第43回有明海・八代海等総合調査評価委員会 議事録

開催日

平成31年3月22日(金)

場所

環境省第2・3会議室

(東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館19階)

出席者

委員長 : 岡田光正委員長
委員 : 岩渕光伸委員、小松利光委員、清野聡子委員、滝川清委員、樽谷賢治委員、内藤佳奈子委員、
   西村修委員、速水祐一委員、古米弘明委員、松野健委員、皆川朋子委員、山口敦子委員、
   山西博幸委員、山本智子委員
臨時委員 : 小林政広委員

(関係省庁)

水産庁増殖推進部漁場資源課 高木課長補佐
農林水産省農村振興局整備部農地資源課 松宮課長補佐
国土交通省水管理・国土保全局河川環境課 桝井企画専門官

(事務局)

環境省水・大気環境局長、大臣官房審議官、水環境課長、
水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室長補佐

議事録

午後2時30分開会

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第43回有明海・八代海等総合調査評価委員会を開会いたします。本委員会は公開の会議となっておりますことを申し上げます。

 それでは、まず、議事に先立ちまして、環境省水・大気環境局長の田中より、御挨拶を申し上げます。

○田中水・大気環境局長 ただいま御紹介をいただきました環境省水・大気環境局長の田中でございます。いつもお世話になっております。第43回有明海・八代海等総合調査評価委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。

 委員の皆様方には、年度末ぎりぎりでございますけれども、お忙しい中、御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。

昨年の3月に開催をいたしました第42回の評価委員会におきまして、今後の審議の進め方を御審議いただき、ベントス、有用二枚貝、ノリ養殖及び魚類等の4項目を検討対象とすることや、2021年度を目途として中間取りまとめを行うことなどを決定いただくとともに、水産資源や海域環境に関する情報の収集・整理・分析をより効率的に行うために、2つの小委員会を設置いただきました。

 平成30年8月に第1回の小委員会が合同で開催され、中間取りまとめに向けて、主な検討事項や役割分担、データ整理・分析の方針等を定めた小委員会の作業方針が決定されました。

 また、今年の1月には、この作業方針に基づいて2つの小委員会が横断的に検討する事項を中心に、平成28年度委員会報告以降に国及び関係県が実施した再生方策や調査・研究開発の成果等について、関係省庁・関係県・関係する委員から御報告をいただいたところでございます。

 本日の評価委員会では、平成30年度の小委員会における取組を御報告させていただくとともに、平成31年度の関係省庁における再生方策等の取組状況を御説明させていただきます。

 環境省におきましては、評価委員会の事務局として、本日御説明をいただく関係省庁の再生方策等の取組状況や、これまでに得られたデータを活用いたしまして、今後、多角的な観点から整理・分析が行えるよう、本日、委員の皆様からいただく御意見も参考にして、データの整理・分析の具体的な検討内容を整理してまいりたいと考えております。

委員の皆様方には、本日も忌憚のない御意見を賜りますようお願いをいたしまして、私からの挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、本日の委員の出席状況ですが、欠席の連絡を大嶋委員、古賀委員、中田委員、中村委員、山口啓子委員よりいただいております。本日は、委員21名中16名が御出席ですので、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく会議の定足数を満たしていることを報告いたします。

 続きまして、本日は再生方策等の取組状況を議題としており、関係省庁より御出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。

まず、水産庁漁場資源課の高木課長補佐でございます。

○高木水産庁漁場資源課課長補佐 水産庁の高木です。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、農林水産省農村振興局農地資源課の松宮課長補佐でございます。

○松宮農林水産省農地資源課課長補佐 松宮でございます。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 続きまして、国土交通省河川環境課の桝井企画専門官でございます。

○桝井国土交通省河川環境課企画専門官 桝井でございます。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 また、前回の評価委員会開催後に事務局の異動がありましたので、御紹介をいたします。

まず、田中水・大気環境局長につきましては、先ほど御挨拶をいただきましたので、皆様方から向かって田中局長の左隣が上田大臣官房審議官でございます。

○上田大臣官房審議官 上田です。よろしくお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 その隣が、熊谷水環境課長でございます。

○熊谷水環境課長 熊谷です。よろしくお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 田中局長の右隣が山本閉鎖性海域対策室長でございます。

○山本閉鎖性海域対策室長 山本です。よろしくお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 私が閉鎖性海域対策室の権藤です。どうぞよろしくお願いします。

 以上です。

 続きまして、資料につきましては、本日の評価委員会はペーパーレスでの開催とし、お手元のタブレット端末に収録しておりますので、確認は省略をさせていただきます。

 報道・取材の皆様におかれましては、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いします。

 それでは議題に入ります。これ以降の進行につきまして、岡田委員長、よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 かしこまりました。年度末のお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございます。早速議事を始めさせていただきます。

 本日の議題、最初の議事次第にございますように、平成30年度の小委員会における取組、それから再生方策等の取組状況、その他となっております。

 まず議題の(1)平成30年度の小委員会における取組につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 それでは、私のほうから説明させていただきます。お手元の資料の02、資料2と書いてあるものになりますので、そちらを画面に表示をお願いいたします。

 平成30年度の小委員会における取組についてでございます。有明海・八代海等総合調査評価委員会につきましては、平成30年3月に開催をしました第42回委員会において、今後の審議の進め方及び小委員会の設置を決定しております。これに基づきまして、水産資源再生方策検討作業小委員会と海域環境再生方策検討作業小委員会の2つを設置いたしまして、平成30年度は、水産小委と海域小委を合同で2回、昨年の8月と本年の1月に開催をしております。

 まず、それぞれ水産小委と海域小委の委員の名簿につきましては、別添1、別添2としてお付けしております。

 まず、1のこれまでの検討状況の(1)といたしまして、平成30年8月に開催をいたしました第1回の小委員会でございますが、小委員会における作業方針の検討をしております。まず、平成28年度委員会報告におきまして、今後、長期的に蓄積すべき観測データや新たに実施すべき調査・研究開発の課題が具体的に示されております。今後の課題を踏まえまして、検討対象項目である「ベントス」、「有用二枚貝」、「ノリ養殖」及び「魚類等」の4項目並びに「4項目全体に係る海域環境」について、小委員会で主に検討する事項を整理しております。

 また、主に検討する事項について、水産小委、海域小委及び両小委員会合同で検討を行う項目について作業分担を行いますとともに、解析に当たってのデータ整理・分析の方針について検討を行い、「小委員会の作業方針について」を決定しております。こちらにつきましては、別添3として資料をお付けしております。

