有明海・八代海等総合調査評価委員会 生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会(第4回)

1.日時

平成25年7月8日(月)10:00~12:00

2.場所

イイノホール&カンファレンスセンター RoomB1+2

3.出席者

小委員会委員長 有瀧真人委員長
委員 岩渕光伸委員、古賀秀昭委員、速水祐一委員、山本智子委員
専門委員 梅崎祐二委員、大村浩一委員、川村嘉応委員、福留己樹夫委員、藤井明彦委員、松山幸彦委員
事務局 環境省水・大気環境局長、水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時00分 開会

○高山室長補佐 定刻の10時となりましたので、ただいまから有明海・八代海等総合調査評価委員会第4回生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会を開催したいと思います。
 本日は、委員の皆様におかれましては、暑い中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
 最初に、本小委員会は、公開の会議となっておりますことを申し上げます。
 また、本日の委員の出席状況でございますが、欠席のご連絡を本城委員よりいただいております。
 本日は11名の出席ということでございます。また、評価委員会の岡田委員長、それから本日午後に予定されております海域再生小委員会の滝川委員長にもご出席いただいております。
 また、県の人事異動に伴いまして、新たに2名の方に専門委員に就任していただきましたのでご紹介させていただきます。
 まず、田添委員の異動に伴いましてご就任いただきました、長崎県総合水産試験場長の藤井委員です。
 続きまして、古賀委員の退職に伴い就任していただきました、佐賀県有明水産振興センター所長の川村委員です。
 古賀委員につきましては、評価委員会の委員といたしまして今後も本小委員会に参画していただきます。
 続きまして、環境省水・大気環境局長の小林よりごあいさつを申し上げます。

○小林水・大気環境局長 おはようございます。環境省の水・大気環境局長の小林でございます。
 本日は本当にご多忙のところ、また遠方から、特に大変な猛暑の中をご出席いただきまして、有瀧委員長ほか委員の皆様方には厚く御礼を申し上げます。
 また、今お話がございましたように、岡田先生、それから滝川委員長にもご出席をいただいておりまして、両委員会が今日午前午後にございますが、連携して進められるように私どもも心がけてまいりたいと思っております。
 この有明海・八代海の総合調査評価委員会でございますが、昨年もいろいろな角度からのご審議をいただきまして、今日は第4回目の特に午前中は生物水産資源水環境問題検討作業小委員会の開催ということでございます。今回は有明海の赤潮に関連した最新の情報、また研究成果のご報告をいただきまして、いろいろな議論をいただくということになっております。また、農林水産省からも諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査継続、これについての概要も説明いただくということにしているところでございます。
 この有明海・八代海の現状は昨年も従来と同様でございまして、各県には無酸素状態、貧酸素の水塊が形成されるというようなことが確認されておりますし、引き続き二枚貝はじめいろいろな漁業資源に対する影響、また環境への影響も懸念をされているところでございます。大変広い例にわたって多様な要因が絡んでいるというように思われるところでございます。そういう意味で課題の克服には環境悪化の原因・要因の特定をどういうふうにしていくか、それから再生に向けてどういう再生の姿を求めていくのか、またその手順がどうかというような大変幅広い課題がこの評価委員会全体での役割ということで大変期待も大きいところでございます。
 こちらの小委員会では特に生じている問題の原因・要因を特定いただく、その原因・要因に対して効果的な対策を検討していくというようなことで大変重要な役割を担っていただいているところでございます。どうぞ委員の皆様方には本日の検討におきましても忌憚のない意見交換をいただきまして、私どもを導いていただければと考えているところでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○高山室長補佐 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
 まず最初に、資料1として委員名簿、次に資料2、有明海・八代海における夏期赤潮の発生状況の整備と検討。それから、資料2(1)有明海・八代海における赤潮発生状況の概要。資料2(2)有明海における赤潮発生と水質の関連。資料2(3)として、有明海・八代海における夏期の鞭毛藻赤潮の発生状況。資料2(4)として、現場海域における赤潮生物の出現特性。資料2(5)、赤潮(夏場の赤潮)発生機構・予察手法に関する知見。資料3として、諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査計画。それと、委員のみの配付とさせていただいておりますが、本日の午後に行います海域再生対策検討小委員会の資料を添付しております。
 以上でございます。
 資料等につきまして不足の資料がございましたら事務局のほうまでお申しつけください。
 続きまして、報道取材の皆様におかれましては、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますようよろしくお願いいたします。
 続きまして、議題(1)有明海・八代海における夏期赤潮の発生状況の整理と検討についてでございます。これ以降の進行は有瀧委員長、よろしくお願いいたします。

○有瀧小委員会委員長 有瀧です。皆さん、おはようございます。
 冒頭のごあいさつにもありましたが、羽田に着いて非常に暑いのでびっくりしました。梅雨明けは1週間ぐらい暑さが続くということなので、今日はこういう状況ですけれども、また別の意味で熱い議論をよろしくお願いをいたします。
 さて、この生物小委は、御存じのように対象としますのが生物、それから水産資源の諸問題について優先順位をつけて検討していきます。前回の3回までに二枚貝について取りまとめ、31回の本委員会で報告させていただきました。
 優先順位としては、次は赤潮と貧酸素ということになっておりますので、本日はこの議事次第にありますように、有明海・八代海における夏期赤潮の発生状況の整理と検討について、松山委員のほうからご報告いただきます。
 時間配分としましては、この議題1については、11時半をめどに質疑応答を含めてやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 早速ですが、松山委員、よろしくお願いします。

