただきます。
 4ページをご覧ください。
 苫小牧実証では、①の物理探査、右側、②の坑井掘削、それから、左下、圧入といった順に作業を実施しております。
 右下の囲みの中に記載がございますとおり、これらの作業は石油・天然ガスの探査・採掘技術を利用しております。
 また、一般論といたしましては、CO2-EORの場合には、陸域・海域を問わず、鉱業法・鉱山保安法によりCO2の地下圧入は実施が可能でございます。その上で、苫小牧実証における海防法の許可は、鉱業法・鉱山保安法の基準や石油開発技術を援用した評価に基づいた部分が相当程度ございました。具体的には、坑井の掘削・閉鎖、圧入等、運用時の安全確保、あるいはモニタリング等に関する経産省さんのガイドラインが作られておりまして、これを適用して実施をいたしました。
 5ページをご覧ください。
 深部塩水層への純粋なCCSとCO2-EORとの比較を示したものでございますけれども、CO2の地下への圧入という面では、両者に大きな相違はございません。
 6ページ以降が、具体的な苫小牧での実証概要のご紹介になっておりますが、時間の制約もございますので、ごくかいつまんでご説明をさせていただきたいと思います。
 まずこの6ページの部分ですけれども、苫小牧実証は、製油所の水素製造装置のオフガスから分離回収をした濃度99%以上のCO2を、海防法上の特定二酸化炭素ガスとして、海底下の地層に圧入・貯留する実証事業でございます。
 1枚飛ばしまして、8ページをご覧ください。
 2本掘削をいたしましたCO2の圧入井は、陸上から掘り始めまして、地下で傾斜をつけて、貯留地点が海底下になるように計画をし、実際の掘削を行っております。圧入坑井や地上設備が直接海水に露出する箇所はないという形で実施をしております。
 10ページをご覧ください。
 2018年9月に発生いたしました北海道胆振東部地震の実証センターでの震度は5弱、震源は貯留地点より水平距離で約30km離れた深度37kmの地点でございました。地上設備、それから坑井等の地下設備ともに損傷はなく、貯留層の温度、圧力の観測結果等から、CO2の圧入と、この地震の発生との関係を示唆するデータは確認されておらず、また、地震によるCO2の漏えい・漏出を示唆するデータも確認されませんでした。
 また、この地震に直接関連する話ではございませんが、シェールオイル・ガスの開発でのフラクチャリング時に散見される微小振動も、この苫小牧でのCO2圧入期間中に観測されることはありませんでした。
 こうしたしっかりとした観測体制とデータに基づいて、広く地震の有識者からのご意見やご確認をいただいた報告書を、この地震発生から2か月後には取りまとめて、弊社のWebサイトにも掲載するといった対応をさせていただきました。
 また1枚飛びまして、12ページをご覧ください。
 苫小牧実証におけるCO2の処理フローごとに適用された法規をお示ししております。
 先ほどの繰り返しになりますが、下段のところに記載のとおり、CO2の海底下廃棄には海防法を適用しておりますが、坑井掘削及び貯留等については、経済産業省さんのガイドライン「CCS実証事業の安全な実施にあたって」に従うとともに、鉱業法・鉱山保安法に準拠して実施をいたしております。
 14ページをご覧ください。
 海防法の許可を得る過程で行った検討の一例をお示ししております。
 前のページに法体系を記載してございますが、そのうちの省令の第4条第2号に、圧入されたCO2が海洋に漏出したと仮定した場合に予測される漏出の位置及び範囲等を事前評価書に記載するということが申請者に求められております。これに対応するために、弾性波探査で認識されていない断層が存在するケース(シナリオ1)及び地質学的には想定し得ない流路が生じたケース(シナリオ2)といったものを設けまして、このケースでの漏出シミュレーションを実施し、仮にそのようなことがあったとしても、海洋での溶存CO2濃度の上昇は極めて低く、自然変動の範囲を超えないという評価を行っております。
 また、そうした結果を踏まえて、次のページにお示しする監視海域の設定を行っております。
 15ページをご覧ください。
 前のページでご説明したような検討を踏まえまして、設定をしたモニタリングの範囲を、この黄色といいますか、オレンジ色っぽい四角い破線で囲んだ部分でございますが、この範囲を監視区域と設定いたしまして、ここで弾性波探査や地層の圧力、温度、あるいは海水の化学的性状など、これは次の16ページにお示しをしているようなモニタリングを行い、取得したデータについては全て公表をしているところでございます。
 なお、この15ページの写真というか、図の中で、一部、30万トン貯留した後ですけれども、その後の必要なデータ取得に支障がないと判断された一部の自然地震・微小振動観測機器には、既に撤去をしたものがございます。
 17ページをご覧ください。
 圧力温度の連続監視データは、事前予測と合致する変化を示し、安定的に貯留層内にとどまっていると評価をしております。
 18ページをご覧ください。
 圧入した二酸化炭素の広がりは、弾性波探査と貯留層シミュレーションにより評価をしております。右上のシミュレーションによる分布予測、それから、左下の、これは6万トンまで圧入した時点での弾性波探査、右下が30万トン圧入後の弾性波探査データを基にした評価の分布域ですね、この少し暖色系になっている部分ですけど、これがほぼ同様の形状を示しているということで、CO2が想定した範囲にとどまっていることを確認するとともに、シミュレーションの挙動予測の確からしさも実証されたものと認識をしてございます。
 19ページをご覧ください。
 海防法に基づく海水の化学的性状や海洋生物の調査項目と、採水等を行う地点をお示ししております。季節ごとに、年4回調査を行っておりますが、CO2の漏出、またはそのおそれとなるような事象は確認されておりません。
 20ページをご覧ください。
 海水の化学的性状に関しましては、CO2の海洋への漏出のおそれを検知し、監視段階を移行する判断基準として、溶存酸素飽和度に対する二酸化炭素分圧を観測しております。基準線を超過した場合には、再調査、あるいは、センサーによる面的調査、気泡確認調査などの追加調査を行います。
 基準線は実績値の95%予測区間で設定しておりまして、ベースライン時から1回見直ししたものを実線で、赤い線でございます、お示ししておりますが、基準線が自然変動の内側に設定されておりますので、必然的に自然変動によって超過するケースというのが発生することがございます。
 本実証では、その都度、追加調査を実施して、異常がないことを確認しておりますけれども、今後の社会実装時の基準の設定や調査頻度については課題があるものと考えております。
 21ページをご覧ください。
 貯留及びモニタリングの結果をまとめております。貯留されたCO2の漏えいが疑われるデータは確認されておりません。
 次に、22ページでございます。
 CCS新法の策定に向けて、これまでの経験から、弊社として課題と考える事項を整理させていただいております。
 かいつまんで申し上げますと、鉱業との関係が極めて密接であることに留意が必要であること。それから、海域、陸域を一元的にカバーすべきであること。監視項目のうち、特に海水の化学的性状及び海洋生物の実態調査については、CO2の漏出との科学的な因果関係や費用対効果を勘案すべきではないかといった点が挙げられると考えております。
 23ページをご覧ください。
 こちらは、この苫小牧の大規模実証試験に関わる諸課題を検討するための有識者委員会を設けておりまして、その検討会において、実証試験の成果も踏まえた上で、経済性も考慮したモニタリングのあるべき姿を検討すべきとのご指摘をいただいておりましたことから、この有識者検討会の下部に、あるべきモニタリングに係る分科会を設置いたしまして、検討を行っております。本日は、その中間整理の状況について、簡単にご紹介をさせていただきたいと思います。
 24ページをご覧ください。
 こちらがその中間サマリーでございます。大きくは、まずモニタリングの主たる目的として、圧入操業に不具合がないかの確認。CO2の漏出につながる変化として、後述いたします、地層内での異常なCO2の移動の監視及び把握。それから社会的関心等に対応する地表付近や海洋等の環境に対するモニタリング。大きくはこの三つが目的になるだろうという整理でございます。
 また、モニタリングに際しましては、CO2が想定された貯留域から想定を超えて地層内で移動する漏えいと、大気中や海水中にまで移動する漏出とを明確に区別した上で、漏出につながる兆候としての漏えいがないかを確認する1次監視と、1次監視で何らかの異常が認められた場合に漏出の検知等を目的に行う2次監視とに分類することが、今後の合理的なモニタリングの在り方を考える上で重要であるという整理が行われております。
 そのほか、必ずしも法規制の対象にすべき項目ではないものの、サイトの事情に応じた特有の監視項目や、地元理解等のための社会的な関心に基づくモニタリングといったものが、これは法的義務とは別途事業者の責任として行われることが必要であるといった考え方も併せて示されているところでございます。
 25ページ、26ページは、この24ページのご説明を補完する内容でございますが、本日は時間の制約もございますので、説明は割愛させていただきます。
 私からの説明は以上でございます。どうもありがとうございました。
【大塚委員長】 はい、どうもありがとうございました。
 では続きまして、苫小牧漁業協同組合の伊藤組合長と赤澤部長からご発言をお願いいたします。5分から10分程度でお願いいたします。
【苫小牧漁協(赤澤)】 はい、ありがとうございます。苫小牧漁業協同組合の赤澤と申します。本日はこのような場にお招きいただきまして、ありがとうございます。
 まず私のほうからは、苫小牧漁業協同組合の概要について、若干ご説明をさせていただきまして、その後、当組合の伊藤組合長より、今後のCCSに対する思いや要望事項につきましてご発言をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 まず、資料を開いていただいて1ページ目になります。
 苫小牧漁業協同組合についてということですが、昭和24年8月3日に設立され、現在の組合員数が107名おります。
 次のページに、苫小牧市の中身に書いておりますが、道央部の太平洋沿岸側に位置し、ちょうど苫小牧市の公式キャラクター「とまチョップ」が指を指しているのですけど、苫小牧市がこちらにございます。
 漁業は10トン未満の漁船を中心にホッキガイ桁引き網、カレイ刺し網、スケトウダラ刺し網、サケ定置網漁業など、沿岸漁業が主な事業となっております。その中でもホッキ貝は、苫小牧の市の貝にも制定され、市町村別の漁獲量では22年連続日本一を誇る、苫小牧市の基幹漁業ともなっております。
 次のページをお願いします。
 主要魚種のホッキ貝について、若干説明をさせていただきたいと思います。
 名前の由来につきましては、諸説ありますが、正式名称はウバガイと呼ばれ、一般的にはホッキ貝の名前で親しまれております。生態としましては、大型の二枚貝の一種で、冷たい海水を好み、日本では関東以北から北海道周辺に生息をしております。産卵期は5月から6月、これは苫小牧地区の産卵期にはなりますが、この期間につきましては禁漁期間としております。
