第5回有明海・八代海総合調査評価委員会 会議録

日時

平成15年10月27日(月) 13:00~17:00

場所

環境省第1会議室

出席者

委員長 須藤隆一委員長
委員 伊藤史郎委員、大和田紘一委員、岡田光正委員、菊池泰二委員、
鬼頭鈞委員、楠田哲也委員、小松利光委員、清水誠委員、
滝川清委員、原武史委員、細川恭史委員、本城凡夫委員、
森下郁子委員、山口敦子委員、山田真知子委員
臨時委員 荒牧軍治委員
専門委員 弘田禮一郎委員
発表者 中田英昭長崎大学水産学部教授
事務局 環境省環境管理局長、水環境部長、水環境部閉鎖性海域対策室長

○坂川閉鎖性海域対策室長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第5回有明海・八代海総合調査評価委員会を開会いたします。
 本日は、委員21名のうち、現在17名の委員にご出席いただいておりますので、定足数を満たしていることをご報告いたします。ご欠席は清野委員、山室委員、福岡委員及び相生委員の4名です。
 それでは、まず議事に入ります前に配付資料の確認をさせていただきます。

(資料の確認)

  それでは、須藤委員長に会議の進行をよろしくお願いいたします。

○須藤委員長 かしこまりました。
 本日はご多用の中を、委員の先生方並びに関係省庁の皆様にはお繰り合わせご出席いただきまして、どうもありがとうございます。また、傍聴の方々も多数ご出席いただき、ありがとうございます。
 本日の評価委員会を開催するのに先立ちまして、前回、第4回の評価委員会の実施に当たり、委員の先生方には福岡県までご足労いただきヒアリングに参加をいただき、改めて感謝を申し上げます。限られた時間ではございましたが、現場の方々から非常に貴重なお話、情報提供をいただけたかと思っております。これらは、今後の評価委員会の議論に十分反映させていきたいと考えております。
 さて、今回の評価委員会でございますが、有明海及び八代海の再生に係る評価を行うに当たって参考にするため、有明海・八代海に関係する調査研究を行ってこられました委員の先生方から、これまでの研究成果についてご紹介をいただき、それについて本日お集まりの委員の方々で意見交換を行おうという趣旨が本日の第5回の委員会の主目的でございます。
 本日、研究成果をご紹介いただく4名の先生方におかれましては、大変お忙しい中、その役目を引き受けていただきました。ありがとうございます。特に長崎大学の中田先生におかれましては、この委員会の委員ではございませんけれども、特別にご出席をいただきまして心からお礼申し上げます。4名の先生方、本日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 お手元にお配りいたしました進行表にありますとおり、まずは大和田委員にご説明をいただきます。なお、大和田委員には、そこに書かれておりますとおり、菊池委員、本城委員、弘田専門委員の4名の先生方と共同で研究成果を取りまとめていただきました。そして代表として大和田委員にご説明をいただくと、こういうことでございます。続きまして、小松委員からご説明をいただきます。その後、15分程度の休憩を挟みまして、再開後、滝川委員から、そして最後には中田先生からそれぞれご説明をいただきたいと考えております。
 お1人当たりの持ち時間には質疑応答の時間も含まれておりますので、十分な時間とは必ずしも言えませんが、円滑な進行のために、ぜひ時間はお守りいただきたいと考えております。質問される委員の先生方にも、どうぞご理解とご協力をお願いいたします。一応17時ということを終了の目標にしておりますが、こういうことでございますので、若干延長する可能性もなきにしもあらずでございますので、その点もどうぞお含みおきいただきたいと思います。
 それでは、早速でございますが、委員の研究成果の紹介に入ります。
 まずは大和田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

○大和田委員 熊本県立大学の大和田でございます。
 今日お配りしています資料が白黒のコピーで、大変汚くなっていることをおわび申し上げます。
 今回、八代海に関してプレゼンテーションをするようにと指名されましたが、私自身は東京から熊本県に移ってまだ2年半、実際に八代海の調査にかかわってまだ1年半しかたっておりませんので、私1人では無理と考えまして、長年八代海にかかわってきておられます本城委員、菊池委員、また専門委員の弘田委員、あとは熊本県の水産研究センターの漁場環境部長の吉田さんとも相談をさせていただきまして、私が代表でプレゼンテーションをするということになりました。後で質疑応答がある場合には、これらの今日お集まりの委員の方々にも応援をしていただくということで、よろしくお願いいたします。
(スクリーン)
 八代海に関する生物学的な研究というのはそれほど多くありませんが、先ほど申し上げました弘田委員、菊池委員といった方々がかなり古くから非常に詳細な研究をしておられます。私どもは、熊本県水産研究センターと昨年から生物学的な研究を始めまして、バクテリア、植物プランクトン、原生動物を含むマイクロプランクトン、それから動物プランクトンまでを全域において調査をしておりますが、まだ結果が十分解析するほどいっておりませんので、今回に関しては弘田委員や菊池委員の多少古いデータでございますが、非常に詳細なデータでございますので、そういうものを紹介させていただきます。
 これは有明海・八代海を示すものでございますが、八代海は九州の本土と天草諸島、大矢野島などに囲まれた閉鎖的な水域でございまして、面積が約 1,200平方キロメートルと言われております。その中ほどに樋島、御所浦島、獅子島、伊唐島、長島のような島が連なっておりまして、ここで西部海域と東側の海域に分かれます。また、ほかの海域との交流の場としては、この部分と、あとは本土のところ、ここで有明海と交流しております。こちらの方は余り海水の交流という意味ではそれほど働いておりませんで、外洋と接しております長島海峡、あるいは黒ノ瀬戸で交流が盛んだというふうに言われております。
 今日の資料の第1ページにありますように、海域としては奥部と言われる部分、ここは非常に水深の浅いところでございます。次に、北部と言われるところで20メートルぐらいからだんだん深くなってまいりまして、南部海域で20メートルから50メートルぐらい。あとは西部の長島海峡のところは70メートルぐらいになりまして、ここはかなりの海水の交流がありまして、大潮時には7ノットぐらいに流れが速くなると言われております。それで、海水の交流としては、大体長島海峡と黒ノ瀬戸で4対1ぐらいというふうに見積もられております。
 あとは海底でございますが、東側の海底というのはほとんど砂泥質、あるいは泥底質といいますか、そういうものでございまして、西側の海域は砂質、あるいは流れが速いところでは砂礫質というようなことが言われております。
 それで、八代海の干潟は奥部、あるいは球磨川が流れ込んでくるところに広がっておりまして、ですから非常に浅いところに限定されております。あとは局部的には干潟がございますが、干潟としてはこの部分が非常に多いということでございます。
 まず水温でございますが、これは熊本県の調査でございまして、右側の方でこの30年間ぐらいの水温の変化を見てみますと、夏の最高水温、あるいは平均水温はそれほど上がっているような傾向は認められません。ただ、冬の最低水温をこの30年間で見てみますと、かなり上がってきているということが言えます。
 あとは、昨年から我々が調査しております水温、塩分については、お手元の資料の2ページ目にございます。ちょっと汚いんですが、夏の成層の時期には球磨川の海水が北側の方でかなり上の方に入っておりますが、それ以外の秋から冬にかけては、北側から南側にかけてかなり環境の傾度があることがおわかりかと思います。
 あとは溶存酸素の分布でございますが、これは昨年の6月から今年の5月までを示しております。毎月1度の調査では、幸いなことにまだ貧酸素水塊というようなものは認められていないようであります。
 それでは、これから我々が調査しております生物に関してお示ししたいと思います。この左側は去年の5月から今年の4月までの植物プランクトンを調べたものでございまして、資料の第1ページにある8調査点において各水深についても調べております。その中で、これは全部の測点の平均としてならしてしまっておりますが、これで見ますと、これは横軸は5月から今年の4月まで、縦軸は1ミリリットル当たりの細胞数でございます。ほとんどの植物プランクトンとしては珪藻でございまして、その中で春の時期と冬の時期に珪藻、特にスケレトネーマ・コスタータム、あるいはキートセロス、あとはタラシオシーラなどが優占する。特に春と冬の時期に優占しております。
 また、今度は下の図は、横軸が北の方から南の方にかけてステーション1からステーション8までをあらわしておりますが、やはり珪藻の中で全期間を通じてステーション1、2、3、4ぐらいまでのところにスケレトネーマ・コスタータム、あるいはキートセロスSP、あるいはタラシオシーラなどが優占しております。八代海の場合は、北の方で多少ノリの養殖をやっておりますが、有明海ほどノリの養殖は盛んではございません。それは後で示しますが、そういうことで、これらの珪藻の赤潮状態もありますが、こういうものは特に水産的に被害を出すものではございませんで、かえって餌料として非常に有効なものと考えております。
 これが資料の方で非常に汚くて恐縮なんですが、クロロフィルaを昨年の6月から今年4月まで示したものでございます。横軸はステーション1から左側に8まで並んでおります。球磨川が入っています、この辺ですね。奥部から北部にかけて、常にこれは珪藻ですが、クロロフィルが常に高くなっておりまして、南に行くほど次第に少なくなっているような傾向が認められます。月1回の調査でございますので、なかなか赤潮にはぶつからないんですが、昨年の8月にはステーション5から6のところでコックロディニウム・ポリクリコイデスによる赤潮にぶつかっております。ですから、湾の北部、あるいは奥部の方は珪藻が、あとは南部の方では植物プランクトンは少ないのですが、時折大きな被害を与えるような鞭毛藻による赤潮が起こっております。
 次に動物プランクトンの方に移りますと、動物プランクトンにつきましては弘田委員によるかなり詳細な調査がございます。これは30年、あるいはそのぐらい前のデータではございますが、動物プランクトンとしてはワカレオタマボヤも含むような被嚢類、あるいはカイアシ類、枝角類、有鍾繊毛虫類、鞭毛虫類、あとベントスの幼生などが主なもので、その中では、コペポーダと言われるカイアシ類がかなり優占的であるということで、カイアシ類の幾つかの種類の6月、9月、11月、3月の分布が示してありますが、これらをまとめた大変おもしろい興味深い結果を弘田委員が出しております。これは有明海と八代海、両海域を比較したものでございますが、カイアシ類のうちでパラカラヌスと言われるものは全域に常に分布しているということで、全域に分布しているという意味の矢印がついております。それに対して有明海の場合は、指標値として内湾性を示すようなオイトナ・デービセアと言われるようなものは湾の奥から緑川の河口域ぐらいまで広く分布しております。また、富栄養化の指標種と言われるアカルティアは大牟田の先ぐらい、富栄養化の進んでいるところで年間を通じて認められております。一方、外洋との混合域の指標種と言われているミクロセテラと言われるようなものは、有明海の湾口部、この辺で認められております。
 それに対して今度は八代海の方で見てみますと、内湾性と言われるような種類は湾の非常に奥部に限定されておりまして、アカルティアも含めまして湾の奥部か北部というところにある意味では限定されております。それに対して一方、混合域と言われるような種類は、八代海ではかなり湾の奥と南部の境界域ぐらいのところに限定されておりまして、南部、あるいは西部の方では外洋種と言われるようなオイトナ・シミリスというものがかなり卓越しているということが認められておりまして、これから有明海と八代海、生物を指標にして考えましても、環境が八代海の方がかなり外洋的であるというようなことが言えるかと思います。
 次はベントスでございますが、これは菊池委員が非常に詳細に調べております。これも1975年、ちょっと古いデータではございますが量的に示したもので、幾つかの種類が出ております。全体として現存量でいうと奥部、あるいは北部の方で高く、御所浦から津奈木の中部と言われるところにかなり低いというような傾向が認められておりまして、現存量の平均としては1平方メートル当たり 39.38グラム。これは日本のかなり広い閉鎖性水域の中では現存量としてはある程度多い方だということでございます。
 それらについて、ある程度それぞれの指標種になるようなものがここに出ておりまして、泥質、あるいは砂泥底に出てくるようなシズクガイ、かなり広域的に出てくるような種類、あとは北部に限定されるような種類、南部に限定されるような種類、この砂泥底の方ですね。それぞれ分けて表示されております。あとは西側の砂質、あるいは砂礫の海底には、また別の種類がそれぞれ全域的にいるもの、あるいはごく局部的にいるものなどが示されております。ベントスに関しましては、ごく最近も熊本県、あるいは国土交通省の方で調査を行っております。そこでは種類数とかバイオマスなども出ておるのですが、私にはとてもそれを評価することができませんので、30年ぐらい前のときの、まだほとんど八代海が汚染を受けていないような時期と、昨年あるいは一昨年に調査されたものとどう違っているかということに関しては、後で菊池委員の方からコメントをいただければありがたいと思います。また、動物プランクトンにつきましても八代海で昨年から行っておりまして、広島大学の上教授のところで見てもらっておりますが、これも結果が出てくれば、弘田先生のところで調べた過去のデータとどのように違うかというようなことを比較していきたいと思っております。
 次は漁業生産の方に進みたいと思います。これは熊本県のデータでございますが、熊本県八代海での漁業生産、漁獲量でございます。全体的には1万5千トンぐらいからだんだん減ってまいりまして、現在1万トンぐらいということで、その中でシラスが平成になって多少上向きでございますが、それ以外はカタクチイワシその他についてもほとんど横ばい、あるいはかなり減少しているというような傾向が認められます。これは平成11年の漁獲の多かったものを示したものでございますが、カタクチイワシ、シラスも多分カタクチイワシの稚子魚かと思いますが、それが大部分でございまして、あとはタチウオ、アサリ、コノシロなどになっております。
 漁獲量が約1万トンと申し上げましたが、今度は魚類の養殖生産量を見てみますと、1994年、95年ぐらいのころに約3倍ぐらいでしょうかね。あとは現在多少頭打ちになって減少してきておりまして、2万トンから2万5千トンぐらいでしょうか。それでブリの類、タイの類、あとは最近はトラフグとか、その他養殖魚種も増えてきているということが言えます。一方、ノリの養殖を見ますとかなり横ばい状態でございますが、約3千トンぐらい。それもかなり北の干潟の方に限定されますが、有明海の全域で16万トンというようなものに比べると非常に少ない。ですから、八代海の場合には魚類の養殖生産が非常に高い、ノリの生産というのはそれほど高くないということがおわかりかと思います。
 次に、生物の方では海藻の藻場について見てみたいと思います。熊本県の藻場の分布は、平成13年1月から2月に熊本県で調査されておりますが、有明海、八代海、天草の外側の海域ということで、アマモ場、アラメ場、ガラモ場ということで、八代海は約 600ヘクタールぐらいは藻場があるということで、アマモ場としてはアマモ、コアマモ、アラメ場としてはクロメ、アントクメ、ワカメ、カジメ、あとはガラモ場としてはヤツマタモク、マメタワラ、ホンダワラ、ヒジキの類などが認められております。八代海は一見この中では一番多いように見えますが、昭和53年と平成13年の藻場での繁茂密度を比較したデータがございまして、これを見ますと、これは1平方メートル当たりのグラフという形であらわしておりますが、密度が八代海で昭和53年の 1,473g/m2に対して平成13年は 259g/m2ですから18%ということで、藻場も相当減少しているということが言えるかと思います。
 次は、今度はこれらの生産に対して阻害要因となる項目を述べてみたいと思います。赤潮でございますが、これは水産庁の九州漁業調整事務所の20年間ぐらいのデータでございますが、これで見ますとかなり赤潮が起こっている。特に夏の時期に相当赤潮が起こっているということがよくわかると思います。その中で、特にコクロディニウム・ポリクリコイデスというものの夏における赤潮というのがかなり被害を起こしております。また、ここでは赤潮の原因種としてはコクロディニウム・ポリクリコイデスのほかにギムノディニウム・ブレーベ、ギムノディニウム・ミキモトイ、ヘテロカプサ、シャトネラ・アンティクア、ヘトロシグマ・アカシオなどが記録されております。特に2000年には7月から8月にかけてコクロディニウムの赤潮が出まして、御所浦を中心に養殖魚類で40億円の被害というのが出ているということでございます。
 先ほど申し上げました赤潮原因種でありますが、これを水産庁の九州漁業調整事務所の20年間のデータで主にコクロディニウムで赤潮が起こった海域を見てみますと、御所浦の近辺、あるいは津奈木の近辺を中心にして、かなり八代海に広く赤潮が起こっていることがわかります。また、これはギムノディニウム・ミキモトイの赤潮でございますが、やはり同じようなところを中心に、かなり広がりを持って赤潮が起こっているということが言えると思います。一方、シャトネラ・アンティクアを見ますと、これは先ほどの2種類とは違ってかなり南の方の海域、あるいは北、西側の方の海域に偏りが見られているようであります。シャトネラ・アンティクアについては、今年の7月にかなり出ましたが、やはりこの辺の海域に出ておりまして漁業被害を与えております。これら赤潮生物については、本城委員の研究室で非常に詳細な研究が行われております。
 これは日本で代表的な赤潮生物を分離・培養いたしまして、温度と縦軸は塩分ですね。それをいろいろ変えて、その生物の増殖速度を調べたものでございます。先ほど申し上げました八代海でよく出るシャトネラ・アンティクア、あとはコクロディニウム・ポリクリコイデスを見ますと、大分性質が違うことがわかります。シャトネラの場合はこの辺ですから、温度でいえば大体同じような25度近辺が好みでありますが、塩分はかなり低いところにマキシマムがあるようでございます。それに対してコクロディニウムは、温度は同じようでありますが、塩分がかなりの外洋的な趣味というようなことが言えるかと思います。かなり高いところにあるようでございます。また、ギムノディニウム・ミキモトイも、シャトネラほどではないですが、多少低目のところかと思います。一方、貝類に大きな被害を与えるヘテロカプサについては大分違いまして、温度も塩分もかなり高いところに増殖のマキシマムがあるようでございます。
 これらをもとに、本城委員のところの大変興味深い考察でございます。これはこちらがシャトネラ・アンティクア、こちらがコクロディニウム・ポリクリコイデスでございますが、縦軸がその年の降水量でございますね。ミリメートルで書いています。横軸あるいは縦軸はそれぞれ、赤潮が発生する2週間前の日照時間、あるいは降水量を示しております。そうすると、先ほど申し上げましたように、シャトネラの場合は低い塩分を好むということで、雨が非常に多くて日照時間が少ないようなときによく出る。確かに今年も非常に雨が多かったんですが、今年も出ております。あとは90年、98年、99年、こういう年にシャトネラ・アンティクアが出ておりますし、今度はコクロディニウムの方は降水量が非常に少なくて日照時間が多い年、これは2000年が非常に大被害を与えた年ですが、2000年、2001年、2002年、こういうときに当たり年になっております。
 もうひとつ、本城先生のところでやったものでは、コクロディニウム・ポリクリコイデスの無菌培養株を用いて栄養特性を調べたものでございますが、窒素源に関してはほとんどNO3とかNO2、アンモニア、無機の窒素にほとんど限られている。一方、リンの方を考えますと、かなりリンに対しては幅の広い、無機リンのみならずかなり多くの有機リンを利用しているということが言えます。こういうことを考えますと、赤潮生物に関しては、単にN、Pなどの海域への負荷のみならず──負荷も非常にきいていることは確かでございますが、そのほかには日照時間とか降水量とか、かなり気候・気象的な要因もありまして、非常にこれを予測するとか防ぐということはかなり難しいということがおわかりかと思います。
 次には、今度は赤潮について、今度は八代海へのN、PあるいはCODの負荷について考えてみたいと思います。これにつきましても熊本県のデータでございます。八代海における養殖系海域負荷量の推移ということで、平成7年度の負荷量を大ざっぱに計算したものだとは思いますが、これを見ますと、窒素については養殖系、あとは土地系というのは、例えば球磨川を通じて入ってくるとか、農業で使った肥料が川を通じて入ってくる、そういうことかと思います。あとは畜産系もあります。あとは生活系ということで、こういうものが主な窒素負荷の原因だと思いますけれども、リンに関しては平成7年では相当養殖系が大きく、そのほかには土地系、生活系といったものが顕著でございます。これは非常にショッキングなものなんですが、その後、平成7年と12年を比較してみますと、1つは養殖系の方の餌が生餌からモイストペレットとかドライペレットに変わってきているということ。あるいは養殖魚の種類が変わってきているということも言えるかと思いますが、負荷は12年には大分減っているということで、平成7年に比べ、12年は窒素で約63%、リンで53%に減っているというような結果が得られています。熊本県の環境政策課では、こういった、現在かなり負荷が減ってきた場合に海域の環境がどのように変わってくるかというようなことのシミュレーションを今行っているというふうに聞いております。今年度中にはそういう結果が出るというようなお話も聞いておりますので、非常に楽しみにしているところでございます。
 これは養殖漁場の幾つかの点で70年代から現在まで堆積物のCOD、硫化物、あとは海水中の無機の窒素、無機のリンを調べたものです。これ、ちょっとここのところは単位が間違って、マイクロ・モル・パー・リッターでございます。そして、横軸は年を追って8区間、あるいは20区間の移動をしながら平均をして出しております。これを見ますとCODについては95年ぐらいがピークで、それからは減少してきている。硫化物については、90年の前にかなり高い時期がありましたが、現在は横ばい、あるいは減少の傾向にある。あとは無機の窒素、あるいはリンについては、特に海底より1メートル直上、黒で見ますとある程度横ばい、あるいは減少傾向が認められるというようなことが言えるかと思います。
 これまで見てきましたように、有明海と八代海は南北に隣り合って位置していますが、生物から見た環境や海域としての利用の形態がかなり異なっていることがわかります。そこからは、おのずと今後の海域の再生に関しても多少違った方向が必要かというようなことが考えられます。八代海の場合には、漁業、あるいは水産業が落ち込んできているとすれば、これはかなり富栄養化に原因しているんではないかと考えられます。その結果、鞭毛藻類などによる赤潮の頻発による被害が目立っています。また、藻場、干潟など環境の浄化に役立つ部分のかなりの減少も富栄養化を進行させる要因であり、これは大きな問題かと思われます。ですから八代海に関しては、N、PやCODの負荷となる、例えば生活系、土地系、あるいは養殖系の負荷の削減ということは重要なことかと考えられます。このような点から言えば、過去の瀬戸内海、あるいは東京湾など、かなり富栄養化防止ということで取り組まれてきておりますが、こういうことが非常によいモデルになるのではないかと考えております。また、藻場の大きな消滅を考えると、沿岸域の自治体や漁協、あるいは県や国による藻場造成なども重要な施策かと思われます。
 干潟に関しましては海域の北部にかなり限定されていますが、この部分は数年前の台風に伴う高潮で大きな被害を受けたため、現在は護岸工事がすごい勢いで行われております。人命が重要なことは十分理解しますが、限られた面積の干潟──この八代海の場合は昭和20年に 6,500ヘクタールあったと言われておりますが、それが最近ではそのうちの 2,200ヘクタールが消滅しているというふうなデータがございます。限られた面積の干潟は、できるだけ海域の浄化のために残すということも必要なように思います。例えば湾の奥部の護岸工事で干潟の部分にかなり護岸工事が行われ、この辺もずっと護岸でございます。これは人命のことを考えるとしようがないとしましても、この前の部分などは、やはりもとへ戻すといいますか、干潟として機能するようにしていった方がいいのじゃないかと思います。
 最後に、養殖業による内部からの負荷に関しては、1つは餌の改良による負荷削減、これが重要であることは当然でございます。また、鹿児島大学の門脇教授が常々主張しておられることでございますが、単に魚だけの養殖で餌をやって負荷を出すということだけではなくて、こういうところで糞とかいろいろなものが出てきたときには、それを利用するような生物を入れ、そういうものによって回帰してきた窒素、リンなどは、今度は藻場をつくるなり海藻を増やすことによって回収するというような複合養殖といいますか、複合システムとして循環型の利用をする。そういうことが重要ではないかと思いまして、一応ご紹介させていただきたいと思います。
 今日用意したものは、時間を気にして大分はしょって話したものですから大分早く終わってしまいましたが、大体このようなところでございます。