○松山委員 おはようございます。ご紹介どうもありがとうございます。水産総合研究センターの松山と申します。これから私のほうから資料の説明をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします。座って説明をさせていただきます。
 私のほうからは、夏場に発生する赤潮に関します資料の収集状況と、その取りまとめ結果についてご説明をさせていただきたいと思います。何分資料が多数に及びます関係でどうしても早口になってしまい、聞き取り難いところがあるかもしれません、どうぞご協力のほどよろしくお願いします。
 基本的にお手元の資料2ですね、これは(1)から(5)まで区分けしておりますけれども、時間の都合上これらをすべて一度に発表させていただきたいと思っています。発表のほうはこのパソコンの画面で行います。
 まず、収集した資料の取りまとめ結果に入ります前に、夏場の赤潮の正体というものがどういった生物によって起こされているのか、またどのような影響があるのかというものを最初に簡単にご説明をいたします。
 これは有明海・八代海で夏場に盛んに赤潮を起こします生物の顕微鏡の写真でございます。ほかにも多数あるんですけれども、主にこの四つが代表的な生物となっております。
 詳細は省略しますけれども、最も問題となるのはこの上の二つですね、これはシャトネラ アンティカという生物、こちらがコックロディニウム ポリクリコイデスという生物でございます。これはどちらとも魚に対する強く毒性を示すということで、赤潮が出ますと養殖魚とか天然魚を死に至らしめる作用があります。
 この上の二つとこちらの右下のヘテロシグマ アカシオ、後ほど赤潮の発生件数等でもこの生物データが出てきますけれども、これは植物プランクトンの一種で、いわゆる鞭毛藻という仲間になっております。藻類ですので海水中の窒素とかリンを使いまして光合成を行って増殖するというタイプの生物であります。ですので、植物プランクトンの一種ということになります。どれも西日本の沿岸には広くもともと分布する赤潮生物となっております。
 この写真は長崎県の島原周辺で2009年8月5日に撮影された写真であります。これはシャトネラ アンティカの赤潮でございます。この赤潮というのは大体1mL当たりにこのシャトネラの細胞が数百細胞程度まで増えてくると海水がうっすらと着色をする、赤潮として視認されるという状況になるんですけれども、この写真を見てもわかるとおりほとんど真っ茶色になっていまして、1mL当たり数万細胞を超えているような非常に濃厚な赤潮でございます。
 ほぼ同じ時期ですけれども、これは2009年7月24日、これは諫早湾になりますけれども、小長井町地先、こちらで撮影された写真でございます。同じように海水が濃厚に着色をしておるんですけれども、曇り空で雨が降っていますけれども、見てもわかりますように、このように湾内には多数の天然の魚、これはコノシロあるいはボラですね、この辺はコノシロなんですけれども、この大きな魚はボラであります。こういうものが多数湾内にひしめくように死骸が浮いているという状況でした。
 養殖魚のへい死というのは後ほどご説明しますけれども、こういった天然の魚も実は赤潮でかなり死んでおりますけれども、実態はほとんど調べられていないという状況です。
 これは2009年の7月に、こちらは有明海ではなくて八代海側で撮影された写真でございます。こちらにいけすが多数並んでおりますけれども、そのやや手前側に黒い変色海域がありますけれども、これはすべてシャトネラ アンティカの赤潮が海面を埋め尽くしているという状況でございます。
 赤潮というのは濃厚になりますと海面近くに発生しまして、これが潮流であるとか海流によってどんどんと流されていきます。しまいには養殖漁場等に流れ着きまして、特に赤潮に対する耐性が弱いブリなどの養殖魚というのは赤潮に追われてしまいますと、1時間から数時間程度でもうへい死をしてしまうというような状況に陥ります。実際このときの赤潮では八代海のほうでは33億円という漁業被害が発生いたしております。
 この写真は赤潮でへい死した養殖のブリの写真でございます。ブリというのは赤潮に対する耐性が低くて、場合によっては着色が認められないような100細胞とか非常に低い密度でもへい死が発生するというような現実があります。
 ちなみに、死んだ魚というのはしばらくいけすの底に沈んでおりますけれども、腐敗して数日ほどするとこのように海面に浮かんできていけすの表面を死骸が埋め尽くすというような状況に陥ります。
 この資料は過去赤潮による漁業被害の被害金額が大きいものの順に上位5位を取りまとめたもので、これは水産庁さんの資料から整理をしたものであります。第1位というものは1972年に瀬戸内海で発生いたしました。これは事実上日本で最初に発生したシャトネラ赤潮による漁業被害なんですけれども、播磨灘を中心に当時の金額で71億円、養殖ハマチ1,400万匹のへい死というのが記録として残っております。
 2位なのですけれども、これが平成22年、2010年ですけれども、八代海・有明海・橘湾で発生した同じシャトネラ赤潮、これによって養殖ブリ等が285万匹へい死して、漁業被害が54億円と、これが第2位に入っております。
 同じように先ほど写真をお見せしましたけれども、2009年の八代海・有明海・橘湾による漁業被害、これ33億円なんですけれども、これが第5位に入っておりまして、へい死匹数が209万匹となっております。
 ですので、前回平成18年委員会報告が終った後にさらにこのように歴史的な大きな漁業被害が2度、しかも2年連続して発生しているというのが今の有明海・八代海の現状ということで、今回の小委員会でも二枚貝の減少要因に続きましてこの赤潮問題が非常に大きな有明海・八代海の問題であるということで取り上げる次第でございます。
 これから赤潮の問題に関して収集した資料と解析結果をご説明するわけですけれども、これも二枚貝の減少要因のときに行ったように、前回の委員会報告の指摘内容を踏まえた上でやっておく必要があるということであります。ここに委員会報告の赤潮に関する指摘内容を簡単に示したものを図示しております。改めて内容を一つずつ確認していきたいと思います。
 前回の委員会報告における赤潮発生に関して、まず第1番目として、冬季の水温の上昇ということが指摘されています。有明海の冬の最低水温が上昇しまして、この時期ノリの色落ちを起こします珪藻の増殖が水温上昇によって促進されているんじゃないかというような指摘がございます。
 2番目に透明度の上昇です。有明海は御存じのとおり干潟が広がる浅い海域でして、しかも潮流が非常に速い。そのために海底の堆積物が容易に再懸濁して濁りが多い海というふうに知られております。この海水中の濁りというものは海面からの光の透過をしづらくしますので、当然光合成をする赤潮の生物を抑制をしていた。それが何らかの要因、例えば潮流の低下でありますとかそういうものによりまして濁りが少なくなって透明度が高くなって、結果として赤潮プランクトンの光合成が活発になったんじゃないかというような指摘が2番目としてございます。
 3番目に、富栄養化・貧酸素化の進行です。これは一般的に知られておることですけれども、富栄養化が起きますと赤潮の発生が進行するということが言われております。有明海でも赤潮の件数が、後ほどご説明しますけれども、増えているということは栄養が過剰な状態が続いているんじゃないか、そんな状況。及びもう一つ貧酸素化が起きますと海底から多量の窒素やリンが溶出してきますので、そうしたものも赤潮を増やしているんじゃないかというような指摘がございます。
 4番目として、浄化能力の低下。これは御存じのように有明海には大変膨大な二枚貝が生息していて、これは懸濁物の捕食者ですので赤潮プランクトンを当然食べてくれるという作用があったわけですけれども、前回の小委員会の取りまとめでもありますように、この二枚貝大きく激減しております。ということで二枚貝が減ることによって赤潮プランクトンの捕食者が低下して赤潮が出やすくなっているんじゃないかという指摘が4番目としてございました。
 最後の5番目の潮流低下に関しては、先ほどの透明度の上昇の部分と連動するような部分がございますので、例えば湾奥部の干拓であるとか諫早湾の閉切りなどによって潮流が変化したのではないかというような指摘がございました。こういった件に関しては引き続き調査研究の必要性が指摘されているという状況でした。
 これが平成18年委員会報告の内容でございます。
 こうした指摘事項を踏まえて、さらに委員会後にいろいろな情報等を収集されておりますので、新たな知見も加えて夏場の赤潮に関するご報告をしていきたいというふうに思っております。
 収集した資料の状況と解析ですけれども、非常に膨大な資料が集まりましたので、ここに示した5項目に大きく分けて順番に説明を行ってまいります。
 最初に、有明海・八代海における赤潮発生状況の概要、これはいわゆる統計データになります。長期間の赤潮の発生パターンというのを見ることができます。
 2番目として、前回委員会でも大きく取り上げられています有明海をはじめとした赤潮発生と水質環境との関連ですね。特に水温をはじめとした水質の長期変動との関連について整理を行っています。
 3番目として、有明海・八代海における夏場の鞭毛藻赤潮の発生状況ということで、実際に発生している現場の状況、赤潮の原因種、それらを海域別に整理をしております。
 4番目として、実際の赤潮の発生現場海域における各種の資料を網羅し、その発生する環境、あと生態的な特徴、水質、これらの関係について既往知見を整理しております。
 5番目として、これ最後になりますけれども、夏場の赤潮の発生機構・予察の手法に関する知見を整理しております。
 それでは、早速ですけれども、(1)として有明海・八代海における赤潮の発生状況の概要についてご説明をいたします。
 これから同じような図が何枚か続きます。これは有明海・八代海・橘湾における1978年~2012年までの届け出がありました赤潮の発生件数を図にしたものです。ただ、有明海に関しては1984年からしか統計データがありませんので、ここの部分に関しては観測はなしということになっております。
 特徴といたしましては、有明海と八代海、有明海は赤で、八代海は青になるんですけれども、1998年、このあたりから赤潮の発生件数が増えているということが読み取れます。これは前回の委員会報告でも指摘があった状況でございます。その傾向はいまだに続いているということがわかります。橘湾に関しては長期の変動というのは見られません。
 次に、今度は被害の件数です。赤潮の発生件数の中に占める被害の件数です。これに関しましては有明海と八代海においてその被害の件数というので見ますと特に増加傾向は見られていないという状況です。ただ、毎年のように切れ目なく被害が出ているというのはこの図から読み取れるのではないかというふうに思います。
 次に3番目として、これは有明海・八代海・橘湾における夏場の赤潮の代表種でありますシャトネラ、これの件数を抜き出したものであります。発生件数は1桁台が主なんですけれども。これも赤潮の全体の発生件数が98年ぐらいから増えているというようなご説明を差し上げましたけれども、シャトネラの赤潮の件数も98年ぐらいからこのように多く発生するというような状況が見てとれます。これも前回の委員会でも夏場の鞭毛藻赤潮が増えているんではないかというような指摘がありましたけれども、引き続きそういう傾向が続いているというふうに考えられます。
 これはシャトネラの最大密度ですけれども、これに関しても大体98年ぐらいから高い密度が出てくるという傾向は伺えるようです。特に有明海のほうはですね。ここに出ています最大密度、例えばシャトネラですとここで5万1,600、1mL当たりという数字が出ているわけですけれども、八代海、これ瞬間値ではあるんですけれども、20万というような数値も出ております。
 シャトネラの赤潮というのは1970年代から80年代に瀬戸内海のほうで大変猛威を振るいまして社会的な問題になったわけですけれども、そうした当時の瀬戸内海でもこのような高い細胞密度というのはほとんど観察されたことがないということで、現状今有明海・八代海で出ているシャトネラの赤潮というのがいかに規模が大きいものかということがこれでわかるかと思います。
 (1)の説明は以上です。
 次に、(2)として、有明海における赤潮の発生と水質との関連についてご説明をいたします。
 1998年以降、赤潮の件数が増えているということで、前回の委員会報告でもこの件は指摘をされております。細かく見ますと、冬場の珪藻類による赤潮が顕著に増加しているということが指摘をされております。その原因は冒頭に申しましたように、冬季の水温上昇であるとか透明度の上昇、富栄養化、こういったものが指摘されております。当然この水温、透明度、富栄養化、これは窒素とかリンに相当するんですけれども、こういった水質との関連に関して、やはりこれは長期の水質データを改めて整理いたしまして検討を試みる必要があるということで、これからご紹介をいたしたいと思います。
 解析に用いた資料は、佐賀県さんが長年調査をされている結果をここの出典というところに書いております。この出典が「有明海佐賀県海域の海況と漁業等の現況」ということで整理されている資料があります。そこから抜き出したものであります。実はここに●で示しています定点というのが11、佐賀県さんの海域であるんですけれども、これは水産庁が長年実施してきました浅海定線調査というものの1972年からのデータがずっと蓄積があります。このデータをこの度再度解析を行ったという状況です。ちょっと11定点すべては大変なので、一番岸寄りというか干潟域の定点10、これは国営干拓の沖になるわけですけれども、この定点10、国営干拓沖ということで後でご説明をいたします。それと、沖合側、これは諫早湾がこちらにありますので、諫早湾の湾口に当たります大浦沖、こちらは比較的水深が深くて、干潟域ではないところなんですけれども、この2定点のデータをこれからお示ししたいと思います。
 まず水温ですけれども、これは国営干拓沖の水温の変動でございます。平成18年委員会報告でも1980年代を底として長期的に水温の上昇傾向があるというような指摘があったんですけれども、引き続きその傾向は続いているというような状況がわかります。特に春ですね、水温の上昇が顕著に見えるという状況です。ただ、この上昇の幅なんですけれども、これは1℃程度ですので、大体この傾向というのは瀬戸内海などほかの沿岸海域でも同じような傾向が確認をされているという状況です。大浦沖もほぼ同じように国営干拓と同じように1℃程度の長期の水温の上昇というものが認められています。
 塩分ですけれども、これに関しては長期の変動というものは特に見当たっておりません。これも大浦沖の塩分ですけれども、長期の変動というのは特に見られておりません。
 次に透明度ですけれども、これも委員会報告で前回上昇傾向が認められるということでしたけれども、これはステーション10のデータを、季節をすべてならしてプロットしたものですけれども、このように上昇傾向が見えます。季節を分解して見た場合に、特に秋ですね、9月~11月、それと冬、12月~2月にかけてこの上昇傾向が明瞭で、夏はあまり透明度の上昇というのは認められないということで、秋、冬に透明度が上がっているというのがよくわかるかと思います。
 ただ、赤潮の発生との関連で言いますと1998年からということなんですけれども、1998年、この辺ですけれども、実は赤潮の発生が増える時期よりもさらに前から透明度はむしろずっと上昇傾向があったということで、特に98年から際立って透明度が急激に上がっているというわけではどうもなさそうです。大浦沖も透明度の上昇がこのように見えますけれども、先ほどの国営干拓沖に比較しますとこの上昇幅はかなり緩やかとなっております。
 次に溶存態無機窒素、今後はDINというふうに称してご説明いたしますけれども、これの変動でございます。有明海のような干潟域というのは脱窒活動が盛んですので、Nの濃度というのが生物生産の律速になりやすい海域なのですけれども、これはやはり植物プランクトンの発生に大きく影響を与えるということが言われております。
 ただ、こうやって整理してみますと、長期の上昇、低下という傾向はこの図では確認することができておりません。ただ、DINの濃度が例えば夏場を見ていただきたいと思うんですけれども、10、20というところで変動をしているという状況です。つまり、有明海というのはもともとDIN濃度がほかの海域と比べて高いということが言えますので、ここの点は他海域と同様な認識というわけにはいかないと思います。もともと栄養濃度が非常に高いところで変動しているというところが特徴です。大浦沖ですけれども、これも長期のDINの変動というのは見当たりませんでした。季節を分解しても特にその変動はわかりません。
 最後になりますけれども、溶存態無機リン濃度、これはDIPと通常我々呼んでおりますけれども、これの変動です。先ほど窒素の変動はなかったんですけれども、このDIPに関しては2000年代に入ったぐらいから急増しているのがここでわかるかと思います。季節もほぼすべての季節にわたってこの2000年に入った、大体2000年代の中ごろなんですけれども、上昇が見られます。
 この理由なんですけれども、後ほどちょっと解説をしてみたいと思いますけれども、どうも陸域から負荷されるリンが近年増えているというようなデータは得られておりませんので、恐らく内部生産との関連があるんじゃないかというふうに推定をしております。後ほどもう少し考察を加えてみたいと思います。大浦沖も同様にリンの上昇傾向が見てとれます。
 プランクトンの沈殿量ですけれども、佐賀県海域においても長期にプランクトン沈殿量が低下をするというような傾向が認められておりまして、特に近年の減少幅で言いますと秋と冬の減少が非常に激しいというのがデータとして見てとれます。大浦沖も同様に近年プランクトンの沈殿量が非常に低く推移するという状況が見てとれます。
 すべてのデータを図示したのがこの図であります。今までご説明した内容を簡単に整理しますと、冬から春の水温が1℃上昇しています。非常にここで見ますと1℃の幅というのはこの程度なんですけれども、上昇があるということと。透明度の上昇は冬と秋に明瞭でした。あと、DIPが2000年代前半半ばぐらいから急増していると。プランクトン沈殿量は90年代以降冬と春に顕著に低下するというのが国営干拓の特徴でございました。大浦沖もほぼ同様な傾向でありまして、水温、透明度の上昇はほぼ国営干拓沖と同じ状況。国営干拓が大きいですね。あと、DIN、DIPについては長期の変動は不明瞭ですけれども、Pの低下というのはゆっくりですけれども、認められたと。
