第17回有明海・八代海等総合調査評価委員会海域環境再生方策検討作業小委員会 議事録

開催日

令和7年8月7日(木)

場所

WEB会議システムにより開催(ライブ配信)

出席者

 小委員会委員長 : 矢野真一郎委員長
 委員 : 上久保祐志委員、内藤佳奈子委員、島則久委員、田和彦委員、山西博幸委員、山室真澄委員
 専門委員 : 青木美鈴委員、谷弦委員、岸田光代委員、ゆかり委員、速水祐一委員、東博紀委員、藤井直幹委員、外城和幸委員、松山幸彦委員、森川晃委員、山口敦子委員、山口啓子委員、 山下武志委員、山本智子委員、弓削こずえ委員、横山勝英委員、吉永育生委員

(オブザーバー)
 大嶋雄治委員、清本容子委員、美鶴委員

(関係省庁)
 農林水産省 農村振興局 整備部 農地資源課 空調査官、松本事業推進企画官青木課長補佐、藤吉係長
 林野庁 森林整備部 治山課 市川監査官、藤田課長補佐、矢野係長
 林野庁 森林整備部 計画課 横山森林計画官
 水産庁 増殖推進部 漁場資源課 津山課長補佐、石橋係長、熊本係長、三嶋係長
 水産庁 増殖推進部 研究指導課 小田課長補佐、梶原係員
 水産庁 増殖推進部 栽培養殖課 清水課長補佐、監物係長、宇都宮係員
 水産庁 漁港漁場整備部 計画・海業政策課 三島計画官、藤濱係長
 水産庁 漁港漁場整備部 事業課 岩谷専門官、西村係員
 国土交通省 水管理・国土保全局 河川環境課 前田企画専門官、木村係長
 国土交通省 港湾局 海洋・環境課  佐藤係長
 国土交通省 大臣官房参事官(上下水道技術)付 對馬企画専門官
 九州地方整備局 河川部 小野建設専門官、德嶋係長

(事務局)
 環境省水・大気環境局海洋環境課海域環境管理室長、海洋環境課海域環境管理室海域環境対策推進官、
 海洋環境課海域環境管理室室長補佐、海洋環境課海域環境管理室主査

議事録

                                           午後2時33分 開会

○清水海域環境対策推進官 ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第17回水産資源再生方策検討作業小委員会及び第17回海域環境再生方策検討作業小委員会の合同小委員会を開会いたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日の小委員会ですが、ウェブでの開催とさせていただいております。委員の皆様に御不便をおかけしますが、会議中、音声等が聞き取りにくい等不具合がございましたら、事務局までお知らせください。
 なお、ウェブ会議で御発言の際は、挙手アイコンをクリックし委員長からの御指名後、ご発言いただきますようお願いいたします。御発言後は、再度、挙手アイコンをクリックして解除してください。
 本委員会は公開の会議となっており、環境省海洋環境課公式動画チャンネルにてライブ配信を行っております。
 それでは、まず、議事に先立ちまして、環境省海域環境管理室長の西川より御挨拶を申し上げます。
○西川室長 環境省海域環境管理室長、西川でございます。
 まず、会議の開始が遅れてしまいましたことをおわび申し上げます。申し訳ありませんでした。当方ですが、本年4月から着任いたしております。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、本小委員会に御参加をいただき、誠にありがとうございます。
本年度に入って人事異動に伴う委員の改選がございまして、6名の委員の皆様に新たに御参画いただいております。新任の委員の皆様におかれましても、また、引き続き御就任いただいている皆様につきましても、どうぞよろしくお願いいたします。
有明海・八代海等総合調査評価委員会では、令和8年度に向けた取りまとめということで、本年度、来年度と大変重要な局面であると認識してございます。本年度は報告書の前半に当たります第3章から第5章までを御審議いただきまして、来年度は後半部分、第6章、第7章を中心に御審議をいただき、報告書として取りまとめてまいりたいと考えております。
本年度の審議スケジュールの詳細につきましては、後ほど事務局から御説明させていただきます。
昨今の有明海・八代海の状況について申し上げますと、先ほどの水産小委でも御説明がございましたが、3年連続でノリが不作になっている状況でございます。タイラギについては、依然として休漁が続いており、また、赤潮や貧酸素水塊の発生も例年発生するなど深刻な状況が継続していると認識しております。
その再生に向けた取組が引き続き喫緊の課題であり、本評価委員会への期待も高くなっていると思っております。
先ほどの小委員会では、昨年度からの追加報告事項としまして、有明海沿4県と国が協調した再生の取組について農林水産省から御報告をいただいたほか、関係各県によるノリ養殖・漁業の環境改善や水産資源と栄養塩の影響について御審議いただきました。
合同会議の中では、海域小委、水産小委にまたがる追加報告事項を御報告させていただくことに加え、令和8年度報告書の第3章の原案を御審議いただきたく思っております。
限られた時間ではございますが、皆様の忌憚のない御意見をいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。
○清水海域環境対策推進官 続きまして、委員の出席状況ですが、渕上委員、小林臨時委員、清水専門委員、古川専門委員、脇田専門委員より御欠席の御連絡をいただいております。本日は委員29名中24名の御出席ですので、総合評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを、ここに御報告いたします。
 まず初めに、委員の改選についてお知らせいたします。令和7年6月付で一部委員の改選がございました。資料1-1と1-2を御覧ください。こちらは水産小委員会と海域小委員会の委員名簿となります。改選の結果、水産小委員会へは渕上委員、持田委員、藤井専門委員、森川専門委員、山下専門委員が、海域小委員会へは吉永委員が新たに加わっていただくことになりました。また、退任されました鈴木元水産小委員長に代わり、評価委員長より持田委員が水産小委員長に指名されております。
 また、本日は、オブザーバーとして、評価委員会から大嶋委員、清本委員、林委員に御参加をいただいております。オブザーバー参加の委員におかれましては、御質問や御意見がある場合には、発言を求められてから挙手をお願いいたします。
 なお、本日は、関係機関として、農林水産省農村振興局、水産庁、林野庁、国土交通省の水管理・国土保全局、港湾局、大臣官房、九州地方整備局から各担当に参加いただいております。
 次に、事務局を紹介させていただきます。
先ほどご挨拶しました海洋環境対策室長の西川です。
○西川室長 西川です。よろしくお願いいたします。
○清水海域環境対策推進官 司会をさせていただいております、私が海域環境対策推進課の清水でございます。本年7月付で着任をしております。どうぞよろしくお願いいたします。
続きまして、室長補佐の中村。
○中村室長補佐 中村です。よろしくお願いします。
○清水海域環境対策推進官 主査の小原です。
○小原主査 昨年度に引き続きよろしくお願いします。
○清水海域環境対策推進官 引き続きまして、資料については、事前に電子データ等でご案内をしておりますが、議事次第に記載の一覧のとおりとなってございます。資料に不足や不備がございましたら、事務局までお知らせください。
 それでは、議事に入ります。以降の進行につきまして、矢野委員長、よろしくお願いいたします。
○矢野委員長 はい、了解いたしました。本日、進行を担当させていただきます矢野でございます。
それでは、どうぞよろしくお願いいたします。
限られた時間の中で円滑な議事の進行に御協力をお願いいたします。
 早速ですが、議事を始めさせていただきます。本日の議題は、今年のスケジュール(案)、令和8年度委員会報告に向けた情報収集(昨年度からの追加報告事項)及び令和8年度報告書原案(第3章)となります。
 それでは、まず、議題1、資料2、今年度のスケジュール(案)について、環境省より御説明をお願いいたします。
○中村室長補佐 環境省、中村です。
 資料2の今年度のスケジュール(案)について御説明いたします。
今年度ですが、8月、10月及び12月の小委員会と3月の評価委員会の開催を予定しております。第17回が今回の小委員会になりまして、報告書の原案の御報告及び審議など、水産小委、海域小委共通の議題も含まれるため、当初、合同小委という形で予定しておりましたが、昨年度からの追加事項報告につきましては、内容により、水産・海域小委それぞれで取り上げたほうが、より深い議論ができるのではないかという御指摘もあり、今回は前半を水産小委、後半を合同小委という形とさせていただきました。
第18回、19回におきましても合同開催の予定としておりますが、こちらも扱う内容により個別開催とすることも考えております。報告書の原案につきましては、今年度は第5章までの御報告と、それに対して御審議いただく予定としております。そして3月に評価委員会を開催しまして、小委員会における取組や年度末に御報告しております所掌事務の遂行状況の分かりやすい形での公表について御報告し、御審議いただく予定としております。
簡単ですが、以上です。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 ただいま御説明がありました内容について、御意見、御質問等がございましたら挙手をお願いいたします。ございませんでしょうか。
委員のほうから特にないようですが、オブザーバーの方からもお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
私のほうでは特に挙手は確認できませんが、よろしいでしょうか。
○清水海域環境対策推進官 事務局からも確認できておりません。
○矢野委員長 
それでは、特に意見はないということで、今、御説明いただいたスケジュールを基に進めていただくということを了承いただいたということにさせていただきます。ありがとうございました。
