第15回有明海・八代海等総合調査評価委員会海域環境再生方策検討作業小委員会 議事録

*水産資源再生方策検討作業小委員会(第15回)及び海域環境再生方策検討作業小委員会(第15回)の合同開催

開催日

令和6年10月1日(火)

場所

対面方式及びWEB会議方式を併用して開催

出席者

 有明海・八代海等総合調査評価委員会委員長:古米弘明委員長
(海域環境再生方策検討作業小委員会)
 小委員会委員長 : 矢野 真一郎委員長
 委員 : 上久保祐志委員、鈴木敏之委員、山室真澄委員
 臨時委員:小林政広委員
 専門委員 : 青木美鈴委員、金谷弦委員、清水園子委員、速水祐一委員、東博紀委員、弓削こずえ委員、横山勝英委員、脇田和美委員
(水産資源再生方策検討作業小委員会)
 小委員会委員長 : 鈴木敏之委員長
 委員 :内藤佳奈子委員、藤井直幹委員、矢野 真一郎委員、山西博幸委員
 専門委員 : 青木美鈴委員、尾田成幸委員、岸田光代委員、桑原浩一委員、松山幸彦委員、森野晃司委員、山口啓子委員、山本智子委員
(オブザーバー)
 清本容子委員、大嶋雄治委員、林美鶴委員
(関係省庁)
 農林水産省農村振興局整備部農地資源課 佐田課長補佐、藤吉係長 
 林野庁森林整備部治山課 藤田課長補佐、矢野係長
 水産庁増殖推進部漁場資源課 津山課長補佐、贄田課長補佐、石橋係長、熱海係長、熊本係員、野田係員
 水産庁増殖推進部研究指導課 中村課長補佐、天野係員
 水産庁漁港漁場整備部計画・海業政策課 松﨑課長補佐、中村計画官、藤濱係長、山内係員
 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産技術研究所環境・応用部門沿岸生態システム部 徳永主任研究員
 国土交通省水管理・国土保全局河川環境課 阿河課長補佐、木村係長
 国土交通省港湾局海洋・環境課 三谷課長補佐
 国土交通省九州地方整備局河川部 古川建設専門官、德嶋係長
 環境省水・大気環境局 環境管理課 亀井課長補佐、新津係員
(事務局)
 環境省水・大気環境局海洋環境課長、海洋環境課海域環境管理室海域環境対策推進官、海洋環境課海域環境管理室室長補佐、海洋環境課海域環境管理室主査

議事録

                                           午後1時30分 開会

○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第15回水産資源再生方策検討作業小委員会及び第15回海域環境再生方策検討作業小委員会を合同で開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
 本日の小委員会は会場とウェブ会議、両方での開催とさせていただいております。ウェブ会議で御参加いただいております委員の皆様におかれましては、会議中、音声が聞き取りにくいなど不具合がございましたら、事務局までお電話、または、ウェブ会議システムのチャット機能にてお知らせいただければと思います。
 また、議事中、マイク機能は会場及び発言者以外はミュートに設定させていただいております。
 なお、ウェブ会議で御発言の際は、お名前横にある挙手アイコンをクリックしていただければと思います。委員長からの御指名の後、マイクのミュートを解除していただき、御発言いただきますようお願いします。御発言後は、挙手アイコンを忘れずにクリックしてオフにしていただければと思います。
 また、御発言の際には、まず、お名前をおっしゃっていただいた後、少しゆっくり大きめで御発言いただけますと幸いです。
 会場で御参加いただいている皆様におかれましては、マイク真ん中のオン・オフのスイッチにお手を触れぬようお願いいたします。
 本委員会は公開の会議となっておりまして、環境省海洋環境課公式動画チャンネルにてライブ配信を行っております。
 次に、出席についてでございます。本日の委員の出席状況についてですが、中島委員、桐専門委員、仲専門委員、古川専門委員、外城専門委員、山口敦子専門委員より御欠席の連絡をいただいております。本日は、委員29名中23名が御出席いただいておりますので、有明海・八代海等総合調査評価委員会第6条に基づく会議の定足数を満たしていることをここに御報告いたします。
 また、本日は評価委員会の古米委員長に御参加をいただいております。
 加えまして、オブザーバーとして、評価委員会から大嶋委員、清本委員、林委員に御参加いただいております。オブザーバー参加の委員におかれましては、御質問や御意見がある場合には、発言を求められてから挙手をお願いいただければと思います。
 なお、本日は関係省庁の方にも御出席をいただいておりますので、御紹介をいたします。
 農林水産省農村振興局農地資源課の佐田課長補佐でございます。
○佐田農地資源課課長補佐 お願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 次に、水産庁漁場資源課の贄田課長補佐でございます。
○贄田漁場資源課課長補佐 贄田と申します。よろしくお願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 そのほか、林野庁、水産庁及び水産技術研究所から、また、国土交通省の水管理・国土保全局、港湾局、九州地方整備局から各担当にオンラインにて御出席をいただいております。
 また、事務局の出席も御紹介をさせていただきます。
 海洋環境課長の水谷でございます。
○水谷海洋環境課長 よろしくお願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 当方が工藤と申します。
 室長補佐の川田、主査の小原でございます。
 続きまして、資料についてです。
 事前に電子データ等で御案内しておりますが、議事次第に記載の一覧のとおりになっております。もし資料に不足や不備がございましたら、事務局までお知らせいただければと思います。
 それでは、これより議題に入りたいと思います。
 以降の進行につきまして、矢野委員長、よろしくお願いいたします。
○矢野委員長 はい、了解いたしました。
 本日の進行を担当いたします、矢野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日、ちょっと内容がかなり盛りだくさんになっていますので、限られた時間の中で円滑な議事の進行に御協力をよろしくお願いいたします。
 では、早速ですが議事を始めさせていただきます。
 本日の議題は、貧酸素水塊と気候変動等に関わる情報収集等となります。
 それでは、議題1のうち、資料2-1の「有明海カキ礁の分布、生息密度、浄化能力、生物多様性の評価」について、松山委員より御説明をお願いいたします。
○松山専門委員 了解いたしました。水産技術研究所の松山です。
 本日の小委員会は貧酸素に係る検討が中心になりますが、この貧酸素の問題というのは主要4項目で見ますと、有用二枚貝と魚類に関わってきます。この貧酸素を抑制する決定的な対策というのは難しいのが実態ですが、28年度委員会報告のケーススタディーにおきましては、カキ礁の造成によって貧酸素の容積を減じることができると提言されております。今回は、貧酸素の検討の前に、ここ数十年ほど実施されてきたカキ礁に関する調査研究について、委員会に御報告したいと思います。
 本資料は、9月に、勉強会で関係県とともに議論した内容の一部になります。事務局の松山が代表して報告いたします。
 次のスライド、これは小委の収集すべき資料の一覧ですが、本日の説明は、この黒のアンダーラインに関わる部分になります。
 次をお願いします。この写真は、佐賀県鹿島市地先で撮影されたカキ礁の写真でございます。ちょうど潮が干出し始めて、カキ礁が現れ始めたというところの写真になります。
 次をお願いします。御覧のとおりカキが密生しているのでカキ礁と呼ばれております。英語でもOyster Reefと呼ばれております。
 次をお願いします。通常の海岸線、特に左側にあるように石の海岸線では、カキは岩の上に平面的に着生しております。一方で、泥干潟の上のカキ礁はカキの上にカキが追い付きするために、2段3段と立体的に成長する特性があります。
 次をお願いします。これは佐賀県有明海におけるカキの生産量の推移というのを、大正元年からのデータを表示しておるところです。佐賀県のカキ礁の大部分というのは、主にスミノエガキの増殖床として、自然と調和しながら人為的に育成・形成されてきた歴史があるなど、「里海」の概念に合致する取組でありました。かつては2万トンを超える生産量がありましたが、全国的に垂下養殖法によるカキ生産、これが昭和40年代から普及しまして、どんどんとノリ養殖場へ転換されてきて、生産量の低下、カキ礁も放置されるようになってまいりました。
 次をお願いします。現在の佐賀県海域の区画漁業権図になります。黒線の小さい枠がたくさんありますが、これはノリの漁場でして、秋冬に利用されています。左側のほうの赤線で囲んだ区域というものがサルボウの漁場と、右上のほうにありますオレンジのところがアサリの漁場。沿岸に近い肌色のところはアゲマキの漁場というように利用されています。カキ礁における漁業というのは、一番左にある紫の区画でして、僅かな区画が残っているという状況になります。
 次をお願いします。有明海におけるカキ礁周辺でのカキの地撒き養殖の様子の写真です。左上ですが、干潟の上に、竹製の採苗器を組みまして、ここに天然のカキが自然と着生します。付着したカキを干潟の上に播種しまして、1年余り育成すると収穫サイズのカキになるということで、この採苗に使っていたカキ床、これが今、カキ礁の大部分を占めているということになります。
 次をお願いします。有明海のカキ礁は、後ほど述べますように3種類のカキから構成されています。この中で写真にあるスミノエガキ、これは大型化する種類でして、過去に養殖対象種として重要種でした。現在は有明海のみ生息していて、生息海域も狭いために絶滅危惧寸前種に指定されています。
 次をお願いします。地元の漁業者によりますと、2000年前後からカキ礁にナルトビエイが出現するようになり、カキを食害するようになったそうです。この写真の右上のところ、カキ礁ですが、これ白くなっていますが、これ全て粉々になったカキの殻が堆積した様子になります。食害の初期は小型のカキが中心だったのですが、徐々に大型のスミノエガキまで食害されるようになり、写真にもあるようにカキ養殖場は壊滅的な被害を受け、収穫が全く行われなくなっているカキ礁も増えていっておりました。これは2007年の写真になります。
 次、もともと少なくなっていたカキ礁が、このままエイに食害されて消えてしまうのではないかという危機感がありましたので、漁業者は、こうしたカキ礁の上に、エイの侵入防止のためのパイプ棒を立てて食害対策を行いました。こういうところは食害されずに残っているという状況でした。
 次をお願いします。左のほう、一般的な干潟もたくさんの生物が生息しているのですが、カキ礁の場合は干潟の上に立体的に成長しますので、同じ面積の干潟でも表面積は50倍もあるという試算があります。一見コンパクトに見えて、実はかなりの、ただならぬ広さを持つのがカキ礁ということも言えます。この凹凸の多い立体構造が索餌場所にも隠れ家にもなりますので、多くの生き物に住みかを提供しているということが言えます。
 次をお願いします。これから述べます結果は、ここに示された1から5までの予算を用いて実施されたもので、カキ礁について、本格的な科学的調査が行われました。本調査には、カキ礁を長年管理されてきた熱意のある地元の漁業者の全面的な協力により行われた調査でございます。このことを報告しまして、この場で厚く御礼を申し上げます。
 次をお願いします。平成28年委員会報告には、二つの再生目標が示されています。
 下のほうの2)の二枚貝等の生息環境の保全・回復と持続的な水産資源の確保につきましては、農林水産省、水産庁、沿岸県や漁業者団体を中心に各種の事業が実施されております。
 一方で、1)の上のほうですが、稀有な生態系、生物多様性、水質浄化機能の保全・回復につきましては、調査研究の進展がやや遅れている状況にあります。カキ礁は、平成28年委員会報告でも、数値モデルによる評価で貧酸素の軽減効果が認められていますので、令和8年度報告でも再生方策の取組について資料が収集されることになっております。
 次をお願いします。まず、過去と現在のカキ礁の分布比較を行います。1977年に佐賀県が実施した調査結果があります。当時、1,085haというカキ礁面積の数字が出ておりまして、これは佐賀県内の全干潟面積の11%を占める数字でありました。
 次をお願いします。1977年の調査結果、これは報告書に航空写真からカキ礁をトレースした図が落とし込まれております。
 次をお願いします。面積の情報、1977年と2006年から2007年にかけて行われた調査を比較しまして、面積の変化を見ました。一方で、面積だけでは生物量が分かりませんので、カキ礁の生物の広域分布調査も行っています。これは2008年に実施しました。また、同時に浄化能力を評価するための室内飼育試験も実施をしております。
 次をお願いします。これは1977年のカキ礁の航空写真、白黒の写真がこのようにありまして、次をお願いします。
 画像処理で、2値化して赤く強調したところがカキ礁になります。澪筋のところが少しずれていますが、面積の情報は正確に押さえられています。
 次をお願いします。それから、30年後の2007年の航空写真になります。
 これも次のスライドお願いします。2値化してカキ礁の位置をトレースしますと、ここの場所に関しまして、鹿島市の沖合ですが、30年前とほとんど変わっていないということが分かりました。
 次のスライドをお願いします。これが1977年の調査全体のカキ礁の分布です。先ほど示した鹿島市の沖合だけではなく、筑後川の河口、六角川河口にもカキ礁が分布しているというのが分かります。
 次をお願いします。この1977年と2006年から2007年を比較しますと、東側の筑後川の河口、あるいは六角川の河口のカキ礁がほとんどなくなっているということで、ここはノリ漁場へ転換する過程でほとんど消滅したということが分かりました。
 次をお願いします。カキ礁の面積の比較になります。1997年には546haあったものが、2006年、2007年の調査では、161haまで減少しており、およそ3分の1まで減少していることが分かりました。
 次をお願いします。左上が、先ほど提示しました面積情報ですが、右側が生物量をトンで示しております。生物量で見ますと4分の1になったということになりました。
