第27回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成19年7月30日(月) 14:00~16:30

2.場所

三田共用会議所講堂

3.出席者

委員長:
須藤隆一委員長
委員:
相生啓子委員、荒牧軍治委員、伊藤史郎委員、井上潔委員、大和田紘一委員、岡田光正委員、小倉久子委員、楠田哲也委員、三本菅善昭委員、清野聡子委員、滝川清委員、中田英昭委員、細川恭史委員、本城凡夫委員、山田真知子委員、山本智子委員
発表者:
長崎大学水産学部長、農林水産省農村振興局整備部農地整備課計画官、水産庁増殖推進部漁場資源課長補佐、独立行政法人水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長、有明海・八代海漁場環境研究センター漁場環境研究科長、福岡県水産海洋技術センター有明海研究所長
事務局:
環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午後2時00分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、定刻となりましたので、第27回有明海・八代海総合調査評価委員会を開催いたします。
 私、この7月10日付で、高橋の後任で参りました、閉鎖性海域対策室長の山本と申します。どうぞよろしくお願いしたします。
 それでは初めに、私ども寺田審議官から一言ごあいさつを申し上げます。

○環境省水・大気環境局水環境担当審議官 水環境担当審議官の寺田でございます。本日は大変お忙しいところ、また何かきょうはちょっと天候も悪いようでございますけれども、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 この評価委員会でございますけれども、昨年末12月に報告書を取りまとめていただきました。大変ご尽力いただきまして、大変いい報告書ができたと思っております。関係大臣、関係機関に提出されまして、今、関係者一丸となりまして有明・八代の再生に向けた取り組みをしていくというところでございます。
 ご承知のとおり、この評価委員会は、有明・八代の特措法の中で5年以内の見直しについて議論をするということになっております。つまりそういったことからしますと、5年ということですから、議員立法で特措法ができてから5年、すなわちこの秋の11月には所掌事務がなくなるということになっております。
 ただ、大変立派な報告書もちょうだいし、国会においても高い評価をいただいております。また同時に、報告書の提言部分ではやはりこれからも第三者的な立場で様々な調査、研究を総合的に評価をすると、こういう仕組みが必要だというご検討、ご提言もちょうだいしております。そうしたことから、既に国会におきましては、この評価委員会の任務の延長と申しますか、そういうことも含めました特措法の改正というのが議論になりつつございまして、恐らくこの秋の臨時国会、きのうのきょうで国会の情勢が一体どうなるかというのは、私も今ちょっと判然としないところがありますけれども、順当であれば臨時国会において、この特措法、議員立法でもともとできておりまして、同じような議員立法という形でのご議論がされるのではないかというふうに考えているところでございますし、また私ども環境省も当然この評価委員会がさらに立派なお仕事をしていただけるということを大変切望しているというところでございます。
 本日は、環境省の方でいろいろとやっております調査の内容、それから方向、あるいは各関係機関での調査の報告などもご披露していただいて、いろいろと貴重なご意見を賜りたいと考えておりますので、ひとつなにとぞよろしくお願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、当評価委員会ですが、ことしの2月に2年の委員の任期満了に伴いまして、委員を改選いたしております。再度、再任でご了承いただきました委員の先生方には、引き続きどうぞよろしくお願いをいたします。
 それから、森下委員、それから原委員にかわりまして、2名の先生に新しく委員をお願いしておりますので、ご紹介をさせていただきます。
 お一方は、独立行政法人西海区水産研究所の井上委員でございます。
 それから、もう一方、千葉県環境研究センターの小倉委員でございます。
 それから、また菊池委員には、小委員会の委員として引き続きご協力をいただくということで、ご了解をいただいてございます。
 それから、本日の出席状況でございますが、委員20名中、福岡委員、山口委員を除く18名のご出席の予定で、小松委員も実はご出席の予定だったのですが、飛行機の欠航等、交通事情などございまして、本日はやむなくご欠席ということでございますが、定足数を満たしていることをご報告申し上げます。
 それから、新たな任期の評価委員会ということで、委員長と委員長代理を決めなけばならないわけですが、これにつきましては引き続き須藤先生、それから荒牧先生にお願いしてはどうかと考えておりますが、委員の皆様方いかがでしょうか。

(異議なし)

○環境省閉鎖性海域対策室長 ご異議ないということでよろしければ、両委員に引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、議事の前に資料の確認をさせていただきます。お手元に、座席表のほかに議事次第に配付資料一覧がございます。こちらに資料の1から資料の4-3まで資料がございます。それぞれ資料がございますでしょうか。もし、資料に不足がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。その資料4-3まで以外に、一番後ろにリーフレットで『有明海・八代海の再生に向けて』という、熊本県のリーフレットを配らせていただいております。資料は以上でございます。
 それでは、以後の議事進行につきましては、座長の須藤先生にお願いしたいと思います。須藤先生、よろしくお願いいたします。