それでは、議題2、令和8年度委員会報告に向けた情報収集(昨年度からの追加報告事項)に移ります。
議題2につきましては、後ほどまとめて御意見を伺いたいと思いますので、資料3-1から資料4まで続けてご発表ください。
それでは、資料3-1「タイラギ生息のための海域環境評価」及び資料3-2「室内実験におけるタイラギの生息環境評価」について、環境省より説明をお願いいたします。
○中村室長補佐 環境省の中村より御説明いたします。
 資料3-1を御覧ください。
2ページをお願いいたします。有用二枚貝に関する調査の情報収集について御説明いたします。
環境省では、「有明海二枚貝類の減少要因解明等調査」につきまして、特にタイラギを中心に生息環境モニタリングや餌料環境の長期変化の把握に向けた検討などを実施しております。
これまでに得られた知見としまして、資料3-1でタイラギ生息のための海域環境評価について御報告、資料3-2で室内飼育におけるタイラギの生息環境評価について御報告いたします。
3ページをお願いいたします。タイラギに影響を及ぼす環境要因としましては、貧酸素について知見の収集や発生機構の解明が進展してきました。また、懸濁物についての影響が示唆されていますが、解明は不十分となっており、餌料の長期変動の把握についても指摘されております。
そこで、下に示す3点、懸濁物の変動機構について、餌料の濃度とその生産速度の長期変動評価について、またタイラギ幼生の着底率と溶存酸素濃度との関係について御報告いたします。
4ページをお願いいたします。一つ目の懸濁物の変動解析の結果になります。図1の観測点のうちP6とT5での調査により、上げ潮・下げ潮、また大潮と小潮の間で懸濁物濃度が増減する現象を確認しました。
図2では、横軸に時間、縦軸に海底からの高さを示しており、矢印の長さは潮流の強さを示しています。そしてピンク色の部分は懸濁物濃度で、色が濃くなるほど濃度が高いということを示しております。この図で矢印が長い、つまり潮が早いときの濃度が高くなっていることが分かります。
これとともに、より長い周期の変動としまして、図3で、大潮、小潮間での変動を示していますが、大潮時に懸濁物濃度が高くなることを確認しました。今後は2013年から2024年の夏季及び秋季において上記の2点を含む計6点で調査し解析を行う予定としております。
5ページをお願いします。二つ目のクロロフィルa濃度と基礎生産量について、それぞれ図4に示す観測点で2006年から2010年及び2021年から2024年に記録された結果を、A2海域とA3・A5海域に分けて季節別に比較しました。解析では、出水後や赤潮などにより、基礎生産が特異的に高まる状況は除いております。
6ページをお願いします。このページはクロロフィルa濃度です。上の段はA2海域、下の段はA3・A5海域で、それぞれ4月から6月、7月から9月、10月から12月の結果を示しております。短期的な変動は大きくなっていますが、長期的な変動は短期的なものに比べると小さく、有意な差は認められておりません。
7ページをお願いします。こちらのページは単位面積当たりの基礎生産量ですが、同様に、短期的な変動に比べて長期的な変動は小さく、有意差は認められませんでした。
8ページをお願いします。結果としまして、クロロフィルa濃度及び基礎生産量ともに季節的変動は大きいのですが、長期変動は現場実測値から確認されませんでした。また、今後は人工衛星の情報から推定されたデータを活用しまして、季節や海域による変動を評価することを考えております。
9ページをお願いします。三つ目のタイラギ幼生の着底率の変動要因についてです。ここでは貧酸素のタイラギへの影響は、着底後のことについては明らかにされてきましたが、浮遊期から着底期までの幼生については未検討であったため、現場で検討を行ったものです。図8は浮遊幼生調査の点を示ししております。図9はタイラギ稚貝生息調査の測点と水質連続観測の測点を示しております。図8と9で海域を区分していますが、この海域の浮遊幼生、稚貝に関する各データの海域ごとの対応を表2に示しております。
10ページをお願いします。これらのデータを使いまして浮遊幼生に対し、どのぐらい着底したのかという一つの指標としまして、稚貝と浮遊幼生の密度比を計算した結果を示しております。図10ではDOの値が最も低くなりやすい8月の平均のDO濃度と稚貝(幼生)の密度比の関係を示していますが、DO濃度が高くなると、密度比の値の高い傾向が見られます。
また、表3では、8月以外の月と、より小さいサイズの幼生の関係ではどうなるのかを調べたものですが、8月のDOデータと0.4mmを超える幼生との組合せで関連が強くなっており、それ以外では大型の幼生が8月のDO濃度に影響されやすいという可能性が推察されました。今後はDO以外にもクロロフィルa濃度や塩分等との関係についても解析を行う予定としております。
11ページをお願いします。まとめになります。懸濁物濃度が大潮時や上げ潮・下げ潮時の上昇を確認し、今後は潮汐以外との関係も解析する方針を示しました。
基礎生産量については、大きな長期変動は見られませんでした。今後は人工衛星準拠の基礎生産量推計値を追加解析することとしました。
タイラギ稚貝と0.4mmを超える幼生の密度比は多くの定点で溶存酸素濃度と正の相関が見られました。今後は、溶存酸素以外の要因も解析する方針を示しました。
これらの方針の解析結果は、19回小委員会で提示する予定としております。
以上が資料3-1の御説明になります。
続きまして、資料3-2に移ります。
2ページをお願いします。資料3-2では、室内飼育実験におけるタイラギの生息環境評価について御説明します。
背景・目的ですが、一般的に懸濁物中の無機成分の比率や餌料成分の密度が二枚貝の健常性に強く影響することが知られています。
また、タイラギ移植試験では、海底から離して飼育すると生存率が向上するという結果が得られていることを踏まえ、泥濃度や餌濃度の組合せによるタイラギの摂餌活性の評価について御報告いたします。
3ページをお願いします。総合評価委員会におきましては、海域区分ごとに原因、要因を確認して再生方策を示すことが求められております。この海域のA2、A3海域はタイラギの主要漁場を含む海域に相当します。A3海域では、貧酸素水塊が多く発生し、タイラギ減少の要因として貧酸素水塊の発生が原因、要因としてほぼ確定されております。また、A2海域はタイラギが最も高密度に発生する主要漁場を含んでいる海域ですが、A3海域と比較して緩やかな貧酸素の発生にとどまっているため、タイラギのへい死と酸素濃度との関係性が認めにくい海域となっております。このため、酸素濃度だけでなく濁りの影響も研究が必要な状況となっております。
4ページをお願いします。この表は平成28年度委員会報告で示されたものですが、福岡県が1999年から2014年までに実施した16年間のタイラギ資源調査結果に基づきまして、いわゆる立ち枯れへい死の発生カレンダーと溶存酸素濃度の関係性を示しております。赤枠で囲った年では酸素濃度が下がったタイミングで大量死が発生しているのですが、それ以外の年度では酸素濃度との関係性がよく分からない結果となっており、いまだ不明の点が多いとなっております。
5ページ、お願いします。環境要因がタイラギをへい死させるまでのスピードは二つに大別されます。一つは発生から数日以内にタイラギがへい死する影響で、ここでは急性的影響としております。代表的な環境要因としては貧酸素や低塩分が知られております。もう一つは、短期間であればタイラギへの影響は小さいのですが、長期間継続すると衰弱させ、へい死に至らしめる影響で、こちらは慢性的影響としております。例として1歳貝を4日間飼育した実験結果を示しておりますが、1~2mg/Lの溶存酸素濃度では4日以内にへい死する個体はありませんでした。ただし、もしこの環境が長期間継続すると慢性的影響を受けて他の要因と合わせてへい死に至る可能性が高いと考えられます。
6ページをお願いします。最近は原因、要因をより解明するためにタイラギを移植する水深を変えた現場移植試験が行われています。ここに示したように、直植移植、それと、かごにタイラギを置いて原地盤から少し浮かせた試験区の二通りで行われています。その結果、海底から僅かに立ち上げると、同じ場所での大量死は発生しないという興味深い結果が得られております。このような違いにつきまして、恐らく慢性的な環境要因が累積することでへい死が発生しているという考え方に基づきまして、室内実験における定性的な観察結果によって、タイラギがここに示します二つの要因、一つ目が溶存酸素2mg/L以下の長期的な発生状況、もう一つは濁度80FTU(泥濃度500mg/L)以上の発生状況、この二つで影響を受けやすいことがあらかじめ分かっておりましたので、これに着目して解析を行いました。
7ページをお願いします。これは海域の低層溶存酸素濃度の変化で、移植したタイラギのへい死が確認されなかった試験におけるグラフです。赤いラインが溶存酸素濃度2mg/Lの数値を示しております。瞬間的に2mg/L以下の溶存酸素濃度になることはありますが、概ね貧酸素が長期間継続する現象は確認されておりません。
8ページをお願いします。次に移植したタイラギの大量死が確認された移植試験における溶存酸素濃度の変動を示したグラフになります。オレンジのバックグラウンドで示している年はぎりぎりではありますが、溶存酸素の2mg/L以下が長期間継続する状況が確認されており、同時にタイラギの大量死が発生していることが窺えます。一方、黄色のバックグラウンドで示しているグラフは、酸素濃度低下との関係が確認できず、別の要因が関係していると考えられます。このように、二つのパターンがあることが分かりました。
9ページをお願いします。1999年から2021年までの22年間の調査結果を一覧にしました。この一覧を見ますと、大量死は大体7割ぐらいの確率で発生しています。また、長期的に増加、減少傾向は見られておりません。夏に発生する年、秋に発生する年、どちらも発生する年など、かなりばらばらで、酸素濃度低下時と大量死の間に対応が見られるのは22年のうち6年のみとなっております。