 続きまして、(2)の平成31年1月23日に開催いたしました第2回の小委員会でございますが、関係省庁・関係県からの御報告をいただいております。まず、決定いたしました作業方針において、「関係省庁及び関係県から適宜報告を受けつつ、水産小委と海域小委において知見の収集・整理を行う」こととしていることから、平成28年度以降に、特措法第18条第1項に基づきまして、主務省庁及び関係県が実施しました調査結果等について、小委員会におきましてヒアリングを行っております。第2回の小委員会におきましては、作業方針において、水産小委と海域小委が横断的に検討する事項について情報収集を行うこととし、両小委員会を合同で開催をしております。

 以下、報告内容ということで、概要を記載しております。こちらは事務局で作成をいたしまして、それぞれ発表いただいた方々に内容を確認いただいたものでございます。文書だけでは、なかなか分かりにくいものですから、戻っていただいて、個々の資料を御覧になっていただきながら説明をしたいと思います。画面をタッチしていただき、上のほうに「戻る」という矢印が出ます。そちらを押していただくと1つ前の画面に戻りますので、その中で、ファイル名の先頭に09と付いている参考資料1-1、こちらからが第2回の小委員会で当日発表いただいた資料でございます。09の参考資料1-1を画面に表示いただければと思います。

 まず、1点目が農林水産省農村振興局より、有明海沿岸4県と国が協調した二枚貝類等の再生に向けた取組につきまして、発表いただきました。表紙から1つページをめくっていただくと、それぞれ経緯・概要等が記載されておりまして、この経緯・概要の2段落目の「このため」のところにも書いてありますが、こちらの取組につきましては、平成27年度から有明海沿岸4県、福岡県、佐賀県、長崎県及び熊本県と国が協調した取組として、タイラギ、アサリに関する取組のほか、アゲマキやウミタケ、クルマエビなどの魚種について、資源回復に向けた取組を実施しております。

 また、次のページの2ページを御覧いただきまして、平成29年度までの取組の主な成果といたしまして、タイラギにつきましては、この資料の左側、浮遊幼生の確認がありまして、下に説明が書いてありますが、この浮遊幼生調査におきまして、浮遊幼生の出現密度は低いのですが、近年増加にあることを確認しております。また、この右側になりますが、人工種苗生産技術や垂下飼育技術の開発の取組、被覆網による食害防止効果を確認しております。

 続きまして、3ページに行っていただきまして、アサリに関する取組でございますけれども、こちらに浮遊幼生のネットワークの推定とございますが、アサリにつきましては、この浮遊幼生、着底稚貝調査とシミュレーションの結果から、有明海で広域的な浮遊幼生の供給関係があり、有明海の東側、諫早湾で多く浮遊幼生が分布していると推定をされております。また、右側に行きまして、網袋による採苗効果、被覆網等による食害防止効果、保護区設置による資源量の増加を確認しております。

 続きまして、4ページに行っていただきまして、平成30年度以降の取組ということで、4県と国が協調した取組につきまして、広域的な浮遊幼生ネットワークの形成による再生産サイクルの構築に向けた取組に重点化をしているというところでございます。タイラギにつきましては、3年間で合計2万個体の母貝団地の造成を目指すため、人工種苗生産体制の構築、中間育成や移植の取組を行っているところでございます。

 続きまして、5ページに行っていただきまして、アサリに関する取組でございますけれども、アサリにつきましては広域的な再生産サイクルの形成に向けまして、漁場環境改善や保護区の設定等により、有明海全体で十数カ所の母貝団地造成の取組を行っているところでございます。

 続きまして、6ページに行っていただきまして、二枚貝類の食害防止対策として、ナルトビエイの来遊状況調査についても実施をしているところでございます。

 続きまして、参考資料1-2、福岡県の取組の資料を画面に表示をお願いいたします。福岡県からは福岡県有明海区におけるアサリ、タイラギ増殖の取組について、発表していただきました。

 まず、1ページを御覧ください。1の資源の現状に書いてございますが、アサリの資源につきましては、稚貝の発生場所と発生量が年により異なるため、資源変動が大きく漁獲が不安定となっており、その対策といたしまして、2に書いてありますように、覆砂による漁場整備、産卵母貝の保護育成のための保護区の設定、高密度発生域の密度調整及び成長促進のための移植放流、着底基質設置による資源添加のための天然採苗を実施しております。

 ページを順次進めていただきまして、それぞれの説明が2ページから5ページに書かれております。詳しい説明は省略をさせていただきまして、6ページに行っていただきまして、今申し上げました取組によりまして、福岡県有明海区における平成30年3月のアサリの推定資源量は約1万2,000トン弱まで増加しているところでございます。

 続きまして、7ページに行っていただきまして、タイラギでございます。タイラギ増殖の取組といたしましては、こちらに記載のとおり、タイラギは浮遊幼生と着底稚貝が極めて少なく、着底後も食害や立ち枯れへい死等により減耗するため、資源も低位で推移し、漁獲まで至っていないということで、資源回復のための産卵母貝数の確保が必要となっております。

 8ページに行っていただきまして、取り組んでいる内容といたしましては、タイラギの産卵母貝数を確保するために、食害防止技術の開発といたしまして、被覆カゴによる試験を行いまして、春から夏にかけて食害防止の効果を確認しているという報告がございました。また、海中育成ネット方式での母貝育成で、春から冬までの立ち枯れへい死が抑制されることや7~8月にタイラギの成熟、産卵を確認しているという報告がございました。

 続きまして、9ページに行きまして、平成30年度から水産研究・教育機構の指導のもと、人工種苗生産及び中間育成技術の開発を開始しているということでございます。今後、人工種苗生産、中間育成を経て、海中育成ネットを使った母貝団地の育成に利用していくという報告がございました。

 続きまして、佐賀県でございます。表紙の次のページが全体概要でして、2ページに行っていただきまして、タイラギの資源回復のための取組といたしまして、再生産サイクルのもとになる母貝を多く確保するということで、平成26~29年度にかけて、他海域産の母貝を約4万個体移植し、母貝団地の造成に取り組んだということでございます。また、生残率につきまして、平成26年度以降3年間は高位で推移していましたが、平成30年7月以降に低下しております。原因としては、明確に特定はできていませんが、平成30年7月の大雨以降の貧酸素水塊や浮泥の影響ではないかと推定しているという報告がございました。また、天然のものとは別に平成29年3月に人工種苗も移植をしておりましたが、こちらにつきましては、食害と思われる生残率の低下があったことも報告がありました。移植貝につきまして、生残率は低かったものの、生残しているものにつきましては成熟し、放卵・放精を確認しまして、母貝として機能していることを確認しているという報告がございました。

 続きまして、3ページからがアゲマキでございます。アゲマキにつきましては、下にありますように、平成8年度から種苗生産技術開発に着手をいたしまして、順次進んでいきまして、現在では年間200万個以上生産できるレベルに達し、これまでに1,000万個以上の種苗を放流しております。

