第6回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

日時

平成15年11月10日(月) 14:00~17:00

場所

中央合同庁舎5号館共用第7会議室

出席者

委員長 須藤隆一委員長
委員 相生啓子委員、伊藤史郎委員、菊池泰二委員、鬼頭鈞委員、
楠田哲也委員、小松利光委員、清水誠委員、清野聡子委員、
滝川清委員、原武史委員、細川恭史委員、本城凡夫委員、
山口敦子委員、山田真知子委員、山室真澄委員
臨時委員 荒牧軍治委員
発表者   堤裕昭熊本県立大学環境共生学部教授、
  磯部雅彦東京大学大学院教授
事務局 環境省環境管理局長、水環境部長、水環境部閉鎖性海域対策室長

○坂川閉鎖性海域対策室長 それでは定刻となりましたので、ただいまから第6回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会させていただきたいと思います。
 本日は、委員21名のうち17名の委員にご出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。ご欠席は大和田委員、岡田委員、福岡委員、森下委員の4名でございます。
 なお、本日、研究成果をご紹介いただく予定であります東京大学の磯部先生におかれましては、大学での会議の都合により遅れておりますが、ご本人の発表時間までには到着される予定でありますことをお伝えします。
 まず、議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。

(資料の確認)
 
 それでは、須藤委員長に会議の進行をお願いいたします。

○須藤委員長 かしこまりました。
 それでは、本日はご多用の中を、委員の先生方並びに関係省庁、関係県の皆様にはご出席をいただき、まことにありがとうございます。それと、本日も傍聴の方々も多数いらっしゃっていただきまして、ありがとうございます。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。
 今回の評価委員会は、前回、第5回の評価委員会と同様に、有明海及び八代海の再生に係る評価を行うに当たり、その参考とするため、有明海・八代海に関係する調査・研究を行ってこられた委員の皆様方からこれまでの研究成果についてご紹介をいただき、それについて、本日お集まりの委員の方々で意見交換を行うことを目的としたものでございます。
 また、最後に、評価委員会の今後のスケジュールについてもご相談をさせていただきたいと考えております。
 本日、研究成果をご紹介いただく3名の先生方におかれましては、お忙しい中、その役目をお引き受けいただきまして、まことにありがとうございます。特に、熊本県立大学の堤先生、さらにまだご出席になっておられませんが、東京大学の磯部先生におかれましては、本委員会の委員ではございませんけれども、特別にご出席をいただきましたことを深く感謝申し上げます。3名の先生方、本日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 お手元にお配りしました進行表にありますとおり、まずは鬼頭委員にご説明をいただきます。続きまして堤先生からご説明をいただき、その後15分間程度の休憩を挟みまして、再開後、磯部先生からご説明をいただきたいと考えております。お一人当たりの持ち時間は、質疑応答の時間も含めておりますので、十分な時間とは必ずしも言えませんが、円滑な議事進行のために発表時間をお守りいただくようお願いいたします。質問される先生方も、議事の進行には十分ご協力いただきたいと思います。
 それでは早速、今お話ししたとおり、研究成果のご説明をいただきたいと思いますが、まずは鬼頭委員でございます。鬼頭委員の発表の課題は「有明海におけるノリ養殖について」でございます。
 鬼頭先生、どうぞお願いいたします。