 なお、類似文献で伊豫岡ら2008年、こちらのほうでは大体同じデータを使っているのですが、面積が937ヘクタールから416haへ変化したということで、我々の試算よりも2倍ほど高い数値、減少幅も半分に試算されています。数字が異なる理由としては、恐らくカキ礁の解像度の違いではないかと推定しております。
 次をお願いします。ここからは現地調査になります。これは枠取り調査です。
 次をお願いします。枠取り調査で見ますと、面積だと分からないのですが、同じカキ礁でも現存量はかなり異なっていまして、左側の個体数で見ますと、少ないところは数百、多いところは3,000個体/m近い、一桁違います。右側の重量で見ましても、少ないところは1Kgちょっとですが、多いところは18kg/mということで、同じカキ礁でも生息の密度がかなり違うというのが分かります。
 次をお願いします。次に、カキ礁の中に固定点を設けて詳細調査をしました。
 次をお願いします。これは構成種でありますが、時間がありませんので簡単に言いますと、基本的にはマガキが多いのですが、地盤高の高いところにはシカメの比率が高くなり、地盤高が低いところはスミノエガキが優占するという特徴がありまして、殻はどれも似ているので分かりにくいのですが、そういう特性でした。これは、ふだん漁業者が現地でおっしゃっていることと完全に合致してました。
 次をお願いします。これはカキ礁のカキのサイズ分布でありますが、この青で囲んだところ、小型の稚貝が現れ始めるのが9月以降ということで、産卵期が5月から7月と言われていますので、毎年この夏過ぎから新規の貝が加入してくるということが分かりました。
 次をお願いします。次は季節変動になります。基本的には、春から夏にかけて一旦減少して、その後、秋以降、増加するというパターンが見られております。年間を通して見ますと、生息密度としては2,000から4,000個体/mの範囲、重量としては20kg前後/mを維持しているという状況でした。
 次をお願いします。カキの浄化能力を推定するために、酸素消費速度と有機物のろ過速度のデータが必要になります。既往知見ではマガキで、この赤繫らの論文があるのですが、有明海のカキ礁は3種類のカキで構成されていますので、それぞれの種ごとに評価する必要がございます。
 次をお願いします。そこで、ろ水速度に与える水温と塩分の影響を、この3種のカキでそれぞれ試験を行いました。
 次をお願いします。実験の詳細はお手元の資料で御確認をいただきたいと思います。
 次のページをお願いします。ろ水速度は、餌となる植物プランクトンの密度の変化から間接的に求めました。
 次をお願いします。あと、現地の水温にある程度合わせて試験を行いました。
 次をお願いします。結果ですが、ろ水速度と水温との関係はこのようになっておりまして、やはり3種のカキごとに数字が異なるということで、既往知見であるマガキのデータを、スミノエガキ、シカメガキに当てはめるということはできないということが分かりました。
 次をお願いします。塩分も同様でして、3種のカキそれぞれで傾向が異なっていました。
 次をお願いします。以上の室内実験結果とカキ礁の生息海域で観測された環境データ、それとバイオマスから浄化能力の推定を行いました。ここは概算ですので、先ほどのカキの構成種ごとの影響は考慮せずに、マガキと仮定して計算をいたしました。現地の構成種のデータがあれば、細かく補正することは可能です。
 次をお願いします。現地の冠水時間ですね、海水に浸かっている時間を考慮して、次をお願いします。
 推定した結果ですが、カキの呼吸による炭素消費量は、大体5から14gC/m/day、それと同化量は20から127gC/m/dayとなりました。この差分がカキ自身による生産量になります。
 次をお願いします。カキ礁のもう一つの機能として期待されるのが多様性です。カキ礁で確認された巻貝も含む貝類の一覧になります。このうち、上の2種、準絶滅危惧種が2種類、カキ礁の中で確認されております。
 次をお願いします。これは定点Dだけの結果になりますが、カキ礁内部と外部のベントス層の調査結果を示します。これは湿重量ベースでの整理になります。上の図を見ていただくと、カキ礁の内部の青いところと、外部の薄い紫のところを比較していただくと分かるように、カキ礁の内部と外部で全く湿重量が異なっておりました。種類を見てみますと、二枚貝類が優占しており、具体的には、先ほど準絶滅危惧種としていたウネナシトマヤガイが、カキ礁の中に大量にいるということが分かりました。
 次をお願いします。カキ礁での魚類の出現調査も実施しております。漁業者の漁に同行して、漁獲物をいただいて、生物種の同定を行いました。
 次をお願いします。満潮時から干潮にかけて、30分ごとに漁獲物を調べたのですが、このように漁獲された業種が変化しています。カタクチイワシやトラフグ、エツ、ハゼクチ、コイチ、スズキなど有用種も多く、特にウナギは高値で取引されていますので、漁師さんが最も狙っている魚種になります。
 次をお願いします。カキ礁の生物群集の特徴をこのようにまとめました。先ほど申しましたように、生息密度が2,000から4,000個体/m2、バイオマスとしては2から35kg/m2、平均的に大体20kg/m2ぐらい。種の構成に影響する要因としては、地盤高であったり、あるいは澪筋であるかどうかという餌料環境、こういったものが影響している。それとマクロベントスの個体数・湿重量ともにカキ礁の内部でいずれも高いということで、生物多様性の保全機能があるのではないかということが推定されました。魚類の出現数も多く、漁業活動が成立しています。
 最後に、カキの炭素同化量としては20から127gC/m2/dayという数字が算出されました。
 この後の発表にも関連しますが、カキ礁は、現行の有明海で比較的再生の取組が容易な二枚貝の一種でありますし、有機物の流入負荷の多い河口域に生息していますので、漁業だけでなく、海域の物質循環、浄化機能の維持のために無視できない生物種になると評価できました。
 以上で発表を終わらせていただきます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 御意見等につきましては、後ほどまとめて伺いたいと思います。
 それでは、引き続きまして資料2-2の「カキ礁の造成による貧酸素水塊の軽減技術開発など」、資料2-3の「カキ礁造成の効果検証」について御発表いただきます。
 まず、資料2-2について、水産庁より御説明お願いいたします。 
○贄田漁場資源課課長補佐 水産庁漁場資源課の贄田と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料2-2に基づいて説明をさせていただきます。
 ここでは、カキ礁の造成による貧酸素水塊の軽減技術開発を平成30年度から令和4年度に実施していました。また、その二枚貝等による貧酸素水塊等の漁場への影響評価ということで、令和5年度以降の取組について御説明いたします。
 この事業ですが、第14回の水産資源再生方策検討作業小委員会でも御説明させていただきました、有明海のアサリ等を対象に、母貝や稚貝の育成、生息適地への移植など、生産性の向上につながる技術開発を行っている事業の一部として実施しています。
 1ページ目でございます。前回の小委員会の際にも御説明させていただいたのですが、これらの事業、過去には、主に公共事業を対象とした技術開発を行っておりましたが、現在は、漁業者の方々が、自ら実施可能な技術開発を行っていくという内容に推移しています。この事業でも漁業者の方々とともに技術を開発して、現場の状況に応じて、漁業者の方に技術を活用していただくことを目指しています。
 続いて、2ページでございます。先ほど、松山委員からも御説明がありましたように、水産資源再生方策検討作業小委員会で収集すべき項目として、このカキ礁造成による貧酸素軽減効果の検証があります。近年は、カキ礁の減少に伴って、赤潮や貧酸素水塊の発生が要因と考えられる二枚貝類の漁業被害などが報告されておりまして、貧酸素水塊の軽減に向けた効果的なカキ礁の造成技術を開発し、貧酸素水塊の軽減や漁場への影響評価を行うことを本事業の目的としております。
 続きまして、3ページ目でございます。平成30年度から令和4年度までの事業の内容と主な成果について御説明させていただきます。
 調査海域において、カキ礁の造成のために、様々な材料を用いて、着生材を設置して、カキの着生の状況などを調べてまいりました。その結果としまして、金網を用いた着生材を設置したところ、カキの良好な着生、カキの生物量の順調な増加を確認することができました。
 他方、2年、3年と設置していく中で、過去に設置したこの金属製の棚式の着生材が、金網の腐食や、カキの生物量が増加することなどによって、脱落してしまったりすることによってカキの生物量が減少したというような課題もございまして、耐久性にも優れて、低コストな着生材として、改良した金網、竹材を組み合わせた、金網ロール式の着生材を令和4年に設置したところ、カキの生物量が順調に増加したという成果が得られました。
 また、この漁業者との実証を通じて、作業手順の明確化により作業手引きを作成しまして、着生材を作成するための資材リスト、設置手順を記載した手順書も作成をしております。
 続いて、4ページ目でございます。令和5年度以降の取組、実施内容としまして、令和4年度までに成果として得られた金網ロール式の着生材については、引き続き着生量のモニタリングを続けるとともに、カキ殻混じりの泥場など、異なる底質条件におけるカキ礁造成技術を実証してまいります。また、今後、測量によるカキ礁造成の効果の評価、ドローンによるカキ礁の位置、形状の更新、生物量調査なども実施していく予定です。
 また、カキ礁造成による貧酸素水塊の軽減効果の検討につきましては、物質循環モデルにカキの生物量を反映させて、貧酸素水塊の軽減の効果を今後も観測していくことを予定しております。
 以上でございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 次に、資料2-3についてですが、本日は中島委員が御欠席のため、代理として、有明海・八代会勉強会からとして、松山委員より御説明をお願いいたします。
○松山専門委員 了解いたしました。再び水産技術研究所の松山でございます。
 今、矢野委員長からありましたように、本来であれば佐賀県から直接資料を説明するところではありますが、本日、あいにくほかの会議とのバッティングがありまして、どなたも出席できないということでしたので、環境省の事務局とも相談して、佐賀県に代わって、私から説明するということになりました。
 次をお願いします。
 佐賀県の有明海再生方策のうち、カキ礁の位置づけについて整理したスライドになります。基本的な目標は、海域環境の改善、二枚貝回復を図るということで実施をされていると伺っております。これは、総合調査評価委員会が示した再生目標にも概ね合致したものであると言えます。ポイントは、調査だけではなく、カキ礁再生の取組を、漁業者や民間団体まで拡大して、啓発活動までを含めているということであります。令和元年から5年度までの取組を整理しています。
 次をお願いします。分布調査をここに示した手法で実施されています。お手元の資料で御確認ください。
 次をお願いします。分布調査につきましては、2019年、2021年に佐賀県独自で実施しております。この結果によりますと、生きたカキが多いのは河口部です。そこから離れた場所は死貝が多いという特徴があります。また、西のほうでは泥の堆積が多いという特徴がございました。
 次をお願いします。カキ礁の分布面積でありますが、2019年は666haと算出され、それから2021年、2年後は702haと僅かに増えているということです。この増えた要因ですが、水産庁さんの多面的事業を活用して、県内4か所でカキ礁の造成事業を行っていることに伴って増えているのではないかと推定されております。
 次をお願いします。カキ礁造成手法の検討・試験です。現地の漁協やNPO法人へのヒアリングをまず行いまして、先ほど資料2-1にもありましたが、従来はカキの稚貝を着生させるために用いられていたメダケ(女竹)の入手が非常に困難であること、また、竹だと造成までにかなり時間がかかるということが、ヒアリングの結果、判明いたしました。そこで、代替資材の検討の結果、ナルトビエイよけの鉄線にカキが大量に付着していたという現象にヒントを得て、また、加えて鉄線だと資材費も安く現地で簡単に入手できるため、この鉄線を干潟に打ち込んではどうかということで取り組まれています。
 次をお願いします。実施場所は、この地図にありますが、概ね4か所になります。この塩田川河口のところは2か所、場所を少し変えて新有明、白石というように、全部で4か所になります。
 現地漁協と協議し、この4か所が選定されて、鉄線を干潟に打ち込んでおります。基本的には、10本を1組として束にして干潟に打ち込んでいますが、七浦という試験区のみ鉄線10本と6本の二つの試験条件区を振って設定されています。
 次をお願いします。もう一つです、はい。結果ですが、この試験結果は七浦の結果です。七浦のほうは地盤高が低く、塩分も高いために、フジツボやコケムシなど、ほかの生物の付着が多く、カキの付着は、0.4から0.5/組と低調な結果となっております。
 次をお願いします。今度は付着の多かった新有明です。ここではカキの付着が良好で、平均142個/組のカキが付着していました。その理由としては、塩分濃度が低く、地盤高が高く、2メートルほどになるのですが、こういう場所だと、カキ以外の生物の付着が少ないく、試験結果が良好でした。加えて、塩田川の河口域になりますので、干満による潮通しがよく、カキの幼生の飛来数も多いということが影響しているのではないかと考えております。いずれにしても、実施場所によりますが、資材としての鉄線の有効性が確認されたところです。
 次をお願いします。また、この写真が手元に、これは七浦の試験結果で、次をお願いします。太良ですね、それと次をお願いします。これは先ほどの新有明です。次をお願いします。これは、設置から大体8か月経過した白石での写真になります。鉄線全体がカキによって覆われていまして、根元付近の鉄線では殻高が50ミリ程度の非常に大型の個体も見られるという状況でした。
 次をお願いします。その後、1年以上経過した状況の数字でございます。4か所の実施場所を比較しますと、圧倒的に塩田川河口域である新有明と白石で数が多くなっていました。この差は、先ほど申しましたが、競合する付着生物の多寡で説明できます。それと、地盤高や河口の澪筋に近いかどうかで、この差が発生していたということが推定されました。