○須藤委員長 かしこまりました。それでは、ただいまから第27回の有明海・八代海の総合調査評価委員会の議事を進めさせていただきます。
 委員の先生方には、大変天候の悪いところ、しかもご遠方からお集まりいただきまして、まことにどうもありがとうございます。また、本日も関係各機関、また傍聴の皆様もたくさんおいでくださいましたことを感謝申し上げたいと思います。
 先ほど、寺田審議官からお話がございましたように、本委員会は法律に基づいて設置されている委員会で、第2期を迎えているわけでございますが、先ほどのお話があったようなことで、とりあえず今は前の法律に基づいた期間でございますので、この間、皆さんにおまとめいただきました報告書のフォローアップを進めさせていただくということで行きたいと思いますが、また何か変更がございましたら、ご議論いただいた上で進めていきたいと思います。とりあえずは、26回の後の継続ということでやっていただければ大変ありがたいと思っておりますので、小委員会やら、あるいはワーキンググループやら、さまざまなグループをつくってやってまいりましたので、原則としては私は従来どおりの進め方でいけばいかがかなと思っております。新たに井上委員と小倉委員をお迎えしたわけでございます。両先生、どうぞよろしくお願いをいたします。
 ということで、さらに委員の皆様の一層のご協力をお願いして、まずはあいさつとさせていただきます。
 最初の議題は、有明海・八代海総合調査推進計画ということで、まずは最初に環境省から、趣旨を説明した後で、業務を担当されている機関からご報告をお願いいたします。
 それでは山本室長、お願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、お手元の資料の2-1、カラーの一枚紙でございますが、こちらに基づきまして環境省の方から簡単に、議題の1と2にかかわります全体の趣旨を説明させていただきまして、その後、引き続きまして、実施をしていただく関係機関から、その具体的な内容についてご報告をさせていただきたいと思います。
 資料の2-1でございますが、昨年12月の当委員会の報告を受けまして、その内容をきちんとフォローアップしていくために、環境省では、その下の箱に書いてあります平成19年度環境省予算ということで、新しく2本の調査を新規で要求し、予算化してございます。
 1つ目が、有明海・八代海総合調査推進費ということで、こちらが議題の最初の方でございます。委員会の報告の中で指摘されましたように、調査計画をデータベース化したり連携をしたりしていくことが非常に重要であるということで、関係機関が連携することによって、重なりがあるところについてはより合理的な調査を行い、あるいは、その抜けがあるところについては、そこをしっかりと手当をしていくと。予算化ができていないところについては、関係機関で頑張って予算をつけていくというようなこともしていくためには、しっかりと関係機関間の調整、あるいは連携を進めていくということが必要であるということで、そのための推進の調査費を予算化してございます。それで、その中で、総合調査推進計画ということで、具体的に考えている内容につきましては後ほどご説明をしますが、そういった関係機関のさまざまな調査について、全体を束ねた形で、どういった点が欠けているのか、あるいはどういった点を合理的に進めていったらいいのかということをマスタープランの形に整理をしていくということも、この調査の中で行っていく予定でございます。
 それから、2つ目の大きな柱といたしまして、有明海・八代海再生重点課題調査ということでございます。これは委員会報告の中で、今後解明すべき重点課題ということで整理していただいた課題のうち、基礎的なメカニズム等を解明することによって具体の改善対策につなげていくという部分で、環境省が一部の課題につきましてフォローアップをする調査予算を予算化してございます。ここにありますように、魚類の初期減耗、あるいはタイラギの大量斃死、それから貧酸素水塊の発生モデルと、この3つの課題に対応します内容につきまして、より掘り下げて具体的に関係機関と協力をしながら調査を進めていくと。そのようなものを予算化してございます。
 本日は、そのうちから、2つ目の議題におきまして、魚類の初期減耗に関することといたしまして、有明海の環境変化が卵や仔魚の輸送や生残にどういった影響を及ぼしているのかというのをより具体的に見ていくような調査、それから、資料の3-2で、タイラギの大量斃死に関連しますものとして、底質の環境変化がどういうメカニズムで起きているのか、あるいはそれがどのようにタイラギに影響を与えているのかというような調査を、ご報告いただきまして、それで本年度以降、3カ年の調査ということで計画しておりますので、その進め方につきまして、先生方からさまざまなご助言をいただければというふうに考えております。
 環境省からの説明は以上でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、業務を担当されておられる西海区水産研究所から説明をお願いいたします。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長 私、独立行政法人水産総合研究センター、西海区水産研究所の小谷と申します。
 このたび、平成19年度の有明海・八代海総合調査推進業務を私ども独立行政法人水産総合研究センター、それから特定非営利活動法人の有明海再生機構、並びにいであ株式会社、この3社で企画・応募いたしまして採用されたということで、この業務を実施していくことになります。つきましては、この場で、その業務の内容につきまして皆様にご説明したいと存じます。
 昨年12月にとりまとめられました委員会報告の要点を、私どもこのように受けとめております。具体的な再生の目標が第5章で示されておりますけれども、それは大きな2つの柱でございます。
 1つが希有な生態系、生物多様性及び生物浄化機能の保全・回復という柱です。2つ目が、二枚貝等の生息環境の保全回復とバランスのとれた水産資源の回復ということで、我々は具体的な再生目標をここに置いた形で、それぞれの機関が調査研究並びに事業等を実施していくということです。
 中でも、今後の我々に与えられた業務の主体的なところですけれども、調査研究を進めていく上での基本的な考え方ですけれども、1つが、これまでの調査研究の多くの成果が昨年の報告書の中にもまとめられておりますけれども、と同時に、やはり幾つかの課題、たくさんの課題が明らかになるという状況がございます。その中で、やはり今後も調査研究を継続していかなくてはならないと。さらに、調査研究成果として、事業とか実証試験、実用化ができるものについては、具体的な再生方策につなげていく必要があると。そして、残された解明すべき課題ですけれども、これは重点化課題ということで第5章の第4節に取りまとめられておりますけれども、これが私ども試験機関に与えられた課題というふうに受けとめております。
 その中で、これまでもこの委員会の中で幾つか論議をされたというふうに伺っておりますけれども、こういった調査研究を進めていくにおいて、やはりマスタープランというものに基づいて、各機関がそれらに基づいて実施していくというような状況が望ましいわけですけれども、現状をとらえますと、やはり既にもう多くの調査研究が進められていて、マスタープランを一からよーいどんということになりますと混乱もございますし、各調査試験研究機関の事情等もございますので、私どもはマスタープランの作成というところは、ちょっと考え方を変えまして、現状の調査研究の進行状況を把握しまして、さらにそれを先ほどご説明があったように補完的な課題がどこにあるかと。さらに、それらを実施していく上で、連携・強化を進めるべき課題がどこにあるかと。そういった解析をして、マスタープラン、ここで作成の報告書の中で、かなりの部分が明らかになっているわけですけれども、取り組むべき調査研究の課題を実施していく上でのお手伝いをするというふうに考えております。
 さらにこの報告書の中では、これまでの成果を踏まえて、総合的なモデルの構築であるとか、総合的な評価の仕組みにも取り組んでいく必要があるというようなことが考えられていますし、そのバックグラウンドとなるような業務ですけれども、海域環境のモニタリングというものは、これまで以上に強化しながら継続していく必要があるというふうに説明されております。
 我々が取り組むべき業務のポイントですけれども、その背景といたしまして、これまでの調査というのは、その多くが現状の把握と申しますか、有明海・八代海の現況を把握して今後の課題を明らかにしていくというところで、多くの調査研究が取り組まれている。中には、やはり実用化、それから実際の技術開発を目指して、多くの課題も取り組まれていますけれども、そういったものの成果も踏まえて、今後は現状把握から再生へ向けた取り組みを強化していく必要があるというふうに考えております。
 それから、有明海・八代海の特徴であると考えていますけれども、これまで各種関係のいろんな事業であるとか取り組みでは、環境保全をしたいということで取り組まれておりますけれども、やはり有明海・八代海の問題というのは、漁業の不振というところが契機となっておりますし、環境保全とあわせて漁業振興をいかに図っていくかというところが大きなポイントであると考えております。
 さらに予算と人員でございます。これにつきましては、この有明海・八代海の問題が出てきましてから、多くの予算、多くの人員が投入されていますけれども、今後これまで以上に多くの予算・人員がこの有明海・八代海の問題への対応に、予算・人員がふえていくということは、ちょっと私ども望めないというふうに解析しております。
 そういう中で、今後、調査研究を進めていく上でのポイントですけれども、まず、調査研究から技術開発・実用化というところに踏み込んでいくと。さらに、これまでたくさんの調査研究がなされて、情報がたくさん、成果がたくさん出ているわけですけれども、そういった成果・情報をやはり共有させるべきと。そして、新たに調査研究を進めていく上においても、連携・協力を促進すると。そういうことが必要になってきているというふうに考えております。そのためには、やはり有明海・八代海の中で共同調査を実施していく等々の効率的、かつ効果的な推進体制を構築していく必要があるというふうに考えております。
 業務の2つの大きな柱として実施していく予定です。1つがマスタープラン、これは今回の業務の仕様書の中には総合調査推進計画というふうな言葉で置きかえられていますけれども、これを策定していく。もう一つが、情報共有や連携強化に資するためのその他の措置をきちんとやっていくと。この2つが、私どもが業務としてとらえている2つの柱です。
 まず、総合調査推進計画の策定ですけれども、これにつきましては4つの項目で実施していきたいと考えております。
 1つは、調査計画や成果等に関する情報収集です。収集した情報はデータベース化して、それを解析していくということです。2つ目が、連携協力が効果的な調査、さらに補完すべき調査等を収集しましたデータベース化する中で特定していくという業務です。3つ目が、その解析の結果に基づいて、関係機関間の連絡調整といったものを進めていくと。これにつきましては、仕様書の中で必要に応じて環境省さんと相談しながら、現地調整会議を開催するということになっておりますので、そういった会議を開催する中でさらに連携協力を進めることによって、効果的に調査が進むというような課題を実施する機関間に調整を進めさせていただきます。
 それから4番目です。これが最も大きな重要なことですけれども、総合調査推進計画、この案を策定いたしまして、この評価委員会、もしくは環境省様の方にご報告いたします。
 それから、2つ目の情報共有や連携強化に関するその他の措置ですけれども、情報共有の促進を進めてまいります。今年度の業務としましては、実際にデータベースをつくるわけではないのですけれども、有明海・八代海のこれまでの成果、それから今後の計画されている調査研究を加えまして、どのようなデータベースが必要となっているか、どのようなデータベースが作成できるかといったことを関係者間で協議いたしまして、リスト化をすると。今年度に実際にデータベースを作成していくという点で、やはり皆さんの方で予算化をしていただいたり、実際にデータをお持ちのところは、それを共有するという形で公開していただくというようなことを進めていきたいと考えています。
 それから、その際に非常に重要になることは、データベースの実際に利用する立場、それから公開していく立場、運営ですけれども、そういった方たちが、実際にどういった形でそれを利用を進めたり、運営をしていくという点で、やはり何らかのルールが必要であると考えておりまして、それは指針という形で私どもは提言しているというようなことを考えています。
 それから、最後6番目ですけれども、今後、共同調査の実施を促進していく。さらには、より精度の高い有効なデータを蓄積していく過程で、やはり現場の調査が重要になってくるわけですけれども、そういった共同調査やデータの精度向上のために調査観測に関する指針、みんなが共有して技術レベルを上げていくための指針等を作成して、これをみんなに利用していただくということを考えております。
 さらに、具体的なことを進めていきますけれども、まず調査計画や成果に関する情報収集、データベース化です。これは、まず調査研究計画等を実際持って現場の調査をしている機関の情報を収集するということです。調査対象機関はこのように考えております。1つは、調査研究を実施している大学、法人及び国公立の試験研究機関。有明海・八代海においてということでございますけれども。それから、これは試験研究機関ではないのですけれども、実際に調査研究的要素の高い事業であるとか、実証試験をされている行政機関がございますので、そちらにもご協力いただいて、関連する情報を収集させていただきたいというふうに考えております。
 それから、収集する調査研究計画等の情報ですけれども、これにつきましては、昨年の委員会報告の第5章第3節、これは再生方策が取り扱われています。それから第4節、これは重点化課題が取り扱われています。その中で、調査研究に関する課題が幾つかございますので、それを実施している調査研究計画に関する情報を収集するというようなことでございます。さらに、調査研究の成果等にも加えて、第5章の第5節では「総合的なモデルの構築」、さらに「調査研究等の総合評価」を行うということで骨子がまとめられておりますので、それらに資する、それらに必要な情報データ及び技術等もあわせて収集させていただきたいというふうに考えております。
 それから、実際の計画並びに成果の情報を収集する際の注意事項です。実務的なことですけれども、今、事務局の方で、計画データベース並びに成果情報等のデータベースのフレームというものを考えております。イメージしているのはエクセルのような形式で、各機関ごとに実施課題、それからそれにかかわる予算であるとか、実施年次であるとか計画の概要・目的、それから投入された予算金額、人員といったようなことで、幾つかの項目についてご記入いただいて、エクセルのデータベースで私どもで管理していくというようなことです。それに必要な記入要領であるとか、取扱要領等も同時に示していくということになっております。特に取扱要領なんですけれども、この内容としましては、私ども、皆様からお預かりする大事な調査研究の計画、これは一部、機密事項でもあると考えておりますので、誓約書的な表現で、慎重にこのお預かりする計画並びに成果の情報を取り扱いますというようなことを提示したいというふうに考えております。
 それから、そういった業務に対する協力依頼をホームページ等を通じてやっていきたいと考えています。それから、そのほかにも文書で各機関には協力依頼を送付させていただきますし、場合によってはこちらから出向いて、ご協力依頼の中身をご説明した上で、データベースの作成に協力していただくということで、情報収集を進めていきたいと考えています。
 それから、収集する計画、成果・情報等の取りまとめですけれども、これはこの8月ぐらいに、すぐに情報収集の協力依頼をしますけれども、9月中旬を目途に、第一次集約をする。それから、その後新たに、やはり年末にかけて、いろんな予算要求なり、来年度に向けた計画を検討されると思いますので、本年末を目途に第二次集約をするというようなスケジュールを考えています。これらの収集した情報のうち、成果・情報等につきましては、必要に応じて環境省様に提供して解析をしていくということを考えています。
 それから、連携協力が効果的な調査、補完すべき調査等を特定していく作業です。お預かりした計画・情報等につきましては、それぞれ専門分野別にワーキンググループを策定して、検討して進めていきたいと考えています。余りたくさんのワーキンググループをつくると、混乱が生じますし、ワーキンググループ間の連携・協力というところも重要だと考えますので、私どもは漁業・生物ワーキンググループ、河川・海域環境ワーキンググループ、物理・モデルワーキンググループという3つのワーキンググループを組織しまして、お預かりした計画並びに成果について解析を進めるというようなことを考えています。その中で、補完すべき課題とその理由といったものを整理しますし、連携・協力によって一層の効果が期待されるという課題を特定していく作業を進めています。
 それから、あわせてですけれども、関係機関間の連絡調整を進めていく必要があると思います。その場ですけれども、1つは、現地調整会議ですが、それ以外に、私どもは既存の枠組みを利用した連携協力の強化というものも考えております。これは過去の例ですけれども、1つは、私ども西海区水産研究所が主催して実施していく会議ですけれども、西海ブロック水産業関係研究開発推進会議というものがございます。九州の公立の各県試験研究機関の関係者の方々にお集まりいただいて、研究の成果と、それから今後の計画について検討するわけですけれども、そういったものを利用して、連携・協力の強化をすると。もう一つは、これは大学等、それから有明海再生機構も積極的に取り組んでいることですけれども、シンポジウム、それから学会活動を通して、連携・協力の強化を進めていくといったことです。
 それから、現地調整会議でございますけれども、現地調整会議は、仕様書の中では必要に応じて開催するということになっています。これはお預かりした計画、成果を解析した上で、この計画についてはやはり関係機関でもう少し話し合っていただいて、連携・協力することによって、もっといい成果につながっていくのではないかというものを特定していきますので、そういった状況が判明した時点で、関係機関に要請して、この会議に参画していただくと。事務局、それから各ワーキンググループでリーダーを決めさせていただきますので、そのリーダー、そして実際の連携・強力を進めていく課題の担当者、もしくはそういった調査機関の代表者にお集まりいただいて協議をしていくというようなことです。
 その会議の役割と運営方法ですけれども、1つが相互に計画を把握・理解・調整をしていただく。あくまでも私たちはそういった場を設定するということで、主体的にやはり関係機関、相互の理解と調整を進めていきたいというような形で、この会議を進めさせていただきたいと考えています。具体的には、より詳細な計画の内容を明らかにして、連携・協力のあり方について、私どもで事務局提案というのをさせていただきますので、そういった中で調整をして連携・協力を進めていく。それから、そういった現地調整会議の開催の回数ですけれども、これは年度内ということで2回を考えております。それから、1回に取り扱う課題数、たくさん出てくる可能性もございますけれども、やはり事務局の方で整理させていただいて、優先順位に基づいた3課題ぐらいを実際の検討すべき課題という形にさせていただくというふうに考えています。
 それから、一番大きな業務の柱ですけれども、総合調査推進計画の策定です。これにつきましては、評価委員会のほうへ報告していくという形で取りまとめをしていきたいと考えております。
 まず、総合調査推進計画の取りまとめですけれども、これにつきましては、例が適当かどうかあやしいところもあるのですが、例えば大きなビルを建てている、もしくはリゾート開発を進めていくというような状況を想定していただければいいのですけれども、もう既に地盤調査であるとか、それから一部の基礎、土台は、この間の調査研究によってつくられていると。ですが、その上に建てていく建物は、そういったものはまだこれからだと。委員会の中では、建物のイメージ図というようなものはもう既につくられていて、みんなそれはイメージできるわけですけれども、その建物が実際に建つまでの作業行程が明確にされていないというふうなとらえ方をして、ここではロードマップというものを、作業工程図ですね、これをつくることを私どもの業務とするというふうにとらえています。これは各分野、各パートがございますので、複数のパートから成り立って、さらに下層構造で表現をするというようなことを考えています。冒頭申し上げたように、これは委員会報告の第5章第3節と4節の各項目に相当するものを明確にしていくと。ワーキンググループの構成と同様に、大きくは漁業・生物、河川・海域環境、物理・モデル等の大まかな区分で、それぞれのロードマップを作成していくということです。
後でロードマップのイメージを図で示しますけれども、基本的には横軸を時間軸にして、縦軸を達成度といったような図で表現してきたと。客観的にわかる図で示していきたいというふうに考えています。
 それから、その中でそれぞれの分野、それぞれの区分で具体的な目標を明らかにするとともに、目標に至る過程というものをその図から読み取れるようにしていきたいというふうに考えております。そして、やはり冒頭申しましたように、予算とか人員が限られるので、課題の優先順位であるとか、それから関係機関の役割分担というものを明確にしていくということも、ロードマップの中で注意しておきたいというふうに考えています。
 それから、ロードマップにつきましてはそういうふうな形で進めていきますけれども、それらを統合した総合調査推進計画というものにつきましては、これは主体的には調査研究に携わるものをつくりますので、やはり3番目にございます現地有識者説明会というものを開催させていただいて、広く漁業者や市民、行政部局の代表の方々に意見等をお伺いして、さらにこれを修正するという作業を進めたいと思っております。この現地有識者説明会につきましては、有明海・八代海の両海域において、おのおの1回、本年末をめどに開催するということを計画しております。
 これが総合調査推進計画のイメージです。ここにございますのが、実際の実施課題に相当するものです。それらをまとめまして、各分野ごとにそれぞれのイメージをつくっていくと。例えば、二枚貝の資源回復については、どういった課題がかかわっていて、それがどういった時間軸で、どういったところを達成目標としているのか、というようなことを明確にしています。さらにそれを積み上げて、漁業・生物の調査部門には、何を優先順位にして、それをどう組み合わせて実施していくと。最終的には、やはりこの評価委員会の報告の中でまとめられている再生目標に向かって積み上げていくというようなものを策定していきたいというふうに考えています。
それからもう一つ、情報の共有、それから連携・協力の促進ですけれども、これにつきましては、先ほど申し上げたように、データベースの充実とか、その業務運営に関する指針を作成していきます。
 これまで調査研究で得られた成果ですけれども、これは本来であれば、各種データ、パラメータ、情報等はデータベースを作成して、公開して、利用していると。それを共有化を促進するということが必要だったわけです。ことしにつきましては、構築すべきデータベースのリストを作成する。それから、データベースででき上がったあかつきには、やはりそれを一定のルールをもって利用していく、運用していくということが必要ですので、そのための指針を作成します。これにつきましては、データベース検討チームというものを組織しまして、検討を進めていきます。
 それから、調査観測指針等の策定ですけれども、これにつきましては役割分担や共同調査の実施促進を進めていきます。機関等の特性を生かした役割分担、総合的な調査の実施と。共同調査の実施ということを目指しております。具体的には、調査観測指針、マニュアル等の共有や技術交流をするわけですけれども、ことしにつきましては調査観測指針の作成ということで、調査観測指針と検討チームによって検討を進めます。
この業務の実施体制ですけれども、ここに示しましたような形で、西海区水産研究所、有明海再生機構、いであ株式会社の九州支店という形で、大きくは業務分担を進めながら、さらにその中でも連携・協力しながら、先ほど説明した業務を実施していきたいと考えています。
 それから、業務従事者の配置、役割等ですけれども、大きくは事務局内に、ここに示した4つのチームを編成します。それから事務局員だけではなくて、外部有識者ということで、総合調査推進計画の作成並びに調査観測指針等の検討チームには、実際にそういった業務をやられている方にご協力いただくことを考えています。
それから、ワーキンググループですけれども、先ほど説明しましたように3つのワーキンググループを組織します。これにつきましても一定、事務局側に、外部有識者にお手伝いをいただくということを考えています。現地調整会議、現地有識者説明会も実施したいと考えています。
 最後に、業務全体のフローですけれども、8月になりますと、すぐに主な研究機関等へ説明をして、ホームページ等を通じて、この業務に対する理解と協力を得て、データベースの作成、計画、成果情報等のデータベース作成を進めていくということで、これまで説明したような形のものをここに示した実施フローに基づいて実施してまいります。最終的には、3月に報告書をまとめて、皆様の方にご提示するというように考えています。
 以上です。

