第30回有明海・八代海等総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成24年6月19日(火)10:00~12:00

2.場所

航空会館 702・703会議室

3.出席者

委員長:
岡田光正委員長
委員:
有瀧真人委員、岩渕光伸委員、上田直子委員、楠田哲也委員、古賀秀昭委員、小松利光委員、清野聡子委員、滝川清委員、中田薫委員、中田英昭委員、中村由行委員、西村修委員、速水祐一委員、福岡捷二委員、本城凡夫委員、山口敦子委員、山口啓子委員、山田真知子委員、山本智子委員
臨時委員:
清水晃委員
事務局:
環境省水・大気環境局長、水環境担当審議官、水環境課閉鎖性海域対策室長、水環境課閉鎖性海域対策室室長補佐

午前10時00分 開会

○富坂閉鎖性海域対策室長 定刻となりましたので、ただいまから第30回有明海・八代海等総合調査評価委員会を開会いたします。
 最初に、委員の出席状況を報告いたします。本日は委員20名及び臨時委員1名の計21名が出席しており、有明海・八代海等総合調査評価委員会令第6条に基づく、会議の定足数を満たしていることを報告いたします。
 また、参考資料につけておりますが、委員会の運営方針第2事項のとおり、会議は公開となっておりますことを申し上げます。
 それでは、議事に先立ちまして、鷺坂水・大気環境局長からごあいさつ申し上げます

○鷺坂水・大気環境局長 環境省の水・大気環境局長の鷺坂でございます。委員の皆様には、本当にご多忙のところ大勢お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。また、委員の皆様方には日ごろより、閉鎖性海域を中心とする水環境行政にさまざまなご指導あるいはご協力を賜っておりますことを、この場をおかりしてお礼を申し上げたいと思います。
 ご案内のように、昨年の8月に有明海・八代海等の再生特措法改正法が成立をいたしました。これまで、その法律が改正後、2回の評価委員会が開催されてきたわけでございますが、今回が3回目ということでございます。これまで、この4年間の有明海・八代海を巡る海域環境の状況とか、あるいは各省庁によります再生の取組、こういったものを報告させていただいたわけでございますけれども、今回の委員会におきましても、前回、前々回に引き続きまして、各省庁によります再生等の取組として、農林水産省それから林野庁のほうからの報告がある予定でございます。
 また、昨年の法律改正で対象海域に橘湾、その他加わっております。そういった橘湾の海域特性の情報につきましては、中田委員のほうからご報告いただく予定ということでございます。それとあと、この委員会では、また委員の皆様には、いろいろな再生評価に係る審議を機能的に進めていくために、この評価委員会の下部組織としての小委員会の設置についてもご検討いただく予定にしております。
 また、今回の審議から、独立行政法人森林総合研究所九州支所から清水晃臨時委員に参加をいただいております。どうぞよろしくお願いしたいと思います。
 いずれにいたしましても、地元漁業者をはじめといたしまして、国の宝であります有明海・八代海等の再生を、皆さん、心待ちにしているのではないかと、このように考えているところでございまして、このような中で評価委員会には科学的な見地から有明海・八代海等の状況を的確にとらえ、そして、そこからいかにして再生に結びつけられるか、そういった再生の道筋を提示するといった大きな役割が求められているのではないかと考えております。
 どうぞ委員の各位の皆様におかれましては、こういった国民の期待に応えていけるよう、専門的な見地から有明海・八代海等の再生に向けて、さまざまな観点からご議論いただきますようお願い申し上げまして、私からの冒頭のごあいさつとさせていただきたいと思います。
 本日は、どうかよろしくお願いいたします。

○富坂閉鎖性海域対策室長 続きまして、資料1の委員名簿をご覧ください。今し方、局長挨拶にもございましたように、今回より独立行政法人森林総合研究所九州支所、清水晃地域研究監に臨時委員として加わっていただくこととなりましたので、ご紹介をさせていただきます。

○清水委員 森林総合研究所、清水でございます。よろしくお願いいたします。

○富坂閉鎖性海域対策室長 報道取材の皆様、これ以降のカメラ撮影はお控えいただきますよう、よろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、配付資料を確認させていただきます。資料1「委員名簿」でございます。資料2-1「農林水産省の取組み」、資料2-2「九州地方の森林資源の現状等について」、資料3「橘湾の海域特性について」、資料4「有明海・八代海等総合調査評価委員会の小委員会の設置について(案)」がございます。それから、参考資料が参考資料の1から参考資料の3までございます。
 ご確認の上、不足等ございましたら事務局までお申し付けください。
 よろしいでしょうか。
 それでは、ここからの進行は、岡田委員長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○岡田委員長 かしこまりました。
 朝早くから、本日は全員の委員にご出席をいただいております。本当にありがとうございます。台風も近づいているというところもございますので、早速始めさせていただきたいと思います。
 本日の最初の議題は「各省における再生等の取組みについて」でございます。前回までの委員会におきましては、平成18年12月に本委員会が委員会報告という形で取りまとめてからの間、各省の取組ということで、水産庁、国土交通省、環境省よりご報告をいただいたところでございます。今回は2回目ということで、最初に農林水産省から、次いで林野庁よりご報告をいただくということになっております。
 それでは早速、最初に農林水産省農村振興局からご報告をお願いいたします。

