第13回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

日時

平成17年4月12日(火) 13:30~16:30

場所

中央合同庁舎第5号館22階 環境省第1会議室

出席者

委員長 須藤隆一委員長
委員 荒牧軍治委員、大和田紘一委員、楠田哲也委員、三本菅善昭委員、清野聡子委員、滝川清委員、中田英昭委員、原武史委員、福岡捷二委員、本城凡夫委員、森下郁子委員、山口敦子委員、山田真知子委員、山本智子委員
臨時委員 菊池泰二委員
主務省・関係県発表者 農林水産省水産庁漁場資源課長、長崎県総合水産試験場介藻類科長、総合水産試験場漁場環境科長、熊本県水産研究センター主任技師
事務局 環境省環境管理局水環境部長、水環境部閉鎖性海域対策室長、閉鎖性海域対策室長補佐

午後1時35分開会

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第13回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本評価委員会は今年の2月でちょうど丸2年となりまして、2年間の委員の任期満了に伴い、委員の改選をいたしました。新しい委員名簿を資料1として用意しておりますので、ご参照いただきたいと思います。
 再任につきましてご了承いただきました委員の皆様におかれましては、大変ありがとうございました。引き続きよろしくお願いいたします。
 また、新たに3名の先生に委員になっていただきましたので、ここでご紹介いたします。独立行政法人水産大学校前理事長の三本菅委員です。

○三本菅委員 よろしくお願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 長崎大学水産学部の中田委員です。

○中田委員 よろしくお願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 鹿児島大学水産学部の山本委員です。

○山本委員 よろしくお願いします。

○環境省閉鎖性海域対策室長 以上の3名でございます。よろしくお願いいたします。
 この評価委員会の委員数は合計で21名でございますけれども、本日は現在のところ14名の委員に出席いただいておりますので、定足数を満たしていることをご報告いたします。
 なお、清野委員は1時間ほどおくれて出席されるとの連絡をいただいております。また、滝川委員も恐らくもうすぐ到着されるものと思います。
 また、事務局におきましては、環境省水環境部長の甲村が出席する予定でございますが、国会のほうに呼ばれておりまして、少しおくれて参る予定でございます。ご了承をお願いいたします。
 まず、配付資料の確認をさせていただきます。
 本日の配付資料は、議事次第の1枚紙がございまして、その後ろに配付資料一覧があります。この順に並んでおりますけれども、資料1が委員名簿。資料2-1が有明海・八代海における赤潮の発生について。資料2-2が問題の概況、原因・要因・論点等の整理の中の赤潮の部分を抜粋したものでございます。それから資料3が有明海・八代海における河川の影響について。福岡委員の資料でございます。それから資料4が平成16年度版文献シート。資料の5が水産庁提出の資料でございまして、有明海の漁業生産及び漁場環境に関する補完調査の結果について。資料6が長崎県総合水産試験場の資料でございますが、諫早湾におけるタイラギ移植試験について。資料7が、これも長崎県からの資料でございますけれども、諫早湾内の小長井町釜地区干潟の貧酸素化について。資料8は熊本県からの資料でございますが、新たなアサリ増殖手法への取り組み。本日の資料は以上でございます。不足等がありましたらお申し付けをお願いいたします。
 なお、委員の改選に伴いまして、委員長を選んでいただく必要があるわけでございますが、事務局といたしましては、引き続き須藤委員にお願いしてはどうかと考えておりますけれども、いかがでございましょうか。
(「異議なし」の声あり)

○環境省閉鎖性海域対策室長 どうもありがとうございます。
 それでは、須藤委員に委員長をお願いしたいと思います。
 それでは、以下の議事進行は須藤委員長にお願いします。

○須藤委員長 かしこまりました。
 それでは、ご指名でございますので、本年度と次年度、この2年間の司会の役を務めさせていただきます。どうぞよろしくご協力のほど、お願いを申し上げます。
 本日も、先ほど事務局からご紹介ございましたように、たくさんの議題なり報告なりがございまして、本日の議事終了は4時半というふうに考えておりますが、若干の遅れがあるかもしれません。どうぞこの点もご配慮いただきまして、ご発言、あるいはご説明なさる方、簡潔にどうぞお願いをいたしたいと思います。
 先ほど、新たな委員をご紹介いただきました。3名の先生方、どうぞ活発にご議論にご参加をいただくようお願い申し上げます。
 それでは、私の委員長の指名に次いで、ここで委員長が委員長代理を指名するということに本委員会はなっておりますので、現在小委員会の委員長をお務めくださっている荒牧委員にお願いしたいと考えております。どうぞよろしくご配慮願いたいと思います。よろしゅうございましょうか。
 それでは荒牧委員、どうぞ、委員長代理ということでお願いを申し上げます。

○荒牧委員 はい、わかりました。

○須藤委員長 それでは、先ほどの議題の順番に議事を進行したいと思います。
 最初が有明海・八代海における赤潮についてということでございまして、この問題については前回本城先生から大変貴重なお話もいただいたところでございます。事務局からどうぞ、ご説明をいただきたいと思います。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、資料2-1をごらんいただきたいと思います。
 前回、第12回評価委員会におきまして、本城委員から赤潮の発生に関しましてご説明をいただき、またその後、議論をしていただいたわけでございますが、その前回の内容を簡潔にまとめてみたものでございます。
 内容は前回の議論と重なりますので、詳細に説明することは省略させていただきますけれども、ポイントとしては、赤潮に関しては原因となるプランクトンの種類別に検討する必要があるということでございまして、このペーパーでも4つの部分に分かれておりまして、最初が小型珪藻、2番目が大型珪藻、3番目がラフィド藻のシャットネラ、それから裏にまいりまして、渦鞭毛藻のコックロディニウムと、この4種類のプランクトンごとに、それぞれどういう特徴を持っているか、またどのような条件になれば赤潮が発生するかということを整理したものでございまして、前回の議論をまとめてみたものでございます。
 そして次に、資料2-2でございますが、これは前回の評価委員会で資料の2というものがございまして、有明海・八代海におけます問題の概況、原因・要因、論点を整理したペーパーをご説明したわけでございます。
 これは、本日ご欠席ですが、岡田委員にとりまとめていただいたものであったわけでございます。その中で、赤潮の部分につきましては、前回本城先生からいろいろご意見をお聞きし、また議論をした結果として、その赤潮の部分についてはこのように修正してみてはどうかというものでございまして、本城先生、それから岡田先生と相談をして、このようなペーパーを用意したものでございます。
 簡単にご説明をさせていただきますと、まず有明海の問題の概況としては、近年魚介類に被害を与えるシャットネラ赤潮が発生するようになってきている。また、赤潮の発生件数が増加してきていると。
 その原因・要因として指摘されている事項、その右側でございますが、小型珪藻に関しましては気象条件によるもの、または透明度が上昇してきたことが原因となっているのではないか。さらに大型珪藻に関しましては、気象条件、その中で特に高塩分、晴天の継続ということでございます。また、シャットネラに関しましては、海域の富栄養化、底層の貧酸素化に伴う底泥からの鉄の溶出が原因となっている可能性があるというご指摘でございました。
 今後の論点、課題といたしましては、富栄養化が以前に比べて進んできているのかどうかということ。また、底層の貧酸素化が以前に比べて進んできているかどうか。こういうことについて、さらにデータを整理していく必要があると、こういうふうに考えておりまして、その辺のところは事務局としてもデータの整理を進めてまいりたいと思っております。またいずれ、この評価委員会でご検討いただければと思っております。
 それから、八代海に関しましての問題の概況でございますが、コックロディニウム赤潮が魚類養殖に被害を与えると。なお、過去二十数年のデータを整理すると、コックロディニウム赤潮の発生年と非発生年が数年ごとに交互に見られている。赤潮の発生件数は横ばいであるが、1990年代から継続日数が長期化する傾向にある。また、1990年代後半からは湾奥部でも発生するようになり、海域全体に広がってきており、夏期だけでなく四季を通じて発生するようになったと。
 その原因・要因でございますが、栄養塩類の負荷ということでございまして、陸域からの負荷、魚類養殖による負荷の両方があるのではないかと、このようなことであったというふうに考えております。
 資料2-2のご説明は以上でございます。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 それでは、これにつきましては本城先生のプレゼンテーションと、それから我々の議論をとりまとめたものでございますので、本城委員から何か補足いただくことはございませんでしょうか。

○本城委員 有明海の(3)ラフィド藻のところで、鉄だけが突出しているような感じがして、僕は心細くなってきているんですが。鉄など」と修正願えたらと思います。

○須藤委員長 鉄というふうに限定しているというところに少し問題がある。

○本城委員 私はマンガンの話もしたと思いますので。

○須藤委員長 「鉄など」という言葉でよろしいですか。

○本城委員 はい、それで結構です。坂川室長とも前もって話をしたのですが、気がつかなくてどうもすみません。

○須藤委員長 ありがとうございます。
 それでは、プレゼンテーションしていただいた先生もそうおっしゃっておられるので、ここは、もし「など」が何かといったらマンガンもありますので、「鉄など」ということでいかがでございましょうか。ということで、資料2-2はそのように修正いただくということにさせていただきます。
 そのほか、本城先生、よろしいですか。ありがとうございました。
 それでは、八代海の問題もここで述べられておりますので、大和田先生がここの問題についてはいろいろご研究をされていらっしゃるということを伺っていますので、八代海に関して補足いただくことはございますでしょうか。
 大和田先生、どうぞ。

○大和田委員 八代海については、我々、ここ3年ぐらい細かく調べてきております。赤潮に関して言いますと、これは水産庁の九州漁業調整事務所の平成16年の報告ですが、有明海、八代海、天草灘、これを一緒にしておりますが、赤潮の発生件数は大体20件ということで、2年連続で減少している。これは有明海、八代海、天草灘が一緒になっているということです。
 それで、八代海のほうでいえば、昨年の場合は5月中旬、下旬、あとは9月、10月は降水量は多かったのに対して、梅雨の時期の6月、7月は非常に温度が高く、もう6月の早くから成層化が進んでいました。こういうときであれば、これまで本城先生が言ってたような予測手法ですと、コックロディニウムの赤潮が出るのではないかと非常に心配しておりましたら、8月になってシャットネラが出ました。シャットネラにより、八代海では2億3,000万円程度の漁業被害が出たということですが、昨年は台風が何度も通って、赤潮が意外に全国で少なかったようで、この2億3,000万円というのは、被害額としては日本で一番ひどかったような状態のようです。
 それで、この2年、平成15年、16年はシャットネラが出ているんですね。その前に、2000年だったでしょうか、コックロディニウムの非常に大きな、40億円の被害が出るような大きな赤潮がありました。
 ですから、八代海の場合の赤潮というと、最近でいえばコックロディニウムかシャットネラというのが大事かと思いますが、ただ、それがどうして交互、あるいは突然どちらかが出てくる、その辺が非常によくわからないところでございます。
 それと、植物プランクトンのほうでいえば、八代海の場合は、特に北のほうですね。一番湾奥から八代の近くぐらいまで、この辺は小型珪藻のスケレトネマ、あとキートセロス、こういうようなものが年間を通じて非常に多いんですが、それから南のほうに行くと非常に少ない。細胞数で、ときには1ml当たり数千の細胞になるんですが、クロロフィルでいえばそんな高くはないというような状況で、そういうところに突然シャットネラの赤潮が出てくるというのが、これも本当のメカニズムというところがわからないところです。
 それともう1つは、栄養塩でいいますと、我々姫戸といいまして、ちょうど球磨川の対岸になるところ、天草ですが、そこと南部の水俣で、夏の間は1週間に1度ずつ各層で栄養塩を測定しておりますが、成層化した時期には無機態の窒素、リンは非常に減少しますが、そういうときでも有機態の窒素、リン、こういうものは非常に豊富といいますか、意外と多いなと。これは、多分東京湾でも瀬戸内海でも言われていることかもしれませんが、こういったものが赤潮にどういう影響を与えるのか。また、有機態の窒素、リンというのがどのような形でつくられているのか。河川から入ってくるときからもうあるのか、それとも無機態で入ってきたものが中に入ってから有機態になる。例えば植物プランクトンが光合成をしながら体外に代謝産物として出すのか。そういうようなことはこれから調べていく必要があるのではないかと思います。
 いずれにしましても、八代海の場合は、やはりシャットネラ、あるいはコックロディニウムの赤潮を防ぐということが非常に大事な問題だと思います。
 あとは、貧酸素水塊は、今までのところは、まだ八代海の場合は出ていないのではないかと思われますが、もっと詳しい観測をしておられる方がいれば、そういうこともさらにデータがあればありがたいと思います。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 先生のご発言は、議事録には当然でございますが載せさせていただくんですが、この資料2-2の中の八代海の部分には先生のご発言、特にシャットネラの部分についての指摘はないんですが、例えばここで最近はその被害があるぐらいのことは述べておいたほうがよろしいですか。

