第16回有明海・八代海等総合調査評価委員会水産資源再生方策検討作業小委員会 議事録

開催日

令和7年1月16日(木)

場所

WEB会議システムにより開催(ライブ配信)

出席者

有明海・八代海等総合調査評価委員会委員長:古米弘明委員長
小委員会委員長:鈴木敏之委員長
委員 :  中島則久委員、藤井直幹委員、矢野真一郎委員、山西博幸委員
専門委員:青木美鈴委員、尾田成幸委員、岸田光代委員、外城和幸委員、松山幸彦委員、森野晃司委員、山口啓子委員、山本智子委員
(オブザーバー)
大嶋雄治委員、清本容子委員、速水祐一委員
(関係省庁)
農林水産省農村振興局整備部農地資源課 佐田課長補佐、藤吉係長
水産庁増殖推進部漁場資源課 津山課長補佐、贄田課長補佐、石橋係長、熱海係長、熊本係員、野田係員
水産庁増殖推進部研究指導課 中村課長補佐、梶原係員
水産庁増殖推進部栽培養殖課 清水課長補佐、竹川課長補佐、監物係長、鈴木養殖国際専門官、伊藤係員
水産庁漁港漁場整備部計画・海業政策課 中村計画官、藤濱係長
水産庁 漁港漁場整備部 事業課 石川漁場環境情報分析官、松﨑漁港漁場専門官、鈴木係長、山内係員
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 吉田副部長
国立研究開発法人 水産研究・教育機構 水産技術研究所 有明海・八代海グループ 福岡グループ長
国土交通省水管理・国土保全局河川環境課 阿河課長補佐、木村係長
国土交通省 港湾局 海洋・環境課 三谷課長補佐
国土交通省 九州地方整備局 河川部 古川建設専門官、德嶋係長
長崎県 水産部漁港漁場課漁場・環境計画担当 大隈課長補佐、中島技師
(事務局)
環境省水・大気環境局海洋環境課長、海洋環境課海域環境管理室海域環境対策推進官、海洋環境課海域環境管理室室長補佐、海洋環境課海域環境管理室主査

議事録

午前9時30分 開会

○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第16回水産資源再生方策検討作業小委員会を開会いたします。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき誠にありがとうございます。
 本日の小委員会は、ウェブ会議での開催とさせていただいております。会議中、音声が聞き取りにくいなど、不具合がございましたら、事務局までお電話、またはウェブ会議のシステムのチャット機能にてお知らせください。
 また、議事中、マイク機能は会場及び発言者以外はミュートに設定させていただきます。
 なお、ウェブ会議で御発言をする際は、お名前横にある挙手アイコンをクリックし、委員長からの御指名後、マイクのミュートを解除いただき御発言いただきますようお願いいたします。御発言後は、挙手アイコンを再度クリックしていただき、黒になるよう操作をお願いします。
 また、御発言の際は、最初に名前をおっしゃっていただいた後、ゆっくり大きめに御発言をいただけますと幸いです。
 また、本委員会は公開の会議となっておりまして、環境省海洋環境課公式動画チャンネルにてライブ配信を行っております。
 続いて、出席状況になります。本日の委員の出席についてですが、本日は内藤委員、桑原専門委員、山口敦子専門委員より、御欠席の御連絡をいただいております。そのため、本日は、委員16名中13名が御出席となりますので、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを御報告いたします。
 また、本日は、評価委員会の古米委員長に御参加いただいております。
 そして、オブザーバーとして、評価委員会から大嶋委員、清本委員、海域小委員会から速水委員に御参加をいただいております。オブザーバー参加の委員におかれましては、御質問や御意見がある場合には、発言を求められてから挙手をお願いいたします。
 また、本日は、関係機関としまして、農林水産省農村振興局、水産庁、国土交通省水管理・国土保全局、港湾局、九州地方整備局、そして長崎県水産部、国立研究開発法人水産研究・教育機構から御参加をいただいております。
 事務局につきましては、海洋環境課長の水谷、室長補佐の川田、主査の小原、そして私、工藤が出席をさせていただいております。
 続きまして、資料についてでございます。資料については、事前に電子データ等で案内をしておりますが、議事次第に記載の一覧のとおりになっております。もし資料に不足や不備がございましたら、事務局までお知らせいただければ幸いです。
 それでは、議題に入ります。
 以降の進行につきましては、鈴木委員長、よろしくお願いいたします。
○鈴木委員長 了解いたしました。
本日の進行を担当させていただきます鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 限られた時間の中で、円滑な議事の進行に御協力をお願いいたします。
 早速ですが、議事を始めさせていただきます。本日の議題は、ノリ養殖と魚類等に係る情報収集等となります。
 それでは、議題1について、後ほどまとめて御意見を伺いたいと思いますので、資料2-1から資料2-3まで、続けて御発表ください。
 まずは資料2-1、有害赤潮プランクトンの出現動態監視及び予察技術開発について、水産庁より御説明願います。
○贄田漁場資源課課長補佐 水産庁漁場資源課の贄田と申します。
 資料2-1に基づいて、説明をさせていただきます。
 珪藻赤潮による養殖ノリの色落ちなどの被害を軽減するために、令和4年度まで委託事業「漁場環境改善推進事業」、令和5年度以降は「豊かな漁場環境推進事業」において、水産研究・教育機構や関係県の研究機関の皆様、共同で、有害プランクトンの出現動態監視・予察技術開発を実施しております。
 資料1ページ目でございます。
 有明海は我が国有数の養殖ノリの生産地であり、ノリ養殖は有明海の水産業において重要な位置づけとなっております。他方、有明海では秋季から冬季に珪藻赤潮が発生することで栄養塩類が減少し、養殖ノリの色落ちが発生しております。こういった色落ち被害軽減対策のため、珪藻赤潮の動態予測技術の開発が必要とされております。そこで、有明海の奥部海域から中央部海域にかけて広域的な調査を実施し、ノリの色落ち原因となる珪藻の発生状況、海洋環境を監視するとともに、ノリの色落ち原因となる珪藻の発生シナリオを構築し、赤潮発生予察手法を検討しております。
 スライド1枚目の下に出ておりますように、ノリの色落ちの原因となる珪藻類としまして、沿岸域に広く分布するEucampiaや沿岸・内湾域で普遍的に生息している小型珪藻類Skeletonema等が、ノリ漁期に赤潮を形成することにより、色落ちにつながることが知られております。
 資料2ページ目をお願いいたします。
 有明海の奥部から中央部にかけて、広域的にモニタリングを実施しており、2018年度から2022年度の過去5年間における有明海奥部海域と中央部海域のそれぞれ8定点の平均の、主要な珪藻類の平均細胞密度を右の図に示しております。
 右側のグラフ、一番上の小型珪藻のChaetocerosにつきましては、後に資料2-3においても2013年から2017年度のデータが示されておりますが、2018年度以降、秋季に高密度化することが多くなっております。
 また、上から二つ目のSkeletonemaによる赤潮は、冬季に毎年発生し、水温や光環境が増殖の要因と考えられてきましたが、近年は出現様式に変化が生じております。
 また、3番目のEucampiaにつきましては、2018年度冬季における細胞密度が2月中旬から下旬にかけて上昇しております。
 資料3ページ目をお願いいたします。2018年11月~2019年2月までの有明海奥部表層におけるSkeletonemaとEucampiaの平均細胞密度と溶存態窒素の変化を右側の上の図に示しております。右側上の図の青色の線がSkeletonemaの平均細胞密度、オレンジ色の線がEucampia、そして灰色の線が溶存態窒素の変化となっております。2019年1月では、青い線で示しておりますSkeletonemaの細胞数が上昇して高密度化しておりましたが、1月下旬をピークとして、栄養塩類の濃度の低下とともに細胞が減少しております。
 また、右側の下の図につきましては、2019年1月~3月の観測定点P6の表層の水温と、佐賀市の日間降水量、筑後大堰直下流量の変化について示しております。オレンジ色の線が水温、下の棒グラフが降水量、青い線が筑後大堰直下の流量となっております。上のEucampiaの細胞数の変化の図と見比べますと、Eucampiaが増加する2月以降は水温が上昇傾向に転じるとともに、降水に起因すると見られる河川流量の増加が見られました。
 資料4ページ目をお願いします。
 前のページにおいて説明させていただいたEucampiaの冬季における赤潮発生メカニズムの概念図を、図の特に右側の二つで示しています。この右側の二つの図のうち、赤で囲んでおりますものについて、これが赤潮発生の際のシナリオですが、2月以降の水温が上昇する時期に、降水により河川流量が増加することで栄養塩類が供給されるとともに、密度成層が形成され、細胞の増殖に有利な環境になっていると考えられております。このような環境条件を分析することによって、赤潮の発生予察につなげていける可能性が示されており、引き続き、有害赤潮プランクトンの出現動態監視・予察技術の開発に取り組んでまいりたいと考えております。
 私から資料2-1の説明は以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-2、ノリ養殖に係る資料の収集・整理・分析状況について、松山委員より御説明願います。
○松山専門委員 はい、かしこまりました。
 おはようございます。有明海・八代海勉強会事務局を担当しております水産技術研究所の松山です。私のほうからは資料2-2を説明いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次のスライドをお願いします。
 いわゆる主要4項目のうち、ノリ養殖につきましては、ここに掲げました5つの再生方策について、水産小委において資料収集を求められているところです。12月17日、今日から1か月ほど前に、関係県とともに有明海・八代海勉強会を開催しまして、ノリ養殖関係の資料を収集いたしました。今回ここに掲げた5つの再生方策のうち、赤文字で示しました4項目が収集できましたので、これから詳細について、関係機関から順次御説明いただくことにしております。
 なお、黒文字の、環境負荷の軽減に配慮したノリ養殖技術の確立、これに関しては今回資料の収集ができておりません。関連する国の事業は現在走っていないのですが、一部の沿岸県のほうで、二枚貝を用いたノリ養殖の色落ち対策が行われております。現在はノリ漁期の真っ最中で、まだ取組が現在進行形ということですので、次回以降に資料を収集したいと考えているところです。
 では、次のスライドをお願いします。
 勉強会で収集した資料は、①~④になります。私からは、①のところの各県の生産量の現況のみについて、簡単に御説明いたします。
 次のスライドをお願いします。
 この図は、1980年~2023年までの有明海沿岸4県のノリ生産量・ノリの生産額を示しております。生産額の方は折れ線グラフで、生産枚数の方は棒グラフ、緑のものになっております。長崎県以外は、縦軸を全てそろえてあります。
 御覧のとおり、1990年代の半ば以降はノリの生産量は比較的安定していますが、真ん中のところの2000年、福岡県、佐賀県のところですが、2000年に大きく落ち込んでおり、これが2000年のノリの大不作年になります。
 実は、直近2か年、2022年と2023年は、福岡県と佐賀県さんの海域で、2000年のノリの大不作に匹敵するほどの大きな減産となっております。生産量はかなり落ち込んでおりますが、品不足のために価格が上昇したため、単価は上昇しておりまして、結果的に、販売額の減少は、2000年と比較するとそれほど大きくはありませんでした。
 次のスライドをお願いします。
 直近2か年の不作が分かるように、グラフから数字を抜き出したものがこれになります。上が2005年~2021年度の平均的な生産枚数と生産額、下が直近2か年の不作年の状況です。