○瀧戸農地資源課長 おはようございます。私、農林水産省の農村振興局農地資源課長の瀧戸と申します。よろしくお願いします。
 それでは、お手元の資料に基づきまして、有明海の再生に向けました農林水産省のいろいろな調査でございますとか、それらの取組につきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。
 これにつきましては、この委員会におきましても、平成16年からずっと、毎年ご説明をさせていただいておりますが、それの集大成的な部分と、それから平成20年以降くらいの部分につきまして、あわせて状況等ご説明できたらと思っております。
 まず、私どもがやっている主な調査の内容でございますが、貧酸素の発生の状況でございますとか、それから有明海における赤潮の発生状況、それから底質環境調査ということで、漁業者の方々のご協力をいただきながら、貝桁という熊手の大きいようなもので底質を少しかき混ぜてみたときに、その改善の状況等はどうなっているかとか、そもそも底質の状況がどうなっているかといったようなことを調べる底質環境調査と、それから二枚貝類等生息環境調査ということで、特にアサリやタイラギを食べるナルトビエイについて、その分布の状況なり、ナルトビエイがどのような摂餌行為をしているかというようなことにつきまして調べております。
 これ以外にも、例えば私どもの干拓事業でつくりました諫早干拓の調整地からの排水がどのように拡散しているのかとか、それから干潟について、その水質の浄化機能というものはどの程度あって、私どもの諫早干拓事業によって失われた干潟によるこの浄化機能の失われた程度というのは、どの程度のものなのかとか、それから、そもそも有明海の潮流について、どのように流れているのか、平均流はどのような挙動を示しているのかというようなこと、それから、さらには海岸の部分につきまして、渚線について試験的な施工をした結果、といったようなもの等々も調べておりますが、今回は、特にここにお示ししております4つの調査について中心的にご説明をしたいと思っております。
 まず、貧酸素の現象の調査でございますけれども、これにつきましては貧酸素水塊の観測を通じまして、貧酸素水塊の発生の状況と、それから淡水の流入状況等についての関係を明らかにするということで、自動昇降観測装置による鉛直観測ということで、毎定時1時間おきくらいで、底のほうから0.5メートル間隔で上昇しながら測っていくというやり方で、水温、塩分、DO、濁度、クロロフィル等を、平成16年からずっと測っております。特に、その中のデータとしてB3とB6の辺りのデータを、少しお示しさせていただきたいと思います。
 これが調査の状況でございまして、これは18年度でございます。非常に典型的な例をお示ししておりまして、平成19、20、21、22年と、ずっと同じような調査をしてきておりまして、ほぼ同じような状況が出ているところでございますけれども、水温躍層、塩分躍層というのが、特に水温躍層につきましては、7月の末から8月等に晴天が続いたところで形成をされております。ここで、底の部分と表層の部分で相当の温度の差が出てくると。
 それから、塩分躍層につきましては、降雨があったとき、それぞれのところに応じて躍層が生じるといったような状況が生じているところでございます。これは、そうですね、ここのB3の地点と、それから、Dの地点で調査をしているものでございます。
 それによりまして、貧酸素の発生の状況でございますけれども、こういうところで躍層が出ますと、そのときに貧酸素が発生をいたしまして、特に貧酸素が大きいような場合については、大潮があってもそれをまたいでずっと連続をするといったような状況がわかっております。しかし、台風等が来ますと、そこのところで一旦途切れるといったような状況になっているところでございます。
 それから、その貧酸素の状況、今度は平面的に見てみますと、特に有明海湾奥のT14とか、それから諫早湾の中央部で貧酸素が発生しておりますが、これらは、ほぼ同時期に発生をしています。また、ほかのもっと細かい10分おきくらいのデータで、ここの貧酸素の発生の状況なり潮位との連動の状況等を見てもおりますけれども、基本的には、貧酸素水塊が諫早湾内から有明海のほうにどんどん流れ出していくというよりは、諫早湾内でこう行ったり来たりしているというような状況になっているのかなということがわかっております。
 これが貧酸素の状況でありますが、それにあわせて、諫早湾の水質につきましては、ずっと平成元年からデータをとってきているところでございます。典型的なDO、COD、SS等につきまして、少し表示をさせていただいたところであります。諫早湾の中央のB3と、それから諫早湾の湾口部のB6地点でのそれぞれの水質の概要でございます。基本的には平成19年以降のデータもずっととってはおりますが、ほぼ横ばいというふうな状況になっていると思っております。
 その次に、赤潮の発生の状況の調査ということで、諫早湾とその周辺の海域において赤潮の発生の状況なり、その赤潮の発生のプランクトンの種別等々を見ながら、どのような発生なり広がりの具合をしているのかといったようなことを、赤潮が発生した時点において、目視なり水を採ったりして調べているところでございます。これについては平成23年のデータ、これは衛星画像のデータで見ているところでございますけれども、赤潮がよく発生するのは、この有明海の奥のところと、諫早湾の中央でございますけれども、これについても、ほぼ両方が同時期に発生をしているといったようなところがございまして、諫早湾内の赤潮が有明海側に流れていくとか、そういうようなことはないのかなとは思っております。
 ものによっては、諫早湾内で発生している赤潮と、有明海湾奥部で発生している赤潮が、そもそもそのプランクトンの種類等も異なっているとか、そういう状況も見られるところでございまして、基本的には有明海の湾奥と諫早湾では独立して赤潮が発生しているというような状況が見られるのではないかというように考えているところでございます。
 赤潮の発生件数とそれから発生日数ということで、諫早湾と有明海についてそれぞれここにグラフで示させていただいております。諫早湾では平成10年ぐらいから、少し増えている部分がございますけれども、それ以降は概ね横ばいか、少し最近は下がり気味かなというところでございます。同様に有明海におきましても、昭和55年くらいからちょっと増えておりまして、さらに、このあたり11年、12年ぐらいから増加の傾向が強くなっておりますけれども、近年におきましては、少し赤潮の発生状況も以前よりは落ち着いてきているのかなという感じを持っているところでございます。
 それから、底質の環境の調査ということで、それぞれのエリアの中で漁業者の方々にご協力をいただきながら、先ほど申しましたが貝桁という熊手の大きいような鉄製の漁具で有明海の海底を攪拌することによりまして、強熱減量なり硫化物等の減少の状況といったようなものを少し見てみようというものです。
 この調査をやっているうちに少しわかってきたことは、底質の状況によって、例えばその底質の改善の状況が相当異なってくるということです。例えば底質の攪拌をやるのは、どういったような場所がいいのだろうかということにつきましても、少し調べているところでございます。これまでわかってきた中では、底質攪拌の中では、砂とかそれから砂混じり泥とか、そういったようなところでは、底質攪拌によりまして、かなり攪拌前とその後で底質の改善の状況といったものが、例えば強熱減量でございますが、大きく変化をしているということで、こういう砂の部分のところで底質攪拌をやっていくと、相当効果があるのかなというところもあります。底質の状況につきましては、いろんなデータの中で、クラスター分析でですね、区分をさせていただきまして、整理をさせていただいているところでございます。
 なお、底質攪拌をやりますと、いろいろ海の中からゴミが、貝桁に引っかかってまいりまして、こういったようなものもあわせて取ることで、海の底もきれいにしているといったようなところもあるところでございます。
 その次に二枚貝の生息環境調査ということで、特に有明海では、例えば赤潮プランクトンを食べたりするということもありまして、二枚貝は非常に重要でございますが、ナルトビエイが相当な二枚貝を食べているのではないかということで、長崎大学の山口先生のご指導をいただきまして、これについていろいろ調べさせていただいたところでございます。
 ナルトビエイを相当捕まえまして、それの胃の内容物等を見ているところでございますが、ほとんど二枚貝類ということになっておりまして、ナルトビエイが、大体自分の体重の1%程度食べると考えてみましても、全体で年間5,000トン近く食べている可能性もあるということがわかってきているところでございます。
 ナルトビエイの生息の状況でございますけれども、大体水温が20度くらいになりますと、沖からだんだん上のほうに上がってきまして、8月くらいに有明海湾奥の特に河川に入り込んだようなところで子どもを産んで、また11月くらいにだんだん温度が下がってくると、それに従って徐々に外に出てくるといったような状況が見られているところでございます。ただ、ここのところずっと、このナルトビエイを捕獲しながら調査をするということで、これにつきましても漁業者の方々等のご協力をいただきながらやっているところでございますけれども、最近は非常に大型のナルトビエイが減ってきているということで、1mを超えるようなナルトビエイが少し数が減っており、3歳を超えるようなそういうナルトビエイも減ってきているという状況でございまして、生息環境調査ということと並行的に相当数を海から取っていることによって、有明海で有用な貝類を食べるナルトビエイの駆除というか、その個体数を少し減少させる方向には役に立っているのかなと考えているところでございます。
 それから、最後の部分、有明海の特産魚介類の生息環境調査ということで、これは、この間も各県さんのほうから少しお話があっているかと思いますが、農林水産省の予算で、それぞれの県のほうで重点的に取り組まれている魚介類について、その生息環境を復活させるといった取組につきまして、私どもとして応援をさせていただいているというものでございます。
 福岡県では、タイラギにつきまして覆砂をいろいろなやり方でやっています。例えば斜面の覆砂をやってみたり、山盛りの覆砂をやってみたりというようなことをやりながら、その効果を見ています。
 それから、佐賀県では、サルボウ、タイラギの復活の中で、その生息条件等を整理したり、特にタイラギについてはサルボウの貝の貝殻を砕いたものをまいてみて、それによっての改善の状況を見ています。
 それから、長崎県については、アサリを対象に、貧酸素が起きそうなときに、いわゆる酸素の気泡を海の中に送り込むことによりまして、その貧酸素の状況を改善するといったような取組をされています。
 それから、熊本県では、クルマエビの生息環境の改善ということを念頭に置きながら、海底耕耘をやってみてその効果を見るというふうな取組をされているところでございます。
 それによりまして、佐賀県では、サルボウについては特に生息密度が高いと、要は非常にそこにいっぱい貝が育っていると生残率が低くなってくるということなり、貧酸素と低塩分が両方重なってくると大量へい死の可能性が高いといったようなことが、サルボウについてはわかっております。
 それから、タイラギについては、サルボウの貝殻を砕いて割ってまいたことについて、その違いによる着底効果が大きいといったことがわかってきています。
 それから、福岡県については、ここにちょっと書いてございませんが、斜面での覆砂については、タイラギの生物生息環境という意味では効果があったということでございました。ただ、逆に山盛りの覆砂をすることについては、あまり効果がないといったようなお話をいただいております。
 それから、長崎県のアサリについて、いわゆる酸素の気泡を送り込むという取組の中では、底質の硫化物が減少しているといったことになり、アサリのへい死の防止効果が見込まれるといった状況の報告をいただいております。
 それから、熊本県でも、特に底質の耕耘について、底質の硫化物の減少があって、特に1回耕耘するよりも3回程度耕耘するほうが、底生の生物なり水生生物の個体数が増加する傾向があるということがわかってきているところでございます。
 以上、非常に飛ばし飛ばしで概略をご説明をさせていただきましたが、私どもの取組としてはこのようなことを引き続きやっているところでございます。

○岡田委員長 はい、どうもありがとうございました。たくさんの取組の結果をご紹介いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご報告に関しましてご質問等がございましたら、お願いいたします。

○小松委員 小松です。2点ほど教えてください。
 有明湾奥と諫早湾で貧酸素は同時期に発生していると。赤潮は、それぞれ独立に発生していると。その理由として種類も異なることがあるということだったんですが、貧酸素のほうは、同時期というのは、これはもう現象論的にそのとおりなんで特にいいんですけれども、赤潮がそれぞれ独立というのは、確かに種類が異なることもあるというようなことから、そういうことがある程度類推できるのかもしれませんが、赤潮が発生する要因というのは、もっともっといろんな要因が重なっているわけですね。それを踏まえて現象的に出てくるわけなんですが、それを見てそれぞれ独立と言い切るのはちょっと危険じゃないかなという気がするんですが、その点はいかがかということと。
 それから、あともう1点ですが、ページの6、7に諫早湾の水質の表があって、平成13年以降でほぼ横ばいだというご説明だったんですけど、平成13年以降は外的条件というのがあまり変化していないんで、そういう意味では横ばいというのは妥当かなという感じはするんですけどね。もしデータがあれば、平成9年以前との変化をこういう形で示してくれると非常にわかりやすいんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
 以上です。

○瀧戸農地資源課長 すみません、ちょっと言葉が足りませんでした。赤潮についても発生する時期というのは、ほぼ同時期に発生している状況であるということであります。ただ、発生の時期として独立してと申し上げておりますのは、例えば諫早のほうで赤潮が発生して、それが有明海の奥のほうに影響してとか、その逆とか、そういうふうな状況にはなかなか見えないのかなということでございます。
 発生する時間というのは、先生がおっしゃるとおり、その発生する要因のほうから見ても、大体同じような要因、例えば天候とか雨のものとかそういうものもございますので、あれなんですけれども。それぞれが何か従属的に、どちらかの発生によってどちらかが起きるというような傾向ではないのかなというところかと思っております。
 それから、水質の関係につきましては、平成9年以前のデータもございますが、これとも連続させても、ほぼ横ばいかなというデータは持っております。また、別の機会にお示しをさせていただければと思います。

○小松委員 赤潮のほうですけど、独立という言葉を使うと全く相互作用、インタラクションがないというふうになっちゃうんで、独立という言葉を使うときはものすごく慎重に使わなきゃいけないんじゃないかという気がするんですね。

○岡田委員長 ただいまの質疑応答、これは多分、いろんな見解の相違もデータの見方もあると思います。これがどうあるべきか、どういうふうに解釈するかというのは、今後の評価委員会での重要な議論の対象にもなるかと思います。したがいまして、今後いろんな形で質疑応答が整理されて出てくる段階で、当然のことながら農水省と、それから事務局を通じて相談しながら、委員会としての有意義な結論になっていければよろしいかと思います。
 ですから、例えば小松先生、もう少しということがございましたら、メール等で事務局を通じて農水省にご質問していただき、全体として納得のいく結論になっていくように相互にご協力いただければ大変ありがたいと思います。本来はもう少し議論すべきですけれども、今回はそういう場ではございませんので、今、問題点が上がったということにとどめさせていただきます。よろしいですね、先生。はい、ありがとうございました。
 ほかに、どうぞ。

