第26回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成18年12月20日(水) 10:00~12:00

2.場所

環境省第1会議室(中央合同庁舎5号館22階)

3.出席者

委員長:
須藤隆一委員長
委員:
相生啓子委員、荒牧軍治委員、伊藤史郎委員、大和田紘一委員、岡田光正委員、楠田哲也委員、小松利光委員、三本菅善昭委員、滝川清委員、原武史委員、細川恭史委員
臨時委員:
菊池泰二委員
事務局:
環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午前10時00分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 おはようございます。
 本日は、年末のお忙しいところをお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。定刻となりましたので、ただいまから第26回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本日の出席委員でございますけれども、あらかじめご欠席とのご連絡をいただいておりますのは清野委員、中田委員、福岡委員、本城委員、森下委員、山口委員、山田委員、それから山本委員でございます。13名の委員の方にご出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。
 議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきたいと思います。
 お手元でございますが、資料の1が委員名簿、それから2といたしまして、この評価委員会の委員会報告書案、厚いものでございます。それから、資料3といたしましてパブリックコメントに関する資料、それから資料4といたしまして、パブリックコメントを受けた修正案という1枚紙がございます。それから、参考資料でございますけれども、今日ご欠席の清野委員の方からコメントをいただいておりますので、それを配付させていただいております。
 以上でございます。
 それでは、これからの議事の進行につきましては、須藤委員長の方によろしくお願い申し上げます。

○須藤委員長 かしこまりました。
 委員の先生方、どうもおはようございます。本日は、年末の大変ご多用な中をお繰り合わせ、ご出席いただきましてどうもありがとうございます。また、本日も関係省及び関係県の皆様、それから傍聴の皆様にも多数ご出席をいただきましたことをお礼申し上げたいと思います。
 それでは、本日は12時までということでございまして、そう時間もゆとりがないわけでございますが、円滑な議事進行の運営にご協力をお願いしたいと思います。
 早速議事に入りたいと思います。
 本日の議題は、ただいま事務局からお話がございましたような委員会報告の取りまとめが中心でございます。前回の評価委員会におきまして報告書案を取りまとめていただき、その後、パブリックコメントを実施してまいりました。本日は、パブリックコメントの結果を踏まえ、最終的な報告書の取りまとめにつきご審議をいただきたいと思います。
 事務局では、パブリックコメントの結果、それを踏まえた報告書の取りまとめについて資料を用意いたしておりますので、それについて説明をお願いをしたいと思います。
 それでは事務局、どうぞ。室長ですね。どうぞお願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、資料の2から4を使いましてご説明いたしたいと思います。
 まず資料の2でございますけれども、これは委員会報告書案でございますが、前回、委員会報告書案を議論いただきまして、いろいろご指摘をいただきました。それを踏まえて修正をしたものをパブリックコメントにかけておりますけれども、この今日お配りした資料の2は、このパブリックコメントにかけた資料と同じものというふうにご理解いただきたいと思います。
 この資料に基づきまして、12月4日から15日まで2週間の間に一般からの意見の募集をさせていただきました。この資料の3というのが、このいただいたコメントの概要、それから、それに対する考え方案ということで作成をしたものでございます。委員の方々には一応事前に、直前でございますけれどもお送りをさせていただいております。若干その後修正もさせていただいております。
 それから、資料の4が、この資料の3の中で具体的に報告書案を修正してはどうかという部分について抜き出したものでございます。
 まず資料の2をご説明したいと思いますけれども、前回の委員会でご議論いただいた資料からどこが変わったかというところだけ、ちょっとご説明したいと思います。
 前回の委員会で先生方からいろいろご指摘をいただいたものを踏まえた資料でございまして、まず64ページでございますけれども、この潮流の変化の部分でございます。64ページの一番下でございますけれども、この有明海の潮流は種々の要因で、全体として見れば減少したという部分でございますけれども、ここに「長期的」の後に「かつ段階的に」という言葉を一言入れてございます。
 それから、65ページでございますけれども、この粒子の径と流速の関係でございます。これにつきまして委員の先生から、特に粒径が小さくなると凝集性が出てきて、これに乗らない部分が出てくるということで、できればもう少し適切な図に差しかえる必要があるんじゃないかというご指摘だったんですが、なかなかいい図がございませんものでしたから、注として、(粒子の凝集性は考慮していない)ということで一言お断りを入れさせていただきました。粒径が小さくなる部分については凝集性が出てくるので、このラインに必ずしも乗ってこなくなるということでございます。
 それから、67ページでございますけれども、一番下の図の4.4.6でございます。このデータにつきましては、あくまでも推測値である。計算式による推測値であるということを明記をいたしております。
 それから、次が78ページでございますけれども、第5章でございます。78ページの下の方、3.具体的な再生方策というところで、この次のページから具体的な再生方策を列挙しておりますけれども、この列挙の順番が非常にランダムであるので、少し整理した方がいいんじゃないかということのご指摘をいただきました。この前の4章にございます問題点と原因・要因との関連性の図に沿って、フローに沿ってできるだけ整理をしたということで、この78ページの下から4行目、3行目でございますけれども、そういう順番を整理したということを一言書いてございます。具体的には79ページの(1)から(3)については、この記述がございますけれども、この順番を少し前回のものとは変え、整理をいたしました。例えば流域の対策からまず書いて、その後に海の中の対策を書くということで、できるだけそれに沿った形で整理をしてございます。
 それから、81ページでございますけれども、5の取り組み体制というところで、モニタリングについてご意見がございました。(2)の海域環境モニタリングの継続・強化というところの3行目からでございますけれども、「これまでモニタリングが十分に実施されていない項目(例えば非漁業資源生物、底質環境等)についても、その必要性を検討した上で、継続的な実施体制の整備を進めていくべきと考える」というフレーズを加えてございます。
 それから、最後に次の82ページでございます。ご指摘の中で、有明海・八代海以外、ほかの海域でも似たような問題が起こっているというようなことで、そういうものとの関連性も考慮する必要があるというご指摘がございましたので、この「おわりに」のところでございますけれども、下から6行目ぐらいで、「我が国の多くの閉鎖性海域において、有明海・八代海でみられる海域環境の悪化や水産資源の減少といった問題が顕在化していることから、今後、他の閉鎖性海域における現状、対策の進捗状況をも睨みながら、有明海・八代海の再生に向けた諸施策の検討、実施を進めていくことが有効と考える」というパラグラフを1つ追加させていただいております。
 以上が変更点でございまして、この資料に基づきましてパブリックコメントを実施させていただきました。それでは、これ以降、具体的なパブリックコメントの内容、それに対する考え方につきまして、担当の方から説明をさせていただきます。