○須藤委員長 どうも小谷センター長、簡潔にご説明いただきまして、ありがとうございました。
 それでは、先ほどの山本室長の概要説明等を含めまして、委員の皆様からはご質問なり、ご意見を伺おうと思います。どうぞお願いいたします。いかがでございましょうか。
細川委員、どうぞ。

○細川委員 すみません、お尋ねします。なかなか精緻な検討、計画をなさっているようにお聞きしました。ちょっとわからなかったのでお聞きしたいのですけれども、特に4枚目のシートに業務の2つの柱というのがあって、[1]から[6]までずっと書いてありますが、この[4]というところの説明ぶりがほかとちょっと違っていて、そこで私わからなくなったのですけれども。これは、総合調査という「調査を総合化する計画」をここで教えていただいたというふうに理解すればいいのでしょうか。それとも、再生のいろんな枠組みも含めたマスタープランをつくろうということでのご提示なのでしょうか。どちらでしょうか。
 あるいは私の質問が、どうもぼうっとしていたら申しわけないので、言い直します。[4]を説明していただいた9枚目のシート、映写しているこのシートの1つ前です。これでもいいです。今映写しているシートでいきますと、青い四角で調査部門がワーキンググループにあわせて3つほど下に書いてあります。その調査部門の調査の内容の計画と、それが3つの青い矢印で上にいっていますが、そこに再生の目標というのがあります。再生の目標を達成するための手立てというのが、この下の青い3つの四角(調査)から、青い3つの矢印(手立て)がいきなりは出てこないのではないかというような気がします。青い3つの部分のところを一生懸命調査しても、矢印の部分どうしたらいいのかねというところの議論がどうしても残るような気がします。調査全体を総合的にやりましょうというご提案ですと、青い3つの四角部分をどういうふうに合理的にやっていこうかという提案でいいのだと思うんですけれど、青い3つの矢印をどうつくっていきましょうかといったところも、この中で考えておられるのかどうかと、そういうところが質問です。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長 私ども、あくまでもこの青い矢印から下の部分です。再生に必要な調査研究ということで、報告書の第5章の第3節と第5節の中でも、調査研究にかかわる課題、これをいかに進めていくかということを検討すると。また、取りまとめるというようなことを考えています。ですから、その結果をやはり行政当局なりですね、そういった方々も含めて、さらに具体的な事業や実証試験に生かしていかれるかというところが、ちょっとそこまでの提言は難しいですというふうに考えております。

○須藤委員長 細川委員、よろしいですか。上の方の線のこともおっしゃっているわけですよね。

○細川委員 はい。そうしますと、提案なんですけれども、青い3つの矢印と独立して下のところだけ考えるというのも一つの手なのですが、青い3つの矢印で、例えば今まで覆砂をやってみたら熊本側とどうも佐賀・長崎側とちょっと違うというようなことがわかってきています。こうしたことを、どうやってこの下の調査の中に反映していくかみたいな、再生に役立つための調査として、これとこれをやってほしいみたいな、調査に対する注文の出し方みたいなものをどこかで議論していただきたいな、できたらいいなと思いました。

○須藤委員長 そこは小谷さん、いかがですか。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長 この総合調査推進計画というものは、恐らくこの委員会、引き続き継続されるとなると、その場で私どもの解析の結果という、これはあくまでも総合調査推進計画(案)という形でご提示いたしますので、この場でさらに検討していただくということを考えています。研究していただいて、さらに来年度ですけれど、これはまだ私どもはその業務をどうするか決まっていませんけれども、改訂の作業を年々進めていくということを環境省の担当の方もおっしゃっていますので、そういう中で問題点を明らかにして、さらにどういった調査研究に取り組んでいくかというところも、新たに出てくる可能性もあると思います。

○須藤委員長 滝川委員、どうぞ。

○滝川委員 多分、同じことをお伺いしたいと思っているのですが、マスタープランという言葉を使われていますよね。マスタープランそのものは非常に、何かちょっとさっきのお話ですと大変だというふうなことで、ここでは今後、調査推進計画という名前で使われて、その総合調査推進計画というものとマスタープランというところのギャップが、どうもいまいち私お伺いしていてよくわからない。要するに、マスタープランというのは、ある目標値があって、理想像ですよね。その理想像に向けて、ここをこういう手立てをやりましょうということを、今までこの本評価委員会の中でもかなり議論してきて、これとこれはどういう因果関係があるよという科学的な調査をやってきた。
それのベースに基づいて、この海域をどうしましょうという、何か1つの共通のイメージがあって、それが多分マスタープランだと思うのですが、それをやるための調査を推進するということの位置づけがちょっとよく結びつかないので、もしもう少しわかりやすくご説明いただけたらなという気がいたします。その計画を推進することとマスタープランとは多分違うのだろうと。推進計画を立てるということと、マスタープランというのとは違うだろうと。そこのずれを多分、細川委員もおっしゃっている。ずれというか、どういうふうにしたらいいのと。マスタープランを実行するためには、どういう調査研究をやって、どういうことをやったらいいよという提案をするのがマスタープランづくりかなと思っているのですが、その先まで行ってしまうのか、手前のところでやろうとなさっているのか、あるいはそれを全部やろうとなさっているのか、ちょっとよくわからない。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長 私ども、環境省様とその点論議をして、マスタープランそのものというのは、昨年の委員会報告そのものというふうにとらえています。それは第5章になるわけですね。それから、私ども提言するのは、それ以上に負担が、それからここは削るとか、そういう形で、マスタープランそのものを作成することは非常に難しいのではないかというのが1点ですね。
 それから、マスタープランとなると、これがマスタープランですよとなると、また調査研究をされた、今やっているものをリセットして、それに取り組まなければならないというふうなこととなっているので、今、実際進められている調査研究、予定されている計画というのは、その調子でせざるを得ないだろうと。ですが、そういったものが実際に、どういったものがあるのかという情報すら我々は持っていないわけで、まずそれを集めて、どういったことがどの分野で計画されているのかという解析を進めます。その中で、1つは不足する部分、それから重複している部分。そういったものが明らかになっていくだろうという中で、全体計画を進めていく上で、そういった微調整をするというようなことを、この業務というふうにとらえております。いかがでしょうか。

○滝川委員 要するにマスタープランをつくるために、どういうふうな調査をやったらいいかという……。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター長 ですから、ある意味、昨年の委員会報告をマスタープランととらえざるを得ないだろうというふうに考えております。

○滝川委員 私自身はマスタープランができ上がっているとは全然思っていなくて、今からそれを具体的にやっていかなければいけないだろうと。そのための技術的な裏づけが必要ではないかと。それで、いろいろな因果関係といいますか、要因分析図とかいうのがあって、それに基づいた方向性の中でマスタープランをどう理想像をつくっていくのかというのがストーリーだと思っているのです。ところが、今の話はそこまで行っていない。その調査をやろうというお話であるので、マスタープランという言葉そのものは使ったらちょっとおかしいような気がしてきております。

○須藤委員長 滝川先生がおっしゃるとおりで、私もそういう理解を今しているのですが、これ、そちらの小谷さんの方へは、業務調査として契約をしているのですね。だから、委託をしている環境省がこれをどう考えているかを言っていただかないと、小谷さんを責めてもちょっとぐあいが悪いかなと、こう思うので。お聞きしても、多分マスタープランをつくれと言われているわけではないだろうと私は理解していますので、では、後のところは山本室長。

○環境省閉鎖性海域対策室長 昨年の12月の報告書を取りまとめる過程で、先生方にもご協力をいただいて、大変膨大な作業をこれまでの調査、レビューその他やっていただいて、何がどこまでわかっているのかというようなことも整理をいただいて、その中で、今回の環境省のフォローアップの調査が出てきているものでございます。
 先ほど細川先生からご指摘ありましたように、例えばこういう施策をやったらこういう効果があるという、一定のことはわかっているわけで、それを深めて、今度、最終的にその目標とするところに到達するためには何が要るのかというような、それを見つけ出していかなければいけないというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ一方で、各関係機関がこれまでいろいろ手探りで試行錯誤をしながら、さまざまな調査を積み上げているという中で、今年度もそれぞれ昨年の委員会報告を踏まえた、さまざまな調査を軌道修正しながらの取り組みも、現に進んでおりますので、それと一番上の再生目標をつなげていくために、どういうふうにしていったらいいのかというのを考えまして、まずはそれぞれがやられていることをしっかり情報として共有していこうということがございます。
 その中で、後ほどご説明します重点課題についてもそうなのですけれども、ある程度わかってきたので、ここをこういうふうに着目して、こういうスポットライトの当て方をしてしっかり見ていけば、次にこれをやれば再生目標に近づくだろうという施策の部分が見出せるような可能性というのが、結構芽が見えてきていますので、それをさらに深堀りしていくような調査は一方で考えながら、それぞれがそういったものを持ち寄って、マスタープランと称しておりますけれども、それを取りまとめることによって、一方で、どこかまとめてみるとここの部分が手薄いじゃないかだとか、あるいはここの部分少し調査かぶっているから、ここは関係者が連携してもう少し効率的に役割分担をすれば、より少ないマンパワーでできるじゃないかというのをしっかり見せようというものです。
 それをまとめた形で、もう一度先生方に提示をすれば、今、昨年12月の報告書を踏まえて、こんなふうに調査全体が進んでいるけれども、再生目標に到達していくためには、この部分がまだ抜けているじゃないかだとか、この部分をもっと強化すべきじゃないかだとか、この部分はもう少しこういうふうにするべきじゃないかという、より具体的なご意見をちょうだいして、さらにそれをブラッシュアップをしていくと。下からそういう既存の調査計画を束ねて、積み上げて、弱いところを補強していくことによって、最終的にはその目標達成に至るような調査計画全体のマスタープランと呼べるものをつくり上げていこうと、そういうことを考えてございます。そのための第一歩ということでの作業に着手していきたいと思います。

○滝川委員 ありがとうございます。大体わかりました。今の教えていただいたような方策というのですか。それをきょう、紙1枚しかないものですから、環境省さん、どんなことを考えられているというのを、もしお示ししていただけたら非常に理解しやすいのかなと。

○須藤委員長 この資料の2-1ね。

○滝川委員 何か非常に末端だけが出てきていて、この大きな枠だけしか出てきていないから、どんなふうにこれを有明・八代の海を考えていて、それをどういうふうにしようという。今、ご説明いただいてわかったのだけれども、資料をもし可能であれば、出していただければ。

○環境省閉鎖性海域対策室長 わかりました。今回そういう意味では、ちょっと事務局としては十分できていなかった部分ですので、次回以降しっかりそこは整理させていただきたいと思います。

○須藤委員長 多分これ委託調査をされているから、その目標だとか、いろんな詳しいことを打ち合わせした上で、今の小谷さんの方のご発表になっているのだろうと思うんですね。その間のところが、環境省の部分が、これが十分わからないと。ですから、先生おっしゃるマスタープランではないのですよね、多分ね。ですから、そこをもう少しクリアにしていただいて、今、言葉では少しおっしゃっていただいたのですが。
 ほか、どうぞ。清野先生、どうぞ。

○清野委員 残りの時間の議事の進め方も含めてなのですけれども、そういう環境省さんの全体のビジョンの議論をこの委員会というのをやるために集まっているのだと思うんです。それで、以降、割と個別のご発表について瑣末な質問をするというのは多分、余り生産的ではなくて、むしろ、ご用意いただいた資料は、きちんとまたみんなで消化した上で、今までの委員会の総括も含めて今回は私はあると思っています。残念ながら、今2人の先生からお話伺いましたように、多分5年前でも同じようなことは議論していたと思うのですよ。だから、その後、大量の予算をかけていろんな実証試験もされたものを、どうやって環境省さんが、どれは使える、どれは問題なの、じゃあ、どこを改善したらいいというようなリーダーシップをとって、いろんな方にまとめていただかないと、また来年もこういう議論をしていると思います。 
 ですから、そういったビジョンを示して、それぞれの調査がどう位置づけられるのかという、しっかりした資料がないと、この後、延々、それぞれの調査を聞いても位置づけがわかりませんし、担当されている方も自分のやっているものがどこに貢献できるのかもわからないと思います。
 以上、今後の議事の進め方のお願いと、それから環境省さんの、もう5年たってもこのレベルというのは大変問題なので、環境省さんだけではないですけれども、そろそろそういった個々の調査をどういうふうに問題解決にもっていくのかというロードマップをつくっていただいて、調査のロードマップの上位に位置づけていただくというのをお願いしたいと思います。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。ほかにご意見ありますか。今のやり方については、環境省と十分相談をいたします。ほか、よろしいですか。
 それでは、きょうの部分については議事がすべて用意されていますし、発表の内容も大ざっぱに言えば決まっておりますので、このまま継続をさせていただきます。
 次に入る前に、こういう調査計画、これは推進計画なのですけれども、各機関の協力が当然不可欠でございますし、また、今いろいろ先生方おっしゃっていただいたように、委員からの各省庁、それから各県の協力もぜひお願いしなければならないのですが、そこをどういうふうにリーダーシップをとるというのは、環境省の十分なお考えを述べていただく必要もありますし、議事進行をやる私及び荒牧先生と、事前にやはり十分相談をする必要があろうかなと感じておりますが、ぜひ先生方のご協力をお願いしたいと思います。  それでは、何が重点かと言われてしまったのですが、次、続いて重点課題調査の報告をお願いをしたいと思います。
 まずは、調査を担当されている中田委員からご報告をお願いします。

