生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会(第10回)会議録

1.日時

平成27年9月16日(水)10:00~12:00

2.場所

中央合同庁舎4号館共用108会議室

3.出席者

小委員会委員長 青野英明委員長
委員

古賀秀昭委員、滝川清委員、速水祐一委員

専門委員 伊藤史郎委員、佐々木謙介委員、平山泉委員、藤井明彦委員、松山幸彦委員
事務局 水・大気環境局長、水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時 開会

○村澤閉鎖性海域対策室主査 それでは、10時、定刻になりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会 第10回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を開会いたします。

 最初に、本小委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。

 続きまして、次第では環境省挨拶となっておりますけれども、水・大気環境局長の髙橋は所用により到着が遅れる見込みとなっておりますので、会議の終わりに一言述べさせていただくことさせていただきます。

 続きまして、委員の紹介、会議資料の確認をさせていただきます。

 所属機関の人事異動に伴いまして、新たに3名の方に委員にご就任いただいておりますので、ご紹介させていただきます。

 まず、川村委員の異動に伴いご就任いただきました佐賀県有明水産振興センターの伊藤委員でございます。

○伊藤委員 伊藤でございます。よろしくお願いいたします。

○村澤閉鎖性海域対策室主査 続きまして、柳原委員のご異動に伴いご就任いただきました鹿児島県水産技術開発センターの佐々木委員です。

○佐々木委員 佐々木です。よろしくお願いします。

○村澤閉鎖性海域対策室主査 続きまして、鎌賀委員の異動に伴いご就任いただきました熊本県水産研究センターの平山委員です。

○平山委員 平山でございます。よろしくお願いいたします。

○村澤閉鎖性海域対策室主査 なお、福岡県水産海洋技術センター有明海研究所の大村委員もご異動なさったところですが、後任の岩渕委員は既に本評価委員として就任されておりますことから、新たな委員は選任せず、実質的に1名減の12名となりましたので、あわせてご報告をいたします。

 本日、委員の出席状況ですが、欠席の連絡を岩渕委員、本城委員よりいただいております。また、本日は評価委員会の岡田委員長にもご出席をいただいております。

 続きまして、配付資料を確認させていただきます。まず、本日の議事次第、次に座席表、次に資料1番から順番に並べておりますが、配付資料の一覧は議事次第の一番下にあるとおりでございます。ご注意いただきたいのは、資料3番につきましては、ハイフンを打ちまして、枝番を打ちまして、1、2、3、4、5、6とあります。ご確認をお願いいたします。

 そして、参考資料といたしまして、海域再生対策検討作業小委員会資料を配付しております。この参考資料につきましては、午後1時半からこの場所で開催予定の海域再生小委員会の資料でございます。委員のみの配付とさせていただいておりますので、ご承知願います。

 不足の資料等がございましたら、事務局までお申しつけください。よろしいでしょうか。

 そうしましたら、報道、取材の皆様、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、これ以降の進行は、青野委員長、よろしくお願いいたします。

○青野小委員会委員長 西海区水産研究所、青野でございます。

 議事を始めさせていただきます。

 本日の議題については、議事次第にありますように、1、「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告」について、それから2番目としまして、海域ごとの問題点とその原因・要因の考察について、3番目、ノリの色落ちについて、4、その他の4つの議題がございます。議事進行にご協力いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、議題の1番、「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告」として、委員会報告の全体的な構成につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。

○束原閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、議題1について説明させていただきます。

 資料2をご覧ください。「有明海・八代海等総合調査評価委員会報告」についてということで示しております。

 委員会報告につきましては、前回報告いたしましたように、28年を目途に、前回の委員会報告以降の調査結果を整理して、取りまとめることとしております。委員会報告の目次、イメージとして、前回の小委員会でもお示ししてきたところです。全体の構成については同じなんですが、このうち3章につきまして、新たに9番目の項目としまして、生物についても追加することを検討しておりますので、今回改めてお示しすることといたしました。

 この他若干、文言修正ございまして、4章の3番として、「問題点と原因・要因の整理」とあったんですが、ここを「考察」ということで、4章のタイトルと同じになってしまうんですが、内容を勘案して、文言を修正させていただきました。このほか3章のところ、「有明海・八代海等」という「等」と「環境等変化」の「等」についても修正という形で入れさせております。

 本日の議題にあるわけなんですが、現在、4章の内容を先行して検討を行っております。本日の小委員会では議題2で、生物小委におきましては、二枚貝の減少についての問題点とその原因・要因の考察についてご意見をいただくこととしております。3章については、二枚貝の主に生産量の推移などの事実関係を記述し、5章については、今後の問題点、対応等について記述するというように考えております。

 資料2については以上でございます。

○青野小委員会委員長 ありがとうございました。

 ただいま事務局から報告書の全体的な構成につきまして説明いただきましたけれども、何かご意見、ご質問があったら、お願いいたします。

 よろしいでしょうか。

 特段ないということですので、これに基づきまして取りまとめ作業を進めるようお願いいたします。

 では、議事の1番、終了ということで、議事の2に入らせていただきます。

 海域ごとの問題点とその原因・要因の考察についてであります。これまで当小委員会におきまして検討してきた二枚貝類等の有明海・八代海等における問題点とその原因・要因の考察につきまして、報告書への記載を念頭に海域別に整理したものがありますので、事務局からご説明をお願いいたします。

○束原閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、議題2について説明させていただきます。

 議題2につきましては、海域区分ごとに整理をすることとしておりますが、前回の小委員会と評価委員会では暫定的な区分として示しておりまして、本日午後の海域小委で承認を得られるよう進めてきたところでございます。本日の小委員会につきましては、生物小委のほうが先に開催となった関係で、議題2につきましては、仮の海域区分といたしまして議事を進めさせていただくこととなりますので、ご了承お願いいたします。

 議題2の資料説明の前に、海域区分の案の概要をご紹介したいと思います。参考資料として、本日午後開催の第10回海域小委の資料を付けておりますが、これの資料3をお開きください。海域区分などについて(案)とあります。

 1番、問題点とその原因・要因の考察の基本的な考え方とございまして、1番については基本的な考え方なんですが、これは海域区分の基本的な考え方ではなくて、4章全体のまとめ方について記載しております。

 海域区分につきましては、項目の2番目、3番目に書いておりまして、まず2番目の海域区分の意義ですけれども、ここに書いてありますように、海域区分をすることについては従来より説明しておりますので、このような書きぶりで今回整理をさせていただいております。

 3番目の海域区分の方法なんですが、この方法についての考え方は従来どおりですが、基本的には有明海と八代海について、水域環境と底質環境についてそれぞれクラスター解析を行い、それぞれグルーピングを行っています。これに加えまして、有明海については生物の生息状況から見た場合として、生物のうち水産資源として重要な二枚貝の代表といたしまして、タイラギ、サルボウ、アサリの生息状況、それに加えましてノリの養殖場等などを勘案してグルーピングをいたしました。

 これら3通りのグルーピングをした上で、案の一番下に①、②とございますけれども、グループをあまり細分化することは適当ではないとしました。次のページですが、再生に向けた評価をするため、水環境の特性を踏まえつつ、重要な生物の生息状況等を勘案すべきであることと。こういった点から水質のクラスター解析によるグルーピングを基礎基本とし、重要な二枚貝の生息状況を勘案して、一部線引きを修正いたしました。

 今回お示ししますのが、有明海につきましては、A1からA7までの7区分、八代海につきましては、従来どおりの変更なしで、Y1からY5ということで、この5つの海域区分に区分することといたしました。

 以上が新しい海域区分の案です。議題2につきましては、引き続きこの海域区分に沿って仮の区分として説明させていただきます。

 それでは、資料の本体、資料3-1にお戻りください。

 まず、A1海域、(有明海湾奥奥部)の問題点と原因・要因の考察。

 構成といたしまして、全て資料3-1から3-5まで、有用二枚貝の減少ということで整理を今回はしております。タイラギ、サルボウ、アサリについて、海域に該当する問題点のあるものについて記載をしております。構成として、①現状と問題点の特定、②番目として現状の要因考察という形で項目を立てております。

 それでは、1番目のタイラギでございます。

 ①現状と問題点の特定。A1海域は水深の浅い干潟域であり、冬季はノリ漁場として利用されているため、潜水器漁業によるタイラギの漁獲は認められません。A1海域の東部は砂質干潟で干潮時に広大な干潟が現れ、かつ、人が歩けるため、採貝業者による「徒取り」漁業が営まれております。ただし、長期的な統計データがほとんど収集されていないため、漁獲量や資源量を正確に知ることは困難となっております。