 次をお願いします。これは経時的な個体数の変化を示しているところであります。次をお願いします。死殻と生きた殻の割合を示しております。次をお願いします。地盤高とカキ類、付着生物との関係で、先ほども申しましたが、付着生物が少ないところほどカキが多く、カキ以外の付着生物が少ないところほど、カキの付着が良好だということが読み取れます。
 次をお願いします。全体を見ますと、1977年のカキ礁の分布が湾、澪筋、三つの河口域、早津江川、六角川、それと塩田川の河口域に、この赤い色で示したところがあります。2007年の調査のときは、この真ん中の東側の海域のカキ礁はかなり消滅しているという評価だったのですが、2019年の佐賀県の調査では、この薄い緑色になりますが、東側の海域も少しカキ礁が見え始めているというような結果になっております。
 次をお願いします。まとめになります。メダケに代わるカキ礁の造成資材として鉄線の有効性が確認をされました。それと、塩田川の河口域になります新有明と白石でカキの付着が多かった。3番目として、七浦と太良という、地盤高が少し低いところでは、フジツボやコケムシが多くてカキの付着が少なかったということです。4番目、今後のカキ礁の造成活動の課題として、施工場所や施工条件によって、カキの付着が大きく左右されることから、その付着生物ができるだけ少ない時期の選定。夏場に、かなり大量に付いてきますので、そういう時期を避けるとか、場所についても、カキ礁が形成されやすい、そういうポテンシャルを有した場所を選定する。具体的には、地盤高が高いところで潮通しがいいところ、そういったところを中心にやるほうが良いとまとめております。
 鉄線による造成手法は効果的なので、令和6年以降も当事業を継続し、試験箇所のモニタリング調査を行うとともに、新たな造成手法についても検討していくということになっております。
 以上です。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ここまでの御説明につきまして、御意見、御質問等を承りたいと思いますが、御質問等がありましたら挙手をよろしくお願いいたします、いかがでしょうか。
 山本委員、それから、その次が山口啓子委員の順番でお願いします。
 山本委員、どうぞお願いします。
○山本専門委員 ありがとうございます。
 水産庁のほうからと、松山さんのほうから、二つの事業の御説明をいただいたのですが、ともに目的とか、いろんな意味でかなり共通するところがあって、どちらも、例えば材質については、さびるとか、いろんな、その耐久性の問題と、今度はカキがつきやすいかどうかとか、そういうことの工夫もされているし、ただ、どうも構造物の形状がかなり違っていて、松山さんのは縦に立てる形で、水産庁で御説明いただいたのは、金網でこうなっていたりとか。で、これは、どこかで、こういう目的にはこっちのほうがいいのではないかとかいうすり合わせをしていかないと、その先へ行けないような気がしています。
 よくあることですが、それぞれの主体が、それぞれの事業を、同じ場所で、よく似た目的で独立して進められたまま、ずっと並行で最後まで行っちゃうという構造をよく見るのですが、これだけ目的が同じなのであれば、これは、どちらの構造がいいとか、どちらの材質がいいとかいうことよりも、例えば、船を間に入れたければ、こっちのほう、こっちの構造じゃなきゃ駄目とか、そういうのもあるかもしれないし、カキ以外のものを除去したければ、排除したければ、こっちのほうがいいとか、今あるデータからでも、ある程度整理ができるのであれば、そこまでして委員会に上げたほうがいいのではないかなと感じたのですが、いかがでしょうか。
○松山専門委員 佐賀県さんの取組のところは、恐らくNPO法人を絡めていますので、地域でも個々の漁業者だったり、そういう環境改善の取組を広げて行くようにやっていて、その一環として現地で簡単に手に入る資材ということで、鉄線が選ばれていると思います。水産庁さんのほうは、もう少し技術開発的な要素があってやっておられるというところです。確かに実施場所も中身も似ているので、ある程度の整理が必要とは思いますが、逆に二つの事業が連携してやることによって、取組が強化されるという面もありますので、もちろん先生がおっしゃるとおり、委員会に上げていくときはそれらを統合したような形の説明というのも必要な場合があるかもしれませんが、今回の整理においては、佐賀県さんと水産庁さんの間の整理ができていなかったということです。よろしいでしょうか。
○山本専門委員 ありがとうございます。そうです。双方のいいところというか、無理やり一緒にするというよりは、そこの違いも含めて説明できればいいと思います。ありがとうございます。
○矢野委員長 よろしかったですかね。どうもありがとうございます。
 それでは、次、山口啓子委員、お願いいたします。
○山口(啓)専門委員 今回、干潟の浄化機能というのを恐らく将来的に物質循環モデルでやっていくことになると思うのですが、その上でカキ礁の効果はすごく大きいだろうということは非常に、今回の御説明でもよく分かりました。
 確認ですが、今回この報告の中で、カキのろ過速度については検討がされていました。これは多分水中から有機物を除去する能力を評価している、そのための一部だと思うのですが、二枚貝の場合、ろ過した後、糞とか偽糞を出しますよね。そうすると、その糞とか偽糞は、底生の有機物負荷になって、それが酸素消費をするというのもあると思うので、そういった底生の負荷とか有機物堆積とかそういうものも今後評価されていくのかどうかということが一点。
 そういうことを含めると、本当は物質循環モデルに干潟の浄化機能、あるいはカキ礁が持つ生態系の機能みたいなものを放つときには、カキだけではなくてカキと一緒に、今回いっぱいいろんな生物が一緒に生息しているというお話もあったように、カキ礁の中にいる生物全体でどういう効果をもたらしているかという評価も多分必要になってくると思うんです。そういうカキだけの性質ではなくて、カキ礁そのものを評価するような物質の移動モデルとか移動の測定とか、そういうことは今後していかれる御予定があるのか、ぜひしていただきたいところですが、いかがでしょうか。
○松山専門委員 資料2-1のところの検討課題、今回お示しさせていただいた資料は、要約された資料にも拘らずかなり膨大な資料になっていますが、実際の報告書ベースで見ますと、偽糞までは検討していませんが、糞の酸素消費速度も一応計算に入れて全体の評価がされていることが示されておりました。
 それと、課題としては今先生がおっしゃったように、カキ礁の中にはカキ以外の生物も大量にいまして、先ほどウネナシトマヤもありましたが、これも二枚貝ですので、カキ礁の中に同所的に生息するカキ以外の生物全体の浄化能力の評価というところまでは、この事業の中では行われていません。全体の評価は当然必要ということが課題として整理されていましたので、今後の取組になります。
 あと、水産庁さんの今日発表された事業の中では、カキ礁の配置であったりとか、物理的な形状がどのように水の流れ、あるいは物質循環に影響するのかというところも評価されているようですので、今おっしゃったようなカキ礁全体が、この海域の貧酸素軽減にどのように影響するのかというところは、継続されている事業のほうでもある程度評価をしていくような取組がされています。本日はそういう細かいところの説明について、時間的な制約によりなかったということになります。
○山口(啓)専門委員 御検討されているということですね。多分糞と偽糞の区別はなかなか難しいので、糞と偽糞は全部まとめて糞にしていると思いますので、そういう意味では今後物質循環モデルに持っていくには、いろいろとまた検討されるということで、了解いたしました。ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 では続きまして、藤井委員と山西委員から手が挙がっていますので、その順番で続けてお願いいたします。藤井委員、お願いいたします。
○藤井委員 藤井です。よろしくお願いいたします。
 この二枚貝が増殖するというところで、いろんな取組があるのですが、環境収容力といいますか、恐らくどこかに限界があると思うのですが、夏場に貝がへい死したりとか、餌料不足でへい死したりとかがあるのですが、そこら辺の環境収容力というのは計算されている、もしくはまだそこの上限まで達していないのかなと、そこのところを確認したくて発言しました。お願いします。
○松山専門委員 今、有明海の生産力、特に平成28年委員会報告や令和3年中間取りまとめの課題のところに、基礎生産量と水産資源との関係というのが整理されているということもありまして、一部海域ではあるのですが、有明海の奥部では基礎生産量の測定というのは今行われています。
 ただ、基礎生産量が上がったから貝の生産力というか環境収容力まで持っていこうと思って、もう少し詳細な評価をしていかなければいけないのですが、一応取組としては藤井委員がおっしゃったように、無尽蔵に生産を上げるということは、当然基礎生産量によって律速されてくるので、そういった調査は今始まったようなところではございます。
○藤井委員 ありがとうございます。
○矢野委員長 よろしいですか。ありがとうございます。
 それでは山西委員、お願いいたします。
○山西委員 佐賀大学、山西です。
 カキの浄化の件で、先ほど山口委員から少し御質問があったものに付け加えて細かな点で申し訳ないのですが、松山委員から御説明のあったスライドの34枚目のろ水速度の算出のところについてお聞きします。実験をどのようにされているか分からないのですが、一般的に、ろ水速度を計算するこの式の中に、恐らくブランクというか対照系のデータを差し引くのが通常かなと思います。
 要は例えばビーカーの中に、餌の初期濃度を計ってされているので、恐らく初めの一、二時間くらいで懸濁物自身は沈降するので、その分を差し引いてからろ水速度を算出する気がするのですが、提示された式を見る限りこれ引いていないですよね。
○松山専門委員 これは、通気でずっと懸濁させています。
○山西委員 常に(沈降させないように)混ぜているのですか。
○松山専門委員 そうです。
○山西委員 つまり、計測時の初期の濃度は沈降分を考慮しなくてもよい濃度ということですか。
○松山専門委員 みなしてやっています。
○山西委員 分かりました。では問題ないと思います。それだけです。
○矢野委員長 ありがとうございます。
 オブザーバー参加いただいている委員におかれましても、御質問等がございましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 古米委員長、お願いいたします。
○古米評価委員会委員長 古米です。
 資料2-1の23ページのところで、有明海の奥部におけるカキ礁の分布として、1977年と2006年が比較されている図が出てきています。変遷が分かりやすかったのですが、資料2-3の18ページでは、2019年かな、最新の分布情報も載っていたように思います。こういったデータが、別の資料ではなくて統合されて、1977年、2006年から2007年、そして、2019年はこうなっていますという変遷として整理されるといいのではないかなと思ったのが一つ目です。
 二つ目は、水産庁に御説明いただいた資料2-2のところで、カキ礁の造成技術を開発の内容として、ドローン等でカキ礁の位置だとか形状の更新という記述がありました。技術開発の中でドローンによるカキ礁の位置や形状の更新というのはどのような意味なのかよく分かりませんでした。カキ礁がどこかに造成された状況がどうなのかを見るのではなくて、先ほど御指摘したように、2019年のカキ礁の分布に加えて、2024年、2025年はこういう分布になっているというのをドローンで調べようとされているでしょうか。以上、一つ目はコメントで、二つ目は、令和5年度以降の実施内容の中でのドローン撮影によるカキ礁の位置や形状の更新というのは、分布実態がどうなっているかを見ようとされているのでしょうかという質問です。
 以上です。
○贄田漁場資源課課長補佐 水産庁漁場資源課の贄田でございます。
 ドローンを用いて、既存のカキ礁の航空写真を撮影しまして、撮影した画像を基に既存のカキ礁の位置、形状を示すGISデータを更新することを予定しております。
○古米評価委員会委員長 ということは、1977年と2006年から2007年と2019年のカキ礁分布についてはあるので、さらに最近の状況が図化できるということに役立つのでしょうか。
○贄田漁場資源課課長補佐 そうですね。事業の予算などの都合もございまして、全域というのは難しいかもしれませんが、この事業によるドローンの空撮範囲と、2007年のカキ礁の位置との比較を予定しておりますので、全域というわけにはいかないのですが、ここで得られたデータを過去のカキ礁のデータと照らし合わせることで比較することが可能となると考えられます。
○古米評価委員会委員長 想像するに、塩田川の河口の辺りをドローンで調べるということになるのでしょうか。佐賀市側だとか筑後川の河口ではやらないのでしょうか。
○贄田漁場資源課課長補佐 そうですね。今この事業を行っている河口範囲を予定しております。
○古米評価委員会委員長 分かりました。
○松山専門委員 補足しますと、航空写真だとどうしてもカキ礁の厚み、昔に比べてカキ礁自身の高さが低くなっているという漁業者さんの御意見などありまして、GPSとかで我々も測定したことがあったのですが、ドローンを使うと一気に広範囲を測定できるので、航空写真よりはかなり精度が上がる結果を得ることができますので、こういう技術開発事業の中に入っていると推定しています。
○古米評価委員会委員長 今理解したのは、1977年と2006年と2019年の先ほどの資料のカキ礁分布データは航空写真から抽出したもので、それを今後はドローンを活用することによって、より精緻にカキ礁の実態を調べるという意味の技術開発をされていると。
○贄田漁場資源課課長補佐 そうですね。そのような形になっていくのではないかと思います。
○古米評価委員会委員長 ぜひ塩田川だけでなく、ドローン測量データとして六角川とか、別のところも一緒に取得していただくと非常にいいかなと感じました。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 それでは、まだあろうかと思いますが、少し時間も押しておりますので、ここまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、次の資料に参りたいと思います。後ほどまとめて御意見を伺いたいと思います。資料2-4、貧酸素水塊の発生状況、形成・消滅に関与する成層化、資料2-5の底層溶存酸素量の検討について続けて御発表いただきます。