○鬼頭委員 皆さんこんにちは。水産大学校の鬼頭でございます。
 有明海のノリ養殖についてということで、環境とノリの問題ということだと思いますけれども、私自身は、実はそういう環境の問題をやっているわけじゃございませんで、ノリの遺伝育種を担当しているような者でございます。そういう意味で、長くノリに携わってきたということで、いろいろな委員会とか、いろいろなところでノリの問題に遭遇します。そういうことで、今回有明のノリを環境の側面からまとめてお話ししなさいということだと思いますので、そういう意味で、いろいろな試験場とか大学の先生方の成果をまとめさせていただいたという内容でございますので、そのように最初にお断りさせていただきます。
 今、4つぐらいの写真を示しておりますけれども、これはいずれも、日本のノリ養殖の中でかなり大きな技術的な影響を与えた内容でございます。ここにコンコセリスと書いてありますけれども、これはノリの夏の時期、今養殖しているのはハプロイドのステージなのですけれども、受精して2nになったときには、ノリというのは貝殻の中に生育しております。コンコセリスというのは、コンコセリスロゼアという、昔は別の海藻だと思われていたのが、1949年にドリューというイギリス研究者が、これはノリの夏のステージだということを見つけまして、それから1949年から5、6年、せいぜい10年の間にほとんど日本の研究者が、その生理的な、あるいは生態的な内容を全部調べまして、そして養殖に持っていくというところまで、人工採苗をするというところまで持っていったわけです。
 そこで非常に大事なことは、こういう特定の種類を扱えるようになると、個体群が選択的に扱えるようになったものですから、ノリ養殖の品種ががらりとそこで変わってきたということですね。それまではノリ養殖というのは河口域で行っていたものですから、淡水がまじるようなところで養殖されたわけですね。ちょうどそういうところは、また人口が多いところが多いものですから、例えば江戸の浅草みたいにですね。そこに存在したノリというのはアサクサノリと言いまして、これは割と真水に近いようなところを好むノリだったわけですね。
 それが、こういう人為的に特定の品種の種網をつくることができるようになりまして、今日、有明でもどこでもそうですけれども、扱っておりますノリは全部スサビノリ系です。スサビノリというのは、北海道の函館にスサビの浜という所があるんですけれども、そこが原産地というか、そこの名前を標準和名に取っているように、北海道からだんだん下がってきたノリでございます。非常に好高塩性でして、色がよくて、ですから漁場がどんどんどんどん沖に向かっていったということですね。特定のそういう種類の種を網につけて、そして河口域だけじゃなくて外に持っていったということが、漁場が拡大していった大きな理由であります。そういうような動きは、昭和40年代の前半あたりから急激に伸びてきたということですね。もちろん50年代に入っても伸びた。
 それから、あと技術で大きな革新をもたらしたのが、昨今問題になっておりますこの酸処理でございます。これはこういう浮き流しの漁場では、船を網の下に潜らせまして、摘採と酸処理と同時にやるわけです。ここで一度摘採したものを、すぐ後ろで酸処理をするなどして、そして展開していくというようなやり方をする。非常に効率的に行えるようになったという技術。
 それから、こういうように機械船で摘採するということが、ノリを腐らせないで、生育させたものは全部取り上げることができるということで、非常に効率的になっていったということがあります。
 それから、その間の生産的な安定は後でまたお示しいたします。
 それから、この全自動の機械です。これも昭和50年代の後半、50年代に入ったころからどんどん機械が大きくなりまして、ノリを取ってくれば、全部機械で製品にするようになってきた。それまでは、1日に幾ら24時間頑張って、夜まで乾燥させてやっても、せいぜい1万枚とかそこらだったのが、今日では1漁家で、別に協業じゃなくて、1漁家で数万枚、2万枚とか3万枚とかというような数字が生産できるようになってしまった。こういうことが漁場をフルに使える。要するに生産が非常に効率的になっている。それまではこういう乾燥技術なんかが生産の一つのリミティングファクターになっていたということでございます。
 そういうような大きな技術を踏まえて、生産はどういうふうに伸びていったかということでございます。ちょっと小さくて申しわけないんですけれども、例えば1が人工採苗技術。
 それから、そのほかに大きな技術としてノリの冷凍保存技術というのがあります。これは、ノリというのは乾燥させまして、冷凍庫マイナス20度ぐらいに入れていますと、1年やそこらは生きています。ですから、ちょうど今有明なんかがそうなんですけれども、1ヶ月ぐらいノリを育てまして、そして半分ぐらい、3分の1ぐらいの網を冷凍庫に入れておくわけですね。そして、その予備網というか、病気が出たときにそれを張り出すというようなことをやるわけです。そういう保存技術ができた。
 それから、べた流し技術というのは、有明なんかはさっき示しましたように、支柱をある程度の深さのところへ建て、それに網ひびを縛るような形で養殖しているわけですね。干出時間を干満に応じて一定の時間与えるわけですけれども、このべた流し、あるいは浮き流しというのは、もう24時間全部、海面にフローティングしている筏に縛るような形でセットする。これですと、沖へどんどんどんどん広がって行けるわけですね、筏はどんなところでもできますから、これが漁場拡大に非常につながっていったということですね。
 それから、その網ヒビというのは、昭和20何年くらいまでは、それまで竹を立てたり、粗朶を立てるような方法だったが、その後網ヒビになっていって、非常に扱いがよくなったわけです。
 それから、多収性品種。さっきちょっと言いましたように、人工採苗技術と一緒になって、このころ選抜育種が盛んになりました。漁業者が中心に、伸びる葉っぱから種を取るようにしていくわけですね。その技術のおかげで、大体それ以前の3倍ぐらいの生長量を示します。非常に成熟細胞ができにくくて、漁期の終わりまでどんどんどんどん伸びるというようなものが今日使われています。これがナラワスサビノリとか、オオバアサクサノリと言いまして、今使われているのはほとんどがナラワスサビノリという品種でございます。
 それから、最近になってこの協業の問題が出てきています。非常に生産性がやはりきつくなってきましたものですから、何人かで一緒に、3経営体とか、5経営体ぐらいが一緒になって効率よく機械を使う。ノリの場合は、機械が非常にコストが高くつきますものですから、そういうことを考えると。
 有明海におけるナラワスサビノリの生長ですけれども、これは3年間、1983年と84年と85年、水産試験場の方と一緒にやった仕事でございます。年によって、こっち採苗してからの日数です。この辺は伸びているわけですけれども、ちょっと目に見えないということでご理解いただきたいと。こちらが葉長、センチであらわすとこういうことになります。年によってこういうふうに、大体10日間ぐらいの生長のスピード差が出てくるということであります。
 いずれにしましても、これは試験場でやったものですから、ちょっと生長がどうしても遅いんですけれども、漁業者のレベルでやりますと、採苗してから、最初に種をつけてから1回目の製品ができるまで1カ月足らずです。25日から28日ぐらいのスピードで生産が行われます。これら3年間を合わせるとこんなデータになるということで、このように20センチぐらいになるのに30何日かかっていますけれども、さっき言いましたように、漁業者のレベルでやりますと、伸ばす技術を徹底的にやりますと、27、28日でいってしまうということです。
 こういうようなノリが、それじゃどういう環境要因で育つか。養殖漁場におけるノリの生長要因ということで、いろいろな文献を整理したものでございます。雑駁な話で申しわけありませんけれども。
 まず、流れですけれども、後で式を示しますけれども、減少率が 0.4、半分ぐらい減ると生産に顕著な減収が見られる。生産に顕著な減収というのはどのくらいかというと、2割ぐらいの生長の差が出るということでございます。もちろん、これは病気等が一切入らないと仮定してございます。流れが下がってきますと、赤ぐされ菌とか、今ちょうど福岡で問題になっています、そういう菌の遊走子が非常に着生するようになりますので、こういう流れが落ちるということがノリにとっては非常に大きな問題だということです。
 大体、波浪でいうとどれくらいかと。風波浪階級2以下、波高 0.1から 0.5で養殖継続限界と。こういうふうに非常に平穏になってくると、こういうのが続くようになってくると養殖ができなくなる。
 それから、光、透明度、濁り、こういう問題ですけれども、採苗・育苗期、ちょうどこれまでの10月でいきますと10月いっぱいぐらいのときですね。そういうときには8,000luxぐらいまで、それからそれより生長期になると 7,000から1万luxぐらい、それからそういうときのSSは10mg/L以下がよいということです。
 それから、CODでいうと2mg/L以下が望ましい。
 それから、栄養塩ですけれども、普通の流速としまして、大体ノリの生産技術者の間では、ノリが育つ、ノリ漁業として成り立つ流速というのは平均で20センチ/秒というふうに大雑把な言い方をします。それで、20センチ/秒ぐらいないとどうしてもだめだと。それはさっき言いましたように、病気が入ったりいろいろな問題。特に赤ぐされ菌なんかの遊走子は18センチ/秒以下になると顕著に着生するという研究結果があります。
 それから、栄養塩ですと、よく色落ちの問題が起きるのが、このトータル窒素で70μg/Lあたりですね。 100μg/Lという言い方をしますけれども。それからリンですと7から14μg/Lと。
 塩分は、ノリというのは結構低いところでもいいので、採苗期ですと28から34、最低20。それから育苗期ですと25から35、最低18。養成期ですと22から33、最低18。割と甘いところでも育つということです。
 さっきちょっと言いましたノリの生長に対する流れと栄養塩の関係ですけれども、これは佐賀の水産試験場時代の研究です。ムンクの式というのがあって、それをノリ用に当てはめられた数字でございます。左側がノリの日間生長と言えるかと思います。流れと栄養塩の量をこういう式であらわすことができる。Nがノリの窒素の含有量、tが時間、海水中の窒素、それから流速。それを計算すると、こういう結果があります。さっき言いました生育変化量が15日間としまして、20%以上なら影響大というふうに見ますと、この辺ですね。その流速の変化率というのは4割ぐらい、40%ぐらい変化すると、生産に顕著な影響が出てくるということです。これは病気がないと仮定しての話でございます。
 それから、須藤先生がこういうことをやられておりまして、東京湾におけるノリの不成立経過というのがあります。ノリ養殖、アンモニア態窒素、それからCOD、こういうファクターを見ますと、養殖が成立するのは──成立というか、いいのはこういう条件。CODで1時間。それから、量・質がいいようなところというのは、アンモニアがこれぐらいのところで50から 100μg/Lぐらい。それからCODだと 1.5から2mg/Lぐらい。それから病害の兆しが出てくるというのが 300から 600μg/Lぐらい。それからCODで2mg/Lぐらい。それからさらに養殖が危なくなってくるのが、こういうのが 1,000μg/L以上になったり、それからCODが3mg/L。CODが3mg/Lというのは一般的にどこでも言います。
 そういうノリの病気が大きな問題なんですけれども、どんな病気があるかということですけれども、赤ぐされ菌。これは赤ぐされと壷状菌というのは2つの大きなノリの病気なんですけれども、いずれもカビの仲間です。藻菌類ですね、ファンジャイです。こっちはピシウムです。こっちはキトリッドですね。
 対策として、赤ぐされの場合は、できるだけ早く摘み取って高吊りするしかない。ちょうど福岡が今年強烈にやられまして、今大きなダメージを受けていると思います。秋芽生産がだめになるんじゃないかというふうに言われています。有明の場合は、特に福岡、佐賀の湾奥の方は、この病気との戦いと言ってもいいぐらいなのです。必ず11月初旬の小潮に出てくるわけです。それでその11月の最初の小潮をどう逃れるか。この病気はちょうどノリが摘めるぐらいの大きさになると、一番ダメージが大きいわけですね。ですから、葉体を小さく逃れるか、逆に大きくして摘んでしまうか、どっちかなわけです。福岡の場合は、今年は11月の最初の小潮を摘んで逃れようとしたのですけれども、そこまで生長がうまくいかなったのでしょう。まともにその小潮のところで摘み取り期に入ってしまいました。そういうことで強烈なダメージを受けたということです。佐賀の場合は、採苗を1週間後ろにずらしました。それをうまく──うまくではないですけれども、病気は入っているんですけれども、若干逃れつつあると。
 ただ、その様に生長期を遅らせますと、さっき言いましたように冷蔵庫の入庫の時期が遅れます。要するに、入庫は5センチぐらいで安全のためにノリ網を半分ぐらい冷蔵庫に入れるわけですね。そっちの伸びがうんと遅れるものですから、入庫網自身に病気が入るわけですね。その辺が非常に難しいところで、どうタイミングで採苗するかというのが、試験場の皆さんが大変苦労されるところです。
 今年は壷状菌は今のところ余り出ていませんけれども、これは割と早冷のときに出ると言われている。こいつはノリのサイズがどんな大きさでも入ってしまいますから、これが出るとものすごい大きなダメージを受けます。
 それから、スミノリといいまして、これはバクテリアがノリの葉体について、そしてスミというのは、これはいわゆる習字の墨のことでして、要するに普通のノリというのはてかてかと光っているんですけれども、これが入ると習字の墨みたいに真っ黒い黒ずんだノリになってしまうと、細胞壁がやられるわけです。これ用に、有明の場合は、極論すれば酸処理を使うということです。特に冷凍網生産の一番最初にこれが出やすいので、そのときを中心に。このバクテリアを抑えるには酸処理しかないということでございます。
 それからあと、色落ち、これは植物プランクトンで、さっき言いましたように、窒素が一番大きなファクターなんですけれども、窒素で70μg/Lぐらいを切ると、色が真っ黄になってくると。
 あと、バリカンというのは時々出まして、これは淡水の被害。バリカンというのは、バリカンで頭を切ったみたいに一定の大きさにノリの葉っぱがばっと切れてしまうということです。
 あとは、アオノリが混ざるとノリはよくないということで、アオノリ駆除のために酸処理。酸処理は大体このためにできた技術でございます。
 有明海の柵数でございますけれども、佐賀、福岡、赤いのが熊本、これは長崎です。こう見ていただくとわかりますように、決して柵数は増えていません。昭和50年代の前ぐらい、40何年ぐらいにピークがあって、そこからずっと減ってきています。それで、生産量だけ伸びているということでございます。
 これがその数字、平成11年に調べた数字を全部書いたものです。大体経営体で 3,000経営体ぐらい、4県であると。柵数で70万ですか。それから生産金額、平成13、11年、 400億円ぐらい取るわけです。それで生産枚数で36億枚、1枚10何円というところです。これは生産金額で全国の43.1%を有明海が占める。それから生産枚数では37.9%と、こういうように有明海のノリは非常に全国的に見て高いということがおわかりいただけると思います。
 これを見ると4割かという感じですけれども、ただ、実際はギフト用なんていうのは全部、ギフト用が5億枚ぐらいあるんですけれども、それは全部有明ですので、有明のそういうノリ業界に占める位置づけというのは、もっと雰囲気としては大きいと。例えば6割とか7割ぐらいのノリ生産の中での雰囲気を持っているというふうに言えるかと思います。
 これはちょっと佐賀県の数字だけを使わせていただいて、全部使うといろいろな意味でごちゃごちゃしますので、佐賀県の数字を使わせていただいて、ちょっと整理をさせていただきました。経営体もジリ貧、それから柵数もどっちかというとジリ貧。その中で、生産技術がいろいろ改良されて伸びていると。なおかつ、時々こういう大きなダメージを受けると、病気でですね。これは平成12年の例の色落ち問題でございます。その前にも、これ赤ぐされとか出ているんですけれども、ここでも赤ぐされとスミノリが発生しまして、佐賀の場合は平成8年にもかなり落ち込みがありました。このように局所的に見ると、4割ぐらいの生産変動をいたします。全国的に見ると、 100億枚ぐらいずっとわりと安定して取りますけれども、結構ノリというのは大変だということでございます。昔は3年に1回取れればいいというふうな言い方をよくしていたんですけれども、ただ、今日はいろいろな借金を抱えて生産をやっていますので、3年に一遍だと干上がってしまいますので大変なことになるということで、毎年取れないとだめだということになっているわけでございます。
 佐賀県、これも川村さんのデータを使わせていただいたんですけれども、表を使わせていただいたんですけれども、佐賀県海域における水温の年変動。これは10月から12月で、これは相関は余りよくないんですけれども、こういう傾向があるというふうに受け取っていただきたい。毎年、ちょうどこのノリの時期に右上がりですよということを理解していただきたい。
 それから、1月から3月、これは冷凍網が中心になってやられているとき。このときもどっちかというと、やはり温度が高くなっていますよと、ノリ漁場でですね。それを秋芽生産の時期、10、11月ですね、それからせいぜい12月の初めぐらいまで。こういうときと水温の関係を見ますと、水温と生産量、生産枚数、これは余り相関数はよくないので傾向だけを見ていただきたいと思いますけれども、こういうふうに逆相関というか、水温が低い方がいいと。やはりノリは冬の植物ですので、どうしても高いと病気が出たり、そういうことで取りにくいということです。
 それから、塩分はといいますと、逆に塩分は高い方が生産枚数、このプロットは年度ですけれども、上がっていくということですね。こういうような傾向があると。
 これはもう非常に何も意味のある数字じゃない。たまたま水温を塩分の数字で割って、要するにさっき水温は低い方がいい、それから塩分は高い方がいいと言いましたので、その2つを割り算して相関を取ると、割ともうちょっと数字が上がるということで、要するに水温は低い方がいいし、塩分は高い方がいいということで、生産枚数はこういうふうに逆相関で上がってくるということです。
 このように、生産枚数と塩分と温度の関係というのが一応あるわけですけれども、この冷凍網期の生産と栄養塩の関係というのを見ますと、これはそうシビアではないんですけれども、張り込んでから何日間で生産枚数が伸びた場合、生産枚数がどれくらい上がるかということです。こういう割と小さくおさまる年、それからどんどんどんどん取れる年、長く取れる年、割と早く終わってしまう年、こういうような傾向があると。要するに、これはどこで栄養塩がなくなるかということですね。年によって、そういうプランクトンの増殖が来ると、ノリはそこで冬から春にかけて、1ヶ月の増殖が来ると、ノリはそこで終わってしまう。年によって、こういうように長く取れる年は、もちろんたくさんノリが取れるということでございます。
 それから、今言いましたように、ノリというのはそういうことで、割とノリ以外のファクターでどうしても生産が決まっていってしまうので、受け身でやらざるを得ないわけで、そこをいかに環境条件を考えながら、病気を考えながらぬっていくかという技術体系になってきて、それを能動的に使える技術としては、せいぜい酸処理と、それからあと干出策をとるか、ほかの生物を防ぐかというようなところになってしまうわけですね。
 あと、それから酸処理が昨今いろいろなところで問題になって、先日もNHKのテレビに出ましたので、どういうことかということで、ちょっと触れさせていただきます。
 まず、酸処理というのは何かということなんですけれども、後でまたちょっと出ますけれども、最初に、千葉県の平野さんという漁業者がアオノリを駆除するものをいろいろ探していたわけですね。しょうゆにつけたり、塩分につけたり、いろいろなことをやって、コカコーラが非常に効果的だということを見つけられた。それを受けて、水産試験場がコカコーラは何なのかということを調べていったら、どうも有機酸というか、pHだということがわかった。そういうのが、このノリの業界では全海苔(全国海苔貝類漁業協同組合連合会)が中心になりまして、漁業者発表大会を毎年やっています。そこで、連続2年ぐらいこの発表が続きまして、あっという間に全国にこの技術が広まってきました。
 昭和57年には、マラカイトグリーン問題というのがありまして、これは福岡県で、この酸処理をしながらマラカイトグリーンをまぜ込んだわけですね。そうしたら、あれは殺菌剤なものですからものすごい効果的で、それが朝日新聞のトップに扱われて大変大騒ぎになって大混乱になりました。そういうことを一切やらないようにということで、一人一人から念書を書いて、そこの場はおさまったということですけれども。こういうものはちらちら時々問題になります。これは製品の食品としての安全性の問題です、むしろ環境というよりも。
 昭和58年に、ノリ問屋組合がそういうものを買わないというようなことを出したわけですね。
 昭和59年に、水産庁の次長通達というものがあります。この中身は後でまたお話しします。
 それで、そういうような動きが、有明海でも佐賀県を除く県で動いていたんですけれども、これはどうしてもやはり量産につながる技術ですし、質にももちろんつながります、いろいろな付着物を除去しますので。そういうことで、佐賀県も平成5年に踏み切ったという経緯があります。
 そういう中で、水産庁は各水産試験場がいろいろ調べた結果を平成7年に、その概要としてまとめております。
 それから、平成15年には第三者委員会の中にと言っていいんですか、併設されましたノリ養殖技術評価検討委員会というのができまして、1年間の検討ですけれども、そこで限られた内容について検討した報告書を委員会に出したという経緯がございます。
 これはどういうものかということですけれども、まずアオノリとか珪藻とか、そういう雑藻、時期的には赤ぐされ菌、付着細菌、こういうものを効果的に殺すことができる。pHは当初3から4ぐらいでしたけれども、最近では、2というのは使わないですけれども、 2.1から3付近まで使う。
 それから、酸としては有機酸、例えばクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、こういうようなものを主成分として、添加物としてノリの栄養になるもの、例えばアミノ酸とかリン酸とか、それから塩などが含まれる。
 有明などの支柱式では、4、5分、ノリ網を巻き取りまして浸漬する。さっき述べましたべた流しでは、専用船で連続的で行うというようなやり方であります。
 さっきちょっと触れました次長通達の内容ですけれども、1つとしては、使用物質は天然の食品に含まれる有機酸であることということが書いてあります。
 それから、残液は持ち帰り、中和して下水等を通じ排出すること。下水になかなかこういうものを中和して流せないんですけれども、産廃業者に持っていってもらうとか、そういうことだと思います、今日はですね。
 それから、使用に際しては、都道府県の試験研究機関の指導を受けることと、こういう3つの内容で次長通達というのができております。
 有明海における酸処理というのを、さっきのノリ技術評価委員会で検討いたしました。これはごめんなさい。これは水産庁から出された数字です、その委員会に向けて。
 それで、まず陸域からの負荷総量、CODが104,894トン、国調費グループが試算した数字であります。それからT-Nが28,624トン、それからT-Pが 3,841トン。酸処理による負荷はどれだけか。使用量が 2,358トンです。漁協の系統販売の全部の数字を集めた数字でございます。COD、これからその組成表をもとにCODを計算しますと 708トン、それからT-Nが30トン、それからT-Pが82トンという数字であります。
 このとき一緒に計算されているのが、養殖ノリによる取り上げ量は、それではどれぐらいあるかということであります。生産枚数が、これは平成13年度、結構ノリが取れた年でございますけれども、45億枚取れております。生産量、これは14,864トン、1枚 3.3グラム、乾重量です。炭素が40%ですけれども、 5,947トン。それから窒素含量、窒素が 937トン、それからリンが 103トン。酸素は、これは炭素の含有量から計算する、光合成からで15,858トンという数字であります。
 それから、そのもとになった話ですけれども、これは「海苔養殖読本」から取ったものですけれども、こういう水分、タンパク質、糖類、灰分、繊維、脂質と、まず上級品と中級品と下級品で大分違うと。いいものになればなるほどタンパクは多くなって、炭水化物が少なくなってくるわけですけれども、下等になってくれば、こういう炭水化物が多くなって、タンパクが減ってくるということですけれども、これを元素で見ると、こういう数字になります。炭素が 400ミリグラムぐらい、窒素が50ミリグラムぐらいですか、リンが5ミリグラムぐらい、こういうような数字、これを使ったわけでございます。
 さっきの数字を、有明海の最初に示しました国調費グループが行った試算値と計算しますと、年間でCOD、T-N、T-Pを比較しますと 0.7%、 0.1%、 2.1%。それから11月から3月に限って、この時期だけで計算しますと、CODは 1.7%、それからT-Nが 0.3%、T-Pが 5.2%と。リンがやはり大きいということで、東京湾で例えば2%から9%の削減目標で一生懸命やっているのに、このノリだけで 5.2%というのは大きいんじゃないかというご意見も委員会の中でございました。
 それじゃ、こういうものを分解について調べた、さっき平成7年に水産庁でまとめたものに水産試験場がいっぱいやられたデータがずっと幾つかあるわけですけれども、そういうものから大まかなまとめで申しわけないんですけれども、1万倍希釈でクエン酸が2ないし10日で分解されると。それから酸処理網を海域へ展開すると。3分から5分後ぐらいでpHそのものは回復する。予測計算値として 25ppm、4万倍希釈の範囲は表層のみで、3分31秒後には消滅する。それから5ppm、20万倍希釈の範囲は5分40秒後に消滅すると、こういうような一つの数字があります。こういうようなことに関する水産試験場のデータは幾つかあります。それをまとめたというか、その中の数値を選ばせていただいたということでございます。
 それから、酸処理剤の希釈でございます。ノリ網について酸処理剤が出ていくわけですけれども、それがどれぐらいにどう考えたらいいかということです。例えば、こっちから言いましょう。ノリ網サイズで、ノリ網の広さで50センチの水深があると、そういうノリ漁場というのはないわけですけれども、もっと実際には深いわけですけれども、そういうところで酸処理剤をやったとすると、4万ないし9万倍の水の中に使用量が広がってゆくということです。それから水深2ないし5メートル、これは実際のノリ漁業です。そこでのノリ網サイズの広さですと数十万倍、すなわち、20万倍から90万倍ぐらいの、これは深さがちょっとありますので、こういうような数字になる。これで1から10ppmぐらいの数字ですかね。それで、網内最大で瞬時にばっと測ったところでは 2,900倍という数字もある。それから20センチで最大6ppm、16.7万倍、これら幾つかいろいろな検討数値があります。
 こういうことを考えて、さっきの技術評価検討会では、5万倍というのはまずあり得ない高い濃度の数字として、このあたりでいろいろ実験をやれば、もう最大の最大だろうと。最大というか、範囲を超した数字でいいだろうということでいろいろな実験をしております。
 その結果としまして、5万倍希釈、 20ppmで30分、6時間──これは海底部への移行です。海底へ移行するかどうかということですが。これの濃度で30分、6時間接触させても、検出は不可であったと。それから2万倍希釈より高い濃度の 50ppm、微量クエン酸が検出された。それから 4,000倍希釈、250ppmより高い濃度で乳酸が認められた、この時間はいずれも、6時間です。
 それから、先日、NHKのテレビで佐賀大学の林先生の数字は、メスシリンダーの実験は200ppmで6日間で異臭が出たという数字であります。
 こういう数字というのは、実際には1ppmぐらいから瞬時に希釈されてゆくわけですから、そこからさらに拡散が始まるわけですから、水が行ったり来たりするにしても、なかなかあり得ない数字だと思います。実際には、更新率がどれぐらいあるか。その漁場というのは、水が行ったり来たりして更新率がどれくらいあるかというような実験をちょっと探したんですけれども、余りないんですけれども、1つ、佐賀の一番奥で小潮のときに 0.1という数字がありました。それから0.3という数字もありました。
  0.1というのは、極端なことを言えば、複利計算的に希釈されていくわけでしょうから、10日間で10倍近い値になるということですかね。10倍よりも下ということですね。次の日が 0.9ですから 1.9になるわけですね。さらにそれの 0.9を3日目に1に足してというような数字になっていくから、0.3になると、これはもう毎日使用していたとして、その日の3倍か4倍ぐらいの数字にしかならないということだと思います。
 そういう計算の仕方が正しいかどうか、僕、環境のことは専門じゃないのでよくわかりませんけれども、そういうような検討も、必要であるかと思います。
 酸処理と生物でございますけれども、アサリは 20ppmで6時間でも無影響。それからアサリの浮遊幼生は、半数致死量は 200から400ppm、24時間。それからアサリの稚貝が、これは 3,800から13,000ppmで落ちていますね。
 最後にちょっと飛ばさせていただきます。プランクトンの増殖量の変化ですけれども、これは平成12年から13年にかけての珪藻赤潮が出て、ノリが取れなかったときです。ご存じのように、プランクトンが増殖すると栄養塩が、リンとか窒素が落ちるということでございます。
 その年に効いたのがここです。これちょっと数字がずれてごめんなさい。11月の初めにどかっと雨が降って降水量があって、それからずっと日照りが続いて、それで12月の初めごろですか、11月の終わりごろにプランクトンがばっと増殖すると。堤先生もよくお話される、今日お話されると思うんですけれども、いったん日照りが続いていたときに雨がどっと降って、栄養がばっと供給された。それから日照りが続くと、何日ぶりかでばっとプランクトンが出てくるというのを毎年繰り返している。
 ただ、このときは、リゾソレニアというものすごい大きなプランクトンで大変な結果に結びついたんですけれども、毎年このころにプランクトンは出るわけです。ただ、小型のプランクトンが多くて、そいつらは大体1カ月ぐらい、ノリの採苗が終わるころに大体おさまると。次の年平成13年にはこれがなかったということでございます。これは豊作になりました。
 あと、これは皆さんの机にはないと思いますけれども、ノリをどうするかという話をちょっと書きました。10月の育苗期に出現する赤潮の問題対策をどうするか。これは育苗がさっき言いましたように、次の秋芽の育苗と、秋芽につなげてそのまま生産するのは、11月初旬の小潮を、葉っぱを大きくして摘んでしまうか、それから摘まないで小さいまま赤ぐされを逃れるか、その2つしかないわけですね。摘んでしまうというのは結構難しいです、それ以前に生長させるというのは。そうすると、秋芽用にはもうちょっと遅らせた方がいい。それから冷蔵庫に入れるには、そこまで待っているとちょっと厳しいものがあるので、冷蔵庫に入れるやつは先に種つけて、11月初旬の小潮の前に入庫してしまえということがあるんですけれども、果たして2つを使い分けができるか、採苗を2回できるかという問題がありますけれども、いずれにしても、こういう問題。
 それから今、2期に分けていますけれども、こういうものを分けないで、もっと遅らせて1期方式でやった方がいいのかと。量を減らして、いいものを取るにはもうちょっと採苗を遅らせて、それで1期方式でやっちゃった方がいいのかというのがあります。これは生産技術だけじゃなくて流通の問題もありまして、なかなかここで結論を出すのは難しい。
 それから、もう一つは短期入庫。本当に赤潮が来たぞと、それじゃ入庫するぞというようなマニュアルをきっちりしないと、生産者はどうしても入れないわけですね。もうちょっと、あしたまで、あさってまでと頑張るわけですね。なかなか水産試験場もそこまで指導できないということで、どうしてもタイミングをずらすということで、このあたりを論議する必要がある。
 それから、これは秋芽も一斉に入庫するような技術がいいんじゃないかと。長期目標としては、この時期の赤潮をなくすといい。それにはどういう方法がいいか。貝類の増殖なんかが具体的にはあるのかもしれません。
 それから、11月初旬の小潮ですね、さっきも言いましたが。それをどうするかが、当面今一番急がれているところだというふうに思います。
 以上でございます。