○須藤委員長 大和田先生、どうもありがとうございました。
 先ほど途中で菊池先生、本城先生、弘田先生のデータ等のご紹介もありましたし、ぜひ菊池先生からのコメントもというようなお話も、特にベントスのところでございましたでしょうか、おっしゃっておられたようなので、先に菊池先生、先ほどの20年前と今との比較ですか。ちょっとおっしゃっていただけますか。

○菊池委員 まず、今の話で余りクリアに出なかったのが深さの問題なんですけれども、これが真ん中に天草諸島のまた二次列といいますか──そうですね。それを出していただくとありがたいと思います。
(スクリーン)
 天草諸島というのは全部で無人の島も入れまして 120ぐらい島があるんですけれども、人が住んでいるのは5分の1ぐらいです。天草上島、下島、それから宇土半島の付け根に大矢野島という、その3つが大きな島で、それが外海と有明海・八代海を区切っているわけですけれども、八代海に限って言いますと、先ほどご紹介があったような御所浦島というのがありまして、それから、その次に獅子島と伊唐島というのと、それから長島ですね。その八代海の真ん中を区切っている島々がありまして、それから西側の方は水深30メートルぐらいなんですけれども、外棚も出入りが大きいので、非常に流れが激しいわけです。ですから、有明海の場合には、ちょうど口之津と鬼池という有明海の末端から島原半島まで幅広く外海の水がどっと入ってまいりますけれども、こちらの場合には、いわば2段のフィルターになって、最初に長島海峡というんですかね。それから入ってきたものがそれぞれの島の間の瀬戸を通って深い方へ入ります。そうすると、深い方は水深は40メートル、50メートルあるんですけれども、全部柔らかい泥の底なんです。そこで、いわば大きなシンクがあるということですね。
 それから北の方に行きますと、一番大きいのは球磨川ですけれども、あと、そのほか氷川とか大野川とかというような中小河川が何本も入っております。ですから、そちら、陸源のシルト粘土を含んだ水が大量に入ってまいります。水深は10メートルある、なし、一番奥ですと潮が引いたら非常に広く出ますし、満潮になるといっぱいいっぱいの水になる。そういうところで、奥の方ですと水深が浅いということは、陸源の水が特に夏場から台風期にかけては数メートルの厚さで非常に薄いものがかぶりますと、いわば塩水はその下へ押さえつけられたような格好で低くなります。そこには陸から来た粘土質が、あるときには非常に濃厚な濁水になって、それが1ヶ月たって流れ込みが静まりますと、そのあたり全体に沈降して泥になっていくわけです。
 浅い泥と、それから有明海・八代海の南の方の深い泥との間には、ちょうど八代海の八の字のちょっと下のところへ深度区分がありますけれども、そのあたりの北と南では、同じ泥底でも生き物も違ってまいりますし水の動きも違ってきます。ですから、汚染がある、なしということのほかに、同じ泥でも違った泥なんだということが1つあります。
 それから、細かい島々の間を流入しては流出していく、それで局地的に非常に強い流れのところがありまして、そこは洗われたような格好になるので、しっかり壁を持って下から突出しているような管状の巣を持った形のゴカイの仲間と、あるいは石灰質で下に固着しているような殻の厚い二枚貝、それから局地的にはサンゴと、そういうものが主に出現するわけです。
 それから、汚染がなかった時代というのは非常に難しゅうございまして、今、全然お話しにならなかったんですけれども、八代海が受けた打撃としては1950年後半から60年代の水俣病、水銀の汚染の問題がございます。これで直接死んだのは海岸周辺だと思いますけれども、水俣港から少し北へ上がったところまで、岸辺のフジツボからカキから全部死んだというような時代がございます。そういうのをどう評価するかという点はちょっと難しいんですけれども……。
 それから北の方へ上がりますと、先ほど干潟がたくさん失われたという話がございましたけれども、戦後の第1期の干拓時代に、ちょうど八郎潟の干拓が問題になった時期に八代大干拓というのがあって、球磨川河口の広大な干潟は、ほとんどそのときに農業干拓のために失われております。それがお米が減反になってから、今は全部イグサにかわっていると思います。ですから、この前、福岡のヒアリングのときに、土地の方の証言でもとはいっぱい藻があって貝がいっぱいおってというのは、今、そうやって農業干拓で固められてしまったところを含んでいると思います。
 それから、八代港自身も港湾改修で外からの大きい船が入れるようにつくり直しましたので、そしてこれも日本列島改造であちこちに中規模の工業都市をという時代に、工業干拓を夢見て港の周りは工業用地として準備したが、なかなか産業が来てくれなくて、いろいろな物の物置き場になっている部分が多いのですが、一時はそういう期待で埋立てたところもございます。ですから干潟の失われ方には2段あって、そして、そのときに藻場と、それから干潟での採貝漁業みたいなものについては1960年代までに失われた部分が相当に大きかったと思うものですから、70年代の半ばが打撃がなかった時代のスタンダードになるかどうかということは、私はちょっとよくわかりません。
 それからもうひとつ、先ほど養殖漁業のお話もありました。これは私、天草の外側の方の湾で現地を見まして体験したのは、初期の養殖漁業は小さいアジやイワシをミンチにかけて、そのままスコップでほうり込むような養殖だったので、すべてのそういう養殖をしているところの周りの桟橋だとか石垣だとかは、べっとり黒い魚の脂が張りついているような状態だったわけです。それから魚粉に炭水化物を加えたモイストペレットに変わりました。そして同時に、魚がいわゆるブリの子供、ハマチですね。ハマチの値段がちっとも伸びないというので、ハマチからタイに、タイでもうまくいかない。それで現在、八代海ではトラフグの養殖に熱心なんです。この前の福岡での地元の人々のヒアリングのときに「見てください。これがホルマリンを注いでいるところです」というトラフグ養殖業者によるホルマリン使用を告発する話がありましたけれども、外部寄生虫を退治するためにはホルマリンを養殖場の海水の中へまぜるという、これは熊本ブランドを傷つけるものだということになって、どの業者が使っている、使っていないというのがもめごとになっていますけれども、結局それを規制仕切れていないような状態なんですね。ですから、これもどこまでプランクトンや自然のベントスにも影響しているのか。トラフグが生きているなら、まだみんなも生きているということなのか、それもよくわかりませんけれども、ただ、一番センシティブなのはアコヤガイ、真珠貝なんですね。真珠貝養殖とトラフグ養殖が常にバッティングして、これは八代海だけじゃなくて、南四国でもどこでもみんなトラブルのもとになっているわけです。
 余り一点に集中しませんでしたけれども、時間的なトレンドについて申し上げました。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 本城先生はよろしいですか、プランクトンの部分のコメントは。

○本城委員 結構です。何か質問があれば……。

○須藤委員長 そうですか。じゃ、そうしてください。
 じゃ、弘田先生、何かご追加はございますか。

○弘田専門委員 1つだけ。先ほどの大和田先生が出してくださったデータはちょっと古いので、1968年のデータでございましたけれども、その後、実は1993年に学生を使って調査をしております。ほとんど動物プランクトンの分布パターンは変わらないんですけれども、ただ、やはり養殖場の近くにアカルティアの非常に多いところが出てまいりまして、そういうところで少し有機汚染が進んだかなという感じが実は出ております。そういうふうに、大した大きな違いはございませんけれども、多少部分的に有機汚染が進んだというふうな形が動物プランクトンの方でも出たということは、ちょっとつけ加えさせていただきます。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、共同研究者でいらっしゃる3人の先生方からのコメントをいただきましたので、ただいまの大和田先生の「八代海における環境と生物の動態」ということでプレゼンテーションをいただきました。どうぞほかの先生方、先ほどの共同研究者に対してでも結構でございます。ご質問があればおっしゃってください。いかがでございましょうか。
 清水先生。

○清水委員 私は何も知らないので、今のお話とも関係するんですけれども、養殖場の分布というのはどんなふうになっているんでしょうか。

○大和田委員 ここは御所浦でございますが、御所浦のこの辺が非常に魚類養殖の盛んなところ。それと、あとは鹿児島県の方では長島、ですからこの辺でしょうか。この辺が魚類養殖の非常に盛んな場所ということが言えるかと思いますが。

○清水委員 わかりました。それと直接は関係ないんですけれども、全体として漁業がどんなふうになっているかということで、漁家数の変化みたいなものはわかりましょうか。できれば漁船漁家と養殖漁家で、これはもしあれだったら後で教えていただければ。

○大和田委員 弘田先生が委員長をしておられます八代海の委員会に資料がございます。

○須藤委員長 調査委員会がございますよね。それでは清水先生には、環境省に言ってくだされば、やはりほかの先生にも見ていただいた方がいいと思いますので、環境省の方でご用意願います。
 ほか、いかがでございましょうか。
 先生、今年赤潮プランクトンが八代海に出て、ちょっと被害がありましたね。これはどの辺。

○大和田委員 やはり7月の後半ですが、この辺から始まりまして、この辺だったと思います。本城委員がかなり詳しい絵をかいてくれたんですが、今日うっかり持ってくるのを忘れてしまいました。ですから、先ほど示したようなシャトネラの場合は、こちら側とこちら側というのがありましたが、今回はそのうちの北側の方に分布していたようです。

○須藤委員長 それは比較的早目に終焉というか、終わったんですか。

○大和田委員 2週間ぐらいは続いたんじゃないでしょうか。7月の中ごろから後半にかけてでございます。

○須藤委員長 ほか、いかがでございましょうか。先生方、ほかにあれば。特によろしいですか。
 どうぞ、山田先生。

○山田委員 植物プランクトンについてなんですけれども、今日は非常におもしろい報告ありがとうございました。その植物プランクトンと、それからあとは産業の養殖業との関連、それからあと水の流れですね。そういった特に珪藻と有毒プランクトン、鞭毛藻の繁殖をする場所が違うようなので、そこら辺との兼ね合いでご説明していただけるとありがたいんですが。

○須藤委員長 これは難しいですね。本城先生、あそこへ行かれて結構でございますので、どうぞ。

○本城委員 これは答えられそうにありませんね。私は今、ここにプランクトンを4つほど挙げておりますね。恐らくほかの珪藻類もこういう形でまとめていけば整理がついてはくると思うんです。恐らく珪藻類は塩分の低いところが好きだと思いますので、八代海の北部にすむと思いますね。コックロディニウムは、もう明らかに塩分の高いところでないと生きられませんので、南部側に限られてくると思いますけれどもね。山田先生の今のおっしゃった中味がなかなかよくわかりませんけれども、今後1つ1つの生物の特性を調べていかないと、どういうところに分布し、どういうふうに赤潮生物とのかかわりがあるのかというようなことは説明できませんね。私の研究室では、珪藻が繁茂すると鞭毛藻類は嫌いだというような傾向があります。

○山田委員 同じ種で、やはり競争はあるんでしょうか。

○本城委員 同じところで珪藻が繁茂し、または渦鞭毛藻が生育するような水域もありますから──八代海ではありませんけれども、ほかの場所で。そうしますと大体両者は、競合いたしますね。その競合は、幾つか瀬戸内海水研の方と私たちは一緒に研究しておりますけれども、細胞間接触で、アレルパシーじゃなくて接触です。細胞が触れることによって相手がやられていくような、そういう現象があるように思いますね。それは細胞密度が濃いときであって、低いときに競争の有無の説明はなかなかできないということなんです。

○山田委員 どうもありがとうございました。

○須藤委員長 それでは、ほかにご質問はよろしいですか。

○大和田委員 ちょっと赤潮生物について言い忘れたことがあります。先ほど4種類ほど申し上げましたが、その中で休眠細胞、シストをつくるようなというのがシャトネラ・アンティクアぐらいだったでしょうか。それ以外はまだ休眠細胞が見つかっていない。ということは、シャトネラの場合はどこかで海底にシストがあるんでしょうが、それ以外の種類については、赤潮になるということはどこかから入ってくるか、この中に冬の時期も泳いで、どこかにいるのだろうと思っております。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 じゃ、どうぞ。本城先生。

○本城委員 熊本県内養殖場平均値というのがあって、COD、それから水質のDIN、DIP、これ、最近ずっと下がっておりますね。これはあくまでも無機のものを測っているのであって、トータルとしてはそれほど変わっていないんじゃないでしょうかね。これは環境省がずっと調べておられると思いますから、そういうデータとこれを照合していく必要があります。そして、有機リンを好きな生物もおりますので、そのあたりを考慮しないと、富栄養化の進行というものをきちんととらえていけないかもしれませんね。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。よろしゅうございましょうか。
 それでは先生、どうも本当にありがとうございました。
 じゃ、次に進めさせていただきます。「有明海において諫早湾の果たす水理学的役割」と題しまして、小松先生にお願いいたしたいと思います。じゃ、小松先生、お願いいたします。