 ②番目、現状の要因考察です。データがないことから、変動要因について整理することは困難であるため、ここでは2014年に行われましたタイラギの資源調査結果を示すことといたしました。図にありますように、福岡県側のA区、B区で調査が行われております。この海域はかつて天然タイラギが比較的生息している海域として知られておりまして、現在においても「徒取り」漁業が営まれている唯一の海域となっております。

 図2のグラフですが、2014年の干潟調査の結果が示されております。「徒取り」では漁獲サイズが殻長15センチ以上というふうに定められておるため、それ以下の稚貝サイズの分布については不明ということになっております。6回の調査が行われまして、12月8日、赤い線の一番右側のところなんですが、これについてさらに分析をしたのが下の図3になっております。採捕されましたタイラギの殻長組成を示しております。195ミリのところと220ミリのところにモードが見られ、1~3歳貝の中心の組成であると推定されました。後でA3、A4海域のタイラギについても出てきますが、こちらについては1歳貝のみの分布でありますが、A1海域のタイラギは、資源量は少ないものの、大型の個体が多く生息していることが示されております。

 次にアサリでございます。

 アサリにつきまして、まずA1海域におけますアサリの主要生息域は東部のほうに限られております。ここでは主にA1海域の東部のアサリ資源について記載することといたしました。

 ①の現状と問題点の特定です。図4をご覧ください。アサリはA1海域で特に1983年には5万8,000トンもの漁獲が見られましたが、その後減少し、2006年から2008年にかけて資源が一時的に回復し、2006年には漁獲量が6,000トンに達しました。しかしながら、2009年以降、資源の凋落傾向が明瞭となり、現在では過去最低レベルの漁獲になっております。

 次のページですが、図5では西部のアサリの漁獲量の推移についてグラフを載せております。②の要因の考察です。漁獲圧につきましては、1980年代、正確なデータはありませんけれども、この年代には大きな漁獲圧が生じたことが推定されております。しかしながら、次のページの図6を見ていただきたいんですけれども、2003年以降、資源が回復基調になりまして、2006年にはかなり比較的高い生産状況に至っております。資源調査の推定した結果におきましても、2005年から2007年にかけましては、A1海域のアサリ資源が急速に回復していたことが示されております。理由については不明ですが、資源の動向が後で述べますA4海域と類似の傾向を示しております。

 次に、図7をご覧ください。これはA4海域を含みます有明海のアサリの生息環境指数(HSI)の状況なんですけれども、A1海域の干潟はA3海域よりも泥分の割合が高く、生息指数で見てもやや低い値を示しております。HSIの値、一番上のところに福岡県、一番下の佐賀県の鹿島が載っておりますけれども、0なり0.38ということでかなり低い値を示しております。

 6ページをご覧ください。食害についてですが、ナルトビエイが出現しておりまして、ナルトビエイによる食害が近年のアサリ資源の減少の一因と考えられております。ナルトビエイについては資料3-5でまとめてまた説明することとしております。また、有害赤潮に関する影響なんですけれども、これについてはシャットネラ赤潮の増大が直接アサリ資源に影響している可能性は低いということで、可能性は考えにくいというふうな考察をしております。

 以上が資料3-1です。

 次に、資料3-2をご覧ください。これはA2海域の問題点と原因・要因の考察でございます。

 まず1番目、タイラギです。

 ①現状と問題点の特定。同じように海域の特性も述べていますけれども、ちょっとかいつまんで以降、紹介させていただきます。この海域はタイラギの重要な生息域でありまして、特に隣のA3海域では1980年代後半以降、タイラギ資源がほぼ消滅したものの、ここのA2海域では2011年までは、潜水器漁業によるタイラギの採捕が行われてきました。ただ、2000年以降、立ち枯れへい死と呼ばれる原因不明の減耗(大量死)が問題となっております。2010年以降は、着底稚貝の減少により、4年連続の休漁に追い込まれているような状況でございます。

 ②の現在の要因考察についてです。ここでは、その立ち枯れへい死という2000年以降の問題がございまして、まずaとして2000年以降の減少要因、その次にb長期的な減少要因の2つに分けて整理・考察をしております。

 まず2000年以降の減少要因でございますが、タイラギ資源の減少要因として貧酸素水塊の発生、底質環境の悪化、ナルトビエイなどによる食害、着底稚貝の減少などが挙げられております。さらに、前回委員会報告書では、近年の減少要因として、立ち枯れへい死が主要因であると述べられております。ただし、この大量へい死のメカニズムは不明であると指摘されております。

 次のページをご覧ください。

 立ち枯れへい死の定義については、不明瞭であったため、この報告書の取りまとめといたしまして、次の2点を満たすものを立ち枯れへい死と定義をすることといたしました。次のイ、ロにあるところでございます。

 次に、図2なんですけれども、2011年に比較的大規模な大きな立ち枯れへい死現象が発生しておりまして、その大量死現象を示しております。図の赤い線が大量死、黒い点線がA2海域を示しております。2009年、黒い点のところは若干タイラギの成貝の分布が見られますが、ほとんど見られません。2010年に多くのタイラギ成貝の分布が見られております。ただし、翌年、2011年にはもうないということで、ここで大量死というのが示されております。

 次に、次のページの図3ですが、A2海域におけます貧酸素水塊の発生状況を示しております。溶存酸素の低下時期とタイラギの大量へい死、いわゆる立ち枯れへい死と呼ばれるものの発生時期と重ねたところ、2001年、2003年は貧酸素水の発生時期と大量死との期間が一致しております。しかしながら、現場観測では、貧酸素水の発生時期と大量死の時期がその他のほとんどの年では一致してないということと、かつ、その発生期間が短いということで、A2海域で貧酸素水塊がタイラギ資源変動に強く影響しているとは判断されなかったという考察をしております。

 さらに、底質環境の悪化についてですが、図4をご覧ください。グラフが5つありますが、ちょっと小さくて申し訳ございません。一番左上が浮泥堆積厚、その下が硫化物量、一番下が強熱減量、右側の一番上が泥分率、その下が中央粒径値ということになっております。横軸は3分間当たりのタイラギの採捕個数となっております。これによりますと、タイラギの分布と底質の関係には一定の関係が認められることを示しております。

 次に、bとして長期的な減少についてですが、次のページの図5をご覧ください。タイラギの生息量調査の結果を示しておりますけれども、A2海域におきましては、1996年、97年、2003年、2004年、2010年など、発生の分布が見られておりまして、生息域がA2海域の分布に偏る傾向が見られております。この海域では着底稚貝の資源が極めて少なく、局所的に発生した稚貝も立ち枯れへい死によって大量減耗し、成貝まで達成してないなど、資源の再生産が縮小していることがうかがえております。

 次に、その下の図、図6なんですが、タイラギの浮遊幼生、着底稚貝の分布域の比較が掲載されております。1981年、下の2つの図ですけれども、この調査では、浮遊幼生、稚貝ともに広範囲に分布していたのに対し、上の2003年の調査では、左側の浮遊幼生は広範囲に見られますが、着底稚貝はA2海域に偏って分布していたということが示されております。図の下のほうにありますように、この図は平成18年の委員会報告書にも掲載されております。

 A2海域におけます底質の長期的なデータにつきましては、もともと砂泥質の海域であるということが言われておりまして、タイラギの覆砂実証実験から、タイラギ着底稚貝の減少要因として、浮泥と呼ばれるシルトの堆積が影響しているとの報告が見られております。浮泥の堆積量とタイラギの生息率との間には一定の関係が認められまして、浮泥の存在がタイラギの摂餌活性や成長に悪影響を及ぼす等の結果もございます。ただし、2001年から2013年におきまして、底質の泥化、これは底質の細粒化のことを言っておりますが、これについては一定の方向、つまり単調な増加、単調な減少傾向が見られてないことに留意する必要がございます。

 また、タイラギを食害する生物として、ナルトビエイをはじめ、イシガニやガザミ等、イイダコなどがございますけれども、移植試験の結果によると、ナルトビエイによる食害は無視できないものとされております。ナルトビエイにつきましては、引き続き無視できないタイラギ資源の減少要因の一つと考えられております。

 この他漁獲努力量の問題とかございますが、これについては適切な資源管理策がとられているということ、ウイルスと化学物質については、前回の報告書以来、新たなデータの提示がないということでまとめております。