 まず資料2-4について、環境省より御説明お願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 環境省です。貧酸素水塊の形成・消滅に関与する成層化について、モデル解析とモデルの活用に関し検討いたしましたので、御報告いたします。
 1ページ目です。こちら目次ですが、本取組の検討結果として、3にて(1)作成したモデルの概要、(2)モデルによる成層化の要因解析、そして(3)そのモデルを活用した海域特性図の作成をお示しし、4にて今後の検討方針を御報告いたします。
 次、3ページです。まずこちらは検討の背景です。こちらはこれまでの報告書での項目を示したもので、このうち上段の平成28年度報告では、一番上の黄色枠に記載のとおり、基本的な環境情報である流動などの物理的な挙動が十分に把握・解明されているとは言い難く、特に潮流については水質や底質のように定期的な観測データがございません。
 また、上から二つ目の黄色枠に記載のとおり、連関図に示されている貧酸素水塊の発生などの諸問題と海域の物理的環境特性の関係性が十分に把握・解明されていないことが考察を進める上での課題の一つとして認識されています。
 次、4ページです。左は有明海の連関図で、右側は主に貧酸素水塊関係を拡大したものです。連関図では、貧酸素水塊の発生に成層化が関係していることが実線で示されているものの、潮流などの物理的な挙動と成層化との関係が分かっていないため、検討が必要となっています。
 次、5ページです。右側の緑枠に記載していますが、平成28年度報告及び中間取りまとめでは、実測値ベースで現状把握を実施していますが、特に潮流については観測データが時空間的に断片的なものでした。このため、十分な観測データがない場合には、数値モデルを活用することといたしました。左図は検討フローを示したものですが、海域の環境特性の把握には、物理的特性のほか化学的・生物学的などの特性の把握が必要ですが、まずは物理的特性を抑えることとし、モデルによる検討を進めています。
 次、7ページです。モデルによる検討の目的といたしまして、①貧酸素水塊の形成・消滅に関与する成層化の要因解析を進め、これにより入力値の変更により計算を行うことで、要因の大きさを把握することができ、また、連関図中の関連性を定量評価することができると考えています。また、このモデルを活用したアウトプットとして、モデル結果から②海域特性図を作成して、これまで詳述できなかった海域区分別の環境特性を把握することができ、また観測データがない場所や、時間の環境特性が把握できると考えています。
 これによって緑枠に記載のとおり、成層化・鉛直混合のメカニズム、個別海域の環境特性の理解を進めることができます。また、将来的には、より根拠に基づいた効果的な環境対策を提案できるようになると考えています。
 次、9ページです。こちらは、検討結果のうち、モデルの概要となります。本モデルはもともと平成28年度報告においてケーススタディーとして巻末に掲載されたモデルをベースとしています。流動、波浪などの六つのサブモデルで構成されており、図中の黒色のボックスがそのモデルです。本報告ではこのうち、モデルにとって重要な位置づけであり、またモデルの上流に位置する流動サブモデルの進捗状況を主として御説明いたします。
 次、10ページです。こちらは流動サブモデルの概念図です。モデルによってメッシュ毎、時間毎の流向・流速、潮位、水温、塩分などが出力されます。これらの計算結果は物質の三次元的な輸送に寄与するため非常に重要となります。
 次、11ページです。こちらはモデルの計算範囲です。平面方向、鉛直方向にメッシュを設定しており、メッシュごとに結果が得られます。
 次、12ページです。こちらはモデルの再現性を示したものとなります。スライド上段では潮位について大浦、口之津の観測値と比較していますが、黒色で示している計算値は赤色の観測値と一致しています。スライド下段では潮流について、潮流楕円で再現性を確認いたしました。有明海の最も大きな分潮であるM2分潮と、次に大きいS2分潮で再現性を確認すると、左のグラフの上段のS3ポイントの表層では、やや過大評価となっていますが、左右のグラフの下段のFポイントでは非常によい結果が得られています。
 これら再現結果を定量的にどのように評価できるかを現在検討していますが、それについては時間の都合上割愛させていただきます。本資料の後ろに添付しています資料編に掲載していますので、お時間があるときに御確認ください。
 次、13ページです。こちらは水温鉛直分布の再現性を見たものです。概ね良好な結果が得られています。
 次、14ページです。こちらは塩分の鉛直分布の再現性を見たもので、上段右二つのグラフのようにシャープな成層の表現にやや難があると見ており、今後の課題だと考えています。
 次、15ページです。こちらは上下層の密度差の再現性を見たもので、時系列で見ても再現性は良好でした。
 以上から、モデルは鉛直分布の表現に部分的に難があるものの、十分検討可能と判断しています。
 次に、モデルによる成層化の要因解析についてです。
次、17ページです。右の水色枠の下線箇所に記載していますが、現時点では、流動、成層化などの物理的挙動が解明されるとは言い難い状況です。これについては、有明海の連関図に示されているとおり、貧酸素水塊の原因について、海域の流動特性の関連を把握することで考察を進めます。
 次、18ページです。こちらは連関図から成層化に係る部分を抽出したものです。右上の水色枠に記載のとおり、連関図では、潮流・潮汐の変化と成層化を結ぶ線が点線となっており、関連性の確認が十分なものとなっていません。
 また左の連関図を見ていただきますと、平成28年度報告の連関図では、成層化に日照、風、降雨などから、線は引かれていませんでしたが、これら項目は一般的に成層化に大きく関係することから、ここでは線を引いており、これら項目について、モデルによる感度解析を行う必要があります。
 このことからこれら項目のうち、感度解析の入力データの項目として、下の表に記載しています、淡水流入、日射、潮位差、平均潮位について、各条件が変化したときに、海域の成層強度がどの程度変化するかを確認いたしました。ただ、台風はその都度影響が大きく変わる可能性があるため、項目の風については今回の検討ケースから除外しています。
 また一番下の内部潮汐は後ほど御説明いたしますが、成層の解消に影響する可能性があるものの、知見が少ない状況です。
 次、19ページです。こちらの模式図では成層化によって貧酸素水塊が発生することを示しています。
 次、20ページです。先ほど言及した内部潮汐について簡単に御説明いたします。下の図のように成層状態で海底地形の凸凹などに流れがぶつかると、鉛直流が発生して、密度の異なる境界面が変動し、潮汐周期の潮流により内部潮汐が発生いたします。そして内部潮汐波が砕ける際に鉛直混合を促進すると考えられています。
 次、21ページです。こちらはモデルでの要因解析の計算ケースです。公表データが揃っている1994年から2021年までの中で、各項目で最大・最小の年を決めます。対象期間は、貧酸素水塊の発生しやすい各年の7月から9月までとし、対象項目は先ほどの四つの項目といたします。①河川流量として最も流量の多い筑後川のデータを、そして②全天日射量として、ここでは佐賀県のデータを。③平均潮位は大浦のデータを、そして④潮位差を使用しています。
 次、22ページです。こちら計算条件として、気象条件などが平均的な年代として、2011年をベース年として設定し、四つの項目、河川流量、全天日射量、平均潮位、潮位差については、各データの最大・最小の値を振れ幅と設定いたします。
 次に25ページを御覧ください。こちらは各ケースのモデル計算結果から有明海全域の成層強度を算定し、グラフ化したものです。これにより、どの項目が最も効いているかを見ているものでございます。こちらの右側を見ていただきますと、河川流量の変化に関する感度が特に一番成層強度の強い7月で最も高くなっています。また右から2番目の日射量では、増加に関する感度が比較的高く出ています。
 次、26ページです。こちらは先ほど御紹介した鉛直混合にとって重要な内部潮汐がどの程度発生しているかを示したもので、海底地形勾配が大きく、潮流が強い場所で内部潮汐が生成しており、流れの分布を考える上で内部潮汐も重要である可能性が示唆されました。
 次、27ページです。こちらは内部潮汐と成層強度の関係を見たものですが、高い正の相関があることから、成層が強くなっているときに内部潮汐が強くなっていることが示唆されました。今後、成層・鉛直混合に対する内部潮汐の役割を詳しく解析することが必要だと考えています。
 次、28ページです。これまでの連関図では、潮流・潮汐の変化から、成層化に向けて、点線の矢印が伸びているのみですが、今後モデルを用いた検討によって、例えば内部潮汐の影響を組み込んだり、またはその逆方向の矢印を追加するなども考えられます。
 内部潮汐の影響は成層・鉛直混合、潮流の変化に相互に関係するため、引き続き検討を進めたいと考えています。
 次、30ページです。こちらは平成28年度報告の海域区分別の問題点の原因・要因の考察一覧を掲載したものですが、基本的には実測値をベースとした記載となっています。これに本モデルの計算結果を活用することで、季節別やイベントごとの海域特性を把握することができ、海域区分別、あるいは海域区分にとらわれない局所的な問題をより丁寧に見ることができるようになると考えています。
 次、31ページです。こちらは海域特性図を計算するための計算ケースです。貧酸素水塊の累積日数が大きかった2006年を対象として、有明海全域を対象とした通年の計算が過去に行われており、これを利用して解析図例を試作いたしました。解析期間の切り口は通年、夏季、冬季、台風及び出水の5パターンとしています。下の表に示していますが、夏季は8月、冬季は2月、台風は13号の来た9月、出水は豪雨のあった7月としています。
 次、32ページです。こちらは作成方法ですが、有明海全域の解析期間ごとの最大・最小・平均値を求め、平均値が白色、最大値が赤色、最小値が青色になるコンター図を作成し、その上で各海域区分における平均値を求めて平面図を作成いたしました。
 次、33ページです。その結果作成された海域特性図です。こちらは表層水温ですが、通年では湾奥部で相対的に水温が低く、外海側で高い傾向です。それは冬季にその傾向が顕著となりますが、夏季と出水時ではその傾向が逆転し、浅海域を中心とした湾奥部で水温が高く、外海側で低い傾向となりました。
 次、34ページです。こちらは底層水温ですが、基本的に先ほどの表層水温と傾向は同じですが、出水は表層ほど影響が大きくないことが見て取れます。
 次、35ページです。こちらは表層の塩分の海域特性図ですが、いずれの期間においても湾奥部で塩分が低く、外海側で高い傾向にあります。淡水流入の多い出水期は河口域を中心に低塩分化しました。
 次、37ページです。こちらは、底層塩分の継続時間について分けたものです。塩分15以下の継続時間の最大値をグラフ化しており、閾値についてはアサリ成貝の低塩分耐性をベースにしています。基本的に浅海域に限定した低塩分の継続時間が長いことが分かります。
 次、38ページです。こちらは海域特性図による今後の解析項目一覧です。流動サブモデルによる解析を優先的に進めることを考えており、前ページでは対象をアサリで設定していましたが、水温、塩分などの継続時間の解析については、今後対象となる生物についても検討してまいります。
 最後40ページの今後の検討方針です。①のとおり、貧酸素水塊の形成・消滅に関与する成層化の要因解析については、内部潮汐の寄与度の定量化、水質サブモデルへの影響について検討いたします。これにより成層化に関するサブ連関図の検討につなげたいと考えています。
 また②の海域特性図については、委員会報告の記載内容を充実させ、対策検討につなげるために、潮位差、潮流の強さ、水温などについて、海域特性図を作成して、各海域区分でどのような環境特性が記載できるかを検討いたします。
 また将来的なこととなりますが、波浪モデル、懸濁物質輸送モデル、水質・底質・低次生態系モデルの結果から、海域区分別の様々な海域特性を整理いたします。
 そして三つ目といたしまして、モデル精度の担保やモデルの課題や限界を整理して、計算結果の解釈をするとともに、必要に応じて課題解決を図ってまいりたいと考えています。
 以上です。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 それでは引き続きまして資料2-5について、環境省より御説明お願いいたします。
○亀井環境管理課課長補佐 ありがとうございます。環境省環境管理課の亀井と申します。
 底層溶存酸素量の検討状況について御報告いたします。次のページをお願いします。
 環境基準としての底層溶存酸素酸素量の設定ということでございますが、公共用水域の水質の環境基準としましては、海域と湖沼において、既存の環境基準としては有機汚濁の指標であるCOD(化学的酸素要求量)、それから窒素、燐というものが有機汚濁物質と富栄養化をもたらす栄養塩類の指標として設定しておりまして、負荷削減のための排水基準や閉鎖性海域では総量規制基準を設定して対策と結びつける、そういった役割を担ってまいりました。
 ただ一方で貧酸素水塊の発生ですとか、藻場・干潟の減少、水辺地の親水機能低下等の課題がありまして、CODを中心とした体系では直接対応できないという課題がございまして、魚介類等の生息や再生産に直接的な影響を判断できる指標の設定というのが求められておりました。このため平成28年3月に底層溶存酸素量というものを環境基準として設定をいたしました。これを確保することによりまして、魚介類が生息や再生産できるような溶存酸素を確保できるということ、それから溶存酸素量の低下を防止することによって青潮や赤潮などの発生リスクを低減していくということで、魚介類の水生生物保全の観点から有効な指標として設定をしたものです。
 次のページをお願いします。具体的には、底層溶存酸素量というものがその水域の底層を生息域とする魚介類等の水生生物、それからその餌となる生物の生存、さらにそれらの再生産が適切に行われるということで、底層を利用する水生生物の個体群の維持できる場の保全・再生を目的に設定をするものです。