 資源管理について書かせていただいております。先ほどの禁漁期間のお話もそうなのですが、苫小牧では、古くから厳しい資源管理に取り組んでおり、資源状況に応じた漁獲ノルマの設定ですとか、海域別ノルマの設定、あと独自の漁獲サイズの設定など、厳しいルールを定めております。それらのルールを守ってきた結果、水産エコラベル認証、これはマリン・エコラベルと呼ばれる認証なのですけど、持続可能な漁業の資源としての認定を受けるなど、環境に配慮した漁業も営んでおります。
 味わいと栄養につきましては、苫小牧のホッキ貝は甘みが強いということが特徴で、成分でいきますと、タウリン、カリウム、マグネシウム、鉄といったミネラル成分が豊富です。北海道が主産地でありますが、苫小牧が水揚げNo.1と、地域の重要な貴重な資源として位置づけられております。
 当組合とCCSの関わりについてというところですが、事業受入れから始まりまして、それぞれ近隣漁業関係者への実施状況の説明ですとか苦情対応、海域利用調整等、10年以上事業に関わってきました。
 当組合の関わりとしては、事業への協力というのはありながらも、海域利用者の立場から、環境との共存というところを非常に重要な内容というふうに考えておりましたので、漁協の組合員をはじめ、利害関係者の方々にも、これまで丁寧な説明に努めてまいりました。
 次のページ、お願いいたします。
 こちらの写真は苫小牧の市民活動、「地球お守りチーム」による海岸清掃の様子となっております。苫小牧市では、漁協はもとより、地域でも海洋環境保全活動も行われているということでご理解いただければと思います。
 これ以降のCCSに対する思いや要望事項につきましては、当組合の伊藤組合長に発言をいただきたいと思います。伊藤組合長、よろしくお願いします。
【苫小牧漁協(伊藤)】 苫小牧漁協の伊藤です。よろしくお願いいたします。
 私のほうからは、今後のCCS事業に当たり、事業を受け入れた経験を踏まえ、要望というのが何点かありますので、お伝えしたいなと思っております。
 地球温暖化による海水温の上昇などは漁業・養殖業にも影響があるため、2050年カーボンニュートラルの達成は、漁業・養殖業者にとっても重要です。
 CCSは、CO2削減のための有力な手段であると考え、当組合は、苫小牧CCS促進協議会、現在の苫小牧CCUS・ゼロカーボン推進協議会の会員として、また、海域利用者の立場から、CCS大規模実証試験での環境監視の役割も担い、事業への協力をしてまいりました。
 そのほか、近隣漁業関係者への実施状況の説明、苦情対応、海域利用調整など、関係者との信頼関係の構築のため、微力ながらも協力させていただいたところです。
 今後、広くCCS事業が実施されるに当たり、政府において、CCSに関する法制度の整備が進められていくことについては、基本的には賛同いたします。
 ただ、先行海域利用者である漁業者は、CCSの受入れそのものに直接的なメリットがない一方で、万が一CO2の漏えい等の事象が生じた場合には、水産資源の減少などの形で直接的な被害を受けることになるため、慎重な対応が必要です。
 そこで、当組合は、苫小牧事業を受け入れた経験を踏まえ、次の五つの点について適切な配慮がなされることを要望いたします。
 一つ目は、風評被害の防止についてです。
 近隣漁業関係者への説明の中でも、風評被害の発生を危惧するなどの意見を度々いただいておりますが、CCS事業の実施に当たっては、事業の実施主体と我々漁協を含めた各主体との信頼関係の構築が不可欠です。苫小牧実証事業において、事業者のモニタリングに加え、環境省によるモニタリング調査が行われることで、事業者のモニタリング結果に客観性が加わり、近隣漁協や漁業関係者への説明にも説得力が増すなど、関係主体の信頼関係の醸成にもつながっていることも事実としてありましたので、今後もこうした取組を継続していただきたいと思っております。
 二つ目は、モニタリング手法の開発についてです。
 現在、海底下の状況を把握する手法として、弾性波探査が一般的な手法として行われておりますが、非常に大きな音や振動の出る手法であり、漁業資源や周辺環境への悪影響も懸念されるところです。現在、環境省において、電磁探査手法の開発が行われておりますが、早期の実用化の要望をいたします。
 三つ目は、政府内における適切な役割分担についてです。
 苫小牧実証事業については、海洋汚染の防止の観点から、海洋汚染等防止法に基づく環境大臣の許可の下、実施されています。かつて、苫小牧実証事業の実施中にモニタリング結果の異常が検知されたこともありましたが、環境省のデータと事業者のデータを併せることで、CO2の漏えいがなかったことが確認でき、組合員や近隣漁業関係者にも説得力を持って状況を説明することができました。政府内において、海洋環境の保全に責任を負うのは環境省以外になく、政府内において、CCS事業に関わる法制度の検討が各関係省庁において進められていると聞いてはおりますが、環境保全の観点からの規制については、引き続き環境省においてなされることが望ましいと考えます。
 四つ目は、事業終了後の海域の管理についてです。
 今般の検討において、事業終了段階に関する制度の在り方についても課題となるかと思いますが、仮に事業者に対する規制が終了したとしても、海底下にCO2が残り続ける状況には変わりがないことから、規制終了後も状況の変化がないか、環境省をはじめとする公的機関において、必要に応じて監視をするような仕組みの構築を要望いたします。
 最後になりますが、五つ目として、不適正事案への対応についてです。
 今後広くCCSが実施されることに伴い、CCS事業に多様な主体が参入してくることが想定されます。CCS事業の開始に当たっては、許可の段階において厳格な審査がなされるものと理解しておりますが、許可取得後の操業中に、万が一不適正な事案が起きた場合に、事業者が解散などをしてしまうと、制度上、不適正な状況を是正する主体が不在となるおそれもあります。漁業者が泣き寝入りをすることのないよう、適切な主体に対応の責任を負わせるなどの仕組みの構築を要望いたします。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございました。
 それでは2団体の発表につきまして、ご意見、ご質問などがございましたら、お願いいたします。Web参加の方は挙手ボタンを押していただき、会場参加の方は机の上の札を立てていただきますようにお願いいたします。では、どうぞよろしくお願いします。
 佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 佐々木でございます。
 日本CCSさんに、お尋ねいたします。
 スライド24番のところで、漏えいと漏出を区別して扱うということを提案されておられるのか、あるいは既にそういう認識が社会の中に広まっているのか。私は、これまでの国際的な枠組みとかロンドン条約の議定書、関連するガイドラインにおいて、この漏えいと漏出を区別するような英語の単語をこれまで、勉強不足かもしれませんが、聞いていない区別かと思っています。
 そこで、想定される貯留域から域外に出ることを漏えいとし、漏出はそういうものが何らかの私たちの生活圏に入ってくる、あるいは海洋に入ってくることを指すという定義をされているわけですが、英語で言えばleakageかleakという単語に対して、訳語としての定義はあまりはっきりしないものです。域外に出るか出ないかということよりも、CO2の移動による海洋環境へのリスクが大きいか小さいかという区別をする方が現実的ではないかと考えますが、いかがでしょうか。
【大塚委員長】 では、ご質問に対してご回答をお願いします。
【JCCS(中島)】 JCCSの中島でございます。ご質問ありがとうございます。
 まず、このあるべきモニタリングの姿、現時点では提案の骨子の案という位置づけでございます。ご説明申し上げましたとおり、苫小牧実証試験を行う上での、有識者による課題検討会という中でご議論いただいている内容でございまして、現時点でまだファイナライズをされたものではございませんが、現状こういった議論を有識者の先生方の中でやっていただいているということでございます。
 その上で、ご指摘のありました、一つはその国際的な認識、あるいは、その用語の区別というところでございますけれども、国際的にも、一応、leakageと、それからseepageという言葉の使い分けが一定程度なされているという認識でございますが、一部そこがまだ明確に区分して使い分けられている、あるいは、その使い分けが定着しているということでは必ずしもないという認識ですけれども、この私どものほうの有識者委員会の委員の皆さんからは、ここをまずは日本としてしっかりと区別して議論を行っていくことがよいのではないか、あるいは、そういった考え方を国際的にも発信していくべきではないかと、そういった議論がなされているというふうに認識をしてございます。
 その上で、リスクの大小という考え方というのは、基本的には認識は共通しているのかなということでございます。まずは地層の中で想定している場所よりも、例えば遮蔽層と認識しているところに、ある程度はにじみ出しすることがありますけど、それが想定を超えてにじみ出しをしているようなケース、あるいは、水平方向の広がりについて、想定以上に広がっているということが観察された場合には、これがその先、漏出、つまり海洋環境や大気へのCO2が出てくるということにつながる、そのリスクが高まっているという、その兆候として、まずは漏えいを監視し、そのリスクが高まっているということが認識された場合には、2次監視として漏出があるかないかということを監視するべきではないかという考え方だというふうに認識をしてございます。
 これは現在の海防法における監視体制におきましても、通常時監視、それから懸念時監視、それから異常時監視という3段階の監視体制が規定されているという認識でございますけれども、基本的な考え方のコンセプトはこれと乖離しているものではないというふうに、私どもでは認識をしてございます。
 以上でございます。
【大塚委員長】 佐々木委員、いかがでしょうか。
【佐々木委員】 この件に関わる用語の定義については、今後も多くの方の議論を経て決定していくべきかと考えます。ご回答の中にもあったようなプロセスを経ていただければと思います。
【大塚委員長】 はい。じゃあ、そのようにさせていただければと思います。
 奥委員ですかね。奥委員、お願いします。
【奥委員】 ありがとうございます。私もちょっと同じ点でご質問しようと思っていたところなのですけれども、そもそも、この漏えいと漏出を明確に区別できるものなのかどうかというところが疑問に思ったというのが1点で、あともう一点は、もう既に海防法上も3段階で監視をするということがあるわけですけれども、ご提案は、漏えい段階と漏出段階を、これを法的に区別すべきだという、そういうご提案ですか。そこを2点確認させてください。
【大塚委員長】 では、よろしくお願いします。
【JCCS(中島)】 中島でございます。ご質問ありがとうございます。
 明確に区別できるかどうかということでございますけれども、まずはご説明した中にもありましたとおり、貯留、圧入を開始した後、その広がりがどうなっているのかということは、温度、圧力、あるいは弾性波探査、これは苫小牧漁業協同組合さんのほうからは影響が大きいというご指摘もありましたが、これが現時点で確認できる手法だと思っておりますし、その手法の中で、漏えいの兆候ということを見ることが可能ではないかというふうに考えております。
