環境配慮契約法基本方針検討会 建築ワーキンググループ(第1回) 議事要旨

出席委員:
伊香賀委員、河野委員、小黒委員、善養寺委員、中村委員、野城委員(座長)、山田委員、横田委員(五十音順)

日時

平成19年9月13日(木) 10時00分~12時10分

場所

環境省第1会議室


笠井経済課長から資料確認、設置趣旨の説明(資料1)、委員等紹介(資料2)の後、野城座長の司会により、環境配慮契約法についての説明の後、概ね以下のとおり議事が進行した。

1.今後の検討の進め方について

  • 座長としてお願いしたいこと。(野城座長)

    [1]スケジュールが厳しいため、建築の中でも設計サービスについての議論に絞りたい。

    [2]法の趣旨は、設計サービスにおいては環境配慮に関する実効性を担保するためには、ある程度の対価を支払う必要があるという考え方。この場の議論では所属団体の立場を超えて、何故設計サービスにそれだけの対価を支払うべきかについて国民の理解が得られるような基本方針にしていきたい。

    [3]設計サービスの調達が設計者選定に絞られているが、いかに共同でよい設計をするかが重要であり、設計案を作るだけではなく、技術的にまとめあげることも設計サービスの範囲に含まれると考えていただきたい。

    [4]国土交通省が管理している建築物は既に先進的なプロポーザルが行われているが、適用範囲を全省庁及び地方公共団体に拡げていきたいと考えているため、そのための方向性についても可能であれば議論したい。

□事務局よりスケジュールの説明(資料3)

2.建築分野における環境配慮契約法基本方針の方向性について

  • 全省庁は閣議決定に関して義務がある。地方公共団体は努力義務だが、高い実施率が期待できるため、基本方針のよしあしが成果に直結する。(環境省)

□事務局より、環境配慮契約法基本方針の検討方針・課題等(資料4)について及び建築物の契約に関する基本的事項の考え方(資料5)について説明

□国土交通省より、官庁施設の環境保全性に関する基準(参考5)について及び国土交通省におけるプロポーザル方式について(参考7、リーフレット)について説明

  • 設計サービスに限定する理由は何か。また、実際には入札案件が多いが、設計者を決めてもそのあとで入札になるなら、環境配慮の実現性が乏しいのではないか。(横田委員)

    →法律では設計以外の要素も含まれると考えられるが、全ての要素に対して議論する時間はなく、また、最初の設計段階はその後の段階にも大きく影響するため、このWGでは設計サービスについての議論をしたい。(野城座長)

    →プロポーザル方式の場合、決定者と随意契約の形になる。基本方針は継続的に見直していくので、設計サービス以外の件については随時追加していきたい。(環境省)

    →通常、設計者が施工のあり方を決めており、著作権の問題もあり施工業者が安易に変更することはできない仕組みになっている。(善養寺委員)

    →プロポーザル方式については、閣議決定された政府の行動計画の中で契約方式として明確になっている。優れた提案者と随意契約することは明確になっている。提案を求めるテーマの1つに環境配慮を含めるという形式が多い。(国土交通省)

    →入札案件が多い中で、国が既に実施しているプロポーザル方式のその仕組みを新しい制度に利用していくということ。(野城座長)

  • 「設計」はどの段階からのものか。構想段階でコンサルに発注する場合もある。構想段階から環境に配慮することを求め、その環境配慮が基本設計に引き継がれるような仕組みが必要ではないか。また、プロポーザル方式だけで本当によいのか。(中村委員)

    →環境配慮型プロポーザルを誰がどの段階でどういう基準で発注するのかをしっかり決めることが重要。(小黒委員)

    →最近のプロポーザル方式は、技術提案に加えて設計者の力量選定のケースが多い。環境配慮を求めるなら基本設計段階になるだろう。基本設計における環境性能が実施設計や第三者管理の各段階で繋がっていくかどうか議論が必要。(山田委員)