○中田委員 長崎大学水産学部の中田です。この有明海・八代海再生重点課題調査の一つに取り上げられております、「有明海の環境変化が魚類の卵・仔魚の輸送と生残に及ぼす影響の評価調査事業」につきまして、代表者の山口にかわりまして、概要を説明させていただきます。
 この事業の重要な背景は、有明海で魚類資源が減少しているということでございます。委員会の報告書にもまとめられておりますが、その原因として、仔稚魚の成育する場所が消滅したり縮小したりということに加えて、最近年の生息環境の悪化の問題。潮流速が減少し、それに伴い底泥が細粒化する、沈積有機物の増加、貧酸素域の拡大、あるいは透明度の上昇に伴う赤潮発生頻度の増加・発生域の拡大。そういうことで、特に底層や仔稚魚の輸送経路の環境が悪化して、死亡率が増加しているのではないかという点が一つ出てきているわけでございます。また、潮流の変化が直接に卵・仔魚の輸送状況を変化させている可能性もございます。さらに、1990年代の後半に減少が著しい魚種について共通の特性を整理してみた結果、いずれも海底付近で生活をしている底棲種であること。それからもう一つ、稚魚が成育する場所が有明海の奥部の浅海域であるということで、そういう成育場に流れによって輸送されることを必要としている種類が非常に多く含まれているということがわかってまいりました。
 そういうことから、魚類の資源回復には、「湾央産卵-湾奥成育」というふうに呼んでおりますけれども、こういう生活パターンを持っている魚類の再生産機構の解明が急務であるということを指摘しております。ただ、こうした点に関しましては、これまでの情報は極めて不十分でございまして、まず、その実態について十分な調査が必要であるというふうに考えております。
 これは、私どもの方で予備調査をした結果の一例ですけれども、報告書の中にも入っておりますが、2005年の6月の有明海における仔魚の分布の状態を示したものでございます。ごらんいただいてわかりますように諫早湾、それから湾奥の浅海域に多数の仔魚が分布しています。こういう仔魚のその後の行方を追跡調査することによって、死亡しているとすれば、その原因は何かというようなことを考えていく必要があるわけです。そういうことを踏まえて、仔魚が生き残っていくために、生き残りをよくするためには、どのような環境を用意することが必要なのかということが見えてくるだろうというふうに考えています。
 それで、この事業の目的としましては、「湾央産卵-湾奥成育」型の生活史を持つ幾つかの漁種を中心としながら、産卵場から奥部の成育場への卵・仔魚の輸送機構を明らかにして輸送経路を推定するとともに、輸送経路及び成育場の環境条件や餌料密度、餌の問題ですね、資源の再生産に及ぼす影響を評価していく。それを踏まえて、資源回復のための具体的な方策、方向性を明示するということでございます。
 調査の内容は、大きく2つに分かれております。1つは、卵・仔魚の輸送機構の解明ということでございまして、そのために、卵・仔魚の採集・分類・同定、それから流れを中心とした物理環境の測定を行います。
 それから2番目は、輸送経路と成育場の環境影響評価ということで、仔魚の胃内容物の分析。何を食べているかということですね。それから、環境の方、物理科学環境、それから餌料環境等の調査。そういう調査結果を総合しながら、卵・仔魚の輸送経路と成育場の環境評価を目指すということでございます。それぞれについて、少し詳しく説明をします。
 まず、卵・仔魚の採集・分類・同定についてですが、有明海の中央部から奥部にかけて15定点を設定しております。主要な産卵時期、6月~9月にかけて採集調査を実施しまして、各定点に出現する卵・仔魚の種類、それから分布密度を解析する計画です。
 それから、物理環境と流れの問題につきましては、これは予備的な解析をした結果をお持ちしましたけれども、これまでの水温・塩分観測資料をもとに有明海の中央部、この島原沖の横断面について密度流の分布を示したものでございます。春・夏・秋・冬と季節別になっておりますが、特に主要な産卵時期になっております春から夏にかけては、上層に湾の奥から外側に流出する流れがあるのと同時に、下層に逆に湾の奥の方に向かう流れが、非常にはっきり出てきていることがおわかりいただけると思います。島原沖の下層で産卵をする魚類というのは非常に多いわけですが、この北上流を有効に利用して、奥部の浅海域や諫早湾に移動している可能性があるのではないかと考えています。
 ただ、これは諫早湾の少し沖の点で、2005年の夏に測流をした結果を示したものですけれども、稚魚の輸送に大きく寄与する平均流の成分を取り出して、深さごとに時間変化を示したものでございますが、見ていただいてわかりますように、有明海の平均流は時間的にも深さによっても非常に大きく変化しているということがわかります。ですから、こういう仔稚魚の輸送に重要な流れの実態をしっかり把握するというところから始める必要があります。
 そこで、この事業では、有明海の中央部から奥部を結ぶ海域で、流速の連続測定を行います。卵・仔魚の輸送に重要と考えられる流れの空間分布と時間変動の実態を明らかにする、これをまず行います。それから、それと並行して、数値シミュレーションによる流れのモデルをつくりまして、仔魚の輸送経路をそのモデルを使って実験的に検討をしていきたいと考えております。この流れの実測データは、そのモデルの検証のためにも使われます。最終的には、その輸送シミュレーションの結果と実際の仔魚の分布等を対比しながら輸送経路を検討し、輸送機構の解明を目指すということになります。
 次に、環境影響評価の方ですが、これは特に仔魚の餌料環境に重点を置いて進めていく計画です。そのために、まず、仔魚が非常に多数分布しているということがわかってきております諫早湾、それから湾奥浅海域のモデルとなるような場所、このAとBというところに対象の海域を設定しまして、この2つの場所を中心に検討を進める計画です。
 まず、仔魚が何を食べているかということで、胃内容物の分析を行うということであります。それから、食べられている方の餌料となるプランクトンについても、当然同時に調査をするということですが、それとあわせて、この2つのモデル海域を中心にしながら、物理・化学的な環境条件、特に夏の時期ですので、貧酸素水の影響ということも含めて調査を行う予定でございます。それから、餌料環境の基礎になる生物環境特性として、動物プランクトン群集についても調査を行う計画です。
 そういう卵・仔魚の輸送経路における物理・化学環境調査、あるいは餌料環境調査の結果を総合しながら、仔魚の生き残りに対する環境影響の検証と評価を行うということになります。さらには、前段の仔魚の輸送シミュレーションとも連携させながら、できるだけ定量的にその環境の影響というのをとらえていきます。最終年度までには、全体を総合的に取りまとめまして、有明海の資源減少要因を十分検討した上で、資源回復のための環境保全管理方策を提案していければと考えているところです。
 最後に、これは研究のスケジュールですけれども、先ほど申し上げましたように、卵・仔魚の輸送機構の解明、それから輸送経路と成育場の環境影響評価、それぞれについて、まず実態を十分に把握しながら、数値シミュレーションの開発をします。輸送経路をシミュレーションで検討すると同時に、その生残にかかわる環境要因を評価していくことで、それらを総合して、資源の減少要因を検討し、環境保全方策の提案につなげていくと、そういうスケジュールでございます。
以上でございます。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。ただいまの中田先生のご発表に対して、何かご質問ございますでしょうか。あるいはご意見ございますでしょうか。
 どうぞ、楠田先生。

○楠田委員 今、これで実施される研究というのは大変重要だというのはよく認識できるのですけれど、最後の目的を達成するところまで考慮しないといけない要素というのが、今おっしゃられた以外にもあるのではないかなという思いがしました。
 生残率の調査のときには、平均的な状態でもっての生残率も大事なのですけれど、突発的なイベントでどれだけ減るかというのがあると思うのですよね。例えば、港内に化学物質が入ってきて、それで水質が変化して影響を受ける可能性は、それはないという前提ですと今のお話でずっと成立する可能性もあると思うのです。そのほか、いろんな要因があると思われるのですけれど、要するにその突発的なイベントで、かなり生残率が下がるというようなところを含められると、もっともっと精度の高いプロセスになるのではないかなというふうに思いました。

○中田委員 それはおっしゃるとおりだと思います。今は、第一段階として、基本的な要因をまず明らかにする必要があるというふうに考えております。というのは、これまでほとんどこういう問題についての情報が得られていないわけですね。今おっしゃったようなイベントの影響みたいなものも視野には入れておく必要あると思うのですが、まずは一番ベースになるところをしっかり押さえるということが、この3年間の目標としては大事だろうと考えております。数値シミュレーションをあわせてやっていきますけれども、シミュレーション自体も、なかなかまだイベントを再現したりとか、そういうところまでは難しいのが実際のところですので。まず、流れの測定なんかにしても、今考えているのは、これまでにもいろんな流れの調査、解析、研究があるわけですけれども、こういう仔魚の輸送ということを考えたときに、どういう時空間的な分解能の流れの情報というのが一番大事なのかということをまずしっかり考えたいと思っています。
 それで、それに対応する形の輸送のモデルをつくって、輸送機構の解明をしていく。とりあえずは、一番基本的なスケールに焦点を合わせて、この3年間はやっていくということですね。当然、今おっしゃったような問題は視野に入れておく必要がありますし、今後のさらに精緻なものをつくっていくときには、そこら辺が入っていくかなと。そういうふうに、ちょっと仕分けしていかないといけないと思います。

○須藤委員長 ありがとうございました。ほか、よろしゅうございますか。
 どうぞ、清野先生。

○清野委員 本当に中田先生、それから山口先生の研究グループ、実力がおありであるので、ないものねだりで申しわけないのですが、過去に有明海でとられてきたいろいろな環境の基礎情報があると思います。それ、先ほどのご発表のように、データベース化がどんどん進んでいくのだと思います。そういったデータが、こういった今からやる研究だとか実測だとか、それから楠田先生のコメントにありましたが、イベントの検出とか、そういったときにどういうふうに使えるか、あるいは使えないのかという部分まで検証していただくと、本当に今までの観測データとか、今後またいろいろ異常気象とか、そういうものが出たときに、もうちょっと汎用性が出るのかなというふうに思います。ですから、宿題みたいなものを多くお願いして恐縮ですけれども、ぜひ、そのあたりも統合化していただけると、この有明海再生にもつながっていくかというふうに思いました。
 以上です。

○中田委員 どうもありがとうございます。今、ご指摘いただいた点は、特に物理・化学環境をどういうふうに押さえていくかというところに非常に関係があります。それで私共も、もちろん調査はやるんですが、それだけでは多分十分でないので、例えば諫早湾で農政局の観測櫓でも、ずっとモニタリングのデータをとっておられますし、そういうものも十分活用しながら、今までに蓄積されたものや、我々が調査をやっている間に観測されているデータもあると思いますので、そういうものも十分活用していきたいというふうに考えています。
 全体の統合というのは、最初の小谷さんの方の仕事とも絡むかもしれませんけれども、水産資源の再生産の問題に関連するところについては、私のところでも考えていかなければいけないと思います。いろいろ検討したいと思います。ありがとうございました。