 生産量は、特に福岡・佐賀海域で半分近くまで減っておりますが、熊本県海域では生産枚数の減少はあまり大きくなく、結果的に、熊本県海域では生産額が逆に増えているというような形になっているというのがよく分かるかと思います。
 詳細については、またお手元の資料で御確認をお願いしたいと思います。
 資料2-2については以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-3、珪藻赤潮の発生機構、被害軽減対策技術の開発・高度化について、水産研究・教育機構より説明願います。
○福岡水産技術研究所有明海・八代海グループ長 水産技術研究所の福岡が説明いたします。
 次のスライドをお願いいたします。
 本日は、資料につきましては、このような順番で説明をしてまいります。
 次、お願いいたします。
 ノリの生産量につきましては、先ほど説明がありましたので省略いたします。
 次、お願いいたします。
 次に、赤潮発生状況です。これまでの報告、平成28年度の委員会報告、令和3年度の中間取りまとめにおきましては、有明海の主要種として、Eucampia zodiacus、Asteroplanus karianus 、Skeletonema spp.に焦点を当て、赤潮の発生状況が述べられておりました。
 次、お願いいたします。
 2013年度以降の主要種による赤潮をまとめたのが下の図になります。こちらは九州海域の赤潮を基に作成したもので、福岡県、佐賀県、熊本県の2013年度~2023年度までの10月~3月、各月で赤潮発生の記録があるところに色がついており、ノリの被害が発生したところは色が濃くなっております。
 小型珪藻のSkeletonema、Chaetocerosによる赤潮は毎年発生し、近年は広域で色落ち原因種となっております。Eucampia zodiacusは、主に2月以降に定期的に赤潮化しているという状況は変わりありません。珪藻ではありませんが、Akashiwo sanguineaが10~12月に赤潮化することがあるというのが状況です。
 Asteroplanus karianusについては、後ほどまた説明いたします。
 次、お願いいたします。
 水産庁事業におきましては、赤潮の発生機構の解明と予察技術の開発に取り組んでおり、福岡県、佐賀県、熊本県、水産機構技術研で共同して広域モニタリングを実施しております。
 左の図が、そちらの定点となります。こちらの定点では、採水を伴う定期観測や多項目水質計のみの観測、また、右下にありますような連続観測機器やブイによって水質の連続観測を行っております。
 次、お願いいたします。
 これらで得られた情報につきましては、水産技術研究所が運営しております「赤潮ネット」で公表しております。植物プランクトン等のデータは、各機関が「赤潮ネット」の赤潮分布情報にデータを登録し、左の図にありますように、地図上に表示して一般に広く公表しております。
 また、水産機構技術研が奥部西側域に設置している連続観測機器による水質データは、「有明海・八代海等の水質観測情報」において右図のように準リアルタイムで表及びグラフ化して公表をしております。
 次、お願いいたします。
 次に、ここから赤潮発生機構と予察手法について、各種ごとに説明してまいります。
 まず、Asteroplanus karianusについてです。
 本種の特徴として、佐賀県海域において赤潮を形成すると。また、2007年度~2014年度に、単独で、かつ高密度の赤潮を形成したというのが特徴となります。
 これまでの報告におきましては、最高細胞密度の変動や生理生態学的な特徴、赤潮発生機構の想定概念図、また、水温変動予測と潮汐表の活用による予察手法というのが記載されております。しかし、右の図にありますように、2015年度以降については、2020年度にSkeletonema等との混合赤潮として記録されたのみであり、現在はノリの色落ちの主要種となっていないという状況であります。
 次、お願いいたします。
 こちらは、水産庁の事業の定点の細胞密度変化を示しています。一番奥の六角川河口の沖合に当たるT2という定点の細胞密度変化で、上が2013年度~20年度、下が21年度~23年度の結果です。
 2015年度以降は出現時期が遅くなっているというのが一つの特徴で、また、2021年度以降は、本事業の定点においては細胞の出現が確認されておりません。
 次、お願いいたします。
 この要因について、少し検討したのがこちらになります。
 ブルームピーク時期は水温10℃を下回った後の初めての大潮期に続く小潮期に発生するという報告があります。
 左の図は、先ほどのT2という点と、その沖合のT13という点の本種の細胞密度の変化、青い線が表層水温の変化になります。13年度、14年度は、水温が12月中旬には10℃を下回り、その後にピークがあるのですが、それ以降は水温の低下というのが遅くなっていると。これが、増殖時期の遅れは水温低下の遅れが影響している可能性があると考えられます。
 また、2021年度、2022年度、2023年度は、細胞の出現が確認されませんでしたが、右の図が、12月~1月の、一番上から佐賀市の積算降水量、Chaetocerosの細胞密度、表層のDINの濃度になりますが、2021年度、2022年度、2023年度は降水量が少なく、一方でChaetocerosの細胞密度が高かったと。そのことによって、水中のDIN濃度が低かったという状況にありました。
 本種は、DINの半飽和定数が高く、効率よく増殖するには窒素源が豊富に溶存する環境が必要であるという報告があり、2021年度以降に出現が確認されない状況は、栄養塩が低いことが影響していることが考えられるという結果となりました。
 次、お願いいたします。
 続いては、Eucampia zodiacusです。
 これまでの委員会報告におきましては、有明海での発生状況、赤潮発生機構についての断片的な知見が記載されております。
 課題としましては、発生要因の解析、発生機構の明確化と発生予察技術の開発、赤潮終息時期の検討というのが挙げられておりました。
 次、お願いいたします。
 そのことについて、本事業においては、特に冬季の赤潮発生機構として、2018年度の赤潮について解析を進めてまいりました。赤潮発生年である2018年度の冬季の細胞密度は、2月中旬から下旬にかけて上昇しておりました。
 次、お願いいたします。
 定期観測の水質データからは、湾奥ではEucampia zodiacusが増加した2月下旬に沖合まで密度成層が形成されておりました。
 真ん中の図が、2018年の12月下旬~2月下旬の左の図にあるT2~SBにおける海水密度(σt)の鉛直断面図になります。一番下の2月27日の表層が、密度が低いという状況が見てとれます。
 また、右の図、最初に説明がありましたが、2月中旬からの気温上昇に伴う表層水温上昇と河川流量増加に伴う表層塩分の低下が、密度成層の強化と、また、それによるエスチュアリー循環の形成につながったと考えられました。
 次、お願いいたします。
 こちらは、P6という定点に設置しております自動観測ブイの水質鉛直データになります。30分ごとに鉛直的なデータを取っています。
 こちらを見ますと、2月中旬から密度成層の形成が確認され、2月下旬以降は全層にEucampia zodiacusの細胞が分布している様子が見られました。
 図の真ん中がσtになり、赤丸で囲ったところで表層の密度が低くなっている。その下、クロロフィルが濃くなっています。このとき、定期観測による検鏡によって、このクロロフィルの主体はEucampia zodiacusであるというのが確認されております。
 また、酸素飽和度を見ますと、表層で活発に光合成が行われておりますが、底層には沈降した細胞が存在していると推察されました。
 次、お願いいたします。
 また、先ほどの図ですが、定期観測データからは、底層のほうでは湾口側から湾奥側へ張り出す水が確認されました。一番下の図ですが、海水密度(σt)の鉛直断面図になりますが、このように湾口側から湾奥側に密度の高い水が存在しているということが見られました。
 P6自動観測ブイによる表層・底層の流向流速からは、小潮期には底層で北向き(湾奥方向)への残差流が見られ、底層に沈降した細胞は浅い湾奥側へ輸送されると推察されました。
 次、お願いいたします。
 これらの結果から、冬季の赤潮化の機構について想定されるシナリオとしましては、2月の水温が上昇傾向に転じた時期に、降水による河川流量が増加すると密度成層が形成される。小潮期には、エスチュアリー循環により、細胞は表層で増殖しながら沖合へ輸送され、沖合で沈降した細胞は底層の湾奥側へ向かう流れにより浅い水域に輸送されることでさらに増殖する。これによって大規模な赤潮化が発生すると考えられました。
 次、お願いいたします。
 これらの結果、冬季の赤潮発生機構の想定概念図としては、このようにまとめられました。
 1月以降の細胞の出現状況を把握し、水温の変化と降水予測から短期予察が可能となると考えております。
 これについては、論文として受理をされております。
 次、お願いいたします。
 次に、Skeletonemaについてです。
 これまでの報告におきましては、有明海北部西側域における河口周辺での初期増殖及び水塊の滞留による増殖ということが記載されています。
 課題としましては、季節や海域ごとの赤潮形成種を判別し、種の特性に応じた検討が必要であるとされています。
 次、お願いいたします。
 Skeletonemaにつきましては、近年、分子形質によって種判別というものができるようになってきました。我々のほうでは、Yoshidaらの方法によって、定量PCRによって有明海広域での各種の出現状況の把握を、2023年度から実施を始めたという状況です。
 その結果ですけども、Skeletonema dohrniiが最も高い頻度で出現が確認され、Skeletonema costatumとtropicumは10月~11月、japonicumは1月以降に出現が多いという結果が得られています。
 これは、まだモニタリングに着手したという状況でありますので、今後もモニタリングを継続して種及び海域における出現特性を把握し、種あるいは季節ごとの発生予察に向けた検討が必要であるというところであります。
 次、お願いいたします。
 次に、Chaetocerosです。
 これまでの委員会報告等においては、主要なノリ色落ち原因珪藻とは扱われてきませんでした。しかし、最初に説明がありましたとおり、2018年度以降、秋季に有明海広域で細胞密度が上昇し、赤潮化する頻度が上昇してまいりました。
 次、お願いいたします。
 この2018年度以降、赤潮化する頻度が高くなった要因として、まずは気象及び水質データからの検討を行いました。2018年度~2023年度の10月~11月は、佐賀市の降水量及び筑後大堰直下の流量が少なく、日照率が高いことで全天日射量が比較的多かったという状況でした。
 左の上が積算降水量、下が筑後大堰直下の日平均流量、右が佐賀市における全天日射量の変化となります。
 次、お願いいたします。
 定期観測のデータからは、2018年度~2023年度の10月~11月は降水量が少なかったことで表層塩分は高く、一方、DIN(溶存態窒素)は低く、透明度については明瞭な上昇は見られなかったという結果でした。
 次、お願いいたします。
 2018年度~2023年度の秋季のChaetocerosの増殖には、気象条件の影響が大きかった可能性が一つ考えられます。これは、瀬戸内海や洞海湾、福岡湾では珪藻の優占種がSkeletonemaからChaetocerosとなる頻度が増加していることが報告されております。その要因として、栄養塩減少や透明度上昇による水柱内の光透過量の増加が示唆されています。
 有明海では、2018年度~2023年度の秋季、透明度の明瞭な上昇は見られませんでしたが、晴天が続いたことで全天日射量が多く、水柱内で良好な光環境が継続したということが考えられ、それがChaetoceros属の増殖に有利に働き赤潮化した可能性があると、今のところは考えられます。
 今後、さらに水質データや競合種との関係について解析を進め、気象条件等を含めたデータから発生予察について検討を進める必要があります。
 次、お願いいたします。
 以上が水産庁の結果で、それ以外にもこのような報告が、有明海から報告があるということで、参考として載せております。