○須藤委員長 それではどうぞ。坂本補佐、お願いします。

○閉鎖性海域対策室長補佐 資料3と資料4についてご説明させていただきます。
 資料3につきまして、パブリックコメントとそれに対する考え方ということで案を示させていただきまして、それに基づいて委員会報告の修正案を行ったものが資料の4でございます。資料3の左側に整理番号、その右側に分類ということで、何章のどの部分かということ、それから項目、ページ数、行とありまして、その右側にご意見をいただいた内容、あとはそれに対する考え方ということで整理しております。
 内容につきましては似たようなご意見もいただいていますので、ご説明の際には重複を避けながら適宜説明させていただきますので、少し番号が飛ぶこともありますが、ご容赦いただきたいと思います。
 まず1番のところでございますけれども、有明海・八代海の概要の全般のところでございます。ご意見として、有明海の特徴については、浮泥が多く海が濁っているというような特徴を追加すべきというご意見をいただきましたので、これについてはご指摘を踏まえて修正するということで、資料4の方に修正案が載っておりますので、ご参照いただければと思います。
 2番目のご意見です。3ページでございますけれども、注ですね。表2.1.1の注の3でございますけれども、諫早湾の干拓により消失した干潟の面積でございます。1,550ヘクタールとしているけれども、農水省の報告では2,900ヘクタールであったということで、この辺の違いがあるのではないかというようなことをご指摘いただきました。この2,900ヘクタールというのは諫早湾内の干潟面積でございまして、諫早干拓により失われたものが1,550ヘクタールということでございます。なお、この1,550ヘクタールという表示について、一部報告書の中では1,500としていたり、15平方キロとしていたり統一性がなかったものですから、これにつきましては1,550ヘクタールということで統一したいと考えております。
 続きまして5番でございます。14ページからの底質環境の記述になります。これにつきましては、まず1997年から2000年の間に泥化が進行しているということが、この図の3.4.2でわかるのではないかと。さらに泥化については潮流減速によるということが4章で推測されているということから、こういった潮流減速は97年の干拓事業によって生じたことから、この泥化も干拓事業によって生じた可能性が高いと推察するという記述を書くべきではないかというようなご意見がございまして、これに対しましては、潮流速の減少については、データの不測などから、干拓事業であるとかその他の要因がどの程度影響しているかといった評価がまだ十分尽くされていないということから、シミュレーションの精度向上などが今後の課題とされているというふうに考えております。
 それから、同じく底質環境でございますけれども、まず2つ目のティレでございます。これは15ページの上から3行目、「また」以降の記述でございますけれども、堆積速度が年間、有明海では1から3mmということが正しいとしても、熊本沖の泥化の始まりが二、三十年前という記述というのは、これはあくまで年間1mmの堆積を前提とした計算であって、仮に5mm堆積すれば、泥化の開始というのは四、五年前からになるのではないかというようなご指摘がございました。これにつきましては、ちょっと記述が不十分でございまして、熊本沖につきましては、堆積速度が約1mm/年というふうなことで推測されていまして、これに対して当海域の底泥の層厚というのが20から30mmということから、泥化の開始が二、三十年前というような推測を行っておりますので、この点については、記述について正確に改めたいというふうに考えております。これにつきましては、書きぶりにつきましては資料4のコメントナンバー6に対応したところでございますけれども、「熊本沖(堆積速度が年間約1mm)」ということで、誤解のないように記述を改めました。
 続きまして、コメントナンバー8ですけれども、これまた潮流・潮汐でございまして、18ページのところでございます。18ページの上から5行目から6行目のところでございますけれども、図の3.5.2のところから、潮受堤防の影響について明らかな変化が読み取れなかったという項目についてのご意見でございます。影響を読み取れないと見ることがどのような根拠にあるのかというようなご意見でございましたけれども、ここの委員会報告の整理といたしましては、あくまで潮流・潮汐に関して報告されている文献について整理を行っているものでございまして、それぞれ見解が異なるというようなものもあわせて、さまざまな見解を併記しているという位置づけでございます。
 次のページをめくっていただきまして、コメントナンバーの12でございます。これも潮流・潮汐でございますが、19ページの一番下のところでございますけれども、影響度合いに対する見解が異なるということで、それぞれ有明海の内部効果であるとか外部効果──水位上昇ですね。また外洋潮汐振幅の減少といった効果がどの程度影響しているのかという一覧表でございます。20ページの表の3.5.3になりますけれども、このうちどれが実測データである見解1に近いのか検証して、どれが最も再現性にすぐれているかという判断を行うべきだというようなご意見でございました。これにつきましては、どの見解が最も妥当なのかということについては、現在得られている情報からはまだ判断に至っていないということでございまして、今後観測の実施であるとか、またシミュレーションの精度向上というのが課題と考えております。
 続きまして、コメントの14でございます。これにつきましては、ページ数でいいますと24以降ですね。有明海のところの潮流流速の変化要因に関する全般的なご意見でございましたけれども、堤防締め切りによる流速の変化であるとか、あと公調委の専門委員報告書に記載されているような河川流出水の流向の変化、あとは最大流速出現時刻が変化しているということにも触れるべきであるというご意見がございました。これにつきましては、右側にございますが、潮流・潮汐の変化自体、研究者の間で見解が異なっているということ。あと、さらに実際に潮流・潮汐が変化することによって、生物であるとか底質にどのような影響が及ぶのかということがまだ十分解明されていない段階で、ご指摘のような部分的な変化に注目する意義というのは希薄ではないかと考えるということでございます。それから、2つ目のティレでございますけれども、シミュレーションについては再現性が保証されないと意味がないということでございまして、再現性をどのように検証したのかというようなこと、そういった再現性を検証した上で信頼に足るシミュレーションのみを取り上げるべきだというようなご意見でございました。これに対しましては、右側にありますように、シミュレーションについても現在のモデルでは再現性に限界があるというようなこと。あとは実測データも不足しているということから、やはりこれらの点についてもシミュレーションの高度化であるとかデータの蓄積が必要と考えるということでございます。
 続きまして、コメントの15でございます。25ページの図の3.5.14でございますけれども、このシミュレーションについては環境アセスのシミュレーションかと思われるが、この結果が実測データと違い過ぎるということで、再現できているとは言えないのではないかというご意見でございました。まずこの図3.5.14につきましては環境アセスのシミュレーションではございませんで、灘岡・花田(2002)によるものでございます。実測についても、そもそも当日の気象海象によりまして影響は受ける可能性もありますので、実測とこのシミュレーションの双方の特徴を生かしながら総合的に評価すべきと考えております。
 それから、コメントの17でございますけれども、ノリのところでございます。[3]のところのノリ養殖施設のところでございますけれども、このノリ網がふえたのが1960年代後半であって、70年代以降は柵数が減っているということなので、こういったことも記述すべきというご意見をいただいておりまして、これにつきましては、この旨記載するということで、資料4のところに修正案を載せております。
 それから、3ページ目に移りまして、29ページのところ、貧酸素水塊のところでございますけれども、これにつきましては、図の3.6.1につきまして、骨子案のものと差しかえられている。骨子案のものは、有明海湾奥西側と諫早湾で同時につながって貧酸素水塊が生じているように見えるような図だったのが、今の図では何か別々に発生しているような図と差しかえられているようなことで、意図的なものであるというようなご意見でございましたが、そもそも有明海の貧酸素水塊につきましては、環境省と農林水産省が共同で連続観測を実施した結果、これは別々に発生しているということが明らかにされております。この図の差しかえにつきましては、骨子案のときに湾奥の貧酸素水塊と諫早湾の貧酸素水塊の発生が明確に出ていないというご意見をいただいたものですから、それぞれ明確に出た図と差しかえたものでございまして、こういった意図というものはございませんということで書いてございます。
 それから、その下のコメント22でございます。33ページの藻場・干潟のところでございますけれども、これも申しわけありません、数字に誤りがございまして、諫早干拓事業による海域の消失というのが3,550ヘクタールということでございますので、これについても改めさせていただきます。
 それから、コメントの24番でございます。ページが34ページ、赤潮のところでございますけれども、まず赤潮の増加原因として透明度の上昇が挙げられているが、成層度の強化は検討されたのかということでございます。これは、これよりも4章の方に入るかと思うんですが、この成層度につきましては、諫早湾の締め切りで成層が強まったというようなシミュレーション結果もある一方、観測データから経年的に有明海では成層度が減少したという報告もありますので、今後知見の蓄積を図っていく必要があるというふうに考えております。
 あと、赤潮につきましては、ティレの2です。特に堤2006、この文献の内容としては、諫早の締め切り後に湾奥の赤潮発生が大規模化しているという文献ですが、これは諫早締め切り後の海洋構造の激変を示す証拠であるけれども、なぜ無視するのかというご意見でございます。これにつきましては、この堤2006では、有明海湾奥に雨が降ってから40日以内に赤潮が発生して、1998年以降にこれが大規模化したというご指摘があったかと思いますけれども、このデータを見ると、大面積の赤潮発生の多くが有明海の中・南部であり、少しおくれた形で湾奥で赤潮が始まるというようなことが見られるのではないかということ。あとは、このデータの扱いでございますけれども、堤2006のデータの扱いとしては、湾奥の外側で確認された赤潮を湾奥で発生したとして扱っていますが、こういったことをどのように確認したのかという点。あとは、逆に湾奥の外側で発生した赤潮が湾奥に流れていった可能性というのをどのように排除したのかという問題があるということで、こういった問題はクリアにすべきではないかということが考えられるということでございます。
 次のページでございますが、コメントの28でございます。これも赤潮でございますけれども、諫早湾内の栄養塩が枯渇しているという事実があるということ、あと、そのことが渦鞭毛藻の増加であるとかノリ不作と関係しているということから、これを検討すべきというご意見ですが、有明海であるとか、あと諫早湾内の水質を見ましても、栄養塩が枯渇しているということは判断できないということでございます。また、渦鞭毛藻も植物プランクトンでございますので、やはり栄養塩が必要ということであります。あと、渦鞭毛藻の増加と栄養塩の枯渇との関係については基本的な情報はないというようなことでございます。
 続きまして4章の方に入りますが、41ページからのところでございます。全般的なご意見としては、以前から保育場の減少であるとか潮流減少、泥分の増加というのが起こったとしても、諫早干拓による上積みがなければ、この異変が起きなかったのではないかというようなご意見。あと、諫早干拓と堤防締め切りは、諫早湾のみならず湾奥の赤潮・貧酸素水塊の引き金となり、諫早湾という育成場の喪失とともに水産資源減少の主因となり得るというご意見でございましたけれども、評価委員会で収集した文献等の中には、ご指摘のあったような見解を裏打ちするようなデータであるとか調査結果というのはなかったということでございます。
 続きまして、コメントナンバーの31です。これは42のフロー図の中へのコメントということでございますけれども、ここは調整池からの汚濁物質が要因として抜けているのではないかということでございまして、調整池からの汚濁物質が有明海に及ぼす影響について考慮すべきということ。あとは、それから、湾内の漁場悪化による有明海全体の漁場への悪影響の可能性を考察すべきというようなご意見がございました。まず調整池の負荷の件ですけれども、これは有明海全体の1%前後ということでございまして、負荷の観点だけから見れば、全体の海域環境に大きな悪影響を及ぼしているとは考えにくいのではないかということでございます。あと、諫早湾内の魚類の仔稚魚が多く分布するというような調査結果も得られているものですから、この点についてはモニタリングが必要だということが委員会報告の中で記載されております。
 続きまして、33番でございます。こちらも42ページ、この表に対するご意見ですけれども、堤防締め切りの後、筑後川の水というのが佐賀寄りに流れて、湾奥の成層密度が強まったということ。あとは、この成層化というのは赤潮を助長して、有明海の環境悪化の重要な証拠になるということで、4.2.1で成層化を取り上げているけれども、これについて説明がないのではないかというようなご意見がございました。これは先ほど申し上げたように、観測結果から、有明海における成層度というのは減少傾向にあるというような報告も一方であるものですから、こういった問題につきましては、赤潮増加のメカニズムのさらなる解明という今後の課題が設けられていますので、こういった中で検討していくべき課題と考えるということでございます。
