第2回 有明海・八代海等総合調査評価委員会 海域環境再生方策検討作業小委員会 議事録

*水産資源再生方策検討作業小委員会(第2回)及び海域環境再生方策検討作業小委員会(第2回)の合同開催

開催日

平成31年1月23 日(水)

場所

三田共用会議所 第4特別会議室(東京都港区三田2-1-8)

出席者

 有明海・八代海等総合調査評価委員会委員長:岡田委員長

(海域環境再生方策検討作業小委員会)

 小委員会委員長 : 滝川清委員長

 委員 : 小松利光委員、樽谷賢治委員、古米弘明委員、松野健委員、山口敦子委員

 専門委員 : 桐博英委員、橋本晴行委員、東博紀委員、古川恵太委員

(水産資源再生方策検討作業小委員会)

 小委員会委員長 : 樽谷賢治委員長

 委員 : 岩渕光伸委員、古賀秀昭委員、滝川清委員、 速水祐一委員、

 専門委員 : 久野勝利委員、小湊幸彦委員、中野平二委員、松山幸彦委員

(関係省庁・県)

 農林水産省農村振興局整備部農地資源課 松宮課長補佐

 水産庁増殖推進部研究指導課 内海課長補佐

 水産庁増殖推進部漁場資源課 森課長補佐

 水産庁漁港漁場整備部計画課 宮本課長補佐

 長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター 桐山介藻類科長

(事務局)

 環境省水・大気環境局長、水環境課長、
 水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐、水環境課閉鎖性海域対策室主査

議事録

午後2時00分 開会

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会 第2回水産資源再生方策検討作業小委員会及び第2回海域環境再生方策検討作業小委員会を開会いたします。

 本小委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。また、本日の小委員会は、御案内のとおり合同で開催いたします。

 それでは、まず議事に先立ちまして、環境省水・大気環境局長の田中より御挨拶を申し上げます。

○田中水・大気環境局長 ただいま御紹介をいただきました環境省水・大気環境局長の田中でございます。よろしくお願い申し上げます。

 有明海・八代海等総合調査評価委員会の第2回小委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 委員の皆様には、お忙しい中御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。昨年8月に開催をいたしました第1回の小委員会におきましては、平成33年度を目途としております中間取りまとめに向けまして、小委員会の主な検討事項や作業分担、データ整理・分析の方針などを御審議いただきました。小委員会における作業方針ということで決定をいただいたところでございます。

 本日でございますけれども、この作業方針に基づきまして、まずは2つの小委員会が横断的に検討する事項を中心に、平成28年度委員会報告以降に国及び関係県で実施しております再生方策、調査・研究開発の成果などを把握するということでございまして、関係省庁、それから、関係する委員の皆様などから御報告をいただくということとしております。環境省におきましては、評価委員会の事務局として本日御報告をいただく関係省庁や関係県における再生方策や調査・研究成果、それから、これまでに得られたデータを活用いたしまして、今後多角的な観点から整理・分析が行えるように、本日、委員の皆様方からいただく御意見も参考にしてデータの整理・分析の具体的な検討内容を整理していきたいと考えております。

 委員の皆様方には、3時間という長い時間になりますけれども、忌憚のない御意見を賜りますようにお願いをいたしまして、冒頭の私からの御挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、本日の委員の出席状況ですが、欠席の連絡を水産小委の内藤委員、山本委員、長嶋委員、海域小委の山口啓子委員、小林委員よりいただいております。また、本日は評価委員会の岡田委員長にも御出席いただいております。

 なお、本日は関係省庁等からもヒアリングを実施させていただきますので、発表者を御紹介いたします。

 まず、農林水産省農村振興局農地資源課の松宮課長補佐でございます。

○松宮農地資源課課長補佐(農林水産省) よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、本日、長嶋委員が欠席のため、発表をお願いしております長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センターの桐山介藻類科長でございます。

○桐山介藻類科長(長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター) 桐山でございます。どうぞよろしくお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、水産庁研究指導課の内海課長補佐でございます。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) 内海です。よろしくお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、水産庁漁場資源課の森課長補佐でございます。

○森漁場資源課課長補佐(水産庁) 森でございます。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、水産庁計画課の宮本課長補佐でございます。

○宮本計画課課長補佐(水産庁) 宮本でございます。よろしくお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 発表者の紹介は以上です。

 資料につきましては、本日の小委員会はペーパーレスでの開催とし、お手元のタブレット端末に収録しておりますので、確認は省略させていただきます。

 報道・取材の皆様におかれましては、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、議題に入ります。本日の合同小委員会の進行につきましては、両小委員長と相談しまして、今回は海域環境再生方策検討作業小委員会の滝川委員長にお願いしたいと思います。

 それでは、滝川委員長、よろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 よろしくお願いいたします。早速ですが、議事を始めさせていただきたいと思います。

 本日の議題は再生方策、調査・研究開発の実施状況としまして、国及び関係県が実施しました再生方策、調査・研究開発の成果等の把握を行うということとしておりまして、農林水産省、関係の県、水産庁、それから、松山委員、山口敦子委員より御発表いただくこととしております。多くの御発表がございますので、進行上、発表と質疑というのを3回に分けて行わせていただきたいと思います。円滑な議事進行に御協力をよろしくお願いいたします。

 それでは、まず、農林水産省及び関係各県より御説明いただきたいと思います。各説明者の方々には時間が非常に短くて恐縮でございますが、それぞれ10分程度ということでお願いいたしたいと思います。質疑応答につきましては、御説明をいただいた後にまとめて時間をとりたいと思います。

 それでは、農林水産省農村振興局農地資源課の松宮様より御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

○松宮農地資源課長補佐(農林水産省) 改めまして、御紹介いただきました農林水産省農村振興局、松宮でございます。

 日ごろから本日御出席の委員の皆様には御指導を賜りまして、心から感謝したいと思います。

 4県協調の取組について説明をさせていただきます。

 資料は、「有明海沿岸4県と国が協調した二枚貝類等の再生に向けた取組について」に基づき、説明をさせていただきます。この取組につきましては、平成29年度までの取組成果や30年度以降の取組について、全体的な概要を私から説明をさせていただきます。また、主な取組に関しましては、後ほど各県の御担当の皆様から説明があるかと思います。よろしくお願いいたします。

 まず、1ページ目です。取組の経緯・概要についてです。

 この評価委員会の平成18年度報告書におきまして、二枚貝類の生産の回復を図り、ノリ養殖生産と二枚貝類等の安定的な生産を確保すべきことが再生の目標と位置づけられておりました。これを踏まえまして取組を進めてきているところですが、平成27年度から有明海沿岸4県、福岡、佐賀、長崎、熊本の4県と国が協調した調査・実証等の取組を通じ、より効果的な漁場環境の改善に向けた事業につなげ、二枚貝類等の資源回復の加速化を図るということで取組を進めています。この取組に当たっては、漁業者の皆様の御意見も伺いながら実施しているところです。タイラギ、アサリの浮遊幼生調査、漁場環境改善の実証調査、増養殖技術の開発、漁場環境改善の事業を実施しているところです。

 その取組の主な成果が次の2ページ以降に記載をしています。

 平成29年度までの主な成果になります。タイラギにつきましては、左側に記載しています。浮遊幼生を4県で協調して調査してきたところです。図示しているとおり、有明海湾奥部、緑川河口域で浮遊幼生を確認するとともに、浮遊幼生の出現密度が低いこと、低いながらも近年増加傾向にあるということを確認しています。

 また、右側になりますが、上から人工種苗生産技術の開発、中段、垂下飼育技術の開発、一番下、被覆網による食害防止の効果を確認しているところです。

 3ページになりますが、アサリの取組の主な成果になります。左側をご覧ください。アサリにつきましては、浮遊幼生のネットワークの推定が概ねできたものと考えており、有明海では広域的な供給関係があり、有明海東側、諫早湾で多くの浮遊幼生が分布しているものと推定しているところです。

 右側になりますが、このネットワークのほか網袋による種苗効果、中段になりますが、被覆網などによる食害防止効果、一番下になりますが、保護区設置による資源量の増加、こういったこともあわせて確認をしているところです。

 また、資料には記載をしておりませんが、これらタイラギ、アサリのほか、アゲマキやウミタケ、クルマエビなどに関する取組を行ってきたところです。詳細については後ほど佐賀県からも御報告されると思いますが、22年ぶりにアゲマキ漁が一部地域で実施されるなど、部分的には明るい兆しが見られると考えています。

 これらの平成29年度までの取組を踏まえて、平成30年度からはタイラギ、アサリの広域的な浮遊幼生ネットワークの形成による再生産サイクルの構築に向けた取組に重点化して、取組を進めているところです。

 4ページをご覧ください。4ページ以降が平成30年度以降の取組になります。

 まず初めに、タイラギの取組になります。タイラギにつきましては、浮遊幼生が少ないということが確認されていますので、まずは、その浮遊幼生を増やす取組として、各県において人工種苗生産体制の構築、中間育成や移植の取組、3年間で2万個体の母貝団地造成を目指しているところです。

 5ページにつきましては、30年度以降のアサリの取組になります。アサリにつきましては、広域的な再生産サイクルの形成に向けて、覆砂や食害防止など漁場環境改善や保護区の設定などにより、今後十数箇所の母貝団地造成の取組というものを推進しているところです。今年度につきましては、各県御協力をいただきまして、10カ所の母貝団地を設定していただいているという状況になっています。

 6ページにつきましては、二枚貝類の食害防止対策ということで、ナルトビエイの来遊状況を調査しているところです。ナルトビエイにつきましては、二枚貝類の捕食による資源量に影響があると推定をしているところです。今後、効率的な食害防止のために来遊ルートをさらに明らかにする必要があると考えており、データロガーなどをナルトビエイに取りつけ、来遊状況の調査を行っているとところです。

 最後になりますが、7ページです。

 このタイラギ、アサリのネットワーク形成の取組に加えて、各県で関心が高い魚種に集中して引き続き資源回復に向けた取組を実施しているところです。左側が各県取組魚種、それから、右側が取組箇所というイメージを表しているものになります。

 以上、非常に簡単ではございますけれども、有明海沿岸4県と国が協調した取組の全体的な概要を説明させていただきました。私からは以上です。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、次の御発表をお願いしたいんですが、次は福岡県の説明につきまして、岩渕委員よりお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岩渕委員 ただいま御紹介いただきました福岡県水産海洋技術センター有明海研究所の岩渕でございます。

 本日は、福岡県有明海区におけますアサリとタイラギの増殖の取組についてお話しいたします。

 それでは、まずアサリにつきまして御説明いたします。1ページ目、お願いいたします。

 ここには、福岡県有明海区におけます1998年、平成10年から2016年、平成28年までのアサリ漁獲量を示しております。アサリは他の二枚貝と同様に資源量の変動が大きく、漁獲量も100トン台から5,000トン台と非常に大きな開きがあります。これは稚貝の発生場所と発生量が年により異なりまして、再生産が成功した年とうまくいかなかった年の資源の加入量の差が大きいということが考えられます。資源増殖には、稚貝の減耗防止対策、産卵母貝の保護、育成が重要であるという観点から、増殖策としまして2番目に示しております次の4つの項目、覆砂によります漁場整備、産卵成貝の保護と育成のための保護区の設定、密度の調整と成長促進を図るための移植放流、着底基質設置による資源添加を目指した天然採苗という事業を実施しておりますので、2ページ目から御説明いたします。

 次のページでございます。

 まず、漁場造成です。底質の悪化しました漁場に砂をまくことによりまして環境を改善し、アサリ等の二枚貝の増殖を図ること、干潟の環境浄化機能を回復させること等を目的に覆砂に取り組んでおります。左の図は覆砂漁場におけるCODの推移を示しておりますけれども、覆砂後も長期にわたって効果が持続しているということがわかります。2014年、平成26年の秋以降、覆砂漁場を中心に高密度のアサリ稚貝が確認されまして、特に2014年、平成26年の覆砂漁場では、アサリ稚貝の大量発生が認められました。有区の20号と呼ばれている漁場ですけれども、最大で1平方メートル当たり1万個体以上のアサリが発生しました。右の写真は、このときの発生したアサリ稚貝になります。これらの発生につきましては、平成28年度の評価委員会報告書にも一部記載させていただいております。

 次のページをお願いいたします。

 今申しましたようにアサリ稚貝が高密度に発生した漁場あるいは母貝の育成場として適しております漁場につきまして保護区を設定し、共同漁業権行使規則と漁業調整委員会指示による二枚貝の採捕禁止措置を行いました。保護区に設定しましたのは、右の図に示しております有区の3号、有区の10号、20号、24号の漁場になります。

 4ページ目には、この有区20号を初めとしましてアサリが高密度に発生した漁場におきましては、生息密度が高過ぎるということで、そのままでは餌量不足になり、成長が悪いだけでなく、活力の低下のためにちょっとした環境の変化でもへい死してしまうということで、適正な密度にするために間引きのための移植を行っております。

 右の図に示します赤色で示す漁場から緑色で示しました漁場に対して、2015年、平成27年11月から2017年、平成29年6月までに約800トン程度の稚貝を移植しております。移植先の漁場は、漁場環境はいいのですが、アサリの生息密度がまだ低いという場所で、保護区以外の漁場も対象としています。移植しましたアサリは、餌量環境がよくなりまして、成長も非常によくなっておりました。移植量は資源量の増加とともに増えまして、平成30年度、今年度も500トン以上を移植放流しまして、現在も継続中でございます。

 次に、アサリの天然採苗の取組です。

 左の図は、水産総合研究センター増養殖研究所の資料を拝借しております。これで説明しますと、網袋の中に着底基質となります砂利を入れまして、干潟に設置し、海中に漂うアサリの浮遊幼生が袋の中に入って着底あるいは近くに着底した稚貝がこの網袋の中に転がり込むことによって食害生物から守られ、波や流れによる逸散も低減し、安全に成長できるというものでございます。福岡有明海区におきましても、網袋を設置して採苗できるということを確認しましたが、泥がたまりやすいということで、埋没しやすいということから、右の写真の下のほうに示しています二重底プレートというものを下に置きまして、埋没を防ぐことによって何もしないものに比べると2倍以上採苗できるということがわかりました。採苗したアサリにつきましては、網袋の中で成長します。これらは漁獲販売するものではなく、産卵母貝として活用しております。

 次のページをお願いします。

 福岡県では、春と秋、3月と10月にアサリの資源量調査を行っております。緑の棒グラフが春の調査、赤の棒グラフが秋の調査による推定資源量を表しております。折れ線グラフはアサリの漁獲量ということになります。これまで申しましたアサリ増殖への取組によりまして、アサリの推定資源量は昨年の3月に1万2,000トン弱に増加しました。保護区の設定など、これまでに行ったことがない新しい取組が功を奏していると言っていいと考えております。このようにアサリの資源増殖技術開発については、ある程度の目処が見えつつあるというふうに考えているところでございます。