○須藤委員長 中田先生、どうもありがとうございました。ちょっと時間も過ぎておりますので、次に移らせていただきます。
 次に、西海区水産研究所から報告をお願いいたします。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター漁場環境研究科長 水産総合研究センター、西海区水産研究所の木元でございます。平成19年度底質環境の変化に関するメカニズムの解明とタイラギへの影響評価調査についてご説明申し上げます。
 この調査は、私ども西海区水産研究所が行いますが、有明海4県の水産試験場のご協力を得て実施するものでございます。
 18年12月にまとめられました本委員会における報告におきまして、重点的に解明する課題としまして、有明海北東部漁場のタイラギ大量斃死の発生機構及び長崎県海域のタイラギ不漁の原因の解明についてが提言されたところです。
 有明海におけるタイラギ漁獲量の状況につきまして、ここに図示してございますが、1960年代に、殻付き重量で最高3万5,000トンを超える漁獲量がありましたが、その後は二枚貝特有の数年型の変動を繰り返しながら、1980年代から漁獲量が減少し、2000年ごろからほとんど漁獲されなくなっております。
 有明海の奥部のタイラギ漁場が昔は広範に広がっておりましたが、近年は中西部の漁場が消失するとともに、残された北東部の漁場では2000年以降に成貝の大量死が発生しております。
 有明海奥部の底質の分布とタイラギ密度の変化を図示してございますが、1970年代、80年代、2000年、近年の図を並べてございますが、タイラギの減少の長期的要因として、中西部海域での底質環境の悪化による生息数が減少されると報告されておりますが、シルトの分布域が東北方面に広がる中で、貝の分布密度が減少しております。
 底質が泥化した海域では、底質の強熱減量、酸揮発性硫化物の増加したことが報告されております。また、有明海の奥部の北西部海域では、近年、貧酸素水塊が発生しており、悪化した底質及び水質環境の中でタイラギがさらされ、生息域が縮小したものと考えられております。
 ここにタイラギ漁場におけるタイラギ大量死の時期を示してございますが、残された北東部漁場では、2000年以降に成貝が一度に大量に死ぬ、いわゆる立ち枯れ斃死と呼ばれている現象が発生しております。この大量死のメカニズムについては、現時点では明瞭になっておりません。しかし、春から初夏にかけてと、秋に大量死が発生していることがわかっておりますが、また、その発生の条件は年によって異なっている状況です。
 ここに熊本県の大牟田の状況を示してございますが、荒尾漁場での大量の斃死が春と秋に主に起きております。貧酸素が発生します7月か8月には、さほど大量死が発生していないことから、貧酸素の発生がタイラギ大量死の直接的な要因ではないと考えております。しかし、秋に大量死が発生すること、また、その大量死が発生しました2003年と2006年には、この荒尾の沖合で著しい貧酸素が発生した事実がございまして、夏の貧酸素の発生が秋のタイラギの大量死の発生の間接的な要因になっていると考えております。
 熊本県のデータによりますと、この特に2006年の10月に、近年では大量死が起きておりますが、その1カ月ほど前から、表層、海底の泥の硫化物量が著しく増加するというデータが得られておりまして、タイラギの大量死の要因と底泥中の硫化物、また、その硫化物から生じる硫化水素が影響しているのではないかと、現在疑いを強めております。
 これまでのさまざまな知見の中から、水産総合研究センター及び有明沿岸4県の水産試験場の担当者におきましては、タイラギの大量死の要因としまして、水質の悪化、底質の悪化、浮泥の堆積、またそれに加えて病気と、このような大きな4つの要因を考えております。
 中でも、先ほど申し上げた、近年底質の悪化、硫化物の影響が大きいものと推定しております。浮泥の堆積が起きにくい浅場の干潟域では、タイラギは正常に成長しておりまして漁獲されているところですけれども、沖合域側の海域では浮泥が堆積しやすい状況があり、その中でまた貧酸素も発生すると。そういうような状況の中で底質が悪化し、状況によって硫化水素が発生する。それに加えて、近年指摘されておりますウイルスによる病気も加わって、タイラギが大量死している可能性があると考えております。また、この浮泥の堆積そのものも、直接的に貝に影響を与えるという可能性もあるということで、この可能性も捨て切れないところであります。
 本調査における目的をここにお示しいたしますが、底質環境の変化のメカニズムを解明するとともに、タイラギに影響を与える底質環境の因子を把握することにより、海域環境の有効な改善策の特定に資することを目的としております。調査は3年間実施するということで、計画をしてございます。
タイラギ漁場の水質環境の観測、また底質環境の観測及びタイラギの分布の状況につきましては、年による変動が大きいことを想定するために、3年間継続して実施することとしております。
 室内試験における底質の変化のメカニズムを検討することを別途、野外との調査とは別に室内試験で行う計画にしておりまして、その室内試験から得られました環境をタイラギに与えて曝露試験を行うことによって、タイラギに対する底質及び水質の環境の影響を評価する室内実験を野外実験と並行して行う計画にしてございます。
 野外の調査におきましては、タイラギの漁場として現在残されている海域の中に4つの調査点を設けまして、4つの点のうちの2点につきましては、水質環境の連続観測を行うこととしてございます。
水質観測の水質調査につきましては、連続観測と定期観測と組み合わせておりまして、多項目水質計による水温、塩分、溶存酸素等の連続観測を2つの調査点で行ったとしております。それを較正することも含めまして、定期的な連続観測を行うこととしております。
 観測につきましては、毎週もしくは2週に1回の定期的な観測を行い、連続調査を含めまして通年の調査を実施することとしてございます。
環境観測の概要について簡単に図示してお示ししますが、海底に多項目測定器を設置しまして、それに伴いまして、沈降堆積物を把握するためのセディメントトラップ、また流向流速計を設置して、水質の変化とか、また関係する懸濁物の挙動を見ることと計画してございます。
 このデータをもとに、貧酸素の発生状況を把握するとともに、植物プランクトン、また懸濁物の現存量と輸送量の季節変化を把握いたします。この結果と、後で申し述べますけれども、底質環境のデータをもとに、底質悪化に対する貧酸素、植物プランクトン、懸濁物との関連性を検討する計画です。
底質環境につきましては、海底の泥を潜水してコアで採取しまして、底泥の表層堆積物を採取し、量と質について調査データをとることとしております。また、泥を層別に分割しまして、酸揮発性硫化物量を水温・塩分・pHとともに測定するといたします。また、セディメントトラップにより沈降堆積物量を計測するということで計画してございます。
 底泥の採取方法について例示をしておりますけれども、潜水作業によりアクリルパイプを用いまして、20センチ以上の柱状採泥を行います。タイラギの大きさが15センチから20センチのものが海底に刺さるような形で生息しているものですから、そのタイラギの周囲の底質の状況について、硫化物の状況、また底質の成分について分析するということを継続して行います。
 そのような結果をもとに、浮泥・表層堆積物及び硫化物の季節変化と気象のかかわりを見て、その底質悪化の状況を、ほかの物理環境の状況を明らかにすることができますし、表層堆積物について、植物プランクトン、河川由来物質などのかかわりを把握いたします。また、底質悪化へのこのようなことを想像しまして、底質悪化への貧酸素、浮泥・表層堆積物の影響について評価をすることとしております。
水質環境と底質環境と並行しまして、タイラギの分布状況について、有明4県におきまして調査が実施されますので、そのデータを提供いただく予定にしております。この調査につきましては月に1~2回タイラギを採取して密度を算出し、また殻長・重量を計測して、成長を評価することが予定されております。
 タイラギの生理状態につきましては、私どもでそのサンプルをいただきまして、体成分調査、グリコーゲン、またタイラギの有機酸量等を測り、生理状態を評価するとともに、組織学的な調査、組織切片を作成しまして、環境から受ける生理障害の有無を評価することとしております。また、近年、タイラギの死亡にかかっていることが懸念されておりますウイルスの感染症につきましては、同じ試料をもとに、別途の調査により検討することとしております。
 4つ目の項目としまして、室内実験でいろいろなことを検討するということで計画しております。野外における調査では、底質環境の変化とその機構を定量的にとらえることがなかなか困難であると考えられることから、底質環境の悪化を検討するための室内試験を野外と並行して行うこととしております。
試験では、コアで採集しました底泥を、例えば浮泥が堆積した状態、浮泥を取り除いた状態を、例えば温度変化させたもの、また酸素のあるなしというような条件を置いた中で、底質がどのように変化するかということを実験して、現場における状況を推定するデータとし得ることにいたしました。例えば分析項目としましては、硫化水素、アンモニア、また硫化物そのもの、水の中の硫化水素、アンモニア、また底泥相の中の硫化物、また環境中の硫化水素などをいろいろな設定の状況の中でデータを得ることによりまして、現場で、野外で起きていることを推定するということで、タイラギに与える影響のメカニズムの解明と、また、その影響項目の絞り込みを行い、より詳細な調査を進めていくということで計画しております。
 底質環境、水質環境がタイラギに与える影響を曝露試験で行うとか、いろんな項目が考えられるわけですけれども、現在のところ硫化水素の実験系がまだ十分確立できておりませんものですから、今年度は、浮泥の堆積がタイラギに直接与える影響について評価をするということで進めることにいたしております。1つの例として、絵でお示しいたしますが、浮泥タイラギが条件下で安定した飼育条件下を設定した上で浮泥を与えまして、それによって呼吸の状況、また体内の成分、また組織形態の変化から生理状態を評価するということを計画してございます。
 次年度以降には、野外における底質及び水質環境の現場のデータも、それなり一定程度で見えてまいりますし、試験、実験系も設定できると思いますので、現地調査が明らかになった環境条件をタイラギに与えて、それによる影響を評価することと計画しております。評価項目としましては体内のグリコーゲン含量、有機酸含有量、また組織形態における変化から評価するということで計画しております。
以上の結果をもとに、現地調査及び室内試験の結果から、有明北東部のタイラギ漁場における底質環境の変化のメカニズムを明らかにするとともに、水質及び底質環境がタイラギに及ぼす影響を評価することとしておりまして、タイラギ大量斃死の発生の要因を明らかにして、それの要因軽減のための改善策を検討することと計画しております。
以上、ご説明申し上げます。

○須藤委員長 どうもご発表ありがとうございました。何かご質問ございますか。どうぞ、山本先生。

○山本委員 タイラギ漁場の底質とか水質については、かなりいろんな項目が調査されるようなのですが、これは既にある程度、タイラギの資源が減ってしまって、その漁場の環境がタイラギにとって恐らく余りよくないであろうと思われる現在の状況のデータになるわけですけれども。やはりもっとよかったときの何らかのデータと対照してみないと、一応、室内実験でいろいろ項目はありますけれども、結局、その底質とか水質が直接タイラギに対してどういう影響を与えているかというところの因果関係に対する実験というのは余りないようなので、もし、その資源量がもっとあったときの対照に値するようなデータがあれば、あるかどうか教えていただければ幸いです。あと、そういう対照するというか、過去のデータと比べるという予定はないのでしょうか。

○(独)水産総合研究センター西海区水産研究所有明海・八代海漁場環境研究センター漁場環境研究科長 過去のデータにつきましては、一般的な環境の調査の底質データについて、例えば全硫化物量であるとか、CODとかはデータがございますけれども、現在想定していますのは、タイラギが間隙水を利用している可能性があるということで、関係県の研究者間で指摘されております。特定の層の中の硫化物が増加した際に、そこの中の間隙水の中に硫化水素が発生し、それによって影響を受けている可能性があるというのが一つの作業仮説でございますので、かなり精密な分析が必要だと考えておりまして、先ほどお示ししましたように、コアによって底質を細かく切り刻んでの分析をする予定をしております。残念ながら、このような例は過去、かなり以前にはなく、昨年、一昨年、熊本県でのデータがございますので、そういう死んだときのデータとしてかなりいいデータがありますので、それをもとにこの研究調査を4県と共同で進めています。比較に値するのはなかなかありませんが、ほかの海域、健全な漁場でのどういう状況かというのは、それは比較できると思います。

○須藤委員長 よろしいですよね。それでは、今のはもっともなご質問なので、健全なそういう場合のコントロールにとってどうなるかというところについても、ほかの席でもいいですから検証してくださいと。
 では、時間もありませんので、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして平成18年度の調査報告ということで、最初に農村振興局、それから水産庁から平成18年の調査結果の報告をいただき、最後に福岡県から覆砂についてご報告をいただくことにいたします。
 農村振興局からお願いいたしますが、若干時間がおくれているのですね。少し早目に進行させてください。お願いいたします。