 続きまして、5ページでございますけれども、タイラギの問題です。ページ数でいきますと45ページでございます。この図でございますけれども、図の4.3.3のところでございます。このタイラギの浮遊幼生の分布図というのが、有明海全体をカバーした図を使うべきというご意見です。特にタイラギ幼生というのは諫早湾口に集中しているという事実は、ここの図からはわからないというようなご意見です。あと、タイラギの幼生というのが諫早湾口に集まるので、諫早湾の環境悪化がその資源に影響を及ぼすので、こういった点も考察すべきというご意見でございます。この点につきましては、まず、今回評価委員会で検討しましたものは、佐賀県・福岡県海域のタイラギ不漁でございまして、こういったことから同海域におけるタイラギ幼生の分布図を示したものです。この諫早湾口のタイラギ浮遊幼生の問題につきましては、長崎県海域のタイラギ不漁にかかわる問題ですので、この点については今後解明すべき課題ということで委員会報告の中では整理されています。
 次に、38番目のコメントですけれども、これはアサリのところでございます。48ページからになります。この中で中央粒径値のところ、表4.3.2のところでございますけれども、まず、緑川河口域の底質の中央粒径値というのがそれほど大きな変化はないのではないかということで、これだけでアサリ資源の減少の根拠とするには説得力が乏しいということ。川砂採取であるとか緑川ダムの堆砂により河口に流下する土砂が減ったために河口干潟の面積が減少して、漁場自体が沖合から岸に狭まっていたということを指摘すべきということでございました。この緑川につきましては、筑後川などと違いまして流砂量などの推計データがないというようなこともございまして、影響評価はできていません。今後の課題としては、緑川における土砂に関する知見の蓄積が必要だと考えるということでございます。
 それから、40番目でございますけれども、サルボウのところでございます。[3]のサルボウでございますが、サルボウの資源の減少、ここの辺は図の4.3.13で示していますけれども、この要因としては諫早湾干拓事業を挙げるべきということで、この理由としては、貧酸素化が1998年以降顕著になり、諫早干拓事業が貧酸素化の原因である可能性が高いというようなご指摘です。これにつきましては、有明海湾奥西部における底層DO(浅海定線調査)によるものですが、これについては経年的に減少傾向にあるということが示唆されるということが委員会報告の中で記されていますけれども、この減少傾向というのが98年度以降顕著になったということは読み取ることができないということでございました。
 それから、次の41、魚類でございます。53ページの表の4.3.17のところでございますけれども、ヒラメ、カレイ類、ウシノシタ類、ニベ・グチ類、クルマエビのうち、前4者は1989年から減少を始めたのではないかということで、この減少要因としては干拓事業の可能性が高いと述べるべきというようなご意見でした。これに対しましては、ご指摘いただいた底魚については1980年代後半から減少が始まっているということで、このグラフから、これらの魚種の減少が始まった年を1989年ごろと特定することは難しいと考えるということでございます。
 次のページを見ていただきまして、43番でございます。魚類の減少のところでございますけれども、54ページの図の4.3.18と4.3.19を見ていただければと思いますが、仔稚魚の大半というのは諫早湾で生活史の一部を過ごすことが明らかであるということ。ですから、初期減耗は当然こういった海域で起こるのではないかということでございます。抽象的な記述ではなくて、諫早干拓による生息域の減少と、その環境要因の悪化が原因と特定すべきではないかというようなご意見。あとは、諫早干拓による干潟・浅海域の喪失というのが、堤防締め切りによる貧酸素水塊を含めて実質的には7,000から8,000ヘクタールに及ぶということ。これを水産資源に及ぼす影響として特筆していないということであるということでございます。これに対しては、諫早湾に多くの仔稚魚が集まる情報というのは委員会報告にも掲載してございますけれども、諫早湾の環境が仔稚魚にどのような影響を及ぼしているのかという調査はされていないというようなことでございます。委員会報告では、諫早湾における仔稚魚の分布であるとか海域環境のモニタリングの必要性について指摘しています。
 45番でございます。56ページになりますが、ベントスの減少でございます。ベントスの減少要因としては、泥化と有機物・硫化物の増加、貧酸素水塊が指摘されていますけれども、これらの原因と考えられる諫早干拓との関係が考察されていないということでございました。これにつきましては、諫早干拓が湾奥の泥化、あとは有機物・硫化物の増加であるとか貧酸素水塊にどのようなメカニズムでどの程度影響したのかということは明らかにされていないというふうに考えてございます。
 それから、続きまして48番目のコメントでございますけれども、ノリでございます。58ページから59ページのところにございますけれども、まず平成12年のみならず14年もノリ被害が生じている点、あとは品質が落ちているというような点、あとは栄養塩不足により不作に陥っている地域が存在している点などについての問題意識がないのではないかという点。あとは、こういった点は、病気であるとか水温上昇では説明がつかないというようなことでございまして、これらは海洋構造の変化であるとか赤潮の大規模化などの関連でしか解明できないということで、修正が必要ではないかというようなこと。あとは、ティレの3番目になりますけれども、90年代の有明海の水温は、むしろ低下傾向にあるというような報告もあるのではないかというようなご意見でございました。これにつきましては、委員会では特に落ち込みの大きい平成12年度の不作について検討するとともに、近年の水温上昇とノリ生産の関係について検討したものでございまして、ご指摘いただいたような問題にまで検討が至らなかったということは残念でありましたけれども、再生方策の中にノリ生産の安定化にかかわるような提言を行っていますので、こうした施策によりまして問題解決が図られることを期待したいということでございます。なお、さらに90年代の有明海の水温低下傾向というのは、少なくとも佐賀県海域では見られずに、むしろ秋の水温が上昇傾向にあるというふうに考えております。
 次のページでございますが、50番でございます。これもノリでございます。58ページのところの図の4.3.25、生産枚数の推移でございますけれども、ここにノリ漁期の日数を加えるべきというご意見をいただいています。平成13年ごろからノリ漁期の終了期の4月いっぱいを使って生産しているというようなことで、枚数はふえているけれども、2月から4月に生産されるノリが安いというような事態が生じているんだということで、これにつきましては、ノリ漁期に関する情報を佐賀県の方からいただきまして、別添資料として添付したいと考えております。これにつきましては、資料4の裏の方に佐賀県におけるノリ養殖期間ということで資料をご提供いただきましたので、別添資料の方に加えたいと思っております。
 続きまして、52番でございますけれども、潮流・潮汐の減少ということで64ページのところでございます。これにつきましては、図の4.4.1で、これは長崎大の総合研究の結果でございますけれども、潮流速のシミュレーション結果を示しております。このシミュレーション結果と実測値を比べると、明らかにシミュレーション結果は潮流速の減少が小さい。これは諫早締め切りの比較ということで、この実験結果の(1)の方になりますが、このシミュレーション値と実測が違うというようなご意見がございまして、実測値の方を使うべきだというご意見をいただいております。また、このシミュレーションよりも、むしろ公害等調整委員会の専門委員会報告のシミュレーションの方が再現性にすぐれているので、シミュレーションを示すなら、少なくともこの委員会報告、専門委員報告を使うべきだというようなご意見でございました。これにつきましては、図の4.4.1の趣旨というのが、長期的な1940年代と1990年代の地形変化による潮流の変化と近年の地形変化ということで、諫早締め切りの有無という2つのシミュレーションを比較したものでございまして、例えば片方だけ1990年代の諫早、あるなしというところだけ実測値を使って、もう一方で比較すべき実測値が1940年代にないということから、片方だけ実験結果2のみを実測値を用い、実験結果1はシミュレーションを使うということは余り比較の意味がないというふうに考えております。また、実験結果2について公害等調整委員会のモデルを使うというようなことになりますと、またそれぞれ1990年代の変化については公調委のモデルを使い、1940年と1990年の比較については長崎大の総合研究のモデルを使うという、異なるモデルを使うということで比較を行うことについては疑問があるということでございます。
 それから、次のページを見ていただきまして、54番ですね。これも64ページのところですけれども、やはりシミュレーションですが、諫早湾内では20から60%の流速の減少が生じ、湾の中央部では5%減少しているけれども、これが環境をどう変化させたのか考察がされていないのではないかというようなところでございます。この諫早湾内の問題につきましては、流速低下が有機物を含むより微細な粒子の沈降・堆積が生じやすい状態が生じたこと、これらのことからプランクトン由来の有機物の沈降が増加しまして、有機物分解に伴う底層の貧酸素化であるとか、あとは嫌気的環境下での硫化物の増加といった底層環境の悪化が諫早湾内で生じたという可能性が伺われるというような記載がなされておりまして、考察はされているということでございます。
 それから、続きまして56でございますけれども、これは65ページ以降、底質の泥化に関する考察でございます。これにつきましては、まず底質の泥化がいつ進んだのかということについて考察すべきということでございまして、近年の急速な細粒化が進んだのが堤防締め切り以降であることがわかるのではないかということ。あとは、こういったことから、諫干が泥化の原因ということを特定明記すべきというようなご意見。2つ目が、有明海の潮流というのは長期的に減少したというようなあいまい化を図るのではなくて、諫干による潮流速低下によって浮泥の移動限界に対応した流速値を下回る海域が拡大し、当該海域において浮泥の移動量の減少、堆積量の増加が生じ底質の泥化を進めたということが推測されるという記述をすべきというようなご意見でございましたが、これに対しましては、ご指摘いただいたような図から、底質の細粒化が諫早干拓後に急速に進んだというようなことは断言することは難しいと考えております。また、諫早干拓による影響のデータについても明らかにされていないというようなことでございます。それからあと、潮流速の減少についてですが、これについてはさまざまな要因が関与しているということから、その中には当然干拓事業も含まれるということでございますが、各要因の寄与度を明らかにされていない中、ご指摘のような判断をすることは難しいというふうに考えております。
 次のページ、9ページでございますけれども、コメントの62番でございます。71ページの赤潮のところでございますけれども、まず諫早湾内で増加した渦鞭毛藻については原因が記載されていないというようなことです。潮流速が増加して透明度が上昇した諫早湾内では、水中日射量がふえて、調整池から出てくる富栄養化した水から栄養塩の供給を受けることが可能となって、渦鞭毛藻が容易に増殖する条件が整っているのではないかということで、ラフィド藻も渦鞭毛藻も干拓事業の影響によって増加したと考えられるということを書くべきではないかということでございます。このうちラフィド藻につきましては、シャットネラに関して4章で貧酸素水塊の発生と底質からの栄養塩の溶出によるものという推測がなされていますけれども、渦鞭毛藻についてはまだ基本的な情報が得られていないということでございました。
 続きまして、また赤潮でございますけれども、63番目のコメントです。これは、まず水温上昇を第一要因に挙げるのはやはり疑問ではないかということで、そういうようなご意見がございました。それから、透明度の上昇というのが赤潮増加の一要因となっているのは事実だが、透明度の上昇というのが90年代後半に生じていて、その原因は諫干による潮流(巻き上げ)減少と明記すべきであるというようなことでございます。これにつきましては、まず水温上昇につきましては、1番目に書いておりますけれども、これが第一要因という定義はなされていないという認識でございます。水温上昇と赤潮増加につきましては、この中に記載がございますように、一致しない時期であるとか海域がございますので、水温上昇以外の要因というのも大きく影響している可能性がここでは指摘されてきております。それからあと、90年代以降の透明度上昇への諫早干拓による影響というのは明らかにされていないものと考えております。
 続きまして、コメントの64でございます。これも赤潮の発生でございますけれども、調整池を含む陸域からの影響に関するコメントでございます。モニタリングの調査により、諫早湾のDIN・DIPデータ、あとクロロフィルa、それから底質のCODデータを整理分析して、まず湾内環境の現状を正しく認識してから議論を始めていくべきだというようなご意見でございます。諫早湾の現状につきましては、既に評価委員会の方で整理したものが報告されておりまして、水質であるとか底質、あとベントスなどの経年変化が示されています。委員会報告におきましては、このうち底質のCODと硫化物の増加に注目して、貧酸素水塊と関連させて考察がなされていると理解しています。