 大きくこの水域類型としては3段階の基準を設定しておりまして、一番上位のものが4mg/Lということで生物1類型、これは生息段階において貧酸素耐性の低い水生生物が生息や再生産をできる水域として設定をしております。
 以下、3mg、2mgという具合に3段階に設定をしまして、一番下の類型ですと比較的その生息段階でも貧酸素耐性の高い水生生物が生息または再生産できる場として設定をしたものです。
 次のページをお願いします。これまでに国が水域類型の指定を行う水域の中では、湖沼において霞ケ浦、琵琶湖、それから海域については東京湾と狭義の伊勢湾、それから瀬戸内海のうち大阪湾について底層溶存酸素量の水域類型を指定したところでございます。
 次のページをお願いします。具体的には今海域で指定をした東京湾、伊勢湾、大阪湾の図をお示ししていますが、まずその水生生物の保全・再生を図ることを目的として、底層の貧酸素化の防止を図る必要がある範囲を指定いたします。
 フローといたしましてはまず、保全対象種の選定を行いまして、その生息状況等を踏まえまして、生息や再生産の場を保全・再生する水域の範囲を指定するものです。
 その上で、過去の水質がよい時期から貧酸素水塊が発生していたような場所もありますので、そういったところを、人為的負荷が原因ではない、改善が難しいようなところの状況も踏まえまして、水域の特徴に応じた基準値を設定しております。
 次のページをお願いします。この水域類型の指定後の検討事項もございます。底層溶存酸素量というのが比較的新しい基準ですので、その水域の底層溶存酸素量を評価するための測定地点を設定して、5か年程度の情報収集を行い、そこで得た情報を基に達成率や達成期間を設定するということとしております。
 ポイントといたしましては底層溶存酸素量の状況、具体的には測定結果、それから保全対象種の生息状況の健全性、その他必要な情報を整理いたしまして、水生生物の生息、再生産に必要な達成率を設定するということで、特に目標を直ちに達成できるというところばかりではなく、10年程度以上の長期を要すると考えられる場合には、まずは10年程度以内に目指す暫定的な目標を柔軟に設定をして、必要な施策を段階的に取り組んでいくということで考えております。
 簡単ではございますが、以上で報告を終わります。ありがとうございました。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 それでは、ただいま御説明がありました2件の内容について御意見、御質問等を承ります。いかがでしょうか。ありましたら挙手をお願いいたします。
 東委員、どうぞ。
○東専門委員 御説明ありがとうございます。資料2-4についてお尋ねしたいと思います。
 まずは、潮汐のモデル再現性の検証のところで、潮汐の検討はされているようですが、水温や塩分、経年変化や空間分布などはいかがでしょうか。それらも含めて、ほかの年、この委員会では同じ再現性の検討結果の絵を見せられるので、ほかの年の潮汐の再現性は一体どうなってるのか、分かっている範囲で教えていただければと思います。
 二つ目ですけど、成層の強化の影響を検討されたところで、熱関係で全天日射量の検討結果がございました。全天日射量だけというのが少々違和感があって、普通は気温、長波放射、短波放射、外洋の水温、これらの組合せを考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
 最後ですけど、今回は有明海の結果のみでしたが、八代海は考えなくてよいのかということ。以上3点です。お願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 まず、最後にいただきました八代海についてですが、これまで取り組んできたデータの蓄積のある有明海についてモデルを作成すれば、将来的に八代海にも当てはめることが可能だと考えています。
 あと全天日射量について、その他気温や外海の水温等についてセットすべきといったところにつきましては、御指摘を踏まえ要因解析条件について見直ししたいと思います。貴重な御意見ありがとうございます。
 水温や塩分などにつきましては、広域では公共用水域のデータを用いて比較し、対象とする海域については連続観測データなどより観測頻度の高いデータで検証しております。モデルの再現性は対象とする年次が変わるたびに都度検証しております。
○東専門委員 それはいずれ出していただけるということですね。お願いいたします。
 一つ気候変動に関しては、短波放射でやるよりも長波放射がきくというのが、これまで通例でありますので、その辺はぜひ御検討いただければと思います。
 以上です。
○川田海域環境管理室室長補佐 ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして速水委員、お願いいたします。
○速水専門委員 資料2-4と2-5のそれぞれについて一つずつ質問があるので、別々にお聞きしたいと思います。
 まず資料2-4に関してですけども、内部潮汐に注目されていますけども、内部潮汐の影響というのは、ほかの例えば潮位とか、それから日照とかそういった項目とは違って、これは内部でのプロセスなんですよね。外力の変化をもたらすものではないので、ほかの外力の変化に対する有明海の応答に着目して作ってきた連関図の中に、突然内部潮汐が入ってくるということに関しては少し違和感があるのですが、その辺どうして内部潮汐だけを取り上げられたんでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 例えば18ページで、これまでの連関図では、潮流・潮汐の変化から成層化に対しては点線の一方向の矢印だけという形でとなっておりますが、この内部潮汐の検討を進めていくことで、成層化から逆にこの潮流・潮汐の変化に影響を与えているということで、逆方向に矢印が引けるのではないかとか、そういったところがモデルによって内部潮汐のことをベースに検討していくと解明できるんじゃないかと考えているところです。
○速水専門委員 それについては、今までも恐らく有明海の流動に関するモデルでも、多くのモデルが内部潮汐に関しては、プロセスとしては入っていて、ただ内部潮汐という形で計算をしていなかっただけで、中では内部潮汐が起きていたと思うんですね。ですから今回初めて内部潮汐を取り入れたということではなくて、内部潮汐に着目して取り出して解析をしただけだと思います。
 もう一つ、今まで潮汐・潮流の変化という形で考えてきたのは、これ全部バロトロピックな変化に注目してきたんですね。これで内部潮汐を入れ込んでいくと、確かにその研究としては面白いんだけれども、解釈していく上で、より潮流への理解というものが難しくなってくるという、そういう弊害はないですか。
○川田海域環境管理室室長補佐 そこも含めて、どのように組み込むことができるかということを御相談しながら進めていきたいと思います。貴重な御意見ありがとうございます。
○速水専門委員 はい。それともう一つ、資料2-5について御質問ですが、最後の6枚目のスライドのところで、保全対象種の生息状況の健全性という項目がありますが、生息状況の健全性というものをどうやって測るのかというところについて教えてください。といいますのも、貧酸素が発生している状況がかなり長く続いてしまうと、現状で調べても、何がその健全な生物群集だったのかということがよく分からなくなっている状態を見ていると思うんですね。
○亀井環境管理課課長補佐 御質問ありがとうございます。生息状況の健全性につきましては、各保全対象種について、例えばそれが水産資源であれば漁獲量ですとかそういった漁業データもあると思いますが、その地域で様々、地域の環境関係あるいは水産関係で取られているデータとか、地域の情報を基に設定をしていくこととしています。
○速水専門委員 ということは現状だけじゃなくて、昔のデータなんかも併せて見ていくという形ですか。
○亀井環境管理課課長補佐 そうですね。文献になるかとは思いますが、過去のデータも確認をした上でその過去からの変化とか、近年の要因とかも広く見ながら確認をしていくことになるかなと思っております。
○速水専門委員 分かりました。ありがとうございました。
○矢野委員長 ありがとうございます。ここからオブザーバーの委員の方にも御意見ありましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
 林委員、どうぞ。
○林委員 林でございます。
 質問ですが、二つございまして、先ほどのこのモデルに関してですが、塩分の再現性の話ですとか、内部潮汐のお話があるのですが、鉛直の拡散係数はこのモデルの中ではどのようにして、扱われているのでしょうか。
 係数を入れているわけではないとは思うのですが、何かの式で中で計算をしているのか。どのように扱われているのかなと。それが割と成層状態に効いてくるような気がするのですが。
 これ、二つあって、今のが一つ目の質問で、もう一つもう先に言っておきます。内部潮汐の先ほどの資料の26ページのところで、内部潮汐が特定の地形の影響で、特定の場所で発生しているというような結果が26ページのところだったと思うのですが、その後の27ページのところは、これは海域全体を平均して、内部潮汐の影響が大きいと、つまり特定の場所で発生したものが、もう海域全体に影響しているから、これについても重要で検討しないといけないよというお話なのでしょうかという、2点をお伺いしたいと思います。
○川田海域環境管理室室長補佐 お答えいたします。まず一つ目の係数については、メラー&山田の乱流クロージャーモデルを活用いたしております。
 二つ目の御質問の内部潮汐の影響につきまして、どのように広がっていくか今後の検討事項と考えております。
○林委員 平均をしても、この内部、これは何かの相関が高くて、重要だというお話なわけですね。分かりました。
 それで拡散係数のほうが、ですからそのときの海洋の環境に応じて、拡散係数が求められているということと理解しました。ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 それでは、古米委員長、お願いいたします。
○古米評価委員会委員長 古米です。
 貧酸素水塊に関する情報収集ということでモデルの話が出た後、資料2-5で、底層溶存酸素量の検討の説明がありました。底層溶存酸素量が環境基準として設定されている経緯があるので、有明海だとか八代海についても、底層溶存酸素量の類型指定を行うとか、基準設定を考えているという、その前振りとして有八委員会での資料として御説明をされているんですかね。
○川田海域環境管理室室長補佐 事務局でございます。
 底層溶存酸素量につきましては、国が累計指定を行う海域に有明海が入っており、また、再生方策として、この類型指定が含まれているところです。令和8年度報告を見据えまして、現在、小委員会で情報収集を進めているところですが、指定は令和8年度以降となる見込みのため、全国的な進捗状況について御参考として御報告できればということで今回挙げさせていただきました。
○古米評価委員会委員長 国が類型指定を行う水域としては、八代海は入っていないけど有明海は入っているということが重要なメッセージで、今後、基準設定されることになる。現状は今この段階ですよということを伝えるという意味の資料ですね。
○川田海域環境管理室室長補佐 はい、有明海が対象なっております。付け足すことがございましたら、環境管理課さん、お願いいたします。
○亀井環境管理課課長補佐 ありがとうございます。有明海の底層溶存酸素量につきましても、地域の都道府県、それから関係者の皆様から御意見をいただいて、今後考えていきたいと思います。ありがとうございます。
○古米評価委員会委員長 どうもありがとうございました。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。
 まだあるかと思いますが、時間が押しておりますので、ここで一応切らせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして、次の資料に移ります。またまとめて、後ほど御意見を伺います。資料2-6の貧酸素水塊による被害軽減技術の開発、資料2-7、有明海、八代海、橘湾海域における貧酸素水塊の発生状況。資料2-8の有明海奥部における貧酸素水塊の発生メカニズム、予測技術の現状について続けて御発表いただきます。
 ではまず資料2-6について水産庁より御説明をお願いいたします。
○贄田漁場資源課課長補佐 水産庁漁場資源課の贄田です。よろしくお願いいたします。
 資料2-6について説明させていただきます。貧酸素水塊による漁業被害の軽減技術の開発ということで、委託事業としまして水産研究・教育機構水産技術研究所、関係県の試験研究機関に参画いただきまして、平成30年度から令和4年度まで漁場環境改善推進事業という事業の中で実施した成果の概要について、説明させていただきます。
 1ページ目でございます。貧酸素水塊の発生で、有用魚介類のへい死のみならず、餌となるような生物の生息にも多大な影響を及ぼしますことから、発生メカニズムや貧酸素水塊が魚介類に及ぼす影響を明らかにするとともに、漁業被害を軽減するための技術開発というのが重要になっております。そこで、有明海など、またその周辺海域などを対象フィールドとして貧酸素水塊を観測するとともに、予察、被害軽減技術の開発を行うことで、漁業被害の軽減を図っていくことを目的としております。
 2ページ目でございます。有明海における貧酸素水塊のモニタリングです。有明海奥部の観測定点において、夏季に水質の連続観測を実施するとともに、定期観測を実施しています。得られたデータや、詳細のメカニズムについては、後ほど資料2-8において水産技術研究所御担当から説明させていただきます。
 続きまして資料の3ページでございます。貧酸素水塊に関するデータの提供、利活用の促進を行っております。
 具体的には、漁業者や関係各機関への迅速な情報提供を行うために、定期観測による広域的な水温・塩分・溶存酸素など、貧酸素水塊のモニタリング情報を収集する体制を構築しております。また、貧酸素水塊発生などの情報を迅速に提供するシステムを開発しまして、これまでに得られた主な成果の資料の下の部分を御覧ください。有明海、八代海、橘湾を対象に、関係各機関で観測された水温・塩分・溶存酸素などのデータを収集しまして、共有する体制を構築しました。また平成30年度には、赤潮ネットと呼ばれております沿岸海域水質・赤潮観測情報の中に、貧酸素の情報に関するページを開設しまして、アップデートしています。