10ページをお願いします。こちらは資料のまとめになりますが、時間の関係で詳細な説明は割愛させていただきます。
11ページをお願いします。先ほど黄色のバックグラウンドで示したタイラギのへい死と貧酸素との関係が不明な年における濁度のグラフを示しました。赤いラインが室内実験においてタイラギに影響することが確認できている泥濃度500mg/Lの水準になります。へい死が起こった直植試験のところの濃度において赤ラインを超える濃度が高いことが分かります。海底から少し上げるだけで高濁度の頻度が少し落ち着いています。
12ページをお願いします。懸濁物による濁りについても慢性的な影響が考えられるため、その影響を室内実験により定量的に把握することを試みました。お示ししました室内実験区を設定し、泥と餌の組合せにより様々な懸濁環境を再現する実験を行っております。
13ページをお願いします。実験終了時のタイラギの中腸腺における餌の取込状況を示しております。餌を食べていると濃い茶色に変色しますので、その割合を右の棒グラフに示しております。濃い茶色の比率が高いほど、よく餌を食べているということになります。
赤枠で囲った部分がクロロフィルa濃度5μg/Lを給餌した試験区で、この部分に注目すると、泥濃度が上昇するごとに摂餌できている個体が少なくなっています。500mg/Lでは、海域にクロロフィルがかなり高濃度に存在しないと十分餌を食べることができないという状況になっております。
14ページをお願いします。様々な懸濁環境における成長率上段と下段のほうには閉殻筋中のグリコーゲンの増減率のグラフを示しております。横軸は餌濃度、青で示した点と線は泥なしの試験区、オレンジ色で示した線が泥濃度500mg/Lの試験区を示しております。泥が500mg/L存在すると、餌があっても全く成長できず、グリコーゲンは蓄積しないと言えます。この中間の200mg/Lの試験区は、現在、実施中です。
15ページをお願いします。まとめになります。餌密度と泥濃度を組み合せたタイラギの飼育実験から、少なくとも500mg/Lの無機懸濁物ではタイラギ摂餌阻害と健常性低下を明らかにしました。200mg/L条件のグリコーゲンを今試験中です。
500mg/LはA2海域でも年や時期によってかなりの頻度で観測されております。慢性的にタイラギの健常性に影響を与えている可能性が高いと考えられます。
タイラギの健常性の指標となるグリコーゲン含量について、酸素濃度、クロロフィルa濃度、濁度の3項目の相乗的作用で大きく変動すると推定され、現場海域における評価指標として重要視できると考えられます。
泥濃度200mg/L条件下の試験結果につきましては、第19回小委員会で提示する予定であり、今回提示した内容を含めて令和8年度報告書に掲載を検討しております。
そしてA2海域におけるタイラギの試験につきましては、第14回水産小委で水産庁から御報告がありまして、今回の研究と同様、餌料を摂餌可能な期間と、それと閉殻筋のグリコーゲン含量との増減の間に強い相関があることが示されています。
タイラギは直植より少し海底から切り離したほうが成長や生存がよいことから溶存酸素の濃度に加えて、餌と濁度濃度が健常性に影響を与えていることが推定され、これらの影響を組み合わせてより定量的に解明することで、タイラギの健常性を評価することが可能になると思います。
以上で説明を終わります。
 
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
それでは、次に資料4の有明海等の閉鎖性海域と森林に関する調査について、林野庁より御説明をお願いいたします。
○市川監査官 林野庁治山課の市川と申します。
 こちらからは資料4の有明海等の閉鎖性海域と森林に関する調査の報告をさせていただきます。
次、お願いいたします。まず、調査背景や手法について簡潔に説明いたします。
次の3ページを御覧ください。本調査につきましては、平成23年に有明海等特措法に森林関係の調査が規定されたことから、どのような調査を行うべきかといった検討を行った上で、平成27年度より調査を開始しているところでございます。
4ページ目を御覧ください。ここにございますように、森林が国土の保全、水源の涵養、地球温暖化防止など、様々な機能を持っているところでございます。
5ページ目を御覧ください。これらの森林の機能の中で特に海域への影響を考えたときに、水源涵養機能、土砂流出防止機能に基づく海水の濁りの抑制、栄養塩類の流出の平準化といったものが大きいと考えられたところでありまして、大流域を対象にSWATモデルというものを用いて森林の影響をマクロ的、演繹的に見積もろうと考えたところでございます。
次のページをお願いいたします。ここにつきましては、用いましたSWATモデルの説明となっております。SWATモデルにつきましては、土地利用などの似通った水文的挙動を示すHRUと呼ばれる領域ごとに、流域の水、物質などの移動を推定することに着目したモデルとなっております。
7ページ目をお願いいたします。今回の調査の対象流域を示しているところでございます。今回は筑後川流域、矢部川流域、菊池川流域、球磨川流域の4流域でモデルを構築しているところでございます。
次のページをお願いいたします。ここではデータ収集、モデル構築からシナリオ分析、評価までを行うまでのフローを示させていただいております。
まず、GISデータなど、テーブルデータといった既存のデータを収集した上で、それだけでは不足している部分がございますので、現地において調査を実施した上で、その上でモデルの構築を行っております。このモデルのシミュレーション結果と実測データを比較しながら、ベストパラメータというものを求めていき、その結果を基に流域特性の把握やシナリオ分析を行っていくという流れになっております。
次のページ、お願いいたします。モデルを構築するときの作業フローを詳細に示しております。シミュレーションの結果と実測データを比較して、実測に近づけていくためのパラメータ調整を繰り返すキャリブレーションという作業と、キャリブレーションに用いた期間とは別の期間において実測データとシミュレーション結果を比較して、パラメータの妥当性を検証していくというバリデーションを繰り返しながら、再現精度が一定以上になるようにしていくという形を取っています。
まず、水の流出量について一定以上の再現精度を得られた後に、土砂の流出量、栄養塩の流出量といったものにつきましても、同様の作業を繰り返していくという流れになっております。
次の10ページ目から16ページにつきましては、球磨川モデルに関するモデル構築の例を示させていただいているのですが、今回、少々時間がないため、調査の全体フローの詳細でもありますので、省略させていただければと思います。
すみません、飛ばしまして18ページをお願いします。モデルより得られた各流域の特性について説明してまいります。
18ページにつきましては、その土地に降った雨がどのような形で土地の外に出ていくかの割合、水の収支の割合を土地利用ごとに示したものとなっております。
これは菊池川流域の例となっており、森林については赤枠で囲んだものとなっております。森林の特徴としましては、グラフの黄色で示しました土壌に浸透せずに直接河川に流出する表面流というものの割合いが小さくなっていることが挙げられます。一旦土壌に浸透した後に、ゆっくり水が出てくるという形を取りますので、年間を通じて安定的に水を供給していくというものが示されているところになっております。
次の19ページをお願いいたします。これにつきましては、先ほどのグラフを流域ごと、土地利用ごとに示したものとなっております。土地利用ごとの傾向は概ね同じになっているのですが、球磨川につきましては、年間降水量が非常に大きい流域であることから、全般的に蒸発散の割合が少なく出る傾向がございます。
次の20ページを御覧ください。これにつきましては、菊池川と球磨川でまとめた若い森林と成長した森林での水収支の違いについて示しているところです。一番左側のものになりますが、針広・0-3年生といったものが一番若い植えたばかりの森林になりまして、それから針葉樹・広葉樹別に年齢が上がっていくものを示しております。一番若い部分につきましては、ほかの成長した森林に比べて、黄色の表面流量の割合がやや大きく出る傾向にはございますが、一番右側の未立木地に比べれば、その差というものはそれほど大きくなく、切った後にしっかり植えて森林として維持していくことが重要だということが示されています。
次の21ページを御覧ください。これにつきましては、土地利用別のSSの負荷量を示したものとなっておりますが、SSは、こちらとしましては土砂流量を示す指標として考えているところなのですが、土砂流出流量及び栄養塩類のモデルにつきましては、モデルの精緻化が不十分な状況で、特にSSにおいて流域ごとにかなり傾向が異なっているという状況になっているところですので、現地調査等によりデータ量をさらに充実させて、モデルの精緻化を図っていきたいと考えているところです。
次に、構築したモデルを用いまして土地利用などが変化した場合に、水や物質の流量がどのように変化するかを評価・分析するシナリオ分析について説明いたします。
少し飛んで23ページを御覧ください。ここにはシナリオ分析の項目について示しているところです。先ほど申しましたように、土砂流出、栄養塩類のモデルの精緻化につきましては、まだ少々不十分な部分がございますので、それを用いている3、4、5につきましては、現時点での検討状況の説明をさせていただきます。
24ページを御覧ください。
まず、分析の一つ目として、森林率、森林の割合が水の流出を平準化させる効果があるかどうかについて分析を行ったものとなっております。
ここでは年間における最大流量と渇水流量の差が小さいほど流域から流出が年間を通じて安定している。すなわち平準化効果が高い状態と考えており、球磨川流域において森林率を85%、これは現況のものになります。それと60%、40%、20%となる四つのモデルを構築して、それぞれの流況曲線上の最大流量、放水流量、貯水流量、渇水流量を比較していくということにしております。