 次のページですが、68でございますけれども、透明度の上昇のところでございます。透明度の上昇については、各海域とも90年代を通して透明度が上昇しまして、諫早締め切り以降横ばいになっているということで、まさに諫干に起因したM2分潮振幅の減少と逆相関を示しているということ。この透明度と浮泥の巻き上げとは深い関係があるということでございまして、90年代の透明度上昇の原因というのは諫干であるということを明記すべきというようなご意見でございました。これにつきましては、右側のティレ1にございますように、透明度の動向というのは海域により異なりまして、ご提示いただいた図については、少し前のページになりますけれども、13ページの別図というところでございます。各海域の透明度が示されていますけれども、これを見ればわかるように、透明度の動向というのは海域ごとによって異なるということから、この図から全海域において90年代に透明度が上がり、諫干締め切り後横ばいになったという判断は難しいのではないかということでございます。また、透明度と潮流との関係については、浮泥の巻き上がりを介して関係があるということは報告書には書いてございますけれども、その状況というのは当然海域により異なるということでございまして、この点は留意すべきということも報告書に記されております。
 次に、ご意見の69でございますけれども、77ページのところの記載でございます。環境と生物生産の中長期的な変化というところの記述でございますけれども、まず1つ目のご意見としては、諫干による変化というのが主に90年代後半に生じた流速、底質、貧酸素、赤潮、あとは透明度などさまざまなデータにより説明が可能ではないかということ。諫干が原因と明示・特定しないまま長期的要因を強調することにより、一定の妥協的総括がなされている印象を受けるというようなご意見がございました。90年代後半の変化というのは、諫干以外の有力な要因が示されていないことから、90年代後半の異変の根本原因は事実上諫干と指摘しているに等しいというご意見が1つ目でございました。また、2つ目のご意見としては、この報告書では、有明海の泥化であるとか貧酸素、赤潮増加の原因として潮流減少の関与を認めているということ。あと、過去の審議会であるとか農林水産省の委員会では、諫早湾以外の潮流変化を明確に指摘したものはないということから画期的な検討結果と言えるということ。ただし、潮流速の減少の原因というのが干拓による地形変化とされているが、問題とされている90年以降の有明海異変の原因というのが諫早干拓以外は考えられないではないかというご意見もございます。あと、同様なご意見もまた3つ目にございまして、諫早干拓の影響がやはり大きいことを明確にしない恣意的な報告書と言わざるを得ないというようなご意見がございました。これに対しまして、有明海の変化というものに対してはさまざまな要因が関与しておりまして、その中には当然干拓事業も含まれるというふうに考えます。しかしながら、有明海の環境変化というのは連続性を持っていまして、各要因の寄与度が十分把握されていない現状において、有明海全体の環境変化のうち、90年代以降に生じたすべての変化が諫早干拓のみに起因するというふうな判断はできないと考えるということでございます。
 続きまして、コメントの71番でございます。まず、78ページ以降への全般的なご意見でございますけれども、まず中長期開門調査に関するご意見が複数ございましたので、一つにまとめて記載しております。有明海異変の主たる要因というのは諫早干拓と診断できるので、その処方としては開門による潮流浄化力の回復が必要ではないかといったことで、開門を具体的再生方策に盛り込むべきというご意見が1点ございました。あとは、有明海の再生というのは早急に行うべきなので、メカニズムを解明して長期的な視点から検討するというような悠長な評価というのは許されないのではないかというようなこと。あとは、評価委員会というのは、ノリ第三者委員会が提案した中長期的開門調査を提案する責任があるということでございました。あと3点目といたしましては、諫早干拓に関する評価を避けているということ。有明海の海域環境、生態系は長期間にわたって変化してきたなどと意味のわからないことを言うべきではなく、最も疑わしい諫早干拓の影響を検証し、再生方策として中長期的開門を第一に取り上げるべきというご意見、複数ございましたので一つにまとめさせていただきました。
 これに対しては、これも前述のとおりでございまして、さまざまな要因が関与して、その寄与度は明らかではないというふうなことでございます。2点目として、中長期開門につきましては、調査実施により漁業被害が生じるおそれがあること、また、その成果が必ずしも明らかでないなどの行政的判断から、これにかわる方策として、要因解明に関する調査であるとか現地実証などが進められているというふうに認識しています。評価委員会では、こうした要因解明調査であるとか現地実証などを含めて、国・県が実施してきた調査結果に基づき、有明海・八代海全体の再生に係る評価を行うことを任務としておりまして、また、その評価委員会というのは、個別事業の評価を行うことは任務としていないというようなことでございまして、こういった点から、中長期開門調査を提案する責任が評価委員会にあるというご指摘は必ずしも妥当ではないと考えるということでございます。また、有明海が長期的に変化してきたということでございますけれども、これにつきましては、底質のコアサンプル分析などから、有明海が長期的に変貌してきたということについては一定の推測がなされているという認識でございます。諫早湾に関する記述がないというご意見でございますけれども、これにつきましては、委員会報告の中に諫早湾に関する検討結果を記載しておりますので、必ずしもそこは避けているというわけではないので、ご理解をいただきたいということでございます。
 続きまして、74番目のコメントでございますけれども、再生に当たっての環境管理の考え方。78ページの2番のところでございますけれども、この節で述べられているのが、自然現象というのは複雑で把握困難なので、さらに調査が必要ということであり、これでは再生方策は見つからず道筋は示されないのではないかというご意見でございました。これにつきましては、この部分では再生への取り組みに当たっての環境管理の一般的な考え方を整理しておりまして、効果的な再生方策を進めていく際には、モニタリングであるとか不足する分野の調査研究を進めていくことは必要ではないかというふうに考えております。
 次のページでございますけれども、76番目でございます。これも全般的なご意見でございますが、まず再生方策について列挙されているものについて、ノリ不作以降既に実施されてきたものが少なくないのではないかということ。この効果がどうだったかを検証することが評価委員会の役割の一つだったはずであるというご意見。あとは、これらの方策には莫大な税金の支出を伴うと想定されるが、むしろ海を守る漁業者への所得保障に回すべきではないかというようなご意見でございました。1点目につきましては、評価委員会の任務というのが、国、県が行う調査結果に基づいて検討を行うということで、再生に関する各事業を評価することは任務でないということはご理解いただきたいということでございます。あとは、所得保障のご意見ですけれども、こういった事柄の提言は評価委員会の権能になじまないものと考えるということでございます。
 それから、78番目のご意見ですが、具体的方策について幾つかご意見がございまして、覆砂については砂の確保が難しくて効果もないのではないかというようなご意見であるとか、あとは代替材の開発についてもかえって有害ではないかというようなご意見。あとは、しゅんせつであるとか耕耘なんかにつきましては、赤潮発生を促すような栄養塩などを海中にまいてしまうので有害ではないか。これについては委員会報告でも記されているということでございます。また、海水交流の改善につきましても、作澪を行うことによって、むしろ青潮を呼び込み有害ではないかというご意見がございました。あとは浮泥沈降の防止などに関する調査についても、これは無理だろうというようなご意見がございました。これにつきましては、再生方策については、当然事前に調査なり実証試験などを行った上で効果のあるものが実施されるべきものと考えております。この実施に際しては、2の再生に当たっての環境管理の考え方に留意しながら実施していくべきだというふうに考えております。
 それからあと、79でございますけれども、これも再生方策に関するご意見です。提案された方策というのが部分的であること、あと、ほとんどが調査であるということから、漁業衰退を防ぐにはほど遠いのではないかということ。いつ効果が出るのかというのもわからないし、困難な現状を解決する方策となり得ないのではないかというようなご意見でございましたが、ここで取り上げている調査というのは、覆砂による持続的な漁場造成に関連するような調査などを取り上げておりますので、効果的な再生施策の推進に関連した調査であると考えています。また、いつ効果があらわれるのかというご意見でございますけれども、有明海につきましては、先ほど申し上げたとおり長期的に変化しているというようなことから、その改善にも時間を要するものと考えるということでございます。
 次のページでございますけれども、82番でございます。貧酸素水塊に関することでございますけれども、これにつきましては、貧酸素水塊の防止の検討であるとかモニタリングについては、天然資源にはほとんど無意味でむだではないかというご意見です。貧酸素水塊につきましては、まだ大規模な防止策というのがないのは事実でございますけれども、局所的な漁業被害の防止を図りながら、有明海の海流資源の増養殖を図って、生物による浄化機能を向上させるということは有益ではないかということを考えております。なお、貧酸素水塊の発生モデルの構築と、あと発生防止のオプションの検討については、局所的な問題よりも、むしろ広域的な効果を意図した政策オプションの提示を目指しておりますので、この点については必ずしも局所的ではなく、全体的にも今後検討を進めていくということでございます。
 それから、83番目でございますけれども、貧酸素水塊については既に有明海で取り組んでいるということで、その効果が実証できるのではないかということ。この効果は部分的、一時的であるいう判断、お考えということでございました。効果の検証については追加してほしいというようなご意見がございました。これにつきましては、ご指摘のとおり、効果の検証というのは必要だと考えますので、この点については修正することといたしまして、資料4の方に修正内容を記してございます。
 それから、86番目でございます。これは具体的再生方策のうちのノリのところでございますけれども、高水温耐性品種であるとか、あとは耐病性の品種といった品種開発については、これは遺伝子組み換え以外では無理ではないか。遺伝子組み換えノリを食べること、あとはこれを開放系で栽培することの危険性・有害性に関する無知があるのではないかというご意見です。これにつきましては、遺伝子組み換えではなくて選抜育種などにより、ノリの生産性の安定に資するような品種改良を進めていくこととしているということでございます。
 あと、88番目のご意見ですけれども、食害生物の除去の問題です。これについては一時的な効果が見込まれるかもしれないけれども、特定の種を人為的に環境から排除することによって生態系を大きく攪乱する危険があるのではないかというご意見をいただいております。これにつきましては、ナルトビエイについては、駆除だけではなくて漁場への侵入を防止するような措置、くいを打つなどの措置がこの再生に含まれているということでございます。当然、ナルトビエイの防除などについては、生態系への影響に留意すべきというところでございまして、ナルトビエイ自体の調査も今後の課題と考えておりますし、また、箱には書いていませんけれども、混獲される希少生物への配慮についても委員会報告の中に記載されております。こういった対策をとりながら、二枚貝を中心とした底生生物の回復を徐々に図りながら、海域環境が少しでも改善に向かうように取り組みを進めていくべきではないかということでございます。
 14ページでございますけれども、まずコメントの91番でございます。取り組み体制でございますけれども、中長期開門を含むマスタープランの作成を早急に行うよう申し入れたということ。この課題というのが次期第三者機関にゆだねられることになってしまうのは残念であるが、今後はより迅速な対応を求めたいということでございます。これにつきましては、マスタープランの作成というのが今後の取り組みとして位置づけられておりまして、この効果的な調査の実施に向けて、この計画が策定されることを望んでいるということでございます。また、中長期開門に対する回答については前述のとおりでございます。
 それから、92番目でございますけれども、調整池内には植物プランクトンが存在せずアオコしか生息できない。こういった影響があるのではないかというようなご指摘でございます。このアオコにつきましては、調整池内やダム湖で見られる淡水産の植物プランクトンの一種でございまして、それが海域に流出した場合には速やかに死滅分解されるため、海域環境への影響はCODとして評価されております。なお、調整池からの負荷というのが、前述のとおり2%程度であったというようなことでございました。
 最後の93番目でございますけれども、モニタリングの継続強化には賛成であるが、水門を閉めたままでは意味がない。水門の開放であるとか堤防開削、撤去の過程をモニタリングすべきであるというようなご意見でございました。あとは潮流の調査が諫早湾周辺でしか行われていないので、調査ポイントを有明海各地に広げるとともに、重要な地点についてはADCPを設置して常時観測を行うべきであるというようなことでございます。特にあと、鉛直プロファイルの観測については熊本県立大でしか行われていないということで、国や県でも観測体制を整えるべきではないかというご意見をいただいております。これにつきましては、中長期開門に対する回答は前述のとおりでございます。あと、ご指摘いただいたような潮流・潮汐の観測であるとか、あと情報の蓄積については今後の課題ということで、委員会報告の中にも記載されております。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうも坂本補佐、的確にご説明をいただきましてありがとうございました。
 ただいまはパブリックコメント、23の団体と個人からということでよろしいですね。それについて重要な部分について、その内容と考え方について説明をいただきました。これからは先生方のご質問、あるいはご意見を伺いたいと思います。どうぞお願いいたします。
 よろしいですか。じゃ、どうぞ。小松先生から。