 A2海域につきましては以上のとおりです。

 次に、資料3-3、A3海域についての原因・要因の考察です。

 まずタイラギですが、①現状と問題点の特定。図1をご覧ください。これは先ほどA2海域でも示した図です。黒い点がA3海域を示しております。この図でいいますと、2009年に高い資源量、漁獲ということが書いてございますが、2008年に幼生が発生して着底、それが2009年に成貝になって、漁獲サイズになりまして、高い資源量となって漁獲。翌年、2010年にはもうほぼ資源の成貝の分布が見られなくなって、大量死というのを示しております。

 次に、②現状の要因考察です。ここについても2010年以降の減少要因と1970年代から2000年代にかけての長期的な減少要因の2つに分けて、整理・考察を行っております。

 まず、(a)として2010年以降の減少ですが、減少要因としましては、貧酸素水塊によるへい死、ナルトビエイ等による食害などが挙げられております。A3海域におきましては、貧酸素に着目した調査が始まった2001年以降、毎年、貧酸素水塊の発生が確認されております。

 次のページの図2をご覧ください。夏季の成層の発達と、大きな酸素消費によって貧酸素水塊が形成されているということでございます。

 引き続き、図3をご覧ください。これも先ほど見ていただきましたA2の海域でもお示しした図なんですが、この図でもわかりますように、A3海域ですから、左側のほうの西側のほうの黒い点の海域ですけれども、一番下の2009年のところに分布がありますが、それ以外はほとんど分布が見られないという状況になっています。これにつきましては、2008年、その前の年の夏から秋にかけてまとまった量の稚貝着底があって、この年の漁期にかけて豊漁になったということでございます。

 次のページ、図4をご覧ください。2009年夏の貧酸素の推移が載っておりますけれども、2008年がありまして、さらに2009年、ここが大分低くなっておりまして、貧酸素化が比較的軽微であった。これが稚貝から成貝に成長する期間におけるへい死の抑制につながったと考えられています。翌年、2010年の夏には、やはり貧酸素水塊の発生に伴って成貝の大量へい死が発生しております。その結果、この年の漁獲減少につながりました。

 次のページの図5をご覧ください。A3海域のうち、沖神瀬沖付近の貧酸素水塊の発生の2010年の経緯を載せております。7月6日から8月10日の間に貧酸素水が2回発生しておりますけれども、この間に100%死滅したということでございます。このことから、この海域では貧酸素水塊がタイラギ資源変動に影響を与えていることが推定されました。

 次に、ナルトビエイですけれども、これについても、2014年に移植されたタイラギでも食害現象が観察されているということから、引き続きタイラギ資源の減少要因の一つと考えられております。

 また、浮遊幼生の供給減少についてですが、これについては、この海域でのモニタリングデータはございませんが、隣接するA2海域、A6海域でのタイラギ浮遊幼生の量がかなり低位で推移しているということで、これら海域と接しているA3海域でも同様であろうと推定されました。

 次に、(b)でございますが、1970年代から2000年代にかけての長期的な減少についてです。

 タイラギ生息量につきましては、年変動はありますが、1990年代まではA2海域と同程度、またはそれ以上の分布が見られております。

 生産量につきましては、説明をするのが遅くなりましたが、資料3-6にタイラギ、サルボウ、アサリの有明海の全体の漁獲量の推移のグラフを載せておりますので、これもあわせて参照をしていただければと思います。これを見ますと、タイラギ、1990年代前半まではある程度分布が見られておりますが、90年代後半以降は、2009年を除きまして、まとまった量の成貝というのは見られなくなっております。

 図6をご覧ください。これも18年報告のデータになっておりますけれども、先ほど説明したものと一緒なんですが、1981年の状況を見ますと、かなり広範囲に浮遊幼生、着底幼生が分布しています。2003年も浮遊幼生の分布は比較的同程度に広範囲に見られておりますけれども、2003年、着底稚貝のほうはかなり偏っているということでございます。したがいまして、着底後の死亡率の上昇が起きたと考えられております。

 下の図7をご覧ください。グラフが2つございますけれども、1981年3月のころは山が2つ、3つとございまして、タイラギ成貝が1世代、2世代、3世代と、3世代程度で構成されておりましたが、1999年には1歳貝のみになっています。こういった点から、1990年代後半にはタイラギ資源の生産が縮小、不安定化してきたということがうかがえるということでございます。

 着底後の死亡についてですが、浮泥が影響しているとの報告が見られます。砂のない泥の基質ではへい死が確認されております。次のページ、図8と図9をご覧ください。タイラギの覆砂実証試験から、浮泥の堆積が見られないA2海域の覆砂区でタイラギ稚貝は生存するが、浮泥が多いA3海域の覆砂区域ではタイラギ稚貝の生息率が低下して、ほとんど見られないという結果が得られております。ただし、A3海域につきましては、その大半が中央粒径値というのを調べてみますと、7を超える軟泥域ということで、底質の泥化、要するに底質のさらなる細粒化につきましては、1975年から現在にかけて一方向の変化、いわゆる単調増加なり単調減少傾向は見られていないということにも注意する必要があります。

 次に、6ページの下ですが、貧酸素化の長期的進行、これについて記載しております。次のページ、7ページの図10をご覧ください。A3海域では、1970年代から80年代にかけて貧酸素化の進行が確認されております。2つの線とも平行して右下がりとなっております。底層のCODの増加、これは数字が右側のほうは逆にプロットされておりますが、これと同期しているという形になっております。

 次に、図11をご覧ください。A3海域のタイラギ生息におけます溶存酸素とタイラギ大量死との関係を示しております。2008年にまとまった着底稚貝が観察されまして、2009年の漁獲につながっております。唯一発生されたのがここだけなんですが、この高密度に出現した個体群につきましても、2010年の、貧酸素水の発生によって全滅する被害が発生しております。長期的な貧酸素化傾向がこの海域におけるタイラギ資源の減少要因に大きな影響を与える可能性が想定されております。

 次に、その他の減耗要因といたしまして、漁獲圧、ウイルス、化学物質等について考察されておりますが、漁獲圧につきましては、潜水器漁業として適切な資源管理策がとられているということでございます。

 次に、8ページ、サルボウについてでございます。これも先ほどの資料3-6のグラフ等も参照しながらご覧ください。

 ①現状と問題点の特定。A3海域はサルボウ資源の生息域として非常に重要な漁場でございます。1970年代当初に1万4,000トンの漁獲がありましたが、その後、原因不明のへい死が発生し、漁獲量が激減しております。その後、沿岸部で採捕した稚貝を沖合へ移植・放流するなど、漁場拡大の策もありまして、佐賀県での生産量は1万トン台に回復しました。しかしながら、近年の生産量は減少傾向にあるという状況でございます。

 2番として、要因の考察。A3海域におけますサルボウ資源の変動要因として、貧酸素水塊、ナルトビエイの食害などが考えられております。

 図12をご覧ください。2001年以降、夏季に貧酸素水塊が発生しサルボウのへい死が生じております。

 次に、図13をご覧ください。サルボウは無酸素水で9日間も生存するという知見がございます。有明海では無酸素状態というのはほとんど発生しないか、小潮のときに数日しか継続しないということから、低酸素に伴った底質中の硫化水素の増加がへい死を引き起こしているのではないかと考えられております。グラフですが、貧酸素化に加えて、硫化水素の発生がサルボウの生残をより低下させることが確認されております。

 10ページ、最後のところですが、このほか、サルボウ資源に対してもナルトビエイによる食害が資源減少の要因になっていると考えられております。ナルトビエイについてはまた3-5で説明いたします。

 以上が3-3、A3海域についてです。

 次に、資料3-4をご覧ください。A4海域の問題点と原因・要因の考察でございます。

 この海域についてはアサリについて示しております。

 ①現状と問題点の特定。図1をご覧ください。アサリはA4海域、熊本県沿岸で、1977年に6万5,000トンの漁獲を記録しましたが、その後減少し、現在では過去最低レベルの漁獲量にとどまっております。

 ②要因の考察です。アサリ資源の減少に関する要因としましては、過剰な漁獲圧や底質環境の変化、ナルトビエイによる食害、有害赤潮、底質中のマンガンの影響が挙げられております。このうち漁獲圧に関しましては、2000年以降は資源管理が実施され、2003年以降は回復基調になり、その結果、2005年には比較的高い生産状況に至りました。しかしながら、2009年以降、漁獲の低迷については、これから述べるように、浮遊幼生の加入が少ない、または着底した稚貝が成貝まで残らないという現象が指摘されております。