 特に1970年代の7月から8月にかけて、DINやDIPが非常に低いというような時期がこの大浦沖では見られました。この傾向は沿岸側の国営干拓沖よりもむしろその沖側で非常に顕著であったということを考えますと、どうもこの70年代の冬から春にかけてはかなり内部生産というか植物プランクトンの発生量が活発で、栄養塩がかなり利用されていたんじゃないかということが推定をされました。プランクトンの沈殿量は90年代以降、1月~3月の冬場に非常に低くなっているという状況です。
 水質データのまとめですけれども、やはり水質、特に水温は上昇が認められたんですけれども、この1℃からあるいは2℃という水温差がどの程度赤潮発生に貢献しているか、年間の水温は8℃ぐらいから30℃近くまで20℃以上変動するわけですけれども、その中のわずか1℃、2℃の違いが果たしてどの程度珪藻の発生を増やしているのかというのはもう少し検証が必要ではないかなというふうに考えております。
 透明度に関してはやはり長期的な上昇傾向が認められます。ただ、その透明度が上昇したから光合成が活発になったのか、あるいはそもそもプランクトンの発生量が減ったために透明度が低下したのか、この辺の検証というのは必要じゃないかなというふうに考えております。
 栄養塩に関して、DINは変動が認められない。ただDIPは近年上昇傾向にあるということです。
 陸域からの栄養負荷に変動がないということは委員会でも報告されておりますので、そうなってくると海域での内部生産、これが低下することによって場合によってはリンが余っているんではないか、リンの余剰現象が起きているのではないかということが疑われます。
 ここで赤潮の発生件数の増加と水質、底質との関係を整理しておきます。生物・水産資源・水環境小委員会におきましては、前々回までの二枚貝減少要因の作業におきまして、夏場の赤潮、それと貧酸素の発生というものが致死的に作用している海域、特に湾奥の西部ですけれども、こういうことがあるということは確認をしております。その一方で有明海全体を見回すと、どうも基礎生産能力が低下している、えさ不足になっているんじゃないか、結果として二枚貝の再生産が落ちているんじゃないかということを示唆をいたしました。これは富栄養化の進行とはむしろ異なる事象をとらえている可能性が示唆されています。そこで、この赤潮の発生件数と植物プランクトンの増減との関係についてもう少し詳細な解析を行う必要があるということで取組をしております。
 ここは福岡県さんが1965年から浅海定線調査で集められたプランクトン沈殿量のデータをお示ししています。プランクトン沈殿量というものは実は口径が30センチ、プランクトンネットの目合いが100μ、これで海面近くを鉛直引きをします。得られた沈殿物をホルマリンで固定して、目盛が入った沈殿管の中でその沈殿物のボリュームですね、これを100L当たり何mLの沈殿物があったと、こういった表現の仕方をする、古典的な調査の方法です。これは脈々と1965年から継続されてきているわけです。
 この中身なんですけれども、植物プランクトンの大型のもの、あるいは動物プランクトン、カイアシ類とか、こういったものが含まれております。残念ながら植物プランクトンのほとんどはネットを通過してしまいますので、クロロフィル、いわゆる植物プランクトンの発生量そのものをダイレクトに示した数値とは必ずしもなってはおりません。この点は3月の親委員会のほうでも根拠として弱いのではないかというようなことが実際に指摘をされております。
 これは実際に委員会報告、第2回のこの小委員会でお示しした資料で、親委員会のほうにも示されたものですけれども、これに関して先ほど佐賀県海域でも同様の減少傾向というのが見えております。ここの解析をもう少し突っ込んで行った結果をお示しします。
 これは近年はプランクトン沈殿量だけではなくてクロロフィルの測定もされるようになっております。そこで、プランクトンの沈殿量とクロロフィル濃度との関係を季節ごとに分解して散布図を描いてみたものがこの図になります。二つのデータを並べておるんですけれども、これは定点が異なります。これを見ますと、実際にクロロフィルの値の上昇とプランクトン沈殿量との間に正の相関が見られるというのはこの●ですね、1月~3月期に明瞭に相関関係があるということがわかりました。ほかの季節に関してはかなりばらつきがあって正確には把握できないということがわかりました。ですので、少なくとも1月~3月という時期を限ってみれば、このプランクトン沈殿量は植物プランクトンの発生量の総量とかなり一致するというような結果を得ております。
 ということで、この1月~3月期のプランクトン沈殿量のみを抜き出しまして図を書いたものがこれになります。こうしてみますと福岡県さんの海域では1960年代~70年代の中ごろにかけて急激にプランクトン沈殿量、すなわち植物プランクトンが増えるという現象が起きております。それが概ね10年ほど続いた後に、1980年代の中ごろに急減をいたしております。その後ずっと低位で推移して、95年から2000年ごろにやや上昇はありましたけれども、近年はさらに低くなっているというようなデータが得られております。実はこの1970年代の中ごろから80年代の中ごろというのは御存じとおりタイラギでありますとかアサリの漁獲量が最も有明海で多かった時期にも相当しているということであります。
 このプランクトン沈殿量、1月~3月期、冬場の珪藻の発生量と想定されますので、このデータを見ますと、98年からここから冬場の珪藻赤潮の報告が非常に増えているんですけれども、生のデータを見る限りむしろ昔のほうというかこの70年代、80年代のほうが珪藻が多かったというようなことがわかりまして、必ずしも珪藻が近年増えているとはこの中では言えないということがわかりました。
 これは非常に大事な部分でありまして、ここのスライドの説明というのは本日の一番の重要なポイントになります。冒頭に赤潮の発生件数が1998年、有明海のほうで増えているというようなことを申し上げましたけれども、これはこれまでの委員会でも有明海異変の象徴としてこの98年以降の赤潮の増加というものが取り上げられてきました。その数字を押し上げているのは冬場の珪藻赤潮の発生件数の多さでございます。ただ、今珪藻赤潮に関する報告を一つ一つデータを整理したものをながめますと、いわゆる赤潮として認知されるようなレベルというのはむしろ最近低下していると。実際に出てきている報告書の珪藻類の細胞密度のデータを見ますと必ずしも海域で海水が着色するような赤潮とはとても言えないレベルでも赤潮としての報告が上がっているという現実がありました。もちろんそういうレベルでもノリの色落ちというものは発生しているわけです。
 そこで、赤潮の観測を行っておられる、こちら各県の水産試験場の場長さん皆さん委員として参加されておりますけれども、担当者の方々に一つ一つご意見を伺いましたところ、珪藻の発生頻度というのは昔とそう変わらないかむしろ減ってるぐらいであると。ただ、近年はノリが色落ちするようになったと。これが1998年ぐらいからノリが色落ちするのにイベントがなかったというわけにはいきませんので、報告を密にするようになったというふうな事実を確認をいたしました。
 つまり、珪藻の出現レベルというのは同じかむしろ減っているという状況の中で、ノリの色落ちが発生するということで報告を密にするようになったということは、これは人為的理由によっていわゆる発見の機会が増大したということが推定されました。先ほどのプランクトン沈殿量のデータから確かに98年以降増加傾向というのはこれは支持することができません。よって、冬場の赤潮の発生件数は統計データとしては増えてはおりますけれども、これをそのまま珪藻類の絶対的な出現量が増えているというふうに解釈することは難しいのではないかというふうに考えています。むしろその時期から海域の栄養塩環境が何らか悪化をいたしまして深刻化してしまったんじゃないかということがどうも実情のようです。
 このことは富栄養化とはむしろ逆の現象が起きていることを示唆するものであります。ただ残念ながら、DINの濃度で見ますとその辺の栄養環境の悪化というところが必ずしも見えてはおりません。ですので、この見解に関しては平成18年委員会報告とも大きく内容異なりますので、こちらから小委員会のほうで取りまとめたデータを上部の委員会においても十分検討を加えていただいて、結論を出していただけたらいいんじゃないかというふうに考えております。
 次に、3番目として有明海・八代海における夏場の鞭毛藻赤潮の発生状況ということで整理した結果をご説明いたします。
 これからは同じようなスライドが続きますけれども。有明海に関してはシャトネラ属とヘテロシグマ アカシオ属の、上側は発生の日数、下側は最大細胞密度、これの1984年からのデータを県別に示しております。これは福岡県さんのデータであります。シャトネラとヘテロシグマは長期の出現パターンというのは福岡県海域では特に増減は認められておりません。
 次にこれは佐賀県さんの海域のデータで、全く同じ整理でございます。発生件数が福岡県より多いんですけれども、やはり長期間眺めた場合に、特にこの両者が増えてる減ってるというところは必ずしも明瞭ではありませんでした。
 次に、有明海の熊本県海域のデータであります。同じようにこのシャトネラとヘテロシグマという整理なんですけれども。シャトネラで見ますと昔から出てはいるんですけれども、若干ですけれども、98年ぐらいから発生日数も増えていますし、最大密度も増えているというのが見てとれます。あと、こちらがヘテロシグマ アカシオですけれども、これも96年ぐらいから発生日数、最大密度も増えるというような状況が見てとれます。夏場の赤潮に関しては発見機会の増大というのはありませんので、これはほぼ同じような基準に基づいて整理をされていますので、やはりこの増加傾向というのは間違いないんじゃないかなというふうに考えております。
 すみません、長崎県海域を飛ばしてました、申し訳ありません。長崎県海域で見ますとこちらも同じような図ですけれども、98年ぐらいからシャトネラの頻度が増加してきて、日数も長くなっております。最大密度も98年以降高くなっていると。ヘテロシグマはそのパターンがもっと顕著でして、98年ぐらいから日数、最大密度も増えるという傾向が見てとれます。
 ここが有明海4県のそれぞれのパターンであります。
 次に八代海に移ります。これは八代海の熊本県海域における赤潮のパターン。八代海域は4種類の有害種がありますので、まずシャトネラとヘテロシグマ アカシオのパターンをこちらにお示しをしております。こちらを見ますと、シャトネラはやはり98年、特に2000年以降ですね、増加が認められています。ヘテロシグマに関しては長期の変動はない。
 生物種が変わりまして、今度はコックロディニウム、このオレンジ色、それとカレニア ミキモトイ、緑になりますけれども、同じ八代海の熊本県海域でのパターンです。コックロディニウムに関しては昔からずっと出現がありまして、出ていない時期ですね、1986年~88年の間とか、あるいは92年から97年の間に何年か連続して出ない空白期間がどうもあると。カレニアに関してはこの海域ではあまり赤潮が出ないということで整理がされております。
 同じ八代海の今度は鹿児島県海域になります。これも熊本県海域と連続した海域ですので、2000年ぐらいからシャトネラの出現が高頻度になっております。ほぼ同じ時期にヘテロシグマ アカシオもよく出るというようなパターンが見てとられております。このヘテロシグマが2000年以降よく出るというのは熊本県海域とはちょっと異なる現象であります。コックロディニウムも熊本県海域と同じように昔からずっと出ていまして、その出現していない時期が80年代の後半と90年代の半ばから後半にあったと。カレニアはこの海域ではあまり赤潮は出ないということが読み取れます。
 有明海・八代海におけます98年以降の鞭毛藻赤潮の発生状況に関する考察ですけれども、前回委員会報告で98年以降有明海でシャトネラ属による赤潮が増加傾向というのが指摘をされています。我々のほうの整理でもヘテロシグマ アカシオで同様の傾向を認めております。特に長崎県海域でありますとか熊本県海域の有明海側で、これは有明海の中部に相当するんですけれども、顕著になっております。八代海においては2000年以降コックロディニウムからシャトネラ属へ主要な赤潮構成種の変化が起きているということであります。
 両海域に共通している事象として、98年~2000年を境に変動幅、特に生物の出現密度であるとか種類というのが変わっているということがあります。こういう広い海域にわたって変わるということに関しては、場合によっては気象でありますとか、外海側の潮位の変動あるいは局所的な潮流の変化、こういったものがマクロな要因としてどうも作用しているんじゃないかということも考えられましたので、こういうものに関しては今後海域再生委員会などとも連携しながら関連について調査をしていく必要があるんじゃないかというふうに考えています。
 98年以降のシャトネラ赤潮の発生頻度の増加に関しましてですけれども、先ほどの珪藻とは異なってこれは発見の機会の増大ということはございません。こうした前回の委員会ではシャトネラ赤潮の増大要因として潮流の低下であるとか海底の無酸素化との因果関係が指摘されております。水質に関しましてはご報告のとおりでして、特に大きな変動がない。底質に見ますと近年はむしろ細粒化よりは粗粒化しているという傾向があります。潮流に関しても有明海におきましては月の昇降点変動による外海側の潮流変化というのが大きく作用しておりますので、近年はむしろ潮流が回復傾向というふうに推察されております。
 貧酸素に関しては次回以降の委員会で整理をするという予定ですので、ここでは詳細は割愛をさせていただきますけれども、どうも貧酸素が出てからシャトネラという順番ではなくて、シャトネラ赤潮が出てから貧酸素が助長されるというケースが多いようです。ただ、なぜ最近増えてるか減ってるかという部分に関しましては、どうもこの海域もともとシャトネラ赤潮を起こすだけの十分な栄養塩、特に有明海ですけれども、もともとそういうポテンシャルが大きかったんだけれども、なぜか98年以降増えているというところがまさに判断が難しい部分じゃないかなというふうに考えております。
 では4番目として、現場海域における赤潮生物の出現特性についてご説明をいたします。これはシャトネラ属の生活史を図示したもので、これは夏場の鞭毛藻赤潮、ほぼ似たような生活史を持っております。彼らは普段海底の泥の中にシストという休眠状態で存在をしております。ある程度水温が上昇してくる、シャトネラの場合は20℃と言われているんですけれども、発芽をしまして海面近くで光合成をして活発に増えて赤潮を起こすと。その後また海底に沈降していってシストに戻って、次の越冬をすると、こういった発生パターンを繰り返しております。
 では、このシストはどこにどのぐらいあるのかという調査の結果をお示しします。これは有明海で2010年と2011年に行われた調査結果でございます。細かな数値は省きますけれども、一番高いところでは1cm3の泥当たり500個以上のシストがある海域もございます。分布の中心層は有明海奥部の西部海域ですね、佐賀県から長崎県にかけての海域と熊本県の海域に多い傾向が認められますけれども、かなり年変動があるというのも事実であります。
 これは八代海におけるシストの分布であります。こちらはほぼ全域に、粗密はあるんですけれども、天草側の内湾で高いという部分はあるんですけれども、全体的に分布しているというのがわかるかと思います。
 次に今度は栄養細胞ですけれども、これは実際に赤潮の分布の出現状況ですけれども。2008年、初期の赤潮が有明海の奥部でまず出ます。それが諫早湾のほうに移動するとともに、島原半島沿いに分布が南のほうに広がっていって消滅するというのが2008年のパターン。2009年は全域的に初期出現が認められるんですけれども、増殖はやはり湾奥西部を中心に起きまして、徐々に島原半島沿いに分布が南に移動して消えていくというようなパターンが見えております。
 ここで橘湾のことについてご説明をいたしたいと思います。これは1989年~2010年までの有明海側でのシャトネラ赤潮の発生をこの紫色で示しております。橘湾で3回赤潮が出ているんですけれども。これを見ますと、有明海側で赤潮が発生してから1週間から10日しますと橘湾側で突然赤潮が出るというような現象が見られていまして、どうも有明海側から橘湾に流入してるんじゃないかということが前々から指摘がされておりました。
 2009年に、これは実際に赤潮が出てる時期に長崎県さんが調査船を出しまして、船を走らせながらプランクトンの指標となるクロロフィル蛍光値、水温、塩分を情報収集するという走行型の調査をやられているんですけれども、その図であります。
 これを見ますと、この橘湾というのは天草灘に面した外洋域ですので外洋的な性格を示しているんですけれども、こちら右側の塩分を見ますと湾の真ん中に25PSUという非常に低い、甘い水が存在します。ほかは30を超えて高いんですけれども、その甘い水のところにこのようにクロロフィルの高い値及びシャトネラの高い密度というものが観察をされています。これはスポット的に出ているんですけれども、どうもこれは有明海側から飛び出した有明海の水じゃないかということが考えられました。翌年も似たような兆候がありまして、塩分が低いこの海域でクロロフィルも高くてシャトネラも高いというようなデータが得られております。
 橘湾において甘い水とともに連動して突然高いシャトネラが出てくるということはどうも間違いなさそうなんですけれども、有明海側からそれが本当に来たのかというところを直接観察したわけではございません。それで、2009年に国交省さんが観測された海洋短波レーダーによる表層流況のデータを解析をしております。
 実は2009年というのは夏場、7月の下旬に南よりの風が吹いている中で2度ほど北風が強く吹いた時期がありました。この北風が吹く前は表層の流況はあまりないんですけれども、北風が吹くと表層流況湾奥から湾口部に向かって急に南下をする動きがあったと。2回目の北風のときも同様に表層の流況はどんどんと南のほうに流れていくという実際の観測が出ていました、これは現場でプランクトンの調査結果を図示した結果とほぼ同じ状況でありまして、やはり有明海側の赤潮が橘湾側に急速に移送されたことはほぼ間違いないんじゃないかというふうに考えております。
 ということで、有明海では赤潮が毎年のように発生するんですけれども、その湾奥で発生したものが橘湾のほうに流入していくということで、橘湾の赤潮というのはやはり有明海側に影響を受けているということがこの結果でわかりました。
 八代海側はではどうなのかということなんですけれども、これは2009年の下側が実際の観測例でございまして、北部海域で発生した赤潮が7月30~8月3日にかけて急速に南部に赤潮が流入するという状況が発生しております。当時の水質と気象のデータに基づいて粒子の漂流モデルで再現いたしますと、ほぼこういう形になりまして、実際の分布とほぼ同じような形をするということで、やはりこれも移流が起きているんじゃないかということが証明をされております。