 次のページをお願いいたします。

 続いて、タイラギ増殖の取組についてお話しします。このグラフは福岡県におけますタイラギ漁獲量の推移です。御承知のとおり、近年、タイラギの資源量は低位で推移しております。成貝が少ないだけではなく、浮遊幼生と着底稚貝も極めて少ないという状況です。少ない着底稚貝は、夏には食害で大きく減耗し、食害を免れても秋には原因不明の立ち枯れへい死によって減耗するということで、2012年、平成24年から潜水器漁業の許可が出されていないという状況でございます。資源の回復には浮遊幼生、着底稚貝を増やさなければならないということで、産卵母貝数の確保がまず必要だろうというふうに考えます。このため、有明沿岸4県で協力しまして母貝団地の造成に取り組むということでございます。

 次のページですけれども、タイラギ母貝団地造成に至るまでの経過について御説明したいと思います。

 まず、右上のグラフですけれども、海底に移植したタイラギに食害防止用のかごをかぶせる試験区とかぶせない対照区を設けましたところ、対照区では生残個体が急激に減少するのに対しまして、かごをかぶせ食害防止をしますと、春から夏にかけての大きな減耗というのは起きないということがわかりました。しかし、それでも秋以降には立ち枯れのへい死が起きて、最終的に生残率は大きく減少し、悪い年には全滅してしまうということでございました。

 一方、タイラギを左の写真に示したように海中育成ネットに入れて、海底から浮かして育成しますと、右下のグラフのように食害による減耗がないのはもちろんのこと、秋以降の立ち枯れへい死も抑制する、発生しないということがわかりました。このように海中育成ネットで飼育したタイラギは、7月から8月に成熟、産卵しまして、母貝として機能するということも確認されております。このため、この海中育成ネットを利用することで母貝団地造成が可能であると考えたわけでございます。

 次のページです。

 天然の親貝が少ないという状況の中、母貝団地に収容する母貝が不足しているという問題があります。このため、人工種苗の生産、中間育成技術の開発を水産研究教育機構の指導のもと、今年度より開始しております。今年度は幾らかの着底稚貝の生産に成功しまして、中間育成を経まして、海中育成ネットを使った母貝団地の育成に利用したいと考えております。今後は母貝団地の規模を拡大し、タイラギの増殖につなげたいと考えております。

 なお、タイラギ漁再開のためには、食害の対策、立ち枯れへい死の原因究明が必要なのは言うまでもありませんので、引き続き取り組んでまいりたいと考えております。

 以上で福岡県におけるアサリとタイラギの増殖についての取組に関する説明を終わります。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、佐賀県の説明につきまして、久野委員よりお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○久野専門委員 佐賀県有明水産振興センターの久野と申します。

 当県からは重要二枚貝であるタイラギとアゲマキの取組について説明させていただきます。座らせて説明させていただきます。

 まずタイラギですけれども、取組の全体概要について説明させていただきます。

 皆様も御存じだと思いますけれども、タイラギは生まれた後、その時々の潮流や環境によって非常に生き残りが左右されやすく、元来、資源の変動が大きい貝類でございます。過去にも不漁となる年もありましたけれども、近年はこれまでになく不漁が続いているところでございます。その原因としましては、委員会報告にもまとめてありますけれども、立ち枯れへい死と呼ばれる大量へい死、それから、貧酸素水塊によるへい死、浮泥等の堆積による漁場の悪化、ナルトビエイによる食害などが複合的に関与しているものと考えられます。また、それらの原因について卵を生む親貝が減少して、産卵数がより一層少なくなる悪循環が続いている状況でございます。いわゆる再生産サイクルがうまく機能していない状況にあり、今年度漁期も漁獲対象となる成貝が確認できず、残念ながら佐賀県、福岡県のほうも一緒ですけれども、7年連続の休漁となっているところでございます。

 このようなことから、当県では資源回復のための取組として、再生産サイクルのもとになる母貝をいかに漁場にたくさん確保するかということを第一のポイントとして考え、人工種苗生産などの取組も取り組みながら、天然発生個体の移植による漁場での親貝確保を積極的に現在進めているところでございます。また、この取組以外にナルトビエイの駆除、海底耕うんなどの底質改善、立ち枯れへい死などのへい死原因究明の研究などを関係機関、関係県で連携しながら実施しており、母貝移植から母貝団地の形成にしっかりつながるよう、多様な取組もあわせて進めているところでございます。

 次の資料をよろしくお願いします。

 それでは、母貝団地造成によるタイラギ資源回復の取組について、これまでの取組状況について説明させていただきます。

 当県では、母貝団地造成のためにまずは平成26年度から平成29年度の4カ年で他海域産、これは大分の豊前海産になるんですけれども、タイラギの親貝、殻長15から35センチ、4万1,000個体を平成29年度までに移植をしております。移植場所としてエイの食害の影響が少ないと考えられる県内の沖合漁場3カ所に移植しております。また、平成29年3月に国の水産研究所から提供された人工種苗、殻長5センチ、約600個体をこれも沖合の2漁場に移植しております。

 それでは、移植のこれまでの状況ですけれども、資料の左側の中段に1つグラフがあります。大変わかりづらいグラフで申し訳ございませんが、ここに平成29年と平成30年の豊前海域産の移植タイラギについて、平成29年3月から平成30年11月までの生残率の推移を示しております。このグラフで見てわかりますとおり、平成26年度以降3カ年は、基本的には生残率は7、8割と維持されているんですけれども、平成30年7月以降、生残率が大きく低下して、11月時点で10%から20%程度となっております。この原因については、現時点では断定はできませんけれども、追跡調査から、昨年7月、大雨以降の貧酸素水塊や浮泥の影響があったのではないかと考えているところでございます。

 また、左の下のグラフですけれども、これも大変わかりづらい図表で申し訳ございませんが、水研から平成29年3月に提供された人工種苗タイラギの沖合漁場への移植後の生残率の推移を示しております。移植後、マダコやイシガニによると考えられます食害によって生残率は低下しておりますけれども、一部試験区は40%という状況でございます。また、この原因につきましては、ネトロンネットのかごをかぶせ食害防止をしておりますけれども、そのすき間からマダコやイシガニが侵入して、その食害に遭ったというところでございます。

 移植貝の生残は今のところ厳しい状況でございますけれども、その右のほうに写真を載せておりますけれども、移植した貝の成熟を確認しておりまして、放精・放卵もしており、産卵の寄与は確実にしているというところでございます。

 これまでの母貝移植では放精・放卵は確認され、母貝としての機能を果たしてはいるんですけれども、養成数や着底数の増加へ目に見える形での成果はまだつながっておりません。引き続き母貝確保のための取組を継続させることが必要ではないかと考えております。また、当県の移植場所については、これまでの結果を踏まえて、沖合漁場から干潟漁場を中心とした移植場所の検討もしていくこととしております。さらに、現在、天然親貝の確保が困難な状況ですので、安定的な人工種苗の確保が必要であるということから、人工種苗の量産技術開発も重要と考えており、今年度からその技術開発に取り組んでいるところでございます。

 次のページをお願いします。

 次に、アゲマキの資源回復の取組の全体概要について説明させていただきます。

 アゲマキは当県有明海干潟域で漁獲されている特産貝類で、かつてはお助け貝と言われ、ノリ養殖漁業者などの夏場の貴重な収入源となっておりました。昭和50年代から60年代初めには500トン前後の漁獲がされておりましたけれども、平成2年から3年にかけまして漁獲量が顕著に減少しておりまして、平成4年度以降はほとんど漁獲がない状況となっております。この大量死の原因については特定に至りませんでしたけれども、当県では資源回復が急務ということで、平成8年から資源回復のための本格的な取組に着手しているところでございます。具体的には、種苗生産や放流技術を開発して稚貝を大量に放流し、卵を生む母貝の集団をつくり、産卵を行わせる再生産サイクルを復活させる取組を継続して行っているところでございます。

 そこに技術開発の経緯を示しておりますけれども、最初、平成8年からの取組がスタートで、種苗生産技術開発ではビーカーレベルの基礎試験から始まって、種苗量産のための技術開発、放流後の生存を高める技術開発を進めてきて、それらの知見を踏まえて、国の予算も活用させていただきながら、平成20年度からは大量放流とさらなる放流技術の高度化を図って、その結果、昨年6月に限定的ではありますけれども、一部の漁場で漁獲再開に結びついたところでございます。

 次のページをよろしくお願いします。

 では、具体的なところを説明させていただきますけれども、当県では平成8年度から7、8mmの大きさの稚貝を大量に生産する技術の開発に取り組んで、現在では年間200万個以上の生産できるレベルまで達しております。これまで累計で1,000万個以上の稚貝の放流を行ってきました。こうした稚貝の生産技術開発とあわせ、稚貝の放流に適した漁場環境を試験調査し、放流適地として干潮時の海水面から3m程度の高さの干潟であることとか、干潟の水分含率が60%前後であることなどが判明しているところでございます。また、放流の際の稚貝の拡散を防ぐ網を漁場にかぶせることによって、稚貝の生き残りが高まることを明らかにしております。このような取組の結果、平成27年度から特に当県、そちらの右側の図に有明海の図が、右下のほうに有明海の図がありますけれども、当県の有明海の湾奥西の位置、鹿島市地先の干潟になりますけれども、放流した貝が順調に生き残って、それらの生まれた稚貝が放流漁場の周辺に多く見られるようになりました。昨年の春には大きく育った貝が多いところでは1㎡当たりに40個体ほど確認されたことから、6月の1カ月間、鹿島市地先の一部の漁場で22年ぶりの漁獲が再開されたところでございます。

 今後の課題としては、今回の操業再開となった漁場は限定的でありまして、本格的な漁獲再開には生息域のさらなる拡大や資源量の増加が必要でありますので、そのためには先ほど右下の図にありますように、青色の丸で示しておりますけれども、鹿島市地先以外の中部地区、東部地区、それから、長崎県境のほうの南部地区も含めて、母貝集団の形成を促すために人工種苗の大量放流を継続してやっていくこととしております。このようなことから、今年度はまだ種苗量産安定化に向けての問題も幾らかはあるんですけれども、引き続き8mm200万個放流体制を継続させて、鹿島市地先以外での母貝集団形成に積極的に取り組んでいきたいと思っております。また、福岡県との連携ですけれども、福岡県地先でも放流に取り組んでもらっていただいているところでございます。

 ちょっと雑駁な説明となりましたけれども、佐賀県からは以上でございます。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、長崎県の説明につきまして、長崎県総合水産試験場の桐山様よりお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○桐山介藻類科長(長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター) 長崎県総合水産試験場の桐山と申します。よろしくお願いいたします。

 長崎県では、国の有明振興事業によって2015年から2017年に行いました干潟域におけるタイラギ人工稚貝の移植試験の結果について報告させていただきます。

 農林水産統計に基づきますタイラギ漁獲量の変化を示したものです。オレンジ色が有明3県を、長崎については青色で示しております。図のとおり、長崎県ではかつて4,000から5,000トンの漁獲量がありましたが、1993年の67トンを最後に94年以降、休漁が続いております。このため、地元からタイラギ資源の回復についての高いニーズがあります。

 そこで、長崎県では2006年から種苗生産技術の取組を開始しております。2006年には開始当初1,500個体の着底稚貝の生産をすることができましたが、その後、7年間はゼロから800個の生産と低迷が続きました。2014年から2017年にかけまして、餌料の開発や飼育装置の改良などを経まして1万オーダー、そして、2017年には10万オーダーの生産できるようになりました。これは、2017年に瀬戸水研が開発した連結水槽という飼育装置の導入があったことが影響していると思われます。

 ところが、2018年におきましては国の技術指導を受けながら生産を行いましたが、担当が代わったこともあり、生産実施がゼロとなり、改めてタイラギ種苗生産の難さを再認識したところであります。

 次に、タイラギ資源の回復のため、長崎県では、種苗生産した稚貝を用いて、干潟域を利用した移植試験に取り組んでおります。かつてカキ養殖筏を利用した垂下飼育あるいは沖合海底での移植試験を行いましたが、貧酸素や低塩分によるへい死、また、食害対策や飼育管理面などの問題があること、さらに、現在のタイラギの分布状況をみますと、干潟域が主体となっていることから、現在のタイラギの移植には干潟域が適していると考えました。試験は、干潟域における移植の好条件を調べるため、干潟のどの場所にいつ移植すれば良いのか、移植した人工稚貝が成熟し再生産するのか、などを調べました。

 まず、移植場所の検討ですが、天然のタイラギが干潟域のどの地盤高に分布しているのか、過去の知見と現在の状況を調べました。図は過去3年間、2014年から2016年にかけての地盤高別のタイラギの分布状況を示しております。真ん中のオレンジ色の30cmのところが最も突出しており、全体の30%以上を占め、地盤高30cm辺りが天然タイラギの分布が多いことが確認されました。

 そこで、作業効率などを考えまして、30、60、90、120cmの4カ所の地盤高で稚貝の移植試験を試みました。図は10月をスタートに、殻長8cmサイズの稚貝を、30、60、90、120cmの各地盤高に移植した結果を表したものです。この図のとおり地盤高90、120cmにつきましては、移植翌春の4月、5月にかけて全滅しました。一方、30cmと60cmの地盤高につきましては、移植約2年後の8月まで約30%が維持されまして、右図に示しております殻長ですけれども、青色で示していますとおり、当初8cmのものが約19cmに成長しており、30cmと60cmの地盤高が移植に適していることが確認されました。このことは天然のタイラギが多く分布している地盤高と一致する結果となっております。

 次に、移植時期を検討するため、2015年5月、6月に種苗生産を行った稚貝を用い、8月以降に12月の間にかけて、毎月、月ごとに移植して、その後の経過を追ったものです。青丸と赤丸で示すものが、8月に移植した稚貝で、各々平均殻長が5cmと1.5cmです。紫色の丸は9月に7cmのものを、黄色の丸は10月に8cmのものを、ピンク色の丸は11月に10cmのものを、そして、緑色は12月に10cmのものを移植したことを示しています。

 この図のとおり、移植した11月、12月群は翌年の春には全てへい死しましたが、8月から10月の移植群は、およそ2年後まで生残が確認されました。

 こちらの図は、生残した稚貝の生育状況を表したものです。8月移植群のものが殻長1.5cmと最小でしたが、2年後には、他の移植群と同様の20cm近くに成長することが確認されました。また、この結果から8月以降、早く移植するほど小型のものが高成長を示す結果になりました。さらに、移植したものはおよそ1歳で漁獲サイズとなる殻長15cmに達することも確認されました。