次のページ、お願いいたします。その結果がこのページに示されております。森林率が高いほど最大流量が小さく、渇水流量が大きくなり、森林率が低くなると、その逆になっていくという傾向が見られております。この結果、年間における最大流量と渇水流量の差は森林率の高いほど小さくなる。このことから、流域における森林面積の割合が大きいほど水の流量を平準化するという効果が高く、豪雨時における洪水緩和や渇水時における安定的な水供給に寄与していると考えられました。
次をお願いいたします。分析2に移ります。これにつきましては、流域における森林率とビーク流量との関係性についての分析となっております。24時間確率降雨量と異なる森林率を組み合わせたシナリオに基づいてシミュレーションを行い、降雨レベル別、森林率別のピーク流量の結果を比較しました。
その結果について27ページを御覧ください。1の図につきましては、確率降雨量の降雨イベントにおける森林率別のハイドログラフを示したものになっております。ここでは5年、10年、400年確率降雨量のグラフを示しております。確率降雨量の増加に応じてピーク率も増加しますが、いずれの確率降雨量においても森林率が最も高い85%においてピーク流量が最も低く抑えられております。
②の図は確率降雨量をインプットとして球磨川流域の現況の森林率85%と仮想的に設定した森林率20%のシナリオにおけるピーク流量の違いを示したものです。森林率85%の流域では、森林率が20%の流域よりもピーク流量を抑制しており、森林がピーク流量の低減に寄与していることが確認できたところです。
このようなことから、現在の森林を維持していくことが水の安定供給上、重要であることが分かります。
続いて28ページを御覧ください。これ以降は先ほども申しましたように、土砂や栄養塩類のモデルの精緻化が不十分という状態であることから、現時点でこうなっていますという報告になります。
分析3につきましては、森林が草地や荒れ地に変化した場合に、SSや栄養塩類の流出にどのように影響するかを分析・評価するというものになっています。
グラフは土砂流出量の例となっており、降雨時の土砂流出量が森林のほうが小さいという結果にはなっているのですが、一方で、草地であっても荒れ地であっても、ほとんど差がないというところが、これが本当に正しいのかというところを、モデルに問題がないか、今後精査していきたいと考えているところです。
29ページを御覧ください。分析4につきましては、1970年代と2010年代の比較、この間に森林が成長していることから、森林の成長が河川流出などの平準化に寄与するかどうかの評価を行ったものです。現在の分析結果を右の真ん中辺りのグラフに示しましたが、結果としまして、2010年代のほうが出水時、洪水など、そういう水が出ているときの流出割合が大きいと。それは結果として平準化されていないという結果になっているところでございます。この結果につきまして、対象流域につきましては、1970年代から2010年代までに都市化が進展しているということがあり、土地利用の変化の影響なのか、それとも、森林の影響なのかが明確に出ていないというところがあったところが、今後、森林地帯の直下でのモデルと流域全体としての最下流部とのモデルを比較し、そういったものを明らかにしていきたいと考えております。
30ページを御覧ください。分析4につきましては、森林を伐採した後に再造林するかどうか、それをどの程度行っていくかということで、水、土砂、栄養塩分の流出にどのような変化が発生するかの分析となっております。
本件につきましては、伐採量や再造林率の条件というのが現実とあまり乖離しないようにどう設定するかということも含めて検討中の状況ですが、ここのシナリオ諸条件に示したような条件で、現時点に基づいて分析した窒素流出量の例が右の図になっております。再造林率が低いと窒素の流出が上がっていくという傾向が見られているところでございます。また、これにつきましても、モデルの精査、シナリオ諸条件の精査を行った上で結論を出していきたいと考えております。
続きまして31ページを御覧ください。これまでの調査のまとめに移ります。
まず、森林からの水流出に関しましては、一定の精度を得ているところであり、土地利用別の水収支やシナリオ分析など、から森林の存在が年間を通じて安定的に水を海域に供給する役割を果たしている部分について確認できたところです。
次の32ページを御覧ください。これから令和8年度までの報告に向けての課題になりますが、まず、土砂と栄養塩分に関するモデルの精緻化を図り、その上で、シナリオ分析を行って森林の効果を明らかにしていきたいと考えております。
また、シナリオ分析4で示しました森林の成長の効果につきまして、森林直下、流域全体の効果を分析・比較して確認していきたいと考えております。
また、これは余力があればなのですが、分析4以外のシナリオ分析においても、森林直下と流域全体の比較を行っていき、森林の効果をよりクリアにしていきたいと考えているところでございます。
かなり駆け足の説明となってしまいましたが、こちらからの報告は以上でございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明がありました内容、資料3-1、2、それから4について、御意見、御質問等を承りたいと思いますが、御質問等がありましたら、挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。
 横山委員、次に山西委員の順番でお願いします。
 横山委員、どうぞ。
○横山委員 どうもありがとうございます。
 資料3のタイラギの実験の結果を興味深く拝見いたしました。それでデータの整理についてなのですが、貧酸素であった年と、なかった年で、違いがあると。9ページでDOのデータをお示しいただいた。一次整理はこれでもいいのかもしれないのですが、DOの継続時間など、2mg/Lだったら2mg/Lを下回る時間がどのぐらいあったのか。連続して悪い環境が何日あったときに、へい死との関係性がある程度見られたなど、というような形、対応関係あり・なしや、○・☓だけでは、やや科学的に説明が不十分かと思いますので、こういったDOの継続時間といったような観点でも整理していただけるといいのかと思いました。
 濁りについても同様ですね。高濃度が1日だけだったのか、3日間続いたのかなど、そういったことも重要な情報かと思いますので、次のステップでそういった継続時間の議論を踏まえた整理をしていただけると、これは大潮のときに突発的にスパイク状に跳ねるものが影響しているのか、それとも、大量死なしといっているほうは1か月ぐらい高濃度が続いていますが、高濃度がずっと続いているほうが、たまにスパイク条に上がるよりも悪いような気がするのですが、そこら辺の関連性の整備なども、していただけたらなと思いました。
 以上です。
○中村室長補佐 ありがとうございます。
 横山委員から御指摘のありました9ページの貧酸素濃度の継続時間については必要ないかということにつきましては、こちらは13回の水産小委においても貧酸素の継続時間といった観点からの報告がされており、引き続き、こういった観点からも検討をしていきたいと考えております。
○横山委員 すみません。そうすると、時間については、もう既に報告があるということで、今回はそことどういった部分が違うのか、新しいのか分かりませんけれども、前回の報告とどの辺りが新たに整理が進んだということなのでしょうか。
○中村室長補佐 今回、酸素濃度だけはなく、濁りの度合いも併せて検討しております。
○横山委員 なるほど。そうすると、二つ合わさったときにどうかという検討があるということなのですか。
○中村室長補佐 はい。
○横山委員 DOが下回り、かつ濁度が、二つのパラメータだと、場合分けが四つになると思いますが、そこの分析結果があるということなのでしょうか。
○中村室長補佐 こちらは二つのパラメータという観点では、餌濃度と泥濃度との関係を示しており、泥濃度が比較的高い500mg/Lを超えるようなときは摂餌できないことが多くなって、餌濃度が高くなっても成長できない、そういったことは確認されております。
○横山委員 これはこれで実験のほうは分かったのですけど、現場のデータでDOと濁度をずっと継続的に調べていき、それとへい死との関連ということで、継続時間は既に解析されたということですので、そうすると、二つのパラメータでDOが高くて泥濃度が高い場合、片方が高い場合、両方とも低い場合という四つのパターンで分類して、どのぐらい的中するかというような現場データに基づく解析というのは行われているのでしょうか。
○中村室長補佐 DO濃度との関係、それとパターンにつきましては、現在では行われておりませんので、今後の課題として検討していきたいと考えております。
○横山委員 分かりました。ありがとうございます。どうもありがとうございます。
○矢野委員長 それでは、山西委員は手が下がっていますが、下げられたのですかね。
○山西委員 私が聞きたいことを横山委員がお聞きいただいたので構いません。なお、あえて言えば、水産小委のほうで説明されたタイラギの浮遊幼生との着底の話や流動の話があったので、先ほどのSSとDOの継続時間も含めて、ぜひ、一緒にご検討いただければいいかと思いました。
 私からは、以上のコメントだけで結構です。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 では、環境省のほうでよろしくお願いします。
 次、山室委員から手が挙がっていますので、お願いします。
○山室委員 資料3-1について教えていただきたいのですが、クロロフィルaと、それから生産量をお調べになっています。私が研究していた汽水域のシジミの場合、同じクロロフィルa量でも、植物プランクトンが違うと、シジミの、特に稚貝の成長速度が違っていまして、具体的には珪藻が多いと、必須脂肪酸が形成できない稚貝でも珪藻の必須脂肪酸を使って成長できるが、藍藻だと成長できないということがございました。
