第19回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

1.日時

平成18年2月23日(木) 14:00~16:00

2.場所

中央合同庁舎5号館22階 環境省第1会議室

3.出席者

委員長 須藤隆一委員長
委員 荒牧軍治委員、岡田光正委員、楠田哲也委員、小松利光委員、三本菅善昭委員、清野聡子委員、滝川清委員、中田英昭委員、福岡捷二委員、本城凡夫委員、森下郁子委員、山口敦子委員、山田真知子委員、山本智子委員
臨時委員 菊池泰二委員
事務局 環境省水・大気環境局水環境担当審議官、水・大気環境局水環境課長、水環境課閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午後2時00分 開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 定刻となりましたので、ただいまから第19回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本日も年度末にもかかわらず、先生方、お忙しいところをありがとうございます。
 本日は、相生委員、伊藤委員、大和田委員、原委員、細川委員の5名から、あらかじめご欠席のご連絡をいただいておりまして、16名の先生方にご出席いただく予定でございます。若干おくれている方がいらっしゃいますが、定足数は満たしてございます。
 それでは、議事に入ります前に、資料の確認をさせていただきます。
 お手元の資料、議事次第の裏に資料1として名簿がございます。資料2といたしまして「有明海・八代海総合調査評価委員会-中間取りまとめ(案)-」がございます。それから、参考資料といたしまして「問題点と原因・要因との関連に関する今後の作業の方向性(試案)について」というものがございます。
 以上でございます。
 それでは、以後の進行につきましては須藤委員長にお願いいたします。

○須藤委員長 かしこまりました。
 皆さん、こんにちは。本日も大変ご多用の中をお繰り合わせご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 また、関係4省、関係5県の皆様にもご出席をいただきまして、ありがとうございます。
 本日もまた大勢の皆様に傍聴においでいただきましたことも感謝申し上げます。
 本日は、大体4時を目途に議事を進行させていただきたいと思っておりますので、議事進行にもよろしくご協力をいただきたいと思います。
 議事につきましては、お手元の議事次第にお示しのとおり、「その他」まで含めて2題でございますが、主として中間取りまとめ(案)についてでございます。前回の評価委員会で素案を検討していただきました。評価委員会の後、水産グループは魚類について検討しておられます。事務局から修正部分について説明をお願いいたしますが、魚類の部分については中田委員から検討結果をご報告いただきたいと思っております。
 まず、事務局の方から主として修正部分のご説明を願います。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、資料2につきましてご説明をいたします。
 ただいま委員長からお話がございましたように、前回の評価委員会で全体をご説明いたしまして、いろいろご議論いただきました。そのときのご指摘、それから、その後、追加的に一部の委員からコメントもいただいております。そういう中で、八代海の記述についてもできる範囲で追加したというようなこともございます。その点も含めまして、魚類以外の部分について最初に私の方からご説明させていただきたいと思います。
 まず、資料の8ページあたりでございます。
 ここは重金属等の状況でございますが、八代海の部分がございませんでしたので、上から2~3行目に八代海の重金属のデータを追加してございます。基本的には有明海と同様、ほかの水域と比べて特に高い状況ではなかったということでございます。
 10ページにも八代海のデータが追加されてございます。
 それから、21ページでございます。
 ここは小委員会の活動の報告でございますが、前回、第18回におきまして新たに小委員会から文献のレビューの結果が報告されましたので、その部分を追加してございます。
 続きまして、63ページ、潮流の部分でございますが、八代海について何も記述がなかったものですから、一番下のところに、滝川先生が発表していらっしゃいます論文から、八代海の一般的な潮流の特徴について記載させていただいております。
 64ページ、潮流についての記述がございますけれども、ここにつきましては、前回の委員会で小松委員から、過去の潮流の調査結果との比較について若干記述が冗長ではないかということで、海上保安庁による観測の結果について記述を整理いたしまして、「この2回の観測結果では、河川流入量等の相違による重力循環流の効果が異なっていたおそれがあることから、地形の変化のみの効果を取り出して評価するところまでは至っていないと考えられる」というワーキンググループでの評価を加えてございます。
 それから69ページ、ノリ養殖施設による潮流流速への影響の部分でございます。
 ここも記述が冗長ではないかというご指摘がございましたので、記述の簡略化、図の整理等をしてございます。
 それから70ページ、熊本新港の部分でございます。
 内容は変わっておりませんが、これが数値シミュレーションの結果であることが抜けておりましたので、その旨を追加してございます。
 それから、72ページの表でございます。
 一番左の「問題の概況」欄で、従来の記述に加えまして、「島原半島沿岸の潮流流速の減少」という観測結果についても記述してございます。
 73ページから、赤潮でございます。
 前回の委員会でご指摘がございましたので、赤潮の名前につきまして、種名、属名は学名として、原語で記述するということで、すべて括弧でその記述を追加してございます。
 75ページでございます。
 3)の表題ですけれども、今回「ラフィド藻」という言葉を使っております。これはほかの部分が「大型珪藻」「渦鞭毛藻」という名前になっておりますので、それと同じレベルの分類ということで「ラフィド藻」という名称を使っております。
 75ページでは、3つ目の「・」の次に抜けがございました。前回ご議論があったところでございますけれども、有明海湾奥では、1984年にシャットネラの一種が、また、1988年にはシャットネラ・アンティカの発生が確認されているという事実がございましたが、その記述が抜けておりましたので、それをつけ加えたいと思っております。
 それに付随しまして、4つ目の「・」に「1989年に諫早湾で最初のChattonella赤潮が確認された」とございますが、これは最初ではないので、「最初の」を削除するという変更をさせていただきたいと思っております。
 76ページ、渦鞭毛藻の部分でございます。
 魚類養殖の給餌形態を変更してリン等を削減するという記述が前回の素案ではあったんですけれども、前回のご議論で、給餌形態の変更は既に行われているということでございましたので、その部分は文章を変えまして、「給餌形態の変更」という言葉ではなくて、「魚類養殖に伴う負荷の削減を推進する必要がある」という一般的な記述に改めております。
 次が78ページ、底質の部分でございます。
 一番下でございますが、「底質の泥化は以前から始まっている」という記述に「(熊本沖では20~30年前)」と具体的な数字をつけ加えてございます。
 ちょっと飛びまして94ページ、貧酸素水塊の部分でございます。
 これにつきましても八代海の記述が全くなかったということで、ちょっと白黒で見にくくて申しわけありませんが、滝川先生等の論文から八代海の貧酸素化の状況につきまして記述を引用させていただいております。
 109ページでございます。
 細かい話でございますが、ノリ養殖の上から3分の1ぐらいですか、生長要因のところで栄養塩の全窒素の濃度の数字が違っておりましたので、修正しております。
 同じく109ページで、もとの案では下の方に酸処理剤の散布をしているという記述があったんですけれども、伊藤委員からもう既に行われていないというご指摘がございましたので、酸処理剤の散布という記述は削除しております。
 同じく109ページの一番下、酸処理剤の使用量につきまして、これは私どもの方で調べた最新のデータがございましたので、平成15年度の使用量を括弧書きで追加させていただいております。
 118ページのアサリでございます。
 これにつきましても前回の委員会でご指摘があった部分でございますけれども、まず、上から2行目の漁獲量の推移でございますが、2003年の数字が間違っていたということで、「7,000トン」という数字に修正してございます。それに伴いまして、この下の図でございますが、漁獲量の推移、2003年に7,000トンに回復したという部分が抜けておりましたので、棒グラフをつけ加えております。
 それから121ページ、タイラギの記述でございます。
 前回の素案では、熊本県のタイラギの漁獲量のデータがこのグラフの中に入っていたんですけれども、熊本県のデータにつきましては必ずしも正確な数字が把握されていない事情がある、トレンドを見るという意味では、熊本県のデータは除いた方がいいだろうという委員のご指摘がございましたので、熊本県のデータを削除してございます。
 次に、136ページからの第4章でございます。
 前回は、第4章については骨子という形で書かせていただきまして、それをベースに今回、文章化しております。基本的には前回の骨子に沿ってつくっておりますけれども、前回いろいろとご指摘をいただきましたので、若干修正してございます。
 まず最初に138ページ、因果関係の可能性を示した図でございます。
 前回は八代海についても載せておりましたけれども、それは十分ではないのではないかという大和田先生からのご指摘がございまして、我々としても、できればそれを充実して載せたいと思ったんですけれども、時間もございませんで十分な追加・修正ができないということで、今回は、八代海についてはこの図は落としております。
 それの関連で、136ページの上の部分でございますけれども、八代海については現時点では知見が十分でない、調査研究が十分でないということで、今後さらに知見の整理、調査研究を推進する必要があるということを書かせていただいております。
 また、この図につきましては、可能性が指摘されているものは全部含めているということをここに書いてございます。
 それから、136ページの真ん中からちょっと下でございます。
 いろいろな要因を分類したらどうかということを前回、書いてございましたけれども、分類の仕方についていろいろご意見がございましたので、ここでは、まず直接的な影響を与える要因と間接的に影響を及ぼす要因とに分けた上で、それらの要因が人為的に制御可能なのか、あるいは自然条件等で困難なのかという視点も必要だという書き方で整理してございます。
 136ページ、下から2つ目のパラグラフでございます。
 前回、森下委員あるいは楠田委員から、生態系全体の状況をきちんと見なければいけないとか、物質収支の観点が大事であるというご指摘をいただきましたので、このパラグラフで「個別の要因の評価だけではなく、生態系全体の状況を把握し、底泥への移行や漁獲による系外排出を含めた海域全体の物質収支の動向から評価する観点が重要である」という文章をつけ加えております。
 それから、138ページの図ですけれども、複数の委員から、これはまだ十分検証されていない、可能性だけのものも入っているのではないかということでございました。これにつきましては表題を「問題点と原因・要因との関連の可能性(検討中)」として、検討中のものであることを明記させていただいております。
 そして、先ほど申しましたように、八代海については今後さらに充実を図るということで、今回は、八代海のフロー図は削除しております。
 それから、小松先生からご指摘がございました干拓、埋め立てに伴う海面積の縮小を、このフローにつけ加えております。
 それから139ページ、「再生に向けた対策オプションとその評価」でございます。
 これについては一番最後のパラグラフにおきまして、内外の事例を参考にすることも有効だということをつけ加えております。
 それから、4.3「調査研究・監視の総合的推進」でございます。
 全体の流れは前回と同様でございますけれども、特に最後の調査研究・監視の総合的な推進という部分で、調査研究のマスタープランの策定でありますとか、その評価に関するシステム、こういうものが重要だという指摘がございましたので、例示的にそういうものをつけ加えております。
 ちょっとこの文章、「マスタープラン」というのが重複しておりますので、最後の「マスタープラン」は削除したいと思います。
 簡単でございますが、前回ご説明しました素案からの変更点は、水産部分以外は以上でございます。