 次に、移植した人工稚貝が成熟するのかを調べました。供試貝は事前に干潟に移植して大きくした1歳、2歳のタイラギを2017年7月に取り上げまして、産卵誘発を行った結果です。供試した2歳貝では雌28個体と雄20個体、1歳貝では雌15個体と雄13個体を用いました。誘発率は、温度刺激等によるもので、2歳貝では、雌の64%が産卵、雄の85%が放精を行いました。1歳貝でも53%と69%で誘発が認められました。特に2歳貝では雌1個体当たり928万粒の卵が得られまして、これらの結果につきましては、天然タイラギの採卵で得られる卵数と変わらず、移植した人工稚貝は成長し、天然タイラギと同様の産卵をすることが確認されました。また、これらの卵を用いまして着底稚貝まで生育することも確認しました。

 以上、今回の移植試験の成果をまとめますと、移植適地としては天然タイラギが分布する干潟の地盤高30cmから60cmの場所が適地であり、できるだけ早い時期に種苗生産を行って、梅雨時期を避け、梅雨が終わる7月終りや8月以降から移植することで、その後の稚貝の成長、生残率の向上が期待されます。そして、移植した稚貝は1歳で成熟し、移植1年後には殻長15cmの漁獲サイズに達することがわかりました。これらの成果は、平成30年度から4県で進めております母貝団地造成に関する基礎的知見として活用しているところであります。

 以上、長崎県のほうから報告を終わらせていただきます。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、熊本県の説明をお願いしたいと思います。中野委員よりお願いいたします。

○中野専門委員 熊本県水産研究センターの中野です。座らせて御説明させていただきます。

 私からの御報告については、広域的なアサリ母貝集団ネットワークの形成に関する検討としまして、網袋によるアサリ稚貝の着底促進効果などの取組と、アサリ母貝団地形成試験を御報告します。また、ハマグリについては母貝保護手法ごとの保護効果の検討を御報告いたします。このタイトルに出ています浮遊幼生の移動ルートについては、先ほど御報告がありましたので、私のほうからは割愛させていただきたいと思います。

 スライドを飛ばします。4枚目のスライドから、ページ4をお願いいたします。

 まず、網袋によるアサリ天然種苗の効率的な採苗方法の検討についてお話をいたします。

 この試験は、網袋の採苗数と流速との関係を明らかにする目的で、平成27年11月から平成29年11月に実施しております。右側に示しました図が試験地を示しておりまして、この太い線で示しておりますところから向かって右側が陸地になりまして、左側が干潟域になって、調査点としてはA、B、Cの3点を設けております。このA、B、Cの3点の各地点に砂利を入れました網袋を200袋ずつ、網袋の大きさは30cmから60cmでございますが、これを設置し、設置後、約2カ月後にアサリの稚貝の密度、殻長を調べております。また、地点ごとに電磁流速計を設置し、15昼夜の流速の累積を調べております。

 結果をグラフで示しておりますが、まず、上のグラフですが、これは地点ごとの流速の累積値を示したもので、A、C、Bの順に累積値が高いという数字になっております。また、下のグラフは採苗数を示したものでございますが、対照区に比べまして地点Aは37倍、地点Cは9倍、地点Bはゼロということで、流速の高い場所が稚貝の密度が対照区に比べ多い傾向が認められ、網袋を利用したアサリ天然種苗の採苗においては、採苗場所の累積の流速は採苗数に関係あることがわかりました。

 続きまして、2つ目でございます。

 次は被覆網を用いたアサリ稚貝の保護法の検討について御報告いたします。この試験は平成29年の5月から11月に行ったものでございます。先ほどの試験でお示しした地点Cにノリ養殖時期ではありませんけれども、ノリひびを設置し、そのノリひびの岸側を試験区、そうでない場所を対照区として設定しています。試験区にはそれぞれ網袋で採苗したアサリ稚貝をまき、その上に被覆網がない場所、大きい目合いの被覆網を設置した場所、小さい目合いの被覆網を設置した場所の試験区をセットしております。7カ月後のアサリ密度を比較いたしました。

 結果ですが、グラフに示しておりますけれども、目合いが小さい被覆網を設置したところについて最も保護効果が高いという結果を得られております。

 続きまして、アサリの母貝団地形成試験の保護区についての報告です。

 この試験は平成27年から開始し、現在まで継続中でございます。試験は熊本県の主要アサリ漁場であります緑川河口域のアサリ漁場の一部、広さ2万8,000㎡ですが、これを保護区として、食害生物駆除、耕うん、被覆網の設置、稚貝移植等を行っております。食害生物駆除につきましては、延べ300人の漁業者がツメタガイ等の食害生物をジョレンでとって駆除することとともに、ジョレンで耕うんを行うという形でやっております。

 結果ですけれども、平成29年7月時点で最も高い効果が見られた地区では、対照区に比べ2.9倍のアサリが生息していることを確認してございます。

 続きまして、ハマグリについてお話をいたします。

 ハマグリについては、母貝保護手法ごとの保護効果の検討を行っておりますが、資源管理手法として漁業者の方に産卵期の休漁とか保護区の設置、漁獲サイズの大型化などを提案し取り組んでいただいているところなんですけれども、漁業者の方とお話しすると、ハマグリは移動するから、保護しても見返りが少ないとか、どのような保護区がよいかわからないとかいう御意見が出ることがあり、この試験を行ったというふうになります。試験は平成29年7月に緑川の河口の干潟2カ所に保護の方法として、土嚢区、被覆網区、直播区、そして、カゴ区を設置しております。土嚢区の面積は縦5m×横5m、被覆網区は6m×6m、直播区は2m×2mで、用いたハマグリの大きさは平均殻長34.7mmのものを用いております。これらの試験区に加え、移動の影響を確実に排除した区としてカゴ区を設けております。

 10月に設置し12月に取り上げた結果でございますが、2カ所のうち1カ所の結果をここに示しております。土嚢区と被覆網区の生残率が一番移動が少ないと考えられるカゴ区とほぼ同様の結果を示しました。このほか、管理の頻度、労力とを比較しますと、被覆網区が最も母貝の保護としてはすぐれていると考えられました。しかしながら、2つ試験区を設けたもう一つの区につきましては、土嚢区、被覆網区、直播区のいずれにしても残存率が2から8%で、カゴ区の34%に比べ低く、場所により異なる結果を示しております。この点については、塩分、水温、粒度組成などから原因を考察する必要があるということで、今検討を続けているところでございます。

 また、本試験では2回試験を行っておりますが、1回目の試験のときに試験貝が試験開始後1潮で全て死んでございます。これは産卵直後の貝を用いたためということがその後の調査でわかりました。このことから、産卵直後の移植はリスクが高いということが推察されます。ただ、当県の場合に問題なのは、ここにグラフを示しておりますが、年により成熟する時期が1カ月ほどずれるという状況が見られております。年ごとにこの確認をする必要があるというのは、若干厄介かなと考えております。

 これらの結果から、ハマグリの保護区の活用計画として現在漁業者の方に提案しておりますのは、夏、被覆網区に移植し、翌年2月から3月に保護することが現実的で、一番やりやすいのではないかということでお示ししております。また、よりベストな方法として、夏場に被覆網へ移植し、翌々年2月、3月に漁獲すれば2回産卵することができ、漁獲サイズも大型化できていいのではないかということで提案しているところでございます。

 熊本県の報告は以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、このグループの最後になりますが、鹿児島県の説明につきまして、小湊委員のほうからお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○小湊専門委員 鹿児島県水産技術開発センターの小湊と申します。よろしくお願いいたします。

 当県からは八代海に係る報告になります。八代海の鹿児島県海域の主な漁業ですけれども、長島町のブリ養殖になります。そこでは赤潮による漁業被害が発生をしておりまして、その対策が大きな課題となっております。今回は八代海における有害赤潮の発生状況や平成29年度に発生しましたシャットネラ赤潮の概要、それと、赤潮防除剤の開発状況について御紹介したいと思います。

 1ページになります。

 1ページは過去2カ年の八代海における有害赤潮の発生状況になります。29年度は7月下旬に長島町周辺でカレニア赤潮、8月下旬には八代海全域でシャットネラ赤潮が発生しております。また、30年度は6月下旬に長島町獅子島地先でコクロディニウムとメソディニウムの混合赤潮、それから、8月下旬からは八代海全域でシャットネラ赤潮が発生しております。この4件の赤潮ですけれども、幸いなことに漁業被害の発生はありませんでした。

 2ページになります。

 2ページは平成29年8月下旬に発生しましたシャットネラ赤潮につきまして、環境条件等から発生要因等を検討したものです。シャットネラ・アンティーカにつきましては、現在、八代海で最も警戒が必要な赤潮プランクトンとなっておりまして、平成21年、22年は2カ年で鹿児島県のほうでは57億円の漁業被害が発生しております。シートの3番のところになりますけれども、シャットネラ赤潮の発生状況を示しております。これはモニタリング調査でシャットネラ・アンティーカの遊泳細胞をずっとモニターしておりますけれども、5月上旬に初認されまして、6月下旬まではほとんど見られない状況、それから、7月から8月上旬にかけて八代海全域でmL当たり数細胞で推移しております。それが8月下旬になりますと、八代海の中部海で高密度化しまして、次第に南下、8月31日から9月3日ぐらいをピークにしまして、長島町周辺の養殖漁場でもmL当たり数十細胞まで達しましたけれども、その後、急速に減少・終息しております。

 この赤潮におきましては、最高細胞密度はmL当たり533細胞で、水深が17m、全般的に5m以深でも細胞密度が高い傾向にありました。

 次のページですけれども、環境条件等による発生の要因です。図が拡大すれば見られると思いますけれども、左上のグラフに4月から8月までの降水量と日照時間をしております。降水量は平年より少なく、日照時間は平年より長い傾向にありました。

 次のグラフは、競合種であります珪藻類の密度を見ております。DIN、DIPともに8月以降、濃度が高くなって推移しておりました。

 右端のグラフになりますけれども、観測日は異なりますけれども、赤潮時の水中の光環境です。八代海南部では、水深15mまでシャットネラにとって良好な光環境となっておりました。

 次に、中段のグラフですけれども、赤潮発生時の環境条件の推移です。赤潮発生前におきましては、一定の降雨がありました。また、発生期間中は晴れ上がって日照が十分ありまして、そのときの潮汐は海水の移動の少ない小潮で、全体的に水温は増殖適水温の中で推移しております。このようなことから、8月下旬のシャットネラ赤潮につきましては、7月下旬以降、競合種である珪藻類が減少し、また、8月以降、栄養塩が存在した中で日照時間が増加、そういうことでシャットネラの増殖が進んだものと考えております。

 また、八代海の中南部5m以深ではシャットネラの細胞密度が高かったんですけれども、これにつきましては、より深いところまで光環境がよかったことが一つの要因と考えられるかなと思っております。

 4ページからは赤潮防除剤の改良です。

 鹿児島県におきましては、昭和56年度からモンモリロナイト系粘土を赤潮防除剤として開発しております。赤潮に活性粘土を散布しますと、アルミニウムイオンが溶出しまして、赤潮プランクトンの細胞を破壊するとともに、凝集・沈殿させております。この防除剤は、コクロディニウムの赤潮には大体濃度で1,000ppmぐらい散布しますと防除効果が得られておりますけれども、現在問題となっているシャットネラ赤潮につきましては効果が低いために、3倍から8倍の散布量が必要となり、実際上、有効ではないというようなところがあります。

 このようなことから、シャットネラ赤潮に有効な赤潮防除剤の改良を水産庁の委託事業を受けまして、実施しております。改良は活性粘土であります入来モンモリに焼ミョウバンを添加しまして、一時的にペーパーを低下させ、アルミニウムイオンの溶出を促進するものです。アルミニウムイオンの濃度を高め防除効果を向上させるとともに、改良粘土が魚介類に与える影響についての評価、それと、実際の赤潮海域での実証、散布試験を実施しまして、改良粘土の効果や経済性、安全性について検証を行いました。

 5ページの左上のグラフは、シャットネラの防除効果試験の結果になります。活性粘土に焼ミョウバンを足します。粘土1,000に対して焼ミョウバン100の濃度で改良粘土を散布することで、シャットネラ細胞をほぼ100%破壊・凝集することができております。

 右上の図は、野外試験の状況です。赤潮発生時に1m四方、深さ4mのシートで赤潮海水を囲いまして、その中に改良粘土を散布したものです。表層のアンティーカ細胞は5分後にはほぼ100%破壊・凝集されております。

 左下の図は、改良型粘土の防除効果確認濃度の一覧になります。シャットネラ・アンティーカ、マリーナ、カレニアなど5種類の赤潮プランクトンで防除効果の向上を確認しております。

 右下の図は、それから水産生物への影響試験の実施状況になります。ブリ、カンパチ、ヒオウギ、アコヤガイなど7種の魚種で試験を実施しまして、安全性の確認を行っております。

 6ページですけれども、シャットネラ赤潮にこの粘土単体と改良型粘土を散布した場合のコストの比較をしたものでございます。改良粘土では、粘土の散布量が3分の1にすることができました。また、散布コストは2分の1になりまして、経費の削減だけではなく、散布労力の削減も期待されているところでございます。

 これらの結果につきましては、平成30年3月に散布手順や有害種別の有効濃度、安全性の確認状況を漁業者向けに取りまとめまして、改良型粘土を用いた赤潮被害防止マニュアルとして作成しました。それを関係機関に配布するとともに、当センターのホームページで公表しております。

 以上で報告を終わります。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 それでは、ただいま農林水産省、関係各県からの御説明が合計6件ございました。今から質疑応答をまとめてお願いしたいと思うんですが、お手元のところの資料がタブレットになっておりますので、できれば順番にといいますか、御発表の順番から御質問いただきたいと思います。残りが10分程度ですので、1件当たり2件までいけるかなと思います。

 それでは、まず最初に、農林水産省からの御説明につきまして何か御質問等があればお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 タブレットを開いていただくと、2-1からですが、どうぞ、古川先生。

○古川専門委員 海洋政策研究所の古川です。

 すみません。では、最初に質問というかコメントを1つさせていただきたいと思います。

 その資料の3ページ目のところ、左側のところの図として浮遊幼生のネットワークの推定というのが書かれています。これに基づいて母貝団地を造成されて、見事にアサリが再生されたということなんですけれども、ここの矢印の読み方をもう少し解説されたほうがよろしいんじゃないかなと思いました。

