第14回 有明海・八代海等総合調査評価委員会 水産資源再生方策検討作業小委員会 議事録

開催日

令和6年8月2日(金)

場所

対面方式及びWEB会議方式を併用して開催

出席者

有明海・八代海等総合調査評価委員会委員長:古米弘明委員長
小委員会委員長:鈴木敏之委員長
委員 :  内藤佳奈子委員、中島則久委員、藤井直幹委員、矢野真一郎委員、山西博幸委員
専門委員:青木美鈴委員、尾田成幸委員、岸田光代委員、桑原浩一委員、外城和幸委員、松山幸彦委員、森野晃司委員、山口敦子委員、山口啓子委員、山本智子委員
(オブザーバー)
清本容子委員、速水祐一委員、東博紀委員
(関係省庁)
農林水産省農村振興局整備部農地資源課 佐田課長補佐、藤吉係長
水産庁増殖推進部漁場資源課 津山課長補佐、贄田課長補佐、石橋係長、熱海係長、熊本係員、野田係員
水産庁増殖推進部研究指導課 中村課長補佐、天野係員
水産庁増殖推進部栽培養殖課 監物係長、伊藤係員
水産庁漁港漁場整備部計画課 中村計画官、松﨑課長補佐、藤濱係長、山内係員
国土交通省水管理・国土保全局河川環境課 阿河課長補佐、木村係長
国土交通省 港湾局 海洋・環境課 三谷課長補佐、末廣係長
(事務局)
環境省水・大気環境局海洋環境課長、海洋環境課海域環境管理室海域環境対策推進官、海洋環境課海域環境管理室室長補佐

議事録

午後1時30分 開会

○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第14回水産資源再生方策検討作業小委員会を開会いたします。なお、第14回海域環境再生方策検討作業小委員会につきましては、今月6日に開催予定となっております。委員の皆様におかれましては、お忙しい中、御出席いただき、ありがとうございます。本日の小委員会は会場とウェブ会議、両方での開催としております。ウェブ会議で御参加いただいております委員の皆様には御不便をおかけしますが、会議中、音声が聞き取りにくいなど不具合等がございましたら、事務局までお電話、またはウェブ会議システムのチャット機能にてお知らせください。議事中、マイク機能は会場及び発言者以外はミュートに設定させていただきます。なお、ウェブ会議で発言の際は、お名前の横にある挙手アイコンをクリックしてください。青色に変わりますと挙手した状態になりますので、御発言の意志はこのマークで確認をいたします。委員長からの御指名後、マイクのミュートを解除していただき、御発言いただきますようお願いいたします。御発言後は挙手アイコンを忘れずにクリックしていただき、黒になるよう操作をお願いします。挙手アイコンは事務局でオン・オフを操作できないため、御協力のほど、よろしくお願いいたします。ほか、通信状況や御発言者様のお声の質によりましては不明瞭な箇所が出てくる可能性がございますので、恐れ入りますが、御発言前にお名前をおっしゃっていただいて、少しゆっくり、大きめに御発言ください。また、会場で御参加いただいている皆様におかれましては、マイク真ん中のオン・オフのスイッチにお手を触れないようお願いいたします。本委員会は公開の会議となっておりまして、環境省海洋環境課公式動画チャンネルにてライブ配信を行っております。それでは、議事に先立ちまして、環境省海洋環境課長の水谷より御挨拶を申し上げます。
○水谷海洋環境課長 環境省水・大気環境局海洋環境課長の水谷と申します。7月1日付でこちらにまいりました。これからお世話になります。よろしくお願いいたします。委員の皆様におかれましては、御多忙の中、御参集いただき、誠にありがとうございます。また、新たに本小委員会の委員に御就任いただいた皆様におかれましては、参加につきまして厚く御礼申し上げたいと思います。さて、有明海・八代海では、ここ数年、貧酸素水塊の発生が見られたほか、ノリの色落ちですとかタイラギ漁の休漁が続きまして、さらに、深刻な赤潮の被害も連続して発生しており、今年も、大きな被害が発生していること承知しております。有明海・八代海の再生に向けた取組というのは喫緊の課題です。有明海・八代海等総合調査評価委員会では、前回の第13回小委員会から具体的な情報収集等を開始しており、本日は、有用二枚貝と赤潮について議題とさせていただいています。これらの議題については、関係省庁だけではなく、関係5県の水産試験研究機関において、最前線で御活躍いただいている委員の皆様からも御報告いただけるということになっております。また、先ほどもございましたが、来週の6日、火曜日には、海域環境再生方策検討作業小委員会が開催されます。そこでは、生物の生息環境、それから有用二枚貝、ベントス等を議題とさせていただいております。海域小委員会の資料につきましても、皆様には共有させていただいておりますが、もし届いていないなどありましたら、事務局にお申しつけいただければと思います。委員の皆様におかれましては、令和8年度の報告に向けまして、関係機関、関係5県から御報告いただいた再生方策、調査・研究の成果に基づきまして御審議をいただいて、今後の具体的な情報収集・整理の進め方ですとか、問題点の原因・要因の解明に向けまして、忌憚のない御意見を賜ればと思っております。長時間にわたる委員会となりますが、何とぞよろしくお願いいたします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 次に、出席状況の御報告についてです。まず、委員の改選につきまして、令和6年6月付で一部委員の改選がございました。資料1を御覧いただければと思います。当小委員会の委員名簿になりますが、改選の結果、桑原専門委員、外城専門委員、森野専門委員が、新たに水産小委員会へ加わっていただくことになりました。また、本日の委員の出席状況についてですが、委員16名のうち全員が御出席をいただいております。有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを御報告いたします。また、本日は古米委員長に御参加いただいております。そして、オブザーバーとして、評価委員会から清本委員が、海域小委員会から速水委員と東委員が御参加いただいております。オブザーバー参加の委員におかれましては、御質問や御意見がある場合には発言を求めてから挙手をお願いいたします。なお、本日は関係省庁にも御出席いただいております。
 まず、農林水産省農村振興局農地資源課の佐田課長補佐でございます。
○佐田農地資源課課長補佐 佐田です。よろしくお願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 続きまして、水産庁研究指導課の中村課長補佐でございます。
○中村研究指導課課長補佐 よろしくお願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 続きまして、水産庁計画課の松﨑課長補佐でございます。
○松﨑計画課課長補佐 よろしくお願いします。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 そのほか、水産庁の御担当にオンラインにて出席いただいております。また、国土交通省から水管理・国土保全局河川環境課、港湾局海洋・環境課よりオンラインにて出席いただいております。事務局につきましては、先ほど御紹介させていただきました海洋環境課長の水谷と、私が海域環境対策推進官の工藤、室長補佐の川田、主査の小原となっております。どうぞよろしくお願いいたします。続きまして、資料についてでございます。事前に電子データ等で御案内しておりますが、議事次第に記載の一覧のとおりになっております。資料に不足や不備がございましたら事務局までお知らせいただければと思います。それでは、これより議題に入りたいと思います。以降の進行につきましては、鈴木委員長、よろしくお願いいたします。
○鈴木委員長 本日の進行を担当させていただきます鈴木でございます。どうぞよろしくお願いいたします。限られた時間の中で、円滑な議事の進行に御協力をお願いいたします。それでは、早速ですが議事を始めさせていただきます。本日の議題は、有用二枚貝と赤潮に係る情報収集等となります。議題1のうち、資料2-1、「エイ類による二枚貝類への影響」について、農林水産省農村振興局より御説明をお願いいたします。
○佐田農地資源課課長補佐 農林水産省農村振興局、農地資源課の佐田と申します。よろしくお願いいたします。「エイ類による二枚貝類への影響」について報告させていただきます。
 1ページ目を御覧ください。ナルトビエイによる二枚貝類への食害影響の実態を把握するため、有明海沿岸の4県、水産庁、また、農村振興局、農林水産省が連携し、ナルトビエイの摂餌状況の調査を実施しており、今日はその結果を報告させていただきます。
 調査期間は、平成18年度以降、継続して調査をしておりまして、調査項目は、隻数、網入れの回数、個体数など記載のとおりでございます。
 2ページ目を御覧ください。ナルトビエイの捕獲状況について御説明いたします。
 左側のグラフは捕獲重量を示したものであります。平成23年度までは約400トンのナルトビエイ等を捕獲しておりましたが、平成24年度に約200トンに減少しまして、近年は、ほぼ横ばいで推移をしております。右側は、ナルトビエイの来遊量と関係が強い網入れ1回あたりの捕獲数を示しておりまして、左側の捕獲重量と概ね同様の傾向を示しております。
 続いて3ページ目を御覧ください。ナルトビエイの胃の内容物の結果を示したものです。
 水産小委員会の委員であります長崎大学の山口教授の先行研究によりまして、ナルトビエイの食性については貝類を専食すること、また、特に二枚貝を好むことが分かっております。
 右側の表-1が、ナルトビエイの成長段階、ここでは小型サイズ、未成魚、成魚ごとに、アサリ、サルボウなどの水産有用二枚貝類のほか、カキや巻貝などナルトビエイの胃の内容物の割合を調査したものを示しております。表-1の中で、濃いオレンジの網かけについては50%以上の割合、薄い、淡い色は20%以上の割合を示しておりまして、本調査においても、ナルトビエイは二枚貝類を一定量摂餌、食べていることが確認されました。
 小型サイズに着目しますと、サルボウや巻貝、その他の二枚貝を多く摂餌していることが確認されました。一方で、未成魚や成魚になりますと、アサリ、サルボウ、カキの3種の割合が多く、これは資源量を反映しているものと推測されました。1日当たりの摂餌量を見ると、40cm程度の小型サイズでは体重に対して約0.9%、大きめの140cm程度の成魚になりますと0.2%と、大型サイズになるほど摂餌量が低下する傾向も見られました。直近の令和5年度の調査においても過年度と同様に、二枚貝類を専食していることが確認されまして、特にアサリの比率を見ますと、未成魚においては、令和5年度ですが50%、成魚については、雄44%、雌15%で増加しておりまして、これは福岡県などで増加したアサリを摂餌した可能性があると考えられます。ナルトビエイの胃の内容物は以上です。
 続いて、4ページを御覧ください。ナルトビエイの推定来遊量について御説明します。
 下のグラフを御覧ください。平成20~22年度にかけては約40~50万個体でありましたが、平成23年度以降、減少しまして、多少変動はありますが、概ね10~20万個体で推移をしていることが分かります。
 続いて5ページ目を御覧ください。ナルトビエイの推定摂餌量について説明いたします。
 前回、令和2年のときの報告の際に、山口委員から、食害量という表現は、それだけを食べているという意味になりますので、摂餌量という表現にしたほうがいいという御指摘をいただいたところです。先ほどの4ページ目も推定来遊量でありますので、ここでも推定摂餌量として説明させていただきます。下のグラフを御覧ください。年度ごとに二つの棒グラフを示しています。こちらが推定摂餌量を表しておりまして、平成20年~22年度は約2,000~2,500トン、平成24年度に一旦200トン以下まで減少しましたが、平成27年度以降、1,000トン程度で、横ばいで推移をしています。左側は水産有用二枚貝の漁獲量を表したものです。平成26年度までは減少傾向で、その後、令和元年度まで約4,000トン程度で推移をしておりまして、令和2年、3年に大きく減少し、令和4年度には約2,000トンまで回復をしているところです。
 最後に、6ページ目を御覧ください。ナルトビエイの来遊量の減少傾向が見られる一方で、熊本や福岡県の漁業関係者から、アカエイ類が二枚貝類を摂餌しているという情報が多く寄せられたこともありまして、ナルトビエイ以外の食害生物の実態を把握するため、アカエイ類、下に写真を四つ載せておりますが、アカエイ、ヤジリエイ、アリアケアカエイ、及びシロエイの4種類の胃の内容物を調査いたしました。令和3~5年度にかけて3か年分の結果を下の表-2、表-3で示します。表-2はアカエイなど4種類の個体の数を表しております。その多くの個体は、表-3に示しますように、主に甲殻類、多毛類、魚類を摂餌していました。先ほどの3ページ目で示しましたように、ナルトビエイは二枚貝類を専門に摂餌するのに比べ、アカエイ類は、例えば、ヤジリエイですと二枚貝類は0%、一番多いアリアケアカエイで約18%と、二枚貝類の割合は低かったです。これは長崎大学の調査結果と同様に、アカエイ類の二枚貝への依存度は小さいと考えられています。最後に、一番下に記載しておりますが、近年は、クロダイがエイ類以外のアサリの食害生物として浮上しているということが、本年2月の水産小委員会でも御報告があったところです。エイ類による二枚貝への影響について、説明は以上です。ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございました。ただいま、農林水産省から説明がありました内容について、御意見・御質問等を承りたいと思います。いかがでしょうか。挙手をお願いいたします。
○山西委員 山西からいいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山西委員 御説明ありがとうございました。一つお聞きしたいのは、ナルトビエイの一日の摂餌量の御説明があったので、体重に対しての割合が、小型サイズよりも大きな成魚のほうが低下するというお話だったのですが、普通考えると、大きくなると、あるいは同じ割合ぐらい大きくなるというイメージなんですけど、これは例えば、胃の中の内容物の消化がよくて、観察したときに、その分が見えてこない、見えてきていないというようなことはないのかというのと、もしこれが事実ということであれば、大型の成長したエイが、小型のほうが多分多いわけですよね、だんだん死滅していくのがあるでしょうから、そうすると、成体の方が、摂餌量が少なくて数が少ないから、ナルトビエイとしての影響は、現存量自身も随分減っている状況なので、あまりないという判断でいいんですか。
○佐田農地資源課課長補佐 ありがとうございます。2点御質問いただいたと認識しております。胃の内容物は、捕まえたときの中身であり、捕獲前に食べて排出した分は、ここの表には表れておりませんので、今回の発表についても推定摂餌量という形にさせていただきました。過去に食べた分までは反映できないということであります。
 あと、2点目の御質問です。影響については、アサリなど水産有用二枚貝類が、年々、漁獲量が減少しているというところであり、ナルトビエイの摂餌の影響もそんなに小さくはないとは推測されますが、引き続き、こちらについては調査をして見ていきたいと考えております。
○山西委員 お聞きしたいのは、0.9%とか0.2%というのが、研究としては非常に興味深いなと思ったのですが、それが、有明海の、ここでの影響というところに、どうその計算なのか、評価なのかに入れるのかをお聞きしたかったです。
○佐田農地資源課課長補佐 調べさせていただきます。ありがとうございます。
○鈴木委員長 では、島根大の山口先生、お願いします。
○山口(啓)専門委員 島根大、山口です。まずナルトビエイの胃の内容物のところでサルボウガイが多かったというのが冒頭にあったのですが、アカエイのほうも二枚貝への依存度が低いという形になっています。胃の内容物を調べるためにエイをとったのは、どういう条件でとったのでしょうか。アサリだと干潟に主に生息しますので、満潮時にそこにアプローチするということが前提として必要になりますが、サルボウガイは、それよりも低いところ、潮位的には沖側のほうにいると思うので、あまり潮汐の条件にかかわらず摂食できたのではないか。甲殻類も、どちらかというともう少し深いほうにいるので、摂食しやすかったのではないでしょうか。エイを捕獲したときに、その前に食べていた可能性があるものがデータに出ている、そういうことはないですか。要するに、エイを捕獲する場所やタイミングが、干潟の餌をとるタイミングではないところでとっているというバイアスがかかっていないかという質問です。