○須藤委員長 高橋室長、大変簡潔にご説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、冒頭私が申し上げましたように、魚類については水産グループで検討いただいておりますので、中田先生から検討結果のご報告をお願いいたします。

○中田委員 中間取りまとめについて、委員会等からコメントをいただきまして、2月13日に水産資源関係の検討グループの会合を開きました。それで、特に魚類資源の問題を中心に論議しました。
 その後、農村振興局、国土交通省などからもご意見をいただいておりますので、その全体に対しての対応についてご報告したいと思います。
 この取りまとめ(案)の125ページ以降になりますが、まず、125ページから127ページにかけて、有明海の魚類漁獲量の変動傾向に関する記述がございます。この点について幾つか意見をいただいております。
 検討グループの方針としては、正確な記述にすべく努力するということで、ここでも農林統計資料を基礎にして検討してきているわけですけれども、資料の性格上、余り個別の魚種の増減の詳細、この年は増えたとかこの年は減ったとか、そういうレベルの論議をすることは避けた方がいいだろうということで、傾向としてまとめることにいたしました。
 それから、1990年代の後半に減少が著しい魚類を1つ問題として取り上げておりますが、それについては、そのように判断した根拠をより明確にしておく、そういうことを申し合わせました。
 具体的には、125ページの上の方、2)の2項目にその方針を1つ入れるということで、「検討の基礎とした統計資料の性格上、個別の魚種の増減の詳細を論議することは避け、傾向としてまとめることとする」という文を加えさせていただきました。
 これについて、実は、いただいたご意見の中に「詳細を論議することは困難である」とか「できない」という言い方にすべきではないかというものがございましたけれども、それはちょっと私どもの考え方とずれておりまして、私どもは農林水産統計の資料を一応信頼できるものとして、それを基礎にして検討するわけですが、あくまで余りにも細かい論議は避けたいということでございまして、「検討が困難である」とか「できない」ということになりますと、検討そのものに意味がないということにもなりかねませんので、そこは、こういう言い方にさせていただきたいと思っております。
 それから、漁獲努力量の評価に関する問題を指摘されました。これについては既に委員会でもご説明したところですけれども、現在のところ、残念ながら、漁獲努力量に関する情報が十分に整備されていない現状がございます。そういう現状では、漁獲量を資源動向の目安に使わざるを得ないという面がございまして、これについては水産資源の検討グループの中でも共通理解が得られていると考えております。
 それから、その次のあたりに、実はコウイカとかガザミ、タチウオの増減について細かく記述した部分があったんですが、これは細部にわたる記述ではないかということで、その項目は削除させていただきました。
 その下、ここで言うと一番下の項目ですね、これが1つ問題なんですけれども、特にウシノシタ類、ヒラメ、ニベ・グチ類、カレイ類及びクルマエビについては、1990年代後半に、それまでの最低水準を明らかに下回って漁獲量が減少し続けているという記述に対して、幾つかご意見をいただきました。
 それは一言で言いますと、127ページの上の方にありますグラフの見方に関するものでございます。見方によっては1990年代の初めからずっと減少しているではないか、そういう問題でございます。
 ただ、ここで1つ理解していただきたいのは、私たちが特に重視しておりますのは、有明海の魚類の漁獲量が1980年代の後半から減少している、全体的にも減少し続けているということに加えて、1990年代、特に後半に漁獲量の水準が明らかに低下している現状があるという点でございまして、今後の環境回復方策など検討する上でも、その点をしっかり見極めておくことが必要であると考えております。
 ですから、細かい定義とか表現にこだわるよりも、グラフを見ていただければ記述されていることがおわかりいただけるわけでございますので、最近ニベ・グチ類が横ばいであるとか、ヒラメが上昇傾向にあるといったことを云々するのではなくて、ここでは1990年代後半に減少しているという点にしっかり注意する必要があるという意味で、表現はこのままにさせていただきたいと思っております。
 ただし、ご指摘の中にありましたが、「減少し続けている」という表現は確かに正確さを欠いているところがあると思いますので、お手数ですけれども、125ページの一番最後のところ、「減少し続けている」を「減少傾向にあると見ることができる」と訂正をお願いします。
 それに関連しますが、127ページ、3)の見出しについてご意見をいただきました。
 これは「1990年代後半に減少が著しい魚類に関する検討」となっていますので、同じような趣旨のご意見でございますが、先ほどご説明したようなことで、ここの見出しもそのままにさせていただきたいと考えております。
 次は、126ページの上の方です。
 実は、図3.11.20(1)の右下が1つ空白になっております。ここには、その他のエビ類の漁獲量の変動のグラフが入っておりました。ただ、いろいろ検討しますと、この「その他のエビ類」にはたくさんの種類が入っておりまして、いろいろな意味で解釈が難しいため、ここでは省いておくのが適当ではないかということで、削除いたしました。
 それから、127ページの記述の3項目です。
 ここには資源減少の要因になる可能性のあるものを並べてあるんですが、ここに「1980年代半ばの漁獲圧が原因の1つになった可能性がある」といった記述を加えるべきではないかというご意見をいただいております。
 ただ、これについては、1980年代半ばに漁獲圧が増加したという根拠が全くございませんので、そういう根拠なしに記述を加えることはできないということが1つ。それからもう一つ、ここは特にシログチについて記述しておりますけれども、シログチの稚魚を漁獲する漁業は規模が小さいこと、それから、以前からずっと操業されてきているというようなことを考えますと、漁獲圧が減ることはあり得ても、増えたことはほとんど考えられないという状況もございます。
 そういうことで、ここであえて漁獲圧の影響を加えることは、しないことにいたしました。
 次は、129ページでございます。「有明海の特産魚類、代表的な魚類」の中で、特にエツの漁獲量変化に関する記述についてご意見をいただきました。
 これは確かにごもっともなところもございます。というのは、検討に用いた漁獲量データが必ずしも農林水産統計だけではございませんで、県の聞き取り調査の情報が入っていたりということで、データの信憑性に十分注意する必要があります。また、福岡県と佐賀県の聞き取り調査を含む漁獲量なんですが、いろいろ事情を調べていきますと、各県によって多少事情が違うということで、これを合計して漁獲量の動向がどうだといった判断をするのは少し乱暴ではないかという意見が出てまいりました。
 そこで、そこら辺を少し考えあわせまして、文言を訂正することにいたしました。
 それから、エツの漁獲量の経年変化、減少しているということで、堰の建設の影響について言及していたんですが、それは簡単に結論づけることは難しいのではないかといったご意見がございました。
 これについても、確かに現状ではそういう判断をするのは難しいということになりました。そういうことを水産資源検討グループで検討した結果を、今日ここに提示してございます。前の案では、具体的な漁獲量の数値が出たりしておりましたが、その数値は削除することにしました。
 実はその後、もう少しご意見をいただいて、文言を訂正することにしましたので、そこのご説明をさせていただきます。
 「特産魚類は、」で始まる段落の4行目に「明らかに低下している」という表現がありますが、これは「減少している」と訂正をお願いします。
 それから、その下の行ですが、その減少の要因として幾つか並べてある中で、2つ目に「護岸構造物の設置」とありますが、これはもう少し広くとらえて「人工構造物の設置」と変えたいと思います。
 それから、一番最後が「複合的に関与しているものと考えられる」という表現になっておりますが、これは「関与している可能性がある」という言い方にさせていただきます。
 もう一つ重要なところは、実は、最近数年間のエツの漁獲量の推移を見ると少し上向きに見えるということで、最近は回復傾向にあるというような記述を追加すべきではないかというご意見がございました。
 ここにグラフがないのでおわかりいただけないと思うんですけれども、専門家の目で見て、「回復傾向である」と判断するのはまだ非常に難しいということになりましたので、ここではそういう記述は追加しないという結論になりました。
 次に132ページ、「資源減少に関与する可能性のある要因の整理」についてです。
 前の見直し案では、この見出しが「資源変動に関与する可能性のある要因の整理」、それからその1行下が「資源変動に関与する」という表現になっておりましたが、記述されている内容は、すべて資源が減少しているという問題でございますので、「資源変動」を「資源減少」と訂正しました。
 それから、その要因の中で、前の案では「種苗放流」という文言が入っておりました。その点についてご意見をいたいたわけですが、現在のところ、特に資源の減少の要因として取り上げるだけの根拠には乏しいということで、種苗放流についての記述は削除することにいたしました。
 エイの駆除についてもどうかというご意見がございましたが、これは今後に向けての問題提起としても必要であるという判断で、このまま残すことにいたしました。
 次に、135ページをお願いします。
 表の「問題の概況」の有明海の部分ですが、下から4行目「有明海の特産種のエツ」となっていますが、「有明海の特産種であるエツ」と直していただきまして、「有明海の代表種であるコイチも」の後に「過去に」という3文字を加えていただきたいと思います。
 これは、上の方の記述が昭和60年代以降の減少について書いていますが、エツとかコイチについてはそれ以前に減少している事実がございますので、そこら辺、誤解がないように「過去に」という表現をさせていただきたいと思っております。
 あと、これについても「近年は回復傾向」といった文言を加えるべきではないかというご意見がございましたけれども、先ほどご説明したような理由で、それはここには加えないことにいたしました。
 最後になりますが、138ページの図4.1.1の右端の方をごらんください。
 上の方に「人為的なコントロール」と入れてあります。ここに、当初の案では「種苗放流や」と入っておりましたが、これも先ほどご説明した理由で「種苗放流や」は削除いたしました。
 それから、その左に「魚類等の漁獲量(資源量)の減少、種組成の変化」とありますが、「種組成の変化」を新しく加えてございます。これは、最近の有明海でも水温が上昇している影響を受けて、魚類を初めとして種組成が大きく変化しつつあるという報告がございますので、単に漁獲量や資源量の減少を問題にするだけではなくて、組成の変化も含めて検討していくべきであろうということで、その点、追加をさせていただいております。
 それから、その下の方に「ノリの生産活動」あるいはその線の上に(酸処理剤)とございます。ここら辺については再検討すべきではないかといったご意見をいただいておりましたけれども、これについても水産資源の検討グループの中でいろいろ議論した結果、問題提起という意味で残すことにいたしました。現時点で削除するだけの根拠はないという判断でございます。
 そのかわり、先ほど全体の説明の中でございましたように、この図の表題に「可能性」という表現を加えていただくことをお願いいたしました。
 以上なんですが、八代海につきましても幾つか意見交換を行いました。結論としては、できれば八代海の実情に詳しい委員を中心として、八代海関係の検討・整理を目的とする小委員会のようなものを設けて、最終取りまとめに向けて作業を進めていくことを考えてはどうかということになりました。
 以上でございます。
 あと、山口委員の方から何か補足がありましたらお願いします。

