第21回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成 18 年 6 月 29 日 ( 木 ) 13:30 ~ 16:30

2.場所

経済産業省別館 1014 会議室 (10 階 )

3.出席者

委員長;須藤隆一委員長

委員;荒牧軍治委員、大和田紘一委員、岡田光正委員、楠田哲也委員、小松利光委員、 三本菅善昭委員、滝川清委員、原武史委員、本城凡夫委員、山田真知子委員、 山本智子委員

臨時委員;菊池泰二委員

主務省・関係県発表者;農林水産省農村振興局企画部資源課室長、熊本県農林水産政策課参事

事務局;環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、 水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午後1時30分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 本日はお暑い中をご出席を賜りましてありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまから第21回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
  本日は、中田委員、山口委員、伊藤委員、清野委員、相生委員、森下委員、細川委員、福岡委員、欠席の方、ちょっと多いのでございますけれども、13名の委員にご出席をいただいておりますので定足数を満たしております。
  議事の前に、資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第の裏をめくっていただきますと資料一覧がございますけれども、資料1としまして名簿、資料2-1といたしまして問題点と原因・要因との関連について、2-2といたしまして、アサリ・タイラギに関する知見の整理、資料3-1といたしまして文献リスト一覧表、3-2といたしまして、文献シート、この3-1と3-2につきましては非常に大部でございますので、省資源の観点から委員のみ配付させていただいております。この資料につきましては、委員会終了後、速やかにホームページで公開いたしますので、それを参照していただきたいと思います。それから、資料4-1といたしまして環境変化の仕組の更なる解明のための調査、4-2といたしまして、熊本県の資料。それから一覧表には載っておりませんが、参考資料といたしまして、A4横でございますけれども、問題点と原因・要因との関連についての指摘事項という資料がございます。
  資料は以上でございますので、不足がありましたらお申し出いただきたいと思います。
  それでは、今後の進行につきましては須藤先生にお願いを申し上げます。

○須藤委員長 かしこまりました。
  それでは、ただいまから第21回有明海・八代海総合調査評価委員会の議事を始めさせていただきます。委員の先生方には、大変お暑い中を、ご多用の中を、またご遠方からお集まりをいただきましてまことにありがとうございます。また関係省庁の皆さん、それから関係県の皆様、また本日も大勢の傍聴の皆様にもお出かけをいただきまして、大変どうもありがとうございます。
  それでは、議事を始めさせていただきます。本日は16時30分を終了の目標においてございます。どうぞ議事進行にもご協力をいただきたいと思います。
  本日の議題でございますが、皆様のお手元にございますように、議題として、その他まで含めて4題ございますので、この順番に沿って議事を進めたいと思います。
  最初の議題でございますが、問題点と原因・要因の検証について、ということで、これが本日のメインの議題でございます。この件につきましては、前回もご討論をいただいたわけでございますが、岡田委員、細川委員に作業をお願いしてきたところでございます。前回は試案について岡田委員からご説明をいただきまして、この作業に役立つデータの提供、検討方法に関する意見をお願いしているところでございます。委員の先生方、関係県、関係各省からのご意見や情報については事務局が整理をいたしました。大変多くの意見をいただきまして本当にありがとうございます。事務局からその概要を説明していただきたいと思います。では、坂本補佐、お願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、事務局より、いただいたご意見について概略説明させていただきます。資料といたしましては、資料2-1の3ページ目以降、表のいちばん右側に「試案への主な意見」とございますので、この整理表に従って順次説明させていただきます。また「参考資料」として、詳細なコメントを整理したものもつけておりますので、後でごらんいただければと思います。では、2-1の右側の「試案への主な意見」というところを説明させていただきます。
  まず、アサリ減少について、でございますけれども、潮流・潮汐変化のところでございますけれども、ご意見といたしましては、潮汐に関連する要因は多くあって、これらが複合的に関係しているということで、潮汐との関係だけを見ても真実は得られないというふうなご意見がございました。
  それから、下に行きまして、赤潮発生件数の大規模化(有害プランクトン赤潮の発生)というところでございますけれども、ご意見といたしましては、赤潮によるアサリ被害というのは、有明全体に共通した現象ではなくて、そういったことは考えにくいのではないかというようなご意見。あと、使用したデータとしては、赤潮の発生日数を使っているんですけれども、日数ではなくて、発生密度でやるとか、水温条件なども加味すべきである、というご意見がありました。
  また、近年、福岡の海域ではプランクトン沈殿量が減っているというようなご指摘がございまして、これにつきましては、「参考資料」の方をめくっていただきまして、一番後ろに別添という形で提供していただいたデータについてはつけております。別添資料の1のところでございますけれども、福岡海域の浅海定線によるプランクトン沈殿量の経年変化ということで、データをご提供いただいております。
  続きまして、底質の変化のところでございますけれども、これにつきましては、指標としては、中央粒径値の変化というところでデータを使用しております。これに対しましては、砕石を用いた漁場造成試験から、中央粒径値よりも地盤の安定への影響が大きいのではないかというようなご意見であるとか、あと、覆砂による移入種の有無といった生物学的検証が欠けているというご意見、あと、沿岸の波当たりの変化というのは考えられないかというようなご意見であるとか、湾奥のデータも活用したらどうかというようなご意見がございました。
  それから、貧酸素でございますけれども、アサリ漁業というのは干潟域であるので、貧酸素の影響というのは余り考えられないのではないかというご意見がございます。
  それから、ナルトビエイによる食害でございますけれども、アサリの生産量の減少の原因と食害を結論づけるような科学的根拠はないというようなこと、あと、二枚貝が減ったことによって食害が顕在化したことも要因としては重要ではないか、といったご意見がございました。
  あと、ナルトビエイの食性については解明されていないので、摂食量の計算は削除すべきというご意見もいただいております。
  次の4ページに行きまして、漁獲圧のところでございますけれども、これにつきましては、参考として、熊本県の資源管理の情報を入れておりましたが、これにつきまして、福岡、佐賀でも漁獲サイズ規制、殻長3mm以下の作業禁止と伺っておりますけれども、こういった規制を行っているということでご意見をいただいています。
  あと、化学物質については、風評被害のおそれもあるので慎重に扱うべき、といったご意見がありました。
  それから、事項としては入っていませんでしたが、餌料の減少であるとか、干潟の減少についての検討も必要ではないかといったご意見がございました。
  次のページ、5ページに行きまして、タイラギの減少でございます。これにつきましては、潮流・潮汐について、アサリと同じように潮汐だけでの関係を見てもだめではないか、というご意見がございました。
  あと、底質の泥化でございますけれども、これは覆砂による効果実証の結果から、流速や浮泥の堆積がタイラギの生残への影響を与えているのではないかといったご意見、あと、中央粒径値7を検討に使用しておりましたが、このことにつきまして、生息条件として中央粒径値だけではあらわせないのではないか、中央粒径値7に生物学的な意味はないので、分級であるとか、について検討をする必要があるのではないかといったご意見がございました。
  それから、貧酸素でございますけれども、熊本県では貧酸素水塊による立ち枯れの発生は確認していないといった情報がありました。
  ナルトビエイにつきましてもアサリと同様でございまして、食性が解明されていないので、摂食量の計算というのは無理ではないかということでした。
  あと、ウィルスにつきましては、病原体による減少の可能性の精査が必要ではないかといったご意見がございました。
  続きまして、6ページ、ベントスの減少です。底質の泥化についのご意見ですけれども、検討に使った中で、チヨノハナガイやイヨスダレガイについては、泥化の傾向と相関関係が認められるというのはいいけれども、その他の種類では相関関係が認められないので、ベントス全体に対してAの判定をするというのは無理があるのではないか、といったご意見がございました。
  7ページでございますが、魚類の減少です。魚類の減少については、まず水温の上昇については、漁獲量と水温との相関を見ることは誤りで、水温への反応というのは魚種ごとに異なり、一括りにはできないのではないかといったご意見がありました。また、魚類相の変化から水温による影響を明らかにできないのか、といったご意見もございました。
  それから、ノリの酸処理剤でございますけれども、これは非常にご意見が多うございまして、まず、グラフ自体に有利な相関関係が出ていないのではないかといったご意見、あと、水産庁の研究結果では、水産生物への大きな影響を及ぼすような結果が認められていないといったご意見、あと、福岡県では、実際にその酸処理剤の使用が始まったのが1981年なのに対して、データ整理されているのは97年ということから、こういった実際の使用とそのデータの乖離があるようなもので相関をとるべきではない、というご意見がございました。
  あと、酸処理剤の使用と漁獲の相関関係については、影響を受けるような稚魚が育って漁獲されるまでにタイムラグがあるので、こういったタイムラグも考慮すべきではないかといったご意見がございました。
  それから、成長過程について、それぞれどういった直接的な影響を酸処理剤から受けるのかということについて、科学的なデータを示さないまま断定することは問題である、といったご意見がございました。
  それから、一番最後でございますけれども、酸処理剤といっても、原料組成が明確にされていないので、1つにくくって酸処理として原因・要因とするといったことについて疑問が出されております。
  それから、一番下の干潟・藻場の減少でございますけれども、生物学的な特性を検討することなく、漁獲と干潟面積の変化を比べることは誤りではないかということと、それぞれの魚類の生育過程との関連についても検証する必要がある、というご意見がございました。
  8ページに移りまして、潮流・潮汐については、魚類生産というものが幼生移送の成就だけで決まるものではなくて、産卵から資源に添加されるまでの多くの条件によって決まるものであるので、潮位差と漁獲量との関係だけから得られるものではないということで、参考として参考資料の別添3に最近の研究成果をご提供いただいております。
  これにつきましては、第17回の評価委員会で山口委員からご発表のあった報告に沿った内容でございまして、特に産卵場所と仔魚の出現場所が離れているといった特徴を挙げられて、こういった底魚類の漁獲というのは、1990年代後半から非常に減っているということ、シログチをモデルに資源の減少要因について解明のための調査を行っているということを情報提供いただいています。
  一番最後に、最近の情報として、6月中旬に仔稚魚の分布調査を行った結果について、情報提供がございまして、最近、漁獲量の減少が著しいコイチとかアカシタビラメの仔魚の分布が諌早湾に集中しているということが明らかになった、という情報も寄せられております。
  続きまして、8ページに戻りまして赤潮でございますけれども、こちらは赤潮の発生件数や日数を魚類の増殖阻害要因として位置づけて、その関連性を評価することは誤りであるといったご意見であるとか、漁業被害が発生した特定の地域以外への影響というのは不明確で、これもまた、有明海全体に共通した現象とは考えにくいといったご意見をいただきました。
  それから、泥化でございますけれども、好適な底質というのは魚種ごとに異なるといったご意見をいただきました。
  それから、貧酸素水塊でございますけれども、これにつきましては、貧酸素というのは濃度傾向というよりも、むしろ魚類の移動経路との関係において意味を持つので、濃度がどう変化したかという関係では判断できないのではないか、といったご意見でございます。
  それから、漁獲圧でございますけれども、有明海では戦前または終戦直後から歴史があって、漁獲圧は最近の資源低下の直接の原因ではないのではないか、といったご意見がございました。
  それから、化学物質につきましては、事例としてシロギスなどの化学物質敏感性を載せておりましたけれども、余り直接的に意味がないので、載せる必要はないのではないかといったご意見がございました。
  それから、9ページでございますけれども、赤潮でございます。一番上の水温上昇については、珪藻とラフィド藻について分けて整理すべきだといったご意見がございます。
  富栄養化については、まず、栄養塩の流入につきましては、流入負荷量はその必要条件の1つにすぎないので、それだけで発生を説明できるものではないといったご意見。あと、N、Pの底質への蓄積、あと水中への溶出を明らかにして、その影響を議論すべきではないかというご意見がございました。
  酸処理剤・施肥については、赤潮の発生機構の中で酸処理と施肥がどのような時期に、どうかかわるのか説明すべきであって、もし実証できるデータがなければ削除すべきではないか、といったご意見でした。
  それから、透明度の上昇でございますけれども、赤潮の発生件数と透明度の相関関係なり危険率が示されていないというご意見がございました。やはり次の干潟・藻場の減少につきましても同じご意見がございました。
  それから、二枚貝の減少ですけれども、そもそも赤潮発生日数と貝類漁獲量だけを対照して、何らかの判断をするのは誤りではないかといったご意見がございました。
  あと、ベントスの減少ですけれども、図5.8というのは、そもそも赤潮の発生日数とベントス密度の関係をあらわすものになっていないというご意見がございました。
  それから、次の10ページに行きまして、透明度の上昇のところでございますけれども、河川からの土砂供給の減少というところでございますが、意見としては、SSの減少がすなわち土砂供給の減少と言えるのかというところ。あと、別の報告、それは清本ほかによる2005年の沿岸環境関連学会連絡協議会シンポジウムの報告でございますけれども、この報告によれば、筑後川からの懸濁物負荷量の変化では、海域の透明度の変化を説明できない、との報告がなされているといったご意見がございました。
  それから、河口付近の透明度に一定の経年的な傾向が見られないといったご意見がございまして、この意見につきましては、参考資料の別添の資料4という形で、一番最後のページでございますけれども、情報のデータの提供がございました。これは浅海定線の透明度の経年変化を地点ごとにまとめたものでございまして、赤が上昇傾向、青が下降傾向ということでございまして、海域については、おおむね上昇傾向ですが、河口については一部下降傾向もあるということでございました。
  次、最後のページ、11ページになりますけれども、底質の泥化についてでございます。これは資料に誤りがありました。試案への主な意見のところでございますけれども、これが一番最後の潮流・潮汐のところに入ります。中央粒径値は底質をあらわす目安の1つでしかない、といったご意見、あと、分級度によって泥の含有率が変わるといったご意見、あと、使用した情報としては、中央粒径値2と4といったものを使っておりますけれども、そもそも中央粒径値4を取り上げる意味というのがわからない、といったご意見。これは一番下のところに入りますので、訂正させていただきます。それに合わせまして、右側の「意見を踏まえた見直し」というところ、Cとなっておりますけれども、これをBに改めていただくようお願いいたします。事務局からは以上でございます。