○佐田農地資源課課長補佐 ありがとうございます。概ね4月の春先から11月にかけて調査をしております。どの地点で、どの深さで調査したかというのは手元にないですが、捕獲した時点で胃の中を開いて、アサリ、サルボウ、その他二枚貝類がどの程度あったかというのを取り出したものであり、捕獲したときの胃の内容物を示したものであるということで、ご報告させていただいたところです。
○山口(啓)専門委員 もし可能でしたら、山口敦子先生がいらっしゃったら、こういう方法で採取するタイミングでは、その胃の内容物が、潮汐ですから、8時間、6時間とかですかね、それぐらいでは胃の内容物が全部抜けてしまうことはないとか、そういう関係の、御見識があれば伺いたいです。
○山口(敦)専門委員 アカエイについては、恐らく、この調査は様々な漁法で、いろいろな場所で獲られたもののをおしなべて平均化しているものだと思うのですが、干潟に行くタイミングで調査をしたら食べる可能性もあるのですが、干潟に行くタイミングも、全体の中ではさほど多いわけではないので、アサリがそんなに多くないというのは妥当なところかと思います。消化の時間ですが、ナルトビエイに関しては、結構、十分に消化する前に腸のほうに送られるので、消化してなんだか分からない状態のものというのはあまりないのですが、アカエイのほうは、食べた時間とかも関係はありますので何とも言えないのですが、全体の中では、干潟近くにいたものも含まれていると考えていいのかなと思います。ということで、答えになっているでしょうか。
○山口(啓)専門委員 ありがとうございます。ナルトビエイのほうでも、サルボウガイが多いというのが気になっていて、アサリのほうが餌としては食べやすいんだろうなと思うのですが。
○山口(敦)専門委員 行動と関係があるので、ナルトビエイについては、特に、アサリがいる場所よりはサルボウがある場所のほうが行きやすい、そこにいることが多いので、自然とサルボウが多くなっているというところかなと思います。
○山口(啓)専門委員 はい、分かりました。ありがとうございます。
○山口(敦)専門委員 ついでに私からもよろしいでしょうか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山口(敦)専門委員 先ほど、一つ前の質問で、ナルトビエイの大型のものほど食べる量が体重当たり少なくなるということの御質問があって、これは私が答えるのもあれなんですけれども、一般的に、大きくなるほど体重当たりの摂餌量は減っていく。ごくごく小型のときが一番多いのですが、一番小さいとき、生まれた直後の幼魚とか未成魚だとアサリはなかなか食べられないサイズなので、そうすると、おっしゃるとおり小型のものは、特に、食害という点では影響は小さいと思われて、恐らくアサリに影響するとすれば中型。大型はあまり食べないので、中型ぐらいかと。食べる餌も違いますし、それから、体重当たりの摂餌量も、サイズによって変わっていくということはあります。
 一つ補足といいますか、先ほど発表されたときに気になったので、一つ言わせていただきたい。以前、私の意見として、食害ではなくて摂餌量という言葉を使ったほうがいいと指摘があったということだったのですが、これは言葉の問題ではなくて、推定の摂餌量という意味合いですね、食害というのは、本来、エイが直接食べたものを、直接的に推定しているということになると思うのですが、実際には食害量自体は推定できていなくて、ここで計算されていた値は、ナルトビエイが食べた餌が全て漁業資源となるものと仮定してやっているので、これよりは少なくなるだろうということと、あと、食性の調査の結果に基づいて、その割合で単純に計算しているというところもありますので、もろもろ考えると、食害量ではなく推定の摂餌量であれば差し支えないだろうと言ったものでした。以上です。
○鈴木委員長 はい、ありがとうございました。では、ほかに御質問がありましたらお願いいたします。
○古米評価委員会委員長 古米ですけれども、よろしいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○古米評価委員会委員長 調査データが平成18年から令和5年ということで、スライドの1から17年間行われているというように理解しました。しかし、調査項目のところには、平成21年から29年度と令和3年から令和5年度調査とあります。また、ナルトビエイの推定来遊量の図では、平成18年、平成19年のデータはなく、平成30年と令和元年と2年では何か項目が少ないとか、そういう意味かなと理解しました。なので、データを見るときに毎年あるデータとそうではないデータというのを整理していただくといいのかなと思いました。あとは、調査をして捕獲量が減っているというのが、現存量が減っていると見ていいとするならば、有明海・八代海を再生するために、どんな方策が求められるのか、例えばナルトビエイの食害への対策をするための情報がどのような調査から得られるのか、どういう調査結果が出たことから、具体的にどういう対策にしようとしているのかを示すことが大事だと思います。すなわち、調査することが目的ではないので、調査から何が得られるのか、また、さらにどのような調査をしないと対策をより効率的、効果的なものにできないのかを考えることが重要だと思います。そこら辺の議論は、この調査に関してはどうなされているのでしょうか。以上です。
○佐田農地資源課課長補佐 ありがとうございます。まず、18年度から調査を行っているとお示ししましたが、例えば、平成30年度~令和2年度については調査を行っておりませんでしたので、表からは除外させていただきました。また、平成18年度~平成20年度については全てのデータがありませんでしたので、表からは除かせていただいているところです。
 あと、2点目の御質問で、どんな方策をというところについては、例えば、ナルトビエイがどこでアサリを食べたとかいうデータがありますので、対策としましては、アサリに網袋をかけたり、被覆網を設置したりして、食害防止を図っていくというのも、後ほど各県の発表であるかもしれませんが、有明4県協調の取組の中でもさせていただいているところです。
○鈴木委員長 御説明ありがとうございました。古米先生、よろしいでしょうか。
○古米評価委員会委員長 要するに、調査は何のためにやっているのかを、最初の説明のところを言っていただいて、だからこういう調査をしていますという、そしてこういう結果が出てきて、今までやっていることがこう効いてきているから、こうなっているという、そのような説明をしていただくと、非常に調査の位置づけが分かりやすいかなと思いました。以上です。
○鈴木委員長 はい、ありがとうございます。
○佐田農地資源課課長補佐 承知しました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ほかに御質問等はありませんでしょうか。それでは、なければ、オブザーバーとして参加されている方、御質問等がありましたら挙手をお願いいたします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、次の資料に移りたいと思います。資料2-2aの「有用二枚貝の資料の収集・整理・分析状況」について、説明をお願いいたします。
○松山専門委員 それでは、資料2-2aを、委員である水産技術研究所の松山から簡単に説明させていただきます。よろしくお願いします。今回は、有用二枚貝に係る資料の収集等について、特に、資源の回復期における資源管理方法に関する資料を説明いたします。この資料は、6月に有明海・八代海勉強会を開催しまして、関係県とともに議論した内容の一部になります。
次のスライドをお願いします。これは水産小委で収集すべき有用二枚貝の資料の項目の一覧を示しております。たくさんの資料を収集する必要があるわけですが、色がついたもので、赤字で書いてあるものは、有明海・八代海勉強会で、もう既に資料を収集する、あるいは、本日の委員会で資料が説明されるもの、青字は他省庁で収集できた資料を示しております。ここで、今回の資料は、真ん中の少し上のほうの黒字でアンダーラインを引いておりますけども、有用二枚貝の資源管理手法の検討という再生方策の項目に関する部分の説明に相当いたします。
 次のスライドをお願いします。ここの資源回復期における資源管理方法に関しては、第52回親委員会の資料2-2のところに、①、②ということで資料の収集方針というものが示されております。そこの抜粋になります。関連事業としては漁業調整規則等になりまして、これは資源の保護・培養や漁業調整について定義されたものですが、この資料を中心に資料を収集しております。
 次のスライドをお願いします。これは、有明海におけるアサリの漁獲量を一つ例示的に示しております。環境省の総合調査評価委員会は、各県が行っております漁業調整規則に対して直接意見を申し上げる権限を持っているわけではございません。一方で、この漁獲量の図にありますように、長らく漁業調整規則というものに基づいた資源管理策が行われてきているにもかかわらず、現実として二枚貝の資源がなかなか回復しないことに対しまして、委員会として、科学的知見から資源減少の原因・要因の解明を行うとともに、資源再生方策の一つとして、資源の回復に資する追加的な資源管理策の推進の必要性を提唱しているところでございます。
 次のスライドをお願いします。漁業調整規則に関する水産庁のホームページから抜粋しております。お手元の資料で確認をいただきたいのですが、各県ごとに設定されておりまして、罰則も適用される内容になっており、非常に厳しく取り扱われています。
 次のスライドをお願いします。ここでは、熊本県の漁業調整規則のうち、二枚貝に関係する部分を表に整理いたしました。熊本県の場合ですが、基本的に漁業調整規則は、真ん中のところの、まず採捕の制限サイズになります。ある一定のサイズ以下のものは採らない。特に成熟する前の稚貝期に対して強く制限する内容、主に殻長制限がされております。それと、採捕禁止期間が設定されているものもございます。例えば、タイラギにあるように6月1日から9月30日までというのは産卵期になりますので、こういうときには成貝も採ってはいけないというような設定が行われております。これは、概ね、アサリ・タイラギに関しては4県ともほぼ同じような内容になりまして、ここには示しておりませんけども、県によりましては、例えば福岡県や、佐賀県、長崎県のほうではサルボウの殻長制限もありますし、佐賀県のほうでは、アカガイやハイガイに対しても殻長制限が設定されております。これが漁業調整規則になります。
 次のスライドをお願いします。一方、ここで申し上げました漁業調整規則に定義されていない追加的な資源管理策として、海区漁業調整委員会指示というものもございます。この委員会は、漁業者の代表、学識代表、公益代表者で構成されており、その時々の資源の状況に応じて、法的拘束力のある指示を出すことができます。例えば、干潟のタイラギ、これは従来、資源管理の対象になっていなかったものですが、タイラギの資源の状態が近年悪くなっているということで、この干潟のタイラギを採ってはいけないという採捕禁止の委員会指示を出す、こういったものが漁業調整規則を超えて、追加的な資源管理策として行われているというものの具体例になります。
 次のスライドをお願いします。平成28年委員会報告以降、漁業調整規則以外で追加的に二枚貝の資源管理に取り組まれているものを表にいたしました。4県と国、それと、アサリ、タイラギ、サルボウ、その他の二枚貝の追加的な資源管理のものについて例示しておりますが、多くは母貝団地の取組というものが、国と4県が協調して行われております。これは従来なかった取組になります。それと、天然資源を増やすために採苗器を設置する。これはサルボウなどでよく行われているわけですが、アサリなどでも網袋を使ってそうしたものが行われていますが、こういうのも天然資源の増大を目指す取組として行われているということになります。
 次のスライドをお願いします。こうした追加的な資源管理策は、前回の平成28年委員会報告以降、国と各県で取り組まれているということを御説明いたしましたが、こうした取組を、四つの視点で評価を行いまして、例えば、二枚貝資源が増減しているかどうかの資源量の把握、保護区を設けたりしているのですが、そういった保護区が、ほかの場所と比べてしっかりと資源が安定しているかどうかの効果把握、あと、移植等を行っておりますけども、移植した場合と、しなかった場合の生残率や成長・成熟がどのように変わったのか。あるいは、母貝団地も取り組んでいるのですが、その地点の場所や、規模の適正性ですね。近年、気候変動の影響等によって豪雨の被害が出ているというのが、前回第13回小委で説明がありましたが、そうした視点も含めてやっているか、こういった4つの視点で評価を行っていくことが必要と考えているところです。こうした結果によりまして、モニタリングで様々な基礎データの蓄積が行われるわけですが、それだけではなくて、最終的な結果がうまくいかなかったときに、順応的管理で対処したり、最終的な資源管理の中心になる漁業者に向けて、マニュアル等、漁業者の取組の深化につなげていくことが大事だと考えているところです。有明海・八代海勉強会からの説明は以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございました。後ほどまとめて御意見を伺いたいと思いますので、資料2-2bの「アサリ稚貝の大規模移植」、資料2-2cの「二枚貝に係る佐賀県の取組」、資料2-2dの「熊本県におけるハマグリの資源管理及び八代海のアサリの現状について」、続けて御発表ください。では、まず資料2-2bの「アサリ稚貝の大規模移植について」、お願いいたします。
○尾田専門委員 福岡県の尾田と申します。よろしくお願いします。初めに、アサリ資源の変動と気象イベントについて御説明いたします。図の資源量は年2回、春と秋に一斉調査を実施しており、その結果でございます。赤枠が豪雨の年、青塗りが大量減耗の年でございます。本県では、稚貝は主に筑後川や矢部川の河口域の覆砂漁場に大量に発生します。大きな減耗要因につきましては、豪雨による塩分低下と浮泥の堆積で、近年は矢部川河口域で影響が大きい傾向にあり、猛暑となれば、さらに、へい死が拡大いたします。また、有明海漁連によって、平成26年の秋から保護区の設定が開始されておりまして、平成27年の秋には移植放流が初めて行われて、現在まで続けられているといった状況でございます。
 次、これは、先ほどの保護区の設定と移植放流の開始についての状況でございます。平成24年7月、九州北部豪雨以降、なかなか資源の回復が見られませんでしたが、平成26年に筑後川河口で稚貝が大量発生したために、こちらは有明海漁連によって保護区を設定しまして、翌年の秋に、さらに矢部川河口域でも稚貝の発生が見られております。
 高密度である青色に塗られた漁場が増えていっていることが分かると思います。この平成27年の秋には移植放流も行われておりまして、その当時の主な放流先は、筑後川と矢部川河口から離れた、ほぼ中間地点ぐらいに位置する塩塚川河口となっております。
 こちらが、移植放流したサイズの組成になります。作業のストレス、移植のストレスに耐えられるようにというところで、殻長10mm以上を目安としておりまして、一番下の図を見ていただくと分かると思うのですが、10mm体が主体であることが分かると思います。
 こちらが漁場環境の年ごとの特徴について見ていったものですが、まず、河川流量のほうです。降雨の影響を受ける河川流量でございますが、低塩部の浮泥の堆積や河川流量に大きく影響を受けます。太軸がアサリの大量減耗の年でございまして、赤で囲っている年でして、それ以外の年も出水があれば、局所的な多少の減収は見られています。平成30年、令和2年、令和5年に多くのアサリが減耗しており、これらの年については、7月に著しい流量の増加が見られているのが特徴です。
 次に塩分濃度の推移でございます。こちらは大牟田地先の表層塩分でございます。昼の満潮時に毎日測定している、本県海域では唯一のデータとなります。表層のデータではございますが、河川からは遠い大牟田地先であっても、大量減耗の年には、アサリの生息に影響を与えるとされている塩分15を切る期間が長く継続していることが、7月の上旬から半ば辺りに見られております。
 次は水温の推移です。これも同じく、大牟田地先の昼の満潮時の表層水温でございます。大量減耗の年のうちの、平成30年、令和5年、塩分低下の後に高水温となっております。令和2年も大量減耗の起こった年ではございますが、この年は、出水直後のへい死は比較的少なかったものの、8月のお盆辺りに高水温が見られ、このときにへい死が加速した年でございました。