 次のページでございますが、底質環境の変化につきましては、覆砂を施すことにより稚貝の育成が認められ、生産が回復するということから、底質環境にアサリの生息を阻害する要因の存在が推察されております。また、底質の細粒化が例えば緑川の漁場におけますアサリ資源の減少につながった可能性というものが推定されておりますが、細粒化につきましては、その後、年変動の範囲にとどまっていることなどが認められております。近年のアサリ漁場の底質評価については、A4海域はほぼアサリの生息に適した底質環境が達成されているのではないかというふうに見られております。図2にアサリの生息環境指数、HSIというのを、先ほどと同じものを載せておりますが、熊本地先のところ、表のほうでは熊本県と書いてありますが、ほぼ1に近い数字を達成されております。

 また、アサリの稚貝の着底には、底質の基盤の安定性や波浪や潮流で本来の生息場から流出してしまうということが指摘されております。

 このほか食害につきましては、ナルトビエイについてですが、近年のアサリ資源の減少の一因とも考えられております。

 また、有害赤潮に関する影響についてですが、これも先ほどと、他の海域のアサリとも一緒ですけれども、アサリのろ水活動を顕著に阻害するものの、シャットネラ赤潮の増大が直接アサリ資源に影響している可能性は考えにくいとしております。

 次に、資料3-5、有明海全体を通した問題点と原因・要因の考察として、エイ類による食害について掲載しております。

 ナルトビエイやアカエイなど、一部のエイ類は近年、生息数が増加したというふうに言われておりまして、ナルトビエイにつきましては、タイラギやアサリ、サルボウなどの貝類のみを摂食するという知見が得られております。このため、エイ類による捕食圧は資源変動に無視できない影響を与えると推察されております。

 ナルトビエイの行動ですが、図1にありますように、春先から外海側から回遊して摂餌行動を示し、水温が低下する秋から再び越冬のために外海に逸散していくことを示しております。

 次のページ以降、胃内容物の精査結果等を掲載しておりますけれども、少なくとも二枚貝に対する捕食圧は多いときには約年間3,000トンを超えると推定されていること、また、ナルトビエイの胃内容物からはタイラギ、サルボウ、アサリなどが確認されておりまして、二枚貝資源の減少の一因ということで考えられております。

 図2、図3、図4ということで、ナルトビエイの食害の推定量、1操業当たりの捕獲数(CPUE)の経年変化、胃内容物の各貝類の重量割合ということで掲載しております。

 以上で資料3、議題2についての説明を終わります。

○青野小委員会委員長 どうもありがとうございました。

 ただいまの報告につきましてご議論をいただこうと思いますが、海域に分かれておりますので、まずは各資料ごとに質疑、ご意見いただこうかと思います。

 では、初めに3-1に示されておりますA1海域につきまして、質問、ご意見あったらお願いいたします。

 滝川委員、お願いします。

○滝川委員 その前に、今日の議事次第ですが、2番目のところに「海域ごとの問題点とその原因・要因の考察について」と書いてありますが、今ここで議論されているのは二枚貝の問題ですよね。二枚貝の減少。議題そのものがこれでいいのかなとちょっと一瞬思ったということです。全体の議論、海域ごとの問題点を議論しているんじゃないので、ここはきちっと議題のほうを書いていただけたらなというのがまず最初です。

○根木閉鎖性海域対策室長 ご指摘のとおりでありまして、本日は有用二枚貝のところを中心にご議論いただきたいという趣旨であります。午後の海域再生の小委員会のほうでは、同じような表題で、例えばベントスについてご議論いただこうと思っておりますし、本日、後半にノリのことについて少しご説明いたしますが、こんなあたりも次回以降、どういうふうに取り扱っていくかということをご検討いただければと思っております。

○滝川委員 後から議事録を見るときに、こんなことを議論されたのかということで、タイトルだけ見て、内容を見るとずれて出てくるので、ちょっとこちらをお願いしたいと思う。

 今、もとに戻りますが、A1海域というところでいろんな現状と問題点、さらには現状の要因考察とかいうのが書いてございますが、他の場所についてもそうなんですが、現状の要因を考察する、どういう視点で考察するというところを他に書いていただけると非常にわかりやすいかなという気がいたします。と申し上げるのが、海域ごとに、ここは貧酸素を考えますよ、ここは浮泥を考えますよみたいな、先にここはこういうことが問題だからというところから入っているわけですね。それではなくて、要因・原因を分析するんだったら、基本的に物差しは決まっていると思う。決まっているっておかしいんですが、物理的な環境、水質、底質、あるいはそれに対する食害とか外的要因とかいうものがあるわけですね。じゃあ、A1海域のところは、ここは貧酸素がこれだけ効いていますよ。じゃあ、それ以外のところは、例えばA3とかなんかは貧酸素があまり出てない。出てないということを他の海域のところでも書いておかないとまずい。まずいと言ったら変ですけれども、全体としての見方がよく見えないという気がいたしておりまして、統一した目で見るために、どこかに要因・原因を考えるときの基本的な考え方というんですかね、そこを書いていただけると、後から読むときには見やすいのかなというふうに思いましたので、そういう意見です。

 それと、特にA1に関しては底質環境がとかいうようなことを書いていますが、ここのところを僕らは底質を分析しようと思うと、かなり覆砂されているんですよね。だから、その底質と言ったときに、もともとのそこの海域の特性の底質、海域として出てきているのか、人為的なものが加わっての底質環境なのかというものも、ちょっと区別が、ここはデータがないからということだけ書いてあるけれども、それが自然環境としての底質の特性なのか、そういう人為的なものが加わってみたいなことがあるんだったら、そういったことも是非書いていただけたらなというふうに思いました。

 他にもあるんですが、ちょっとまた後で申し上げます。

○青野小委員会委員長 事務局のほうでご意見がありますでしょうか。

○根木閉鎖性海域対策室長 まず、最初のご指摘の点については、例えば今日の午後、ご議論いただくもので、参考資料のほうの資料3の中で、「海域区分などについて」の後に海域特性というような資料も付けさせていただいておりまして、実際に報告書をまとめていくときには、この海域特性というものも付けた上で、その海域ごとの問題点と原因・要因の考察に入っていくというような構成ではいかがかなと考えておりますが、なるべく読んだ人がわかりやすいような構成にするように留意して進めたいと思います。

 あと、2番目の底質の環境のところで、自然的なものと覆砂などによるものというところを、そのあたりも読んだ人がわかるような表現もしくは書きぶりに、ご指摘を踏まえて進めたいと思います。

○滝川委員 要因・原因を考えていくときには、非常に重要な要素だろうと思うんですよね。浮泥がたまりやすいという言葉だけで済まされるのか。そこに砂を持ってきて、どういう環境になっているから。要因・原因に関わってくるので、そこの物理的な特性というのをできるだけこれと、これはあくまでも二枚貝についての症状と言ったらおかしいけれども、増減についての記述が中心になっているんだけれども、それを議論するときには、その他の要因がこうなっているということと一緒にあわせて考えてほしいということです。できるだけ、ですから、生物小委と海域再生小委との意見交換というんですかね、そういう議論の中で詰めていかなきゃいけないのかなということを思いました。

○青野小委員会委員長 ありがとうございました。記述につきましてはまた検討していきたいと思います。よろしくお願いします。

 ほかにご意見─古賀委員、お願いします。

○古賀委員 関連すると思いますけれども、今日、示されたこの資料については、資料2の委員会報告目次には4章の3、問題点と原因・要因の考察(海域区分ごと)とありますけれども、基本的にはこういう感じでまとめられていかれるのか。あと、今回は海域区分A5から7は示されていませんでしたけれども、その部分についてもこういう形で整理をされていかれるのか。最後に1点、今日、この資料を初めて見ましたけれども、今日、議論した結果がそのまま残るということなのかどうか、ちょっとその辺を教えていただけたらと思います。

○根木閉鎖性海域対策室長 説明が不足しておりまして、失礼いたしました。まずは今日の資料のこの資料3-1からの辺りは、資料2の目次のイメージの中で、ご指摘の4章の3の辺りを意識して作成しているものであります。これは案と言えるような段階ではないとも思っておりますが、そのあたりを少し意識して作成しておりますので、そういった観点でコメントをいただければ幸いでございます。

 そして、本日はA1からA4ということで説明をいたしましたが、A5、6、7とか、もしくは八代海についても順次同じようなスタイルでご検討いただければと考えております。また、本日、このA1からA4についてご意見などをいただきまして、それも踏まえて、また次回に、例えば11月ごろが次回かなと思っておりますが、次回にもまたご検討いただくというようなことで、今日この場で何か固めたいということではございませんので、このようなことでご意見いただければ幸いでございます。