 例えばどっち方向、行ったり来たりしている矢印は片一方のほうが強いのかとか、ほかの矢印に比べてこちらの矢印が強いとか弱いとかということがあれば、よりネットワークの様相が伝わるのかなと。特に解説文の最後のところに、これこれのところで多く浮遊幼生が分布しているものと推定と書かれていますけれども、どこからどこに浮遊幼生が供給されていることが推定されたというところまで、メカニズムまで踏み込んだ解説がされていると、その後の事業の成功がどういう要因であったかということについての強いサポートになるかなと思いましたので、内容については全く異論はございませんけれども、こういう資料を皆さんにお伝えするときに、ポイントとしてもう少し丁寧に説明されてはいかがかなと思いました。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。コメントいただきましたが、いかがでございましょうか。何か御回答、御返事はありますでしょうか、ただいまの。

○松宮農地資源課課長補佐(農林水産省) アドバイス、ありがとうございます。

 本日の資料は非常に簡単なトピックだけでしたので、そこまで書き切れませんでした。シミュレーション上はそういったことも検討が可能ですので、説明の際には、ぜひそういったことも含めて説明をしていきたいと思います。ありがとうございました。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 ほかにございませんか。

 それでは、次の御説明、福岡県の御発表に対しまして何か御質問等ございませんでしょうか。

 アサリ増殖、タイラギ増殖等についての御報告でございましたが、特によろしいですか。よろしいでしょうか。福岡県さんのほうから逆に何か補足説明等あればとは思いますが、よろしいですか。

○岩渕委員 補足としては、今回、資料に間に合わなかったので御説明しませんでしたけれども、6ページ目のグラフで、平成30年の秋の推定資源量に関しては御説明しておりません。実は今回発生しました稚貝アサリにつきましては、30mmを超えると漁獲可能ということで平成29年、平成30年と漁獲が増えております。30年の秋にやりました資源量調査の結果につきましては、漁獲が進んだということで資源量そのものは減少している状況です。およそ6,000トンぐらいになるのではないかということです。

 それから、残念ながら平成29年、平成30年と梅雨時期に豪雨がありましたので、この2カ年に関しましては、稚貝の着底というのは非常に少ない状況であります。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、次の佐賀県さんのほうの御発表でございますが、何か御質問等ございませんでしょうか。

 どうぞ。

○古賀委員 すみません。アゲマキに関してなんですけれども、浮遊幼生の件です。基本的に浮遊期間が非常に短いということもあって、なかなかつかまえ切らないんですが、今年度の浮遊幼生の状況はどうだったかということを1点だけ、お願いします。

○久野専門委員 今年の浮遊幼生の状況はどうかとの御質問だと思います。今年も浮遊幼生調査は実施しておりますけれども、まだ個体の分析はできていませんので、そこの評価はできていません。ただ、特に鹿島地先のほうは母貝がたくさんいるということで、過去の浮遊幼生調査の結果では、ほかの地区に比べたら幼生数が多い傾向は見られています。詳細な分析はまだこれからというところで、今年の状況は、現在分析中ということでございます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 それでは、ほかにございませんでしょうか。

 それでは、次の長崎県さんの御報告ですが、いかがでございましょうか。何か御質問等。特にございませんでしょうか。

 それでは、長崎県さんのほうから何か追加のコメント等がいただければと思いますが、無理には申しませんが。

○桐山介藻類科長(長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター) 特に追加のコメントはございません。

○滝川小委員会委員長 よろしゅうございますか。ありがとうございます。

 どうぞ。古川委員から質問が。

○古川専門委員 すごく単純な質問です。タイラギの干潟にまくときに地盤高の30cm、60cmと書いてあるんですけれども、この地盤高というのは何を基準にしているかというのが確認のために教えていただきたいんですけれども。

○桐山介藻類科長(長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター) 気象庁が報告されています潮位表の年間の大潮時の平均的な干潮面を基準にしたところからの高さと御理解いただければと思いますけれども。

○古川専門委員 基本的には、かなり浸水時間の長い領域ですね。

○桐山介藻類科長(長崎県総合水産試験場種苗量産技術開発センター) かなりの大潮の干潮時のときにしか干上がらないような状況の場所です。

○古川専門委員 了解しました。

○滝川小委員会委員長 よろしいですか。ありがとうございます。

 それでは、次の熊本県さんの御発表についての御質問。

 よろしくお願いします。

○小松委員 九大の小松ですが、2点お聞きします。

 1つはハマグリの保護区活用計画ということで、理想形が夏季に被覆網区に移植して、翌々年2月、3月に漁獲すればいいんだと。そうすれば殻長が大きくて、2回産卵するということで、これが理想形だということですが、逆に問題点はないんだろうかというのが1点。

 それからもう一つは、特に熊本県さんというわけではないんですが、全体に対してですが、私、物理屋なので、こういう生物系はあまりよくわからないんですが、物理屋から見ると有明海みたいな非常に広い海域にちょっといろいろ手を加えても焼け石に水で、なかなか効果が出てこないんですね。こういういろんな母貝団地とか、いろんな工夫をされると確かに効果は出るだろうけれども、いわゆるスケール的に海域全体に対して有効な手段となり得るんだろうかというようなところ、これ全体的な話ですが、その辺の何かどなたからでも結構ですので、コメントをいただければと思います。

○滝川小委員会委員長 お願いいたします。

○中野専門委員 熊本県でございます。

 最初のハマグリの保護のデメリットのことですけれども、結局生産者の方がどれだけ耐えられるかというところがきいてくると思いますので、現状では、やっぱりこのくらいがいっぱいいっぱいだということでコンセンサスがなかなか2年とっておくというのは難しいということで、このくらい我慢してねということでやっているところです。ですから、デメリットとしては生産者の収入がその分下がって、今は、その保護している段階では、そのときはアサリをとるといったことで、ハマグリとアサリの入れかわりでつないでいるような形でございますので、なかなか2年そこをするというのは難しいのかなということで考えます。

○小松委員 私がよくわかっていないのかもしれないんですが、毎年やって、2年目のとるということはできないんですか。

○中野専門委員 毎年やるというのは、先生のおっしゃっているのは、今年例えば夏にやって、それを翌年まで持っていって、またそこで続けて翌年もやるということでしょうか。それとも、2年間我慢して、そこの保護区はとらないということ、どちらでしょうか。

○小松委員 よくわからないんですが、こういうプロセスをそれぞれ1年ずらしてやっていくと。そうすると、毎年、だから、場所は違うでしょうけれども、毎年収穫ができるというわけではないんですか。

○中野専門委員 今、保護区というのは大体決まっていますので、それで毎年、1年サイクルでぐるぐる回しているような形なので、それが複数あれば、そうやって2年手をつけないというのはできるかと思うんですけれども、今そこまでは行っていないと思います。

○小松委員 そういうことですか。わかりました。

○滝川小委員会委員長 もう一つ、小松先生から個々の事業が至るところで行われているけれども、海域全体としての効果といいますか、その連携みたいなものを含めて何かコメントございますでしょうか。

○中野専門委員 熊本県としましては、まずできるところからやっていくということですので、地先でできることをやっていくという形では取り組んでおりますということでいかがでしょうか。

○滝川小委員会委員長 多分、小松先生の御質問は我々が今から全体を通して考えていかなきゃいけない課題かもわかりません。小委員会の課題の一つとしても取り組んでいく必要があるのかなと思います。整理しながら分析していくという過程が入ってくるのかなと思います。

 時間がありませんので、そういうことで進ませていただきたいと思います。

 熊本県さんに1点だけ確認です。4ページのところで流速と書いてありまして、これ4,000cm/sec、これどういう……

○中野専門委員 説明が不明確だったんですが、これは、要は流速計の数値をどんどん累積して、合計値です。ですから、バーストで間に何回インターバルをとるかによってまた違ってくるんですけれども、等間隔でとっておりますので、それを単純に乗っけていった合計値で示しているということで、それが正しいかどうかというのはまたいろいろ議論があると思いますが、今回の場合は、そこの場所の流速の強い、弱いというのを示すために合計値を使ったということで御理解いただければと思います。

○滝川小委員会委員長 わかりました。いろんな整理の仕方も出てくるでしょうし、ありがとうございました。

 それでは、最後になりますが、鹿児島県さんのほうからの御発表につきまして、御質問等ありますでしょうか。

 どうぞ、お願いいたします。

○古米委員 東京大学の古米です。スライドの2番目のところでシャットネラ赤潮の発生状況で、注意報発出と警報発出がそれぞれ17日と28日に行われています。現場では、どういう判断基準でこの注意報だとか警報というのは出されているんでしょうか。

○小湊専門委員 注意報だと赤潮化するような状況になっているときを判断して、具体的な細胞数とかそういう指標になる数字は決めておりませんけれども、状況を見て判断しております。それで、警報のときには、赤潮が拡大して大きな漁業被害の発生が予想されるようなときということで出しております。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。いろいろな予測手法等々につきましても、開発あるいは簡易的に使われているということもあろうかとは思いますが、ありがとうございました。

 ほかによろしいでしょうか。時間が押してまいりまして、これで前半の一番最初の6件の御発表につきましては、農林水産省、関係県からの説明を終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、ここで10分間の休憩とさせていただきたいと思いますが、後半もございますので、始まりを15時35分ぐらいでよろしゅうございますでしょうか。15時35分から再開させていただきます。

 それでは、休憩に入ります。よろしくお願いいたします。

午後3時27分 休憩

午後3時36分 再開

○滝川小委員会委員長 時間となりましたので、次のセッションを始めさせていただきたいと思いますが、よろしいですよね。

 それでは、時間となりましたので、次は水産庁さんからの説明をお願いいたしたいと思います。それぞれ時間は10分程度でお願いしたいと思います。質疑応答につきましては、御発表の後、まとめて時間をとりたいと思います。

 それでは、まず初めに水産庁研究指導課の内海様より御説明をお願いいたしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) 内海と申します。よろしくお願いします。

 資料は3-1になります。本事業は、事業名の各地域の特性に応じた有明海の漁場環境改善実証事業というのが示すように、それぞれの地域の特性に応じた漁場環境の改善技術について、漁業者自らが実施できる技術の開発を目的としています。主にアサリを対象として漁場の環境改善、特に底質の泥化やホトトギスガイマットの防除等のための技術開発を実施した事業でございます。これからの説明については、前半部はその技術について、後半部はその実施場所で観測されたデータから考察できたことを御紹介いたします。

 2ページ目でございますけれども、事業のコンセプトは先ほど話したように、漁業者自らが実施できる技術ということでございます。このため、現場の地区協議会というものが重要でございまして、漁業者の要望を聞きながら実施しているというところです。事業の出口でございますけれども、得られた成果をもとに漁業関係者が実施できることを想定した各技術と、そのコストを考慮した作業手引の作成というものになります。

 事業の実施場所は図に示した18地先、25漁場の干潟域になります。したがって、沖合域の観測データというものは、この事業では特にありません。写真にあるような噴流式耕うんですとか、砂散布等の技術開発というものを実証しております。

 4ページ目でございます。

 各実証実験区においては、この表にあるように流況等の物理項目ですとか、あるいは水温、塩分等の水質項目、粒度等の底質項目及びアサリの生息状況等の生物に関する環境調査というものを実施しております。

 各地先、漁場の概要を簡単にまとめたものでございます。一口に有明海と言っても、それぞれの地域で特徴があります。例えば福岡県のほうでは、筑後川などからの河川からの土砂の流入の影響を受けやすく、泥または砂泥質の漁場が広がっていると言えます。一方で長崎県の小長井漁場というのは、もともと干潟域で泥干潟であった場所に覆砂を施して、地元漁業者により積極的に管理されている養殖場となっておりまして、各漁場によって特徴があるというものでございます。

 6ページ目でございます。

 6ページ目は各技術の選定フローです。この選定フローは作業手引の中に漁業関係者がどの技術を活用するかの参考になるように作成したものです。例えば初期稚貝とか稚貝が少ないという場合の対策としては、泥分を減少させ着生数を増加させる、あるいは波の流れや影響を軽減し、着生数を増加させるというようなことが必要になってきますので、噴流式耕うんやその散布、さらには基質入りの網袋等を使って行うことで効果が出るのではないかとしております。

 次に、7ページ目から16ページ目になるんですけれども、各技術及び実験により確認した効果例というものを紹介しております。

 7ページ目でございます。

 これはホトトギスガイマットの形成を阻害、除去するための噴流式耕うんでございます。右側のグラフは7月から9月の大潮のときに前後2、3日をかけて噴流式耕うんした場合と全くしなかった場合のホトトギスガイマットの被度というものを示しております。耕うん区でのホトトギスガイマットの被度というのは、このグラフで言うと11.1%となっており、この効果というものを確認しているところでございます。

 次に、8ページ目になります。

 これは初期稚貝の着生を促進させるための技術というものでございます。これは他の場所に堆積した砂を有効に活用して行っているということも目的にしております。グラフは6月の上旬に砂を散布した場所と原地盤とのその後の比較になります。砂散布は厚さ約3cm程度、このときの砂の中央粒径は0.74mmでございますけれども、これによって底質が改善された結果、初期稚貝が多く着生し、その後も比較的継続しているということが確認できたところです。

 次、9ページ目でございます。

 波浪や潮流等によってアサリの散逸や餌料環境の悪化が懸念される漁場での礫散布に係る技術でございます。写真のような礫散布区域というもの、この礫は大体10mm程度、厚さが20cmですね。この場所は3×3mというのを3カ所程度つくって、その対照区と比較しております。対照区と比較した結果、餌料効率のよい環境時間をより多く確保できるということが確認できておりますので、餌料環境を改善する効果があるというものになっております。

 以下、時間の関係もありますので、10から16ページの説明の個々の技術については説明を省略いたしますけれども、小規模な作澪ですとか、あるいは振り紐を使った技術、高地盤覆砂域を造成する技術ですとか、海底面から離す離底カゴ、また、他の事業等でもいろいろなところで活用されている被覆網や基質入り網袋などの効果も我々の事業で確認しているところでございます。

 17ページ以降の説明になります。ここからは、この事業で得られたデータから考察された内容ということでございます。なお、考察に用いられたデータというものは、実証試験が実施された地点の調査結果でございますので、同一の地先という言い方をしても、データの違いが考えられるので、結果が変わってくる可能性があるということに留意しなければならないと思っております。

 まず、17ページでございます。

 ここは堆積物やアサリの移動、散逸に影響を与える底質の環境を見るため、得られたデータにより底面せん断応力について検討されております。グラフは27年度と平成28年度の調査実施場所の連続観測結果により底面せん断応力を求め、堆積物の移動限界値以下にある割合を整理した結果です。したがって、出現率が100%に近いほど底質は安定していると言えます。2年連続して調査していないところもあるんですけれども、結果を見ると、同じ場所であっても、冬季と夏季で傾向が異なるところもありました。また、平成27年度は全般的に夏季に比べ冬季の安定度が高い傾向が認められました。有明海は季節風の影響で冬場に荒れるとよく言われるんですけれども、海底面の不安定さは年や時期によってそうではないこともあり得るというような結果となりました。