○須藤委員長 ご説明、どうもありがとうございました。
  この試案につきましては、第8回の小委員会におきましても、岡田委員からご説明をいただき、検討をしていただきました。荒牧委員から何か補足があれば、同じようにお願いしたいと思います。どうぞ。

○荒牧委員 今、事務局の方から説明があった内容は、この横長の参考資料のところをごらんになっていただきましたらわかりますように、たくさんの小委員会のメンバー、あるいは小委員会に属する各県の方々からのメンバーの意見が非常にたくさん含まれていて、その意見が既にこの中に含まれていますので、特に重要なものはそこで、随時、改めて出していただくようにお願いしましたので、そこで文書で出ていると思います。ですから、それでよろしいんですけれども、会議の中で出てきたものをちょっとだけ紹介をさせてください。

○須藤委員長 どうぞ。

○荒牧委員 小委員会の議論の中で出てきたものとしては、佐賀、有明海のローカルな情報で、例えば佐賀県の底層の溶存酸素データなどから、鹿島沖で1976年ぐらいから、貧酸素水塊が出現した、というようなデータがあるということがわかっているんですけれども、こういった試験場とか、センターあたりで眠っている資料を整理してはどうかということです。そういうことを、もう一人の方も言われて、センターの中に相当、昔からの分で、この分析に使えそうなものがあるんだけれども、指示を出してくれないだろうかという意見も出ていました。
  それから、こういうふうに最初のステップとしては、1つのファクターとの関係を整理していく必要があるということは、非常に理解ができるんだけれども、アサリの減少要因とかといったものを見るときだけでも、そんなに1つだけの要因ごとにあるわけではなくて、複合的に出てくるだろうと。それからエリアも相当広くて、それぞれが原因が変わってくる可能性もあるから、空間的にといいますか、領域的なものと、原因的なものを、もっと複合的に議論する必要があるのではないかという意見が出ています。
  それから、個々のファクターでは、確かにこれまでの成果が非常にたくさん出てきて、わかってきたことがあるけれども、お互いの関連、今、やっている作業がそれに当たると思いますけれども、そういうふうなものが、どうつながっているのかということを、仮説を持ち寄ってでも構わないので、もう少し詰めた議論をする必要があるのではないかということでした。
  それから、こういう議論をするとき、特に生物系の問題を議論するときには、季節的な変動が非常に大きいということを理解していく。ですから、季節的なものを抜きにして、1年ごとの単位でやることについては、少し問題があるのではないか、というふうなことも議論として出ていました。
  それから、もう一つ、漁獲量というものが非常に重要な指標として使われていますけれども、漁獲量というのは漁業、いわゆる営業活動であって、いろいろな状況で魚をとらなくなったり、漁業をしなくなったりするということがあるので、そういうことをそのままデータとして使うことには、ちょっと疑問がある。もし、自分らに聞いてもらえれば、なぜ量が少なくなっていったのかというようなことの社会的な、といいますか、漁業としての問題も説明できる要因があるので、そういうことについても、もし尋ねられれば答えたいというようなことも言われています。以上でございます。

○須藤委員長 大変要領よく議論のまとめをご紹介いただきまして、どうもありがとうございます。
  今、6点ぐらいまとめていただいたんですけれども、恐らく委員の先生方、最も妥当なご指摘であるとお感じいただいていると思います。もちろん、先ほど「ご指示をいただければ」なんていうお話があったんですが、古いデータが眠っていて、DOの減少というのが、1976年ぐらいに起こっているなんていうような問題のデータが、わかっていただいているのであるならば、出していただきたい。ご指示をいただくとおっしゃられたのは、私が委員長ですから、委員長としてそれはお願いしますということを、今の時点で申し上げてよろしいと思うんです。古いデータというのが、我々としてはわかりにくかったので、短期的なところで物を見てしまっていて、長期的な変遷というのがわかりにくかったので、ぜひそれは出していただきたい。漁獲量の問題なども、多分、恐らく漁獲量というのは魚の生産なり、生産量なり、バイオマスなり、魚種なり、そういうことの変遷を見たくて漁獲量を通して、見ているわけですよね。ですから、漁業と密接なので、なぜ漁業が衰退したり、あるいは繁栄したりするかという部分のところの社会的影響、これも当然、議論の中に入れていかなければいけないのだろうなと思いますが、今までの段階の中では、ちょっとその辺が入りにくかったということであろうかと思いますので、どうぞご遠慮なく、と言っては変ですけれども、一体として小委員会との作業を進めなければいけないと私は思っていますので、ぜひ、「ご指示を」とおっしゃらずに、すべてご指示を申し上げますので、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。
  それでは、岡田先生、大変な作業をしていただいて、今、荒牧先生からもいろいろまとめていただいたんですが、先生にはこの間の小委員会にお出になってご議論していただいたわけでございますが、今のまとめ、あるいはご報告、こういうことについて何かご意見があれば、出していただきたいと思います。

○岡田委員 いろいろご意見をいただきまして本当にありがとうございました。深く感謝申し上げます。特に、今、荒牧先生の方からおっしゃっていただいた古いデータを掘り起こしていただくとか、それから、我々が漁獲量だけを見たけれども、それは適切ではない。まさにそういうことをおっしゃっていただくために、こういう作業をやったという、小委員会では、そのように荒牧先生に申し上げたと思いますけれども、それよりもはるかに明解なお答えを、今日いただいたということで、作業をした私どもとしては大変ありがたく思います。
  ただ、今日いただいた一部のご意見を見させていただきますと、今回の試案の趣旨、すなわち不十分であることは百も承知の上で、ともかくたたき台をつくるという趣旨に必ずしもご理解いただけなかったというような面もあるかと思います。そういう意味で、今回の試案の意図をより丁寧に説明したいと考えました。このため、お手元の資料2-1の1ページから2ページの部分、試案に至る経緯を追加するということをいたしました。さらに検討方法につきましても、補則的な記述をここの1ページの基本的考え方、検討手法のところに追加をさせていただいております。
  繰り返しになるかもしれませんが、もう一度確認させていただきたいと思います。今回の試案の結果というのは、今まで提出された原因・結果についてあるかないかを科学的に白黒つけようという、こういう意図は全くございません。そういう意図ですと、これは科学論文としては間違いなく失格で、私が査読したらリジェクトするだろうと思っております。
  今回の目的は、現在示されているさまざまな文献、本委員会での発表等で示されているたくさんの要因のうち、どれが主な要因か、ここで線を書いてあるとすれば、どの線が一番太くて、どの線は消してもいいんじゃないかというようなことを絞り込むための1つの手段でございます。もともとごらんになっている図の一本一本の線につきましては、ほとんど根拠がございます。そういう意味では正しいと言えます。しかしながら、その根拠データがよって立つバックグラウンドデータは、場合によっては局所的なものである、もしくは短期的なものであって、得られた結論が、必ずしも有明海全体に、もしくは有明海の長期変動を説明するものではないという問題点があるかと思います。それは科学としては結構でございますが、本委員会の目的には必ずしも合わない。
  なおかつ、これだけたくさんあるものを、すべて同じように対策しましょうということは、線の数を見ていただいても不可能であるし、効率的ではない。こういうことで何とか絞り込もうということをやったわけです。この絞り込みにおける検討方法、それからデータ、これはいずれも不十分であることは百も承知しております。もっと変な言い方ですけれども、もっとたくさんあればよかったなと、作業中いつも思っております。したがいまして、先ほどの荒牧先生のご発言のように、専門家の先生のご意見を、もっともっとたくさん取り入れることによって、現在の暫定的なものをよくしていこう、こういうふうに考えております。
  もともと、この関連図、本来は今回の、お手元資料の3ページ以降にAとかBとかCとか書いてございますが、論文等によれば、Aであると主張されたものをピックアップしているわけです。ですから、そこには一応根拠となる文献がある。ただ、それが長期的、広域的にはどうかということをやったわけです。ですから、長期的データをある意味で機械的に照らし合わせた、こういうことをやりました。そういう意味では生物学的なバックグラウンド、因果関係のきちっとした解析というのは、もちろんございません。ですから、たくさんご指摘いただきましたように検討方法が乱暴である。当然でございます。当然と言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、それはやむを得ない。データがなかったわけです。
  そういう意味で、ここではもう一度別の検討方法でやったらどうか。それから、最初、おっしゃっていただきましたような、今まで眠っているデータを提供していただければ、もっとよくなる、こういうことを期待しておりました。特に論文になっていないようなデータは、各研究機関、研究所、センター等に眠っているだろうと思います。そういうものを、この視点で、少なくともこの矢印がいろいろ書いてあるのは、それなりの科学的根拠のある線でございます。その線が本当かどうか。本当なんですけれども、より広範囲に適切であるかどうか、有明海全体として正しいかどうかということを補強するために出していただきたいと、こういうことでやってきたわけです。そういう意味で、まさにたたき台ということでご理解いただければと思います。そういう意味でございますので、いただいたコメントに従いまして直しました。直すのは全く平気でございます。
  ところが、3ページからざっと幾つかご紹介した問題点のご指摘が多くございました。おっしゃるとおりです。ただ、残念ながら多少はあったんですが、新たな検討方法の提案がなかなか出なかったので、これからどうしようかと考えた結果、結果的には問題があると言われたら、わからないという答えにせざるを得なかった。ですから、Bばかりふえております。そういう意味で、無理してA、Cをつけたんですが、これは前も申し上げましたように、本当に無理してつけました。私自身も本当かなという報告を前回もさせていただいたような状況で、A、Cをつけて、少しでも減らそうと努力したのですが、またBに戻っているというのが現状でございます。
  ただ、この中で、まだご議論があるかもしれません。幾つか確認させていただきたいと思います。7ページ、ここにノリのことがございます。これは我々はとりあえずAといたしました。まことに申しわけございません、ここにございますように、やはりAではないだろう、まさに"風が吹けば桶屋が儲かる"的なAをつけてしまったかな、というふうに反省しております。おっしゃるとおりかなと思いまして、今回はCといたしました。これはこれで、委員会で合意をいただきますと、きっとこの後、皆さんが余り熱心に検討しなくなるということで、Cでよろしいですか、ということをご確認させていただきたいと思います。もちろん、反対意見がございましたら、事務局としては、またBに戻すことは全くやぶさかではございません。ですから、これはお気をつけいただきたいと思います。
  その次に問題になるのが、8ページの下から3番目、漁獲圧。魚類の漁獲量に対して漁獲圧は直接の影響にはなっていないだろう、こういうご意見をいただきました。したがって、我々としてはBをCにした。要するに、Bはできる限り減らしたいわけです。焦点を絞りたいというのがあります。Cは非常にありがたいんですが、これもよろしいでしょうか、という専門的なご意見も賜れば大変ありがたいというふうに思います。
  というわけで、ずうっと、ざっと一番右の欄を見ていただきますと、Bばかりで、作業の成果が何もなかったのではないか、何も進まなかったのではないかと言われると叱られますので、では、この後、どうするか、という原案を事務局としてご提案させていただきたいと思います。
  まず、今まで試みたものは、有明海全体として長期的にどうなったか、一番最初の趣旨にございますように、10年、20年、30年という有明海・八代海の大きな変化の原因をとらえたい、こういうことで長期データをかき集めました。無理してかき集めましたが、やはり不足しております。ということは、この方法だけでは無理だろうということで、短期的な、もしくは局所的なものでいいから、そのような事象、観察記録、実験、場合によってはほかの海域の事例を積み重ねて検討する。そういうことによって、お気づきになったかもしれませんが、B+をつけました。大体こういうのは余りよくない傾向だということは百もわかっております。B+があると、B++をつくれとか、だんだん意味のないことになっていく危険性があるんですが、とりあえずB+というようなものを考えてみました。
  どういう趣旨かというと、2ページに凡例、B+というのが真ん中辺に書いてございます。この表現は必ずしも妥当でないところがあるんですが、Bのうち、短期的、局所的な事象に関する知見、すなわち幾つか同じような結論を得ている。要するに、AはBだ、ほかの先生もAはBだと。ほかの先生が逆にAはBでないと言われたら、これは一致しなくなりますから、簡単には採用できませんが、かなり一致しているような知見が多い、それから海域の事例から、問題点の長期的な変動要因になる可能性が高いのではないか。簡単に言いますと、細い線を少し太くしてもいいのではないか。要するに、重点的に、重要な因果関係であるだろうと思われるものをピックアップしようという努力をいたしました。もちろん時間の関係もございますので、すべては終わっておりません。正直に申し上げます。そのうち、少しずつスタートしたものについて、本日はご紹介させていただいて、今後の議論の進め方のたたき台というふうにさせていただきたいと思います。
  それで、まず1つの例として、お手元の資料の中に資料2-2の「作業中」というのがございます。これと、今、ごらんになっている資料の両方を比較しながら、ご検討いただければありがたいと思います。最初が資料2-1の3ページでございます。横長の表の3ページをごらんください。ここに、底質の変化というのがございます。要は底質の変化によってアサリの漁獲量が変化した。底質の変化とは中央粒径の変化で、なかなかこれは長期的なデータからは明確な相関係数があるような代物ではないですから、「相関」という言葉が妥当かどうかわかりませんが、明確な関係が認められなかった。ただ、短期的には、いろいろ検討してみたらB+。わからないというよりは、もう少し重要な因子であると考えてもいいのではないかというふうに思っております。その論理というか、ロジックというか、データの集まりが、お手元の資料の2-2にございます。これにつきましては、坂本補佐の方からお願いいたします。