 以上で発表を終わります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 ただいま御説明がありました内容の、資料2-1から2-3について、御意見、御質問等を承りたいと思います。いかがでしょうか。挙手をして御発言ください。
山口先生、お願いします。
○山口(啓)専門委員 ありがとうございます。
 最後のほう、Chaetocerosのところで、秋に赤潮が増えたということを御説明いただいたのですが、秋ですと、本来ですと、二枚貝とか懸濁物食者が活発に働いていれば、結構それらが捕食して濃度が上がりにくいということがあるのかと思うのですが、そういう懸濁物食者が最近減っているとか、懸濁物食者、イメージしているのは二枚貝ですね、二枚貝の現存量と秋の赤潮、Chaetocerosの赤潮発生とかに相関は見られないのでしょうか。
○鈴木委員長 御質問ありがとうございます。
 では、水産機構からの御回答をお願いいたします。
○福岡水産技術研究所有明海・八代海グループ長 福岡です。
 正直申しまして、二枚貝との相関というのは見ていないので、これについては分かりません。秋季については、これまでSkeletonemaが赤潮化することはあったのですが、それがChaetocerosに代わったというところもありますので、そういった種の遷移といいますか、変化というのが、この事業としては見えたという結果になります。したがいまして、二枚貝による影響というところまでは、まだ検討は行われていないという状況です。
○山口(啓)専門委員 ありがとうございます。近年、サルボウガイも減少してほとんど取れなくなっているというのを伺いましたので、もしかしたら何か関係があるかなと思ったので、伺いました。もし機会がありましたら、ぜひ御検討をお願いします。
○福岡水産技術研究所有明海・八代海グループ長 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 では、ほかに御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 では、オブザーバーで参加していただいている委員の皆様も、御意見等がございましたらお願いいたします。挙手をして発言をお願いします。
では、矢野委員、お願いします。
○矢野委員 九州大学の矢野です。
 今回、資料2-2の中で、4ページですかね、生産額を示していただいて、非常によく分かったのですが、例えば、御説明の中でもあったとおり、2022~2023年度の熊本県が、単価が上がったせいで、生産額自体は例年よりちょっと上がっているというようなお話がありました。知りたいのは、これはあくまでも生産額なので、実際に重要なのは漁業者の利益がどのくらい上がったかということかと思うんですよね。最近は、いろんな物資の値段も上がったり、多分、船を出す油代が上がったりとか、いろいろあると思うので、単純に生産額だけ比較してしまうと、意外とちゃんともうかっているのかなという印象を受けてしまうのですが、実際の利益がどうなっているのか、もし分かれば、そういう形で示していただくのが、より漁業者の実態に即した数値になるのかなと思ったので、それは難しいかもしれないですが、それを感じたということですね。
 それと、あと2005年~2021年度の平均額と2022年、2023年の額を示していただいているんですけど、これも単純に比較していいものかどうか。要するに、簡単に言うと、2005年の1億円と2023年の1億円は、物価とかがスライドしていますので、本当は意味がちょっと違うと思うのですが、何かそういった、物価にスライドしたような、実質的に漁業者がどの程度潤っているのか潤っていないのかというような示し方ができると、より現実というのが分かるのかなと思ったので、なかなか難しいかもしれないですが、そこら辺まで精査することができそうかどうか、伺いたかったんですけど。
 すみません、長くなりましたが、お願いします。
○鈴木委員長 矢野先生、御意見ありがとうございました。
 では、松山委員から御回答をお願いいたします。
○松山専門委員 勉強会のほうでは、農林統計というか、各県さんのほうで把握している、この生産枚数と生産額のところでしか議論ができないということで、今回こういう整理にさせていただいているところではあります。
 先生がおっしゃるとおり、単純に金額だけの問題ではなくて、直近、資材費とか様々なものが値上がりしていますので、昔の100億と今の100億はまた違うだろうということは、おっしゃるとおりだと思います。多少、社会経済情勢的な課題が入ってくるかと思いますので、また別途、そういう委員会報告を取りまとめる際、今いただいたような意見を踏まえて、単純に金額で精査するだけではなくて、もう少し漁業者のフェーディングが示せるような整理の仕方もできていければと考えているところです。
○矢野委員 どうもありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、ほかに御質問等がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、次は、資料2-4から2-9まで、続けて御発表ください。
 まずは、資料2-4、福岡県海域のノリ養殖について、尾田専門委員より説明願います。
○尾田専門委員 福岡県の有明海研究所、尾田でございます。
 資料2-4について御説明します。
 福岡県海域のノリ養殖についてということで、各種データを示しております。こちらは福岡有明海漁連さんの調べたものを、了承を得て発表させていただきます。
 まず、左の上のほうですが、福岡県の地図でございます。黄色で囲っているところが福岡県の共同漁業権の範囲でございまして、青いところが農林水産大臣の管轄の漁場で、佐賀県との共通海域となっております。赤い四角または三角で示しているところは、ノリの区画漁場となっております。
 その下は、ノリの実行使用柵数の推移のグラフでございますが、これは平成20年~昨年までのデータでございますが、やはりじわじわと減少している傾向でございます。
 右のほうの上のグラフですが、こちらは生産枚数の推移で、単位が億枚となっております。先ほども御説明がございましたが、不作の令和4年、令和5年を除くと、やや横ばいか漸減傾向となっておるというところでございます。
 真ん中の図ですが、1柵当たりの生産枚数の推移でございます。こちらも令和4年、令和5年は少ない状況でございますが、それを除くと、5,000~7,500枚で横ばいとなっている状況でございます。
 一番下は、ノリの自営業者数、経営体数ですね、それの推移でございますが、こちらのほうは、漁業者の数といいますか、全国的な傾向と同じだと思うのですが、減少が目立っております。
 このような状況で、真ん中の図ですが、柵当たりの生産枚数は5,000~7,500と、産地規模は維持している、何とか維持できているような状況でございますが、かなりいっぱいいっぱいなところもあるような気もしております。これ、維持している理由としては、大規模化、1経営体当たりの柵数が増えて大規模化しているということと、雇用なんかもして産地を維持しているという状況でございます。
 福岡県は以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-5、佐賀県海域のノリ養殖について、中島委員より説明願います。
○中島委員 佐賀県有明水産振興センターの中島でございます。聞こえていますでしょうか。
○鈴木委員長 はい、聞こえております。
○中島委員 では、資料2-5の1ページ目について説明をいたします。佐賀県のほうは資料が簡単で申し訳ございません。
 最初に行使者数、漁業者、ノリ養殖に携わります漁業経営体の数でございます。この行使者数の推移は、15か年で410行使者が減少しております。この図のとおりですね。
 次のページをお願いいたします。
 佐賀県の免許上のノリの養殖柵数は、40万柵が設けられておりますが、適正な柵数ということで、2割削減を目標に以前から進めておりました。ただ、現在は、もう2割以上、約28万柵となっておりまして、減柵の目標は、もう大幅に達成をしております。
 ただ、先ほどのページと併せまして、1行使者当たりの使っている柵数は、1行使者当たり300~450と大分増加はしているような状況でございます。
 佐賀県は以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-6、熊本県海域のノリ養殖について、森野専門委員より説明願います。
○森野専門委員 熊本県水産研究センターの森野です。
 資料2-6になりますが、熊本県におけるノリ養殖業の状況について説明させていただきます。
 まず右側の図、熊本県のノリ養殖の漁場図になりまして、緑の部分が干潟域での養殖漁場の支柱式の養殖漁場になります。その沖合に、薄い水色の部分が干潟にならない海域で、浮き流し式の漁場として養殖生産されておりまして、以前から、漁場面積としては大きな変化はあっていないという状況でございます。
 右上のグラフにつきましては、ノリ養殖経営体数と柵数の推移でして、経営体数につきましては、平成8年が787経営体でしたが、令和5年では265経営体まで減少しております。また、柵数におきましても、平成8年は約22万柵でしたが、令和5年は約15万柵ということで、減少しております。
 下のグラフが、生産枚数と1柵当たりの生産枚数になりますが、県全体の生産枚数には、年変動はありますが、近年、減少傾向にあり、1柵当たりの生産枚数につきましては、年変動、こちら、大きくありますけど、年によって変動があり、横ばいで推移しております。
 そのことで、経営体数は減少している、約3割まで減少しておりますが、1柵当たりの生産枚数は、増減はありますが、横ばいで推移しているという状況でございます。
 説明は以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-7、養殖業成長産業化推進事業について、水産庁から説明をお願いいたします。
○鈴木栽培養殖課養殖国際専門官 水産庁栽培養殖課の鈴木と申します。
 水産庁において実施している、ノリ養殖に関する技術開発事業について御報告いたします。
 資料2-7、1ページ目を御覧ください。
 予算事業としては、養殖業成長産業化推進事業の中で実施しておりまして、右側の図の赤枠で囲んだところに記載している種苗対策に係る技術開発事業の一つとして実施しております。
 資料2ページ目を御覧ください。
 現在、ノリ養殖をめぐる情勢として課題が三つあり、一つ目は温暖化に伴う海水温上昇、二つ目は鳥や魚による食害、三つ目は栄養塩類の減少ということで、これらは有明海に限らず全国的な問題となっておりますので、委託事業として、水産研究・教育機構及び関係県の試験研究機関に御参画いただき、全国対策として事業を実施しているところでございます。
 各課題への具体的な取組としては、海水温上昇等の環境変化に適応した品種の開発として、高水温耐性や高生長性などに優れた品種の開発を進めております。また、バイオスティミュラントの技術を利用して、ノリ種苗の環境耐性強化が可能かどうか実証中であるほか、ノリの生産に影響を及ぼす漁場環境の評価として、酸処理剤等に由来する有機酸の挙動に関するモニタリング調査についても実施しているところです。
 これらの有明海におけるノリ養殖関連技術開発の動向については、この後、委託事業の受託機関である水産技術研究所から説明をしていただきます。お願いします。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-8、水温上昇等に対応したノリ養殖技術の開発について、水産研究・教育機構より説明をお願いいたします。
○吉田水産技術研究所環境・応用部門沿岸生態システム部副部長 では、水産技術研究所の吉田から報告させていただきます。
 次のスライドをお願いします。
 まず、背景からですが、これはノリの生活史と養殖工程です。ノリは世代交代というものを行いまして、夏は糸状体という小さな世代で過ごします。このように、保存していた糸状体を秋に増やして成熟させまして、そこから出た殻胞子を漁場で、養殖網に着生させます。これを採苗といってですね、養殖開始ということになります。