 次、18ページでございます。

 水質の一項目として測定したクロロフィルaの連続観測結果の平均値でございます。この結果を見ると、長崎県の諫早湾の北岸に位置する小長井というところと熊本県の菊池川河口の北側に位置する岱明というところの調査点が他の調査点に比べてクロロフィルaが低い傾向であるということが確認されました。また、26年度冬季調査では、高いクロロフィルa濃度が観測されており、このときは二枚貝にとって良好な餌料環境であったということが推察されました。総合調査評価委員会の報告にもありますように、熊本県緑川河口で平成27年にアサリ資源量が増加している旨記載されておりますけれども、平成26年冬季に餌料が多かったことも影響した可能性があるのではないかということが考察されました。また、我々の調査においても、翌春、27年の春には高密度な稚貝の着生を複数の実験場所で確認しているところでございます。

 19ページ目でございます。

 19ページは各実験場の対照区の底質調査結果の平均値を用いてクラスター分析、ここではウォード法を使った分析を実施した結果でございます。6グループに区分した結果、一番右端の福岡県大和高田のF-4の地点では、シルト・粘土分や有機物が多い場所となります。

 20ページ目は、この要因について主要成分の分析をした結果でございます。第1主成分はシルト・粘土分や有機物量、それと中央粒径の大きさということになりました。また、第2主成分は硫化物が影響しており、6区分にされた各グループともそれぞれの底質状況に応じて区分されていることが読み取れました。

 なお、各グループにおけるアサリの生息状況の調査結果を見ると、赤色の大和高田のF-4地点では生息が確認されず、また、ダイダイ色の大牟田のF-7、F-8の地点では比較的少ないという結果でございました。

 次に、21ページ目でございます。

 21ページは成貝のSIモデルを検討したものでございます。このSIは平成24年度の関連事業の中で整理された経過を基本に、この事業の25から27年度の成果を含めて再検討し、得られた調査結果をプロットしたというものでございます。

 このSIモデルによる結果を各調査地点に当てはめた結果が22ページ目の分布になります。ここでも大和高田のF-4と大牟田のF-7、F-8がシルト・粘土分で低い値となっており、アサリの生息にとって厳しい環境であるということが確認できました。

 次、23ページ目でございます。

 各実証実験場所のアサリ5mm以下の稚貝が発生したその群の平均した殻長組成結果を月ごとに正規分布に当てはめ、この結果から追跡した殻長組成でございます。その年々によって違いはありますが、有明海では1年間に17.2から24.4、約20mm程度成長しているということが確認されております。これはいろいろな既往知見と同程度の成長ということになりました。

 なお、本事業の調査によって少なくとも25年度以降のアサリの成長、生残データが得られておりますので、環境要因との比較検討を行うということで、年度変化と比べていけばアサリの成長や生残に影響を与えている原因ですとか要因の解明に貢献できるという可能性がございます。

 24ページ目でございます。

 これは各地先の殻長組成結果により検討した1年間の成長量と成長を追いかけた期間の平均個体数やその期間に実施された環境調査結果の平均値との関係を検討した結果でございます。各項目のうち平均個体数の多い場所や濁度の高い場所で負の相関係数関係が見られ、アサリの成長量が小さい傾向になるという結果が得られています。平均個体数が多い場所での成長量が遅くなる、すなわち密度効果については有明海以外の地域でもよく知られている現象と思います。また他方、アサリは比較的濁りに強い二枚貝と言われていますが、有明海のように濁度の高い海域では、アサリの成長にとって負の要因になっているという可能性を示すデータとなりました。

 最後、25ページ目に3点ほど記載しておりますけれども、繰り返しになりますので、説明を省略いたします。

 以上、拙速でしたけれども、平成25年度から29年度に実施した各地域の特性に応じた有明海の漁場環境改善実証事業の概要について説明を終わります。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、引き続き資料3-2に基づきまして御説明をお願いしたいと思いますが、森様より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○森漁場資源課課長補佐(水産庁) 水産庁漁場資源課の森でございます。

 私の資料だけ縦になっておりますので、見にくいと思いますので、もし見にくかったら、縦にするともうちょっと見やすいかもしれませんけれども、そのままでも読めると思いますので、このまま説明させていただきます。

 本事業は赤潮貧酸素水塊対策推進事業のうち水産庁の委託事業のものとなっております。平成25年から29年度に実施しましたので、事業成果ダイジェストというものを作成しました。それに基づいて説明いたします。

 まず、目次でございますが、本事業は幾つかのテーマがありますので、モニタリングとか発生予察、それから、有害赤潮の魚介類への影響の実験、それから、被害防止、貧酸素水塊の発生モニタリングの機構解明、それから、モニタリングの結果の広域データの収集・提供システムの開発等を行っております。

 赤潮の発生につきまして、貧酸素の状況につきまして述べたのが1ページでございます。九州西岸域における有害赤潮の発生状況は、2000年までは年間40件程度だったものが2000年以降は年間60件になっております。2000年、2009年、2010年には大規模な養殖魚のへい死が、2000年から2001年の冬季のノリの大不作としばしば多大な漁業被害が生じております。また、有明海の奥部海域では、毎年6月下旬から9月下旬の夏季に底層溶存酸素濃度が3mg/L以下の貧酸素水塊が形成されておりまして、サルボウ等の二枚貝の消耗要因の一つと考えられております。

 2ページ目です。

 八代海におけます有害赤潮の発生監視と発生機構の解明として、赤潮モニタリングの高度化を実施しております。図1の写真にあります3つのブイがありますが、この大型自動観測ブイと、あと、各県で行っております定期・臨時観測におきまして、赤潮の分布、消長、環境情報が把握されております。その結果、図3にありますように塩分濃度のσtが24から25の高密度で灰色の水柱が幅広く占有するとシャットネラ属が発生しまして、2016年のように表層の低密度のダイダイとか緑の水塊が薄く層になっていくときに大規模発生ということが見られております。

 3ページ目でございます。

 カレニア・ミキモトイは6月から7月の日照りが弱いと先行増殖しまして、大量降雨後のエスチャリー循環によりまして表層が高栄養塩状態になると大規模かつ長期間発生しまして、その間、シャットネラ属の増殖が抑制されまして、シャットネラ属が晩期発生という形になると考えられております。これらは光環境と栄養塩供給の状況が高密度化を左右しているということが把握されております。

 4ページ目でございます。

 八代海のシャットネラ属が大規模化するのは、左上図で見ますと、2月から4月の平均水温が高く、梅雨入り日が遅い場合というふうな時期を図番号はありませんけれども、左上の図でまとめると出てきております。発生シナリオは下の図になっております。2つのパターンが考えられまして、左は出水型と言いまして、梅雨明け後の7月上旬に北部海域で高密度化し、出水と北風により南部に移動拡大で、この場合は大規模発生が見られております。右は鉛直混合型で、2016年から18年は8月下旬以降の鉛直混合等に起因するDIN、DIPの供給及びその直後の成層化によりまして発生していますけれども、中規模発生となっております。

 7ページ目です。

 有明海におけます貧酸素水塊モニタリングの高度化として、連続観測機器により水質の時系列データ及び関係各県の定期観測によるデータによりまして、図4にあるように底層潮流振幅と貧酸素の累積時間とは強い逆相関があると。また、図6にありますように経年変化を見ると、底層潮流振幅と大浦の潮汐振幅には連動性があることが判明しました。2015年は潮汐振幅がもともと大きい年で貧酸素水塊が発生しにくい環境でありますが、もしこういう相関が正しいとなれば、今後、潮汐振幅は年々減少すると思われますので、貧酸素水塊が再び強まる可能性があるということが示唆されます。

 8ページ目になります。

 有明海におけます夏季の赤潮動態の把握として、長崎県周辺海域のシャットネラ属の発生状況を調べております。この表1のように毎年発生しておりまして、図2、3のとおりシャットネラ赤潮は底層水温22度以上で発芽が活発化し、表層水温25度以上、塩分濃度28PSU付近で高密度化しています。また、図4を見ると、北寄りの風や降水による出水でシャットネラ赤潮が移流するのが確認されております。

 9ページと10ページにつきましては、ノリの色落ち原因珪藻の出現特性の解明と、それから、発生予測技術の開発としてこの3つのテーマを(1)から(2)、(3)とありますけれども、進めた結果でございます。連続観測や定期観測等のデータからEucampia zodiacus、Akashiwo sanguinea、Asteroplanus karianus、Skeletonema spp.の水環境との関係と動向を確認したところです。

 11ページ、漁業被害軽減のために有害プランクトンによる魚介類のへい死機構の解明のため、室内で簡便かつ定量的に赤潮の影響を評価する手法を開発しました。暴露実験によりまして、タイやブリのえら組織の傷害状況や修復状況が確認されています。

 12ページです。貝類につきましても、影響評価をマガキ、アサリで確認しまして、アワビに人為的に酸素を供給することで有害プランクトンの影響が軽減され、へい死を抑制できることが明らかになりました。

 13ページです。具体的な赤潮は緊急出荷・救命技術としてどんなことがあるかということを実験したものでございます。これはシャットネラ属、カレニア属、コクロディニウム属を駆除するためにキャビテーションやサイクロンを利用しまして、これを壊してしまうという効果が確認されまして、さらに実効性を上げるために添加物の組み合わせで、いわゆる遮蔽された海域、特に緊急避難させた魚もしくはそれに供給する水が赤潮を壊しながら使えるようにということの開発になっております。

 14ページは活性粘土の話でございまして、先ほど鹿児島県の小湊委員が説明されたので割愛させていただきます。

 最後でございます。広域赤潮情報等の収集・提供システムの開発としまして、水質、赤潮発生に関してウェブサイト「赤潮ネット」を開設しまして、運用しております。この間インターフェースの改善や対象海域の拡大などを行いまして、使いやすいウェブサイトを目指して開発中のところでございます。

 以上でございます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、水産庁計画課の宮本様より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○宮本計画課課長補佐(水産庁) 水産庁計画課の宮本と申します。よろしくお願いします。

 水産庁、最後の3つ目の課題でございますけれども、有明海水産基盤整備実証調査について御紹介させていただければと思います。ここから説明は着座させていただきます。

 まず、次のページは目次でございますが、そもそもこの実証調査はどういうことを行うものか、その目的について簡単に御紹介させていただき、昨年度、平成29年度に過去5カ年で行った調査の取りまとめ総括報告書を作成いたしましたので、その中の主な取組について御紹介させていただき、最後に現在行っている平成30年度以降の取組について御紹介させていただきます。

 右下に1と書いたものが1ページ目でございます。

 この実証調査でございますが、目的としまして有明海におけるタイラギ漁業の再生、これを目的としまして、漁場の造成によってタイラギ生育環境の改善効果がどのようになるかというものの実証調査を行うものでございます。

 平成25年度から29年度の5カ年の取組の前に、それまでに得られた主な取組、成果というものがございますので、ここで御紹介します。2ページ目でございます。

 平成24年度までの主な取組及び成果ということで、このとおり主に覆砂の漁場を整備して効果の実証を行っておりましたけれども、1つ目としまして凹凸覆砂畝型漁場と言いまして、畑の畝のような形の覆砂をした漁場、また、薄くまいた覆砂の漁場、こういった漁場においてタイラギの稚貝の着底状況を調査しましたところ、覆砂した漁場では、新規着底が確認され、着底場所としましては、凹凸覆砂の法面部とか谷部、こういった場所が主な着底場所となっておりました。

 それから、薄まき覆砂漁場では、実際造成した場所の原地盤に硫化物がございまして、その影響が懸念されたところでございますが、その当時、実際に造成した場所で調査をしたところ、その硫化物の影響というものの抑制が確認され、底質改善効果が確認されたところでございます。

 また、凹凸覆砂畝型漁場における浮泥堆積抑制効果も確認されました。これは特に天端の部分とか斜面、こういった場所において浮泥堆積の抑制が確認されまして、そういったところには、新規の稚貝の生息密度も高い、そういったことが確認されたところでございます。

 その当時の残された課題としましては、覆砂の造成は行いましたが、小規模ということもございまして、実際事業化するに当たっては、もう少し大規模に造成した上での効果の検証が要るんじゃないか、また、当然造成する際に覆砂を造成する技術、また、メンテナンス方法、こういったものの開発だとか、また、実際にその効果がどれほど継続するか、こういったものの検証が要るんじゃないかというのが主な課題でございました。もう一つとしまして、先ほど来色んな方々からもありましたけれども、タイラギの立ち枯れへい死の原因究明というのは引き続き課題となっておりまして、それらを受けまして、次のページから実施しました平成25年度から29年度の主な取組を紹介します。

 3ページ目です。

 この当時、大牟田沖におきまして立ち枯れへい死の問題が顕在化したということで、平成25年度、26年度に凹凸覆砂畝型という漁場を福岡県大牟田沖に8基造成しております。過去に造成したものは2基だったんですけれども、8基ということでより大規模に造成したというところでございまして、造成場所は左の図面の位置辺りで造成をしたというところでございまして、8基は右のほうにありますとおり、平成25年度に5基と26年度に3基、こういった形で施工させていただいたところでございます。

 その漁場造成後の効果を検証した結果のうち、主な取組を4つほど挙げております。

 左の上ですけれども、これは覆砂の断面図で、法面部、谷部、こういったところに着底が多く見られるというのが左上の図面でございます。その右側では、凹凸覆砂というのはこういうような形になりますけれども、天端の部分とか谷部、こういったところでは流速に違いが出ている。特に天端部は流速が速くなり、谷部は比較的遅くなったりするため、複雑な流れが生じ、結果としてシルト堆積の抑制が確認されたところでございます。また、造成した畝型覆砂の漁場について、造成後、4~5年経過した際に深浅測量を行ったところ、形状も維持されているということも確認されております。

 それから、左下でございます。母貝団地としての可能性というところでございますが、こちらの造成したところのタイラギの生態調査ということで、GSIを計測したところ、こちらは8月から9月に大きく減少している部分がございます。これは推定によるものでございますが、産卵というものを確認して母貝としての機能を確認したところでございます。

 右下は、実際浮泥堆積が抑制されるという効果を示しており、特に、天端部、法面部に効果が確認されておりますけれども、当然時間が経過すれば堆積は進みますのでメンテナンスの方法としまして、ジェットポンプ法と呼んでおりますけれども、ジェットポンプによって噴出して浮泥を飛ばした後、バルブの切りかえによって浮泥を吸い込むというような形で、割と漁業者さんが使われるような機材を用いて実際に浮泥堆積の除去効果というのも確認させていただいておりまして、これらの取組というのは、昨年度、5カ年の報告書とともに手引としてもまとめさせていただいたところでございます。