○須藤委員長 では、お願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 それでは、資料2-2について説明させていただきます
  まず1ページ目でございますけれども、アサリでございます。海域としては緑川漁場について知見の整理を行いました。理由といたしましては、緑川漁場というのがアサリの生産量の落ち込みの多い主漁場であったということで、1977年には4万トンあったのが、2003年には5千トン程度になったということで、熊本県のアサリの漁獲減少のかなり大きな部分を占めているということから、さらに調査事例が多いということから、適当ではないかと考えております。
  まず、知見としては、着底稚貝について整理したものが「●」以下のものでございます。着底稚貝については、海域によって着底から成育にかけての状況というのが大きく変わるということから、安定的な稚貝の着底なり成育というのは、アサリの新規資源の加入であるとか、持続的生産にとって重要ではないかと考えております。
  まず知見の1点目としては、室内実験ということでございまして、殻長2mm以上の稚貝については、生産がなくなってしまった天然漁場、これは緑川河口でございますけれども、ここの底質であっても、覆砂漁場で生産が見られるような底質でも、両方でも問題なく育つということが確認されているということで、図としては、次のページをめくっていただいて、3ページ目のところでございます。図1.1ということでございまして、表1がよろしいかと思いますけれども、4週間飼育した結果でございますけれども、右側になりますが、覆砂漁場区と生産のない天然漁場区で、ほとんど減耗もなくすんでいる。このときの平均殻長については2mmから3mmの間というところでございました。この引用につきましては、行政特研のものでございまして、皆さんご存じのことと考えております。
  これにつきまして、1mm前後の稚貝についはどうかといったデータにつきましては、少し飛びまして5ページになりますけれども、下の図1.4になりまして、これは室内実験ではございませんが、殻長1mm程度のアサリ稚貝について、覆砂漁場と、対象区として生産のない天然漁場との比較を行ったものでございまして、二、三カ月ほどで、生産のない天然漁場については、ほとんど生産がなくなるというような状況を示しております。
  1ページに戻りまして、(2)の経年的な底質データということでございますけれども、現在集めることができました経年的なデータといたしましては、緑川河口干潟の中央粒径値について、熊本県の水産試験所のご協力をいただきまして集めたものということで、これは前回、岡田先生の方からご報告があったときのものでございまして、表1.2にございますように、中央粒径値が0.212ぐらいだったものが、若干減っているということから、細粒化の傾向が推測されるのではないかということでございます。
  では、実際に着底稚貝と粒径との関係についての知見でございますけれども、稚貝の着底には粒径が約0.5mm以上のものが適当といわれておりまして、これは文献でそういったことがいわれているということで、もう少し、この辺は根拠をしっかりしなければいけないなと考えておりますけれども、こういったことから、0.5mm程度の粒の割合というのが、着底の稚貝に重要ではないかと考えられるのではないかということでございます。
  それから、委員からもご指摘が多くありましたけれども、中央粒径値だけではなくて、粒径の分布というのを見ていく必要があるのではないかと考えております。
  (4)に行きまして、粒径の分布に関する情報でございますけれども、これは経年的な粒径分布のデータというのは、現時点では入手はできておりませんが、1996年の緑川河口干潟の粒径分布については、データがございまして、これが図1.2、4ページの下の図になります。これにつきましては、緑川のほかにも福江、宮川河口というところと3つの漁場について、それぞれの粒径分布を比較したものでございまして、緑川が白丸に点線でございます。これにつきましては、アサリの着底に適切と言われている0.5mmの粒径につきましては、ほとんどなく、
2~3%という報告がなされております。また非常に粒径の幅が狭い、かなり均質で細かい砂でできているといった特徴があるかと思われます。
  それから、覆砂の効果につきましては、先ほどご説明した図1.3にあるように、効果があるといったものを整理しております。
  それから、その他の情報といたしましては、中央粒径値が0.25以下の底質では、アサリの生息が一般的に少ないという知見もございます。
  次のページをめくっていただきまして、これまでの知見の整理といったことで、途中段階ではございますけれども、これはまず、緑川河口干潟では、底質の細粒化の傾向が推測されるということ。あと、稚貝の着底に適した粒径と言われている0.5mm以下の割合というのが、この細粒化の傾向によりまして一層低下するということ、着底の稚貝に不適切な小さい粒子が増加した可能性が高いと考えられるのではないかということです。さらに緑川漁場の粒径分布の形状、かなり均質で、中央粒径値を中心に偏った分布といった形状を考えますと、中央粒径値が若干でも落ちていけば、稚貝が着底できるような大きさの粒の割合が、かなり大きく減るのではないかと、そういった可能性もあるのではないかということでございます。
  以上のことから、底質の粒径の変化といったものが、緑川のアサリの生産量減少について取り上げるべき重要な要素の1つであると考える、ということでございます。
  このほかに、底質につきましては、県の水産試験所の方で注目しております着底時の基盤の安定性ということでございまして、投石であるとか、杭打ちなどによる、流速の緩和、基盤安定の効果について調査が行われておりまして、基盤の安定性にも関連しますので、こういった調査結果についても、今後、整理、検討していきたいと考えております。以上です。

○岡田委員 ありがとうございました。というようなデータ、まだ、これももっといいデータが集まれば、もっと補強されるかと思いますが、というような論理で、BをB+にしてみたいらいかがでしょうかという、1つのイグザンプルでございます。
  あと1つ、5ページをごらんください。資料2-1になりますが、5ページにタイラギの問題がございます。5ページの表の上から2番目、底質の泥化がタイラギの減少につながった。ここでは、MdΦ7以上の面積割合が減っていくということで、面積割合と、それからタイラギの減少に相関が見られたということでAといたしました。
  しかしながら、委員から、中央粒径値7以上には必ずしも意味がない、ということで、通常ですとBになるんですが、先ほどと同じような論理で、もう少し短期的な実験データ等を積み重ねて、B+というふうにしてみたらどうだろうかという論理構成をつくってみました。それがお手元の資料の、先ほどのページの次になりますので、これも坂本さんの方から、よろしくお願いいたします。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 タイラギにつきましては6ページからになりますが、まずタイラギにつきましては、第15回だったと思いますけれども、伊藤委員の報告で随分詳細に整理考察が行われておりまして、ここではそれに追加する形で、最近行われた短期的な調査結果なり、実験結果を含めて整理を行っております。
  まず、漁場としては、有明海の北部漁場ということで、取り上げております。諌早湾口に漁場がございますけれども、大きな漁場ということで有明海の北部漁場を取り上げてみました。
  まず、北部漁場のうち、中西部と東に分かれるということですが、中西部の漁場につきましては、現在、漁場価値を失っているといったことで、原因としては底質の低下が指摘されているということでございまして、底質に関する調査結果について[1]からまとめております。
  まず、底質の細粒化につきましては、伊藤委員の報告からもございましたように、MdΦの分布というのが、西から中央に拡大していくということから、底質の細粒化が推測されるというご報告がございました。
  それから浮遊幼生と着底稚貝の分布ということで、伊藤委員からのご報告でございましたように、図2.1の方に書いておりますが、8ページでございますけれども、中間取りまとめ等でよく目にされている図かと思いますけれども、1981年では浮遊幼生、着底稚貝とも、西側の漁場に見られたのに対して、2003年には浮遊幼生はいるけれども、着底稚貝は西側には少ないといった結果でございます。こういった傾向から中西部海域では浮遊幼生がそもそも着底しなかったのか、もしくは着底後に死んだのかといった2つの考え方があるのではないかという伊藤先生のご報告がございまして、その後、稚貝の着底時の室内実験といった結果をご報告なさいまして、そもそも浮遊幼生の着底時の底質選択性はなく、泥であろうが、砂であろうが、まず着底するといった結果が出ております。そして、着底後は速やかに足糸を出して付着する。ただし泥しかないケースについては、匍匐運動を続けた後に斃死といった実験結果が得られておりますので、この中西部海域については着底後、斃死することが推測されるといったことでございます。
  [4]につきましては、最近の調査ということでございまして、これについては、浮遊幼生が主に7月下旬から8月に北部海域に広く分布するということ。それから、特に2003年には諌早湾口に多く見られる。それから出現量ですけれども、2003年に比べて、2004年、2005年の量というのは減少傾向にあるということで、これは図2.2と図2.3ということで示しておりまして、8ページが図2.2でございますが、これは2003年のタイラギ幼生の水平分布図になっております。
  それから、9ページの上の図に、図2.3がタイラギ幼生の分布として、左側が2005年の分布、それから右側が2003年から2005年の平均密度の変化ということで、上がタイラギ幼生の平均密度、下がその他二枚貝の幼生の平均密度ということで示しております。
  6ページに戻っていただきまして、さらに今までが浮遊幼生でございますけれども、今度は着底稚貝でございますけれども、東側に偏って分布するといったこと、あと、着底稚貝については、酸揮発性硫化物態硫黄や強熱減量の少ないところに多いということ、あと中央粒径値も既存の知見にありますように、MdΦ4付近に多く見られるということで、これにつきましては、図2.5で示させていただいております。図2.5は10ページでございますけれども、左上が硫化物、その右が強熱減量、左下が中央粒径値、その右が泥分率となっております。強熱減量にしても、硫化物についても、低いところに偏っているように見えますし、中央粒径値についても、7、4を中心に重なっているように見えるということでございます。
  行ったり来たりで申しわけありません。6ページに戻りまして、覆砂の効果の実証試験でございますけれども、これは、前回の評価委員会で水産庁からご報告いただいたとおりでございまして、佐賀、福岡の覆砂区ともに8月の段階では着底稚貝が見られたものの、佐賀については、その後、密度が低下して、11月にはほとんど見られなくなるということで、佐賀県の覆砂区にはシルトが堆積していたということで、これは一度ごらんになったかと思いますけれども、10ページから11ページのところに表2.1、これはタイラギの生息密度ですけれども、福岡県、佐賀県、黄色いところが覆砂区でございまして、対比すると、福岡の場合は8月以降もタイラギの個体数が維持されていますけれども、佐賀については8月は見られますけれども、9月に減少し、11月にはほとんどゼロになるという結果になっておりまして、そのときの底質の状況というのが、11ページの図2.6でございますが、8月の段階では、福岡・佐賀とも上層に砂質が分布しておりますが、11月になりますと、福岡については、ほとんど変わらない状態で砂質が分布しておりますけれども、佐賀については、黒いところですが、砂の上にシルトが乗ったような形になっているということでございます。
  これまでは主に稚貝の成果でございますが、[6]以降が成貝の分布といったことでございまして、これは伊藤委員の報告ですが、図2.7になりますけれども、1996年前後から成貝の分布が東に偏るといった傾向が見られるというご報告がございました。また、場所が違いますけれども、諌早湾の干潟域においても底質にはほとんどタイラギが分布しないということが観察されております。
  次の7ページに行きまして、[7]その他ということで、室内実験の結果を示しておりまして、これは成貝に泥をかぶせた実験を行った結果、生残率が低下して、グリコーゲンの含量も低下するという結果が出ております。
  ここまでが、中西部漁場の知見の整理ということでございます。
  (2)でございますけれども、これは北東部漁場、東側の大牟田沖の漁場でございますけれども、ここは大量斃死が起こっております。着底稚貝が確認されて、現在も漁場ではありますけれども、最近、成貝が大量に斃死しているということ、時期といたしましては5月から8月、11月以降も起こるということで、最近、2000年と聞いておりますが、2000年になって確認されたということで、これについては原因が不明であるということでございます。
  これまでの知見の整理といたしましては、タイラギの漁獲量というのはピークを持ちながら減少してきたということで、その減少傾向については、一番最後の図でございますけれども、12ページにございますように、ピークを持ちながら減ってきたということでございますけれども、このタイラギ漁場が東に偏り出したと言われている1996年前後までの間のタイラギの減少の1つの重要な要因としては、底質の泥化を挙げることができるのではないかと書いております。
  また、96年前後から、漁場が東に寄った後、96年に漁獲のピークを示しまして、それ以降、大量斃死が起こり、その原因については不明であるということでございます。また、諌早湾口のタイラギ漁場の消失については、現時点はその原因が明らかにされていないということであります。事務局からは以上です。