 こうした赤潮が県を超えてどんどんと越境していくという現象なんですけれども、例えば1984年のカレニア赤潮というのは三重県で発生したものが和歌山県まで流れ着いて漁業被害を与えるという事例が知られておりますし、2008年のカレニア赤潮というのは周防灘の福岡県海域辺りからずっと最後は宮崎県海域まで流れて行くというような現象も知られております。2009年の有明海から橘湾、あるいは八代海の北部から南部の移動距離というのはこの程度でございますので、特に国内の中で見て長距離動いているというわけではございません。むしろ日常的にこれが起きてもおかしくないような移流だという認識を持ったほうがいいんじゃないかというふうに思います。
 4番目として、同じ(4)なんですけれども、現場海域における赤潮生物の出現特性ということで、時間がないので簡単に説明していきます。
 これは有明海におけるシャトネラ アンティカの日周鉛直移動を観測したものです。ここに4回観測を行って、昼夜観測が行われております。下に時間が書いてありますけれども、朝8時から夜中の0時、朝8時までというようなデータ、これは佐賀大学さんが有明海で観測された結果であります。シャトネラ属を含みまして鞭毛藻というものは海面で光合成をするため、昼間は海面に張り付いていますけれども、夜間は海底近くにもぐりましてここで栄養塩を吸収するというような日周鉛直移動パターンをすることがわかっています。有明海側では海底近くまで下りていっているということがわかります。
 実際にシャトネラの赤潮が発生しているときの栄養塩環境なんですけれども、この青、黄色というところが栄養塩が高い海域であります。干潟域の海面に溶出した栄養塩がたくさんあるわけですけれども、シャトネラが赤潮になってくると海底近くまで栄養塩がほとんど枯渇すると。2回目の赤潮のときに減る。ここもそうですね。ということで、シャトネラが起きますと海底近くの栄養塩までゼロ近く消費されるということがわかっております。
 逆に、珪藻類というのはこういう上下に運動できませんので、表面の栄養しか利用できないということで、上下に動くという特性が、上下に偏在している栄養塩を万遍なく利用できるという意味でシャトネラ属の生態学的なアドバンテージになっていることがよくわかります。
 これは八代海において同じ昼夜観測をされた結果であります。これは熊本県さんの資料からデータを得ておりますけれども。八代海は水深が30mを超えて非常に深い海域であります。既往知見によりますと、シャトネラは上下に7m程度しか泳ぐことができないという知見があります。このデータでも分布の中心層は表層のものが夜中潜るんですけれども、行っても10mぐらいということで、そこが多分生物学的に上下できる限界なんだろうということがわかります。
 ただ、ところどころ深いところに細胞密度が分布するんですけれども、恐らくこれは鉛直的な水の混合によって深いところに拡散しているんじゃないかなというふうに推定されました。基本的にやはり7~10mというのが鉛直移動の範囲内で、海底の栄養塩は少なくとも八代海では利用できないということがわかります。
 ただ、漁場を見ますと、これは実は鹿児島県さんの漁協の調べた結果であります。水深がこちらになります。0~30m、こちらは細胞密度になります。2010年7月のデータなんですけれども、通常養殖のいけすというのは表面の10mぐらいのところに置いてあるんですけれども、当然シャトネラ濃く表層におりますので、当時漁協さんは水深が15mの、シャトネラが10mしか上下できないという情報があったために、15m以上沈めておけば大丈夫だろうということでいけすを深く沈めておったんですけれども、残念ながらこの致死密度に達する濃度が深いところでも観察をされたということで漁業被害を免れることができませんでした。恐らくこういう漁場付近では複雑な海水の鉛直的な流動というものが起きておりまして、実際の生物学的な分布を乱してしまうという要因になっているわけなので、こういった漁場周辺のミクロな水の動きというものに関してはやはり我々もっと見ていかないと漁業被害はいつまでたっても回避できないんじゃないかというふうに考えております。
 あと、シャトネラの生物学的な要素として、彼らが好む水分と塩分を培養試験に基づいて試験した結果がこの図であります。山砥ら(2006)のデータになっております。シャトネラというのは水温が25℃~32.5℃、特に30℃付近で活発に増殖するというのがこのデータでわかります。通常珪藻類というものは30℃だとかなり増殖が低下しますので、真夏の非常に暖かい表面の海水を好むという性質が見てとれます。
 先ほどのは諫早湾の培養株なんですけれども、八代海の株を使ってもやはり30℃付近で活発に増えるという結果がわかっております。
 現地で観測された細胞密度と水温、塩分等をプロットしたのがこのデータでありまして、やはり出現水温は23~29℃、高い細胞密度は26~28℃付近で観察をされておるということで。先ほどの培養試験結果とほぼ一致する結果を得ておりまして、これが恐らくシャトネラの好む温度帯だということがよくわかります。
 ここまで水温、塩分、栄養塩など水質の点から見てきたわけですけれども、実はほかの要因も強くシャトネラの赤潮に影響するということでご紹介をいたします。これは諫早湾の2定点ですね、諫早湾の中央のB3、これは農水局さんの櫓があるところですけれども、ここのデータと、佐賀県さんの沖、沖神瀬西というところのデータをこれからお示しします。
 これは2009年と2010年の赤潮発生時のデータで、赤がシャトネラ、緑が珪藻類の出現状況で、6月から9月までのデータをプロットしております。珪藻類というのは非常にスパイク的に出現するんですけれども、そのスパイクのすき間で赤潮が出るというようなことがあります。つまり、珪藻類の谷間でシャトネラの赤潮が出るということがわかります。
 これは2011年と12年、2011年は非発生年だったので全く出現しておりませんけれども、2012年も珪藻類が谷間のところでシャトネラが赤潮を起こすというようなことが起きていまして、この両者には強い競合関係があることがわかります。
 八代海はこういう細かいデータがなかったんですけれども、周年データを比較したものがこれで、緑がその年の7月、8月の珪藻類の最大細胞密度の上位3回のカウントの平均値であります。これにその年のシャトネラ、赤、コックロディニウム、青の出現密度を重ねたものですけれども、珪藻類が優勢な年というのはここの年を除いて概ね鞭毛藻があまり出ないというような状況がうかがえまして、概略ですけれども、競合関係が見てうかがえる状況です。
 珪藻類との種間競合なんですけれども、一般的に赤潮鞭毛藻というのは珪藻と比較して増殖速度は非常に低くなっております。ですので、基本的にヨーイドンでスタートした場合は珪藻と競合して負けるということになります。有明海、八代海のいずれにおきましても夏場の鞭毛藻赤潮は珪藻が衰退したその生態学的なニッチで発生していることが共通しているのではないかということがわかりました。
 最後に5番目として、赤潮(夏場)の発生機構・予察手法に関する知見を取りまとめたものです。これは中嶋ら(2008)のデータから抜き出したものでありますけれども、このスライドは先ほど珪藻と鞭毛藻との競合関係が認められると申し上げましたけれども、その競合を引き起こす際に降水量が大きく作用しているというデータでございます。すなわち、雨が降ると珪藻が増えてシャトネラは低く出ると、そういった傾向を認めたものであります。
 そういったものを総合いたしまして、このような予察をされております。7月16~25日までの佐賀市の合計降水量が80mmを下回ると珪藻類の増殖が低調でシャトネラ赤潮が発生する。逆に、80mm以上の雨が降れば珪藻が増えてその年は赤潮が出ないと、そういった簡単ですけれども、非常に簡単な予察式をご提案されております。
 同じようなこれは傾向になるんですけれども、吉田(2012)のほうで降水量以外に日射量についても関連があるとの知見がありましたのでご紹介します。これは降水量をこちらにとっておるわけですけれども、全天日射量、これは5月、6月の全天日射量を整理したものでありまして、黒い四角が赤潮の大発生年になります。赤潮がよく発生する年というのは5月、6月の全天日射量が非常に多い年ということが示唆をされております。この日射量が多いとシャトネラの赤潮が出やすいという結果は実は瀬戸内海のほうでも指摘をされている状況でございます。
 さらに、これは松原ら(2011)のほうでさらに判別式を用いて気象との関連を調べたものでありまして、これを見ますと、大体先ほどの降水量、日射量というキーワードが出ておりましたけれども、降雨量が少なくて日射量が多い年にはこの赤丸で示した赤潮の発生年がこちら側にほとんどきているという状況です。
 このように気象要因というのが有明海の赤潮発生に大きく影響している、あるいは競合種の珪藻類の出現パターンというのが影響しているのはわかるんですけれども、残念ながらこうした気象要因でありますとか珪藻を増やす減らすというのは人為的にコントロールがなかなか難しいというのが実情であります。ただ、こういった予察ができれば大変有益な情報が得られますし、何より1998年以降、なぜ鞭毛藻赤潮が増えたのかといった長期の変動要因との関連というのも場合によっては明らかになるかもしれません。
 有明海での赤潮の発生までのフロー図をここに簡単ですけれどもしておりますが、時間の都合上割愛させていただきます。
 これも同じように、先ほどのフロー図をポンチ絵にしたものでございます。ちょっと時間の都合上これもご説明は割愛させていただきますので、お手元の資料でご確認をよろしくお願いします。
 次に、八代海側に移ります。八代海側でも各種の予察が試みられておりますのでご紹介いたします。これは折田ら(2013)に要約されております八代海での赤潮の発生パターンであります。大きく三つのパターンがありまして、IからIII型の地元成長広域型、地元成長限定型、それと3番目として流入型というものに名称を与えられています。少なくともこのうち2009年の赤潮に関しては3番目の流入型であったということがモデルでも再現をされている状況です。
 これは櫻田ら(2008)におきまして各種の全部で82項目の気象、水質データを使いました重回帰分析を実施した結果、気温、降水量、それと底層水温、DIN濃度というのが説明変数として有意であるというデータが抽出をされております。この資料はお手元の資料の差し替え版がありますので、そちらのほうをご参照お願いしたいと思います。
 この4項目を使うことによって例えば赤潮発生直前であります6月の下旬の段階で予測率97%で赤潮の発生、非発生を判別できるというような既往知見がございました。97%というのは非常に高い確率であります。
 同じように、折田ら(2013)におきましても同じような重回帰分析を行っております。こちらでは日照時間、平均風速、梅雨入り日、この三つの因子で予測ができるということで、過去1988年~2010年までの赤潮を100%、発生年、非発生年をこの3項目で判別することができるというような結果が示されております。
 その因子の関係になるわけですけれども、ここにフロー図を示しております。大体やはり雨の降り方、梅雨入り日が早いか遅いかというのは当然雨の降り方とか日照にも相当しますし、風という部分がどういうふうに影響しているかというのはここでは明確には示されておりませんけれども、やはり気象状況というのが大きく影響するというのがわかる状況であります。
 これは斎藤ら(2012)におきましてDCAという手法分析を供しまして、熊本県海域の気象、実際水質、シャトネラの出現パターンというものを解析してSIモデルを算出したもので、ここでは六つの要因ですね、塩分、リン酸塩、成層強度、DIN、SiO2-Si、珪藻類の増殖速度というものが関連項目として選択されて、特にDIN、成層強度、珪藻増殖速度がシャトネラの出現に強く影響しているということが指摘をされております。
 八代海におけるシャトネラ赤潮の流れをフロー図にしておりますけれども、これもちょっと時間の都合上詳細は割愛させていただきます。
 ポンチ絵を書いておりますけれども、有明海との最大の違いというのは、有明海の場合は海底からの栄養塩の供給、当然河川からの供給と海底からの供給と二つあるわけですけれども、八代海は深い海域で、貧酸素も出ませんし、底質も非常によい海域ですので、下からの栄養の供給はあまりないという点が一つの特徴で、河川からの栄養塩供給というのが大きく影響しているというところが違いであります。
 さて、ここまで赤潮の発生状況について見てきました。これまで1998年以降に赤潮の発生件数が増大しているということから、有明海においても東京湾、伊勢湾、瀬戸内海同様に、富栄養化の進行によって水質とか底質が悪化して、結果として二枚貝が不漁になったり赤潮が出たり貧酸素が出たりというようなことが問題になっているというふうに漠とした状況ですけれども、理解をされておりました。
 しかし、有明海ではどうもほかの海域と比較して流入負荷の大きな変動は実際ないということと、近年はむしろ栄養塩、特にリンは内部生産不足で余っているような結果が得られました。そういう状況をかんがみますと、どうも有明海ではここの赤で示しました珪藻類という内部生産、基礎生産の主体でありますけれども、この勢いが落ちていて、これが二枚貝の当然えさになりますので、肥満度でありますとか再生産に対する悪影響を与えていると。この二枚貝が減れば当然捕食者が減りますので、珪藻が減って、なおかつ捕食者としての二枚貝もなくなれば、夏場の鞭毛藻、シャトネラを中心とした赤潮が増えてくると。この赤潮が出ると、海底有機物がどんどん落ちて貧酸素が発生してまた二枚貝を殺すというような、こうした負のスパイラルが起きている可能性がより強まりました。珪藻類が減るということは当然透明度が上がる、リンが余剰する、プランクトンの沈殿量が減るというデータにもなっております。
 ここの仮説を考える上でここの部分が海域の栄養塩の観測結果として特に律速となる窒素の変動が大きく見えてないというところでここはハテナマークがつくわけですけれども、ここの部分に関しますとさっきの二枚貝の取りまとめの流れからずっとこういう負のスパイラルというのが見えてきているわけです。この仮説が正しいのかどうかというのはさらに今後の貧酸素等の検討でも検証が必要というふうに考えておりますけれども、現段階ではこれが仮説として可能性が高いのではないかというふうに考えています。
 以上、膨大な資料の収集結果と解析状況についてご説明をいたしました。現場の赤潮発生の特徴、メカニズムについてはかなり豊富な知見が存在しているということが今回の資料収集でもわかったかというふうに思います。一方で、有明海の現状というのが富栄養化しているのか、それとも栄養環境が悪くなっているのか、要は低下しているのかと、これは大変重要な命題なのですけれども、まだ確信的なデータはそろってはおりません。今後はこうした未解明の部分も含めまして赤潮の発生、有明海の環境変化についてさらに取組を強化していく必要があると考えております。
 最後に、前回委員会報告の連関図から赤潮に関連する部分を抜き出してみたものです。これは有明海でありますけれども、赤い太字、気象要因、珪藻類の低下、二枚貝の減少、こういったものがどうもシャトネラの赤潮に大きく影響しているというふうに判断をされております。また、海底からの栄養塩、これは海底に蓄積された有機懸濁物の分解と貧酸素水塊からもたらされるものですけれども、これも成層化して、中で鉛直移動を行う鞭毛藻にとっては有利な環境ではないかというふうに考えられました。他の要因についてもさらに知見の蓄積が必要と考えます。
 八代海のほうは連関図は非常にシンプルになりまして、気象要因と珪藻類との競合関係というものが、それと成層ですね、成層強度の強化というところが大きく影響しているということがわかります。低層環境に関しましては水深が深い八代海では有明海ほど影響がないというふうに判断をされております。
 最後ですけれども、データが不足している項目を示して最後とさせていただきたいと思います。赤潮に関して膨大な項目があるんですけれども、幾つか抜けている点があります。まず、赤潮の初期発生海域が特定をされていないということです。もちろんシストが発生源ではあるんですけれども、シストの分布と初期の増殖域というのは必ずしも一致はしていないという部分があります。あと、低密度からの一斉観測というものが行われていない現状では、初期の増殖域を特定することがやはり今後大事ですので、今後ともモニタリングの強化が必要と考えております。
 あと、競合関係を見ていった場合に、珪藻類が増えたら鞭毛藻は出ない、逆はある。珪藻類が減ると鞭毛藻が出るというのはわかるんですけれども、そのメカニズムですね、珪藻類が鞭毛藻を抑制するメカニズムがこれが栄養塩の競合なのか、あるいはアレロパシ等の生物的な要因なのか、ここの解明は必要というふうに考えております。
 あと、二枚貝の減少要因のところで、基礎生産力不足というところがあったわけですけれども、植物プランクトンの最大の捕食者というのは二枚貝なわけですけれども、それが不調ということはどうもプランクトンの基礎生産力が落ちているということが想定されます。それと同時にまた夏場はむしろ鞭毛藻の赤潮が増えているということがありますので、これが例えば二枚貝に対して親、幼生、両方に直接的な悪影響をもし与えているとすれば、それは大変また問題な部分がありますので、今後の解析が必要というふうに考えております。
 また、長期の変動、98年を境とした長期の変動というのが赤潮の発生パターンから推定されましたので、これがまとまった期間に連続して出たりとかあるいは出なかったりとかいう現象もあります。こうしたレジームシフトというほどのことなのかどうかわかりませんけれども、長期の変動あるいはある期間連続したり途切れたりというような変動について気象とか外海側の潮汐変動も見据えた解析が必要ではないかというふうに考えております。
 以上、赤潮の取りまとめに関して大変長くなりましたけれども、これで私のほうから発表を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○有瀧小委員会委員長 松山委員、どうもありがとうございました。
 まずは今回の取りまとめ、今お聞きになったように、関係各機関から非常に膨大なデータの提出と検討がございました。それと取りまとめていただいた松山委員にはこの場を借りて、お礼申し上げます。どうもありがとうございました。
 たくさんのデータをごく短い時間で説明していただきましたので、理解ができなかったところ、それからご質問ご意見等多々あると思うんですが、何かございましたらよろしくお願いいたします。山本委員、どうぞ。