 現在、有明海では水温の降下と潮回りを考慮しまして、有明4県で調整の上、養殖開始日を決めておりますけども、水温としては23℃、あるいは23℃台が推奨されております。
 このように採苗した網を、そのまま海域で育苗しまして、一部冷凍します。秋芽網生産、それから冷凍網生産の順に生産していきます。
 次のスライドをお願いします。
 問題は、ノリの葉状体は非常に高水温に弱いというところがあります。23℃が養殖開始の推奨ですが、24℃で培養すると、このように形態異常が出てきてしまう。このような形態異常というのは、ノリ芽の流出の原因になります。したがって、養殖の開始、採苗とか育苗のほうがうまくいくかどうかというのは、非常に水温に影響されるところが大きいです。
 次、よろしくお願いいたします。
 左のグラフは、オレンジの線は佐賀県における採苗開始日、青線が10月の平均水温の推移となっております。
 有明海では、1990年代までノリの養殖は10月初旬に開始されておりました。しかし、そのときでも、年々の水温によって非常に不安定であったということをお聞きしております。
 2005年の高水温によりましてノリ芽に多大な障害が起こったことをきっかけに、2007年より採苗時期を1潮汐遅らせる取組をしております。現在、ノリの養殖開始日は10月中旬から下旬、大体2週間~3週間遅くなっております。
 この取組は、結果的に生産を安定させている一つの適応策として機能しているのですが、今後も温暖化が進行すると予想されることから、さらなる漁期の短縮による生産減が懸念されているところです。
 次、お願いします。
 水産庁の養殖業成長産業化技術開発事業の中で、先ほど御説明がありましたとおり、温暖化に適応して安定生産を可能とするためのノリの有用品種の開発を行っています。具体的には、高水温耐性株を作出して、漁期初期の高水温状況を乗り切り十分な養殖期間を確保するということを目的としております。
 方法の一つとして、水産研究・教育機構が開発した高水温耐性を有したノリの育種素材というものを担当県に提供いたしまして、それぞれの担当県は、この育種素材から、それぞれの県の地先の環境やニーズにマッチした株を、例えば再選抜でありますとか、ほかの株との交雑などで育成して、その特性評価を行い、実用化を目指していきます。
 次、よろしくお願いします。
 育種素材について、簡単に説明します。水産機構は、主にはスサビノリの品種を使って、これまでいろいろな元株、それから、いろいろな方法で育種素材を作成して保有しております。
 これは6C株と呼ばれる育種素材の例です。この6C株の元株は、スサビノリのアオクビという、福岡県で使用されており、もともと高温耐性があると言われていた品種です。これについて、プロトプラスト化、いわゆる細胞をばらばらにして、これを高水温で培養して、生き残った細胞を再生させて、また葉状体に戻す。このような工程を2回繰り返して高水温耐性候補系統の6C株というものを作っております。
 次のスライドをお願いいたします。
 養殖業成長産業化技術開発事業の中で、これは育種に関わる、令和5年度の課題構成ですが、有明海につきましては、佐賀県、熊本県、福岡県の3県がそれぞれの方法でノリの育種に取り組んでいるところであります。
 最も実用化に近いところまで進んでおります福岡県さんの例を、簡単ですが紹介させていただきます。
 次のスライドをお願いします。
 福岡県さんでは、平成30年度から事業に参画して取り組んでいただいておりまして、先ほどの6C株、それから機構の保有する別の育種素材の4C株、それから、これらの株の基となったアオクビという品種、それから、さらにノリの特性評価の基準、全国的な基準株とされておりますU-51という株を用いまして研究を進めてきました。
 これは高水温期に採苗して、ノリ網にどれだけノリ芽がつくかという高水温漁場試験の結果です。育種素材6Cのノリ芽の着生数が最も多い結果でした。また、室内培養で、2週間、高水温24℃で培養して、その後、適水温に戻して培養するという室内培養試験の結果、6Cの生長が最も良好であるという結果になりました。このことから、育種素材6Cは有明海漁場において適応していると判断して、ここからさらに育種を進めていくということになりました。
 次、よろしくお願いします。
 福岡県さんでは、この育種素材の6Cの生長の早い個体から、さらに6C選抜1、さらに6C選抜1から6C選抜1-1の株を再選抜して、特性評価を行っております。
 左が室内培養試験ですが、6C1-1の生長というのは、それらの基になった株でありますとか、あるいはU-51株と比べまして非常に良好だったというような結果が得られております。
 さらに、漁場での養殖試験、右のグラフですが、6C1-1の株を、このときは、水産機構が選抜した女川Dという育種素材も一緒に培養試験をやっていただいたのですが、10月28日に採苗を行った秋芽網期の生産においては、6Cの1-1株、それから女川Dもよかったのですが、基準株のU-51の生長を大きく上回ったという結果になっております。
 したがって、6C選抜1-1株は生長に優れまして、通常漁期スケジュールの養殖において非常に実用的な株と判断されております。ただ、形態異常発生率が元株の6Cとあまり差がないという課題を残しておりますが、実用的な株として判断されましたので、今年度、実用化に向けた生産者による養殖試験を実施中です。今度、事業の検討会で結果は報告されることになると思うのですが、非常にいいノリができたというお話をお聞きしております。
 次、お願いします。
 それから、佐賀県さんと熊本県さんの取組も簡単に紹介します。
 佐賀県さんのほうでは、佐賀大学と一緒に種間交雑、異種間の交雑による高温耐性品種の開発という非常にチャレンジングな取組をしています。具体的には、養殖品種のナラワスサビノリ、それから野生種(南方系種)のダンシサイというノリを交配させまして、養殖品種の品質、それから野生種の高温耐性という、いいとこ取りの育種を試みました。2年間の取組ですが、残念ながら、ゲノム解析の結果、異種間の交雑というのは難しいという結論になりましたが、これは異種間交雑が技術的に非常に難しいということを明瞭に示したということで、一つの成果と考えております。
 それから熊本県さんにつきましては、一般的なスサビノリからの高温耐性株の作出のみならず、県の特産でありますアサクサノリにおいても、水産研究機構が選抜した育種素材を用いまして、試験を行っていただいております。
 次のスライドをお願いします。
 事業の中では、御紹介にもあったのですが、育種だけではなくて、ノリに二次的に環境耐性をつける技術開発も行っております。具体的には、バイオスティミュラント、これは非生物的環境ストレスを緩和する効果を持つ資材ということで、農業分野では既に導入が進んでいるということですが、この事業の中では、例えば、ノリ芽をアミノ酸(オルニチン)に24時間浸漬すると、その後1週間は窒素欠乏に耐えられるという成果が得られております。近年有明海では、育苗期に、珪藻赤潮が出て、窒素欠乏が起こり、非常に生産に影響を及ぼしているということも現場でありますので、そのようなことに対して対処する技術として期待がされているところです。
 次、お願いします。
 これはまとめですが、簡単に申しますと、紹介しました6C1-1株のように、実用化に向けた試験に入った株があります。ただ、これまでに作出してきた株についてですが、一定の高温耐性というのは認められるのですが、なかなか昨今の現場の漁場環境の変動はそれ以上に著しいということがありますので、高温に強いだけではなくて、例えば低水温期、すなわち通常の漁期で生長が早い株を作出して生産量をカバーするという発想でも研究を進めているところです。
 それから、一般的に養殖に使われているナラワスサビノリですが、これがもう既に、全国的にかなり普及しておりまして、遺伝的に画一、非常に均一な遺伝的特性ということで、なかなか優良な特性において伸び代が少ないということがありますので、例えば佐賀県さんでは、新たに野生種のタネガシマアマノリの養殖の導入に向けた試験なども始めているところです。
 簡単ですけども、以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料2-9、酸処理剤等に由来する有機酸の挙動について、水産研究・教育機構より御説明をお願いいたします。
○福岡水産技術研究所有明海・八代海グループ長 水産技術研究所の福岡が説明いたします。
 次、お願いいたします。
 ノリ養殖では、アオノリなど付着藻類等の駆除や、アカグサレ病やスミノリ病などの病気予防のため、有機酸による酸処理が行われています。方法としましては、主に、小船等に酸処理液を入れてノリ網を浸漬させるという方法が行われています。
 酸処理剤による生態系や生物への影響については、アオノリ駆除に適正な浸透液pH及び浸透時間を守った使用が図られれば、特に生態系や生物への影響はないと報告されております。
 ノリ養殖技術評価検討委員会でも検討され、有機酸成分は微生物により2日から10日で分解されることや、環境への負荷は、陸域からの負荷やノリによる栄養塩の吸収などを考えれば、大きなものとは考えられないと報告されております。
 有機酸の挙動を把握するための調査は一部の海域で行われておりましたが、有明海広域での調査は行われてこなかったことから、2014年度(水産庁事業では15年度)より有明海の広域でモニタリングを実施いたしました。
 次、お願いいたします。
 モニタリングは、有明海で各県のノリ漁場に設定した3点、それから八代海の1点、大村湾1点で、採水及び底泥採取を実施いたしました。図の左が有明海の各県の3点で、そのうちの1点で堆積物採取を行っております。真ん中が八代海の定点で、熊本県海域になり、ノリ養殖はほとんど行われていない場所になります。右が大村湾の定点で、大村湾ではノリ養殖は行われておりません。
 調査時期は、酸処理実施前として主に10月と、実施期間中として主に1月に行い、ただし、2015年から2017年度は夏季にも実施しておりました。
 主成分であるクエン酸、リンゴ酸、乳酸を、液体クロマトグラフタンデム質量分析装置において定量下限1.0mg/Lで分析を行いました。
 次、お願いいたします。
 その結果となります。最初に、採水試料のうち、表層についてです。クエン酸につきましては、全て定量下限値未満でした。乳酸につきましては、2016年1月に八代海で4.4mg/Lを記録しましたが、それ以外は全て定量下限値未満でした。リンゴ酸につきましては、下の表になりますけども、2015年度と2017年度に有明海及び大村湾で検出され、多くは夏季と酸処理実施前でした。2018年度以降は、全て定量下限値未満でした。
 次、お願いいたします。
 次は、採水試料のうち、底層のサンプルの結果です。クエン酸につきましては、2017年1月に八代海で1.6mg/Lを記録しましたが、それ以外は全て定量下限値未満でした。乳酸につきましては、全て定量下限値未満でした。リンゴ酸につきましては、表層と同様に、2015年度と2017年度に有明海及び大村湾で検出されましたが、2018年度以降は全て定量下限値未満でした。
 次、お願いいたします。
 続いて、底泥間隙水の結果です。クエン酸につきましては、全て定量下限値未満でした。リンゴ酸、左の表になりますが、リンゴ酸は、2017年度に有明海、八代海、大村湾で検出されました。乳酸につきましては、2018年度から2022年度の酸処理実施前と実施中に有明海、八代海、大村湾で検出されました。
 次、お願いいたします。
 以上をまとめますと、採水試料からは、リンゴ酸が定量下限値を超える値を記録することがありましたが、多くは夏季か酸処理実施前でした。有機酸は、海水中の微生物により2日から10日で分解されると報告されていることから、酸処理剤の残留物が検出されたとは考えにくいという状況です。
 底泥間隙水からは、乳酸が定量下限値を超える値を記録することがあり、酸処理実施中にも記録されておりますが、その由来については特定できておりません。
 採水試料からのリンゴ酸の検出や、底泥間隙水からのリンゴ酸と乳酸の検出は、ノリ養殖がほとんど行われていない八代海の熊本県海域や、ノリ養殖が行われていない大村湾でも見られることがあり、有明海で特段に高い頻度や高い濃度で記録されることはありませんでした。
 以上から、酸処理剤による生態系や生物への影響はなかったものと考えられました。