 4ページに行っていただきまして、種苗の放流に適した漁場環境の調査も実施をしておりまして、干潮時の海水面からの高さや干潟の含水率で、適地が判明するという報告もございました。また、アゲマキにつきましては、これまでの取組によりまして、平成30年の春に大きく育った貝が多いところで1㎡当たり40個体ほど確認をされたことから、昨年6月の1カ月間でございますが、鹿島市地先の一部漁場で22年ぶりの漁獲を再開したとの報告がございました。

 続きまして、長崎県でございます。表紙の次のページを見ていただきまして、これはタイラギの漁獲量のグラフですが、青い部分が長崎県でございまして、長崎県におきましても、以前は4,000~5,000トンの漁獲があったということでございますが、1994年以降休漁ということで、地元においても高い資源回復のニーズがあるということでございます。

 続きまして、2ページでございますが、タイラギ種苗生産の経過ということで、下にグラフがございますが、2017年には10万オーダーの生産ができるようになったとの報告がありました。

 続きまして、3ページですが、人工稚貝の移植試験を実施しているということで、4ページに行っていただきまして、移植場所の検討のために、地盤高別の天然タイラギの生息状況を調査した結果、地盤高30cm~60cmに7割のタイラギが集中していることを確認しております。

 続きまして、5ページで、移植の成績としまして、地盤高90cm、120cm区は、翌年春までに全滅しておりますが、地盤高30cm、60cm区では移植約2年後の8月まで生残しており、天然のタイラギが多く分布している地盤高が移植に適していることを確認したという報告がございました。

 続きまして、6~7ページが移植時期でございますけれども、8~12月の間に時期をずらして移植し生残、成長を確認した結果、移植時期が早いほど高生残・高成長であったことを確認したという報告がございました。

 最後に8ページですが、干潟に移植したタイラギの成熟を確認するため、干潟に移植して成長した1歳貝、2歳貝で産卵誘発を行った結果、一定の放卵・放精を確認しまして、移植貝が再生産に寄与することを確認したという報告がございました。

 続きまして、熊本県でございます。表紙の次のページでございますけれども、広域的なアサリ母貝集団ネットワークの形成に関する検討ということでございます。

 4ページに行っていただきまして、網袋によるアサリ稚貝の着底促進効果の取組ということで、こちらは流速との関係を見ておりまして、流速の累積値が高い場所のほうが、アサリ稚貝の密度が高いということが確認されたという報告がございました。

 5ページに行きまして、被覆網を用いたアサリ稚貝の保護法の検討ですが、これにつきましても、目合いが小さい被覆網が最も保護効果が高い結果が得られたということでございます。

 続きまして6ページ、母貝団地形成試験について、緑川河口域に保護区を設置して取り組んでいるというところでございます。

 7ページからはハマグリですが、いろいろな保護対策ごとに見ているということで、母貝保護手法ごとの保護効果の検討を行い、保護効果、管理頻度・労力、部材費を比較し、被覆網による夏季保護と冬季漁獲の有効性が示唆されたとの報告がございました。

 続きまして、鹿児島県でございます。こちらにつきましては、八代海の有害赤潮の関係でございまして、平成29年度から30年度にかけての有害赤潮の発生についての報告、2ページがそれぞれの発生の要因でありますとか、3ページでそれぞれの結果、考察というのがございまして、鹿児島県では魚類養殖、長島町のブリ養殖がありますが、赤潮による被害が発生し、その対策が大きな課題となっていることから、赤潮防除剤の改良について、取り組んだ内容の報告がございました。

 以上が農村振興局、各県からの報告でございます。続いて水産庁からの報告ということで、水産庁研究指導課より、各地域の特性に応じた有明海の漁場環境改善実証事業についての報告がございました。

 この事業は主にアサリを対象として、漁業者自らが実施できる漁場環境を改善する技術の開発ということで、漁業関係者がどの技術を活用することがよいか、また、参考となる技術の選定フローを掲載するとともに、各技術、実験により確認した効果例をまとめたものです。

 以下、技術と効果についていろいろなものがございますが、ページを先に進めていただきまして、この調査を実施するに当たりまして、水質、底質、水温、塩分、流況等の各項目を調査しておりますので、それらの得られた結果から、19ページですが、クラスター分析を行いまして、シルト・粘土分や強熱減量等の違いにより区分をしまして、また、それぞれの既往知見を参考に、調査結果を用いて、21ページのSIモデルを検討しまして、各調査地点に当てはめました。その結果、調査地点においては、シルト・粘土分の多いグループでアサリ個体数が少なくなる傾向や、シルト・粘土分の多い一部地域を除いてアサリの成育に適した環境であり、成貝の平均個体数も多くなる傾向、また、濁度の高い海域はアサリの成長に負の影響を与えている可能性が示唆されたという報告がございました。

 続きまして、水産庁漁場資源課の赤潮・貧酸素水塊対策です。こちらについては、2ページで、ブイによる連続観測でデータが蓄積されておりまして、4ページに行きまして、八代海における赤潮の発生シナリオとして2つのパターン、出水型と鉛直混合型として、前者は大規模発生、後者は中規模発生というような報告がございました。

 貧酸素水塊の関係では、7ページになりますが、図4で、貧酸素水塊のモニタリングにおいて、底層潮流振幅と貧酸素の累積時間に強い逆相関があり、その下の図6ですが、底層潮流振幅と大浦の潮汐振幅に連動性があるということで、今後、潮汐振幅が年々減少することから、貧酸素水塊が強まる可能性が示唆されるという報告がございました。

 続きまして、水産庁計画課の有明海水産基盤整備実証調査でございます。1ページに目的が書かれており、有明海におけるタイラギ漁業の再生を目的として、漁場造成によるタイラギ成育環境の改善効果について実証調査を行うものということでございます。

 3ページですが、こちらに凹凸覆砂畝型漁場と書いていますが、平成25~26年度にかけまして、大牟田沖に2カ年で8基の漁場を造成しまして、法面部から谷部で稚貝の着底や、母貝団地として機能していることを確認したとの報告がありました。また、5ページに行きまして、立ち枯れへい死の原因究明といたしまして、この漁場に人工種苗を移植しまして、タイラギの生残率や生理状態、グリコーゲン含量等のモニタリングをしながら、立ち枯れへい死の原因究明を行っているということでございました。

 続きまして、委員からの報告でございます。まず、松山専門委員より、有明海における有用二枚貝減少要因解明に関する取組につきまして、御報告いただきました。表紙に青字で書いてございますが、こちらは環境省業務の検討内容をもとに御報告をいただいたものでございます。

 2ページに主な検討事項としまして、母貝生息適地及び浮遊幼生の移動ルートの解明に係る検討、浮遊幼生期及び着底後の貧酸素水塊の影響、それぞれ稚貝・1歳貝・2歳貝の貧酸素の影響、浮遊幼生への貧酸素の影響を見ております。