 タイラギの場合は、そういった植物プランクトンによる差はない、ここの海域で発生する植物プランクトンにおいては、どれも同じように餌資源となるという裏づけがあり、クロロフィルaなど、基礎生産ということで均して調べているのか、それはまだ調べていないのかについて教えてください。
○中村室長補佐 ありがとうございます。
 ここではクロロフィルa濃度ということで検討していますが、プランクトンの種類ということなどはまだ検討されておりません。
○山室委員 分かりました。そうしますと、長期変動がなかったというのは、全体をならしてクロロフィルaであり、もしかしたら、餌資源としては長期的変動があるかもしれないということが、まだ追跡されていないという理解でよろしいでしょうか。
○中村室長補佐 そうですね。これはクロロフィルaということで、プランクトンの種類などは考慮していませんので、プランクトンの種類別に見ると、また違った結果が出てくるかもしれません。
○山室委員 ありがとうございます。
 この資料の最後のページで、今後、人工衛星準拠の基礎生産量ということが書かれています。先ほどプランクトンの種類と言いましたけど、スピーシーズ(=種)までというのではなく、例えば、珪藻なのか藍藻なのか渦鞭毛藻なのかぐらいの違いで大体分かると思うんです。だとすると、植物色素が珪藻と藍藻、もしくは緑藻で大分違ってきますので、私はあまり人工衛星データには詳しくないのですが、人工衛星からの情報によってそれぐらいの違いは識別できる可能性もあるので、基礎生産量の推定を試みる以前に、餌が渦鞭毛藻なのか珪藻なのかで成長量が違うのかを調べた上で、衛星データを使うという順番もあり得るのかなと思いました。
○中村室長補佐 ありがとうございます。
 まず、衛星データを活用する前に、実際に種類別ではどうなっているのか、検討が必要ということは理解いたしました。今後、そういった御意見を踏まえまして検討を進めていきたいと考えております。
○山室委員 ありがとうございます。
宍道湖の場合は、本当にクロロフィルaでは全然変わらないのに、藍藻なのか珪藻なのかで、全く資源量が変わってしまいましたので、そういった例も参考にいろいろ検討いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 ほかはございませんでしょうか。
 ないようでしたら、オブザーバーの委員の方も御質問いただいて結構ですが、いかがでしょうか。
 林委員、お願いします。
○林委員 森林のほうに関して質問なのですが、資料のⅢの流域の特性の把握のところ、18ページのところで、森林については3割ぐらいは蒸発散だが、あとの7割は何らかの形で水が、その後、安定的に供給されていると、こういうお話だったのですが、供給のプロセスとして側方流ですとか、あと地下水が一番多いのですが、こういう水が最終的に海まで伝わっていく、その経路といいますか、その辺りにはどのように考えておられるのですか。今、これは土砂という観点かとは思うのですが、この事例にある菊池川について、後のSWATモデルですかね、Ⅳ番の結果の29ページのところで分析事例4のほうで、2010年のほうが70年代に比べて流出、それから、特に出水時の窒素の流出が多いというお話がありまして、こういうのが土砂との兼ね合いだけのお話なのか、それとも地下水を通じての海への窒素の供給というところも関係があるのか、その辺りを、どのような経路を考えているのかということも含めて教えていただけますでしょうか。
○市川監査官 御質問、ありがとうございます。
 まず、18ページの図に書かせていただいたところなのですが、イラストのほうに描いてあるのがイメージになるのですが、雨が降ったときに森林で一旦受け止められて、そのまま蒸発するもの、森林が水を吸い上げて蒸散するもの、全部合わせて蒸発散というところに入っているので、森林がやや多めになるという傾向がございます。それ以外につきましては、一旦土壌に入ってから、すぐに出てくる、割と早めに湧き水のような形で出てくるようなタイプのものが側方流になりまして、一旦しっかり土壌の中に浸透した後にゆっくり河川なり海域なりに出ていく水のことを地下水と考えております。さらに、岩盤まで浸透して、本当にゆっくり出てくるというタイプも地下水の形がある。それを分類し、どのような形で流出していくかというのを出したものがこのグラフになっています。これにつきましては、水がどのように経路をたどって出ていくかを示したものになっています。
一旦、土壌に浸透することで、土壌の中のいろいろな微生物などの働きなどがあり、実は窒素など生物が利用するような物質については、土壌に浸透することで、そういった土壌生物が窒素などを消費し、あまり窒素の量などが出てこないと言われています。逆に、岩石が砕けたようなものが土壌を構成しているものですから、ミネラルのようなものは、土壌中をゆっくり通っていくことで水に付加されて、そういうものが出てくるだろうと、そういう効果があると言われており、それも含めて栄養塩類がどのように出ていくかというところをこのモデルである程度計算していきたいと考えているところなのですが、水のデータはすごくたくさんいろいろなところにあるものですから、割とモデルが構築しやすかったのですけれど、そういう栄養塩類など、土砂のデータというものは自前で取っていかなければ、なかなか出てこないということもあり、多少、モデルの構築に苦戦しているようなところがあり、ある程度はできてきてはいるのですが、今年度中にしっかりそこはやっていきたいかと思っています。
29ページの窒素の流出量につきましては、出水時のときに、がんと出てきている。特に窒素の流出量に関しては、本当に森林はこれだけたくさん窒素を出しているのか、それとも、流域で都市部が、この期間、倍ぐらい都市化が進んでしまっており、都市部の下水など、そういったものの影響のほうが大きいのではないかという疑問があったものですから、森林の直下、森林だけの区域のようなところのデータと、流域の一番下の都市部などの農地など、そういうものも全部ひっくるめたものとのモデルを比較していくと考えているのが、今の状態でございます。
説明としては、このような形でよろしかったでしょうか。
○林委員 はい、ありがとうございます。
 そうすると、後のモデルの計算、あくまでも河川経由ということにもなるわけですね。地下水も含めている。
○市川監査官 はい、そうです。最終的に河川から海域に出てくるところで、どんな状態になっているか、そこの海域に出てくる前に地下水から出てくるものも、当然入っていると考えていますので、そういったものを全部含めたものと考えております。
○林委員 海底から直接地下水が出ているということもよくうかがうのですが、そこの見積りはなかなか難しいというか、それは少ないという。
○市川監査官 海域から直接出てくるものについては、多分、今回のモデルの中では、その数字はうまく入らない形になるかと思います。
○林委員 はい、分かりました。ありがとうございました。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ほかにございませんでしょうか。少々時間も押しておりますので、よろしければ、以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、議題の3のほうに移ってまいります。令和8年度報告書案(第3章)に移ります。
 資料5-1の令和8年度報告書(第3章原案資料集)及び資料5-2の令和8年度報告書(第3章原案本文)について、環境省より御説明をお願いいたします。
○小原主査 ありがとうございます。環境省の小原です。
 私からは資料5-1と5-2を御説明させていただきます。
 まず初めに、第3章を含む報告書について参考資料を使って御説明します。今、参考資料1-4を表示しております。こちらは第52回評価委員会の決定事項ですが、基本的な考え方として、2番の委員会報告の章立・項目の検討において、令和8年度報告につきましては、中間取りまとめを踏まえて平成28年度委員会をベースに現状を報告するといった点、また報告書本体については、軽量化するといった点が議論されているところでございます。こういった内容も踏まえて、資料5-1については資料集、資料5-2については本文をそれぞれまとめております。また、中間取りまとめに御指摘いただきました気候変動や社会経済情勢の変化なども追加しております。
そういった中で、今回、網羅的にまとめた資料集を先に説明しつつ、項目ごとに本文も合わせて御説明できればと思います。
まず、目次を0ページ目に示しておりますが、赤字で追加しているものにつきましては、下に記載しましたとおり、令和8年度報告におけるこれまでの過年度の報告から主な追加項目を赤字で示しております。今回は時間が限られておりますので、赤字の内容を中心に御説明します。
それでは、早速、資料集から御説明させていただきます。
まず、汚濁負荷につきましては、15ページ、16ページ、第15回合同小委で御説明した、社会経済情勢の観点からの流域人口の推移、土地利用区分面積の推移について追加しております。汚濁負荷については、これ以外の主な変更事項はなく、これまでの報告書と同様の算定方法にてデータを更新しております。
まとめにつきましては、排出負荷量、流入負荷量など、それぞれの傾向などをまとめており、そこに流域人口と土地利用面積を新たに追加しております。
まとめを御覧いただくとお分かりになりますとおり、項目ごとに傾向等が異なっていることを詳述しておりますので、資料5-2の本文につきましては、表の1にて、有明海・八代海の汚濁負荷を比較し、共通事項と相違事項をまとめました。また、文章の1点目、2点目については、まとめに記載された内容を踏まえて記載しており、2点目につきましては、新しく追加した社会経済情勢の変化の内容を盛り込んだ記載にしているところでございます。
資料集に戻りまして、河川からの土砂流入について御説明させていただきたいと思います。こちらも気象の事例、令和3年度の中間取りまとめ以降の豪雨の状況を更新しているところでございますが、新しく追加した内容としましては、24ページにございます。こちらは福岡管区気象台の季節別雨水量の経年変化を示しておりますが、さらに、有明海と八代海の流域の年間の日数の変化、あるいは季節別の変化といったものを新しく追加しております。こちらは第16回の海域小委で御報告した内容です。また、小雨の観点から日降水量1mm以上の年間日数についても合わせてまとめております。