 以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、ただいま御説明がありました内容、資料2-4から資料2-9について、御意見、御質問等を承りたいと思います。
 いかがでしょうか。まず、委員の先生方からお願いいたします。
 山本先生、お願いします。
○山本専門委員 鹿児島大学の山本です。
 漠とした疑問ですが、ノリの色落ち、あるいは生産量と赤潮との関係を議論するときに、有明海というのは、均質なものとして扱っていいのか、ノリの収穫量とかは県ごとに御説明いただきましたし、資料の前のほうに戻りますけど、資料の2-3で、赤潮の発生とかのデータでいうと、地点ごとにかなりパターンが違いますよね。と考えると、やはり幾つかのブロックとして、もしかして分けられ、意識されるのかなとも思ったりもするのですが、今まであまりそういう議論をしなかったような気もするんですが、認識としてはどうなんでしょうか。どこかで赤潮が発生すれば、もう有明海全域のノリにとって、やはり影響が出るというような、そういうプロセスなのでしょうか。
○鈴木委員長 これについては、回答は松山委員か吉田副部長がいいと思うのですが、松山委員、何か御意見はございませんでしょうか。
○松山専門委員 珪藻赤潮ですので、福岡さんのほうから回答したほうがよろしいのではないでしょうか。
○鈴木委員長 では、福岡グループ長、お願いします。
○福岡水産技術研究所有明海・八代海グループ長 福岡です。
 珪藻の赤潮は、有明海で均一な状況ではなくて、特に、奥部と熊本県海域では、発生する種であるとかタイミングというのは違ってきますので、その影響というのは大いにあるだろうと考えております。例えば、今、最近は小型珪藻のSkeletonema、Chaetocerosが、ノリ色落ち原因種として注意すべきというか、重要になってきておりますが、Skeletonemaにつきましては、かつてはsppとして扱われたものを、各種ごとに種判別して、海域ごとに発生状況を把握して、それぞれどのようなメカニズムがあるかというのを進めていこうというのが、現状、始めているところであります。ですので、一番大きく分けて、奥部と熊本県海域では同じとは言えないだろうと。それぞれ別に考えて。ただ、大規模赤潮になってしまうと、例えば、Eucampiaが有明海全体に出るということがありますので、そういったときは、一様にということになると思いますが、その種の構成であるとか、赤潮範囲などによって、それぞれ海域による影響というのは違ってくると考えております。
○山本専門委員 ありがとうございます。
 では、報告をまとめるときに、そこの湾奥と熊本県海域との違いを意識するような、何か注意喚起も必要になる場合もあるということですね。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
○山本専門委員 ありがとうございます。
○鈴木委員長 では、ほかに御質問がありましたら、お願いいたします。
 山西先生、お願いします。
○山西委員 山西です。
 二つほど、簡単な質問になるのですが、まず一つ目は、佐賀県のノリ養殖の柵数の推移でお伺いしたいのですが、年々減少しているというお話だったと思うんですね。これは、やはり場所的な問題もあると思うのですけど、この西部域のほうが随分減っているということなんですかね。面的な状況として、面積というか柵数が減少しているというのを平面分布図として示されていなかったのでお聞きするのですが、西側のほうがやはり減っているという状況でしょうか。
○鈴木委員長 では、これについては佐賀県の中島委員より御回答をお願いします。
○中島委員 佐賀県有明水産振興センターの中島でございます。
 図が簡単で申し訳ございません。やはり、委員御指摘のとおり、西部海域、長崎県側のほうが柵数は減っております。今年度はもう、長崎県境の大浦支所というところは、もうノリ養殖がなくなりました。それぐらい、やはり地域差がございます。
○山西委員 大変な作業だったらあれですけど、もしよければ、面的に湾奥の領域の柵数の面積が変わっているような経年的な平面図を示していただければ、その辺りも目で見てすぐ分かるかなと思います。また、後々、例えば流況がどうなっただとか、その後のヒントになるようなことも何か出てくるような気がしますので、図的にそういうのを示していただければ助かります。
○中島委員 はい、承知しました。
 図の表示につきましては、有明海全体で見てもらったらいいのかもしれませんが、佐賀県の数字としては、細かくお示しはできます。
○山西委員 分かりました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
○山西委員 もう一点、質問いいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山西委員 資料2-8のところの9枚目のスライドのところで、高水温耐性品種の開発で御苦労されているのがよく分かったんですね。6C1-1株というのが非常にいいよということで、大変御苦労されているなと思ったのですが、その中で、下から2行目かな、ただし、形態異常の発生率というのが書かれてあるのがあるのですが、これというのは、いろいろ交配していく中で、そういう形態異常を発生する率が高くなるという、そういう意味なんですか。私、その辺がよく、疎いので分からなかったのですが。御質問します。
○鈴木委員長 では、吉田副部長、回答をお願いします。
○吉田水産技術研究所環境・応用部門沿岸生態システム部副部長 吉田です。
 これにつきましては、福岡県の藤井さんから答えていただいたほうが正確だと思うのですが、やはり高水温で培養すると、御説明しましたように形態異常が出てくるのですが、高温耐性株というのは、形態異常発生率が元株より低いということで、高温耐性と判断しております。残念ながら、6C1株も、それを選抜した元株となる6C、この6C自体が既に高温耐性の株ですが、それから、やはり高水温で培養したときの形態異常発生率というのが大幅に改善されているわけではないというところ、そういう意味です。
○山西委員 分かりました。
 ということは、もしそれが今後採用されるようになったときに、そういう異常発生率が特段高いというわけではないということですよね。
○吉田水産技術研究所環境・応用部門沿岸生態システム部副部長 そうですね。
○山西委員 発生はするんですけど、元株の高温耐性というものと比較して、よくなるし、異常発生率自身も、あるんだけど、そんなにたくさんというわけではないということなんですね。
○吉田水産技術研究所環境・応用部門沿岸生態システム部副部長 そうですね。だから、なかなか大幅に改善されているわけではないです。ただ、元株の6C株自体が、そのさらに元株のアオクビに比べますと、高温耐性は持っているのですが、6Cからは大幅に改善されていないという意味です。
○山西委員 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 では、これについて、現場に詳しい福岡県の尾田委員、もし何か追加のコメントがありましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
○尾田専門委員 はい。吉田部長がおっしゃったとおりでいいと思います。もし、藤井委員のほうで補足があればと思いますけど、なければ大丈夫と思います。
○鈴木委員長 では、藤井委員、もし何かございましたらお願いいたします。
○藤井委員 吉田さんの説明で、ほぼほぼ間違いはございません。6C自体が、かなり形態異常が発生しにくいというところで、我々は品種の評価というところで、元株との評価を行っておりますので、6Cと6C選抜1-1というところ、形態異常というところで、なかなか差は見いだせないのですが、U-51などと比べると形態異常発生率は低いというところでございます。これは使える品種だなというところで、評価試験を行ったということになります。
 以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 山西委員、よろしいでしょうか。
○山西委員 結構です。要は食の話でもあるので、安全性も含めてどうなんだろうというのがありましたので質問しました。
 ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、ほかに御質問等がありましたら、お願いいたします。
オブザーバーのほうの質問のほうも受け付けたいと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、では、議題を次に移りたいと思います。議題(2)の魚類等に関する情報収集等に移ります。
 後ほどまとめて御意見を伺いたいと思いますので、まず、資料3-1から3-5まで、続けて御発表ください。
 まず、資料3-1と3-2について、環境省より説明をお願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 ありがとうございます。環境省でございます。
 魚卵稚仔魚の調査につきまして、環境省より御説明いたします。
 資料3-1を御覧ください。
 こちらは、小委員会の情報収集の具体的内容には含まれていないものとなりますが、筑後大堰の関係で調査が実施されていることを国土交通省より情報提供があり、調査を実施している水資源機構よりデータの提供を受けたところ、有用なデータだと考えましたので、御報告いたします。
 1ページを御覧ください。
 同調査では、筑後川に関連し、海域でも三つの調査点で月に1回、魚卵稚仔魚の調査が実施されております。
 2ページを御覧ください。
 こちらは、三つの調査点の各月の結果を合計し、各年度の累計をグラフにしたものです。左側が魚卵調査の結果、右側が稚仔魚調査の結果となっております。また、グラフ左側の目盛りが出現個体数、右側の目盛りが出現種類数を示しております。まず、右側の稚仔魚のグラフを見てみますと、高低の繰り返しはございますが、稚仔魚については、出現種類数、個体数ともに増加傾向であることが見てとれます。魚種では、サッパやハゼ類の占める割合が多くなっておりました。また、左側の魚卵調査のグラフでは、出現個体数は増加傾向にあるものの、出現種類数は一定の範囲内で上下しながら推移しているように見えます。こちらにつきましては、魚卵の同定のため、魚種が不明と分類されるものが出てきてしまうことが影響しているのではないかと考えております。
 資料3-1の説明につきましては、以上でございます。
 次に資料3-2をご覧ください。こちらは、農林水産省が諫早湾湾央部で実施しております魚卵・稚仔魚調査の結果の報告となります。短い内容となっておりますので、時間の都合から、農林水産省に代わりまして環境省から引き続き御説明させていただきます。
 こちらの調査では、5月、8月、10月、1月の年4回の調査となっており、魚卵・稚仔魚、それぞれについて、種類数、個体数などの経年変化が見られております。
 2ページを御覧ください。
 こちらは魚卵についてです。上にある魚卵の種類数のグラフでは、概ね春季または夏季に多い傾向が見られています。また、真ん中にある魚卵の個体数のグラフでは、特に平成29年度頃から春季または夏季に多い傾向が続いています。主な魚種は、サッパ、コノシロ、カタクチイワシ、ネズッポ科、ギマなどでした。
 3ページを御覧ください。
 こちらは稚仔魚となります。上にある稚仔魚の種類数のグラフでは、特に令和元年度から、春季または夏季に個体数が多い傾向が見られています。また、真ん中にある稚仔魚の個体数のグラフでは、種類数と同様に、特に令和元年度から、春季または夏季に個体数が多い傾向が見られています。主な種類は、サッパ、コノシロ、カタクチイワシ、トウゴロウイワシ、ハゼ科、イソギンポなどでした。
 資料3-2の説明につきまして、以上となります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次に資料3-3、広域連携による放流及び藻場の保全・再生について、説明をお願いします。
○松山専門委員 では、資料3-3の資料の説明を、最初に、有明海・八代海会勉強会事務局の松山から説明させていただきます。
 次のスライドをお願いいたします。2枚目のスライドをお願いします。