 次の5ページ目でございます。

 立ち枯れへい死の原因究明ということで、当時から立ち枯れへい死の原因というのは不明な部分が多いという状況がございました。平成25年度着手時点ではまだ少し天然の着底というのも確認され、それによって調査が実施できていた部分もございましたが、資源量の減少ということで、天然の着底というのもかなり少なくなってきたということ、人工種苗の育成技術も徐々に確立されていたということもございまして、平成28年度以降は人工種苗の移植を行って、調査を行ってございます。その際、種苗の移植ですが、殻長の小さい2から3cmと5cmというので一度移植を行ったところ、2から3cmの小さい殻長のものはやはりすぐに生残率が低下するというところでございますが、5cmのものについては一旦減少してはいるものの、そのまま生存期間が長く保たれている状況がございましたので、この調査における移植については、5cm以上の殻長で、直植え方式にすることによって確実に調査ができるということで、この方式で移植を行っているということでございます。

 この原因究明に際して、食害対策として保護ネットをしたものとしないもの、これについての調査も行っております。左下のグラフになります。結果、食害対策ありのほうが生残期間は長かったわけですけれども、このときの調査では最終的な生残は確認できなかったということで、それは食害以外の原因があるんじゃないかというようなことでございます。

 右のグラフでございますが、こちらは餌料環境の調査として主にクロロフィルaの量と濁度というもの、こちらのグラフは右の青と赤のグラフになりますけれども、この3つのグラフのうちの左側に、低下と書いてあるところでございますが、下から2番目の低下の部分は、これはタイラギのグリコーゲン含量になりますけれども、こちらが急激に低下したときに生残率も急激に下がっているということで、この期間を緑、青っぽい色で示しておりますが、この期間をへい死期間と捉えて、その期間中のクロロフィルa量と濁度について右のグラフに示しております。

 右の上のほうがクロロフィルa量になりまして、いわゆる餌料を調査したというものでございますが、一般的に二枚貝類の餌料の摂餌障害等の境界が2マイクログラムと言われており、目安になっておりますけれども、実はこのグラフが小さ過ぎてわかりませんが、この期間についてはこの基準値より上回っていたということで、実は餌不足ではなかったんじゃないかと。ただ、濁度はご覧いただくとおり非常に高い数値を示しております。特に青い部分が非常に高くなっておりますが、生残率も急激に下がっている部分が青の部分になっておりまして、これも一般的に言われているタイラギ類の濁度の影響の20FTUを目安として見ると、それを上回っている期間が長い青の部分の試験区では左のグラフの生残率も非常に低い結果になっておりまして、当然濁度が摂餌に影響しているんじゃないかというような結果が出ております。

 全体としまして、立ち枯れへい死に関する調査としては、実際タイラギを移植した上でモニタリング調査、生残率も当然そうですけれども、生理状態としてのグリコーゲン含量などを調査しつつ、プラス生息環境としての水分・塩分、DO、また、餌料環境としてのクロロフィルa量とか濁度を連続観測調査した結果、底層の濁度上昇、これに伴う摂餌活動の低下による摂餌量の減少ということで、結果としてそれがタイラギの体力を低下させているという可能性が示唆されたということでございます。

 ただ、濁度は調査しておりましたが、濁質という部分はこのときには不明だったというところで、平成29年度末時点で残された課題としては、引き続き立ち枯れへい死の発生の原因究明として、餌料環境とか摂餌障害の実態解明が要るんじゃないか。また、生残率を維持させるためには、産卵前後の良好な健康状態の維持、こういったものが課題となっておりまして、上記の連続観測調査も引き続き実施していきますが、加えて濁質として代表例、SS、VSS、こういったものを調査して改善策を検証していく必要があるというような形になっております。

 最後の7ページ目になりますけれども、今後の取組ということで、現在実施中でございますけれども、先ほどの課題を受けて、タイラギの資源回復のために餌料環境改善を図るという観点で漁場の整備方策に関する実証調査を実施しておりまして、主な取組としましては、1つ、餌料環境改善のための基盤を造成しております。右に図面がありますけれども、8基造成した平成25年度、26年度の覆砂区の近隣に、写真にあります砕石の袋詰めユニットを積んで、それによって効果を検証を今実施しているところです。

 2つ目としましては、先ほどと同様ですけれども、引き続き人工種苗を移植して、その生残・成長を確認していく。また、浮遊幼生の来遊状況も引き続き調査していきつつ、また、タイラギ以外の蝟集というのも実は若干見られておりますので、そういったものも調査をしているという状況でございます。

 簡単でございますが、以上です。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 限られた時間の中で、かなり細かく御説明いただきました。時間が押しておりますけれども、ただいまの水産庁の御発表に関しましては御質疑をお願いしたいと思いますが、まず最初の資料3-1につきまして、何か御質問ございませんでしょうか。

 どうぞ、古川委員。

○古川専門委員 すみません。質問が1つとコメントを1つさせてください。

 1つは、環境特性を非常に細かく調べられて、最終的にSIモデルをつくるぐらいのデータ量をたくさんとられているんですけれども、この中に水質データ、特に溶存酸素が入っていないということの理由がもし何かあるのであればお聞かせいただきたいということと、コメントですけれども、この資料の20ページのところでサンプリングされた地点でのアサリの成貝の個体数の分布が出ています。恐らくSIモデルをつくるということは、それを最終的にハビタット・エバリュエーションモデル(HEP)まで統合させて、この成貝の個体数を説明するということが最終目標ではないのかなと思うので、この検討がSIまでしかいっていないというところがこれだけデータをとったのにもったいないなということで、感想を一言申し上げます。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 ただいまの御質問に対しまして。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) 最初のほうは溶存酸素量のデータが入っていないということですよね。今回のデータはほかにもいろんな分析をしていますけれども、この今日説明した中には基本的に入れていないということだけでございます。データとしてはいろいろとっていると思います。

○古川専門委員 では、溶存酸素量のデータもあるということでよろしいんですね。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) はい。

○古川専門委員 それはよかったです。ありがとうございます。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) それと、コメントのほうは今後も引き続きいろいろやっていきたいと思っております。

○滝川小委員会委員長 よろしくお願いいたします。

 どうぞ。

○小松委員 スライドの17で堆積物の移動限界値以下の出現率で地盤の安定度を評価しているんですけれども、それで、例えば80%、90%ぐらい。ところが、地盤というのはこの移動限界を超えたときの超え方というか、特に大きなイベントとかが来ると、もうがらっと変わっちゃうので、日常的な出現率よりは、そういう移動限界を超えたときの突出の程度みたいなものが決まっちゃうんじゃないかなという気がするんだけれども、その辺はいかがですかね。

○内海研究指導課課長補佐(水産庁) ここでは大体観測期間、夏季、冬季と書いているんですけれども、1カ月ぐらい、短いと2週間ぐらいとなっているんですけれども、そのデータを使っています。それで、確かにせん断応力を言うときに数値をぐっと超えれば、あっという間に不安定な状況というか、流されてしまうとか、そういうことは起こり得ると思っております。

○滝川小委員会委員長 気象条件等々を加味して底面せん断応力で規定されていますけれども、イベント等が起こるときにはそういう要因も考えたほうがいいんじゃないかというアドバイスだと思いますので、また御検討いただければと思います。ありがとうございます。

 時間が押していますので、次に進ませてください。

 それでは、次の資料3-2の御発表に関しまして御質問等ございますでしょうか。

 どうぞ。

○松野委員 7ページの潮流に関することについて質問させていただきたいんですが、ここのデータはさまざまな条件に対して潮流の応答が場所によって非常に変わっているということを示すもので、興味深いデータだと思うんですが、確認と1つ質問なんですが、1つはここに書かれている潮流のMというのはf値を掛けたものですか。

 そういう前提で質問ですが、河川の出水とそれに伴う底層潮流振幅と書かれているんですけれども、河川出水に伴う底層潮流振幅というものがどういうプロセスを想定されているのかというのをお伺いしたいと思います。

○森漁場資源課長補佐(水産庁) すみません。委託先のほうでやっていて、うちのほうでそこのプロセスまでは私のほうはわからないので、もしわかる方がいれば。

○滝川小委員会委員長 どうぞ。

○速水委員 事業の検討委員をやっていますので、簡単ですが、お答えさせていただきますと、まずfは含んでいます。ですから、18.6年周期の変動を含んだものです。それから、プロセスに関しては、基本的には密度躍層よりも下の下層の厚さによって、同じ潮流の強さでも海底付近の潮流が変わってくると、そこのプロセスに注目をした解析です。よろしいですか。

○松野委員 潮汐の話ですか。潮流振幅と書いてあるけれども、潮汐流ですね。

○速水委員 潮汐振幅ですけれども、ここで解析に使っているのは潮流データです。

○松野委員 ということは、内部潮汐という意味ですか。

○速水委員 内部潮汐か、それとも鉛直的な密度構造変動に伴ったバロクリニックな応答ですね、底層付近の。そっちの可能性のほうが個人的には大きいんじゃないかと思っています、内部潮汐というよりも。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。まだ御議論は続くかもしれませんが、改めて御検討いただければと思います。

 私のほうから1点だけ確認させていただきたいのが、今の御発表の中の4ページのところで、有明海で赤潮、北風の連吹でシャットネラが八代海に移入と書いてあるんですが、このメカニズム的なところがどうお考えなのかなと思って、簡単でよろしいんですが。

○森漁場資源課課長補佐(水産庁) 北風によりまして有明海のある部分の境目になるところから八代海に入っていくと考えてますが。

○滝川小委員会委員長 申し上げているのは非常に海溝が狭いですよね、本当の海溝というか海峡といいますか。そこから本当にこれだけ大量のものが行くのかなというのが物理的によくわからないものですから、連吹すると表面を伝ってそういうシャットネラが移入して、入っていって広がるのかなというそこの関連性が、根拠がどの程度あるのかなと思ってお伺いしたかったので、確認なんですが。今お答えにならなくても結構ですが、何かありますでしょうか。

○樽谷小委員会委員長 私のほうからわかる範囲でお答えさせていただきます。

 あくまで現状を申しますと、まず有明海で先行してシャットネラの赤潮が起こって、それが終息した後に八代海でシャットネラの赤潮が大規模化するという傾向が見られています。あくまでその傾向から北風の連吹で移入をしている可能性があるというところで、詳細なメカニズムについては、今年度も含めて実際にこの狭い海峡部で調査を行うなど、検証を進めているところです。

○滝川小委員会委員長 よろしくお願いいたします。非常に重要な問題かなと思って、移入するということが気になっているものですから、また引き続き御検討いただければと思います。ありがとうございました。

 それでは、最後になりますが、宮本さんが御発表になりました資料3-3はいかがでございましょうか。

 どうぞ。

○速水委員 2点教えてください。

 資料のまず5ページ目の餌料環境なんですけれども、これへい死期間中の餌料環境の悪化を見られていますけれども、このへい死に至るプロセスを考えると、むしろへい死する前の餌料環境のほうが貝の体力に対して影響を与えていくんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうかというのが1つ目で、それともう一つは、7ページ目の今後の取組についての30年度以降の取組の最初のもので、餌料環境のための基盤の造成とあるんですけれども、タイラギの餌は基本的に植物プランクトンだと思うんですけれども、それをどうやって増やすのかという点をもう少し詳しく説明していただければと思います。

○宮本計画課課長補佐(水産庁) 1つ目の餌料環境の影響という点でございますが、その代表例としてクロロフィルa量を見ていただくと、このグラフが小さ過ぎてよくわからないという部分はあると思うんですが、ご指摘のとおりへい死期間中だけ餌料が少ないとかということではなくて、ここで連続観測しているここのグラフ上では、へい死期間の前の期間においても、2マイクログラムをずっと上回った状況となっておりまして、前の期間においても餌不足というのはあまりなかったのではないかと考えておりますというのが1つと、この餌料環境改善のところは委員御指摘のとおりそういった部分もございますが、少し長期的な視点で取り組んでいる部分もございまして、まず初年度としての餌料環境改善のための基盤の造成として、こちらの餌料生物が付着しやすい構造であろうという部分で、まず砕石を用いた基盤の造成をしているところでございますが、その辺りも含めて今後の課題とさせていただければと思っております。

○滝川小委員会委員長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、かなり時間がオーバー気味なものですから、水産庁からの説明というのをここで終了させていただきたいと思います。引き続き御質問等があれば、また改めて御質問等々していただければと思います。ありがとうございました。

 それでは、続きまして、委員からの報告といたしまして、松山委員より有用二枚貝について、また、山口敦子委員より魚類について説明をしていただきたいと思います。説明時間につきましては、松山委員は10分程度、山口委員は15分程度ということでございますので、よろしくお願いいたします。質疑応答につきましては、御発表の後、まとめて時間をとりたいと思います。

 それでは、松山委員より御説明、よろしくお願いいたします。

○松山専門委員 それでは、資料4-1の有明海における有用二枚貝減少要因解明に関する取組ということで、西海区水産研究所の松山から御説明させていただきます。座って説明させていただきます。

 本発表は環境省の有明海・八代海等再生評価支援業務の成果の一部を要約したものです。業務の遂行に当たりましては、西海区水産研究所のみならず大学等との共同研究成果も含まれております。関係者の皆様には、この場を借りて御礼を申し上げます。

 この業務では、二枚貝の減少要因の解明のためにさまざまな検討を行ってまいりました。その成果のうち、本日は有明海で特に減少が著しいタイラギに関する検討状況を御報告いたします。

 主な検討事項は、ここに示した2つであります。1番目としては浮遊幼生の移動に関する検討、それと、2番目に貧酸素水塊の影響、こういったものを調査研究しておるところです。

 このポンチ絵は一般的な二枚貝の生活史ステージを示しております。二枚貝というのはマクロベントスの代表的な生物群で、一生のほとんどを海底あるいは干潟で固着した状態で過ごしております。その関係で底質の悪化あるいは貧酸素の影響を受けやすい生物群ということになっております。しかし、ベントスではありますが、二枚貝は生活史の一部で浮遊期という広域拡散ステージを有しております。母貝の方から体の外に卵と精子が放出されて、海水中で体外受精をする、これが潮流に乗って幼生へ変化した後、潮流に乗りながら広域拡散していく。この期間というのは二枚貝の種類によって異なりますけれども、短いもので10日ほど、長いもの、特にタイラギは長いのですが、1カ月ほど成長しながら広域に拡散して、そして、たどり着いた先がもし好適な底質環境であれば、そこで着底するという生活史ステージを有しております。