○大和田委員 はい。コックロディニウムだけではなくてですね。

○須藤委員長 最近はシャットネラ赤潮による魚類養殖被害が見られるとか、そんなことも書いておいたほうが、これは委員の先生のご発言ですので。先生、そのぐらいでいいですか、この要点のところは。後でちょっとごらんになっていただいて、もしさらにつけ加え、さっきの栄養塩の問題とか何かおっしゃっておられる部分をつけ加える必要があればまた入れるんですが、これは要点だけでございますので、今のシャットネラは入れたほうがいいかなと、私も直感的に思ったんですが、とりあえずはそのぐらいのところでよろしいですか。

○大和田委員 はい、よろしいと思います。

○須藤委員長 はい。それではそこは先生のご発言を、八代海の部分につけ加えるということにさせてください。
 それでは、両先生から修正、あるいは追加のご説明をいただきました。何かこの赤潮のとりまとめにつきまして、ほかの委員の先生方からご発言があればどうぞなさってください。お願いいたします。ご質問でも結構でございます。本城先生のときにも不十分だったかもしれませんね。皆さんからのご質問全部は受けきれなかったかもしれないんですが、いかがでございましょう。
 赤潮の部分はよろしいですか。
 ではどうぞ。滝川先生、どうぞ。

○滝川委員 今、論点、課題というところの右側のほうがクエスチョンマークになっているんですけれども、「貧酸素化が進んできているか否か?」と。このクエスチョンマークというのはどういう意味なんでしょうか。まだよくわからない。

○須藤委員長 それは本城先生と、それから岡田先生との議論と、事務局と、要するに結論ということではないんですよね。

○環境省閉鎖性海域対策室長 ここは、現時点ではまだ結論が出ていないというところでございまして、それで、今後可能であればこの評価委員会でもう少しこの部分に関して議論をして、結論を出せるものは出していきたいというふうに考えております。

○滝川委員 私が以前、ちょっと紹介させていただいたかもしれませんけれども、湾奥のほうは過去の浅海定線データにしても、DOがゼロを切るところが夏場等出てきておりますので、それは全体とは言いませんけれども、ある時期そういうことが出ると。そういった意味では、もっと詳しく調べる必要はあるんですけれども、ある時期、最近特にそういった傾向があるというふうなことは、ちょっと今それを思っていたものですから、クエスチョンマークというのはどういう意味かなと思ったんですけれども。

○須藤委員長 ありがとうございます。多分このクエスチョンマークは、今赤潮の話をして、その次には、今日は福岡先生から河川のお話をいただいたり、それから今度先生から多分底質のお話もいただきますよね。そういうのを総合して、最後の結論は多分貧酸素化が進んでいる、あるいは富栄養化が進んでいるということになるんでしょう、1つのテーマだけでやってしまうのはいかがなものかということで。クエスチョンというのは、多分結論はそうなるでしょうと。こういうことで私はそれなりに理解をいたしておりますので、まだ1回目ですのでね。
 いかがですか、先生、そういうことで。進んでいないという結論を出そうとしているわけではないわけです。
 ということで、事務局よろしいですね。私もそういう理解をしています。
 山田先生、どうぞ。

○山田委員 論点のところなのですが、ここではまず富栄養化と、それから貧酸素化があるんですけれども、それにもう1つ、流速が減少しているかというのをつけ加えていただきたいと思います。

○須藤委員長 それは、私が答えるのもいかがかと思うんですけれども、流速の部分はまた別途ご説明、きちんと今評価をしていただくためにワーキングをつくって、流速だけではないんですが、潮汐の問題とか、そういうことをやっておりますので、それが出たところで、今の先生のご質問と同じように、まとめてそこの結論はそのときに出したらいかがかなと思っています。この中でも、多少は関係してあるのかもしれませんが。

○山田委員 赤潮の発生と、やっぱり流速というのはかなり関係があると思います。

○須藤委員長 そうですか。それでは、ちょっと事務局、それについていかがですか。ではやっぱり、クエスチョンならつけておいたほうがよろしいですか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 では、ここの論点のところにつけ加えたほうがいいかと思います。本当であれば岡田先生からご説明いただいたほうがいいと思いますので、ちょっとご相談してみたいと思います。恐らくつけ加わることになるのではないかと思いますけれども。

○山田委員 その流速というのは、水平的な動きもあるんですけれども、上下混合というのもありますので、そこら辺のところでの流速です。

○須藤委員長 これは本城先生、どうですか、いかがですか。今のは本城先生の部分というだけではないんだけれども、その議論のところで今の山田先生のご指摘で、それはやっぱりつけ加えておいたほうがよろしいですね。

○本城委員 この現象は、特にラフィド藻の赤潮形成には大いに関係しているところがございます。貧酸素水塊の形成にもつながっています。

○須藤委員長 それは相互に関係することになりますよね。

○本城委員 そうでございます。

○須藤委員長 それではその流速が減少しているのではないかということですね。やっぱりクエスチョンをつけておいたほうが、並びとしてはよろしいと思いますが。
 では事務局、どうぞそういうことで。山田先生、どうもありがとうございました。よろしいですか、それで。

○環境省閉鎖性海域対策室長 はい、結構でございます。

○須藤委員長 それでは、ほかの先生いかがですか。赤潮の今の部分の論点、資料の2-2の部分。少し修正がございますが、当然修正するために資料を出しているんですから、いかようにも修正していただいて結構かと思います。
 よろしいでしょうか。
 それでは、今日も議題がたくさんございますので、また時間があれば総合的にやらせていただくということで、次に進めさせていただきます。
 それでは、今後の進め方について、事務局のほうからご説明を先にいただいたほうがよろしいかと思いますので。

○環境省閉鎖性海域対策室長 ただいま赤潮の部分についてご議論いただいたんですが、本日、この後、河川の影響に関しまして福岡委員からご説明をお願いします。
 それから、次回以降の予定なのでございますが、幾つか重要な論点が残っているわけでございますけれども、その中で、底質に関しましては滝川委員にまとめていただくようにお願いしているところでございます。それから底生生物に関しましては、菊池委員にお願いをしているところでございます。また、潮流・潮汐の部分と、それから貧酸素水塊に関しましては、現在ワーキンググループのほうで検討を進めておりますので、そちらのほうである程度結論が出てまいりましたら、この評価委員会にご報告をして、またご議論をいただくということにさせていただきたいと思っております。
 そのほかの水産資源の部分、また干潟や藻場の部分などにつきましては、現在ちょっと調整中でございますので、後で関連の先生にお願いすることもあるかと思います。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○須藤委員長 陸域からの負荷については。

○環境省閉鎖性海域対策室長 陸域からの負荷に関しましても、これも論点の1つとしてありましたので、現在環境省のほうでデータを整理しております。これもいずれご報告をして、ご議論いただければと思っております。

○須藤委員長 ありがとうございます。
 一応、事務局と委員長とで相談いたしまして、今後の進め方についてはそれぞれ先生方にお願いをしなくてはいけないので、今お話がありましたような、順番はまた変えるかもしれませんが、準備が整い次第ここでプレゼンテーションをしていただくと、こういうことにしていきたいと思います。
 今申し上げましたように、今後、論点の1つ1つについて個別の議論を行っていくことにしてございます。どうぞ各委員、先ほど申し上げましたように、ご協力のほど、どうぞよろしくお願いを申し上げます。また、必要に応じまして、主務省、関係県から当該論点に関する調査、研究の報告やデータの提供をお願いすることもあろうかと存じますので、この点についてもよろしくご配慮をお願いをいたします。
 それでは、先ほどからお話ししていますように、赤潮に次いで、本日は河川の影響ということで、福岡先生から論点を取り上げていただいてご説明をいただきたいと、こういうふうに考えております。どうぞ皆さん、福岡先生のご説明があった後、よろしくご議論をいただきたいと思います。
 福岡委員には大変お忙しい中、資料をご準備いただきまして、大変ありがとうございました。心から感謝申し上げます。
 それでは福岡委員、どうぞよろしくお願いをいたします。