 まず5ページで、母貝生息適地及び浮遊幼生の移動ルートの解明に係る検討として、こちらのシミュレーションにつきまして、赤い部分、これは長崎県の島原半島沖ですけれども、ここから浮遊幼生を放出した場合は、有明海湾奥部に多くの粒子が到達する一方で、6ページの峰の洲から放出した場合、有明海南部や湾外へ多く移流する結果となっております。

 続きまして、資料の9ページから貧酸素水塊の影響として、このような装置によりまして、いろいろな成育段階の貧酸素の影響を見ておりまして、10ページにグラフを掲載しておりますが、それぞれの酸素濃度において生残率を見ていきますと、結果としまして、稚貝、2歳貝、1歳貝、浮遊幼生の順で貧酸素の影響を受けるということで、11ページに稚貝ですと、緑色の部分ですが、酸素濃度が高くても死亡する結果となっており、成育ステージごとの影響を確認しているところでございます。

 最後になりますが、山口敦子委員から有明海・八代海の魚類について報告をいただいております。

 こちらにつきまして、冒頭に漁獲量の推移のグラフがありますが、3ページの右側のように、ニベ・グチ類の漁獲量など、漁獲量が大幅に減少しております。

 資料を進んでいただきまして、13ページのシログチから始まり、コイチ、デンベエシタビラメと魚種ごとに書いておりますが、底生で産卵場所と成育場所が離れており、卵・仔魚が輸送される生活史を持つものが減少している魚類の特徴として多いということが分かったという報告をいただいております。そのため、有明海を代表する種の全生活史の解明に取り組まれ、生活史のパターン分けとともに、有明海独特の仔魚の輸送の仕組みや輸送経路などを明らかにされております。

 資料の20ページになりますけれども、有明海全域を対象に魚類の生息状況等を研究されてきた結果、有明海につきましては、もともとサメ・エイ類が豊富な海域ということで、高次捕食者が豊富に存在する海域であることが分かったとの報告がありました。

 また、21ページですけれども、ナルトビエイが貝類に及ぼす影響を評価するために行ってきました胃内容物分析の結果により、18年間の調査期間を通しまして、主要な餌がサルボウであると推定されたという報告がありました。また、近年の変化といたしまして、マガキの割合が多くなっておりまして、ナルトビエイのアサリへの影響については、現状では過大評価となっている可能性があるという報告もございました。

 続きまして30ページからが八代海になりますが、先ほど有明海は魚類が減少しておりましたが、八代海につきましては、こちらのグラフのように、近年は増加傾向ということで、有明海と八代海につきましては、3カ所で連結しておりまして、湾奥部に広大な干潟を持つという、環境的には比較的似ているのですが、その生物相は異なることが分かってきております。

 また、資料36ページですけれども、先ほど有明海はサメ・エイ類が豊富ということでしたが、八代海につきましては、アカエイなど限られた種に過ぎないということで、サメ・エイ類についても生物相が異なるということが分かっております。

 38ページ以降、全仔稚魚の分布密度や出現種についても同様に、複数年の調査による結果を比較しましても有明海と八代海で異なっていることから、八代海の流れがどのようになっているのかを把握することも今後の課題であります。

また、これまでに調査した限りでは、有明海と八代海で魚類の往来は認められず、両海域の環境と生態系構造及び機能を明確に異なるものと考えているということで、両海域の再生方策等を検討する上で、これらの知見も重要になるとの報告がございました。

 長くなりましたが、以上です。

○岡田委員長 ありがとうございました。改めて、農水省、関係県、水産庁、委員の先生方に情報提供をいただきましたことを深く感謝いたします。

 ただいまの事務局からの説明に関しまして、御質問、御意見を承りたいと思うんですが、あちこち飛ぶと多分混乱するだろうと思いますので、まず最後の山口先生のところからスタートしたいと思うんですが、山口先生、短い時間で御報告いただきました。今、事務局で、また時間が短い中で簡単に御紹介いただいたわけですが、何か追加で御説明などはございますか。

○山口(敦)委員 すみません。今日も多分時間がそんなにないと思いますので、何か質問があればお答えしますが、今日の御説明で1つ抜けていたのが、干潟の重要性の問題のところかなと思います。有明海と八代海では流れが違っていて、生態系も恐らく違うので、生物相の方は今調べているところですけれども、その流れの構造がどうなっているかというのを明らかにする必要があるというのと、あと奥部の干潟の違いですね。干潟自体の質の違いというのもあるんですけど、生物相がここまで違ってくるのに、干潟がどういうふうに関係しているかというところがまだ全く分からないので、そのことを明らかにすることで、再生とか海域の特異性とか、そういったところを明らかにするのにかなり貢献できるのではないかなと思います。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 それでは、今、御覧になっていると思いますが、山口先生のところから御質問、御意見等がございましたら、承りたいと思います。よろしいですか。なかなか、ついていくのが大変だろうと正直には思いますが。

 よろしければ、それでは、ほかの部分のところで何か、どこからでも結構でございますが、御質問いただければと思います。どなたか。

 じゃあ、先生、どうぞ。

 まず、場所を特定してからお願いいたします。

○小松委員 2点お聞きしたいんですが、まず、西海区水研の18。

○岡田委員長 18番。はい、どうぞ、お進みください。

○小松委員 浮遊幼生のシミュレーションをやられているんですが、このシミュレーションをやるときの浮遊幼生というのは、密度的には完全にニュートラルでやられているのかどうかというのが1点と、それからもう一つは、いいところに行って着底するということなんですが、シミュレーションで着底のプロセスというのは扱っているのかどうか。というのは、ただ、行っただけだと、さらに、また、その後動いていく可能性があるので、着底のプロセスをシミュレーションで取り込んでいるのかどうか、その辺をお願いします。

○岡田委員長 じゃあ、今の2点は、どなたがお答えいただく。

 はい、どうぞ。

○速水委員 環境省の請負事業で、実際に、この研究をやっている者ですので、回答したいと思いますけども、まず、今回、資料でお見せしたシミュレーションは、浮遊幼生は完全にニュートラルとして扱っています。これ以前に鉛直移動を考慮したケースをテストしていますけれども、それだと結果が実測結果とむしろ合わないという結果になりましたので、完全にニュートラルという形でもって、検討を行いました。

○小松委員 そこがそうだと、ニュートラルだと水深のいろんなところに分布しているという。

○速水委員 そうです。いろんなところに分布しています。

○小松委員 で、下のほうは奥のほうに行ったり上のほうは湾口の方に行ったり。

○速水委員 そうです。

○小松委員 そうですか。

○速水委員 そうです。それと、あと、もう一つの御質問は着底の機構ですけれども、これは本来であれば、成長するに従って、生息分布を変えていって、底層に移っていくというプロセスがあるんですけれども、その変化をモデル化するためのデータがありませんので、これも着底海域に輸送されたという、着底海域にどのくらいの日齢で輸送されたということだけでもって判断させています。