○小松委員 幾つかご質問させていただきます。

○須藤委員長 どうぞ。たくさんあるんでしたら、真ん中ぐらいでちょっと中断してくださいね。答えていただきますから。

○小松委員 まずナンバー2のこれ、意味がよく私はわからなかったんですが、2,900ヘクタールが諫早湾内の干潟面積で、1,550ヘクタールが締め切りで失った干潟面積というのが、この意味がよくわからなかったんですけれど。諫早湾内に2,900ヘクタール干潟があったんですか。

○須藤委員長 1,550でいいんですよね。そこは1,550でしょう。湾内ね。湾内の干潟。締め切りじゃなくて──が2,900。

○小松委員 締め切りによって奥部の干潟が消失したわけなんですが、奥部以外にそんなに干潟があるんですか。

○閉鎖性海域対策室長補佐 諫早の南側の方に若干あると聞いていますし、あと、農水省と環境省の方でそれぞれ干潟の測定というか、定義ですかね。若干違うことも影響しているのかと考えていますけれども、この1,550というのは環境省の方の定義で求めた干潟面積。締め切りの中の面積でございます。

○小松委員 1,550はいいんですけれども、2,900というのがちょっとよくわからない。

○須藤委員長 相当ほかに多いという、先生のご指摘は、そんなにないんじゃないかというのが質問ですね。

○小松委員 ええ、そういうことです。

○須藤委員長 わかりました。それが1点。

○小松委員 それから、質問の15番に対する回答なんですが、実測とシミュレーションの違いについてなんですけれども、その回答について「実測についても、当日の気象海象条件により影響を受ける可能性がある」という、このコメントがちょっと適切じゃない。というのは、西ノ首先生の観測というのは、この気象海象条件が異なるという影響を避けるために30日間やっていて、そしてもちろん気象条件等も比較して大きな差はないということを明記していますので、だから、このコメントは適切じゃないですね。

○須藤委員長 コメントというか、回答の方が問題ですね。例えば先生としては、ここをどういうふうにされたらよろしいですか。

○小松委員 私だったら、もっと実測を取り上げてほしいという意見ですので、こういう回答にはならないですね。

○須藤委員長 実測データと余り違い過ぎるので、現状を再現できているとは言えない。わかりました。

○小松委員 それからあと、この本文の80ページの(3)のポツの1番目なんですが、今後解明すべき課題のところで潮流・潮汐のところなんですが、最初の1番目の「有明海・八代海の環境に影響する外海及び内海の潮位観測」となっているんですけれども、これは「潮位・潮流観測」としていただきたい。というのは、潮流の観測を行うということは、もうこの後、出てこないんですね。あとはシミュレーションの精度向上、それから底質環境等への影響の検討ということで、潮流の観測は入ってこないので、ここに是非入れていただきたいということです。

○須藤委員長 「潮位・潮流」でよろしいんですか。

○小松委員 「潮位・潮流」で結構です。以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 そこは事務局、どうでしょうか。今のところ、3点先生からご質問いただいたので、それはちょっと検討は必要かもしれませんけれども、干潟の大きさと、その次の実測のところは、ちょっと後でまた検討する必要があるかな。

○閉鎖性海域対策室長補佐 そうですね。いずれにしろ、この2,900という数字については、委員会報告自体にはもう載りませんので、どういった根拠か、そこは後でご回答するような形にさせていただきたいと思いますが。

○須藤委員長 それが、コメントの、先生が実測をもっと大事にすべきだという点のところについての話は、この本文とは直接関係がないので、この回答の部分はちょっと検討させていただいて、先生のご意見をいただきたいというふうに承知したいと思います。
 あと、ほかの先生はいかがでございましょうか。いかがでございましょう。ほとんど先生方、ごらんになっていただいていると思いますので、一応今日が最後。一応この報告書のことについては最後のご意見をいただく委員会でございますので。
 じゃ、どうぞ。滝川先生。

○滝川委員 72ページの上から4行目あたりに増加率1045%と書いてありますね。これ、ぱっと見たときに透明度の増加率がこんなに上がるのかなという誤解を招きますので、何か適当なタイトルを考えていただけるとありがたい。プランクトンの増殖率ですよね。

○須藤委員長 透明度の……。

○滝川委員 透明度が1045%という上がり方というのが変な……。

○須藤委員長 1週間後の。ここのタイトルの表現がおかしいですね。ここは直した方がよろしいですね。

○閉鎖性海域対策室長補佐 すみません。この増加率については、プランクトンの増加率です。

○滝川委員 そうですね。だから、増加率というのは、このまま見ちゃうと、この表だと透明度増加率と読み違えるので、ちょっとそこだけ極端に気になりました。

○須藤委員長 わかりました。そうですよね。わかりました。
 ほかはいかがでしょうか。先ほどの小松先生のと滝川先生の部分は、字句を修正をするということにしましょう。ほかはよろしいですか。
 どうぞ、相生先生。