○速水委員 佐賀大学の速水と申します。質問を1点とコメントを1つ、お願いしたいと思います。
 まず、コメントのほうですけれども、①の貧酸素現象調査のところで、諫早湾内から湾の外にかけて6点の櫓でもって連続観測をされていて、このデータ、私も使わせていただいていて、非常に貴重なデータとして感謝しておるところですけれども、長期的な貧酸素の変化を考えるときには、成層強度の変化が大きく効きます。成層強度の変化には、これは潮流を中心にした流れの変化が大きく効きます。それに対して、これから平成28年にかけて、月の昇降点の変化によって潮流が大きく変化していくという現実がございます。それから、今、諫早の開門調査が計画されていて、そういうことがもし行われた場合、潮流の変化が期待されるわけです。
 したがって、現在、この櫓6カ所には潮流の観測点はないわけですけれども、もしできれば、今ある自動昇降の装置に加えて、ADCPによる海底から海面までの流速の連続調査を加えていただけたらと思う次第です。これが1点目のコメントです。
 それから、もう1点ですけれども、これは質問で、一番最後の二枚貝を中心にしたこれまでの調査結果のところ。これ、いろんな重要ポイントを整備してくれていますけれども、貝類に影響する大きなポイントとしては、まずは泥分率の問題、それから硫化物の問題、それから貧酸素の問題、こういった問題がありまして、こうした問題を少しでも改善するために、海底耕耘によって硫化物や有機物を減らすといった、こういう対症療法的な対策を打たれているわけですけれども、何かこういう対症療法的な対策以外に、根本的にこういうものを減らすというような方向性みたいなものをお考えでしょうか。

○岡田委員長 じゃ、瀧戸課長、どうぞ。

○瀧戸農地資源課長 1点目のご指摘につきましては、現在、私どもは諫早湾の開門に向けていろいろ調整を進めているところでありまして、さらに、平成25年12月が開門という福岡高裁判決がございますので、それに向けて準備を進めているところでございます。開門に当たりましては、当然その開門の前とその開門の後についての環境の変化ということについては、きちんと調査をしていきたいと考えております。できれば開門前、あまりもう時間もないので、今年のしかるべき時期から事前の調査をしていきたいと思っているところでございます。その調査の内容なりポイント等につきましては、いろいろ関係の県やここにおられます先生方にもご相談をさせていただいて決めさせていただきたいと思います。
 ご指摘のあったADCPをつけるということについても、少し検討させていただければと思います。ただ、ちょっとお金がかかるものですから、例えば何かの場所の調査を減らすとかそういうようなこともさせていただきながら、少し調整をさせていただければと考えておりますが、少しそういう意味では検討させていただければというふうに思います。
 それから、2番目のいわゆる生息環境の関係の調査につきましては、これ自体は、基本的には農水省からこれをやってくださいというふうにお願いするよりは、各県のほうの独自のアイデアで、県のほうでこういうことをやりたいということについてそれをやってくださいというスタンスでこれまでやってきているところでございます。そういう中で、何かこういうものを取り除けばというご指摘については、各県からのご提案があれば、それについてこの調査の中に反映させていただければと思っております。

○岡田委員長 じゃ、清野委員、どうぞ。

○清野委員 九州大学の清野です。
 特に二枚貝の生息環境の改善に関しまして、集約した結果をお話しいただきました。今日、どうしてもこういった時間内でご説明いただく関係で、ざっくりしたご説明をいただくことになるわけですが、ここからはちょっと伺いたいことです。
 特に海底耕耘と覆砂についてのその影響評価なり効果の評価に関しては、研究者の中でもいろんな議論がございます。一方で、行政側で、ある程度こういった形で効果がありますよと資料をお出しになると、行政のラインで動く事業は効果があるという前提で動きます。そのあたりにつきまして、実海域がこれだけいろんな多様な環境条件・底質条件にある中で、農水省さんとしてのガバナンスといいますか、どういうところにはこれは非常にうまくいくし、こういうところは注意点ですよというものは、ある程度そういう予算を確保していただく側として、何らかのガイドラインなり協議なりというのはされておりますでしょうか。

○瀧戸農地資源課長 これにつきましては熊本大学の滝川先生にご指導いただきまして、特にこの底質の状況につきまして整理をさせていただいたところでございます。こういう整理をなぜしたかというと、まさに今、清野先生がおっしゃるように、やはりやみくもにどうも底質を攪拌しても効果があまり見られないところも多々あったり、滝川先生にもご相談しながら、効果のあるところでやろうという議論もありました。いろいろ調べてみると、砂が優位のところで、その砂の上に薄く例えば汚れたものが乗っているようなところにおいては、貝桁等で底層を攪拌しますと上の汚れた部分が飛んでしまうとか、そういうことでリフレッシュされるといったようなところがあるところでございます。そういう意味では、この砂Aと書いてあるようなエリア等々でやると、右のグラフのように強熱減量等が相当下がってくる部分があり、こういったところでやっていただくとやはり効果があるのかなと思います。
 そういう意味では、熊本県やられているエリアというのは、それなりに効果があるところで取り組まれている。逆に、佐賀県では、県のほうでもおっしゃっておられますけれども、あまりこれをやるということについてはなかなか効果が見られないような状況もあるということもございまして、特に泥質干潟等についてはなかなかそういったような効果が出ないのかなと思っているところでございます。

○清野委員 行政としてどうされているかということを伺いたいんですが、つまり、そういうことが個々の個別の研究によって明らかになったときに、現場的にはかなり早いフィードバックを求めておられるために、ポジティブな結果が出るとなったら、すぐにそれに飛びつく可能性はあるんです。例えば漁業者側だとか関係者の方は、じゃこういうのだったら、すぐにいいんじゃないということで、わらをつかむ思いだと思います。
 その際に、事業者側として、どういうふうにそのガバナンスをされているかということは、今伺った範囲では、熊本県に関しては熊本大学の調査をもとに県の事業に関してされていると。ほかの、全体としての、要するに県の方向性に依存するということになるのか、そこは確認させてください。

○瀧戸農地資源課長 まず、滝川先生にご指導いただいているのは、私ども国のほうでございますので、全体ということで、特に熊本県ということで限っているわけではございません。
 その中で、私どもとしては調査でございますので、それは効果のあるところもないところも等しくやってみてその状況を見るということでやっております。その上で、各県のほうで、今後取り組まれる議論としては、当然補助事業というようなことで、漁業者さん等が自ら底質改善に取り組まれるところに対して、少し県費なり国の予算で助成をするということになってくるのかなというように思いますが、その際には、効果のあるところをという整理の中で、砂の砂州干潟等を中心にという議論が当然出てくるんではないかと思っています。
 ただ、そこについて現在、明確な基準があるかというと、そういうことではないと思いますし、このあたりは、私どもは調査でございますので、基本的には水産庁等々においてのその辺のお考えなり取組、それから各県でどういったようなところでやるかということを整理をさせていただいて、その中で行政としてやっていただくという話になるのかなというようには思っております。あまり答えになっていないかもしれませんが。

○清野委員 はい、ありがとうございます。今日は調査としてのお立場でお話を伺ったということにしまして、事業者としての事業効果とかそういうことについては、また機会がありましたらよろしくお願いします。

○岡田委員長 はい、じゃ、先生。

○楠田委員 今の底質に関連して、お教えをいただきたいことがございます。それは12ページの海底耕耘のところですが、塩田川沖海底水道部、野崎の州、島原市沖、熊本市沖と書いてあるんですが、ここに表示されています地点が、左側の図のA、B、C、Dのどれに該当するかというのを、まずお教えをいただけませんでしょうか。

○瀧戸農地資源課長 すみません、「野崎の州」のところでございますけれども、これについては、水色の四角のところでございますけれども、ちょうど間ぐらいのところになりまして、ちょっと微妙なんですが、基本的にはこの辺りBなのかなと思っております。
 それから「島原市沖」のところ、これは斜めの三角でございますが、これもまた中間ぐらいで、これはAなのかなというところでございます。
 それから「熊本市沖」のところは、これはDですね。

○楠田委員 D。

○瀧戸農地資源課長 はい。それから、「塩田川沖の海底水道部」という丸のところですが、これもAだと思います。

○岡田委員長 これは、後でまとめてお答えいただいたほうが、お互いに誤解がないと思いますから、そういうふうにさせてください。よろしいですか。

○楠田委員 はい。関連して、それでは、全部あわせてお願いをさせてください。
 海底耕耘のときの深さと、この強熱減量を調べられたときのサンプルの採られた厚さがそろっているかどうかという観点ですね。それが1番目です。
 で、2番目が、右図で攪拌直後と書かれているのは、いつのことなのかというのが2番目です。
 3番目は、3カ月後のところまでラインを引かれているんですけれども、これは3カ月効果が続いているという意味での3カ月後なのか、単に調査日が3カ月後ということだったのか。
 この下がり続けているところの科学的な根拠がおわかりでしたら、あわせてお教えいただけたらと思います。
 以上です。

○岡田委員長 じゃ、今すぐ簡単にお答えできるところのみお答えいただいて、あとは別途、文書等でお答えいただいたほうがよろしいかと思います。

○瀧戸農地資源課長 すみません、ちょっと整理をさせていただいてお答えさせていただきたいと。恐縮でございます。

○岡田委員長 多分、そのほうがよろしいかと思います。よろしいですね、先生。

○楠田委員 はい。

○岡田委員長 じゃ、そういうことにさせていただきます。
 すみません。じゃ、最後に福岡先生。

○福岡委員 今の12ページの解釈の仕方をお聞きしたいんですが、この中心線沿いに紫で示された砂が、この海域の中心にずっと分布しているように見えますが、これはつながっていると考えるべきなんですか。何か目的を持って、調査を進めていると思うのですが、以前、農水省は、よくこの場の流動等について数値解析をやって、潮流の面からとか水質の面からどういうことが起こっているかについて、以前の委員会で盛んに議論していたと思うんですが、そこのところが一体今後どうなるのかと。今回のこの底質調査をどう位置づけ、考えているのか。
 そのときに、こういう観測データをどういう目的で、集めているのか、本日の話題のように対応策としてのものでやるのか、もう少し全体的にこういう場の中で、この底泥の問題をしっかりと見極めて、この有明海が一体どういう状況にあるのか、なるのか。やはり以前やっていたものとの関連で少し調べていただかないと、何か対応策ばかりになってしまって、本当に最終的なゴールとしていいのかなというのが私は感じます。以前から関わっている者として、流れと水質問題とか、それからこの生態系の問題をどうやってリンクさせようとしているのか。個別の調査項目はわかりましたけれども、どうしようとしているのかについて見えづらい点が気になります。もしもご意見があれば、今日は無理であればまた後ほどで結構ですが、教えてください。
 以上です。