○岡田委員長 よろしいですか。ありがとうございました。速水委員も。

 それから、今、関連して、ここの部分で何かご質問はございますか。

 はい、どうぞ。

○山西委員 今の小松先生の御意見も含めて、速水先生の御回答にちょっとお聞きしたいのがあるんですが、福岡県と長崎県って同じようにシミュレーションされているんですけど、感覚的に佐賀県の西部域のところが意外と少ないような気がしたんですよね。むしろ島原湾の半島のところの流れって速かったりするというのを、何か以前、小松先生の計算を見たことがあるんですけど、そうすると、何となくそこに粒子が集中して、佐賀県の西側のほうがないというのは、何となく違和感を感じるんですけど、その辺、いかがですか。むしろ泥は、佐賀県西部水域にたくさんたまっているから、むしろ、そちらの方に滞留するんじゃないかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

農村振興局の資料の3ページで、浮遊幼生のネットワークの推定というので、浮遊幼生の計算の結果、むしろ島原半島の東側に集中しているのですが、むしろ流れが速いのでそうはならない気がしますし、一方で佐賀県地先のほうが意外と少ないのが何となく違和感を感じるんですが。

○速水委員 これに関しては、私のところで計算をしたものではないので。

○岡田委員長 速水先生のではないので、農振局から、どうぞ。

○松宮農林水産省農地資源課課長補佐 今、委員に御指摘いただきました資料については、浮遊幼生が着底をした場所を表した図になっています。シミュレーションの条件に底質の状況を入れており、底質が泥質なので、浮遊幼生は来ますが、着底しないということで、そのデータは表していません。実際は、この有明海湾奥の西部にもアサリの浮遊幼生はたくさん来ているという結果にはなっております。

○山西委員 つまり、これらのデータはそこで着底して、ちゃんとそこで成長するという意図を込めたデータですか。

○松宮農林水産省農地資源課課長補佐 そのとおりです。別途、浮遊幼生は来るけれども、来遊するだけで、そこで着底はしないというようなものも、シミュレーションしています。

○山西委員 できればそれも、こう、来ているというのを一度見せていただけるとありがたいです。

○松宮農林水産省農地資源課課長補佐 分かりました。

○岡田委員長 じゃあ、次の機会によろしくお願いいたします。ありがとうございました。

 ほかにございますか。今、資料がもう09に戻ったりしていますので、どこの資料でも結構ですが。

 じゃあ、どうぞ、はい。

○小松委員 福岡県の10です。この2ページに覆砂漁場におけるCODの推移ということで、覆砂前は非常にCODは高かったのが、3年後、5年後、7年後、9年後、9年たっても、もとに戻らないということですね。一般的に覆砂して数年たつと、また劣化してアサリがとれなくなるという話をよく聞くんですが、少なくともCODでは、底質の劣化の指標にはならないということをこれは意味しているんでしょうか。その辺いかがでしょうか。

○岡田委員長 これはどなたがお答えになられますか。福岡県ですので。岩渕さん、どうぞ。

○岩渕委員 この資料につきましては、CODを指標として示しております。先生がおっしゃるとおり、アサリが実際に発生する、着底するかということにつきましては、COD以外の、底質が固くなってくるですとか等々、他の条件が入ってきますので、その部分については、ここでは示していないということになります。

○岡田委員長 よろしいですか。

 ありがとうございました。

 ほかにございますでしょうか。全体を通じて、たくさんの資料を御紹介いただきましたが、ほかにございませんか。

 特段ないようでしたら、次の議題に移りたいと思います。

 続きまして、議題の(2)再生方策等の取組状況です。今度は資料3に基づきまして、その取組状況の概要、それから環境省の取組状況について事務局から、また、農林水産省の取組状況につきましては、水産庁から御説明をいただきたいと思います。

 まず最初に、事務局、環境省からお願いします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 それでは、私のほうから06、資料3-1と、07、資料3-2を使いまして、御説明をいたします。

 まず06、資料3-1を画面に表示をお願いいたします。こちらの資料3-1でございますけれども、昨年度の第42回評価委員会におきまして、平成29、30年度ということでお示しをしておりまして、今回、平成30、31年度ということで、関係省庁にも確認をいたしまして、内容を年次更新したものでございます。これにつきましては、平成29年3月の委員会報告が出まして、それぞれの対象種と再生方策ごとに、関係省庁がどのような再生方策に取り組んでいるか整理したものでございまして、事業名称が変わっているものでありますとか統合されたものが一部ございますが、概ね内容的には昨年と同じでございます。

 それぞれ簡単に御説明いたしますと、1番、ベントスにつきましては、再生方策としてベントス群集・底質のモニタリング及び変化・変動要因の解析調査の実施ということで、今年度に実施しているもの、また来年度に実施するものということで、これにつきましては環境省で底質やベントスの調査等を実施しておりますし、また、農村振興局でも、国営干拓環境対策調査で底生生物の調査を実施しているというところでございます。

 2番目の有用二枚貝、魚類等につきまして、種苗生産・育成等の増養殖技術の確立、種苗放流・移植の推進ということで、こちらに書いているようなものでございまして、平成30年度の上から2番目と3番目にありましたものにつきまして、事業名称が、さけ・ます等栽培対象資源対策となっておりますが、タイラギ等の種苗生産・育成技術の開発、アサリ等の増殖手法の実証、広域的な連携によるトラフグの効果的な放流手法の実証を行っているというところでございます。

 また、3番目の有用二枚貝の食害防止策の実施につきましても、それぞれ平成30年度、31年度、同様にこちらに記載のとおり、それぞれ実施をしていくというところでございます。

 2ページに移っていただきまして、有用二枚貝の広域的なネットワークの形成につきましても、それぞれ農村振興局や水産庁、環境省の請負業務でも、先ほども浮遊幼生のシミュレーション等をお示ししたところですが、ネットワークの関係について、実施をしております。

 5番目の有用二枚貝、魚類等につきましても、それぞれ農村振興局で、アサリの着底環境調査でありますとか魚卵、稚仔魚の調査を実施しております。

 6番目の泥化対策等の底質改善につきましても、それぞれこちらに記載のとおり、平成30年度、31年度、同様に実施をしているというところでございます。

 続きまして、3ページ目に移りまして、7番の有用二枚貝のタイラギ立ち枯れへい死等の原因・要因の解明で、環境省でも、有用二枚貝の関係について請負業務で取り組んでおりますが、タイラギ生息環境の評価、また、水産庁で、こちらは先ほどの資料の中にありましたが、有明海水産基盤整備実証調査でも、立ち枯れへい死の原因検証を実施しているというところでございます。