○山本委員 最後の資料の9ページ差し替えというところで、重回帰分析をされているんですけれども、あるいは幾つかの解析を説明されましたけれども、それによると、シャトネラ アンティカの赤潮の発生要因として降水量とか、やはり水温あるいはDINというのが要素に上がってくるんですが。(2)で説明されたところで、長期にわたる水質の変化としては、98年以降赤潮発生件数は増えているけれども、そのころというかそれより前ですね、例えば水温は確かに上昇しているけれども、そんな大幅な上昇ではない。あるいは降水量というのが重回帰分析ではかなり効いている結果ですけれども、塩分に至ってはほとんどそういう変化がないということで。多分重回帰で要因を解析しているタイムスパンがもうちょっと短いからかもしれないんですけれども、こういう結果二つ同時に見せられるとちょっと矛盾しているように見えるんですが。

○松山委員 私もこの重回帰分析というのはとりあえず手元にあるデータを全部機械的に解析をして、どういう項目がリストアップされてくるか、リストアップされたデータでどこまで判別ができるかと、そういうような解析手法でやって。まずバックグラウンドとなる生物間とか環境との応答というところはまずあまり考えずに作業されているんだというふうに思っております。ただ、上がってきたデータを見てみますと、先生おっしゃるように、気温であるとか降水量というのが非常に大きく影響しているというのは共通して、異なる研究者が異なるデータを使ってやって降水量とかかなり出てきているわけですね。ただ現実として塩分とか水温それほど大きな変動は見られません。
 私思ったんですけれども、折田ら(2013)というデータの中で入梅日ですね、梅雨入り日というところが三つしかない項目の中で一つ上がってきておるんですけれども、どうも98年ぐらいから雨の降り方、つまり梅雨の入りがかなり早くなっていて、ここが長期的な気象要因として大きな変動だというような指摘がどうもあるみたいなんですね。つまり、水温はあまり変わらないんだけれども、雨の降る時期が昔より前倒しになっているというような状況がどうもあるみたいですので、それプラス外海側の潮汐変動ですよね。そういったものを大きな変動というのが層化的に効いている可能性もありますので、最後のほうの部分で少しお願い的な要素で、こうしたマクロな要因とこうした変動、浅海定線でとられているような沿岸の内湾のデータだけではなくて、外海側あるいは全体の気象の動きというところとの関連をやはり見ていかないとここはなかなか見えてこないんじゃないかなというふうに考えてはいるところです。
 特に降水量が増えると当然成層強度は上がる、あるいは降水量が増えると競合種の珪藻が増えてくるというふうな部分もありますので、各因子間それぞれ連動して動く部分がやはりありますので、もう少しそこの分解したような形で因子を整理しておいて、もう一度各機関のデータを今度はそろえて解析していくと要因がさらに絞られてくるのかなという気がしております。今回はそれぞれの文献値からデータを拾っただけですので、その詳細な解析というのはまた今後になるかなというふうに考えています。