○小松委員 九州大学の小松でございます。私の専門は、もともと水理学、海岸工学で、物理的な側面から有明海にアプローチしておりますので、その辺のお話をさせていただきたいと思います。
(スクリーン)
 これは熊本県立大学の堤先生がまとめられた、我々の共同研究者なんですが、秋の珪藻赤潮の大規模化ということで、縦軸が赤潮の最大面積、かけることの継続日数。横軸が年度です。大体この辺からかなり、1997年ぐらいからかなり増加してきているという、そういうところでございます。
 これも堤先生の観測データなんですが、彼のグループがほとんど毎月1回有明海の奥、こういう縦断面、それからあと一番狭くなっている多比良-長洲、この断面、それから今度諫早湾の真ん中のこういうラインでSTD観測、それからクロロフィル、またDOなどの観測を行っています。ここで、このラインがFのラインで、このラインがDのラインということを、ちょっとご記憶いただきますようお願いしたいと思います。
 これは2001年のこの湾奥周辺の、これは柳川ですが、柳川での降水量、それからこういう点の表層での塩分濃度を測ったものです。10月でこういうふうに雨がたくさん降ると、この表層の塩分がこういうふうに低くなる。それから、また大きな雨が降ると、この辺がちょっと下がってくる。この下がっているところを見ると、大体この辺ですね。ですから、雨が降ると筑後川、嘉瀬川、それから矢部川等から河川水が供給されて、湾奥のこの辺が塩分濃度が薄くなるということです。これは当たり前と言えば当たり前ですが。
 その結果、これも堤先生のデータなんですけれども、2001年10月16日という、これは先ほど塩分濃度が下がっていたところです。窒素とかリンとかを見ると、この湾奥部に供給されて高くなっている。こういうふうに高くなっているわけですね。大体このFぐらいを境にして、奥の方で高くなっているということです。
 それで、彼のデータから、大体雨が降ると河川水が有明海に供給されて、そして塩分濃度が薄くなって表層に栄養分がたまる。そうすると、大体1カ月以内に赤潮が発生しているということで、その赤潮が発生する前1カ月の総雨量と、それから赤潮のスケールインデックスですね。それを見ると、以前は大体この程度の雨が降ると赤潮の規模も大きくなるんですが、大体1998年ぐらいを境にかなり大規模化していっているということで、大きな雨が降って栄養塩が供給されると、大体1カ月以内ぐらいに赤潮が発生しています。
 これは2002年の春から夏にかけて、梅雨期ですね。ちょっと小さくて見えにくいんですけれども、大体これから奥が湾の奥部です。塩分を見ると、この辺、それからこの辺、非常に薄くなっています。これは梅雨の降雨で有明海の奥に河川水が流れ込んで薄くなっているということを示しています。そうするとクロロフィルaはぱっと大きくなって赤潮が発生するということで、とにかく雨が降って河川水が奥に流れ込むと、ちょっと間をおいて赤潮が発生している。これは梅雨時に限らず、これは去年の秋のデータなんですけれども、余り雨が降らなかったんですが、やはり少し淡水による淡塩成層を起こした。そうすると、小規模ですがやはり赤潮が発生しているということで、雨が降る、栄養塩が供給される、そうすると赤潮が発生するというプロセスになっています。
 じゃ、その栄養塩がたまる仕組み、滞留する仕組みというのは一体どうなっているのか。これが2001年8月のデータなんですけれども、これは鉛直方向の温度分布の縦断図です。これが湾部の奥の方で、こちらが湾の中央部の方です。これを見ていただくとわかりますように、この辺にポチョッと何か温かい淡水が置かれているような感じで、それから、ここを何か1つの境にして、こちらとどうも様子が違うというのがおわかりになるかと思います。
 これは塩分ですが、これもやはり大体F点あたり、この辺を境にして、こういうふうに上に塩分の薄い淡水が乗っかっているというような、そんな感じです。濃い塩水はこの辺まで進入しています。
 これがそのときのDOなんですが、ちょうど淡水、それから塩分ですね。それから温度によって非常に強い成層化が起こっていて、そのときこの辺ではかなり分散化して、それも大体このFの点あたりを、この辺を境にして、こちら側とこちら側でどうも様子が違うということです。
 これ、先ほど見ていただいた図なんですが、このFを境にして双方で違ってきているということを先ほどから申し上げているんですけれども、ここを境に勾配が、これは栄養塩が河川水によって供給された直後なんですけれども、栄養塩濃度の勾配がはっきりと違うわけですね。こちらは勾配が非常に大きい、こちらは小さい。勾配が大きいということは、この辺は栄養塩が外に出にくい。この勾配が小さいというのは外に出やすいということを意味しているわけで、このFあたりを境にして、どうも物質輸送のメカニズムが違っているのではないかということがこれからもわかってくるわけです。
 我々の推定としては、この長洲-多比良、これは有明海の中で口之津を除けば大体一番狭い場所と思うんですが、ここを境に、これから奥の方にどうも滞留傾向がある。この奥の一番狭いところ、ここが一種のボトルネックみたいなことになっているんじゃないかと考えております。ここを境に、この奥の部分に供給された物質が、じゃ、一体どういうふうに外に出ていっているのか、その辺について述べていきたいと思います。また、この奥部から有明海の中央部に向かって物質が輸送されるときに、諫早湾の存在が一体どういう役割を果たしているのかということが非常に重要になってくるわけです。
 これは長崎大学の石坂先生の衛星写真を処理したもの、2000年の赤潮の大発生のときのものです。大体さっき私が申し上げましたボトルネックの奥で最初に赤潮が発生して、1週間もたたないうちにこうやって全域に広がっていったということで、やはりここから奥が一番最初のきっかけだったということです。
 これは2001年の水産庁によるDOの観測結果ですが、7月の下旬で、この辺に貧酸素水塊、貧酸素化がしやすいということが、この2つからわかります。
 これは我々の研究室でやった、2002年7月31日の平面的なDO濃度の観測結果なんですが、やはりこの辺、それからこの諫早湾と、その北側ですね。そのあたりにおいて貧酸素になっています。先ほど言いましたように、このボトルネックより奥の方でいろいろ問題が起こっている。その結果、こういう貧酸素化が起こる。以前から貧酸素化が起こっていたんだという話もありますが、近年非常に顕在化してきているということが言えると思います。
 じゃ、一体流れはどうなっているのかというのを次に見ていきたいと思います。これは一昨年の10月16日に、我々、有明プロジェクトと称しまして、7つの大学と2つの研究機関が合同で13時間にわたって船20艘で潮流の観測、それからSTD、それから水質等の観測を行いました。そのときのデータの一部なんですが、特に注目していただきたいのがこの部分ですね。これ、多比良-長洲ラインですけれども、島原半島沖のここが非常に流速が大きくなっているということです。それから、諫早湾の入り口のラインでの流速が、こういうふうに南に行けば行くほど流速が大きくなっているという、こういうことですね。
 これは上げ潮のときなんですが、やはり島原沖で速くて、この辺は少しまた大きくなっていて、ここらあたりで……。それから、この諫早湾の入り口のラインではやはり南側が大きくて、北に行くにしたがって大分小さくなっているという、こういうデータが得られております。
 これは先ほどの長洲-多比良のボトルネックと言いましたところの断面の流速分布図です。これは下げ潮のときですね。こちらが多比良ですね。こちらが長洲。ここ、船2艘でやっていますので、ちょうど真ん中がちょっと欠測で切れていますけれども、これはこういう位置関係です。こちらが船1艘、また、こちらが船1艘でやっております。下げ潮が始まってちょっとしたところなんですが、島原沖のここに非常に速い流速が出ております。それから、どちらかというと全体的にも島原側が流速が速くなっているというのが、この流速分布からは見ていただけるかと思います。
 その結果、どういうことが起こるかといいますと、例えば島原半島の沖のここの流速が速くなっているわけですね。ここが速くなります。そうするとどういうことが起こるかというと、例えばこれは2002年5月13日なんですが、Dラインということで、諫早湾の真ん中を通るライン上ですね。これも堤先生のデータですけれども、このライン上の塩分の分布を見ますと、諫早湾の中の表層の塩分が非常に薄くなっている。それから、諫早湾の沖の方に行くにしたがってだんだん表層の塩分が大きくなっていっている。ということはどういうことかというと、諫早湾の締め切り堤から排水が行われているということです。それがこの辺にこうあるということです。そうすると、ここの流速が非常に速いものですから、この辺がスッと抜けてくるわけですね。そうすると、この断面の塩分分布がどうなるかというと、こういう形になりまして、こちらが多比良ですね。こちらが長洲側です。その多比良の沖に、この薄い塩分の水がスッと流れてくるということです。それがこの模式図です。これ、もっと極端な場合にはこういうふうな感じで、やはり島原半島の沖に非常に薄い塩分の水が入ってくる。それを引き起こすのは、すべてここの流速が速くなっているというのが原因になっているわけです。その結果、こういうふうに非常にはっきりした塩分の分布、はっきりした勾配がある場合には、こういうふうに潮目ができるわけです。ですから、この有明海の奥部に河川から淡水が供給されたとき、もしくは諫早湾の締め切り堤から排水されて、ここの表層が淡水で満たされたときに、この多比良沖の速い流速に乗っかってスッと島原半島沿いに薄い塩水が流れてくると、こういうふうになって、そして潮目が出てくるということになってくるわけです。先ほど言いましたように、ここがボトルネックになっていて、我々はこの奥に栄養塩が供給された後、その栄養塩がここに滞留する傾向があるんじゃないかというふうに考えているわけです。
 これは、ちょっと見にくくて申しわけないんですが、先ほどの有明プロジェクトの観測結果です。これは塩分の分布なんですが、この図はどこを示しているかというと、この多比良-長洲のこの断面の塩分濃度分布です。これが島原-熊本、このラインですね。それから、これが大崎鼻と三角、ここですね。それから、このボトルネックのところ、それから熊本-島原、それから大崎鼻と三角、このラインのそれぞれ断面の塩分分布を示しています。これは干潮のときのデータです。これを見ていただくとわかりますように、この島原半島沖に非常に薄い塩水が流れてきているわけですね。非常に薄い塩水。これはさっきも言いましたように、それぞれこういう断面においてこの島原半島沿いの流速が速いものですから、こちら側にまとまった淡水が下げ潮のときにスッとおりてくるわけですね。だから、干潮のときにこういうパターンとなるのは、流速分布がそういう特性を持っていれば当たり前だということなんですが。次は、満潮のときですね。これは満潮のときのデータなんですけれども、満潮のときにもやはり島原半島沖では──先ほどの干潮ほどは強くないですけれども、やはり塩分が薄くなっているわけです。これはどういうことかというと、下げ潮で流速分布に乗って淡水がスッと下がってきます。次の上げ潮で全くもとに戻ればほとんど物質輸送がないということになるんですが、満潮のときもやはりこういうふうに島原半島沖側が薄くなっているということは、下げ潮のときにスッとおりてきたものが完全に元に戻っていないということを意味しているわけなんですね。ですから、この速い流速に乗っかかってスッと島原半島沖をおりて来たものが、次の上げ潮でかなり戻るんですけれども完全には戻らないということです。次の下げ潮でまたスッとおりて来るわけなんですね。ですから、こういう断面の流速分布が島原半島沿いで速くなっていて、その速くなっているがゆえにスッと下げ潮でおりてくるんですが、次の上げ潮でも元に戻らない。これが非常に物質輸送に大きな役割を果たしてくるわけです。
 これはまだ諫早湾の締め切りが行われる前の、長崎大の中村先生たちの多層モデルによるシミュレーションの結果なんですが、この図を見ていただくとおわかりのように、これが下げ潮最盛時のちょっと後ですね。これが流速ベクトル図で、ちょっとわかりにくいかとは思うんですが、この諫早湾からスッと流れおりてくる、このベクトルがここの流速を速くするのに非常に寄与しているわけなんですね。あと、こちら側から来る流速ももちろん寄与しています。諫早湾側からスッと出ていくボリューム、それからこちら側から来るボリューム、こういったものがここの島原半島沖の潮流の流速を速くするのに寄与しているということが言えるわけです。
 ここでもう少し模式的に書きますと、例えば下げ潮のときに、その前に満潮で潮位が上がっていますから、この辺は海水で満たされているわけですが、下げ潮のときに当然ここも水位が下がらなきゃいけないわけで、ここからも出てくる、こちらからも出てくる。そうすると、ここにこういうボリュームがあることによって、この島原半島沖が若干流速が速くなります。もちろんこういうふうにステップ状じゃないんですが、これはあくまでも模式的に示しています。こういうふうに速くなるわけですね。上げ潮のときも同じで、潮位が上がると諫早湾の中も潮位が上がらなきゃいけませんから、こちらに供給するのと同時に、ここも海水を供給しなきゃいけない。そうすると、ここの流速がどうしても速くなって、極端に書くとこういうステップ状の分布が実現される。我々は、ここにこういう諫早湾があるということが、ここの流速をこういうふうに非一様にする大きな理由の1つだと考えているわけです。何度も言いましたように、このボトルネックの多比良-長洲ラインより奥にどうも栄養塩が入ってきて滞留する傾向がある。このラインを基準にして、こちら側とこちら側でいろいろな物質交換、海水交換が行われる。その交換の速さが非常に問題になってくるわけなんですが、我々はここの流速の非一様性というのは非常に大事だと考えているわけなんですね。その非一様性を生むものとして、このボトルネックのすぐ上にある諫早湾の位置とボリューム、このロケーションとボリュームが非常に大きな役割を果たしております。ここに海水が出入りすることによる流体運動が、島原沖の流速をこちらよりも大きくする原因になっていると考えるわけです。じゃ、非一様性というのがどうして大事なのかという話を後でもう一度します。
 もうひとつ、島原沖の流速が速くなる理由には、これは水深図なんですが、多比良-長洲ラインから上を見ると大体この辺が浅くて、この辺が深くなっている。これから見ても、こちら側に流れが偏ってくるということが想像できるわけなんですが、やはりこのすぐ上にある諫早湾のボリュームとロケーション、これが非常に大事となっています。この諫早の締め切り堤によって締め切られた面積なんですが、全体の 2.1%とか──計算の仕方によるんでしょうけれども、3%という場合もあります。全体の 2.1とか3%なんですが、多比良-長洲ラインより上で考えると、大体5,6%から7,8%になってきます。ということは、このラインの断面全体で考えても、大体5,6%から7,8%の流速の減少になってくるということです。まして、この島原沖の部分に対してはもっと影響が大きい。10%か、それぐらいの影響があると思われます。
 これは第三者委員会等にも提出されている資料なんですが、大潮の最大下げ潮時の流速ということで、平成元年、それから平成10年、11年、12年の水深2メートル層の流速です。大体この辺、82センチメートル/秒とか60センチメートル/秒とか、それぐらいですね。82センチメートル/秒とか、54センチメートル/秒とか63センチメートル/秒、53センチメートル/秒とか64センチメートル/秒、51センチメートル/秒とか64センチメートル/秒というふうに小さくなっていっているところです。これは実測ですが、こうなるのはもう当たり前で、当然の結果であるということが言えます。
 これは佐賀大学の大串先生から、衛星写真から透明度の分布を求めたものを拝借したものなんですが、この図から何を言いたかったかというと、1988年、それから1995年、これは下げ潮、これは上げ潮ですね。これは1998年、それから2000年です。青いほど透明度が悪い、それから緑の方が透明度がいいという見方なんですが、この下げ潮のときを見ていただくと、透明度の悪い領域がずっとこの辺までおりてきているわけなんですね。それがいろいろな条件にもよるんでしょうけれども、どうもおりてくる度合いが最近は非常に弱くなっている。上げ潮のときでもかなり弱くなっているということで、最近はどうも島原沖のこの物質輸送が弱くなっているんじゃないかというふうに考えている次第です。
 じゃ、締め切るとどうして弱くなるかということなんですが、例えばこういう湾があって、ここを締め切る。締め切る前は干潮のときはこの水位、満潮のときはこの水位ということで、この間は海水で満たされなきゃいけないわけで、この斜線の部分、これがここから入ってくるんですね。ところが、それを完全に締め切って、こちらの水位を一定にすると、この部分がもう入ってこなくなります。ですから、もしこの中でこの面積が全体の3分の1であれば、この入退潮量は3分の1減りますので、流速も3分の1減るということになります。例えば先ほどの長洲-多比良の線で考えると、この部分が6%とか7%とか、それぐらいになるわけですが、やはりここの流速も断面平均で6%、7%減ってきて当たり前なわけです。
 じゃ、シミュレーションでその辺が一体どうなるか。これは東大の佐藤徹先生らのMECモデルを使った計算結果なんですが、MECモデルというのは造船学会が4つの大学と共同で協力してつくったもので、多層モデルと、それから小規模メッシュの中ではフル3次元の方程式を解くという、それをジョイントするというモデルなんですけれども、これが締め切りがないときの、小潮時の上げ潮最強時ですが、締め切りがないときの上げ潮最強時、それから、これが締め切りがあるときの上げ潮最強時です。これが締め切り堤なしですね。これが締め切り堤あり。この辺の流速を見てもらうとよくわかりますが、やはり締め切り堤のない方が、この辺が特に流速が速くなっている。
 この辺のことは模型実験からも結構明確に出てきています。これは同じく佐藤先生たちの実験なんですけれども、地球の自転の影響も考慮に入れようということで、こういう回転水槽の中に有明海の模型をつくって、そして締め切り堤がある場合、ない場合の実験をしています。パーティクルを使って、それを追跡することによって流速分布を測定しています。
 これは大潮のときの上げ潮最強時なんですが、これは模型実験の結果ですね。これが締め切り堤なし、それからこれが締め切り堤ありで、こういう色分けになっていまして、上の方の色に行けば行くほど流速が速くなっているということです。締め切り堤なしの方が、ありの場合に比べて全体的に流速は速くなっており、特にここが速くなっているということですね。この辺の部分も速くなっているということです。
 それから、これが下げ潮最強時なんですが、やはり締め切り堤ありの場合に比べて締め切り堤なしの場合の方が、特にこの辺が非常に速くなっています。特に下げ潮のときにこの線に沿ってスッとこんな形になりまして、先ほど言いましたように、この部分が全体の 2.1から3%ぐらいの面積だと。このラインから上で考えますと、締め切りによる面積の減少分が大体6%から7,8%ぐらいの面積になる。そうすると、締め切り堤がない場合は全体で6%から7,8%の流速が新たに起こって──起こらなきゃいけないわけなんですが、特に諫早湾がここに位置するということから、この島原半島沖の部分というのはもっと大きく出てくることになるということで、10%ぐらいになると考えております。
 佐藤先生たちは、どちらかというと残差流の方に着目して、潮汐残差流が締め切り堤がある場合とない場合で随分違う。残差流が締め切り堤があることによってやはり遅くなっているという研究結果を発表しているわけですが、我々も残差流ももちろん大事なんですが、その流速分布の非一様性、こういう速い流速が局部的に出てくるのが非常に大事なんだと、我々は特にその辺に注目しているわけです。
 それで、簡単なシミュレーションを行ってみました。この諫早湾の影響をもっと顕著に見るために、締め切り堤がなかったとき、それから少し極端なケースを考えてみたくて、諫早湾を半分のところで締め切ったとき、それから全部締め切ったとき。それから、有明海の奥の方のこの辺ももう直線的にして、この辺を全部埋め立てるというふうに4つのケースでシミュレーションを行ってみました。
 これもちょっとわかりにくいんですけれども、こちらの流速分布を見ていただくといいかと思います。この島原沖が流速がやはり速くなっております。これは締め切り堤がないときの流速でして、いわゆる島原沖では流速が速くなっているということです。
 これが諫早湾を半分締め切った場合。こちらの流速は少し弱くなって、少し一様に近くなっている。
 それから、もう完全に締め切った場合ですね。かなり一様に近くなっているということから、やはりここの流速が速くなるというのは、ここにこういう諫早湾のようなポケットがあることによって、ここの流速が大きくなっていると言えると思います。
 さらに、この上のこの部分を滑らかにすると、さらに一様化が進んでいます。
 それで、簡単なシミュレーションで、じゃ、この部分に例えばさっきから、多比良-長洲ラインから上にたまる傾向があるという話をしているんですが、この部分に栄養塩でも何でもいいんですが、ちょっと物質を置いてみます。本当はここの部分に、ここから上に置きたかったんですが、締め切り堤がない場合と、ある場合と、全くこれがなくなった場合というふうにやっていくと、ここに置いた質量が全然変わってくるので、ちょっとこれより上のこの部分に拡散物質を置いて、これがどれぐらいの速さで拡散していくかという計算を行いました。拡散計算を行ったということです。
 そうすると、こういうふうに締め切り堤のない場合、それから半分に締め切った場合、それから完全に締め切った場合、諫早湾が全部なくなった場合。それから、もう奥の方も完全に干拓か何かして埋め立てられた場合ということで、これはさっきの物質を置くという初期条件を与えた領域に残っている量なんですが、こういう感じで、やはり締め切り堤がない場合が最も速やかに物質を外に運んでいくということがこれからもわかります。ただ、このシミュレーションはそんなに正確なシミュレーションではないので、定性的なところだけこういう傾向があるというぐらいでお考えいただいた方がいいかと思います。
 じゃ、先ほどから言っているように、何で非一様分布が大事なのかという話に移りたいと思います。例えばこういう湾があって、ここにこういうポケット状の湾があって、この奥に例えば河川から栄養塩が供給されたとします。栄養塩が供給されると、もし潮流が一様分布だったら、下げ潮のときにずっとこの辺まで来て、この辺まで来るんですが、次の上げ潮のときにまたもとへ戻っちゃうわけですね。ですから、結局上がったり下がったりしながらほとんど入れかわらないということになるわけです。
 これが例えば流速分布がこういうふうに非一様で、こちらは遅い、こちらは速いというような、こういう非一様分布になっているとどうなるかというと、下げ潮のときに遅いところは遅いなりに出ていくんですが、速いところはもっとバッと出ていくんですね。出てきたときに風とか波とか船とか、また、いろいろな現地の地形とかで、この拡散物質の濃い方から薄い方に向かってどんどん拡散が起こります。拡散が起こるものですから、次の上げ潮で、やはりこっちが速くて、これがずっともとに戻っても、この辺は取り残されるわけですね。これを移流分散と言います。ですから、こういうふうに流速分布が非一様であればあるほど物質交換というのは活発になるわけです。ですから、流速分布が一様であればあるほど交換しにくい。非一様であればあるほど、それが物質交換に有利になるということです。
 ということで、ここに簡単なまとめがございますが、まとまった降雨があると有明海の奥の部分、特に多比良-長洲のラインより上に大量の栄養塩が供給されて、それが滞留傾向にある。滞留傾向があるがゆえに赤潮が発生したときの長期化・大規模化、それから赤潮が出ていかない。それから、植物プランクトンが死んで下に沈殿する。そうすると酸素消費が大きくなってDOが低下するという貧酸素問題につながってくるわけです。地形的、それから密度流的な効果から、島原沖に流速の速い領域が形成される。この流速分布の非一様性が移流分散効果として、特に淡水の大量流入後の海水交換や物質輸送に大きな役割を果たしている。そういう意味で、島原沖の流速を速くしていた諫早湾の存在というのが、そのボリューム、それからロケーションから非常に大きかったんじゃないかと考えております。もし諫早湾が今の位置になくて、例えば上の方にあったら多分全然違っていたと思います。ボトルネックのすぐ上に諫早湾があって、そこに出入りする海水が海水交換ポンプのような、そういう役割を果たして島原沖の流速を速くしていく。島原沖の流速が速くなるがゆえに、下げ潮のときにサーッと島原半島沿いに流れていって、それが上げ潮のときに全部が全部帰ってこないということで、物質交換が非常に活発化していたのではないかと考えております。
 そういったことから、一昨年の有明プロジェクトでは有明海全体の流れを詳細に観測しようということでやったんですが、第1回目の観測で多比良-長洲ラインから上が非常に大事だということがわかってきましたので、実は今年の7月20日に第2回目の有明プロジェクトの一斉観測を行いました。今回は9つの大学が共同して、船16艘、参加人員90余名で13時間にわたって観測を行っています。この図でこういう青い線がADCPによる潮流観測、それから赤い点がSTD、それからDOの観測です。今その結果を解析中で、もうしばらくしたらまたご報告できるかと思います。
 そういうことで、どうも流体力学的に見て諫早湾の締め切りが海水交換を悪くしていると考えているんですが、ですから、その辺を調べるのに一番いいのは、やはり開門していただいて、先ほど述べましたように非常に詳細なデータを今とっているんですけれども、しょせんこれはすべて締め切り後のデータなんですね。ですから、はっきり言って比較のデータにならないわけです。幸い以前、雲仙普賢岳の土石流が水産業に打撃を与えるんじゃないかということで、長崎大学が中心になって1992年、93年、94年ぐらいですかね。そのころ、かなり詳細な潮流の調査をやっています。西ノ首先生たちが、この辺に電磁流速計を1カ月ぐらい置いて、この辺の潮流を測っているわけなんですね。そのデータが出てきましたので、ちょうどよかったということで、実は同じ電磁流速計を同じ場所に同じ時期に置いて、今年の10月に1カ月間計測をやってみました。そうすると、そのデータと以前のデータを比べれば締め切り後の潮流流速がどうなっているかというのがわかってくる。ただ、それもあくまでもポイント計測なので、それで変化が出てきても、じゃ、1点だけでどれだけ確定的なことが言えるのかとなると、また問題です。ですから、できたら長期開門していただくと、開門後にこういう観測調査をやると、いろいろな点でいろいろな比較が明確にできるようになります。そうすると締め切り堤の影響というのもはっきりしてくるわけです。ひょっとしたら締め切り堤の影響はそれほどないのかもしれません。けれども、そういう場合だったら、痛くもない腹を探られなくて済むということになってくるわけで、いずれにしても、その辺は明確にしていただきたいと考えています。
 それで、さっきも言いましたように、この諫早湾が海水交換ポンプの役割を果たしていて、島原沖の流速が速くなっていて、物質がその流速に乗ってスッと出ていくのが物質交換に非常に寄与していたという話なんですが、じゃ、現時点で何も打つ手はないのかということで、現時点でこういうことも対策として考えられるのかなというのを5分ぐらいでお話をさせていただきます。
 これは長崎市の三重地区にある新長崎漁港です。東洋一の規模を持つという漁港なんですが、ちょうどこういうふうに前面に 1.2キロの防波堤があって、両サイドに2つ船の出入り口がある、かなり閉鎖性の強いところですね。中の水質はまだそんなに悪くはないんですが、最近赤潮が発生するようになったということで、今後水質の悪化が少し心配されているところです。
 ここに実はこういうものを置いてみました。潮流というのは基本的には往復流です。こういう流れが当たるときは非常に流体抵抗が大きくて、向こうからの流れが来たときには流体抵抗が小さいというような、こういう構造物を考えてみたわけです。
 これはモデル湾なんですが、例えばこういう湾があって、ここに何か汚染物質がある。これが下げ潮のときはこの辺まで行くけれども、上げ潮でまた帰ってきて、それで全然入れかわらない。それを例えばこういうふうに2つの領域に分けて、こちら側は入ってくるときは抵抗が小さくて、出ていくときは抵抗が大きい。こちらは逆に向けて、入ってくるときは抵抗が大きいけれども、出ていくときは抵抗が小さいというふうにしておくと、下げ潮のときにはこちらは抵抗が小さいから流れやすい、こっちは抵抗が大きいから流れにくい。今度は逆に上げ潮のときは抵抗が小さいから流れやすくて、ぐっと入ってくる。こっちは流れにくい。そうすると、こういう残差流が出てくるわけですね。こういう残差流をつくり出すことによって海水交換ができていくということで、実はこの新長崎漁港に、この2つの入り口にこういう流況制御ブロックという、こういうものを置いてみたわけです。この場合は、ここから入ってくるときは抵抗が小さくて、出ていくときは抵抗が大きい。こっちは入ってくるときは抵抗が大きくて、出ていくときは抵抗が小さい。そうすると、1潮汐平均をとると、こういう潮汐残差流が生じます。特にこういう制御をする、そうすると、こういう循環流が形成され、この残差循環流によって水が入れかわるということになるわけです。
 実際に入れたものはこういうもので、高さ4メートル、幅4メートルの大きさです。こういうものを60基つくって入れました。
 せっかくこういうものを入れるので、できるだけ環境にいいものをということで、これは人工コンブです。ゴムなんですが、いろいろ突起とか穴とかがあって、ベントスが非常につきやすいということです。そういうものもつけてみました。
 これを入れた結果、COD、それからDO濃度、そういったものにかなり顕著な効果が見られたということで、港内外の海水交換を促進しているという結論が得られております。それで、例えば有明海でこれがボトルネックで、これから上に滞留傾向があるということで、こことここの間の海水交換をよくすればいいということになります。そのためには、ここを流れる流速が、この締め切り堤によって遅くなったのであれば、その流速を何とか取り戻してやればいいんじゃないかということで、先ほどの流況制御ブロックをこういうふうに置いてみます。これは上げ潮のときは抵抗が小さくて、下げ潮のときは抵抗が大きい。ここは、これはただの抵抗体です。ですから、上げ潮のときはここは抵抗があって流れにくいんですが、こちらは普通に流れる。こっちはちょっと……。下げ潮のときはここが抵抗、ここも抵抗。そうするとここが流れるというようなことで、かなりこういうことで物質循環がよくなるのではないかと考えています。
 もちろんこういうことに関しては、シミュレーション、模型実験等で効果を詳細に検討していかなきゃいけないんですが、これはこれからの課題です。ただ、この方法のいいところは、ただ設置しているだけなので、どうしてもまずいというときはすぐ撤去ができるわけなんですね。だから調整がきく、それから後戻りがきく、そういう技術ということです。
 有明海では、先ほどのところでしたら結構地盤はいいと思うんですが、例えば諫早湾の中で実施するときは、この辺は結構地盤がいいと思うんですが、この辺はかなり下が軟弱です。そういうところには長崎漁港に置いたようなものは多分置けないだろうということで、非常にこれは軽いものです。合成樹脂ですので非常に軽いものなんですが、これは耐久性がすごくあります。20年、30年、十分もつ。係留して固定しようという、こういったもの、それからやはりコンクリート構造物で長崎漁港に置いたようなもの、いろいろつくって、実は諫早湾の小長井漁協の沖に6基ほど沈めて、これはマリノフォーラム21の研究助成で行っている研究なんですが、沈下量を今調べているところです。ところが、沈むだろうと思っていたら意外と沈まないんですね。だから、長崎漁港に置いたようなものもかなりいけるかなと今思っています。ただ、20年、30年ともし置くとすれば、できるだけ沈下のないもので、やはりこういう軽量構造の研究が必要かなというふうに考えているところです。
 以上です。