○須藤委員長 どうも鬼頭先生ありがとうございました。どうぞおかけください。
 それでは、10分足らずでありますが、ご質問いただきたいと思います。
 それでは、ただいまのご発表に対して、ご意見、ご質問ございましたらどうぞ。よろしいですか。我々は、意外にノリのことを十分承知していなかったと思います。何か伺いたいことなどございますか。
 私から余り質問するのはよろしくないんですけれども、先ほどから伺っていますと、酸処理と言われながらも、結構窒素だのリンだの加えて、あるいはアミノ酸を加えているわけですから、施肥という効果があるような気もするんですが、pHコントロールは意味がわかるんですけれども、あの場合、やはりどうしても施肥という立場で窒素、リンを加えているんですか。

○鬼頭委員 その辺が、いわゆるメーカーのノウハウにつながるようなところがありまして、この酸処理そのものは次長通達が一つぼんと出ていますんですけれども、すべてをコントロールしているわけじゃないわけですね。法律上どうのこうのに、水産用医薬品とか、そういうものは一切かかわっていないものですから、その中身をなかなかコントロールできていないということが1つあります。
 そういう背景の中で、何で窒素とかリンが入るのかというのは、これは売る側の1つのノウハウという部分もあります。それから、具体的には、ノリにそういう強いpHを与えますと赤くなると。そういうのを、栄養分があることによっておさまるんだという言い方をします。ただ、これはやはり学問的には余りよくわからないところでございまして。

○須藤委員長 先生からノリ養殖技術検討委員会のときにも伺ったんですが、先生がノリのご専門家としては、あの場合には、たしかpHコントロールは必要だけれども、必ずしも窒素やリンの添加は必要でないとおっしゃったような記憶もある。必ずしもそうではないんですか。

○鬼頭委員 そうはっきり言っていいかどうかわかりませんけれども、ここでバクテリアを殺したり、どうのこうのということに使っているのはpHだと、僕自身は考えていますけれども。

○須藤委員長 ありがとうございます。
 ほかよろしゅうございましょうか。
 どうぞ、相生先生。

○相生委員 この急激というか、1960年から65年にかけては、人工採苗技術、その糸状体の発見ということで、この時期、一応はやはり生産量はかなり上がったわけですか。4枚目のスライド。
 私が伺いたいのは、この60年代から70年代ですね。この時期に赤潮の発生とか、その周辺の海況変化というのは起きていたのかどうかということをちょっと伺いたいんですが。

○鬼頭委員 このあたりで、人工採苗あるいは冷凍網技術、そういう結構量産につながる技術がばっと出てきたことはたしかですね。それで、養殖施設そのものは、それよりちょっと前ぐらいで満杯になっていると思いますので、多分そういう量産技術ががっと出てきて、ぱっといかないのであれなんですけれども、酸処理技術が出てきたのが、さっき言いましたように昭和55年ぐらいですから、ちょっと前ですよね。そのころは、多分漁場が沖へ広がっていったときだと思います。要するに人工採苗ができて、どんどんどんどん支柱で、川っぷちだけじゃなくて、どんどんどんどん沖へ広がっていったころだと思いますけれども、日本全体的に。

○相生委員 そのときの周辺の海況に関しては。

○鬼頭委員 それは、今よりももちろん高度経済成長の時代の前ですかね、もっと前になるんですかね。そのころは多分──前、僕は、いつだと言われると困るんですけれども。有明なんかが、その漁期が始まるのが窒素の量が 300とか 300幾つのμg/Lで始まるわけですね。このごろは 200半ばのところで始まるので、以前は毎年ノリの開始時期にはかなりそういう富栄養化がずっと進んでいたことはたしかだと思います、今よりも窒素の量はですね。

○本城委員 今の質問で富栄養化について答えておかないといけないのは、昔から赤潮は出ていたのかということです。

○鬼頭委員 いや、それはないと思います。

○本城委員 第三者委員会のときに、50年間のまとめがありましたね。それで、横の方に影響を与えたプランクトン名が県毎にまとめてありましたね。あれを見ると、相当前から赤潮の発生はありますね、記録として。

○鬼頭委員 何年かと言われると、今ちょっと数字、僕はあれなんですけれども、先生覚えていますか。

○本城委員 いや、それぞれに不定期ですけれども、やはり発生し、被害の悪影響は出ているという印でプラスプラスが書いてありましたね。ですから、ノリの病気だけじゃなくて、赤潮はやはり出て被害を与えていることもあったんじゃないでしょうか、大分前から。

○鬼頭委員 ちょっと今定かなことを言えないので、ごめんなさい。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 では、簡単に清野先生、それから小松先生と続けて、お二人に先に質問いただいて、時間がきているから、お答えの方も簡単にお願いします。

○清野委員 酸処理と生物ということでのご検討データで、これはアサリと植物プランクトンについてはあるんだと思うんですけれども、それ以外というのはあるんでしょうか。

○鬼頭委員 以前の試験場のデータはたくさんあります。今日出したのは、この間の第三者委員会に報告した1年間のデータだけなものですから、それ以外の試験場が積み上げたデータは、平成7年の水産庁の報告にはたくさんあります。

○清野委員 それを求めて、生態系の影響というのは議論することも可能なわけですね。

○鬼頭委員 それは可能でしょうね。

○須藤委員長 尋ねればできると思いますね。
 小松先生、どうぞ。

○小松委員 初歩的な質問で申しわけないんですが、赤潮等を抑えるためには、ある程度栄養塩を抑えることも必要だと思うんですけれども、ノリはやはり栄養塩が必要だと。そうすると、健全な有明海を取り戻すためには、ノリの立場からいくとどうなんでしょうか。というのは、栄養塩の流入をある程度抑えて、ノリの養殖も量を少し最初から抑えるというようなことが必要なんでしょうか、どうなんでしょうか。

○鬼頭委員 有明海のノリはどう頑張ったって、幾ら柵数を減らして頑張ったって、さっき言いましたように、窒素量で 100μg/Lをきると、これはもうノリが取れなくなります。ぎりぎりのところが70μg/Lかもしれませんけれども。やはりそれぐらいはないと、ノリは製品にならないと思います。
 ですから、普通は 100から 200μg/Lぐらいあるような状態で、一番いいノリが取れてくるんだと思いますけれども。それぐらいあると、このごろは天気が続くとプランクトンがわっと出てくるということで、昔は出なかった、何でだろうという話がよくされるわけですね。確かに僕が有明を見に行ったころというか、九州へ転勤したころは、有明海では赤潮はないんだと試験場の皆さんがおっしゃっていましたけれども。

○須藤委員長 この辺の問題は、これからまた評価をしなくちゃいけませんので。また堤先生からのお話もあるかと思います。
 それでは、どうも鬼頭先生ありがとうございました。
 それでは続いて、堤先生にお願いをしたいと思います。先ほどご紹介させていただきました「富栄養化の進行していない有明海奥部海域で大規模な赤潮が起きるメカニズム」と題しまして、堤先生にお願いいたします。どうぞお願いいたします。