 続きまして資料の4ページでございます。橘湾の貧酸素水塊の実態を調査しまして、この調査結果を漁業関係者に迅速に周知することで、漁業関係者の方が操業のエリアや操業の可否などを検討するなど、漁業被害の軽減、操業の効率化を図るというような取組を行っております。
 具体的には、溶存酸素濃度の分布について、調査翌日までに関係漁協にファクスやEメールなどを使って情報提供を行っております。図が小さくて恐縮ですが、図の一番下の真ん中の図5に、ファクスの通知のような見本を添付しております。
 近年、夏季に貧酸素水塊が毎年橘湾では発生していまして、この調査データを漁業に迅速に情報提供することによって、関係者の聞き取りによりますと、漁場の選択休漁などの、操業の効率化にも活用されたということでございます。
 また、長崎県や、先ほど御紹介させていただきました赤潮ネットの中の貧酸素情報においてもデータを公表しています。詳細な観測データにつきましては、後ほどの資料で御説明させていただきます。
 以上でございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは引き続きまして資料2-7と2-8について、水産技術研究所より御説明お願いいたします。
○徳永水産技術研究所主任研究員 水産研究・教育機構の徳永です。
それでは有明海・八代海勉強会で議論されたものについて説明させていただきます。タイトルは、有明海、八代海、橘湾海域における貧酸素水塊の発生状況についてです。資料は2-7となっております。
 次のスライドお願いします。
 平成28年度委員会報告では、有明海奥部、諫早湾、六角川感潮域、福岡県海域、橘湾、八代海の貧酸素観測の事例が示されました。そこで今回も貧酸素水塊の発生状況について、まず報告させていただきます。
 次お願いします。まず有明海奥部と諫早湾です。こちらの図は、有明4件、大学、水産技術研究所等によって行われました有明海一斉観測の結果のうち、底層DOの平面分布となっております。
 有明海一斉観測につきましては、基本的に毎年7月と8月の2回、小潮満潮時に行われています。これらの図より、有明海奥部及び諫早湾で別々に貧酸素水塊が発生されたということが分かると思います。
 次お願いします。次に有明海奥部における貧酸素水塊の短期変動について御説明させていただきます。データは令和2年から令和5年度のデータを示しています。こちらの図は、上から大浦潮位、筑後川流量、表層と底層の塩分差、表層と底層の水温差、底層溶存酸素となっております。令和2年度の結果から、筑後川流量が増加後に塩分差が大きくなり、基本的に塩分差が大きいときには、底層DOは低下するという傾向が見られました。
 また、台風9号、10号など台風の影響による貧酸素の解消や、水深が浅い国営干拓沖や浜川沖では大潮期において、貧酸素が解消することも見られました。
 次のスライドお願いします。これらの傾向は、令和2年度から令和5年度まで同様でありました。こちらの図は、令和3年度の図となっております。
 次、お願いします。こちらが令和4年度となっております。
 次、お願いします。こちらが令和5年度のデータとなっております。
 次、お願いします。次に諫早湾における貧酸素水塊の短期変動です。諫早湾も基本的に有明海奥部と同様に、塩分差や水温差が増すと貧酸素化する傾向が見られました。また台風の影響による貧酸素の解消や、大潮期において貧酸素化が解消することも見られました。こちらは令和2年度のデータとなっています。
 次、お願いします。こちら令和3年度のデータ。
 次、お願いします。特に令和4年度におきましては、7月上旬から8月末まで他の土地よりも全体的に貧酸素状態の時間が長い傾向が見られました。
 次、お願いします。こちらが令和5年度のデータとなっております。
 次、お願いします。次に熊本県海域について示しております。上の図にSt.1、St.5、St.9のDO濃度の鉛直分布の時系列。下図がクロロフィル濃度を示しています。
 平成30年度から令和4年までの5か年調査を実施したところ、熊本県海域では大規模な出水や赤潮の発生時に一時的な溶存酸素の低下が確認されました。
 次、お願いします。次に八代海です。こちらの図は先ほど示しました一斉観測の図となっております。八代海では球磨川より奥部、海域区分では、Y1及びY2海域で貧酸素水塊が形成されることが明らかになりました。特に2019年では、これらの海域で全域的に貧酸素化することが明らかとなりました。
 次、お願いします。次に橘湾です。橘湾ではこのような20定点で定期観測が行われており、2018年から2022年度5年間、毎年貧酸素水塊が観測され、分布としては主に、橘湾奥部でありました。降雨や表層水温の上昇後に第2躍層が形成され、その下層で貧酸素化が進行していくと考えられています。第2躍層形成は、有明海からの出水が早崎瀬戸で混合・低塩分化され、橘湾の中層へ貫入したものと考えられました。
 また、水温の低下や台風接近による鉛直混合が発生し、貧酸素状態が解消に進むと考えられております。
 次、お願いします。こちらがまとめとなっております。
 最後に平成28年度からの進捗ですが、有明海奥部及び諫早湾における密度成層と貧酸素変動の再確認ができました。それから有明海熊本県海域での観測事例の追加ができました。
 それから橘湾での観測事例とメカニズムの推察を行いました。
 それから、八代海での観測事例の強化、特に空間分布について示すことができました。
 次、お願いします。最後に貧酸素水塊の発生状況に関する文献について示しています。
 六角川の貧酸素化、筑後川の貧酸素水塊、塩田川の貧酸素水塊にはこのような文献があり、特に筑後川では、有明海奥部の貧酸素水塊とは別に、感潮河川内だけで貧酸素水塊が形成されること、六角川と同様に大潮時に発達することが確認されています。
 続きまして、有明海奥部における貧酸素水塊の発生メカニズム、予測技術の現状について発表させていただきます。資料は2-8となっております。次お願いします。
 まず発表内容ですが、大きく三つに分かれております。一つ目は貧酸素水塊の発生状況、特に大規模出水の影響。二つ目は、貧酸素水塊の短期変動、これは干潟縁辺域と沖合域での特性の違い。三つ目は、貧酸素水塊の経年変化特性であり、潮流振幅と貧酸素水塊の関係についてです。
 なお、これらの成果につきましては、論文、あるいは水産庁委託事業で公表済みとなっております。
 次お願いします。それでは一つずつ説明させていただきます。一つ目は貧酸素水塊の発生状況、大規模出水の影響です。
 次お願いします。大規模出水がありました2021年を対象といたしました。この図は筑後川の日平均流量の時系列変化となっております。2021年は8月中旬に4,000㎥/sを超える大規模出水が起こりました。たまたまですが、この大規模出水前後で一斉観測が行われました。なお、出水後の一斉観測は2,000㎥/sを超えた日の15日後でありました。
 次のスライドお願いします。こちらの図は出水前の表層と底層の密度差、それから右図が底層DO濃度の空間分布となっております。まず表層と底層の密度差は、熊本県海域の一部を除き、全体的に非常に小さく、湾奥部は、ほぼ全域で弱い密度成層が形成されていたことが分かるかと思います。
 一方底層DO濃度は、湾奥西部海域及び諫早湾で貧酸素化していたことが分かります。
 次のスライドお願いします。こちらの図は、出水後15日後の表層と底層の密度差と、底層DO濃度の分布となっております。出水後15日後でも湾奥のほぼ全域で強い密度成層が形成されており、底層溶存酸素は湾奥、諫早湾及び熊本県海域で貧酸素化し、出水前後で約2倍程度の貧酸素水塊に拡大しました。
 次のスライドお願いします。大規模出水後の貧酸素水塊の面積の拡大を調べるために、過去の一斉観測結果を整理しました。大規模な出水が観測された時刻、最大流量、一斉観測日、DO濃度3.0mg/L以下の面積を示しています。
 黄色は筑後川流量が2,000m/sec以上の出水があった年であり、※印は一斉観測日前47日以内に筑後川流量が2,000m以上の出水があったことを示しています。この47日は、沖神瀬西ブイにおける大規模出水の影響がかなり小さくなる日数となっております。この表から、大規模な出水後に大規模な貧酸素水塊が形成されるということが示唆されました。
 次のスライドお願いします。次に大規模な出水による密度成層が影響する時間スケールについて算出しました。こちらの図は、筑後川の日平均流量を沖神瀬西ブイにおける表層と底層の塩分。底層DOの時系列変化となっております。
 8月12日に筑後川の日平均流量が2,000m/sec以上となり、表層塩分は急激に低下しました。その後、表層塩分は徐々に上昇し、表層と底層の密度差が1未満になったのは47日後でした。
 また貧酸素状態は34日継続したことから、大規模な出水による密度成層が貧酸素水塊に影響する時間スケールは、1か月程度と見積もられました。
 次お願いします。次に沖神瀬西における貧酸素化時間スケールについて算出しました。貧酸素化時間スケールとは、飽和DO濃度の海水が貧酸素状態になるまでの時間と定義され、左のような式となっております。ここで、DO低下速度は2005年から2019年までの底層DOの時系列変化から、見かけ上DO濃度が1日以上継続して低下しているものについて、直線回帰で算出されました。さらにその期間の塩分変動が1以内、かつDO濃度が3mg/L以上であるものについてのみ抽出されました。
 その結果、P6におけるDO低下速度の平均値は0.483mg/L/day、貧酸素化の時間スケールは8.2日と算出されました。
 次のスライドお願いします。この貧酸素化時間スケールは密度成層が影響する時間スケール47日よりもかなり短いことから、密度成層が強く、潮汐・潮流や強風等による鉛直混合が8.2日以上にわたって密度成層を破壊できない場合には、このP6沖神瀬西から水深が深い湾奥南部海域へ貧酸素水塊が拡大することが示唆されました。
 ただし、湾奥東部海域への拡大については、連続観測データが取得できていないため言及はできません。今後、湾奥東部海域においても密度成層が継続する時間スケールと貧酸素化の時間スケールの算定のために、連続観測データの収集が必要と考えられます。
 次のスライドお願いします。こちらはまとめとなっております。
 次お願いします。令和3年度の総合調査評価委員会中間とりまとめでは、九州北部地方で豪雨が記録された2020年には、7月から8月にかけて1か月程度の長期間にわたって表層塩分が低下し、大規模な貧酸素水塊が発生されたことが記述されています。
 令和3年度の中間とりまとめでは、2020年度後の大規模出水後のデータのみが示されましたが、2021年度では大規模出水の前後のデータが示されたことで、大規模出水の影響を現地データで評価できたと思われます。
 次お願いします。次に貧酸素水塊の短期変動となっています。
 次お願いします。水産庁委託事業では毎年7月から9月までの約1週間ごとに、こちらの定点においてCTDを用いた水質の鉛直分布を継続しております。
 次のスライドお願いします。2018年から2022年度までの5年間のまとめとしまして、有明海奥部西部海域における貧酸素水塊の短期変動について報告します。こちらは2021年7月19日の小潮期。右図が2021年7月26日の大潮の密度σt、溶存酸素の断面図を示しています。
 小潮期は、等密度線は水平方向に伸びていることが分かり、底層フロントはT2より岸に位置していることが分かるかと思います。ここで底層フロントとは強い塩分の鉛直勾配が海底と交差する場所と定義されています。
 大潮期の等密度線は、T2~T13で鉛直方向に伸びており、底層フロントはT13~P6に位置していることが分かるかと思います。
 次に小潮期の溶存酸素は、底層では低く、P6から沖はさらに沖からの高い溶存酸素の水塊の移流によって、中層が低くなる傾向が見られました。
 大潮期は底層フロントよりも岸側で鉛直混合の影響により、溶存酸素が高く、底層フロントよりも沖で低い傾向が見られました。したがって、貧酸素が見かけ上、沖へ移動したように見えます。
 以上のことから、干潟縁辺域、ここで言うT2、T13では、底層フロントの位置と貧酸素化の関係が示唆され、沖合域では底層フロントの影響は大きくないこと、つまり、鉛直1次元プロセスで貧酸素化することが示唆されました。
 この知見を基に、現在週1回の頻度で貧酸素水塊の発生予察を作成して、関係機関に配付しているという状況であります。
 次のスライドをお願いします。まとめはこのようになっております。有明海奥部の貧酸素水塊の中長期変動の要因に関しましては、有機物量の増加に伴った酸素消費量の増加、地形改変、河川流量増加などが明らかになっております。
 次のスライドお願いします。令和3年度委員会報告の貧酸素水塊の短期変動に関する内容はこのようになっておりまして、A1海域とA3海域に区分して貧酸素水塊発生の模式図が示されました。その理由として、今回示したA1海域における大潮期と小潮期の底層フロントの見かけ上の移動や、A3海域での鉛直1次元プロセスが関係しているものと推察されました。この知見が前回からの進展と考えております。
 次のスライドお願いします。次に、貧酸素水塊の経年変化特性です。
 次お願いします。有明海奥部西部海域における貧酸素水塊の経年変動について説明します。貧酸素水塊の要因は、速水(2007)で物理的要因と生物化学的要因に分けられてまとめられています。また世界的に見ても、貧酸素水塊の経年変動を栄養塩負荷のみで説明する試みもありますが、栄養塩負荷のみでは説明できないこともしばしば見受けられます。ここでは、物理的要因に着目して解析を行いました。
 成層した領域と鉛直混合した領域の境界、これはH/Uで表せることが経験的に分かっており、観測というものは定点観測なので、H=一定を仮定しますと、成層した領域と鉛直混合した領域の境界はUで規定されます。以下のスライドではUを用いて解析を進めました。
 次お願いします。干潟縁辺域(T13)の底層におけるM潮流振幅の3乗とDO3mg/L未満の累積時間との関係を示しています。両者には負の相関が見られました。
 なお、各年のデータは7月から9月のデータを使用しています。また、2009年には風による鉛直混合が著しい年であり、2018年、それから2020年から22年はDOのデータ取得率が90%以下だったため、解析には用いられませんでした。