○須藤委員長 中田先生、簡潔にご説明いただきまして、ありがとうございました。
 山口委員、何かご追加ありますか。

○山口委員 いえ。

○須藤委員長 それでは、ただいま事務局と中田先生からご説明いただきましたように、修正あるいは加筆というような部分がございます。それらを含めまして、委員の先生方からご質問なりコメントをいただこうと思います。何かございましたら、どうぞお願いいたします。
 前回の議論については一応それぞれ対応していただいたように思いますが、よろしいでしょうか。

○清野委員 134ページ、二枚貝の減少についての表にタイラギを入れた整理の方法なんですけれども、ここ全体に、ここのこういう要約したページを読むとわかりやすいといった整理法なんだと思います。ところが、こうして見てしまうと、「減少した」とか割とさらっと書き過ぎていて、状況の深刻さがわかりにくいのではないかと思うんですね。本文を見ますと、場所によってはもう全然とれなくなっているとか、そういうことが書いてございますので、「減少傾向」とか「減少」だけではなくて、ある海域について壊滅的になくなっている資源に関しては、そういう記述を入れていただいた方がわかりやすいかと思います。
 もう一つは、今の134ページの表の整理を見ても思うんですけれども、例えば138ページの矢印で「何が、何に、影響する」となっているものと、それから、この表の内容がもうちょっと対応していた方がいいと思うんですね。そういった相互関係に注意していただいて、もうちょっと原因、要因として指摘されている事項を、場合によっては直接的なもの、間接的なものということで、その分け方は現在の知見のレベルによるということで書き込んでいただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

○須藤委員長 2番目のは、どこをそういうふうにするんですか。今の134ページの表記ですか。

○清野委員 例えば、138ページを見ますと、潮流・潮汐の変化が何に影響するかということなんですけれども、矢印をずっとたどっていきますと、右上の「魚類等の漁獲量(資源量)の減少、種組成の変化」にかかります。これはやはり入れていただいた方がいいと思いますので、ご検討ください。

○須藤委員長 その部分を134ページの表の中に入れるというご発言ですね。

○清野委員 そうです。

○須藤委員長 中田先生、今の2点についてご意見があれば。後でまた整理はいたしますが、そういう清野先生からのご意見です。1番目は、もう少し、場所によっては壊滅的な減少があるということですか。総括してしまうとこういうことでいいんだけれども、ということです。

○中田委員 これは資源の検討グループの中でも伊藤委員を中心に取りまとめをお願いしているところですが、今日はご欠席ですので、伊藤委員とも相談しながら、少し文言を考えたいと思います。

○須藤委員長 2番目も同じでいいですね。今の、矢印のところが……

○中田委員 そこも含めて。

○須藤委員長 それでは、ただいまの点については水産グループの方で再度検討してくださるということです。
 ほかに、いかがでしょうか。

○森下委員 129ページのエツの問題ですが、関与している可能性があるということにして、複合的に減少が起きているとしていただいているので問題はないと思いますが、中田先生にお伺いしたいのは、私は、中国の内水面の関係が大きいのではないかと考えているんです。最近の西湖だとかそういう所の開発と、中国河口部の汚濁の状況がエツに効いてきていて、エツそのものがあそこの海域を合わせて減少しているのではないかと考えているんですが。

○中田委員 山口委員にお聞きした方がいいと思います。私は余り詳しくないので。

○須藤委員長 今の問題は、直接これとということよりもエツの資源の問題なので、山口先生、おわかりでしたら。

○山口委員 汚染がこちらに影響を与えているという……

○森下委員 そうではなくて、資源そのものが減っているのではないかと。中国でも資源が減っていると言われていますよね。そのことが影響しているのではないかなと。
 要するに、エツというのは物すごく広い水域を移動しているから、原因とか結果を小さいもので決めてしまわずに、もっと広く考えた方がいいのではないかと私は思うんですね。

○菊池委員 有明海のエツは、中国のエツとは何の関係もありません。これは種としても、同じなのか、系統が違うのか亜種なのかという問題もございますけれども、韓国の方にもいます、中国大陸の方にもいますけれども、日本では今、有明海の奥だけなんですね。ですから、系群なのか亜種なのかという問題はありますけれども、一応それは切り離して考えてよろしいのではないかと思います。
 そして、実はこれ、エツの一番の専門家である長崎大学名誉教授の田北先生に、この前、水産グループの検討会のときに来ていただきまして、先生個人のご研究とか、それから農林水産統計の怪しさだとか、それから漁民自身が佐賀県で採って福岡へ売ったり等いろいろあるので、統計数字というものがきちんと切れないのが実情なんだというお話をかなり細かくしていただきまして、それは、こういう形で印刷物に載せるのは不適当かもしれないということは、田北先生もおっしゃいました。
 それで一応、うそは言わない、だけど余りあからさまにそういう、同じものをこっちの岸で売るのと向こうの岸で売るのと値段が違うとか、そういう話まで入ってきますと、統計値というのは何なのかということが非常にややこしいことになってくるわけです。ですから、一応そのことはこれにははっきり書いてございませんけれども、ただ……。
 それからもう一つは、田北名誉教授がおっしゃったのに、一番初めは自分も筑後大堰の影響は大きいのかと思ったけれども、実際はそうではなかったと。水は下をくぐってちゃんと出ているので、それよりむしろ問題なのは、淡水をどういう使い方をしているか。
 エツの場合には、淡水域あるいは非常に薄い汽水域がかなり広がっていることが種の存続から言うと大きいので、それは、福岡にも水を引いておりますけれども、以前、農民たちは河口から上がってきた河口域の水の上澄みである真水を直接、アオ取水という形で水田に入れていたわけですけれども、今度は上の方からパイプラインで淡水を配るようになった。ですから、それで薄い汽水、あるいはエツがいられる、特に子供がいられる淡水域のボリュームだか面積だかが昔よりは落ちているのではないか。これもきっちりした数字ではないけれども、自分はそれを憂慮しているというお話でした。
 ですから、今、責任者がそういうことをおっしゃらなかったので、私が出しゃばって言うのがいいのか悪いのかわかりませんけれども、とにかく内情としては、かなり詳しく伺いましたけれども、どの統計がよくてどれが悪いとか、あるいはこっちで売ったものとあっちで売ったものと値段がどうこうというような話が出てきますと、これは一通りに書くことはとてもできないということでございます。

○森下委員 ありがとうございます。
 私、ここのところは、「取水による淡水域の縮小」というより「汽水域の面積の変化」といったことの方がいいのではないかと思います。淡水域そのものは、全体には増えているわけですよ、堰をつくるということは。そうではなくて、汽水域、潮と真水が混じった水域、幼生が棲息する場所の面積が減少してきているという方が、より科学的ではないかと考えたものですから。

○須藤委員長 それを今、ご質問されたわけですね。
 そうしたら中田先生、その辺ももう一度ご議論いただけますか。今日は伊藤委員もご欠席なので、先ほどのとあわせて。山口先生も、その辺どうぞご協力ください。
 ほか、よろしゅうございましょうか。

○小松委員 72ページの潮流・潮汐の原因・要因のまとめのところで、本文とも関係するんですけれども、例えば、真ん中の欄のちょうど真ん中辺ですか、「1973年と2001年」云々という文章の一番最後に「地形変化のみの効果を評価するに至っていないと推測」と書かれているわけですね。これはワーキンググループの評価として、これはこれでいいかなと思うんですが、その下に「水産総合研究センターと海上保安庁の観測方法等が異なり、単純比較できない」と書かれていて、こちらは断定しているわけです。
 私は、水産総合研究センターの原著論文を見ていないので何とも言えないんですが、原著論文がこういうふうに書いてあるなら、これはこれでいいと思うんですけれども、もし第三者が「単純比較できない」と言っているのであれば、これはもう少し柔らかい表現の方がいいのではないでしょうか。
 というのは、観測方法が違っていても、もしその方法が真値を計測できる方法であれば、観測方法の違いは必ずしも決定的な障害要因とはなり得ないわけですね。

○清野委員 私も潮流・潮汐ワーキンググループに生物の部分も含めて参加させていただいておりますが、小松先生がおっしゃったニュアンス、もとのワーキンググループでの議論のニュアンスを反映していただけるように、私からもお願いしたいと思います。