 こちらは稚貝が大量発生する漁場の水温と塩分でございます。矢部川河口と筑後川河口のデータを示しているグラフでございます。こちらは底層の水温と塩分になります。連続観測設置型の装置による測定結果でございます。矢部川河口については、(上)と(下)となっており、数百メートル場所がずれておりまして、うまく同一地点の連続したデータがなかったので、二つをつなぎ合わせたような形でお示ししております。また、本来、主な移植先である塩塚川河口のデータも含めて御紹介したかったのですが、この年はいいデータがございませんでしたので、この二つのデータで御説明させていただきます。
 これを見ますと、筑後川河口だけでなく矢部川河口も、下のグラフですが、15を下回る期間が長いことが分かります。筑後川河口につきましては、顕著な出水があった7月10日を過ぎた辺りから、塩分ゼロも観測されていることが分かると思います。また、矢部川河口は流量が少なく、大潮満潮時には沖合の水も入ってきますので、割と塩分変化の激しい漁場であるということが分かります。
 こちらは、矢部川河口の干潟の温度を測定したものでございます。干潟の表面にペンダント式の水温ロガーを設置し、10分置きに測定したデータでございます。令和2年と同様に、出水後のへい死はそれほど見られなかったのですが、7月下旬に40℃を超えております。アサリ稚貝は36℃を超える辺りから急激に死亡するとの報告もありますが、この辺りから、この年はへい死が発生しておりました。
 こちらは、さらに、そのへい死が発生したときをピックアップしまして、広げたグラフになります。36℃以上が観測された時間を1から4として便宜上番号をつけておりますが、7月30日には、最長で190分、3時間ほど36℃以上の温度にさらされておりまして、さらに、これを分けて、38℃以上だと約3時間、こちらには示しておりませんけども、40℃以上だと約1時間にさらされておりました。
 下の図は、このときのアサリの生息密度の推移でございます。7月上旬からの低塩分の後、多くの減耗が見られております。へい死個体と生残個体の殻長を比較しても、要は、死に殻の殻の大きさですね、それを比較しても大きく変わらなかったということで、恐らく、高水温によって、この辺りで急激にへい死が、また進んだのではないかと考えているところでございます。ただし、この年は、もともと高密度であったので、減耗後も、依然、高密度が維持できております。最初は、5万近くという、かなり、非常に高密度であったのですが、それが10分の1ぐらいになったとしても5,000という、これもまだ高密度であった、こういった年でありました。さらに、この年は筑後川河口漁場でも、後に、その稚貝の発生が見られまして、全体的な資源量は、本県海域の全体の資源量としては、依然高レベルであった年でございます。
 こちらが塩塚川河口の底層の塩分変化です。塩塚川河口は、主な移植先として位置づけされている漁場でございます。豪雨のあった平成29年と令和2年のデータを比較しております。平成29年は、塩分濃度の回復が比較的、豪雨の年でしたが早く、へい死は局所的でございました。令和2年は、塩分低下が、もう近年稀に見るという、最も著しい年でございまして、移植元の矢部川は数%、移植先の塩塚川は約30%であり、生き残っていたことが分かった年でございました。この塩塚川に放流されたアサリにつきましては、後の漁獲量につながっておりまして、大型個体も多く漁獲されていたことから、再生産にも寄与しているのではないかと考えられております。また、令和2年につきましては、危険分散のため、複数の漁場でも、少量ですけども、移植放流した年でございます。
 次に、底質環境と地盤高でございます。移植先は、当然のことながらアサリの生息に不適な環境を選ぶことはございません。主に覆砂漁場が移植先となります。河口から離れ、地盤高もやや低い塩塚川河口がメインの移植先となっております。図のように、覆砂後には底質環境が改善しており、覆砂の効果でございますが、アサリの着底が見られているのが分かると思います。これは、令和5年の覆砂漁場の調査結果でございます。稚貝の発生も覆砂漁場でよく見られまして、移植元である右の写真ですが、矢部川河口も覆砂漁場でございます。ホトトギスマットの発生も見られますが、周辺には稚貝が多く、定着の促進につながっていると考えております。ただ、ホトトギスマットについては、そのままにしておくと底質が悪化しますので、移植放流が必要となってくるというところでございます。
 こちらは、これまでの移植放流実績でございます。10年間でトータル約2,600トンを放流しております。各調査の平均の平均ではございますが、平均殻長は20.4mmとなっております。
 主な採捕場所は、筑後川、矢部川で、太字にしております。移植場所は塩塚川河口となっております。ただ、令和5年度の高温によるへい死もございますので、干出時間が短くなるような、より深場への移植量も増やしていこうと今しているところでございます。また、深場への移植につきましては、摂餌時間を長く確保できるので、成長促進効果も期待できるのではないかと思っているところでございます。
 こちらが、令和5年の移植の前後のアサリの生息密度の変化でございます。こちらは、赤のラインが採捕場所、黒のラインが移植先でございます。
 先ほどのように、高温によるへい死が発生したり、広い範囲に移植し、移植可能な量も限界があったりと、この図では、その移植による明瞭な放流効果を読み解くことが難しいところではございますが、このとき移植先であった筑後川河口では、6月に若干の密度の増加が見られております。また、移植先の筑後川河口に新たに稚貝の発生が確認されるなど、この年はしておりますので、どこまできちんと評価できるのか分かりませんが、細かく見ていくことも必要だと思われます。
 移植放流の目的と効果でございます。まず、間引きによる成長促進、生残率向上、母貝場の拡大、低塩分、浮泥堆積によるへい死対策、夏季の猛暑によるへい死対策、波浪等による逸散対策等が挙げられます。当初の目的は、上のほうのラインが入ってないところでございますが、気候変動とか、猛暑とか、そういったものに対する対応策としての、こういったリスクに対する対応が必要になってきているというところでございます。移植場所の選定条件でございますが、お示ししているとおり、河口から離れた砂質の干潟域、猛暑対策としての深場、さらに、過去、好漁場であった場所等を条件として行っておりますが、より効果を上げるために、今後もデータを集めて、漁場ごとのリスクの精査を行う必要があると考えております。
 最後に、まとめでございます。福岡県海域におけるアサリ移植の取り組みとして、福岡県海域におけるアサリの減耗要因としては、豪雨による低塩分、浮泥の堆積、猛暑などが影響しております。これらのリスク回避のため、覆砂漁場に大量発生した稚貝を、好適な漁場へ大量移植する取り組みを10年間実施し、総移植量は約2,600トンとなっております。これらの移植の効果もあると思っておりまして、平成30年春には約12,000トン、令和5年秋には約4,400トンまで資源量が増加しております。今後は、漁場ごとのリスクを評価し、低塩分や高水温の影響を受けにくい深場の漁場利用を進めていきたいと検討しているところでございます。以上で終わります。ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございました。次の資料2-2c、「二枚貝に係る佐賀県の取組」の表示に時間がかかるようなので、先に資料の2-2d、「熊本県におけるハマグリの資源管理及び八代海のアサリの現状について」、ご説明をお願いいたします。
○森野専門委員 熊本県の水産研究センターから、「熊本県におけるハマグリの資源管理及び八代海のアサリの現状について」、御説明したいと思います。
 まず、資料の1枚目になりますが、本県のハマグリの漁獲量ということで、農林水産統計のほうでは平成18年までしかございませんでしたが、現在、熊本県は全国2位ということで、平成18年は106トンということになっております。また、ハマグリは、全部で、チョウセンハマグリ、シナハマグリと、在来種の本ハマグリとありますが、有明海・八代海ともハマグリ、在来種が漁獲されているということで、環境省で、改訂版のレッドリストで絶滅危惧2類に指定されているということでございます。そういった中で、本県でのハマグリの資源管理ということで、平成25年の3月に資源管理のマニュアルを発行しまして、県内の利用者の方、さらに漁協さんにお配りして、資源管理の取組を進めているというところでございます。具体的に、ハマグリの資源管理のマニュアルにおきまして、まず、県内のハマグリの漁獲量、それから生産額の推移ということで書いておりまして、本県でのハマグリの漁獲量は、昭和40年代、それから50年代と比較しますと、平成18年には106トンということで減少しているという状況でございます。その後も、農林水産統計では出ておりませんが、なかなか厳しい資源、漁獲量の状況ということになっているところでございます。具体的なマニュアルの方法としまして、マニュアルの内容については次のページにありますが、まず、漁獲するサイズの大型化ということで、現在の漁獲サイズ、熊本県の漁業調整規則で、右下に書いておりますが、30mm以下ということになっていますが、産卵するハマグリの回数や殻長が30~40mmの間ということになっておりますので、産卵するサイズを出して、産卵回数や産卵数を増加するという方向での取組を含めるところで考えているところでございます。 では、次のページをお願いします。
 次に、二つ目の方策としまして、産卵時期、特に7月から8月の時期を禁漁にしたらどうかということでしておりまして、夏場の産卵期にはできるだけ休漁して、秋から年明けの2月にかけまして、単価の高い時期に漁獲して販売していくという形の取組はどうだということで書いているところです。下のグラフが、漁連で共販しております漁獲の販売に対する入札単価ということで、秋から年明けにかけまして入札単価が高いという状況がございます。3点目のマニュアルの内容としまして、保護区の設置ということで、漁場、特に生息する区域を網で囲いまして、覆いを上に被せることでハマグリの潮流での流出、それから、ナルトビエイなどの食害等防止という取組を紹介しているところでございます。 
次のページをお願いします。そういったマニュアルを示している中で、県内で取り組まれている主な取組みにつきまして、まず、夏場の休漁ということで、特に県内のハマグリの主要産地であります緑川河口におきましては、平成27年以降、緑川河口の3漁協が連携しまして、夏場、特に7月から8月のうちの1潮から2潮の休漁を実施しております。また、休漁期間中には、保護区を設置しているところでの海底耕うん、それから食害生物の駆除などを実施しまして、母貝だとか稚貝とかの保護活動に努めているというところでございます。
 次のページをお願いします。2点目の取組みとしましては、保護区の設定ということで、特に緑川河口になりますが、これも平成27年以降、緑川河口域に3か所の保護区を設置しまして、現在は約5,100平米の保護区を維持管理しているというところで、下のほうが今の設置の状況、それから、漁獲されているハマグリの写真になっております。
 次のページをお願いします。そういった中で、近年のハマグリの資源の状況、特に漁獲の状況になりますが、こちらに書いておりますが、平成26年以降、こういった取組みの管理によりまして、資源的には安定的に推移していまして、特に、令和3年、4年というのは漁獲量が向上していっているという状況でございます。
 次に、八代海におけるアサリの資源状況というところで御説明させていただきます。八代海におきましては、右側のグラフにありますように、平成22年までは漁獲量は200~1,000トンと少し幅はありますが、漁獲が推移していっていたという状況でございますけども、平成23年の夏場に発生しました豪雨によりまして、特に湾奥部のほうでは、豪雨による低塩分化という中で、まさに大量死が発生し、それから、漁獲量が低迷してきているという状況です。こういった中で、平成27年頃から被覆網をアサリ漁場に設置しまして、稚貝などの生息貝類の保護の取組みを続けておりまして、低位ですが、平成23年以降、少しずつですけど漁獲が見られてきたという状況でございましたが、次のページになりますが、令和2年7月に再び豪雨災害がございまして、特に湾奥部が低塩分化しました。今度は長期間になっておりまして、そういった中で、左の下にありますように、この真ん中の図にある松合地区とか、この湾奥については、×印のところは、もう稚貝、それから親貝ともにへい死、それから、黄色の三角については、親貝は死にましたけど、稚貝は残った。青丸については両方とも生存が確認されたということで、こういった中で、非常に厳しい、壊滅的な状況となりましたが、この一部海域、黄色のところでは稚貝が残ったということで、その稚貝をより保護して大きくするという取組がされたことで、次のページは被覆網の、保護活動の資料になりますが、各漁場での清掃、それからアサリの被覆網の設置による保護活動をしたということで、この次のページになりますが、翌年の4月には、ここにありますように一般開放できるような、潮干狩りのできる状況になったということでございます。
 次のページが、八代海における近年の漁獲状況になりますが、平成23年、それから令和2年の豪雨によりまして、非常に資源的に苦しい状況になっておりますが、着実な資源管理の取組みによりまして、最近、着実に漁獲が見られているという状況になっているところでございます。
 次のページをお願いします。最後に、ハマグリの資源管理、八代海のアサリの取り組みの簡単なまとめとして書いておりますけども、ハマグリにつきましては、50年代以降、長期的に減少している。そういった中で、ハマグリの資源管理のマニュアルをお示ししたことで、継続的な資源管理の取組みができたということで、令和3~4年には、漁獲量が増加しているという状況でございます。また、八代海のアサリにつきましては、平成23年、令和2年の豪雨の影響によりまして、非常にへい死が発生した状況になりましたけども、現在、被覆網等の資源管理の取り組みによりまして、漁獲の増加に期待されている状況というところでございます。
 以上が熊本県からの説明になります。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、次に、資料2-2c、「二枚貝に係る佐賀県の取組」について、佐賀県の中島委員、お願いいたします。
○中島委員 佐賀県の有明水産振興センターの中島と申します。今日はよろしくお願いいたします。
 佐賀県での取組の主な、アゲマキとウミタケ、二枚貝について説明をさせていただきます。
 次のページをお願いいたします。まず、アゲマキから説明をいたします。アゲマキは、かつて佐賀県の海域で主力となっている二枚貝でございましたが、これがずっと激減しておりまして、この資源回復のために母貝集団を作る、そして再生産サイクルを作って養殖技術の開発も行うということを目的としております。これまで、平成8年度から種苗生産、放流技術開発を開始しておりまして、年間200万個以上の種苗の生産が可能となっております。今は、徐々に漁協等へ技術移転を行っておりまして、ほぼ技術移転が可能なレベルに到達しつつある状態でございます。今までの技術で、放流後に食害対策として被覆網を施すことによりまして、生存率が大幅に向上しております。今まで、移植によります母貝団地の造成、それと、人工種苗を用いました養殖技術の開発というのを主にやっておりまして、それらに対する令和5年度の取組結果、成果について説明させていただきますと、最初に、移植による母貝団地の造成ですが、今まで、ほとんど毎年、一番左側の下にありますように、100万個以上のレベルで放流しておりましたけど、なかなか母貝団地が造成できておりません。その原因の一つは、底質の悪化です。浮泥が堆積して底質が悪化する。それで、その対策として海底耕うんを行っておりますが、一時的には海底耕うんをしたところでは、生残率は高く推移しておりましたが、その後の食害が発生しまして、生残は非常に厳しい状況になっております。
 それと、ずっと平成8年以降、種苗生産ができた年、もう10年以上、100万個単位で放流をしておりますが、その放流した場所の生残の調査も令和5年度に行っておりますが、浮泥の堆積ですとか食害等の影響によりまして、ほぼ生存は確認できておりません。佐賀県沿岸の海域、干潟で、ほぼ全域で放流しておりますけれども、今のところ生存は確認できておりません。唯一、人工種苗を用いました養殖技術の開発ですが、今までの放流技術、養殖技術の中で、拡張2ミリの人工種苗から、ある程度までの養殖を進むことができておりますが、ただ、非常に強固な食害対策を実施したカゴでのみ、生残しているということでございます。ですから、非常に強い食害対策をして環境条件を整えなければ、なかなか生残するのは難しいというような状況でございます。