○岡田委員長 はい、ありがとうございます。
 これも、まとめてお答えいただいたほうが、後でのほうがいいですね。

○瀧戸農地資源課長 そうですね。ちょっと難しいご指摘でございますので。この調査自体は、どちらかというと、そういう底質攪拌の効果等検討する上で、この辺が効果的なのかということを整理するために、滝川先生がお調べしていただいているガラカブの調査等のデータをご提供いただきながら、それともあわせて整理をさせていただいたものでございます。そういう意味で、私どもが別途いろいろやっている潮流のシミュレーションとこれとをリンクさせて、どうこれを見るのか、評価するのかということについては、ちょっとこれまで私どもとしてもあまり念頭になかったところでもございますし、そのあたり、またこういう場でもご議論いただければと思っているところでございます。

○岡田委員長 はい、ありがとうございます。ご指摘は、この評価委員会自身の検討としても重要なことですので、農水省にもご協力いただければありがたいと思います。
 時間が押していますので、申し訳ございませんが、次の林野庁からの報告に移りたいと思います。
 じゃ、お願いいたします。

○坂口森林計画官 林野庁計画課で森林計画官をしております坂口と申します。これまで、本評価委員会におきましては、森林の関係の施策等の状況についてはご報告しておりませんでしたけれども、平成23年度の特措法の改正により、新たに森林に関することについてもこの委員会でご報告させていただくこととなりましたので、よろしくお願いいたします。
 それでは、まず初めということで、特措法における森林の位置付けについてというところをご説明させていただきます。
 まず、特措法における森林の位置付けですけれども、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律、平成14年度に公布・施行されております。この中では、森林については第16条で「国及び地方公共団体は、有明海及び八代海等の海域における水産動植物の生育環境の保全及び改善を図るため、森林の保全及び整備に努めなければならない」とされ、これまでも林野庁、関係都道府県においては、間伐等の推進をはじめ適切な森林の整備によって、これらの海域の保全に向けた取組を進めてきたところでございます。
 本評価委員会は、第18条第1項の規定により行う総合的な調査の結果に基づいて、有明海及び八代海等の再生に係る評価を行うこととされておりますが、このような中で平成23年度に有明海・八代海等再生特措法の一部が改正され、対象海域に橘湾と牛深周辺海域を追加されたこと、森林関係につきましては、「調査研究の実施及び体制の整備等」に「有明海及び八代海等の海域に流入する河川の流域における森林と当該海域の環境との関係に関する調査」という事項が、第18条第1項第5号に追加されたことを受けて、平成24年度から、新たに森林について、今後どのように調査を進めていくかという点から検討を始めることとしております。
 このような経緯から、指定地域における森林と当該海域の環境との関係について、先ほどの農林水産省の報告にあるような具体の調査結果というのは、まだ現状では得られておりませんけれども、森林と海域に関する一般的な知見というのがどのようなものが得られているか、九州の森林の現況と。平成24年度の調査というのをどのように進めるのかといった点について、ご説明させていただきたいと考えております。
 それでは、まずは森林と海域の関係についてでございますけれども、森林と海の関係については、古くから経験的な知見に基づいて、海域の生物の生息・生育に重要な役割、関係性があると言われております。
 主に言われているのは、一つ目としまして、沿岸部の森林は内陸からの海への土砂の流入に伴う水質の汚濁の防止・軽減により、魚の産卵や藻類の生育に快適な場を提供している。
 二つ目としまして、森林起源の有機物が海洋の生物の餌となっている。
 三つ目としまして、沿岸部の森林の枝葉がつくる陰影に魚介類等が集まっており、そういうところで昔から漁獲というものが行われてきたと。これは陰影の形成により水温の上昇が抑制されたり、または餌となる昆虫等が供給されるといったことによるものではないかと考えられております。海域に限らず内水の湖沼とかでも、このようなことが言われているところでございます。
 これらのことから、江戸時代から「魚付山」「魚寄林」などと呼ばれて、水産資源の保全の観点から、森林が非常に重要であると認識され、藩によっては伐採の禁止などが行われてきました。また、明治30年の森林法に基づく保安林制度の創設と同時に、「魚つき保安林」というものが設けられまして、沿岸域を中心に魚類の生息に関係性が高いと考えられる森林が指定されてきております。
また、近年においては、森林において生産されるフルボ酸鉄の生産を通して、鉄の供給に森林が大きく関与しているんではないかといった話だったり、また甲殻類が実際にその森林由来の落ち葉といった有機物を摂取していて、落葉の供給時期と生物種の個体の個体数といったところに関連性が見られるといった、一般的な知見というものが得られつつあります。
 また、森林の有する主な公益的機能というものがございまして、生物との関係に限らず、森林は水源環境や土砂流失の防止機能といった公益的機能というものを有していると言われております。
 主なものを紹介させていただきますと、まず森林の表面浸食の防止機能。森林の下層植生や落葉が地表の浸食を抑制するとともに、樹木が根を張り巡らすということにより、土砂の崩壊を防止することにより、これらの機能が発揮されています。荒廃地と比較しますと、地質や土壌の状況にもよりますけれども、荒廃地は、一般的に土砂の流出量が大きく、荒廃地に比べて森林が成立している林地のほうが抑制されると言われております。また、健全な森林の土壌といったものは、その間隙に降水を貯留し、流出のピークを減少させるといった洪水の緩和の機能、また水資源の貯留機能というものを有しています。また、窒素やリンの流出を抑制するといった機能、微量元素を供給するといった水質浄化の機能、これらは水源涵養機能としてまとめて言われていますけれども、森林の重要な機能として認識されているところです。また、そのほかには、二酸化炭素を吸収固定する機能などがございます。
 林野庁におきましては、これまでも、これらの公益的機能の発揮に向けて森林の整備・保全を推進してきておりますけれども、特に我が国の森林は資源が現在量的に充実しまして、森林保全整備を推進していく上で今後重要な時期を迎えるという状況になっております。一方で、高齢級の森林が増加していく状況や、手入れが行われない森林が増加しているという状況を踏まえまして、木材の供給や公益的機能の発揮など、森林の有する多面的な機能を発揮させるため、間伐等の適切な推進、あと針広混交林への誘導だったり、森林の広葉樹林化、あとは長伐期作業といった多様な森づくりを推進しているところでございます。これらについては、水源林造成事業や都道府県の森林整備事業についても同様に、針広混交林の育成複層林の造成等への転換等が推進されているところです。
 また、特に水源の涵養や災害の防備といった公益的機能の発揮のために重要な森林につきましては、「保安林」に指定し、伐採や土地の利用への転用等を制限するとともに、災害等で保安林の機能が失われた林地につきましては、保安林の治山事業等による機能の復旧などを実施しております。現在、九州においては、森林面積が267万ヘクタール、うち保安林面積が98万ヘクタールと、約4割ぐらいが保安林に指定されております。
 続きまして、九州の森林資源の状況、先ほどのような森林の整備をこれまで実施してきた中で、九州の森林というのはどのように変化したかという点についてご紹介させていただきます。
 左の図ですけれども、1957年から2007年の50年間を見ますと、九州地方の森林は225万ヘクタールから251万ヘクタールと、26万ヘクタール増加しています。蓄積のほうを見ますと、189百万立方から631百万立方と、3倍超、大幅に増加しているところです。右の写真のように、過去、伐採跡地となっていたようなところが、現在では森林というものが成立して、周辺と同じような林層を呈しているというような変化が見られております。これらは有明海の指定地域についても同じような状況でございます。
 また、2005年の応用生態工学会のレポート、東京都立大の横山先生のご報告によると、福岡、大分、熊本の3県では1910年から50年間、これよりさらに前の時期ですけれども、その間に森林の面積は2倍近く増加したというような報告が行われております。
 森林の変化と水産物の漁獲量の関係を見ていきますと、1970年代から森林の面積というのは約250万ヘクタール近くを維持しておりますが、一方で、1970年代に有明海・八代海とも、漁獲量というものは増加傾向にあり、その後、有明海では1980年代の中盤、八代海では1990年代から漁獲量が減少し、現状に至っているということでございます。これらを見ますと、有明海・八代海における漁獲量の推移と九州全体の森林面積の推移を単純に比較しても、現時点で森林と海域との因果関係が見えてきていないというのが現状でございます。
 このため、有明海・八代海の関係流域における森林資源の量・質の変化が、河川への土砂や有機物の流出等にどのような変化をもたらしているのか等について、今後、知見を収集整理していくことが必要となってきております。平成24年度の調査の進め方としましては、特措法第16条、これまでも位置付けられていた森林の整備の効率的な推進に活用するため、水循環や物質循環における森林の作用に関する知見を明確にすることを目的に、調査というものを進めていきたいと考えております。
 ただし、既往の調査研究により森林からの土砂や有機物の生産に関する知見というものは、一般論としては徐々に蓄積されておりますが、有明海流域においては、さまざまな土地利用による海域への作用というものがございますので、当該流域における森林による有明海・八代海等への作用の定量的な分離・分析というのは、直ちには難しいだろうというふうに考えております。
 そのため、森か海を通じた健全な水循環・物質循環の確立に向けて、森林に関する調査研究に求められる視点というものを確認しつつ、これまで蓄積された知見を整理して、今後に展開する調査研究の基礎データを構築していく必要がございます。このため、今年度の調査におきましては、まず、森林資源の質・量の変化と水循環・物質循環との関係に関する知見を収集整理することとして、調査を進めていきたいというふうに考えております。
 詳細については、知見を収集しつつということを考えておりますけれども、今年度は指定地域の森林の現況に関する基礎的データとして、人工林だったり天然林、落葉樹林、あとは樹種別にどこまで現状を把握できるのかといったものを、まず、どういう属性で整理可能かといったところを整理しまして、現状の森林の状態というものを評価したいと考えております。
 また、今後の森林の整備につながる中身として、施業方法の違いといったものによって、土砂の流出だったり、林床の植生の回復状況といったもの、これらに関して既存の調査でどういう知見が得られているかといったようなことを調べていきたいというふうに考えているところでございます。
 現在、平成24年度からスタートということで、かなりスタートラインというものが違いますけれども、これまでの水産関係や海域河川の環境変化等についての研究の中で、森林に起因するような要因の指摘などございましたら、いろいろとアドバイス、ご助言いただけるとありがたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 林野庁からの報告は以上でございます。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 本日、清水委員がいらしていますが、ただいまのご報告につきまして、何か補足すべきことはございますでしょうか。
 はい、どうぞ、清水委員。