○岡田委員 ありがとうございました。
  それでは、お手元の資料2-1に戻っていただきまして、あと一つだけ補足をさせていただきたいと思います。10ページをごらんください。問題点(透明度の上昇)に対して河川からの土砂供給の減少の影響があったか、こういうクエスチョンに対して、事務局、前回の原案はAになっています。すなわち黒であると、こういう暫定的な結論を出したわけでございますが、右側にございますように、さまざまなコメントをいただきました。かつ、先ほど坂本さんの方からちょっとご紹介いたしましたが、別添資料4の一番最後のページに図がございます。筑後川河口周辺海域の透明度の経年変化について、こういう新しいデータをご提示いただきました。このデータを見れば、確かにAというのは問題であって、BもしくはCかもしれない。とりあえず、このデータ解析についてご議論いただいていませんので、今のところはBにしておりますが、内容を、またお互いに一緒に精査することによって、場合によればCということになるかもしれません。そういう意味で、このようなデータを、さらにこれに加えて、よりわかりやすいデータがあれば、ご提供いただければ、議論がスムーズに進むかというふうに考えております。
  このような作業と同時に、これだけではなくて、さっきいろいろご指摘いただいておりますような、間接的要因とか、複合的要因、それから因果関係を生物学的もしくは生態学的な視点から考察する必要があるのではないか、というご指摘もいただいています。そのような視点もこれから加えていって、BがB+になるとか、AがCになるか、Bになるかというようなことをやっていければ、議論がもう少し進んでいくのではないかというふうに考えております。
  そういう意味で、今、ご紹介した二、三の例というのも、あくまでも試案でございます。B+はけしからん、やっぱりBであるという可能性もあるかもしれません。そういう意味におきまして、このようなことを全員で一個一個やっていきますと、時間がものすごくかかります。そういうことで、もしご了解をいただければ、次回の評価委員会までに各分野、ご専門に近い分野の委員、それから本日はここに参加されていませんが、小委員会の先生方とも相談させていただきたい。
  例えば、まず、底質について作業を進めて、その他の要因についても可能な範囲でご相談しながら、個別のご相談をさせていただいて作業をしたいというふうに考えております。その順番、優先事項等につきましても、ご意見があればいただきたいと思いますが、そのような個別作業をして、その結果をここに持ってきて最終的なご判断をいただくというスキームでいかがでしょうか、というのが提案でございます。
  それから、例えば魚類資源なんかはデータが、我々、今の現在において極めて少ないと思います。ただ、実は眠っているのかもしれません。ただ、関連する要因が非常に多いということがございますので、できればまた専門家の先生方でワーキンググループみたいな形でご検討いただいて、取りまとめいただくというようなことをしていただければありがたいと思います。
それから、局所的な現象を、もし見るということになりますと、例えば諌早湾内の環境整備についても別途知見を整理する必要があるかもしれません。
  そういう意味におきまして、こういう作業を専門の委員にもご指導を受けながら、必要に応じて専門の委員にお集まりいただくという形で検討を進めたらいかが、というふうに思いますので、ぜひよろしければ、そういう形でご協力、ご指導をお願いしたいというふうに考えております。以上です。

○須藤委員長 岡田先生、どうもありがとうございました。事務局の坂本補佐、荒牧先生にもこの問題についてコメントをいただきまして、ありがとうございました。
  これから少し議論をさせていただこうと思いますが、岡田先生から、前回の資料をもう一回点検して、それから先生方のご意見を入れてやっていただいて、例えば前回なかったようなB+というのが評価の中にあらわれたり、Aが急遽Cになったり、あるいはおおかたの部分がみんなBになってしまったり、これは当然そういうことは起こるので、お願いをしたわけでございますので、今回のようないろいろとご意見をいただくことによって、だんだん、だんだん煮詰まってくるわけでございますが、いずれにしても、どれも余り関係がなかったんだよ、というような結論だと何にもならない。何とかして要因をクリアにするような浮き彫りにする方法論として、今のようなことをされているわけですが、長期的に無理であれば局所的、短期的あるいはほかの場の紹介等を入れながら、因果関係を少しでもクリアにしていこうという試みでございまして、これからも岡田先生あるいは細川先生には作業をしていただくわけですが、ここで委員の今までの岡田先生、荒牧先生、それから坂本補佐のご説明に対して何か、あるいは新たな問題でも結構でございますので、どうぞご意見なり、ご質問なりいただこうと思います。それでは、どうぞ、小松先生。

○小松委員 ちょっと気になったんですが、ABCのこの位置づけというか定義ですね。Cが「問題点との経年的な直接的な相関関係を認められないもの」ということなんですが、これはいいんですけれども、その後、「もしくは重要でないと考えられるもの」とあるわけですね。これは、全く意味が違うと思うんです。だから、今のところ、データから相関関係は認められないということと、その関係性を問うことが重要でないということは意味が違うと思うので、関係が認められないというのはCでいいんですけれど、重要でないというのはDとか、そういう別の位置づけにした方がいいんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

○須藤委員長 議論の過程、あるいは作業の過程で、岡田さん、今の問題。

○岡田委員 わかりました。その方がクリアですね。

○須藤委員長 その方がクリアですね、その方が。「認められないこと」と「重要でない」というのは意味が違いますよね。

○岡田委員 わかりました。そういうふうに考えます。ありがとうございました。

○須藤委員長 おっしゃるとおり、それは分けられますね、当然ね。

○岡田委員 もともと余りCがないものですからね。Dもほとんどないだろうとは思うんですが、でも、やはり論理的には、先生、おっしゃるように、できる限りしておいた方がよろしいかと思います。

○須藤委員長 わかりました。小松先生、ありがとうございました。では、そのように作業をさせていただきます。
  ほかの委員の先生はどうでしょうか。いかがでしょうか。まあ、新たなデータを追加するとか、いろいろなことをこれからやるものですから、時間に制限があるので、先ほどの荒牧先生がおっしゃった、昔、1975年以前のデータやら何やら、水産研究所なんかにあるデータを、もう一回整理していただくなんていうのは、ちょっと時間がかかるのかもしれませんけれども、可能な範囲で、多少は整理してあるのであれば、それをお持ちいただいて、入れていただければいいかな、というような気もいたします。ほかにいいですか。どうでしょうか。菊池先生、どうぞ。

○ 菊池委員 さきほどのアサリ漁場の堆積物の粒径分布の話ですが、2002年11月に水産総合研究センター主催で開かれた「アサリの生産を支える生物生産環境の問題点」というシンポジウムで水産工学研究所の山本正昭氏の発表中ではなされたもので、1995年に行われた研究でしたが、現在アサリの稚貝の着底が順調に行われている三河湾の福江養殖場や、三重県の宮川河口では0.5mm以上の粗砂が50%以上を占めているのに対し、熊本の緑川の砂では0.25mmの粒径の砂が50%を越えており、底表面の砂の粒度組成の差が稚貝定着の良否に影響するのではないかと思った。垂直的に砂を採集すると緑川でも深い層に粗粒成分の層があった事が分かったと言及されていた。そこで私が内心ちょっとギクッとしたのは、1970年代に緑川上流にダムが作られたことを思いだしたからです。委託者が建設省だったのか熊本県だったか今は不確かですが、丁度1970年ごろで当時九大農学部水産の花岡資教授が団長となり、九大・農、九大・理、熊本大・理などの研究者が参画し、私もベントスの分布と表面堆積物の粒度組成などを調べた記憶があります。ただ、当時はアサリの大豊漁の時代(1975~1982)より前で、まだコールドチェインも西洋風のレストランでの需要もなかった時代で、私たちだけでなく、県の行政も水産試験場も漁民もハマグリへの心配はしてもアサリの漁獲への影響はあまり考えていなかったと思います。

○須藤委員長 1970年代ですね。

○菊池委員 70年代。70年ぐらいに報告書ができましたから、68年ぐらいからの調査ですね。ちょうどピークに来る直前ぐらいだったのかもしれません。ですから、それから後、アサリが何年たって落ちぶれたのか、そのときにダムのできる前と後と、それから、できた後、何年ぐらいおきに底質粒度組成(セジメント)を調べたかということは、3年間ぐらいの調査で解散してしまいましたので、私自身もそれから調べておりませんし、県の方でも、緑川ダムは余り影響ないということで、それで話は終わっていたような気がいたします。
  ですから、それから後まだまだアサリのピークはあったわけですけれども、それからだんだんに漁獲量が50年代の後半ぐらいから落ちてくるわけです。ですから、そのあたりのところの粒度組成みたいなもののモニタリングが、アサリの主漁場についてとったデータが、もしあって、どこかに保存されていれば、議論ができるかと思いますけれども、何しろ30年以上前のことなので、ちょっと難しいかなと思います。

○須藤委員長 そうですね。でも、先生のお仕事のご記憶からすると、ちょうどそのぐらいにそういうイベントがあったということですね。
  岡田先生、先ほどの荒牧先生の、さっきのDOの減少のところともあわせて、水産研究所に、もしあれば、今も荒牧先生に、私、お願いしておけば、とりあえずは、先ほど「指示」とおっしゃったので、今の粒度分布等も含めて、あればいただければということをお願いして、事務局からも改めてそれはお願いしてください。
  ということで、今、菊池先生から貴重な情報をいただいたんですが、少しでも古い時代のというか、年代的に前の時代の情報が得られればと、こう思いますのでお願いをいたします。
  ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。どうぞ、滝川先生。

○滝川委員 過去のデータの掘り起こしという話ですが、1975年以前のデータを起こしたいという、そういうことですが、75年からあるという話で……

○須藤委員長 それより前もあるんですよと、先ほどおっしゃったんですね。

○荒牧委員 これは1つの例を挙げられたんだと思うんですけれども、結局、その視点がまだちゃんとこちらの方に、多分小委員会に、当時、水産センターの所長さんたちが皆さんお出になっていますけれども、いわゆる1つずつのことについては報告があったんだけれども、例えば、今こういう関係を持ってみると、昔のデータが欲しいということになったわけですよね。岡田先生がそうおっしゃっていますから、データつきで出してください、ということだったので、そのセンターの所長さんたちは、多分ずうっと昔から先輩たちがやっておられるデータの中に、そういうふうなものがあるかもしれない。それを指示していただければ探すんだけれども、というようなイメージだったんです。今、委員長からは、そう指示されないでも、ちゃんとやってください、と言われましたけれども、(笑い)そういう視点で、初めてこの委員会が、岡田先生、来ていただいて、データを示しながら出すと。今までは多分全部これで議論されていますので、これだけだと、みんなが、なるほどそうだ、そう思うよ、というところで納得されてきたんだと思うんですけれども、そうじゃなくて、そこにちゃんとした線を1本引くときにデータをつけようということになったときに、多分、岡田先生がおっしゃったことは、そのデータがないのだと。しかも広域的なデータがないということだったので、そうすると、うちは残っている可能性があるとすれば、水産センターのようなところに残っているしかないのではないか、というニュアンスだったと思います。
  それから、先ほど貧酸素の問題が、本城先生、おられますけれど、本城先生からも指摘されたことだと思うんですけれども、そういうのが佐賀県のところにあるというふうにおっしゃったんですね。ですから、そういう例がたくさんまだあるのではないだろうかという視点で、もう一回探してみてはどうかということだったと思います。 

○須藤委員長 どうぞ、滝川先生。

○滝川委員 1975年以降のは水産センターの方からいただいていて、以前、第三者委員会のときにも発表したんですけれども、DOだとか、それ以降のやつについては、付加したものがかなりきちんとしてありまして、ただし、月1回のデータなものですから、どこまで議論できるかちょっと……。それ以降については、それなりのデータは、もう既にあります。前のところは、私も調べてないものですから、あったのかなあと……。

○須藤委員長 先ほどのは、眠っているという例をおっしゃった。

○滝川委員 見つけたいと……

○須藤委員長 ありがとうございました。ぜひ努力というか、時間的に間に合えばということで……。
  ほかにいかがでございましょうか。今日は、たくさんまだ議論がありますので、少し前に進めてよろしいですか。
  それでは、いろいろコメントをいただきましてどうもありがとうございました。岡田委員からこの作業の趣旨については、再度説明がありましたので、これはあくまでも、何回も繰り返すまでもなく、試案的、暫定的なものでございまして、専門の委員ご意見を受けて、適宜修正していくものでございまして、先ほども、AがすっとCになるように、これは先生方のご意見で私は決めるべきものだと思っています。長期的なデータがない分野については、短期的、局所的な情報を積み上げて、専門的な検討をいただきたいと思っておりまして、先ほどの岡田先生の言葉をかりれば、B+というような表示で、ここではしゃべっておりますので、とりあえず、そういう形でやっていっていただければいいかと思います。事務局を通じて各分野の委員の皆さんに相談させていただく機会を持ちたいと思います。どういうふうにやるかは、ちょっと考えさせていただきますが、それぞれワーキンググループにするのか、岡田先生に一回一回ヒアリングに行っていただくというのも困難なので、いずれ何かうまい方法で、岡田先生の作業に迅速に反映できるような形をとっていきたいと思います。どうぞご協力をいただきたいと思います。各省各県に関係するデータの提供も、先ほどの荒牧先生からございましたので、特に古いデータ、メモっているデータについてはご協力をいただきたいということをお願いいたしまして、とりあえずは、岡田先生に再度作業をお願いして、とりあえずこの議題については終わらせていただきたいと思います。
  次は小委員会における作業について、ということでございます。これは先ほどもちょっとお話もございましたが、この議題は、小委員会の委員長である荒牧先生におまとめをいただいていることでございますので、荒牧先生からご報告をいただきます。お願いいたします。