 次お願いします。次に、沖合域(P6)の底層におけるM潮流振幅の3乗とDO3mg/L未満の累積時間との関係です。両者には負の相関関係が見られました。
 次のスライドお願いします。貧酸素水塊の経年変化特性に関する令和3年度委員会報告の内容はこのようになっておりまして、2018年度から2020年度までのデータを追加しても、令和3年度中間報告と同様に、干潟縁辺域と沖合域では、底層潮流振幅の3乗と7月から9月におけるDO3mg/L未満の累積時間の間には相関関係が見られました。この関係の要因、貧酸素化の生物化学的要因については現在論文投稿中となっております。
 以上、報告を終わります。
○矢野委員長 どうもありがとうございます。それでは、ただいま御説明がありました3件につきまして御意見、御質問等を承ります。いかがでしょうか。ございませんでしょうか。
 山室委員、お願いいたします。
○山室委員 山室です。
 いろいろな要因で貧酸素水塊の形成要因が少し見えてきたという御説明だと思いますが、例えば風が少ないとか、そういうことが原因だとなると、今後、貧酸素水塊の解消策については、人の力では無理だというようなことになりそうな気がします。そういうことを考えたときに、まだ説明ができていないものの中で、人の力で何かできそうなものというのも考えて入れてみて、それがどれぐらい影響があるのかというのも調べてみるという、そういう御予定はありますでしょうか。
○矢野委員長 いかがでしょうか。どちらで答えていただいても結構ですが。
○徳永水産技術研究所主任研究員 今回の発表にありました、カキ礁によって貧酸素水塊の面積が小さくなるということも明らかにされていますので、そういう取組を行うことも必要と考えています。
○贄田漁場資源課課長補佐 水産庁漁場資源課の贄田でございます。
 先ほど徳永主任研究員からお話がありましたように、カキ礁の造成によって貧酸素水塊の軽減効果がどれほどあるかというようなものも、先ほど説明した資料2-2の事業などでも実証などを行っていく予定でございます。
 他方、カキ礁になりますと、どうしても沿岸域の比較的水深が浅いようなところというのがメインであり、それが沖合域にどれぐらい効果を波及できるかという課題はあろうかと思いますので、全てがカキ礁だけで解決できるというようなものでもないかと思います。例えば流入負荷ですとか、そういったものの対策というのも多方面から講じていく必要があろうかと考えております。
 以上です。
○矢野委員長 ありがとうございます。
 それではほかに御意見ございませんでしょうか。ございませんですかね。
 それでは、オブザーバーの委員からもお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。ございませんか。
(なし)
○矢野委員長 ないようですので、それでは今の御発表に対しては以上で終わらせていただきますが、ここまで議題1の全体の説明を通して、何か御意見等ございませんでしょうか。ございませんですかね。
(なし)
○矢野委員長 それでは、ありがとうございました。それでは議題1はここまでとさせていただきます。
 それでは、引き続きまして議題2のほうに移ってまいります。議題2が気候変動などに関する情報収集となっております。資料3の気候変動影響、干潟生態系、社会経済情勢に関する知見の収集・整理について、環境省より御説明をお願いいたします。
○小原海域環境管理室主査 環境省の小原と申します。それでは説明させていただきます。
 こちらが目次です。まず気候変動影響から御説明させていただきます。
 まず背景・目的についてですが、現在、令和3年度の中間取りまとめでの御指摘を踏まえて、令和8年度に向けて気候変動に伴う影響を踏まえた再生方策の検討のための整理等を進めております。
 左下には平成28年度委員会報告時の連関図を示してございまして、青丸で示しているものにつきましては気象、海象の影響について示しています。右側に抜粋を示していますが、一部、日照、風、淡水流入などが、まとめて記載されているなど連関図が十分記載されているわけではございませんので、現在この拡充を含めた検討をするための情報収集をしております。
 この気候変動に関する報告につきましては、第13回の海域小委にて第1回目の御報告をしております。今回、第2回目の報告となっており、基本方針につきましては、第1回目の報告と変更はございません。
 今回の報告の趣旨としましては、気候変動に対する第1回目の意見に対する現状の報告及び追加で情報収集した文献等の報告でございます。また、その報告に当たっては、時間軸を考慮しまして、①これまでの変化、②将来予測という観点に加えまして、御指摘を受けました③適応策(漁業)を追加して報告させていただきます。
 こちら、第1回目の報告を踏まえた情報収集の一覧表でございます。今回の第2回目の報告につきましては黒丸及び赤丸で示した分を報告させていただきます。この違いですが、赤丸については第2回において新たに報告する事項となってございます。
 こちら第1回目で報告したときの課題・論点整理表となってございまして、今回の報告につきましては、これらを踏まえて報告させていただきます。
 それでは、まず、気温のこれまでの変化でございますけども、前回の御指摘を踏まえまして、長期的なデータがある地点を中心に、流域ごとに整理をしております。右の表にて水色の箇所に記載したところにつきましては、新たに実施しましたMann-Kendall検定と呼ばれる有意差検定を行い、検定の結果有意であった箇所を示しております。御覧いただきますとおり、全ての地点におきまして、有意に上昇傾向を示しており、流域による違いは見られませんでした。
 こちら、八代海の気温の変化ですが、こちらについても、全て有意な上昇傾向を示しており、流域における違いは見られませんでした。
 続きまして降水量の変化ですが、気温と同様に前回の御指摘を踏まえまして、検定を用いた整理に加えまして、48時間降水量など複数の条件で整理を行っております。この資料では24時間降水量を記載しておりまして、それ以外につきましては、資料編の63スライド目に記載しておりますが、今後の取りまとめの方向性としましては、一定の降水量の発生回数、例えば50mm以上の回数などを考慮した取りまとめを考えております。
 こちら、八代海の結果です。こちらも有明海と同様の取りまとめを検討しております。
 次に風速ですが、今回第2回目の報告で新たに整理をしたところです。現時点では、気温などと同様に有意差検定を行っておりますが、平均風速のみでは、年度ごとの台風の上陸数など違いを考慮することができませんので、今後は沿岸域の地点や、季節変動に着目した解析や取りまとめを検討しております。
 こちらは八代海ですが、こちらも有明海同様の取りまとめを検討しております。
 海水温の報告です。前回の課題でございました、近年のデータを追加した報告です。こちら、各自治体が行っております公共用水域の水質測定結果におきまして、長期的なデータがある地点の表層水温の年平均値を整理しております。結果としまして、こちら熊本St.7の地点において、有意な上昇傾向が見られておりますが、その他の時点では、変化傾向としては上昇傾向している地点はありますが、有意な結果ではありませんでした。また、こちら外海ということで比較対象地点として脇岬港を記載しておりますが、こちらも有明海と大きな違いはありませんでした。
 次に八代海の結果に牛深町周辺の海域を追加して掲載しております。湾奥部に近い八代海St. 10、St.7、鹿児島基準点5の順に上昇傾向が強い傾向が伺えまして、さらに牛深周辺の海域、あるいは先ほど有明海でお示ししました脇岬港と比較すると、こちらの八代海の地点については他の地点よりも上昇傾向がやや高いことが確認できました。
 こちら河川水温の結果ですが、海水温にも関係してくるところですので、こちらで御報告させていただきたいと思います。こちらでは九州地方の1級河川の水温の上昇率について、河川によって月ごとの変化に違いがあるというところが確認されております。
 こちら海面水位のこれまでの変化を示してございまして、前回の課題である近年のデータを確認するために、比較対象地点を含めて4地点の結果を整理しておりますが、全て有意な上昇傾向が確認されておりました。
 こちら表層pHですが、こちらも近年のデータの追加した報告です。海水温と同様に公共用水域の水質調査結果の長期的なデータがある地点の表層pHの、年平均値を整理しております。
 結果としまして、島原沖、瀬詰崎沖にて、有意な下落傾向が見られております。
 一方で八代海の結果ですが、こちら湾奥部のSt. 10におきまして、上昇傾向が見えております。そういったところで有明海、八代海におきまして地点によって異なる傾向がこの表層pHで見られました。
 次に底層溶存酸素量ですが、前回の課題である、近年のデータを追加した御報告です。年間最低値を整理しており、こちらの結果では年間最低値が減少している地点が見られておりますが、季節変動やDOが3mg/L以下の継続日数などを確認することが重要と考えております。
 こちらは、浅海定線の調査データを用いた成層構造に関する文献ですが、全期間を通して成層度が概ね減少する傾向が確認されております。
 ただし、統計上有意にならなかったことにつきましては、夏季の河川流量の経年変化に対応して、成層度が変動しているためと推測されております。
 最後に塩分の結果です。今回、新たに気候変動の報告として整理しまして、現時点では年平均値の整理を行っておりますが、年平均値の解析では、豪雨の影響等、確認することができませんので、沿岸域の地点の解析や季節変動に着目した解析を検討しております。
 こちらは八代海の結果です。
 以上、駆け足ではございましたが、これまでの結果を一覧表にまとめております。
 次に将来予測です。こちらは文献の収集がメインとなってございます。
 こちらは降水量の文献ですが、まず気候変動の補足をさせていただきます。
 今回の御報告する内容につきましては、下側に書いておりますとおり、RCP8.5あるいは2.6など、様々な数値シナリオにおいて予測がなされております。スライドに各シナリオの説明書きを適宜記載しておりますが、いずれにしても2100年までの長期的な視点で予測されていることに留意しながら、令和8年度の取りまとめ、あるいは情報収集などで進めてまいりたいと考えております。
 それでは御報告に戻らせていただきますが、降水量につきましては、日本周辺と瀬戸内海の二つの事例をまとめております。降水量につきましては、日本周辺の事例では、日降水量が100mm以上の大雨あるいは1mm未満の日数が増加して、二極化が進むという報告でございまして、瀬戸内海のモデルを用いた予測事例では、通過流量は冬に強まり、夏に弱まる傾向等が見られるといったことが述べられております。
 こちら海水温における瀬戸内海での事例ですが、RCP8.5のシナリオでは、将来の表層水温は3度から4度上昇するといったところが記載されておりまして、夏や冬の表層のDINが変動することが述べられております。
 次の海面水位ですが、こちらもRCP8.5のシナリオにおきましては、全国で39%~66%の砂浜の面積の消失が予測されております。
 次に底層溶存酸素量における大阪湾の事例ですが、水温上昇が春から夏の貧酸素水塊の早期拡大を引き起こすこと、その要因は、一時生産の増加と無機化によるDO消費量の増加であるといったことが述べられております。
 次に底生生物群集の変化に係る八代海の事例ですが、水位上昇に伴いまして、高地盤域の生態系への影響や塩沼地植物群落が衰退する可能性が指摘されております。
 こちらノリ・ワカメに関する瀬戸内海の事例ですが、将来水温上昇に伴い、越冬したアイゴによる春期のノリ・ワカメの食害が発生する可能性が述べられております。
 こちら、藻場に関する日本全域の事例ですが、海水温の上昇等によりまして、藻食動物による食害の増加により藻場の衰退等が述べられております。
 こちらの文献につきましては、魚類と二枚貝に係る知見ということで、スライドに記載されました影響調査におきまして、漁業対象種、あるいは干潟生物の分布と生息環境との関係が整理されておりまして、第13回の海域小委にて定量予測の3項目について御報告しております。
 魚類・二枚貝の情報収集については、定性予測の結果がこちらの資料には掲載されており、今回はこちらの事例紹介という形で掲載しております。
 二枚貝に係る知見を代表して、アサリに関する知見をまとめております。RCP2.6と8.5それぞれの予測がまとめてありますが、8.5に触れさせていただきますと、夏期はアサリが成長できなくなり、秋期の成熟時期の遅れなどが予測されております。
 将来予測の内容をまとめております。
 最後に適応策ということで、一つ目の文献につきましては、最後に述べました魚類と二枚貝と同じ文献でございまして、将来予測に加えまして、調査対象種の漁獲量の維持、生息場の保全に関する適応オプションが併せて報告されております。
 右側にその適応オプションの抜粋を記載しておりまして、魚種や変化する事項、例えば水温変化に伴う漁獲の減少などに応じた適応オプションが記載されております。
 その他の文献としまして、こちらノリ養殖に関する文献ですが、瀬戸内海の周防灘の事例です。採苗日繰下げに伴うプラス面の内容、あるいはマイナス面の内容がこちらの文献で述べられております。
 最後にワカメに関する知見ということで、瀬戸内海の事例ですが、高水温耐性品種の開発が行われておりまして、それらの結果等が述べられております。
 適応策、簡単ではございますけど、3項目について述べさせていただきました。
 今後の課題・論点ですが、こちらの①から④の項目を中心に、進めさせていただきたいと考えております。
 また、集積した情報の今後の取りまとめについてですが、冒頭で申し上げたとおり最終的には連関図の更新に繋げる予定ではありますが、連関図の更新への活用に当たっては現取りまとめから今後の取りまとめイメージのとおり、項目ごとや海域あるいはこれまでの変化や将来予測などの時間軸を基に整理したうえで今後の再生方策の検討等に繋げて参りたいと考えております。
 続きまして干潟生態系の御報告に移らせていただきます。
 こちらは第13回の海域小委で御報告しておりまして、今回、第1回目の御報告で指摘を受けました内容を踏まえての現状の報告をさせていただきたいと思います。
 前回の永浦干潟、ラムサール条約登録湿地、シギ・チドリ類の希少種の状況について報告させていただきまして、今回、(1)(2)の事項について御報告させていただきます。