○堤教授 熊本県立大学の堤でございます。
 私は、大学院のころは、こちらの委員会の菊池先生の研究室で天草湾におりまして、ベントスの生態と、それから環境アセスメントの関係の技術のご指導を受けまして、今日に至っております。本日は、当委員会にお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
 そのベントスの生態で、特にアサリを最近研究しておりまして、その都合で、2000年のリゾソレニアの大ブレイクが起きたときに、熊本県の荒尾市の海岸でちょうどアサリの調査をしておりまして、色落ちしたノリを目の当たりにしまして、それから非常に大きなショックを受けまして、有明海の沖合いの方の赤潮に関してと、環境アセスメントのようなことの研究を本格的に始めてまいりました。
 したがいまして、私の経験としては2年半ほどの経験しかございませんが、それ以前には、有明の奥部の方には全く調査に行ったことはございませんで、こういう事態になるのなら、もっと早くから行っておくんだったというふうにちょっと後悔しているんですけれども。その2000年以降、非常に精力的に調査をしてまいりまして、その結果を今日はご紹介させていただきたいというふうに思います。
 手元の資料で、2001年度の調査分に関しましては既に論文に書いておりますので、資料にございます、そのとおりでございます。本日は2002年度の研究結果を、現在、論文執筆準備中のものをすべて持ってまいりまして、私、多分現場で調査している研究者としては、私は一番数の多い部類ではないかと思います。現場の有明海全域の調査を20回程度はこなしてきておりますので、その目でいろいろデータをとったもので、現在いろいろ一般に公表されているもののデータを見ますと、非常に納得のいかない部分がありまして、今日は非常に踏み込んだ話を、私にとっては、これだけの方の前で研究成果をご紹介させていただく機会というのは非常に稀有な機会でございますので、非常に踏み込んだ話をさせていただきたいと思います。そういう意味ではちょっと怖いんですが。あくまでも我々のデータをサイエンティフィックに突き詰めて考えたら、どんなことが見えてきたのかということをご紹介させていただきたいというふうに思います。
 タイトルは、この「富栄養化の進行していない有明海奥部海域で大規模な赤潮が発生するメカニズム」というタイトルをつけましたけれども、先ほどから議論にございましたが、赤潮は最近増えたのか、増えていないのかということですが、水産庁から提供されますデータの方には、私も国土交通省の八代海域の環境を論議する委員会の方の委員も仰せつかりまして、そこの中でもデータを見せていただいたんですが、発生件数なんですね。そうすると、大きい赤潮が起きても、小さい赤潮が起きても1件に扱われてしまいますので、そうではございませんで、赤潮規模指数というものを考えてみました。これは水産庁の九州漁業調整事務所から、毎年「九州海域の赤潮」という冊子が出されております。非常にしっかりした統計だと思いますけれども、赤潮が起きましたら、全部ナンバリングを各県打たれまして、最大面積がどこまで広がったかということですね、その面積と、それから継続が、何日から何日までどの海域で起きたというのがきちんと書かれております。
 その最大面積と継続日数を掛けますと、大きい赤潮が長期間続きますと、非常に大きい数になります。そういう面で、赤潮がどれだけ大きいものが起きたかというものをカウントし、1990年以降のデータをすべていただきまして、資料を当たってみました。そうしますと、夏場の──夏場といっても、4月から9月の暖かい時期に関しましては、90年に非常に大きなChattoneraの赤潮が起きていますけれども、98年当たりに随分高いピークが見えております。
 それから、ノリの問題となります10月から12月に関しましては、データはある意味では操作しておりますが、県別に記録がございますので、大体同じ時期に出て、同じ種類のものというのは、地域的に見てつながっているように見えるものはすべて合算しております。そうしますと、この90年以降に、最大面積が50平方キロメートル以上になった赤潮というのは、2001年までに10回起きております。その10回に関しまして、最大面積と継続日数を掛けた指数を計算しますと、こういうふうに非常に右肩上がりの数値になると。特に98年以降、非常に大きな赤潮が発生している。
 今年、2002年度に関しましても、佐賀の方で記録がありまして、 400平方キロメートルになったものが36日ありまして、それに関連したもので言いますと、このあたり1,500~1,600ぐらいの指数になるかというふうに思います。
 それだけ大きな赤潮が起きているということで、そうしますと、この海域に対しての栄養塩負荷量が多くなっているのか、減っているのかということを見てみますと、これは第三者委員会の報告書、行政対応特別研究のときのを引用しておりますので、そちらの方の関係でいただきましたので、その冊子をずって見ていますとデータが載っておりまして、これは流量年鑑からいただいたものであったというふうに思いますが。
 有明海に注ぐ1級河川の河川水の年間流入量をグラフにしてみますと、もとは数字ばかりの表でしたけれども、圧倒的に筑後川が多いということがわかります。1級河川ですと全体の47.4%。有明海奥部と我々申し上げていますけれども、本当は海図上で見ると有明海なんですね。有明海 1,700平方キロメートルといいますけれども、実際にはもっと狭くて、海図上は熊本県の荒尾市から長崎県の国見町、有明町ですか、その線上から北の部分が有明海で、それから南は島原湾になっているんですが、もはや島原湾というのは死語になっておりまして、有明海とこうなりますので、そのいわゆる海図上の有明海でいきますと全体の73.3%になるということです。
 ということは、筑後川からの流入水が有明海の奥部と我々が申し上げる、海図上の有明海の淡水流入のかなりの部分を占めているということがわかります。それに各河川の──この水質年鑑にもありました毎月のT-N、T-Pの値を乗じまして、これらの1級河川から有明海の中へ流入してくる窒素とリンの流入量を計算したものです。
 そうしますと、やはり2つの特徴があります。1つは、圧倒的に筑後川からの窒素、リン負荷が多いということです。ノリの色落ち問題で、諫早湾の干拓堤防からの排水というのが非常に注目が集まりましたけれども、本明川は有明海と比較すれば全く小川のような川にしか過ぎないと、流入は極めて少ないということが言えます。
 それからもう一つは、この20年間、1978年以降、窒素、リン負荷はむしろ減少傾向にあるぐらいでありまして、一向に富栄養化が進行している海域ではないと。にもかかわらず、先ほど示しましたように、赤潮の規模指数では非常に大きな赤潮が起きるようになっているというところが1つのポイントだというふうに考えられます。
 そこで、栄養塩負荷量には大きな変化はございません。ところが、98年以降、大規模な赤潮が毎年起きるような時期が発生していると。赤潮の海洋構造がどういうふうに変化したのかと。そのことに関して、一般の関心としては、まずこの諫早湾の干拓事業が関係しているのか、していないのか、何か影響は及ぼしているのかということが1つの大きなテーマとして考えられます。
 そこで、我々の研究グループでは、2001年8月から、本当は2001年4月から行ってきたんですが、いろいろな試行錯誤で調査定点を考えまして、とりあえず有明海を考えるには、この真ん中を押さえてみるということを考えました。このときは予算もございませんでしたので、船を1隻借りて、漁船で真ん中を、ただこの青いところを走るだけでございました。その後、少し研究費に余裕が出てまいりましたので、2002年4月からはもう1隻使いまして、D6からD1、F1からF6という横断面を同様に調査をしております。
 定期観測調査を基本的には月1回、場合によっては月2回調査をしておりますけれども、どういうときにやっていたかというと、我々は漁船で行いますので、風速が4メートルを超えますともう調査ができません。なので、行けるときに行くということでやっていたんですが、偶然にもアサリの調査を片方で研究をやっておりますので、アサリが大潮のときに非常に忙しくなります。1カ所ではなくて、数カ所同時に行っておりますので、我々実際に調査したのは、小潮のときがほとんどだという指摘を受けて調べてみると、実際にはこうでしたということなんです。それから風速は、少なくとも4メートル以下の風速が数日続かないと、我々は調査はできておりません。なので、そのときにとられたプロファイル、今からいろいろな水質のプロファイルを示しますけれども、それは風の影響を受けたものではないということをお断りしておきます。
 それからもう一つ、地元の熊本県民テレビというところが協力してくれまして、海の全体を見渡してみると。我々漁船で行きますと、ほんのその部分しか見えませんので、空撮を今まで5回ほど、ヘリコプターで全域を飛んで私も同乗させていただきまして空撮をして、それの空撮画像と、それからその前後の調査を入れまして、何か海の変化があるかということをとらえております。
 調査の方針としては精密にやるということを考えておりました。水深10メートルまでは1メートル間隔でCTDをとります。10メートルから海底までは2メートル間隔。これをしますと、1地点で大体10分から15分ぐらいかかります。しかも自動ローリングをしませんので、こういう沿岸域というのは、河川からの風の影響が非常に強いので、表層が非常に薄まりやすい。そういうときに、こういうプロファイラーですね、こういうものは大体メーカーは 0.5秒で反応するというふうに言うんです。確かに 0.5秒でデータを送ってきますけれども、実際には追随しません。それで、モニターでデータが安定するのを確認して、今までずっと同じ水深のところにプロファイルをキープしまして、それでずっと確実に測っていくということをしております。
 それから、栄養塩に関しましても、鉛直プロファイルをとるというのを1つの方針として、かなり大変なんですが、0、5、10、20、30、40メートルと、Bマイナス1メートルということで、できるだけ正確に採水をして、そして栄養塩を分析するということを行っております。
 その結果、どういうことがわかってきたかということなんですが、我々今まで3回ほど、2001年度と2002年度に関しましては、合計3回ほど規模の大きな赤潮を経験しております。基本的には、月1回調査をしておりますので、その間に小規模な赤潮が、継続日数の短い赤潮が起きている可能性は十分ございます。それに関しては小さな赤潮として我々無視しております。月1回の赤潮でも引っかかってくるような規模の大きな長期間継続する赤潮だけを今研究して、現実にノリとかの養殖に対してのインパクトを考えれば、これで十分だろうということで研究をしておりますけれども。
 この図は、クロロフィルaの鉛直プロファイルをとっております。向かって左側が有明海の一番奥の部分、向かって右側が熊本市の沖合いぐらいに相当します。
 赤潮の定義は、我々はこのクロロフィルa量で10μg/L以上のクロロフィルa濃度を赤潮というふうに定義しております。ここにこういうふうに赤潮のゾーンをつくっているんですけれども、2001年は、11月14日に全域で赤潮が起きております。こういうときの赤潮というのは非常に珪藻赤潮──キートセラス珪藻赤潮なんですけれども、ほとんど全域赤潮状態、全層において。ということは、有明海の水の全部が緑色に染まったというすごい増殖力を感じますけれども、リゾソレニアのもこういうような状況が発生したんじゃないかというふうに思いますが。
 しかし、幸いにも2週間程度で赤潮状態は終わっております。それでその後、赤潮は一切出ておりませんので、すぐに12月にはもうほとんど解消した状態がございますので、この年は、この後プランクトンの増殖というのは見られなかったので、ノリ養殖が大豊作になったということなんですが、実際には赤潮は起きていたということなんです。
 そのときに、一体どういうことが起きたかということを調べますと、まず塩分ですが、これはステーションA、B、C、Dと、奥の方のところなんですが、このA、B、Cで塩分がこのように 1.5ほど、海水表面の塩分ですが、下がっております。で見ますと、柳川市のデータですと、10月に 252ミリもの雨が降っております。これは平年の倍を超える雨。その雨が、柳川市ですから、ここに筑後川があって、矢部川があって、嘉瀬川がある。こういうところに大量の淡水が入りまして、塩分が低下して、そのときに、その前後に栄養塩がどんと上がっております。特に、これはアンモニアは入っておりませんけれども、基本的にアンモニアは非常に少ないので、無機の窒素の量というふうに、溶存態の無機窒素の量というふうに考えたいと思いますけれども、大体4倍ほどこういうふうに栄養塩が上がっております。
 これを使って、植物プランクトンはこの後、大体完璧に増殖するのはやはり1カ月ほど時間を要します。有明海全体で赤潮が起きてしまったということがわかります。秋の大雨の発生、それから大量の河川水が流入して栄養塩を運んできまして、栄養塩濃度が表層で急増するとします。大規模な赤潮が1カ月以内程度で発生する。これは非常に常識的な結論ではございますけれども、ところが一つだけ常識じゃないことがありました。
 これは、先ほどご紹介させていただきました「九州海域の赤潮」に掲載された赤潮に関して、1990年以降、最大面積が50平方キロメートル以上になった赤潮だけを抽出してまいりまして、その赤潮が発生する約30日前までの有明海沿岸4カ所の平均雨量をこちらにとっております。福岡県の大牟田市、柳川市、佐賀県の白石町、それから長崎県の諫早市の気象台の情報でまとめまして、こちらにそれらの平均雨量が出ております。赤潮が起きる前、どれだけ雨が降ったかということをあらわしております。それに対して、赤潮規模指数で、この「九州海域の赤潮」に掲載された指数を計算しますと、1997年まではこれぐらいの緑色の線の上に大体乗る程度の赤潮が発生したということです。それに対しまして、98年以降ですけれども、いずれもこの上に来ております。特にリゾソレニアが出たときには非常に長く滞留しましたので、存在しましたので、とんでもない値になっておりますが。
 いずれにしましても、同じ雨が降っても、確かに今まで赤潮は起きてまいりました。でも、すぐに、ある程度大事に至らないで、小規模なまま消えていたと。それが今は、この98年以降は、同じ雨が降っても、今までよりも2倍も3倍も4倍も大きい赤潮が発生しているという傾向が、この資料から見てとられるということがわかってまいりました。
 ここまでが論文に書かせていただいています結果なんですが、これから2002年の結果でございます。
 2002年は、2回大規模な赤潮が発生しております。これが、左側が塩分の鉛直プロファイル、右側がクロロフィルの鉛直プロファイルを示しておりますけれども、まず当然、梅雨で雨が降ってまいりますので、表層に非常に塩分の低下した層が発生いたします。そうしますと、そこで赤潮がこのように起きております。たしか珪藻類の赤潮だったと思いますが、Skeletonemaと、それからCeratium furca、これはいずれもそうですね。この赤潮がこちらでこういうふうに起きております。赤潮が有明海の奥から起きているということです、これが意味していることは。
 そのときに、当然栄養塩の流入というのが問題になりますけれども、ちょっとタイミングがずれましたが、一応非常に高いDINの値で見られております。57μg/L、これはノリで大体7とか10μg/Lとかなんですけれども、通常の大体5倍ぐらいの栄養塩が表層に入っています。これは筑後川の河口の先の沖合いに位置する地点ですけれども、こういうふうに入っているということがわかります。
 もう1回の赤潮は10月に発生いたしました。9月は、8月から9月にかけて、九州地方は台風が接近いたします。必ずしも九州に接近しなくても、沖縄あたりに台風がございますと、ちょうど北風が有明海に吹きまして、非常に荒れます。我々も8月、9月の調査というのは非常に難しいんですが、やっとその嵐がおさまっていったのが9月25日だったんですが、そのときには、もう鉛直プロファイルはもう極めて盛んに起きておりまして、上から下までほとんど塩分がありましたということになっておりますが。
 10月、11月、これが非常に私も理解できないんですが、なぜかしら、再びもう1回低い塩分の層がこちらに発生してまいりまして、これは夏ほどはございませんが、大体厚さが11月で3メートルほどになります。それぐらいの薄い層が起きまして、そこでGymnodium sanguineumという渦鞭毛藻類の赤潮を発見いたしまして、このときのクロロフィルは82.3μg/Lという非常に高い値になっています。現実に、非常に赤黒い海が発生しておりますけれども、このような層が、この低塩分のところで起きております。
 何で低塩分のところで起きるのかと申しますと、その前に、これは栄養塩のDIN、DIPの値を示したものですけれども、この低塩分化したところに非常に高い濃度の栄養塩が入っております。これは45μmol/L、これも先ほどの梅雨時と引けをとらないぐらいの高い量でございます。
 ただ不思議なことは、雨が降っていないということです。2001年は 200ミリを超える雨が降ったにもかかわらず、こちらは 100ミリぐらいしか降っておりません。むしろ少雨傾向と言われていた年に、なぜこういうところにこんな高い栄養塩が入っているのかというのは、非常に不思議でございます。実は今年も入っております。まだ今解析中ですが、非常に高い栄養塩濃度が10月に観測されております。同じように、10月は昨年にも増して雨が降りませんで、九州地方で1カ月に10数ミリしか雨が降っていない状況でございました。なのに、どうしてこういうものが入ってくるのか。
 実際には、陸上からの流入なのかということで、筑後川の方に週2回水をくみに行きまして、ずっと栄養塩を測っていたんですが、余りこういう高い値が出てまいりませんので、一体どこから来ているのかちょっと今のところわかっておりませんが。いずれにしても、この栄養塩が11月の段階で赤潮が発生した層で、全くこの赤潮が発生した層とオーバーラップしますので、使われましてかなり欠乏状態にございました。
 この水は、成層構造を起こしている水はどういうところかということで、もう少しこちらに臨時に操作手順も含めまして見てみましたら、大体ここがA1で一番右側に存在します、東側にありますね。この東側に薄いものがございます。ですので、かなりの部分は、やはり筑後川から入ってきた水だというふうに考えられます。
 2002年は、7月に大体 250ミリの雨が降りまして、10メートルぐらいの低塩分層ができまして、そこで珪藻類の赤潮。11月、12月に関しまして、月間 100ミリ程度の雨しか降っておりませんが、約3メートルの薄い低塩分層ができまして、そこでGymnodiumの赤潮が発生したということでございます。
 秋期の赤潮、2000年、2001年、2002年を比較しますと、これ3年とも赤潮が発生しております。2003年はもう下火になってまいりましたが、約1カ月半ほどGymnodiumの赤潮が発生しておりまして、毎年確かに赤潮が発生しております。赤潮が発生していますが、たまたまタイミングがちょっとだけ早かったために、ノリに影響を与えなくて、2001年の場合には大豊作になって、こちらは12月に引っかかっておりますので、かなり影響を与えてしまったというのが現実ではないかというふうに思われます。
 ということで、これからがちょっといろいろ難しい話をさせていただくんですが、これらのデータから、ノリの、いわゆる第三者委員会の最終報告書の内容を検討させていただきますと、ちょっと現実に我々がつかんだものとは違うことがここに書いてあるということです。