 実は有明海・八代海におけるこれまでの調査研究対象というのは、この緑で囲った着底をした後の稚貝が漁獲サイズの成貝にまでなる、ここの調査研究というのは非常にたくさんございました。ただ、この浮遊期の調査に関しては、実はほとんどなされておらず、そういう状況で資源再生を論じてもなかなか難しいということもありましたので、本業務ではこの点に着目して集中的な調査を実施してまいりました。

 まず、浮遊幼生の出現調査、これは平成25年から27年の3カ年実施しております。特に有明海の全域を意識して調査定点を設けているところです。結果はデータが膨大ですので、3カ年の調査結果を1つの図にまとめているところでございます。これは3カ年のそれぞれの年度の平均的な出現密度を各定点に3本ずつ棒グラフで示しているところで、左側がサルボウの浮遊幼生の3カ年の出現結果、あと、右側の赤い棒がタイラギの浮遊幼生の3カ年の出現状況となっております。

 左側のサルボウですが、これは有明海奥部の西部に安定して多く出現する、逆に中南部は少ないという結果になっておりまして、これは産卵する親貝の天然資源分布とほとんど一緒という結果になっております。一方、右側のタイラギですけれども、こちらはまず左のほうのサルボウと比較して、単位自体がまず2桁少ないということで、非常に浮遊幼生の出現が少ないということがまず1つ挙げられます。それと、分布もタイラギというのは本来この湾奥のところに漁場が形成されているわけですが、この湾奥の出現というのがサルボウほど突出しているということはなく、むしろ少ない結果になっておりまして、熊本県の緑川河口とか南部でも時折大量に出現するという結果になっております。

 これは先ほど農林水産省さんから、平成28年以降の調査結果というのが示されたと思うんですけれども、この結果と照らし合わせてもほぼ同様でして、どうもタイラギというのは出現海域がばらけている、しかも、年変動が大きいということになっている状況です。これは恐らくまず第一に浮遊期間がほかの二枚貝よりも長いということが影響しているのでしょうけれども、親貝資源そのものについても、分布が広域にパッチ状に展開している可能性を示唆する結果となっております。

 次に、今度は有明海で浮遊幼生がどのように分布をするのかというところを解析するために、FVCOMという物理場のモデルを構築いたしまして、このモデルが水温・塩分の再現性があるということを確認した上で、浮遊幼生のシミュレーションを実施しております。

 このスライドの場合ですけれども、これはタイラギの漁場ではない島原半島、この図のところの赤く色を塗った区画、ここから粒子を仮想的に流しまして計算したものですけれども、最初の1、2週間、南北に拡散した後、タイラギというのは大体4週間ぐらい浮遊しますが、4週目前後には湾奥、いわゆる漁場として知られているところですけれども、こちらのほうにかなりの粒子数が到達しているということが読み取れる結果となっております。

 次に、この図は同じような計算を今度は福岡県の大牟田沖の峰ノ洲というところから流したものです。この峰ノ洲というのはタイラギの主要魚場であるわけです。最初の1、2週間は湾奥のほうに粒子がとどまっていますが、その後、南部のほうへどんどん拡散していきまして、4週間後になりますと全域にばらけているということで、タイラギの主要漁場の北部海域に残存している粒子数というのは、先ほどの島原半島沖から流した場合と比較すると少なくなっている、という結果になっておりました。

 これ以外の場所からも粒子を流しております。タブレットの中には補足資料というものがありまして、計算をした場所の図が入っております。ちょっと割愛しますけれども、基本的にはエスチャリー循環流と有明海特有の反時計回りの残差流、これによって浮遊幼生が移送されているということが計算結果で支持されております。まだミッシングリンクではあるんですけれども、ここに示したように北部の主要漁場、それと中南部のタイラギの南北間で、どうも浮遊幼生のネットワークが存在するのではないかということが示唆されました。今後、資源再生のためには、北部のタイラギの資源再生はもちろん重要なのですが、親貝資源をこの南のほうにも残して、湾全体で浮遊幼生のネットワークが切れないように配慮をする必要があるのではないかということを提案したところでございます。そうした示唆に基づきまして、先ほど農林水産省さんや各県さんのほうから御説明のあった、「母貝団地」の造成事業が現在取り組まれているというような状況になっているところです。

 しかし、母貝団地といっても、せっかく移植したタイラギが産卵前に減耗していなくなるというようなことがたびたびあります。そうして減耗してしまうと、(再生産)効果がなくなってしまいますので、我々のほうでも有明海の5つの定点で、ここに写真が2つ示してありますけれども、ケージを現地海底にセットしまして、ここにタイラギを入れて、まずナルトビエイから保護した状態で生残と環境要因の関係を解明する調査を実施中です。

 本日は、結果については集計中のため残念ながら御紹介はできませんが、簡単に言いますと、この保護ケージの左側の写真、これはステンレスのケージ、15mmの目合いで非常に細かいものですけれども、こちらと右側の150mmの目合いのものに同じタイラギを同じ場所に入れても、左のほうは残りますが、右のほうはかなり短期間に減耗して消滅してしまうという結果になっておりまして、どうも小型の巻貝やカニがこの右のほうでは侵入して、食害を受けてしまうという結果になっております。

 こうした移植による比較試験というのは、生理状態がそろった人工稚貝を活用することで、ばらつきのない結果が得られます。この人工稚貝を生産する技術が進展したということは、この手の環境調査の進展にも貢献するということが十分期待される状況です。

 2つ目の柱ですけれども、これは貧酸素の影響評価の試験になります。

 29年委員会報告におきましても、湾奥の西部、具体的にはA3海域になりますけれども、こちらでタイラギの減耗要因として貧酸素がほぼ特定されております。この試験は、その根拠固めとして定量的影響評価を目指して実施されたものです。実験自体は人工の稚貝を貧酸素に暴露して、どのくらいの時間、濃度で死亡するかというのを定量的に把握するものです。用いました貝は稚貝と1歳貝と2歳貝、それぞれ(殻長)2cm、9cm、14cmというものを使用しております。試験としては3回繰り返し、暴露期間が4日間、水温は有明海の夏場の底層水温に近い25度という条件でやっております。DOの調整に関しては、窒素と酸素の混合ガスを吹き込むことで目的のDOを維持するということをやっております。

 結果です。これは一目してわかるように、一番上の稚貝、これが非常に貧酸素に強い影響を受けているということが分かると思います。ゼロ、1、2mg/L、この3段階の溶存酸素では全滅します。3mg/Lであっても、48時間で半数が死亡するなど、かなり影響を受けております。逆に1歳貝のほうは無酸素区のみでの死亡で、57時間で一応全滅していますが、それ以外では96時間まで生残するという結果になっております。逆に、それよりさらにもう一年たった2歳貝のほうは、また少し敏感になっておりまして、2mg/Lの溶存酸素濃度でも影響が出ているという結果になっております。このように貧酸素の影響というのは、それぞれの貝の生活史ステージで大きく異なるということがこの実験により判明いたしました。

 なお、2歳貝が1歳貝より貧酸素への感受性が高くなってしまったという理由についてですが、試験貝の生殖腺がこのとき2歳貝のほうはかなり成熟しておりまして、1歳貝のほうは未成熟でした。恐らくですけれども、先ほどの熊本県さんのハマグリのほうでも発表があったように、成熟期と非成熟期で各種のストレス耐性が異なるということがほかの二枚貝でも知られておりますので、この影響が出た可能性はあるのではないかと考えています。

 先ほどの結果を平面図に落とすと、このようになります。これは生残率が50%以下となる範囲をそれぞれの稚貝、1歳貝、2歳貝ごとに色を分けて落とし込んでいるところです。例えばこの左の1mg/Lというところの線をずっとたどっていきますと、緑色の稚貝でありますと、もう24時間で半数が死亡する可能性の状態に達します。2歳貝であれば48時間から60時間ぐらいたつと死亡が始まるだろう。逆に1歳貝のほうは、この1mg/Lでは死亡が発生しないだろうと、こういった読み込みができます。

 既往文献と照らし合わせますと、この西部海域、この紫で囲った範囲というのが既往知見で観測されている貧酸素の範囲ですが、こうなってくると、もう全てのステージで西部海域では死亡が発生するという結果になります。この黄色の点線で囲った区域、これは東部で観測されている貧酸素の範囲、西部海域に比べると低いレベルの貧酸素ですが、これでも3mg/Lを切ることが希にありますので、そうしますと、東部海域であっても稚貝は影響を受けている可能性はあるということを示唆しているものです。

 最後に、これは浮遊幼生もシミュレーションの過程で貧酸素水塊へ飛来しておりますので、では幼生はどうなのかということで試験を実施しています。

 浮遊幼生の場合は飼育そのものが非常に難しいという特殊な事情がありまして、先ほどの稚貝とか親貝で使っている通気ができません。通気すると一瞬で死んでしまいます。ということで、実験システムを構築するのに大変苦労いたしました。結果的には、このアクリル製のグローブボックスの中に混合ガスを吹き込みまして、この小さいキュベットの中に貝(フルグロウン期幼生)を入れて実験しました。

 時間がないので飛ばしますが、これが結果になります。対照区のほうは7.1mg/Lでも死亡が発生しておりませんでした。予想外でしたが、タイラギの浮遊幼生は貧酸素に大変強いということがわかりました。死亡は無酸素に近い0.2mg/Lのみで認められまして、0.7mg/Lでは死亡率が4%程度、1.6mg/L以上では全数生残という結果になっておりました。

 これらの結果を要約しますと、タイラギの卵から幼生、稚貝、1歳貝、2歳貝というステージの中で、特に稚貝に対して貧酸素が強く作用するということがわかりました。このことによって再生産サイクルがここで大きく破断されるということが現場の海域で推定されるわけです。逆に、また次に影響するのは2歳貝の成熟したものでありまして、幼生と1歳貝に関してはかなり強烈な貧酸素でないと影響はないだろうという結果になっております。

 最後に卵に対する影響というところもまだ未検討ではありますが、貧酸素が強いところというのは、恐らく2歳貝もそこには生息できないでしょうから、卵を放出するところにたどり着く前に資源が減ってしまうという可能性が考えられます。

 今後ですけれども、タイラギの再生産に及ぼす影響はこれだけではありません。餌料環境であるとか先ほどから出ております浮泥の影響等についても言われておりますので、今後検討を予定しているところです。資源の再生のみならず、こうした二枚貝を通して内湾のいろんな環境要因を精査するということで、二枚貝を通してあるべき姿というものも場合によっては評価できるのではないかと考えているところです。

 雑駁になりましたけれども、御清聴ありがとうございます。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、山口委員より御発表をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○山口(敦)委員 長崎大学の山口です。よろしくお願いいたします。

 時間が押していますが、大丈夫ですか。そのまま発表して大丈夫ですか。

○滝川小委員会委員長 できるだけ手短に。

○山口(敦)委員 では、早速説明をさせていただきます。できるだけ要点だけを御説明したいと思います。

 早速ですけれども、1枚めくっていただいて2ページ目です。

 魚類の漁獲量等、これは前回の委員会報告以降に少しまた足して傾向を見ています。前回も少し、前回と言いましても、委員会で一度説明させていただいたのが2005年なので、まだ実際こういう場でスライドを使って説明するのは2回目になります。18年分のこれまでにやってきた成果ということで、細かい研究の結果というよりも、今日はどういうところが魚類の観点から見て重要なところかということと、今後の再生について考えていくということでまとめたいと思います。

 魚類の漁獲量は、まず有明海と八代海で全然パターンが違うということを前回御説明しているんですけれども、少しデータを更新しております。

 めくっていただいて、3ページ目ですけれども、魚類の漁獲量はかなり減少しているのに対し、ご覧のようにマダイについてはそれほど減っていないということで、このマダイがほとんど有明海の今の漁業生産を支えているというような感じになっています。多くの魚類が右側のニベ・グチ類のようにかなり大きく減少しています。

 これまためくっていただいて、以前の委員会報告、一番最初の評価委員会報告(2006年)作成の時点では、何をすればいいのか、ほぼ魚類についてはデータがなかったので全くわからないということで、まず漁業生産量の分析をして、その結果、底生魚の減少具合の非常に大きいのが有明海の特徴だということがわかったので、そこを中心に研究を始めたという経緯があります。漁獲量データのまとめと分析結果については2005年の評価委員会で報告し、2006年の委員会報告にまとめているんですけれども、それ以降、知見が更新されてきたところがあります。また、当時考えていたのと少し違っていたところもありますので、それについても少し付け加えながら説明していきたいと思います。

 まず、減少程度が激しい魚の特徴としては、産卵場所と成育場所が離れていて、仔魚がかなり流されるタイプの生活史のものが多いということがわかったというのが最初の出発点です。魚類の初期減耗の説明についてはスライドを見ておいて下さい。7ページ目の魚類相なんですけれども、一体何種類の魚がいるかということすらちゃんとわかっていませんでした。上部のほうに当時の知見がありまして、その後、私たちのほうで研究をしまして、実際、今225種を認めております。過去の知見と合わせると、有明海の魚はだいたい300種類ぐらいということになります。定量調査は過去にありませんでした。

 ポイントの一つが、次の8ページ目にあります。これも最初の委員会報告で魚類の何が問題かとまとめたときのものなのですが、場の縮小と環境変化が主要な要因で魚が減っているんじゃないかということになったんですね。そのときに干潟の減少というのが大きいという話をしたんですけれども、その後の検討で、単に干潟の減少に対して干潟の面積を増やせばいいかというとそうではなくて、質が問題だということがわかってきました。これが新しい知見です。

 次にいきまして、あとエイの増加の問題ですね。エイはたびたび食害のところで出ておりますけれども、これもそもそもエイが多い海域というのが有明海なので、その特性を踏まえて考えていかなければいけないということがわかってきています。

 魚の研究については2001年からやっていますので、18年ずっと継続してやっております。有明海全域を網羅するように、いろいろな海域でやっているという状態です。資料を見ていただければわかるように、種の多様性が高く、いまだに新種が見つかるというような状況で、分類学的な検討も含め、まだこの整理も続いております。

 定量調査は過去になかったので、初めて定量的な調査をやりました。有明海という海域は非常に魚類の調査が難しくて、定量調査を簡単にできる海域ではないということもこのときにわかりましたけれども、魚類漁業が盛んな島原沖の海域でずっと定量調査を続けております。その結果、一番多いことがわかったのがシログチでしたので、最初にシログチについての生活史を明らかにしたんですけれども、同時にやはりエイ類の資源量が非常に多いということが定量調査でもわかっております。

 このスライドの図は前回発表したものですけれども、魚の生活史をいくつかにパターン分けしたもののひとつです。この図は卵・仔魚が産卵場から成育場へ流されるタイプのものですね。