○福岡委員 ただいまご紹介いただきました福岡でございます。中央大学に勤務しております。
 私の専門は土木の中の河川工学であります。環境省のほうから、河川の影響についてお話をしてほしいというご依頼がありました。河川の影響というのは大変広くて、全部を話すことは、私の能力の範囲を越えていますし、今の段階でできることとできないことがあります。特に有明海・八代海に関係していると思われる、河川を経由して出てくる土砂量と、それから河川の流量を中心にお話をさせていただこうと思います。
 先ほどのお話で、陸域から出てくる栄養塩については、環境省のほうでやっていただけるということで、そのほうがよいと思いますので、よろしくお願いします。
 有明海・八代海に入る河川はたくさんあります。現在は、特に国が管理している川につきまして、水の量や土砂の量、そういったものについて研究会をつくって検討しています。私もその中の委員の1人です。そういった立場で委員会の検討材料も含め、そして私自身、学識者としての考えを含めてお話しをさせていただこうと思います。
 皆さんのお手元に、今日お示ししますパワーポイントの原稿をお渡ししております。まず、この海域に関係する流域についてのお話をしまして、その中でもとりわけ圧倒的に筑後川の持っている意味が大きいということから、筑後川からの流量と、それから土砂の流出について主にお話をします。
 これが特別措置法が対象としている有明海・八代海の流域の概況であります。この特別措置法では、有明海・八代海の水質問題、環境問題について検討することになっていますが、この法律に関係する県は、福岡県、長崎県、佐賀県、熊本県、大分県、鹿児島県の6県です。有明海流入河川は、一級河川としては筑後川を含む8河川です。二級河川は104河川も入っております。数は多いんですが、流域面積としては一級河川の持っているものに比べてそれほど大きくないということを後で示します。
 一級河川というのは国が管理する川であります。国が管理している川。具体的には国土交通省が管理している川であります。二級河川というのは、これは自分の流域を持っていて、降った雨がその流域を経由して川から八代海や有明海に出ていく、県が管理する河川で、それを二級河川と呼んでいます。
 この八代海には流入する一級河川は球磨川しかありません。流入する二級河川は46河川あります。
 これは流域の概況を示します。有明海に流入する8河川のうち、筑後川の流域面積は決定的に大きくて、流域面積が2,860?あります。八代海に流入する川としては球磨川ですね。これが1,880?であります。有明海に流入する河川で、県が管理する二級河川も含めて書いた流域の大きさは、この表のとおりです。筑後川が全体の35%を占める流域面積を持ちます。二級河川の割合はこういうことになっているんですが、二級河川は有明海に入ってくる中では全体の16%の流域面積を持っています。この青で囲まれた部分が有明海・八代海に対するそれぞれの河川の流域界を示します。この青いところに降った雨が全部、この筑後川を経由して有明海に出るという意味の流域であります。瀬ノ下というのは筑後川の基準点といいまして、ここで流量など基本的に重要な諸量を計測しているところで、河口から24.8kmのところにあります。瀬ノ下は筑後大堰の直上流ですが、そういったところにある基準点で、球磨川は横石に基準点があります。
 それでは、どれだけの水が筑後川から有明海に出てくるのか。流域に雨が降って、それが河川を介して有明海・八代海に入ってくるわけですが、流域面積の大きいところは出てくる水の量も多くなります。大体流域面積に比例しているわけです。筑後川の場合は瀬ノ下での年総流出量を示します。皆さんへの配付資料は流量年表からのデータです。国土交通省が全国の基準点での流量データを集めて年表にしたものが流量年表です。河口から24.8kmのところに瀬ノ下がありますから、筑後川は河口までの全流域面積が2,860?で、瀬ノ下までは2,295?です。それをこの瀬ノ下で36億?という年間流出量がありますので、それをこの流域面積の比率で直して45億?の年間総流出量が筑後川から有明海に流入して来ます。有明海に対して、筑後川から入ってくる流量が決定的に効いていることを示していまして、この次に来る緑川で18.64億?ですね。これが年間総流出量で、観測開始から平成13年までの平均値であります。後でお見せしますが変動はあるんですが、大体平均値としては45億?です。
 これが有明海・八代海に流入する一級河川の低水流量の経年変化を示します。低水流量というのは非常に大事な指標でありまして、これは1年を通じて275日はこれを下回らない流量を示します。大きいほうの、1年のうち95日はこれを越える流量を豊水量と呼んでいます。河川の生き物にとって、いろいろな環境問題を議論するときには、低水流量というのは指標として大事になります。筑後川の場合ですと、低水流量は大体毎秒50トンですね。
 球磨川ですと、これが大体毎秒30トンぐらいですね。いま、この単位は?ですが、水の比重が1ですので、体積1?を重さ1トンと呼んでいます。毎秒30トン以上の流量が、年間275日以上流れているということです。ほかの一級河川は毎秒10トン程度です。
 有明海・八代海の問題を考えるときは一級河川だけではなくて、当然二級河川も含めて議論する必要がありますが、当座、まず国が管理している一級河川の、特に一番影響力のある筑後川についてお話をさせていただきます。
 筑後川は、筑紫次郎と呼ばれています。板東太郎が利根川ですね。吉野三郎というのは、四国の代表河川である吉野川ですよね。これらはものすごい地域にとって非常に重要で、影響力もあるし、昔から人間活動が盛んでいろいろ手をかけてきている川です。日本を代表する川なんですよね。そういう筑後川は、大分県、熊本県から流れ出して、福岡県、佐賀県の4県にまたがる九州最大の河川です。その流路延長は143kmです。流域面積が2,860?です。流域内人口は平成2年の統計で107万人です。この川が大氾濫した場合には、約71万人の人々が水害に遭うと予想されており、九州の最も大事な川と言われるのはわかります。
 これは年最大流量、平水、低水、渇水、最小流量の経年変化を示しています。昭和28年は、最大流量が毎秒5,000トンを超えています。これは西日本水害を起こした洪水流量で、筑後川を初めとして九州の川は軒並み大氾濫を起こしました。このときの流量ですね。昭和28年以降はこれを超えるようなものは出ておりません。大体毎秒3,000トンクラスのものが大きい洪水と言えます。筑後川で3,000トンというと、相当もう水かさが増して流れるというぐらいの規模の流量です。これが豊水と平水、低水、そして渇水、最小流量を示しています。最小流量は非常に変動しますが、近年、最小流量が極めて少なくなるという状況はなくなっています。昭和53年、それから平成6年には、福岡渇水がありまして、こういったときには低水も最小流量も小さい値を示しています。平水流量や低水流量は、そう大きな変動はしていず、ほぼ横這いであると解釈しております。
 ただいまから筑後川の治水、利水の変遷についてお話しさせていただきます。今日は、有明海に及ぼす河川の影響の話をするのですが、なぜこの話を最初にするのかというと、筑後川流域内に住んでいる人々が非常に多く、河川の恩恵を受け、あるいは氾濫によって人命、財産が脅かされてきたということで、歴史的に治水と利水を重要視してまいりました。これをまずしっかりと理解した上で、新しく発生した課題をどうするのかということを議論することが必要で、まずは、治水、利水の話をさせてもらいます。
 北部九州は非常に雨が少ないというか、人口に比べて水資源が不足しているというようなところでして、そういった意味で、筑後川の持っている利水の役割はものすごく大きいわけです。平成9年に河川法が改正されるまでは、治水、利水が両輪であって、これを目的として川を管理することをやってきたんですが、平成9年の河川法改正とともに、環境の整備と保全も河川法の目的に加え、その3つを総合的に管理することになりました。今までは治水、利水を主にやってきたんですけれども、これからは環境の整備と保全も一緒にやるということを目的の中にうたったわけです。もちろん川によって、まだ治水が決定的に大事だという川もありますし、治水よりも環境が大事だという川もあるわけですが、全体としては総合的に考えることが求められるようになりました。
 筑後川において、昭和28年に未曾有の大洪水がありまして、一帯が大水害となりました。その後も、昭和54年、昭和57年、平成2年、それから平成5年も、毎秒3,000トンクラスの大水が出ており、依然として浸水被害も発生しています。この荒瀬地点というのは、筑後川の治水上の基準点で河口から62.1kmの距離にあります。ここでの水位や流量で洪水の大きさを表現しております。昭和28年6月の大水害、西日本水害で、日田市、久留米市とその下流の広範囲に大災害を起こしました。西日本水害というのは、未曾有の、今でも河川の災害を軽減するための検討をするときには、必ず出てまいりまして、大氾濫の上に流木も重なりものすごい災害を起こしたことで有名であります。堤防の決壊数が26カ所もあります。被災人口は54万人で、死者が147人です。その後も水害が起こっていますけれども、幸いに筑後川については亡くなった方はおりません。
 これが西日本水害の氾濫のエリアですが、久留米市、佐賀市など平野部のほとんどの地域が軒並み被害を受けております。
 昭和28年のものすごい洪水は、48時間、2日で513mmの豪雨が原因でした。なぜ2日間の雨量かというと、流域に降った雨が川を経由して海に出ていくのに2日程度かかるためです。降ったらすぐ下流部に洪水になって出てくるのではなくて、しばらく山腹にたまったり、葉っぱにくっついたり、地下に入ったり表面を出たりしながら徐々に河川に出てくるためです。
 こういうように、500mm程度の豪雨は近年ないんですけれども、2日間で300mmクラスの雨が相当数降り、水害が起こっていますので、相変わらず大雨に対する備えは不十分であります。近年では平成2年とか平成5年に大雨があり、平成2年は937戸、平成5年は487戸の床上浸水がありました。毎秒3,000トンから4,000トンの洪水が出ると、あちこちで氾濫をするというのが筑後川の現状であります。
 これは、筑後川の河川の計画を一通り見ていただくために用意したものです。昭和32年は昭和28年6月の洪水を受けて、そのときには毎秒8,500トンの水が出て、そしてそれをダム等で貯留をして、川の中では6,000トンを毎秒流れる計画です。昭和40年に、もう一度見直しています。昭和44年、昭和45年に筑後川の上流のダム2つができます。また、新しい計画に向けたいろいろな検討の中で、昭和28年洪水の上流部での氾濫の考慮を昭和48年にやりました。それまで、その下流部での氾濫で見積もっていましたけれども、上流部でも氾濫していたことを計画に考慮した結果、流量が大きくなりました。それを平成15年の基本方針の計画に生かして、川の管理をやるということで、これを筑後川の基本方針としています。
 昭和28年6月の大水害を受けて、松原ダムと下筌ダムを上流域につくりました。ダムの機能は、洪水のピーク流量時に水をため込んで下流にたくさんの水が一挙に行かないようにして水害を起こさないようにすることです。具体的な計画としては、毎秒2,000トンクラスの水が出たときに、それを毎秒1,600トンぐらいため込んでしまうということです。松原ダムも最大毎秒1,860トンため込むということで、これは非常に大きな治水能力をもつダムであります。もちろん治水以外の目的も持っていますけれども、治水的には非常に大きなダムです。
 中流域においても、昭和28年に氾濫したものですから、昭和42年の大石分水路と、昭和54年の原鶴分水路等によって水路を掘り、川幅を広げて洪水に対する安全性を高めることをやりました。ここの川の中にある土砂を取ってしまう、川を広げることによって、こういったことが氾濫を防ぐ治水事業を永々としてやってきたわけです。
 これまで、ダムをつくり、引堤といって堤防を少し後ろに下げ、掘削といって川底を掘ったり、川岸を掘ったりして断面を確保し、大雨が降ったときの氾濫をできるだけ小さくしようとしてやってきました。しかし、まだ、氾濫が起こることがあり、不十分であるということです。
 さて、次に筑後大堰について説明します。筑後大堰は、これまでいろんな形で取り上げられて来ましたが、今日はここで、筑後大堰というのはどんな機能を持ち、どんな役割をしていて、そして有明海に対する影響はどういうふうに考えられるのかということをお話ししたいと思います。
 これは、利水の歴史ということでここに書いてありますが、筑後川では、渇水がしょっちゅうあり、水が不足する川と言われています。筑後大堰は、河口から23kmのところにあります。昭和58年にでき上がりまして、昭和60年から利用されております。目的は治水と利水です。もともと筑後大堰の設置場所の直上流に上鶴床固めというものがありました。これは固定した堰で河床から突き出ていますので、流れてくる土砂をとめてしまいます。それから堰が低いため、大きな潮位で塩水が上ってくると、堰を越えて塩水が入ってしまいます。それから、ここのところに堰があるために、流下断面が小さくなるため、洪水が流れづらいという幾つかの問題があったために、これを可動堰にして、この治水上の課題に対応したのが筑後大堰です。
 その結果として、毎秒6,000トンしか流れなかった河道に9,000トン流れるような断面を確保しました。川岸を掘削し、川底を掘って、そして固定堰をとって、可動堰化し、洪水のときにはゲートを上げることによって流水の通過を阻害しない形のものにしています。洪水の流下を阻害しないということが大事です。固定堰の時には、アオ取水と言って塩水が上がってきたときに、固定堰によって上流から来る淡水を押し上げる。この押し上げた淡水を農業用水に使っているということで、非常に不安定な状態での取水でありました。それを筑後大堰を可動堰化することによって、この水位を安定させて、しかも塩水が入らないようにして、その水を取るということになりました。
 それから、上流のダムで開発した水をダムから放流して筑後大堰にため込んで、その水をこういう福岡県や佐賀県に水を送るということで、利水上、アオ取水の解消により、安定した取水を可能にしました。すなわち、筑後大堰は、水位を安定させ、上流ダム郡で開発された水を水道用水として安定的に取る。それまでのアオ取水を合口で左右岸の2つの地点で農業用水の安定取水を可能にしました。
 それから、この固定堰を可動堰にしたことによって、新規に水道水を毎秒0.35?、開発しました。
 大潮のときにも塩水が堰上流域に入らないような構造となっています。洪水時に堰はどうなるかというと、この中央にある3門の制水ゲートを使い、毎秒1,000トン以上の流量であればゲートを上げて洪水流下阻害とならないようにします。毎秒200トンぐらいになりますと、安定的に水をとるために、この2つの調節ゲートの上段扉を使って越流させながら安定的に取ってますが、毎秒300トンに近くなると、この下段扉を上げて下から洪水を流下させます。制水ゲートと調節ゲートがあることによって、低水のときと洪水のときの流量コントロールをやっています。
 さて、瀬ノ下という基準点での筑後川の年間の総流出量は約36億トン、さっき45億トンと言ったのは全体流域です。瀬ノ下というのは筑後大堰の直上流です。筑後大堰が河口から23kmで、瀬ノ下は24.8kmです。そこでは年間、平均的に36億トンの水が出てきますけれども、それに対して経年的に年間の総流出量がどういうふうに変化したかを示したのがこの図です。筑後大堰は、この昭和60年から供用開始しています。この赤い部分は福岡導水と福岡市の上水で、筑後川流域の外に持っていく水で有明海に戻りません。それに対して黄色い部分は、福岡県南、佐賀東部への上水で、筑後川流域内に導水した水で、利水使用後、最終的には有明海に戻ってくる水です。この図にありますように、36億トンという大きな量に対して、この導水している部分は極めて少なくて、年ごとの変動に比べて極めて小さいと言えます。実際は1億トン以下、平均的に7,000トンから9,000トンの導水を域外にやっています。
 ですからこの図を見たら、筑後川については、全体量としての36億トンに対して、導水量は小さいと言えます。ただし、この平成6年のようなときですと、これは平均値の42%しか水がない。この昭和53年も、これでいくとかなり少ないんですけれども、こういったときには、それは影響は出るでしょう。しかし、水はいろんな形で利用されます。それは農業用水であり、水道用水であり、いろんな扱われ方がありますので、この1年ぽっきりではなくて経年的に見たときには、その導水量というのは非常に小さいんだということが言えます。
 取水した農業用水は、有明海に戻る形になっていまして、筑後大堰の左右岸2カ所にアオ取水であった取水を2カ所に合口して、そこから取っています。筑後大堰では、毎秒1,000トンを超えるとゲートを全部上げ、堰がない状態に対応するものになります。筑後大堰管理開始後の洪水時における全開操作回数は、年間平均4回ぐらいです。
 筑後大堰のところでゲートを全開にする最小流量毎秒1,000トンのときの水深がどれくらいで水面勾配がどれくらいで流れるか、そして川底の材料がどれくらいか調べました。川底の材料は粒径1mm程度です。そして水深が大体2m。そして勾配が2500分の1ぐらいで流れています。このとき、ゲートを上げると、平均粒径のものは間違いなく流れます。後で示しますけれども、そこに存在する粒径の大きいものも大体流れ出すということがはっきりしています。ですから、筑後大堰の存在によって堰の上流に土砂がたまるということはまずありません。
 具体的に、国土交通省が測った縦・横断測量データで計算してみますと、昭和58年以降今日まで、もう川底の高さはほとんど変わらなくなってきています。むしろ上鶴床固め存在時よりも河床高が下がっています。ということで、土砂はほとんどたまっていないということがはっきりしています。しかも、普通のときもアンダーフローといってゲートの下から勢いよく水を出しますから、ゲートの付近の土砂は飛んでいく。上流側の堰を上げている部分でたまる場合があっても、年間平均4回という洪水の発生によって、それはフラッシュされてしまうということです。
 これが筑後大堰近傍の河床変動です。昭和60年に筑後大堰の管理を開始したのですが、昭和28年、この青い線が西日本の大災害のときの川底です。ここまで河床高は高かったのです。これでいくと、大体3mぐらい現在よりも上がっていました。また、河道の断面が現在に比べて非常に小さく作られていました。そのために、大きな洪水が出て氾濫を起こしたということで、その後、治水能力を高めるために川底を掘り、そして断面を広げてきました。これを見ていただければ、これは昭和28年から昭和44年の間の変化です。この時代には工事によって、後で示しますが、いろんな目的のために川底から砂利をたくさんとっていました。そのために河床は大きく下がりました。川底が下がるというのは、治水に対する安全度を上げているということを意味します。
 昭和44年から昭和58年の間、これは筑後大堰ができたときですが、青色と黄土色の差は、河川改修と川底の砂利掘削の影響等による河床低下です。昭和41年までは砂利をどんどんとってました。それ以降は規制を行いましたけれども、一部の河川区間で砂利をとっていました。ということで、これは砂利の掘削と河川改修による影響が両方合わさったものと考えられます。
 昭和58年のこの黄色になってからは、筑後大堰建設後10年、15年経過してもほとんど川底は変わらなくなりました。
 これは、河道の横断形状の経年変化を示します。昭和28年の断面を見ると、筑後大堰のないときは、こういうような紫色の小さな断面でしたけれども、大堰をつくって9,000トンを流すためにこれだけ河道を掘ったということです。掘ったときには、治水上の問題、利水上の問題に対して掘ったんですね。このとき、環境上はどうだというのは考えていなかったとは言いませんけれども、それよりも治水上と利水上の問題として、川底を掘ってきたということです。これが実は、有明海に対する影響という形で出てくることにもなっていると思われます。
 治水事業とか利水事業に関係して、川を人間がいじって、利水の安全度と治水の安全度を高めてきたけれども、それによって何が起こったのか、川底でどんなことが起こっているのか。具体的に川底がどんな変化をして、川底にある土砂がどういう変化をしていったのかというのは、この評価委員会が関心を持っているところだろうと思います。
 この図は、河床の縦断変化を示しています。皆さんの資料では、少し前のほうに載せていると思います。これは長期的な河床変動を示していまして、昭和28年から現在までの間、どう河床の縦断形状が変わってきたのかを示しています。青色の線は昭和28年の河床高です。現在はこの茶色の線です。筑後大堰のところは、先ほど示しましたように、近年、河床高はほとんど変化はしていません。ただ、その途中段階では河川改修工事や砂利を採取してきたということでこれだけ河床が低下しています。ですから勾配は、下流のほうが非常に緩やかになりました。上流では、河床勾配はほとんど変化していません。全体的に見て、河口から23~37km区間で河床低下が著しいこと、平成15年には10~23kmの範囲で持ち直しているようです。
 これは長期的に見た河床変動量を示す図です。昭和28年から現在まで、これだけ下がりました。50年間で河床低下量は3,300万?の土砂量に相当します。昭和28年を基準として、50年間の治水事業、利水事業及び砂利採取により3,300万?の土砂の持ち出しにより河床低下したということです。
 河床低下量の内容はこういうことなんです。昭和28年以降、人為的な行為により河川外に持ち出し、あるいは、河道内に堆砂した土砂量の累計を示します。砂利採取が最も支配的です。それらは、干拓や河川の改修で川底を掘り、河川外に持ち出されています。それから砂利の採取です。昭和41年から砂利採取の規制法ができました。それ以前は、規制法がなかったために、筑後川の砂利採取量を把握できていません。これは筑後川の河川事務所で推定した量です。どうやって推定したかというと、先ほどのように長期的な川底の高さの変化がわかりますから、川底が下がった分で、土砂がその場所からどれだけなくなったかというのはわかります。あとダムにたまっている土砂量、それから河川改修、すなわち河道の掘削等により持ち出されたものを差し引いて推定しています。砂利というのは、建設事業のために必要なものであるということ。もう1つは治水容量の確保のために、河道から砂利をとったということの両方です。これには、治水的な行為も入っていると考えてください。
 これはダム堆砂量です。上流にダム群ができたことによって、その後こういうふうに土砂がたまってきたということです。トータルとして見たとき、いかに砂利の採取によって川底が下がったのかということがわかります。
 この図は、昭和57年から現在までの砂利の採取量を示します。平成9年に河川法を改正しました。その中で、環境の整備と保全を目的に加え、河川事業者は、環境については治水、利水と同等に勘案することになりまして、砂利採取量を極端に減らしました。筑後川では、現在、砂利をとっているのは、中流より上のところで、量は2万?程度です。最盛期は20万?をとっていました。砂利採取等が環境に与えた影響というのは、やっぱりじわじわとやっと効いてきているといえます。
 これは、河床にどのような粒度の河床材料があるのかを示したものです。粒径0.1mmから2mmぐらいというのは砂に分類されます。2mm以上になるともう礫です。今ここにあるのは昭和31年、昭和36年、平成6年というデータで、河口から54kmより上流では粒度分布はあまり変わっていない。
 これは河口のゼロから10kmのところです。昭和36年までは0.5mmから2mmぐらいの材料で、ほとんどすべてが砂でした。しかし、平成6年の結果は、それまで砂利を採取して主に砂をとったということで、砂の部分がなくなっています。シルト系がほとんどになってしまっているというものです。これを今後、どう改善していくかというのは大変大事な問題になります。11から23kmも同様なことが起こっています。すなわち堰の下流もほとんど砂が80%だったものが、もうシルト系になってしまったということですね。
 これをわかりやすい図にしましたのがこれです。色分けして示しています。細砂、粗砂というのがどういう割合だったかというと、昭和31年はゼロから10km、22kmぐらいまではほとんど細砂と粗砂でした。それが平成6年の調査では、細砂、粗砂はもう12から22kmのところで、ほとんどもうなくなって、今ではシルト・粘土に変わっている。24から36kmでも、シルト・粘土が20%ぐらい出てきた。そして上流部は、砂分が少なくなり、礫分が多くなってきている。
 以上の調査・研究から、まず流量については筑後川に関して、本当は有明海と八代海に入る全部の川を調べる必要があります。流量については年間の総流出量はほとんど変わっていないということですね。約45億?の水が有明海に出ています。
 そして、筑後大堰についてですが、見た目には堰を建設して、何か水面を高めて、水はとまっているように思えて、だから土砂もたまっているのではないかと思われがちですけれども、ほとんど土砂の堆積はありません。年間4回ぐらい洪水が出ますから、ゲートが完全に開けられ、土砂がフラッシュされているということで、筑後大堰については、下流に対する悪影響はほとんどないと考えるべきだと思います。
 砂の流出については、治水事業や砂利採取に伴って、流出する砂分が少なくなってしまったということです。これまで、申し上げませんでしたけれども、実は私の専門でないので言いませんでしたけれども、森林が昭和の初めぐらいから、40年代の後半ぐらいまでに大体2割ぐらい増えています。もう明治、大正から考えますと、2倍ぐらい森林面積が筑後川流域では増えているというデータがあります。
 そういったことで、上流域の森林の保全によって土砂が出づらくなっているというのも砂の流出減の原因の1つであろうと思います。治水事業によって川底を掘ったり砂利を採取したことによって、砂分が持っていかれてしまったと、それが出にくくなってきたということも関係しています。
 このようなことから、これからしっかり行なわなければならないことは、筑後川流域の総合的な土砂管理をどうするのかということです。総流出水量についてはほとんど一定で出ているということがわかりましたから、問題は土砂の移動をどう確保するのか、現在起こっていることをどうするのかということだと思います。そうすると、流域の土砂生産量を知る必要があります。
 これは、ダム堆砂量から推算した土砂生産量を示します。ダムが持っている流域面積は623?です。筑後川流域のダム群、下筌、松原、江川、寺内、山神、合所ダムの30年間の堆砂量から算出すると、623?で年間10万?の土砂が堆砂しています。それを筑後川の全流域に換算すると、全流域2,080?で32万?の土砂が生産されていることになります。こういう計算法は、我々が一般的に使う方法です。土砂の生産量をダム堆砂量から出して、それを全流域面積あたりに換算して出します。
 もう1つの方法は、東京都立大学の横山先生が推算しているものです。今から数千年前の縄文海進のときに、土質構造がわかっていて、砂がどれだけたまったかをデータから調べて、この数千年で平均すると大体40万?から70万?の土砂生産があったと見積もっています。筑後川河川事務所のデータから出してくると、この32万?という数字になる。32万?は出ているんですけれども、今まで治水事業や砂利採取で50年間で3,300万?ぐらい掘っていますから、生産土砂量が全部流出しても、年間32万?ですので、それに比べたら小さいけれども、この32万に相当する土砂をどうやって上手に出していくのかということが、これは土砂管理上重要になります。
 もう1つは、これは筑後川の河川事務所が現在、頑張ってやっているんですが、洪水によって土砂がどんな動きをするのかを、超音波の流速計と、それから濁度計といって流れる土砂濃度を測って、どれだけの量が動いているかを測っています。これは、短期的な河床変動ですが、結果はこういうことになります。出水量が少なかった平成14年は上流で砂が堆積し、下流で浸食傾向になるという結果になっています。一方、大きな洪水が出た平成15年の場合には、上流で浸食傾向で、下流で堆積傾向となり、平成14年の洪水と逆の結果となりました。筑後川では洪水のたびごとに川底が異なった動きをしているということです。
 問題は、この動いている土砂がどんな粒径集団なのか。量と質をちゃんと評価する必要があります。今では筑後川の事務所が中心になって、河口のテラスのところで洪水の後、どのような土砂が出ているのか、どんな性質のものがあるのか等、調査をやっています。こういったダム、河道、そして河口を出たところで土砂の調査を精力的に行って、今後どれだけの砂が有明海へ出てくるのかを明確にしていく必要があります。
 問題は、こういった河川からの土砂や水の流出を明確にしたときに、1つには、今度は有明海の中で、一体土砂がどんな動きをしているのかを知ることが、対策を考えていく上で非常に重要になります。淡水がどんな動き方をして入ってくるのか、土砂は澪筋経由で入ってきているのか、あるいはそうではないのかとか、海の中での動きとその影響を知る必要があるわけです。そういった海での動きがわかったときに、川からの物質の移動のもっとしっかりしたデータを集めて、今これくらいだったらこれくらいの対策を、もっと必要だったらどうするべきかという議論を次のステップで検討することになります。
 我々が、この特別措置法を受けて、河川が陸域からどれだけの水を出しているのか、どれだけの土砂を出しているのかという事項を明確にする。それによって、有明海や八代海の水質なり、環境に関してどんな影響を与えているのかを明確にすることが、ミッションなわけです。それをするために、短期的なものばかりではなくて長期的なもの、具体的に今日お話ししたものの中の確かなものとあいまいなものをちゃんと選別して、そのあいまいなものをしっかりしたものに持っていくということがすごく大事なのではないかと思います。
 最後になりますけれども、今日は川の話だけなのでこういう話に収めましたけれども、結局川の勉強をしている者からすれば、川からの淡水や砂がどれだけ、どのようにノリや二枚貝等に対して影響を与えているのかということを、河川以外の要素を含めて総合的に評価できるように、しっかりした海での現象理解が特に重要であると思います。総合的に評価するうえで、具体的にこういうことを知ればよいとか、それに向かって整理しながら、海の中で一体それがどんな役割や影響を与えているのかについて議論していただければ、それに対してどういうふうに、どんなデータを集めたり、出すことが必要かなど検討していかなければならないと思います。いずれにしても、総合的な視点でそういったことを詰めていくことが、これから重要になると思います。そのための総合的な委員会だろうと思いますので、議論していただければと思います。
 以上です。