○農林水産省農村振興局整備部農地整備課計画官 農林水産省農村振興局の瀧戸と申します。私どもは平成16年から、諫早湾を中心としたエリアにおきまして調査を進めているところでございますが、その18年の調査成果につきましてご説明をさせていただきたいと思います。
 調査の項目といたしましては、ここにございますような貧酸素現象調査から二枚貝類等の生息環境調査という5つの調査でございます。
 調査の場所につきましては、ここにございますように、基本的には諫早湾からその周辺地域を中心といたしまして、あと潮流の調査とか二枚貝類の生息環境調査等につきましては有明海全域。それから、底質環境調査につきましては、漁業者の方々と調整をしながら、各県の漁協さんの地先といったようなところで、各エリア、底質の状況等も相当バラエティーに富んだところでやっているところでございます。
 では、まず貧酸素現象の調査の関係からでございますが、貧酸素現象の調査の関係につきましては、私ども九州農政局の方で、鉛直連続観測なり定点連続観測、それから一斉鉛直観測といったようなものをやりながら、また環境省さんなり、水産庁さんの調査結果も利用させていただきながら整理をしているところでございます。
 まず、貧酸素の現象と非常に関連のございます水温躍層と塩分躍層の形成状況につきまして、お手元の資料では10ページのところでございますが、それで少し状況をご説明させていただきますと、塩分躍層の関係から申しますと、こういったようなところで雨が相当降っております。このあたりで100ミリちょっと。ここで、230ミリぐらい降っておりますが、そうしますと河川から出水いたしまして、ここにこういったような塩分躍層が出てきております。その後、これは晴天の状況でございますが、全天日射量のデータを見ますと、このあたりで晴天が続きますと、それによって表層の水温が温められまして、その後ここにこういったような形で、水温躍層が出ているところでございます。
 この水温躍層と塩分躍層の2つによりまして、その次のお手元の資料11ページのところにもございますように、密度躍層が出ているわけでございますけれども、この資料10ページのものと比べ合わせて見ていただきますと、出方が塩分躍層の出方とほぼ同じような形になっておりまして、ここでの密度躍層の出方というのは、非常に塩分躍層が支配的に働いているのではないかなという気がしているところでございます。こういうところで躍層、成層が出ますと、それに従いまして、このあたりで7月の初旬から8月にかけまして、ずっと貧酸素が出ております。18年は、16年から調査を開始しました3年間の中で、一番降雨の大きい年でもございまして、こういう関係かもしれませんが、非常に強い貧酸素がずっと続いているところでございます。これが40%以下の貧酸素ということで、水温25度でいいますと、大体2.8ミリグラム以下ぐらい、酸素がですね、そういったようなものでございます。
 この貧酸素につきましては、これは潮回りでございますけれども、こういった大潮の状況におきましても、基本的には解消しないで連続している状況にございます。ここのところで、台風10号がまいりまして、風速が20メーターくらい出ておりますが、その状況のときには1回途切れるといったような形で、大潮をまたがって出ておりますけれども、台風等によりますと、一たん途切れると。そういう状況が見てとれるところでございます。
 その次に、今度は一斉鉛直観測という形で、有明海の湾奥部から諫早湾にかけまして、こういう形で、縦に状況を見たものでございまして、左側が成層の状況、それから右側が貧酸素の状況でございますが、大体上から6メーターぐらいのところで成層化しているところが見てとれるかと思います。だんだん、このあたりで一番強まっているところでございますが、それにあわせまして、諫早湾の奥の方、このあたりで40%以下の貧酸素が出ておりまして、それとは別に、こちら側の方でもこういった貧酸素が出てきております。それはだんだん広がってくるわけでございますが、ここのあたりでは、もう20%という強い貧酸素も出ておりまして、多分、ここからここの間で1週間ぐらいあいておりますけれども、この間に、こちら側でも貧酸素がこういうふうに出て、それが最終的につながってきたのではないかなというふうに考えられるところでございます。
 今度は、このD点とF点で、24時間の一斉連続観測をした結果でございますが、これで見ますと、干潮のときには、底までついた形で貧酸素がD地点では出ております。満潮のときには、少し押し上げられるような格好になっております。このあたりの深さが5メーターぐらい、このあたりが16メーターぐらいでございますが、それにあわせまして、今度はF地点におきまして、少し貧酸素の固まりが真ん中辺に浮いたような格好になっているところでございます。これで見ますと、ちょうどここのあたりにつきましては、この地点で底層の水温をはかってみますと、ちょうど急に下がるような状況になっておりまして、多分このあたりでは、こちら側の方から、湾の外側の方から冷たい底の水がはい上がってきまして、それによって貧酸素が上に押し上げられているような、そういう状況になっているのかなというところでございまして、こういう関係で見てみますと、貧酸素は、もう少し上のあたりにあったものが、干潮になりますと少し下がってきて、満潮になりますと、下からの潮で少し押し上げられると、そういう状況にあるのではないかなと思われるところでございます。
 次に、諫早湾の中で見てみますと、これは諫早湾の中のS1というのは堤防に一番近いところでございます。それから、B3というのは真ん中辺、B5というのは湾口部になるところでございます。お手元の資料では、ちょっと見にくいのではございますけれども、17ページの左側に赤い丸でつけているところがその点でございますが、この真ん中のB3のところにつきましては、大体貧酸素がこの時期はずっと連続をしているところでございます。それに対しましてS1、一番堤防に近いところでは、満潮時になりますと、ぐっと貧酸素の山ができております。また、逆にB5の付近では、干潮時あたりに少し貧酸素が見られるという形になっておりまして、この状況から見ますと、諫早湾におきましては諫早湾の真ん中あたりに貧酸素の固まりがありまして、それが満潮時になりますと、こちら側に押されてくる。干潮時になりますと、ちょっと左手、こっちの方に来るというふうな動きをしているのではないかなというふうに思われます。
また、今度これは、全体の調査をした回数に対して、貧酸素の観測された頻度を示したものでございますが、これで見ますと有明海の湾奥では、このP6なり、Pの14地点、このあたりの貧酸素が非常に大きいと。それから、もう一つのピークとしましては、このB3地点でございますが、回数的というか、発生度合いとしては少し少ないかなというような状況になっているところでございます。
 これは貧酸素の平面的なものを見たものでございますけれども、これでも大体、このあたりとこのあたりに強い貧酸素ができているというところでございます。これはどちらかと申しますと、8月9日からだんだんと貧酸素が解消に向かっていくようなところをとらえているところではございますが、このあたりで見てみましても、諫早湾と佐賀の有明海の湾奥あたりで二つの固まりが、ほぼ同時期ではございますが、別々に発生し、それが広がり、また消えていくという状況になっているのかなというところでございます。
 これまでの調査の関係で見ますと、貧酸素水塊は密度躍層の発達とともに形成されまして、大潮期を超えて継続しておりますが、台風による鉛直攪拌により解消されていると。それから、塩分躍層につきましては、降雨によって発達しまして、密度躍層の中では相当支配的になっているということかと思われます。
 それから、有明海の奥部では、西側の沿岸部を中心に貧酸素水塊が形成されまして、下げ潮時に南下し、上げ潮時に北上していると。それから、諫早湾では、湾の真ん中辺で形成された貧酸素が、上げ潮時には湾奥部に、また下げ潮時には湾口部に移流していることが確認されているということでございます。
 19年度につきましても、引き続き状況を調査するということと、また貧酸素の形成につきましては、プランクトンの死骸の沈降や懸濁した有機物により酸素消費量が大きいということも考えられますので、そこの方の状況もあわせて見て、それとの関係等も少し調査をしてみたいというふうに考えているところでございます。
 次に、潮流の調査でございますが、これにつきましては、平成18年度は具体的な観測はいたしませんで、いわゆる国調費モデルとのこれまでの観測結果との整合状況等を見ているところでございます。
私ども、いわゆる調査につきましては、電磁流速計の調査と超音波流速計の調査といろいろ取り混ぜて数多くやっておりますが、今回、17年度の調査等の後というか、そのあたりで少しわかってきたことでございますが、電磁流速計につきましては、船からおもりをつけて、下にぶら下げる形ではかっておりますが、少し潮流の早い地点になりますと、おもりが軽いと傾いてしまいまして、これはいわゆる計器会社であるアレック電子さんとも協力をいたしまして、少し計器に改造を加えまして、傾斜度計を入れて調べてみたのでございますが、やはり20度を超えた傾きになりますと、コンパスが張りついて動かなくなってしまうという状況もございまして、なかなかいわゆる潮流楕円がそのデータではうまく描けないというようなこともわかってまいりまして、今回の比較では、この超音波流速計だけを使った比較をしております。
 お手元の資料でまいりますと、21ページ、23ページでございますけれども、全体で大きく見てみれば割合よく合っていて、いわゆる調査結果と計算結果、よく合っているのかなというところでございますが、表層部の方につきましては少し、特に計算結果の方が大きな状況になっております。次のページへ行きましても、大体よく合っているかなと思いますけれど、少し表層部では合わないという状況になっております。これはやはりシミュレーションの計算の中では、風速というか、風のデータにつきましては、ほぼ一定のデータを入れておりますので、その関係なり、河川等の流量の関係等が少し効いてきているのかなという感じがいたしております。
 それから、中層部以外の深さのところは、割合よく合っているのでございますけれども、島原沖のこのあたりでは、少し合い方がよくございません。このあたりは、非常に地形が急変しているところでございまして、やはり国調費モデルのような900メーターメッシュの大きなもので計算をいたしますと、このあたりには若干の限界が出ているのかなというところでございます。
 全体といたしましては、割合よく合っているというところではございますが、海底地形が変化に富んでいるような地点等では、計算結果の方がやや大きいのかなというところがあるかと思っております。
 本年度につきましては、まだ潮流観測を少し、17年度のデータの中で電磁流速計でやったようなところも、今度はもう一度、超音波流速計ではかり直すということも含めてやってみるとともに、特に底層流速の関係等につきまして、少し水質なり、底質なり、底生生物の調査とあわせまして状況を見てみたいと、そういうふうに考えているところでございます。
 その次に、赤潮の調査でございます。これにつきましては、関係の各県の水産研究所さん等とも連携をいたしまして、有明海の中でそれぞれ分担いたしました赤潮の発生状況を調査し、それを西海区さんの方にデータを全部、リアルタイムでご提供いたしまして、そこでまた、これは日本水産資源保護協会さんの方でホームページに出まして、携帯電話等でも見られるようなシステムで、漁業者の方々等につきましても、赤潮の発生状況がリアルタイムで見られるような、そういう形でデータの提供をさせていただいているところでございますが、16、17、18年と、諫早湾を中心としたエリアにつきましては、目立った赤潮が発生していない状況になっております。18年度におきましても、クロロフィルaで、7月5日地点で、ちょっとここで少し高い状況が出ておりますが、あとは余り大きなデータは出ていないということで、赤潮が諫早湾で出た場合に、それがどういうふうに広がっていくかといったようなことも、追跡調査等をする予定ではございましたが、そういったようなデータはとれていないという状況でございます。
 ここでくくっと上がったときに、その前に降雨があるので、DINが出ているのですが、このあたりは少し赤潮的なものが出て、それによってDINが含まれている状況がここに出ているのかなというふうには考えられますが、その次の山で出たものが、ここまで下がってきている要因等については、ちょっとわからないところでございます。
 X1、X3、この上がったやつというのは、大体この点、それからこの点、この点ぐらい、こういったようなところで観測されたものでございます。
 その次に、このところで、先ほどのような山が観測された7月の初旬等におきまして、湾内のこのX4地点というところでのプランクトンの状況を見てみますと、NitzschiaとかChaetocerousとか、それからThalasiosiraceaeとかクリプト藻鋼とか、そういったようなものが観測されているところでございます。同時期に、佐賀の有明海の湾奥のエリアにおきまして、若干赤潮が報告されているところでございますが、これの主なプランクトン種を見てみますと、微細藻類、もしくはSkeletonema costatumということで、諫早湾内で出ている、ちょっといろいろなものが競合して出ているような状況ではございますが、それとは相当趣が違いますので、このあたりは、ここで出ているものと、ここで出ているものは違うものではないかなと。つまり、こちら側から広がっているといったようなことも、この中では余り考えられないのかなというふうに私どもは見ているところでございます。
 赤潮の調査の関係でいいますと、ここにございますように、7月上旬に諫早湾で検出された高クロロフィルaの構成プランクトンは、複数のプランクトンが競合した状態でございまして、その優先種は、佐賀県沖で発生した赤潮の構成プランクトンとは少し異なっていたと。平成18年度の調査では、湾内で大規模な赤潮は発生しなかったという状況でございます。19年度も引き続き、私どもとしましては、発生の状況等を見ていきたいというふうに考えているところでございます。また、できましたら衛星データ等も使いながら、過去の赤潮の発生状況の中で、その広がりぐあいといったようなところにつきましても、少し解析的に解明してまいりたいというふうに考えているところでございます。
 次に、底質の環境の調査でございます。これは有明海の周辺の4県の漁協さんと連携をいたしまして、いわゆる底質の部分につきまして、少し攪拌をいたしますと、例えば硫化物でございますとか、そういったようなものが飛ばされて、底質の環境がよくなると。それによって、生物の生息の状況も改善されるのではないだろうかということで、平成16年から調査をしてきているものでございます。調査ポイントにつきましては、ここにありますようなこういう赤いところが18年でやったところでございます。関係の漁協さんと一緒にやっておりますので、それぞれの漁協さんの地先でやっているところでございますが、やるものは貝桁という、基本的には貝をとるような道具だと思いますが、すきの大きいくま手の大きいようなものを漁船にロープでゆわえつけまして、それを引き回るという形でやっているものでございます。
 今年は、特に回った場所をきちんと把握するために、GPS等で漁船の位置を把握しながらやりまして、綿密に底質をかいたわけでございますけれども、結果といたしましては、若干よくなったかなというところも見られなくはないのですが、次のページ、少し下がったようなところもあり、生物もちょっと上がったような部分もあり、見られなくもないんですが、比較地点でも同様の傾向を示しておりまして、その状況、改善の状況というのは明確ではございません。これは16年、17年、18年やりました結果として、いずれも同じ状況でございます。ただ、漁業者の方々の声をお伺いしますと、エビがとれるようになったとか、イカがとれるようになったというようなお話もいただいているところでございまして、そのあたり、もう少し調査の件数をふやして、19年度は調べてみる必要があるのかなと考えているところでございます。
 また、今回はもう一つ底質の関係で、ここにございますように、少し堆積速度の状況を調べてみようということで、こういうようなポイント、これは熊本大学の滝川先生のご指導をいただきながら調査地点を設定し、そのあたりの堆積速度をはかってみることとしております。これは鉛210という放射性同位体を使いまして、この鉛210というのは、半減期が22.2年でございますので、それの含有量等の中で、どの程度の含有量があるのかということを、細かい泥を柱状にとったものをスライスしまして、そのスライスごとに含有量等を調べた中で、堆積の速度をはかっているものでございます。堆積速度はいろいろなところで出てきますが、これが緩いほど、どちらかというと半減期が余りたたないうちにたまっているということでございますから、傾斜が緩ければ緩いほど、堆積速度は早いということになります。また、このように立っていると、どちらかというと堆積速度は遅いということになります。このあたり、どうしても表層部につきましては生物等の攪乱がございますので、少しデータの状況は明確ではございません。
 それを整理いたしますと、全体としまして、A1とかK1とか、河口に近いエリアにつきましては相当堆積速度が速いと。それから、諫早湾のこのあたり、A2からG、B4にかけては堆積速度が割合遅いということがわかっております。堆積物の組成を見ますと、A1とGとかB4くらいのものというのは大体同じような、粘土からシルトが相当多いようなものでございますので、もの的には割と似通ったものなのかなというふうに思われますが、堆積速度的には相当違うという状況がございます。また、A2、G、B4を見ますと、堆積速度的にはこちらの方が多くて、だんだん少ないということから見ますと、このあたりの堆積物というのは、この湾の外の、諫早湾の外の方、こちらの方から来ている可能性も相当あるのではないかなというふうに見ているところでございます。
 底質攪拌の関係の調査でわかったことということの中では、なかなか効果は明確ではなかったということでございますので、今回、もう少し区域内、調査をやったところで、くま手で引っかくような調査でございますので、調査をちゃんとかいたところに、いわゆる実施後の私どもがとるデータの場所が当たっているかどうかというのがよくわからない状況がございまして、もう少し調査の本数をふやしてみたいと考えてございます。
 それから、柱状の採泥調査につきましては、やはり河口域では早いと。それから、そういうところにおいては、やはり大きな河川からの土砂供給等の影響が考えられるというところでございます。柱状採泥等につきましては、もう少しより詳細に把握をしてまいりたいとも思っておりますし、例えば堆積速度等に変化があるかどうかといったようなことにつきましては、もう少し詳しく見てまいりたいというふうに考えているところでございます。
 その次に、二枚貝類等の生息環境調査ということで、これは二枚貝類というふうに名前はついてございますが、それを食べる大きな要因と言われておりますナルトビエイにつきまして、その生息の状況につきまして、長崎大学の山口先生のご指導をいただきながら調べているものでございます。
 採取につきましては、関係の4県の漁協さんの方にお願いしまして採取をしているところでございます。ここに見ていただきますように、大体6月、7月、8月と、夏場のあたりでは、結構、湾奥の方でいっぱいとれてきておりますが、10月、11月になるにしたがって、とれる量は特定地点のところでございます。
 それから、これにつきましては、とったナルトビエイに標識をつけまして、それを放したものがどの辺に泳いでいるかというものを調べたものでございまして、6月には2匹とって放しているのがこういうところに広がっております。10月31日には7匹をくっつけて放しておりますが、こういうところに広がっているということで、暑い時期には割と真ん中あたりに少し固まっているのかなと。それから、秋口になると、だんだん下の方におりてくるのかなという状況でございます。
 次に、これはナルトビエイの体盤の大きさをはかったものでございます。漁協さんの方では目分量ではかっておりますので、余り正確ではないかもしれませんけれども、状況としてはわかるかと思いますが、これで見ますと6月の後半から7月にかけて非常に小さいものが出ております。ここでとったものの定点調査でございますけれども、そうすると、このあたりで出ているものは、基本的にはナルトビエイの子供ではないかというふうに思われるところでございまして、40センチ以下のものは1年生、つまりその年に生まれたものと考えられるということでございますので、このあたりでもうナルトビエイが子供を生んで繁殖をしているということがわかると思います。ちょっと前のところに戻っていただけますか。この図で見ていただきましても、例えばこういう川の奥の方までさかのぼっている例が若干ございますけれども、ナルトビエイ、河口付近でも子供を生むということもございまして、こういうようなところに行きながら、そういう繁殖等の行為をしているのかもしれません。
 次へ行きまして、これまでの調査の中では、ナルトビエイは水温が上昇する有明海に来遊いたしまして、その後、水温が低下すると有明海を南下して、冬には湾外の方に出ていくのではないかと考えられております。
 それから、湾奥部において稚魚が確認されておりますので、ナルトビエイがこの海域で繁殖をしているのではないかということが示唆をされているところでございます。
 ナルトビエイは、40センチから100センチくらいのものが多く確認されております。
 19年度につきましても、ナルトビエイの分布や生態に係る調査を継続しつつ、実際ナルトビエイがこのエリアに何匹いるのかということにつきまして、少し粗々ながら推定をしていきたいということも考えておりまして、それによりまして二枚貝等の影響なり現存量等も把握していきたいというところでございますが、これにつきましては長崎大学の中田先生、それから山口先生のご指導をいただきながら少し、もしことしだけでできなければ、来年も含めまして検討していきたいというふうに考えているところです。
 すみません、長くなりました。以上でございます。