 特に、「有明海の環境」の3の「赤潮」というところなんですが、2001年は10月あたりに相当栄養塩供給があって、日射が続いて、11月に赤潮が発生したというふうにありますけれども、12月に入って大雨が降って、赤潮はいったん終息したとございます。現実には大雨は降っておりません。これが大牟田市の雨なんですが、12月は50ミリ程度しか雨は降っておりません。なので、赤潮はいったん終息したとありますが、少なくともこういうことで赤潮が起きていないと、終息したりしていないと。
 それから、1月、2月になって、日が長くなって日照が増えるので、栄養塩さえあれば赤潮が起きるというのは、ちょっと私としては納得のいかない話で、そうしますと、もうどの月でも赤潮が起きるということを肯定しているようなものでございまして、今まで1月、2月に至っては、赤潮はそういうふうなものが一体起きてきたのだろうかということなんですが。
 それから、2002年度は1月中旬まで目立った赤潮は発生しておらずということになっております。しかしながら、我々の研究では、2003年1月中旬まで赤潮が発生していないことになっておりますが、我々としては、ここで栄養塩が少雨で入ってきていないと言われていたものですが、実際には10月に栄養塩が入ってきておりまして、11月に赤潮が発生して、そのために栄養塩が枯渇してしまっているという、12月にはもう既に枯渇してしまっていたという状況が発生しているということがございます。
 なので、ノリが色落ちしたのは、この文章ではノリが使ってしまってそういうふうになったというふうにありますが、確かに、ここでノリ養殖を片方でやっていますから、それはそういうこともあるかもしれませんが、もう一つの原因として、赤潮は出ていたんだということをはっきりここで認識すべきではないかというふうに思います。
 ところが、この赤潮の発生に関しては、我々の研究グループ以外に明確に観測されたものがございません。ところが、九州漁業調整事務所の「九州海域の赤潮」には、赤潮が 400平方キロメートルで起きたということは記載されております。なので、ちょっとこの辺がデータが非常に錯綜しているなという感じがいたします。
 それからもう一つ、「有明海の環境」の2の「水質と底質」という前の方ですが、こちらも同じように、先ほど最初に紹介させていただきましたように、ほとんどデータが同じですから当然結論は同じなんですが、1980年以後しか連続的なデータがないが、どちらも窒素もリンも横ばい傾向であるということであれば、最後の方にシミュレーションのことが書いてあるんですが、5%、10%、20%の削減シミュレーションする必要はあったのだろうかということですね。富栄養化が進行していないのに、大型な赤潮が発生しているという現実と、このシミュレーションの削減モデルというのはちょっと話が一致しないのではないかというふうに思います。
 40%も削減してしまいましたら、40%削減しないと抑制効果は顕著でないということは考えておりますけれども、それは赤潮は発生しませんが、毎年ノリも色落ちしてしまうという現象が当然発生するはずです。
 したがいまして、問題なのは、なぜ栄養塩負荷量がむしろ減少傾向ぐらいの傾向があるにもかかわらず、大きな赤潮が起きるようになったかというところを解かないといけないということです。
 今、我々の研究でわかっているのは、表層水の低塩分化が起きていると、有明海の奥の方で起きていると。それは、そこへ筑後川からの栄養塩の流入があって、有明海の奥部の表層水で栄養塩濃度が急上昇して、これも筑後川かどうかというのも、秋の場合はちょっとよくわからなくなってまいりましたが、大規模な赤潮が発生しているということでございます。
 見てみますと、こういう表層に低塩分が起きたときに、奥部で赤潮が発生しているということです。これは、熊本県の荒尾市から諫早にかけての横断面を見たところですが、赤潮が発生しているときというのは、こういうふうに、この横断面で見ても薄い表層水が存在するということです。ということは、ここでもう薄いんですから、中は河川水が入ってくるのでもっと薄くなっているはずです。こういう薄い層が、この有明海の奥部全体に広がっているときに赤潮が起きているんだということです。
 1つだけ違ったプロファイルが見れたときがあります。それは、2002年4月28日と2002年5月13日のものでございますけれども、この薄いものが左側、いわゆる向かって左側、要するに西側の周辺に非常に偏っていて、特に西側には結構塩分の高い層が存在したということです。この1カ月間だけですが、これはもう一つのFラインと呼んでいますが、この熊本県の長洲町から長崎県の有明町の間のラインではもっと明確に出てまいりまして、こういうふうに薄い層が西側に偏っていまして、東側には非常に塩分の高いものがあります。この間には潮目が発生しておりました。
 ところが、6月8日になりまして、それが完全に崩れまして、非常に対照的な海洋構造が出ております。ここを我々非常に今注目をしているんですが、なかなかこの現象をとらえたのが我々のグループ以外はございませんので、なかなかうまく我々の思っている考えが伝わらないという現状なんですが。
 このときに、周辺の状況を調べてまいりますと、これは短期開門調査において開門操作を行っていたときにほぼ合致します。開門操作は4月24日から5月20日まで行われております。それに合わせて実は調査をやっていたんですが。我々、4月26日の調査のときには、既にこういう潮目が出ておりました。この期間にたまたま大雨が降っておりまして、梅雨のときと変わらないぐらいの雨が降っております。そのときの筑後川の流量を久留米市のデータで、これは国土交通省の筑後工事事務所のホームページにあります流量から計算したものですが、約5億トンの河川水がそこから流れています。もう一つ、農水省の短期開門調査のホームページにありました降水量から見ますと、そこでプラス1億トンが諫早湾から出ているという状況でございます。
 その後、この間はほとんど雨が降りませんで、5月20日から6月5日はほとんど雨が降りませんで、その次、6月5日から7月8日までが、同じようにまた 236ミリのほぼ同じような雨が降っております。そのときの流量が約3億トン。こちらの場合は締め切られておりましたので、もう開門操作は終わっておりますので、1けた少ない量しか出ておりませんが。
 いずれにしても、こちらの本格的な、梅雨よりもさらに上回る雨が、この淡水が有明海の奥部海域まで流入したはずなんですが、にもかかわらず、その水はこちら側に寄っているということですね。こちら側の場合、かなりの雨が降ったにもかかわらず、その後また 141ミリ降っていますので。しかしながら、全体に広がったような構造をしておりまして、赤潮がそのときに発生しているということがわかりました。
 これが空撮画像でございます。2002年4月26日の空撮画像なんですが、これが熊本県の三角半島であります。これは島原半島から見たものですが、こういうふうに2本の潮目がきれいに見てとることができます。これはずっと北上しますけれども、これが熊本県側から島原半島、雲仙普賢岳を見た方ですが、さらにこの潮目は続いております。潮目の距離は大体40キロ程度に及んでおります。非常に長い潮目で、このような潮目というのは、このときというか、この4月26日から5月19日、5月20日の調査までしか確認されておりません。ここを5月13日にちょうどここを横切って、塩分のプロファイルを取りますとこういう形になります。これが諫早湾の中から出てきた水というふうに考えております。それと外側にもう一つ、中間の少し黒く映っているところがありますが、これが有明海の中から出てきた、大雨が以前降っていましたので、少し薄まった水というふうに考えています。手前の部分が非常に塩分が高いんですが、これは外海から入ってきた水と。いわゆる半時計回りの水交換というのが、常識的なものが行われていたんじゃないかと思われます。
 ところが、その後、7月31日の空撮画像ですが、もう一つ前にあるんですが、なかなか天気が悪いとうまく映りませんものですから、これは一応晴れて見やすいので持ってきたんですが、このように潮目というものが全く同じ角度から見ても見当たりません。
 このデータをすべてまとめますと、こういうふうになります。我々はこういうラインで調査をしておりまして、空撮を2回、海洋観測をこの間に3回行っております。その結果を全部まとめて、現場の潮目のこういう結果と、潮目の見たものを合わせまして見ますと、こういうふうな形になります。雨が相当に降りまして、開門操作によって薄い水が入ってまいりまして、その薄い水が潮目をつくって、こういうような形で有明海の、特に湾奥の外まで突き出ていたというのが見ることができます。こうであれば、栄養塩が既に入ったものを含んだ淡水が流入して、塩分の薄い表層水をつくっても、それが外までうまく排出されている、そういうふうに見られたのがこの期間でございます。
 この後、6月5日、空撮が7日と7月31日となっています。あと6月5日と7月8日に海洋観測を行っておりますけれども、31日も海洋観測を行っております。そのときに見たものを総合しますとこういうデータになりますが、これでもう少しわかりやすくしますと、薄い水がこういうふうに存在していますので、赤潮がこういうところで起きているということになります。それで、低塩分化した表層水が有明海の奥部海域の内部に停滞して赤潮が発生しているということでございます。
 なので、これはまだ、たった1カ月しか見られた現象ではございませんけれども、その前に、まず海洋観測の結果からこういうことが、常識的な話ができますが、これに対して、この短期開門調査のときの開門操作のこのデータを足すと、こういうことがひょっとしたら関係しているかもしれないということですね。
 1997年4月に、潮受堤防を締め切って、それによって潮位変動と流速が非常に減少したというふうに言われております。それがどの程度かというのは、いろいろな今物理的な話もございますけれども、結果として何が起きたのかというと、筑後川から流入した淡水と移流と鉛直混合というのが低下してしまって、結局薄い成層が低塩分化した。この有明海の表層水の低塩分化ということを、このことが助長しているんじゃないかと。そのことによって、非常に大きな赤潮が98年以降起きるようになっているんじゃないかということですね。
 これを確かめるすべとしては、もう一度開門操作を行っていただいて、1年間ぐらい開けていただいて、それでこういうことが、実際に大量の雨が降ったときにどうなるかということを試してみないと、これは絶対にわからないと。あくまでも我々1カ月しか見ていない現象でございますので、それほど強く言えるほどの確証もございません。だけれども、可能性としては、非常に大きな可能性が、短期開門調査から見えてくるんだということはあります。絵であらわしますと、こういうふうに停滞して、その間に赤潮に発展してしまうということですね。もう一度ここを開けて、できれば半年、1年ぐらい開けていただいて、1回大雨を経験して、そのときにこういう諫早湾の中だけじゃなくて、有明海の全域を押さえるような調査をちゃんと行っておいて、こういう現象が起きるのか、起きないか。起きなければ、これは諫早湾の締め切りとは全く関係のない話だろうという考えになりますし、これをやらないと、いつまでたっても堂々巡りの議論がなされていくのではないかというふうに私は思います。
 それから、これまでの調査・研究の問題点として、いろいろ周りのデータを見ていますけれども、1つは、やはりノリの養殖の問題が起きたときに、調整池の水質に余りに目がいってしまい過ぎたのではないかと、排水とかにですね。ところが、現実の栄養塩負荷はどこから起きているかというと、これは筑後川ということなんですね。筑後川と諫早湾との関係というのを考える必要があると。
 我々がステーションAとしておりますポイントは、ちょうどその中間ポイントにありまして、そこを今我々は注目しているんですけれども、そういうところで一体何が起きるのか。実際に赤潮が起きるところもそういうところなんですね。なので、そこら辺をまず見る必要があるということです。
 それから、浅海定線調査というのを4県の水試によって手分けして行っておりますけれども、これは調査定点の配置が非常に問題だということですね。真ん中が少ないんです、それでへりが多い。これは、そもそもこれで有明海のこういうノリの問題のための調査として組まれた調査であるのかどうかということですね。そこに無理がもともとあるんじゃないかということです。この問題を扱うための調査としては、我々のようなデザインで、もう少し広域的にやる調査を行わないといけないんじゃないか。だから、ここにそういうことを求めること自体が無理なことではないのかというふうな気がします。これはあくまでも漁場調査ではないかと私は思います。
 そういう目で見ると、調査精度が、確かに我々がやるようなものに対して随分悪い。鉛直プロファイルをとっておりません。公式に調べられているものは、表面と5メートルとBマイナス1メートルですので、鉛直プロファイルはわかりません。それからプランクトン沈殿量というものを使っています。これは私知りませんでした、こういうものがあるというのは。植物プランクトンを押さえるためには、これはクロロフィルaでやっていかないと、プランクトン沈殿量の場合は、特に小さな渦鞭毛藻類の赤潮なんかはほとんど引っかかってこないと思います。なので、だからこそ、第三者委員会の報告の中でも、2003年の1月半ばまで目立った赤潮は起きなかったという表現がなされていたのはこういうことで、渦鞭毛藻類のプランクトン発生というのが見落とされていた結果、そういうことになっているんじゃないかというふうに思います。
 それからもう一つ、余り浅海定線調査の問題点を指摘するというか、それが悪いということではないんですが、これはもともと、だからそういうものに用いること自体が無理があるんじゃないかと。だから、別の調査経緯を踏まないといけないのではないかというのが一番言いたいことなんですが。大潮の満潮時前後2時間程度で大体行われているというふうに伺いました。
 そうしますと、これはちょっと調査視点が違いますが、社団法人日本水産資源保護協会の四本鋼管というところにおいての連続の塩分のロボットが置かれておりまして、それが毎時ホームページで公開されております。そのデータをずっと私どもで記録しておったんですが、そういうものですが、2000年12月から2002年度ちょっと欠けていますが、11月頭までのデータですが、塩分は確かにいろいろと変わります。これが大潮のとき、これが小潮のときですが、こういう大潮のときにとると、要するに海水が中へ一番入ったときのものをとっておりますので、どうしても高い塩分のデータがとれてしまうということですね。
 問題は、低塩分のものがある程度あって、そこへ赤潮が来て、そこに栄養塩も入ってくるというのが、一番奥に押し戻されたときにとれるデータであると。それに対して、ある意味では偶然なんですが、我々は小潮のときに調査していましたので、大体この辺の余り変動のないところで、例えばの例ですが、調査をしていることになります。むしろこういうときの方のデータの方が、平均的な姿というのを割と出しているのではないかというふうに考えられます。
 それから、鉛直プロファイルが非常に重要だということですね。0、5、10メートル、Bマイナス1メートルといきますと、たまたまこういう表層に赤潮のプランクトンがあればいいんですが、結構2メートル、3メートル下のところに、特に秋は余り成層はそれほど大きく発達しませんので、こういうところに赤潮があって、今年もそうなんですが。そういうときには全く見逃してしまう可能性があると。
 それから、塩分の鉛直プロファイルに関しましても、これで3点で平均塩分を出すと、絶対に高い方に寄ってしまいます。こういう成層構造を起こしている、これが水深に対して比例的に塩分が増加していきませんので、これで平均の塩分を求めることができないということです。そうしたときに、これは柳、阿部、2003年のデータなんですが、これはたしか資料にございませんが、河川水の平均滞留時間というのを、最近むしろ有明海の外海の海水交換がよくなってきているというふうに報告がされております。我々が滞留しているということと非常に矛盾したことを言うことになりますが、これは解釈の違いでございまして、この柳、阿部の論文はここを考えているんですね、海水交換というのはここを考えているわけです。 1,700平方キロメートルのここで考えているので、現実に赤潮が起きているのはこの海域なわけですね。そうすると、海水交換というのは、フェリーが行き来しています熊本県長洲町と長崎県国見町の間のこのラインでの平均を出さないといけない。そういう面では、点が3つしかございません。こちらに10点がございますので、こちらで、そこに表層で少し変化が起きたとしても、こちらで大きく平均してしまいますと薄められてしまいますので、多分これは大きな意味を持った論文ではないんじゃないかというふうに思います。
 その証拠として、河川流量を横にとって、縦に平均滞留時間をとりますと、2000年はちょうどこの点になります。ということは、この両方が意味しているのは、雨が多く降ると、どうしても有明海の奥の方が水位が上がります。そうすると、密度流が発生しまして海水交換がある意味では促進されると。そういう平均滞留時間と河川流量との間にその相関関係があるという、非常に教科書的なお話をされているだけじゃないかというふうに思います。
 それからもう一つは、これはある意味では、私としては非常にいい材料として紹介させていただけるのは、ノリの養殖問題で考えなくちゃいけない赤潮は98年以降だと思うんですね。だから、98年以降に何が起きたのかということをいろいろと計算されていますと、98年以降とその前と比べるとほとんど変化がないと。
 それから、90年と95年のデータを比べて、こちらの方が成層を起こしていると。同じだけの雨が降ったのに、こちらの成層が非常にきついというふうに言われていますが、問題なのは98年以降ですので、90年と95年を比べても余り意味がないと。この年は集中豪雨の年でして、相当に雨が集中して降ったので、多分そういう成層を起こしたデータがとられていたんじゃないかと思います。
 しかも問題としないといけないのは、この問題ということです。浅海定線調査では、これだけのことに3点しか点がないということで、非常にこの値も少しあいまいになっておりますけれども。ということで、この問題をノリの養殖に関しての海洋観測をするのであれば、かなりの精密な海洋観測をやっていかないと、非常に大きなものを見逃してしまうのではないかというふうに思います。
 それから、最後に紹介させていただきたいんですが、我々今GPS、DOPAというNTTのシステムをつけまして、こういうブイに発信機を流す実験を行っております。熊本の保健科学大学の高橋さんという方と私どもの共同研究で今行っておりますが、今ちょうどデータをあてはめているところなんですが、非常に驚いた結果が1つだけ出ておりまして、青がスタートポイントで赤がエンドポイントです。3日間ですが、こういうふうに横に置いたものがどこへ行ったかというと三池港に来ております。こちらも1回、大牟田市の方に来ております。条件によっては、諫早の水が実は横渡りをしてしまうという、表層に関してこういう現象が見られると。これもう一度やっても、これも同じような結果が出ておりまして、条件によっては、やはりここがかなりぐるぐるぐるぐる回っているような海流があるんじゃないかと。これは風の方も見ておりますが、風速2メートル以下の条件でこういうことが起きておりますので、ほとんど風の影響はないというふうに考えています。
 したがいまして、かなりシミュレーションの方も、現実のデータをうまくとりながらやらないと、非常に大きな間違いをしてしまうのではないかというふうに思います。
 以上でございます。ありがとうございました。