 主要4項目のうち、先ほど、ノリのほうは終わりましたが、最後に残っております魚類等、ここに示した全部で八つの再生方策、これの資料の収集を委員会で求められております。ここで、赤字で書いてあるものに関しましては、既に前回まで、第15回までの小委で既に御報告したものが、この赤字になっております。本日は、黒字のアンダーラインで書いてあるところ、種苗生産等の増養殖技術の確立、広域的な連携も含めた種苗放流の推進というところと、藻場・干潟の分布状況等の把握及び保全、この2項目について、資料を収集することができました。
 次、お願いいたします。
 これから、広域的な連携による種苗放流に関する資料として、クルマエビとガザミの事例の資料を集めたものを説明していただくと。その後に、藻場の分布状況等の把握及び保全・再生に関する資料を説明するという流れになっております。
 では、この後、クルマエビに関して、熊本県水産研究センターさんから説明をよろしくお願いしたいと思います。
○森野専門委員 熊本県の水産研究センターの森野です。
 まず、次の広域的な連携による種苗放流ということで、クルマエビについて説明させていただきます。
 次のスライドですが、これは有明海におけるクルマエビの生活史を図示しておりまして、まず産卵場が、黒の実線で囲んでおりますけども、湾央部、湾口部、それから湾外にも産卵場になっておりまして、ここで産卵した稚エビが浅海域、干潟域に着底して、随時、成長しながら移動して深みに入っていって、そこでまた採卵を繰り返すことになっております。また、この有明海については、外海からの稚エビの流入も確認されているというところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 これが、有明海におけるクルマエビの漁場ということでして、主な漁場としましては、湾奥部、それから湾央部、湾口部ということで、流し網、それから小型底引き網などによって漁獲されているという状況でございます。
 次の資料をお願いします。次のスライドをお願いします。
 これは、有明海におけるクルマエビの漁獲量の推移ということで、昭和50年ぐらいから記載しておりますが、昭和58年か60年ぐらいにつきましては、5、6百tの生産漁獲量がありましたけども、令和4年では約20tということで、減少しているという状況でございます。
 次のスライドをお願いします。
 次の、これは、クルマエビの有明海の4県での共同放流の事業の概念図ということで、各県において、各県の協議会、それから作業部会を持っておりますけど、4県で合同の4県推進協議会を平成13年に設立しまして、4県全体での事業計画、それから事業の評価という協議を行って事業を実施しているという状況でございます。
 次のスライドをお願いします。
 これは、共同放流を行っていますこれまでの経緯ということで、これは平成6年から有明海4県で調査事業を開始しておりまして、生態環境調査や尾肢切除による標識放流調査を行ってクルマエビの移動経路を把握し、浮遊幼生の調査などを行いまして、基礎的な事項が明らかになっております。平成12年から有明海4県で漁獲実態、それから標識放流調査を継続して行いまして、放流種苗の混獲率や回収率を基に、放流事業の負担金を含めた放流体制について構築をしているというところであります。そして、平成13年に有明海4県のクルマエビ広域共同放流推進協議会を設立しまして、平成15年から共同放流を開始しているというところでございます。
 各県の費用負担については、漁獲状況、受益負担割合を踏まえまして、毎年、種苗放流を実施しておりまして、これまで7期にわたって放流を継続して取組を進めているというところでございます。また、4県の共同放流の試験研究ということで、平成18年から4県共同での放流効果を含めた放流調査研究を進めておりまして、平成21年からは、DNA標識を用いた種苗放流による放流効果の検証を行っております。また、第4期以降につきましては、本県のみでDNA標識による検証を行っているという状況でございます。
 次のスライドをお願いします。
 これが、共同放流を始めました平成15年からの有明海4県での放流尾数の推移でございまして、平成15年は約1,000万尾の放流をしておりましたけども、平成28年以降は400から300というところでの放流尾数で取組を進めているというところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 これは、クルマエビ放流事業における経費負担の割合でございまして、各県の漁獲状況とかを踏まえた放流割合負担、放流効果とかを踏まえまして放流割合を決定して、経費を負担しているというところです。
 説明は以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、次の説明を尾田委員お願いします。
○尾田専門委員 はい、福岡県、尾田でございます。
 まずスライドの11ですが、こちらは、ガザミの漁法別の分布と主要漁期を表したものでございます。北部のほうは、刺し網や籠、北部から中部辺りが刺し網から籠、小型底引きなど、あと、南部のほうはすくい網での漁獲となっております。
 次のスライドをお願いします。
 4県におけるガザミの種苗放流の取組を行っておりまして、連携して、放流適地・時期・サイズの比較試験を実施中でございます。平成27年からは、各県においてDNAマーカーを用いて種苗を放流し、漁獲物を買い上げて、測定及びDNA分析用のサンプルを採取しております。DNA分析につきましては、4県共通仕様書により外部委託を行っておりまして、その後、4県で分析データを処理・解析し、放流種苗の回収状況を把握しているところでございます。そして、放流効果の高い場所・時期・サイズを探索している途中でございます。
 これによって、湾奥東部で今のところ高い放流効果が得られておりまして、6月から7月、特に6月で高い放流効果が得られております。小型種苗の放流試験も行っておりますが、やはり、C1よりもC3種苗のほうが高い回収率が得られているといった結果も得られております。
 次のスライドをお願いします。
 こちらは4県によるガザミ種苗放流状況でございます。実施場所を示しておりますが、赤が福岡、青が佐賀、オレンジが長崎、緑が熊本でございます。ほぼ地先でございますが、長崎県さんは、福岡の旧三池の海水浴場での放流効果が高いということで、福岡のほうで放流しているというところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 こちらは4県によるガザミ種苗放流状況、令和5年度の状況でございます。4県合計で691万尾を放流しまして、サイズごとの内訳は、そこに、下に示してあるとおりでございます。県別につきましては、右の表に示しておりまして、細かいところについては、この内容のとおりでございます。赤字は、有明海再生事業以外で漁連さんなどが行っているものの放流状況でございます。
 簡単ですが、以上です。
○松山専門委員 それでは、長崎県さんの桑原委員のほうが、本日所用につき委員会欠席ということですので、勉強会事務局の松山が代わりに御説明をいたします。
 次のスライド16をお願いいたします。
 まず、長崎県海域の藻場の現状について説明いたします。この資料には記載しておりませんが、有明海と橘湾における令和3年度の藻場調査、これは現地の調査と衛星画像を組み合わせた調査ですが、アラメ・カジメ場、あるいは混成藻場ですね、アラメ・カジメとホンダワラ類から構成されたものはもうほとんど消失しまして、現在は南方系のホンダワラ類から成るガラモ場、ワカメ場、小型海藻が主体というのが今、現状でございます。
 次のスライドをお願いいたします。
 次に、藻場の保全・再生の取組について説明をいたします。この17枚目のスライドに関しましては、有明海及び八代海における藻場・干潟ビジョンより抜粋したもので、有明海及び橘湾におけるソフト事業の水産多面的機能発揮対策事業を掲載している状況です。有明海沿岸では、島原市と南島原市で8組織がアマモやヒジキ場造成を、橘湾沿岸では、長崎市、諫早市、雲仙市、南島原市で九つの組織がウニの駆除やクロメ種苗の設置を行い、藻場の維持を図っております。
 この図にありますように、有明海と橘湾沿岸では、アラメ・カジメ、南方系ホンダワラ等を用いた増殖場や、石を投入するという着底基質の整備、あわせて、先ほどありましたようなウニを中心とした食害動物の駆除を行い、藻場の造成を図っているという状況です。
 続きまして、熊本県海域の説明のほうをよろしくお願いいたします。
○森野専門委員 熊本県水産研究センターの森野です。
 まず、本県における藻場回復の取組ということで、まず現状ですが、現在、30年前の約7割ということで、藻場の面積は減少しているというところです。この右にあります2地区、保護水面を設定しているところですが、そこでのモニタリング調査におきましては、大型の海藻類の減少、それから湿重量も減少しているということの状況にございます。そういった中で、課題については、藻場の造成に向けた取組を進めておりまして、特に増殖の取組と併せて、海藻類食害対策の取組を進めているという状況でございます。
 また、藻場造成のハード面におきましては、八代海と天草地区におきまして、自然石を投石した基質を設置して藻場造成を行う、漁場の造成を行っているというところでございます。
 次のスライドをお願いします。
 これは、漁業者と連携した藻場の造成の取組ということで、ソフト面での取組になります。右側の図に示しますように、この青丸、赤丸、この地区におきまして、漁業者のグループによって造成の取組を進めておりまして、まずアマモ場の造成ということで、アマモ苗を移植して、アマモの漁場を広げていく。それから、ホンダワラやヒジキの種をくっつけた基質を設置して増殖を行っていく取組、それから、トサカノリの母藻をネットに入れて設置し、そこから出る胞子によって増殖をしていくという取組、それからウニの駆除による食害対策、そういった取組を進めているというところでございます。
 次のスライドをお願いします。
  藻場造成の一つの事例・取組としまして、天草市の五和地区での取組というところですが、五和地区はトサカノリが豊富な漁場でして、近年、ここにありますように、平成24年ぐらいから、ウミアザミ、これが増殖したというところで、この駆除の対策を進めております。ここで、そういった中で、ウミアザミが大量に発生する駆除を行うことでトサカノリの漁場を広げるというところでの取組なのですが、具体的には、ウミアザミが発生しているところに遮光シートをかぶせて駆除を行うこととあわせて、天然海域から採取しました成熟した母藻をネットに入れて設置することで、胞子を飛散させて、周りに海藻を着底させていくと、そういった取組を進めております。
 また、あわせまして、食害対策のウニの駆除活動を併せて進めているというところで、こういった取組によって、今年はトサカノリが例年以上に漁獲されて、145t漁獲されたということで、回復している状況でございます。
 説明は以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 あと、資料のまとめがあるのですが、これは松山さんが説明されるのでしょうか。
○松山専門委員 最後に、資料のまとめを私から御説明します。
 ①として、広域的な連携による種苗放流ということで、クルマエビ・ガザミに関しては、これは4県共通の水産資源として取り組まれておりますので、今回、委員会のほうで御説明しました。単県でほかに様々な魚種を取り組まれておりますけど、今回は広域的な連携ということで、この4県共通の魚種ということで、クルマエビ・ガザミを取り上げさせていただきました。現在、クルマエビ・ガザミ、いずれにおきましても、放流効果・採捕率の高い場所の特定と、あるいは小型種苗の有効性について、実証調査が行われているという状況です。
 あと、藻場に関しましては、この九州海域では温暖化の影響が出ておりまして、南方系藻類の拡大、それと植食性動物による食害、ウニであったり魚など、こういったものの影響が顕著であるということです。一方、有明海の南部、橘湾、天草海域におきましては、今、説明がありましたように、着底基質の造成等によるハード対策、あるいは、今ありました食害生物の駆除といったソフト対策が行われています。特に、熊本県海域では、トサカノリやヒジキの増殖活動など、漁業者レベルでの取組も強化されてい。