○青野小委員会委員長 古賀委員、よろしいでしょうか。

 それでは、ほかどなたかいかがでしょうか。

 岡田先生。

○岡田委員長 全ての海域にある程度共通していると思うんですが、たくさんの情報を非常によく整理していただいて、何となく現状と問題はわかるような気もするんですが、ではA1については具体的に何が問題かというか、結論が、無理なものは無理と書くのも一つの方法かもしれませんが、どういうふうに結論づけるのか。科学論文的なイメージがあって、じゃあどうなんだというところがまだなかなか見えないと。いや、見えないのかもしれません。だったらそれはどういうふうにするのか、ちょっと考えていただいて。

 それから、A1でナルトビエイの話が資源減少の一因であると考えられると。これは結論としていいのか。後ろのほうのナルトビエイのデータを見ると、多いときで2割くらい、それから少ないときは1割とかそのくらいですね、ナルトビエイの食害の影響が。これを長期間にわたる凋落というか、減ってきたことの原因とするには若干無理があるかもしれないですね。ナルトビエイのことだけがいっぱい書いてあると、いかにもナルトビエイのせいみたいにとるけれども、じゃあナルトビエイにとって迷惑な話で、全然違うことになりかねないので、その辺の記述の仕方をどうしていくのかというところは、是非気を付けていただくというか、お考えいただければというふうに思います。

○青野小委員会委員長 事務局、何か意見ございますでしょうか。

○根木閉鎖性海域対策室長 ご指摘ありがとうございます。まず、結論といいますか、各海域ごとの問題点とその原因・要因の明確化というところをなるべく図っていきたいという思いがありますので、今日の資料にいろいろご意見もいただきたいと思いますし、また何かその明確化を裏づけるようなデータがあれば、随時ご提供もいただきたいと思っております。ブラッシュアップをできればという思いでおります。

○青野小委員会委員長 ありがとうございました。

 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員 A1海域と限らないわけなのですけれども、九州地区、台風の常襲地といっても、必ずしも近くに来る年ばかりということではありません。また、今年のような大きな台風も多分、今回のルートからしますと、A7海域はかなり強い影響があったと思うんですけれども、A1海域はあまりないのかなと。そうすると、一部の減少要因の中に底質のCOD云々という話があるのですけれども、大きなしけとか台風だと、かなりそれは改善されるとか、記載されている要因のもう一つの前の段階のというか、その原因という面で、そういう気象関係も何か少し考えていただけたらなと。そうすると、台風が来て底質が改善されて、次の年に資源が増えるとか、何か見えてくればいいかなと。これは要望でで、もしできましたらということですので、よろしくお願いします。

○青野小委員会委員長 ご意見ありがとうございました。では、そういった点も踏まえて検討していければと思いますが、いかがですか。

○根木閉鎖性海域対策室長 ご指摘ありがとうございます。検討できればと思います。

○滝川委員 すみません。A1の海域のところの5ページのところに図7でHSI、書いてございます。これの出典、どこにも書いてないし、この数値が一体何なのというのはかなり意味がいろいろあるんですけれども、その根拠となる資料が今回くっついてないし、最終報告書の中には必ず書いていただかなきゃいけないと思うんですが、是非出典を調べていただいて、HSIをつくるときには、その中身がかなり効いてきますので、わかるような資料を持ってこられないと、これは使えないと言ったら変ですけれども、確認していただきたいというのが一つある。

 それと、それに絡めて、次の資料3-2というところのA2海域のところの3ページです。これは物すごく気になるのでご質問しますが、図3の下のところに、「底質環境の悪化については、A2海域の底質とタイラギの分布の間には一定の関係が認められる(図4)。」と書いてありますね。この文章はどう読むのかなと思ったんですが、A2海域の底質とタイラギ分布の間に一定の関係があるんですか、それとも底質とタイラギ分布の間に一定の関係があるんですか。その一定という意味もよくわからないので、どういう一定なのか明確にしていただきたい。

 これは多分、HSIモデルの基本になっているデータのはずですが、下のほうの細かい図表が、それを一定の関係という言葉で片づけてほしくないなという気がしておりまして、そういった意味でHSIモデル、どうなっているのということをご質問を申し上げようと思ったんですが、ちょっとそこら辺も含めて。A2海域の底質が一つのくくりか、底質とタイラギの分布の間が一定なのか、そこも含めて。他の海域にもこれは適用されているので。A4か何かのところにもHSI─A5だったっけ─書いてありましたが、そこにも適用されているので、多分これは底質とタイラギの間には何か関係が認められて、こういう、こうこうということなんだろうなと思って、ちょっとそこもご確認をお願いしたい。

○青野小委員会委員長 事務局。

○根木閉鎖性海域対策室長 まず、出典が書けてない部分、ご指摘の部分がありました。そこは出典を書くように徹底したいというふうに思います。ちなみに、このHSIのデータは第7回の小委員会でも少しご紹介をさせていただいている水産庁のデータということでありますが、出典のほうをきちっとまず書くということをご指摘のとおりやりたいと思います。

 あとは、この資料3-2の3ページの説明の一文について、その下の図のことを端的に表したかったということでありますが、ご指摘を踏まえて、表現ぶりなどを検討したいと思います。

○青野小委員会委員長 岡田委員長、お願いします。

○岡田委員長 やはりその一定の関係というのは具体的にどういうことかやらないと、この一定の関係があるという図4をベースにして、5ページのある種の結論が出ていますよね。ですから、一定の関係なんていうレベルでなくて、すごく重要だと思います。ここでまた「浮泥の堆積は」という主語が書いてあって、「影響がある」と書いてある。浮泥の堆積が、この論文で出ているような浮泥の堆積量と一致しているかどうか、要するに有意な範囲で変化しているかどうかというのをきちんと検証しないと、最後の結論に影響しますのでね。この結論を出した根拠は何だって言われたら、一定の関係ですと言われたら、やっぱりちょっと問題が、科学的に問題があるので、そこのところはどのくらい現実に使えるかどうか。論文は論文で正しいんですが、我々の結論がこの論文から現場を踏まえて本当に導き出せるかどうかというのを、検証を是非しといていただければと思います。そうしないと、結論がわかんなくなるので。

○青野小委員会委員長 文章も含めてこれから詳細にちょっと検討をしていただければと思います。

 A2のほうに入りましたので、資料3-2のA2海域につきまして、ご質問をまず受けたいと思います。いかがでしょうか。

 速水委員、お願いします。

○速水委員 資料3の1ページの最初の段落の最後に、「2010年以降は着底稚貝の減少により、資源量の減少が生じ」というふうな記述がありますけれども、これをサポートするようなデータがあれば、図の形でもって出していただけたらと思います。

○青野小委員会委員長 事務局のほう、いかがでしょうか。

○根木閉鎖性海域対策室長 そういう意味では、資料3-6というのが、先ほど少し紹介させていただきましたが、3-6の例えば2ページでございますけれども、有明海のタイラギの漁獲量の推移というものはこちらのほうに掲載をしております。資料3-6というのが、少しエリアごとに分けることが難しかったデータだけれども、まさに今日の議論に関係しているものでないかなというものを掲載しているということで、このタイラギの漁獲量、どの県で水揚げしたかというようなことはこういったデータはあるんですが、この中でどこがA2のデータかということが必ずしもはっきりしないのかなということで、全体の資料のほうに掲載をしているということであります。何かいいアイデアなど、またはいいデータなどありましたら、ご提供いただけると非常にありがたいと思っております。

○速水委員 着底稚貝の量の変動のデータがあると思いますので、また使えるようであれば、よろしくお願いいたします。

○青野小委員会委員長 よろしくお願いします。

 その他いかがでしょうか。

 でしたら、資料3-3、A3海域につきまして、ご意見、ご質問があったらお願いします。

 古賀委員、お願いします。

○古賀委員 3-3も含めてですけれども、文章とか図とか見ていますと、ちょっとどうかなというような箇所も結構ありますので、各委員さんから事務局のほうに後で意見を提出してもらったほうがいいのかなと思います。ここで議論しても、なかなか前に進まないような感じがしますので。

○青野小委員会委員長 事務局、いかがですか。

○根木閉鎖性海域対策室長 もちろん、追って意見をいただくということも是非お願いできればと思います。

○青野小委員会委員長 ほかいかがでしょうか。

 それでは、後ほどあればお伺いいたしますが、資料3-4のA4海域につきまして、ご意見、ご質問あればお願いします。

 速水委員、お願いします。

○速水委員 アサリに関して、ここでは減耗要因に対する議論を中心に書かれているんですけれども、アサリの成長に関わる要因ですね、例えば餌の量の長期変動がどうであるかとか、そういったところの議論はここには載せないんでしょうか。