また、32ページに、今回、河床変動の状況ということで、筑後川の情報を更新しております。具体的には、こちらの河道横断形状の変化でございますが、令和3年度の報告からその後の状況を追加で御報告しております。こちら第14回の海域小委の内容です。
36ページに、豪雨後の河川の状況ということで、平成29年九州北部豪雨後の状況などを18行目から25行目に中間取りまとめ以降の内容として更新しております。こちらの内容につきましては、以降の37ページから42ページまでに関連している図表等を記載しております。
ここまでは筑後川の説明でしたが、球磨川につきましては43ページにまとめております。43ページに球磨川の平均河床高変化量の経年変化の記載を新しく追加しており、令和2年7月豪雨後の内容について土砂堆積が確認されたところを新しく追加しており、44ページ以降に図を表示しております。
河川からの流入につきましては、47ページにまとめがございまして、平成29年7月九州北部豪雨以降に令和2年の出水の内容が新しく記載しております。また、球磨川についても、令和2年7月豪雨後の内容を新しく記載し、筑後川と球磨川の豪雨の状況を踏まえて、今後、ダム堆砂の傾向や気候変動の観点から季節別の降水傾向の変化に留意しつつ、継続的なモニタリングや必要に応じて適切な対応を行っていくことが重要であることについてまとめております。
今のまとめで御説明した内容について、本文についても4つの箇条書きで記載しております。
続きまして、潮汐・潮流については、49ページに黄色のハイライトで記載しておりますとおり、潮汐振幅の経年変化について更新を予定しており、こちらの更新に応じて文章についても更新を検討します。
また、平均潮位の上昇につきましても、50ページのとおり、中間取りまとめ以降でも上昇が続いていることが確認されております。
続きまして、54ページに新たに季節別の変化の解析を追加しております。56ページにつきましては、平均日照時間偏差の季節別の解析、58ページにつきましては、風速の季節別の変化傾向について解析を行っております。
まとめについては、前半につきましては中間取りまとめの知見が主になっており、大きな修正はございませんが、59ページの6行目以降は、先ほどの気象・海象の海域の解析の結果も含めて新しい知見を追加しております。
本文につきましては、1点目、2点目、3点目については中間取りまとめを含めた記載となっており、有明海の潮汐・潮流の特徴などについて記載し、4点目については、気候変動の解析の結果を盛り込んでおります。
続きまして、水質です。こちらは最初に環境基準達成状況について記載しておりますが、今回新たに62ページに水生生物の保全に関する生活環境項目の内容を追加しております。こちらはまだデータが少ないところでございますので、今後、データの蓄積が必要と考えているところです。
69ページでございます。水質の動向としては、まず中間取りまとめと異なり、過去の御指摘も踏まえてMann-Kendall検定を採用しております。気象データの解析については、気象庁の解析を踏まえて線形回帰分析を用いておりますが、気象データ以外の解析については基本的にMann-Kendall検定を使用しております。
項目としては、海洋酸性化の観点からpHを中間取りまとめ以降で新しく追加しております。
また、栄養塩の観点から、DIN、DIP、クロロフィルを新しく追加して解析しております。
69ページは有明海の傾向ですが、八代海及び橘湾についても同じように解析を行っております。ただし橘湾については、栄養塩のDIN、DIP、クロロフィルについてはデータがございませんので、それらの結果については有明海・八代海のみです。
63ページ、64ページにつきましては、中間取りまとめと比較しまして両海域ともに、海域区分ごとに少なくとも濃度傾向が把握できるように改善したいと考え、測定がなされている海域区分では少なくとも1地点以上海域区分ごとに測定地点を追加して解析しております。
76ページの栄養塩について補足させていただきますと、環境省の解析におきましても、解析の結果、有明海の湾奥部でDINが減少傾向を示しているところが複数地点でみられたところです。一方で、DIPやクロロフィルについては、有意な差は見られないところもございますがDINが減少しているところで増加しているところ、あるいは少なくとも減少していないといったところから、連動性はないと考えております。また、減少傾向が湾奥部で複数見られているのに対して、他の海域区分では湾央部に1地点あるのみで、湾奥部とそれ以外で傾向が異なっていることも確認されました。
また、77ページですが、八代海も同じく栄養塩の傾向の結果では、いずれも有意差は見られず、有明海・八代海で傾向が異なることが確認されました。
これらはあくまでも年間の傾向であり、生物の影響などを把握するためには季節変動が重要ですので、この辺りは引き続き検討させていただきます。
続きまして、以降は個別の結果でございますので、少し飛ばしまして、109ページに移らせていただきます。109ページにつきましては、窒素の形態別の結果を表示しており、こちらも新しく追加した項目です。こちらもデータはほかの項目に比べると少ないため、引き続き、データの蓄積が重要と考えております。
以上の内容をまとめとして項目別に記載しております。資料5-2につきましては、環境基準達成状況について表2でまとめております。
また、それぞれの項目の特徴について記載しておりますが、先ほど御説明したDINやクロロフィルとの関連性についても追加しております。
また、気候変動の観点から、水温やpHの解析結果を示しており、気候変動の影響が示唆されるといった点、ただし、海域間での違いなどにも留意して解析を進めていく必要がある点を記載しております。
さらに、栄養塩や気候変動の影響など、基礎的な情報が得られた一方で、まだ生態系影響評価する上では、引き続きモニタリングや要因解明のための解析が必要ではないかというところで、本文のまとめに記載しております。
続きまして、底質の説明でございます。底質につきましては、133ページに変更がございます。これまで底質の変化を確認して参りましたが、河川の水質にも着目することのご意見も踏まえまして、2023年における大雨の影響として、Akm-2に着目した解析した結果を掲載しております。
2016年と2023年に着目して、底質のCOD及び水質のCODの変化についてまとめております。
まとめですが、先ほど御説明した底質の長期変動については各海域で異なるものの、大雨による出水の影響など、その影響が継続しているということがAkm-2の解析で分かったところでございますので、水質の変化だけではなく、複数の要素を踏まえた総合的な調査・解析が重要であるところを新しく追加しております。
そういった中で本文につきましても、先ほど御説明しました大雨前後の底質のCODの変化ということで、Akm-2の解析の結果、図も含めて記載しているところでございます。文章ついては、先ほど御説明したまとめの中から要約して説明しております。
続きまして、貧酸素水塊について、144ページで地点の解析結果を示しておりますが、3.4の水質と同様に、一番下の地点については解析を追加しております。
結果については、大きく中間取りまとめの結果と変わっておりません。
次に151ページですが、これまでは出水前後の貧酸素水塊の結果はございませんでしたが、大規模出水の後の貧酸素水塊の拡大状況といったものが新しく知見として得られたため追加しております。
以降の部分については、中間取りまとめでの知見をまとめているところでございまして、大きな変化はございません。まとめについては、佐賀県の4地点、これらの部分については経年的に減少している傾向が見られ、中間取りまとめ以降からも継続しております。酸素消費に関する知見や気候変動、先ほど御説明した大規模出水によって新しく貧酸素水塊が拡大した知見などを今回まとめで記載しております。
温暖化実験なども中間取りまとめに記載されて内容も重要な知見であり、引き続き掲載しております。
そのようなまとめを踏まえて、本文の貧酸素水塊については、5つの箇条書きにて資料集のまとめの内容を要約化して記載しております。図については、新しく得られた知見として図2の底層溶存酸素の分布を掲載しております。
続きまして、藻場・干潟の結果です。こちらは令和7年度、調査中でございましたので、こちらは次回以降の小委で改めて御報告させていただきます。
新しく追加した内容としては、165ページのラムサール条約湿地の知見を追加してございます。こちらは干潟生態系の知見を追加してはどうかといった御意見を踏まえてラムサール条約湿地に着目し、東よか干潟、肥前鹿島干潟、荒尾干潟の結果をそれぞれまとめております。東よか干潟と肥前鹿島干潟については、外来種が継続して確認されており、引き続き留意する必要があるかと考えております。
167ページは、第15回水産小委で御報告がありましたカキ生産量の推移等の記載を追加しております。
カキ礁については、水質浄化機能など様々な効果がありますが、面積等が減少することでこれらの機能が低下します。そのため、これらを回復させるということは再生方策の一つとして重要な要因として考えております。
まとめでは、藻場・干潟の面積については今後更新予定ですが、ラムサール条約湿地の内容やカキ礁の追加を行っております。
本文にも、まとめの内容の中心に記載しており、黄色のハイライトについては今後更新予定です。
続きまして、赤潮の状況です。こちらは176ページですが、右側の二つの写真については新しく種類別の特徴として追加しております。
また、特徴としまして発生機構の図についても更新を図っており、本文についてもそれぞれ更新を行っております。