○有瀧小委員会委員長 どうもありがとうございました。
 ほかには何かございませんか。速水委員。

○速水委員 26ページに下の方に、事実関係を整理すると、1998年以降の珪藻赤潮増加はいわゆる発見の機会増大であるというふうに推定されたという様にありますけれど、これは、夏場については機会の増大ということはあまり考えなくても良いという判断をされているのかということが一つです。もし夏場についても同じような発見機会の増大があるとすると、赤潮の予測の9ページ以降の部分ですね、ここのところで一般に説明をするときに少し混乱が生じるのではないかという様に思うのですけれど、いかがでしょうか。

○松山委員 御存じのとおりこのシャトネラ属でありますとかヘテロシグマ アカシオというのはもう1970年代から瀬戸内海側を中心に大変な漁業被害を与えているという中で、浅海定線の調査の中でそういう赤潮の発生が確認されれば、それは県の担当者が検出をしていくというところではかなりもう当初、少なくとも有明海では1984年から調査が行われているわけですけれども、かなり標準化された方法でやっていることは事実です。一応再確認は必要かとは思うんですけれども、昔の見逃しがあったかどうかという部分の再確認は必要なんですけれども、恐らく珪藻赤潮のような出ていたのにそれを無視していたというような、ノリが色落ちしないから無視をしていたということは多分それはほとんどないんじゃないかというふうに判断をしております。

○有瀧小委員会委員長 速水委員、よろしいでしょうか。
 ほかには何かございませんか。

○川村委員 意見ということでよろしいでしょうか。
 佐賀県です。佐賀県の浅海定線データをたくさん使っていただいているので、私も長くやっておりますので、二つ、三つ意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、透明度の件ですけれども。やはり有明海の湾奥部におきましては大潮、小潮でかなり変動があります。松山さんも言われましたけれども、赤潮が出れば透明度は当然下がりますので、やはり透明度を検証する場合は赤潮とかほかの要因も除いた方法があるのでしたらやはり除いて検討しないとなかなか難しいのではないかなと思っています。これは私のほうが本当はしないといけないのかもしれませんけれども。
 それから、1998年ぐらいから珪藻が増えたとおっしゃっていましたけれども、まさに私どももそのとおりだと思っています。これについては、特に冬場の珪藻については、佐賀の場合はノリ時期ですので、週に2回必ず調査に行くわけですね。ですから、頻度的には少なくとも平成2年ぐらいから、私が平成2年から担当したので、以降はかなりの頻度で出ていますので、調査頻度が少ないとかそういうことはあまりないかと思います。
 それと、確かに1998年ぐらいから私のやってきた中でもどういうわけかわからないですけれども、そのころから秋ですね、10月、11月、12月の赤潮は増えています。ですから、これに関してはノリの色落ちとの関係を見るのが一番早くて、1998年前後ぐらいからノリの色落ち被害が秋芽網期にも出るようになっています。それ以前はあまり出てなかったという経験があったので、それは非常に印象的に残っています。平成17年、16年以降につきましては秋芽網期の色落ちというのがほとんどなくなって、赤潮という感覚での発生は恐らくなかったんだと思います。
 それからもう一つは、珪藻について11月、12月のことをおっしゃっていますけれども、同じように1998年ぐらいからいわゆる珪藻ではない、フィブロカプサとかギムノディニューム・サンクイナムとか、ほかの植物プランクトンが発生するようになったのもこのころだと思います。ですから、トータル的にそういう赤潮が発生し、それによってクロロフィルが増えたという生データはないのですけれども、ノリの色落ち被害をきちっと押さえれば、ある程度赤潮の発生状況が見えてくると思っております。