 一方で、漏出を通常時、常時監視する方法として今現在行っているのは、これもご説明いたしましたが、海水の化学的性状であったり、海洋生物の観測・観察ということでございますが、ここの自然変動と、それから、あるいはCO2の漏出による影響というところの化学的な因果関係といいますか、影響の出現の度合いというのが必ずしも明確には分からないので、私どもがこの実証試験を通じて経験したところでは、今、実証試験ですので、かなり重厚にそういった観察をしているわけでございますけれども、ここをどこまでやるのかということについては議論の余地があるのではないかという、そういう考え方でございます。
 したがいまして、繰り返しになりますが、漏えいが検知され、したがって、その異常があるかもしれないという状況が観察されたときに、漏出があるかないかということの調査を行っていくということが、ある意味、効率的かつ合理的ではないかという考え方でございます。こういったことを今議論させていただいている状況という認識でございます。
 それからもう一点、法的にというところがございました。これはちょっとJCCSの立場からどうということを申し上げる立場にはないので、お答えが難しいのですけれども、いずれCCS新法の中で、どういったモニタリングを行っていくのかということについての一定の基準なりが、もし法の本則か、政省令か、あるいはその下かといったところがあると思いますけれども、何らかのものがお示しされるときに、こういった考え方をどう取り込んでいただくことになるのかということかと思っております。現時点で何か正式にその提案をするとか、そういう段階までは来ておりませんけれども、一つ、現在行われている議論をご紹介させていただいたという位置づけでございます。
 以上でございます。
【大塚委員長】 奥委員、よろしいですか。何かありますか。
【奥委員】 はい。ご回答は分かりました。
【大塚委員長】 ありがとうございます。
 では、工藤委員、お願いします。
【工藤委員】 どうもご説明ありがとうございます。日本CCSさんに1点お伺いしたいのですけど、今、全体のサイトの写真等を眺めていたときに、既に圧入が終わってモニタリングのプロセスに入っていて、この先は、ある段階でモニタリングをどうするといった議論になっていくと思うのですけれど、一方で、これは実証なので特殊なサイトなのかもしれませんが、通常の事業サイクルで考えると、圧入が終わってモニタリングを行うような段階になった場合には、このサイトを更地にして異なった目的での再利用をすることを考えるのが一般的なのかどうか。一般的というのは、まだ事例がないというところもあるのですけど、そういうサイクルを想定するべきものなのか否かという辺りについて教えていただければと思います。お願いします。
【大塚委員長】 はい、よろしくお願いします。
【JCCS(中島)】 中島でございます。ご質問ありがとうございます。
 まず苫小牧の実証に関して申し上げますと、この後、このサイトをどうしていくかということについては、現時点ではまだ決定したことはございません。現在NEDOさんのほうでは、基本計画がこの先もございますので、私どもは受託者の立場でご相談をさせていただいて、どう運営していくのかということになってまいります。
 その上で、海防法の許可につきましては、現在2021年度から25年度までの許可をいただいて、その許可の中で指定されたモニタリングの作業を継続しているところでございます。
 したがって、26年度以降のモニタリングをどうするか。それから、最終的には、これはいつ・どういう形でということは決まっておりませんけれども、いずれはこのサイトを閉鎖する、閉鎖という意味は地上設備についての撤去はあるのですけど、特に海防法の観点から言えば、坑井を閉鎖するというタイミングがいずれかの時点では来ますので、その際に、その井戸の閉鎖は、どういう条件が整えば閉鎖をしてよいのか、そういった基準が、今後具体的に整理されていくことになるのだろうと思っております。この辺りは、むしろ経産省さん、環境省さんの側でのご検討を踏まえて、それに事業者側が対応していくことになると思います。
 社会実装をされる場合、あるいは、現在、経産省さん・JOGMECさんの事業として、先進的CCS事業が採択をされて、検討が進められております。仮にそういった事業が進んでいって、CO2の貯留が行われるということになった場合に、一般論として、例えば5年、10年、あるいは、それ以上長い期間の圧入、かつ圧入地点の、最大限活用するとして、CO2の貯留キャパシティーに達したときにはそれ以上の貯留はできなくなるので、そうしますと、一定のモニタリング期間を経て、そういったサイトを閉鎖していくことになるであろうと。そういったサイクルは、事業者目線では想定されるところだと思っておりますので、そちらはどちらかというと、新しく用意されたCCS新法に基づいて、そういったサイトの閉鎖等が行われていくことになると思っておりますので、それと、この苫小牧事業におけるサイトの閉鎖ということは、苫小牧事業のほうが先に来るかどうかも分かりませんけれども、恐らく26年度以降の監視計画であったり、閉鎖に向けた基準をどういうふうにしていくかというのは、先進的事業やその先の社会実装事業の先例になっていくかもしれないなというふうには考えております。
 以上でございます。
【工藤委員】 どうもありがとうございます。基本的には、長期的に見ると、特に圧入口の周辺を一定の管理区域という形にして、それ以外のところについては更地にするなり別途利用するということがある程度想定されると、そういう理解でよろしいでしょうか。
【JCCS(中島)】 はい。恐らくそういう形になると思います。例えばですけれども、石油・天然ガスの鉱山を閉鎖といいますか、廃坑と申しておりますけれども、閉山する場合においても、地上設備を撤去して、地上部分については更地状態に戻しますが、それと同時に井戸についても、最終的にはセメントで埋め立てるような形の処理、廃坑、坑井の坑の廃坑と申しておりますが、そういった作業をすることになります。
 その上で、鉱業権を国に返還するというようなことを行ってまいりますので、CCSに関しましても、割と鉱業において行われていることと類似した手続といいますか、プロセスが取られていくというのが、一つ自然な考え方ではないかというふうに思っております。
 以上です。
【工藤委員】 はい、ありがとうございました。
【大塚委員長】 はい。今後のことはいろいろ分からないことも、新法とかという話もどうなるか分からないこともいろいろあったと思いますが、いろいろ予測をしてお答えいただいたかと思います。よろしく、ありがとうございます。
 はい。海江田先生、お願いします。
【海江田委員】 海江田です。ご説明どうもありがとうございました。
 私からは漁協の方に伺いたいのですが、苫小牧ではいろいろなモニタリングがやられていて、その中で漁協の方が一番関心の高かった項目とか、データとかについて、どのようなものがあったかお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
【大塚委員長】 はい、よろしくお願いします。
【苫小牧漁協(赤澤)】 苫小牧漁協の赤澤です。
 私、かれこれ10年ぐらいこのモニタリングに携わってきました。データとして一番重要なところについてですが、海の環境の変化というのは、この10年、我々も変化を感じているところがあるのですけど、それがCCS事業を実施することによって、何か特別な変化があったかどうかというところの評価は非常に難しいというふうに感じておりますので、そこを数値として何か判断できるデータが必要になってくるのかなというふうに考えております。
 ただ、一方では、それを一定の何か数字で出すというのは、なかなか難しい状況であるとも思っております。資料の20ページにありますが、基準超過判定ではベースラインを用いていますが、今現状はこのラインに基づいて、漏出・漏えいの評価というものを行っていただいている状況です。
 ただ、一方では、さきに述べさせていただきました、海洋環境の変化がありますので、その変化とこの基準線が合わなかったりですとか、初期のモニタリング、ベースラインを設定するときの海洋環境、あと水塊の状況によって、このラインが大きく、線の傾きが変わってしまうなどの課題もあります。そのため、この基準線超過の判定については、一つの指標として必要になってくるとは思うのですけど、基準線超過の判定だけにこだわらないで、圧力の状況や、その他の状況なども踏まえ、複合的に漏出・漏えいがないというところを判断いただき、漁業者にしっかり説明できるというところが非常に重要だと思っております。
我々としては、この基準線を超えた、超えていないというところよりも、漁業者の皆さんに、漏れていないというところをしっかり説明できる根拠を複合的に判断していただくということが非常に重要な内容だと思いますし、当然、今後の事業を進めていく上では、経済性というところも考えの一つとして入ってこなければいけないのだろうなというふうには思っているところでありますので、今後のモニタリングの在り方の参考として考えていただければと思います。
 以上です。
【海江田委員】 ありがとうございました。よく分かりました。多分今後のモニタリングの検討において参考にさせていただくことになろうかと思います。ありがとうございました。
【大塚委員長】 はい、どうもありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 岡松委員、お願いします。
【岡松委員】 岡松でございます。ありがとうございます。
 今のところに関連してでございますけれども、資料の20ページのこの基準超過判定です。恐らく基準を超過したところで、超過が見られた場合には異常がないことを確認するということですので、この基準を超えてもなお特に異常がないこともあるというところにラインを引いていらっしゃるかと思います。
 ただ、これはやはり基準を超えていても大丈夫だというよりも、ある程度基準を超えていないとか、大丈夫であるという客観的な説得力ある説明のためには、これを超えない努力というのが必要なのではないかと思うのですが、これは超えたものに関して、これを超えてしまったものというのは不可逆なわけではなく、基準値の中に戻すことができるものなのでしょうか。
【JCCS(中島)】 一言私から、その後、萩原から補足いたします。
 自然変動が結構大きいのですね。1回採取したそのサンプルが基準を超えていた場合には、少し時間を置いて再度調査をすると、それが基準線内に収まっているということが多うございまして、これまではほとんどそういう状況でございました。まず、そのことをちょっとご理解いただいた上で。
【JCCS(萩原)】 では、20ページの図をもう少し説明させていただきますと、実線、95%予測区間ですので、上限のほうに近づいたら確認調査を行うということにしておりまして、ですので、上限ですので、プラス・マイナスがありまして、2.5%はもう統計的な確率で超過します。ですので、そこについては疑いがあるので、確認調査を行うということにしております。
 あともう一点は、二酸化炭素分圧、これは概ね気体中の二酸化炭素濃度とほぼ同じような値を示していまして、やはり400µatm、蒸気圧を無視しますとほぼppmと同じですので、空気中の二酸化炭素400ppmと同じでして、これが年々、現在、2ppmずつぐらい上がっているのは、皆様ご存じかと思いますが、全体的に二酸化炭素濃度が上がっていることも影響してまいります。