 それから、コイチなんですけれども、環境省が海洋生物について初めて作成したレッドリストで絶滅危惧ⅠBと評価されました。2017年に発表されたものですね。このコイチの生活史についても、以前1974年に報告されていた仔魚の分布にちょっと間違いがあり、コイチとシログチが混同されていたことがわかりましたので、この辺も正確な知見に基づき更新したところです。

 スライドを飛ばしまして、デンベエシタビラメ、準特産種ということで、これらの種は干潟に依存した生活史をもつということですね。

 それから次のスライドの生活史パターンのものは、前回の委員会報告作成時に最終的には削除されてしまったので、もう一度ここに示します。有明海の魚を考えるときに、有明海全域を考えるのはもちろんなんですけれども、この生活史パターンのもののように外から入ってきて産卵する魚も多いというのが有明海の特徴です。成魚については産卵期以外を外海で過ごしていますが、仔稚魚、未成魚などは有明海に生息します。こういうものは有明海にとってどうなのかと考えたときに、有明海の漁業生産量としてはそこまで多くはないんですけれども、有明海の干潟の生産力を考えたときに、外海のものまで支えていると考えると、トラフグというのはかなり経済価値が高い魚ですので、有明海の生産性を非常に高く見積もれると思います。この点は有明海を考える上では非常に重要なものだと思いますので、もう一度ここに載せさせていただきました。こういう外から入ってきて産卵する魚が非常に多いというのが有明海の特徴です。後ほど八代海のほうをお見せしますけれども、八代海のほうでは、有明海ほどの効果が干潟に見られないようでして、この辺の違いというのも今後のポイントになるかなと思います。

 これまでに検討した魚類の減耗要因等についても、このスライドを見ていただければいいんですけれども、ここですね。エイ類の問題はたびたび問題になるんですけれども、有明海は本来、サメ・エイが豊富な海域だというのがわかってきています。これまでの研究でサメ10種類、エイ12種類を認めていて、別途1種類、有明海の個体群がほぼ消滅してしまったものもおりまして、22種類、もと23種類いたということで、サメエイが非常に豊富な海域ということです。有明海でしかほぼ確認できていない種類もおりますので、希少種が生息している海域としても重要です。

 有明海でこれだけ多いんですけれども、隣の八代海に行きますと、そんなにサメ・エイがいないということで、高次捕食者の多い海域というのも有明海の一つの特徴です。

 ナルトビエイの問題、このスライドは見ていただければいいんですが、ポイントは18年間ずっと胃内容物の分析をしておりますけれども、18年間を通して重要な餌というのはサルボウで、最近はカキが重要になってきていますが、大体貝の資源量と一致するような傾向があります。アサリの重要度は低くて、この5年間を見ても重量指標で0~4%ということで、それほどアサリには依存していないのではないかというふうに考えています。

 このスライドも見ていただければいいんですが、漁業資源となる貝類へのナルトビエイの影響がいかがなものかというのがかなり大きな関心事だと思いますけれども、ここのポイントはこれも今までバイオロギング、行動とか生態とか、それから安定同位体比、遺伝学的研究、さまざまやりまして、今の貝類資源への影響というのはちょっと過大評価ではないかと考えている点です。

 それから、ナルトビエイについては長年かけた検討の結果、新種であったということがわかりまして、新たな学名とともに論文として報告しておりますけれども、これも環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種ということで評価されておりますので、今後どういうふうにこのエイとつき合っていくかというのを十分考える必要があるかと思います。

 これまでに得てきた有明海の生物相、各魚類の生活史、食性等に関する研究の成果に基づきエコパスによる生態系モデルを構築しました。結局サメ・エイが非常に多い海域だということがわかりましたのと、あと、種の多様性が非常に高いというのと、漁業資源以外がほとんど報告されていない海域でしたので、今も貝類がとても重要な問題になっていますけれども、貝類以外の情報ですね。資源となっている生物以外の情報が非常に乏しかったので、資源以外の情報も全て含めてどういう生態系構造になっているかというのを調べてみました。そもそもエイが何で増えたかというところから始まったんですけれども、生態系モデルを構築してみますと、栄養段階が1から5まであるんですけれども、3以上の高次生物が非常に多い海域だというのがわかりました。これが有明海の特徴です。ですので、再生方策を考えるときには水産資源以外のものも考えないと、食う-食われるの関係を通したつながりというものがありますので、そこら辺を考えていくのが重要かと思います。

 あと、アカエイがもともと豊富な海域ということでさまざまな問題が出ておりますけれども、これはスライドの方をみていただければと思います。次の、サメとエイの漁獲量の変動は以前まとめた通りに逆の相関があるとして、エイと貝の漁獲量変動のグラフを見ていただきますと、エイを2001年から駆除を始めていまして、エイの資源量はかなり減りました。減ったんですけれども、貝は増えていないという問題と、エイの資源量と貝の資源量があまり同期していないということを考えると、実際、エイによる食害が二枚貝漁業にどれほどの影響をもたらしているのか、その辺りをもう少し精査する必要があるのではないかというところです。

 有明海の干潟の重要性についてはこのスライドに書きましたので、また読んでいただければいいんですけれども、単に面積があればいいというわけではないということがわかりまして、おそらく生物相とセットになっているので、今干潟を増やす方策を考えるよりも、この有明海独特の干潟の生態系がどういう仕組みになっているかを考えるのが優先ではないかと考えています。ここでは細かいデータはお見せできないんですけれども、それがポイントです。

 ここから、八代海の方ですが、前回の委員会報告から少し出るようになったんですけれども、ほとんど知見がないという状態でした。このスライドでもこれまでの委員会報告と同様に、総面積とか、干潟の面積とか最大平均水深とかを有明海と比べているんですけれども、これまで1つ抜けていた視点が、最大深度でした。有明海のほうは深海と呼ばれるぐらい深い海域があるんですけれども、八代海のほうにはそのような深い海がないということで、この環境の違いが有明海内では越冬を可能とすることから、生物相の豊富さにおそらく非常にきいていると思います。まず海域の特徴、両者の違いというのを十分押さえる必要がありますし、干潟面積については有明海と八代海で合わせて大体日本の干潟面積の半分を占めているということで多いんですけれども、これがひとえに同じ環境ではないということに注意する必要があります。

 この漁獲量の推移に関するスライドをみても、八代海の方は有明海ほど魚が減っていないという状況です。私たちは2013年から有明海でやってきた調査の方法を使いまして、八代海の調査を始めています。この35ページについて、わかったことの一つ重要なことは、これほど近くて、3カ所でつながっていて、環境も比較的よく似ている海域なのに、生物相が全然違うということです。この結果については正直驚いていますけれども、生態系の構造がかなり違う海だということです。

 この36ページについては、まずは高次捕食者であるサメ・エイから見て、先ほど有明海では二十何種類というお話をしましたが、八代海のほうでは有明海と同じく奥部の海域を見ているにもかかわらず、ほとんどアカエイのみに代表されるということです。他にはナルトビエイで、高次捕食者の種数が八代海のほうは非常に乏しいです。あと、奥部の泥干潟なんですけれども、有明海の奥部の干潟域は、多くのサメ・エイ類が入ってきて産仔して幼魚がそこで生まれて育つ、成育場になっているんですけれども、八代海の方は奥部の同じような海域で子どもを生むのはほとんどアカエイで、あとナルトビエイ、ということで、成育場としての利用状況も有明海と八代海で全く違っています。魚の場合は移動ができますので、似たような環境でこれだけ状況が違うというのがどういうことなのか、干潟のもつ意味とか干潟の生態系構造の違いとか、そういったところを再度調べていく必要があるのではないかと思います。サメ・エイ類、あるいは魚類から見ると、これだけ生物相が違うということは、単純に干潟の底質だけがダイレクトに影響を及ぼすわけではないので、先ほどもいいましたように有明海の奥部の干潟の持つ意味とかそういったものをもう一度ちゃんと考え直す必要があるなと、十何年調査を続けてきて、今改めて思っています。詳しくは資料のところに書いていますので、また見ていただければと思います。

 仔稚魚も同じくです。奥部から調査を始めて、奥部のほうで有明海と同じく成育場としての機能があるかどうかというのを中心に調べているんですが、上の図が有明海で下の図が八代海なんですけれども、仔稚魚の出現状況を見ても、奥部の状況がかなり違っているというのが今のところの結果です。仔稚魚の密度も違いますし、それから、出現する種も違います。そうすると、やはり先ほどから言いましたように、かなり異なる生態系だということです。有明海のほうは流れとかそういった環境特性も調べられてきたんですけれども、八代海のほうの流れの構造がどうなっているかということさえまだよくわかっていません。この辺の流れの状況を調べるというのも重要ですし、それから、奥部の干潟の持つ機能ですね。有明海と同等の機能を持つのかどうか、こういったところが今後、魚類の研究あるいは有明海全体の再生方策を進めていく上でも重要なポイントになるのではないかと考えています。

 最後のスライドですけれども、有明海と八代海を魚が往来するのかについてずっと調べています。この結果はトラフグとかそういった種も含めまして、比較的大型のものが中心なんですが、今のところ、有明海と八代海の行き来がないようだということがわかっていまして、冬になると有明海から外海に出ていく種類についても、八代海を経由することなく橘湾を経由して移動していくということで、有明海と八代海は明確に異なる生態系で、両海域の環境は魚類にとって明確に違っているのではないかと考えていますので、今後の再生方策を考える上で、あるいは海域区分を考える上でもこれらの知見も重要になるのではないかと考えています。

 詳細については話す時間がありませんので、またもし機会がありましたらそのときにお話します。今日は全体像ということで、干潟の重要性、有明海と八代海の違いですね。あと、有明海の干潟の持つ生産性の高さ、そういったところをポイントに、魚類についてわかってきたことをお話をさせていただきました。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 どうもありがとうございました。時間が押している中、手際よくまとめていただきまして、ありがとうございます。

 それでは、ただいま松山委員、山口委員から御発表していただきました。それぞれに御質問等があれば時間がありませんが、若干だけ御質問を賜りたいと思います。

 まず最初に4-1、松山委員からの御発表に対しまして何か御質問ございませんでしょうか。

 有用二枚貝の減少要因解明ということで、さまざまな取組を御紹介いただきました。よろしいでしょうか。

 どうぞ。

○古米委員 幼生のシミュレーションは、非常に魅力的な成果だと思うんですけれども、放出時期はいいんですけれども、毎時100粒子を出すというのはどのような意味でしょうか。タイラギ自体は干満がわかっていて、あるタイミングに放出するとかということじゃなくて、絶えず放出するものなんでしょうか。

○松山専門委員 モデル上はそのような設定です。本来であれば自然のタイラギがどういうタイミングで、どのくらいの期間産卵するのかという生態的情報に基づいて、それをモデルに与えるべきですが、実はそこの基礎的な知見があまりわかっていないので、とりあえずモデル上ではそういう条件で与えて計算したということになっています。

○古米委員 わかりました。

○滝川小委員会委員長 ほかにございませんでしょうか。

 それでは、ないようですので、最後になりますが、山口委員からの御説明につきまして何か御質問ございませんでしょうか。

 どうぞ。

○速水委員 コメントです。2006年の報告書が出てから以降の山口先生の研究で、随分有明海の魚類の生態に関して情報が増えたということがよくわかりました。ただ、長期的な魚類相の変化ということがこの委員会で取り扱う大きいテーマですので、ここまでの研究でわかった生態学的な知見と、それから、漁獲量データをあわせた水産資源学的な研究が今後再び必要になってきたのかなと感じています。

 以上です。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。山口先生のほうから何かございますか。

○山口(敦)委員 変動についても、もちろん見ています。ただ、どの変動を押さえればいいかというところも現時点で問題です。かなり魚類の種多様性が高くて、海域ごとに全く魚類相が違うという状況ですので、どこをどう押さえていけばいいかという、そこをまた読み間違えると違う変動を見てしまうので、そこから慎重にする必要があると思っています。

 ずいぶんわかってきましたので、科学的に十分な知見に基づいて、もちろん考えてやっていますし、ただ、正確な漁獲データがないことがやはり大きな問題で、先ほどのように傾向は見られるんですけれども、多様性が高いというのをお見せしましたように、何種類もがまざった状態です。それぞれ外部形態は似ているんですけれども、生態は全く違いますので、その複数が混ざった状態をどう捉えていくか。漁獲データの重要性に対して、こちらではどうにもできないんですけれども、2006年以降ですかね、予算の関係もあってあまり統計をとられていないということであります。漁獲統計は命綱です。それを何とかしていただきたい、どうしたらいいのかわからないですけれども。

○滝川小委員会委員長 ありがとうございます。

 これまでの知見に加えて新たな知見、さらには今後進むべき方向性について課題も含めていろいろ問題もあろうかと思います。我々としてもそういう今後に向けての検討の方向性というのも十分議論しなきゃいけないのかなと思います。

 それで、非常に不手際で時間がオーバーしてしまいました。一応ここで議題の1、再生方策、調査・研究開発の実施状況ということにつきましては終了させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、議題の2になりますが、その他ですが、事務局のほうから何かございますでしょうか。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 本年3月に有明海・八代海等総合調査評価委員会を開催する予定としており、その際、今年度開催しました2回の小委員会の内容として、小委員会における作業方針や本日御報告いただきました内容等について御報告させていただく予定です。

 また、次回の小委員会については、本年6月ごろの開催を予定しておりまして、各小委員会が担う検討事項につきまして多角的な観点から整理・分析を行うために、データ整理・分析の具体的な検討内容等を御審議いただく予定としております。

 なお、小委員会の開催日につきましては、両小委員長とも相談の上、皆様方の御都合を伺い、日程調整をさせていただきますので、その際はよろしくお願いいたします。

○滝川小委員会委員長 ただいま事務局のほうから今後の予定等につきまして報告がありました。これでよろしゅうございますでしょうか。

 よろしくお願いいたします。

 それでは、本日の委員会全体を通して何かございますか。

 ないようでございますので、これで終わらせていただきたいと思いますが、本日は本当に長時間にわたりまして、ありがとうございました。司会の不手際によりまして、少しオーバーしてしまいましたが、貴重な研究・調査報告等々発表していただき、限られた時間の中で数多くの内容の充実したものがあったのではないかなと思いますし、きっとこれだけでは時間的にも内容的にも足らないのかなという気がいたしております。小委員会としましても、今後とも今日御発表いただきました各研究成果等々につきましては、御協力をまた改めてお願いすることになるかと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 それでは、本日予定されておりました議事につきましては全て終了いたしました。

 進行につきましては、事務局にお返ししたいと思います。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 滝川委員長、ありがとうございました。

 事務局から1点御連絡です。本日の議事録ですが、後日、事務局より確認依頼を行いますので、よろしくお願いいたします。内容確認後、議事録は環境省ホームページで公開させていただきます。

 それでは、以上をもちまして第2回の小委員会を閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

午後5時16分 閉会