○清水委員 基本的に森林流域からの流出は下流に、農業とか都市エリアとか、ほかの土地利用がいろいろと関与してくるので、直接どういう関係があるかということは、今後の調査ということになると思うんですけれども、一応、今年度の現状の森林状態の調査の中に、今、九州地域では、ここ数年ですけれども伐採放棄地の問題が出ており、このエリアにもかなりそういうところがありますので、そういう調査もあわせて行っていただいて、現状と今後の展開の基礎データにしたほうがいいとは思います。
 以上です。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご報告に対しまして、ご質問、ご意見。
 じゃ、中田先生、どうぞ。

○中田(英)委員 一番最後のところで、森林は河川を介して海域に接続するというようなことが書いてありますので、当然ですけれども、河川との連携とか、海域との連携ということが必要になりますけれども、そこら辺の体制をどういうふうに考えておられるのか。特に陸域の河川、特に河畔林なんかの問題もあると思うんですよね。そこら辺の問題、何かもう少しお考えがあれば、お聞かせいただきたい。

○坂口森林計画官 河川につきましては、例えば国有林でしたら、河畔林については伐採する際に、河畔林は保残帯として残すような指針というのを林野庁のほうでも定めております。
 今後、森林林業再生プランに基づき、自給率50%を目指して、現在、資源が蓄積されている森林を活用していくという中におきまして、その河川、特に河川との接点の部分に注目して、施業というものがどういう影響を与えるかといったところは見ていかなければならない課題かというふうに考えております。
 それは有明海流域に限らず、全国的に同じような課題を持っていると思いますので、まず、研究等も、森林総合研究所等でも施業による土砂流出といった影響については、これまでも知見が得られておりますので、そういったところを整理する中で、新たな視点なども加えながら検討していきたいなというふうに考えております。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 まだ、ご質問、ご意見があることは百も承知しておりますが、このままご質問等をお受けいたしますと、いつまでたっても終わらないと。申し訳ございません、ここで一応、質問は打ち切りにさせていただきます。
 ただ、そのままですと、せっかくご報告いただいたことが、今後のこの当評価委員会の評価に生きなくなります。したがいまして、本日いただいたご報告に関するご質問、それからご意見等は、ぜひメール等にて環境省事務局にお寄せいただければというふうに思います。そのご質問・ご意見等につきましては、農林水産省それから林野庁と環境省がご相談いただきながら、次以降の委員会に報告として反映させていただくようにしたいというふうに思います。そのやりとり、面と向かってやるほうが本当はいいことは百もわかっておりますが、それは今後の委員会運営の中で、場合によってはもう一度ご議論にご参加いただくと、農水省それから林野庁ともご参画いただきながら進めさせていただければと思います。
 そのような質疑応答が、農林水産省の場合は、従来からの調査、それから今後の特に整理に多分有効だろうと思いますし、林野庁さんにおかれましては、今後調査していくわけですから、よりよい調査につながることを期待したいというふうに思います。ということで、本日はここまでということで、農林水産省、林野庁、ご説明いただいた皆様方、本当にありがとうございました。委員の皆様方、ご不満だとは思いますが、ご容赦ください。ぜひ、メールでご意見をいただければというふうに思います。
 それでは、次の議題に進めさせていただきます。ご承知のように、昨年、有明海・八代海の再生のための特別措置法が一部改正されました。それに伴って本委員会も審議を再開したわけでございますが、その改正におきましては本委員会に関わる規定のほかに、改正された規定がございます。これは、ご承知のように参考資料を見ていただければ、参考資料1に記載されていますとおり、対象海域が追加されております。
 そこで、対象海域として追加された海域のうち橘湾につきましては、同海域に関する調査研究の実績をお持ちの中田英昭委員から、今後これまで行われてきたさまざまな調査結果の中から、評価委員会として把握しておいたほうがいいだろうという情報を取りまとめていただいております。中田委員には大変申し訳ございませんが、ぜひここでご報告をいただいて、今後の審議に役立つようにしていただければありがたいと思います。
 じゃ、中田先生、よろしくお願いいたします。