○荒牧委員 それでは、2冊、横長のA4版のちょっと分厚いのが、皆さんのお手元にあると思いますが、それを使って説明をさせてください。
  平成18年度版の文献概要リストをつくろうということが、我々の小委員会に課せられた一番大きな任務です。本委員会がまとめていくのに必要なものですので、今回で一応区切りをつけて、最終バージョンにしようということで作業に入りました。そこにありますように、全体としては110編の論文を読んだわけですけれども、その論文の中から、特に参考になるものを1とし、参考になるものを2として、これを文献リストをつくるというが我々の作業であります。
  そこで、文献リストの内訳としては、干潟に関するものが4編、そのうち1としたものが1つ。潮流・潮汐が2編、そのうち最も重要であって、この委員会で参考にしてほしいといったのが1編。汚濁負荷の分野についてシートをつくったのが2編で、最重要だとしたのが1編。流入河川については2編がシートをつくることにし、それから最重要としたのがゼロです。赤潮・貧酸素水塊については7編をシートに掲載することにしましたが、その中で最重要だとしたものは1編。水産資源が11編をシートに掲載し、2編を最重要としました。その他が1編ということで、全部で29編になると思いますが、29編の論文をシートに掲載して、何らかの形で参考にしてほしいということで結論を得ました。
  もちろん、中で随分議論をやった項目があります。それは、この本委員会で1と2ということについての定義づけといいますか、どういう意味で1と2をつけるのかというのは、小委員会で随分話題になりまして、1というのは、この本委員会でぜひ参考にしてほしい、今、岡田先生にやっていただいているような作業の中で、ぜひ、それは参考にしてほしいということを意味づけています。ですから、非常に重要なものであるということを認識しているということです。
  実は、3年間やってきたわけですけれども、初期の段階ではその定義がはっきりしなかったものですから、1と2の差がよくわからないままやっていました。ですけれども、こういう定義がちゃんとしましたので、実は前の段階でずうっと作業をしてこられて、1とつけたので、今回も同じような趣旨なので1にしました、ということだったんですけれども、定義がはっきりしましたので、そこはちゃんと整理しようということにしました。
  2つだけ、特に発言をさせてください。1つは、文献リスト一覧の41ページをあけていただきたいのですが、特にアサリが減少した原因にマンガンが非常に大きく寄与しているということを、実は2年前のときには1として挙げました。そのときには少し問題があるのではないかという議論があったのですが、アサリの減少という一番直接的な異変の原因を表現しているので出そうということになったわけですけれども、いろいろ議論をしてきたところ、内容については少し疑問があるのではないかというのが備考欄に書いてあると思います。1つは荒尾地先と一番南側にある緑川地先で、マンガンの影響が大きいということを示されているわけですけれども、その間にある菊池川地先とか、白川河口域の漁場に余り影響がないというのは、あるいはデータがないということなのかもしれませんけれども、火山の影響であるということであれば、むしろ、白川、菊池川の影響が大きいのではないかとか、それから、漁場が独立しているのではなくて干潟でつながっているとか、そこがなぜそんなふうに区別されるのかが表現されていないとか、2つ目は河川から砂の流入がマンガンイオンの被害を防ぐだけの効果があるのかなという疑問があるとか、幾つか内容について疑問があります。
  ただ、先ほど申しましたように、直接的にアサリが減少した原因を述べた論文ですので、それを自分たちでは疑問があって、ちょっと問題があると思うけれども、それをいわば封鎖するというか、それを出さないというのは間違っているだろうということで、特に1としなくて、2という段階でシートには掲載するということにしたわけです。
  それから、もう一つ、39ページをあけていただきたいのですが、これについても、7-15、7-16、7-17については、読まれた先生方の間では異論がありました。すなわち、この論文の中身はデータが必ずしも十分ではないような気がする。このことにおいては少し問題があるような気がするけれども、ただ、与えられたテーマというか、提出されているテーマそのものが、非常にこの有明海異変の解明にとっては直接的なテーマなので、これも無視しないでいこうということで、シートには挙げるけれども、これについては、我々の小委員会では少し疑問があるよ、ということを付加した上でシートに掲載するということにしようということで、備考欄にそれを担当された方の意見が、ある程度詳細に付されていると思います。
  そういう意味で、少し我々としては委員会の中で、その文章を読まれて、この作業をされた先生の中でも、疑問はあるけれども、一応本委員会に挙げて、シートとして皆さんのところに見てもらって、そして、その判断は皆さんにお任せしようということでやっておりますので、この1、2というのは必ずしも小委員会の全体の結論といいますか、それが価値があるとかいったものではないということは理解していただきたいと思います。ただ、1については、少なくとも、小委員会の方では、これはぜひ参照してほしいという趣旨のものであるということであります。
  ですから、最終的に資料3-2とありますような、そういう文献シートを作成しておりますので、これは先ほど申しましたように1というふうにしたものと、2というふうにしたものがあるということをご理解ください。ただ、文献シートの方には、この1、2というのはつけていないと思いますので、それは、委員会の中で判断をいただきたいというふうに思います。以上です。

○須藤委員長 荒牧先生、どうもありがとうございました。
  小委員会は、今回の作業では一応おっしゃっていただいたように文献の精査を終えることになるわけでございます。これまで大変な作業をお引き受けいただきましたことを大変感謝申し上げます。どうぞ、小委員会の先生にもよろしくお伝えをいただきたいと思います。
  ここで、せっかくの機会でございますので、先生の今のご説明で何かご質問がございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
  それでは、今の荒牧先生のご説明で、一応小委員会のお仕事の成果をいただいているわけでございますが、岡田先生が先ほどお話ししていただいた試案を含めまして、小委員会の先生方に、さらにいろいろご意見を伺ったり、先ほどのような作業にはお加わりをいただくというようなことにもなるわけでございますので、荒牧先生を通して、どうぞ、小委員会の先生によろしくお伝えをして、今からお願いをしておいてください。まずは小委員会の荒牧委員長のお骨折りに感謝を申し上げまして、この議題を終了したいと思います。どうもありがとうございました。
  それでは、次が再生関連事業の報告ということでございますが、本日は2件の報告をいただきますが、最初に農林水産省の取組についてご報告をお願いいたします。どうぞ、お願いいたします。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 農林水産省農村振興局企画部資源課の春日と申します。平成17年度に農林水産省の方で行いました調査につきまして、ご報告させていただきたいと思います。
  私ども農村振興局におきまして平成17年度においては、ここに示しておりますように、1から7までの調査をやっております。
  この中で、平成16年度から変わったところを申し上げますと、4番の干潟水質浄化機能調査でございますが、これにつきましては、昨年度、平成16年度は冬季だけをやっておりましたけれども、17年度は春秋にかけて調査を行っております。それから、7番目の排水拡散調査につきましては、平成17年度に初めて行った調査でございます。それ以外につきましては、基本的に16年度から引き続いて調査をやっているところでございます。
  これが各調査を行った場所でございます。1番目の貧酸素現象調査、4番目の干潟水質浄化機能調査におきましては、有明海の湾奥部を中心としたところで行っております。それから、2番目の潮流調査と、6番目の二枚貝類等生息環境調査につきましては、有明海全域を対象としておりまして、3番目の赤潮調査及び7番目の排水拡散調査につきましては、諌早湾内及び諌早湾の周辺で調査を行っております。それから、5番目の底質環境調査については、各県の地先の底質の異なるようなところを選びまして、調査を行っております。
  それでは、順を追って概要について説明をさせていただきます。
  まず、貧酸素現象調査でございます。これは平成16年度から行っていまして、水産庁と環境省と連携して調査を行っております。農林水産省九州農政局におきましは、19地点で調査を行っておりまして、調査の内容は鉛直連続観測、それから定点連続観測及び一斉鉛直観測の3つの調査を行っております。四角のポイントが農政局の調査ポイントでございます。
  それぞれの調査について示しておりますが、まず、鉛直連続観測でございますけれども、これは諌早湾内に6カ所、やぐらを建てておりまして、1時間ごとに自動昇降装置を用いまして測定をしております。それから、定点連続観測でございますが、これは有明海の2本の海溝があるんですが、そのうちの西側の海溝の部分の佐賀県側のD地点とF地点におきまして、10分ごと及び30分ごとにデータをとっております。それから、一斉鉛直観測におきましては、週に1回、船で出まして、それぞれの調査を行っているところでございます。
  まず鉛直連続観測でございますけれども、このような形でやぐらを建てまして、自動的に昇降するような形で50cm間隔ということです。その結果を一部ご紹介しますが、そのうちのB4というポイントでございます。8月9日からのデータを示しておりますけれども、大潮時から小潮に向かっておりますけれども、そのうち8月15日前後で20%以下の貧酸素の状態が観測されております。小潮の時機に観測されているということです。それが8月22日におきまして大潮になるに従いまして、底層の貧酸素が解消されていくというような状況が見られておりまして、8月22日には解消しているということでございます。この貧酸素の発生には、潮汐もそうですし、水温とか、風とか、赤潮、こういった影響があるかと思いますけれども、この調査だけでは詳細なメカニズムはわかっておりません。
  次に、定点の連続観測、D地点とF地点で測定しておりますが、このようにブイを設置しております。D地点とF地点におけます表層と底層の貧酸素の状況を測定しております。上のグラフが表層でございまして、青がD、赤がFということでございますが、表層につきましては、40%のラインよりも下回っている地点はございませんでした。一方、底層の方を見ますと、特にD地点で40%以下の貧酸素が発生されていまして、一部はF地点におきましても40%以下の状況も見られているというような状況でございます。ただ、小潮期だけに出ているというわけでは必ずしもなくて、大潮時にも貧酸素の状況が出ているというような状況でございます。また、9月5日頃には台風が来ておりまして、台風14号が通過した後は、撹拌作用によりまして、底層も貧酸素が解消しているといったような状況でございます。
  これは7月21日から22日にかけて、24時間をより詳しく示したものですけれども、D地点におきましては、満潮から干潮に従いまして底層の方で貧酸素の水塊が発生、それが満潮になると消えて、また干潮で出る、こういうような状況でございます。
したがいまして、この貧酸素はDポイントよりも北側の有明海湾央で発生したものがD地点に移動しているのではないかというふうに考えております。一方、このときには、F地点では特に貧酸素のような状況は見られておりません。
  次に一斉鉛直観測の結果でございますが、船でセンサーをおろしながら観測をするということでございます。その結果でございますが、有明海の海溝のうちの西側の方のAからF、それから諌早湾の中を通る測線を示したものでございます。40%以下の貧酸素の部分が、有明海の湾奥の方と、諌早湾と両方で発生しているというのがわかると思います。
  これは、前回、西海区水研の方から発表されているのと同じものでございますが、有明海湾奥と諌早湾と両方で貧酸素が発生しているというのがわかると思います。
  今年度の結果を論点整理したいと思いますけれども、有明海湾奥と諌早湾の貧酸素がそれぞれ独立して観測されています。それから、佐賀沖の観測地点、(D地点)に見られる貧酸素現象は、有明海湾奥で発生した貧酸素水塊が潮汐によって移動したものと考えられます。結果につきましては、ホームページで公表していまして、18年度も引き続き調査を行いまして、関係を明らかにしていきたいと思っております。
  次に潮流調査でございます。これは、平成17年度におきましては夏季に行っておりまして、7月21日に47地点で調査を行って、流速計を用いた15昼夜の連続観測と、それから紐流し方式によります表層の観測と、2種類行っております。
  これが、15昼夜連続観測の模式図でございますけれども、基本的には電磁流速計を用いて海面下1.5mと、2分の1水深と、海底上と、3点のデータをとっております。ただ、電磁流速計を係留できないような場所、船の移動経路になっているようなところにおきましては、超音波流速計を設置して測定をしております。
  これは、紐流しによります上げ潮時の有明海の表層の流れを整理したものでございます。左側は、平成16年に行った冬場の調査、それから今回行いました夏の調査ということでございますけれども、夏の方が流速が速い状況になっております。
  それから、こちらが下げ潮期でございますけれども、下げ潮期におきましても、夏場の方が流速が高いような状況が、全般的には見られますけれども、ただ、同じ流線上でも速かったり遅かったり、あるいは流向がちょっとばらついているとか、そういった複雑な状況になっておりまして、風の影響等もかなり受けているのだろうというふうに思っております。
  それから、こちらは15昼夜連続観測の中で、M2分潮流を冬と夏で比較をしております。こちらが冬、こちらが夏ということでございまして、基本的に有明海の湾曲に沿った形でM2が見られるということでございますけれども、若干、ステーション8のところにおいては、多少違うような感じも見られておりますが、原因についてはよくわかりません。
  18年度におきましても、こういった観測結果をもとに、潮流シミュレーションモデルの精度を向上しまして、要因解明したいと思っております。また、引き続き不足するデータ等があれば、必要に応じて観測を行ってまいりたいと思っております。
  次に赤潮調査の結果でございます。これは、4県と連携をいたしまして、赤潮の発生の実態と、それに関連する水質の測定等を行っております。平成17年は6月から3月まで、週1回以上観測を行っております。観測結果につきましては、ホームページで公表しているところでございます。
  この調査は16年度からやっておりまして、調査ポイントでございますけれども、農村振興局で行っておりますのは、諌早湾の湾内と、その周辺部の6カ所でございます。あと各県それぞれ県の地先のところで測定をしているというところでございますけれども、この時期、九州農政局で観測している海域において、平成17年は大規模な赤潮は発生していません。水質の状況を示しておりますけれども、若干のDINが7月5日、見られておりまして、プランクトンの沈殿量も高いところが出ております。それから、Chl-aも多少高いところもあるわけですが、大規模な赤潮の報告というのは、平成17年度の観測期間を通じてございませんでした。降雨との関係が、若干示唆されるようなところもございまして、降雨があってしばらくして、プランクトン沈殿量が高くなったりとか、Chl-aが高くなったり、というふうに、そういうような状況も見られております。
  取りまとめておりますけれども、16年の冬季及び平成17年の夏季からの調査におきまして、諌早湾内では大規模な赤潮は報告されておりません。この結果につきましては、有明海・八代海漁場環境研究センターのホームページにて情報の提供を行っております。平成18年も引き続き調査を行う予定でございます。
  次に干潟の浄化機能の調査でございます。これは干潟の生態系モデルの精度向上を図るということで、特に諌早湾というのは泥干潟のモデルの精緻化をするということで、平成16年度は冬季に調査を行っております。今回17年度は春、夏、秋の調査を行っております。調査の場所は塩田川の河口域を中心として調査を行っております。
  モデルの概要はこういった形でございます。
  18年度はこの調査結果をもとに、モデルを精緻化したいということで、精度向上をさせまして、底質干潟の浄化機能を明らかにしてまいりたいと思います。
  次に底質環境調査でございます。これは平成16年度は大浦沖と国見沖の2カ所におきまして、底質を撹拌させまして、底質の変化あるいは底生生物の変化を調べておりました。平成17年度は、地域を広げまして、さらに調査を実施しています。
  調査におきましては、貝桁で撹拌の直後、それから2週間後、1カ月後、6カ月後、さらに平成16年度の調査海域では、その1年後の調査を行っております。
  結論を申しますと、ここでは示しておりませんけれども、継時的な変化は、特に明瞭な傾向というのが見られなかったということでございまして、今回は、2週間後とか、1カ月後とかでもそういったデータを1つに合わせまして、底質の状況と各項目との関係がどうだったのかということだけを示しております。底辺を含泥率にしまして、それぞれ強熱減量とか、CODとか、硫化物とか、生物の動向がどうなのかというのを示しております。強熱減量、それからCODにつきましては正の相関がかなり見られておりますが、硫化物についても正の相関が見られておりますけれども、強熱減量、CODに比べますと、ばらつきが少し多くなっております。
  それから、生物種類数、それから個体数につきましては、負の相関になっておりまして、特に個体数につきましては含泥率50%を境にして、個体数が少なくなっているような傾向も出ております。
  それから、音波探査によりまして底質の状況がどうなっているのか、というのを調べております。大浦沖の、ここに示しているのが、ABラインとDFラインというのをグラフにしておりますが、大浦沖で堆積している粘土・シルト層が、ABラインでは約5m程度、それがこちらでも3mから5m程度の粘土・シルト層が堆積をしているということがわかっております。
  それから、この底質環境調査におきましては、貝桁で海底を撹拌するわけですけれども、かなりごみ等も引き上げられた状況が見られております。
  調査結果でございますが、含泥率が高い海域は、強熱減量が高くて、COD及び硫化物が多く、底生生物の種や個体数が少なくなっていました。
  底質撹拌による底質等の環境変化の条件は、これまでの調査ではとらえることができませんでした。
  それから、諌早湾北部の粘土・シルト層は、佐賀県沿岸の谷部の粘土・シルト層と連続して堆積していることがわかりました。
  18年度も引き続き調査を行いたいと思っておりますけれども、継時的な変化が出るような、そういう精度を高めた調査ができないかどうかを検討しながらやりたい、というふうに思っております。
  次に二枚貝生息環境調査でございます。二枚貝類の生息に影響を及ぼしていると考えられますエイの生態について把握することを目的として調査を行っておりまして、長崎大学の山口先生のご指導を得ながら行っております。まず、分布調査といたしまして、エイを捕獲していただきまして、捕獲の状況を調べております。捕獲したところは赤丸で、捕獲されなかったのを黒点で印しておりますが、エイがいるところで操業をしていただいておりますが、どうしてもこういった空白のところも見えておりますけれども、特に有明海、長崎県の方は島原半島沖、こういったところで捕獲がされているというような状況でございます。
  船1槽当たりの捕獲された個体数でございますが、かなりばらつきがございますけれども、県別で示しておりますけれども、長崎県については、島原沖で捕獲はされているんですが、捕獲数は極端に低いような状況でございまして、それ以外の県におきましては、それなりの個体数が捕獲されているということがわかっております。それから、1個体当たりのサイズでございますけれども、これも長崎県は非常に小さい個体が多いということでございますが、それ以外の地域で捕獲されているエイは、5kgから15kgという、かなり大型なエイが捕獲されているということがわかっております。
  これは、山口先生の方にお願いをいたしまして、捕獲したエイの3匹に発信機をつけまして、その行動を調査していただいております。荒尾沖の方で放流をしまして、そのうち1匹だけ行動を捕捉することができました。南下をしていって、有明海の湾口部分まで来ているというのがわかっております。
  それから、胃の内容物を調査しております。17年度におきましては、大浦沖と島原沖の52個体の内容物の調査をしておりますが、サルボウ、アサリ、タイラギというような貝類でございまして、すべて貝類だったということでございます。これは平成16年度の調査結果と同じでございますが、ただ、構成は16年度はタイラギが結構多かったんですけれども、今回はサルボウが多かったということで、捕獲する場所の違いというのもあるのではないかと思っております。
  結果でございますけれども、ナルトビエイの胃の内容物は、調査を実施した2カ年とも、すべて貝類が占めておりました。ナルトビエイの平均重量は、5kgから15kgのものが多く確認されました。
  引き続き18年度も分布や生態に係る調査を継続いたしまして、二枚貝の現存量を把握して、食害による影響、こういったものをマークしたいというふうに思っております。
  最後に、排水拡散調査でございます。これは、諌早湾の締切り堤防のところで、排水門が北部と南部にそれぞれ1カ所ずつございますが、そのうちの北部排水門の方から350万トンの排水を諌早湾の方に排水いたしまして、その淡水が、湾内でどのような挙動を示すのかというのを調べたのものでございます。時期は7月5日にやっておりまして、調査といたしましては、船で外縁部をたどっていくような調査、それから定点を設けておりまして、その定点で鉛直に水質をはかっていくような鉛直観測、それから定点の連続観測の調査を行っております。あわせまして、船による外縁部追跡も行っております。
  これは調査ポイントでございます。諌早湾内にそれぞれポイントを設けています。これが12時過ぎに排水を開始しまして、その状況を船でとっているところでございます。一番外側に赤いラインがございまして、3時台でございますけれども、ここが一番広がった部分でございます。
  それから、浮泥の状況を測定しております。堆積量は当然排水門の直下が非常に大きくなっておりますけれども、この内訳を珪藻プランクトンの淡水域由来のプランクトンと、海域由来のプランクトンの比率を、下のグラフで示していますけれども、当然、排水門近傍付近では淡水由来のプランクトンの比率がそこそこ見られるような状況でございますが、それも大体諫早湾央ぐらいまででございまして、湾口部では、淡水由来のプランクトンは見られていないというような状況であります。
  それから、12時過ぎから排水を始めまして、排水が終了してから約1時間半後の16時の状況で、そのときの塩分濃度の低下は、B3ポイントぐらいまでで見られております。
  同じような調査を過去にも何度かやっていまして、過去30万トン程度の排水から始まりまして、最高で2,000万トン程度の排水時にも行っております。このときも、外縁部の状況はB3ポイント付近にとどまっていたというようなことが観測されております。
  17年度に行いました希釈・混合過程を、時間を追って示したものでございます。まず12時で、これは排水直前の状況でございます。それから、1時間後でございます。2時間後になりまして広がっている。3時間後はちょうど干潮時でございますが、S3の内側近くまで来ています。2時間後とそれほど変わっていない。これからは満潮になっていきますので、むしろ押し戻されながら海水と混ざっていくような、そういうような状況を観測しております。
  結果について整理しておりますけれども、排水の外縁追跡の結果、調整池からの排水の直接的な影響というのは、湾央部までにとどまっていた。
  それから、水質調査の結果、塩分濃度の低下は目視による外縁部の内側におさまっていると考えられます。
  それから、沈降物調査の結果におきましては、調整池から出た懸濁物の多くは、諌早湾奥から湾央部で沈降していた。
  それから、過去に実施した大規模な排水時でも、排水の影響は湾央部までにとどまっていたということがわかっております。
  以上、農村振興局で行いました17年度の調査結果を述べさせていただきました。