○青野小委員会委員長 事務局、お願いします。

○根木閉鎖性海域対策室長 そういう意味では、先ほど少し申し上げたとおり、ここに書いてないことはもう載せるつもりはありませんということではございません。ここに書いてある以外のことであっても、今ご指摘いただいたようなところについて、例えば長期変動のデータがあって、要因・原因の一つとしてその可能性があるんじゃないかと思われる、データがしっかりそろっているようなものがありましたら、是非ご提供いただいて、また次回以降、この場でもご検討いただくというような進め方でどうかなと思っております。

○青野小委員会委員長 速水委員、よろしいでしょうか。

 では、その他ございますでしょうか。

 なければ、資料3-5の有明海全体につきましてご質問、ご意見あれば、お願いいたします。

 よろしいでしょうか。

 では、全体的なことにつきまして、今回お示しいただいた資料は検討段階のものということで、ご指摘いただきましたように、図とか引用あるいはデータにつきまして、まだ要検討というところが幾つかございますが、それはこれから皆さんのご意見をいただいて直していきたいと考えておりますが、基本的にこういうことをきっちり載せていただきたいとか、そういったご意見があれば、A1からA4ということでは今日はありますけれども、ご意見いただいておきたいと思いますが、いかがでございましょうか。

 速水委員、お願いします。

○速水委員 先ほど、滝川先生からのご意見があったと思うんですけれども、今回は二枚貝の生息に関係する部分を中心に議論したわけですけれども、二枚貝の問題だけではなくて、他の科学的要因とあわせて検討しないとわからない部分があると思うんですね。そういった現在、海域再生委員会で担当している部分とそれと生物・水産資源小委でもって担当している部分と、両方あわせて内容について検討するようなチャンスというのはどこかでまたあるんでしょうか。

○青野小委員会委員長 事務局、お願いします。

○根木閉鎖性海域対策室長 この検討の枠組みが、評価委員会がありまして、そしてその2つの作業委員会がありまして、そしてこの生物の作業委員会では、まさに例えば二枚貝ですとか、そういった生物のところを中心にご議論をいただいていると。もう一個の海域再生のほうでは、まさに物理特性ですとか、あとベントスなどもというような、そういう体制でやっておりますので、この枠組みは基本的に維持したほうがいいんじゃないかなと思っております。今日も午後の資料を、海域再生の資料のほうを参考資料で配付させていただいておるので、もしよろしければ是非目を通していただいて、また不明な点があればご質問などをいただければとも思いますし、やはりまとめた、統合した議論は枠組みとしては評価委員会のほうでやるということなのかなとも思っております。そのあたりも何かご意見がありましたら、随時いただければと思います。

○青野小委員会委員長 よろしいでしょうか。

 その他にご意見ございますでしょうか。

 それでは、ご意見ないようですので、本日の意見を踏まえて、事務局でこれから案をまた適宜修正していただいて、次回の小委員会でまた説明、ご報告をお願いしたいということにします。よろしくお願いします。

○根木閉鎖性海域対策室長 先ほどいただきました追ってご意見いただく件については、また追って何日までにいただければというようなことを事務局のほうからお知らせをさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○青野小委員会委員長 そちらのほうもご協力、よろしくお願いいたします。

 それでは、議題の3番に移りたいと思います。ノリの色落ちについてということで、水産総合研究センター、その他関係県で検討されてきました冬季の珪藻赤潮とノリの色落ちについて、取りまとめを行いました松山委員からご報告をいただきます。

 松山委員、よろしくお願いします。

○松山委員 水産総合研究センターの松山でございます。どうぞよろしくお願いします。

 本件に関しては、有明関係4県の皆様とこの2カ月ほど議論を行ってきまして、その内容を簡単にまとめたものでございます。本日はノリの色落ちに関して何か結論めいたものを持ってきたというわけではなくて、こういう検討を現在行っているという、検討を開始しましたというような報告になるかと思います。

 冬季の珪藻赤潮とノリの色落ちに関して、関係機関とともにまとめた結果を簡単にですけれどもご紹介いたします。

 本日は主に4つの内容から構成されております。ちょっと時間がありませんので、かなりのスライドは飛ばした形で進めさせてもらいますけれども、まず最初にノリ養殖の現状に関して説明をいたしまして、2番目にその中でノリの養殖における色落ちの重要性についてご説明します。3番目にノリの色落ちと珪藻赤潮との関係、あと、最後の4番目として、主要な珪藻類による赤潮の発生状況と発生機構、現場の発生機構というところの説明で締めさせてもらいます。

 まず最初に、有明海・八代海におけるノリ養殖の現状でございます。

 これは我が国の養殖ノリ生産枚数と生産額、左側のほうが生産枚数、量ですね、右側が金額になります。実は、この生産枚数で見ますと、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島、この有明・八代の関係5県で我が国の養殖ノリ生産量の54%、半分以上、金額にしてやはり半分以上の55%を占めるという、主要なノリの生産海域ということになっております。

 主要な海域の4県さんの生産枚数の長期的な推移、1980年代からの資料をプロットしておりますけれども、佐賀県さんが2000年以降も増加して、2000年の中ごろから横ばい、あと福岡県さんは1990年代からずっと横ばいと。特にこの2000年の大不作のところの落ち込みというところが非常にわかりやすくあるかと思います。金額に直しますと、佐賀県さんのほうが大体200億円前後、福岡県さんが140から150ぐらい、長崎県さんが2億円で、熊本県さんが100億円を若干下回るという、こういうところで近年の養殖生産量が推移しているという状況です。

 一方、八代海のほうなんですけれども、こちらは熊本県さんと鹿児島県さんのデータしかないわけですけれども、これは2000年以降、急激に生産枚数が落ちているというのが顕著になっています。すなわち、減少傾向にあると。ただ、この原因についてははっきりしておりません。経営体数そのものが減少しているというような、社会学的な要因もあるというふうに伺っております。

 2番目に、ノリ養殖における色落ちの重要性とそのメカニズムということでの説明です。

 ノリ養殖における減産要因、幾つかあります。①から④、あるわけですけれども、秋の高水温期の漁期そのものが短くなる、短縮の問題ですね。それとあと病気、食害と、こういうものがあります。本日は4番目の色落ちということで説明をしていくということになります。

 これはノリの養殖の色落ちがどんなものかというところをカレンダーにしたものでございます。ちょっと図が見にくいかもしれませんけれども、これはノリの漁期が開始する10月から2月までの横軸が日付になっておりまして、縦が下から2000年、一番上が2014年の佐賀県海域におけるノリの漁期を示しております。この色がついているところが漁期が開始しているところなんですけれども、その中でこのオレンジ色に塗られた部分、これが実はノリの色落ちが発生している期間に相当します。かなり毎年のように発生はしておるんですけれども、近年はほとんど毎年1月から2月になると色落ちが発生して、そのまま色落ちしたまま漁期が終わるというようなことが繰り返し発生しているという状況です。

 八代海のほうも同じように、これは熊本県さんのデータしかないんですけれども、ノリの色落ちが、こちらは早くて12月ぐらいから発生するときもあるというふうな状況になっております。

 ノリの色落ちのメカニズムなんですけれども、これはノリの細胞に含まれる色素が生育阻害によって黒色から茶褐色になると。実際の現場では黒から黄土色になったり緑っぽくなってくるんですけれども、これがノリの色落ち現象です。メカニズム、必ずしも明らかになっているわけではありませんが、海水中の栄養塩濃度が下がるというところが重要な因子であるということが考えられております。この色落ちしたノリというものは商品価値が下がるため、生産額の減少に直結するということで、産業的な問題になっているわけです。

 3番目に、ノリの色落ちと珪藻赤潮との関係についてご説明いたします。

 これまで、赤潮の検討でも赤潮の発生件数というものをたびたびご説明してきたわけですけれども、有明海におきましては、冬場の珪藻赤潮の増加というものがかなり赤潮の発生件数に影響しているという現状がございます。1984年からのデータをここにプロットしておりますけれども、これは冬季の珪藻赤潮の発生件数です。この棒グラフの中で赤く色が入ったものが被害の件数ということになります。大体、半分、場合によっては半分以上、冬季に珪藻赤潮が発生すると、漁業被害が発生すると。その漁業被害のほとんどがノリの色落ちというような状況になっている状況です。