○中田(英)委員 長崎大学の中田でございます。よろしくお願いします。
 今、お話がございましたように橘湾が追加されたということですけれども、橘湾に関する情報は非常に限られておりまして、そういう意味でも、そういう現状をまず認識していただくことが大事かなということで、私の手元にある情報を中心にして海洋特性について少し取りまとめてみましたので、ご紹介したいと思います。
 内容は、まず橘湾の概要ということで、これまで行われた海洋調査等の経緯も含めまして海況あるいは水塊分布の概況についてお話をします。次に、最近の調査研究課題ということで、湾奥部の低酸素化の問題、それからシャットネラ赤潮による養殖被害の問題を取り上げます。最後に、漁獲量の推移あるいは橘湾の水産資源の特性といったところを、わかる範囲で簡単にまとめてご紹介をして、今後の取組に向けてというようなことでまとめたいと思います。
 まず、橘湾の位置ですけれども、九州沿岸水路誌では、この一番湾の奥のところを橘湾というふうに呼んでおりますが、一般的には、この長崎半島の先端の樺島と天草下島の富岡半島の先端部を結んだところから内側全体を橘湾としていることが多いです。今回、追加された海域の区分もこれと一致しております。面積が、大体700平方キロメートルです。
 海底地形を見ますと、有明海につながる早崎瀬戸の周辺は、大変起伏に富んでおりますが、それを除きますと水深の変化は全体に小さく、特にこの湾奥部は30メートル台の平坦面になっています。
 これまで、この橘湾で少しまとまった調査報告が出ているものを、幾つかここに挙げました。まず、1970年に海況及び魚群分布調査として、1966年から68年の7月上旬を中心に行われました集中的な調査の報告が行われています。それに続いて1979年にとりまとめられたカタクチイワシ共同調査の中で、1972年から1974年にかけての周年にわたる海況変化等の調査結果を含めた、まとまった報告が出ています。
 私が知っている限りでは、この2つぐらいしかまとまった報告がありません。その後、最近、1991年から2003年に長崎県総合水産試験場で赤潮モニタリング調査というのが続けられておりまして、夏、主に湾奥部で実施されております。それから、研究のほうで富岡干潟のハルマンスナモグリの幼生の分散・回帰に関する共同研究が行われておりまして、その中で水塊分布とか流れの調査の研究結果が幾つか報告されております。
 現在も、長崎県の総合水産試験場でカタクチイワシのシラス分布とか、あるいはシャットネラ赤潮に関するモニタリング調査が行われておりますが、調査の時期も限定されておりまして、有明海・八代海に比べてデータ・情報が極めて不足しているというのが現状でございます。
 概要に入りますけれども、まず、底質の分布状況を示したものです。上のほうの図は中央粒径値をMdφスケールで示したもので、数値の大きいところほど底質を構成している粒子の粒が細かいことを示しています。微粒堆積物、シルトですけれども、これは湾の奥部と、それから長崎半島に沿った沿岸部を中心に分布しておりまして、粒の粗い方はこの湾の中央東部、早崎瀬戸の付近に分布していることがわかります。早崎瀬戸の潮流の運動様式によく対応しているというふうに考えられています。この特に微粒子の供給源は、そういう意味で有明海なんですが、潮流速が減少する沿岸部あるいは奥のほうの弱い環流域で、そういう微粒子が沈下堆積をしたものというふうに考えられています。
 下の図は、底質の有機物含量の指標として強熱減量の分布を示したものですが、この微粒の堆積物の沈積しているところで有機物含量が多い傾向があることがわかります。特にこの湾奥部は有機物含量が最も多いということです。ほかに、有機炭素や全窒素の分布もございますけれども、類似した傾向を示しています。
 次に水塊分布です。少し古い資料ですけれども、1970年の報告に記載されている模式図をここに上げています。橘湾の海洋学的な性格を一言で言うと、ここに赤字で書きましたけれども、「河口域」、具体的には有明海ということになりますが、「有明海と外海域を連結する海域」であるというふうに言っていいと思います。
 橘湾内には大きな流入河川はございません。湾奥部から、長崎県の沿岸部に有明海水の影響を受けた低塩分の水が分布をしている、一方、この天草下島側に外海系の高塩分水が分布している、というのが基本的なパターンになっています。
 早崎瀬戸から、この北西方向に有明海水が外海水と混合したもの、混合水というふうに名前がついていますけれども、そういう水が流出して分布しています。当然ながら、この流出水の塩分の値ですとか流出状況は、有明海への河川水流入量、これは降水量に対応しているわけですけれども、そういうものによって大きく変動しています。
 湾の中央部に低塩分水と高塩分水の境界ができていることが多いんですけれども、その境界の位置ですとか塩分の空間勾配も、降水量の変化に対応しているというふうに言われています。
 少し塩分の分布の観測例をお示ししたいと思いますが、これは1993年8月の観測例で、左のほうが1メートルの深さ、右のほうは30メートルの深さのものです。外海系の塩分の高い水が、この天草側に分布している様子がよくわかります。それから、下のほうは有明海から橘湾のほうに流出していく低塩分の水、表層ですね、北西方向に低塩分水が伸び出していく様子がよくとらえられています。
 今の図で、この富岡半島から真北にとったラインと、北西方向にとったライン上の深さ方向の断面図を、次にお見せします。左のほうが北側にとった断面、右のほうが北西方向にとった断面で、水温と塩分についての結果です。いずれも、富岡半島側、この図の右側になりますが、その下層に高塩分水が分布しておりまして、低塩分水との間に躍層が発達している様子がわかります。
 これは橘湾の水温・塩分の観測結果から作成されたT-Sダイアグラムの例で、1973年と1974年を示したものです。橘湾の水温・塩分が周年にわたってどういう範囲で変動しているかというのが、この図を見ると大体おわかりいただけると思います。1974年は全体に塩分が高くて、1973年の8月とか9月に見られた高温で低塩分の水が全く出現していないということがおわかりいただけると思います。
 こういうふうに降水量等の気象条件によって、結構年々の変動は大きいというふうに考えられます。
 冬のほうの観測情報は、少ないんですけれども、たまたま私の手元に1987年2月8日の人工衛星画像、割合きれいに撮れているものがございます。冬の表面水温の分布のパターンが大体よく出ていると思いますけれども、外海系の温度の高い水が、この天草側から有明海のほうに流入していく様子、あるいは有明海の水が混合しながら流出していく様子、さらには、この湾の奥のほうに左回りの環流が存在しているというようなところが、この画像から見えます。
 橘湾の流れについては、実は橘湾内で長期間、流速計なんかを係留することのできる場所が、漁業活動なんかの影響もあって、ほとんど無いということもありまして、これまでまとまった流れのデータはありません。それで、上げ潮と下げ潮の潮流の様子、概況を示しました。上のの図に太い線が入っていますが、これが断片的なものですけれども、30メートルの深さの恒流の推定結果ということになっています。全体に恒流は小さいということですが、一つ特徴的なのは、上げ潮、下げ潮、いずれについても、湾の奥のほうに左回りの弱い環流が存在している様子が描かれている点だと思います。
 早崎瀬戸から橘湾に流出してくる流れについては、ADCPを使った詳細な観測が行われた例があります。それを見ますと、早崎瀬戸から橘湾に向かう残差流があるということで、東西成分をここに示してありますけれども、要するに、早崎瀬戸の深みに沿って流出する流れがあるということと、それから、上層の低塩分水の流出に伴う密度流の効果がそれに加わっていると考えられています。
 下の図は、別途行われた表層漂流ブイの追跡実験の結果ですけれども、およそ、そういう流出の様子がわかると思います。
 あと、最初に申し上げましたようにハルマンスナモグリの幼生の輸送に関連して、橘湾、有明海の数値シミュレーションが幾つか行われています。その一例で、平均的な8月の残差流の計算結果をここに示しました。少し特徴的なのは、表層と10メートルのところで、湾の中央部に左回りに循環する流れが計算されているところです。ただ、こういう情報もそんなに多くありません。
 さらに、橘湾の流れの変動を考えるときに一つ大きな問題かもしれないのは、橘湾は外海にこういうふうに開けておりまして、外海の変動の影響を受けている可能性が大きいわけですが、長崎県総合水産試験場の高木さんが、この橘湾の湾口部で繰り返し流れの観測をしておられるものの一例を、ここに持ってきましたけれども、外海から黒潮系の水が北上して突っ込んでくるようなときに、この湾口部に北向きの強い流れができるというようなことが報告されております。こういう外海の変動の影響をこの橘湾がどういうふうに受けているのかというのも、一つの重要な課題です。なかなか難しいところがあります。
 以上が概要ですけれども、少し調査研究課題の紹介をしておきたいと思います。
 一つは、橘湾の湾奥部の底層の海底付近の酸素濃度が、2000年代に入ってから低下してきているのではないかという問題で、これは私どもの研究室で長崎県総合水試のデータを利用させていただいて少し検討をしたものです。その結果わかってきたのは、この早崎瀬戸から流出した混合水の一部が、湾奥部の中下層に流入をしてくるということで、低酸素化がその下層で進行していくようだ、ということがわかってまいりました。橘湾、非常に地形的には開放的な湾ですが、水理的な特性によって、湾奥部の海底付近では低酸素化が進んでいるのではないかという、そういう報告です。
 この混合水が流入してくる深度を決める大事な要素の一つとして、この混合水の海水の密度が非常に大事ですけれども、その密度を決めるのは塩分です。そういうこともありまして、橘湾の中央部の塩分が、有明海で雨が降って河川から淡水が流出する時期と、どのくらい時間差を持っているのかを少し調べてみたものです。ここら辺はかなり粗々の推定で、非常に大事な問題ですので、これも、これからもう少しきちんと調査研究が必要だと思いますが、久留米の降水量と橘湾の塩分の相関を見たものですけれども、大体半月から1カ月前の降水量と有意な相関を持っているというような結果が得られています。ここら辺も、少し精度を上げていかなきゃいけないと思います。
 次に、シャットネラ赤潮による橘湾の養殖被害の問題ですけれども、ご存じのように、2009年、2010年に非常に大きな被害が出ています。これは被害の大きかった2009年のシャットネラ細胞密度の水平分布の推移を示したものですけれども、7月の下旬あたりから有明海で発生していたシャットネラ赤潮が、橘湾の沿岸に広がっている様子がわかります。2011年度は、実はこのシャットネラ赤潮はほとんど発生をしなかったわけですけれども、2011年度から有明海・八代海のシャットネラと有害赤潮プランクトン分布情報ということで、広域調査等で得られたプランクトン数、その他に関する情報がホームページで提供されるようになっております。
 被害が出た2009年と2010年について、長崎県総合水産試験場の観測結果を示したいと思いますけれども、橘湾で、この塩分が低いところですね、そういうところに集中的にシャットネラの細胞数の多いところが出てきている様子がわかります。
 さらに、これは、そのシャットネラ赤潮によって橘湾で養殖被害が出た時期と佐賀の旬別降水量との対応を示した表ですけれども、旬別で300ミリ程度、あるいはそれ以上の降水が記録されているときに、養殖被害が起きているということが少しわかってきています。
 さらに、先ほどの長崎県の総合水産試験場の観測日の前日に、海洋短波レーダーで測定された有明海表層の平均流の分布をここに示しておりますけれども、いずれも有明海から流出する方向の南下流が卓越していることがわかります。特に被害が大きかった2009年はそれが強い、そういう傾向が特に強いということで、恐らく大雨がふった後、その水が早崎瀬戸を通って橘湾に流出する過程で、このシャットネラ赤潮細胞の拡大をもたらしたのではないかと考えられます。ここら辺も、これからさらにそのプロセスを詰めていくことが必要です。
 最後に、漁獲量の1972年から2009年までの推移についてグラフをお見せしたいと思います。すべて長崎農林水産統計年報に基づくものです。まず、橘湾の漁業の非常に大きな特徴ですけれども、漁獲量のほとんどはイワシ類で占められています。全体に減少傾向を示していることもわかります。その漂泳性魚類の内訳ですけれども、カタクチイワシとマイワシでほとんど占められていまして、1990年代の後半から減少ないし横ばいの傾向が続いています。
 漁獲量は相対的に非常に少ないですけれども、底棲性魚類についてみますと、マダイとかヒラメ・カレイが主体ですが、減少していて、1970年代に比べると半分ぐらいまで減少してきています。その他の水産物、エビ・カニ類、イカ・タコ類、ウニ・ナマコ類、海藻類について漁獲量の推移をまとめて示しましたけれども、いずれについても減少傾向が顕著であることがおわかりいただけると思います。
 こういう水産資源が有明海と非常にリンクしているところが多いというのを、最後にちょっと示したいと思うんですが、左の図は少し古いものですけれども、カタクチイワシの回遊想定図です。基本的には外海からシラスが補給されてくるわけですが、それがそのまま春漁の対象になりますが、一部は早崎瀬戸を通って有明海の奥まで移動すると考えられています。有明海で夏から秋を過ごした後、10月から11月に橘湾に移動して、秋漁の対象になると考えられています。
 右はクルマエビですけれども、産卵場が有明海の湾口部から橘湾、さらには天草海に形成されるということで、浮遊幼生は有明海の奥部あるいは中央部の干潟域で成長・成熟をして、またこの産卵場のほうに戻ってくる生活パターンを持っているようです。
 さらに、これはトラフグの回遊と産卵場・成育場を示したものですけれども、トラフグの産卵場も有明海の湾口部から橘湾にかけてのところに形成されるということで、そこで産卵した資源が日本海・東シナ海・瀬戸内海系群のトラフグ資源を支えているのではないかと考えられています。
 また、図は示しませんけれども、シログチ資源についても、橘湾と有明海は同じ系群、資源的に同じグループであるという報告が出ています。そういう意味で、環境あるいは資源についても、有明海と橘湾を一体のものとしてモニタリング調査を計画していく、非常に大事な観点になるだろうと思うんですが、なかなかこれまでそういう調査の例はほとんどなくて、私どもの研究室で2008年から夏を中心に毎月1回、こういう定線で観測を続けているのが唯一の情報かなと思います。
 例えば2010年の7月下旬に、有明海のシャットネラ赤潮が橘湾まで拡大したときの、このライン上の深さ方向の分布を示したものを一例として持ってきましたけれども、表層を低塩分の水が早崎瀬戸を越えて橘湾のほうに伸び出していくと同時に、鉛直循環が全体的に強まっている様子がうかがえます。
 そういうことを含めて最後に少しまとめたいと思いますけれども、橘湾は、繰り返しになりますが、有明海と外海水とを連結する海域です。その意味で、有明海から流出する河川系水の変動の影響を大きく受けています。特に低塩分水の移動実態、これはシャットネラ赤潮の問題に関連しても非常に重要なところです。
 それから、黒潮系の外海水の影響については、まだ情報が非常に限られているということ。
 それから、漁業資源の中には、橘湾で産卵して有明海奥部で成育するような生態を持つものが多いということですけれども、橘湾における生活実態、情報が非常に不足していて不明の点が多いということです。
 橘湾の漁業については、イワシ類等の資源動向に大きく左右されるということがありますが、そのほかのさまざまな魚介類も含めて、全体的に漁獲量が減少傾向を示しています。したがって、その減少要因の解明が非常に大事な問題ですけれども、湾奥部の低酸素化の問題、シャットネラ赤潮の影響、あるいは成育場となる有明海等の周辺海域の環境変化、グローバルな温暖化等の影響、さらには広域の資源動向との対応、これはイワシ類の場合、特に問題かもしれません。あるいは、漁業の操業実態をもう少しきちっと整理をしていくことも必要だろうということですが、いずれにしても、基本的なデータ・情報の収集と整理解析が非常に大事です。
 それで、最後に今後の取組ということで、もう少し具体的に何かまとめられればということで付け加えたものですけれども、できれば周年のモニタリング体制を構築することが必要で、有明海と連携する形で計画できれば、大変望ましいですけど。
 水温・塩分等から見た水塊分布とその変動の実態把握、水質・底質の監視、特に湾奥部底層の低酸素化の問題、今後も注意が必要だと思いますし、底質については1960年代の後半にかなりしっかりした調査が行われておりますが、その後の状況、現況の把握が必要ではないかと思います。
 それから、シャットネラ等の赤潮の監視については、特に有明海のモニタリングと連携した取組が必要ですし、資源生物の生態についても有明海と橘湾を統合した取組が必要な面がかなり強いということを最後に申し上げまして、私の報告は以上でございます。