 あと先ほど申しましたように、苫小牧はちょうど親潮、黒潮がぶつかる地点ですので、この水深20メートル~40メートルなのですが、やはり上の層と下の層とで混合したり、あと水塊が、たまたま測定するときに入ってきたりで、かなりプロットがぶらつくことがあります。あと当然生物的な影響で、プランクトンの異常発生とかもありますので、自然変動による影響が非常に大きいと考えておりますので、やはり時期をずらしてですけれども、再調査を何回か行ったり、あと時期がちょっと異なりますが、環境省さんが実施している別の調査との、全体的に見て比較したりですとか、総合的判断が必要になるかと思います。
【大塚委員長】 大丈夫ですか。
【岡松委員】 はい。
【大塚委員長】 では、窪田委員、お願いします。
【窪田委員】 ご説明ありがとうございました。漁業組合にご質問させていただきます。
 7ページの政府への要望事項⑤につきまして、漁業者が泣き寝入りすることがないような制度設計を、という点ですけれども、もう少し具体的に何かイメージがあれば教えてください。いわゆる漁業補償みたいなものではなく、万が一起きた際の原因調査なり原状復旧、事後のための約束、協定書や覚書なり、そういうイメージでしょうか。
 また、①の風評被害にも関連しますが、ホッキ貝のようないろんな地域の風評被害も含めた形をイメージされているのかどうか、確認させてください。
【大塚委員長】 よろしくお願いします。
【苫小牧漁協(赤澤)】 私のほうからご説明させていただきます。
 まず1点目ですね。万が一の事態が起きた場合に、漁業補償とかそういったものを具体的に何か求めているというよりも、その事業そのものを置き去りにして、放置しないような体制をぜひ整えていただきたいというのが一番の思いです。
 具体的な事業はさておき、今までいろんな話を聞いている中でも、例えば事業者側が解散をしてしまって、そのまま物が置きっ放しになっているというような事象を聞いたこともありますので、最後の最後、そういった事態が発生したときに、そのままの状態にして、漁業者がそれをずっと管理もできない状況の中で継続するというのは好ましくない状況かと思いますので、これが国なのかどこなのかというのは今後の議論もあるとは思うのですが、どこかの形でしっかり、責任体制だけは担保していただきたいというふうに考えているところです。
 あと一方で、万が一そういう海洋資源への影響というところで、これが直接的にこのCO2圧入に関わるものに関して何か起きた、発生してしまった場合につきましては、そこは今の協定書の中でもあるのですけど、別途そこは協議をしていくというところで、事業者側との協定を結んでいるところもありますので、しっかりそこの責任体制の担保だけは取っていく必要があると思っておりますし、この10年、圧入以降、携わってきて漏れた事象というのは、我々もないというふうに理解をしておりますので、今後も漏れない前提で進めていくことは第一前提だとは思いますが、万が一の事態には、漁業者が風評被害や海洋生物への実害といった被害に対する責任を取るような形にならないような体制というのは、責任体制の担保や協定書の必要性の両側面から検討していただければというふうに考えているところです。
【窪田委員】 ありがとうございます。
【大塚委員長】 ありがとうございます。漁業の方にもご協力いただいておりましてありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
(はい)
【大塚委員長】 どうもありがとうございます。では、ヒアリングはここで終わりたいと思います。
 ヒアリングにご対応いただいた皆様方、大変ありがとうございました。ヒアリングは以上になりまして、この後は議題2のほうに入りますけれども、もしお時間がございましたら、このままご同席くださって結構でございます。次のご予定がある場合はご退席いただいても構いません。
 それでは議題2に移ります。海底下CCSに係る制度見直しの論点についてでございます。
 資料につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
 なお、資料に分量が多いところがございますので、半分に区切りたいと思っております。まず前半部分の説明をお願いいたします。
【大井課長】 ありがとうございます。環境省海洋環境課長の大井です。
 資料2をご覧いただきまして、まず前半の部分につきまして、なるべく簡潔にご説明をさせていただきます。
 今回、海洋汚染防止法に基づきまして、CO2の海底下廃棄、CCSに関する許可ということで制度があるわけでございますけれども、それぞれそのフローの中で七つの論点を提示させていただいております。順を追ってご説明させていただきます。
 まず資料2ページを見ていただきまして、論点①でございます。許可の考え方・期間についてということでございます。
 ここに図を示しておりますけれども、CCS事業は、先ほどもご説明がございましたけれども、サイトの選定から貯蔵、さらには閉鎖後の管理と、こういう形でのライフサイクルがあるわけでございますけれども、現行の海洋汚染防止法に基づきます許可は、最長5年ごとのサイクルということになっております。これが果たして十分な仕組みとなっているのだろうかという、そういうことでございます。
 おめくりをいただきまして、3ページ、そもそもの前提でございますけれども、ロンドン議定書、96年議定書においては、許可は定期的に再検討されるべきという規定があるところでございます。これに基づきまして、現行の海洋汚染防止法では有効期間を定めるということになっておりまして、告示において最長5年間としているということでございます。
 4ページは、その具体的な告示等が書いてございますけれども、一番下、実際に苫小牧での実証事業で、これも先ほど少しお話がございましたが、2016年度から5年間の許可、さらに次の申請をいただきまして、2021年度から2025年度末、2026年3月までの許可を現在発給しているという状況でございます。その間、圧入は、2016年4月から2019年11月までの間に行われたということでございます。
 では、諸外国ではどうかということで、5ページご覧いただきますと、実際の事業として今進んでおりますノルウェーとかカナダの事案は、大体25年ぐらいの操業期間が見込まれている。また、法制度におきましては、例えばEU、ノルウェーにおきましては、許可の発行から5年後、さらにそれ以降は10年ごとに再審査をするような仕組みになっている。また、オーストラリアの海域の法制度に関しましては、圧入許可は無期限に与えられていますけれども、5年間圧入が行われない場合は失効する、こんな仕組みになっているというふうに承知しております。
 こういったことを踏まえまして、ご議論いただきたい事項、論点①につきましては、6ページにまとめております。今後商業ベースでCCS事業が長期にわたって実施されることが見込まれると。そういう中で、海洋環境の保全と事業の予見可能性の向上を両立させる観点から、許可の審査時に終了段階も含むような、ライフサイクル全体を見るようなことが必要なんじゃないか。また、許可期間はその事業期間全体をカバーできるような設定が必要なんじゃないかと。他方で、議定書の要請、定期的に再検討というような話でありますとか諸外国の例も踏まえまして、実施状況についてはレビューといいますか、チェックするような機会を確保するべきではないかというふうなことが論点としてあろうかと思います。
 続きまして、論点②でございます。貯留するCO2の特性について。少し技術的な話になりますけれども、現行の96年ロンドン議定書におきましては、極めて高い割合でCO2から構成されている場合に限って処分を検討できると、こういう規定になっております。英語で言いますと、overwhelminglyという言い方をしております。
 また、特にロンドン議定書は、廃棄物の海洋投棄、これを基本的には対象としているものでございますので、CO2にはほかの廃棄物のものを混ぜて海底下投棄することはないようにとか、そういう観点から、極めて高い割合でCO2から構成されると、こういう規定になっております。
 これを受けまして、現行の海洋汚染防止法におきましては、8ページでございますが、特定二酸化炭素ガスの基準というのを定めておりますが、その中では、アミン類等とCO2との化学反応を利用したアミン化学反応法という、こういう方法で集められました99%以上のものというような基準になっているということでございますが、これは果たして最新の技術動向なんかも勘案しまして、適切かどうかということで見直しをすべきじゃないかというのが論点でございます。
 おめくりをいただきまして、9ページでございますが、実はこの点につきましては、既に事業者様のほうからも様々なご要望をいただきまして、政府の規制改革実施計画(2021年6月)の閣議決定の中で、現行のアミン法に限定することが妥当か、それから、99%以上とする規制を課すことが合理的か、こういう点については検討するということになってございます。
 これを受けまして、環境省におきましては、経済産業省、それから事業者さんにも入っていただいた有識者検討会を開催してきておりまして、ほかの方法につきましても視野に入れた検討を進めているところでございます。
 具体的には次以降の資料になりますけれども、10ページはこの現行のアミン化学吸収法の解説ですのでちょっと飛ばせていただきまして、おめくりいただいた、物理吸収法という方法、これは中国電力さんなどが入っている大崎クールジェンプロジェクトの中で実際に実証がされている事業。これにつきましては、その実証試験におきまして、回収CO2純度99%以上ということも確認されているという状況だというふうに承知をしております。
 また、12ページ、これは固体吸収法と申しまして、同じアミンという物質なのですけど、アミンという物質を固体吸収材の表面にコーティングして、それを用いて吸収するという方法でございます。これも関西電力さんの舞鶴発電所におきまして、今、検証実証事業が進められているところというふうに承知をしています。
 こういった技術的な進展も踏まえましてご検討いただくと、見直しをしていくということが考えられるかと思います。
 論点③でございます。13ページでございますが、モニタリングについてと。これは先ほどのヒアリングの中でも論点になっていたかと思います。現在、海洋環境に影響がないか確認をするということで、様々なモニタリングを実施してきていただいているところでございますけれども、それをどのように合理化を図っていけるかという論点でございます。
 13ページ、14ページは、関連の規定ですので飛ばせていただきまして、15ページでございます。これも先ほどお話が出ておりましたけれども、現在、海洋汚染防止法に基づきますモニタリングは、通常時監視、懸念時監視、異常時監視という3段階で実施をしていると。それぞれ時期や頻度が決まっておりますけれども、まず通常時監視で、1年に1回程度以上の頻度で、特定二酸化炭素ガスの圧入の数量であるとか状況、それから海域の状況、海水の化学的な性状、海洋生物などへの状況、こういったところをチェックして、異常が検知されるようなことになれば懸念時監視というふうに、だんだんチェックをしていくという、そういう形になっております。
 16ページには、実際にこのモニタリング項目が、初回の許可時から現在の2021年の許可の段階でどのように変わってきているかということでまとめております。
 まず、廃棄した特定二酸化炭素ガスの状況に関するモニタリングについては、現行の許可、2021年4月の段階で既に圧入が終わった状況でございましたので、これについては基本的には実証を現在は求めておりません。