○須藤委員長 どうも、福岡先生、ありがとうございました。
 ただいま福岡先生からは、お聞き及びのとおり、筑後川を中心に河川からの流量、あるいは土砂の流出量、そして総合的な土砂管理の重要性についてご指摘をいただきました。どうぞおかけください。あとで、先生方からのご質問に対するお答えをいただきますので。
 それでは、委員の先生方からご質問なりご意見を伺おうと思います。ではどうぞ、お願いをいたします。いかがでございましょうか。大変クリアにご説明いただいたと思います。いかがでございましょうか。
 ではどうぞ、滝川先生。

○滝川委員 大変貴重なお話をありがとうございました。
 それで、ちょっと私が疑問に思ってよくわからないところがあるものですから、先生にぜひお教えいただきたいと。
 最後のほうでご説明いただいたんですが、SSといいますか、濁度との関係なんですが、以前のいろんな資料によりますと、河川から出てくるSSはかなり低下してきていると。にもかかわらず、有明の海の中のほうは底質が泥化しているというんですか、そういったものがたまってきている。それと透明度が上がってきている。そこのところの関係がいまいちよく理解できないんですが、先生の今のご説明の中で大体わかってきたんですけれども、なぜ粗い粒子というんですか、そういうものが海に運ばれなくなったのか、あるいはSSそのものが低下してきているというんだけれども、本当に河川の中で、今のお話だと必ずしもそうではないので、短期的には大出水のときにはたくさん土砂が出ている。そこら辺をどうとらえたらいいのかなということを、ちょっとお教えいただけたらと思います。

○福岡委員 極めて本質的なご質問で、十分お答えできるか心配です。まず、川が変わったということが大きいですよね。すなわち、治水事業、利水事業を中心として川底を掘って、以前の川底の勾配よりも大体筑後大堰付近まで非常に緩やかな勾配になった。数千分の1ですよね。そうすると、それによっても、まず水面勾配も緩くなるし川底も平坦に近いですから、運ぶ土砂の量は減ってきたというのはまず間違いないと思います。それが1点目。
 それから、河床が下がったことによって、上流から来る土砂も、途中で落としてしまうと。要するに運ぶ能力がない。だから落としてしまっているというのもあります。それから、河床が下がったことによって、海の水面高さとの相対関係で、ガタ土が海から河川に相当入るようになっているのではないかと思います。それが、相当上流まで来ていて、それが行ったり来たりしているということがあって、具体的にそのガタ土が卓越している河口から20kmぐらいまでは、砂が少ないということがはっきりしているわけです。ですから、洪水のときは動いていても、もう少し流量が少ないときにも、本来的には動いたであろう砂が動きにくくなり、一方、シルト性のガタ土は移動できることになります。
 そういうことによって、河口テラスで筑後川の河川事務所が測った結果によれば、六角川河口や筑後川河口から出てくる物質を調べると、泥分が多くて、そういったものがたまっていることは、明らかになっています。
 海の影響が相当効いてきたことと、河川からの影響が減ったことと、両方があるのではないかなと思っています。