次のページをお願いいたします。これは天然アゲマキの生息状況の推移です。ここには、天然アゲマキということを書いてありますが、もちろん放流したやつを含めてでございます。2016年から2018年ぐらいには、ある程度の資源量が増えてきまして漁獲量にも結びついたのですが、まだ近年、2022年以降で天然アゲマキの生息は確認されておりません。2021年はわずかにいたのですが、2022年はもういなくなりまして、2023年も確認ができておりません。
次のページをお願いいたします。これは放流アゲマキの生残率ですが、後でまとめて説明いたします。
 次のページをお願いいたします。ここら辺には、参考資料として、なぜへい死したのかという生残率の低下の原因について説明しておりますので、これも飛ばしていただき、次のページをお願いいたします。
 2019年に放流した分は、特にもうこれは豪雨があって、右側に写真がありますように、河川からの堆積物が漁場に堆積して、硫化物が堆積して、流れて下ってきた葦くずとかが堆積したり、あとナルトビエイ、エイの食害がこういうふうに起きて、非常に減耗したということを示しております。
 次のページをお願いいたします。これも放流アゲマキの生残率が低下したやつですが、ここは過密などによるというような書き方をしておりまして、あと、この年は2020年と2021年は8月に記録的な豪雨がありまして、海水がほぼ淡水化しておりまして、この影響で生残率が落ちたという説明でございます。
 次のページをお願いいたします。これは2021年に放流したアゲマキの生残率が低下したやつなんですけれども、この年は豪雨は降っておりませんが、それでも生残率は低下しております。このときは、低塩分よりも底質の悪化が影響したのではないかというようなことをここで示しております。
 次のページをお願いいたします。2022年に放流した、移植したアゲマキの生残率が低下したというやつですが、ここは、耕転して底質環境にもすごく注意して移植したのですが、結局、生残が落ちまして、ここは食害の影響が示唆されたというような結果でございます。
 次のページをお願いいたします。ここは、2022年に強固な食害対策を施したもので試験をしておりますが、その強固なカゴをベントナイトに入れて、カゴに入れた分のところだけ生残しておりまして、底質環境と非常に強い食害対策をすれば、どうにか残るのではないかというようなことをここで示しております。
 また次のページをお願いいたします。ここには、今まで少し説明した分をまとめております。2019年に放流及び移植した分ですが、これは高塩分と浮泥の堆積、食害で、減耗をしたのではないかと考えております。2020年分は低塩分と底質悪化、2021年分は低塩分、8月に豪雨が出ておりますので。それと2022年ですね、ここは豪雨がなかったのですが、ここの底質が悪化したのではないか。2023年ですが、このときは7月に豪雨が起きていますので低塩分、あと底質の悪化、浮泥の堆積、食害による影響があったのではないかと。これをまとめますと、この夏場の豪雨というのは、ほぼ常在、毎年のように発生しておりまして、佐賀県海域で、この低塩分化というのはほぼ避けられないのではないかと考えております。あと底質の悪化ですね、これも改善するというのは非常に難しいのではないかと。あと、食害対策ですが、もう大規模にこの食害対策を施すというのは非常に規模的に難しいので、母貝団地の造成とかのために食害対策を起こすというのも非常に難しいのではないかなと思います。
 それと、福岡県からの報告にもありましたように、これに加えて猛暑。うちにデータはないのですが、猛暑も干潟の温度も弱体化に影響しているのではないかと考えております。
 このページで、その対策についてまとめておりますが、高塩分化とか低塩分化というのは、漁場を変えたりしてリスク分散なんかで対応できるのですが、ただ、豪雨による低塩分化というのが、佐賀県海域が2週間ぐらいほぼ淡水化するような状況でございます。アゲマキだけでなくて、サルボウをはじめ、干潟に生息する二枚貝がほぼへい死しまうような状況です。これを避けるのは非常に難しいような状況でございます。底質悪化というのは、海底耕うんですとか、カゴの中のその底質を悪化しにくいベントナイトとかに変えるという対策ができます。あと、浮泥の堆積ですね。これも定期的な浮泥状況というのが、なかなか大規模にするのは難しいというようなことがあります。あとは、食害です。カゴによる食害でも、これも大規模にするのは非常に難しい。小型サイズ、ある程度の規模でのこの対策を打って、産卵数はある程度ありますので、これをすることで少し増やしていくことができるのではないかなと考えております。
 次のページをお願いいたします。これは、特にアゲマキの事業につきましては、親貝を福岡県の海域からいただいたりして、もちろんお互いに情報交換をして、佐賀県で主に種苗生産をして、その稚貝はもちろん福岡県にもお渡ししたりして、非常に連携をして行っているという取組でございます。
 次のページをお願いいたします。次はウミタケについて説明いたします。
 次のページをお願いいたします。ウミタケにつきましてもアゲマキ同様、ウミタケ資源の回復と生産技術を活用した養殖技術開発を行うことが目的でございます。ウミタケにつきましては、漁場造成をメインに今やっております。令和5年度には17年ぶりにウミタケ漁が復活しました。漁獲時期が限定されましたが、非常に漁業者の皆さんには喜ばれております。この漁場が、平成28年に佐賀県の早津江川の沖合の漁場に試験漁場を造成して、そこに天然のウミタケが定着するというようなことで漁場ができております。あと、令和5年度の取組結果・成果でございますが、養殖試験に向けた種苗生産ですが、なかなか採卵可能な親貝ができない、採取できないということもでてきて、種苗生産がうまくいきません。ただ、天然の浮遊幼生はある程度おりますので、それをどうにか今後は生かすような状況にしたいと考えております。
 中ほどにあるのがウミタケ浮遊幼生の状況ですが、ある程度、ウミタケ浮遊幼生は発生しておりますので、それを生かすようなことを考えております。それと、ウミタケの養殖ですが、非常に条件が厳しくて、サイズ感も規模感も非常に難しいので、カゴとかの養殖でするのは難しいのではないかと考えております。
 次のページでございます。これは着底促進の漁場位置を示しております。漁場に盛り土を作ったり、そして深く掘ったりして、海流の下流域を作って、そこに着底を促進させるというようなことです。
 次のページをお願いいたします。着底した漁場には、2023年にはかなり稚魚が発生しまして、ここで漁獲が発生しておりましたが、その後に集中豪雨がありまして、今年度の今の生息状況、2024年は非常に厳しいというような状況でございます。
 次のページをお願いいたします。これは浮遊幼生調査の結果ですが、ある程度、天然の浮遊幼生は発生しており、これを確実に漁獲に結びつけていきたいと考えております。
 簡単ですが、以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、これまで四つの内容につきまして、これは資料の2-2のa、b、c、dについて、御意見・御質問等を承りたいと思います。
では、最初に委員の先生方から御質問がありましたら、挙手をしてお願いします。
 では、山本先生、お願いします。
○山本専門委員 はい、鹿児島大学の山本です。資料のbとdで福岡県さんと熊本県さんが説明されたアサリのことで1件ずつ質問があります。
 bの福岡県さんのアサリの移植の御説明でしたが、最後に、今後の展望として、より深いところへの移植というのを検討中ということだったのですが、その場合の候補地というのは、報告ファイルの3ページ目には現在移植されてるところとか、現在密度か濃いところとかが書いてあるのですが、それのより海側という意味なのか。つまり、現状では白くてアサリの分布が見られないようなエリア、より深いところというと、ここの図でより深いところというと、そういうことになるのですが、そういうところが候補ということなのかという御質問が一つ。
 熊本県さんはまた内容が違うのですが、一緒にお話ししたほうがいいですかね。
○鈴木委員長 一緒に御質問をお願いします。
○山本専門委員 熊本県さんは、今度は禁漁というか、保護区を、さらに捕食者を取り除いたりとか、防御することで、漁獲が上向いていますという御報告だったのですが、そういう試みをされて漁獲が上向いてるのは、資料の12枚目に、この地図を拝見すると、大体これまでの主な漁場が○か△か×で出てるんだと思うのですが、それぞれの漁場で試みをされてトータルとして漁獲が戻ってるということなのか、幾つかの漁場でそれぞれの試みをして漁獲が戻ってるという意味なのか。つまり、もし後者だとしたら、これまで試みをしていない漁場で同じ試みをすれば、さらに漁獲が上がるという期待が持てますけども、前者の場合は、今できるところでは全部やっているということであれば、これを、さらにかなり長い目で見て継続するとか、もう少し工夫していかないと、これ以上漁獲は上がらないかもしれないと思えたものですから、どちらなのかなという御質問です。
○鈴木委員長 はい、ありがとうございました。
 では、最初に福岡県さんのほうから御回答をお願いします。
○尾田専門委員 御回答いたします。山本先生がおっしゃるとおり、こちらのところから、基本的に深いところになると沖側になったりします。現状が、矢部川河口だと大体地盤高が1メートルぐらいで、筑後川河口だと少し深くなって0.5から1メートルとかになりますので、さらに徐々に深いところといいますか、プラス50センチぐらい深いところとか、そういったところの地盤がいいところを選んで放流したいと考えております。
○山本専門委員 一つコメントさせていただいていいですか。低塩分を避けるという意味での今のより深いところというのは理解できるのですが、溶存酸素とかが大丈夫かなと。こういう環境で湾奥のほうで深いところということになると、溶存酸素とか、ほかの環境面は大丈夫かなと思うのですが、その辺のデータはあるのでしょうか。
○尾田専門委員 そこのデータも、過去のデータを見れば分かります。これまで、そこまで貧酸素については気になるようなデータはないと思います。当然、豪雨が来ないときは、既存のこれまで選んでいた場所がいいのですが、より低塩分になったりとか、あと、地盤が高いと干出時間が長くなりますので、その間に、先ほどお示しした40度とかになったりしますので、今年も様々なところにデータとかを入れているのですが、この猛暑で。そういったリスク分散という意味を含めて、貧酸素につきましては、さほど気にしなくていいのかなと思っております。
○山本専門委員 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 では、続きまして、熊本県さんからお願いします。
○森野専門委員 熊本県の水産研究センターですけども、お尋ねいただきました八代海の湾奥については、広域的にアサリの生息漁場ということで、広域的な取組として、それぞれの漁場に応じて資源回復の取組、保護についても進めております。
 ここで書いていますように、黄色の△、×印というのは、ほとんど壊滅的な状況でしたけども、漁場の特性で違いが残る場所、完全に厳しい状況の場所もございますので、そういった中で、それぞれ漁場の特性に応じた取組を進めておりまして、ただ、共通しますのが、食害対策としての被覆網の管理、ナルトビエイもございますけども、あと、チヌとか、そういったほかの魚食性の魚類による食害もございますし、あと、潮流が早いところでは流出してしまう。それぞれの取組に応じた広域的な取組として、それぞれの漁場全体で取組を進めて、そういった中で、稚貝の発生を増やすという取組を進めているといった、そういった状況でございます。
○山本専門委員 ありがとうございます。報告書とかで報告いただくときに、一個一個の地点の細かいところまではもちろん入れられないのですが、今おっしゃっていただいたように、多地点でそれぞれの漁場に合わせた試みが行われていて、共通する問題としての食害問題が特に大きいとか、そこをクリアすることで回復が見られているという、そういう説明をいただけると幸いです。
○森野専門委員 分かりました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、ほかに御質問等がありましたらお願いいたします。
○山西委員 山西からいいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山西委員 私も佐賀県の中島委員にお伺いしたいのですが、アゲマキでベントナイトを用いられた結果をお示しいただいたのですが、ベントナイトは水を吸うと結構膨潤するような粘土質のものと思いますが、どういうきっかけでベントナイトを使われることになったのですかというのが、一つ。
○中島委員 これは、人工の砂みたいな感じで手に入れやすいものですから種苗生産のときに使っていて、それで成績がよかったもので使うようになりました。
○山西委員 水を含むと膨潤しませんか、ベントナイトはたしか。
○中島委員 若干しますけど、種苗生産に影響を与えるような感じではなかったですね。
○山西委員 いや、悪い意味で聞いているのではなくて、結局、古米評価委員長も言われましたが、この審議会で議論するのは、再生に向けた成果の好事例として、どういうきっかけで、どういうことになっているかというのを知っておきたいというのが私の意見なんです。
 アゲマキは私も昔は振興センターと一緒に調査してましたけど、アゲマキは7、80センチとか、結構、腕がすっぽり埋まるぐらいまで、深いところまで潜ったりしますよね。アサリとかと違って結構深いところまで行くじゃないですか。だから、浮泥化することによってアゲマキが採れなくなり、底質の悪化によって底泥表面からすぐに嫌気化してしまって、そういうものが生息環境への影響として大きいのかなと思ったのですが、ベントナイトも同じような粘土だし、どういうところがよかったのかなと思ったので、質問させていただきました。その辺を整理して、アゲマキの生息環境としてのメカニズム的に何がよかったのかというのが分かると次にまた活かせるのではないかなと個人的に思いました。
○中島委員 はい、ありがとうございます。そこを、詳しい整理を今後進めまして、皆さんに御提示できればと思っております。ありがとうございます。
○山西委員 もう一ついいですか。これは、先ほどの福岡県と熊本県との整理において、中島委員からまとめていただいた、アゲマキの推定される主な減耗要因という表みたいなものを作っていただいたのがありましたよね。例えば流量が増えて、塩分が低下することでアサリの減耗だとか、塩分が15PSU以下になるとだめだとか、干潟の温度も36℃以上でへい死が大きくなるだとか、あと、地盤高は摂餌時間の長い短いということなのでしょうけど、こういったことを佐賀県がまとめられている表のように整理いただけると、一気に、何が問題で、どういうところが改善できる、できないというのが、一覧で見られるような気がするので、この辺りは、事務局なのか分かりませんけど、まとめていただけると親委員会のときに議論する一つの資料になるかなと思いました。
 福岡県がまとめていただいた2ページの資源量の推移、これをとても興味深く見せていただいたのですけど、これを見ると福岡県ではアサリがこのような結果ですが、アゲマキだとかハマグリ辺りも同じような傾向が見えたので、これも全体を見渡すときの資料として今後何かに使っていただくといいかなと思いました。以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、ほかにございませんでしょうか。ないようでしたら、オブザーバーの先生方、何かありましたら御質問をお願いします。よろしいでしょうか。
○青木専門委員 すみません。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○青木専門委員 日本国際湿地保全連合の青木と申します。1点質問があるのですが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。福岡県さんのアサリのお話ですが、1点確認したいのですが、アサリの稚貝が筑後川や矢部川河口域の覆砂漁場に大量発生したと書いてあったのですが、そこは常に大量発生する場所なのか、そのときたまたま大量発生したという場所なのか、それとも保護されたために数が増えたのかということをお聞きしたいのですが、お願いできますでしょうか。
○鈴木委員長 では、福岡県さん、御回答をお願いします。
○尾田専門委員 御回答いたします。両漁場は、毎年必ずここで大量発生するわけではないのですが、長期的に見ても、こちらで発生する頻度が非常に高い漁場でございます。
 筑後川と矢部川と比べると、矢部川がさらにもっと高いというような状況でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