 ノリの色落ち被害の発生とその珪藻赤潮との因果関係が本当にあるのかというところで、同じように10月からのカレンダー、3月までの漁期で、このオレンジ色のバーが入っているものがノリの色落ちが発生した期間になります。そこの上に黒い矢印が入っておりますけれども、これが珪藻赤潮が発生した期間になっております。これを見てもわかるとおり、珪藻赤潮が発生すると、ほぼ同時にノリの色落ちが発生すると。両者ほとんど一致したような形で発生しております。傾向としては、秋口に発生する珪藻赤潮ではノリの色落ちはそれほどではないんですけれども、漁期の後半の1月から2月に発生すると、ほぼ確実に色落ちが発生するというふうな現状になっております。この資料は福岡県さんからのいただいたデータに基づいて表記しております。原因となるのは珪藻類なんです。珪藻類、大変たくさんの種類があるわけですけれども、これから有明海で問題になる主要な珪藻類についてご説明をいたします。

 4番目、最後ですけれども、主要な珪藻類による赤潮の発生状況と発生機構ということで、まず最初に、これはRhizosolenia imbricataという種類であります。これはこの委員会のメンバーの方は当然ご存じかと思うんですけれども、2000年の有明海において本種が大発生して、ノリの色落ちと大不作を起こしたと。それの原因のプランクトンであります。非常に細胞が大きな珪藻類でありまして、どちらかというと外海で普段見られるような種類でございます。これは平成18年度委員会報告書に、このRhizosolenia imbricataの赤潮の発生機構ということでこの図が出ております。いろんな環境要因との因果関係が書かれているわけですけれども、この年は小型の珪藻類の増殖が抑えられた後に、高水温、高照度、高栄養塩という特殊な環境が発生したために大発生をしたというようなことが報告書の中で書かれております。

 我々のほうで、ちょっと過去の資料が少し検証もしたほうがいいだろうということで、当時のデータをもうちょっと集まって見てみました。実は、珪藻類の個別の種類ごとに計測がなされておりましたので、それを2000年のデータをこのようにプロットしておるわけですけれども、実は12月にこの赤で示したRhizosolenia imbricataというのが急激に増えてきたわけなんですけれども、小型の珪藻類というのが確かにその前段は少な目ではあったんですけれども、両者とも同時に12月に入って増えていると。その後ずっと高い状態で推移をしていたと。それと逆相関ですけれども、12月に入った途端にそれまで高かった栄養塩濃度が、これは溶存体は無機窒素ですけれども、急激に落ちて、ノリの色落ちを起こすというようなことがありましたので、正確に言いますと、小型の珪藻も大型のこのRhizosolenia imbricataというのもほぼ同時に発生したんではないかというようなことがうかがえました。若干、前回報告書と結論が違うんですけれども、タイミングの問題であって、基本的には両者とも増えていたということになるかと思います。その後、このRhizosolenia imbricataは発生をしておりません。

 続きまして、2番目として、Eucampia zodiacusの生理生態学特性と。これが実は有明海のほぼ全域で冬季に赤潮が発生して、ノリの被害を最も与えている種類の一つでございます。このようなはしごのような形をした珪藻類で、これは世界中の海域に分布しております。有明海でノリの色落ちを引き起こすわけですけれども、瀬戸内海でもこの同じ種類が同様にノリの色落ちを引き起こすということが知られております。

 これも実は細胞密度の経年変化の実測値が出てまいりました。佐賀県さんと福岡県さんと、熊本県さんは1995年以降しかデータがなかったんですけれども、その3海域のEucampia zodiacusの最大出現細胞密度を年ごとにプロットしております。これを見ますと、実は昔からいまして、何年かおきにまとまった発生が見られるというような特性があって、特に最近これが増えていると、右肩上がりということではどうもなさそうです。昔からいたというようなことがうかがえます。

 発生機構ですけれども、これはIto et al.と。2013年のところに詳細な海洋環境とのデータとの比較が出ておりましたので、簡単にご紹介いたします。

 この鉛直図は、2月から3月までのEucampiaとその他の珪藻類の出現をこのL4という定点のデータを鉛直的にプロットしていますけれども、2月に入ってこのEucampiaというのが非常に高密度に長期間、出現していると。栄養塩濃度が非常に低く推移しているということがわかるかと思います。

 次は、この断面図を次に示しておりますけれども、こちらから、湾奥のほうから湾口に向かってラインが引かれております。縦が水深になります。上から4段目のところにこのクロロフィルというところがあるのが、これをほとんどEucampiaだというふうに見ていただきたいんですけれども、初期は沖合の底層のほうに分布していると。それが徐々に増えて湾奥のほうに広がってきて、最後は湾奥から湾口まで広範囲に出現してくるというような発生パターンを示す。初期には沖合の深いところに存在するということが捉えられております。

 発生のタイミングですけれども、左側が大発生した2012年、右側は発生が見られなかった2007年の海洋データと、一番下がクロロフィルのデータですので、Eucampiaの出現になるわけですけれども、有明海の潮汐が非常に卓越していますので、下から2番目がこれは濁度のデータになりますけれども、大潮のときに濁って、小潮のときに濁りが落ちると。この濁る、透明度が上がる、濁る、透明度が上がる、こういう繰り返しがあるわけですけれども、この大潮がおさまって小潮期の透明度が上がるときに急に出現が見られると。細かく見ますと、ここでスタートして、一旦、小康状態になって、ここでもさらに2回目の大発生ということなので、小潮期に発生するというようなことがわかります。ただ、当然、大潮・小潮の周期は毎年あるわけですけれども、この年、両者が違った理由としては、河川水量が多かったか少なかったか、ここが唯一の違いになっておりまして、陸域からの栄養の供給というのもこの大発生に影響しているかもしれないというような考察になっております。

 発生機構はこのように整理を今のところされておりまして、小潮のときに濁りが低くなって、沖の深いところにいますので、太陽光が届くようになると増殖が活発になって増えてくると。大潮のときに、潮の流れとともに拡散しながら広がっていくというようなことがこの論文の中では想定をされております。

 最後ですけれども、これはAsteroplanus karianusという非常に特殊な名前の珪藻であります。これはくさび形をした連鎖をする珪藻類でございます。これは出現が非常に限られた場所でしか出ておりませんでして、とにかく有明海の中でもこれから申し上げるごく一部で出現をするという特徴があります。これの実測値も80年代から佐賀県さんのほうでデータがとられているわけですけれども、これは2007年以降、明らかに出現が増えているという特徴がございます。先ほどのEucampiaは昔からいるという。これも昔からいるんですけれども、発生はとにかく高密度かつ高頻度になっているというふうなことがわかります。発生場所もこの塩田川の河口域を中心に発生するということがわかっております。これは塩田川の河口域に川の中から順番に定点を打っておって、こちらが川の中から沖に向かって細胞密度のデータをプロットしているんですけれども、川の中ほど、干潮域なので、一応、汽水に近いような塩分が含まれる水が入っているわけですけれども、川の中に高くいるということがよくこれでわかります。

 このkarianusが当初、発生してないときはノリは順調にとれている。これは2011年のデータですけれども、L値という、ノリの色の色調を示すL値、こういう寒色系の紫の色をしたものがノリの色が落ちてない、これは順調な状態のもので、暖色系になると色落ちが発生するというふうに見ていただきたいんですけれども、12月30日に塩田川の河口域でこの着色海域、これがkarianusの赤潮が発生しているわけですけれども、そうすると、一気に着色海域でノリの色調が悪くなる。それが広域に分散すると、より色調が悪くなって、赤潮がかかっているところはノリの品質が明らかに落ちていると。かかってないところはまだ落ちてないということで、この海域ではこういう状態が毎年のように続いていまして、この佐賀県さんの西部海域というところではkarianusのノリの色落ち、頻発することによって、生産量あるいはノリの金額が落ちてしまうというようなことが大問題になっております。

 発生機構に関しては、佐賀県さんのほうで精力的に調査をされておりまして、とにかく鉛直混合の激しい冬場の最低水温期に出現する、そういった環境特性は把握をされておりますけれども、まだ発生予測までは至ってはいないというふうに伺っております。

 あと、時間がありませんのでこの辺は割愛させていただきます。

 本日の報告の概要を取りまとめます。

 有明海におけるノリの養殖では、近年、生産の枚数であるとか生産額というのはともに高位で横ばいになります。2000年の大不作に代表されるように、ノリの色落ちが長期間発生すると、生産額は低下するという傾向が明らかに見えます。

 八代海においては、逆にノリの養殖というのは生産枚数、生産量とも減少傾向にあるということで、いずれにしても、この両海域ともノリ養殖の安定した生産をこの色の違いというものが制限する重要な要因になっているということがわかります。

 有明海での赤潮の被害の大部分は、この冬に発生する珪藻赤潮によるノリの色落ちという状況になっております。2000年の大不作の原因として考えているRhizosolenia imbricataについては、その後は有明海における赤潮の形成は報告されてないということになっております。