 海域の状況については、例えば弾性波探査、これも影響の懸念などが言われておりますけれども、弾性波探査につきましては、年1回という初回の許可から、更新された許可では5年に2回ということで、期間の軽減といいますか、頻度の軽減を行っております。
 おめくりいただきまして、17ページでございますけど、海水の化学的性状につきましても、基本的に実施いただく項目については変わっておりませんけれども、許可期間中の実施の頻度などについても見直しをしているところでございます。
 また、海洋生物への影響につきましても、実施の頻度の見直しなどを行っておりますし、また、測点の数についても減らしているということがございますが、ウバガイ、ホッキ貝の調査につきましては、やはりこの地域の特性に合わせて、年に1回実施、報告をいただいているという状況でございます。
 18ページには海外の条例も載せております。EUやノルウェーにおけるモニタリング、どういう項目が実施されているかということでございます。
 この苫小牧事業の経験も踏まえつつ、今後のCCS事業が海洋環境の保全と調和する形で実施されるようにするために、モニタリングをどのようにすべきかということにつきまして、ご議論いただければ幸いでございます。
 次の19ページも参考で、平成19年当時の審議会の議論でございますが、飛ばせていただきまして、20ページからが論点④でございます。
 論点④が、これも先ほどお話が出ておりました、事業終了時の措置ということでございます。そもそもの前提としまして、96年ロンドン議定書におきましては、海底の貯蔵も廃棄に含むという考え方になっておりますので、海底下にCO2を貯蔵する限りは許可を取っていただくということに、現状はなっているところでございます。ですが、冒頭にもご説明いたしましたけれども、実際のその事業のライフサイクルを見渡して、事業終了時にどうするのかということが論点になろうかと思います。
 これにつきまして、22ページで諸外国の例を書いておりますけれども、例えば、EUやノルウェーにおきましては、圧入終了に向けた主な要件としては、事業者による閉鎖後計画の見直しとか、最終閉鎖後の計画についての管轄当局からの承認の取得などがあります。圧入終了後、管理段階におきましては、責任が管轄当局に移管されるまでの間は、閉鎖後計画書に沿って監視等の義務を事業者に負っていただくと。最終的に、その責任は、国に責任が移管されると。国への責任移管が一定の条件の下で可能だというような形に、EU、ノルウェーはなっております。オーストラリアにおきましても、基本的には同様の考え方かなと思っております。
 最後、23ページの論点④のご議論いただきたい事項でございますけれども、現行の海防法におきましては、5年ごとに許可を取り直していただくという形になっておりまして、特にその事業全体のライフサイクルを見渡した形にはなっていないと。事業終了のための制度がないということで、事業を終了する制度を創設する必要があるのではないかということでございます。その場合に、海洋環境保全の観点からどのような制度とすべきかと。
 例えばですけれども、閉鎖措置を講じる前に閉鎖措置に関する計画について審査をするでありますとか、閉鎖措置の終了後も海底下のCO2の安定性や海洋環境への影響がないことを確認するための一定期間のモニタリングの実施、その際の項目や頻度についても要検討かと思います。
 また、閉鎖措置が適切に実施されていることを確認した上で、最終的には規制を終了するような仕組み。さらにその事業者に対する規制が終了した後でも、他者の開発による漏えいなどを防ぐような管理は、公的な機関が実施・担保していくと、こういったことが論点としては考えられるかと思ってございます。
 あと三つほど論点を残していますけれども、一旦ここで説明を区切らせていただきまして、ご意見いただければ幸いでございます。ありがとうございます。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。論点①から④についてご説明をいただきました。それでは、ただいまの説明につきまして、海底下CCSの制度全般に関する論点である①④のところと、それから、技術的な論点である②③のところに分けて議論していきたいと思います。
 まず論点①④につきまして、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いいたします。
 工藤委員、お願いします。
【工藤委員】 ありがとうございます。論点①と②ですね。
【大塚委員長】 論点①と④です。
【工藤委員】 ④ですね。はい、分かりました。ありがとうございます。
 論点①の許可の考え方のところで、実はレクのときにも質問したのですけれども、このCO2の特性と絡んで、海底下廃棄の許可審査の要件の許可基準の②というのが、現実的に評価可能なのかということを申し述べました。法律そのものの根幹のところだとは思っているのですけれども、やはりこの表記、文章が気になるので、海底下貯留というもの以外の手段がない場合、ないということが将来的なCCS事業の展開において説明可能なのかどうか、もしくはそれを要件とすべきなのかどうかということについて個人的に非常に気になるところだったので、改めて申し述べさせていただきます。
 それから、やはり論点①のところで書かれていることもそうなのですけれど、言葉の定義の中で、例えば、事業期間という言葉を使われているのですが、その事業期間とは何かがクリアになっていなかったので、そういったところに関する定義の共有化、明確化をぜひ検討していただければと思います。
 論点④なのですけれど、事業終了時とは何かという話にもなるのですけど、その後、仮に、先ほど事業者の方もご説明いただいたとおり、完全に注入口等をコンクリート等で閉鎖してしまうとなりますと、事業者サイドから言えば、その管理コストはどうやって調達するのかという疑問があります。逆に、一定期間はそのタイミングでモニタリング等を求めるとなると、その費用調達をビジネスモデル上でどう考えるのかなといったところが疑問に思いました。事業者にとってのキャッシュフロー、キャッシュインや、キャッシュアウトも含めた、事業終了後のモニタリングの在り方を考える必要があると感じました。
 以上です。
【大塚委員長】 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。三、四名ずつ区切って事務局から回答をいただこうと思いますので、ほかはいかがでしょうか。
 白山先生、どうぞ。
【白山委員】 白山でございます。ありがとうございます。
 論点①と論点④なんですけれども、これ、論点①で全体を見回した許可申請をしようということにもかかわらず、論点④では、もう一回、やめるときにはそのための審査をしましょうということになって、少し中で矛盾があるように思います。
 全体として、やっぱり、何十年か先の閉鎖の方法については、その間の技術革新等々もあると思うので、最初の申請のときは、一応仮のものは出てくるかもしれないけど、後からちゃんとやりますよということであるならば、閉鎖のときにはもう一回申請し直しますが、取りあえず全体としてはこういう形で許可申請をしています、あるいは、許可を与えますという、そういう両者の矛盾がないような、適切なストーリーをしっかりとつくるということをお願いしたいと思います。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 では、奥委員、お願いします。
【奥委員】 はい、ありがとうございます。許可の期間については、一定期間ごとに再審査といいますか、見直しをかけるというところは担保した上で、現行の5年ごとにというところについては、もう少し柔軟に見直してもいいのではないかというには考えております。EUやノルウェーもそうですけれども、まず最初の許可が5年ですけれども、5年後、5年間で問題なければそれ以降10年ごとというふうな対応をしているようですので、この辺りが日本にとっても妥当な線ではないかなというふうに思います。
 豪州ですと、最初から圧入許可が無期限ということで、ちょっとここは、あまりにも今の運用からすると、運用といいますか、日本の現行法の下での取組からすると、かなりかけ離れてしまうということにもなるので、EU、ノルウェー辺りの、最初は5年、その後10年ごとといったところがよろしいのではないかというふうに、私自身は思います。
 それから、閉鎖時についても、これは閉鎖計画をしっかりとその時点で出していただいて、それを審査すると。その許可をするというところをしっかり組み込むということが必要だというふうには、私は考えております。事業終了時についてですね。閉鎖計画を出させた上で、それを審査して許可をするという、そういう手続が法的には必要だというふうに思っておりますし、これは、恐らく海防法の改正でも対応可能な部分ではないかというふうに考えております。
 以上です。
【大塚委員長】 ありがとうございます。
 では、石巻委員、どうぞ。お願いします。
【石巻委員】 はい。大きく分けて2点ほど質問させていただきたいのですが、まず論点①のところで、許可を5年ごとに、現状、取得し直すということになっているということですが、その場合、その都度新たな影響評価をしているのでしょうか。許可の要件として影響評価をするということに、法制度上なっているかと思いますけれども、その許可取り直しのときにも毎回やることになるのかというのが現状どうなっているかをまず教えていただきたいです。
 もう一つは論点④のほうになるのですけれども、資料の23ページの下のところに、参考で上記に記載した事業終了に向けた流れのイメージという図があるかと思いまして、そのうち、長期管理のところと閉鎖後管理というところに赤い点線が引いてあって、規制が閉鎖後管理の時点で終了するということになっているかと思いますが、これは、長期管理と閉鎖後管理といった区切りをつけてやることが変わってくるということになると思いますけれども、下に書いてありますように、長期管理の場合は他者による改変を防ぐなどの管理になるということですが、この長期管理についてなんですけれども、これも今までのご議論の中で何か結論といいますか、あったら申し訳ないのですが、海底下に貯留したCO2を将来取り出すといったような回収可能性を残すことはあり得るのか、現状どのような想定がなされているのでしょうか。これによって長期管理の方法も変わってくるのかなというふうにも思っております。あとは、長期管理が閉鎖後管理までの段階と区別されるということになりますと、事業者から国が一旦このモニタリングですとか、閉鎖後のいろいろな活動を引き受けるといった段階になったときのための財務的保障の内容も気になりました。
 取りあえず以上です。
【大塚委員長】 はい。4名になりましたので、事務局のほうからご回答をお願いします。
【大井課長】 ありがとうございます。多くのご発言はご意見という形だったかと思いますので、特に明示的にご質問というような形で受け止めたものにつきまして、ご回答させていただきます。
 まず冒頭、最初に工藤委員のほうから、許可の基準のところの②と、具体的には資料1ページの海底下廃棄の許可審査のところで、現行許可の基準②で「海底下廃棄以外に適切な処分方法がないこと」が載っています。これは実はまさに議定書、そのガイドラインの中でそういう規定があって、それを受ける格好でこの基準になっているところでございますけれども、実際にはこの海底下廃棄以外に方法がないということはなかなか難しいところでございまして、要はこの事業の必要性等について説明をいただいて、それに対して妥当だというふうに判断すれば許可するという、そういう形になっているところでございます。