詳細は割愛させていただきますが、191ページ、ノリの色落ち被害として挙げられているEucampia zodiacusにつきましては、2月以降という6行目の部分について今回新しく追加しております。また、文献を基に192ページの図も新しく追加しております。
195ページにつきましては、Skeletonema spp.の知見についても、195ページの20行目以降を新たに追加しております。198ページのChaetoceros spp.については、項目自体を新しく追加しております。
また、203ページ、八代海を中心とした夏の赤潮についても、2023年と2024年に深刻な漁業被害が発生しており、これまでの発生機構とどう違うかについて拡充して掲載しております。
そういった内容を加えまして、まとめにつきましては、有明海・八代海の年間発生件数の内容を記載しているほか、汚濁負荷量と赤潮発生件数の比較や、原因種別ごとの赤潮発生頻度の内容、また、ノリの色落ち被害をもたらす原因種の発生機構の内容について記載しております。
本文にもこれらのまとめの内容を踏まえて記載しております。それぞれの特徴、発生機構についても資料編には細かく記載がございますが、本文では今後も発生機構の解明が進められているという点について本文は記載しております。
最後の項目の生物につきましては、動物プランクトン、動植物プランクトンについて、新しく追加しております。こちらは現時点で1か年の結果ですが、他の調査結果と比較できないかについて、引き続き検討させていただければと思います。
また、有用二枚貝につきましては、浮遊幼生の調査結果など調査データを更新しております。詳細は割愛させていただきますが、例えば、有明海におけるタイラギ浮遊幼生の出現特性について、243ページの34行目については、2020年から2024年までの結果として、有明海の広域で高い出現が見られているといった点を記載しております。また、246ページの浮遊幼生の県別の経時的出現状況の結果について、39行目以降に湾央部の熊本県海域では、2021年度や2023年度などのように2012年以前の豊漁期に見られた浮遊幼生の出現期間が長期間に及ぶ現象が見られるといった点を追加しております。
アサリの浮遊幼生についてもデータの更新を行っており、250ページ18行目にてアサリの資源量が回復傾向にある点を追加しております。
最後に魚類については、漁業経営体数の推移について追加しております。それ以外にも、環境研究総合推進費で得られた知見について新たに記載する予定でして、次回以降の小委で報告させていただきます。
まとめについて数ページにわたっておりますが、まず、1点目ベントスについては全体としては3海域とも大きな変動は確認されていないところをまとめております。動植物プランクトンについては、単年度の結果ではありますが特徴をそれぞれまとめております。
二枚貝については、それぞれデータを更新しておりますが、新しい知見等も踏まえた科学的評価が重要である点を最後に記載しております。
魚類の部分については、まだ更新が必要な部分はございますが、有明海・八代海ごとに一定の減少は見られておりますので、これらのデータの蓄積が重要であるとまとめております。
養殖業については、漁業経営体数が減少している中でも生産量は横ばいといった特徴についてもまとめております。
以上、駆け足でございましたが、本文と資料集を併せて御説明させていただきました。
今回御説明した内容につきましては、あくまでも素案でございます。黄色のハイライトで記載した箇所や本日新たに情報収集で得られた知見も踏まえて更新し、改めて小委員会で御報告させていただければと思います。
私からは以上です。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 ただいま御説明がありました内容、資料5-1と5-2となりますが、御意見、御質問等を承りたいと思います。
 まず、速水委員、その次、山室委員、そして東委員の順番で最初はお願いします。
 では、速水委員、どうぞ。
○速水委員 速水ですが、取りまとめ、どうもありがとうございました。
 全体についてコメントが一つと、それから質問のもう一つあるのですが、まず、本編について、かなり絞った内容にしたのですが、その絞った狙いがよく分からないのです。恐らく、この報告書を読む人は、有明海・八代海の1980年代ぐらいから現在までの間の長期的な環境の悪化、そして、それの原因が何かということについて興味があるはずだと思うのですが、これだけを読んで、その実態が分かるのかということです。
 例えば、最も本質的な漁獲量の減少の図が本編からなくなってしまって、その中でも特に有明海の場合、二枚貝が多くて、二枚貝が大きく減ってしまったというのが問題だという、それがこの委員会全体の大きい問題認識だと思うのですが、それが分かるような図がそもそもなくなってしまった。その一方でもって、突発的な豪雨の影響のようなものの図が本編のところに大きく図として入ってきた。その辺り、どのような狙いで本編の図を選んでいるのか、本編をまとめているのかというところがよく分からない。それが質問です。
 それから、もう一つ、コメントは、どのタイミングがいいのか分からないですが、こうやって説明していただくのは非常に結構なのですが、時間内でコメントを出すのは難しいので、どこかで、一回、委員の皆さんに印刷したものを送って、それについてコメントをもらって、それを反映させるというようなプロセスを一回入れていただけたらなと思いました。この二つです。
○小原主査 ありがとうございます。環境省の小原です。
 まず、1点目の本文の内容ですが、確かに非常に軽量化している点について、読者によっては、得たい情報が本文から得られないといった御指摘について確かに一理あると存じます。また、中間取りまとめについても、同じ項目で本文と資料集それぞれに記載が分かれていて、本文と資料集を行ったり来たり確認することは見づらいといったことも踏まえ、今回は、資料集で網羅的にまとめつつ、本文で要点が理解できるよう作成いたしました。IPCCのレポートなどでも、政策提言書向けと本編が別になっており、狙いを絞って政策提言書向けが作られております。
 ただし、得たい情報が本文から得られないといったことに対処するために、本文に対応する部分については、3.1.1など資料集の具体的な該当箇所を本文に記載しており、将来的にはリンクを貼り付けて、資料集から必要な情報がすぐに得られるよう改善を図っていきたいと考えておりますが、今回、速水委員の御指摘を踏まえて、本文の内容については引き続き検討して参ります。
○速水委員 よろしくお願いします。
例えば、IPCCのレポートなどでも、政策決定者向けと、それから本編と別になっているのですが、かなり狙いを絞って政策決定者向けのものを作っているのです。だから単にまとめるというだけではなく、どのようにことを強調してまとめるのかというところを、もう少し整理していただけたらと思いました。
○西川室長 速水委員、ありがとうございます。
 先ほど御指摘がありました、どのような狙いで図表を選んでいるのかという点につきましても、漁獲量の図など追加で載せるべきものがないか改めて検討したいと思っております。
 当初の意図としましては、中間取りまとめ以降に新たに判明した事実を中心に載せるという考えですが、中間取りまとめ以前からあったものであっても、全体のメッセージとして重要なものについては載せるのがしかるべきかと思いますので、その点についても御意見を踏まえて考えたいと思います。
 おっしゃっていただいたとおり、IPCCのSPMを我々としても意識してございまして、前回の報告書はかなり大部でしたので、一読して何が言いたいのか分からないといった御意見もいただいておりました。限られた時間の中で要点を知りたい方々も含めて、主要なメッセージについては本編で記載をし、詳細を確認したい方は資料編を参照いただくということで使い分けをしていければと思っております。
○速水委員 分かりました。検討をよろしくお願いします。
 それと、あと、資料の今後の検討についてはいかがですか。
○小原主査 2点目の御質問の件ですが、今回、限られた時間での御意見といったところで、後ほど矢野小委員長からお知らせいただくものと存じますが、今回の資料5-1及び資料5-2については、委員会開催後、10日ほどを目途に改めて御意見をいただく機会を設けさせていただければと思っております。
○速水委員 それは小委としての第3章へのコメントの最後の機会ですかね。またあるのですかね。
○小原主査 第3章につきましては、今後の小委でも修正版の御報告を予定しております。そこで適宜御意見をいただきながら、リバイスを重ねたいと考えております。つまり今回の第17回の小委で第3章の議論が終わるということではないということでございます。
○速水委員 分かりました。PDFだと非常に長いので、特に資料編のチェックのときは紙で送ってもらったほうが多分いいと思います。
○小原主査 ありがとうございます。
 今回の小委員会の資料についても、事前に紙資料の配付希望の場合には発送いたしておりましたので、もしご希望でございましたら、その旨、お伝えいただければ紙資料も適宜送付させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○速水委員 分かりました。
○矢野委員長 では、よろしいですかね。ありがとうございます。
 では、2番目の山室委員、お願いします。
○山室委員 山室です。
 2点ありまして、一つは資料5-1の25ページの付表3.2.1-2に関してです。これは特に100mm以上の豪雨的なものについて、1976年から2023年でどのような変化しているかというのを検討されているのですが、豪雨というのは後のところで濁り、底質、貧酸素とも関連しているという御説明だったので、豪雨のトレンドというのは非常に重要だと思うのです。