○須藤委員長 時間がおくれておりまして、ご質問の方は、もし時間が最後に余裕があったらさせていただくということで、発表の方だけ先にやらせていただきます。
 次は、水産庁お願いします。

○水産庁増殖推進部漁場資源課長補佐 水産庁漁場資源課の和田といいます。水産庁の方でやっております有明海における漁場環境改善事業、これについて、これまでの成果と今後どうしていくかというようなあたりを簡単にご説明させていただきます。
 お配りした資料には、各課題ごとに18年度までの成果と課題、それから19年度の計画が細かく載っておりますけれども、それを一つ一つやっていると到底時間がないので、17年から19年の3カ年の計画で、水産庁では有明海のアサリやタイラギ、こういった二枚貝を対象にして、これらが生息する底質の環境改善を目的とした技術の開発を行ってきております。
 大きく分けると3つありまして、覆砂関係の技術開発と、それから作澪、貧酸素水塊関係、それから耕耘関係というふうになります。
 きょうは対象生物ごとにどのようなことをやっているのかということでご説明させていただきたいのですが、まずこれなのですけれども、福岡県の大牟田沖と、それから佐賀県の太良沖、ここの沖合のタイラギ漁場を対象に覆砂効果の実証試験をやっております。通常であれば30センチの覆砂厚を使うのですが、それを15センチにして海砂を節約できないかといった薄まき覆砂とか、それから佐賀の方では、貝殻を混ぜたり、でこぼこの山型の凹凸覆砂というようなことをやっております。
 これまでの成果としては、覆砂技術の精度の向上が図られましたし、覆砂することによって、やらないところよりはタイラギの着生と生残効果があるということが認められております。それから、凸凹覆砂をやると頂上部のところが若干、低いところに比べて流速が上がってシルトの堆積が軽減化されるといった効果も出ました。あと、佐賀でやった貝殻混合覆砂は確かに優位性はあるのですが、金がかかり過ぎるという結果になっております。ただ、この海域、何といっても浮泥が多くて、ここをタイラギ漁場として復活させるには浮泥を何とかしないと、この漁場の機能の回復はないというふうに考えております。今年度、19年度は、海底耕耘をやって、噴流式と貝桁式、両方を使った海底耕耘をやって何とか底質を改善できないかということをやろうというふうに考えております。
 それから、タイラギ浮遊幼生の分布状況、発生時期とか個体数とか、そういったものを調査したいというふうに考えております。
 それから、あとはタイラギの斃死原因の究明なのですけれども、先ほど西海区水研の木元科長からも話がありましたが、貧酸素や浮泥などの生息環境、それからえさの問題、ウイルス感染など病理学的な検討など、さまざまな側面から原因を究明したいというふうに考えています。ただ、これは西海区水研と十分連絡をとり合って、余計なことをやらないように連携・協力してやっていきたいというふうに考えております。
 続きまして、アサリです。アサリについては、福岡、長崎、熊本、それぞれでいろいろとやっておりますが、まず福岡県での問題ですけれども、福岡県の沖合にアサリ漁場が分布していたのですけれども、これがだんだんと干潟の浅い漁場に縮小してきているという状況になっております。それから、湾の奥の方では、さまざまなところで言われていますけれども、底質が細粒化して浮泥の堆積が顕著になってきていまして、有機物の堆積が周辺環境に影響を与えて、赤潮や貧酸素水塊の発生頻度が高くなっているというような状況にあります。
 それから長崎は、小長井の地先の干潟でアサリが養殖されているのですが、ここも底質の細粒化が起こっています。ここの海域は、干潟の上でも貧酸素水塊の発生が見られるといったところで、湾奥と同様の漁場環境の悪化が見られている状況にあります。
 それから熊本ですが、熊本は河口を中心にアサリ漁場が広く分布しているのですけれども、これが河口の周辺に縮小してきている傾向にあります。これだという原因はよくわかっていないのですが、以前この委員会の場でも話がありましたけれども、河川からの砂の供給が減っているのではないかとか、それに伴って底質の細粒化が関係しているのではないかといったようなことが考えられています。
 こういった問題を各地域抱えておりますので、水産庁のこの事業で、まず福岡県の干潟に関しては、アサリの親貝を保護するための母貝団地の造成を、掘削した土砂を用いた混合覆砂で行おうという実証試験をやってきました。一定の成果は見られて、掘削した土砂を使った混合覆砂でも、母貝の育成場を造成することは可能ということがわかっております。ただ、浮泥の多い水域でのアサリ漁場形成にはまだまだ問題があって、新たな浮泥対策を検討して、安定した母貝育成場の造成技術の開発が必要だというふうに考えています。
 それから、長崎については島原半島のところで、あそこはかなり波浪が強いのですね。波当たりが激しくて覆砂を行っても砂が飛ばされてしまって、アサリの漁場造成が難しい状況にあるのですが、そういったところで波消しを目的とした捨石堤といって、石積みを積んでアサリの漁場を造成しようと、砂の流出を防ごうという技術開発を行っております。ここも一定の成果は上げられるものというふうに考えています。この技術は、波消しという目的を果たせれば、島原半島の前浜干潟のほかの地区でも活用できる技術というふうに考えています。もう一方の小長井の地先なのですけれども、ここでは微細気泡装置を使って海底を耕耘して底質改善に一定の成果が見られたのですが、先ほども言いましたように干潟上でも貧酸素水塊の発生が見られて、アサリが死滅してしまうというような状況にあるので、アサリの生息に適正な地盤高はどれくらいか。D.L.+1.8メートル以下ぐらいが稚貝の着底に好適だというような成果も得られていますけれども、そういった地形条件を明らかにするとともに、干潟域のアサリ漁場の貧酸素対策技術の開発が不可欠だというふうに考えております。
 それから、もう一つの熊本です。熊本は河口干潟を対象にしまして、配付した資料の図にもありますように、緑川の河口の網田というところと、それから菊地川の河口の大浜、ここで覆砂の実証試験をやりました。同量の砂で広い漁場を造成することを目的とした、帯状覆砂というのを緑川の河口でやっております。それから、海水の滞留域を作澪して海水交換を促進するとともに、その作澪で出てきた掘削土で覆砂を行うというのを、菊池川河口の大浜というところでやっております。これについても一定の成果が得られておりまして、この成果としての開発技術は熊本県の他の河口干潟にも適応可能な技術というふうに考えております。
 それからもう一つ、佐賀県の大浦というところ、地図を見ていただきたいのですが、ここの養殖のカキを対象に、貧酸素水塊対策として底層水をくみ上げて船の上で曝気をして、もう一回海に戻してやって酸素供給をしようというような装置をつくって実験をしているところです。水深3メートルぐらいから放出すると、そこから下の底層に向けてDOが上昇されるといったような効果が確認されておりますが、昨年度は筏群の一番端っこのところから、しかも上げ潮のときだけ放出したので、いまひとつ明確な成果があらわれておりません。ことしは地元の漁協とも調整をさせてもらって、筏群の中に持ち込んで24時間運転にすることが可能となりましたので、ことしの成果を期待していただきたいというふうに思います。
 それから最後、サルボウです。佐賀県の鹿島の沖にサルボウの漁場があるのですが、ここは沖側の漁場が消滅してしまって、底質の細粒化、それから貧酸素水塊の発生など、水質環境の悪化で、漁場が沖合から狭まってきています。この水域では、地盤高が-2.5メートルより深いところの漁場は、もう漁場として放棄されてしまっているような状況にあります。私どもとしては、ここの漁場を何とかこれ以上、漁場放棄ラインが後ろに下がってこないように、微細気泡噴流装置の海底耕耘で対応したいというふうに考えており、技術開発をやっているところです。
 それぞれ覆砂、耕耘とやっておりますが、覆砂の効果がどれくらい持続するのかのモニタリングは、引き続きやっていかなければならない課題だというふうに考えていますし、それから、こういったある一定の地域で行った覆砂技術が、ほかの海域にどのように適用できるのか、その汎用性の検討をした上で、公共事業である水産基盤整備事業で活用できるような技術開発を目指していきたいというふうに考えています。  それから、耕耘に関しては、最終的な出口は、漁業者みずからが維持管理していくものをつくることだというふうに考えていますので、ことしは経済性も考慮して実用機の開発に向けたコスト計算みたいなところまでやれればいいなというふうに思っております。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。質問は後回しにいたしまして、それでは、福岡県の覆砂についてお願いいたします。