○須藤委員長 ご説明、どうもありがとうございました。
  それでは、ただいまのご報告につきましては、委員の先生方のご質問、あるいはコメントをいただきたいと思います。小松先生。

○小松委員 3点、質問させていただきます。潮流調査のところで、聞き落としたかもしれないんですが、超音波流速計を使われているんですけれども、ADCPですか。それとも1測点というか、水深方向にも1測点をはかるようなものだったのかというのが1点。
  それから、冬季と夏季で、紐流し等で観測をやられているんですが、これが大潮のときだったのか、小潮のときだったのか、また、そのときの潮汐のぐあいが、どういうぐあいだったのか、潮汐の時系列、それが欲しいなということ。
  それから、もう一つは、22ページの下の図なんですが、これを見ると、夏季の方が上層と下層で随分違っているわけです。こうなると、これは密度流の影響かなという気がするんですが、このときの密度の鉛直方向分布をはかっていないのかどうか。その点いかがでしょうか。

○須藤委員長 以上3点、ご説明ください。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 まず観測機器でございますけれども、先生ご指摘のADCPで間違いありません。
  それから、2点目が、紐流しの潮まわりでございますけれども、大潮時にはかっております。
  3点目、M2分潮流の比較でございますけれども、15昼夜連続で行った密度の調査結果はございません。

○須藤委員長 調査していないということですね。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 はい。

○小松委員 ADCPだと、測点の水深方向に全部をはかっているわけですね。このデータは非常に貴重だと思うので、ぜひ、お願いしたいですね。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 わかりました。確認させていただきます。

○須藤委員長 それは後ほど、また提供してください。お願いします。ありがとうございました。それでは、楠田先生、どうぞ。

○楠田委員 何点かお教えいただきたいんですが、まず第1点目は、8ページの貧酸素水塊の解消なんですが、上げ潮のときに、貧酸素水塊がスッと通過するような状況が、一瞬、酸素濃度が低いところが、上げ潮のときフッと通過するようなデータになっているんですけれども、速度から逆算すると、どの辺にあった貧酸素水塊が瞬間に通過するかというのがおわかりになるか、観測結果に対して、それから得られる情報というのが、もう少しおわかりだったらお教えをいただきたい。
  それから、次の質問ですが、14ページのところの、一斉鉛直観測のときに、それで酸素濃度をはかられているんですけれども、これは毎秒5cmでずうっと落として酸素濃度をはかられているんですね。そういう理解でよろしいですね。そうするとレスポンスタイムがあって、落としていくときには、いつも高めに出るのではないかと思う。上げてくるときは低めに出るのではないか。だから、そこのデータの処理をどうされたのかというのを、お教えいただきたいと思います。
  それから、干潟なんですけれども、生態系モデルを使って調査をやっているんですね。昼夜やっていますか。
  それから最後の58ページのところで、淡水が放出されて、そこにいろいろ沈殿物がその辺に落ちているというような説明を、今、ちょうだいしたんですけれども、この辺は、現在どの程度、昔に比べると浅くなっているのかというのを教えていただきたい。以上です。よろしくお願いします。

○須藤委員長 それでは5点、どうぞ、順番に。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 8ページでございますけれども、確かに上げ潮時に低いところが若干切れているような状況がございますけれども、どのぐらいの場所かということでございますが、ちょっと具体的にどのくらいのところかというのは、現時点では、私ども、把握してございません。

○須藤委員長 後でそこはわかりますよね。後で、というか、今ここではなくて、後で皆さんで検討をされれば大体それはわかりますよね。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 大体わかると思います。

○須藤委員長 それは後でいいです。今ここでというと……。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 湾奥部から移動しているのだと思いますけれども、詳しいところはちょっと……

○須藤委員長 ですから、調べた結果については後でどうぞ、楠田先生にご報告してください。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 わかりました。
  それから、昼と夜の貧酸素の出方については、いろいろな要因があると思いますが、詳細な検討は、今のところはしていない状況でございます。
  それから、14ページのセンサーを上げたり下げたりする、これについては、ちょっと私ども把握しておりませんでして、ちょっと調べてみたいというふうに思っております。
  それから干潟の調査を行っているかどうかでございますけれども、確かに調査は昼だけやっている。確認したいと思います。
  それから沈殿物の状況で、どのくらい浅くなっているかということについては、ちょっと私ども、その辺は承知しておりません。

○須藤委員長 それは調べていますよね。調べているはずですよね。調べたはず、というのは変なんですけれども、多分どのぐらいの沈殿物がたまっているとか、そういうのは調べているのではないかと思うんですが。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 調べていると思います。

○須藤委員長 それと、今、多分、恐らく、ここですぐお答えできない問題がたくさんあったですね。1、2、3番目ぐらいまでの問題については、お調べになった結果を、どうぞ楠田先生に……。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 はい。

○須藤委員長 それから、最後の今の底質がどのくらいたまったかというのは、最後の排水調査のところと関係をするんですが、あれは別の委員会で調整池の浄化の問題とか、いろいろ取り組んでいますよね。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 はい、水質委員会で。

○須藤委員長 水質委員会でね。それはあそこの中の水質は、ここの守備範囲以外だとは思うんだけれども、出てくる水とか、今のような、先生がおっしゃるような沈殿物とか、そういう問題は、ここの守備範囲の中で論議をしていかないと、岡田先生の目に触れないわけですよね。岡田先生は委員だから、目に触れるんだけれども、一般には目に触れないですよね。なので、あの辺の情報もここに入るようにしていただいた方が、楠田先生も、多分そういうことがあったように、今、おっしゃったんだと思うんですが、ちょっと別の委員会でやっちゃうと情報が入らないので、それは総合的な評価をするので、入れていただければなというふうに私も思っておりましたので、あえて申し上げたいと思います。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 わかりました。