 以上、資料の収集状況になります。
 資料3-3は以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、次に資料3-4、日本全国の磯焼け対策について、水産庁より説明をお願いいたします。
○石川事業課漁場環境情報分析官 水産庁の事業課の石川と申します。
 本日は、我が国の磯焼け対策の概要ということで、御説明をさせていただきます。
 まずは、1ページを御覧いただきたいと思います。
 皆様御承知かとは思いますが、磯焼けとは、藻場が季節的消長や多少の経年変化の範囲を越えて、著しく衰退・消失する現象ということであります。代表的なものとしては、ウニあるいは植食性魚類による食害、こういったものと、高水温による立ち枯れですとか浮泥の堆積といったものが挙げられます。
 2ページを御覧ください。
 磯焼けの原因と、それに対する対策を示しております。食害であれば、原因となる生物を除去する、生物からの防護を行うというようなこと。それから、海藻のタネ、栄養塩、基質の不足、こういったものであれば、不足しているものを供給してあげるといった対策が取られております。対策の手法、どれを選択するかというのは、磯焼けの要因に加えて、期待される効果、コスト、実施体制などを総合的に判断して行うことになります。
 次、3ページを御覧ください。
 磯焼け対策を実施する際に重要なのが、モニタリングと評価をきちんと行うということでございます。モニタリングについては、実施箇所及び周辺海域で定期的に行う必要があります。モニタリングの結果を踏まえて、目標が達成できているか評価して、評価内容に応じて計画を見直していくということが重要でございます。
 目標の立て方としては、海藻の被度や藻場の面積、それから有害生物の個体数、こういったものを現場の状況に応じて設定していくこととなります。この立てた目標を踏まえて、評価が可能となるようにモニタリングを実施していく必要がございます。
 次に、4ページを御覧ください。
 磯焼け対策の全国的な普及のために水産庁の行っている取組でございます。
 まず、左側に書いてあるのが、磯焼けの原因と具体的な対応策をまとめた磯焼け対策ガイドライン、これを作成しまして、水産庁のホームページで公開をしておるところでございます。これは、漁業者等が主体となって、藻場の保全・回復対策を行う際の手助けとなるように作成をしているものでございます。ガイドラインの構成は、そこに記載してありますように、藻場とは、磯焼けとはといった基本的な事項の説明から、磯焼けの現状、対策の基本的な考え方、対策手法、各地における対策事例、こういったものから構成をされております。さらに、このガイドラインを補完するという観点から、水産庁で行っております直轄調査の成果を各種手引きとして取りまとめて、公表を行っているところでございます。
 また、右側に記載してございますが、磯焼け対策の全国協議会というものを毎年開催しております。この会議は、地方公共団体の方、それから漁協関係者の方、試験研究機関、民間企業の方などが参画いたしまして、磯焼けの対策などに関する新しい知見や各地の取組事例等の報告を行うことによりまして、全国の活動内容の改善や活性化を図っていくものでございます。
 下に一例として昨年の発表内容を示しておりますが、磯焼けに関する各地域からの報告と、藻場保全・ブルーカーボンに関するトピックスに関係する講演から成る構成となっております。本年度についても、来る1月24日に開催を予定しておるところでございます。
 続きまして、5ページを御覧いただきたいと思います。
 これは、水産庁の実施している藻場造成のための支援制度ということでございます。先ほどの報告なんかでも言及のあったところでございますが、左側は、公共事業の水産基盤整備事業になります。水産基盤整備事業は、地方公共団体が行う魚礁の整備ですとか藻場・干潟の造成などを支援いたします、いわゆるハード事業でございます。その中で、藻場造成のための基質となるブロックや自然石の投入を実施しておるところでございます。令和5年度における都道府県における計画の状況は、そこに示してある図のとおりでございまして、北海道、東北及び九州、四国といったような、西日本で概ね実施されているような状況ということでございます。
 右側は、ソフト事業の水産多面的機能発揮対策事業になります。こちらは非公共事業等ということで、漁業者等で構成いたします活動組織による磯焼け対策等の藻場の保全・再生のための活動、こういったものを支援しております。活動の内容としては、有害生物の除去ですとか母藻の設置、こういったものが代表的なものとなります。そこに挙げてありますように、実施状況については、ほとんどの沿海都道府県で実施されている状況となっております。この事業については、来年度から事業の名称が漁場生産力水産多面的機能強化対策事業に変更となる予定ですけど、内容的には大きな変わりはないかと思っております。
 続きまして、6ページを御覧ください。
 近年の傾向というか、課題といたしまして、地球温暖化に伴う海水温上昇、これが水産業全般に非常に大きな影響を及ぼしております。藻場についてもその例外ではなくて、令和4年度に都道府県へ行ったアンケート調査では、全国8割の地域で、海水温上昇により藻場に影響があったというような回答が得られております。例えば藻場の消失ですとか、それから藻場構成種が南方系のものに変化するですとか、ウニ、それから植食性魚類なんかによる食害の影響が増大したといった回答が寄せられております。しかしながら、海水温上昇を意識した対策というのは8割の地域で未実施となっているということから、今後は海水温上昇による環境変化も念頭に置いた対策を考えていく必要があると考えております。
 続きまして、7ページを御覧ください。
 水産庁では、令和4年度から直轄の調査事業として、海水温上昇に対応した藻場保全・造成手法の検討を行ってきております。今般、これまでに得られた知見を、海水温上昇に対応した藻場保全・造成手法(暫定版)ということでホームページに公表をしておるところでございます。
 対策の基本的な考え方としては、深場とか河口の周辺などの海水温上昇が抑えられている場所において、従来種を用いて増殖を行うというような方法と、高水温下でも生育可能な海藻種を用いるといった方法が考えられまして、それに併せて食害の影響があるところでは、食害対策を併せて実施していくと、こういったところが基本的な対策になろうかと考えております。
 対策の検討フローというものが一番下の段に載っておりますが、まずは現状把握を行うということで、現場の海水温のデータの取得ですとか、藻体、藻に異常がないかというようなところについて確認を行うと。続いて、海藻種の検討を行うと。どういったものを対象として増殖、再生なりを行っていくかというのを、漁業関係者を含めて、藻場保全の目的を確認した上でやっていくと。それから、対策対象種の生育上限温度を確認するといったことも必要になります。次に、対策の方法に合わせて従来種を用いるという場合は、対策の適地、従来種が育つような適地があるかどうかというのを検討していくと。高水温耐性種を選択する場合は、周辺で生育が見られる海藻種の中から、対象海域の高水温において生息可能な海藻種を選定するというのが適当だと考えております。対策の方向性が決まったら、着底基質の設置等のハード対策や母藻の設置や岩盤清掃等のソフト対策を実施するということと、これに加えて植食性の魚類ですとかウニによる磯焼けが見られる場合は、食害生物を直接除去してやるとか、仕切り網を設置するなどの対策を実施するというようなやり方が適当かと考えております。
 現時点での基本的な考え方というのは以上になりますが、この調査自体は現在も継続中でありまして、令和7年度まで実施することとしておりますので、さらに精査して、調査終了後に完成版を取りまとめる予定となっております。
 私のほうからの報告は以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、次、資料3-5、長崎県における磯焼け対策について、長崎県から説明をお願いいたします。
○大隅水産部漁港漁場課課長補佐 長崎県水産部漁港漁場課の大隅と申します。
 私からは、長崎県における磯焼け対策について説明させていただきます。
 内容的には、これまでの説明、特に水産庁の石川様の説明とかぶる部分もありますが、県における具体的な動きとしてどうなっているのかという視点からお聞きいただければと思います。
 1枚目のスライドをお願いいたします。
 まず、長崎県の藻場面積と構成種の遷移についてです。調査の仕方というものは若干異なるのですが、平成元年においては約1万3,000haの藻場があったのですが、これが平成26年では約8,000haまで減少し、その後、令和3年では、9,000ha程度と、やや回復傾向が見られております。ただし、その構成が大きく異なっております。以前は、アラメ・カジメやホンダワラに代表されるガラモ場、そして、これらが合わさった混成藻場を中心とした四季藻場が中心で繁茂しておりましたが、やはり、温暖化に伴う高水温化や植食性の魚類による食害等の影響により、アラメ・カジメ場は、現在ではほとんど消失してしまいました。ガラモ場については、横ばいからやや増加に転じているものの、その内容としては、温暖性のホンダワラ類から南方系のホンダワラ類へと種が変わってきていること、また、小型海藻藻場の割合が増えておりまして、四季藻場から春藻場が中心になるような形へ移行しております。
 次のスライドをお願いします。
 これは、先ほども松山さんのほうから触れられましたが、藻場面積のうち、有明海、橘湾のデータを抽出したものがこちらでございます。有明海については、藻場面積が減少しており、アマモ場、アラメ・カジメ場、それから混成藻場がやはりほとんど消失している一方で、ワカメ場が増加しているという傾向が見られます。橘湾については、藻場面積は県内でも珍しく増加傾向が見られていますが、ここも混成藻場がほとんど消失し、ワカメ場や小型海藻藻場の増加が見られるなど、構成が大きく変わっていることがお分かりいただけるかと思います。
 3枚目をお願いいたします。
 藻場の減少に伴う磯根資源の推移がどうなっているのかというのが、このグラフでございます。長崎県は、全国でも有数のアワビ類やウニ類の産地でしたが、やはり、これらの主食であるアラメ・カジメといった海藻の減少に伴って漁獲量も大幅に減少しています。昭和56年から令和3年の40年ほどで漁獲量は96%減と、本当に今としては僅かとなっているというのが状況でして、深刻な状況というのはお分かりいただけるかと思います。
 4枚目のスライドをお願いします。
 これは、水産庁が公表している磯焼け対策ガイドラインに掲載されている、温暖化が藻場に及ぼす影響を示した模式図でございます。この中でも、長崎は、特に問題となっているのが、左下にあります水温上昇が海藻にダメージを与えることと、植食性魚類の活性化による食害圧の上昇というところが最大の問題になっているという認識でおります。
 次、お願いいたします。
 これは、長崎県内の壱岐市や対馬市で確認された2013年、2015年に発生した高水温によるアラメ・カジメへの影響についての資料でございます。アラメ・カジメ類の生育上限温度は28℃から29℃とされておりますが、この2013年の夏場の水温は継続して30℃を超えているという状況が生じました。この高水温により、アラメ・カジメ類の根元付近がダメージを受けて、その後の台風の波浪の影響によって根元付近から折れてしまい流出したものが海岸に大量に漂着しました。これがAの写真になります。この高水温により漂着したものを見ると、葉の部分には目立った欠損や異常というのは確認されておりませんが、根の根本部分、本当に根元の部分の上部にかけて、白色化していたり枯れているものが確認されました。このようなアラメ・カジメ類の大量流出は、それまで経験がなかったものです。長崎におけるアラメ・カジメの藻場が広域かつ大規模に衰退、消失する危機的な状況といったものがここから始まっております。
 また、翌年の2014年には、このアラメ・カジメも若干回復が見られていたのですが、2015年には再び高水温が続いて、その影響によって、またアラメ・カジメの流出といったものが生じるというような、2段続けての損失というものが生じたものでございます。
 6枚目のスライドをお願いします。