○岡田委員長 はい、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの中田先生のご報告に関しまして、ご質問等がございましたらお願いいたします。
 はい、じゃ、どうぞ。

○滝川委員 滝川です。
 橘湾の環境要因ということで、非常に広範囲に考えなきゃいけない。ご教授いただきまして、ありがとうございます。
 そこで、ちょっと先生のお考えをお伺いしたいんですが、先ほど橘湾を橘湾だけで考えるのはちょっとという内容もあったかと思うんですが、温暖化の影響あるいは黒潮等の影響もあるということは、逆に言うと東シナ海全体の海域の変動も非常に問題になると。そういったところがあるのかなと思うんですが、中国等々の大きな河川なんかの影響も非常に大きいとかいうふうに言われていますよね。そういった点について、先生はどうお考えなのかなと。

○中田(英)委員 それは対象として取り上げる問題によるんだと思います。橘湾の奥で起きているいろんな問題は、やはり有明海とリンクした形で考えることが非常に大事ですし、橘湾に対する外海の影響が非常に重要性を持つような問題については、東シナ海辺りまでリンクさせたような取組が必要になってくると思いますけれども、全部が全部、何でもかんでもやらなきゃいけないということでは当然ないわけですよね。だから、橘湾の中で起きているどういう問題を取り上げていくのかということで、その範囲を考えていくべきだと思います。

○岡田委員長 よろしいですね。はい、ありがとうございます。
 じゃ、どうぞ。

○本城委員 資料の22ページですけれども、1990年の中ごろから魚類組成が劇的に変化しているように、これで見られるんですね。それから、私の記憶では、最初に橘湾で養殖魚類の被害が起きたのもこのころかなと理解するんですが、こういう年代に何か大きな環境の変化があったという情報をお持ちでしょうか。

○中田(英)委員 魚類の漁獲量については、農林統計の数値をそのままグラフにしただけで、それ以上いろんな検討はしていないんですけれども、ちょっと気になるのは、その統計の取り方が年によって少しまちまちだったり、ある年を境に少し変わったりしているところもあるものですから、そこら辺を一度確認をした上で魚類の組成、確かに大きくここで変わっているように見えるんですけれども、実際に統計上の問題ではないということであれば、その原因がどこら辺にあるのかと考えていきたいと思っています。
 ちょっと今はまだ何とも言えないところです。

○本城委員 何かエソが急に増えてきているような気もしますので、その辺り。

○中田(英)委員 ただ、量的には、最初の図でご覧いただいたようにイワシ類がほとんどで、それぞれの種類の量自体はそんなに大きいものではない。

○本城委員 ありがとうございました。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 はい、じゃ、楠田先生、最後に。

○楠田委員 今の本城先生のご質問に関連してなんですけれども、次の23ページでは、例えば左下のウニ・ナマコ類というのは1982年で激減してしまっているんですけれども、今、中田先生からご説明をいただいたこの漁獲量のところは、大体生息量と比例しているという、橘湾ではそういうふうに考えてよろしいんでしょうか。

○中田(英)委員 これも、漁獲量自体はイワシ類が大部分で、あとの水産物についてはそれほど大きいものではないので、これを生物量とか生息している量というふうにそのまま見ていいかどうか、ちょっと判断がつかないところがあります。
 これ、山口先生、どうですか。

○山口(敦)委員 恐らく、多分、さっき中田先生が言われたみたいに、この中身を精査していかないと何とも言えないと思うんですけど、確かに統計の取り方が、多分この間にも何回か変わっていると思いますし、あとは、これは属地、地のほうですかね。漁法を多分全部込みで入れられていると思うんですけれども、もしかしたら橘湾なので、漁法によっては……橘湾として入っていれば大丈夫かな。ちょっと統計のほう、私、確認していないのでわからないんですけれども、長崎県で見てしまうともしかしたら違うところのもので橘海区に入ってくるものもあるので、違う海域で獲れているのが入っていなければ大丈夫だと思うんですけれども、そういったところ一つずつ確認してみないと何とも言えないんですが、即、生息量を表すとはちょっと難しいところがあるのかなと思います。

○中田(英)委員 ただ、漁獲量が全体にこういうふうに減少しているという状況をお伝えしたかったということでございます。

○山口(敦)委員 多分、資源量が減ってくると、その努力量も減る場合がありますので、そういったことから見ても、漁獲が減っているというのが重要なのかなとは思います。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 先ほどの議題と同じで、まだたくさんご質問あるかと思いますが、時間の関係もございまして残念ながらここまでにさせていただきます。
 中田委員、貴重な情報のご提供、本当にありがとうございました。
 最後、まだ一つ議題が残っておりますので、次の議題に移りたいと思います。お手元の「小委員会の設置について」でございます。
 前回の委員会の最後に、事務局より本委員会の審議に当たっての基本的なスタンスということで、本委員会に関しまして2つの求められる役割、審議体制などについてご説明をいただきました。本議題では、前回の内容を踏まえまして、事務局から、本委員会のもとに下部組織として小委員会を設置するということの資料のご説明をいただきたいと思います。
 なお、参考資料3を見ていただければよろしいかと思いますが、本委員会の運営方針の第4項の規定のとおり、小委員会を設置するということは本委員会の所掌事項でございます。事務局説明の後に、委員会として小委員会を設置することについてご検討いただきたいと思います。
 まず、資料4の裏をご覧ください。この裏面の説明事項から、事務局よりご説明をお願いいたします。

○阿部室長補佐 環境省閉鎖性海域対策室の室長補佐をしております阿部と申します。資料4について説明させていただきます。座って説明させていただきます。
 先ほど委員長から説明のありましたとおり、資料4の裏面のところを説明させていただきます。小委員会の設置ということですけれども、前回までの委員会の中で本委員会に求められる役割ということで、①、②、2つの大きな役割について、事務局より提案させていただいているところでございます。
 この内容について、今後、評価委員会の中できちんと審議して、ある程度結論を出していかなければいけないということを考えましたときに、やはり前回、前々回、今回もそうですが、国と委員との間で直接キャッチボールするというより、ある程度委員の中からも資料の取りまとめのところにご参画いただいて、評価委員会でできるだけ限られた機会の中で、機動的にまた効率的に審議ができるようにという意味合いで、小委員会を設置させていただきたいということでございます。
 ちなみに、先ほど岡田委員長から出ましたとおり、小委員会という組織自身につきましては、この委員会が発足した当時に、既に小委員会というのはございました。本委員会にご出席されている本城委員も小委員会の委員としてご参画されていますし、小委員会にはほかにも、前の小委員会のときには各水産試験場の場長の方だとか、その他専門家の方にも入っていただいて、特に文献情報の収集・整理を進めていただいた次第でございます。
 この機構を使って、今回も作業を進めていきたいということが、事務局の提案でございます。
 まず、事務局といたしましては、内容によって2つの小委員会を設置したいと考えてございます。まず1つは、生物・水産資源問題検討作業小委員会です。こちらについては、有明海及び八代海等で生じている生物・水産資源を巡る問題点、へい死事案だとか、漁獲量の低迷だとか、そういうふうなものに関しての現況把握に関すること。その現況についての原因・要因、発生機構に関すること。また、それに関して被害予防・被害軽減等の対策に対する評価に関すること。④といたしまして、その問題事案を解消・克服するための再生手順に関すること、ということでございます。それを本委員会委員の人、それ以外にも専門家にも入っていただいて資料を取りまとめ、順次、委員会に報告していくということでございます。
 もう1つの小委員会といたしまして、海域再生対策検討作業小委員会ということで、こちらの所掌といたしましては有明海及び八代海等の再生像に関すること。また、その再生像を達成するための再生手順に関すること。再生技術の評価に関すること。その①、②に係る環境特性の把握、課題整理に関すること。そういうふうなものを順次取りまとめて、委員会に提出するということです。
 それで、いずれも小委員会につきましても、委員会の構成員の一部の委員の方、及び専門委員、これ専門委員というのは、新たに必要があれば専門家の人に入っていただくということで、今後選任するということで、そういう人たちによって構成する小委員会を設置したいと考えております。
 説明は以上です。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 事務局から2つの小委員会を設置したいということで、目的・所掌・構成等につきましてご説明がございました。この原案につきまして、ご質問、ご意見等がございましたら、いただきたいと思います。
 はい、どうぞ。

○福岡委員 私、先ほど質問したことと関係するのですが、説明資料1の①に「最大のミッションを継承し、有明海及び八代海等で生じている生物・水産資源を巡る問題点の原因・要因、発生機構の究明を進めるとともに」、以下は②で「再生手順を明らかにする」とあります。①番目というのは、一体どこまで本当に明らかになっていて、今後どうしようとしているのか。私は、はっきり申し上げてよくわかりません。
 今日の省庁のお話を聞いていますと、何か再生手順のほうに力が行っているように見えます。この最初の段階で、その①のところは、ちゃんとある程度のところを押さえて、全部やれというわけにはいきませんから、重要なことは押さえて、その上で再生手順を含めて考えるというようなことにならないと、この委員会のミッションというのが曖昧になるなというのが、私の問題意識です。
 ②番目というのは大事だというのはわかっているんですけど、①番目をちゃんとしておかないとならないのではないのかと、それは何なのかということをちゃんと議論する場はどこにあるんですかということをお伺いしたい。

○阿部室長補佐 先ほど、今の福岡委員の質問に関してですけれども、我々も、その原因究明は非常に大事だと思っておりますし、また再生も大事だと思っております。その2本柱でやるとしたときに、当然それを最終的に評価していただくのは、この評価委員会だと思っております。その評価委員会に上げる情報を、ある程度、委員に入ってもらって、どれが大事なのか、どういう情報を集めたらいいのか、どういう整理をすると評価委員会での評価に役立つのかというところを、ご意見をいただきながらそこで資料を揉んでいって、この委員会で最終的に評価していくと。この原因究明の評価、原因究明をしていくこと、再生をしていくことはいずれも大事ですので、これらについてこの本評価委員会できちんと議論になるような情報を整理するという小委員会ということで、ご理解いただければと思います。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 じゃ、どうぞ。