 それから、工藤委員から、要望ですね。特に事業の終了に係るいろんな要望につきまして、若干定義が曖昧であるというご指摘もいただきました。あわせて、最後、石巻委員のほうからも、23ページの図のところの赤い点線のところ、閉鎖後管理と長期管理というところにつきましてもご指摘をいただきましたので、ちょっとご説明をいたしますと、実際には事業がどういうふうに行われるかという、ある程度想定の中で書いていることでございますので、かなりケース・バイ・ケースというのはあるかと思いますけれども、一般にCCSの事業を、まずCO2を圧入する、そのための施設の建設等が前にあって、どこかのタイミングで圧入が開始されて、どこかのタイミングで圧入が終了すると。その後、一定期間その状況を見ながら、どこかの段階で事業者において、これはもう閉鎖という判断をされることになるだろうと。閉鎖をされた後、先ほどのEUやノルウェーなどの法制度の中にもありましたけど、一定期間は事業者において管理をいただいた後、ある程度CO2が安定しているということを確認された段階で長期管理のフェーズになっていって、EUやノルウェーにおきましては、ここでその責任が国に移管するという、そういうイメージなのかなというふうに考えているところでございます。
 この間、事業がどこからどこまでかというのがなかなか難しいのですけれども、基本的には、この23ページの図で言いますと、緑色のところからこの閉鎖というところまで、場合によっては、閉鎖後管理というところまで事業者の責任があるところまでがある種事業という、そういうイメージなのかなというふうに思っているところでございます。もちろんこれはケース・バイ・ケースでございますので、また、違った形があるのかもしれませんが、ということでございます。
 それから、石巻先生から最後の点ですが、回収可能性があるのかというご質問がございました。これは日本CCS調査さんのほうからご回答いただいたほうがいいかもしれませんけれども、一般的にはこのCCSですね、CO2をその海底の地層の非常に深いところ、1,000mから3,000mという深いところに、いわゆる貯留層というところに入れると。最終的にはこれはもう本当に安定して、地層の中に溶け込んでいるような状態になるということでございますので、正直、技術的にそれを再び回収するというのは、なかなか難しいのではないかというふうに思っているところでございます。もちろん事業者の計画として回収することも見越してやられるということがひょっとしてあるのかもしれませんけれども、なかなか技術的にはそれはちょっと難しいのではないかなと思っているところでございます。もし何かの認識の違いがあれば、ご指摘をいただければと思います。
 取りあえず、ご質問のようなお話についてはお答えしたかなと。もし何か不足、もれがございましたら、ご指摘をいただければと思います。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 では、CCS調査株式会社様、何か今の件について補足がもしございましたら、お願いします。
【JCCS(中島)】 はい、ありがとうございます。一旦地中に貯留したCO2を再び取り出すことができるかどうかというご質問でございます。これは技術的に可能かどうかというお話と、経済合理性をもって可能かどうかという二つの論点といいますか、視点があろうかと思います。
 技術的に可能かどうかということについては、可能だと思います。ただし、条件が幾つかあって、それが経済合理性をもって可能かどうかというところにつながると思っていますが、一旦地中に入れる際のCO2は、非常に純度の高いCO2を地下に入れるのですけれども、今度、地下から取り出すときには、これは地下のいろんな流体を一緒に地上にくみ上げてくることになります。地層水と、あるいは、地層水に含まれる様々な不純物といいますか、地層水に含まれる物質も一緒に、主に水になりますけれども、上がってまいりますので、地上では再度そこからCO2を分離する必要性、恐らくそのCO2を何らかの用途で使いたいから再生産するのだと思いますので、そういった分離回収が再び必要になるというところが、一つハードルになるかと思います。
 それから、時間軸の観点で見ますと、まさにこの23ページの中で、井戸を閉鎖してしまった後でありますと、これは地下にCO2はありますけれども、取り出すための坑井を改めて掘削し直す必要がございますので、そこも一つ追加的なコストがかかってくるということになろうかと思います。
 以上でお答えになっておりましたら。以上でございます。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。非常に難しいということは分かりました。ありがとうございます。
 ご質問、ご意見をいただいた方のうち、回答が足りないということがもしありましたら。
 佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 佐々木です。
 利用するという目的でCO2を地上に戻すということは、経済的にはあり得ない話のように思います。ただし、例えば、漏えいによって海洋環境にあまりにも影響が大きい障害が生じている場合には、もう一度、圧入した地点から地層水とともにCO2を地上に回収し、取りあえず地上に一旦貯留するという環境修復は考えておくべきかと思います。
 もう一点、1ページ目の主な論点を記載している図についてですが、「圧入開始前」、「圧入段階」、「終了以降」という三つの時間軸で分類されておられますが、圧入終了後にも「改善命令」は残しておくべきかと思っております。
 また、「圧入終了後」の時期に「合併・分割・相続」という内容が示してありますが、むしろ「圧入段階」でのほうがより可能性が高いのではないかと考えます。なぜかと言いますと、圧入終了後に事業の相続や合併をすることでは、商業化CCSの事業者が一旦終了した事業を再度コストだけが残っている事業として吸収することになり、多分メリットはほとんどないわけです。圧入段階では、例えばCO2を処理するための一定の収入あるいは何らかの受託料みたいなものでビジネスが行われると考えられますので、施設の譲渡というのであれば、圧入段階での「合併・分割・相続」によるビジネス継続はあり得るものと考えます。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 では、岡松委員、お願いします。
【岡松委員】 ありがとうございます。先ほど奥委員がおっしゃったように、私も許可の点については、5年後、その後10年後の見直し等が非常に妥当なところであるとは思うんですが、なぜ妥当かということに関して、大きなこれといった根拠がある、この5年とか10年ということにこれといった根拠があるかというと、実はないわけで、6年でも8年でもいいわけなんですが、その点に関しては、私が判断できるものではなく、やはりこの施設の耐久性ですとか、それから、事業者の経営の健全性ですとか、様々な観点が必要になってくるかと思います。やはり科学的な知見が必要かと思いますので、それからまた、これは科学技術の発展がないことが前提になっている年数ですけれども、この先いろいろと変わってくることもあると思いますので、この年数については、その都度見直しも必要だと思いますし、あとやはり、科学的な知見から、その施設の耐久性などの判断という意味での、そちらのヒアリングも非常に重要なのではないかと思います。
 それから、最後の国への責任の移管ですけれども、これはまさに漁協の方々が大変に心配していらっしゃるところで、途中で事業者が解散した場合、あるいは破産したり倒産した場合ということがあると思います。
 多くの国が15年間で移管するというふうになっているのですが、これは15年より早く事業者が何らかの問題で責任を負えなくなるとか、先ほどありましたけど、コストの面で十分にできないということも考えられないわけではありませんので、そういったときに、国が全面的に領域使用責任を取るのかどうかというようなことについても検討すべきではないかなと思っております。
【大塚委員長】 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 では、環境省さんのほうからお答えをお願いします。
【大井課長】 ありがとうございます。大半がご意見ということだったかなというふうに思います。
 佐々木委員から、合併・分割・相続のところが、圧入終了後以降になっているところ、これはすみません、単に資料の書き方の問題で、このスペースに書いただけでございまして、実際には合併・分割・相続は、事業のどこの段階でも想定され得るということかと思いますし、おっしゃるとおり実際にはもう少し前の段階でこれが起こり得る可能性はかなりあるかなと思います。資料のつくり方が不十分で申し訳ございませんでした。
【大塚委員長】 はい。よろしいでしょうか。
(はい)
【大塚委員長】 そうしましたら、次の論点のほうに移りたいと思いますけれども、では論点②③につきましては、ご意見、ご質問等がございましたらお願いします。
 工藤委員、お願いします。
【工藤委員】 ありがとうございます。論点②のガスの基準、いわゆる分離回収のどういったガスが適格であるかについては、足元で検討されている技術の開発と進捗に基づいて、柔軟に対象を選定していく形式に、基本的に賛成です。
 それから論点③のところで、私自身がこの海洋汚染防止法の議論に参加するのは初めてだったので、少し言葉が気になっているのですけれど、CO2の海底下貯留に関する表現が廃棄という言葉を使っている。これは廃棄なのでしょうかというところがとても気になっています。過去に頂いていた参考資料を見ていると、処分など様々な表現が使われている中で、廃棄という表現が適切なのかどうか。例えば、ロンドン条約に照らし合わせた形の中で、その条約そのものがやはりCO2に関しては、貯留ではなく廃棄というように使っているのか、その辺を教えていただければなと思いました。
 特に、なぜここにこだわるかというと、やはり技術の評価を考えると、そういったような表現は非常に大事だと思うのと、論点④にも出てきた、事業終了後に適切なモニタリングをやるとなっていったときに、廃棄されたもののモニタリングというものと貯留されているもののモニタリングとではニュアンスが変わってくるという気がしたものですから、この辺について教えていただければと思います。
 以上です。
【大塚委員長】 ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 はい、どうぞ。では、岡松委員、お願いします。
【岡松委員】 1点だけです。資料の7ページにありましたけれども、overwhelminglyというふうに書かれていて、これは特定のパーセンテージが議定書で示されているわけではなく、これ自体がどれぐらいなのかというのは議論になっているところです。
 ただ、これは、この後に出てくるかと思いますが、輸出のための輸送のことなども考えますと、日本の国内だけの安全性とかだけで決められるわけではなく、ある程度日本が想定している国と同じ基準を維持していく必要があるかと思いますので、これは国内だけの感覚で決められず、諸外国との整合性を考えて決めていく必要があるかなと考えております。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