○青木専門委員 ありがとうございました。何か特殊な環境的な要素があって、そこに稚貝が湧くのかなというのが気になったので質問させていただきました。以上です。
○鈴木委員長 ほかに御質問がありましたら、お願いします。
 では、山口先生お願いします。
○山口(敦)専門委員 佐賀県の放流アゲマキのところで、食害がと言われていたのですが、これはナルトビエイによる食害というのを、どういうふうに確かめられたのかお尋ねしたいなと思いまして、お願いできますでしょうか。
○鈴木委員長 では、御回答を佐賀県さんお願いします。
○中島委員 うちも、ナルトビエイと限定しているわけではなく、食害痕のみ確認しております。
○山口(敦)専門委員 大きな円の跡のところですかね。穴が開いていたというか、丸く凹んでいたところを食害と判断したということでしょうか。
○中島委員 そうです。
○山口(敦)専門委員 分かりました。ニュースでもナルトビエイと言われていたので、直接食べているところを観察されたのかと思ったのですが。分かりました。ありがとうございました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。
 では、ほかに御質問がありましたらお願いします。どなたも挙手されていないようですので、では、次の資料のほうに移りたいと思います。
 後ほどまとめて御質問を伺いたいと思いますので、資料2-3の有明海のアサリ等の育成技術高度化実証事業、資料2-4の有明海水産基盤整備実証調査について、続けて御発表をお願いします。では、最初の資料2-3について、水産庁よりお願いいたします。
○中村研究指導課課長補佐 では、資料2-3です。水産庁研究指導課の中村と申します。よろしくお願いいたします。
 ここでは、平成30年度から令和4年度まで実施した有明海のアサリ等の生産性向上実証事業と、令和5年度から実施しております有明海のアサリ等の育成技術高度化実証事業について御説明いたします。
 次のページをお願いいたします。
 右下にページ番号を振っておりまして、1ページ目です。本事業では、アサリを対象に母貝や稚貝の育成、生息適地への移植など、生産性向上につながる技術開発を行っています。また、本事業では、漁業者の方々とともに技術を開発し、現場の状況に応じて漁業者の方々が開発された技術を選択して活用していただくということを目指しています。
 2ページ目を御覧ください。事業開始の当初は、覆砂や海底耕うんなど、主に公共事業を対象とした技術開発というのを行っていましたが、現在では、漁業者の方々が自ら実施可能な技術開発に推移しています。
 3ページ目を御覧ください。ここでは本事業の実施場所を示しています。①②が福岡県、③が佐賀県、④⑤が長崎県、⑥から⑧が熊本県の地先となっています。
 4ページ目を御覧ください。ここでは実施場所の環境特性を示しています。本事業ではそれぞれの環境特性に合わせて技術開発を実施しており、例えば、①福岡県柳川地先では、底質の泥分が高く、アサリの泥による埋没が発生している場所、⑤長崎県島原市地先では、浮遊幼生は着生しますが、稚貝が生育しない礫浜の場所などとなっています。
 続いて、5ページ目を御覧ください。ここでは有明海のアサリ等の生産性向上実証事業における取組を示しています。この事業は、有明海におけるアサリ等の生産性向上のため、大課題、一番左側にあるように、母貝の生息適地の造成、稚貝の育成、稚貝の移植によって漁場の生産力向上を図ることを目的とした実証事業です。この表は、事業全体の概要が分かるように、大課題、中課題、実施場所、その場所のアサリ等に対する環境特性、5年間の目標を整理したものです。
 実施内容と成果については、6ページ目から12ページ目にかけて実施場所ごと1ページずつにまとめています。
 次の6ページ目を御覧ください。ここでは、福岡県柳川地先で行った取組の結果についてまとめています。この場所は泥干潟のため、アサリの生息が難しい環境ですが、泥干潟であっても母貝が育成できるよう取組を行いました。具体的には、小規模高地盤覆砂域の造成や棚枠型離底器の設置を行い、そこに軽石の網袋を設置しまして、アサリの母貝を育成して、生残、成長、成熟の状況を比較しました。その結果、両者とも同等の効果があることが確認されました。設置時のコストが安価で作業性もよいことから、棚枠型離底器のほうが漁業者の方々の取組には適しているのではないかと考えております。
 次、7ページ目を御覧ください。次に、熊本県宇土市地先の取組です。この場所は粒径が小さい砂干潟であり、底質が動きやすく、母貝まで育つ前に稚貝が流失しやすい場所になります。このため、母貝の保護・育成や、母貝育成サイクルの開発などに取り組みました。成果としては、4月から5月頃に稚貝を採取し、角ざるに2か月程度収容して育成、6月以降に12mmから15mm程度のアサリを網袋に移植して、さらに密度調整を行うという作業スケジュールを取りまとめています。
 次、8ページ目を御覧ください。次は、福岡県柳川市地先の取組です。この場所は潮汐による流れが強い干潟です。当該地先は、初期稚貝の密度は低いものの、成貝を放流すると早い成長が見られるため、育成場としての活用が考えられます。成果として、稚貝採取量の増大を図るため、ヤシの実の繊維であるパームを利用した効率の高い採苗器を開発するとともに、採苗から放流サイズまでの育成方法について、移植時期や泥土対策などの立案、実証を行いました。
 次、9ページ目を御覧ください。長崎県島原市地先の取組です。ここは稚貝の着底が見られますが、その後の成育が難しい礫浜になります。このため、未利用資源等の活用を目指して、採苗用の砂利入り網袋で稚貝まで育成させる実証などに取り組みました。成果として、当該地先における稚貝確保から移植用のアサリの採取までの一連の方法を最適化して、作業手引等を作成しました。
 10ページ目を御覧ください。佐賀県佐賀市地先の取組です。ここは河川から土砂が流入する砂混じりの泥干潟であり、網袋が埋没しやすく、流れや波浪による散逸、泥による埋没等によりアサリの生息が制限されています。成果として、網袋の埋没防止のためにコンポーズを用いた、いかだ型離底器を設置し、その上に稚貝を収容した砂利入りの網袋を置いて、地場で採苗したアサリ及び他地区から移植したアサリの成長・生残を確認しました。
 11ページ目を御覧ください。こちらは長崎県諫早市の地先の取組です。ここは泥干潟上に覆砂された養殖場です。当該地先においては、地元産アサリの漁獲量が減少し、県外産アサリの冬季放流による漁獲が主体となっています。天然稚貝の発生は多いものの、高水温、貧酸素等により、その多くが減耗してしまうことが課題です。成果として、地元産アサリの採苗と県内他地域産アサリの移植における作業手順を確立しました。具体的には、5月から6月頃に大型の個体を漁獲し間引きすることにより、貧酸素の被害を軽減するなど、夏季の減耗対策の手法を提示することができました。
 次、12ページ目を御覧ください。熊本県玉名市地先の取組です。ここは波浪が強く、底質が動きやすい砂干潟であり、干潟の陸側では稚貝が確認されていますが、夏季以降、減耗、消失してしまうことが課題です。成果としては、干潟の陸側において収穫ネット、写真にあるオレンジ色のネットですが、これが入っているラッセル袋、青色のものですが、こちらに軽石を入れて設置することで効率的に採苗するとともに、陸側にあったものを沖側に移植するときに、内側のオレンジ色の収穫ネットを外すことで、砂による膨満対策が可能となることなどを確認しました。
 次、13ページ目を御覧ください。ここでは令和5年度から実施している有明海のアサリ等の育成技術高度化実証事業における取組を示しています。この事業は、これまで効果が認められた技術を用いて大課題にもあるように、天然採苗技術を活用したアサリの育成・収穫ですとか、近年の豪雨など環境変動に対応したアサリの育成、漁業者が取り組みやすい作業効率の高いアサリの保護・育成に係る技術開発・実証を実施するものです。令和6年度も引き続き事業を実施していますが、現時点では令和5年度の1年分の成果を、表の右側に簡単に記載しています。後ほど触れますが、殻長の小さいアサリは低塩分耐性が高いことなども確認されています。
 次、14ページ目を御覧ください。14ページ目から18ページ目にかけては、本日御説明した二つの事業において得られた成果の中で特筆すべき成果として四つ紹介させていただきます。
 15ページ目を御覧ください。一つ目がパームを用いた新たな採苗技術の開発です。ヤシの実の繊維であるパームを網袋やメッシュパイプに収容して潮間帯に設置することにより、効率的に採苗することが可能となりました。さらに、設置する網袋の高さやメッシュパイプの設置方法の検証を行い、より効率的に採苗可能となる手法を確認しました。
 16ページ目を御覧ください。こちらは埋没対策のための離底器具の開発です。泥分の堆積が多い干潟や泥干潟でも、写真にあるような、いかだ型離底器具や棚枠型離底器具を用いてアサリの育成が可能となりました。離底器具のメリットとして、覆砂などに比べ低コストで実施できるほか、移動や撤去も容易であることが挙げられます。
 17ページ目を御覧ください。貧酸素対策としての間引きによる効果です。シャットネラ赤潮の発生に伴う貧酸素水塊の発生がアサリの育成に大きなリスクとなりますが、5月から6月に間引きを行うことにより貧酸素水塊発生時のへい死リスクが著しく低減することが確認されました。具体的には右側に棒グラフを掲載していますが、横軸が殻長で縦軸が個体数となっています。網袋に入れて育成をしている袋単位の個体数です。令和4年の事例として間引きがない場合は貧酸素で全体が減耗するのに対して、6月に大きい個体を間引くと、貧酸素でも大きな減耗なく、漁獲サイズに到達することが確認されました。
 次、18ページ目を御覧ください。低塩分の影響と低塩分耐性のサイズ間比較です。現場の塩分から、へい死リスクが著しく上昇する条件を確認しました。資料の左側ですが、アサリに悪影響が表れる塩分15以下が1週間以上続くと、アサリの生残率が急低下するということが確認されました。また、殻長の小さい個体は低塩分耐性が高いことを確認しました。こちらは資料の右側ですが、上のグラフにおいて昨年7月に九州地方で線状降水帯が発生し低塩分の状況が発生しましたが、殻長25mm以上のアサリは全滅したのに対し、殻長10mmのアサリは生残が確認され、貧酸素対策と同様に、間引きが有効になる可能性があります。
 最後、19ページ目を御覧ください。まとめです。
 平成30年度から令和4年度まで実施した有明海のアサリ等の生産性向上実証事業の成果をマニュアルとして取りまとめ、関係県や漁業者の方々などに周知するとともに、水産庁のホームページにも掲載して技術の普及を図っています。引き続き、漁業者の方々が使いやすい技術の開発などに取り組んでまいります。説明は以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、続きまして、資料2-4について水産庁より御説明をお願いいたします。
○松﨑計画課課長補佐 それでは、水産庁計画課で委託事業として実施しております有明海水産基盤整備実証調査につきまして、松﨑より説明させていただきます。
 1ページ目をお願いします。目次を載せておりまして、今回の発表の流れといたしましては、初めに、有明海水産基盤整備実証調査の事業目的であったり全体像等を説明した後、2番目にタイラギの生息環境を改善する基盤の実証状況について、3番目にタイラギの立ち枯れへい死の原因究明に向けた検討状況について、そして最後に2023年度以降の取組について説明していきます。
 2ページ目をお願いします。本事業は、タイラギ等の資源回復に向けて、浮泥の堆積抑制や餌料環境の改善等を図るための基盤を造成しまして、整備効果の検証を目的として実施してございます。主な調査内容といたしましては、タイラギの生息環境を改善する基盤の実証、そしてタイラギの立ち枯れへい死の原因究明の2点となります。この実証調査でいう立ち枯れへい死というのは資料に記載のとおりとなります。
 続きまして、3ページをお願いします。本事業は2005年度から実施しておりまして、タイラギの生息環境を改善する基盤の実証を行うため、2009年~2010年、上のほうの茶色のところと、2013年~2014年、上のほうのピンクのところで凹凸覆砂畝型漁場を造成しまして、各々の覆砂区でモニタリングを実施して効果を検証しております。また、2か所の覆砂区でモニタリングを実施した結果より、H25・26覆砂区において、タイラギの餌料環境を改善する必要性が生じたことから、2018年~2019年にかけて、こちらは真ん中のほうの青いところになりますが、生物機能活用型基盤を造成しまして、以降、モニタリングを実施して効果を検証しております。また、表の一番下、緑のところですが、タイラギの立ち枯れへい死要因の検証も継続的に行っております。
 続きまして、4ページをお願いします。ここには実証調査で行っている調査項目を、大きく分けて3項目記載するとともに調査内容の詳細も記載しておりますが、時間の都合上、説明は割愛させていただきます。
 続きまして、5ページをお願いします。調査内容の一つ目のタイラギの生息環境を改善する基盤の実証に関する説明となりまして、本事業では、図1に示すような凹凸の覆砂畝型漁場を潮流と並行に畝型の覆砂を複数基並べて造成しておりまして、主な効果としては図2のようなものを想定しており、浮泥・シルト堆積抑制効果、また、流況のい・遅い等の流況を変化させる効果、またタイラギの着底を促進する効果が上げられまして、これらの効果が発揮されることでタイラギの生息しやすい場が形成されると考えております。
 続きまして、6ページをお願いします。凹凸覆砂畝型漁場の効果についての説明となります。左側の図4では、H21・22覆砂区におけるシルト堆積層厚のモニタリング結果を載せております。これを見ますと、小さくて見づらいのですが、赤い点が天端を1.5mで作ってございますので、畝型の天端部分、少し濃いピンクが法面1.0mの部分を示していますが、ここではシルトの堆積層厚が低い状態で経年維持されていることが分かるかと思いますので、凹凸覆砂畝型漁場による浮泥やシルトの堆積抑制効果が発揮されている結果と考えております。また、右側の図5ですが、こちらもH21・22覆砂区におけるタイラギの成貝の生息密度の分布状況を示しております。黒い三角が覆砂の断面となります。斜面部であったり、谷部において生息密度を棒グラフですが、生息密度が高い状況となっておりますので、これも生息環境改善効果が発現している効果と推察されました。
 続きまして、7ページをお願いします。こちらはタイラギ着底稚貝に関するデータであり、2020年以降のデータとなりますが、表2に示しております。特にH21・22覆砂区のところで多くのタイラギの着底稚貝が確認されておりまして、特に2020年度は1,200個体が確認されております。
 続きまして、8ページをお願いします。こちらは最初に説明しましたとおり、生物機能活用型基盤を2018年から2019年にかけて造成しており、造成方法としては、生物の着生を促す割ぐり石をネットに詰めまして、それを袋詰めしたユニットを積み上げて施工しております。整備のねらいとしては、タイラギの餌となる付着珪藻であったり、ムラサキイガイ等の付着動物からの排泄物、有機物を供給することにあります。
 続きまして、9ページをお願いします。こちらは生物機能活用型基盤の有機物供給効果を検証した結果であり、基盤周辺の表層に堆積している泥を採取しまして、強熱減量、クロロフィルa、フェオフィチンを分析しておりまして、結果を右側の図10に示しております。こちらも資料が小さいのですが、2021年11月と2022年2月のデータを示しておりまして、棒グラフの高さを見ていただくと、基盤に近い地点で概ね高く、基盤から遠ざかるにつれて低くなる傾向が確認されておりますので、生物機能活用型基盤からタイラギの餌料となる有機物が供給されている可能性が示唆されました。
 続きまして、10ページをお願いします。調査内容の二つ目のタイラギの立ち枯れへい死の原因究明に向けた検討についての説明となります。左側の図11に、2016年11月に移植しましたタイラギ人工種苗の生残率をモニタリングした結果を示しておりまして、図11の一番下が生残率ですが、青い折れ線がH21・22覆砂区であり、ピンクのH25・26覆砂区と比べまして、12月以降生残率が急減しました。その原因を調べるために、右の図12に連続観測している水温、塩分、DO、濁度の結果を示しておりまして、水温、塩分、DOにつきましては、両覆砂区とも明確な差はない状況でした。一方、濁度は、特に生残率が急減した前後を抜き出して示しておりますが、青い折れ線が立ち上がっているのが分かるかと思いますが、H21・22覆砂区、つまり生残率が急減したところの濁度が継続的に高い状況にあることが分かりました。既往の知見では、高濁度はタイラギの摂餌活動を抑制することと、その濁度が長時間続くことはへい死のリスクが高まるとの結果が報告されていますので、高濁度が継続することにより摂餌障害がタイラギのへい死要因の一つであると推測されました。