○滝川委員 かなり海の影響も来ているという今のお話ですと、河川そのものの、要するにSSというものと、生き物を含んだVSSといいますか、そういったものとのかかわりが、かなり陸側に入ってきているということなんですかね。

○福岡委員 そういう調査をこれからちゃんとしなきゃならないですけれども、普通は河口域河床が下がると、海の影響は卓越して来ます。そういうことを否定できないです。もうちょっと調べさせてください。土砂の移動は1洪水ごとに違うわけですよ。それを年間にしたらどうだとか、もっと長期になるとどうか等を調べ、計算し検討しなければならない課題です。

○滝川委員 いや、SSが単純に減ってきたからというふうな理由で、何かどうも議論されがちなので、ちょっとそこのところが。はい、ありがとうございました。クリアになりました。

○須藤委員長 それではどうぞ、楠田先生。

○楠田委員 質問ではないんですが、福岡先生からつけ加えてご説明をいただけたらと思うんです。2点あります。
 第1点は、河床材料の変化で、平成6年のところで細かくなってきたというご説明を先ほどちょうだいいたしました。そのときに、この河床材料、粒度は横断方向のどこの材料なのかということをご説明いただけたらと思います。流心は下流側も全部、ほとんどが砂で、両サイドは粘土系になっていると思います。
 それから、第2点目は、河床材料の変化の1のほうなんですが、いわゆる河口堰ができて以来、河口から河口堰までの区間で細かいものが増えているというデータをお示しいただきました。この点は、いわゆる高濁度水塊が河口堰でとめられるようになったがゆえに、それより下流側で細かいものがたまったのではないかと。で、河口堰のないときには、その高濁度水塊はかしゃかしゃと動く幅が、もっと上流のほうに動いていたという単純な自然現象であって、特に浚渫とかの、あるいは砂利採取の影響ゆえに、この河口堰より河口までの部分で細かいものが堆積したと言えるのかどうかというところをお願いいたします。

○須藤委員長 どうぞ。

○福岡委員 ありがとうございます。いずれも大事な質問だと思います。
 まず、どこで採取をしているのかということですよね。これは国土交通省筑後川河川事務所がちゃんとそれについて採取場所を明確にする必要がありますけれども、通常はなかなか流心でとるというのは、流れているところですから、スラックタイド、流れていない時間帯でとれていればそれなりのことがとれるかもわかりませんが、これは十分調べさせていただいて、次回の会議でお話しさせていただきます。
 ただ、先生が言われたことを私が想像するには、行ったり来たりしているうちに河岸際に比較的細かいのが堆積し、だんだん、川底の一番深いところは砂なんだけれども、河岸際はシルト系がたまっている。それでも、流心で動いている砂の量が少なくなっているということで、私はいいのではないかと思いますが、どこで採取したデータなのか等、次回までにそれを調べさせてください。
 それから、2番目の河口堰のないときの固定堰との細かいシルト堆積の比較のご質問に対してお答えします。今楠田先生がお話しされた固定堰である上鶴床固めは高さ2.15mです。それで、大潮のような高い潮位の時には、塩水は固定堰を越えて入ります。これが問題であったんですが、ガタ土が、固定堰があったときには入っていて、筑後大堰になり入らなくなったのだということだけでは必ずしもないと思います。固定堰は2.15mの高さを持っていますので、潮位によっては、全部ここで落としていったということではなく、一部入り込んでいるでしょう。ですから、その影響があるのではないのかと言われると、あることはあるでしょうけれども、細かい粒子が河床に非常に多くなったというのは、やっぱり川底を下げて海の影響を受けやすくなり、ガタ土が入りやすくなっていることが、主要な原因であると私は考えています。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 では菊池先生、どうぞ。

○菊池委員 今の質問とも関連するんですけれども、1つは、私、生物屋なので、余り堆積率だとか懸濁粒子の動きはよくわからないんですけれども、潟土というもののオリジンというものは、ミネラルの粒子としたら、大体川から供給されたもの、それが海の中でいろんな有機物やら何やらもくっついて、コロイド状になっているようなものなんでしょうか。

○福岡委員 私はそのように伺っているんですが。

○菊池委員 それで、有明海は干潟というのが、特に貝類などの生産の場としては非常に大事なんですけれども、もと砂の干潟だったところの潮干帯の裾のほう、干潟の裾のほうが全体的に泥っぽくなって、その泥を何とかしなければというので、海の底の砂を持ってきて上に盛り上げると、2~3年はもつけれどもまただめになると。だからこれは粒子の問題というのと、そのオリジンの問題と、そして今度はそれが、ナチュラルに有明海の奥を、筑後川のほうから流れ込んだんだろうと思うんですけれども、細かい粒子が有明海の西側の奥のほうへ行って集中してたまっているわけですね。
 ですから川の作用と、それを引き取った海の中での流れの問題と、それから漁師さんなんかが言うのは潟土を何とかしてくれというのがあるんですけれども、それはもう労力、コストからいったら随分大変なことだと思うんですけれども、海の中でそうなってしまったシルト質のものというものを土木的に考えた場合に、新しくつけ加える分を抑えるということと、それからもっと難しいのは、今既にたまっていて、しかもそこで水が停滞すると酸欠が起きたりしている。これは泥の中に有機物が随分あるということでもあるんですけれども、何かアドバイスがありましたら。

○福岡委員 この問題は、もう総合的にやらなきゃだめですね。川のほうだけの問題では、多分ないんですね、おっしゃるとおり。我々のこの評価委員会がそこを問われているんだろうと思うんですね。そのためには、先ほど申し上げたように、やっぱりもう少し海のほうでどのような底質がどう動いているのか、どこに堆積しているのか等、そういったことを少ししっかりと押さえていかないとなりません。また川のほうも、先生が言われたように、これから、テラスのところがどんな出方をしているとか、どんな材質が出ているのかを調べ、明らかにしていく。それが澪筋経由で動いていったときに、一体それがどんな作用をするのかについて、そこのところを明らかにしていただかないと、原因がいろいろあるけれども、これだというのは、現在言えないですよね。
 私は、そこがこの評価委員会のキーのひとつであり、それに対してこういう手当てをすればどうだとかというのはいろいろあると思うんですが、本質的に何が問題なのかを、まず皆が理解することから始まるのではないかと思ってます。

○須藤委員長 どうもありがとうございます。

○菊池委員 ありがとうございました。

○須藤委員長 確かに菊池先生のおっしゃるとおりでございますし、またお答えとしても総合評価をやっていく上で、たまたま滝川先生が底質の問題を今度プレゼンテーションしていただくので、その後ぐらいに、今の問題をもう一度議論したらいかがでございましょうか。それで河川と底質とを関連づけた話ができますので、そのときに少し議論をやらせていただきたいと思います。
 もう1つぐらいいかがでしょうか。
 ではどうぞ、本城先生。

○本城委員 次の図(資料3・P13下)なんですが、それは筑後川から有明海に入ってくる水量(青色棒表示)はそんなに有明海に影響はないだろうという結果ですね。そして農業用水の黄色もほとんど少ないということとして理解できます。ただそのときに、その青色の部分に、洪水のときの水量が加わっているとすれば、洪水の水量は瞬間に青色を高めている、すなわち有明海に注ぐ水量を高めていると思うんですね。短期間に。そうしますと、平水とか低水時に黄色表示部分、赤表示部分は青色も含めた全体のどのくらいを占めているかとして描いて見ると、最近は右肩下がりにはなってはいないのかと思うのですが、そういうデータの処理はできますでしょうか。

○福岡委員 できますね。それは本質的な話なんですよね。洪水というのは流量が大きく、波形で入ってきますから、このボリューム議論というのは全部積分値なんですよね。

○本城委員 そうですね。

○福岡委員 それが大きい洪水が1つ来たら、例えば昭和28年のところですよね。こんな高いわけです。したがって、おっしゃるところを詰めていくことが必要であると思います。
 早いうちに、そこは問題ですとか、問題なんだけれども、ちょっと今できない。やる気になればできるけれども、今ちょっとそんなことだけではなくもっと本質的な問題があるでしょうとか。その本質的な問題は何なのかというのを出した中で、優先順位とすればこういうことを考えなきゃならない。ここはこういうことを優先して少し考えてくださいというふうに議論を進めていくことが大切であると思います。
 どんな洪水が何回ぐらい年間来ていて、そのときに導水をしていたらどうか、洪水が少なく、平水ぐらいの流量が多かったときにはどうなっているかとか調べてみます。多分、これだけデータがあると、恐らくそういう年もあるわけですから、一体これはどんな状況でこのボリュームの全体が決まっているかというのを調べればいいと思います。平水、低水に対する導水の影響を次回の会議までに調べます。

○本城委員 では先生、よろしくお願いします。例えば水量が少なければ、河口域でのSSが浸積し、それを押し流す力がないということ。水量が減っていたら、有明海奥部での下層水の動きが弱くなると思うんです。諫早湾は別の影響でしょうが、鹿島沖の貧酸素水塊が形成される場所の水の動きにも関係している可能性がありますので、すみませんが、よろしくお願いしたいと思います。

○福岡委員 1つだけ是非申し上げたいことがあります。これは筑後川だからこんなにデータがあるんですよね。ほかの一級河川もまあまああるでしょう。では県の川というのが30数%を流域面積を占めているわけです。県から出ている水や土砂がどうなのかとか、やっぱり全体を少しずつローリングしていって、やっぱりこれくらいはどうも間違いなく言えそうだとか。そういったことも合わせながらやっていかないといけないのではないかと考えます。海域も同様に、ここだけ測ってここだけのことを言ったって、ああそうだねというだけで、問題は測ったところをどのようにシステムとして見るのかということが大切で、ちゃんとわかった人が旗を振ってくれないと、それが原因だ、あれが原因だだけになってしまって問題解決に向かわない可能性が高いと思っているんですよ。
 関係する組織が出来得る範囲でデータを集め、分析し、情報をシステム化して積み上げていかないと、本当のことを言えないのではないかというふうにも思います。よろしくお願いします。

○須藤委員長 先生、どうもありがとうございました。
 まだご質問、あるいはご意見あろうと思いますが、大分予定した時間を経過いたしました。今、最後のほうで、福岡先生からいろいろご指摘をいただいて、総合的に把握していく上では、1つの河川だけでは、あるいは1つの海の箇所だけでは十分ではないというようなお話もあって、本日は関係主務省、それから関係県、すべていらっしゃっていただいているので、いずれいろいろなデータをまたお示しいただくとかご議論いただくというようなことに相なるし、また新たな調査ということも必要になってくるかと思いますが、そういうことで、とりあえずは本件に関しましても、先ほど事務局からご説明がありました赤潮の場合と同様に、本日の福岡先生からの説明及び各委員にいただきました議論をもとに、問題の概況、原因・要因、それから課題と論点の再整理をしていただきたいと思います。その結果については、今回と同じように次回の評価委員会で説明をさせていただきます。
 次回の論点につきましては、事務局と調整の上決めていきたいと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、それぞれの論点に詳しい委員からご説明をいただくということを考えておりますので、この点についても再度でございますが、ご協力をよろしくお願いをいたします。
 それでは、少し時間が予定より遅れてはおりますが、3番目の議題といたしまして、小委員会における作業についてというところに入ります。本日の3つ目の議題でございます。小委員会におけるこれまでの作業の成果について、小委員会の委員長の荒牧委員からご報告をいただきます。
 それでは荒牧委員、どうぞよろしくお願いいたします。