○松山委員 貴重なご意見どうもありがとうございます。確かに透明度に関しては、時々かなりの極値が出てきますので、そういう極値の値をどう処理するかというのは多分今後の課題かなというふうに考えています。
 それと、珪藻赤潮の発生件数という部分と、あとプランクトン沈殿量にかなりバイオマスとしてドライに見ていく方法で今回ご説明をしたわけですけれども、発生が非常に短期であっても漁業被害というのは発生しますので、一つの日数とタイミング的なものも細かく解析していく必要があると思うんですけれども。
 今回は夏場の赤潮の取りまとめということで、冬場の珪藻赤潮とノリの色落ちに関してはコンパクトな説明にとどめたわけですけれども、場合によってはこの小委員会のほうでノリ漁場周辺でのノリ漁期の珪藻の挙動と色落ちに関しても取り上げていく必要がいずれは出てくるんではないかというふうに考えております。いずれにしても今後ともデータの解析等でご協力いただけたらというふうに思っております。

○有瀧小委員会委員長 ありがとうございます。
 先ほども申し上げましたが、非常に膨大なデータを極めて短期間でまとめて今回発表していますので、委員の方々まだまだご意見とかご質問等多々あると思うんですが、ちょっと時間もありませんので、残った意見・質問は事務局のほうにお寄せいただきたいと思います。今後この赤潮についても作業を続けていきますので、今回の作業仮説とそれから資料等をもっとシェイプアップしていきたいと思っております。何とぞご協力のほどよろしくお願いします。
 それと、前回の二枚貝もそうなんですが、当委員会で出した作業仮説の裏付けを求められることが多々出てきております。ですから、今日いろいろデータを出していただいた機関の方々には、ぜひ論文などの形で外部に公表していくということをお願いする一方、このことはみんなで連携・協力してやっていく必要があると思います。我々もお手伝いしますので、これからよろしくお願いいたしたいと思います。
 それでは、議題1のところは以上で一応閉めさせていただきます。
 その他のところになりますが、今日は農林水産省のほうから、諫早湾干拓事業の潮受堤防の排水門の開門に伴う環境変化を把握するための調査計画についてということでご説明いただきますので、よろしくお願いします。

○安部調査官 農林水産省の安部と申します。座って説明をさせていただきます。
 お手元の資料、資料3でございます。クリップどめになってございまして、本体ともう一つが調査位置図となってございます。本体のほうを中心に説明をさせていただきます。15分ほどお時間をちょうだいいたします。
 ページめくっていただきまして1ページでございます。調査の目的でございますけれども、諫早湾の排水門、これ12月に開門ということで動きがございますけれども、開門に当たりましては調整池、諫早湾、有明海の環境変化を把握していく必要があります。開門の前後を通じまして、約100地点程度で潮位・潮流、水質、生物生態系、漁業生産などの調査を行いまして、開門に伴います環境変化、これの分析・把握及びその結果公表をしていくこととさせていただいてございます。
 具体的な調査の工程でございます。開門、これは平成25年から平成30年の5年間を予定をしております。この中で2の(2)の調査期間でございますけれども、事前の調査ということで開門前の調査を1年間程度、それから開門時の調査ということで、開門期間5年間の調査を予定をしております。その後ですけれども、事後調査ということで、閉門後の調査、これを1年程度予定をしておるところでございます。
 大きく分けるとこの三つなんですけれども、実はその中で開門初期におきましては調査頻度を高めた開門初期調査を予定をしておりますし、開門直前のところも頻度を高めた調査を予定をしておるところでございます。大きな流れとしてはそういうことを考えてございます。
 2ページに移らせてください。3として調査計画の基本的な考え方ということでそこに上げさせていただいてございます。(1)で開門による変化と外部要因ということでございますけれども、開門時の変化といたしましては、開門による変化と、いわゆる外部条件による変化が考えられますことから、調整池につきましては塩水化を中心とした水質変化、生物生態系の変化等の変化を把握していくこととしてございます。
 一方、海域につきましては潮位・潮流、それから水質等の変化、貧酸素、赤潮などの変化、生物・漁業生産の変化などを把握をしていくということを考えてございます。
 基本的な考え方の(2)でございますけれども、調査項目の選定といたしましては、調査項目、水象でございます、潮位・潮流等、それから水質、底質、地形変化のほかに、関連します気象ですとか河川からの流量・水質を対象としてます。また、水質に関連するプランクトン、魚卵・稚仔魚、底生生物、海藻類、それから水生生物、干陸地周辺陸生動物、鳥類等々につきましても対象にすることとしてございます。
 ページ進みまして3ページでございますけれども、調査地点の選定でございます。開門による変化が最も大きい可能性があります調整池及び諫早湾を重点的に調査地点の配置を考えてございます。いわゆる開門アセス評価書における予測結果や既往調査との整合も考慮したいというふうに考えてございます。
 具体的には[1]からでございますけれども、[1]調整池につきましては、潮流、水質については排水門近辺と潮受堤防中央部付近、また干陸地及び旧河口付近の地点、それから本明川の地点などのデータを取得することによりまして、調整池の縦断的変化、横断的変化、それから河川流入部における変化を把握することができるものと考えてございます。
 [2]諫早湾でございますけれども、諫早湾内は湾奥部を中心に潮流、水質などの変化が生じると考えられております。湾奥部、湾央部、湾口部、それから湾外直近部などのライン、これが一つのラインですね。もう一つは湾の北部、中部、南部といったライン、こういうところを基本に調査データを取得していきたいと考えてございます。
 特に開門によるアサリの漁場などの干潟部への影響の範囲と程度を把握するために、湾の北部、南部の干潟に調査地点を設けることとしてございます。なお、貧酸素水塊が諫早湾内から拡大する場合には、必要に応じて分布範囲を把握するための調査を行っていくという予定にしてございます。
 ページめくって4ページ目でございます、有明海についてでございます。有明海全体につきましては基本的に開門による影響は予測されて変化はないというアセスの結果が出ているわけでございますけれども、しかしながら開門による影響、変化を確認していくこととしてございまして、潮流調査地点や水質及び底質の調査地点を配置していきたいと考えてございます。
 特徴的には「・」の2番目ですけれども、潮流調査は既往の調査の調査地点と同様の地点を行いますけれども、大浦沖のStn20につきましては海底水道の流路を把握するために一つ新設をするという予定でございます。
 (4)として調査頻度の設定でございますけれども、調査の頻度、項目、時期等につきましては、5ページになりますが、まず[1]の潮位・潮流等につきましては基本10分ごとの連続的なデータを潮位については取得をしておく。それから、潮流等につきましては貧酸素現象や赤潮発生時期である夏期について10分ごとに観測をするという予定でございます。
 [2]の水質でございますけれども、毎正時のデータ取得が可能な項目、水温、塩分、濁度、DO、クロロフィル蛍光強度、pHでございますけれども、連続的なデータ取得を考えてございます。この中で採水分析を要する項目につきましては月1回での調査を予定をしてございます。
 [3]として、底質、地形の変化でございますけれども、底質につきましては季節別の調査を予定をしておりまして、地形変化につきましては年1回の調査を予定をしておるところでございます。
 [4]の生物の関係でございます。生物一般種につきましては季節別に調査を行います。ただし、プランクトンにつきましては変動が大きいために、月1回の頻度を基本と考えてございます。
 ページめくっていただきまして6ページでございます。[5]の漁業生産でございますけれども、漁業生産につきましては、標本船の調査を基本的に全期間にわたって行うこととしてございます。
 続きまして7ページから水域の調査でございます。4.1、調査の項目、4.2の頻度、調査方法、4.3の調査地点につきましては次ページ8ページから18ページまでちょっと詳細な表をつけさせていただいておりますが、この場での説明は割愛をさせていただきたいと考えてございます。この水域の関係で変化の把握方法につきまして19ページから説明をさせていただければと思います。
 19ページに5番といたしまして水域変化の把握方法として上げさせていただいてございまして、5.1、水象、水質等でございます。(1)の観測データの整理でございますけれども、開門により取得した現地調査データは事前、開門時、事後の各期間の変化をもとに、地点別の継時変化や平面、鉛直分布等を整理をいたしまして、項目ごと、時期ごとの状況を把握するとともに、外部条件との関係や調査項目相互の関係について整理をさせていただきたいと考えてございます。
 (2)として、モデルによる要因解析でございますけれども、気象条件や外部条件の影響を含むことから、現地調査データの解析と併せて数値シミュレーションモデルを用いた解析を行う予定としてございます。
 5.2として、干潟、生物、漁業生産の変化でございます。干潟については、干潟の生態系を構成する生物の種類や量などの変化を把握することとしてございます。
 生物につきましては、一般種については生物量、構成種、環境指標種の出現状況について、開門前後の結果を比較して変化の程度を把握することとしています。また、重要種につきましては生息量を開門前後で比較をしまして変化の把握をする予定でございます。
 漁業生産につきましては、標本船の調査の結果から、漁場の範囲、それから漁獲量及び単位努力量当たりの漁獲量の推移、また漁獲努力量の推移を取りまとめて、開門による漁場位置、漁獲対象種の生息及び漁獲量、操業等の変化を把握していきたいと考えてございます。
 ページめくっていただきまして21ページ。一方で陸域の関係でございます。こちらにつきましても6.1の調査の項目、6.2の調査方法、6.3につきましては23ページ、24ページに表でまとめてございますので、割愛をさせていただきます。
 調査地点につきまして、6.3でございますけれども、営農の状況につきましては調整池の塩水化に伴う影響を把握する必要があることから、土地利用、収穫量等を把握するとともに、農業用水の利用量及び農業用水の水質を把握していきたいと考えてございます。
 (2)の地下水でございますけれども、開門に伴う地下水への影響を把握する必要があることから、主要な井戸において地下水位及び地下水の水質を把握することとしています。
 (3)の土壌の塩害でございますが、開門に伴います土壌塩害の影響を把握する必要があることから、地下水の水位、それから塩化物イオン濃度を観測をしたいと考えてございます。
 (4)の潮風害でございますけれども、こちらにつきましても開門に伴います潮風害の影響の把握の必要から、開門アセス評価書における予測結果も踏まえまして、複数の地点、そちら中央干拓地ほかを挙げさせていただいてございますけれども、この中で複数の地点の配置を考えてございます。
 排水の状況につきましては、排水機場、それから排水用の樋門の地点に配置を考えてございます。
 ページめくっていただきまして22ページでございますけれども、構造物・施設への影響でございます。これは開門によりまして潮受堤防の排水門の振動を把握する必要がございます。それで南北の8門に観測点を配置する予定です。
 (7)代償池の環境でございますけれども、代償措置として造成する予定の淡水池の観測を予定をしております。
 (8)でございます。悪臭、景観、人と自然との豊かな触れ合いの活動の場につきましても調査の点を考えておるところでございます。
 25ページに飛ばさせていただきます。陸域の変化の把握方法ということで、一部重複するところございますが、7.1として、営農の状況につきましては作付状況と収穫量の調査結果を前後で比較をする。
 地下水については主要な井戸における水位の連続観測、電気伝導度の鉛直観測、水質の定期観測について、前後に比較を予定をしております。
 7.3の土壌の塩害でございますけれども、土壌及び土壌間隙水の塩化物イオン濃度につきまして前後での比較を予定をしてございます。
 潮風害につきましては、飛来塩分量の調査結果を比較することとしてございます。
 7.5の排水状況でございますけれども、降雨量、潮遊池・排水路の水位、ポンプの稼働実績、排水樋門の稼働実績につきまして前後の比較を予定をしてございます。
 7.6の構造物施設への影響でございますけれども、排水門の振動の発生状況の調査結果につきまして、振動発生時とゲート操作との関係を整理することとしてございます。
 7.7の代償池の環境でございますけれども、植物、動物、鳥類等の調査結果につきまして、代償池の塩分等の水質、それから周辺の生息環境との関係を整理することとしてございます。
 7.8、悪臭等でございます。悪臭等につきましては臭気強度及び臭気指数の調査結果について、魚介類の斃死状況及び回収・処分状況をあわせて整理することとしてございます。景観につきましては、開門後の眺望景観写真について前後の比較を行うこととしてございます。また、人と自然との豊かな触れ合いの活動の場の利用状況につきまして開門前後で比較をすることとしてございます。
 最後になります、26ページの8番として、開門の直前、開門の初期の調査でございますが。8.1として調査項目、開門の直前といたしましては、27ページに表を上げさせていただいております項目について予定をしておりまして、潮流、水質、水生生物の状況を把握していきたいと考えてございます。
 それから、開門初期におきましては水質、底質、水生生物の変化、濁りの拡散状況、それから排水門前面の洗掘・堆積等の把握をするために、潮流、水質、底質、地形変化、水生生物等の変化を観測の頻度を密にして把握をしていきたいと考えてございます。
 8.2の調査頻度及び方法でございます。詳しくは28ページの表8-2に示すとおりでございますけれども、開門直前におきましては開門前の潮流、水質、水生生物の分布を約1カ月間について調査をしていく予定でございます。開門初期につきましては、潮流、水質、底質等々につきまして約3カ月間についての調査を考えてございます。
 調査地点でございますけれども、調査地点につきましては調整池、諫早湾及び有明海で行うこととしておりまして、変化の量が最も大きい可能性のある調整池及び諫早湾を重点的に行いたいと考えてございます。
 以上、足早でございますけれども報告とさせていただきます。