【海江田委員】 海江田です。よろしいでしょうか。
【大塚委員長】 はい。海江田委員、お願いします。
【海江田委員】 はい。今おっしゃったこととちょっとかぶっちゃうんですが、私は、これは8ページでしたっけ、8ページですね。品質のところになるのですが、回収方法がアミン法に限られていて、濃度が99%となっているのは、これはやはり見直す必要があるだろうと思います。回収法についてはいろんな技術が出てきているので、これらの技術も使えるようにしたほうがいいということと、濃度につきましては、先ほどおっしゃったように、輸出のことも考えると、何%がいいかという辺りは、海外の状況も見ながら決めていく必要があるのではないかと思いました。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 じゃあ、奥委員、お願いします。
【奥委員】 はい、ありがとうございます。ちょっと先ほどの論点④のところで申し上げればよかったのかもしれませんけれども、23のスライドで、事業終了に向けた流れのイメージがありまして、これは閉鎖後も一定期間、事業者がモニタリングをして、CO2の安定等が確認されたら政府に責任を移管するといいますか、管理を移管ということで、この流れ自体はよろしいかと思うのですが、長期管理に入った段階で、つまり政府のほうで管理していくという段階に入った場合に、モニタリングというのは、もうそれ以降はする必要がないというふうな整理なのかどうか、そこをちょっと確認させていただきたいというのが1点でございます。
 それと、それから長期管理の段階で、政府に責任が移管された後の段階において、このスライドでは他者による改変を防ぐ等の管理ということで、例えばもうそこにCO2が埋まっているので、それが出てきてしまうような海底の改変がされないように、例えば土対法のように台帳で管理するとか、そんなことが想定されるのかもしれませんけれども、それ以外に、例えばEU等の諸外国の事例で、政府への責任移管後、いかなる責任をその政府が果たすということになっているのか、その辺りの情報がございましたら、いただければと思います。
 以上です。
【大塚委員長】 では、ただいまのご質問、ご意見につきまして、ご回答をお願いします。
【大井課長】 はい、ありがとうございます。ご質問としていただいたものとして、まず工藤委員のほうから、廃棄という言い方につきましてのご質問をいただきました。例えば、資料の20ページをご覧いただくと、そもそもロンドン条約議定書、これはロンドン条約の正式名称が「廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」という条約になっております。基本的な考え方が、船舶等から廃棄物を海洋中に投棄することを規制・防止するという、そういうものの中で、海底下のCO2貯留といいますか、廃棄についても規制の対象にしていることでございますので、実際の表現としては廃棄という表現をしております。これを受ける格好で、海洋汚染等防止法におきましても、海底下廃棄という言い方をしています。
 ただ、この海底下廃棄には貯蔵を含むということで、これも議定書、それから法律でもそういう言い方になっておりますので、ちょっと非常に奇妙かもしれませんけれども、廃棄という言い方を法令上はしながら貯蔵も含むと、そういうのが一応事実関係のご説明になるかと思います。
 それから、ご質問ということで、先ほど奥委員のほうから、最終的な公的機関、政府等に責任が移管した後のモニタリングのご質問がございましたけれども、これにつきましては、諸外国の例をご紹介させていただきますと、例えば22ページ、諸外国において事業終了時の措置はどうなっているかということで、EU、ノルウェーの制度によりますと、まずその国への責任移管が可能だというところの中で、30年分のモニタリング費用の拠出等の財務的要件を満たしているということでございますので、一定程度の費用があった上で、その移管された後、国等でも、一定程度のモニタリングがされるのではないかというふうに想像をしているところでございます。
 実際にはこれがまだ適用になっている事案というのは多分ないと思いますので、はっきりしたことは申し上げにくいのですが、少なくとも制度設計としては、国に責任が移管した後の国等の公的機関の責任において、一定程度のモニタリングというか、監視は継続されるであろうというようなことが想定されているんだというふうに考えてございます。
 もちろんその頻度につきましては、当然ながら考えていく必要があるかなと思っております。
 以上です。
【大塚委員長】 よろしいですか。最後のところは、これは30年分のモニタリング費用の拠出等は、これは事業者さんがなさることですよね。
【大井課長】 そういうことだと。
【大塚委員長】 それがあるときに国の責任に移管するということが考えられるので、国がモニタリングをするということかとは思いますが、事業者にその費用、事業者から回収するという趣旨ですね。はい。ということなので、EUはそういうふうになっているということでございます。
 奥委員、よろしいですか。
【奥委員】 はい、分かりました。じゃあ、国に対しての責任移管後の国の役割としては、モニタリングも想定されるし、それから、そこがまた掘り起こされたりしないようにちゃんと管理をしていくという、その大きく二つだということでよろしいですか、想定されるのは。
【大井課長】 はい。そういうご理解でよろしいかと思います。
【奥委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【大塚委員長】 はい。クラリファイしていただいてありがたかったと思います。この23ページの、この他者による改変を防ぐ等の「等」のところのご説明いただいたということだと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。
 では、佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 先ほど、論点①やその他の論点について意見を申し上げていませんでした。改めて私の意見を述べさせていただくと、事業のライフサイクル全体を通しての許可を出してもいいのではないかと、私自身は思っております。それは、最初の許可申請の時点で、十分な監視、モニタリングの体制ができていて、それに従い年度ごとに報告書が上がってくるような形であれば、その報告書に応じて許可申請を取り消したり、あるいは改善命令を出すことができるわけですので、全体の圧入量などに変更がない限りは、全体を通して5年ごとに許可を出すよりは、モニタリング体制を確実にすることによって全体の進み方を監視するやり方もあるのではないかと考えます。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
(はい)
【大塚委員長】 では次、すみません、今佐々木委員の、これはご意見ですので、コメントは特にないですか。はい、分かりました。じゃあ、佐々木委員もどうもありがとうございました。
 では、資料の後半部分が残っておりますので、ここで一旦区切って、後半部分の説明に移ります。最後にまた時間を設けますので、前半部分を含めて、後から質疑応答いただければと思います。
 では事務局から、残りの資料の説明をお願いいたします。
【大井課長】 はい。では資料2の24ページから、論点⑤⑥⑦と残る三つの論点をご説明させていただきます。
 論点⑤は、この1枚だけでございますけれども、事業譲渡についてということでございます。商業ベースでこれからCCS事業を行っていくということになりますと、経営上の判断、その他によりまして、ほかの者への事業譲渡というのが行われるというようなことも想定がされるところでございます。
 現行の海洋汚染等防止法におきましては、合併とか分割の場合は想定していたのですが、事業譲渡というのをそもそも想定しなかったということでございますので、そこにつきまして、手だてが必要ではないかということでございます。
 それから、次の25ページが論点⑥でございますけれども、対応者が不在となるような事案、大きく二つ想定されるかと思います。一つは、不適正な事案が生じた場合、これは現行の海洋汚染防止法におきましては、許可を取り消すことができるというふうになっているのですけれども、実態としては、許可を取り消すと、その対応を行う者が不在となるということで、結局不適正な事案があっても、その許可を取り消さずに改善命令を発令し続けることによって事実上対応していただくと、こういうようなことになっていて、実態と法律の乖離があるといいますか、問題になっているというところです。
 また、これからこのCCSが事業として実施されていくことになりますと、実施主体が破産等によりまして事業継続できなくなるような場合もあるということで、これは漁協さんからの要望の中にもございましたけれども、こういったような場合につきましても対応していく必要があるのではないかと、こういう観点でございます。
 26ページをご覧いただきまして、ちなみに、この特に最後に申し上げた破産等によるという観点でございますけれども、これにつきましては、平成19年に中央環境審議会でご審議をいただいたときにも、破産等により監視等を継続できなくなる場合の対応については検討していく必要があると、将来的な課題だということでご指摘をいただいたところでございます。
 そういったわけで、こういう事案が生じた場合にも事業を適切に指導といいますか、見ていくという、そういう仕組みが必要ではないかというのが論点⑥でございます。
 最後、論点⑦が、打って変わって、輸出についてということでございます。これは前回、第1回にも少しご議論があったかと思いますけれども、今後、CO2を国内CCSだけではなくて、海外に持っていって埋めると、こういうことも見込まれるという状況でございます。
 この点につきましては、国際的には議論が進んでおりまして、2009年の締約国会議におきまして、議定書の改正ということで、関係国間における協定、取決めがあることを条件に、海底下へのCCS目的での輸出、CO2の輸出、これが可能となるというような改正がされています。ただ、この改正につきましては、現時点でまだ未発行であると。3分の2の受諾が必要なのですけれども、まだ10か国が受託をしたのみという状況でございます。
 ですが、さらに10年たちまして、2019年の締約国会議におきまして、暫定的な適用を可能とするという決議がなされております。二国間で、自分たちはもうこれをやりますというふうに宣言をすれば、CO2の輸出が実質的に可能となるということで、国際的には、要はやろうと思えばできるという状況に、今なっているという状況でございます。
 28ページは、議定書の改正の条文を書いていますけど、飛ばせていただきまして、29ページでございます。
 このCO2輸出に関するガイダンスというのが、この議定書の下で決まっておりまして、その中では、輸出側、輸入側のその取決めの中で、特に輸出する側がそのCO2の品質については確認をして、受入国に情報を共有して、受入国においてもそれを確認し、貯蔵等を行うと、こういう大きな役割分担が、そのガイダンスの中では、望ましいという言い方でありますけれども、示されているところでございます。
 30ページでございますが、諸外国の状況であります。