○荒牧委員 それでは、これまで小委員会で行ってきた作業の成果物として、平成16年度文献シートが作成されましたので、それについて説明をさせていただきます。
 資料4をごらんになっていただきたいと思います。ちょっと分厚い資料があると思いますが、平成16年度版文献シートというのを、小委員会の仕事として作成しました。
 対象の分野としては、そこの資料4にありますように、[1]から[8]までありますが、その掲載項目について、平成15年4月から平成16年6月までに発表されたものを16年度の作業対象といたしました。その発表されたものを収集整理して、文献概要リストをまず作成して、その中からこの評価委員会が再生にかかる評価を行うということに当たって参考になると思われるものについて、文献シートを作成することにいたしました。
 評価は1から4までの4段階で評価することにして、1というのは、この評価委員会でどうしても参考にしてほしいということを、この評価の任に当たった委員の方が強く望まれたものということになります。それから1、2に評価されたものについては、この文献シートの中に掲載をして、委員の皆さん方に、この論文についてはぜひ目を通して参考にしていただきたいという趣旨であります。
 1ページにその流れを書いておりますが、2ページから9ページまでに、我々が対象にしました文献の全リストを挙げてあります。それを小委員会の各委員の先生方に全文、原論文を配付いたしまして、皆さん方で読んでいただきました。そこにありますように、干潟と環境との関係が6文献、これが2ページです。それから3ページに潮流・潮汐と環境との関係が12文献です。それから流入水の汚濁負荷量と環境との関係が6文献。それから赤潮・貧酸素水塊の発生機構に関するものが11文献。[7]の水産資源と環境との関係を示す文献が11文献。合わせて46文献ということになります。
 ただし、[4]の流入河川の流況と環境との関係、[5]の今話題になりましたけれども、土砂採取と環境との関係及び[8]のその他に関しては、対象とする文献がありませんでしたので、そこには載せておりません。
 この委員の先生方から出していただいた評価区分についても、委員間で相当激しいといいますか、まじめに議論をさせていただきまして、小委員会の結論としては、評価はいろいろ分かれるだろうけれども、問題となりそうだというものについては、この文献シートの中に挙げておこうということであります。ですから、文献シートに挙がったものが小委員会として認知したという意味ではありません。これはいろいろ議論はあるだろうけれども、そのことを評価委員会の先生方にもぜひ参考にしていただきたいという趣旨で挙げておりますので、ご理解をいただきたいと思います。
 その後ろのほうに、12ページから文献シートの概要が記されておりますので、これをお読みいただいて、今後の議論の参考にしていただければと思います。ここで収集しました文献は、主として大学から出された文献、すなわち国の機関であるとか県の機関は、ここの場で直接皆さん方から発表していただくことになりますが、文献類といいますか、大学でなされた研究成果は論文という形で発表されておりますので、その論文として挙げられたものをここで整理し、評価委員会に反映するというのが小委員会の仕事だということをご理解ください。
 次に、小委員会での作業の成果を、評価委員会で今現在作成されています、先ほどちょっと説明されていましたけれども、これから議論をしていくためのとりまとめというところにぜひ反映していただきたい。特に、小委員会の委員の先生方がこれはぜひ反映してほしいと評価をつけられた、1という評価をつけたものに関しては、ぜひその資料の中に入れていただきたいというふうに思います。その記述ぶりについては、小委員会で案を作成させていただいて、とりまとめを行っておられる岡田先生に確認していただきながら、どういう形で反映していくかということをご議論いただければと思います。
 今後の作業については、平成16年7月以降に発表された文献について収集整理して、引き続き文献概要リスト、そして評価を経た後、文献シートの作成といった作業を行っていく予定にしています。文献数が約130あるということで、今現在収集されておりますので、それを今年度、また小委員会で読んでいただいて、そしてそれぞれの専門分野の先生方から評価をいただいて、この文献シートという形で、この評価委員会のほうに上げて、これからの議論の参考にしていただきたい。そういう形で、大学の先生方がなされた、いわゆる業績といいますか、仕事の中身をこの評価委員会に反映させていくという作業を行っているとご理解ください。
 以上で報告を終わります。

○須藤委員長 荒牧先生、どうもご説明ありがとうございました。
 荒牧委員長を初めといたします小委員会の委員の先生方には、今年度も大変な作業をお願いするということでございますが、引き続きご協力のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、ただいまの16年度版の文献シートのご説明の中で、何かお気づきの点、あるいはご質問等ございましたらお願いをしたいと思います。どうぞ。
 私もその小委員会には出させていただいているんですが、特に小委員会の先生方で、調べたこの文献シートについては、先ほどの我々の評価シートの中にぜひ反映をさせてほしいという強いご意見があるのも、今小委員長がおっしゃったとおりでございますので、それは岡田委員とも十分相談の上、どういうふうに記載するかは今後相談の上、取り入れていきたいと考えております。
 いかがでございましょう、特によろしゅうございましょうか。これは客観的に文献を評価のうえ、その概要を記載したことでございますので。
 それではこれから、ちょっとおくれていますので10分間休憩をとらせていただきます。あの時計が今15時27分ぐらいですか。ですから37分まで休憩をとらせていただきます。
(休 憩)

○須藤委員長 それでは、委員会を再開をさせていただきます。
 若干、時間がおくれておりますので、ご説明なさる方、要領よくご説明をいただきたいと思います。
 4番目の議題として、平成16年度の調査等の結果の報告についてということでございます。
 本日は4件の報告がございます。それぞれの報告時間についてはあらかじめ事務局からお伝えしていると思いますので、厳守いただくようお願いをいたします。
 1件目は有明海の漁業生産及び漁場環境に関する補完調査の結果について、水産庁から報告をいただきます。本調査は、昨年3月に開催された第8回の評価委員会で報告をいただいた調査に関して、補完調査を行った結果と伺っております。
 それではどうぞ、お願いをいたします。

○水産庁漁場資源課長 水産庁漁場資源課長の奥野でございます。
 それでは、お手元の資料5に沿って説明いたしたいと思っております。
 まず、調査の趣旨・目的につきましては、ただいまご紹介がありましたので省略いたします。
 1ページ目の2.調査方法から入ります。去年の9月から11月にかけまして、原則として平成15年度に実施した聞き取り調査において、具体的な記述がある漁業者を対象に、関係県の協力のもとに、水産庁職員による詳細な聞き取り調査を行いました。今回の対象者は、括弧書きにあるように57名でありました。それから、対象漁業者数は1漁協当たり3人から6人程度、1県当たり2から4漁協で実施し、漁協ごとに漁業者を一堂に集めて聞き取りを行いました。漁協の数は12でございます。
 2ページをお願いいたします。3.結果でございます。これにつきましては、その後2枚めくっていただきまして、まず図と表がございます。図1というのがございまして、この最初の潮流・潮汐については、この図1、それからその次のページの別紙1に詳しいことが書いてございます。
 概略を申し上げますと、潮流・潮汐についてはほとんどの調査漁協において、潮流の方向が変化したとの意見がありました。具体的には図1を見ていただきますと、赤の矢印が、聞き取りを行ったときの現在の潮流の方向、それから青の矢印が過去の潮流の方向ということで、比較して図にしております。
 2つ目の丸印でございますが、流速につきましては、多くの調査漁協で遅くなったとの意見がありました。
 時間の関係上、先に進ませていただきますが、2ページの[2]二枚貝類についてということでございますが、これは図は特についてございませんで、別紙2というところに聞き取りの調査結果が書いてございますが、大ざっぱに申し上げますと、多くの調査漁協で、以前は異なる水深帯に生息していたタイラギ、サルボウ、アサリが、水深±1mぐらい、より浅いところに一緒に生息しており、深場にはほとんど生息していないという、そういう意見がございました。
 それから、アゲマキは十数年以上前に、有明海湾奥から一斉にいなくなったというふうな意見もありました。
 次に、2ページ目の一番下でございますが、[3]水質・底質については別紙3に書いてございますが、例えば熊本県の中部、それから南部以外の漁協では水の濁りの程度が減少したという意見がありました。3ページに移っていただきますと、具体的に申し上げますと、小潮でも濁ったノリ漁場が大潮でしか濁らなくなり、大潮しか濁らない場所は濁る時間が減少したというふうな意見がございました。
 それから、丸印を1つ飛ばしまして、次の丸印でございますが、多くの調査漁協で、以前は秋芽の時期には赤潮が発生しなかったが、最近は時期にかかわらず、何日か晴天が続くと赤潮が発生するという意見がありました。
 [4]に移りますが、漁獲の状況、これについては別紙4に詳細に書いてございますが、幾つか挙げますと、1つは、全般的に減少している魚種が大半であるが、スズキなど一部の魚種で増加しているという意見がございました。
 それから、1つ丸印を飛ばしまして、クルマエビでございますが、クルマエビについては減少が著しいものの、ここ1~2年は若干の回復を見せており、放流の成果ではないかというふうな意見がありました。
 最後、[4]のその他でございます。別紙5に詳細が書いてありますが、例えば多くの調査漁協で漁獲対象外の生物についてもさまざまな種類で増減が見られ、今まで見たこともない生物、別紙5のほうにミズクラゲというふうな事例がありますけれども、そうした生物が見られるようになったというような意見がありました。
 それから、本渡港近辺に今までいなかったタイラギが発生したり、宇土半島北岸にシチメンソウが生えるなど、生物の分布に変化が見られるというふうな意見がありました。
 以上、簡単でございますが、補完調査の聞き取りの状況でございます。また、詳しいものにつきましては、図1、別紙1から5をごらんいただければありがたいというふうに思っております。ありがとうございました。

○須藤委員長 奥野課長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして、何かご質問はございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、次のご報告をお願いをしたいと思います。
 2件目は諫早湾におけるタイラギ移植試験について、長崎県からご報告を願います。よろしくお願いいたします。

○長崎県総合水産試験場介藻類科長 長崎県総合水産試験場の藤井です。よろしくお願いします。
 諫早湾におけるタイラギ移植試験について、16年度の結果についてご報告させていただきます。
 諫早湾では、平成3年からタイラギ資源が激減し、漁業が成立しない状況が続いております。ただ、毎年各所で今もタイラギが発生しておりまして、特にタイラギの主漁場でありました深場域では、生まれた翌年の春から夏にかけて減耗し、毎年生き残らない状況が続いております。
 本研究の目的はということで、タイラギの減耗要因を明らかにし、資源の回復に役立てるというものです。
 移植試験による減耗要因の検討については平成14年から実施しておりまして、14年と15年の結果については、昨年の評価委員会で詳細をご報告させていただきました。少し振り返りますと、移植タイラギは食害から防護しなければ現場で食べられている状況が見られまして、イシガニやナルトビエイなどによって食べられ、これが減耗要因の1つであるということがわかってきました。
 また、諫早湾の深場域では、毎年夏に貧酸素水塊が発生しまして、この貧酸素水塊が発生している間にタイラギがへい死していなくなるという現象が見られています。特に貧酸素の厳しい状況の中では、大きな減耗が認められています。
 一方、干潟域や、今も報告がありましたが浅場域では、食害から防護してやれば生き残りが高いということがわかってきました。
 平成16年については、この2点を目的として実施しました。1点は、繰り返しになりますが、タイラギの減耗要因を再検討しようということです。これまでは、諫早湾で発生したタイラギを用いて移植試験を実施し、減耗要因を究明してきましたけれども、育った環境が異なるタイラギ、瀬戸内産のタイラギを移植することで、どういうような減耗が認められるかを再確認しました。
 さらに、現場ではタイラギの資源回復を目指して、もっと積極的に親貝集団の造成をしたほうがいいのではないかというような要望が強く求められております。そこで、瀬戸内産のタイラギを移植して、諫早湾における環境適合性があるのかということを確認しました。移植に用いたタイラギは、諫早湾産のタイラギと瀬戸内海産のリシケタイラギ、さらにタイラギです。ちなみに、リシケタイラギは殻の表面にとげのある、現場ではケン型と呼ばれているものです。一方、タイラギは殻の表面にとげのない、なだらかなズベ型と呼ばれているものです。これらを移植しました。
 なお、瀬戸内産のリシケタイラギについては、西海区水産研究所と有明4県の水試が共同で、4県海域に、前歴が同じで同群のタイラギを移植して、減耗時期が違うのかどうかということで要因に迫ろうということで、合わせて検討を行っているものです。
 これはタイラギの移植試験の方法を示したものです。移植場所はステーション10、私たちが呼んでいる番号ですけれども、かつてのタイラギの主漁場の中心部分にある漁場です。平成16年は、この周辺に平成15年産のタイラギが、多いところで1m<SUP>2</SUP>当たり3個体ほど生息していた場所です。
 試験期間は平成16年の3月から約1年間、移植しまして追跡を行いました。
 移植タイラギは、先ほどご紹介しました諫早湾産のステーション10周辺で採取しましたリシケタイラギ、それから瀬戸内海から入手しましたとげのあるリシケタイラギとズベ型と言われるタイラギです。諫早湾産は平成15年産と思われるタイラギで、瀬戸内産は平成14年産と思われるタイラギです。
 移植方法は、いずれのタイラギも網で防護する形で移植を行いました。防護方法はこのような金枠に網を張りまして海底面にかぶせて、タイラギを移植しております。瀬戸内産のタイラギ・ズベ型については、防護区と比較するために非防護区、何もしなくて移植しただけのものを設けて観察を行いました。
 移植漁場にはこのようなポールを立てて、海底面の直上部10センチに自記式水質計を設置いたしまして、水質の観測を行いました。
 これがタイラギ移植の生残率、各タイラギの生残率の推移を示したものです。まず非防護区、防護しなくて移植したズベ型について、×印で示しておりますけれども、移植当初から大きな減耗をしまして、7月下旬には生残率は10%以下まで低下しました。これについては、過去の結果と同様に、現場で食害されているような状況が観察されました。この減耗は平成15年産の周辺に生息していたタイラギの減耗の状況とも一致しました。
 これはちなみに、移植漁場の周辺6定点で、5分間でタイラギを何個体発見できるかということを経時的に調査した結果の個体数の推移を示したものです。これを見ますと、やはり同じような減耗が認められています。
 また次に、瀬戸内海産のズベ型、三角で示しておりますけれども、これについては8月下旬まではほとんどへい死が認められませんでした。ただ、昨年は台風18号が9月7日に長崎に上陸しまして、その際に防護していたかごの一部が横転しましてタイラギが逸散し、減耗が認められました。最終的な生残率は68%でした。
 一方、瀬戸内産のケン型と言われるリシケタイラギと諫早湾産のリシケタイラギは、緑の丸と青の四角で示しておりますけれども、8月下旬まで同様な減耗を示し、7月から8月にかけて減耗を示し、その後、瀬戸内産については安定して推移し、最終的な歩留まりは55%。一方、諫早湾産については10月から11月にかけてさらに減耗して、生残率は13%まで低下しました。
 これは移植試験を行っている場所の水質観測の結果です。移植漁場では平成16年もDO40%を下回る貧酸素が、水温23度を超えたころから発生しまして、7月中旬から下旬、8月上旬から中旬に観察されました。特に8月上旬には厳しい貧酸素が認められまして、0%の値を示す時間帯がありました。
 この貧酸素が発生している期間に、先ほど説明しました瀬戸内海産と諫早湾産のリシケタイラギ・ケン型でへい死が認められました。ただ、過去2年間の調査では、8月の上旬のような厳しい貧酸素が発生したときには顕著なへい死が認められましたが、今年の場合はそういう状況は認められませんでした。
 一方、先ほどの繰り返しになりますが、瀬戸内産のズベ型ではこの貧酸素の発生期間中には顕著なへい死は認められませんでした。
 以上、簡単ですけれども、まとめますと、減耗要因の究明については、平成16年度もイシガニやナルトビエイが原因と考えられる食害が認められました。
 また、育った環境が異なるタイラギを移植しましたけれども、同じように過去に認められたような夏期の漁場環境の悪化によってへい死が起こることが確認できました。
 一方、瀬戸内海産のタイラギ・ズベ型では、この期間中に顕著なへい死は認められませんでした。
 なお、諫早湾産のリシケタイラギでは、10月から11月に原因不明のへい死が認められまして、これまでに観察されないような結果でしたけれども、これについては今後の検討が必要ではないかというふうに、今考えております。
 それから、前歴が同じ群のタイラギを4県で協力して移植しておりますけれども、この結果については、現在4県と西海区水産研究所でとりまとめ中です。
 それから最後に、資源回復を目指して親貝の集団の造成を試みる1検討材料として、瀬戸内海産のリシケタイラギ・ケン型とタイラギ・ズベ型を移植しました。その結果、ここでは示しませんでしたけれども、日間成長量で100ミクロン以上、それから閉殻筋が1年間で倍に増えること、それから成熟も観察されるということで、特にタイラギ・ズベ型では生き残りが高いということで、今後の新たな検討材料として注目されるのではないかというふうに考えました。
 以上です。