○福岡県水産海洋技術センター有明海研究所所長 福岡県の水産海洋技術センター有明海研究所の富重でございます。
 きょうは、福岡県有明地先で行っております覆砂事業の効果についてご報告したいと思います。
 改めまして、福岡県の漁場ということでご説明いたします。湾奥部分の東側、緑で囲っておりますのは佐賀県との共有漁場。それから、その東の内側が福岡県の知事が免許する漁場で非常に狭い。それにまたがるような格好で専用漁場があるということになります。
 これ、ちょっと数字的なものを申し上げていきますと、この両側を含んだ漁場は172平方キロメートルありますが、うち福岡県の専用であります有区ですね。これは48平方キロメートルということで、非常に狭い範囲になります。この中で、両方合わせたところで福岡県の漁業が営われております。
 それから、これまでの覆砂事業、福岡県がやっておりました覆砂事業の状況です。これは古いところでは昭和62年から始まっておりまして、昨年までで全体で約910ヘクタールの事業が行われておりますが、平成14年からこの特措法の事業で積極的に、重点的にやるということで、平成14年から18年までの間で約半分、513ヘクタールの事業が行われております。事業を行っております赤い線が、ゼロメーター線ですね。水深ゼロメーターですので、そこを中心とする海域の中で、底質の悪いところに事業を実施しているという状況になります。
 これが事業の実施をやったところのすぐ後の写真なのですが、右側が覆砂をやっているところ、左側の若干光っているところが覆砂をやっていないところで、こう見ると砂のところと堆積物、これが若干混じりながら非常にいい状況になっているということがわかります。
 覆砂をやったところのアサリの資源ということで、昨年の2月なのですが、2回アサリの分布状況の調査をしておりますが、昨年の2月のデータです。黄色と緑のところがアサリの生息域で、緑で描いてあるところは特にその中で密度が高かった平米当たり1,000個以上のアサリが生息していた場所になります。それと、先ほどの覆砂をやったところの事業をやったところ重ね合わせますと、おおむね覆砂をやったところとかなり重複する形でアサリが、資源が見られているという状況になります。特にこの中で、矢部川の河口に非常にアサリの高密度、生息高いところがありますが、この場所は多いところですと1平米あたり3万5,000から4万ぐらいの稚貝類が見られております。もともとかなり生息の高いところです。このときの平均殻長ですが、殻長にしますと10.7ミリ、重量にしますと1.9ということで、この中では漁獲の対象になる資源が非常に少ないのですが、資源量として推定した数字は約4,900トン、この中でアサリの資源量として認められております。
 アサリの資源量がどのように変動していったかというので、次、お願いします。今、説明しました昨年、2006年の2月は左下になります。この半年前、2005年の10月ですが、このときには推定した資源量が3,600トンほどで、14ミリあたりと20ミリあたりにピークがあるような状況になっております。
 それから、昨年度、2006年の9月の時点になりますと、その半年後ですね、2006年の2月と比べまして、かなり殻長が大きなものに動いておりますが、この時点での推定資源量が1万701トンの推定資源量であります。ですから、これがその30ミリ以降は捕獲の対象になりますので、途中でこういう組成ができたものと考えております。それがさらに半年後の今年、2007年の2月になりますと、かなり成長が見られております。このときの組成に伴いまして、資源量としては1万4,244トンのアサリ資源が推定されております。  ということで、昨年の春から、既にもう漁獲が、大きくなったものが入っておりますので、それを含めましてアサリの漁獲量の推移というものを見てみますと、まずは赤い方の折れ線の方が、これは全国の漁獲量の推移であります。ずっとアサリにつきましては右肩下がり、漁獲量の減少が続いておりましたが、2001年以降は3万トンから3万5,000トンぐらいの間で、横並びという状態になっております。本県につきましても、1995年には6,000トンぐらいの非常に高いものがありましたが、それからずっと下がってきて、2001年には最低の数字になっておりますが、昨年、2006年につきましては5,900トンの漁獲量があるということで、非常にここでまた急激に上がっているという数字が出ております。  次に、この覆砂をやったところの底質なのですが、これにつきましては、2004年に覆砂を行った場所につきまして、去年までの3年間、その底質についてのデータをお示ししております。
 まず、泥分率ですが、これは覆砂を行わない場所につきましては、約78%から高いときには94%ぐらいの泥分が含まれておりますが、覆砂をやったところでは、覆砂をした直後で3%ほど、それから3年経過した後でも15.9%という数字で、底質的には非常にいい状況を保っている。右側の方に、10年後ということで数字が上がっておりますが、これは以前、平成の早い時期に行いました覆砂につきまして、10年経過した後に同じ場所を1年間調査しておりますが、10年度でもその場所で14%程度の泥分率が保たれていたということで、今回についても、同様に14%ぐらいだろうということで推定しております。
 次、底質の中でCOD、CODにつきましても同様に、覆砂を行っていないところ、それから覆砂域について、このように調査年について少しばらつきがありますが、かなり大きな違いが見られております。
 その次は、底質の中でも硫化物ですね。硫化物につきましても、覆砂域によって変化ありますが、覆砂域については4年、5年とは比べておりませんで、2006年に約0.01%の数字が出ております。こちらにつきましても、10年経過したほかのところのデータから推定しますと、10年後でも0.02%程度だろうということで考えております。  次に、こういう底質でありますとか、アサリの資源の状況ということで、覆砂事業の目的というものを考えてみますと、まず第一に考えられますのがシストの封じ込めですね。これは以前、私どもで調査した場合に、珪藻プランクトンの種によってはシストを形成するものがあります。このシストの分布状況が、やはり底質と関係がどうもあるようで、泥分率の多いところにシストが多く、逆に砂の多いところにはシストが少ないという結果が出ておりますので、覆砂をやることによって、ある程度のシストを封じ込め、これによって赤潮が抑制されるということが考えられております。それから、底質改善を行って、先ほど申しましたように、アサリ等の二枚貝資源がふえたことによりまして、そのアサリがプランクトンを摂食するということと、さらにアサリがふえることによって水質・底質の浄化が進むということが考えられるわけです。これが間接的には、ノリの生産の安定化にも寄与しているのではないかと考えております。
 その参考としまして、最後のページになりますが、ノリの生産量の推移ということで、グラフを出しております。2000年の不作の年はちょっと例外としまして、その以前の1990年代から5~6年ほど、かなり、これは生産枚数で推移いたしておりますが、生産枚数としては約15億枚前後の安定した生産が上がっております。ここ3年ぐらい、4年、5年、6年としても14億枚から15億枚と、生産としては非常に安定が出てきているというふうに考えております。これは、やはりプランクトンの発現によるノリの色落ちというものが、最近やっぱりちょっとパターンが変わってきているような感じがありまして、以前ですと2月の上旬から珪藻類の春のブルームと言われております珪藻類の大繁殖で、ノリが色落ちして終わるというパターンが今までありましたが、ここ3年ほどにつきましては、そういう春のブルームに相当するような珪藻の大発生というものが見られておりませんで、それによりまして、ノリもある程度、生産枚数としては安定して上がってきているという状況が、この最近の状況であります。
 ということで、報告を終わらせていただきます。

○須藤委員長 どうもご発表ありがとうございました。
 それでは、先ほどの農村振興局、それから水産庁、ただいまの福岡県、何かご質問ございますでしょうか。
 では、滝川先生どうぞ。

○滝川委員 農村振興局さんの貧酸素水塊のご説明があったと思うのですが、図でいきますと、手元の資料ですと、これはNo.16と打ってあるやつですかね。地点別、長期別、貧酸素水塊の出現割合ということでお調べいただいているのですが、従来といいますか、貧酸素水塊に関しては、小潮のときに発生して、大潮のときに解消すると、そういう知見といいますか、そういう共通認識みたいなのがあったんですが、これを拝見しますと、大潮のときも出て、場所によってこういうふうになると。非常に貴重な知見といいますか、新たな見解かなと思っているのですが、ここで出されているのは、18年6月からの間なのですが、ほかの年といいますか、以前についてこういうことが起こっていたのかどうかと。もし、可能であれば、ぜひ調べていただきたいなという気がいたしておるのですが。

○須藤委員長 それでは、農村振興局、瀧戸さんですか、どうぞご説明ください。ほかの年も同じようなことが起こっていますかということです。

○農林水産省農村振興局 今、ちょっと手元にはあれなのですけれども、データは確保しておりますので。

○須藤委員長 では、後ほど。

○農林水産省農村振興局 ご提供はできるというふうに。

○須藤委員長 では、後ほど提供してください。

○滝川委員 貧酸素水塊そのものを、データをとられている75年ぐらいからあるのですが、それがこういう長期別に何か区別できれば非常におもしろいといいますか、貴重なデータになり得るかなと思っています。

○農林水産省農村振興局 別途整理させていただいて。

○須藤委員長 では、お願いします。それでは、中田先生どうぞ。

○中田委員 そのときにちょっと気をつけてほしいのは、ここの出現割合の定義をしっかり明確にしておいていただきたいのです。私もちょっとよくわからないのですけれど、これは底層水だけを考えているのではなくて、全部のデータの中で、いわゆる貧酸素というのが何回出たかというような統計なのではないかなと思うんですよね。ですから、そこら辺の定義も含めて、十分はっきりさせてほしいと思います。

○須藤委員長 そうですね、誤解のないように。では、その辺もどうぞよろしくお願いします。意味はおわかりになりましたよね。

○農林水産省農村振興局 データ的には、ここは全層のデータを使っておりますので、ちょっとその辺の定義も含めまして、詳しくご説明させていただきたいと思います。

○須藤委員長 では、どうぞ楠田先生。

○楠田委員 今、幾つかそれぞれの水産対象物に対する施策をご説明をいただいたのです。それで、ご配慮いただきたいのは、有明海にとっては水産も大事なのですけれど、一応は生物の多様性ということもございまして、今それぞれの施策を実施されたときに、全域の多様性がどう変わるかというところまでお含みおきをいただいて、この事業の評価をしていただければと思います。以上です。

○須藤委員長 ありがとうございます。大変ご注意いただきました。先ほどの討論とも関係する問題なのですけれど、ちょっとこれも環境省と十分打ち合わせをするつもりです。
 その次、いかがでしょうか。どうぞ、清野先生。

○清野委員 環境省さんとしても、やっぱりこの委員会全体のマネージというところがあると思うのですけれども、水産庁さんにお願いしたいことがあります。それは、有明海の改善のための実証実験のお話をいただいたのですけれども、この実験のコストというのは、かなりかかると思います。それの一方で、ノリの自由化が行われたときに、有明海どうなっていくのだろうというような水産全体の問題もあります。ですから、施策全体のバランスというのがございますので、先ほど和田さんのお話でも、施策の経済効果ということも検討されるということでしたので、有明海の漁業それ自体が、どのぐらい存続し得る可能性があるかというのを、ぜひ全体の施策と費用も含めて出してください。
 それで、基本計画の改定で、沿岸漁業もかなり厳しい状態にあるという統計を水産庁さんも出しておられるので、ここの有明海について、具体的にここの箇所で、どういう行程で漁業の再生と沿岸漁業の存続を図っていくのか。それから、今の楠田先生の話にもありましたように、そういった単一品種だけじゃなくて、全体の環境のバランスの中でやっていく漁業というような、環境共生型漁業という道も今後ありますので、そのあたりの可能性をつぶさないような、やっぱり全体性のあるような施策のご提示を、次回お願いしたいと思います。その中で、ここの調査の総合評価があると私は思っています。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございます。大変重要なコメントをいただいていますが、今お答えいただくような問題でもございませんので、和田補佐、よろしゅうございますね。ひとつよろしく、これも次回までに検討していただきたいと思います。
 ほか、よろしいでしょうか。では、滝川先生どうぞ。

○滝川委員 有明のいろんなご報告というのは各機関やっていただいたのですが、八代海についての報告が全くなかったので、議論が有明だけに集中しているみたいな、対策も含めて、ぜひ、そういった八代海どうするのということについても、もっと資料なり議論なり続けていっていただきたいと。

○須藤委員長 どうも滝川先生、ありがとうございます。私、最後にまとめのときにそのことを申し上げようと思ったのですが、それで大和田先生をご指名しようと思ったのですけれども、ずっと先ほどから、何となく有明・八代と言いながら、ほとんどが足らない足らないと、岡田先生から有明のデータがないじゃないかと。まとめるときにもご指摘いただいて、これがいい、とってきましょうというお約束をしたのですが、どうもそうもなっていないのですね。これもちょっと環境省にバランスよくやっていただくようにお願いをしたいと思います。
 大体時間が参ってしまいましたですね。いろいろご注意いただきましたが、またどうぞ、環境省の方にいろいろご意見、きょう、討論の時間が非常に不十分だったこと私も承知していますし、先ほど清野先生に、この評価委員会のあり方についてもご注意いただいていますので、この辺については議事の進行の仕方等も環境省と相談をして、次いつ開けるかは何なのですが、お約束できるような状況じゃないようですが、とりあえず議事については、ここまでにさせていただいて、その他何かございませんでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 先生方、いろいろ本日貴重なご意見ありがとうございました。
 次回以降なのですが、今、須藤先生からもございましたように、国会における特措法の取り扱いということもございますので、そのあたり須藤先生と相談しながら、次回につきましては、またご連絡したいと思います。ただ、施策につきましては、本日いろいろいただきましたご意見を踏まえながら、関係省庁、関係機関と連携をとりながら、そちらの方向に向いていくように、環境省として最大限努力をしたいと思います。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうも貴重なご意見いただきまして、ありがとうございました。
 これで本日の議題はすべて終了いたしました。これにて第27回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会とさせていただきます。
 議事進行にかかわる皆様のご協力、大変感謝いたします。どうもお疲れさまでございました。若干時間が過ぎましたですね。4時半というふうに思ったんですが、お許しいただきたいと思います。ありがとうございました。

午後4時32分 閉会