 その上でですが、水質については、以前に私が、それは回帰分析ではなくMann-Kendallで解析すべきと指摘し、全てMann-Kendall検定で解析されました。しかし付図3.2.1-3の図からは一次近似による解析に見えます。その結果、付表3.2.1-2では春のところだけ有意に増加傾向として緑色になっています。しかし夏のところも八代海の下のほうの1.52や1.15など、割と大きい数値が出ているのに、有意とは判断されていません。一体どのように解析をしたらこのような結果になるのかが、ぱっと見には分かりにくいです。何度か出ているように、近年は、ここで夏とされる6~8月に、豪雨傾向があると思います。その夏には有意差が出ていなくて、春だけ有意差が出ているというのは、解析方法が適切ではなかった可能性も考えられます。後のほうの濁りや底質や、貧酸素でも7月など夏の事例が結構出ていたので、この解析はもう一度検討したほうがいいのではないかと思いました。
 もう1点が、177ページの付図3.8.2-2です。この図は赤潮プランクトンの構成種の経緯変化を示しています。先ほど、私がクロロフィルaだけではなく、渦鞭毛藻なのか珪藻なのかぐらいは分かりませんかとお尋ねしたら、分けていないとの回答でしたが、赤潮に限っては、このようにきちんと分けてあるわけです。有明海の赤潮に限ってみれば、初期の頃は珪藻が多いように見えます。赤潮はノリの色落ちと関連するいうことで、いろいろ調査をされていると思うのですが、209ページの漁業被害のところを見ると、赤潮原因種が珪藻の場合、被害額は全て「不明」になっています。ということは特にノリの色落ちも深刻ではなかったのかと思われます。他の藻類でも魚に被害があって被害額も計上されていますが、ノリの色落ちについては「不明」とされています。赤潮はクロロフィルaの元であり、基礎生産であるわけですから、赤潮や基礎生産を分けてしまう観点以外にも、そういう網羅的なというか、総合的な観点からの検討というのも、これだけ資料があるのだから、やってはどうかと思いました。その2点です。
○小原主査 環境省の小原です。
 御指摘、ありがとうございました。
 まず、1点目の御指摘の件について、先ほどの御説明でもお話ししましたとおり、気象の解析につきましては、既に気象庁が解析を行っており、気象庁の解析と有明海・八代海の流域でどのように傾向が異なっているかといった点から、解析の方法については気象庁の解析に合わせております。Mann-Kendall検定ではなく、回帰分析の結果になっている部分はそのようなところでございます。
 夏の上昇傾向に関する御指摘について、事務局のほうでも確認したところですが、もともと夏場は毎年大雨が降りやすく、傾向としては確認できませんでした。
 二つ目の御指摘ですが、被害としては出ているところではございますが、金額として出ていないということがございます。総合的な分析が必要ではないかといった御指摘でございましたが、この辺りは、第3章につきましては、有明海・八代海等の状況を把握するといった点から情報収集を行っており、御指摘を踏まえながら、第4章以降で検討したいと思います。
○山室委員 ありがとうございます。
 今、気象庁がとおっしゃったのですが、確かに24ページに気象庁がやったとの図があり、これが赤い線を引いていますよね。これのことを言っていらっしゃるのですね。だから有明海データについても、気象庁の解析と同じ方法を使ったということですね。
○小原主査 仰る通りです。
○山室委員 前にも申しましたように、水質もかつては一次近似していたので、海域の小委員会で、それはまずいのではないかと申し上げました。今回も、気象庁でやっているからということが、この委員会で傾向を確認する手段として適切であることになるのか、検討していただきたいと思います。というのは先ほども指摘したように一次近似による解析で、春については有意差があり、夏については無いとの計算結果になってしまっています。こういった解析で本当に傾向がある・ないと判断していいのですかということを、お尋ねしているつもりなのですが、いかがでしょうか。
○小原主査 山室委員の御指摘は、気象の解析おいてMann-Kendall検定を実施した方がよいというご趣旨でしょうか。
○山室委員 Mann-Kendallで解析すべきと言っているのではなく、本当に一次近似による解析でよいのか、もう一度検討してはどうかという趣旨です。
○小原主査 承知しました。気象庁の解析も踏まえて解析を行っておりますが、御指摘を踏まえて引き続き検討いたします。
○山室委員 春で出ていて、夏に出ていないというのは、先ほどの御説明では分かりづらいところがありますので、よろしくお願いいたします。
○矢野委員長 では、よろしいですか。
 今の議論なのですが、ここの表でまとめられている日降水量100mmというのが適しているのかというのは、もしかしたらあるかもしれないので、豪雨傾向を表すものとして、それが適正かどうかも検討の余地があるようには思いました。
 それでは、次が東委員、お願いいたします。
○東委員 私からは、まず、3章の全体構成・項目について確認です。私が説明を聞きそびれただけかもしれませんが、参考資料の1-4と1-5の方では、気候変動と社会経済情勢が新規項目で入るという表になっておりますが、本日の御説明では、平成28年度の中間取りまとめの章立てとほとんど変わらないような章立てとなっております。これらは今後追加されるのか、あるいは、もうどこかに溶け込んでしまっているのかを教えてください。というのも、社会経済情勢に近いものが3.1.5や3.1.6に入っているので、何となく溶け込んでいるようにも見えましたので確認させてください。
2点目ですが、項目名について、過去の報告書と比較できるようにということで、ほぼ同じものを使う気持ちは分かるのですが、中には少々変えたほうがよいのではないかと思うものがあります。例えば3.2の河川からの土砂流入ですが、3.2.1や3.2.3では、土砂だけではない河川流量の解析も入っているので、河川流量と土砂流入量などに、大きく構成を変えない範囲でかつ適切な方向にマイナーチェンジすることをご検討いただきたいと存じます。
以上2点、お願いします。
○小原主査 ありがとうございます。環境省の小原です。
 1点目の社会経済情勢、気候変動については、御指摘のとおり、溶け込ませた形での掲載をしております。理由としましては、潮流・潮汐の部分などで既に気温や風速など気候に関する部分が潮流・潮汐の変化にも関わってくるというところで入っております。そういったことを踏まえまして、新しく項目立てではなく溶け込ませる形での記載をしております。
 社会経済情勢についても、人口や土地利用の変化といった意味では、汚濁負荷にも関係がございますので、汚濁負荷の3.1のところで記載させていただきました。
 2点の項目についても、御指摘を踏まえて、今回追加した内容等も含めて適正化を図って参りたいと思います。ありがとうございます。
○東委員 すみません。ありがとうございます。
 まず、1点目の方ですが、そうなると例えば3.6の場合は3.6.5に気候変動が見出しの中で明記されているのですが、他のところはそうなっておりません。実際にはただ単にトレンドを書いているだけというところもありますが、最初の意図としては新たに見出しを作ってでも気候変動について取りまとめようとする方針だったと記憶しております。項目ごとに溶け込ませる方針でも構いませんが、節や句の見出しで気候変動がきちんと出せるように、3.6だけではなく3.1から3.9の全てのところで一つずつ出せるようにご検討いただければと思います。
 以上です。
○小原主査 ありがとうございます。今の御指摘を踏まえて検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 さっきどなたか、もう一人、手を挙げられていたようだったですけど、下げられたということでよろしかったですかね。
 ほか、いかがでしょうか。もしないようでしたら、オブザーバーの委員の方もお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 チャットのほうに一つ、清本委員が書かれていましたが、大丈夫ですかね。ご発言いただけますか。
○清本委員 はい。時間がないかと思ったので、チャットのほうに書きました。基本的な事項かと思ったので、親委員会を待たずにこちらで質問、コメントしたほうがいいかと思って、チャットで送らせていただきました。検討いただいて、もし必要であれば、事後の意見聴取なりも含めてもんでいただければと思います。よろしくお願いします。
○矢野委員長 ありがとうございました。
 結構細かい御指摘をされているようなので、事務局のほうで対応をよろしくお願いしたいと思います。
 ほかはいかがでしょうか。ございませんか。
 それでは、この委員会での議論はここまでとさせていただきますが、先ほど、環境省のほうから御説明がありましたとおり、報告書の原案について、膨大なページ数にもなっておりますので、読んでいただいて、後でお気づきのことがあった場合は、本日から約10日間。お盆期間中なので、非常に恐縮ですが、8月19日ぐらいを目途に事務局のほうに御意見、コメント等がございましたら、お寄せいただきたいということです。
 先ほど、速水委員のほうからもあったとおり、本文のほうに何を載せるべきかというような意見もぜひいただけたらと思いますので、あまりたくさん出てくると、まとめるのが大変になるかもしれないですが、そういう観点でも御意見をいただければ、ありがたいなと感じました。
 それでは、全体を通じて委員から御意見等はありますでしょうか。特によろしいですかね。
 それでは、本日の合同小委員会で予定されていた議事については以上で全てとなります。
 議事進行への御協力に御礼申し上げます。
 進行を事務局にお返しします。
○清水海域環境対策推進官 矢野委員長、ありがとうございました。
 本日の議事録ですが、後日、事務局より確認依頼を行いますので、お願いいたします。内容確認後、議事録は環境省ホームページで公開させていただきます。
 それでは、以上をもちまして第17回水産資源再生方策検討作業小委員会及び第17回海域環境再生方策検討作業小委員会の合同小委員会を閉会とさせていただきます。本日は、御参集いただきまして誠にありがとうございました。
 

                                           午後4時35分 閉会