○須藤委員長 藤井科長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして何かご質問なり、コメントはございますでしょうか。どうぞ。
 先生方、よろしゅうございましょうか。
 ではどうぞ、楠田先生。

○楠田委員 1点お教えをいただきたいんですが、ズベ型はなぜ耐性が高いかという、想像でも結構ですからお教えいただければ。

○長崎県総合水産試験場介藻類科長 それがはっきりわからないんですけれども、過去の知見では、やっぱり泥化した部分に生息するというような生態を持っているということが言われていて、それがやっぱりこの生き残りに影響してきているのではないかと思いますけれども、今のところははっきりわかりません。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 最終的にはそういうところまで追究をしていただくということでよろしいですよね。それから、4県でやっているからもう少しそれぞれのことがわかりますよね。

○長崎県総合水産試験場介藻類科長 はい。

○須藤委員長 ぜひお願いしたいと思います。
 よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、3件目の報告に移ります。諫早湾内の小長井町釜地区干潟の貧酸素化についてということで、同じく長崎県からご説明願います。

○長崎県総合水産試験場漁場環境科長 長崎県総合水産試験場の平野と申します。
 干潟域の貧酸素化に関する調査を行いまして、諫早湾内の小長井町釜地区干潟の貧酸素化について若干の知見が得られましたので、ご報告したいと思います。
 諫早湾の北部に面します諫早市小長井町地先におきましては、このように泥がベースの干潟に覆砂をすることでアサリ養殖が営まれております。大体の年間の水揚げは480トンで、1億7,000万円の漁業生産となっております。このアサリ養殖場におきまして、1998年以降、毎年夏にアサリが死ぬというような事態が起こっておりまして、特に2000年、2004年、昨年度ですね。この写真のようにアサリが全滅するというような漁場があらわれてきております。
 そこで、このへい死要因を明らかにするために、この小長井町の一番北側になります釜地区の干潟の一番沖側に、このような水質計を設置しまして水質をモニターしました。測った場所というのは底面ぎりぎりです。その他の水質項目については、こういったような設置の仕方をしております。風向・風速計につきましては、農水省の諫早湾干拓事務所がこの諫早湾中央で測っております1時間毎の風向・風速のデータを使用しました。
 それでは結果です。2003年と2004年の8月1日から9月12日までの時系列の推移をあらわしております。この黒の部分というのが溶存酸素、この青が佐賀県大浦検潮所の実測の潮位。この棒グラフは諫早湾中央部の風速です。日平均にしております。この赤の横棒は、4m/sということで、それ以上は一応強風というふうに考えたいと思います。
 ここで、貧酸素についてなんですけれども、アサリがこの夏の時期に、その状態に置かれて数日で大量へい死を起こすということで、ここでは酸素飽和度10%以下を貧酸素というふうに言いたいと思います。
 そこで、干潟域が貧酸素化する時期を見ますと、このように潮位変動が小さい小潮で、風が弱く、これは赤潮が出ているということなんですけれども、この3つの条件が重なりますと、貧酸素化するというようなことがわかりました。2003年は8月の下旬と9月の上旬、2004年は8月の中旬に起こっております。
 それで、特に赤潮の中でもシャットネラ赤潮が出ますと、無酸素化するというような事態が起こっております。無酸素化しましたこの2つの時期について、溶存酸素のグラフを重ねてみますと、このように2003年が9月6日から9月8日まで無酸素化しておりますし、2004年は8月12日から8月14日まで無酸素化しております。ずっと無酸素化するわけではなくて、時間帯によっては過飽和の状態になるといったようなことがわかっております。
 同じような貧酸素化なんですけれども、少し水塊構造が変わっておりまして、この間の水温を見ますと、2003年が30℃以下なんですけれども、2004年は30℃を超えております。このような状況下で、アサリのへい死がどうであったかということを見ますと、2003年があまり死ななかったわけですけれども、2004年はこの釜地区全体でアサリが全滅しました。
 次に、貧酸素化した時に海洋観測を実施したわけですけれども、2003年につきましては、8月の下旬の貧酸素の時の8月22日から23日にかけてこういった海域で観測を行いました。こういった沖や航路筋の深みには、このように水温が低くて酸素飽和度の低い水が常時あります。
 一方、こういった場所の干潟や浅場におきましては、当初水温が高くて過飽和な水があったわけなんですけれども、これが満潮になるにつれて、グラフのここの部分に収れんされました。この時のこういったところの流向・流速から考えますと、ここの貧酸素というのは、ここの貧酸素が移動したと推定されました。
 一方、2004年につきましては全然様相が違っておりまして、こういった沖や航路筋の深みには、それぞれこのような水温で、無酸素の水が常時あったわけなんですけれども、それ以外のこういった浅場や干潟といったところには、当初30℃を超える過飽和の水があったわけですけれども、それが同じ水温のままに一気に無酸素化したというような事態を生じております。
 これ以外のいろいろな調査結果からの推定なんですけれども、2003年の貧酸素というのは、少し沖で生じた貧酸素水塊が航路筋を通って、アサリ養殖場に届いたということで、この貧酸素の特徴というのが30℃以下の低い水温であったといったことがわかりました。この後述べますけれども、この時のこの干潟底面の流速というのは、ある程度の流速がありました。この貧酸素ではアサリはほとんど死にませんでした。
 一方、2004年ですけれども、干潟のすぐ近くで貧酸素水塊が発生しまして、それがアサリ養殖場にたどり着いたということで、この貧酸素は30℃を超える高い水温であったということです。それで、この貧酸素というのは、アサリの大量へい死を招くといったようなことがわかりました。この後述べますけれども、この時はもう極度な流速の低下があり、ほとんど流速がないような状況でした。
 このような干潟域の貧酸素化の違いが生じた原因は何かということで、これは干潟で測った底面の流速です。ともにシャットネラ赤潮が出て、無酸素化した期間の流速を表しております。2003年は2.4cm/sありましたけれども、2004年は1.0cm/sということで、ほとんど潮が止まっているような状況です。
 次に、この底面流速の違いが何によって生じたかということで、風がどうだったのかを見てみますと、2003年、2004年もさほど変わっていません。大きく違うのが、これは沖のB4というところの表層塩分なんですけれども、これが2004年、こちらが2003年ということで、流速があった2003年はかなり塩分が甘いといったことがわかりました。
 それで、このB4の表層の塩分と、この干潟面の底面の流速を2003年、2004年の小潮時につきまして、それぞれ日平均という形でプロットしてみますと、このように強い負の相関があり、塩分が甘ければ流速が速くなるというようなことがわかりました。これは今のところ推定ですけれども、こういったところの小潮時の流速というのは、密度流に起因するのではないかなというような推定をしております。昨年のアサリの大量へい死を招いたときの流速というのは、今まで測った中でも、極端に遅い流れであったということがわかります。
 以上です。

○須藤委員長 平野科長、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして、何かご質問なりご意見はございますでしょうか。
 ではどうぞ、本城先生。

○本城委員 教えてください。資料の2ページの図の2で、シャットネラ赤潮が2年続けて出ているんですが、この矢印の両側というところからが赤潮であって、増殖しているのはその前と考えてよろしいんでしょうか。

○長崎県総合水産試験場漁場環境科長 そうですね。私どもの県の赤潮の認識というのは、漁業者等から通報がありまして、私どもが調べに行って、やはり赤潮があったということをもって赤潮というふうに定めておりますので、実際赤潮はこれよりも1日、2日早くから起こっているという可能性はあります。

○本城委員 増殖はその前からもう起こっているということですね。

○長崎県総合水産試験場漁場環境科長 はい、そうです。

○本城委員 ですから、発生の要因としてはその前を見ないといけない。そういうことになりますね。やっぱり赤潮の発生はすごく貧酸素化を招くと、収束によって、赤潮の発生中にね。また、一段とすごい貧酸素化を招いて、影響もあるということなんですね。

○長崎県総合水産試験場漁場環境科長 そうですね。その辺のところの考察につきましては今後、私どもの科は赤潮もやっておりますので、やっていきたいと思っております。

○須藤委員長 ほかにいかがですか。
 どうぞ、清野先生。

○清野委員 先ほどの水産庁の漁業者のヒアリング結果の図と絡めてちょっと質問したいんですけれども、今小長井町のお話がありましたが、資料5のほうで図1という図面が出ておりまして、これが現在と過去がどういうふうに潮流が違うかというのを漁業者の聞き取りで示したもので、非常に精力的な調査の結果だと思います。
 それで、今長崎県のほうからご説明いただいた辺りが、やっぱり過去と現在で流向が変わっておりまして、そういったものは、今みたいな非常に、微妙な流動すら影響するのに、結構こういう大きい変化があるということは、ここのポケット状の地形からしても、結構水理的な条件が変わったのではないかと思うんですね。その辺りについて教えていただけたらというのが1点と、もう1点は、航路を通じて水塊が上がったりしてくるという点で、東京湾でもやっぱりその航路の問題は出ておりまして、その辺りについて何かもう少し知見がありましたら教えてください。

○須藤委員長 2点、どうぞ。

○長崎県総合水産試験場漁場環境科長 最初のほうの質問なんですけれども、実はこの調査そのものが、干潟面で流速を測ることを含めて、一昨年と昨年度しかやっておりませんので、本来こういった諫早湾の工事が始まる前から、同じところで同じように流速をとっておけば、そういう比較というのができたんでしょうけれども、そういったのが一切ございませんで、ちょっとその辺に関しましては比較がちょっとできないというのが現状です。
 それと、航路筋からの貧酸素の接近といいますか、その辺のところなんですけれども、実は2003年はまさしくかなり広範に観測をして、そこからTSダイヤグラムを書いて同じ水だということがわかりました。私ども長崎県が抱えた問題は、アサリ養殖場でアサリが大量に死ぬということであり、その視点から考えますと、沖から来る貧酸素はさほど怖くはないというふうに今のところ考えております。むしろ昨年みたいに潮が止まって、アサリ養殖場の近辺とか、場合によってはその澪筋とか、そういったところで発生する水温30℃を超える時の貧酸素化がむしろ問題なのかなというところで、ちょっと答えになっているかどうかはありますけれども、そういったところを考えております。

○清野委員 ありがとうございました。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 またいろいろ考察が進んだらまたここでお示しをいただきたいと、こういうふうに思います。
 ほか、いかがでこざいましょうか、よろしいですか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、次の報告に移らせていただきます。本日の報告の最後になりますが、新たなアサリ増殖手法への取り組みにつきまして、熊本県から報告をお願いします。
 では熊本県どうぞ。