 今、政府間ではデンマークとベルギーなど、このロンドン議定書に基づく二国間の合意を締結という動きが出てきております。また、民間におきましては、もう少しさらに活発に、特にヨーロッパ、ノルウェー、それからEUの各国、イギリス、こういった国々の中で、民間企業において、海底下CCSを国境を越えてやるというような形の動きが出てきているところでございます。
 国内におきましても、JERA等の3社が、オーストラリアの北部の沖合ガス田に貯留するCCSプロジェクトに参画するでありますとか、つい先月になりますけれども、経済産業省さんのほうで、JOGMEC、それから、マレーシアの国営石油会社との間で、CCS事業を実現するための協力覚書というのを締結されたというところでございます。6月末に公表されました先進的CCS事業7案件のうち、二つの案件は海外に持っていくことを想定されているというようなこともございます。こういったことで、これからCO2を輸出して海外でCCSと、こういう事案も実際にもう想定される時代になっておりまして、最後のページ、31ページでございますけれども、輸出につきましても、議定書の第6条第2項、この改正議定書、これの受託が日本としても可能となるような国内制度を整備していく必要があるのではないかという問題意識でございます。
 以上でございます。この三つの論点につきましてもご議論いただければ幸いでございます。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。それではただいまのご説明につきまして、ご意見、ご質問等がございましたら、お願いいたします。
 はい、奥委員、お願いします。
【奥委員】 はい、ありがとうございます。論点⑥に関してなのですけれども、ご議論いただきたい事項ということで、許可を取り消された者等に対しても事業を適切に終了させるための仕組みが必要ではないかというのは、もうそのとおりだというふうに考えます。
 現行では、許可取消しが可能な規定というのはあるわけですけれども、それを、じゃあ取り消した後どうするかという規定がないということで、やはり新たに許可の取消しに伴う措置ということで、別途規定は設ける必要があるかというふうに思います。
 例えば、廃掃法においても、許可の取消しに伴う措置として、取消後においても、施設の廃止の確認を受けるまでの間は、施設の設置者と、引き続き施設の設置者とみなすということを規定しておりますし、引き続き施設の維持管理等を義務づけるということをしているので、それが、それと同様のみなし規定を置くということが想定されるのではないかというふうに思います。
 原子炉等規制法においても、同じように許可の取消しに伴う措置ということで、廃止措置の確認を受けるまでの間は、なお、その設置者とみなすというような規定がございますので、こうした規定が参考になるかと思います。
 ただ、その場合、設置者とみなされた者が、例えばもう既に存在していないとか、それから破産してしまっているとか、そういった場合においての費用をどうするのかということもございますので、その場合は産廃の不法投棄に対応するための基金のような、あらかじめ積立てをして義務づけておくような、そういった制度というものも併せて考えておく必要があるかなというふうに思います。
 以上です。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。
 はい、どうぞ、ご発言をお願いします。
【岡松委員】 極めて単純な質問なのですが、将来的に、日本の自然環境的に、地質学的に、あるいは、技術的に、日本が輸入するという可能性というのはあるのでしょうか。
【大塚委員長】 ちょっと後でお答えいただこうと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。
 はい、では、窪田委員、お願いします。
【窪田委員】 はい。論点⑤⑥にも関わるかもしれませんが、今回のこの検討の仕組みや範囲には、パイプラインや港のいろいろな周辺設備、タンクといったものは、この事業の譲渡や不適切な事案など、国への移管に含まれているのか、あるいは別の法律の中で対応がカバーできているのかについて、ご質問いたします。
【大塚委員長】 今のご質問は、CCS事業自体ではなく、パイプラインがとかタンクがとか、そういう話を聞きたいということですか。
【窪田委員】 その事業全体としてこの範囲でカバーできているのかどうか。
【大塚委員長】 分かりました。
 では、海江田委員、お願いします。
【海江田委員】 海江田です。
 私からは、27ページの2019年の締約国会議で、この7か国に日本は入っていないのですが、これは今後入る見込みがあるのかということと、今、日本は30ページの資料を見ると、マレーシアといろいろ連携する可能性があるという雰囲気なのですが、この場合、どちらか一方の国がこの宣言の寄託をすればいいのか、2か国とも必要なのかと、その辺はいかがでしょうか。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
(はい)
【大塚委員長】 ではご回答、事務局、お願いします。
【大井課長】 はい、ありがとうございます。ご質問という形でいただいたものについて、お答えいたします。
 岡松委員のほうからの、輸入の可能性ということで、ご指摘いただきました。
 技術的にと言いますか、事実だけで申し上げますと、日本国内にも相当程度のその適地といいますか、貯留があるということでございますので、全く可能性がないかと言われると、それはあるのかもしれないのですけれども、実態としては、やはり日本は、どちらかといえばCO2をかなり出している国のほうだと思いますし、日本国内で埋めるニーズを差し置いて輸入してきたものを埋めるような余裕が本当にあるのだろうかというのは、率直に申し上げて、なかなか可能性は低いのではないかなというふうに思っているところでございます。ちょっとそこは若干個人的な予測を含めましての見通しになりますけれども、そんなふうに思っております。
 それから、窪田委員のほうから、タンクとかその周辺の施設についてもという話がございました。基本的には海洋汚染防止法で見ているのは、海底下に圧入する部分の関連施設ということでございまして、そこに持ってくるためのパイプラインであったりとか、タンクだったりとか、そういうものにつきましては、他法令といいますか、例えば高圧ガス保安法であったりとか、いろんな法律のかかる分野かなというふうに思いますけれども、そこはケース・バイ・ケースの判断があるのかもしれません。どういう形で埋められるかによって、そのように、取りあえず認識をしているところでございます。
 それから、先ほど、海江田委員でしたでしょうか。輸出の関係でのご質問がございました。
 解説をいたしますと、まず議定書の改正、2009年改正がございまして、これを現在受託している国が10か国、さらに2019年に、この改正議定書が未発効なんだけれども、その未発効の状態でもやりたいという宣言をした国が7か国ということでございます。
 日本は、これは日本政府としても、これからの方針ということになるかもしれませんけど、まずはここの、最後の31ページにも書いてあるとおり、議定書の改正を、日本としてこれから受託をしていくということを考えていきたいというふうに思っているところでございます。ですので、7か国というよりは、10か国に日本も入っていくということを念頭に、そのために国内の様々な制度、議定書を担保するための制度が必要なのではないかという問題意識でございます。
 これが整うまでの間に、もう暫定的にも進めたいからこの7か国に手を挙げるという可能性はあるのかもしれませんけれども、まずは最終ゴールであるその10か国に日本も入っていくというところを目指しているというふうにご理解いただければと思います。
【大塚委員長】 もう一つ質問で、相手国も入っていないといけないかということも……。
【大井課長】 失礼しました。その点は、資料の28ページをご覧いただくほうがいいかと思います。説明を先ほど飛ばしてしまったのですけれども、改正議定書でどのように書いてあるかということでございます。関係国間における協定または取組があることを条件にできるというふうになっておりまして、その場合には、2の1でロンドン議定書の締約国との話で、2の2に非締約国への輸出の場合はとありますので、これは必ずしも締約国同士でなければできないということではございません。ただ、2の2にありますとおり、非締約国に輸出する場合には、そういう取決めがちゃんとなされているというか、ロンドン議定書で、非締約国であってもしっかりと海洋環境の保全の観点からの対応が取られるということを確認したような、そういう取決めがなされていることが前提になるというふうにご理解いただければと思います。
【大塚委員長】 よろしいでしょうか。
 マレーシアは非締約国ということですよね。
【大井課長】 マレーシアは非締約国でございます。
【大塚委員長】 はい。
 よろしいでしょうか。
 では、佐々木委員、お願いします。
【佐々木委員】 対応者が不在となる事案については、山形と新潟での廃止された石油坑井の封鎖事業を過去5つぐらいの委員会で経験していますが、CO2の場合では、最初の海底下貯留の許可申請時における財務的な条件の中に、事業中あるいは圧入終了後の保険制度のようなものに加入していることという条件を付けることはできますでしょうか。質問となりますが、よろしくお願いします。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
(はい)
【大塚委員長】 では、事務局、今の点、お願いいたします。
【大井課長】 ありがとうございます。財務状況の確認の中でそういう保険等に対応しているかどうかというチェックはできると思います。また、今委員のご指摘はまさにそれを条件とすることを言われたかと思いますけれども、そこはできるかできないかと言われたら可能ではないかと思いますけど、実際にそういう要件をつけるかどうかというのは、また判断があるのかなというふうに思っているところでございます。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございます。
 では、そろそろ時間になってきておりますが、ほかにご意見もないようでございますので、議論は一通り済みましたので、次に移りたいと思います。
 議題の3、その他につきまして、事務局から何かございますでしょうか。
【事務局】特にありません。
【大塚委員長】 はい、ありがとうございました。
 では、以上で議題は終了となります。
 事務局におかれましては、本日の関係団体へのヒアリング及び議論内容を踏まえまして、次回の準備をしていただければと思います。
 委員の皆様、全体を通して、ご質問などございますでしょうか。よろしいですか。
(なし)
【大塚委員長】 ないようですので、以上をもちまして、第2回の海底下CCS制度専門委員会を閉会といたします。
 事務局にお返ししますので、連絡事項などがあればよろしくお願いいたします。
【事務局】 はい、ありがとうございます。
 本日の議事録は、事務局で作成の上、委員の皆様、ヒアリングにご対応いただいた皆様にご確認いただきました後に、ホームページに掲載をさせていただきます。
 次回の開催につきましては、委員の皆様に改めてご連絡いたします。
 それでは、以上で終了いたします。どうもありがとうございました。
【大塚委員長】 ありがとうございました。