○有瀧小委員会委員長 どうも安部調査官、ありがとうございました。
 ただいまのご説明に関して何かご質問ご意見等ございましたらよろしくお願いします。

○速水委員 質問と、それからお願いが一つあります。
 まずお願いのほうですけれども、開門調査については十分な時間をかけて議論、それから説明をして、それで理解あるいは結果に対する合意を得ていくことが大事だと思いますので、ぜひ調査の途中でデータの積極的な公開をしていただきたいと思います。お願いです。
 それから、もう一つ質問ですけれども、この調査計画についての中には開門の方法については全く書かれていないのですけれども、開門の影響やその範囲については開門の方法によってかなり異なってくるということがシミュレーションでも出されていますけれども、それについてはどういう予定にされているでしょうか。

○安部調査官 まず、途中での公開、それからご意見等々につきましては、中には書いてある、ちょっと説明から割愛させていただいたんですけれども、先生方へ説明等させていただきながら、必要な修正、追加等をさせていただく予定でございます。それから、結果につきましては公開を前提で進めさせていただきたいと思います。
 それから、開門の方法につきましては、アセスの中で制限付き開門ということでアセスの中でケース3の2としてございますけれども、現在の調整池の管理水位を基本として海水を導入する形のケース3の2を開門方法として予定をしてございます。
 以上です。

○有瀧小委員会委員長 ほかには。どうぞ。

○藤井委員 長崎県の水試の藤井です。事前、事後の調査について、諫早湾で養殖されているアサリとかカキについてどういう調査を考えておられるか。あまり項目としては上がっていないような気がします。そこについてお聞きしたいと思います。

○安部調査官 資料の12ページをお開けいただきますと、A3版の下のほう、14番の漁船漁業の実態、それから15番の養殖業の実態というところがございます。アサリの関係ですと特に養殖業、15番になりますけれども、右のほうの現地の調査方法の概要といたしまして、養殖の概況、それから稚貝等の購入量、それから管理作業等の状況等々についての調査を予定をしております。詳細について必要であればまた個別でも説明をさせていただければと思いますが。

○藤井委員 多分開門の前後での変化というところで、特に直前の場所でアサリとカキが養殖をされているので、調査項目に入れていただきたいという、地元としては要望があると思います。
 以上です。

○安部調査官 直前の調査項目の中にアサリ漁場の調査を入れていただきたいというご趣旨だと思いますけれども、ご意見承りまして、現時点でも予定はされておりますけれども、もう一度確認の上、調査項目に間違いなく入れていきたいと思います。

○有瀧小委員会委員長 それでは、福留委員、お願いします。

○福留委員 いただいた会議案内の中に今議論していることの案内がなかったので非常に違和感があってこの説明と議論を聞いています。私たちは総合評価委員会の作業をするための小委員会の委員だと思っていますが、今議論していることはその他の中の単なるお知らせですか、あるいは今説明を受けていることに関して今後この小委員会として時間をとられるのですか。入口の説明をちょっとしてもらえますか。

○有瀧小委員会委員長 事務局のほうはよろしいですか。

○高山室長補佐 今日の農水省さんのほうからのご説明はお知らせという形で、こういう事業をしますということで、当然親委員会のほうにも同じような形でこういう概要で調査をしますという説明をする予定にしておりまして。この小委員会のほうでこれについての開門についての影響の調査をするというわけではございません。

○有瀧小委員会委員長 福留委員、よろしいですか。
 ほかには何かございませんか。どうぞ。

○山本委員 私も速水委員がおっしゃったように、データはできるだけ早い段階で公開していただきたいと思います。直前調査の項目で、例えば今私27ページを見ているんですけれども、対象が生物にしろ環境にしろ、水の中のものが直前調査の項目には上がっているんですが、底に生きているもの、先ほどアサリの養殖のお話も出ましたが、底質に生きてるもの、あるいは底質の環境というのはすごく開門によって影響を受けると私はイメージを持っていて、底質あるいはいわゆるベントス、それから干潟の生物の直前調査というのはいらないのかなとちょっと疑問を感じました。何か代えれるデータがあるということなのか。
 もう一つ、すみません。同じく続けていかれる調査の中で干潟の生物の調査をされていく中で、生物の調査だけで底質の調査項目がないんですけれども、干潟以外のベントスの調査地点は底質の調査地点と同じ地点で、同時に彼らの生息環境が上がってくる仕組みになっていて、こういう生物を調べている人間としては、生物を調べておいてそこの底質を調べないというのはちょっとイメージがなくて。あまりプラス大変な作業ではないはずなので、特に生物を調べるんだったら底質も一緒に調べておいたほうがいいんじゃないかなと思ったんですが。半分提案で半分質問です。

○安部調査官 すみません、27ページの直前調査について、いわゆる底質ベントス等の調査でございますけれども、特にここに上げた8.1のものについては今まで以上に頻度を上げるということで、今までにずっとやってきたことについてそれをなくすというわけではないので、今までやってきたものの頻度を上げるかどうかについてはちょっと検討させていただきたいと思います。
 それから、開門初期、その後の調査については28ページのほうに表8-2として3番の底質、5番の水生生物の中でそれぞれ底質についても調査を考えてございまして。これは継続的にやっていくものと理解をしてございます。

○山本委員 ベントス、底質に生きてるものの調査って多分開門初期調査には項目がなくて、これまでやられている調査にはあるんですかね。

○安部調査官 すみません、やることは確かなんですけれども、ちょっと明示的にまたお知らせしたいと思います。

○山本委員 わかりました。

○有瀧小委員会委員長 どうもありがとうございました。
 すみません、いろいろご意見ご質問あると思うんですが、ちょっと時間も迫ってきましたのですが、藤井さん、最後に一言だけ。

○藤井委員 一つだけ確認させてください。開門調査は小委員会での位置付けというか、今福留委員さんも少し言われましたけれど、このデータを積極的に利用するというか今後調査が行われるので、今まで委員会で課題になっている補完すべきデータを積極的にこの調査を利用してとっていくというスタンスなのか、それとも調査データがうまく課題に役立てば、それを利用するというスタンスなのか、どちらですか。

○有瀧小委員会委員長 それは本委員会で説明があったと思うんですが、開門調査の計画に関して我々は何らサジェッションはしない。ただし、そこから公表されたデータに関してはこの小委員会並びに本委員会で提示してもらい、有明の再生に向けて利活用していくということで個人的には認識しております。
 ほかには何かございますか。
 なければ、すみません、ちょっと時間超過したんですけれども、事務局のほうにお返しします。

○高山室長補佐 事務局から2点あります。まず、次回のスケジュールでございますが、第5回小委員会を10月初旬に、もう一方の小委員会と日程を連動させ開催したいと思います。日程調整につきましては委員の皆様にお願いをすることになりますので、よろしくお願いいたします。
 それともう1点ですけれども、本日の議事録ができましたらそのご確認をお願いしたいと思いますので、その件につきましてもよろしくお願いしたいと思います。
 事務局からは以上です。
 本日は議事進行へのご協力ありがとうございました。
 では、これで終了させていただきたいと思います。ありがとうございました。

午後0時08分 閉会