○須藤委員長 どうも堤先生、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの堤先生のご発表に対して、何かご質問やら、ご意見ございますでしょうか。
 清水先生、どうぞ。

○清水委員 貴重な現場の情報をたくさんいただきまして、ありがとうございました。それから、ノリ不作の委員会の報告書に関してもご指摘をいただいて、これもありがとうございました。
 それぞれに関して事実関係、その他、質問はいっぱいあるし、きちんと報告書に関してはお答えをしなければいけないこともあろうかと思うんですが、今日は時間が限られておりますので、それはまた別途、先生に書面ででもお願いをすることにいたしまして、1つだけ伺いたいのは、「富栄養化の進行していない」という枕詞がついているわけですけれども、今の有明海は富栄養化していないのかどうか。それとも、進行していない方に力点があるのかどうか。これは委員会の報告書にも引用してございますけれども、佐賀の、先生は余り重きを置かないかもしれませんが、浅海定線調査のものでもってCOD、これは最初西海区水研がまとめて、この30年ぐらいだんだん上がってきているというようなものもありますし、それを少しきちんと見ますと、70年代に増えて、80年代にはかなりそれが増えて、90年代には横ばいから微減というようなことの見方もできるかという、そういう変化も実はあるわけですね。
 そういうことを踏まえた上で、現在の有明海が富栄養化しているかどうかということと、進行していないと言えるのかどうかということについて教えていただきたいんですが。

○堤教授 富栄養化していないというタイトルを使いましたけれども、現実には、ある限られた層では極めて富栄養化状態が発生しているわけですね。これが事の不一致ではないかというふうに今思っております。マスバランスからいくと、窒素、リンの流入量というのはそれほど大きく変わっていないと。それは人口もむしろ減少傾向ですし、あの一帯は減反も行っておりますので農地も少なくなっている。それで大きく富栄養化が確かに進行する社会的ファクターはないわけです。
 現実に起きているのは、ああいうふうに成層構造を起こして、そこへ集中して栄養塩が入ると。そうすると、50μmol/Lという非常に高い値が出る。これは表層において、非常に富栄養化状態がつくられているわけですね。なので、この低塩分の成層構造が発生するということが一つの大きな問題ではないかというふうに思っております。

○清水委員 ちょっとすみません、追加で。
 今私が伺ったのは、どのくらいの時間のスパンでお考えかという。今の先生のやつは、割と最近の話ですね、つくられているというのは。私が先ほど申し上げたのは、30年とか40年とかもっと長いスパンの話なんですが。

○堤教授 栄養塩のデータに関しましては、我々入手できますので、水質面ではございませんので、それは20年ほど分しかございませんね。我々がこういうふうに精密に海洋を観測したのは数年分しかございませんので、その範疇で考えたらということでございます。

○須藤委員長 よろしいですか。
 ほかいかがでしょうか。
 本城先生。

○本城委員 精力的に調査をなさって、赤潮の解析をされているわけですけれども、僕は、先生のお話で、低塩分の層があって、そこに赤潮が出るんだというような状況であれば、小型の珪藻の赤潮の一般的な発生パターンの話をなさっているように思うんですね。有明海には、小型の珪藻赤潮、それから大型の珪藻赤潮、それからギムノディニウム・サンギニアム(これは最近名前が変わってアカシオ・サンギニア)などが発生していて、それぞれ別個に考えて、それぞれの種特性と発生のための環境を比較し、当て込みながら話をしないと、解釈が困難で、話が混乱してくると思うんですね。先生のおっしゃっている赤潮は、恐らく小型のスケレトネマやキートセロスの赤潮にはうなづけるところがありますので、今後は種別に分けてデータを解析なさるといいと思います。
 それにプラスして大事なことは、漁師さんがおっしゃっている、雨が降って天気が回復し日照りが続くと赤潮になる、この日照の条件が今回の解析の中に入っていない。ぜひ入れて解析なさると、その小型の珪藻の赤潮のメカニズムを恐らく皆さんにはっきりと示すことができるんじゃないかと思いました。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 何かお答えあるんですか。

○堤教授 実は、光量子計は常にセンサーにつけておりまして、光量子計のデータは全部とっています。

○本城委員 ですから、そこを解析なさって……。

○堤教授 それで、まだそれを生かし切れていない状況がありますけれども、もう一つは、やはり赤潮が起きるからには、絶対に窒素とリンが必要だろうという……。

○本城委員 だから、それは河川から入ってきて塩分を低下させて、そこまではいいわけです。光合成をやはりしていて生長していますので、もう一つ照度という要因を入れて解析すれば、し恐らく小型の珪藻の赤潮の発生メカニズムをきちっと説明することができるであろうというふうに思います。そこら辺の解析をお願いしたいと。

○須藤委員長 では、ありがとうございました。コメントとして、それは受けとめていただきたいと思います。
 ほかよろしいですか。2人いるから、細川先生と小松先生どうぞ、続いて。

○細川委員 聞き漏らしたかもしれないのですが、開門調査のときと、それから後のときとで、潮目のでき方が違うとか、成層のでき方が違うというデータを示していただいたんですが、これらのデータはすべて小潮のときの比較なんでしょうか。あるいは大潮のときも同じような成層というのはできているんでしょうか。聞き漏らしたかもしれないので。

○堤教授 開門調査の期間は、大潮のときにも調査をやっております。同じように、長い潮目ができているのを確認しております。潮時には関係ないということですね。
 それから、開門調査が終わったら、そういうものはほとんど、その後ずっと、時期的に春にそういうものが起きるかということで、この春もずっとそれを注目してまいりましたけれども、それ以後、1年半ほどたちますが、ああいう40キロに及ぶような明確な潮目というのは一度も観測されておりません。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 それでは、小松先生、簡潔にお願いいたします。

○小松委員 先生が模式的に示された筑後川、それから諫早湾から出てくる水が島原沖をずっと流れていくというのと、それから多比良-長洲ライン上でもうわっと広がっていてという2つのパターンですね。
 これは私、流れをやっていて、諫早湾から水が供給されたり、筑後川から供給された初期は島原半島に沿って流れていくと。ところが、しばらく時間がたつと、上げ潮等でまた元に戻ったりするのを経て、大潮等を経て、そして全体的に成層化するというような、いわゆる淡水の供給と、それからの時間の経過の長さによってパターンが違ってくるのではないかなというふうに思っているんですね。
 それで、ブイを流したときに妙な動き方をしたと。あれは多分、全体に成層しているときじゃないかなというふうに思うんですが、その辺いかがですか。

○堤教授 おっしゃるとおり、成層しているときの8月6日ですね。まだ梅雨の今年の雨が抜け切らないときの動きでございます。何せその1カ月の間しか、あるいはその数度しか観測していない現象でございまして、その後二度とあらわれていない現象なので、これが本当にどういう意味を持つのかというのは、最終的には我々もわからないわけです。
 だけれども、その制約の中で考えると、先ほど申し上げました開門との関係というのが1つ考えられると。なので、農水省の方の中・長期開門調査検討委員会の方でもお話しさせていただく機会がございましたけれども、もしも、そういう開門調査をやったらどういうことがわかるのかということを述べてくださいというふうに、説明してくださいと言われたんですが、そういう、いわゆるそこの現象が起きる、起きないということを確認する。そのことによって、諫早湾の干拓事業と赤潮発生との因果関係があるのか、ないのかということが明確になるというふうに申し上げた次第でございます。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 それでは先生、まだこの最近の調査と、それからこれからも調査を続けられて、私どもとしても大変先生の調査にも期待できるし、またちょっと今までのいろいろ言われていたのと意見の違う部分というのが確かにございましたというのは、私もそう思いました。特に奥部のところ、先生が富栄養化していないと言われているのはあれですよね、窒素、リンの負荷量が減っているという、そういう意味ですよね。

○堤教授 減っているか、横ばい。

○須藤委員長 横ばいですね。だけれども、富栄養化というのは、一般には有機物の生産をする、要するに窒素、リンを使って生産することを富栄養化というわけですから、そういう意味で赤潮が出るというのは富栄養化が進行していると、こういう解釈にはなるわけですよね。栄養塩が減っているということは、確かにそうなのかもしれませんけれども。

○堤教授 量が大して変化していないと言った方が……。

○須藤委員長 そういう意味ですね。その方が私は妥当だと思います。富栄養化というのは、やはりあくまでも有機物が生産されるという意味だろうと思いますので。
 ということで、一応先生のお話は、窒素、リンの負荷量が減っているのにもかかわらず、赤潮が発生したと、こう理解してよろしゅうございますね。どうもありがとうございました。
 それでは、またいろいろ、先ほど清水先生もおっしゃっておられたんだけれども、もしいろいろ食い違う点やら何やらございましたら、ちょっとメモ等をいただければ、特に第三者委員会の問題については、清水先生がお答えくださるかもしれませんので、それはぜひそうしていただきたいと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。
 それでは、ちょっと時間が過ぎておりますので、あの時計で10分過ぎまで休みましょう。4時10分過ぎまで休憩にさせていただきます。

○須藤委員長 それでは、時間が参りましたので再開させていただきたいと思います。
 磯部先生には、大変ご多用の中を、その合間にご出席いただくようなことを無理にお願いいたしまして、大変恐縮いたしております。
 それでは、磯部先生から、「有明海における水質変動の支配要因」と題して、ご発表をお願いしたいと思います。
 磯部先生、どうぞ。