○須藤委員長 もとのニュアンスというのは、どういう意味ですか。

○清野委員 つまり、どうもこの72ページの表は、潮流・潮汐ワーキンググループでの議論とニュアンスが異なっているんですね。そこの部分は、もとのワーキンググループの議論が反映されるように、率直に修文していただきたいと思います。

○須藤委員長 その意味は、わかりました。
 ほかにはありますか。滝川委員、今のところですか。

○滝川委員 いえ、ほかの部分で。

○須藤委員長 では、今のところは一応理解しましたので、後でその整理をいたします。

○滝川委員 先ほどの134ページ、135ページのところで、ちょっと教えていただきたいと思います。
 134ページ、二枚貝の減少の、原因・要因の欄の一番下に、近年の不漁として「ナルトビエイ、カニ等による食害」と書いてございますね。それと対応しまして、135ページの原因・要因のところに「人的コントロールの影響等」と書いてあるんですが、その人的コントロールのご説明が、132ページに「エイの駆除など人為的なコントロールの影響」ということで、ここのところがよくわかりませんものですから、ちょっと教えていただきたいんですが。

○環境省閉鎖性海域対策室長補佐 まず、134ページの二枚貝の真ん中のところでございますけれども、これにつきましては、貝につきましては、長期的か短期的かはわかりませんけれどもナルトビエイの影響があるというようなところで、要因の1つとして挙げさせていただいています。
 一方、135ページの人的コントロールの影響という中には、先ほど中田委員からご報告いただいたように、エイの駆除なども含まれているかと考えております。これについて水産の検討グループの中で議論されたものとしては、例えば、貝を食べるナルトビエイの駆除だけではなくて、その他の多くのエイ類、そういったものもあわせて漁獲される。そういった意味での生態系への影響も考えられるのではないかという議論がなされたことから、ちょっと矛盾するかもしれませんけれども、表の中に整理させていただいたということでございます。

○滝川委員 よくわかるんですが、ちょっと表現として、私のように専門ではないサイドからすると、今ご説明があったように、片やナルトビエイ等による食害があるけれども、そういうエイ類も資源の1つなので、それも駆除によって減少しているというふうにとられていいのかという……。要するに、両方とも資源の減少なのかということなので、誤解を招かないように、もう少し区別がつくような書きぶりがないのかと思ったんですが。
 ご専門の方で問題がなければ、別によろしいんですけれども。

○須藤委員長 そこは検討しますか。今の滝川委員のご主張はわかりましたので、ちょっと時間をいただきたいと思います。
 そのほか、よろしいでしょうか。
 それでは、今日はまだほかにやらなくてはいけないことがございます。
 前回の引き続きで修正部分について、特に水産資源のお話が多かったんですが、その部分について、いろいろご意見をいただきましてありがとうございました。
 何回も申し上げますように、これは中間取りまとめですので、積み残し、あるいは表現ぶり、あるいは考察不足もあり得るかもしれませんが、当然本報告に向けては、より確実な、あるいは正確を期していきたいと考えます。
 とりあえずは、後でお話ししますようにパブリック・コメント等もございますので、今、先生方からご意見あった部分については担当の、例えばただいまの水産資源については中田先生をご中心に再検討いただいて、最終的な文章のことにつきましては委員長であります私にお任せいただきたいと思います。
 八代海の検討が不十分であるというご意見も先ほどいただきました。本日はご欠席でございますが、大和田先生は八代海について詳しいし、協力いただけると伺っておりますので、今度の中間取りまとめには間に合いませんが、本委員会までには八代海を充実していきたいと考えております。大和田先生お1人ではございませんで、小委員会委員長であられる荒牧先生とか、水産とか生物にお詳しい菊池先生とか、そのほかの先生にもお加わりいただいて、どういうふうに進めるかは、これもお任せいただきたいわけですが、小委員会というか、ワーキンググループというか、そんな形にしまして、さらに充実していきたいと考えております。
 ぜひ、八代海についても赤潮のことも含まれておりますので、水産だけではなくて、赤潮の方の専門家でおられる本城先生を初めとして、そちらの方についてもご議論いただく機会を、またそれも効率的にやっていただきたいと思いますので、赤潮ワーキンググループの先生方にもぜひお願いしたいと思います。
 ただいま申し上げましたように、とりあえず中間取りまとめはしなくてはいけませんので、パブリック・コメントの手続をとるようにしていただきたいと思いますが、それでよろしゅうございましょうか。
 それでございましたら、とりあえずは文章上の問題は私が責任をもって取りまとめ、そして、どこを変えたかについては先生方に当然お知らせするということは当たり前でございますので、そういたします。その上でパブリック・コメントの手続をとらせていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
 そういうことで、ぜひお願いしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、まだ次に重要な議題があると言ったのは、「その他」と書くのは不適切なんですが、この中に重要な議題がございます。
 委員会報告に向けて、前回にもお話を伺ったわけですが、岡田委員、細川委員に作業をお願いしてきているわけでございます。要するに今後の取りまとめの方向なんですが、これは決して中間報告ではなくて、最終報告に向けて─最終ではないですね、本報告ですね。本報告に向けて、今後の取りまとめの方向性についていろいろ作業をしていただいていると伺っておりますし、岡田先生にお願いしてきております。
 岡田先生、どうぞご説明をお願いいたします。