 続きまして、8番目の貧酸素水塊の軽減対策としての汚濁負荷量の削減、カキ礁造成、貧酸素水塊の発生状況モニタリングの継続実施等でございます。

 まず、環境省で、循環型社会形成推進交付金等ということで、浄化槽の整備に関する支援を記載していますが、こちらにつきましては、陸域における汚濁負荷削減といたしまして、浄化槽の整備に関する支援を環境省で行っております。また、その下には、国土交通省でも下水道の整備に関する支援でありますとか、農林水産省でも、農山漁村地域整備交付金等といたしまして農業集落排水施設、漁業集落排水施設の整備に対する支援と、それぞれの省庁において、取り組んでいます。また、それ以外にもカキ礁造成による貧酸素軽減の実証、環境省で底層溶存酸素の連続観測を請負業務で実施しております。また、農村振興局、水産庁で実施しています。平成30年度の一番下に書いてございますが、平成29年3月の委員会報告におきまして、底層溶存酸素量の類型指定を今後行っていくということで、現在、東京湾や琵琶湖等の水域を対象に検討しているところですが、右側の31年度につきましては、今後、有明海を含む水域について、随時検討していくこととしております。

 最後に4ページですけれども、ここからはノリ養殖、魚類等、生息環境ということで、9番については、それぞれ農村振興局、水産庁で、それぞれ赤潮発生状況調査、赤潮被害防止対策技術の開発を実施しますし、11、12においてノリ養殖で、栄養塩の水産資源に及ぼす影響の解明、高水温適性株の作出に向けた実証試験を実施します。また、13番で、藻場・干潟分布状況調査がございますが、平成30年度に環境省で、有明海の北部の藻場・干潟の分布状況を把握しておりまして、来年度につきましては、有明海の南部と八代海につきまして、藻場・干潟分布状況の把握を行っていくこととしております。

 また、14番では、国土交通省で、河川における土砂動態調査を、最後の15番では、漂流・漂着・海底ごみ対策の推進として、環境省で海洋ごみの回収、処理等に対する支援を行っておりますし、国土交通省でも、海洋環境整備船でごみの回収や水質・流況調査、底質・底生生物調査を実施しております。

 続きまして、資料3-2環境省における再生方策の取組状況を御覧ください。

 まず、有明海・八代海等再生評価支援事業費でございます。この資料の右側の事業概要のところでございますけども、(1)としまして、有明海・八代海等の再生評価の支援ということで、①、②と書いてございますが、先ほど、申し上げましたような各種環境省の請負業務でも、水環境特性と生物の生息状況の関係に係る分析、水環境観測データ等の蓄積・分析を実施しているところでございます。

 また、本日開催しております委員会の運営につきましても、この予算で実施しているところでございます。得られましたデータにつきましても、委員会、小委員会に報告しながら、また各省からも知見を収集しながら、委員会を実施していくということでございます。

 次のページが海岸漂着物等地域対策推進事業ということで、先ほど海洋ごみの回収、処理等に対する支援を環境省で実施していると御説明しましたが、こちらがその事業でございまして、平成30年度、31年度実施しております。こちらにつきましては、海洋ごみの回収処理等につきまして、補助金によって、実施主体について補助をしているというものでございまして、補助率につきまして、地域の実情に合わせて、かさ上げを実施するということで、基本10分の7でございますけれども、有明海、八代海におきましては10%上乗せの10分の8の補助となっているというところでございます。

 環境省からの説明は以上です。

○岡田委員長 ありがとうございます。

 それでは、続きまして、水産庁漁場資源課の高木様から御説明をお願いいたします。

○高木水産庁漁場資源課課長補佐 私からは農林水産省における取組について、御説明させていただきます。資料は08の資料の3-3となっているものをお開きいただければと思います。今、事務局のほうから各省の事業の全体的なものを紹介いただきましたけれども、そのうちの農林水産省における取組につきまして、私から、資料3-3に基づきまして、簡単に御紹介させていただきます。

 農林水産省におきましては、水質調査や貧酸素水塊対策等の海域の環境調査、環境対策、それから種苗放流技術の実証などの増養殖の対策、それから覆砂・海底耕転といった漁場の改善の対策と、大きく3つの対策を進めておるところでございます。

 まず1ページ目の海域環境の対策ということで、3つの事業を用意しております。まず1つ目が国営干拓環境対策調査でございます。予算額は3億2,800万円と、この書いておりますとおりで、括弧書きの数字は前年度の予算額でございます。30年度と同額の3億2,800万円となっております。この事業は有明海の環境変化の要因解明に向けて、水質や底質、生態系の変化といったものの調査を実施するとともに、環境保全対策などの対応策を検討している事業でございます。

 次に、有明海特産魚介類生息環境調査委託事業と、6億円の事業がございますけれども、この事業は有明海の再生に向けた特産魚介類の最適な生息環境の調査を実施すると。それと有明海沿岸の4県が協調して、先ほどもお話も出ておりましたが、産卵場や生育場のネットワーク、これの形成による資源回復に向けた調査、これを行う事業でございます。30年度は、先ほど、お話も少しありましたが、アサリやタイラギの浮遊幼生の調査、それからシミュレーションモデルといった事業に取り組んでございます。

 それから3つ目が一番下の漁場環境改善推進事業でございます。こちらは赤潮、それから貧酸素水塊による漁業被害を軽減するためのモニタリング技術、あるいは有害赤潮の防除技術の開発ということを行う事業でございます。

 それから1枚めくっていただきまして、魚介類の増養殖対策でございます。こちらも3つの事業を展開してございます。まず一番上の有明海漁業振興技術開発事業と、4億円の事業でございますけれども、有明海の特産魚介類であるタイラギ、あるいはガザミ、クルマエビ、エツ等といった13種の魚種を対象として、種苗生産ですとか育成技術の確立、あるいは放流技術の改善、こういったものに取り組んで、効果的な増養殖の技術の開発を図るということを目的として実施しておるところでございます。特徴的なところとしましては、30年度はタイラギ、これの種苗生産の技術開発に取り組んだり、アゲマキについて、佐賀県の母貝団地の造成に取り組んで、22年ぶりに漁を一部再開するといったような成果が得られているところでございます。

 それから、次の養殖業成長産業化推進事業でございます。こちらは4億200万円という事業になっておりますが、内数というふうに書いてございます。全国を対象とした事業で、そのうち一部で有明も対象として事業を行っておりますので、内数という表現をしております。こちらの事業はノリの高水温適応品種の実用化に向けた養殖試験、ノリ色落ち対策としてのアサリやカキといった二枚貝の増養殖と組み合わせたノリ養殖の試験を行う事業となってございます。

 それから、一番下の事業でございますけれども、さけ・ます等栽培対象資源対策ということで、これも全国を対象とした事業でございまして、一部で有明の対象もございます。これは有明ではアサリ等について、効果的・効率的な増殖手法の実証の取組を行っている事業となってございます。