 まず一つ目の干潟に関する情報ですが、こちら第13回の海域小委で追加御提案がありました自然環境保全基礎調査の結果をまとめております。大変字が見にくくなってしまいまして恐縮ですが、概要としましては左側に記載しておりますとおり、六角川など有明湾奥部におきましては、有明海の固有種をはじめ、多くの希少種等が多数確認されていることが述べられております。また八代海湾奥部につきましても、ほかの海域では絶滅、あるいは激減している底生生物を多く確認されていることが記載されており、有明海、八代海ともに、干潟の希少性について確認されております。
 また(2)の渡り鳥に関する追加の御報告ということで、第13回海域小委でもシギ・チドリ類の御報告をしておりますが、今回有明海・八代海の干潟におけるこれらの分布状況について一覧にまとめております。下に記載した表において、赤色で示したシロチドリ、ハマシギについて、全ての干潟で確認されており、有明海・八代海の干潟の特徴とされております。
 干潟に関する情報収集の今後の方向性ですが、第13回海域小委で御指摘をいただいておりましたラムサール条約登録湿地のモニタリング結果について、各自治体におきまして独自の調査が行われておりますので、現在情報収集及びまとめの作業を進めており、令和8年度に向けてその情報収集、取りまとめ及び御報告を予定しております。
 最後に社会経済情勢ですが、こちらも第13回海域小委での御指摘等を踏まえた現状の報告をさせていただきたいと思います。
 内容としましては、下に記載しましたア)からカ)、こちらの事項を御報告させていただきます。
 まず流域人口の推移ということで、前回は各県別の人口の推移をお示しさせていただいておりましたが、今回主な1級河川ごとに流域人口の推移を整理しております。
 またこちらにつきましては、流域人口と排出負荷量の推移ということで生活系CODの推移を示しております。棒グラフが生活系のCODの推移、折れ線グラフが流域人口の推移を示しており、上は有明海を代表して筑後川流域、下が八代海を代表して球磨川流域を示しております。特に筑後川につきましては、棒グラフの減少の傾きのほうが、折れ線グラフの傾きよりもやや大きい傾向ですので、生活排水対策等の進展による効果と考えております。
 次に土地区分面積の推移ということで、こちらも1級河川の流域ごとにまとめております。有明海、次のスライドが八代海でして、左側の山林の土地利用の面積が有明海・八代海ともに大半を占めております。
 また過去には各土地利用で上昇や下落傾向は見られたところですが、有明海・八代海ともに近年は横ばい傾向に近い推移を示しているところが確認されております。
 次に工業用水量の推移ということで、近年は減少傾向が示されておりますが、今後こういった減少傾向が続くかといったところにつきましては、やはり留意しながら確認していきたいと考えております。
 次に漁業経営体数と漁業・養殖業の生産量の結果を示してございます。こちらが有明海で次が八代海を示してございまして、両海域ともに1998年から現在に至るまで漁業の経営体数につきましては、約半減しております。一方で下の漁業・養殖業生産量につきましては、有明海については養殖業の生産量、八代海につきましては、海面漁獲量と養殖業生産量が横ばい傾向を示しておりまして、漁業経営体の集約化、大規模化等による生産量の増加というのが示唆されました。
 最後に、観光客数の推移をこちらに示しております。近年やや減少傾向でありますが、一方でこちらの観光客数の推移と、有明海・八代海流域に与える影響といったものにつきましては、その他のデータも含めて検討する必要がありますが、当該流域の社会経済情勢に関する要素の一つとしてこちら整理しております。
 こちら、今述べました内容をまとめております。今後の課題・論点ということで二つ大きくまとめてございます。一つ目ですが、有明海・八代海における水利用、漁業、観光等の社会経済的な経年データの拡充を引き続き図っていきたいと思っております。二つ目ですが、社会経済的データと流域環境との関連性の比較・検討とその影響分析ということで、右側に図を記載しておりますが、有明海・八代海につきましては閉鎖性が強い海域でありますが、今回、生活系の排出負荷量や工業用水の情報収集の結果を御報告させていただきましたが、それ以外の要素もありますので、他の項目も含めて、この閉鎖性海域の環境改善に関係する変化状況について把握していきたいと考えております。
 62スライド目以降につきましては、資料編ということで掲載しております。
 駆け足ではございましたが、説明を終わらせていただきます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。ただいま御説明がありました資料3について、御意見、御質問等ございましたら、挙手のほうよろしくお願いいたします。
 山室委員、どうぞ。
○山室委員 はい、山室です。
 私もしかしたら前回出ていないかもしれないのですが、今日お示しいただいたいろいろなデータを見ますと、有明海・八代海どちらにしても、「再生」はまず無理なんじゃないかと思われます。温暖化ですとか、そういうことがありますから。その「再生」という言葉を今後も使い続けるのかどうかというのが、今日のデータを見て検討が必要かなという気がいたしました。
 それは大きな方針のことですが、細かいところでは、56ページぐらいからいろいろな社会的な統計を取っています。2018年が一番新しいというのは、もう6年も前であるということに加え、コロナパンデミック以前なので、社会情勢が1年間、もしくはもう2年間で変わっているところがあると思います。ほかの気候データみたいに2020年ぐらいまであったほうが、傾向を見るのはよいのではないかなと思うんですけど、その辺りはいかがでしょうか。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。こちら5年ごとの結果です。おそらく2023年の結果が今後収集ができるかと思いますので、今後の委員会等で御報告させていただきたいと思います。御指摘ありがとうございます。
○山室委員 ありがとうございました。
○矢野委員長 ありがとうございます。
 それでは次に藤井委員、よろしくお願いいたします。
○藤井委員 資料の53ページですが、こちらに、流域人口と排出負荷量の推移が載っているんですが、この有明海、筑後川流域のCOD排出負荷量がかなり減っておりまして、少し見方を変えれば一次生産を支える栄養塩とかに含まれるのかなというところがありまして、大分昔に比べたらもうおよそ半分というところまで落ちてきているというところがありまして、こういうのを見ると、漁業者の言う昔の豊かな有明海につなげるのはかなり厳しい状況なのかなというところが、見ていて分かりやすい資料なので、二枚貝の増殖なんかも取り組んでいるのですが、こういう栄養塩の状況を踏まえると期待を抱くのは無理な状況と感じました以上です。
○小原海域環境管理室主査 藤井委員、ありがとうございます。確かにこちらの生活系のCODの推移を見ますと、過去から比べて約半分程度落ちております。
 一方で生活系のCODが、有明海、八代海の全体の負荷量からすると、どの程度占めているかといったところも重要でございまして、生活系CODの排出量については全体の負荷量からすると一般的に低いため、トータルの負荷量としてどの程度影響するのかといった関係も含めて、今後整理していきたいと思います。御指摘ありがとうございます。
○藤井委員 ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 ほかはいかがでしょうか。オブザーバーの先生方からでも。
 では、山本委員、よろしくお願いします。
○山本専門委員 山本です。少々素人チックな質問ですみません。67ページの資料ですが、河川流入量が風速とかとも関連して、貧酸素水塊に効いているみたいな記述になっているのですが、一方で豪雨災害時のいきなり流量がガッと上がってきたときの、その大規模な流入は、一方で貧酸素というか成層に効いているということ、説明も一方でなされるわけですよね。
 この二つは別に相矛盾するわけではないのですが、何か一見、真逆の現象について、同じ帰結を、同じ結論というか、同じ貧酸素というところに持っていくことになるのですが、何か説明が必要にならないかなと感じるんですが。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。先生の御指摘もおっしゃるとおりですし、またこの事例につきましては、伊勢湾での解析事例ということで、有明海、八代海とまた異なることや、貧酸素水塊については複合的な影響があるかと思われますので、そういった影響を総合して考える必要があると考えております。
 そういった状況も含めまして今回、情報収集という過程では、資料編にこちらの事例を掲載させていただいたところですが、令和8年度の取りまとめに向けましては、先生の御指摘も踏まえながら、実際に連関図等でどのように整理できるかといったところを考えて参ります。ありがとうございます。
○山本専門委員 そうですね。情報量がすごく多いから、それのうち有明海・八代海にすごく強く効いてくるものと、もしかしたら今後気にしたほうがいいこととか少し濃淡があるということですよね。そこを何かはっきりしたほうがいいかもしれないわけですね。分かりました。ありがとうございます。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。
○矢野委員長 ほか、いかがでしょうか。
 オブザーバーの委員の方も御意見、もしございましたらよろしくお願いします。ございませんですかね。
(なし)
○矢野委員長 それでは、ないようですので、ここまでとさせていただいて、次に移りたいと思います。
 次が最後になりますが、その他となります事務局から何かございますでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 参考資料5につきましては、8月の第14回小委員会にて小委の情報収集の計画として御報告させていただきました。これに従いまして、現在第16回目の小委員会の日程調整を行っております。日程が決まりましたら御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 事務局からは、以上です。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。
 それでは最後全体を通して、何か御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。
 山西委員、どうぞ。
○山西委員 山西です。
 先ほど言えばよかったかもしれませんが、今回の取りまとめの中で、新たに気候変動の話が加わり、その中で、社会経済情勢の話を入れることになりました。この件について今日御説明をいただきましたが、先ほど山室委員も含めて、ほかの委員の先生方からも少し質問がありましたが、流域人口がどうだとか、排出負荷量がどうだとかというのを個別にお示しいただいているのですが、これが結局、有明海の再生のところにどう関わっているかというのが今回の話では全く私自身は見えなかったので、やはりそこにつなげられるように次のステップではお示しいただけるということなんですかね。親委員会のほうにこれを出されても、多分ふんふんということだけで、だからその有明海の再生のところにどう関わっているかというのが見えてこないと思いますので、今後この社会経済情勢の話はどのようにまとめられるか、ポイントを教えていただけいただけますか。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。環境省の小原です。
 最後の駆け足で御報告させていただいた61ページの最後ですが、今回御報告した内容というのは、例えば生活系のCODの内容でありますとか、人口減少というのは言うなれば自然的に減少していくものです。
 一方で、それ以外の閉鎖性海域の対策というのは、それ以外にも農林水産業でありますとか、工場の排水等の対策、そういった様々な要因がございまして、そういった中で、この再生方策につながる、今回は生活排水でしたが、生活系以外の項目を今後情報収集していきたいと考えております。
 また工業用水を今回取り上げましたが、近年、各個人の節水意識というのも高まっているかと思いますので、そういったところも着目して情報収集を進めていければと考えております。
○山西委員 分かりました。つまり今回御説明いただいたものは、それぞれがまた何らかの有明海の水質なのか、生態系なのかにつなげられるような形でまとめられるということなんですよね。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。少なくとも、再生方策を検討するための材料を引き続き収集していきたいと考えております。
○山西委員 分かりました。陸域からの負荷の話でいくと、新しい、例えば化学物質だとかいろんな生活環、人間生活の中で新しい物質が出てきたりとかして、それがまた排出されるようになるとそれが注目されたりとかしますので、そういうところも見ていただきながらやっていただけると、社会経済情勢だとかいうところにも絡めるなと思いました。よろしくお願いします。
○小原海域環境管理室主査 ありがとうございます。
○矢野委員長 どうもありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。
(なし)
○矢野委員長 ございませんでしょうか。
 それでは、ありがとうございます。
 それでは本日予定されております議事については、以上をもちまして全て終了となります。議事進行への御協力に御礼申し上げます。15分ほど予定時刻を過ぎてしまいましたが、私の進行のまずさによるもので申し訳ありませんでした。
 それでは、進行を事務局にお戻しします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 矢野委員長、ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、後日皆様のほうへ御確認いただいた上で、環境省のホームページで公開をさせていただきます。
 それでは、以上をもちまして、本日の合同委員会を閉会とさせていただきます。本日は、どうもありがとうございました。

                                           午後4時15分 閉会