○須藤委員長 小松先生、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの小松先生のご説明で何かご質問はございますでしょうか。ご意見でも結構でございます。
 滝川先生、お願いします。

○滝川委員 大変なご研究をお聞きしましたけれども、ちょっと3点ほど教えていただきたいんです。
 最初の6枚目のOHPのところで、赤潮発生に関して横軸にたしか降雨量、縦軸に赤潮発生の、これ、何かメッシュか何かをかけられたとかおっしゃっていたんですが、それで、先ほど大和田先生の方からお話があったんですけれども、今、赤潮のそういった発生量というものを降雨との関係で見られるのは当然、比例関係があるから当たり前の話だと思うんですけれども、それ以外に、先ほど大和田先生のお話がありましたように、日射量とかその後の期間とかいう軸でもしご検討なさっていたら、もっと明確にわかるのかなという気がいたしまして、そこの点が1点。
 あと、先生のポンプのお話は非常に興味深く聞かせていただいたんですが、ポンプという概念だと、何か波にといいますか、潮汐に対してエネルギーを与えるというか、ポンプという機能そのものはエネルギーのないところにエネルギーを与えるわけですね。だから、諫早という形状がなぜそういうエネルギーを持つのかというところが、ちょっと私は理解しかねる。多分境界条件が前面に出て、しかも反射してしまうと、そういう境界条件の問題として考えたらいけないのかというのが私が思うところなものですから、そこのところのお考えをもしご示唆いただけたらなというのが第2点目です。
 それと、もう一点は、先ほど東京大学の方で遠心装置といいますか、重力場を使って実験をなさったという実験データをお示ししていただいたんですが、これの模型は有明海全体をつくられての模型だったのかどうか。多分中途半端といいますか、上半分だと境界条件がかなり変わってくるので、重力場をつくるにしてもちょっとおかしいのかなという疑問なんですけれども、ちょっと結果だけ見させていただくと半分から上だけみたいなので、そこら辺のところを教えていただけるかなということなんですけれども、以上3点、教えていただけますか。

○須藤委員長 簡潔にお願いいたします。

○小松委員 まず最初の、日射とかいろいろな量が当然関わってくるだろうということですが、まさにおっしゃるとおりです。ですから、この図でばらついているのは、多分そういうファクターがきいてるのだろうと考えています。我々としては、赤潮の発生メカニズムそのものを研究しているわけじゃなくて、淡水供給があって栄養塩の供給があって、そしてその後に赤潮が発生する。そこの滞留時間の増大が赤潮の大規模化につながっているんだろうということで、ですから、これは降雨量と、それから起こる赤潮の発生量の因果関係を言っただけです。我々としては、栄養塩が供給されて赤潮が発生して大規模化する、その間のタイムスケールと、栄養塩が滞留するタイムスケールが今は多分同じぐらいになっているのだろうと考えています。以前は滞留するタイムスケールがもう少し短くて、赤潮が発生しても速やかに出ていくとか、そういうことであまり大規模化しなかったんじゃないかということで、この図はあくまでも降雨量と赤潮の間のありのままの因果関係を言っているだけです。
 それから2点目なんですが、海水交換ポンプというのは、私は非常にわかりやすいと思ってそういう比喩を使っているんですが、ポンプというのはエネルギーを与えてやるものだと言うことですが、余りそういう意識はありません。あそこにああいう引っ込み部があって、そこに水が入ったり出たりポンプのような働きをすることによって島原沖の流速が速くなる。それが多比良-長洲ラインより上の物質を非常に速やかに引っ張り出してくるという意味で使っています。

○滝川委員 ですから、むしろ境界自体が変わっているというふうに、シミュレーション等々をやるときはそういうふうな形になってきますよね。結果的にそういうふうになりますよね。そこの違いだというふうに解釈してよろしいのでしょうか。

○小松委員 シミュレーションでやるとそうなんでしょうが、物理的に解釈するとこういう解釈になってきます。
 それから、3点目の模型実験なんですが、私、佐藤先生からこの図をもらって、現物は見ていないので……。ただ、これに少し載っていますね。ここは口之津でこちらが外海ですね。ですから、かなり大きくとっていますね。だから有明海のごく一部じゃないですね。大体シミュレーションするぐらいの範囲はとっております。

○須藤委員長 よろしゅうございますか。ほかにございますか。
 中田先生、どうぞ。

○中田教授 諫早湾の地形と潮流がある種の相互作用をして、ああいう非一様の流れをつくるというような考え方はおもしろいと思うんですけれども、ご存じのように、もうひとつあそこら辺の島原沖の南下流なんかのことを考えようとすると、密度構造に原因する密度流ですよね。これが結構影響が大きいだろうと思うんです。多分湾奥のいろいろな水の滞留の問題なんかにしても、そういう密度流による交換というようなものと、それにかぶさって、今日お話しいただいたようなことが出てくると思うんですけれども、かなり密度流によるいろいろな変動にマスクされたものとして現実の問題が出てくると思うんですよね。
 ですから、1つコメントとしては、実際現場で今検証しようとしておられるんですが、そこら辺は結構難しいかもしれないなという感じもするんですけれども、何かご意見がありましたらお伺いしてみたいと思います。

○小松委員 先生がおっしゃるとおりだと思います。特に我々、栄養塩が供給される、これは河川水によって供給されるわけですから表層にたまるわけですね。それがスッと流れていく。大雨の後なんかに行きますと、非常に薄い層で島原沖をスッと流れていっているんですね。そこを船が通るとすぐ水の色が変わりますので、あれは非常に薄いというのはすぐわかるんですが、せいぜい20,30センチぐらいの層を作って流れていっている。これはもうシミュレーションできないですね、20,30センチとかいう厚さだと。確かにそういう密度流効果で表層をスッと流れていくんですが、ですから、我々が言っているように、こういう海水交換ポンプの働きもあって島原沖にスッと流れていく。そして、実測なんかをやっていると、さっき言ったように潮目等ができていて、測るとやはり表層に薄い淡水層ができていてスッと流れている。ですから、海水交換ポンプで島原沖の流速が速くなる以上に、実は密度流効果で速くなっているんじゃないか、それが相乗効果でもっと速くなっているんではないかなと考えています。ですから、相乗効果の場合は、やはり諫早湾を締め切ることによって海水交換ポンプの役割がなくなったということが、我々が考えている以上にマイナス効果になっているんじゃないかと考えています。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 じゃ、時間が経過していますので、あと、簡潔にお願いします。楠田先生からどうぞ。

○楠田委員 縦軸のところでC、D、E、Fのところが濃度勾配が大きい、そしてF、Gのところに境目があって、あと、H、Jというふうに緩やかになるというお話を聞かせていただいて、おもしろいなと思いました。今は奥の方の濃度勾配の大きいところのお話を伺ったんですが、それじゃ、手前の濃度勾配の低いところをそういうふうにするメカニズム、つまり、よく混合を促進させているメカニズムは何なんですか。