 11ページをお願いします。前ページの結果を踏まえまして、濁度との関係性を検証しております。11ページの図13には、36FTU以上の高濁度の累積時間とタイラギの生残率との関係性を、上がH21・22覆砂区、下がH25・26覆砂区のデータを示しております。これを見ますと、棒グラフは1日当たりの高濁度が続いている時間を示していますが、H21・22覆砂区のほうで、継続的に高濁度になる時間が長いことが分かるかと思います。H25・26覆砂区は、それほど棒グラフの立ち上がりもない状況ですが、生残率を見ると、大体これも2月ぐらいから同じようなところで低下していることが分かりました。そのため、先ほどは濁度がへい死に影響しているだろうと推測しましたが、高濁度の累積時間とタイラギの生残率には明瞭な関係が認められない場合もあることが分かりました。
 続きまして、12ページをお願いします。こちらは同じく36FTU以上の高濁度の累積時間とタイラギ閉殻筋中のグリコーゲン含有量の関係性を検証した結果を示しております。こちらも両覆砂区ともグリコーゲン含有量が低調に推移していることから、H21・22覆砂区のほうが高濁度の継続時間が長いので、食べられない状況が続き、結果、グリコーゲンも増えないのではと推測しましたが、こちらも、やはり高濁度の累積時間とグリコーゲン含有量についても明瞭な関係性が認められない場合もあることが分かりました。そのため、濁度だけではタイラギの生残状況であったり、グリコーゲン含有量の変化を説明しきれない場合もあることから、本事業においては、タイラギが餌を食べられないときの評価だけでなくて、タイラギが摂餌可能な濁度下において、どの程度餌を食べられたかの評価が必要と考えました。
 それでは、13ページをお願いします。前ページまでの検討結果を踏まえまして、本事業で検討を進めてございますタイラギの餌料環境を評価する指標、有効摂餌量の説明となります。タイラギが生息する底層での連続観測データ、10分間ごとに観測しているのですが、その連続観測データから、タイラギが摂餌可能な濁度ということで、今回の検討では、様々な室内実験の検討結果等も踏まえまして、便宜的に36FTU未満としておりますが、36FTU未満のときに1㎠の断面中を10分間に通過するクロロフィルa量を算出します。クロロフィルaは計っておりますが、濃度なので、濃度ではなくて食べられる量、フラックスとしての評価が必要と考えました。クロロフィルaに流速を掛けて有効摂餌量というものを示しております。算出した有効摂餌量と移植タイラギ中の貝柱中のグリコーゲン含有量、つまりタイラギがそれまでに蓄積したエネルギー量の時系列を比較することによって、タイラギのコンディションを評価できるのではと考えました。
 続きまして、14ページをお願いします。図16に有効摂餌量とタイラギ閉殻筋中のグリコーゲン含有量を示しておりまして、棒グラフが有効摂餌量になりまして、有効摂餌量の棒グラフが立ち上がっているときには、折れ線もそれと並行するような形で上昇する傾向が伺えました。これは先ほどのページのほうで説明しましたとおり、H21・22覆砂区と、H25・26覆砂区で高濁度の継続する時間が違うのですが、それらは関係なしに有効摂餌量を見ますと、同じような傾向が見えておりますので、こういったタイラギの立ち枯れへい死につきまして、一般に言われている低塩分であったり、貧酸素水塊の発生等の生息環境に関する要因に加えまして、餌料環境の悪化ということで、こういった有効摂餌量の増減による衰弱も影響している可能性が示唆されました。これは先ほども説明しましたとおり、今回の検討は、便宜的に36FTU以上を高濁度として検証してございますので、今後は、濁度をもう少し正確に反映できるような指標の検討が必要と考えております。
 最後、15ページをお願いします。ここでは2023年度以降の取組について説明します。これまでの説明で凹凸覆砂畝型漁場を2基造成していると説明しましたが、昨年から今年にかけて佐賀県太良町沖に、ここもかつてタイラギ漁場が形成されていたところで、そこに同じく凹凸覆砂畝型漁場を造成しまして、情報を蓄積することで、タイラギの着底条件であったり、先ほどの有効摂餌量等のさらなる検証を図ることとしております。また、これまで凹凸覆砂畝型工の基盤延長とか配置方法について、長さが違うとどういった影響が出るかを検証していなかったこともありましたので、今回、その検証も実施しております。また、造成済基盤、こちらは福岡県の2か所についてもモニタリングを継続してございまして、昨年度の着底稚貝数は、過去に造成しました、特にH21・22覆砂区において約100個体確認しております。また、先ほど説明した有効摂餌量の算出精度向上に向けて、本調査の結果や、関連する室内実験等の結果も踏まえ、改良を検討していくことで考えております。
 発表は以上となります。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明がありました資料2-3、2-4について御意見、御質問等を承りたいと思います。
○矢野委員 矢野ですけど、よろしいでしょうか。
○鈴木委員長 矢野先生、お願いします。
○矢野委員 最初の御説明の資料2-3の17ページについてお伺いしたいのですが、詳細な実験の条件がよく分かっていないので、理解が完全にできていないところもあるのですが、間引きをしたのとしていないので、令和4年7月の分布が令和4年8月の分布に変わったという、この結果は結果で分かったのですが、こうなったメカニズムについては、どういう理解をされているのか伺いたいのですが。というのは、アサリの各個体は環境条件としての貧酸素の状態を両方とも同じように受けているのかなと思うので、各個体に対してのストレスはほぼ似たようなものなのかなという気はするのですが、それなのに間引きしたほうはこれだけ生き残ったということで、想定されているメカニズム的な話が何かあるのであれば、それを伺いたいんですけど、よろしくお願いします。
○鈴木委員長 では、水産庁から回答をお願いします。
○中村研究指導課課長補佐 ありがとうございます。お答えします。まず、この実験の状況ですが、網袋に砂利を入れて、その中にアサリが入っているというような状態であり、ふるいで大きな個体を間引くということになります。このような結果になった要因ということで、考察ということだと思いますが、まず一つは、網袋の中の収容密度が低下したというのが一つです。
 あとは、間引きをするときにポンプで海水をかけてやるので、袋内の基質が洗浄されることで環境が少しよくなったというのも一つあるのではないのかなと思っておりますし、あとは、アサリ以外の生物、ほかの貝などが除去されて、これも環境がよくなったということが挙げられるのではないかなと考えております。以上です。
○矢野委員 ありがとうございます。
 今言われた砂を入れた袋ですかね、それというのは各一つずつあって、間引きと間引きなしという条件なんですか。それとも間引きも幾つか袋があって、それの平均値的な情報のところに上げられているのか、そこはいかがでしょうか。
○中村研究指導課課長補佐 後者のほうですね。複数の袋の平均ということになります。
○矢野委員 その一個ずつの袋の差は、それほど大きくないという理解でよろしいですか。
○中村研究指導課課長補佐 すみません。そこまでは、今、データがありませんが、平均の結果ということでお示ししております。
○矢野委員 分かりました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、ほかに質問がありましたらお願いします。いらっしゃらなかったら、続きまして、オブザーバーの先生方で何か質問がありましたらお願いします。では、特にいらっしゃらないようですので、議題1の有用二枚貝の全体の説明を通して御意見などがありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
○山西委員 山西から一ついいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山西委員 先ほども言いましたけど、古米評価委員長から言われたように、とにかく、この委員会としては、様々な対策を紹介するというよりも、これらを評価して有明海の再生に活かすというのが一番大きな話なので、今回、各県の取組も含めてたくさんいただきました。一方で、毎回、よく委員会で同じ議論になるような気がするのですが、「だからどうしたらいいのか」というところをまとめるようにしないといけないんです。今回、結構様々な細かな話があって、自分なりには整理できているのですが、全体として議論するときに、先ほど一例で言いましたが、佐賀県さんがまとめられているような、どういう場合はいいとか悪いとかというのを一覧で各県の分、先ほどの水産庁や農水省も含めた取り組みを、一覧で整理できるようなものがあると分かりやすいかなと思いました。特に、二枚貝とかは環境条件とかが、豪雨の話もありますけど、低塩分だとか、地盤高だとか、ある程度の整理は今までも多分できているはずなので、その辺りを整理した上で、恐らく海域のところで議論のある気候変動の話とかで、今までの傾向とは違うというのが見えるといいかなと思いました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、事務局のほうから何か御回答、お願いいたします。
○川田海域環境管理室室長補佐 大変、貴重な御意見をありがとうございます。それぞれ関係機関から御報告いただいた内容を踏まえ、今回の小委員会の報告を親委員会に上げるときに、御指摘いただいたような一覧の見やすい形でお示しできるように検討致したいと思います。ありがとうございます。
○山西委員 よろしくお願いします。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、ほかにどなたかいらっしゃらないでしょうか。オブザーバーの方も含めて、もしありましたら御意見をお願いします。
○古米評価委員会委員長 古米ですけど、よろしいですか。
○鈴木委員長 古米先生、お願いします。
○古米評価委員会委員長 今日、各県でやられている二枚貝の対策の話、そして、水産庁の増殖推進部と漁港漁場整備部からの説明から、それぞれ魅力的な成果が出てきていると思いました。先ほど申し上げたように、それぞれのやっていることを相互理解するためには、資料2-3の増殖推進部さんの3ページだとか4ページみたいな、どういう場所でどのような対策が実施されているかをわかりやすく整理することが大事だと思います。水産庁だけでなく、福岡県さんも佐賀県さんも、そして熊本県さんも対策を実施しているわけですよね。それには、アサリがあったりタイラギがあったり、ハマグリがあったり、いろいろですよね。マップ上で、どこで何を、誰がやっていて、どんなことを解決するためにやっているのかという全体像というんですかね。そういう内容を整理がされたものがあるとよいと思います。県の方の発表のなかで矢部川が出てきましたが、私はもう覚えましたけれども、どこで何をやっているかをすべて理解するのは難しいんですよね。だから、各県の方が紹介するときには、事業実施のマッピングがあって、どういう条件のところで、こんな実証事業をやっています、対策をやっていますと。その事業にはこのような特徴があるんですよというようなことをまとめる。水産庁の増殖推進部さんみたいに、各場所にどういう特徴があって、どういうことをターゲットにやっているのかを明確にした上で、どういう対策事業をしていることを取りまとめていただく。それを各県ごとにやれば、ほかの県さんも、「ああ、福岡県さんはこうやっているんだ」とか、「佐賀県さんはこうやっているんだ」とか、「水産庁でこういうことをやっているんだ」というように相互理解が深まると思います。そのために、同じフォーマットというか、同じ基礎情報を載せておいて、何をやっているかを整理する。そうすると、何年後かに全体を取りまとめるときには、基礎情報が共通的にあって、実施場所の地図があるとか、その事業の特徴があるとか、目的が明確になっているとか、何に着眼しているのかということが効率的に整理できます。そうすると、類似した事業があればそれをまとめて提示するなど、情報共有の基礎ができると思います。水産小委で報告いただける事業をやっている方々で、一度、協議を持たれて、水産庁がリーダーシップを取るといいと思うのですが、こういう情報を整理しましょうねと、それをベースにして、各県、どこで、どういう場所で何をやっているかということを整理していただく。今回報告の成果は非常に魅力的で、うれしくなるぐらいの成果は出ているとわかるのですが、聞く側としては、個別の説明だと十分には全体像を理解しにくくなったりするので、そういった整理をしていただくといいかなと思いました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。分かりました。これは水産庁がリードということですけど、事務局と図りつつ、そのような方向で資料を取りまとめたいと思いますけれども、事務局、水産庁、何か今の御意見に対して回答、あるいは何かコメントがありましたら、お願いします。よろしいでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 ありがとうございます。水産庁のほか、関係県、農村振興局とそれぞれの関係機関で実施していると取組について、先ほども山西委員から御指摘いただいた一覧表と同じように、分かりやすい形でマップにまとめる方向で検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。
○鈴木委員長 よろしくお願いします。では、水産庁さん、よろしいですか。特にコメント等がありましたらお願いします。
○中村研究指導課課長補佐 事務局とも御相談しながら対応します。
○鈴木委員長 では、そのようにお願いします。古米先生、非常に貴重な御意見をありがとうございました。
 では、ほかに、どなたか御質問、御意見がありましたらお願いします。
時間が押していますので、議事を進めさせていただきます。続きまして、議題の2、赤潮に係る情報収集に移りたいと思います。資料3-1、有明海・八代海の夏の赤潮発生状況について説明をお願いします。できるだけ質問の時間を多く取りたいと思いますので、今後の発表者におかれましては、できるだけ割り当てられた時間10分を守って御説明をお願いしたいと思います。では、よろしくお願いします。
○松山専門委員 それでは、資料3-1の説明を、水産技術研究所の松山より説明いたします。
 私のほうからは、6月に開催しました有明海・八代海勉強会において、有明海・八代海の関係5県が水産庁の豊かな漁場環境推進事業を活用して取り組んでおります「夏の赤潮の被害軽減技術の開発」を中心に議論いたしました。
 水産庁の事業自体はオールジャパンの事業なのですが、有明海・八代海の部分に関しまして、夏の赤潮発生状況について、今回、資料の収集を行いましたので、関係機関を代表して説明いたします。
 次のスライドをお願いします。2023年までの有明海・八代海・橘湾における、左から赤潮の発生件数、真ん中が赤潮の構成種、右側が赤潮の被害件数の推移を示しております。依然、赤潮の件数や被害件数は高位で推移しておりまして、特に2023年はノリの被害が大きく、過去に例がないほど数字が大きくなっております。
 次のスライドをお願いします。このスライドは、有明海における有害赤潮の発生規模を示しております。ここからスライドの7までの図表は令和3年中間取りまとめで示された図表の更新になります。
 次のスライドをお願いします。これは2022年までのデータで更新したものでして、八代海の魚類養殖生産量の経年変化になります。
 次をお願いします。この4種、シャットネラとコクロディニウムなどの八代海における赤潮の発生日数、最大細胞密度になります。
 次のスライドをお願いします。後ほど申し上げますけども、2015年以降、カレニア・ミキモトイが八代海のほうで頻度高く発生するようになってきております。
 次のスライドをお願いします。従来、八代海では4種の有害種のうち3種が頻度高く赤潮を形成してきましたが、カレニアの赤潮が先ほど申し上げましたように、2015年以降に出るようになりました。特に、2022年と2023年に大規模な赤潮が発生しまして、甚大な漁業被害を与えているという状況です。
 次をお願いします。夏の赤潮の取りまとめにおきまして、令和3年中間取りまとめで、ここに示した課題が整理されております。この内容を中心に資料収集しました。
 次のスライドをお願いします。まず、有明海側の赤潮になります。