 それから、3ページ目、最後のページでございますけれども、こちらは漁場改善対策の3つの事業を挙げております。1つ目が有明海のアサリ等の生産性向上実証事業というふうに書いておりますけれども、この事業は有明海の漁業者の収益性の向上を図るというために、これまでの実証事業のうち、特に効果があったという技術を用いて、母貝の生息適地を造成する技術や稚貝を育成する技術、移植に係る技術、あるいはカキ礁、これによって貧酸素水塊の軽減に係る技術開発の実証事業ということを実施して、漁場の生産性向上を図るということを目的としております。

 それから、真ん中の有明海水産基盤整備実証調査でございますけれども、この事業は、タイラギ等の資源回復のため、効果的に餌料環境の改善を図る漁場整備に関する実証調査を行うこととしておりまして、30年度は、過去に造成した凹凸の覆砂畝型漁場の近隣に、事業環境の改善を図るための砕石を用いた基盤の造成を行っております。

 それから一番下でございますが、水産環境整備事業、これは全国を対象とした153億円余りの事業でございますけれども、覆砂、海底耕転、作れいといった事業、漁場環境の改善のための事業につきまして、法律に基づいた補助率のかさ上げを行って支援をしておるところでございます。

 以上、簡単ではございますが、私からの説明といたします。

○岡田委員長 ありがとうございました。今、事務局環境省と、それから水産庁から、再生方策等の取組状況について御説明をいただきました。これにつきまして、御質問、御意見、場合によっては、御要望がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。

○山西委員 一つ、いいですか。

○岡田委員長 どうぞ。

○山西委員 環境省の部分で、底層の貧酸素のDOの基準を考えられるというお話なんですけど、それは何か期間を限定しているとか、そういうことになるんですか。夏場はどうとか。年間を通してどうだというような基準づくりなんですか。

○山本閉鎖性海域対策室長 底層DOが新たに環境基準として制定されているところでございますが、底層DOの評価については、年間の最低値でどのレベルまで保っているのかということで、底層DOとしては3段階で基準値が決まってございますが、その基準値とモニタリングしたデータの年間の最低値を比較して、評価するということにしてございます。実質的には委員が御指摘のとおり、夏場が低くなりますので、そういった夏場で一番低くなったときと環境基準値を比べるということになるかと思います。

○山西委員 ありがとうございます。

○岡田委員長 よろしいですか。

○山西委員 はい。結構です。

○岡田委員長 はい、どうぞ。

○西村委員 すみません。農林水産省さんの資料の3-3の3枚目になると思うんですが、2.魚介類の増養殖対策の真ん中の囲いの「高水温適応品種の実用化に向けた養殖試験を行うとともに」の、その先のところを御質問したいんですが、ノリ色落ち対策として、アサリ、カキ等の二枚貝の増養殖と組み合わせたノリ養殖試験を行うということで、具体的なイメージが湧かない。今分かっていないんですが、アサリやカキ等の二枚貝の増養殖を行うとノリの色落ち対策にもなるというような考え方での試験を行うということでよろしいんですか。

○高木水産庁漁場資源課課長補佐 はい。御指摘のとおりです。ノリ色落ちの1つの要因として、珪藻プランクトンと栄養塩の競合があるということで、アサリとかマガキとか二枚貝の増養殖を併用することによって、その植物プランクトンの除去をするということで、色落ち対策につなげられるのではないかという視点での取組でございます。

○西村委員 今お話されたとおり、珪藻が非常にアサリやカキ等には大事だと思うんですが、その珪藻が植物プランクトンとして、それなりに供給されて、アサリやカキ等の増殖というのは可能になるというか、スムーズに行われていくはずなんですが、そちらのアサリ、カキ等の二枚貝の餌となる珪藻はどういう栄養塩を使うのかなと。多分この考え方だと、ある程度までは、それぞれに効果のある対策ということになる可能性もあるのかなと思う反面、栄養塩をめぐっては珪藻とノリ自体は競争すると。競争種ですので。必ずしも、最後までというのも変ですけれども、ウィンウィンの関係にならない部分も出てこようかなと。そこのところがはっきりと分かりますと、別にこういうレベルであれば、お互いにいい効果がもたらされるんだと。ノリの色落ち対策、アサリ、カキの増養殖をやったほうがノリの色落ち対策になるんだという部分と、しかし、例えば量が、量的な問題等を、イメージできていないのですが、例えばやり過ぎるとノリの色落ち要素になってしまうんだと。いずれにしても、そういう結果がきちっと出てくれば、それは次のステップに非常に重要な成果になると思うので、そこのところは、ぜひしっかりとした結果を出していただきたいというのが、最後の希望です。

○岡田委員長 今みたいな御質問に関しまして、より詳細な御報告は小委員会、次の小委員会等でいただけると考えてよろしいですか。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 第2回小委員会で多くの報告を1つ10分程度と短い時間で概要での御報告となったことから、本日、この辺りについて、もう少し詳しく説明して欲しい、深掘りして欲しいというもの等がございましたら御意見等をいただき、次回以降の小委員会で御報告いただくことを考えていきたいと思っております。

○岡田委員長 でしたら、今、西村委員の御指摘に答えられるような、ピンポイントをきちんと絞った御報告を、ぜひ、次のときの機会によろしくお願いしたいと思います。

 西村先生、そういうことでよろしいですね。

○西村委員 はい。

○岡田委員長 ありがとうございます。多分似たような御質問、もしくは御要望があるかと思います。

 じゃあ、先生、どうぞ。

○小松委員 全体的な話なんですが、再生方策等の説明があったんですけど、ほとんど水産業ですよね。有明海の再生において、水産業が復活するというのはすごく大事なんですが、それが全てかというと、そうじゃないと思うんですね。この今の対応策の、この延長線上で、じゃあ、有明海の水産業だけの再生じゃなくて、有明海全体の再生が見えてくるのかどうか。その辺はいかがでしょうか。もっと幅広い取組が必要なんじゃないでしょうか。

○岡田委員長 これは環境省からお答えいただかざるを得ないと思うんですが。

○山本閉鎖性海域対策室長 小松先生御指摘のとおり、有明海・八代海の今後の検討課題として、ノリ養殖や有用二枚貝以外に、ベントスや魚類などについても4項目の柱として上げさせていただいておるところでございます。本日御紹介させていただきましたとおり山口敦子先生においては有明海・八代海の魚類についてということで、魚類について精力的な御研究をされてございますので、そういった成果の活用や、環境省の請負調査でベントスと水環境との関係について、28年度の報告書以降、さらに検討をしておるところでございます。本日の前半の議題の(1)、また来年度の取組については、先生、御指摘のとおり、アサリや二枚貝、水産業に偏っておるというようなところでございますが、来年度、小委員会での御議論、そういったものを踏まえつつ、この評価委員会でも、ベントスなどについて、近年の研究や成果について御報告、資料の提供をさせていただければと考えておるところでございます。