○小松委員 この実測値を見ていただいたらわかるんですが、下げ潮のとき、ここが非常に流速が速くなって、ザーッとこういうふうに行きます。上げ潮のときはかなり東側も速くなるんですね、流速がこういうふうに。もちろんここも速いんですが、諫早湾に供給しないといけませんから速いんですけれども、この辺が。ということはどういうことかというと、ザーッとこの辺まで流れ下りてきたものが次にもとに戻るんですけれども、完全にもとに戻らなくて、こちらの東の方にも来るわけなんですね。そうすると、移流による輸送、それから、さらにそれが拡散による輸送、両者が相まって輸送される。特に移流による輸送が非常に大きいと思います。ですから、これから下は、この流速分布が上げ潮と下げ潮では違うということで、ここで下がっているのがまた上がっているということで、その辺で非常に輸送効果が大きくなっているんじゃないかと思います。

○楠田委員 それは地球の自転の影響と考えてよろしいんですか。地形効果ではないんですか。

○小松委員 両方だと思いますね、地形効果と自転の両方。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、小松先生のご発表はこれで終了させていただきます。
 ここで多少休憩をとりたいと思いますので、どういたしましょう。今、一応あの時計で3時20分まで。3時20分になりましたら始めさせていただきます。
 じゃ、しばらくの間休憩をとってください。

○須藤委員長 それでは、時間が参りましたので再開をさせていただきます。
 次は、滝川先生から、「有明海の海域環境の変動特性」と題してプレゼンテーションをいただきます。お願いいたします。

○滝川委員 熊本大学の滝川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 小松先生のプレゼンテーションも枚数が大変たくさんあるなと思って拝見しておりましたけれども、私のを数えましたら百幾つぐらいありましたので、申しわけございませんが、ちょっと座りながら、こっちの方に専念しながらしゃべらせてください。
 変動特性ということなんですが、最初に皆さんにご認識いただきたいというのが、有明海、あるいは八代海というのが、閉鎖度指数というのがございまして、それが非常に高い。東京湾、伊勢湾とかいうのが2前後なんですが、それが実に30倍、あるいは12,13倍あるというふうに非常にクローズ、閉鎖度が高い。つまり外海の影響もさることながら、内陸の影響が非常に大きい海域であるということでございます。そういったことで、有明海、あるいは八代海の近くにおります私どもにとりまして、かなりこの環境が以前から悪くなっている。
 これは地元の新聞なんですが、南海性のイシサンゴが非常に急に増えてきたとか、そういうのが1980年代の後半ぐらいからたくさん見られるようになってまいりました。そういったことで、これは大変だということで研究を始めたということで、いろいろ取りかかってきたわけです。先ほど大和田先生からお話がありましたように、これ、ちょっと見にくいんですけれども、八代海の方の赤潮の発生地点ですね。それがどんどん年を追うごとに海域全体に広がってきて、しかもそれが夏場だけじゃなくて冬場の方にも赤潮が発生してきたというふうなことで、それが2000年の夏には、ご存じのように非常に大きな赤潮が発生して、有明海の方でも非常な赤潮の発生があったという状態に陥っているということでございます。
 それと同時に、これは魚介類の変動なんですが、1970年代後半から80年代ぐらいにアサリが非常に高くとれていたのが減少の一途をたどっているという、漁獲、漁業生産にとっても非常に深刻な事態に陥っている。それが2000年の冬にはご存じのようなノリの色落ちが発生いたしまして大被害を被って、これは一大事だというふうなことで、国の方ではご存じのように第三者委員会が立ち上げられ、これは今年3月いっぱいで終わったんですけれども、農林水産省の方では諫早湾を中心にした開門総合調査、あるいは諫早湾の中・長期開門調査というふうなことで総合的な調査が行われている。それと一方、今、私どもがおるところのような環境省の評価委員会ということで、有明・八代海の再生に向けてどうしようかというふうな動きになっているという状況でございます。
 そういった中で、国の第三者委員会の中において、清水先生が委員長でいらっしゃいますけれども、ここのところでの検討の中では、実は有明・八代海について海域の環境調査をしようということで有明海海域環境調査というものが行われました。この中におきましては、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省というふうなところで、いろいろな調査、現地調査、あるいは過去のデータの整理等々が行われ、特に国調費の方では海域環境のモデルというふうなことで、流動化のモデル、それをもとにした水質変動ですね。生態系がどう変わっていくかという水質モデルをつくった。さらには海底の底泥がどういうふうに変わっているかというふうな底泥輸送モデルというシミュレーションのモデルを使って、原因を追及ということまでにはいかないんだけれども、要因が何であるかということをシミュレーションのサイドから追及して、そして再生に向けて何ができるかというふうなことを検討しようということで進めてきたわけであります。
 流動モデルの中におきましては、こういういろいろなモデルがあります。計算の精度が、どこまでを計算領域にするかというふうなことで精度がございますが、そういったものに対して、このモデルの中では実測の潮位変動、これは潮位ですけれども、潮位によるチェックがどの程度再現性があるかということをチェックし、かつ塩分についても、あるポイントでの塩分濃度がどういうふうな時系、これについては1年間なんですが、その実測値との変動の中でシミュレーションの精度といいますか、そういったものを使いながら精度を高めた上である程度検討をしていくというふうなことで、その報告書等々はもう既に発表してありますので、それを見ていただければと思うんですが、水質についてもここに十分精度があるよというふうなことで議論を進めてきているわけです。先般来問題になっています夏の時期には、この湾奥の方でどう貧酸素水塊が発生するのかというところをある程度再現できるようなレベルには、今のところいっているということでございます。
 それと、農林水産省の方の総合開門調査というふうなところでもいろいろなことが議論になっておりますけれども、特に一例だけを申しますと、この水質環境ということに関しては、諫早湾の干潟が失われたといいますか、過去あったところの干潟を再現するとどの程度の影響があるのかというようなことも含めて検討を進めてございまして、諫早湾のモデルをつくるために諫早に近い干潟を選んで、そこの生態モデルといいますか、それを構築しましていろいろなことを検討していこうと。例えば、このDOというのは諫早の締め切り堤防の部分によってどの程度違うかというようなことについてもいろいろ調べております。これは潮汐と同じように、湾内についての潮汐変動の変動は、潮流等々は見受けられるけれども、湾域全体にわたっての大きな変動というのは、シミュレーションの結果からすると今のところないようである。DOという、底面ですけれども、そういったものにも顕著な差というのは、今のところDOでは明らかには見受けられないというのが結論です。
 そういった状況にあるという中で、有明海の異変というものをとらえるためにどういうとらえ方をするのかというのが非常に大きな観点になるというふうなことで、これはいろいろなことが言われているわけですが、結果的には内陸からの負荷、あるいは雨等による影響、あるいは日照時間等々の影響、そういったものが非常に複雑に入り組んでいるので、そういったもののバランスが何か崩れたんだろうというふうな観点のもとに、有明の環境変動ということについては海域全体の物理化学、あるいは生物生産等を視野に入れた総合的な取り組みをしましょうというふうなことで、いろいろなことで研究が進められてきたわけです。これは第三者委員会の最初のときに原因仮説という形で発表されたと思うんですが、原因仮説というようなことで、底質悪化、干潟消失による底棲生物の減少、それにかかわるような事項の整理、あるいはそのほかの人為的・自然的なインパクト、特に環境ホルモン等汚染物質、あるいは再処理等々についても考慮する必要がある。あるいは自然インパクトについても、周期的な気候・海洋変動、あるいは地球温暖化等々についても考える必要があるだろうというようなことで、非常に影響を与えることが大きいというふうなことで、1人の研究者といいますか、1グループ等で解決できるような問題ではないということなんですが、ここで私が科学研究費をずっといただいておりまして、平成10年から13年、13年から15年、14年から17年という総合的な研究のスタンスから得られた結果等々をご紹介させていただきたいというふうに思っております。
 今日お話しするのは、過去の調査分析、あるいは数値シミュレーションに基づいた有明海の潮汐変動の特性、それから、過去20年間における気象変動特性、それから同じく水質変動特性、特に最近の一番新しいデータですが、ちょっと間に合わなかったものですから、皆さんのお手元に別刷りの形で、別資料という形で底質変動特性というものをお示しいたしております。これは後で申し上げますが、ちょっと修正がございまして、実は昨夜また新しい図面を多少だけ入れたものがございます。その結果を今日発表するという形にしたいと思います。
 まず潮汐変動特性ということですが、一般的に有明の海は、反時計回りで海水域が交換をしているところ、なかなかしにくいところ、あるいは停流区域というふうに言われております。これは私が行ったシミュレーションでございますが、ちょっと赤と青で非常にあれなんですけれども、これは線流量といいまして、ここを通過する断面流量のスケールをかいたものです。これが潮受け堤防がある場合と、あるいはこれがない場合で、ちょっと今の図ではわからないんですが、これを見ていただくとわかるかと思いますが、反時計方向であると一義的に言えない。つまり、主方向は湾奥に向かって流れて、小松先生がおっしゃったように島原半島の東岸沿いに南下する流れが恒流として出ています。しかし、それがメーンであるんですが、海底水道に沿って下から流れる、あるいはそれを反対に回るような感じというのが非常に複雑に入り組んでおりまして、どこの断面で考えるかというところ、断面のとり方次第ではどうにでも変わる、変わりようがあるというふうなことで、これもまたよくわからないというようなことだと思います。ただし、その中で、これは大浦における潮汐の潮位変化ですね。平均の潮位を横軸にとりまして、縦軸が大潮のときの干満の差です。これをちょっとわかりにくいんですけれども、1990年の前と後で分けてプロットしております。過去からにわたって結果を具体的に申し上げると、平均潮位はずっと上がってきて右の方に行っている。それに伴って干満の差は5メートル10センチから4メートル90センチ、およそ20センチぐらい、大浦のところでは平均的に下がっていて、これは観測結果です。そういったものが伺えます。それと、これは湾口近くに当たる三角のところでも同じように、過去20年ぐらいからやはりだんだんと平均潮位の上昇とともに潮位差は減少の傾向にあるというのがわかる。そういったものを検証する意味で、数値シミュレーションをいろいろなところでも行っているわけです。ただし、これをとるときに、またいろいろな問題を後でまた申し上げますが、かなり大きな範囲をとらないとおかしいことになる。
 ちょっとこれはわかりにくいかもしれませんが、横軸は有明の海に注ぐ外海からの波の周期と考えてよろしいかと思います。普通、M2潮とかS2潮とかというのが、この12時間当たりのこういった周期の波が入ってくる。そういったいろいろな周期の波を入れていきますと、有明海にとって一番大きな共振を起こすような外海の波というのは大体10時間ぐらい。というのは、これは外海を非常に大きくとって、ここに1つ大きなピークがございますが、これは橘湾の影響を受けて、湾口の入り口のところに当たる口之津がございますが、その口之津のところでの影響があって、それがよく出る。口之津を1といいますか、対象に考えてしまいますと、ここが基準になりますから、そこのところで境界条件を考えちゃうと、実際外海の波ではなくて、1間半ぐらいの波で共振してしまうというおかしな結果になっちゃう。ですから、境界条件のとり方で答えは全然違うんだということで、S2潮、M2潮という話がありますが、ここのところ、12時間ちょっと、あるいはこの前後ぐらいのところの波に対してどう応答するか、あるいはほかの波がやってくるとこういったもののいろいろな増幅率が変わってきますから、こういったものが重合された形で有明の潮汐変動というものが生じているというふうにお考えいただいたらいいと思います。一番大きな応答をするのは10時間ぐらいが外海の波がやってきたとき。1時間半というのは湾口の口之津あたりを中心に計算をしてみるとそういうふうになりますという話になる。
 そういったものと同じように八代海の方で研究いたしますと、八代海においては、これは八代の3時間というところのピーク。これは縦軸方向のセイッシュといいますか、固有振動と、これに一致するような共振周期が出ている。9時間ちょっとのところは、これは有明海の影響です。ですから、有明海の影響が本渡の瀬戸等を通じて八代海にも多少潮汐の変動を与えている。逆に言えば、有明についても八代海の変動というのは多少入ってくる。ですから、八代海を入れて考えるか、考えないのかということでも計算の精度が変わってくるということです。
 これは先ほど小松先生もお示しになりましたけれども、この潮受け堤防があるか、ないかというふうなことでのシミュレーションでありまして、確かにここを締め切りますと、従来はここに入り込んできた流れが中の方に入らない形になります。出てきたところが、ここの反転流が締め切りがないときはあるんですが、締め切ってしまうと、これがスッとこういうふうに行ってしまうというふうな、私の計算によるそういう形として影響を受けるということです。
 そういったことで、これは潮受け堤防の有無による影響を示した図なんですが、湾央部のところで大体潮受け堤防があると、ないときに比べて 2.5%ぐらい干満の差が小さくなる。高さに直すと、これは10センチか12センチぐらい。これはM2潮といいまして、半月周期の波だけを入れたときです。実際はこれにいろいろな波が融合してきますから、実際の結果はこんなものにはならないという計算結果もほかの先生方は言われている。実際の波を入れてしまうとM2潮プラスほかの波の周期が入ってきますから、多少これは埋もれてしまうといいますか、ほかの結果と一緒になって余り顕著な差がないような報告を受けています。
 これは同じように平均潮位が上がったときのその振幅の差。平均潮位が上がると、大体湾奥の方で8センチぐらいは干満の差が小さくなるというふうな結果になると。熊本港の話がございますが、これもシミュレーションにかけた結果です。熊本新港の影響があるのとないのとどういうふうに違うかということを調べたんですが、潮汐に関しては本当に誤差のない、数センチの範囲ぐらいの差。これはなぜかというと、潮汐ほどの大きな波長といいますか、物を持っている構造は、多分潮汐にかかわるスケールの波というのは、大体波の半分ぐらいの長さのスケールがないと影響が出てこない。ですから、潮汐みたいな非常に大きな波長といいますか、数十キロメートル、数キロメートルにも及ぶようなものに対して影響を与えるんだったら、それなりの大きな構造物がないと潮汐変動、波に対して影響がないということで、それは当然の結果です。ただし流れに関しては別なんです、一方向の。ですから、潮汐というものに対しては、その程度でしかあり得ないということです。
 それと、それ以外の影響として考えなきゃならないのは、先ほどからいろいろなファクターがありますというお話ですが、風ですね。風の動き。例えばこれは3メートルの風が吹くと、表面のところは2センチぐらいの──これが2センチですから数十センチぐらいの流速、風の向きが変わってくる。ですから、たかだか3メートル、4メートルの風でも、有明に行きますと、小さなボートですとなかなかこぐことができないぐらいに大きな波が立ちますが、そういった影響というのはかなり出てくる。東の風、西の風、全然流れの向きが変わっています。北風、南風でも全然違うということで、風による影響も当然あります。これはもちろん3次元的な流れにも影響を与える話である。
 それと、ふだんの河川からの流入と同時に、これは熊本を中心にした緑川、白川、あるいは菊池川というところですが、河川からいろいろなものが大雨が降ったりすると流れ出してくる。その流れ出す範囲が、それこそ物質拡散の計算で出てくるんですが、そういうふうにしますとかなり大きな範囲まで流れて影響を与える。しかもそれが北上を続けていくというのが出てまいりまして、通常の平時ということですと干潟の上ぐらいまでしか行かないんですけれども、 200ミリ、 300ミリというふうに降ったような雨のときには、瞬時にしていろいろな物質が含まれたまま有明の海に影響を与えるということです。
 それと同時にノリの作付面積ということを見てみますと、これは昭和38年と、それ以外のとき──ちょっと濃く写っているところが38年ぐらいのノリが許可されていたノリの作付面積のマップであって、48年になると劇的にこういうふうに減ってくるというふうなこと。つまり、この間、内陸の方で何が起こったかというと、いわゆる高度成長期ですから、いろいろな農業、あるいは工業都市化というものが進んできて栄養塩が大量に流れ込むようになって、有明海の真ん中ぐらいまで栄養塩が行き渡るようになってきたということの証拠であるというふうに思います。そういったことと同時に、物理学的といいますか、流れの問題からすると、ノリ網の抵抗というのも非常に大きいというふうなことで、これも考慮に入れる必要がある。こういったものを考慮に入れる場合と入れない場合とどの程度違うかということ、これは実測も含めて、それに合うためにはかなり大きな、海底面のケースよりももっと大きなケースへ入れないと実際に合わない程度にノリ網の影響というのも大きいものがある。先ほどの小松先生のお話によりますと、諫早湾の締め切りでもって湾奥の滞留時間が遅まるというふうなお話だったんですが、ちょっとこれ、私も訂正しなきゃいけないんですが、締め切る前、これは粒子追跡といいまして、粒子を置いておいて、それが時間ごとに何個移動したかというふうなことで推定するんですけれども、そういう計算をしますと、逆に締め切り前が54日だったものが締め切った後は51日になって、ノリ網が存在すると52日になって、ちょっとこのやり方がまずかったのかもしれませんが、逆に締め切り前の方が滞留していて、締め切った後の方が速くなっているというふうな結果になっていますので、これは十分に検討する余地があるのかなと思っております。
 それと、ほかに海域環境に与える影響といたしましては、かなり熊本県の中の方の海岸が自然海岸が少なくなっている。特に熊本県では全国と逆でありまして、自然海岸、あるいは半自然海岸というのが40%、人工海岸が60%というふうになっております。こういうふうに、従来は昭和40年代ぐらいのときには入り江に沿った道路というのがあったんですが、こういったところはいわゆる干潟といいますか、干潮域で海水が出入りしていた。それが沿岸沿いにずっと道路が張りめぐらされてしまって、いわゆる土の境界でなくてコンクリートとの境界が生じてしまう。それが非常に大きい。それと同時に砂浜が非常に減ってきている。実に熊本県の中の砂浜の減少というのをハマゴウという植物を使って調べてみますと、70%ぐらいの砂場が減っている。非常にそういうゆゆしき問題がある。熊本県で40%自然海岸が残っていると言いましたけれども、実はその40%のほとんどがこういうふうに礫の海岸で、砂浜の海岸じゃございません。そういったもの、あるいはこういった道路護岸というものがあって、陸地との境界がコンクリートの境界だというふうな実情があるということ。あるいは、こういった人工的な海水浴場というふうなことであっても、人に優しいとか言いながら、実は生物には──海岸をつくっているというふうなことで、むしろこういったようなものよりもなぎさ線を回復するというふうなことが非常に大きなポイント。先ほど大和田先生も最後の方でおっしゃいましたけれども、防護海岸という目的、あるいは利用目的というんじゃなくて、1つの天然の干潟というものをやはり中心に考えていく必要があるというふうに思っているところでございます。
 これは気象変動特性ということでございます。熊本及び佐賀地方気象台における気象観測記録を見てみますと、1950年代ぐらいから、これが最高気温、これが平均気温、最低気温というものでございますが、これが徐々に上昇傾向にある。特に最低気温というのが3度から4度、5度近く上昇している。最高気温というのは1,2度で余り極端な差はないんですけれども、とにかく最低気温が高くなっているというのが特徴です。
 これは地表面におけるアノマリーナという、いわゆる熱放射ですが、そういったものを調べたものでございまして、やはり近年、1970年から80年ぐらい、各月々の平均、3カ月平均したんですけれども、どの月にわたってもやはり上昇傾向にあるというものが、地球規模の気象変動というのがある。
 それと同時に、これは熊本地方気象台における降水量です。年々の変動を示したもので、こちらは降水量なんですが、平均的な降水量そのものは余り変わっているようには見えないんですが、この変動の幅が非常に最近大きくなっているというのが1つの特徴でございます。ですから、非常に雨が多い年とそうじゃない年というものが極端にあらわれてきて、そういったものの標準偏差というのをとってみますと、大体1960年ぐらいから80年代ぐらいは標準偏差で 400ミリぐらいなのが、特にここ最近は 500ミリぐらいの標準偏差、非常に強烈な雨が降り出すというふうなことが降雨の立場から言えるということです。
 それと、これは1998年、99年、2000年、2001年の熊本地方気象台、こちら側が佐賀の気象台における、上の方が日射量の偏差です。各月々の偏差で、横に書いてあるのが1、2、3、4ということで月です。30年間に及ぶ月平均のデータからどの程度偏差があるかということでありまして、2000年を見てみますと、熊本地方気象台、あるいは佐賀地方気象台でも2月から5月ぐらいのやつが非常に高いという状態がある。それと夏場、7月から9月にかけても非常に高い状態が生じている。その同じ2000年には、この10月、11月のときには非常に多量の雨が降っている。各年に比べて 150%にもなるような大雨が降ったということ。それと1ヶ月ぐらいおくれたときのノリの色落ちが起きたときには、非常に好天の日射が続いていたということでございまして、先ほどからお話がございましたように、非常に夏場日射量が大きくて、そして冬に差しかかる前に、11月ぐらいに雨が降って、そして1ヶ月ぐらい、滞留時間が大体1ヶ月、50日から60日というふうに言われていますが、有明海の滞留時間に合うような、その間も栄養物質がかなり停流していたんですけれども、そういったものが高日射によって影響を与えるというふうなことが考えられる。
 それと、これはそれを裏付けるようなデータなんですけれども、ちょっと見にくいんですが、ここの真ん中のところ、これが日本列島です。これは東シナ海を中心に書いたやつで、1999年、ノリの色落ちが起こる前の年の日本を中心にしたところで、赤いやつの方が余計温度が高い。つまり2月から7月については、2000年のノリの色落ちが起こったときには、前の年よりも非常に夏の間気温が高かったということ。逆にこれが冬になると、むしろ10月から11月の間は2000年の方が日射量が小さい。要するに雲がたくさんかかっているということで、可降河口水量という形で見ますと、7月は2000年の方が降水が少ない。それが冬になると非常に雲が多くなって、つまり夏の間熱せられてエネルギーが供給された非常に高い日射量、それが冬場に通常放出されるんでしょうけれども、それがふたをされたような状態になって、高水温、高気温というようなものが観察されているということでございます。
 そういったことに対応するかのようにといいますか、これは東シナ海における全域の、下向きグラフですから短波放射フラックスですか、日射量みたいなもの。それが10月から12月、冬場は1990年ぐらいまで上昇傾向にあるのが、それが90年を境にして、どうも冬場はちょっと減少傾向にある。それと逆に、1月から3月、4月、5月の春先にかけては、そういったものが最近は上昇傾向にある。どうもこういう地球規模的な変動の影響がかなりあるんじゃないかというふうなことで、1つのまとめなんですけれども、赤潮の大量発生、あるいはノリの色落ちの被害が生じた2000年につきましては、夏季モンスーンの発達が近年のほかの年と比べて非常に弱くて、太平洋高気圧の発達に伴って7月において高日射状態が続いた。夏場は非常に高日射状態が続いた。それと同時に赤道付近の降水振動というんですか、そういったものが東シナ海の影響が有明にも影響を与えているようであって、2000年秋の大量降水もその1つの可能性があるということも考えられます。そして、2000年秋の降水と、12月に入り日射量が増大したということで高温状態が続いたということが、ノリの色落ちにつながる1つの気象的な要因として考えられるということでございます。気象サイドから見るとそういったことが言えるんではないかということです。
 これは水質の変動で、過去30年における熊本県、福岡県、佐賀県における浅海定線データでございます。それをちょっと整理してみてとってみようということで、ちょっと縦断の軸をこういうふうな軸にとって、湾軸に沿った形で、S4という地点がちょうど諫早の湾口のところから沿ったところのあたりのところとちょっとご記憶いただければ……。ここのところ、これは縦断の図です。1993年、94年というふうにずっと2000年まで書いておりますが、これは夏季、7月における水温の縦断分布図です。水温がこういうふうに、夏測ってみると非常に表面のところが等高線が横に寝ている。つまり成層化が起こっているということでございます。これ、過去からかなりそういったものが起こっている。あるいは冬場になると逆にこれは縦になっていますから、要するに冬場は海水混合が行われずに、岸の方が海水温も冷たくてという傾向がございます。夏場には成層化が起きているということであります。
 これは先ほど申し上げたS4地点のDOでございまして、例えばどこか1つ例をとると、これが1993年ですが、ここのところを見ますと、1つの図が1年間の変動でございまして、縦軸は水深ですね、下に行けば水底。横軸の方が、これは月ですね。こうやって見ていただきますと、6、7、8月ぐらいに底層付近にこういう白いDOの低いところ、要するに貧酸素水塊が出現しているという絵でございまして、そういったことから見てみると、1973年ぐらいからやはり夏場のところには底層付近に、S4地点ですが、ものがあらわれてきているという確認がなされた。
 これは、それの湾奥全体についてのアニメーションをつくりました。これ、ちょっと見にくいので、これは1983年です。1月、2月、3月、4月、横に並んでいます。これを見ますと5月ぐらいのところで、どうもここら辺のところから貧酸素。これは底層だけのDOの分布別のコタイをしていますが、春先から貧酸素水塊があらわれてきて、それがだんだんと夏の間に広がっていくということです。冬場になると、どうもちょっとここのところ、これは荒尾の沖あたりのところで、冬場に貧酸素水塊が発生するところが毎年出てまいります。そういった傾向が湾奥の傾向としたら全体的に、夏場はやはりこっちの方から──長崎県側というんですか、こっちの方から貧酸素水塊が発達してきてという傾向が以前から出てきていたということで、これはS4地点においては、先ほどと同じところですが、 4.3mg/Lという水産基準を基準を下回るような貧酸素水塊がかなり生じているということです。
 そういったことを踏まえて、ここの海域全体の特徴というのを大体概略として調べてみようというふうなことでやったのがこれでございまして、これがクラスター分析ということで、大体A、B、C、Dというふうに分けられると思います。年変動等がかなりいろいろな特徴がございます。ちょっと時間がないのであれしますけれども、こういう年変動の特徴とよく関係づけられるのが、これは例えば熊本港での1年間の潮位の変動です。どうも夏場になるとリンの濃度といいますか、それが低くなって、それから、秋の大潮のときを過ぎていくとまただんだん戻ってくる。つまり、干潟の干出が非常にたくさんあるときにはリンの濃度が少なくなる。それがどうもこの海域全体の潮汐の変動、平均水位の変動に対応しているというのがここで出ています。そういった中で、海域の疲弊度といいますか、要するに消化不良になっている。消化が悪いというふうな、まさにそういう状態なんですが、一番上のものがアンモニア態窒素に対する亜硝酸、アンモニア態窒素に対する硝酸態窒素、これは溶存態窒素に対するPO4ですね。リン酸態ということでございますが、これが1980年代か90年代の当初ぐらいから、海域全体を通じて減少してきている。つまり難分解といいますか、悪い状態のアンモニアの割合の方が非常に多くて、硝酸態の窒素が非常に少ない。消化不良というか、そういうような状態になっているということが言えるかと思います。
 それと、これは湾奥部における底質調査の結果ですが、こういうA、B、C、Dという形に分けられていまして、これの経年変動等を見ていくと、どうも大出水に伴って、B、Cあたりのところが底質の悪化が起こってきて、それがずっとこっちの方に移流してきてという移動傾向がわかるというものでございます。そういったものがわかったということでございます。
 それと、これは最後になりますが、別刷りで皆さんのところに追加資料でお渡ししたやつです。去年からにわたって、海域全体の底質は一体どうなっているんだろうということを調査したものでございます。ちょっと点が見にくいですが、かなり多くの点をとりまして、表層の数十センチといいますか、それの表面、土の表面の泥分含泥量を示したもので、お手元のやつの方がはっきりクリアに写っているかもわかりません。そういったところを見ますと、かなり湾奥の方では含泥度が高い。熊本港の付近は含泥よりも砂泥質だというふうに言われていたんですが、最近はこの熊本港付近も泥化がかなり進んでいるということです。それの泥分含泥量も含めた模式図といいますか、色分けをしたのが次の図になっておりまして、かなり湾奥のところ、あるいは熊本港付近のところでも、海の中ほどぐらいまで悪くなったところがある。特に底質をとってみるとわかるんですが、これは熊本港周辺ですが、実に含泥量と、その下の方には貝殻まじりの砂というんですか、そういったものがまさに非常にグリーン、あるいは真っ黒みたいな形になっておりまして、いわゆる俗にいうヘドロ化しているという状態で、硫化物が非常に──これは湾奥の方です。湾奥の方を見ますと含泥度が非常に高くて、砂礫分は非常にわずかです。そういった形のものがあります。
 なぜそういうことを申し上げるかというと、ここの熊本港付近のところは地図上の下の方です。例えばここのところを見ますと、Shと書いてあるのはシェル含みの礫ですね。その上にH2Sみたいな、要するに硫化物が、この高さが実に2センチぐらいある。熊本港付近の堆積速度は、そういったところのご専門の方のお話によると1年に1ミリという堆積速度です。湾奥のところは 1.5ミリ、諫早のところは5ミリと言われているんですけれども、こういった層が熊本では2センチある。ということは、20年も前から、やはりそういうものがかなり悪くなっている傾向が続いているのかというのが、こういった土の中で見えるのではないかというのが、これは最新のデータですが、そういうものがはっきり明確になってきたということです。
 それと、改善の試みとしては、自然的インパクトを減少させたり、あるいは底質、あるいは水質の改善というのが当然考えられるわけですが、私のところでは、以前この委員会の先生方にはご紹介したと思いますが、いろいろなことをアプローチしている。なぎさ線、あるいは干潟、あるいは人工干潟をつくってみて生態系がどう戻るか、あるいは植栽を植えて、その効果がどういうふうにあるかというようなことも、今試験的に積極的に進めておるというところでございます。そういったことを含めながら再生に向かって進んでいかなきゃいけないというふうに思っております。
 大和田先生もおっしゃったので、私も一言申し上げようと思ったのは、やはり八代海なんですが、大雨が降ると──これは球磨川、八代海。球磨川が、これは昨々年の6月21日の大出水で約 200ミリぐらいの雨が降ったときに、こういう球磨川からの出水がすぐ対岸まで及んで、それと同時にごみがたくさん流れ込んできている。こういった問題は非常に大きいということでございます。それと同時に、これはコマーシャルするつもりはないんですが、国土交通省の方では海域環境整備計画というのが開始されて、今年の10月、11月からそういう環境の調査と同時に、そういうごみを回収するというふうなお話を聞いていますので、ぜひ期待しておるところですが、何せ申し上げたいのは、八代海を含めた有明海というのは、非常に赤潮災害を含めた海象災害が起きやすいところであるというふうなことでございまして、そういったところにおける防災対策をやらなきゃいけない。ところが、防災対策をやるということで堤防を高くしているというお話が先ほどもあって、私もそれは非常に責任というか、責任と言ったら変ですかね──気になっております。
 これは八代海の湾央部です。ここのところにちょうど護岸がありまして、高潮対策のためにこの前にパラペットをつくって、高潮を防ぐために1メートル30センチもかさ上げするような写真も先ほどございましたが、そういった工事をやっている。その工事のために、ここにしかいないような生き物、そういったものの場を言うならば奪っている。ですから、我々が考えなきゃいけないのは、そういう防災オンリーなのか環境オンリーなのかというのも語弊がありますが、いかに防災と環境、生態系ですね。生態系と環境、生態系と防災をどうマッチさせていくのかというのが非常に大きな課題としてここの海域があるということを、委員の方々にもぜひご理解いただきたい。そういうふうなことに向けての総合的な研究の場、あるいはこの評価委員会の中でのバランスのとれたというんですか、マスタープラン等をきちんと決めていく必要があるのではないかというふうに痛感しているところでございます。
 ちょっとぎりぎりになりましたけれども、急ぎ足になりましたが、以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございます。