  • 環境配慮プロポーザルの実効性を担保するためには、可能な限り留意点を多く基本方針に書き込む必要がある。審査条件、適用条件などに関する留意点あるいはその対応策をこのWGで多くあげていただき、それをまとめる形にしていきたい。(野城座長)

  • プロポーザル方式で選定された基本設計業者がプロジェクトリーダーとして実施設計に、又は、著作権者として第三者管理に関わることができるように、適用範囲をしっかり議論したい。(善養寺委員)

  • 発注者側の問題が大きいと思う。「設計上の工夫により特に温室効果ガス等の発生抑制に効果が大きいと判断される業務」とあるが、この基準は誰が決めるのか。また、基本的にはプロポーザル方式であることを明確に示すべき。(河野委員)

    →国の発注業務ではほとんどがプロポーザル方式であり、基本的な考え方に記述したのはプロポーザル方式の中で特に環境配慮を強調する意図である。(環境省)

    →閣議決定された政府の行動計画の中でプロポーザル方式の適用範囲が決められている。大まかにいえば、技術提案を受け入れる要素がある業務なのかどうか、ということ。必ずしも価格だけではない。(国土交通省)

  • 国土交通省には、基本設計、実施設計、第三者管理のそれぞれの段階において環境保全性能をチェックするツールがある。地方公共団体でも活用していただければ望ましい方向にいくのではないか。(伊香賀委員)

    →チェックのシステムはあるが的確に運用されていない。また、情報開示が十分ではない。ベンチマークの実績があるのだから、発注者側からフィードバックする仕組みを考えるべき。(小黒委員)

    →国土交通省の環境報告書は公開されており、CO2削減量などが示されている。その内容が拡がっていけば改善されるのではないか。(伊香賀委員)

    →プロポーザル方式で人を選んだのになぜ各段階で人を変えるのか。1つの建築物に対して最後まで責任を持たせるような制度を作るべきではないか。(善養寺委員)

    →同じ設計者であっても設計は当初の段階から変更される可能性があり、各段階におけるチェックツールを利用すればよい。(伊香賀委員)

  • 今までのプロポーザルにおいても環境配慮が含まれている。基本方針でいう「環境配慮型プロポーザル」とどこが違うのか。また、「検討のための十分な時間」とはどれくらいか。(山田委員)

    →この法律は環境配慮を量的に増やそうというもの。すべてのプロポーザルに環境配慮を求めないのか(中村委員)

    →総論としては全てが対象。また、現在のプロポーザルにも事実上含まれているが、制度として確立すべきということだと思う。(野城座長)

  • 環境性能以外にも性能やコストの問題がある。環境配慮型プロポーザルは他のプロポーザルとは違うのか。(河野委員)

  • よい事例があればそれを拡げていくべき。次回WGに評価方法を含めて、具体的な事例を提示して欲しい(善養寺委員)

  • 環境配慮契約法によって何が変わるのか。1つは深さで、法的なステータスが告示と閣議決定では重さが異なる。もう1つは範囲で、本来はすべからく環境配慮型プロポーザルとするのが法の精神だが、手間などの問題もあり、いろいろなことを合わせて定めていく必要がある。閣議決定は重いが粗いので解説書で具体的に記述していきたい。(環境省)

  • もう1つの観点として、設計者が最初から最後まで1つの建物について責任を持つという本来の流れを取り戻す契機になってほしい。(中村委員)

  • 基準の中にデザインマネジメント能力について規定することも1つの案ではないかと思う。(野城座長)

  • 設計のプロポーザルの話になっているが、運用のノウハウによる問題もあり、最終段階で環境性能が実際にどのくらい担保されているかをチェックしてフィードバックする仕組みについて解説資料に含めてほしい。(小黒委員)

  • 設計段階で目指した環境性能をどのように担保していくかについて提案をいただきたい。伊香賀先生には設計段階以降も関わられた実例をご紹介いただきたい。また、コミッショニングを含めていく方法などについても議論としては取り上げておきたい。(野城座長)

  • WGは3回しかないので議題を絞りたい。4つか5つに絞れないか。(善養寺委員)