○磯部教授 ご紹介いただきました磯部です。
 ただいまご紹介いただきましたタイトルが「有明海における水質変動の支配要因」となっていますが、これは事前にお送りした資料で論文が2つ入っていまして、それの1つ目の、今年発表する方の論文のタイトルでこうなっているということですが、私のお話自体は、「連続観測による有明海水環境の現状」というような、こんなことになろうかと思います。そんなに実質変わっているわけではありませんで、これ9月の終わりに海洋学会でシンポジウムがありまして、そのときにもお話をした内容とほぼ同じということでお話をさせていただきたいと思います。
 中味は、今、堤先生のご発表も、私途中からですが伺ったのですが、堤先生は有明海全体を大変広く測定をされていて、平面的あるいは空間的な分布が非常によくわかるデータを見せていただいたわけですが、私の方は、実は有明海でたった1点でして、このB6という地点なんですが、農水省のご協力もいただいて、ここに写真にありますような観測棟が立っている。この観測棟が立っているので、ここで観測をしてみようということで、この問題が起こってからなので、対応は対処療法的な──療法じゃないんですが、問題が起こって、2001年の7月初めぐらいから観測をしてきたという結果についてご報告をし、そこからどんなことが考えられるだろうかというお話をしたいと思います。
 違いは、実はここ私たち1点なものですから、観測機器を入れて、これを連続的に観測をしているということで、実際には10分に1回のデータで水温、塩分などをとっているということなので、そこが、例えば1ヶ月毎とかという間隔を置いた調査とはちょっと違っていて、実際にどういうふうに動きがあるのか、動態についてある程度議論ができるというところが私たちの観測の特徴ということです。
 やりましたここの測定点ですが、大体水深が平均で17メートルぐらいのところで、観測をしたのが水温、塩分、これについては海底面上 0.5メートル、5メートル、10メートル。それから表層近くの海面から 0.5メートルぐらいのところということで、大体三等分、点の両方の端を含めて4点について、塩分と水温を測り続けたということと、それからクロロフィルa・濁度については表層で測ったということ、それから溶存酸素については海底上のところ、底層と、それから海面近くの表層のところで測ったということで、この辺のことを連続観測をしています。
 それから、必要に応じて、農村振興局あるいは九州農政局で測られているようなデータについても見せていただいて、参考にさせていただいたと。これは栄養塩や植物プランクトンの種類とか、そんなものについて見せていただいているということです。
 私たちがやったのは、この赤い印のB6なんですが、2002年からは九州農政局の方でS1、B3、B4地点について自動昇降装置をつけて、私たちのように4点というようなことじゃなくて、鉛直方向に連続して、しかも時間的にも連続してデータをとっておられるということでもありますし、こういう地点については、週に1回とかという頻度で水質の観測をやっているということです。私は、ここでとれたデータについてご紹介をし、お話をしたいと思います。
 最初に、どんなデータがとれたかということなんですが、ここに示しました図は、水温、それからクロロフィルa、それから溶存酸素について、これはたまたまどんなデータということで2001年のデータを示していますが、例えば水温でいえば、ちょうど2001年は非常に暑い夏だったのをご記憶になっておられるかと思います。非常に暑い夏で、表層の方が水温が上がっていますが、底層とは水温が随分変わっていて成層化している。特に途中のところが、潮の干満によって表層とほぼ同じ温度になってみたり、それから底層とほぼ同じ温度になってみたりということで、ここできれいな温度躍層ができているというのが見えるかと思います。そういう躍層のできているような状況で、赤潮の関連についても、クロロフィルa濃度が時々非常に高いレベルに上がったというのも出てきましたし、それから溶存酸素については、それに対応して溶存酸素濃度が下がる、貧酸素化するというような現象も見えてきましたので、これについて少し詳しく見ていこうということです。
 これは、2001年の7月3日から9月1日、夏だけですが、短波放射、日射と、それから降雨量を一番上のグラフでプロットし、そしてその次のグラフには、クロロフィルaの濃度をプロットしているわけですが、この辺のところでクロロフィルa濃度が上がって、赤潮状態が見られたということになります。
 そして、じゃそれがどんなときに起きるのかというのを考察できるのが、この連続観測のいいところであるということで見ていきますが、1つは、クロロフィルa濃度が上がるという状況というのは、短波放射、日射量で見ますと、日射量がちょうど上がっているところと対応して赤潮状態に近い。クロロフィルa濃度が上がっているということです。
 もう一つは、先ほどの堤先生のお話にも出てくるわけですし、常識的な話として、じゃ栄養塩はどうなっているのかということですが、実は栄養塩については週1回のデータしかないし、連続的なデータがないし、私たちのデータでもないということで、それじゃということで、先ほども堤先生からお話出ましたが、塩分濃度、それを代用するということを考えました。それは、いずれにしても、栄養塩が河川から運び込まれるということですから、塩分濃度が下がっているときというのは、淡水が入っているということと同時に栄養塩もその中に入っているんだろうという仮定のもとで、B6地点の塩分濃度と、それと同じときにちょうどデータとして九州農政局で測られたものをお借りして、縦軸と横軸にプロットしたと。
 そうしますと、これは、縦軸は全窒素、T-Nでプロットをしていますが、塩分濃度が海水からだんだん淡水が増えてきて下がると同時に、全窒素も増えているという関係がありますので、恐らく塩分濃度が低いことイコール栄養塩の高いことというふうに見ていいのだろうということで、そういう仮定をしまして、下に塩分濃度が書いてありますが、それとの関係を見たということです。
 そうしますと、降雨がありまして、その降雨に対応して河川から出水がある。それによって、このB6地点ですが、塩分濃度が下がるというところまで見えますし、それから、さらにそれに対応して、それは栄養塩が供給されたことであるというふうに考えると、ここの○をつけた赤潮状態になったときというのは、栄養塩も供給され、日射も高かったというようなことで、先ほど本城先生から、これは珪藻赤潮であるというご指摘もあったわけですが、その辺のところについては見えてきそうだということがあります。
 実はその後は、クロロフィルa濃度にすると大したことはないんですが、先ほどのご指摘の関連で言いますと、この後は、植物プランクトンの組成を見ていくと、ここからは渦鞭毛藻が増えていくというようなことが総体的はあります、量としては大したことはないということです。ですから、私のお話は主に珪藻類の話であるというふうにごらんいただければと思います。
 そんな赤潮が起こった後で、有機物が分解されて貧酸素化するという、そのシナリオなんですが、そこら辺がどうなっているかというのを見たのがこれでして、先ほど見た赤潮状態に近かったときから、一番下が溶存酸素濃度をあらわしていまして、溶存酸素濃度が低いところが何カ所かあると。それが赤潮の起こった何日か後、数日後に見えているようだというふうには見えます。
 ただ、これは植物プランクトンがこれだけ早く分解されるのかという問題は、一つ大きな問題として残りますし、それから赤潮が出ているときというのは、余り強い風が吹いていなくて、天気がよくて、成層化が非常に強いときですから、そのときに底層で溶存酸素が使われるということによって貧酸素化が起きるという可能性も、当然有力な話としてはまだまだ残ってくる話だというふうには思っていますが、現象として、こんな数日遅れというようなことがよく見られると。
 それからもう一つは見られないのがありまして、ここで溶存酸素濃度が下がっていますが、これが余り目に見えた赤潮とは対応していないというような、そんなものも見えてきます。
 ただ、そんな貧酸素化をするということと、それから大潮、小潮という潮汐との関係がいろいろ言われるわけです。第三者委員会なんかでも議論をしたときに、大牟田などでは、大潮のときは貧酸素水塊というのは形成されないので、小潮のときに形成されるというようなことがありました。
 実は、それは水深が10メートル以下ぐらいのところで、今回やったところはB6という地点で水深17メートルということがありまして、この辺を見ていただくとわかるんですが、大潮であっても、やはり貧酸素化してくるという傾向は見えると思います。
 もう一つは、ただ定量的にというほどではないですが、ここでの貧酸素化と、ここでの貧酸素化を比べると、そこに起こっている赤潮の強度、これは有機物の供給そのものか、あるいは気象状態の状況なのかはわかりませんが、それにしても、この規模に対して、こちらの方がより貧酸素化の程度が激しく、こちらはそれほどでもないというふうに見えるのは、やはり大潮、小潮という潮流が効いているということもあると思います。ただ、大潮だと形成されないというのはそうではなくて、大潮でもやはり貧酸素化はするということではないかというふうに見えます。
 そんなところを見たところで残ったのが、ここの余り赤潮と関係ない貧酸素化なんですが、これは見てみますと、2002年という、今お見せしたグラフからは次の年で、比較的夏が余り暑くなかったときで、余り赤潮も起きなかったときですが、それを見ても、やはりお話ししたさっきの赤潮までの傾向も含めて、全体はほぼ同じようなことが見えるということで、雨が降って栄養塩が供給され、そして実はここだけちょっと私悩んでいまして、日射が余り高くないんですが、これは佐賀の日射を書いてあるので、そんなこともあろうかと思います。
 ほかについて言えば、雨が降って栄養塩が供給されて、日射が高いレベル、具体的には、10MJ/m2・dayから20MJ/m2・dayぐらいのレベルで何日か続きますと、3、4日ぐらい続きますと赤潮状態になる。それに遅れること数日して、貧酸素水塊が形成されるというところが見えるかと思います。
 ところが、前年と同じように、またここでも明らかな赤潮というのとはちょっと違うところの後で、貧酸素水塊が形成されるというのも見えてきています。これは何だというのが、実はデータがありませんので、東京湾でやった流れの観測データを準用して考察をしていったわけですが、それは東京湾で、例えば北向きの風が吹いたときに、表層近くですと、北向きの風ですから、それに引っ張られて吹送流が起こる。吹送流が起こりますと、北半球なのでコリオリ力が進行方向右側に働きますから、それによるエクマン輸送が生じて、流れが東京港寄りに寄ってくると。その寄ってくる流れができる反流として、それを補償するように、底層を見ていくと、それを補償するような逆向きの流れができるということで、風がこっち向きにいったときは、表層では右側に寄せられて、底層ではそれを補償するように左向きに流れが起きるというようなメカニズムが力学的なメカニズムとしてありますので、それなんかを見てみると、ちょうどここでは、この場合は南西の風が吹きまして、南西の風によって熊本側にエクマン輸送が起こって、そして底層では諫早湾寄りといいますか、B6地点寄りに底層水が寄ってきて、貧酸素水塊がこういうふうに見られたのではないかというふうに考えているところです。
 そこで、大体雨が降って栄養塩が供給されたところで日射が高くて赤潮が起こり、その後、貧酸素水塊が形成されるというあたりは、1点の観測ではありますが、ある程度見えてきたのではないかということで、それでは、今度は1点ではなくて、分布としてどうなっているかというのを見てみたいということで、これはデータをお借りして、底層のDO分布として書いたものです。
 そうしますと、この8月6日というのは、直前にお見せした南西の風が吹いた──吹いたといっても連吹した、吹き続けた後なんですが、そのときにちょうど有明海のメインのところが諫早湾に底層水が入ってきたとすると、この辺のところに貧酸素水塊がたまるということで、この辺の溶存酸素濃度が下がるということで見て矛盾しないのではないかというふうに見てとれます。
 また、さらに分布なんですが、2002年の7月の状況で、それじゃ赤潮の分布というものがどうなるかというものを見る参考として、DOと、それから塩分濃度を断面について書いてみました。
 そうしますと、ちょうどDOの高いところというのが、この辺の潮受堤防の前のところと、それから諫早湾の湾口のあたり、この2カ所に見られると。この2つは、DOが高いというのは明らかに植物プランクトンが増殖をして光合成が行われているというふうに見ていいと思いますし、それは下の塩分濃度で見ますと、塩分濃度が低いところということで、これが栄養塩が供給されているというのに対応しているだろうということで、分布から見ても、先ほどのようなことが、もともと原理としては当たり前の話ですが、データからもそんなふうに読み取ってもいいんだろうというふうに見えます。
 そこで、さらに分布が時間的にどう変化していくのかというあたりを見たいわけですが、分布そのものは余りたくさんの観測があるわけではありませんので、利用できる部分についてまずプロットしてみたいということで、これが2002年の7月1日ですが、これは降雨直後の表層の塩分分布ということになっています。これを見ますと、諫早湾の奥のあたりが塩分濃度が低くなっていて、これは潮受堤防の排水門から出る淡水の影響ではないかというふうにも見えるし、それから下の方は7月22日なんですが、これは降雨があって3日後ぐらいに相当します。これは塩分濃度を見ていきますと、湾の入り口、湾口の方が塩分濃度が低くなって、これは奥から来たというよりは、筑後川から来たというふうに見れるのではないかというふうなデータなわけです。
 そこで、じゃ排水門と、それから筑後川と、どっちからどのくらい出てきているんだろうかというあたりを、持っているデータから解析をしてみました。このグラフは、湾口に近いB6、それから諫早湾の途中まで入ったB3、それから潮受堤のすぐ前のS1の順番に書いてあります。塩分濃度をあらわしていますが、表層の塩分濃度が低く、低く、低くというふうになってきています。これは実は同時ではなくて、少しずつ時間が違いまして、湾口の方が早くて、真ん中がその次で、湾奥が最後ということですから、これは入り口から来たということが当然示唆されるわけです。
 そこで、じゃどっちからどのくらい淡水が入ってくるんだろうか。その淡水に栄養塩があるんだろうかということを見るために、まず淡水量について算定を試みました。それはこの式自体は、先ほどの堤先生の中にも出てきたかと思いますが、要は塩分濃度を測って、それだけ塩分濃度が海水に比べて低くなるためには、どれだけ淡水が入っていなきゃいけないかというのを簡単に計算して、そのボリュームをそれぞれのB3、B4、B6地点で計算をしたということです。
 これは、連続的に観測したデータがありまして、時々刻々、どれだけの淡水の面積なのかというのがあります。ただ、これはあくまでも面積であって、ボリュームではないので、ボリュームにはならないということで。試みたのは、何回か空間的に塩分濃度を測ったデータがありまして、これをお借りして、空間的に塩分濃度を測ったときの諫早湾の中の淡水の総量を縦軸にプロットし、そのときに、先ほどお見せした面積がどれだけあったかというようなものをプロットしてみますと、大体面積と諫早湾の三次元的な淡水のボリュームとはいい相関関係があるので、この相関関係を使って、こちらは時々刻々、連続的なデータがありますから、これを使ってボリュームに換算し直してみようということでやったものがこのグラフでして、この直線が時々刻々、どれだけ淡水があったとみなされるかというような量であります。それから、ここの黒い棒グラフで書いてあるものが、排水門からの排水量、淡水の排水量ということになります。この排水量をただ単純に累計する格好で積算していったものというのが、このグラフになってくるわけです。
 これで見ますと、排水門から排水される淡水の量というのはもうわかっていますので、これは明確で、このレベルでいいますと大体 5,000万トンというような、そういう量であるというふうに見えます。
 それから、この実線というのは先ほどの方法で、諫早湾にどれだけ淡水が入り込んでいるかというのを見たんですが、山が3つほどありまして、これは降雨による出水に関係しているわけですが、これが1回おおよそで言いますと1億トンぐらい、これで1億トンぐらい入り、ここでも1億トンぐらい入り、ここでも1億トンということで、大体3回合わせて3億トンぐらいというふうに見えるわけです。
 したがって、諫早湾に入る淡水全体が3億トンに対して、排水門から出ていった分が、この期間でいうと 6,000万トンということで、大体5対1でしょうか。5対1ぐらいで排水門からの、もともと本明川からの淡水に起因するわけですが、そういうものと、それからそのほか──そのほかというのはもう議論の余地なく、筑後川から来るものというふうに考えていいと思いますが、筑後川から来るものというのが6ぐらいあるのではないかというふうに見えるわけです。
 そのぐらいのところが、淡水の流入としてわかったことで、さて、それが栄養塩なわけですが、先ほどご指摘もあった、栄養塩があるだけではなくて、日照、日射などが重要ですというご指摘でしたが、それについてまとめたのが次のこのグラフで大変見にくいのですが。赤の線が日射で、これちょっといろいろなところをあっちこっちして申しわけありませんが、ちょっとノリ不作に焦点を当てたときのグラフなものですから、10月から3月までについて、冬ですね。主に冬の日射について赤い線で、一番上が1991年からの冬です。92年、93年、94年と10年ぐらいとっております。それでブルーの線が降雨量と。一応見えないと思いますが、風についても一応プロットされています。これではちょっとわからないので、低いところをマスクしました。日射量でいうと10MJ/m2・dayというのをカットし、それから降雨量でいうと、1日雨量で20ミリというものでカットして、残った部分を見ているわけですが。
 それを見ますと、ノリ不作が起こった2000年から2001年にかけては、この10月から11月に変わるところで降雨があって、栄養塩が供給されたであろうというのは、先ほどの私のデータからも見えるだろうと。その後、かなり高い日射が続いたと。さらに12月のちょっと前で、またもう1回降雨があって、栄養塩の供給がさらに起こった。その後、ずっと日射の高いところが続いていますので、ここで大型珪藻の赤潮が起きて、ノリ不作につながったというふうに見えるわけです。
 それに対して、次の翌年ですが、翌年については、ここで淡水流入があった、降雨があったということはそのとおりで、しかも11月が日射が高くて赤潮が起こったわけですが、12月に入ったときにこの大きな降雨がありまして、それで、そのときに同時に風も若干吹いています。北の方向の風が吹いていますので、ここで赤潮がある程度おさまったというようなことで見ることはできるのではないかというふうに私は見ています。
 ちなみに、それを10年前までさかのぼりますと、降雨があって日射量の高い時間が続いたという、よく何でしたっけ、雨が降って日照りが続くって言うんでしたっけ。そういうふうに言われるシリーズがどこにあるかというと、なかなかこの10年間では冬は見出せません。この95年のように、日射が非常に高いレベルにあったというのはあるんですが、ここは降雨がない。それから降雨がたくさんあったときに、その後なかなか日射の高いのが続かないということでもありますし、特に90年代の前半というのは比較的、12月の日射量が平均値としても、この辺に比べると低いようです。そんなことも、この90年代の後半に赤潮が増えたというようなあたりと関係してくるということはあるのではないかというふうに思います。
 そのぐらいのメカニズムがわかってきたので、これはおまけなのですが、こんなメカニズムを入れてモデルをつくって計算をしますと、それなりの計算ができて、塩分濃度が筑後川からの供給された淡水で下がって、それによって赤潮が起こって、赤潮が起これば、表層のDOが上がると。それからちょっとして、下の底層の方は、今度は逆にDOが下がっていくというようなあたりがシミュレーションで出てきまして、こんなようなシミュレーションで考えてみますと、例えばこんな状態というのが、風によって北系の風が吹くと、貧酸素水塊が東側の方に吹き寄せられるとか、あるいは逆の方向にいくと諫早湾の方に入ってくるとか、そんなようなことがシミュレーションでもできるようになってくるということで。
 この私のやった観測というのはたった1点で観測をやっただけですが、1点でも、ある意味で常識的なことしかわかりませんが、別の意味でちょっと言えば、日射といっても、冬でいうと、例えば10MJ/m2・dayというような、ある程度定量的な目安とか、それから栄養塩にしても、窒素がどのくらいの濃度であったらいいのかとかということがわかってきますし、さらに流れなんかを測ることによって、移流とかということがわかってくるわけです。
 それに対して、研究者の一員から言わせていただくと、1点だけでもこれだけのことがわかるので、ぜひ有明海全体で5点とか10点とか、こういう鉛直分布が測れるようになると、貧酸素水塊がどう動いているかということがわかりますし、それから赤潮が起こるといっても、栄養塩や、あるいは日射との関係で時々刻々、時系列でどういうふうに変化するかというのがわかってきますので、そういうことからすると、恐らく有明海の環境をよくしようと考えたときに、負荷を削減するというのは当然一つの考え方として当然なきゃいけないわけですが、それが精一杯努力した後でも、さらに負荷をどのように配分して出したらいいのかというあたりとか、そういうことを考えるのに役に立つのではないかということからすると、もう少しデータがとれる体制があってもいいんじゃないかというふうに思いますというお願いも込めて、終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