○須藤委員長 滝川先生、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの滝川先生のご説明に対して、何かご質問、ご意見、ございますでしょうか。
 小松先生、どうぞ。

○小松委員 3点ほどお聞きしたいんですが。
 まず、シミュレーションで、締め切り堤がある場合とない場合で滞留時間がかえって短くなったというお話だったんですが、私の場合は、さっきもお話ししたように多比良-長洲のボトルネックと私が呼んでいるラインより上の奥部の滞留時間が長くなっているという話なんですね。先生のは、これは有明海全体で議論されているんじゃないかと思うので、そこのところを明確にしていただかないと、研究者によっていろいろ結論が違うという印象を与えると、それはまずいので、そこら辺は明確にしていただきたいと思います。
 それから、貧酸素水塊は以前からあるんだという先生のご研究なんですが、先ほどのご発表で私はよくわからなかったんですけれども、その強さとか規模とか、そういったものは以前から変わっていないのかどうか。その辺を教えていただきたいということ。
 それから、3点目、海域全体のバランスを考えてということですが、まさにそのとおりだと思うんですが、多分有明海の場合、例えば漁民の方たちが潮流が非常に弱くなったと訴えられるわけなんですけれども、私、それはかなり局所的な話だと思うんですね。有明海の場合は、何かいろいろなものがちょっとした拍子にクリティカルポイントを超えて、一遍にバッとコラプス状態になったんじゃないかなという気がするので、海域全体で見ていると見えないものをもう少し局所的に見なきゃいけないんじゃないかと、私、そんな印象を持っているんですけれども、その辺、いかがでしょうか。

○滝川委員 ありがとうございます。
 シミュレーションの結果のお話ですけれども、私が先ほど申し上げた滞留時間は確かに海域全体を通じて出したという計算結果です。ですから、先生がおっしゃっている下の方のところ、この結果ではないというのは確かでございます。そういった検討というのは、今のところはちょっとまだ整理していないんですけれども、確かに流れといいますか、こういう流れ場そのものが非常にかかわっていますので、どこをとるかという話でかなり変わってくるという気がして仕方がないというような気がいたします。ある断面で見ればそうかもしれないけれども、ある断面で見たら違うというのは、非常に周りで反転するような流れがたくさんあるものですから、私自身としたら、どこをとってこういうふうに変わるということ。ですから、海域全体として見るのか、どこを見るのかというラインのとり方1つで違うので、そこのところはどういう議論をしていくのか、まだ煮詰めていく必要があるのかなというふうには思っています。
 それと、貧酸素水塊の規模の話ですが、先ほどお見せしたアニメーションみたいなものがあったんですが、これですね。
(スクリーン)
 こういったものというのがどの程度の規模かは、年によってかなり年度年度で違います。そういう季節的な、あるいはそういった気象条件、あるいは降雨条件等によってかなり変わってくるんだろう。これは多分──多分と言ったら変なんですけれども、最近非常に密にデータがとられていますから、そういったもののもとのところで検証していく必要があるかと思いますが、これは過去の、要するに浅海定線データをベースにとったものですから、月に1回のデータなんです。ですから、そういう平均的な意味での貧酸素水塊の発生状況であるというふうにご理解いただきたい。そのメカニズム等については、細かい観測、あるいは今後の調査というのを非常に期待したいというふうに思っています。これはあくまでも月に1度平均で各年のデータをお示ししたということで、かなり年度によっても変わってくるということです。
 それから、バランスというお話なんですが、これも非常に考え方が難しいと思います。非常に大きく見ているところとピンポイントのところが両方ある。だからといって、余りピンポイントのところだけ見ていると、じゃ、全体がどうなっているのかというふうなことにもなってくると思いますので、問題に応じて全体的に考えなきゃいけないということと、そこで支配的な要因が抽出できれば、それを中心的にまた調べる話であるというふうに私は思っております。

○須藤委員長 どうもありがとうございました。
 何かほかにございますか。ほかの先生方、いかがですか。
 じゃ、先に大和田先生から。その次に菊池先生、どうぞ。

○大和田委員 これの見方をちょっと教えてほしいんですが、出ますか。
(スクリーン)
 これで硫化水素臭というのが幾つかあるんですが、これは上の方にH2Sと書いてありますが、これは表面の1センチぐらいなのか、それともそれが書いてあるところは下の方まで含まれているということなのかということと、あとは、量的なものは特に調べていないんでしょうか。量って、硫化水素の濃度。

○滝川委員 ちょっと私ももらったばかりで、申しわけございません。そこのところ、量的にはあれしていないんですけれども、先ほどとりました仕分けしたような絵がございましたね。ああいうとり方をしていますので、バケツの中にどれぐらいの量というのを把握して……。これ、含泥表という形で書かれていますので、大分硫化水素の量というのも押さえている。分析すれば出てくるというふうに思います。今のやつですが、これは縦のスケールがここにちょっと書いてあるんですよね。Depthというスケール、これは1センチ、2センチ、3センチというスケールで見ていただくといいと思います。

○大和田委員 その硫化水素というのはシェルのところまでという……。

○滝川委員 そうです。シェルの部分の上にそういったものがたまっているという形です。ですから、これは先ほどちょっと口だけで申し上げましたが、2センチか3センチぐらいあるでしょうと。ですから、場所によっては20年、30年たまっているんじゃないでしょうかという、そういう言い方をしています。

○須藤委員長 じゃ、菊池先生、続いてどうぞ。

○菊池委員 今の貧酸素の問題と、それからシルト・粘土のたまり方の問題なんです。佐賀県前面の有明海の北西部といいますか、これは一番貧酸素域が顕著に出ているところだと思うんですけれども、同時にそこは非常に底質粒度の細かいところですね。これも漁民の方の話なんかで、昔に比べてずっと濁っていた奥の方の水が、このごろ澄むようになったというのは、逆に水が余り攪乱しないので微粒子まで沈んでしまうということなのかなと思います。一方では河川から流入した微粒子が運ばれてくるからには、これは水平的な流れがあって、それがこのあたりで輸送力が以前より衰えたためという問題と、垂直混合なり風の吹き方というようないろいろな問題が入ってくると思うんですが、有明の一番奥の北西側の方がいつも貧酸素域の巣になるというか、そこから広がってくるということで、何かシミュレーションの前提になさっているようなものから説明がつくのかどうかということ。
 ごめんなさい。それと、もうひとつあります。もうひとつは、逆に筑後川尻の方でも貧酸素ができますよね。ですから、あれの場合には別な原因でそちらの方にも発生して、あと、両方から由来するとつながってしまうというふうにお考えになるのか、そこを1つ……。