○岡田委員 それでは、お手元の参考資料を中心にご報告申し上げたいと思いますが、それに行く前に、本日の資料、要するに中間取りまとめの復習から議論をスタートさせていただきたいと思います。
 中間取りまとめの136ページに、今後に向けた検討課題が書かれております。真ん中辺にございますように、今後、委員会報告に向けて、138ページの図4.1.1をべースに有明海、八代海の再生方策の検討に向けて評価を行っていくということが書かれております。
 その138ページの図4.1.1をごらんいただきますと、非常にたくさんの原因と要因と、それからたくさんの問題が一緒に書かれております。そういう意味では複雑な原因と、それから多数の原因と多数の問題ということで、因果関係が明らかになってきてはいるものの、これをこのまま見て解析するのはいかにも大変であると考えました。
 そういうことを踏まえまして、私と細川先生、それから事務局と相談させていただきながら、これはどちらかというと細川先生と私の試案、トライアルでございます。まさにたたき台に行く前かもしれませんが、そういうことで、一つ一つの原因と問題の関連を明確にして、そこを議論していこう、こういう試みを行いました。
 ですから、138ページの図4.1.1を見ますと、例えば「底質の泥化」が原因となって、「二枚貝の減少」となっております。さらに「底質の泥化」から横の線をずっと見ていきますと、「潮流・潮汐の変化」につながっています。この一つ一つを検証していくとなりますと、物すごい作業になります。それで最後までやっていけるかどうか若干不安ではございますが、まずはやってみようというのが本日のご報告でございます。
 どういうふうにしたかということでございますが、まず、図4.1.1の上の方からスタートいたしました。
 問題が上の方に書いてございます。二枚貝の減少、ベントスの減少、その他書いてございます。この問題の定義をできる限り明確にしようと。例えば二枚貝が減少したとしても、二枚貝とはアサリなのかタイラギなのか、サルボウなのか、当然違うはずであるということで考える。では、どこで変わったか。有明海といっても福岡の地先なのか佐賀なのか、熊本なのか、アサリなどはそれが問題になると思います。しかしながら、タイラギですと深い所が主になりますから、そういう分類とは違うかもしれません。いつ変わったか。減少といった場合、1970年代から今に至っている長期的な減少なのか、それとも1990年もしくは2000年からこの5年10年に起きる減少なのか、その減少のレベルは具体的に大きいのか小さいのかということを一個一個明確にしよう。それに対応するさまざまな原因の重要性を評価したい、こういうふうに考えました。
 そういう意味におきまして、参考資料の方に移っていただきまして、2ページをごらんください。ここでは先ほどの138ページの図と違いまして、「二枚貝の減少(アサリ)」としてアサリのみを捉えました。その次のページには(タイラギ)と書いています。たまたまこの2つは比較的近いので、余り適切な例ではなかったかもしれませんが、作業の順番で、たくさんやった中からいいのをお見せするというレベルにはございませんので、そこはご勘弁ください。一般的なプレゼンテーションからすれば、よくないことはそうかもしれませんが、そういうことでご了解いただきたいと思います。
 そういたしますと、二枚貝の減少は幾つの要因によるかというと、左側の上の方から漁獲圧、ナルトビエイ、底質の変化、貧酸素水塊、赤潮、それから逆の矢印でございますが浄水力、そしてスナモグリ。7つの要因が挙がってきます。もちろん、この7つですべてを尽くしているかどうかは別でございます。ですから、とりあえず今、挙げられている可能性というか、検討中の中からこの7つを挙げた。その7つの要因が、長期的なアサリのそれぞれの場所での減少にどう関係しているかを見て、有明海もしくは福岡沖というそれぞれ特定の場所の因果関係を説明し得るかどうか。一般的な科学的事実を否定するつもりはございません。例えば、貧酸素になればアサリが死ぬ可能性がある。これは妥当だと思います。ただ、その減少が有明海の熊本沖で起きているか、こういった設問に対する検証の仕方を試みたわけです。
 そういたしますと、例えば貧酸素がアサリを殺した─これは全くの仮説でございますが、貧酸素がアサリを殺した。熊本でイエス、福岡でノーという場合は、有明海において一般的にイエスとは言えない。ですから、熊本の話を福岡に移していくのは─逆かもしれませんが─妥当でないといった形の検証を試みております。
 そういう意味では、一般論をできる限り個別・具体化していくことを試みました。
 そういうことで、その結果が4ページの表Iに出ております。
 この結果を見ますと、左側から「二枚貝の減少(アサリ)」、原因に潮流・潮汐云々と出ております。次に「使用した情報」とありまして、その次に「長期的なデータ有」「関係の有無」「長期的なデータ無」「関係の有無」─というのは、もちろんデータがないわけですから、よくわからないのは△。×は、アサリの漁獲量も年平均潮位差の長期的なデータも、両方あります。それに対して、結果的には、影響は余りないだろう。ある意味で当たり前かもしれませんが、一応今までつながっていた矢印の線を細くすることはできるかと思います。
 そのようなことでずっと書いていますが、この△、×、○を議論したいとは思いません。と申しますのは、これはまだトライアルの段階でございますから、これが妥当かどうかは今後の話でございます。むしろ、こういうことを導き出した考え方が妥当であるか。「そんなことはやってもしようがないから、もうやめろ」と言われれば、今日ここでやめさせていただきますが、そこのところをご説明したいと思います。
 そういう意味で、資料編の(1)ページをごらんください。
 このやり方が基本的な考え方でございます。
 まず、アサリの漁獲量が図1.1に書いてございます。1975年から2003年まで、上段から福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県です。縦軸のスケールが全部違いますから、なかなか難しい問題がございますが、この棒グラフで漁獲量が出ております。そして、この赤く書いてあるのが年平均潮位差ということで、これをざっと見れば、年平均潮位差が直接、直接ですよ、間接にはもちろんあると思いますが、直接アサリの漁獲量の減少にはつながっていないという、馬鹿馬鹿しいかもしれませんが、そういう推定がつくかと思います。
 (2)ページに移りたいと思います。
 今度は赤潮の発生件数の増加・大規模化が─大規模化は必ずしも捕らえていませんが─二枚貝、特にアサリの減少につながっているか、こういう検証をしてみたものです。
 最初に、福岡県のアサリの漁獲量が書いてございます。もちろん、漁獲量が正しいインディケーターかどうかについては議論の余地がございますが、我々にとって、今あるベストもしくはアベイラブルな情報としてこれを取り上げました。ですから、もっといいものがあれば、もちろん変えても結構だと思います。
 その下に、赤潮の確認件数。規模は必ずしもあらわしておりませんから妥当かどうかは別にして、こういうものがある。
 なおかつ、赤潮といってもさまざまな赤潮がございまして、アサリと直接関係する傾向が強いのはシャットネラであろうということで、シャットネラの確認件数と細胞数が出ています。白いところは、もちろん出ていないわけではなくて、データがないということです。
 これをざっと見ていただきますと、1980年代もしくは1980年代の半ばからその前ですね、1975年。この間のデータがございませんから何とも言えません。しかしながら、1989年以降の漁獲量の変動と赤潮が出た、出ないというのは、なかなかきれいな相関は認められませんねという推定が一応つきます。
 同じようなことを佐賀県についてやったのが、(3)ページでございます。
 佐賀県の方は、赤潮、特にシャットネラの確認が結構あるんですが、これとアサリの漁獲量、素人目に見る限りでは、なかなか相関はわからないなと。別の見方をすれば何かいい情報が得られるかもしれません。むしろこういうものをもとに、専門家の先生から別の視点で評価していただきたいとあらかじめ申し上げておきますが、そういうこともあるとご理解いただいて、ごらんいただければと思います。
 その次に、(4)ページは長崎県。
 長崎県も、余り変わらないですねと。ただ、長崎県の場合は2,000トンという漁獲量でございます。むしろ大きいところを議論すべきだということになりますと、(5)ページの熊本県がございます。
 熊本県、長崎県に比べると1桁上の漁獲量がありまして、1977年をピークにずっと下がってきております。それと赤潮の発生がどう関係するかというと、やはりそれなりの、直接の話、赤潮によってアサリが減ったか、増えたかはなかなか見えませんね、こういうことが一応言えるかと思います。
 こういうことを、次は底質について書いてございます。
 これは実は余りうまくいっておりません。(6)ページの底質をごらんいただきますと、それぞれのアサリの漁獲量が、これは同じグラフがかいてございます。では、アサリの漁場に対応する、アサリの漁獲に対応するような場所の底質の、この期間の、もちろん細かいデータでなくても結構ですから、例えば、丸がついている1980年ごろの底質のデータと2000年くらいの底質のデータがあるかというと、なかなかきれいなものはございません。
 下の方にアサリ漁場の変化のデータ、伊藤先生がご発表されたものがございます。もちろん、伊藤先生がそういうおつもりでおつくりになっていないので、必ずしも妥当ではないと思いますが、この面積を読み取ると大体どんなことがわかるかというと、(6)ページの一番下のグラフは熊本県のものですが、この1980年代のアサリ漁場面積、青丸がついているあたりですが、30平方キロメートルぐらい、29という数字がとりあえず出てきました。もちろん誤差はいっぱいございます。それに対して、一番右の赤丸あたりでの漁場面積は11平方キロメートルという数字が出ます。3分の1の漁場面積になっているんですが、漁獲量は3分の1ではなくて10分の1くらいになっている。これをどう解釈するか。では、面積をどれだけ丁寧に拾っていくかという作業を今後、すべきである。
 もちろん、漁場面積が底質とどう関係するかというのは当然別でございますから、下手をすると、漁場面積が減った分で漁獲量が減ったという当たり前のことにしかなりませんので、では、その辺はどうするかという整理を今後、していけばよろしいかと思っております。
 (7)ページは飛ばさせていただきまして、(8)ページをごらんください。貧酸素水塊。
 これも、まだ生データをこういう視点で整理した段階でございまして、現時点においては、上の方に簡単に書いてございますように、漁獲量の長期的な減少原因であるかどうかは、今のパッと持っているデータでは不明である。少なくともイエスという答えは出せないと言えます。これはまだデータの精査が必要だと思います。
 次に、ナルトビエイ等による食害でございます。
 これは、ナルトビエイはあちこち泳ぐからというわけではないんですが、とりあえずアサリの全体の漁獲量のグラフと、下の方にナルトビエイの漁獲量、もしくは個体数があればもちろんベストでございますが、そんなものはないというか、これは一番右の方にちょこちょことあるわけですが、こういうグラフ。完全なデータを求めていると、不可知論というか、わからないことしか出てきませんので、とりあえずエイ類とかそういうものでやってみます。すると、なかなか難しいんですが、例えば、エイの漁獲量は3倍くらいに上がっています。ただ、アサリの漁獲量は10分の1くらいになっていますから、単純に個体数では説明できないかもしれません。その辺のところの議論が必要です。場合によっては、ナルトビエイ1匹が何個アサリを食うかというデータもだんだん出てきておりますので、そういうものからこのデータを解析するというようなことをやっていったらどうだろうかと考えております。
 (10)ページは、スナモグリです。
 これは全くわかりませんでした。要するに、研究論文としてスナモグリがアサリに影響を与えるということはわかっておりますが、有明海、もしくはさまざまな地域において具体的にそれが影響を及ぼしているかどうかはわからないという結論でございます。
 それから、漁獲圧。先ほどの議論にもございましたように、何をもって漁獲圧とするか。これは、もちろん難しいです。とりあえず、ここのグラフでは経営体数をとりました。もちろんこれが100%正しい指標であるとは思いません。もっといい指標があればそれでいいんですが、とりあえずは経営体数を書いてみたんですが、余り明確なことにはなっていない。もう少し細かく見ると、もう少しいいことがわかるのかもしれませんが、ざっと見た限りでは、なかなかわからないといった答えを得ています。これが今までのアサリの解析でございます。
 要は、こういうものをもう少し精緻にやっていって、一つ一つの要因がどのくらい重要であるか、望ましくは科学的に、実証的に証明したい。だめな場合、1つは、もちろん今後の追加調査、追加研究に頼るということもございますし、例えばこの視点が正しいとすれば、その視点に従って、先ほど申し上げましたように過去のデータを再整理するということも必要だと思います。最悪の場合は、ここに専門家の先生がお集まりでございますので、皆さんで「右だ」と合意すれば、それは我が国政府の見解─と言うと言い過ぎかもしれませんが、そういうようなことも最後は必要であろう。これは前、楠田先生かどなたかにご注意いただいたことだと思いますが、そのようなことも必要だろうと考えております。
 そういうことで、次にタイラギも出ておりますが、なかなかきれいにはいっておりません。
 例えば、今、少し考えているのは、(13)ページをごらんください。タイラギの漁獲量がこういうふうに変化したというのが出ています。この間の多少のデータがございます。例えば直接因果関係をとるデータ、(14)ページの図2.3をごらんください。ここに、1989年と2000年だけでございますけれども、タイラギ漁場のMdΦの分布がございます。この分布のうち、もし既往のデータが正しいとすれば、(19)ページに有明海等環境情報・研究ネットワークの資料でタイラギの特性が挙げられておりますが、タイラギの棲息にとって良好な底質は、中央粒径値4Φ以下。同じように、強熱減量は約10%以下と示されております。これをクライテリアとして(14)ページの図を整理すると、タイラギの棲息に好適な面積がどのくらい減ったかがわかってくるはずです。まだやっていなくて申しわけありませんが、わかるはずです。それとタイラギの漁獲量を比較してみたいと思います。
 もちろん、もっと感度の高いインディケーターがあればそれを使えばいいかと思いますが、そういう指標をあり得る限りの資料で、(13)ページの図2.2、タイラギの漁獲量の変遷と比較するというようなことをやっていけば、要因の重要性、それから重要でないところ、これはあくまでも有明海の地域において重要であるかどうかがわかるだろうというようなことを試みておるのが現状でございます。
 そういう意味で、今後、こういうことがよろしいということならば検証すべきデータをさらに充実する。それから、あと一つ重要なのは、今は比較的長期的な視点で物を見ております。短期的には、例えば覆砂をすれば回復するというような再生方法もございますので、その辺を分けていって明らかにしたいと思っています。
 そういう意味におきましては、こういう検討をし、判断をするステージにおいて、より多く各専門の委員の先生方からコメントをいただき、場合によってはデータを見てご検討をいただきたいと考えております。
 また、荒牧委員長を初めとする小委員会の先生方もたくさんの情報をお持ちでございますので、その情報とこういうチェックの仕方がどこまで合うか、合わないかといったご検討、コメントをいただければ、少しは138ページの複雑な図が明快になってくるかなということで、あくまでもトライアルとして作業を開始したところでございます。
 以上でございます。