○相生委員 ナンバー72のご意見の内容のところに、「希少種生物も含む有明海生態系を持続可能なものとすべく」とありますね。これに対しての答えなんですが、数値目標とか達成時期については不確定要素が大きいことから、設定は難しいと考えるという非常に冷たい回答なんですが、これは私もここの委員会の内容で常々思っていた。水産有用魚介類に関しては、かなりこの報告書の中に詰められているんですが、要するに有用魚種とか魚介類でない場合の動植物に関して全く取り上げられてこなかったわけです。それが抜けているというのは、この委員会の報告の欠点だと私は思っているわけです。

○須藤委員長 そこは前回も指摘されましたね。特に楠田先生から言われましたね。

○相生委員 それで、この将来の再生計画の中に、やはり有明海で絶滅してしまった動植物、それから、今絶滅危惧種とされている、ここの委員会の性格上難しい部分ではあるんですが、将来の、要するに有明海の全体像を見ていく上で、それを含めた調査なりモニタリングというものを再生計画の中に盛り込む必要があると思うんです。そういうふうな回答に直していただけないかなと思います。

○須藤委員長 わかりました。こちらの文章の中には、私の記憶だと、後で坂本補佐から言っていただきますが、今の先生のお話は入っているんですが、ここの回答のところは、ちょっとそれを適切に受けていないかもしれませんので、ちょっと私が先に答えちゃうとよくないんですが、坂本補佐、どうですか。中に入っていますよね。今のお話は入っていますよね。

○環境省閉鎖性海域対策室長 ちょっと回答のところが適切じゃなかったと思いますけれども、一つは、考え方としては、この再生目標の1番の方で、有明海・八代海では非常に特異な生態系があるということで、これは当然水産有用種だけじゃなくて、そういう希少種等も含んでおります。そういうものを保全・回復するということが目標になりますよということで、先生のご指摘のような考え方が入っているのではないかと思います。それから、具体的には81ページのモニタリングのところで、これは前回、たしか楠田委員のご指摘もありまして、非漁業資源生物というようなものもきちんとモニタリングしていく必要があるんじゃないかということで、そういうものを特記させていただいていますので、こういうところをむしろ回答のところでご説明した方がよろしいのかなというふうに思っております。

○須藤委員長 その回答の部分は多分変えた方がいいと思いますので、先生のご指摘のさっきのところは、今のところ、もう一度ご一読いただければありがたいと思いますので。前回も楠田先生がおっしゃっていただいたので、それは入っていると思います。
 じゃ、どうぞ。菊池先生。

○菊池委員 直接水産とか、そういうものにかかわらないけれども貴重な生き物というのは、今の環境省調査、あるいは今、農水省も沿岸の干潟を全部やっていますし、それから文部科学省で今、物すごいベントスの調査をやっています。それから国土交通省もやっているわけです。問題は、あとはどの程度の分類の精度が期待できるかというところで、今、九大の臨海実験所で受け持っている有明海のベントスに関しては続々新種が出ています。これは、とにかく日本じゅうのそれぞれの分野の中年以下の元気のいい人たちに、これは今までに知られている種なのかどうかというのをチェックを全部してもらっているようです。
 それから、前にこの委員会の話題にはならなかったんですけれども、私がおまけにつけたので、そういう希少種、絶滅危惧種みたいなものの現状というもののマップをつくって、それにどことどこで何が見つかったというものの青い丸やら赤い丸やらをつけたもの、有明海・八代海にかけて、これは私自身のというよりは、熊本中心のそういう海岸動物、ベントスをやっている人たちの情報を全部集めて、ですから、オオシャミセンガイのように、非常に貴重だけれども20年前だったら何遍か行けばとれたものが、今は1年間の調査で1匹見つかったらよかった、よかったというような状態ですけれども、でも、とにかく調査ポイントがふえたので、各省庁のデータが皆同定をきちんとしていれば、現状というものは今まで集まっているサンプルからでもかなり補充はできるんだと思います。
 ですから、むしろこれは漁民の方々とか、沿岸のいろいろな海に依存してやっていらっしゃる方々の生活というのが、やはり一番大きな問題としてやられていたので、今私が申し上げたようなのは、ほかの目的の調査の中でもこんな珍しい種類が残っていたよというのは、まだ私も全然書いておりませんし、それから、大体そういういろいろな省庁なり人の各研究で得たデータを私が先に書いてしまうわけにはいかないので、まだ寝ている部分がたくさんございますけれども、有明海などについては、かなり今、資料はたまりつつあると思います。

○須藤委員長 どうもありがとうございます。そうしますと、新種ですから、今まで記載されていないのが結構相当見つかっているんですね。何割だかわかりませんけれども、そんなようなぐあいで考えてよろしいんですね。一、二ではないんですね。わかりました。
 それで、今おっしゃったように、いろいろな省庁で調査しているのを私も承知していますので、これは今後、やはりそれを整理して、生態系の変化なり、それから今後の展望なりをしていくことが必要だと思います。それはどうぞお願いします。よろしいですか。
 そうしたら、ちょっと時間が余裕があります。これでこの委員会としては最後でございますので、一言ずつぐらい、ご感想なり再生に向けてのメッセージなり、余り長くあれするといけませんので、1人1分ぐらいずつでマイクを回していただけますか。
 相生先生からどうぞ。先ほどおっしゃっていただいたんですけれども、もう一回、じゃ、どうぞお願いします。

○相生委員 私、やはり有明海というのは、初めてほんの上っつらだけ見させていただいたような気がしています。何か人間がかかわっていく海としては、本当に貴重な海だなという印象を持ちました。それで、やはり私は、藻場造成とか、そういった問題にも今ちょっと──造成という言葉は大嫌いで、絶対に今後使いたくないと思っています。再生なら可能だというふうに、ですから、そういう点を踏まえまして、自然を侮らない、自然を人間がつくろうなんていうことはできないんだということを胆に銘じて今後ともかかわっていきたいと思います。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 荒牧先生には、小委員長として9回でございますか、意見を取りまとめいただきありがとうございました。どうぞ、お願いします。

○荒牧委員 今、有明海に関する研究者の論文類が膨大な量出てきていると思います。それをだれかが、小委員会がやったような作業をどなたかがきちんとやっていただいて、評価までいかなくてもいいけれども、それをデータベースとしてきちんと研究者間で利用できるような形にしていただくだけでも、相当大きな有益なものが得られるんではないかと思いますので、我々がやった作業、小委員会のメンバーの人たちに読んでいただくというところまでいかなくてもいいと思いますから、その作業をやっていただけるようなシステムはぜひ持続していただいて、それを公表していただけるということであれば、今後の非常に大きな益があるのではないかと思います。
 それから私も、相生先生がおっしゃったように、再生目標の1番に掲げられた項目が少しやはり記述として希薄なような気がします。有明湾奥部に住む佐賀大学の人間としては、結局そこがないと、有明海のところで漁業だけではなくて、そういうふうな非常に稀有な生態系をどうやって調査し守るかということの視点がないと、やはり有明海らしさが消えてなくなってしまうんじゃないかという感想を持っています。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 じゃ、伊藤先生、どうぞ。

○伊藤委員 全体的な話も含めまして、この報告書といいますか、取りまとめができるまでに、やはりかなりの時間がかかったと思います。ただ、ここの中で問題点が整理されて、第5章に再生への取り組みという形でそれぞれ項目が掲げられて整理ができたと思っております。今後有明海で生活されている漁業者の方たちが生活していけるということが、やはり私の観点からすれば再生のキーポイントだと思っておりますので、一日も早い実効ある取り組みといいますか、再生に向けた取り組みを早く進めていただきたいというふうに感じております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 大和田先生。大和田先生には、八代海のデータがない中でいろいろご検討いただきましてどうもありがとうございました。どうぞお願いします。

○大和田委員 私は、ずっと八代海のことばかり言ってきたんですが、まだまだ関心を持ってもらえない。例えば、今回のパブリックコメントも、一個もご意見がないということを非常に寂しいことだなと感じました。ただ、その中で43ページのような──42ページと比べると余りたくさん線が入っていませんが、前回も申し上げましたが、八代海の場合は、この状態をこれからこれより悪くしない。これが非常に大事なことだと思うんですね。
 それともう一つは、81ページに八代海における調査研究の強化、こういう項目を入れていただいた。これを本当に実行していただきたい。我々も八代海の再生ということには一生懸命汗をかきながらやっております。ぜひお願いしたい。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 岡田先生。岡田先生には要因解析の中心になっていただいて大変ありがとうございました。どうぞお願いします。

○岡田委員 全体、最終的な案になりましたが、やはりまだわからないこと、unknownというか、それから意見が相違することがたくさんまだ残っているというふうに思います。それと、前回も申し上げましたが、そういうことからして、きちんとした目標を定量的に定めるにはやはり至っていない。しかし一方では、先ほどからご意見がございましたように、たくさんのデータが今集まりつつあるわけですね。モニタリングも進行しているわけです。そういう意味で、これで出たから終わりということには絶対ならないでいただきたい。順応的管理ということもどこかに出てくるようですが、やはりいろいろなデータが集まり、いろいろなことがわかってくる。そういう中で何が重要かというのも、これからもう少し明快になってくると思いますから、そういうことを踏まえて、まさに順応的に再生の方策をどんどん確定していく、進めていくということが望ましいというか、ありがたいというふうに思います。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 菊池先生、どうぞお願いいたします。