○滝川委員 先生のご指摘のように考えていると言ったら変ですけれども、先ほど貧酸素水塊の発生場所が有明の北西奥の方ということで、底泥も、今日お示ししました参考資料の方にありますが、かなり泥化が進んでいる。これは非常に含泥率が80、90%にアップします。そういったものが当然影響している。そこは堆積速度がやはり 1.5ミリ/年ですから、かなり以前からそういった泥化があったというふうに、そういったものとのつながりだと思います。
 それと、筑後川河口といいますか、南下したところあたりからの貧酸素水塊のメカニズムというのは、まだ栄養塩が来て、それが消費されているというものとのつながりが出てきますから、メカニズムが全く一緒とはやはり考えない方がいいだろうというふうに私自身も思っております。

○菊池委員 それで、今度は漁業との関連でいきますと、タイラギ漁のいわゆる漁場みたいなところが、今から10年前ぐらいは奥有明の半分ぐらいまではタイラギがかかっていたのが、今は子供ができても1年たたないうちに大抵夏場に死滅してしまうというので、それが貧酸素じゃないかというのを熊本大学の逸見教授たちも言っているんです。だから、そうすると10年前までの漁場だったところがだめになってくるというのに、1つは水中の懸濁物、あるいはその中の有機物の質なり量が変わって、底層のところの沈積速度なり、あるいはそこでの酸素を消費してしまうというようなことに時間的な経過で近年変化があったとお考えですか。

○滝川委員 その辺の因果関係についてはっきりしたことが言えるように、また今後そういったデータを整理していきたいと思います。ただ、今、先生がおっしゃったように、この湾奥のところの影響というのは、さっきは余り時間がなかったので申し上げなかったんですけれども、移動していく方向が大体決まっているんです。ですから、そういったことからすると、改善という方向で考えると、悪いものというか、底質が悪化したようなものがずっと湾奥の方に移動してくる傾向がありますから、奥の方を改良することも当然ですが、入り口の方、そういうところを改良したらいいものが育ってくると、そういうことも考えられるというふうには個人的には思っております。

○須藤委員長 滝川先生、どうもありがとうございました。予定した時間が参りましたので、次に移らせていただきます。
 最後でございますが、「有明海の環境変化が漁業資源に及ぼす影響に関する総合研究」と題しまして、長崎大学の中田先生にお願いします。

○中田教授 長崎大学水産学部の中田です。
 私たちは、平成13年度から5年計画でこの研究に取り組んでおります。まだ中間段階ではありますが、成果の概要について話をする機会を与えていただきましてどうもありがとうございました。最初に、少し駆け足になるかもしれませんが、成果の概要をお話しをしまして、最後に、これは私見になりますけれども、私自身が少し考えている、これからの課題として考えていることをお話ししたいと思います。
(スクリーン)
 私たちの研究の目標というのは、確かに今、滝川先生からもご紹介がありましたように、赤潮が発生する、あるいは養殖ノリに被害が出るというようなことがあって、年々の変化というのは非常に気になるわけですけれども、そうしたことよりも、むしろそうした最近の問題の背景にある潜在的な環境変化の全体像を明らかにしていこうというふうに考えております。
 それで、有明海の環境と漁業資源を包括的に1つのシステムとしてとらえまして、ここに並べたような形で学際的なチームを組みました。有明海の生産力の変化過程をできるだけ中・長期的に見極めていこうというふうに考えております。言うまでもないことですが、環境、生物、資源の変化の相互関係に関する検討を深めていくことによって、初めて諫早湾の締め切りを含むさまざまな沿岸開発の影響を受けて環境の悪化が進行している有明海の現状を的確に診断する、あるいは将来に向けた環境修復、環境保全の基準目標を設定するというようなことができるようになるであろうというふうに考えております。
 成果の概要を、ここでは大きく3つに分けてご紹介したいと思います。1つは、これが一番メーンのテーマですけれども、有明海の環境と漁業資源の中・長期的な変化。それから、2番目に、もう少し短期的な時間スケールの話ですが、海洋構造や一次生産の潮汐、あるいは季節周期の動態のもの。それから、最後にちょっと話題が変わりますけれども、河口干潟域の環境ホルモン汚染の問題について取り組んでいるところを紹介します。
 最初に、この中・長期的な変化で最も長い時間規模になりますけれども、堆積物のコアに含まれている生物化石、渦鞭毛藻のシストに注目しまして、100年規模の環境の変化を推定するというような仕事をしております。現在までに分析をしたサンプルは、この諫早湾の中だけでございまして、この湾の中と調整池、それぞれ1点の堆積物を採取して、それを分析しております。非常に局所的なもののようにも見えますけれども、先ほど来、話がありますように、湾奥部の河川系、あるいは陸起源のいろいろな物質が反時計周りに回り込みながら諫早湾を通っていくというようなことを考えますと、そういう意味では湾奥部の代表的な点の1つというふうにとらえることもできます。
 これがその渦鞭毛藻シストの固体数の変遷についての分析結果でございます。見ていただきますとわかりますように、これはこちらが諫早湾、こちらが調整池からのサンプルの結果ですが、こちらだけ説明します。1800年代から数は余り変わっていないんですけれども、1970年代に入って急にシストの数が増えてきているということがはっきりわかります。1990年代には少し減少しているような傾向も見えます。さらに注目すべき問題は、この鞭毛藻のシストの種類を査定しまして、自分で栄養をとる独立栄養のグループと、それから、独立栄養のグループを食べて育っていく従属栄養のグループに分けて集計をしてみますと、ちょうどやはり1970年ぐらいを境にしまして、ここまでは驚くほど大きな変化がないんですけれども、1970年代に入ったあたりから従属栄養のグループの比率が増加する。これは現在もそのまま続いております。これもどういうふうに解釈するかということですけれども、従属栄養の種類がどんどん増えていくというためには、当然従属栄養の種類が食べる独立栄養のグループが増えていなきゃいけないということがありますので、何らかの形でいわゆる富栄養化が進行して、こういう現象が起きているのではないかというふうに考えられます。
 そこら辺を一回整理をしますと、この堆積物のコアから見た環境の変化として、1つは1970年より前の状態で、割合自然に近い状態が維持されているというふうに考えていいと思いますが、1970年代に入って富栄養化、あるいは環境の悪化が急速に進行し始めた。1990年以降もそれがさらに加速される、あるいはもっと不安定化するというような形になっているのではないかというふうに考えております。
 この1970年代に、それでは何が起きたかということを今検討しているところでございますけれども、先ほどの図と同じような形にすると、こういうふうにした方がいいかもしれません。これは佐賀県のノリの生産枚数の変化を大まかに示したグラフですが、やはり1970年代あたりに非常にノリの生産枚数が増えてきているというふうなこともよくわかります。
 いろいろな原因が考えられるわけですが、今私たちが1つ注目しているのは沿岸の地形の変化の影響の問題です。有明海の湾奥部の干潟干拓について、これまでの情報をいろいろ整理していきますと、干拓速度というような見方で整理をしてみますと、この左の方の図がそれですけれども、1960年代から70年代にかけて、ほかの時期よりも非常に速い速度で沿岸の干拓が進行したというふうな事実がございます。右の方は比較の意味で東京湾について同じような集計をしてみたものですが、東京湾でもやはり同じような年代に沿岸の埋め立てが急速に進んだというようなことがあるようです。
 ですから、ここから先はまだいろいろな形で検証していかなきゃいけない段階ではありますけれども、私たちが今頭に描いているものとしては、1つはそういう沿岸地形の変化、特に沿岸の浅海域がなくなってくるということで、浄化能力が減少したのではないか。それから、地形が変化することによって流れが低下する。粒径の小さい堆積物の分布域が拡大する、あるいは有機物が沈積するようになって貧酸素水塊が出現するようになる。そういうふうに流れが低下する、あるいは栄養塩が増加してくるということが、恐らく植物プランクトンの組成を大きく変える。珪藻類から鞭毛藻類、独立栄養から従属栄養へというような形で変化させているのじゃないかというふうに考えております。
 1つだけ実態をご紹介しますと、これは有明海の湾奥部での堆積物の流動組成の変化を1950年代から2000年まで情報を集めて比べたものですけれども、Mdφで4とか、この黒く影をつけているのはMdφ7の領域ですけれども、年代的に粒径の小さい堆積物の分布域が広がってきている様子がよくわかります。ここら辺から先の検証はこれからの課題であります。
 そういうプランクトンの主組成の変化が非常に際立って出ているところの1つは、実はこの諫早湾の周辺です。これは長崎県の水産試験場のこれまでの資料を少し分析させていただいたものですけれども、諫早湾の南側、あるいは北側で締め切り堤防ができる前と後とを比較しますと、締め切り堤防ができた後、急速に赤潮の発生件数で渦鞭毛藻、それからラフィド藻といった藻類による赤潮の発生件数が増加しているということがわかります。
 これも全く同じようなことで説明ができるんではないかというふうに考えているわけですけれども、すなわち流速の低下、それから、この場合は調整池からの富栄養化した排水の影響というようなことも考える必要があるのではないかと思います。それから、貧酸素水塊の広がりということが栄養塩を溶出させるというようなことがある。メカニズムとしては、先ほどお話しした干拓面積の拡大の影響と同じようなことが局所的にも起きているというふうに考えることができます。
 次に、ちょっとまた見方を変えて、環境の長期的な変化についての考証になるようなことをお話をします。これは大型の底棲生物でスナモグリというグループですけれども、上の方がハルマンスナモグリ、下の方がニホンスナモグリという種類ですが、ハルマンスナモグリは、この黒の丸で示した、どっちかといいますと有明海の外側のエリアに主に棲息しているのに対して、ニホンスナモグリは有明海の中の砂干潟に棲息しているというふうに言われております。 
 これは大型の底棲生物で、私は余り専門ではないのでよくわかりませんが、こういうふうに地中に大きな巣穴をつくるというような特性を持っている動物であります。
 この動物の出現する数量を天草の富岡干潟でずっと観察を続けてみた結果でございますけれども、1979年から2001年までの時系列を示してあります。ごらんいただいてわかりますように、80年代の初めから急激に数が増えている。そういう状態がしばらく維持されていたんですが、90年代の後半になって減少をしていっている。1つ大きな波がここにできているということがわかります。最近減少してきたことの理由の1つとしては、ここにアカエイの写真がありますが、アカエイが増えてきて食べているというようなことが1つ考えられております。もうひとつ、非常に興味深いのは、そういうふうにスナモグリ類が増えていくのとちょうど逆の対応、これはイボキサゴという貝の数ですけれども、全く逆にスナモグリが増えると完全にいなくなってしまう。いなくなるとまた出現してくるというような変化をしているということから、恐らくこのスナモグリ類が増えたり減ったりするということが、その巣穴に貝の稚貝をトラップして死亡させたり、あるいは砂をかぶせて死亡させたりというような相互作用がここにあるのではないかというふうに考えられています。
 話し忘れましたけれども、ここでスナモグリ類がどっと増えてきた80年代の初め、なぜ増えたかという原因については、やはり急速にこの時期に環境が変化して富栄養化が進んだためではないかというように考えております。
 今のは有明海の外側の天草の方の干潟での研究事例でしたが、ご存じのように有明海の干潟域でアサリの漁獲量がやはり80年代に入ってどんどん減少しているということが問題となっているわけですが、この熊本県の白川の干潟で最近、岸から沖方向に側線をとって、そのライン上のスナモグリ、この場合はニホンスナモグリですね。それからアサリ、シオフキガイの数を調べたようなデータがございますが、このアサリは赤であらわしたところでして、かなり岸から離れたところに集中して出てきているのがわかります。ニホンスナモグリ、白のバーで示してある部分ですけれども、ちょうどスナモグリの多いところにはアサリが全然出てきていない。このシオフキガイというのは一緒にすむことができるようなんですが、どうもアサリにとっては、このスナモグリというのは非常に災害を及ぼす可能性があるというようなことを示唆しております。ですから、環境が変化してスナモグリが急速に増えてくるというようなことが、ひょっとすると、このアサリの減少の原因の1つになっている可能性があるというように考えられます。
 それから、もうひとつ、この図でちょっと見ていただきたいのは、この青の折れ線グラフなんですが、これは泥ですね。シルトクレイの含量の分布です。シルトクレイがここですごく多い部分がありますけれども、こういうところにはほとんど生物がいないというふうになっていることがわかります。実は白川の河口の干潟で、先ほど滝川先生の方から情報の提供がありましたけれども、実は、その干潟の調査をやっておりますと、最近非常に泥っぽくなってしまっているというような場所が随所に増えてきているというような状況があります。ここら辺もこれからひとつ注意をしていく必要がある問題だろうと思います。
 それから、ちょっと関連のトピックスですが、委員会の委員を務めておられる山口敦子先生が最近取り組んでおられる問題ですけれども、実は最近有明海で、エイですね。特にナルトビエイが増えてきている。それが干潟の貝を接餌、食べている。このエイによる食害の問題というのが1つ出てきております。
 これはちょっと細かいデータですけれども、ナルトビエイの胃の内容物を見ていきますと、ほとんど貝を食べているということがわかってきております。
 余りきちんとした数量の情報が今までないんですけれども、佐賀県の方の漁獲尾数を見てみますと、平成14年、15年とだんだん数が増えていっているように見えます。春になって温度が上昇しますと有明海に入ってきて、秋から冬にかけて水温が下がると外に出ていくというような生活をしているのではないかというふうに言われておりますけれども、どうも貝を食べるので、漁業者が一生懸命駆除したりしているにもかかわらず、数が全体として右肩上がりになっているというのが非常に気になる点です。ここら辺もあわせて、これからエイ類の生態も含めて検討していきたいと考えているところです。
 それで、漁獲量の変化については、これは西海区水産研究所でまとめられたもので、皆さんご存じのとおりですけれども、この赤で示されているところが貝の漁獲量で、これも80年代から急速に、特にアサリの減少の影響が大きいと思いますけれども、減ってきている。これが大きな問題になっているわけですが、私どもの方で長崎県の漁業協同組合ごとに、特にこれは魚類の漁獲量のデータを集めてみまして、パーセントで一番最大値を 100にして変動の傾向を表示したものです。一番上が小長井、諫早湾の北側ですね。それから、ずっと北から南の方に行きまして島原、それから口之津というような並びになっております。これを見ますと、真ん中から下の方というのはそんなに目立った変化が見えないんですけれども、この真ん中から北側、特に諫早湾の周辺で魚類の漁獲量が1980年代に急速に減少をしていって、90年代は非常に少なくなってしまっている状態が続いているということがよくわかります。特に湾奥を生活領域にしている種類の多いニベ類なんかのものを見ていきますと、そういった減少傾向が余計際立ってきています。
 ですから、ここら辺も含めて少し、中・長期的にどういうふうに環境が変わったのか、それが資源、貝の問題、それから魚の問題とどういうふうにかかわりを持っているのかをもう少し詰めていきたいと考えているところです。
 もうひとつ、こういう1970年代、80年代ぐらいからの環境の変化を考えていく場合に重要な問題があります。これは私自身の仕事ですけれども、1年間行政対応特別研究に参加させていただいたときに、水産試験場の浅海定線調査データを見せていただきました。先ほど滝川先生がおやりになったのと同じようなことで、有明海の縦断線に沿っていろいろな水温、塩分、透明度の変化の整理をそのときにしたわけですが、一番はっきりした傾向が見えたのは、この透明度でございました。これは1980年代と1990年代の透明度を左側は湾口で、右の方に行くにつれて湾奥に近くなるというような縦断面に沿ってデータをプロットしてみたものですが、明らかに1990年代、特にその後半に透明度が高くなっている場所が増えているということがわかります。
 これは平年の偏差をとってみますと、もっとはっきりします。ここら辺が非常に透明度が全体に高くなってきているということがわかります。
 もう少し場所を幾つかに分けながら、季節ごとに透明度の時系列を整理をしてみますと、これがその結果ですけれども、青の線が夏、それから赤の線は冬の透明度の変化です。湾奥の方は非常に変動が大きくて、むしろはっきりしないんですが、湾の中央部、それから湾口部、いずれも透明度が経年的に上昇傾向にある。夏についても冬についても同じように上昇傾向が見えるということがわかります。特に島原の周辺のデータを使って、80年代と、それから90年代に懸濁物の指標として透明度の逆数を縦軸にとって塩分との関係を見てみますと、やはり80年代に比べて90年代というのは明らかに濁りのレベルが低下しているということがわかります。
 こういうふうに透明度がなぜ上昇したかということが1つ問題になるわけですけれども、当然透明度が高い、外海水がたくさん入ってきたということとか、逆に懸濁物をたくさん含む河川水の流入量が減少する、あるいは流れによる底泥の巻き上げ量の減少。それから、余りよくわかりませんけれども、底棲生物のバイオマスが減っているとしますと、生物攪拌による濁りの供給というようなものの減少もあるかもしれないということなんですけれども、ただ、この一番上の外海水の流入の問題については、透明度と海底、底層の塩分というのをこういうふうに並べて比較してみますと、底層の塩分というのが外海水の流入量のインデックスになるのではないかということでこういう比較をしたわけですが、透明度がどんどん増えているのに対応するような塩分の増加というのは認められないということがわかりました。したがって、まだ結論を出せるというところまではいっていませんけれども、恐らくこの2番か3番が大きな要因になっているのではないかというように考えております。
 ただ、そういうふうに濁りが低下するということが、実は赤潮の発生なんかとも関連するのではないかということを示す情報がございます。これは県別に赤潮の発生件数を時系列で示したものですが、80年代というのは湾奥の佐賀とか福岡の方で件数が増加しているわけですけれども、90年代の後半あたりから、熊本、長崎といった有明海の中央部から湾口にかけてのところで件数が非常に増加してきているというようなことがあります。ここら辺から先はもう少し定量的に検討していく必要がありますけれども、ひょっとすると有明海のこういうプランクトンの生産というのが濁り制限になっている、光制限になっているとしますと、濁りが低下する、あるいは流れが弱くなって鉛直成層が発達するというようなことが赤潮を増やす1つのきっかけになっている可能性があるのではないかというふうに考えています。
 この中・長期的な変化のところを簡単にまとめますと、有明海では1970年代から富栄養化が進行してきたのではないか。それは底棲生物個体群の増加、それからノリ生産の拡大、それから湾奥部に棲息する魚介類の漁獲量の減少というようなものと非常によく対応しています。その原因の1つは、沿岸の地形変化に伴うさまざまな環境変化である可能性があるという、そういうことをお話ししました。それから、1990年代についてはまだ様子がよくわからないところがありますけれども、全域にわたって透明度が上昇する。それから諫早湾付近の環境が悪化してきているというようなことが、さらにその資源の環境を悪化させてきているのではないかというように今考えています。
 それから、二枚貝の減少に関する問題については、これまで海底付近の貧酸素化の影響ということが問題にされております。それは当然非常に重要な要因の1つでございますけれども、この研究では、ほかの底棲生物個体群との競合、あるいは食害の問題も含めて考えていく必要があるのではないか。あるいはトビエイによる食害の影響も含めて、生物種間の関係とか数量のバランスの変化というようなこともしっかり見ていく必要があるように思います。一応これが中・長期的な変化についてのお話です。
 次に、もう少し短い時間規模ですね。潮汐とか季節周期の動態の話を少ししたいと思います。なぜこういうことを考えるかといいますと、実は有明海のこれまでの調査データの1つの大きな問題として、各県の水産試験場の浅海定線調査というのが主に大潮の時期に実施されてきておりまして、これは20年以上の蓄積がある非常に重要な資料ではあるんですが、赤潮の発生とか貧酸素化などと非常に関連がある、むしろ小潮のときの情報というのが非常に不足しております。そこで、この研究では、できるだけ大潮、小潮の周期を意識した形で現場調査を続けてきております。
 まだ余り細かい解説面までできておりませんけれども、大体どういう範囲で調査をしているかといいますと、2002年は少し湾全体をカバーするようなことを考えておりましたが、2003年は少し湾の中央部から奥の方のデータを充実させようということで、こういう測点で続けて調査をしております。この有明海の縦断面に沿った断面の塩分とクロロフィルの分布図をお見せしたいと思いますが、一番上が小潮から大潮で、一番下はちょうど中間で、中潮の時期の塩分と、それからクロロフィルの分布の様子を示したものです。左の方が湾口に近い方で、右の方が湾奥に近い方です。ごらんいただいてわかりますように、大潮のときは割合鉛直混合が大きくなって、湾の一番奥の方でクロロフィルが高いというような分布を示すことが多いんですが、小潮のときは成層が発達して、湾の奥だけではなくて、この湾の中央部のちょうど塩分成層、密度成層ができているところに亜表層の極大が出現するというようなことがわかってきています。
 これは今年4回、これまでやったものをまとめたものですが、大潮、小潮、小潮、大潮というような並び方になっています。なかなか変動が大きいので、簡単に全体をまとめるというのが難しいんですが、やはり小潮の時期になりますと成層が発達して、そういう成層の影響を受けたような形でクロロフィルの高いところが出現するというようなことが共通して見られます。そういうクロロフィルの密度成層に対応した極大のでき方というようなことを、これから詰めていきたいと考えています。
 ただ、そういう亜表層の極大が出るところを除きますと、クロロフィルの濃度は基本的には塩分と逆相関の関係を示すということもわかってきております。つまり、やはり河川から河川水がたくさん入ってきて、塩分が低下するような状況のときに植物プランクトンが増えているということが基本的に言えるように思います。ただ、大潮と小潮とを比較してみますと、濁りの指標として懸濁物の逆数を縦にとってありますけれども、塩分との関係をプロットしてみますと、ばらつきは結構ありますけれども、小潮のときに比べて大潮のときに同じ塩分の値でも濁りが大きくなるというようなことがあるということがわかってきておりますので、基本的には河川からどのぐらい淡水が入ってくるかということが非常に大事なんですが、それに加えて濁りの程度、あるいは鉛直混合によってどのぐらい成層が強化され維持されるかというふうなことが、光制限を緩和するというようなことの働きをして、植物プランクトンの増殖赤潮というようなところにつながっていっている可能性があるということが言えるのではないかと考えています。
 そういうクロロフィルの変動をもう少し広域にわたって見ていく方法がないかということで、私たちの研究グループでは、人工衛星の海色画像を使ってクロロフィルの分布の様子を推定していくというようなことにも取り組んでおります。これは、ノリの不作が問題になりました2000年12月から翌年2月ぐらいまで続いた赤潮の様子をクロロフィルの分布として画像で示したものです。こういうものを見ていますと、有明海の場合は当然湾の奥の方に濁っている水がたくさんあるものですから、こういう衛星画像からの推定というのは余り当てにならないんじゃないかというふうに考えていたんですが、意外に何とかなりそうだということが出てまいりました。
 これは諫早湾で毎月1回現場調査をやっているクロロフィルのデータというものを青の四角で示してありまして、オレンジのマークをつけてあるのは、同じ測点のクロロフィルを衛星画像から推定したものです。ごらんいただいてわかるように、本当に現場のクロロフィル、衛星画像から見たクロロフィル濃度というのはすごく変動するんですね。これはつかみどころがないかなと思いましたら、月平均したのがこのピンクのラインなんですけれども、月平均ぐらいで見ていきますと、大体レベルが現場で観測したものと合ってくるということが見えてきました。
 それから、沿岸よりもう少し沖の方に行ったところで、こういう赤潮状態が出ているときに、ちょうど学生実験で有明海の調査に行ったときのものですけれども、4点で観測したものと比較をしてみますと、大体現場で測ったクロロフィルと衛星クロロフィルというのが相関しているというようなことがわかりました。
 それで、1998年以降、衛星画像が手に入るものをすべて集めて、それぞれ月平均のクロロフィルの分布の様子をコンポジットにしてこういうふうにまとめてみました。そうしますと、いろいろと変動は見えますけれども1つ特徴的なのは、7月にほとんどの年にクロロフィルの高い状況が出てきているということ。それから、もうひとつ、10月、11月という秋の時期にクロロフィルが増加するというようなことがある。これは年によっていろいろ変わってきております。ノリの不作の問題があった2000年12月から翌年1月、2月というのは、普通の年よりも遅くそういう増殖が始まって、長く持続したものであるということもこういう解析からはっきりしてきました。
 一応それをクロロフィルの実際の推定値の時系列として示したものがこの図でして、ちょうど梅雨明けぐらいに1つピークがある。それから秋にもうひとつ、第2のピークが出てくるということ。それから、2000年の赤潮が例年よりも遅く出てきて、しかも長期にわたって持続してきたというようなことがこれからわかります。
 一応降水量の情報と突き合わせてみますと、雨が降った後、そういうクロロフィルのピークが出てくるということで、基本的に河川水によってプランクトンの増殖というのが非常に制御されているということが、改めてまたこういう分析からもわかってきました。特にノリの時期に問題になる赤潮について発生要因というのを、先ほどからの話を含めて整理をしていきますと、赤潮が発生するためには成長速度が増加するということが必要なわけですが、恐らく河川からの栄養塩の供給、それから潮流による鉛直混合に関連した成層の発達の度合いの問題、それから濁りの問題、この3つが合わさって赤潮発生につながっているということは言えると思います。これは当たり前のことで、それでは、それぞれのプロセスがどのぐらい貢献しているかということをはっきりさせるのが、これからの課題であるということになります。
 最後に、環境ホルモンの関係の情報を簡単にお話ししたいと思います。私たちが1つ注目しているのは、有明海に特徴的な泥干潟というのは浄化能力が非常に高い、あるいは資源的にも大事なところが多いんですけれども、ただ、一度汚染されると非常に回復が困難な場所であるという点であります。そういうことから、環境ホルモンを対象にして汚染の調査に取り組んだということです。トビハゼを一応対象にしまして、この有明海の数点でサンプリングされたものについて血液中のビテロジェニンの濃度を環境ホルモン汚染の指標として調べました。この比較をしてみますと、大牟田川の河口干潟で採取したトビハゼだけが優位に高い濃度を示すということがわかっております。
 それで、そこら辺を実験的に確認をするということを次に行いました。1つは、トビハゼがすんでいるところの河川水を使った曝露実験をしまして、大牟田川を含めて4通りの実験をやったわけですが、これについては、ごらんいただいたらわかりますように対象群とほとんど違いがない。つまり河川水は汚染のソースになっていないということがはっきりしてきました。
 それで、次に干潟の泥を使った飼育実験を同じような形でやって比較をしてみたわけですけれども、こちらは非常にシャープな結果が出まして、大牟田川の河口の泥を使って飼育した魚については 200倍ぐらい高いビテロジェニンが検出されたということが出てきています。
 ここまでが、今我々がやった仕事です。現在のところ、汚染のレベルというのは成魚の生殖活動に大きな影響を及ぼすことではないというふうに判断しておりますが、1つは、実際の化学物質、問題になっている化学物質を底泥、あるいは魚体中から検出するための分析をきちんとする必要があるということがありますし、もう少し卵とか仔稚魚段階でも飼育実験をやって、形態形成とか初期発達といった世代間の受け渡しの問題についても慎重に影響を調べていくことが必要だと、そういう段階になっております。
 ちょっと内容が非常に多岐にわたるものですから、話が散漫になって申しわけなかったんですが、今お話ししたような内容のことの半分ぐらいは、今年の4月に発刊されました「月間海洋」の特集号にまとめられております。まだ余部がかなりありますので、先着順ですけれども、もし必要だという方がおられましたら事務局を通してお話しいただければと思います。
 それで最後に、ちょっと時間がなくなってきちゃったんですが、これからの課題ということを2,3分お時間をいただいてお話をしたいと思います。
 これから特に環境回復ということが大きな問題になるわけですけれども、1つは共通の目標を持つということが非常に大事だというふうに思います。例えば貝の生産とノリの生産が持続的に共存できるような場を回復させるとか、あるいは有明海の場合、河口干潟域というのは資源の生育の場として非常に重要だということが昔から言われておりますので、そういう機能の保全と回復というようなことは目標として非常に適当なのではないかと思います。いろいろなことに取り組んでいくときに1つ最近感じるのは、サイエンスの問題、科学の問題と管理の問題とを余りごっちゃにしない。両方必要なんですけれども、そこら辺をきちん仕分けしながら物事を進めていくということが必要ではないかと思います。
 科学的な調査の課題としては、これは先日長崎大学で開かれました日本海洋学会のシンポジウムでも議論されたところですけれども、1つは境界領域の科学を推進するということが必要になってきているということが言えると思います。例えば干潟というのは有明海で非常に大事な存在ですが、これは海と陸とのちょうど境界の問題ですね。それから、浮泥というのも非常に大事なんですが、これは水と泥の境界の問題。それから、プランクトン、赤潮とベントスとの相互作用の問題も、まだよくわからないところが多いわけですが、これも言ってみれば浮遊系と底棲系の境界領域の問題ということになります。今までの我々の科学というのは、どうもこの境界のところが全部弱いですね。だから、これを何とかしていくということがいよいよ必要になってきている段階ではないかというふうに考えます。
 それから、もうひとつは、先ほど滝川先生の方からも指摘がありましたけれども、やはり有明海の物質収支変化の全体像を見ていく。これが我々のプロジェクトの最終的な目標の1つでもあるわけですが、それが非常にこれからの大事な課題だと思います。特に1つ問題に思うのは、陸から入ってくる流入負荷の富栄養化物質とか濁り、その他陸起源物質の流入と海で起きている地形変化とか潮流変化のどちらがどのように海域の富栄養化とか濁りの変化に影響しているのかということが、実は一番わからなきゃいけないことでわかっていないことだと思うんですね。そのためには流入負荷の量的な変化、変遷の実態というものをきちんと押さえながら議論をしていくということがどうしても必要になります。
 それから、物質収支の年代的な変化については、実はこれは我々のプロジェクトの一応ゴールのありようとして1つ想定しているものがあります。それは栄養塩のサイクルを、1つは有明海の干潟系のシステム、それから海水中の浮遊系のシステム、それからノリをめぐるシステムというような形で少し切り分けながら整理をしていくという考え方でございまして、もう少し具体的に年代的な変化というのをおよそのイメージで示しますと、割合自然環境の一部としてとらえられたような1940年──40年はちょっとあれですけれども、60年以前ぐらいの状態、ここはノリがまだないわけですね。1970年代に入るとノリがここへ入ってくる。自然環境と共存したような状況が出てくるわけですが、ただ、70年代以降は、こちらの干潟系が細くなってしまう。それから浮遊系の方では、人間に資源として使えるようなプランクトンの流れが細くなって、有害な藻類の赤潮が増えるようになってどんどん環境が悪くなっていくということが起きている。ノリのパイプも太くなってきている。そういうふうなイメージでとらえながら、どういうふうにこれから環境を回復させていくのかということを考えていくことが必要だろうと思います。ですから、そういうところの役に立つようなものを、これから我々のプロジェクトとしても出していきたいと考えております。
 管理の方の問題を最後にちょっとつけ加えて終わりにしたいと思うんですが、環境修復とか環境管理に関する課題というのは、短期的な対応、それから長期的な視点に分けて整理をしていく必要があると思います。短期的な対応としては、諫早湾の周辺では少なくとも環境がかなり悪化してきているということがありますので、これ以上いろいろな負荷をかけることには慎重であるべきだと思いますし、第三者委員会の提言もそういう形で出てきているわけですので、適切なアセスメントとか防災対策を含めてそういう提言が実際される方向にいくということが必要だと思いますし、あとは、やはり底層の貧酸素化というのがどうしても気になってきます。ですから、そこの監視だけはきちんとやっていくということが必要だというふうに考えます。
 もうひとつの問題は長期的な視点ということですけれども、1つは、これは海洋学会のシンポジウムで広島大学の松田先生がお話しになりましたけれども、有明海の環境特性を踏まえた環境回復への取り組みということが必要だということで、有明海モデルというような言葉を使っておられましたけれども、例えば先ほどのこういう物質収支の図で見ていきますと、やはりここら辺を何とかもう少しパイプを太くできないかというような問題、それから、ここの有害系に流れているものを資源系に流すようなことが、環境の改善というようなことができないか。あるいは真ん中のノリのパイプがちょっと太過ぎるんじゃないかとか、そこら辺が有明海モデルの具体的なイメージとして出てくるのではないかと考えています。
 それから、あと環境修復事業がいろいろな形で進められているわけですが、これのコーディネーションということをぜひこの評価委員会で考えていただきたいと思います。流域まで含めた物質循環系の包括的な管理、言葉では簡単ですがなかなか難しいと思いますけれども、これがやはり一番肝心だろうと思います。
 それから、環境監視のネットワークを確立していくということで、これはいろいろな調査研究機関の連携、あるいは市民との連携ということもありますが、一番考えていただきたいのは、いろいろな出た情報をみんなで共有化して一緒にものを考えることができるような仕組みを一日も早くつくっていただきたいというようなことがございます。
 ちょっと長くなりまして申しわけありません。以上です。