○須藤委員長 岡田先生、大変難しい問題を前に進めていただいてありがとうございます。細川先生とともに作業を開始していただいて、その一例としてアサリ、タイラギの減少の要因についてお示しいただきました。
 本日は、こういう方向でさらに解析していっていいか、あるいは、伺っている限り、どうも明確な要因なり影響なりが浮き彫りにされそうもないような気もするわけでございますので、それ以降の問題についても、やった上で今後どうしていくかといったことについても委員の先生方からご意見をいただきたいと思いますが、とりあえずは岡田先生のご説明を中心に、ご質問なりご意見─どちらかといえば、質問も大切ですけれどもご意見をいただいた方がよろしいかなと思います。
 本当は全員の先生にこの解析に加わっていただきたいわけですが、いろいろお立場とかご専門もございますので、とりあえずは、こういう解析に慣れている岡田先生と細川先生を中心にやっていただいて、私もときどき中間的な報告はいただいてまいりました。今日は一応今までの部分を総括的に、トライ・アンド・エラーと言ったらいいんですかね、そんなことで始めているというご説明でした。
 では、お願いします。

○小松委員 非常に複雑な現象を、ファーストステップとしてこういうとらえ方は非常に大事だと思うし、絶対必要だと思います。
 それはそれでいいと思うんですが、ちょっと注意をお願いしたいのは、例えば、(1)ページでアサリと潮流・潮汐との関係を議論されているんですが、潮流と潮汐というのは必ずしも同じではないんですね。

○岡田委員 そうですね、すみません。これは潮流は出ていません。

○小松委員 潮位が全く同じでも潮流は変わりますので、その点お願いします。

○須藤委員長 そこは改めさせます。

○岡田委員 すみません、全くご指摘のとおりで、ご説明の仕方が不十分でございました。これはあくまでも潮位だけです。失礼しました。

○楠田委員 今、岡田先生、細川先生がとられている方法論は、既に出てきています科学的知見あるいは既知の要素をベースにして、何が原因かを推定されているということだと思います。その作業を続けられていて、既知の要素でないものが効いている可能性があるかないかというところについての岡田先生のご見解をお伺いしたい。

○岡田委員 ご見解も何も全くなくて、当然あり得ると思っています。
 ですから、ここで多くのものがNG、NG、NGと出たら、もう一度それを私どもが作業の結果として先生方にご報告して、別の矢印をご提示いただくということをお願いしたいと思っています。この言い方は必ずしも適切ではないかもしれませんが、細川先生と私は、ここの海域については素人でございますから、先生方からいただいたデータをまずベースにしてやってみる。その先は、ぜひご教示いただければありがたいと思います。

○楠田委員 そうしますと、お願いなんですが、まずはそういうものにお気づきになられた時点で、その資料の整備を順次お願いできたらということと、もう一つは、今、矢印を増やすとおっしゃったんですが、項目として増える部分があるのではないか。
 例えば、今日、出てきました表の中に、陸上から出ている化学物質の項は全くないんですよね。

○須藤委員長 そうですね、負荷もないんですね。

○楠田委員 化学物質をそれぞれの時期に撒いていることがあるんですけれども、それぞれの生物の生活史のどの瞬間に撒いているかということが大きな問題になります。要するに、時期との関係で判断する必要があって、単純な濃度では議論できないところがあると思うんです。ですから、そういうところにも心配りをいただければと思います。

○須藤委員長 例えばその場合、農薬などが例に挙がるわけですね。今の時期なんていうのは。そういうことが全くこういうところに考慮されていない、そういう理解でよろしいですね。わかりました。
 これは岡田先生、外部からの負荷の問題について何回か議論はあったんだけれども、この要因というか、その中で余り十分に整理されていなかったので、挙げていないんですよね。

○岡田委員 そうですね、何となく消えてしまっていると言うと言い過ぎかもしれませんが。

○須藤委員長 こういうことを言ってはいけませんが、環境省がその部分を担当することになっていたわけでありまして、これをどういうふうに表現するかもあったので、本当は外部負荷というか、別に農薬だけではなくて、そのほかのいろいろな要因も、SSもあるでしょうし他の栄養物質もあるでしょうし、他の化学物質もあるでしょうし、さまざまなものが有明、八代に入ってくるので、そのようなものをこれからどういうふうに理解していって、要因とつなげるかということも大切なので、楠田先生がさっきおっしゃったように、全部やってしまってから「さぁ、皆さんどうしましょうか」というよりも、折に触れてというか、毎回毎回でもいいんですが、とりあえずは中間報告をいただきながら、もし必要であれば新たな項目を入れていくということにした方がよろしくないですか。

○岡田委員 ぜひお願いします。
 そういう意味で、これは多分、全部の相関をやると100以上あるわけですね。100やってから報告して「だめだよ」と言われると悲惨なものですから、あらかじめ今日、2つというところで、こういう考え方でよろしいでしょうかと。それから、今、楠田先生からいただいたように、ミスしているところをどうするかというご注意をいただきたかったわけです。ありがとうございます。

○須藤委員長 あと、有明海・八代海の海の問題については、荒牧先生の方の小委員会では、それぞれの県の水産研究所の所長さんがいらしているので、ここに挙げていないような項目も事前に、この次の委員会にでも挙げていただいていいのではないでしょうか。これは科学的にというよりも、これから調べればいいわけですから。そういうふうにしていかないと、進んでしまってからそれを否定というのも余りよろしくないような気がするので、岡田先生、その辺は柔軟性を持って対応していただけますか。

○岡田委員 はい。

○須藤委員長 そのほか、いかがでしょうか。

○森下委員 多分検討されていることだと思うんですけれども、生物はみんな違いますよね。プランクトンのようなものから貝のようなものまで、発生してから死ぬまでの時間が全部違いますから、どういうふうに影響が効いてくるかは、どれぐらいおくれてそれがあらわれるかが多分すごく大事だと思うんです。赤潮が出て、すぐそれがアサリに効くわけではなくて、赤潮が出る傾向がずっと出てきてからどれぐらい時間がたって漁獲量に響いてくるかは、多分それぞれの種によって違うと思うので、変化を見られるときに、少し大ざっぱにその傾向を見られたらどうでしょうか。そして、それを少しずつずらしていかれると、例えば、私は淡水ですから、ダムなどで栄養塩が入ってくる所が赤潮に変わっていったり、赤潮が変わることによって魚がどう変わっていくかというのをずらしていくと、かなりうまく整合性がとれることもありますので、そういうことを少し作為的にやられてみたらいかがでしょうか。

○岡田委員 ありがとうございました。
 それは私どもだけではなくて、先生方もこういう図を見ていただいて、「この辺でやってみたらよろしいのでは」というご指示をいただければ、バックデータを持っていますから、新しい図をつくるのは極めて簡単ですので、ぜひよろしくお願いいたします。

○清野委員 138ページの図、あるいは参考資料の図1.1、図1.2を見て思ったんですけれども、物理的な部分の要素の分解がまだ不十分だと思うんですよ。
 私、今日、「潮流・潮汐」で平均潮位が出て、こういう結論になるというのは、ここをかなりきちんとしないと相当危険だという思いを新たにいたしました。
 それで、申しわけないんですが、何度も私、潮流・潮汐ワーキンググループのときに、潮流・潮汐だけではなくて波・流れ場が変化していて、それが底質に効いてくるんだということで項目を挙げているんですけれども、それがなかなか入らないんですね。ですから今回は、波・流れ場の変化をこの図に加えていただくと、潮流・潮汐の変化とか干拓、埋め立てというものが、あるいは河川からのいろいろな影響が波流れ場というものに効いてきて、それが底質に効いてきてというような、波流れ場の変化というのは一つの複合的で大事な要素ですので、それを入れていただけたらと思います。
 それから、河川の影響なんですけれども、「土砂供給の減少」ということで、ここも土砂に限定されております。先ほどのいろいろなご報告もございましたけれども、河川の流量だとか、あるいは流れて来方というような項目もある程度分解していただいて、入れていただけたらと思います。
 図が煩雑になり過ぎると思いますので、例えば河川からの影響ということで大きく書いて、下に土砂供給とか流量とかを小項目にしていただいて、また括っていただくとか、そのあたりをお願いできたらと思います。
 とにかく、物理減少のところに関してはもうちょっと、波・流れと言ってもさらにその下にいろいろな波や流れがありますので、そこの分類についても専門の先生方のご協力をいただけたらと思っています。

○須藤委員長 福岡先生、今のご発言について何かご追加のコメントございますか。

○福岡委員 今の岡田先生のお話、一つの考え方で、進められたらいいなと思います。と同時に、私が思っていたのは、有明海・八代海で毎年、農水省と環境省と関係する県が膨大な調査をやっています。あのデータは刮目に値するものです。例えば、この図の真ん中にある貧酸素水塊がどう動くかとか、成層状態がどうだとか潮流を測ったところではどうなっているか、これらの観測値があるわけで、今後のことを考えたら、岡田先生が言われた方法と同時に、今、農水省と環境省が中心になってやっている観測結果を検討し、さらに例えば岡田先生の示されたお互いの相関関係を連ねて解明に結びつけることが可能かを意識した調査に少し変えていけば、随分展望につながると私は思っています。
 その中に、どんな解析モデルを使うのかはわかりませんけれども、完成した形でなくてもモデルを用いて、既に上がってきているデータを説明することが必要と考えます。そういうことをやらないと、現在あるデータだけで議論していたのでは詰めが甘くなる。やはり多少のあいまいさがあっても、量的に把握する努力を面的、時間的な面で検討しなければならない。両省がやっている調査、県もやっていますしね、あれをどうやって使い、対策を考える方向に向けてそろそろ本格的に議論しないとまずいのではないかと思って聞いていました。
 ですから、今、清野先生が言われたことも含めて、全部入れろというのは無理ですから、既にあるこの3年間ぐらいにわたるデータを見直して、それをどう使うかをやることを考える必要があります。そうすると、岡田先生のやっていただいている検討をサポートし、提案された因果関係をかなりはっきりしていくことができるかなと思っています。
 毎回報告がある割には、調査をやっている成果の進展につながっていないのではないか、いつも残念に感じています。