 次をお願いします。これは中間取りまとめで示された図ですけども、2009年~2017年までのシャットネラの赤潮、赤線になります。それと、珪藻類、これは有害種ではなくて対抗種になるのですが、緑の線で示しております。両者の競合関係があるということが述べられております。
 次のスライドをお願いします。この調査はその後も行われていまして、2018年~2023年までのデータを示しておりますが、やはり過年度と同様、両者の間に競合関係が継続しているということが認められております。これだけ10年間のデータが蓄積しておりますので、今後の赤潮対策は、こうした競合関係も踏まえた取組をしていく必要があると考えております。
 次をお願いします。次に、八代海の赤潮の発生状況について時間を多めに説明したいと思います。令和3年中間取りまとめが2018年度までのデータで整理されておりますが、その後、2021年、2022年、2023年と連続して赤潮被害が発生しております。
 次のスライドをお願いします。2021年は7月から8月前半にかけて湾の全域で100 cells/ml以上、魚類(ブリの場合)のへい死を引き起こす赤い、あるいは紫色のドットになりますが、全域で赤潮が発生しております。
 次のスライドをお願いします。シャットネラ赤潮発生時の気象、海象、水質の観測結果を示しております。データが多いので詳細は省略いたしますが、この年は降雨や鉛直混合によって栄養塩の濃度が上昇した後、赤潮を形成するというような流れになっておりました。
 次のスライドをお願いします。次は、翌年の2022年のカレニア・ミキモトイの赤潮、これが単独で猛威を振るいました。赤潮は、紫色のところが魚類のへい死を引き起こす濃度になるのですが、8月の上旬から中旬にかけて全域で着色が見られるということが発生しました。
 次をお願いします。このときの気象、海象、水質の観測結果も同様に整理をしております。時間がありませんので、詳細は省略いたしますが、珪藻類のブルームが弱勢となったすき間でカレニアが増殖して赤潮を形成するというような推移をたどっておりました。
 次のスライドをお願いします。2022年のカレニア赤潮の推移を見ますと、これは教科書のほうに書いてあるのですが、大分県の佐伯湾で見られた本種の赤潮発生パターンによく類似した経緯をたどっておりましたので、ここに紹介しておきます。
 次をお願いします。2023年の赤潮、これは非常に特異な経過をたどりました。まず、赤囲みをしておりますけども、6月頃からシャットネラが出始めて、7月に入りまして赤潮化いたしました。その直後になりますけども、7月の中旬から下旬にかけて、今度はカレニアの赤潮が発生して、シャットネラと種が入れ替わりました。それで、カレニアの赤潮がまた8月に入ると終息し始めたのですが、再びシャットネラが2回目の赤潮を起こすということで、夏場の2か月間、途切れなく有害種による赤潮が発生していたということになりました。
 次のスライドをお願いします。この年の赤潮発生時の気象、海象、水質も同様に観測結果を示しております。珪藻の不在中に河川や底層から供給される栄養塩をシャットネラやカレニアが継続して利用し続けたと推定しておりまして、気象、海象の下から2段目にDINの観測結果がありますが、ほとんどの栄養塩が常に使われて枯渇していた期間がずっと出ておりましたので、ほとんど鞭毛藻のほうに利用されていたという状態でした。
 次のスライドをお願いします。このスライドは時間がないので、割愛します。
 次をお願いします。2023年のカレニア赤潮については、2015年の既往文献が、Aokiら(2023)という論文が出ておりますが、こちらのパターンによく類似しておりましたので、ここに紹介しているところです。一言でいいますと、湾の西側から東へと赤潮が拡大するという様子が描かれておりました。
 次のスライドをお願いします。これもAokiら(2023年)の論文から潮流の計測データ等を示しているところですが、割愛いたします。
 次のスライドをお願いします。令和3年中間取りまとめにおきまして、赤潮の初期細胞の由来について精査が必要であるという課題が整理されています。2015年以降の赤潮について、ここに表で整理したところ、これは八代海における赤潮の初期細胞個体群の起源を示していますが、八代海で発生した赤潮のほとんどは八代海の内部で初期発生が見られております。有明海側から初期細胞が流入したのは2015年、2016年、2018年と、ちょうど中間取りまとめを整理しているときに限られていたようです。逆に、2022年と2023年は八代海で発生したカレニアの細胞が有明海側へ流出する様子も観察されております。
 次をお願いします。令和3年中間取りまとめでは、八代海の赤潮の発生シナリオを二つ例示しております。ただ、2021年以降の赤潮は、このシナリオのいずれにも該当しないようですので、再度整理を行いました。
 次をお願いします。平成28年委員会報告を取りまとめる過程で八代海のシャットネラ赤潮に強く影響する環境因子はこのように整理されておりました。
 次をお願いします。これらの知見に基づいて、平成28年委員会報告では、こうしたシナリオが一つ提示されているところです。
 次をお願いします。既存の文献に基づきまして八代海における鞭毛藻赤潮の発生フロー図を整理したものですが、6月の前半から7月前半までの1か月間、これは梅雨の時期に相当するのですが、この期間、赤潮発生に向けて、どれだけ発生の要因が継続するかによって各年度の赤潮発生規模が大きく左右されている可能性を示しております。
 次をお願いします。こうした情報を総合的に、かつ近年の観測結果も踏まえて過去の赤潮発生パターンをこれから示す四つのシナリオで整理いたしました。時間がありませんので、どの年度がどの発生パターンに相当していたのか、お手元の資料で御確認いただきたいと思います。1枚目のスライドが最も頻度の高い発生パターンということで、通常パターンというように示させていただいています。
 次をお願いします。これは中間取りまとめにありました出水型赤潮の図を再度整理したものになります。2010年、あるいは、もしかしたら今年の赤潮がこれに相当しそうな感じです。
 次をお願いします。これは令和3年中間取りまとめの鉛直混合パターン、2016年、2019年がこれに相当して、赤潮が、どちらかというと9月の晩期に発生するパターンになります。
 次をお願いします。これは2023年の複数発生型で、これは2023年に特有な現象でございました。
 次をお願いします。この図は逆に赤潮が発生しない年のパターンを示しております。夏場に珪藻類や無害鞭毛藻が優占し続けて、シャットネラ等の有害種が優占しないパターンになります。年によって有害種が伸びずに無害種が優占するときの環境要因のわずかな差異につきましては、未整理であり、今後の課題となります。
 次をお願いします。次に、赤潮の発生予察の知見になります。
 次をお願いします。これは平成28年委員会報告と令和3年中間取りまとめでも示した判別モデルによる赤潮発生予察になります。パラメータとしては、縦軸に2月から4月の八代海の春先の平均気温、横軸に入梅日、梅雨入り日からの経過日数を示しております。
 赤潮発生年は左の図の右斜め線が入っておりますけども、この斜め線より右上に集中しているということが読み取れます。先ほどの3か年の赤潮も全て右上にプロットされておりますし、2024年のところも、今年も実際に赤潮は出たのですが、右上のほうに出ているということで、この判別式に基づいて、かなり予測ができるということになっております。
 ただ、右側の判別式の傾きから、いつ頃、赤潮が発生するかという日数の予測もしておりますが、こちらは梅雨入り日より前に赤潮が発生する年もありまして、予想日が合わなくなってきているという状況です。
 次をお願いします。そうしたことから、判別分析の精度を上げられないかということで、予備的な検討を行った結果をここに示しておりますが、時間の制約がありますので説明は割愛をさせていただきたいと思います。
 ここは検討として温暖化の指標となるようなエルニーニョ関係の資料とかも集めて解析をして、次のスライドをお願いします。右上にあるような六つの項目が赤潮の発生との関連が高い項目ということで、全27年間分のデータを解析した結果が次のスライドになりまして、右下の表になりますが、六つ検討したモデルのうち、一番下のランダムフォレストというものが最も正答率と再現率が高かったというような結果を示しております。今後も、こうした解析を進めることによって赤潮の予察向上に努めていく必要があります。
 次をお願いします。次は、スライドの40から45までは八代海における赤潮観測体制の高度化に関する資料を提示しております。時間がございませんので、お手元の資料で御確認いただきたいと思います。
 次のスライドをお願いします。これはテレメータによる連続観測の結果でありまして、2022年のカレニア赤潮のときのデータですが、真ん中のところに緑色のクロロフィルが上下に日周鉛直変動しているのが分かるかと思うのですが、カレニアが上下に泳いでいるというのが観測できております。
 次をお願いします。特定の水深のクロロフィルであったり有害プランクトンの発生をモニタリングするためのテレメータを、このように八代海の各所、特に養殖漁場を中心に導入して、リアルタイムの監視が日々行われているという状況です。
 次をお願いします。場所とか位置とか水深のデータをここに一覧を示しております。
 次をお願いします。こうした観測結果は、赤潮ネットというインターネットのホームページ上でリアルタイムで作図を行って、(観測に協力いただいている)関係機関にデータを公表することを行っているという状況です。
 次をお願いします。カレニア赤潮が発生するときは、カレニアによく反応するFSIという指標がありまして、このFSIが1.95を超えると、クロロフィルの中にカレニアがかなり含まれているということが予測できる、こういったテレメータも入れております。
 最後のスライドなります。八代海側における国や県など構成機関による赤潮や水質の観測体制は、赤潮問題の顕在化もあって、かなり進んでおります。一方で、赤潮問題に関する最大のステークホルダーは養殖業者さんになります。赤潮がほぼ毎年のように発生して漁業被害を与え続けていますので、最近は養殖業者による漁場の自主監視活動も広がってきています。
 また、養殖業者さんたちの自主監視で得られたデータを赤潮ネットなどに登録いただくことで、観測結果を全ての関係者間でリアルタイム共有できるだけではなく、データベースの構築も同時に図れるシステムにも取り組んでいるところです。
 今後も関係者が協調して赤潮問題に取り組んでいくことが被害低減のための有効な取組であると評価できると考えております。以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。では、資料3-1について御意見、御質問等を承りたいと思います。よろしくお願いします。
○山西委員 山西から一ついいですか。
○鈴木委員長 お願いします。
○山西委員 今、八代海はとても赤潮で問題になっていて大変だなと思ったのですが、お話によると、発生自身の初期は、八代海自身でも移流というか、よそから入ってくるわけじゃなくて、そこで発生するのが多いということでしょうか。
○松山専門委員 多くの年でそういう事例が多いです。中間取りまとめのときに、ちょうど有明海側からの流入が何年か続いた年がありまして、その辺の整理が必要という課題整理になっておりましたが、長期的に見ると、やはり内部発生型が多いということです。
○山西委員 それは、例えば今、養殖がとてもダメージを受けている様子ですけど、そのものとの関連性というのは何かあるのでしょうか。
○松山専門委員 水質的にという観点でしょうか。
○山西委員 あるいは、底質へのインパクトであるとか。
○松山専門委員 中間取りまとめに限らず、八代海における流入負荷の中に魚類養殖由来の負荷量が、リンベースで見ると、かなり高いというのはありますが、細かく年度ごとの発生量を見てみますと、養殖漁場がない河口域で、まず最初に大きな赤潮が出て、それが移流して漁場のほうに侵入してくるというパターンが多いので、トータルで見ると自家汚染の問題というのはもちろん懸念されるのですが、実際の赤潮の大きなものが初期増殖するのは、どちらかというと、河口域の栄養塩が高いところというような事例が多いようです。
○山西委員 分かりました。
○鈴木委員長 ありがとうございます。それでは、ほかに御質問等がありましたらお願いします。では、オブザーバーの先生方からも何かありましたらお願いします。なければ、次に移りたいと思います。
 次の資料は、資料3-2、3-3について続けて御発表をお願いします。まず、資料の3-2について御説明をお願いいたします。
○桑原専門委員 長崎県総合水産試験場の桑原です。
 私のほうからは、資料3-2に示しています令和5年夏季に橘湾で発生したカレニア・ミキモトイによる赤潮について御紹介させていただきます。右側に九州及び本県南部の地図を示しています。橘湾ですが、早崎瀬戸で有明海と接しているという漁場です。
 次をお願いします。左側に、昨年度のNHK長崎放送の報道内容を載せています。橘湾で、県内過去最大で11億円の被害があったという状況です。右側に、令和4年度までの橘湾の状況を記載しています。橘湾は、比較的養殖が盛んに行われている地域で、若い養殖業者も多く、度々へい死被害を引き起こす赤潮は非常に重要な関心事となっています。橘湾では、平成21年及び平成22年にシャットネラ属による甚大な被害が発生しました。このときに、有明海側からのシャットネラ赤潮の流入があったということで、平成23年の有八特措法の改正時に橘湾が追加されたという流れであります。その後、いろいろと監視体制を強めたり、ガイドラインを策定するなどで、令和4年度までは大きな被害は発生していませんでした。
 次のスライドになります。令和5年度の状況です。7月14日に橘湾の東部でカレニアが初認され、その後、出現範囲が湾内に拡大して、7月31日には赤潮化したという状況でした。
 次をお願いします。8月1日以降、橘湾全域で高密度化し、8月4日には長崎半島東岸でも高密度のカレニアが出現され、その後、8月10日にカレニアはほぼ消失して終息したというような状況でした。
 次のスライドになります。発生原因の解析ですが、左の図に赤い矢印で示していますが、7月上旬に、有明海の湾口部から大潮でカレニアが橘湾に流入し、その後、湾奥で増殖し、湾全域へ拡散したと推測しております。
 右側の四つの図のうち、左の二つが赤潮を粒子とみなして、粒子追跡モデルを行った結果です。右の二つは実際の観測結果を示しています。7月14日に湾東部で初認され、7月18日には全域に拡大しました。粒子の追跡結果と実際の観測結果は、非常によく似た結果となっています。
 次をお願いします。8月1日ですが、本渡港沖で高密度のカレニア赤潮が確認され、このときに粒子追跡モデルを同様に実施しました。その結果が下ですが、8月2日の段階で高密度の赤潮粒子が橘湾中央部から南串山地先に到達、また、戸石地先に接近すると予想されました。
 次のスライドです。実際の8月2日の観測ですが、左の図のように橘湾中央部カレニア赤潮が確認されています。右の図に示していますが、橘湾の東部や戸石地先で非常に高密度となっております。湾全体へのカレニアの拡大だけなく、各地場で増殖したものと考えております。
 次のスライドです。8月4日、この段階で湾全域で高密度・広域化し、粒子移動予測と実際の赤潮着色域と非常によく一致していたという状況です。さらなる流入と地場での増殖が示唆されました。
 次のスライドです。その後の粒子追跡モデルでは、8月8日は長崎半島の東側に残存するが、徐々に湾外に流出していくと予想され、実際8月10日には、左の図に観測結果を示していますが、長崎半島東には、ほぼカレニアの出現がなく、終息に至りました、
 次のスライドです。この図は風の影響を見たものです。下に風速を書いていますが、8月5日頃までは左の図のような緩やかな南東風、戸石地先にカレニアが集積し、その後、8月9日頃までは右の図のような強い北東風が吹いたことで湾内から半島東側に沿って、湾外へ赤潮が移動していったと考えております。
 次のスライドです。終息の要因として三つ想定しています。一つ目が台風の吹き返しによる強い北東風で湾外に流出していったこと。二つ目及び三つ目は図に示していませんが、珪藻類など競合種の増殖と、水温が高くなるなどカレニアの好適環境から逸脱していったこと。この三つが終息の要因だと考えています。令和5年度の状況を踏まえまして、当初、ガイドラインとしてはシャットネラを重要種として考えていましたが、カレニア・ミキモトイを追加して令和6年3月にガイドラインを改訂しました。
 次のスライドです。今年度ですが、昨年度のことを踏まえて被害を起こさないように取り組んできたところですが、6月中旬という早い時期に、シャットネラが橘湾で警戒値を超え赤潮の被害が出ております。現段階でようやくシャットネラは減少した状態ですが、まだ8月になったばかりですし、引き続き赤潮に対する警戒が必要だと考えています。