○須藤委員長 いいですか、楠田先生、そんなところで。
  それでは、ほかの先生、本城先生、どうぞ。

○本城委員 2件ほどお伺いしたいと思います。1つは、ナルトビエイの分布についてです。図には採取された地点と、されなかった地点があります。先程、ナルトビエイが生息しているところに、集中して採取する傾向にあるということは言われました。確かに有明海の中央域のところで多くのナルトビエイが捕獲されていますが、このあたりのエイは一体何を食べているんでしょうか。中央海域は泥化していて、貝が余り生息していない海域と思われますが、何を食べるために集まっているのかを知りたい。それから、諌早湾には何も書かれていない真っ白な状態ですが、これはエイがいないことなのか。エイがいないほどに、餌がないことを示しているのか。もしそうでなければ、諌早湾の中に船を入れて、エイがどのくらい生息しているのか、データとしてとられた方が良いように思います。
  それからもう1つ、水門からの淡水の拡散調査についてです。58ページからまず見ていただいた方がよろしいでしょうか。堆積のことは楠田先生が申されましたので、私は申しませんが、同じ興味を持っておりました。だんだんこの黄色が広がっていっていきます。そして、60ページ、62ページで変化を見ていますと、途中から、例えば61ページから30に達する高い値が出てきます。だから、これは上げ潮のときの調査であって、下げ潮のときの調査をやっていただく必要があるんじゃないか。もしこれが、下げ潮のときであったらすみません。上げ潮のときの調査でしょう。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 そうです。

○本城委員 それでは次回は下げ潮のときの調査結果を示していただきたい。

○須藤委員長 どうぞ、お答えください。コメントも入っていますので。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 エイが何を食べているかということでございますけれども、私どもは16年度から調査を行っておりまして、大浦沖と長崎沖でとれたエイをこれまで調査しておりまして、すべて貝類であったということでございまして、貝以外に何を食べているかは、ちょっとかわかりませんけれども、山口先生にお聞きしている範囲では、エイは基本的に貝を食べると聞いております。

○須藤委員長 では、菊池先生、今のところだけお願いします。

○菊池委員 一番多くとれるのは、若い個体で、それはシオフキを食べていますし、それからサルボウを食べています。サルボウは干潟から水深5mぐらいまでに生息し、それより深い所にはほとんど出てこない。ですから、たくさんつかまえた中でシオフキやサルボウをたくさん食べているのは若い個体です。若い個体は簡単に浅所に上ってはまた沖へおりていく。そして自分が子供を生むような大型の雌はタイラギを一番好むので、結局、大型のカキとタイラギがあれば、それを食べている。一応リーズナブルなものとして。暖かい季節に子供を生むわけですが、そのときに湾奥へ行って、それから熊本側の沿岸部の方へも行く。島原沖に多数がかたまっているところというのは、春に、まだ水温が低いときに、外海から入ってきたナルトビエイは、まず相対的に水温の高い島原半島の南の方にいて、それから湾全体に分布を広げ、外へ出ていく前の11月ごろに、また島原半島沖へ集結して出ていくらしい。一応そういう行動だと思います。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 ありがとうございました。
  それから、次の、エイの漁獲調査は、漁協の方が、エイがいるところでとっているというのが現状だと思いますけれども、諌早湾内での分布状況は確認させていただきたいと思います。
  それから、3点目の拡散調査のところでございますけれども、これは先生ご指摘のとおり、上げ潮時でございまして、今回は下げ潮時は夜だったものですから調査をしておりませんが、翌日の日中は調査しております。そのときには排水による塩分低下の状況は解消されておりまして、排水の影響は認められなくなったということで、お示しいたしませんでしたけれども、そのような状況でございました。

○本城委員 下げ潮のときの調査はしてください。

○須藤委員長 これからもあるわけですから、ぜひそれはご要望入れていただきたいと思います。
  ほかはよろしいですか。原先生、どうぞ。

○原委員 今、本城先生、ご指摘の44ページですけれども、ナルトビエイの調査区域が書いてございまして、調査期間が示されていて、17年6月から17年11月が、ここに示されていると思っていいわけですね。

○須藤委員長 どうぞ。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 これは17年度の分だけでございます。

○原委員 それで、この日にちは全部おわかりなんでしょうか。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 日にちはわかるはずです。

○原委員 いつ、どこでとられたというのが、これでは全然わからないので、トータルとしたらこうだということはわかりますけれども、ナルトビエイは、山口先生がおっしゃるように、情報が少ないということなので、これを有効に生かすために、とった日にちごとに、海域ごとに、地点ごと整理をすると、その後ろの方の47ページの、これももう少し、胃の内容物も変わっていくのかなという気がしたものですから、その点をお願いできればしたいなというのが1点目でございます。
  2点目でございますけれども、46ページの下のですけれども、移動の調査ですが、これはどのデータを使われたのかということと、たしか、これは3個体とおっしゃったんですけれども、筋が4本ありまして、どれが1個体で、回収をされて、また放されたのか、4本の意味と3個体という意味が、どういうふうになるんでしょうか。

○須藤委員長 どうぞ。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 アルゴスシステムという機械を使いまして追跡しております。それで、3個体放流したのですが、そのうちの2個体につきましては、すぐ捕捉できなくなっておりまして、ここで示しておりますのは、そのうちの捕捉できた1個体のみでございます。

○原委員 では、これはどういうふうに読むんですか。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 11月11日に荒尾沖で放しまして、その後、捕捉できたのが11月12日の熊本沖のところでございます。機器の特徴上、下に潜ってしまうと観測できなくなるということで、エイが上に上がったときに観測できるということでございまして、それが11月12日、さらに14日、12月3日に観測できたということです。

○原委員 それでは、これは1匹のデータで、それが上がったというふうに読むんですね。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 はい。

○原委員 そのときに、表面にたまたま出ていたからとらえることができた。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 はい。

○原委員 そういうふうに読むんですか。さっき3個体と言ったので……。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 放流したのが3個体で、1個体しか捕捉できなかったわけです。

○原委員 これの専門家によれば、今、潜っている水深まで、それから何が個体に起きたかが全部はかれるようになっているので、僕は専門ではありませんけれども、そういうふうになっていますから、少し使う機器を専門家とご相談して選ばれれば、データとしてはいいものがとれるんじゃないかと思います。勝手な観測です。

○須藤委員長 何人かの先生方からコメントをいただきましたが……。質問がおありですか。では、菊池先生が最後にお願いします。

○菊池委員 底質環境調査で、深さをどのぐらいまで届くような、この採泥器だけをお使いになっているんですか。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 コアもとっているんですが、基本的にはバケット型採泥器でとっております。何センチまで届くのかは、ちょっと……

○菊池委員 そうすると、底質環境の変化の状況は、その下の方とつながって堆積しているということなのかどうか、というような点を見ると、やはりこういう上を、貝桁網みたいなもので引っ張ったものでも、それの影響受けたというのか、もっと深くまで突きささる器具も併用なさった方がいいのではないかと思います。

○須藤委員長 ありがとうございました。
  それでは、いろいろ宿題も出たわけですが、改められる測定なんかについても改めていただきたいし、それから考察も続けていただきたいし、それから、いろいろ不明だと先生方がおっしゃった点については明らかにして、個別に、またそれぞれの先生にご報告いただくということにさせていただいて、とりあえず、この議題についてはこれで終了させていただきます。どうもご説明ありがとうございました。

○農林水産省農村振興局企画部資源課室長 どうもありがとうございました。

○須藤委員長 それでは、次に熊本県の取組の報告をお願いしたいと思いますが、熊本県では有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討委員会を設置されまして、再生に取り組んでおられます。この委員会の委員長である滝川先生から、委員会の枠組みについてご報告をいただいた後に、熊本県から具体的な再生方策の説明をお願いしたいと考えております。では、最初に滝川先生からご説明をいただきたいと思います。お願いいたします。

○滝川委員 委員長の方からご紹介いただきましたけれども、この熊本県の取組に関しましては、実は私と一緒に菊池先生、大和田先生等々多くの方に加わっていただきましたものですから、代表して、経緯についてご紹介させていただきたいと思います。
  まず、有明海に関するものですけれども、私どもの委員会としましては、第三者委員会、平成13年2月にできまして、これを受けた形で、現在、環境省の評価委員会が平成15年2月から進められているところですが、熊本県におきましても、環境政策課を中心としまして、地元における再生策の検討あるいは実施というものが熱望されていました。それに関しまして、有明の地元の委員会の中では、再生特別措置法ということで法的なものがあるんですが、それと時を同じくしまして、平成15年1月には環境再生推進法が制定され、行政、大学、住民一体となって自然環境を維持し、環境容量、生態系等の微妙なバランスを踏まえて、均衡のとれた、という表現になっていますが、そういったものに基づいた、知見に基づいた基本方針が打ち出されたわけです。この地域の環境再生ということに関しましては、地域特性と物理・化学、さらには生態系のバランスをとり、さらに海域全体としての均衡のとれたバランスを取る必要があるという事であります。地元におきましては、非常に熱望されるところであるわけですが、環境悪化あるいは漁業不振の原因を究明して、対策を考えるというふうな、学術的な観点として対策を、そういった方法というのは原因が解明されるまでなかなか実施できないというということがございますし、再生に向けて、できるところから始めてくれということで、そういったことに、みんなで取り組まなければいけない。そのときに、「あるべき姿」という共通の認識、そのためにはどういう方向がいいかを認識しておく必要があるだろうというふうなことで、実は委員会が立ち上がる前に、有明海・八代海再生に係る情報交換会というものを、平成15年からスタートいたしました。検討内容といたしまして、有明海・八代海の現状と環境変遷の把握をしようということから始めまして、それをベースに有明海・八代海両海域のあるべき姿の構築を図る、「現状」と「あるべき姿」とのギャップを埋めるための、科学的根拠に基づいた再生方策の検討を行うということです。検討委員会が立ち上がる前から意見交換会を実施して、そのときのメンバーが、専門の方々、それに熊本県ということでスタートしたわけでございます。
  それを受けまして、県の方で検討委員会というのを設置していただきまして、16年8月から17年3月まで11回の委員会と6回の意見交換会を実施したわけでございます。そのときのメンバーと、オブザーバーとして環境省、農林水産省、国土交通省等にもご参加いただく形にしていただきながら、鋭意検討を進めているという状況でございます。その中で16年におきまして、先ほど紹介したように、11回の検討会と17年度には地元に入りまして有明海地区、八代海地区の住民の方々と意見交換会、再生に向けてどうしたらいいでしょうかということの検討会を開きました。現状の問題点、あるいは均衡とは何でしょうというようなことを、まず念頭に置きまして、そのためにデータの整備、あるいは漁業者からの聞き取り、住民のアンケート等々をやりまして、そういったものをベースに各課題を中心に、課題といいますのが、有明海全体、あるいはケーススタディー地区、八代地区、こういうふうな地区ごとに、こういう課題を持つということでございます。
  それを受けて、基本理念、基本的な方針の検討をしつつ、先生方のご意見を反映しながら、具体的な再生方策の抽出というものを進めてきまして、ことしの3月に一応まとまりましたが、ここにありますように、再生に向けて、再生方策のまとめといったことで、有明海・八代海、あるいは一部における再生方策をまとめさせていただいて、さらにそれを実施していく上で、情報公開なども、再生方策推進対策というようなものを取りまとめたというふうな経緯になっております。
  そういった流れの中で、詳しい内容につきましては、県の方からご説明させていただきます。以上でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。では、県の方からご説明ください。