○須藤委員長 モニタリングというのは先生がおっしゃったとおり、目的もなく測るために測っているわけではないんですが、多分そういう、つなげるようにというようなことを、特に私は環境省のモニタリングについては申し上げているし、その方向を目指しているとは思うものの、今、岡田先生がその辺をどう生かしていくか、反映させるかというご質問なので、ぜひそれもお願いします。

○岡田委員 幾つかの因果関係をここで仮説的に提示してやってみますと、いかにデータが少ないか、私たちが論証するのに適切なようにまとめられたデータはなかなかないわけです。ただ、福岡先生おっしゃるように、データは既にあるわけですね。ですからそれを、例えばこの仮説に向くように加工してみたら、何か結論が言えるか、言えないかという作業を順番にやっていけば、かなり絞られてくるのではないかと私は期待しています。
 そういう意味で、ここでは因果関係を、当たり前のことをやっているにすぎないんですが、こういう関係は出ますか、出ませんかというストーリーを提示するのが我々の仕事かと考えております。
 ですから判断も、先ほど森下先生からご注意いただいたように、上下パッと見て「関係ない」といったことを私たちがすべてやってしまうのは、やはりよくないと思いますので、ここで専門家の先生方の目を通して判断することも必要だと思っています。ぜひお願いしたいと思います。

○菊池委員 地元に長いこといるんですけれども、なかなか頭の方がついていきませんで、申しわけございません。
 さっき陸上からの薬物がといったお話がございました。今、熊本県は非常に克明に、幾つかの、一番大きなアサリ漁場になっている所とか、あるいは養殖漁場に近い所とか、そういう重点的な所で聞き取り調査を随分やっております。それで、いつごろから藻場が消えたか、あるいはいつごろ大量斃死があったか、それは1年で直ったのか、5年、10年と尾を引いたのかといったことがかなりわかってきているわけです。
 それと、私自身の、ちょっとしかお手伝いをしなかったんですけれども、そういう1969年代の終わりから70年代の初めにかけては、農薬の干潟生物への影響は相当ひどかったと思います。PCPという除草剤がありまして、これをヘリコプターで撒いたのが風で全部干潟におりて、アサリ、ハマグリ、それからクルマエビの稚エビが緑川干潟で壊滅したことがございます。それから八代の方でも、あれはイグサをつくっているわけですけれども、それがやはりイグサを守るために除草剤、あるいは殺虫剤と両方だと思いますけれども、それを撒かれたらその前の干潟がひどかったんだという話は出てまいりました。
 現在は、目に見えて「どの薬剤が」というものは、もはやないと思いますけれども、でも、30年、40年たどってみますと、そういうものがかなりあったということです。
 あと、干潟が泥だらけになってベタベタになったら貝が育たない。これも、だれもが歩いてみればよくわかることなんですけれども、では、それがどうやってというときに、すごい台風が来たら全部細かいのを沖に散らしてくれたから漁場が直ったという話もありますし、逆に、川から大量に土砂が流れてきて干潟に積もったからネガティブになった。ですからこれも、どの程度の勢いでどのぐらいの水量のものが出てきたら上から持ってきたものが干潟で止まるのか、あるいはそれが干潟の下まで突き落とされて、かえって干潟が前よりちょっとよくなるのか、これはお話を聞いていましても、30年前の話になると、33年前だったのか35年前だったのか29年前だったのか、なかなかきっちりは出てこないんですけれども、そういう意味では、そういう異常気象みたいなもの、突発的な集中豪雨とか台風の後も干潟漁場についてはかなりインパクトがあるんだということはわかりました。
 アサリの熊本県の統計が参考資料の(7)ページの上にありますけれども、これで見ますと1974年ぐらいからで、これは上り坂なんですね。ですから、多分1960年代の終わりはこれよりもっと少なかったんだと思うんです。だから私、ちょいちょい漁師さんと話すのは、6万トン、5万トンいたのが本来のいい姿だと言うけれども、それは実際に年数で数えたら3年か4年だよということですね。
 それより前は、余りたくさんアサリを採ってもコールドチェーンがなくて遠くへ売りに行けなかったという問題もあったので、資源はあっても漁獲量が伸びなかったのかもしれませんけれども、この急激に減ってきている時代は、需要は増え、漁獲量の方が足りなくなってきている時代ですね。ですから、そういうものも少し掘り起こして、それから近年、いつからだめになってきたのか。熊本のアサリに関して言えば、80年代の後半から下がってきて、1万トンを切ってかつかつになったのが、この1~2年で5,000トンだか7,000トンにちょっと上がってきたぐらいですけれども、やはりその間に浜がどう変わったのかということを聞き取りで、特に今、既にお年をとっている我々世代の漁師さんに聞いてみるのと、それから、今の30代の人に聞いたのではやはり随分違うと思うので、それはやはり努力してみる甲斐があるだろうと思っております。

○須藤委員長 今日は県の方もおいでになっているんですが、熊本県では既にそういう情報を集められて、調査が進んでいるんですよね。

○菊池委員 はい。

○須藤委員長 そうしたら、環境省が改めてやるというよりも、環境省にご協力をいただくといったことでもよろしいわけですね。

○菊池委員 そうですね。昨日もその委員会がございまして、かなりの資料を見せていただきました。

○須藤委員長 そうなると、次の機会あたり各県なり各省のお仕事もいろいろ伺わなくてはいけない時間もありますので、どこでやるかはともかくとして、有明の再生法は国だとか県だとかと分けているわけではありませんので、県と一体でやること、連携が大切なので、熊本県のご協力をいただければ、今の先生のお話をもう少し具体的に進めることは可能ですね。ありがとうございます。
 そうしたら岡田先生、そういうものも、今すぐこれをどうというわけではないけれども、長期的ですから、別に何年前というわけでもないんでしょうけれども、やはり1960年代後半から1970年代ぐらいの変化なんていうところを掘り起こせれば、そういう中から出していただければと思います。
 ほかに何かありますでしょうか。

○滝川委員 今、菊池先生からご紹介があったものですから。
 熊本県の方で有明海・八代海干潟等沿岸海域再生検討委員会とかいうのをやっていまして、今、菊池先生からご紹介がありましたように、やはり場所、場所でかなり条件が違うということで、岡田先生からご説明があったまとめの方法は、県単位でされている。同じ熊本県でも海域によってかなり違う、あるいは歴史的変遷が違う。そういったことを非常に気にしまして、熊本県ではケーススタディということで場所を決めまして、それでそこの海域、いろいろな生態系の変化、あるいは漁獲量の変化等々を含めて、今、整理いたしております。そのまとめをベースに、では、再生に向けてどうするかということも、若干ですが方向性を定めて、今、検討して、今年度がタイムリミットだということで、今、まとめにかかっておりまして、もしそういう機会がまとまりますれば、3月いっぱいぐらいに何とかまとめたいと思っていますので、それ以降ぐらいにご紹介させていただいて、局所的な考え方と、もうちょっと広い考え方と連携していただけたらと思っていますので、よろしくお願いいたします。

○須藤委員長 ぜひご協力いただきたいと思います。

○清野委員 今、菊池先生、滝川先生からもご紹介がありましたけれども、熊本県の調査は、本当に問題解決とか、県民だとか漁業者を含めた海を再生させるための合意形成とか、非常に丁寧に考えられた調査です。
 先ほど福岡先生からもお話があったんですけれども、多分この委員会として、膨大なデータをこういう形でとり続けて報告を受けるという形式をとるのか、やはりこの中でシャープな調査を幾つか選んで、それを積極的に育てていって問題解決に結びつけるのか、今ちょうど分かれ目だと思うんですね。ぜひ熊本県の事例を見ていただいて、一般的なことと、それからケーススタディの両方の大切さをどういうふうにやっていくかということも見ていただくと、非常にいいだろうと思います。
 それで、ケーススタディの大事なところは、ケーススタディに参加してくださる方が自分で考えて行動するようになったり、また、海のことを思い出してくれたりデータをとってくれるというような、調査自体が再生に至るプロセスなんですね。そういう点でも、委員会の調査の仕方にそういう部分も入れていただいていいかと思います。
 これに関して申し上げますと、結局、委員会のマネジメントとして、これだけいろいろな専門の方がいらして、アドバイスをするというレベルと、それから委託された研究を科研費でやるとか、いろいろなレベルの参加があると思うんですね。それで、もしも本格的に委員の方に活躍していただくとしたら、やはり委員の方がある程度責任を持って、お願いしたものをきちと調査として結論を出していただくような、そういう意味での本格的なタスクフォースがあれば、福岡先生がおっしゃったような解析もできると思うんですけれども、意見を述べるということで、そこから先はどこかが受託して、それなりに工夫してやってくださって報告を受けるということだと、なかなかうまくないと思うんですね。
 ですから、そのあたりもまた委員長や環境省の方でもご検討いただいて、研究マネジメントとその解決に向けた研究調査のあり方を検討していただけたらと思っています。

○須藤委員長 ご意見いただきまして、ありがとうございます。
 委員会の運営自身については私の責任というか、十分責任を感じているわけでございますが、何回も申し上げているように、この委員会は法律に基づき、そしてある時間のところまでで報告しなければいけないという義務も背負っておりますので、それは第1に考えるわけですが、研究しなくていい、コメントだけ言えばいいなんて思っているわけではございませんで、委員の先生方にはすべて当事者として研究にもぜひ参加していただきたいわけですが、それはそれぞれの先生のご専門と、それから今のお立場で相違があるだろうと思います。
 例えば、私の理解では、楠田先生や滝川先生は一方ではご自身で十分に研究していただいているので、あるいは小松先生もそうですね、それから菊池先生、滝川先生、中田先生もそうですか、山口先生、山本先生もそうですね、それから荒牧先生、そういう先生と、それから、やはり全体的なことを総合的にやる先生と両方あるので─清野先生は両方入っているんですよね。ですからその人によって、全員にというのはなかなか難しいから、それはもう少したったら1回総合的に委員会で議論をした後、これは環境省ともやりますが、本報告をつくるときにはワーキンググループを幾つかにして同時並行で走らせるとか、やり方はちょっと考えさせてください。今、思いつきで「こうします」と言ってしまうと……