○菊池委員 ちょうど、今の80ページ、81ページのところを開けて眺めておりましたんですけれども、もちろんみんな一生懸命やったとは思うんですが、外から見たら足りないことはたくさんあるだろうと、それは私もそう思います。そして、その次の問題として、一応今までに集められるだけの資料を集めたとして、それから一歩踏み出して、海の、あるいは漁業の再生何々ということについて、今度はどこが責任を持ってどうやるのか。それは実際に動き出してやることになったら、学者はアドバイスはできても、実際に人とお金を投じて海を改善するというのはかなり厳しい重たいことで、それは関係各省庁のおやりになることだと思います。
 この前まで私、熊本県の中の沿岸再生という、前に一遍こちらでも熊本県の担当の方からお話がありましたが、一応それはできたんだけれども、やはりこのぐらいの報告書ができて、いつから、じゃ、だれが何を始めるのかというところで、やはりお金と人と、大体海のことだったら漁師さんが自分で改善するのかといったら、そんなのはどだい自分らが食べるので精いっぱいだからまずできないだろうと思います。じゃ、それを一体だれがやるのかという、一番これからどこに重点を置くかということと同時に、だれがどういう枠の予算でそれに取り組むのかという、非常に難しい問題はまだ全く手つかずで残っているということだけ申し上げたいと思います。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 じゃ、楠田先生、どうぞお願いいたします。

○楠田委員 この委員会での議論を通しまして、有明海の科学的な理解がかなり進んだんではないかというふうに思います。報告書としては科学的な厳密性を極めて保持したものになっているように感じています。ただ一方で、有明海の問題を解決できるような方向に向かったかというと、必ずしもそうではなさそうだなという忸怩たるものがあります。それで、科学的現象の解明と環境問題の解決というのは、方法論が違うというのを改めて認識いたしました。
 今、菊池先生もおっしゃられたんですが、この最後の報告書のまとめのところに取り組みの体制とか調査研究の総合的推進というのが書かれているんですけれども、文言はそのとおりなんですけれども、例えば有用生物でないものの調査というのを、どの政府機関が予算をとって実施できるかということになりますと、制度上の担保がない部分がかなりあるわけですよね。大学の先生が研究費を持って調べる分は可能。そういう制度上の担保のないところに対して、こうすることが望ましいということをこの場で提言申し上げても、実際にはフィージビリティーはそんなに高くないんではないかというふうなところに関しまして、もう少し突っ込んだ議論とか工夫が必要だったなという感じはいたします。
 以上です。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 小松先生、どうぞ。

○小松委員 有明海・八代海というのは、今後の日本の内湾域・沿岸域の行く末を示しているという意味で、有明海が今後どうなっていくかというのは極めて大事だというふうに考えています。それから、今まで有明を議論する公的な場というのは、多分この委員会だけだったと思うんですね。これが今日一応最後ということで、今後こういう公的な場がなくなるということに非常に危惧を抱いています。その辺は、何かやはり公的に議論をする公的な場が必要だなというふうに思っています。
 また、この委員会、それから有明海にかかわってきた者として本当に責任を果たしたのかなという不安な気持ちを抱いています。20年後、30年後には、今回の我々のかかわりに対する評価が出てくると思いますけれども、後世の人に笑われたり批判されたりしないように、今後も全力を尽くしていきたいというふうに思っています。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。このままで継承するかどうかはともかくとして、こういう議論の場といいますか、これはこの評価委員会の名前が変わるかどうかはともかくとして、まずは来年度も──この委員会はもう一年あるんですよね。

○環境省閉鎖性海域対策室長 任期は2月でございます。

○須藤委員長 ですから、すみません。私もクリアではないんですが、もう少し議論はできる場は何らかの形で、もちろん今お約束はできませんけれども、事務局とよく相談して進めたいと思います。
 それでは、三本菅先生、どうぞお願いします。

○三本菅委員 パブリックコメントにも栄養塩の枯渇のご意見がありました。ノリの生産、それから魚介類の生産というのは、基本的に有明海の生物生産力に依存しておりますので、再生とか浄化に当たっては、有明海の適正な生産力の維持に十分配慮する必要があると考えております。
 それから、原因の究明、それから機構等が随分ここで議論されましたけれども、これからどういう技術でどういうことをやって水産の振興を図っていくかにつながるのではないかと、このように考えております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは滝川先生、どうぞお願いします。

○滝川委員 この評価委員として、いろいろな有明海・八代海に関するこれまでの調査研究等々をもとにして、この報告書というのをつくっていただいたんですけれども、一般的なといいますか、全体論としてはよくまとまっているのかな──現状でですが──というふうな印象を持っております。ただし、再生へ向けてどれだけ提言できているかというのが、やはりほかの先生方もおっしゃったとおりだというふうに思っています。一般論としての再生方策はこういう方向性かなと思うんですが、前回も申し上げましたように、本当に真の意味で有明海及び八代海を──あえて申し上げますが、再生へつなげていくためには、もっときめ細かなといいますか、現地現地に対応したような対策を立てていかないと、これは成立しない。そういった意味で、私、先んじてではないんですが、凡例があればというふうな気持ちがありまして、熊本県の方では熊本県における個々の地域地域の特性を生かしながらというふうな検討の方向というか、そういう方向性を差し示していただいたというふうに思っています。
 ですから、実際にこれをどう動かしていくのかというのは、もっときめ細かな現地に対したような再生の方策を議論していかなければいけないし、それをやっていくためには継続的な委員会──委員会よりももっと下の下部のレベルだと思うんですが、実働的な検討というのをやはり進めていかなければいけない。そのためには、現在いろいろな調査研究の研究者、あるいはいろいろな機関で進められておりますので、そういったものを常時取り入れながら、単一的な方法じゃなくて複合的な再生策になるんだと思いますが、そういったものをやはり議論して、持続的な再生というのをやはり目指していきたい。私もそういったことで貢献できれば、ぜひ貢献していきたいというふうに思っております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それじゃ、原先生、どうぞお願いいたします。

○原委員 2つだけ申し上げたいと思います。
 1つは、今回の科学的データに基づいて物をつくっていこうと、こういう考え方であったわけでございますけれども、こういうものをやるときのデータのあり場所といいましょうか、そういうものがなかなか見つからない。特に水産の場合にはないというものが非常に多いわけでございまして、有明海のどこかにデータセンター的なものをつくる、あるいはこのデータセンター的機能をどこかに持たせる。そこに行けば全部わかると、こういうようなものをおつくりいただけると非常にいいなというふうに私は思っております。こういうものが閉鎖性水域、東京湾、あるいは伊勢湾、あるいは大阪湾、瀬戸内海、こういうようなもので、そういうのが個々にそこに行けば全部見られるよと、こういうようなものをつくっていただけるとうれしいなと思ったことが1点目でございます。
 それから2点目でございます。有明海というと水産業の中ではノリだけが特筆的に物を言われてしまって、ノリがとれればいいと、こういうふうに考える方もあるようでございますけれども、実際に有明海の生物の多様性と、こういうものからいくと、ノリだけがとれるという世界は私は間違っているんではないか、こういうふうに思っているわけでございます。今度の報告の中でも、特に貝類、タイラギ、アサリ、あるいはサルボウ等が取り上げられておりますけれども、やはりノリのひとり勝ちの世界をつくらないようにした方が、どうも私はいいんではないかというような感じを持っております。
 それで、やはりこのごろ気になることは、漁業者が将来にわたって希望を持っていないんではないかと、こういうような言動が見られますので、ここに取り上げられて提言されておりますような施策を一日も早く実効のあるものにしていただいて、やはり将来に夢のある漁業というものをつくっていただきたいというふうに思った次第でございます。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 細川先生。細川先生には、岡田先生とご一緒に要因の解析をお引き受けいただきまして、どうもありがとうございました。お願いいたします。

○細川委員 そうしましたら、要因の解析作業をした経験の上で1つコメントさせていただきます。
 パブリックコメントに対する考え方で、事務局の方からいろいろご説明があったんですが、多くが、例えば各要因の寄与度が不明であるというようなことで、まだまだわかりませんというふうな言い方をされています。これはこのとおりなんですけれども、いろいろな作業をする中で、あるいは潮流・潮汐の検討をする中で気がついたのは、湾全体の議論では荒っぽ過ぎて、季節により、場所により、いろいろ環境の応答性が違ってきているという点です。各要因の寄与度が不明です、じゃ、どうするんですかというような議論のときに、各要因の寄与度は場所とか時期によっても異なりますねということを踏まえておかないといけないんではないでしょうか。そうしますと、先ほど来再生に向けての対策のご紹介がありますけれども、特に各省庁がいろいろなメニューについて現場で調査されるというようなときには、いろいろなメニューがある場所でうまくいったり、ある時期でうまくいったり、ある時期でうまくいかなかったりということは十分考えられることだと思います。つまり、いろいろな要因に対する環境の応答が場所ごと、季節ごとに違うんだというようなことを踏まえて、対策についての調査をしていただきたい。調査をしたら、あることをやったらうまくいった、うまくいかなかったという判定だけではなくて、それがうまくいったり、うまくいかなかったりということが議論評価できるように物理の現象とか水質の現象とかもあわせて丁寧にはかっていただきたい。対症療法的な試みをしつつも地域的な応答性について展望するような、そういうような調査、試みにつなげてほしいと思います。各省庁が今後実施されるいろいろな調査については、うまくいった、うまくいかなかったという点だけにこだわらずに、きちんと調査してほしいと思います。

○須藤委員長 その効果とか、そういう判断をするためにですね。そういう意味ですね。やっただけじゃなくてという意味ですね。

○細川委員 いろいろな影響要因、特に物理要因についてもあわせて丁寧に調べていただきたい。

○須藤委員長 各省庁の事業についてですね。わかりました。これは大事なことだと思います。それはどこでやるかというのは、またこれはさっきの話のあれになりますので、後でまた環境省の方からお話をいただくと思いますが、このような委員会でやるのかどうかというのは、また今後の問題だと思いますが、それはやらなくちゃいけないということについての細川先生のご意見はよくわかりました。
 ということで、一通りご意見を伺いましたが、環境省の方で何か今のご意見──ご意見というよりも感想なんですが、それについてのあれがございますか。なければもうまとめてまいりますが。