    →次回は設計者をどのように選定していくかについて、3回目は設計者選定の方法のイメージがある状態で、その他の議題を議論したい。(野城座長)

  • 建築物におけるCO2削減に関して社会的コストの分析資料があればだしていただきたい。(横田委員)

    →環境保全のコストが市場で正しく評価されていない中で費用便益分析をするのは困難である。コストも含めて総合的に考えるとの視点で、もし可能であれば、次回に用意したい。(環境省)

  • プロポーザル方式は事業者の負担が少ない反面、選定が難しい。安易に進めると混乱が起きる。是非議論してほしい。(河野委員)

    →拝点主義の応募が増える可能性もある。次回議論したい。(野城座長)

    →要素技術に偏る傾向はある。環境デザインマネージャーを配置することを要綱に含めないと環境配慮は進まないのではないか。(山田委員)

    →プロポーザル方式は表現力にも影響されてしまうため、QBS方式のほうが適しているかもしれない。(中村委員)

    →PFI方式はどうか。また、環境計画技術者といった存在がそろそろ必要なのではないか。(善養寺委員)

    →QBS方式は会計法上成立しないという認識だが環境省で検討してもらえばよい。プロポーザル方式では提案技術書の著作権で随意契約している。(国土交通省)

    →PFIなど様々な方式がこの基本方針に適用されるかどうか、事務局の中で検討して次回に提示してほしい。(野城座長)

    →環境配慮契約法は自らの調達方針を定めるものであるため、建築基準法の規定に付け加えることは可能だと考える。環境デザインマネージャー、環境計画技術者についても必要があれば議論したい。(野城座長)

  • 文教施設、医療施設など官庁施設以外において特別な環境配慮が必要な場合も含めて検討する必要がないのか。(伊香賀委員)

    →独立行政法人は法の対象範囲なので求められる環境性能が異なる可能性はあるが、あるとすると最初に求める環境性能について精査が必要になる。(環境省)

    →この法律は環境省、国土交通省だけではなく、全省庁が対象なので問題ないのではないか。(野城座長)

  • 地方の物件のほうが数・金額ともに膨大。簡易型など地方を支援する仕組みも検討してほしい。(小黒委員)

    →国土交通省も地方公共団体に支援するよう努めているが、なかなか要請がない。本法による手続きと合わせて普及していきたい。(国土交通省)

    →地方にも意欲を持った民間技術者はいる。情報交流などによる官民協働体制が必要。(小黒委員)

    →プロポーザル方式の手続きの中に国土交通省の支援を組み込める制度にできないか。(善養寺委員)

    →国土交通省のヘルプデスクや民間のコンサルなどの支援を受けやすくする仕組みを視野に入れる必要がある。(野城座長)

    →法の第11条で地方公共団体等は環境配慮契約方針を作成するように努めるものとされており、また法の第10条で国は環境配慮契約に関する状況についての情報提供をするものとされているが、現段階で基本方針に組み込むのは難しい。(環境省)

    →閣議決定への記述は難しいかもしれないが、留意事項として地方への支援を含めていただけたらと思う。(野城座長)

  • 国土交通省のグリーン診断は大規模な建物しか実施されていない。むしろ小規模の建物のほうが問題。この制度でどれくらいの規模を想定しているのか国土交通省から次回に資料を出してほしい。(中村委員)

  • 設計者負担が増えることが懸念されるので、この制度によって他の制度がどう影響するのかについてもまとめてほしい。(中村委員)

  • 国が仕組みを整備すれば、地方はそれに倣い実施することができるのではないか。(善養寺委員)

    →地方におけるCO2削減効果や波及効果が期待できる。その点も含めて次回、適用範囲について議論していただきたい。(野城座長)

  • まずは設計者を選定する基準が不明確だと方向が定まらない。(野城座長)次回は設計者をどう選ぶかについて焦点をあてたい。(野城座長)

3.その他

  • 次回は9月27日の15時30分に開催する。

  • 追加意見は9月18日までに連絡されたい

以上