○熊本県水産研究センター主任技師 こんにちは。熊本県水産研究センター浅海干潟研究部の那須と申します。
 本日は、新たなアサリ増殖手法開発への取り組みということでご報告させていただきます。熊本県有明沿岸のアサリ漁場では、アサリ増殖を目的として海砂を用いた造成漁場が各地に造成されてきました。かなり成果ももちろん上げてきたわけなんですが、近年、その材料となる海砂の採取の問題が大きくなってきまして、事業ができなくなってきています。そういった中で始まった試験になります。
 一応、今日の発表内容なんですが、漁業者情報では、海床路にアサリがいると。海床路ということの簡単なご説明をしまして、海床路のアサリ調査結果から、そしてなぜこういう試験をしたのかと。それで、昨年度の調査結果をお話ししまして、今後の検討課題をということで締めたいと思っています。
 まず、海床路にアサリがたくさんいるということなんですが、まず海床路なんですけれども、こちら緑川河口域になるんですが、干潟上につくられました作業道になります。具体的にはこちら、写真に示していますが、これは岸側から沖側に向かって撮りました写真なんですが、このように干潟上に砕石をまいた作業道になっています。こちらにアサリがたくさんいるんだというふうな情報を漁業者の方々からいただきました。
 ではということで、早速調査をしたわけなんですが、こちらがその調査結果になります。数値は1m<SUP>2</SUP>当たりのアサリの分布数です。海床路の中と、その周辺を調査したわけなんですが、調査したすべての海床路の中に、非常に良好なアサリの分布が認められました。なおかつ、驚いたのは、海床路の周辺に非常に、また同じように良好な漁場が形成されていたところです。
 特徴としましては、その良好な漁場というのは緑川河口のほう、具体的には東方向のほうに漁場が広がっているというふうな調査結果が出ています。こういったことから、海床路というのは覆砂漁場、優良漁場に匹敵するぐらいのアサリの生息密度がまず確認されたんだと。海床路の東側にも漁場が形成されたと。周辺にも効果が認められるということがわかりました。
 もう1つ、今度は海床路が、緑川は特に何本もつくられているんですが、河口側につくられた海床路ほどアサリの生息量が多いというふうなおもしろい結果も出ています。
 こういった結果から、砕石はアサリ増殖効果が十分あるのではないかということで始めた試験です。
 試験を始めるに当たって、地元の漁協、具体的には網田漁協というところの協力のもと行ったわけなんですが、そういう漁業者の方々といろいろ日夜検討をいたしまして考えましたのが、こういう試験区の造成概略図になります。砕石を5m×20mのものを3列まくということで考えました。もちろん、砕石区にはアサリが立つだろうと。そこでもう1つ考えたのが、砕石と砕石をまいた間が優良漁場として利用することができないかということで試験を始めています。
 この試験実施場所なんですが、緑川河口域の宇土市側になります。こちら長浜の地先で行っています。具体的には、網田漁協の支所がこちらにあるんですが、その西―海床路と通称呼ばれているんですが、そちらの海床路の脇、西側のほうで3列配置するとことで試験を行っています。
 今から調査結果に入るわけなんですが、試験区の造成が終わったのが平成15年の8月です。調査を開始しましたのが昨年の平成16年4月から調査を始めたわけなんですが、具体的に5月の調査から稚貝が確認できるようになっています。こちら、1区、2区、3区としていますが、砕石をまいたところの各調査点における1m<SUP>2</SUP>当たりの分布密度の推移を示したものです。青いところで1m<SUP>2</SUP>当たり6,000個ぐらいの分布が認められました。敷き詰められた砕石をアップにしたものなんですが、この砕石にもアサリの稚貝が付着しているのが、このとき確認できています。
 この結果を見まして、これはいけるのではないかということで、非常に期待したわけなんですが、こちらが最終的な調査結果になります。5月の時点で砕石区のほうでは平均6,250個の分布が認められたわけなんですが、調査ごとに急激に減少していきまして、昨年は非常に台風の通過が激しかったんですが、8月の末から9月の上旬に通過しました2つの台風によってさらに被害を受けて、その後は数十個というふうな結果になっています。
 そこで、まずこの台風が通過する前の、具体的には5月から8月の末までに約10分の1に、砕石区においては減少するわけなんですが、この10分の1の減少が多いのか少ないのかということを検討したわけなんですが、こちら、上の青の折れ線グラフが、優良覆砂漁場の5月から8月までの分布密度の推移です。下、赤のほうが砕石区の分布密度の推移なんですが、優良覆砂漁場のほうでは、約5分の1の減少にとどまります。ところが、砕石区のほうでは10分の1の減少ということで、かなり減少しているということがわかりました。
 ではなぜこのように砕石区のほうでは減少したんだろうということを検討したんですが、まずその1としまして、下が優良覆砂漁場における5月から8月までに採取されるアサリの殻長組成になります。毎月どんどん成長していっているのがわかる。上が砕石区におけるアサリの殻長組成なんですが、いつ調査しても稚貝だけが多いというふうな結果になっています。覆砂漁場のほうではどんどん成長が認められるんですが、砕石区においてはなかなか成長しない。具体的には、殻長4mmの壁をどうも越えきらないというのがわかってきました。要は、大きくなるとアサリがいなくなると。
 なぜいなくなるかなんですが、私が思ったのは、アサリが生息できる場所、要は砕石と砕石の透き間に入ってアサリは生息しなくちゃいけないわけなんですが、その透き間が非常に少なかったのが原因ではないかなというふうなことを感じています。
 減少要因のその2です。こちらは試験を実施した場所の平成9年3月に撮影しました航空写真なんですが、ここが試験を実施した場所です。非常に波浪が発達しているのが見ていただけるとわかると思います。要は、非常に物理環境が厳しい場所であったと。逆に言ったら、こういう漁場だったからこそ、どんな試験でもやっていいよということになったわけなんですが、そもそもアサリがいない場所だったんだというところが、アサリが生息していない、非常に厳しい環境要因のところであったんだというふうなことが、減少要因として考えられました。
 そして、とどめを刺すように最後にやってきたのが台風だったわけなんですが、こちら薄い灰色のものが昨年の5月の測量した図面です。赤が台風の通過後に測量した砕石区の範囲なんですが、1区ですね。特に一番西側になるわけなんですが、この西側の砕石区にいたっては、砕石が全部飛んでしまって、なくなってしまったというふうな結果になるという、残念な結果になっています。
 まとめとしましては、このような非常に、そもそもアサリが生息できないような厳しい場所でも、アサリが生息できる漁場が造成できたんだというのは1つの大きな成果だと考えています。稚貝、具体的には殻長4mm以下が生息する場所としては効果があった。しかし、その後成長して親になる場所としては、まだ今後改良する必要があるという結論になっています。
 その要因として、砕石と砕石の隙間が非常に少ない。具体的には砕石の大きさですね。すみません、最初にお話しすべきだったんですけれども、今回直径4cmです。何で直径4cmということに決まったかなんですが、試験を始めるに当たって地元の漁協さんとかなり打ち合わせています。直径4cmだととることができない。地元ではじょれんでとるものですから、4cmを敷き詰めてしまうととることができない。漁獲ができないような漁場をつくっていいのかと、私のほうからはもっと小さい石をまいたほうがいいのではないかというふうな提案もしたんですが、結局あまり小さいのをまいてしまうと飛んでしまうよと。そういったことから4cmのものを使ったわけなんですが、試験をやった結果としては、そういう砕石の大きさ、あと厚さです。あとさらに検討して、要はアサリの生息できる隙間をどうつくってやるかというのが、今後の検討課題だと思っています。
 以上です。すみません。

○須藤委員長 那須主任、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまのご説明に対しまして何かご質問なりご意見はございますか。
 どうぞ、菊池先生。

○菊池委員 ちょっとお伺いしますけれども、優良漁場というところは、全くの自然の状態ではなくて、それは覆砂をした漁場なわけですか。

○熊本県水産研究センター主任技師 私が言った優良漁場というのは、覆砂漁場も含めた、覆砂漁場と天然漁場でもアサリがいる、そういう両方を含めた優良漁場ということです。

○菊池委員 それは、粒度組成からいうと粗砂になるんでしょうか。どのぐらいの粒度。

○熊本県水産研究センター主任技師 天然の優良漁場のほうは中央粒径で言いますと0.2mm、いわゆる細砂になります。私どもが先ほど対象として出しました覆砂漁場のほうは、中央粒径値で0.3mmぐらいで今は推移しています。

○菊池委員 そうしますと、今度の砕石を入れたところは波が荒いというお話でしたけれども、もっと穏やかなところで天然では余り稚貝のつかないところというのには、砕石にしてももっとずっと細かい、1cm以下みたいなものを敷けば、歩留まりがよくなるとお考えですか。

○熊本県水産研究センター主任技師 その付近も、今のお答えになるかちょっとあれなんですけれども、さらに時間があればお話ししようと思っていたんですが、直径40mmの砕石をまいたのが今お話しした結果です。では次に、砕石の大きさを変えたらどうなるんだろうというのをあわせて昨年から開始しております。具体的には40mm、13mm。直径40mm以下ですね、要は40mmまでいろんなサイズが入っているものと、13mmと40mmで今やっているんですが、今現在の結果としましては、直径13mmのものに、非常に良好な稚貝が認められるということで、その件は今後検討してさらに、もちろん漁場に合わせたサイズというのがあるのかもしれませんが、やっていきたいというふうに思っています。

○菊池委員 どうもありがとうございました。

○須藤委員長 どうぞ。滝川先生どうぞ。

○滝川委員 ちょっと教えてください。アサリ貝については素人なのでよくわからないんですが、アサリ貝そのものはどういうものをえさにするんですか。珪藻とかプランクトンとかいうものをえさというか、食べ物にするんですよね、きっと。

○熊本県水産研究センター主任技師 浮遊珪藻なのか付着珪藻なのかという論議はいまだに……

○滝川委員 ええ、何かよくわかりませんが、そういう意味からすると、今の粒径のお話からすると、非常に余り粗いと、そういうえさになるものがない、付きにくいのかなということと、細かい粒子ほどそういうものが付きやすいですよね。稚貝の定着からすると安定した砂地のほうが多分いいからかなというふうに素人的に考えているんですけれども、そこら辺の点、いかがなんでしょう。要するに、えさになるようなものが成貝になったときに、そういったことも含めてご検討していただいているのかなという、ちょっと教えていただきたい。

○熊本県水産研究センター主任技師 残念ながら餌料環境については、そういう検討は行っていません。ですから、もちろん、要は安定した場であれば、もちろんそういう細砂のほうがいいのかもしれませんが、残念ながらそういう、この試験を実施しました緑川河口域に限って言うと、そういう非常に安定した場所が少ないのではないかと。だからこそアサリが増えないのではないか。幸いにして平成10年以降、熊本県における有明海沿岸では、アサリは増加傾向にあるわけなんですが、今後さらに増やすためには、そういう今おっしゃられましたような場の安定ですか、そういったものが重要ではないかということで始めた試験だということです。

○滝川委員 有機物みたいなものといいますか、えさになるようなものとの関連が何かあるのかなと思ってお尋ねしたんですけれども。

○須藤委員長 今ご質問いただいたことは、今後の課題として、機会があればお調べいただければと、こういうふうに思います。
 それでは、ほかによろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 主務省、関係県が行った平成16年度の調査等の結果につきましては、次回の評価委員会でも何件か報告をいただきたいと考えております。具体的には後日、事務局から主務省、関係県へ報告案件の有無について聴取がなされることと思いますので、その際はどうぞよろしくご協力いただきますようお願いを申し上げます。
 それでは、次の議題。議題の中にはその他というのがございます。事務局から何かございますでしょうか。

○環境省閉鎖性海域対策室長 それでは、次回の評価委員会についてのご連絡でございますが、次回の評価委員会の日程に関しましては、これから各委員のご都合をお聞きした上で決めさせていただきたいと思っております。そこで、机の上に5月下旬から6月にかけてのカレンダーを書いた紙が置かれていると思いますが、委員の皆様のご都合を記入いただきまして、事務局にお送りいただきたいというふうに思っております。できるだけ出席可能な先生方が多い日を選んで、次回の評価委員会としたいと思っております。
 次回行いますことは、今考えておりますのは、1つには残された論点がまだありますので、そのうち幾つかについてまずご議論をいただくということと、それから主務省、関係県からの調査結果の報告がまだ幾つかありますので、それもあわせて報告させていただきたいと思っております。
 以上でございます。よろしくお願いします。

○須藤委員長 それでは、全体を通して何かございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 なるべく早めに次の委員会の日程を決定させていただきたいと思いますので、先ほどのカレンダー表にはなるべく早めにご記入いただいてお送りくださるなり、今日この場で置いていってくださればさらに助かるかと思いますので、よろしくご配慮をいただきたいと思います。
 それでは、本日予定しましたすべての議題は終了いたしたことになります。
 これにて第13回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会とさせていただきます。ちょうどぴったりの4時半ということでございますので、委員の皆様のご協力を感謝申し上げます。どうもありがとうございました。お疲れさまでございました。

午後4時34分閉会