○清野委員 こういった場をつくっていただくことは大事だと思うんですけど、ちょっと行政側に伺いたいんですけれども、研究者のほうで、そういう時間とか汗をかいて、何度かこういう努力をしますよね。それを、どうやって行政は、現場の特措法関連と言われる事業にフィードバックしていかれるんですか。そこのループが見えないんですよ。
 ですから、有明海、随分いろんな調査を投入して行政も研究者もやっていますけれども、その一つ一つの事業にどうやって埋め込んでいくかという、その政策的なインプリメンテーションと言われるプロセスが、今まで抜けていたんだと思うんですね。ですから、そこは研究者側もご協力、もちろん皆さんされると思いますが、行政としてのそこのリングの抜けた部分を強化するやり方を、次回ぐらいまでで結構ですので、環境省と各省でお願いしたいと思います。
 そうじゃないと、現場的には、特措法で何か予算がつきやすいからこの場に乗っけておこうみたいな、そういう安易なものが結構あって、せっかくここでいろんな集中した審議をしますので、ぜひその技術レベルとか再生をして生態系とか漁場を戻していくことにつながると思いますので、ぜひそこはお願いしたいし、ある意味約束していただきたいと思います。

○岡田委員長 はい、ありがとうございます。
 これは。どうぞ、はい、全体委員会の。

○阿部室長補佐 清野委員のおっしゃるようなところは、環境省でいいますと、環境省のほうとして何をこの再生策としてやるべきかというのを実際のところ求めている、どういうことをやったらいいんだろうかということをある程度提案をいただきたい。提案というか、やっぱりこういうことをやっていかなくちゃいけないよというのを、学者の人に聞いてやっていきたいという気持ちはあると思うんですね。
 それで、そういう意味でいいますと、この評価委員会の中で評価していただいて、例えば必要性があるみたいなことを提案していくとなると、そういうものをいかに自分たちの事業に取り込んでいけるかということを、各省庁で当然考えていただけるのであろうとは思います。そういうことがないと、やっぱり評価委員会がいかに再生のことを考えても、それが事業に結びつかないのであれば、やっぱりいけないと思いますので、そうしていくのだろうと思います。

○小松委員 第1回か2回でも触れたんですが、ここの趣旨の①のところで「生物・水産資源を巡る問題点」となっていますよね。生物・水産資源がよみがえればいいという問題じゃないと思うんですよ。やっぱり水環境という視点も、ぜひこの中に入れてほしい。もちろんリンクしていますけどね。

○岡田委員長 よろしいですね。はい。
 ほかにございますでしょうか。
 はい、どうぞ。

○福岡委員 今の清野先生の言われたことは非常に大事です。何が大事かというと、環境省がどうしようとするか、ここで言えというんじゃなくて、やっぱり統合的な政策としてどうするのかというのを持っていないと、委員の中から、ああだこうだと言っているだけじゃ、政策になり得ません。各省庁は、自分たちはどういうものをやる必要があるのかを政策として出していただいて、それを全体をつなげる努力をする必要があります。
 私は、前のときからそう言っているんですけれども、いつまでも個別の縦割りの中での事業中心の議論になっているわけです。前回の1回目の委員会のときも、私はそのように申し上げました。これは政策なんですと。事業としてはいろいろやるというのは当然のことなんですけれど、政策として、この有明海をどうするのというのは大事なことじゃないですかと。
 例えば、農水省、国土交通省、林野庁とか、いろいろ入って検討するのはいいんだけれども、先ほど中田先生が言われたように、例えば林野庁が入ったら、じゃ、川との関係、農水の土地利用との関係とか、そういうものをどう考えるのかということを共同してやっていただかないとなりません。これは個別にやる、林野庁が入ったからこれから勉強しますと言っているような段階じゃないわけですよ。もう課題の相当のことがわかっていて、林野庁だけがやるような話は、それは少し違うと思います。もう既にわかっていることを合わせて全体としてどう考えるか。それが政策なんですよ。
 だから、林野庁の事業もいいけれども、有明海としてこの特措法に相当するものをどうするのということについては、しっかり議論し、やっていただきたい。何かもめそうになると、委員長はすぐ次の機会に任せると言うけど、それでは議論が進んでいきません。例えばはっきり申し上げたいのは、ここで問題になって、じゃそれがどういう回答が出たか、次の会議でちゃんと配るようにしてください。ああ、なるほどと、それならいいですねというふうな合意がないと、何か言いっぱなしにみんななっていくわけですよ。
 前回、国道交通省の話があったときも、私は出なかったんで後からいただいたんです。その回答というのは、どんな形で皆さんに渡ったんだろうかと。要するに議論したけれども、問題点をどうしようということについての、議論を行う場になっていないように思います。それで、この場所が決めるんですと言ったって、委員が言ったことに対して、どう考えますかということについての方向性を出していただかないと、言いっぱなしになりますということを申し上げたい。

○岡田委員長 はい、かしこまりました。今、委員長に対して大きなご注意をいただきまして、今、福岡先生のご注意は、次回以降きちんと守るようにさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 ほかに、議論が小委員会の設置とは少し違うところの、本来のこの委員会のご議論をいただきましたが、本日のこの時点においては、小委員会の設置についてよろしいでしょうか。
 最後に……最後というのはおかしい、先ほど小松先生からご指摘いただいた点、最初の委員会のところに水環境の視点もきちんと、当然関わりがあるわけですから、入れるという前提で委員会の設置をしたいと思いますが、ちょっと事務局から委員会決定の原案をご紹介いただけませんでしょうか。

○阿部室長補佐 それでは、資料4の表のほうですね、資料番号の資料4と付いているほうを見てください。
 有明海・八代海等総合調査評価委員会の小委員会の設置について(案)。
 有明海・八代海等総合調査評価委員会の運営方針について(平成15年2月7日委員会決定)第4事項の①の規程に基づき、下記の小委員会を設置するものとする。
 1、生物・水産資源……この後に水環境という文言を加えさせていただきます、最初から読み上げますと生物・水産資源・水環境問題検討作業小委員会。
 委員会が行う有明海・八代海等における生物・水産資源・水環境を巡る問題にかかる情報の収集・整理・分析を行う。
 2、海域再生対策検討作業小委員会。
 委員会が行う有明海・八代海等の再生の評価にかかる情報の収集・整理・分析を行う。
 以上です。

○岡田委員長 はい、ありがとうございました。
 ということで、よろしいでしょうか。
 はい、どうもありがとうございました。
 それでは、小委員会の設置に関しまして、事務局のほうで準備を進めさせていただきます。
 なお、参考資料4の運営方針の規定に基づき、小委員会の委員長及び構成メンバーにつきましては、委員長が指名させていただくことになっております。本委員会のメンバーの中から、小委員会にご協力いただきたい委員につきましては、後日、事務局を通じてご連絡をとらせていただきます。可能な限りご参画をお願いしたいと思います。
 また、委員の中で、ぜひこの委員会に協力したいという委員がいらっしゃいましたら、事務局のほうにお申し出いただければというふうに思います。よろしいでしょうか。
 はい。それでは、本議題はこれまでとさせていただきます。
 その他の議題に入る前に、これまでのところ、全体を通じて何かご発言ございますでしょうか。
 よろしいですか。
 それでは、最後の議題の「その他」でございますが、事務局のほうから何かございますでしょうか。

○阿部室長補佐 事務局から、幾つかご説明いたします。
 まず、本日、かなり委員の方から、質問したいけれどもできなかったというところがありますので、こちらにつきましては事務局のほうで取りまとめて、各省庁とやりとりして、きちんと各委員に結果についてご報告させていただきます。
 続きまして、次回の委員会のスケジュールですけれども、前の議題で小委員会の設置というのを決めていただきましたけれども、この小委員会のある程度の成果をもって、次回の委員会、進捗状況の説明等になるかもしれませんけれども、させていただきたいと思いますので、時期については、その小委員会の状況によって決めさせていただくとさせていただきたいと思います。
 あと、先ほども言いましたが、資料にもありましたが、小委員会の委員ですね、構成メンバーに、できれば本委員会の中から何人かは入っていただきたいなというふうに思っております。それで、その連絡を委員長と相談の上、できれば今月中にはさせていただきたいと思いますので、そういう連絡があった場合には、できる限りご参画いただけますようよろしくお願いいたします。
 続きまして、小委員会の開催の時期ですけれども、これから委員を選定していくという作業に入りますので、小委員会自身は、今が6月下旬ですので7月の下旬、もしくは8月中ぐらいの日程で開催することになるかなと思っております。
 続きまして、本委員会の今回の議事録ですけれども、速記録が上がってきましたら、各委員のほうに内容をご確認いただく作業をお願いしたいと思います。
 あと、最後になりますけれども、台風が近づいてきております。それで、既に西日本のほうでは、もうかなり交通機関に乱れが出てきているという話がございます。それで万が一、もう帰り予定にしていた飛行機便が欠航で、もうその他代替えの手段もないというふうな話も、当然出てくるかと思います。そういうときは、こちらでお泊まりいただいて、また新しい交通機関の予約等をしていただいた部分についても、キャンセル料を含め宿泊費も含め、こちらで当然支払わせていただきますので、そういうことについてはご心配なく、今から各委員でご確認いただければと思います。
 以上です。

○奥主水環境審議官 最後になりましたが、事務局を代表いたしまして、一言ごあいさつとお礼を申し上げたいと思います。
 私、今年の4月に水環境担当審議官を拝命いたしました奥主と申します。今後、この有明海・八代海等の総合対策について担当させていただきますので、委員の先生方、ご指導、ご鞭撻、よろしくお願いしたいと思います。
 また、改めまして、今日の委員会におきましていろいろ活発なご議論ありがとうございました。また行政の対応につきましても、いろいろ厳しいご指摘をいただきました。そうしたご指摘を踏まえまして、環境省といたしましても関係省庁と連携をとりながら対応していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 これからもよろしくお願いいたします。

○岡田委員長 それでは、これで本日予定されておりました議題を終了いたしました。
 これにて、第30回の有明海・八代海等総合調査評価委員会を閉会いたします。
 議事進行にご協力いただきまして、ありがとうございました。

午後0時07分 閉会