○須藤委員長 中田先生、どうもありがとうございました。
 時間は参っておりますけれども、中田先生にはせっかくおいでいただきまして、日ごろ余り、また今後も具体的にお話を伺う機会が少ないと思いますので、2,3ご質問をいただこうかと思います。どうぞお願いいたします。

○小松委員 2点お伺いしたいんですが。透明度の問題で、奥の方が変化が大きくて明確ではないが、湾の中央部、湾口では透明度が上がっているというお話だったと思うんですね。奥の方は浅くなりますし、どうしても巻き上げがあるということで、奥の方は余り変わっていないけれども、湾中央部、湾口部までの輸送能力が落ちているというふうには解釈できないでしょうかというのが1つ。
 それから、もうひとつは、クロロフィルaと鉛直混合による濁り云々というところなんですが、小潮で成層度が大きければクロロフィルaが多くなる、高くなる。鉛直混合が大きくて濁りが大きければ、クロロフィルaが小さくなる。だから、それはそのままそれでいいと思うんですが、多分これ、いろいろな要因が絡み合っていると思うんですね。というのは、成層が強ければ河川から入った水が比較的そのまま上にポンと乗っかっているわけです。そうすると、栄養塩濃度が非常に高いままというところがあるわけなんですね。だからクロロフィルaが高くなるという……。だから、鉛直混合が弱くて成層度が強ければクロロフィルaが高いというのは、濁り云々だけではなくて栄養塩濃度がそのまま保存されているからという要因があると思うんですが、その辺、いかがでしょう。

○中田教授 まず最初の点ですけれども、これは2通りあると思うんですね。1つは、今、小松先生がおっしゃったように輸送能力が変わっているという考え方もあり得ると思うんですが、私はむしろ、やはり大もとに変化が起きているんじゃないかと思うんですね。湾の奥の方ではそれが見えにくいけれども、やはり湾の奥の方のちょっとした濁りの減少というのが。湾の中央とか湾口あたりはもともとそんなに濁っていないところですから、変化としては非常に大きく見えるということがあるのではないかなというようなことを考えています。ただ、輸送の後の変化ということも当然考える必要があると思います。
 それから、実は栄養塩も非常に大事な問題なんですけれども、これは測るのが結構大変だということがあって、去年までは余りちゃんとやっていなかったので、今年から栄養塩のデータも一緒にとっております。そこら辺も含めて、今解析を進めているところですけれども、川から入ったときには確かに栄養塩があるんですけれども、それがどのぐらいで消費されてしまうか。ああいう成層のできる亜表層のところに極大ができるというのは、多分下の方の栄養塩と光条件とで増殖を起こすというような、そういうメカニズムもあるのかなというようなことを感じておりますけれども。いずれにしても栄養塩のデータはきちんととって議論しないといけないと思います。

○須藤委員長 ありがとうございました。
 もうひとつ、どなたかいらっしゃいますか。いらっしゃらないですか。
 それでは中田先生、どうもありがとうございました。
 本日、ただいまの中田先生を含めまして4名の先生方にご説明をいただきました。そして、これにつきましては、今後の評価委員会での議論に十分生かしていきたいと考えております。
 それでは、実はもうひとつ議題がございます。その他でございます。事務局からご説明願います。

○坂川閉鎖性海域対策室長 次回の評価委員会の開催日程をご連絡いたします。前回もう既にご連絡しておりますので念のためということでございますが、次回、第6回は11月10日月曜日の14時から、午後2時から開催をいたします。場所は、この同じ建物なのですが、この部屋ではなくて5階にあります共用第7会議室を予定をしております。またよろしくお願いをいたします。
 本日はどうもありがとうございました。

○須藤委員長 どうもご説明ありがとうございました。
 次回の評価委員会の開催でございますが、何かご質問ございますでしょうか。
 それでは、次は3人の先生にご説明いただくんですね。ということで、2時からでございます。お集まりいただきたいと思います。
 何か全体的にご質問がございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、本日予定されましたすべての議題はこれで終了させていただきます。
 これにて第5回有明海・八代海総合調査評価委員会を閉会とさせていただきます。
 議事進行に皆様方のご協力をいただきましたことを感謝申し上げます。どうもお疲れさまでございました。