○閉鎖性海域対策室長補佐 ちょっと字句的なもので補足を……。

○須藤委員長 じゃ、どうぞ。今の13人の先生からいろいろいただいた……。

○閉鎖性海域対策室長補佐 報告書の中で1点説明漏れがございましたので、ここでちょっと、申しわけありませんが説明させていただきます。
 53ページのところでございます。魚類の減少のところでございますけれども、この中の図の4.3.17というところで、ヒラメ、ニベグチ類、カレイ類、クルマエビ類、ウシノシタ類の漁獲量の経年変化のグラフがございますけれども、これにつきましては、出典としてはあくまで水産グループによる作成資料ということでございまして、農林水産統計をそのまま写してきているものということではございません。その点につきましてちょっと説明が漏れていましたので、一応その確認のためご説明させていただきました。

○須藤委員長 それだけでよろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、パブリックコメントの方の、要するに回答の方ですが、意見に対する考え方の方で大幅に修正するという部分はないと思いますが、二、三、ただいま小松先生からも、もう少し実測を大切にした方がいいというような表現が必要ではないかというようなこともありましたので、その部分についてはもう一度検討させていただいて、最終の報告については、そんなに大きなことではございませんので、委員長である私にご一任を願いたいと思います。
 ということで、それから、さっきのパブリックコメントのこともございますので、次に委員会報告の取りまとめを行いたいと思います。事務局の方で資料4としてパブリックコメントを踏まえた修正案を用意していただいています。この案のとおりでよろしいんですが、委員会報告を取りまとめたいと思いますが、もしも──細かい修正が先ほどもありましたよね。それは修正いたします。先ほど二、三、字句が中心ですがやりますが、それは含めての話です。まずは資料4をご説明ください。いいですか。もうこれでいいんですか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 先ほど一緒にご説明しましたので。

○須藤委員長 一緒に説明しましたね。ごめんなさい。先ほどご説明していただきましたので、ごめんなさい。そうしたら資料4で、さらに追加は先ほど2点あったかな、3点あったかな。字句の修正はございますので、それは修正するということでございます。何かさらによろしゅうございましょうか、これも取りまとめて。
 それでは、このとおり、今の修正を含めて、修正部分は一応委員長にご一任いただくということで、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 じゃ、一応賛成を得られたということで、そのようにさせていただきます。ありがとうございました。
 それでは、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律第25条におきまして、委員会の所掌事務として有明海及び八代海の再生に係る評価を行うとともに、主務大臣──これはご存じのとおり主務大臣等がいらっしゃる。それから関係6県もあるわけですね──の意見を述べることとされております。したがいまして、本日取りまとめていただきました委員会報告につきましては、しかるべき主務大臣、関係6県に提出したいと考えております。事務局から今後の手続についてご説明ください。

○環境省閉鎖性海域対策室長 ただいま委員長からご説明のありました件でございますけれども、有明海・八代海特別措置法におきまして主務大臣等というものが定められておりまして、主務大臣等にこの評価委員会として意見を言うということになってございます。この主務大臣といたしましては6大臣、総務大臣、文部科学大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣及び環境大臣でございます。それから、関係県といたしましては、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、鹿児島県が法律で規定されています。それから、関係行政機関ということで、これは法律で決めているわけではございませんけれども、厚生労働大臣と財務大臣がこれに該当するということになってございます。したがいまして、今日の取りまとめいただいたものを踏まえまして、若干資料の修正がございますので早急に資料を準備いたしまして、明日、21日付で今申し上げました主務大臣等に、須藤委員長のお名前の文書によりまして、この委員会報告を提出をさせていただくということにさせていただきたいと思っております。なお、環境大臣につきましては、あした須藤委員長から直接環境大臣にこの報告書をお渡しいただくようにお願いしたいと思っております。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。では、事務局で今おっしゃっていただいたような手配をぜひお願いしたいと思います。
 平成15年2月以来、26回やらせていただきましたが、委員会が開催されまして、委員の皆様には大変なご尽力を賜りました。また、小委員会は先ほど申し上げましたが、7回開かれたかと存じますが、荒牧先生を初め12人の先生方にも大変なご尽力をいただきました。主務大臣、関係県におかれましては、委員会報告の提言を踏まえ、今後とも有明海・八代海の再生に向けた取り組みを推進していただきたいと思います。
 私が全体的に受けた印象では、やっとこの報告書で有明海の再生の緒についたと、こういう感じがするわけでございまして、再生についてはこれからが始まりであるという印象を持ちました。あすは私の方からも環境大臣に直接お目にかかりますので、再生に向けた取り組みについてきちんとお願いをしたいと、こういうふうに考えております。
 それでは、以上で本日の審議を終えたいとは思いますが、最後に寺田審議官からごあいさつをお願いしたいと思います。

○水・大気環境局審議官 まずは、年末の大変お忙しいときにお集まりいただきまして、本日、報告書をお取りまとめいただきまして大変ありがたい、感謝申し上げたいというふうに思っております。また、本日というだけではございませんで、平成15年2月からでございましたか、おおむねほぼ4年にわたる長期にわたりまして、この委員会だけでも26回、小委員会、あるいは作業グループ、膨大な作業をお願いし、あるいは個別にそれぞれの先生方にもいろいろなご指導を賜り、そうした結果として本日の取りまとめに至ったわけでございまして、この長い期間にわたるさまざまなご検討、あるいはご指導に感謝を申し上げたいということがまず第1番でございます。
 先ほど来、事務方からも、あるいは須藤委員長からもお話がございましたけれども、この委員会、特別措置法25条に基づきまして、付則3項、これも特措法の付則でございますけれども、有明・八代の特措法が5年以内に法律の見直しをすると、その見直しのための提言をすると、こういうふうな任務があるということでございます。お取りまとめいただきましたものを、先ほど来須藤委員長からもお話がございましたけれども、主務大臣等に提言をお届けさせていただきまして、ぜひこれを生かしていきたいというふうに思うわけでございます。
 なお、検討すべき点は非常に多いということを本日もさまざまお伺いいたしました。ただ、先生方のご尽力によりまして、これまでいろいろな分野の何か点であったり線であったりしたような個別の検討結果、あるいは検討課題というものが、何か有明・八代の全体につきまして立体的な姿が少し描けたのではないかなというふうに思っております。特に私ども環境省的に言いますと、今まで内海・内湾の環境保全というのは、何かCODがどのぐらい入ってくるんだとか、どのぐらい削減したらいいのか、あるいは、せいぜい栄養塩のリン、窒素の流入がどうしたこうしたということにとまっていたような気もいたしますけれども、この検討会ではそういうことにとどまらず、本当に生態系の構造と申しますか、あるいは潮汐・潮流の問題でございますとか、いろいろな今まで我々が余り考えたこともなかったようなことの解析にも踏み込んでいただけたというふうに思っております。報告書にございますけれども、この有明・八代に限らず、我が国の沿岸域の環境というのはなかなか難しい問題を今はらんでいるかと存じますので、この検討自身、有明・八代のみならず、今後の我が国の沿岸域保全の問題について一石を投じていただけたのかなという感想は持っているところでございます。
 もちろん先ほど申しましたように、本日もご指摘賜ったように、いろいろな議論は残されております。調査も残されております。先ほど申しましたように、この委員会自身が特措法に基づく委員会という、非常に高い立場の委員会であり、その特措法自身が、実はこれが議員立法でできたという経緯がございます。したがいまして、この委員会をこれからどうするのかというのは、我々行政サイドで考えるだけではなくて、恐らくより高い政治のレベルでのご判断というのもあるのであろうと、特措法全体の見直しの中でそういう議論があるのであろうというふうに思っております。したがいまして、ここでこの委員会をこれからどうするかというのは、到底私の今お約束できる話ではございませんけれども、ただ、この報告書の中で明らかにされたように、今後もやるべきことが多いということは、これは明々白々、関係大臣に提案されるわけでございますので、恐らくは議論も、そして何らかの形でこのような場も継続するということになるのであろうというふうに思っております。
 さらに言いますと、本日、実は来年度予算の政府原案内示でございますけれども、そろそろ来ているんだろうと思いますけれども、環境省におきましても積み残された課題についての検討経費というのを来年度予算で要求しております。これは満額かどうかは知りませんけれども、恐らくついて今日ぐらいに返ってくるんだろうと期待しております。そういう意味では、私ども自身も積み残された課題についての調査研究を続けてまいりたいというふうには考えておりますし、そのためのさまざまなボディーというものも環境省みずからつくっていくことになるのかもしれません。そういった意味で、改めてこの長期にわたるご協力、ご鞭撻、ご指導に感謝をいたしますとともに、今後のさらなるご協力をお願いするということで、私の感謝の言葉とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

○須藤委員長 寺田審議官、どうもごあいさつありがとうございました。
 最後に事務局から何か連絡がございますでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 ありがとうございました。事務的な件でございますけれども、実はこの委員会の委員の皆様方の任期は2年ということで、来年の2月8日で切れてしまうということになります。先ほど審議官のごあいさつにもございましたように、法律上の位置づけ等は今後検討されますけれども、事務的には、この体制を維持する必要があると思っていますので、いずれにしても近く改選の手続、検討に入りたいと思っています。これにつきましては、関係省庁とも相談の上、また個別に先生方にご連絡、ご相談させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 これで本日の議題はすべて終了させていただきました。
 これにて第26回有明海・八代海総合調査委員会を閉会とさせていただきます。
 議事進行に係る皆様のご協力に心からお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。お疲れさまでございました。

午前11時53分 閉会