 最後のスライドになります。本年度から、まず、沖合域での監視を強化しようと、調査体制の強化と、有害プランクトンセンサーや自動顕微鏡装置を導入して、海況予測などを組み合わせた迅速な赤潮の検出に取り組んでいるところです。考え方としましては、赤潮が拡大する前に早期発見して、粘土散布し、被害軽減につなげていきたいと考えています。以上です。
○鈴木委員長 ありがとうございました。では、続きまして資料3-3について説明をお願いします。
○外城専門委員 鹿児島県の水産技術開発センターです。防除技術による赤潮被害の軽減(活性粘土を用いた赤潮被害防止技術開発等)について、報告いたします。
 鹿児島県は、ブリ、カンパチなど養殖が非常に盛んですが、長年、赤潮被害に悩まされているところでございます。この図は、本県調べの平成15年から魚類養殖の生産の推移を示しております。県全体では約4万4,000tから約6万3,000t、八代海南部では約9,000tから約2万tの範囲で生産量が推移しております。八代海南部の生産量は本県生産量の約27%、3割を占めております。矢印で示した年は、八代海南部における赤潮被害の発生年を示しております。発生年及び翌年におきましては生産量が前年度より下回る場合が多くなっておりまして、本県の魚類の養殖生産に多大な影響を及ぼしているところでございます。
 次をお願いします。本県では赤潮被害防止対策として過去に国庫委託事業などにより各種試験を実施しておりまして、昭和57年に粘土散布による赤潮被害防止マニュアルを作成しております。粘土散布は赤潮被害発生時に有効な被害防止対策の一つとなっておりました。しかし従来の粘土散布はコクロディニウム赤潮に対しては効果が高いものの、シャットネラ赤潮へは効果が低いという欠点がありました。そこでシャットネラ赤潮に対しても有効な対策として、従来よりさらに赤潮防除効果を高めた改良粘土の開発を行っております。平成30年3月に活性粘土に焼きミョウバンを加えた改良型粘土を用いた赤潮被害防止マニュアルを完成させております。さらに、令和5年3月には、その内容を一部改正しております。本日はこのマニュアルの内容の一部を紹介いたします。
 次のページをお願いします。まずは赤潮防除の原理について簡単に説明します。
 赤潮防除に用いる粘土は活性粘土と呼ばれるもので、赤潮プランクトンへの殺藻効果を持つとされるアルミニウムイオンが多く含まれております。粘土散布を行うと、まず、海水中でアルミニウムイオンが溶出して赤潮プランクトンの細胞を破壊します。さらに、粘土の持つ凝集・沈降効果によって細胞を沈めてしまうことで防除効果を示すと考えられています。改良型の粘土では、焼きミョウバンを添加することによってアルミニウムイオンの溶出量が増加して、少ない散布量で高い効果を得ることができております。
 次のページをお願いします。活性粘土単体と改良型粘土の有効濃度の比較について示したものでございます。本県海域における主な有害プランクトンは、御覧のとおり6種でございます。これまでの試験におきましては、粘土単体で効果があるコクロディニウム・ポリクリコイデスを除きました5種類全てのプランクトンで、有害濃度は違いますが、防除効果が確認されております。シャットネラ・アンティーカにおいては活性粘土単体では3,000~8,000ppmで効果が見られますが、改良型粘土では活性粘土1,000ppmと焼きミョウバン100ppmの混合でも防除効果が確認されております。他の赤潮プランクトンにおいても従来の粘土単体よりも少ない量で防除できることが確認できておりまして、散布の労力やコストの削減が図られております。なお、令和5年3月の改訂内容としましては、シュードシャットネラ・ベルキュローサに対する改良粘土型の有効濃度を、焼きミョウバン150ppmから100ppmに改訂したところでございます。
 次のページをお願いします。安全性について確認した試験の結果でございます。クルマエビ、ヒオウギガイ、アコヤガイ、イワガキ、アサリ、マダイ、ブリについては室内試験を実施した結果です。マダイにつきましては、愛媛大学が平成27年度に実施したものになっております。ブリ以外につきましては、赤潮防除の有効濃度である活性粘土1,000ppmと焼きミョウバン100ppmの混合を散布してもへい死は見られず、粘土による影響は小さいものと考えられました。しかしながら、ブリにつきましては一部の室内試験区においてへい死が見られたため、安全性の評価について再検討が必要になりました。そこで、ブリと同じブリ類でありますカンパチについて、より実海域に近い条件で野外試験を実施しましたところ、活性粘土1,000ppmと焼きミョウバン100ppmの有効濃度においてへい死は見られず、安全性を確認することができております。ただし、水槽試験でへい死事例があるため、有効濃度以上に濃くまかないなど、散布濃度には注意が必要であると考えております。
 次のページをお願いします。具体的な改良粘土の防除効果試験の結果について示したものでございます。室内試験としましては、300mlの三角フラスコ等の容器に赤潮プランクトンの培養株を入れまして、その中に粘土を散布しまして、細胞密度やpHの変化を調べております。なお、計数の際はよく混合して形が残っている全ての細胞を計数しております。野外試験としましては、潮流の影響をできるだけ排除するため、1片1m高さ5mの四角注のシートを赤潮発生海域の海面に沈めまして、その中に粘土を散布して細胞密度やpHの変化を調べたところでございます。試験の結果は表の右側に記載してありますとおり、室内試験では概ね75%以上の細胞の減少率を示しております。なお、シュードシャットネラ・ベルキュローサにつきましては、細胞数が小さいことから別途粘土を海水に溶かしましたろ液で試験をしまして、活性粘土1,000ppmと焼きミョウバン100ppmの混合で90%以上の細胞減少率を確認しているところでございます。カレニア・ミキモトイにつきましては、野外試験で細胞密度が高いと細胞減少率が低くなるという結果が得られておりますので、特に発生初期の防除が有効であると考えられます。
 次のページをお願いします。次に、改良型粘土の水産生物に対する影響確認試験の結果になります。室内試験としましては、ろ過海水を張った70Lと50Lの水槽になりますが、それに試験生物を入れまして、止水状態で改良型粘土を散布して一定時間曝露させた後、注水を行いまして、24時間、マダイについては6時間になりますけれども、影響を観察した結果になります。野外試験としましては、1辺4mの生けすにブリ、カンパチを入れまして、直上から改良型粘土を散布して24時間影響を観察しております。試験の結果は表の右に記載のとおりですが、室内試験においてブリにつきましては、一定濃度以上でへい死が確認されましたが、野外試験ではへい死がなかったことから、実際に海域で散布する際には、水産生物への影響はほとんどないと考えております。ただし、濃度が高過ぎると何らかの影響があると考えられるために注意が必要であると思われます。
 次をお願いします。これは飼育環境の異なるブリに対する改良型粘土の安全性の確認試験の結果でございます。具体的には、餌止め期間の違いによる改良粘土の影響について試験を実施したものでございます。試験方法等は表に記載のとおりでございます。餌止め期間といいますのは、改良型粘土を曝露する前に3日間、9日間、餌止めを行ったもので、対照区として餌止めをしなかった区を設定しております。室内試験では、円形水槽等にブリを入れて止水状態で改良型粘土を散布して5分間曝露した後、注水して30日間、影響を観察しております。野外試験では、4m×4m、1.5mの高さの角形の生けすにブリを入れまして、直上から改良型粘土を散布しまして24時間影響を観察しております。試験結果は表の右側に記載しておりますが、室内試験におきまして、餌止め期間が短い試験区でへい死が確認されております。へい死したブリのえらを見ますと、粘液が絡まっておりまして、えらの閉塞による窒息がへい死の要因の一つと考えられております。また、野外の試験ではへい死は見られておりませんで、使用したブリのえらに大きな損傷は確認されませんでした。
 次をお願いします。活性粘土及び焼きミョウバンの海洋汚染防止法に基づく溶出試験結果についてです。それぞれの試験実施等が異なりますので、測定項目数も異なりますが、試験の結果、いずれの試料につきましても海洋汚染防止法に規定されている項目については基準値を下回っているという結果が出ております。
 次をお願いします。これまで説明しましたマニュアルを参考にしまして、赤潮が発生した場合に漁協と養殖業者さんが粘土散布を行っているところでございます。令和4年度、令和5年度の八代海南部における赤潮発生状況及び改良型粘土の散布実績になります。令和4年度は8月1日~8月20日までカレニア・ミキモトイが発生しまして、最高細胞密度が1ml当たり10万細胞でした。令和5年度は6月14日~9月13日までの長期にわたりましてシャットネラ・アンティーカ、それからコクロディニウム・ポリクリコイデス、カレニア・ミキモトイの3種が入り乱れて発生しまして、最高細胞密度は、それぞれ2,000、6,000、8万細胞という赤潮が発生しております。改良型粘土の散布は、令和4年度発生期間中11日間、被害防止のために5地区で実施されております。散布量は、粘土約83t、焼きミョウバン約10tとなっております。令和5年度は10日間実施されておりまして、8地区で散布されまして、粘土約54t、焼きミョウバン約7tが散布されております。なお、本年発生している赤潮についても、これまでに11日間ほど改良粘土の散布が実施されたと聞いているところでございます。
 次の資料をお願いします。これは、実際に散布しました改良型粘土の散布量から活性粘土単体で実施した場合の粘土量と費用を比較した資料になります。マニュアルに記載している赤潮防除のそれぞれの有効濃度から活性粘土単体で防除した場合とで比較すると、散布量で45%~56%の削減、それから作業経費等を除く費用では18%~39%削減されているということで、かなり実施者の負担軽減になっていると考えております。
 次のページをお願いします。八代海南部におけます過去の赤潮発生件数、被害状況になります。グラフは、折れ線が赤潮の発生件数、棒線が被害金額になります。平成21年・平成22年にシャットネラ赤潮により多大な被害をもたらしました後は、関係漁協におきまして赤潮の兆候が認められた場合に赤潮の監視体制の強化や餌止めの徹底、それから、最近は生けすの足し網による生けす網の沈降、それから、改良粘土の散布によりまして、赤潮被害の防止に努めているところで、最近では甚大な被害は発生していないところでございます。なお、今年度5月下旬からシャットネラ・アンティーカ赤潮が発生しまして、粘土散布をはじめまして各種被害防止軽減対策が実施されたところですが、現在まで1億円を超える被害が発生している状況になります。
 次をお願いします。最後になりますが、赤潮が発生したときの粘土散布の実施に、当センターが参加して状況の確認は行っておりませんが、効果について関係漁協から次の意見、課題があるということで聞いているところです。意見としましては、粘土散布後は海水がきれいになる。バケツに海水をくんでシャットネラがいることを確認して、改良型粘土を混ぜて細胞が小さくなっていくことを確認している。被害は出ているけど最小限にとどめられたことで、改良型粘土の散布効果があったと聞いております。課題としましては、生けすの近くで散布する場合に、船が航走しますので、魚に悪い影響があると思われるので注意が必要だ。それから、赤潮が広範囲になった場合には、やはり効果的に散布する方法がないということで、その辺の検証が必要であるというような意見がございます。改良粘土による赤潮防除については効果があるということで、被害防止対策として実施されているところですが、濃度が濃過ぎますと水産生物に悪影響を及ぼす影響もありますので、生けすの中は高濃度にならないように注意しながら運用されているところでございます。
 以上になります。
○鈴木委員長 ありがとうございました。
 では、ただいま説明がありました二つの内容、資料の3-2、3-3について御意見、御質問等を承りたいと思います。最初に、委員の先生方からございましたら、挙手して御発言ください。
○山西委員 山西から一ついいですか。
○鈴木委員長 はい、どうぞ。
○山西委員 鹿児島県さんのお話で活性粘土とありましたが、活性粘土ってどういうものですか。
○鈴木委員長 鹿児島県さん、お願いします。
○外城専門委員 活性粘土というのは、モンモリロナイトを主成分とした粘土でございます。珪酸アルミニウムを多く含んでいると聞いております。
○山西委員 そうですか。活性というのは、何か焼いて表面積など空隙をもっと上げているだとか、何か処置しているのですか。要は、くっつけて凝集性を高めて沈降させるとかということなのですか。
○外城専門委員 それにつきましては、過去のいろいろな文献を見ますと、人為的に酸処理しますとアルミニウムは凝集が起こるけど、それではない強酸性の温泉などが出るところで、火山の噴火等によって塩酸の熱水でそういうモンモリロナイトというのができるということが言われているようでございます。
○山西委員 粘土成分は分かりました。
○外城専門委員 それを活性粘土という言い方をしているようでございます。
○山西委員 分かりました。とにかく、うまくいっているということなので、いろいろなところで使うことになったときに、その物自身が何かが分かっておかないと怖いと思ったのでお聞きしました。ありがとうございます。
○鈴木委員長 ありがとうございます。では、ほかに御質問がありましたらお願いします。
 では、オブザーバーの先生方、何かございましたらお願いします。
 それでは、議題2の赤潮全体の説明を通して、御意見、御質問がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。では、オブザーバーの先生方、もしございましたらお願いします。
 では、時間も押していますので、次に移りたいと思います。
 次の議題は、その他ですが、事務局から何かございますでしょうか。
○川田海域環境管理室室長補佐 小委員会のスケジュールにつきまして御報告いたしたいことがございます。資料4を御覧ください。本年2月の第13回小委員会から情報収集ということで、各項目の御審議を行っていただいておりますが、その第13回小委員会で御説明しましたスケジュールについて変更がございましたので御報告いたします。資料の上側が水産小委員会、下側が海域小委員会のスケジュールとなっておりますが、次の第15回小委員会を合同小委員会での開催とすることといたしました。これに伴いまして、赤文字で記しました項目について御審議いただく時期を移動しております。変更は項目の移動のみとなっておりまして、項目を減らして等はございません。具体的には、水産小委員会のノリ養殖が、もともと第15回に予定しておりましたが、これを第16回に移動したり、海域小委員会の干潟生態系を第16回から第15回へ移動したりしております。ここで、第16回小委員会につきましては個別開催を考えておりますが、第16回海域小委員会のほうでは環境省の環境研究総合推進費での取組について御発表いただく予定となっております。
 こちらにつきましては、貧酸素の発生と気候変動との関係とか、また、トップダウンコントロールと生態系との関係など、水産小委員会の皆様にも深く関係のある内容となっておりまして、ぜひ御参加いただきたいと考えておりますので、時期が参りましたら、両小委員会の委員の先生方を対象として日程調整を図らせていただきたいと思っております。
 また、合同開催することといたしました次回の第15回小委員会につきましては、9月中旬から10月中旬にかけての皆様の御都合を伺っているところでございますので、また、こちらは日程が決まり次第、御連絡させていただきたいと思います。
 以上でございます。
○鈴木委員長 ありがとうございました。それでは、全体を通して委員の先生方から何か御質問等がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。それでは、本日予定されていました議事については全て終了しました。議事進行への御協力、どうもありがとうございました。
 では、進行を事務局にお返ししたいと思います。
○工藤海域環境管理室海域環境対策推進官 鈴木委員長、ありがとうございました。
 本日の議事録につきましては、委員の皆様に御確認いただいた後、環境省ホームページで公開させていただく予定でございます。それでは、以上をもちまして第14回水産資源再生方策検討作業小委員会を閉会とさせていただきます。本日はどうも長時間ありがとうございました。

午後4時51分 閉会