○須藤委員長 どうも磯部先生、ありかどうございました。
 それでは、ただいま磯部先生にご発表いただきまして、ご質問なり、あるいはご意見なり伺います。どうぞ。
 細川先生、どうぞ。

○細川委員 連続観測でいろいろなことがわかるというのが具体的に示されて、大変おもしろく伺いました。
 私が興味を持ったのは、降雨直後と降雨3日後で塩分の分布が大きく違った分布図です。その図を見せていただいたときにこんな質問をしてみたいなと思ったんですが、3日後というのは、筑後川からB6の観測地点まで淡水が届くという時間、運搬される時間と合っているオーダーなんですか。

○磯部教授 これは風によって恐らく相当違うと思うんです、風向きによって。ただ、大体3日とかいう、1日ではないようなオーダーで来るというのがリーズナブルではないかというふうに私は見ています。
 ただ、見ているだけで、私はデータを持っていないので、これが正しいという断言はちょっとできないんですが、まあそんなに悪い値じゃないんじゃないかというふうに思います。

○細川委員 B6、1点で解析できるところまで解析しましたというご説明なので、次の質問はないものねだりの質問で申しわけないかもしれないのですが、この3日後というような時間のスケールというのは、例えば成層化の強さとか、潮の強さとか、そんなものによっても変わる可能性はあるのでしょうか。

○磯部教授 もちろん力学的には当然あると思いますし、最初に申し上げた風の影響ですね、それから潮の影響あたりというのはかなり効いてくるんじゃないかというふうには思います。そこから先はちょっとやはりないものねだりなので、お答えができないんですが、考えられそうなファクターは幾つかあります。探したんですが、ちょっとデータが見つからなかったので、むしろ今後の課題として、ぜひ測らなくてはいけないんじゃないかというふうに思っています。すみません、お答えができません。

○細川委員 ありがとうございました。

○菊池委員 最初に、1日目に水が出た諫早湾の南門の側の方で塩分が薄くなっておりました。あれはゲートからいうと、北門の方がストレートに湾口の方に効くのではないかと思ったんですけれども、その点はいかがなんでしょう。

○磯部教授 これは、これが連続観測じゃないところの弱さで、測ったらこうでしたとしか出ないんですね。これについては恐らく、流量としては当然北の方が多いわけですからそこから出て、その流線が南の方に曲がっていくというような、そういうことで、瞬間の濃度分布がなっていたんだろうというふうに思います。必ずしも、南が影響が大きいからなっているというのはちょっと考えにくいと思います。

○須藤委員長 よろしいですか。ほか。どうぞ本城先生。

○本城委員 冬の赤潮の照度のところで質問させてください。2000年の11月に大量の降雨がありました。先生は、水色のベルトで消してありましたけれども。
 それで、その降雨の後に前代未聞という言葉が当てはまるかどうかわかりませんが、日照の非常に弱い日が随分続いたという話を聞きますが、先生の方ではそれは出ておりませんか。

○磯部教授 はい、それは出ています。

○本城委員 出ていますね。ですから、その間に大量降雨があって栄養塩は供給された。そして、その間に日照がなかった。それから後、日照が回復して、そのときに塩分は高くなっていませんでしょうか。はい、これですね。今2000年の11月、12月に注目した質問だけですけれども、低いと聞いておりましたが。

○磯部教授 これが全く答えられない範疇でして、私たちの観測、2001年からでして、要するに事が起こってからやっているものですから、すみません。そういうのが本当にデータとしてあればよかったんですけれども、ただ……。

○本城委員 どうも気象の方では、11月の大量降雨の後、ものすごく低い、日照時間の短い日にちが随分続いたということのようですが。

○磯部教授 気象だけでいうと、ここに雨があって、その後ちょっと日照時間が長いというか、日射量が多いんですが、その後これずっと低いレベルがあります。そこへ、もう1回小規模な降雨があって、その先がずっと日照時間が長いんです。これが効いているんじゃないかというふうに思います。

○本城委員 それはそのように思います。そのときに……。

○磯部教授 低いのはここのところにあります。

○本城委員 何か塩分のデータがないでしょうか、塩分の回復のですね。どこかはお持ちかもしれませんね、水産試験場あたりで。
 そうしますと、インブリカーターは、リゾソレニアの大型のものは、意外と高塩分が好みかもしれませんので、そのあたりと関連づけて考察されますと何か出てくるかもしれませんですね。私もしたいと思いますけれども。

○磯部教授 ぜひちょっと探す努力をしてみたいと思います。

○須藤委員長 それでは、先生も探していただきたいし、それから環境省も、もしその辺の塩分のデータがあったら、今のあの部分ですね。2000年の部分の塩分データですね。
 どうぞほかに。小松先生、どうぞ。

○小松委員 有明海の奥部に筑後川、それから諫早湾から淡水が供給されるわけですが、それはできるだけ速やかに排出する方が望ましいわけなんですけれども、雨が降ったときに、筑後川の場合は、松原・下筌ダムがありますけれども、かなり上の方なので流量のコントロールというのはなかなか難しいかなと思うんですが、本明川からの水は調整池でかなりコントロールできるわけですね。
 そうすると、先生の先ほどの研究の結果とも関連するんですが、筑後川から出てくる栄養塩、それから諫早湾から出てくる栄養塩。その諫早湾から出てくる栄養塩というのは水門を通して出てくるんですけれども、それをコントロールすることによって、出すタイミングですね。両方から出てくるものをできるだけ速やかに奥部から排出するという可能性は、先生いかがでしょう、その辺は。

○磯部教授 私が乱暴に申し上げると、データが欲しい。データがあれば、時間的に考えることがひょっとしたら可能じゃないかというふうに最後に申し上げたのはそこの点でして、栄養塩供給の総量として変わらないとしても、こういうデータからある程度栄養塩濃度がどのくらい以上──ちょっと見ているのが、ミリグラムのオーダーにして 0.2とか 0.3mg/Lぐらいの無機態の窒素濃度あたりが、余りその数値をこういう席で言うのはよくないかもしれないんですが、私のデータをちょっと見た感じでそんなのがあって。
 そうだとすると、タイムラグを持たせることによって、最も希望的に言えば、栄養塩が有効にというのは、どういうことをもって有効かというのは、またなかなか難しいですが、少なくとも赤潮を起こしにくいような栄養塩濃度に保ちながら栄養塩を排出するというか、そういうこともいずれは考え得るのではないかということで、小松先生の今のご質問の趣旨に、私ももっとも希望的に言うとそう思っています。
 ただ、量としては、本明川は筑後川に比べると、せいぜい1、2%という流量ですから、全体としてはそれほど、どのくらいになるかというのはちょっとまた別の問題だと思います。

○須藤委員長 ほかにもう一つぐらいいかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、磯部先生、どうもありがとうございました。先ほどの堤先生と同じように、またこれからもいろいろお教えいただいたり、一緒にディスカッションをさせていただく機会もあろうかと思いますので、その節はどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 以上、3名の先生方からご説明をいただきました。本当にありがとうございました。本日ご説明をいただきました内容につきましては、今後の評価委員会での議論に活かしていきたいと考えております。
 それでは、もう一つ議題がございます。「その他」でございます。
 環境省、事務局の方からお願いいたします。

○坂川閉鎖性海域対策室長 それでは、資料5と書かれました1枚の紙をごらんいただきたいと思います。
 これは、当面のスケジュールの案を考えてみたものでございまして、以前、第3回目の評価委員会のときに、一度これと似たようなものをお示ししたことがございますけれども、その後の進捗状況等により、追加修正が必要になってきていると思われますので、改めてお諮りをしたいと思います。
 このスケジュールの中で、本日が第6回でありますので、ちょうど真ん中ぐらいのところに書いてあります第6回評価委員会、11月10日というところでございます。
 そこで、今後の予定なのでございますが、事務局といたしましては、年度内にあと2回開催できればというふうに考えておりまして、そのときに行う予定は、本日、また前回と委員等によります研究成果のご紹介、ご説明をいただいたわけでありますが、あと若干追加をしてはいかがかというふうに思っておりまして。今考えておりますのは、お二方の委員にお願いをしたいと思っております。まず、伊藤委員から貝類についてのご説明と、それから山口委員からエイ類のよる食害の問題などについてご説明をいただければというふうに思っておりまして、これを次回第7回で行いたいことと、それから主務省・関係県が今までに行ってまいりました関連する調査結果の報告、これも行う必要がございまして、これを第7回と第8回で分けて行っていきたいというふうに思っております。
 それと、小委員会を設置いたしておりまして、現在、大学等による調査研究情報の取りまとめの作業を行っているところでございますが、その作業結果についてのご報告も必要になってまいります。このような内容を行いますために、第7回を来年1月ごろ、また第8回を来年3月ごろに開催させていただければというふうに思っているところでございます。
 それからあと、第8回のときには、主務省・関係県から来年度の調査計画についてのご説明ということも必要かと思っております。
 また、さらに第9回の評価委員会のところ、ここは前回ご説明したときと内容的には同じでございますが、来年度に入りましてから、その時点までの検討の成果、課題等の整理をお願いできればというふうに考えております。
 事務局といたしましては、今後このようなスケジュールで考えておりますので、ご検討いただければと思います。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 ただいま事務局で本総合調査評価委員会のスケジュールについてご説明をいただきました。あと2回、今年度やらなくてはいけない──やらなくてはいけないというか、やりたいというご希望であるということで、伊藤委員と、それから山口委員にはご発表も同じようにしていただくということで内諾は得られておられるかと思います。いかがでございましょう。何かご質問ございますでしょうか。これでよろしゅうございましょうか。
 特にないですね。これは事前にいろいろ、それぞれの委員の皆様ともご相談をして進めたかと思いますので。
 それでは、事務局の方から今後の進め方ということで、一応先生方は承諾してくださったという前提でお願いいたします。よろしいですか。

○坂川閉鎖性海域対策室長 どうもありがとうございました。
 そこで早速、第7回と第8回、この2回の日程の調整をさせていただきたいと思っておりまして、お手元に来年1月から3月までの日程調整表をお配りしておりますので、これをお帰りになってからで結構でございますので、ご都合の悪いところに印をつけた上で、事務局の方にファックスでお送りいただければと思います。先生方、お忙しい方ばかりですので、なるべく早めに調整をしたいと思っておりますので、できましたら、明後日ぐらいまでに事務局の方にファックスをいただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 第7回、第8回、ちょうど年度末になりまして、こちらの大学の先生方が大変いらっしゃるので、研究所の方ももちろん年度末というのは忙しいんですが、どうぞ早目に、この委員会のセットだけはさせていただきたいと思っております。なるべく多くの先生方とご一緒に討論した方がよろしいかと思いますので。明後日と言われたので、今週ですよね。来週早々ぐらいに決められれば、なるべくこれを優先していただきたいと、こう思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、何かほかに全体を通してございますでしょうか。
 ちょうど時間になりまして、ほかにご質問あるいはご意見がないようでございますので、これで本日予定されましたすべての議題を終了させていただきました。
 これにて、第6回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会させていただきます。
 議事進行に係る皆様のご協力にお礼を申し上げます。どうもお疲れさまでございました。