 続いて、植食性魚類による影響についてです。本件では、魚類とウニによる影響というのが顕著であり、地域によって違いはあるものの、特に魚類の影響というのが大きい地域、多分、全国的に見て大きい地域ではないかと思っております。長崎県内で確認されている主な植食性魚類は、このとおり、イスズミ、アイゴ、ブダイでございます。これら植食性魚類による食害の状況が、これからの写真です。先ほど流出した写真がありましたアラメ・カジメ類については、茎の部分には枯れて折れてしまうという影響がありましたが、葉の部分にはこれといった欠損は見られておりませんでした。これらの魚類は特徴的な食害を残すものですので、そういうものは見られなかったということです。
 植食性魚類による状況ですが、先ほどの流出したものについては、葉っぱの部分がかじられているということはありませんが、ここのBにある写真を御覧いただけるように、水中部分におきましては、もう茎こそ残っておりますが、葉は全部消失しており、そこを確認してみますと、ここに挙げている魚類の特徴的な食害痕が確認されているものです。
 また、長崎における植食性魚類の状況ですが、水温の上昇により活動期間が長くなっており、以前と異なり越冬するような状況というものが出てきております。また、ウニとは違い遊泳しておりますので、駆除の難易度というものも高い状況であります。また、定置網などに季節的に大量にいることもありますが、安定的な漁獲というものではないこともありますし、食用として、また流通、需要がなく、漁獲されたとしても、そのまままた投棄されてしまうといったような状況があって、磯焼けへの影響というものもかなり大きいものと思われ、本来は積極的に駆除しないとならないものが、それが十分にされていないという状況がございます。
 やはり、このような状況も踏まえ、本県では様々な藻場造成の取組を実施しており、公共事業におけるハードの整備、それから、食害魚の駆除等のソフト事業について行っておりますので、これから紹介したいと思います。
 次のスライドをお願いいたします。
 まず、ハードの整備についてです。本県では、魚類増殖を目的とした増殖場整備を行ってきましたが、磯焼けによる影響が大きくなってきたことから、平成24年度からは、藻場回復などの総合的な漁場づくりとして、増殖場の整備に当たり、藻場機能を付与した増殖場整備を進めることとしております。これが、増殖場のイメージです。投石して地盤をならした上に増殖礁を設置するものが基本的な設計です。衛星画像などからも見られますように、正方形の黒い影が確認できますが、これがその藻場礁になります。基本的には、岩盤ではなく、藻場の生えていない砂地に40m×40mの範囲にまず石材を敷き詰めて、そこに16基の藻場礁を設置するということを基本としています。そして、この藻場礁には海藻種苗というのを取り付け、また、魚類とかによる食害対策のために、保護網で囲うというような取組を行っております。
 平成24年からこのような手法で増殖場を整備しておりますが、一方、下に敷き詰めた石材の隙間の空間部分にウニ等がたくさんが住みついてしまうというようなことも生じておりまして、砂地と石材の境目には藻場が繁茂しているものの、石材で囲まれた中心付近は潮通しが悪くなり、海藻が生えにくいという事例が確認されており、今年度から別手法での整備にも着手しております。それが、下の改良型と書いているところでございます。この改良型では、潮の流れに沿って石材を筋状に設置し、増殖礁内部の潮の流れを改善させる仕組みとなっております。また、砂地の面積が増え、この砂地についてはウニ類が住みにくくなり、砂地と石材の境目も増えることにより、海藻がより繁茂しやすい整備となるよう取り組んでいるところでございます。
 8枚目のスライドをお願いします。
 藻場礁には、長崎におきましては、海藻種苗といったものをつけていることを説明いたしますが、その藻場としては、アラメ・カジメ・クロメ類をもともとは使用しておりました。しかし、近年の海水温の上昇による影響で、先ほど紹介したとおり、アラメ・カジメ・クロメ類にとっては水温が高くなって生育しにくい環境となってきているのが長崎の周辺海域の状況でございます。また、高水温耐性のある南方系ホンダワラ類が天然の藻場におきましても徐々に繫茂してきていることが確認されており、藻場礁の海藻種苗として、ホンダワラ類を活用しようという動きがありました。ただ、ホンダワラ類の種苗生産機関というものは、まだ以前はなく、県内での生産体制構築のために、試験的な生産を令和2年から始めているという状況です。
 クロメなどは、たこ糸のような細いロープで種苗生産がなされていますが、ホンダワラ類はもともとのタネが大きく、この手法では生産が難しく、種苗プレートに種つけをして生産し、増殖場に設置する等、活用しています。このように、クロメ類に加え、ホンダワラ類を活用することによって、多様性のある藻場造成を目指しています。
 9枚目をお願いいたします。
 続いて、ソフト事業についてです。増殖場整備後、国の補助を活用して、食害生物駆除とモニタリングを実施しています。食害生物駆除では、潜水によるウニ類、貝類駆除と、刺し網による魚類の駆除を行っています。令和5年度には、ウニ類、貝類を約30t、魚類を3t駆除しています。また、モニタリングでは、枠取り調査や底生生物の調査、動物プランクトンの調査など、複数の項目について調査を実施し、整備効果の把握を行っております。
 次のスライドをお願いいたします。
 本県では、平成28年度に長崎県藻場回復ビジョンを策定し、地元漁業者が中心となって、公共事業とも連携した藻場回復の取組を進めております。ビジョンでは、令和7年度までに藻場面積を1万haまで回復させることを目標に様々な取組を実施しております。長崎県での取組について、ここまで紹介させていただきましたが、やはり、なかなかうまくいかないことも多く、これからも漁業者や国、大学とも連携しながら、藻場回復への取組を進めていきたいと思っております。
 以上、発表を終わらせていただきます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、ただいま御説明がありました内容、資料3-1から3-5について、御意見、御質問等を承りたいと思います。よろしくお願いします。
 古米先生、お願いします。
○古米評価委員会委員長 古米です。
 資料3-1のところで、水資源機構の魚の調査を紹介いただいたのですが、調査地点が3地点ありますが、図には3本の線がないので3地点の合計値が出てるんですかね。もう片方の資料3-2では調査1地点なので分かったのですが、3地点のこのデータは、どういう形で整理されたのでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 環境省でございます。
 こちら、御指摘のとおり、この3地点全部を合計したもので、こちらのグラフを作成いたしております。
○古米評価委員会委員長 分かりました。
 もう一点は、質問ではないのですが、後半出てきました藻場に関するものです。資料3-3の後半でも、藻場の分布状況等の把握の情報が整理されていて、資料3-4では水産庁の対策等を整理され、長崎県での具体的な対策事例が出てきたと思います。環境省で有明海を対象に衛星画像等を使って、どこに藻場があるのかという調査をやっていると思います。それぞれから藻場について実施している成果が出てくるのですが、有明海全体として、どういう状況で、どういうところに悪化が進んでいるという、何か全体像が見えるような取りまとめはどこがやるのでしょうか。環境省がやるのかな。何か考えていただければいいかなと思います。これは質問じゃなくてコメントです。
 以上です。
○川田海域環境管理室室長補佐 ありがとうございます。環境省でございます。
 有明海北部を対象とした藻場・干潟調査、こちらのほうは令和6年度に実施しておりまして、この結果につきまして、次年度の小委員会のほうで御発表させていただければと思います。そして、令和7年度に有明海の南部と八代海を対象として、藻場・干潟の分布について調査できるように、今、準備しているところでございますので、この結果を取りまとめまして、全体的な分布についてお示しできればと考えております。
○古米評価委員会委員長 よろしくお願いいたします。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、ほかに御質問がありましたら、お願いいたします。
 では、オブザーバーも加えて、御質問をお願いします。
 それでは、質問の時間は終わりにして、次の議題、その他のほうに移りたいと思います。
 事務局から何かありましたら、お願いします。
○川田海域環境管理室室長補佐 ありがとうございます。
 それでは、事務局から、第14回小委員会でいただきました御意見に関しまして、2点御報告させていただきます。
 資料4-1を御覧ください。
 8月に開催されました第14回水産小委員会で、どういう場所でどのような対策が実施されているのか分かりやすく整理してはどうかということで御示唆をいただきました。そこで、農林水産省や関係県等による二枚貝の取組対策につきまして、マップ上に記したものとして、この4-1で作成してございます。
 こちらは、例えば、1ページのアサリについての取組でございましたら、この下のほうの注釈に記載しておりますが、昨年8月の小委員会や同年9月に九州農政局が開催した漁場環境改善連絡協議会の資料を基に、農林水産省や関係県等の主な取組や対策などにつきまして、図上で俯瞰的に把握できるようになっております。また、この資料では、そのほか、タイラギや、そして、ガザミやアゲマキなどについて掲載してございます。
 なお、この二枚貝の関係でございましても、環境省が実施しているような、主に海域小委員会で議論している内容等につきましては、直接的な対策ではないことから、先週の海域小委員会でお話しいたしました調査一覧のほうにまとめてございます。これによって、分かりやすさの観点から、取組、調査などに応じて、それぞれ全体的に網羅できるようにいたしております。
 農林水産省さんから、何か補足があればお願いいたします。
○佐田農地資源課課長補佐 農林水産省農村振興局です。少し補足させていただきます。
 この資料は、先ほど環境省からも紹介がありましたように、農水省、水研機構、4県及び4県漁業団体と一緒に行っている4県協調の取組について協議会で示した資料の一部です。全体を網羅的に取りまとめたものではありませんが、4県の令和6年度から導入したものを含む主な取組として紹介させていただきました。取組内容を地図に可視化するということは非常に重要なことだと考えておりまして、当省関連の取組内容の可視化については検討していきたいと考えております。全体については事務局のほうで御検討いただければと思います。
 簡単ですが、以上です。
○川田海域環境管理室室長補佐 次に、資料4-2を御覧ください。
 こちらは、やはり第14回水産小委員会で御提案をいただきました、例えば、この小委員会で発表されました各取組、それらから得られた成果や効果、そして、課題について一覧で分かるような取りまとめをしてはどうかという御示唆をいただきましたので、取りまとめた資料となってございます。
 このような取りまとめを含めまして、3月に開催されます評価委員会に、小委員会での御報告として臨みたいと考えております。
 事務局からは以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 それでは、全体を通して、委員の先生方から何かございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日予定されておりました議事について、全て終了しました。
 議事進行への御協力にお礼申し上げます。
 では、進行を事務局にお返しいたします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 鈴木委員長、ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、後日、委員の皆様に議事録を御確認いただいた後、環境省のホームページで公開をさせていただければと思います。
 それでは、以上をもちまして、本日の小委員会を閉会とさせていただきます。
 本日は、どうもありがとうございました。

午前11時53分 閉会