 4番目として、有明海におけるノリの色落ちの原因としては、近年はEucampia zodiacusとAsteroplanus karianus、この2種類が問題となっていると。Eucampiaに関しては2000年以前から有明海のさまざまな海域で赤潮は報告されていたんですけれども、本種による赤潮の形成は、どうも先ほどの論文にもありましたように、潮汐の周期と透明度、あと河川水量等の増加が関係しているということが指摘をされております。

 最後にご紹介したAsteroplanus karianus、これに関しましては、2007年以降、有明海の佐賀県海域、それも塩田川の河口域で恒常的かつ高密度で発生する傾向にあります。本種による赤潮の発生は水塊の鉛直混合、低水温、これはノリの生産の一番ピークに当たる年末からお正月明けぐらいに、こういうときにどうしても重なってしまうので、この発生海域においては大変被害が発生するというようなことが問題になっております。

 駆け足でしたけれども、以上でございます。

○青野小委員会委員長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの報告につきましてご意見、ご質問あれば、お願いいたします。

 岡田委員長、お願いします。

○岡田委員長 ノリの色落ちがどういう年にいつから起きたというのはわかったんですが、例えば毎年ノリの要するに養殖したうちの何%が色落ちになったとか、色落ちで要するに本来得られるべき利益が得られなかった、本当の問題の分がどのくらいの量にあるかというデータはあるんでしょうか。

○松山委員 ノリの等級がどのくらい落ちて、それが入札を行った海域ごとにどの程度の結果であったのかという記録はありますけれども、その計算をする場合に、毎年100%ノリがとれるというベースを先に線を引いてから、その差分を全部被害にすると、それは少し科学的にはちょっと問題があるかと思いますので、要は、例えば過去10年、20年の色落ちのベースがこのくらいだという平均値を決めておいて、そこから上がり下がりしたかというような計算をしなきゃいけなくなるかもしれませんけれども、そこまでは解析をしておりません。ですので、真値を、真の被害量というのを出すのはちょっと難しい部分が正直あります。

○青野小委員会委員長 よろしいでしょうか。

 その他いかがでしょうか。

 古賀委員、お願いします。

○古賀委員 すみません、要望なんですけれども。色落ちと珪藻赤潮の関係ということで、今日はEucampiaとkarianusについての報告だったんですけれども、佐賀県有明海では、最近はkarianusの後スケレトネマ赤潮が増えてきており、、それによる色落ちというのもみられているのが現状なんですね。よかったらスケレトネマについても整理していただければと思いました。

○松山委員 もともと小型珪藻の赤潮ということで、発生頻度はそんなにかつては多くはなかったわけですけれども、現状として、ノリの漁期の後半、海域の栄養塩濃度が下がったときは、これも無視できないインパクトだということは担当者の方からも伺っておりますので、必要に応じて、先ほどのEucampiaとkarianus、次に続く種としての整理ができれば、取り組んでいこうかなというふうに思っております。

○青野小委員会委員長 よろしいでしょうか。

 他はいかがでしょうか。

 ご意見、特にご質問ないということですので、それではノリの色落ちにつきましては、委員会報告に盛り込まれるということになると思いますので、本日いただいた意見も踏まえて、さらなる検討をお願いしたいと思います。

 伊藤委員、お願いします。

○伊藤委員 申し訳ありません。今回の報告は本委員会にかかるんでしょうか、このまま。

○青野小委員会委員長 事務局、お願いします。

○束原閉鎖性海域対策室長補佐 今、少し今後のスケジュールとして考えておりますのが、先ほど少し申し上げた、小委員会をもう一度、例えば11月ごろに開催いたしまして、評価委員会はできれば年内には一度開催できればいいかなと思っておりますので、もう1回、小委員会をやるというような段取りで今考えております。

○伊藤委員 何で聞いたかというと、この今日プレゼンされた内容については、事前に担当者会議があって、その中で煮詰められた内容が話されていますけれども、例えば、ノリ養殖の主な減産要因という1つパワポがありましたけれども、その中で、例えば4項目ありますね。主な減産要因ということで4項目書いてありますけれども、この中で、例えば色落ちと病気はわかるんですが、バリカン症とか食害が同レベルでこの4項目が書かれていると、非常に現場サイドとしては違和感があるというか、誤解を招くんじゃないでしょうかね。生産サイドの多分、感覚としては、この4項目というのは同列ではないと思うんですけれども。そのあたりも考慮されて、すみませんが、最終的に出されるときにはお願いしたいということをお願いしたいと思います。

○松山委員 特にこの総合調査評価委員会が各種の調査によって有明海再生の評価をするというのは、もともと法律に規定されているところがありますので、いわゆる海域環境の変化と密接に関連した部分のところが基本的には検討の材料になるということで、この4項目の中では、今日は色落ちを中心に論議をさせてもらったんですけれども、確かにおっしゃるとおり、減産要因を量で並べるのか金額で並べるのかによっては、当然、これはみんな同列じゃありませんので、この部分に関しては各県さんのほうのところともう少し論議をして、書きぶりをちょっと丁寧にしていきたいというふうに考えています。どうもありがとうございます。

○青野小委員会委員長 その他いかがでしょうか。

 では、これでノリの色落ち関係についての議題を終了いたします。

 続きまして、議題の4、その他というところでございますが、事務局から何かございますでしょうか。特にございませんか。

 それでは、本日の小委員会全体を通して各委員からご意見等ありましたら、お願いいたします。

 特によろしい─藤井委員、お願いします。

○藤井委員 先ほども少しお話があったと思いますけれども、今回は資料の提示が事前になかったものですから、今後は事前に提示していただきたいということと、今後の検討スケジュールを少し早目に教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○根木閉鎖性海域対策室長 承知いたしました。失礼いたしました。

○青野小委員会委員長 その他いかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 それでは、今回、いろいろとご意見伺いました。また事務局からお問い合わせ行くと思いますので、ご協力をお願いします。

 次回の小委員会におきましては、特に今回の議事2番、海域ごとの問題点とその原因・要因の考察について再度ご検討いただいて、評価委員会に諮っていきたいと思っております。また、本日ご議論いただかなかった他の海域につきましても、次回ご検討いただきたいと思っております。それにつきまして、各委員の皆様あるいは関係省庁、関係県の皆様には検討作業に必要な情報の提供を引き続きお願いすると思いますので、ご協力よろしくお願いいたします。

 それでは、本日予定しておりました議事については、以上をもちまして全て終了いたしました。議事進行のご協力、どうもありがとうございました。

 進行を事務局にお返しいたします。

○村澤閉鎖性海域対策室主査 それでは、事務局から3点連絡がございます。

 次回のスケジュールでございますけれども、次回小委員会は11月ごろに開催を予定しておりますので、日程調整でのご協力をお願いいたします。

 2つ目ですが、今日もお話に出ましたけれども、各委員さんからの意見照会をこの資料に対してさせていただこうと思っております。あわせてよろしくお願いいたします。

 3点目ですが、後日、事務局より議事録の確認依頼を行いますので、そちらもあわせてよろしくお願いいたします。

 それでは、最後に水・大気環境局長の髙橋よりご挨拶を申し上げます。

○髙橋水・大気環境局長 今日は遅れて参りまして、失礼をいたしました。7月31日付で水・大気環境局長を拝命しました髙橋でございます。よろしくお願い申し上げます。

 本日はお忙しいところをお集まりをいただきまして、誠にありがとうございました。閉会に当たりまして一言ご挨拶を申し上げます。

 有明海・八代海の再生につきましては、特別措置法に基づきまして基本方針を定め、関係各県で計画をつくっていただきまして、対策を進めていただいているところでございます。しかしながら、現状、本年度も赤潮や貧酸素水塊の発生が確認されているということで、まだまだ有明海再生の道は半ばであり、予断を許さない状況もあるというふうに考えてございます。

 こうした中、今日の小委員会では、平成28年目途の評価委員会の報告の取りまとめに向けまして、有明海での二枚貝の減少について、その原因・要因の考察、あるいは冬の珪藻赤潮とノリの色落ちの関係についてご検討いただいたわけでございます。私事で恐縮でございますが、私、10年前、平成18年の評価報告書の取りまとめのときに室長ということで担当させていただきました。またこの取りまとめの時期にめぐり合わせで担当することになりましたので、引き続き委員の先生方、よろしくご指導をお願い申し上げたいと思います。

 今日は本当にありがとうございました。

○村澤閉鎖性海域対策室主査 それでは、これで第10回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を閉会いたします。

 ありがとうございました。

午前11時49分 閉会