○熊本県農林水産政策課参事 先生からのご指名でございますので、県から概略を説明させていただきます。
  先ほど、先生からのご説明とちょっと重複する部分があると思いますけれども、まず、本調査におけるポイントを1から3まで示しております。まず、既存の資料やデータ、市史、町史の活用ということで、熊本県の資料だけではございませんけれども、過去の報告資料等、それから市町村の市誌など、さまざまなデータ、自然条件のデータだけではなくて、社会変動的など、広く収集しております。
  2番目に、調査が行われておらず、データがない時代の状況把握については、なかなか昔のデータがないということがありますので、漁業者への聞き取りや、一般住民を含めたアンケート調査をやっております。
  それから、3番目が専門家による検討ということで、専門の先生方、それから地元の県漁連の方、それから一般の代表の方に入っていただいて、先ほどご紹介がありました有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討委員会を設置して収集したデータを踏まえ検討を進めてまいりました。
  本調査におけるポイント(2)ということで、データがない中で、どのように原因を探り、いかに再生への道筋を示すかということでございますけれども、調査は有明海・八代海全体というお話もあったんですけれども、本県だけでやるというのは、なかなか難しいということから、干潟や藻場のある沿岸域の変化が非常に大きな影響を及ぼしているのではないか、という考えに基づきまして、対象を本県の干潟や藻場等沿岸域として、調査、検討に着手した経緯がございます。
  それから、調査データだけではなくて、聞き取り結果等を踏まえ、専門家の検討を経て、原因・要因を想定しております。
  それから、同じ海域においても、区域ごとに環境条件等が異なることから、ゾーン区分を試みるとともに、課題を絞り込むためのケーススタディー地区として各海域で3カ所ずつ、計6カ所を設定しております。
  それから、2)の聞き取り結果等を踏まえた専門家の検討を経て原因、要因を想定したものについて、他県の情報あるいは県内での聞き取り等を勘案し、ケーススタディー地区ごとに具体的な再生方策を専門家の意見として提示していただいております。
  ※で書いていますように、実証段階の方策あるいは今後必要と考えられる調査等についても、方策の中で示していただいております。
  それから、5)でございますけれども、4)の結果については、先生方からも、望ましい姿、あるいは目指すべき方向といったものについて、どのくらい示せるのかというような議論はございましたけれども、それにつきましては、あくまで専門家の意見として提出するもので、これについては、今後、地元にフィードバックしながら地域の合意形成等に努めるということで示していただいております。
  具体的な調査内容は、300ページございますので、詳細はちょっと説明することができませんので、さわりを説明させていただきたいと思います。
  調査内容についてですけれども、既存資料の収集、整理ということで、社会環境、自然環境など、多様な項目について資料の収集、整理を行いました。
  現状、過去からの変遷、1950年から現在までの資料について整理を行ったということで、1950年以降のデータをできるだけ増やすということで整理しており、漁獲量の推移では、ゾーン毎に分割できないものもございます。
  それから、聞き取り調査でございますけれども、既存資料では十分に整理できない項目について把握するため、熊本県の沿岸域漁業者を対象に聞き取り調査を行ったということでございます。実際にどういう方法で行ったかといいますと、最初にアンケート調査を県で試しにやったことがございまして、その時には年代の若い方、30代、40代の方ですと、昔のことについては、例えばお父さんとか、おじいさんに聞いたものだったということしか出てきませんでした。あるいは、わからないという答えもありましたので、比較的年配の方、できれば60代とか70代とかの方で、地元に詳しいような方を漁協等にお願いして、推薦していただいて、直接面接の形で委託により聞き取り調査をやっています。
  調査は、干潟や海域の状況及びその年代や場所について聞き取りを行って、その結果を地図に記入するとともに、年表として整理しました。
  地図に記入したものが、こういったものでございます。上の方から見ますと、ちょっと見にくいですけれども、悪化が著しいとか、下流部でヘドロ化が著しい、あるいは以前はヨシが密生していたとか、そういった結果等が出ております。
  これも見えにくくて申しわけないのですけれども、沿岸漁業者への聞き取りを年表化したものでございます。左側から30年以上前ということで聞き取った内容、それから、その次は昭和50年代から60年代、その次が平成に入ってから、それから、最近ということで、ここ5年ぐらいということで一応整理をしてみました。縦の項目は水質、底質、魚類・貝類、ノリ、養殖という項目に分けております。
  次に調査内容についてですけれども、アンケート調査でございます。これは、当初、漁業者だけにしか聞き取りをしておりませんでしたので、先生からご指摘もありまして、一般住民を含めた幅広い層の意見を収集するため、内水面漁業者、沿岸域住民、一部の沿岸漁業者を対象にアンケートをやっております。
  それから、内容としましては、河川流域の状況、それから過去の干潟や海域の状況について把握しています。
  なお、このアンケート調査につきましては、漁業協同組合や自治体による推薦を受けた方々を対象に実施しているため、統計的な調査ではございません。
  こちらはアンケート調査結果の例でございます。表には、干潟の環境について、住まれている地域、あるいは干潟や海域について思われていることに○をつけてください、ということで、「悪化している」、「変わっている」、「変わっていない」、「何ら関心がない」、「その他」ということで、聞いております。結果は円グラフで色分けしておりますけれども、区域によって住民の方の意識が違うということがわかります。
  次に現地調査ですけれども、海岸線の現地踏査を行って、満潮時、干潮時の海岸前面の状況、あるいは護岸の状況、それから後背地の状況について記録し整理しました。
  また、生態系の豊かさを示す指標として、塩生植物の分布状況を、一級河川の河口部を中心に調査をしております。
  調査結果でございます。沿岸部を示しておりまして、例えば背後地の状況として自然の状態なのか、市街地であるのかなどをあらわしています。それから、干潟域の状況がどのような状況であるのか、といったものを示しております。青い線が自然海岸、赤い部分が人工海岸、引っ張って書いている部分が塩生植物の分布の状況でございます。
  次が調査内容について、干潟等沿岸海域の再生方策に関する事例や文献の収集、整理でございます。干潟等沿岸海域の再生に関して、他の地域での事例等について収集したというものでございます。
  これは事例ということで、大阪湾、東京湾、瀬戸内の再生計画とか、そういったものの事例、それからほかの地域でやられる中長期型の方策とかいったものの事例を収集しております。
  次はケーススタディー地区における意見交換会です。具体的な再生方策を検討していこうということですけれども、沿岸全域での検討はなかなか難しいということで、もうちょっと絞りこみまして、干潟等沿岸海域について代表的な特徴を持つ6つのケーススタディー地区を選定しております。その上で各地区において地元の方々と委員が直接意見の交換を行っております。
  これは、実際に御所浦地区における意見交換会の状況です。また、すべての地区ではございませんけれども、できる限り事前に委員の先生方に現地を見ていただき、その後は地元の方々との意見交換会をしております。
  次に、具体的な再生方策の検討プロセスについてですが、まず既往資料と現地調査結果による地域特性を一覧表に整理し、海域をゾーン区分しております。
  それから、各ゾーンに対応する委員アンケートに基づいて、重点地区とありますけれども、ケーススタディー地区を選定しております。
  課題の抽出と整理ということでございますけれども、意見交換会や聞き取り調査結果から問題点を整理しまして、地区ごとの対策について、委員の方々からのご意見をいただきまして、皆さんでご議論いただきまして、抽出・整理いたしました。
  次に基本理念・基本方針の設定ということで、再生方策ということでスタートした中で各ケーススタディーとか、そういうところについては、具体的な検討を進めたのですけれども、全体的にもバランスをとって進める必要があるだろうということで、基本理念、基本方針というものをご議論いただき策定させていただいております。
  具体的には、基本理念でございますけれども、「有明海・八代海の歴史的変遷、自然的・社会的条件、それから現状の課題等といった地域特性と、両海域全体の調和を踏まえた『望ましい姿』を念頭に置きながら、県、市町村、漁業者、地域住民をはじめとする県民、国、関係県が連携・協力し、有明海・八代海を『豊かな海』として再生し、後代の国民に継承する」ということであります。
  次に、基本方針としまして、「漁業対象の生き物を含む多様で豊かな生態系の回復・維持」。それから、2番目は「山・川・海の連続性と、保全・利用・防災の調和についての配慮」。それから、3番目に「再生・保全の主体となる関係者間の相互の理解と合意形成及び積極的参加」といったものを策定していただいております。
  それから、ここが一番問題なんですけれども、望ましい姿と再生方策で、さまざまな再生方策を推進していくためには、有明海・八代海の全体の海域の調和を図りつつ、各地域の特性に応じた目標像を描くことが必要だろうとの議論がありました。
  目標像については、地域の主体である市町村、漁業者、地域住民の合意の上で設定すべきものであるけれども、これら各地域において独自に目標が設定されることを前提として、将来にわたる「望ましい姿」について、本委員会での検討結果を提示しようということで、「望ましい姿」ということについても示しております。
  再生方策と具体的再生方策の事例ということで、これについては課題を踏まえた再生方策について、具体的事例を示し、わかりやすくするため、ケーススタディー地区ごとに具体的事例を示しております。
  ここでは、すべての地区は示せませんので、荒尾地区の状況だけお示ししたいと思います。
  荒尾地区の現状ということで、調査をやったときの写真でございます。荒尾地区は南北に長い干潟になっております。また、一部に松林があります。以前は、白砂青松の松林がかなりあったという記録がありますけれども、今、そういったのがなくなってきていますので、地元でも復活させる動きが出ております。
  これは、航空写真による海岸線の変遷について、昭和22年、49年、平成4年で、比較しております。北部の三池港付近で埋立等が昭和22年から49年にかけて行われましたが、それ以降については、それほど大きい海岸線の変更はないという状況でございます。
  それから、これは大正12年から14年に、干潟の底質あるいは生物調査をやっておりまして、そのときのデータをわかりやすいように補色しましたものでございます。干潟の底質部分ということで、砂質泥が広範囲にわたって卓越しております。隣が平成16年の、最近の干潟の状況でございますけれども、表層については砂が卓越している状況になってきております。北部では、礫がやや多く、南部では泥分が多いという状況が見えます。
  次に、これは、アサリとクルマエビの漁獲高の変遷を示しております。アサリについては、1994年以降、生産量が低水準で推移しているという状況でございます。
  それから、荒尾市史からの抜粋でございますけれども、聞き取り等含めまして、澪筋や洲の状況ということで、干潟の状況というのを再現した調査結果がございましたので、こういったものも収集しております。
  その隣が底生生物の出現状況でございますが、それぞれ調査して生物を示しておりまして、オオシャミセンガイも記録されております。
  次は、荒尾地区の聞き取り調査結果を示したもので、荒尾の場合は北部でヘドロ化が著しいとの意見などが得られています。
  次に、荒尾地区の望ましい姿ということで、「アサリ、タイラギ、エビの豊かな海と人間の営みが共存している」という形の望ましい姿を示していただきました。
それから、荒尾市の課題としましては、海岸における湧水の減少や干潟地形の平坦化、海岸の人工化による潮流の変化、それから、透明度の上昇、底質の泥化といったような課題が示されております。
  具体的な再生方策ということで示していただいたのが、これから説明するものでございますけれども、例としましては、例えば押さえ盛砂や、突堤、潜堤を組み合わせた、なぎさ線の造成ということでございます。それから、計画段階での環境影響評価ということで、今後予定されている環境に負の影響を与える開発について、早期に計画内容を把握し、計画変更などの対策を講じる。これについては、熊本県では環境評価条例につきまして、適切に検討するということで、事例としては示しておいたところでございます。
  それから、再生方策として、干潟域での海水の停滞化の解消ということでございますけれども、ミオ(水路)が埋まってきたというようなお話もありまして、作澪をするような話も、今、検討されているようでございます。
  それから、干潟域での堆積土砂の除去、耕耘、覆砂、底泥の除去。下水道や合併浄化槽など、生活排水処理施設の整備の推進。それから、これは健全な漁業の維持・構築ということで、水温上昇や栄養塩の低下など人為的なコントロールが困難な現象への対応を考える必要があるということで、例えば品種の導入とか、養殖手法の改善といったことを記していただいております。
  以上、短い期間で検討が十分できたのかなというようなことではございますけれども、今回いただいた方策等をもとに、今年度、また地元の方に意見交換会を考えているとろでございます。
  長くなりましてすみません。以上でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。先ほどちょっと私、聞き漏らしたんですが、報告書はいつできるとおっしゃったんですか。

○熊本県農林水産政策課参事 報告書は一応1回作成したんですけれども、修正がいろいろありまして、近日中、7月の頭には委員の先生方にお渡しするようにしたいと考えております。事務局にデータでもお渡ししておきますので、データを提供することは可能だと思います。

○須藤委員長 そうですか。ありがとうございます。それはどうぞご検討ください。
  時間が余りなくなったので、どうしてもというご質問があれば承りますが、では、1つだけどうぞ、楠田先生。

○楠田委員 質問でなくてお願いです。いろいろな対策を打たれるというのは非常に結構なんですが、そのときにアセスもされるというような感じでしたけれども、有明海全域に対してどう影響を及ぼすかという視点での検討をいただいて、それを熊本県で実施されていくようにしていただければありがたと思います。以上です。 

○須藤委員長 これは、ここで急遽、そう言われても困るでしょうから、有明全体への影響での意味で……

○熊本県農林水産政策課参事 報告では全体の調和を考えるという提言をいただいておりまして、重い宿題をいただいていると思っております。今後、言われたようなことを踏まえまして、検討したいと思います。

○須藤委員長 委員長もいらっしゃるから、漸次、その辺は検討していただきたい。
  それでは、伺えばたくさんご質問とか、意識啓発の問題なんかも大事なところがあるんですが、あと数分になりましたので、とりあえず、熊本県の発表はこれで中断させていただきます。そういう意味で報告書等、当方の事務局にいただければ、またいろいろお教えいただくことも多かろうと思うし、岡田先生の方のグループの検討の方にも反映、十分していきたいとこんなふうに考えております。
  どうもありがとうございました。
  それでは、次の議題は、その他でございますが、大和田委員を中心に八代海に詳しい委員にお集まりいただいてご検討いただいているというふうに伺っております。前回もそういうふうに伺いましたので、引き続きよろしくお願いをしたいと思いますが、大和田先生、何か現況でご発言をいただけますでしょうか。

○大和田委員 この前の委員会で申し上げましたが、その後、3月20日に熊本県で集まっていただきまして、委員としては、菊池委員、滝川委員、本城委員、山本委員、弘田委員、それから坂本さん、関係県の方、そういう方々に集まっていただきまして、ある程度宿題といいますか、課題を決めてそれぞれの委員に分担しまして、その後、6月8日には赤潮に関すること、6月15日には全体について議論しました。ただ、ここで報告するまでには、まだ至っておりませんので、もうちょっとまとまったら、ご報告したいと思っております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
  だんだん詰まってまいりましたので、次回には少しでも進まないと、有明海のみの委員会報告になってしまうとまずいんですね。両者平等に扱っていきたいと思いますので、どうぞよろしく、次が8月になりますので、次回には少しでもいただければと思っています。

○大和田委員 本日もこの後、相談がありますので……。

○須藤委員長 そうですね。どうぞよろしくお願いいたします。その他として、事務局、何かございますでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 今、先生の方からお話がありましたように、次回の評価委員会については8月を予定しております、皆さんのお手元に日程表があるかと思いますので、ご都合を記入の上、事務局にいただければと思います。次回の議題といたしまして、本日に引き続きまして、岡田先生にご報告をいただく。それから、できれば八代海についての報告をいただく。あと、その他、再生関連事業の報告をお願いしておりますので、関係機関におかれましも、協力をお願いしたいと思います。

○須藤委員長 ありがとうございました。8月に開催するということで、日程調整の方だけは、先生方お集まりになり、できれば、今日置いていっていただければ大変ありがたいという感じがいたします。
  全体を通して、何かご発言ございますか。よろしゅうございますか。
  それでは、これをもちまして、本日の議題はすべて終了させていただきました。
  これにて第21回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会といたします。議事進行に係る皆さんのご協力に対して感謝申し上げます。
  ありがとうございました。どうもお疲れさまでございました。

午後4時28分 閉会