○岡田委員長 よろしいでしょうか。

 はい、どうぞ。

○皆川委員 資料3-1で、14番に国土交通省の土砂の流出状況の把握と適切な土砂管理という項目がありますが、今日、国交省さんのほうからは特に資料がないようですが、解決に寄与するために何か方策等をやっているのであれば、御紹介いただければありがたいと思います。よろしくお願いします。

○岡田委員長 じゃあ、よろしくお願いします。

○桝井国土交通省河川環境課企画専門官 国土交通省でございます。

 実態の把握というところを今中心に行わせていただいておりますので、今、その実態の調査、実際にその現場に出てのフィールドでの状況調査、それを今まとめているような段階でございます。これについては、また一定の成果が取りまとまった段階で、この場なのか下の場になるかは分からないですけども、どこかの段階で、一度、御報告はしたいと思っているところでございます。

○皆川委員 1点、昨年度の例えば出水や流木の話など、いろいろあるかと思うんですけれども、何か特筆すべき話題はあるのか、コメントをいただきたいと思います。

○桝井国土交通省河川環境課企画専門官 どういう観点で特筆すべきがあるのかということだと思いますけども、今、土砂動態という観点でいきますと、今の時点で言うことは難しいと思います。流木という観点では、山のほうの観点からも含めて、特徴的な課題だったかと認識しているところでございます。ただ、今、土砂動態については、今の段階ではまとまっていない状況で、私からはまだ、どういった特徴があるというところまでは、まだ言える段階にはなっていないと思っております。

○岡田委員長 ありがとうございました。

 ほかによろしいですか。

 はい、どうぞ。

○古米委員 小松委員の御意見にも近い感じの意見を最初に述べます。全体を通じて感じたこととして、参考資料2の基本方針の2ページ目のところに、有明海及び八代海の再生のための施策が示されています。再生のための施策という項目として、イが水質保全でロが干潟の何とか、ハは河川、ホが森林、へが港湾、というように施策リストが示されています。したがって、その基本方針のリストに対応した形で、表や資料3-1がまとめるほうが、理解しやすいのかなと思います。今回は、対象種が決まっていて、ベントスに対してはこうなりました、有用二枚貝に対してはこうでしたという形で整理されています。この整理方法を否定はしないんですけれども、その項目に対して、今何をやっているのかというマトリックスで示していただくことも、施策の全体像を理解する上で有意義だと私は思います。そうすると、森林のことについてはどうやっているのとか、河川の話はどうなっているのかということもわかります。今回の報告のウエイトは水産生物、漁場、あるいは環境調査に行っているので、それらがまとめられた形で整理されています。しかし、マトリックスでまとめる形で再生方策がどう進んでいるかを整理いただくのがいいかなというのが全体に対するコメントです。

 2番目のコメントですけれども、例えば資料3-1の1のベントスのところで、環境省がやっている底質及びベントス調査というのと、農村振興局がやっている底生生物調査というのは、きっとうまく連携、省庁を超えて連携して調査をされていることは信じているんですけども、一体どのような役割分担をしているのかということを示していただくことがよいのではと思います。要は、省庁を超えて有明海・八代海の再生に向けて連携してやっているということを示していただければと存じます。ベントスのところだとか、3ページ目の7のタイラギの立ち枯れへい死のところも、同じように環境省と水産庁がやっておられるので、どのように相補的に相乗効果を得て、成果が出ているかがわかるように報告いただくといいかなというのが2番目です。

 3番目は、かなり具体的な御提案ですけれども、4ページ目の13番目のところの藻場・干潟分布状況調査で、環境省が衛星画像を用いた藻場・干潟分布の状況の把握ということが記載されています。広域的なので、衛星画像を使うということは非常に有用な方法ですけれども、ある意味、大潮の干潮時に干潟が広がっているときに衛星が必ずしも飛んでいるわけじゃないので、有用な画像の取得の確率的に悪いので、UAVというドローンなりいろいろな方法論があるので、最新の技術を使って、広域的な調査を、大潮で晴天の日の干潟が出ているときに観測をいろんな地域でやるほうが、はるかに有効な成果となると思います。ドローンってそんなに高くはなく、それを数台買ったって、大した金額にならないのかなと思います。ぜひ積極的に、衛星画像だけじゃない方法論でも検討いただくといいかなというのが、これは、コメントというよりは要望です。

○岡田委員長 環境省として現時点で何かございますか。

○山本閉鎖性海域対策室長 古米先生の御指摘も参考にさせていただきながら、次回以降、資料を御用意させていただきたいと思います。また、最後にドローンのお話も含めて、藻場・干潟の調査に関して、御指摘をいただいたところでございますが、若干補足いたしますと、衛星画像で使う写真は1枚をまず基本にしますが、そこから解析をして、干潮満潮のときにどういった水位になるのかというのを、画像の画像処理から求めますので、非常に細かいところは、ドローンが得意なところもあるかもしれませんが、広域的に干潟の範囲を把握するという目的では、雲に隠れていない写真が得られれば、それなりのものが出るというようなものになってございます。ただ、どうしても有明海は、ほかの湾と比べて濁度が高いというようなことで、そういった中で画像処理に苦労するというようなところはあるというところではございます。

○岡田委員長 よろしいですか。

 ほかにございますでしょうか。

 特段よろしければ、今の御説明ありがとうございました。

 関係省庁におかれましては、今幾つかの御意見をいただきましたので、それを御参考に、引き続き、再生に向けた取組、それから今後の評価に必要なデータ等の提供をお願いしたいと思います。

 事務局におかれましては、小委員会の作業分担に沿って作業が進められるよう、先ほどもございましたが、関係省庁、関係県の取組状況等について、引き続き情報収集等をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の議題に移りたいと思いますが、全体を通じて何か補足的にございますか。よろしいですか。

○岡田委員長 それでは、その他で、事務局から何かございますでしょうか。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 特にございません。

○岡田委員長 それでは、本日予定された議題については全て終了いたしました。議事進行への御協力に御礼申し上げます。進行を事務局にお返しいたします。

○権藤閉鎖性海域対策室室長補佐 岡田委員長、どうもありがとうございました。

 事務局からの連絡でございます。まず、本日の議事録でございますけれども、後日、事務局より確認の依頼をさせていただきますので、委員の皆様、また本日御発言いただいた皆様につきましては、どうぞよろしくお願いいたします。内容を確認後、議事録につきましては、環境省ホームページで公開をさせていただきます。

 また、次回の委員会の日程につきましては、今後、岡田委員長とも御相談の上、日程調整をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、以上をもちまして、第43回有明海・八代海等総合調査評価委員会を閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。

午後3時57分閉会