○清野委員 今ということではなくて、研究・調査のマネジメントの分かれ目なので、お願いしたいということです。

○須藤委員長 それは十分理解しています。
 そのほかに、いいですか。

○本城委員 岡田先生にこれを整理していただいて、やはり我々に何が不足しているのかを早く見つけないといけないと思うんですね。そして、国とかいろいろなところで行っている研究の調査方向性を示してあげないと、時間がもったいないように思いますね。
 私は、不足している1つには、例えば、外側からばかり見ていて、では、このアサリとかタイラギはいまの環境をどう思っているのか、そういうことは一つもわかっていないと思うんです。ですから、早道は生物の体内側にもある。科研費の結果をみると、沖合の有明産のタイラギは貧酸素に対して圧倒的に酸素過敏症でした。嫌気呼吸ばかりしていますよ。そして殻体運動もすごく激しいですね。ところが、岡山県産のタイラギはそんなことないんです。
 次に、アセチルコリンエステラーゼを測りますと、これは有機リン系農薬に反応するもの酵素ですが、やはり反応が出るんですね。ただ、それがイコール農薬によって生じたとするのは危険かも知れませんが。我々は、貝でも何でも生物のことを余りにも知らなさすぎます。貝の水管の長さ1つを考えてみても、泥の厚さの影響はどうなのか、このあたりの研究がどうも隘路になっているように思うので、こういう研究にも配慮しなければならないと思います。

○須藤委員長 生物側からの考察ですね。

○山本委員 今、ご提案いただいているこの解析の仕方だと、目的変数が何になるのか困ってしまう場合が出るのではないかと思います。
 今、例に出していただいているのはたまたま二枚貝で、アサリとかタイラギという種を目的変数にできるんですが、138ページの図の問題として挙げられるもののところで、多分、主に生物、水産資源と。そうすると、ベントス……。何十種類とあるわけです。もちろん1種類ずつやるのは意味がないですし、かといって、ではどういう見方をしたらいいかというと、例えば、泥っぽい環境を好む、貧酸素を好むものが増えたとか減ったとかいう形で変化を記述しているわけですが、泥っぽいものを好むものが増えているということは、環境が泥っぽくなっているに決まっているわけで、そこからここでやっていらっしゃるような解析に馴染むかどうか、ちょっと私、イメージがわかなくて。
 何を目的変数にして何の原因を解析しようとしているのかというときに、問題としてすごくクリアなのは、水産有用種ですよね。いかに水産統計が当てにならないとはいえ、統計はある。ですけれども、では、有明海、八代海、水産有用種がよくとれるようになりさえすればそれでいいのかというと、そうではない。一般の方が見たときに有明、八代の問題としてわかりやすいもの、でも、そこで漁獲種だけを問題として挙げてしまうと、もう漁業さえよくなればいいのかということになってしまうので、解析として、はっきり数字で出てくるものとは別のルートもあるべきなのかと思います。
 あるいは、アンケートという話が何カ所かで出ていましたが、私も熊本の委員に加えていただいているのでいろいろな方にお話を聞くと、漁業をやっていない方が感じていらっしゃることとして、例えば、危なくて子供を浜に連れていけない。それはなぜか。とてもではないが泥遊びできる環境ではない。そういうのは、やはり明らかに環境の悪化だと思うんですよね。
 そこで、アサリ等を通さなくても人間が感じている環境の悪化を拾い上げることができれば、それは一つの問題として、その要因を詰めていくことができるのかなと。この問題点を絞って、水産有用種を目的変数にした解析とはまた別のルートの解析もあった方がいいのかと思いました。

○須藤委員長 そこも当然だと思いますので、岡田先生からお願いします。

○岡田委員 今は、やりやすいところからやっているだけです。例えばベントスをやろうとしたら、まず絶望的にデータがないと思います。ですから、例えばベントスの多様性がいいのか、それとも指標種をやるのがいいのかといっても、どうせ─と言うと言い過ぎかもしれませんが、データがないので、解析不可能。解析不可能ということを我々が138ページの図をもとに明解に出すということで、まず共通認識ができますから、その次に何をするかはここの委員会で考えていただくなり、みんなで考えることだろう。それを明解にすることがまず重要だと思っています。
 あと一つ、おっしゃるように、全体の生態系というか、住民がどう思うかという一つ一つの要素をインテグレートした、総合した、あり得るべき有明海像、パーツ、パーツでも結構ですが、そういうことに関するこのやり方での考察は、極めて難しいと思います。
 例えば、アサリがたくさんとれることとノリがたくさんとれることと、それからベントスの多様性が高いことは同時並行では成立し得ない。そうなると、ではどういう有明海像をまずあがくかということが必要になりますが、それは今の段階でなかなか大変だろうということで、まずはわかるところからやっているというのが現状でございます。
 おっしゃるとおりだと思いまして、最後そこをどうするかは議論はしているんですが、答えは今のところちょっと─というか、それができたらこの委員会、多分解散ですね。(笑)大変ありがたいことだと私は思っています。
 すみません、余計なことを言いました。

○須藤委員長 私はこの委員会がいつ終了するかコメントする立場にはないけれども、今のようなことを最終的にはやらないと、多分いけないんだろうなと。それがわかるまでは委員会はやらなくてはいけないかなと思っておりますので、再生の道筋とあわせて、その再生の道筋というのは、結局その目標がはっきりしなくてはいけないので、「有明海の健全なる姿はこんなものだ」ということをもって議論するわけでしょうから、そのときには、今、山本先生がおっしゃったようなことをやらないとできないだろうなと思っています。

○山田委員 すみません、きちんと意見として言えばよかったんですが、138ページの図の中で、成層とか淡水の流入というところが少し欠けているのではないかと思っていたんですね。特に、どうして成層がないのかと思いましたら、今の柳先生の、近年、鉛直混合が増しているとか、そういったことを意識なさってそのような水の流れのところ、さっき清野先生がおっしゃっていた水の流れのところがまだ解明されていないので載せていないのかなと思っていたんですが、ここに「可能性」という言葉が新たに出てきましたので、やはり水の流れ、鉛直混合、成層、そこら辺も加えて、そして解析に入れていただければありがたいと思います。
 特に今、柳先生のあそこら辺の鉛直混合のところでは、結構今、論議がなされていると思います。私も専門ではないので言えないんですが、今度、今、清野先生が言われたように、調査方法、これからの研究マネジメントのターニングポイントということですので、今、実際に論議になっているところもぜひ留意されて、今後の調査計画の中に盛り込んでいただけたらありがたいなと思います。
 もう一つは、ここのアサリのところで、例えば底質の変化というのがございます。底質の変化と言ってもいろいろありますから、盛り込むのは大変だと思うんですけれども、ここで岡田先生にご協議していただいたのは面積の変化でした。ただ、ここに文章で書いてあるのは、シルトになったとか、有機富栄養化とかあって、有機的な変化もあるわけですね。そこら辺をどう盛り込んでいかれるのかというのは、これからまた大変な作業になってくると思います。
 もう一つは、このような個々の解析と、先ほど森下先生が言われたタイムラグの問題ですね。あと相乗効果。例えば農薬の問題、それから泥質化の問題、いろいろありまして、そこを今後どうまとめ上げていくかもこれから知恵を絞っていかないといけないなと、現在、考えている状況でございます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 まだご意見はあろうかと思いますが、今の幾つかの視点を138ページの図の中にどういうふうに入れるかは、後で事務局とも考えてみたいと思います。それから、先ほど河川の流入の問題もありましたね。その辺をこの要因のところにきちっと入れ込めるかどうかは、ちょっと考えさせてください。
 とりあえず、本日のところは、先ほど申し上げましたようにこれが最終ではございませんので、パブリック・コメントの手続をとりたいと考えておりますので、可能な限り今までのご意見は入れさせていただいた上で、先ほどの案はそうさせていただくし、それから、それ以後いただいた岡田先生の方のグループについても、これはさらに継続してやっていただきたいと思います。ただ、これは山本先生からのご指摘もありましたけれども、例示的に取りまとめたものでございますので、これこそ各専門分野の先生方に幅広く知見をご提示いただいて、トライ・アンド・エラーですから、「ここがおかしい」と言えばトライして、おかしければまたトライするといった形で進めていきたいと考えております。
 それから、小委員会の先生方にも、当然でございますが、ご意見をいただきながら作業を進めていきたいと考えておりますので、荒牧先生、その辺のところは委員会の日程等もございますが、早目に作業ができるようにお願いしていきたいと思います。
 それでは岡田先生、継続して、いろいろご注文が多いんですけれども、やっていただきたいと思います。先生方のご協力もぜひお願いしたいと思います。
 それでは、事務局から他に何かございますでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 長時間、活発なご議論をありがとうございました。
 次回の評価委員会でございますけれども、あらかじめご案内しておるかと思いますけれども、4月27日の午前中を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
 次回の議題といたしましては、週明けから1カ月ほどパブリック・コメントをやる予定でございますが、そのパブリック・コメントで出てきたご意見を紹介するとともに、今日もいろいろご意見いただきましたけれども、今後、委員会報告のまとめに向けた検討をお願いし、国あるいは県で行っている調査等の報告を順次やっていきたい。熊本県さんの委員会も3月にまとまるということでございましたので、もし可能であれば、そういうものを含めて次回ご報告いただくようなことを考えていきたいと思っております。そういう意味で、今後、関係する省庁、県のご協力をいただいていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○須藤委員長 高橋室長、どうもありがとうございました。それでは、これにて本日の議事は終了させていただきます。第19回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会いたします。議事進行にかかわる皆様のご協力にお礼を申し上げます。どうもお疲れさまでございました。

午後4時05分 閉会